○堂森芳夫君 私は社会党を代表いたしまして、首相初め
関係閣僚に対しまして、主として
民生安定に関連しまして
質疑を行いたいと存じます。
首相は、戦勝国であるイギリスでさえ戦後十年間
耐乏生活を続けているのであるから、
日本の
国民もこのたびの
緊縮予算に協力してくれと、こう説教しておられるのであります。一千万人以上の人々が援護を必要とする生活困窮者であり、そのうち生活保護法の適用を受けておる者が僅か一八%以下であることを首相は御存じでありましようか。更に、住宅の不足は今日三百万戸を超えており、人口の自然増加による住宅不足が年々累加しつつあることを御念頭に持たれてのお
言葉でありましようか。かかる社会
情勢を顧慮せずして、単に英
国民を賞讃し、
緊縮予算に協力をしろと言われましても、
国民が納得しなければ絶対に協力しないと思うのであります。果して
国民にこのたびの
予算に協力せしめる自信がおありかどうか。首相の抱負と確信のほどを承わりたいのであります。私は、たとえ首相が確信がありと言われましても、
国民は納得すまいと思うのであります。
何故ならば、第一に、英
国民のごとく
耐乏せよと言われましても、英国における
耐乏と我が国の
耐乏とは雲泥の相違のあることを知るべきであります。勿論、
国力の差はあるにいたしましても、イギリスには立派な社会保障
制度が
国民の生活を守る盾の一面として確立されておるのであります。
吉田内閣が大砲のために社会保障を
犠牲にして恬として恥じざる
態度とは根本的に異な
つておるのであります。全く現
内閣のごときは手放しの
耐乏論と言わざるを得ないのであります。この点に関して首相に
お尋ねいたしまするが、この
耐乏生活を要求せられました対象は一体如何なる階層の人々でありましようか。
国民の多数の
人たちの今日の生活はこれ以上切り詰め得ると思
つておられるのであるかどうかを伺いたいのであります。そこで、
政府が
耐乏生活を要望するならば、是非とも積極的な社会保障が必要となるのでありまして、首相初め
大蔵大臣、
厚生大臣、労働
大臣に
お尋ねしたいのであります。
予算編成に当り当初大蔵当局は無謀にもこの方面に大なたを振
つたのでありまするが、さすがに
政府は世論の抗議に屈伏して、社会保障の枠
削減問題も大体前
年度通りに復活いたしました。尤も、復活しましたとは言え、厚生省
予算は前
年度なみのぎりぎりの線であります。厚生年金の国庫負担増加、らい
対策、孤児奨学資金などは、新規分まで認められたので、社会保障は一歩前進した、
予算も前
年度より二十億殖えたと、
政府は得意然であります。
大蔵大臣のごときも、昨日の
答弁でそのようなことを得意顔で
言つておられまするが、一兆円内の
緊縮財政の煽りをくら
つて、今後激増を予想されます
失業者、困窮者の救済分は全く見込まれていないのであります。生活保護費は保護人員百六十七万人に圧縮して、
予算は前
年度より約十四億円増加とな
つておりまするが、この中には前
年度赤字二十億と医療単価の値上り分を含んでおるので、実質的には前
年度よりもむしろ減
つておるのであります。従
つて物価値上りに伴う扶助金増額は認められず、又二十九
年度に増加を予想されますところの要保護世帯の救済分が今度の
予算には計上されていないのでありまして、大きな社会問題を惹起することは明らかであります。
大蔵大臣、
厚生大臣は、この
事態を如何にお考えにな
つておるでありましようか。明確なる
答弁を願いたいのであります。
失業対策費は前
年度に比較して十億円の増加とな
つておりますものの、二十九
年度のデフレ
政策の強行による
失業者の増加はおよそ三〇%の予想に対して、如何に対処せられるか。更に又雇用者五人以下の零細
企業の従業員たちは失業保険給付の対象から除外されております。まだ悲観材料はございます。満十四才に達するいわゆる新規の労働人口の増加は、二十九
年度は八十万と言われております。デフレによる労働
市場の閉鎖から、これらの何%かは
失業者の側に計算することになるのであるが、これらに対する
対策は如何にされるのか。
大蔵大臣、労働
大臣の明確なる
答弁を求めるものであります。昨日も
大蔵大臣は補正
予算は組まないと
言つておられまするが、如何なる
事態が起きても、生活困窮者が街頭に溢れても、絶対に補正
予算を組まないとおつしやるのでありますか。お伺いしたいのであります。デフレ
政策の
影響によ
つて労働基準法の改悪、婦人、少年の労働強化とならない保障ができるのか。労働
大臣に併せて
答弁を願いたいのであります。
国民を疾病から守る
制度としての医療保険は、
各種保険を合算しておよそ五千万人ほどの適用者とな
つております。その対象から除外されておりますところの数千万の
人たちは、デフレ
政策の
犠牲となるのであるから、生活困窮によ
つて医療費にも当然事欠くようになるのであります。一日も早く
対策が必要であるのにかかわらず、何らの
予算的
措置が講ぜられていない。複雑多岐に亘る医療保険を単純化し、小
企業にも社会保険の適用範囲を広め、あまねく全
国民に医療を開放すべきと思うが、その
対策ありや否や。
大蔵大臣、
厚生大臣に伺いたい。
社会保障こそは、
政府が
国民に
耐乏を強いる代償としても、
経済自立のためにも、最も力をいたさなければならないのであります。国家財政と狭義の社会保障費との比率を、
日本と諸外国を比較するならば、イギリスの一七%、西ドイツの二〇%、スウェーデンの二七%、フランスの一五%に比べて、
日本の
予算は僅かに七%であります。而も世界の趨勢は、吉田首相が最も尊敬しておられるところの
アメリカにおいてさえも、(
笑声)
防衛費を
削減して、
民生費に振り向ける傾向にあるにかかわらず、ひとり
吉田内閣だけが
防衛費のみを殖やして
民生を圧迫しておるのであります。私は
国民の名において強く糾弾いたすものであります。(
拍手)私の見るところでは、前
年度よりの防衛関係費の剰余金は八百億くらいになると計算いたすのであります。而も本年は
防衛費は千三百七十三億、およそ前年よりも百四十億の増とな
つておりますが、厚生省
予算は七百三十二億、およそ二十億の増加とな
つております。私は
吉田内閣の
政治感覚がすでに十九世紀的の残存物であると断じまして、かかる無謀な
予算を組んでおる国は
日本以外には断じてないと信ずるものであります。すでに
昭和二十五年の十月に社会保障
制度審議会の勧告もあり、第十二、第十三
国会においても、衆参両院は社会保障推進に対する決議を行な
つておるのであります。我々は
政府が社会保障
制度の実現を急ぐべきことを心から強調いたすものであります。
次に、住宅問題であります。
昭和二十七年四月現在、
全国住宅不足数は三百万戸であります。右のほかに年年の新規需要増加が三十二万戸であります。然るに戦後の住宅建築数は、
昭和二十三
年度の七十四万戸を最高として、次第に減少し、二十七
年度、二十八
年度はおよそ二十七万戸であります。この
程度では年々の自然増加を賄うことさえ不可能であります。現在のままでは、数の上から見ただけでも、住宅問題は絶対に未解決であります。住宅の民間
自力による建築も二十二年から二十四年にかけて最大の比重を占め、総建築数の約八〇—九〇%を占めてお
つたのが、その後現在においてはすでに五五%に下
つております。今日では住宅不足の焦点がいわゆる借家階層に集中しておることがわかるのでありまして、来
年度の
予算を見ますと、住宅
対策費は前
年度より三億四千万円減少しておる。而も住宅
金融公庫、勤労者更生住宅を合せて国全体で十万三千戸の家が建つことになるのでありますが、このようなことでは全く住宅問題は解決できないのであります。我が党はつとに住宅建設十カ年
計画というものを発表しておるのでありますが、然るに
政府は無
計画に住宅問題を取扱
つておるのであります。住宅
政策こそは、
国民の基本的な生活を守り、生産意欲の培養を図る平和建設の基本的なものであります。建設
大臣は如何に住宅問題を考えておられまするか。御
答弁を願いたいのであります。
昭和二十六年を通じまして東京都内の商業用建築物の内訳を見ますると、銀行だとか、事務所、旅館、待合、料理屋、貸席、娯楽機関などの工事費と、全住宅用建築物の工事費はほぼ同額とな
つております。二十七年、八年は、不急の建築物は更に激増しておると想像されるのであります。而も延面積は、前者のそれは後者の約三分の一でありまして、この事実は、不急の、而も
経済自立に何ら寄与しないものであるが、巨額の資金が浪費されておるのであります。この事実を
政府は何と見るのでありまするか。
政府は、かかる建築物に強い制約を加える意思がありや。併せて建設
大臣の
答弁を伺いたいのであります。
次に、引揚問題について首相並びに外務
大臣に
お尋ねいたします。
昭和二十八年八月一日現在、ソ同盟に一万二千七百名、中国に三万九千四百名、千島・樺太に千七百名、朝鮮に二千六十一名、合計五万六千名の同胞が、生存の資料がある未帰還者として外務省は発表しております。昨年八月以後、中国から六千八百名、ソ同盟から八百十一名の人々が帰
つて参りましたが、これらの人々を除いて、なお五万名の人々がこれらの地に生存してお
つたということになるのであります。然るにソ同盟赤十字社の発表によりますると、中国に送られました九百七十一名を除いて、戦犯千四十七名がソ同盟に留ま
つていることが明らかであるが、なおこれらのほかに、一般邦人が如何ほどおるかわからんと
言つております。生存の資料があ
つた人たちだけでも五万余であるが、これらの人々の消息を知るために、
政府は如何なる
対策を講じておるか、又将来いつ帰
つて来るか、その
見通しについて
お答えを願いたいのであります。中国の
人たちの帰国は、
日本赤十字社その他の団体の斡旋によるものであり、ソ同盟からの戦犯の諸君の引揚については、大山郁夫参議院議員の訪ソを機会として実現しておるのであります。これらの国からの引揚については、
政府は全く無力であ
つたのであります。(
拍手)父や兄弟や息子が、十年の間指折り数えて待
つております心情から申しましても、人道上から申しましても、問題は極めて重大であります。国交の回復しないことと未帰還者引揚の問題は、全く別個のものであるべきでありまして、(
拍手)
政府は何らの努力もしていないではないか。ソ同盟から中国に送られた九百七十一名の戦犯の諸君の帰国の問題と重要な関連があり、先に中国からの引揚について尽力を惜しまなか
つた中国紅十字社社長李徳全女史の招聘の問題については、一昨日同僚相馬議員から
質問いたしましたが、外相の
答弁は極めて不誠意であります。一日も早く同女吏を招待するための努力をするというころの明確なる
答弁を願いたいのであります。(
拍手)私は、首相が引揚問題につきまして如何に具体的に
対策を講じて行くか。留守家族の名において
答弁を求むるものであります。
二十七
年度の
輸出入を見ますると、およそ八億ドルの赤字がございます。その赤字は
特需その他で賄
つて来たことは御承知の
通りであります。而も
輸入の大きい部分を占めるものは食糧でございまして、この食糧問題は我が
日本にとりましても重大な問題でございまするが、このただでさえ不足しておる食糧は、而も年々増加いたしまするところの人口増加によるところの不足によりまして、食糧の不足に向
つて根本策を立てることが、
経済自立のためにも、又
民生安定のためにも最大急務であります。二十四年以来、
吉田内閣が土地改良、開墾、干拓、耕種改良等に投じて参りました
予算は千億に達するのであります。その
増産効果は土地改良だけでも三百五十万石と言われておりまするのでありまするが、人口増加や
農業災害等があるとは言え、
政府の産米の
供出割当は減額される。反対に
輸入食糧は、二十四米穀
年度は砂糖を含めて二百二十万トンであ
つたものが、二十七
年度には三百六十八万トンと増加しております。今日まで
昭和二十四年から約一千億の巨額の投資をしながら、
増産効果は一体どこに現われておるのでありまするか。この点について
農林大臣及び
経済審議庁長官の明確なる
答弁を求めたいのであります。この巨額の
経費を注ぎ込みながら
増産効果を挙げ得ないのは、
自由党政府の
農業政策が都市資本の蓄積をやるために、
農民には、低
米価による
供出と過剰人口を背負わせて、
農家経済に重圧を加えており、他方、
政府の
食糧政策が全く定見なく、常に動揺し、無定見を暴露しているものと言わざるを得ないのであります。(
拍手)更に
政府は、現実に米の統制撤廃が不可能であるに拘わらず、今にも統制を外すがごとき無
責任な宣伝をして参りました。この無定見極まる
政府の
態度が、多額の国費を
食糧増産に注ぎ込みながら、その成果を具体的につかみ得ない結果を招来したもので、
政府の
責任は重大であります。
保利農林大臣の
責任ある
答弁を求めたいのであります。
私は今日、従来のような総花的な
予算の組み方ではなしに、重点的に而も短期間に完成する耕地の拡張に努力いたすべきだと思うのであります。
農林大臣はいろいろ
答弁しておられまするが、もつと具体的にあなた方の
計画をお示し願いたいのでありまするし、又そのような
計画を実行に移す意思ありや否やを承りたいのであります。
食糧増産費は、今
年度は九十億円の復活が認められましたけれども、それでも、
食糧増産費は二十八
年度をひどく下廻
つております。
外資の導入によ
つて食糧増産費を賄うつもりだと
言つておられまするが、果してこの方面に
外資の導入は可能であるかどうか。明確に
答弁を願いたいのであります。
保利農林大臣は、二十九
年度予算で
輸入食糧補給金が大幅に
削減されましても、二十九米穀
年度においては現行配給量を確保できると
言つておりまするが、果してそのような確信がありや否やを承わりたいのであります。併し
輸入食糧価格差補給金を二百十億円減少して九十億円にいたしたのでありまするから、従来多量に
輸入して参りました外米は大幅に
削減しなければならないことは自明の理でありまして、そのようになりましたときに、米を主食とする現在の食生活の実態に鑑みまして、全く準備なくして麦食に移行いたしますことは、大衆の生活に
犠牲を要求していることになると思うが、
農林大臣は如何なるお考えでありまするか。
答弁を願いたいのであります。
次に、
物価の問題であります。
大蔵大臣、
経審長官は、来
年度は年間平均五%、二十九
年度末現在では一〇%の
物価引下げを見込んでおられまするが、果してそのような
具体策ありや否やを先ず伺いたいのであります。又
政府は、電力料金、
鉄道運賃の値上げを絶対に行わないつもりであるかどうかもお伺いしたいのであります。併し一月一日からの米の値上げをきつかけに、種々の必需品がうなぎ上りに上
つております。更に税制の改正によるところの間接税の増徴となり、今日までにじりにじりと生活
物資の値上がりを来たし、家計を著しく圧迫しているのであります。
輸出の振興こそは、
我が国経済自立のための前提条件であることは勿論であります。而して三、四割の国際価格との差をなくすることでありまするが、果してその
具体策ありや否やを承おりたいのであります。このたびの
予算を見ますると、種々の基幹産業への財政融投資が著しく
削減されております。炭鉱、鉄鋼の近代化はそのために中断の止むなきに
至つております。そうして業界に大きな混乱を引き起すことは必定であります。電源開発、ソーダ、合成繊維などのこうした産業の近代化は一体どうなるのでありまするか。設備の近代化を中絶さして、如何なる方法でコストを
引下げるかを伺いたいのであります。我が国産業の近代化は、戦後直ちに行わねばならなか
つたのに、朝鮮事変の勃発を神風と呼んで、無
計画なインフレ
政策をと
つて来た
政府の
責任は重大であります。(
拍手)而も今日にな
つて、忽然としてデフレ
政策に転じ、自己の
責任を自覚せず、大衆に無慈悲な
耐乏を要求するに至りましては、
MSA援助に伴う軍事
予算と批判されても一言の弁解もできないではありませんか。若し
政治的
責任を吉田首相が知るならば、当然辞職すべきと思うが、如何でありましようか。
このたびの
予算は、保安庁のみがほくそ笑んで、あぐらをかいているということ、そうして
吉田内閣が、大衆の
犠牲において、再
軍備を至上命令としながらも、
経済自立の根本策は何もないということを暴露しているのであります。(
拍手)
国民は、
吉田内閣が何年も続いて、そのうちに自分の国が亡びたということを我慢することができないのであります。首相は如何に
政治的
責任を感じておられるのかどうか。
経済自立に対し如何に
見通しておられるかどうかをも伺いたいのであります。
以上を以て私の
質問を終るのでありまするが、首相初め
関係閣僚の明確なる
答弁をお願いするものであります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕