運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-01-28 第19回国会 参議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年一月二十八日(木曜日)    午前十時十三分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第五号   昭和二十九年一月二十八日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  日程国務大臣演説に関する件(第二日)  昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。高木正夫君。    〔高木正夫登壇拍手
  4. 高木正夫

    高木正夫君 私は、五つの点につきまして、首相並びに関係各大臣にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  その第一は、憲法改正の問題についてであります。  総理は常に憲法改正せずと言つておられます。憲法は軽々に改正すべきものでないと言つておられます。これは誠に御尤もなお説であろうと思うのであります。憲法は国の基本法規でありまするから、軽々に改正すべきものでないということは当然であります。併しながら、憲法第九十六条は、憲法改正の手続に関しまして、「憲法改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を得ること」と規定しておりまして、憲法改正国会が発議することになつております。総理憲法改正しないと言われる場合、如何なる意味で言われておるのか。この点を先ずお尋ねをいたしたいと思うのであります。  次に、この「発議」という文字について二つの説がありまして発議ということは、憲法改正案国民投票に向つて発議するという意味であり、憲法改正案提出権とは別の問題であります。そうして憲法改正案提出権について、国会にばかりあるという説と、国会内閣の両方にあるという説がありまするが、総理はいずれの説をとられておるのか。この点をお伺いいたしたいと思うのであります。  更に、総理憲法改正しないと言われておる場合に、第九条の戦力放棄の個所についてのみ改正しないと言われておるのでないかと思われるのであります。保安隊は軍隊ではある、が、併し戦力を持つてはいない、憲法に許された範囲内のものであるなどと苦しい答弁をされるのも、結局のところは、第九条の第二項に関する限りは憲法改正しないということを表明しておるに過ぎないと思われるのであります。どうも今までの行きがかり上、今更憲法改正するというようなことは言えなくなつておるのではないかと思うのであります。併しながら、今日憲法改正が論議の対象となつておりまするのは、決してただに第九条の問題ばかりではありません。勿論、憲法改正が問題にされ出しましたのは、主として日本防衛力の増強と絡みまして、第九条からであることは申すまでもありませんが、今回憲法改正日本国民の対決すべき根本問題として上程されて来た最大の理由は、それは米国に押し付けられた憲法であるから、日本が独立した今日となつてはこれが改正は当然のことであるということであろうと思うのであります。敗戦のどさくさ紛れに、将来に対する慎重なる検討にも十分なる時間的余裕もなく、僅々百余日の審議でこの日本国憲法はでき上つたのであります。それ故に、今日の日本の実情に照らしてみますれば、実際と適合しがたい点が多々あるのであります。日本の現実に対して憲法のほうが、ずれている個所はたくさんあると思うのであります。  今簡単にそれらの点を列挙してみますれば、先ず第九条の戦力放棄の規定から始まりまして、参議院の制度、衆議院の解散権の問題、最高裁判所の問題、解散の際に予算不成立の場合の問題、地方自治制度知事公選の問題、予算増額修正議員立法問題等改正を必要とすると指摘されておる諸点は実に多岐に亘つておると思うのであります。すでに総理もこれらの諸点については、その欠陥について多大の関心を持たれまして、内閣法制局に命じて改正点の検討を進めておられるということを聞いております。或いは又、経済団体役員会の席上で、或いは又記者団会見におきまして、これらの諸点について鋭い批判を下され、大きな不満を表明されておることは周知の事実であります。  今日、国家財政が無軌道に膨張し、地方自治体が無制限に国家に依存し、陳情政治が跋扈し、官紀が紊乱し、行政事務能率が低下する等、これらの憂慮すべきもろもろの事実は、その原因の一半が現行憲法の規定のうちに存在しておることは明らかであると思うのであります。これらの諸弊害は、このまま放置すれば由々しき問題となるばかりでなく、今にしてその原因を追究して、若しも憲法の規定にして是正すべき必要がありとすれば、当然適当な機会にこれをなすべきものと思考されるのであります。第一次大戦後、各国は競うて民主主義憲法を制定いたしましたが、その大部分の国は数年を経ずしてこれを改正していると言われております。それは皆それらの諸国の実情に副わない高度の憲法を急いで制定いたしたが故に、僅々数年にして現実と憲法との調整が必要となつて来たからであろうと思うのであります。そこで先ず、総理憲法改正しないと言われる場合、現行日本国憲法日本の現状に適合しているから改正しない、つまり第九条以外の個所も全部このままでよいとお考えになつておられるのかどうか。その点を総理にお伺いいたしたいと思うのであります。  第二に、防衛計画保安庁法改正についてお尋ねいたしたいと思うのであります。  政府防衛計画並び保安庁法改正は、今までの保安隊間接侵略に対抗することばかりを任務としていたに対しましてこれを直接侵略にも対抗して戦い得るというような任務を規定し、同時に陸海空の三軍を整備する防衛計画を立てているようでありまするが、それが軍隊であつて戦力ではないなどという遁辞は別といたしまして、そもそも漠然と、直接侵略があればこれと戦うんだということとあらかじめ有事に備えて、戦闘部隊を編成し、装備し、訓練しておくということとは、おのずから別観念であろうと思うのであります。侵略の可能性を想定して、あらかじめこれに備えておくということであれば、当然、軍の命令系統、動員、編制、用兵、作戦或いは停戦、講和等の諸問題を明確にしておかなければならないと思うのであります。旧帝国憲法は、この点に関しまして、統帥権内閣から独立せしめて天皇に直属せしめていたので、政治と軍事は全く別々になり、軍は独立した権限を持うていたので、遂に無謀な戦争に突入て敗戦の悲惨なる状態を招来したことは、ここで今更申上げるまでもないことであります。然るに、新憲法は国を国権の最高機関として一切の権限国会に集約されることとなつており、この点に関して国会内閣との関係将来如何にする構想を政府はお持ちなつておられるか、その用意と構想について政府お尋ねをいたしたいと思うのであります。将来、日本が自衛のために軍隊を持つこととなれば、再過去の誤まりを繰返さないために、この軍の統帥系統、即ち宣戦、徴兵、動員、軍編制、作戦、用兵、講和、軍法会議等の諸問題について既成事実がどんどん進んでおりまする今日、今から明確なる見通しを持たなければならないのではないでしようか。この重大問題関しまして、これを安易に考え、その結果の深刻性を等閑にして、徒らに既成事実を積み重ねて行くならば、再び過去の軍国主義の轍を踏む結果となることは明瞭であります。この点に関して政府は如何なる用意と構想をお持ちであるか。総理並びに保安庁長官お尋ねいたしたいと思うのであります。  第三点としてお尋ねいたしたいのは、予算関係についてであります。  政府は声を大にして緊縮予算を提唱しておられまするが、このことは誠に御尤もなことでありまして従来のごとき野放図なやり方では、まさに危殆に瀕せる我が国経済を救うことはできなく、今にして、政府と言わず、国民と言わず、一致協力してこの経済国難に善処せねばならぬと痛感いたすものであります。併し吉田首相は、ややもすれば、かかる経済情勢にまで追い込んで参つたのは一に国会の責任であるがごとき言辞を弄せられるやに承わつておりますが、これは誠に遺憾に存ずる次第であります。もとより我々国会議員といたしまして、予算審議に参画いたしました以上、その責任を感じ、反省を怠るものではありませんが、第十六国会、第十七国会並びに第十八国会の推移を顧みまするならばおわかりになる通り政府の責任こそ一層大なるものがあると私は信ずるのであります。併し今更かかる死んだ子供の年を数える愚はいたしませんが、政府といたしましても、今後内外の圧力に屈することなく、今後我が国経済が自主的に十分立ち直るまで、大いに戒心してこの緊縮予算を堅持して頂きたいということを切に要望するものであります。  次に、予算規模を一兆円内に圧縮するために、首相並びに関係閣僚各位が非常な努力を払われたようであります。尤も詳細に検討すればどうかと思われるほどの技術的操作の苦心も見られまするが、これは本席では申上げないことにいたしまして、とにもかくにも一兆円以内に収めたということにつきましては、私はここに敬意を表しておきたいと思うのであります。併し我々は一兆円に収めたということだけに満足するものではないのでありまして、要はこの一兆予算の内容と運用とが問題であります。即ち、この予算が生きた方面に使われるか、死んだ方面に使われるか、どういう政策に重点を置いて使われるかどうかということであります。我が国経済を立て直すための生産方面に使われるか、民生安定のために寄与するようになつておるかどうかということが問題であろうと思うのであります。この観点からいたしまして、かねてより吉田首相の言われておるがごとく、国際的に平和色彩が漸次濃厚になりりつつある今日におきまして、何故に、一方に国民に対し耐乏生活を強いながら、最も不生産的な防衛費並び保安庁費を従来の負担よりも更に莫大に増加せねばならぬか。(拍手)恐らく国民の大多数が疑うものであろうと思うのであります。少くともこの一年間くらいは、極く少し、せめて半分くらいの増額でとどめておいて、あとは民生安定に使つたらどうかという考えを一般に持ちがちであろうと思うのであります。この点は政府は苦しい立場にあるようにおぼろげながら想像されるのでありますが、由来愛国心に富む我々国民は、その事情を明確にさえすれば政府に協力し、政府と共に苦難に耐え、心から進んで自主経済再建のために努力を惜しまないと私は思うのでありまするが、この点に関し、吉田首相の御所信を率直にお聞かせ願いたいと思うのであります。  第四点としてお尋ねいたしたいことは、行政整理についてであります。  申すまでもなく、今日我が国民の最も苦しむところのものは租税の重課であろうと思います。これを救うことは、単に民生安定を来たす直接の手段であるのみならず、間接に低物価の要因となるものと考えておるのであります。それ故に租税の軽減を図ることは最も重要なる施策となるわけであります。併しそのよつて来たる源をただせば、結局、一国を治める政治に、どうしても今日それだけの金が要るのであるから、その金の多くかからぬようにすることは、何よりも先ずやらねばならんこととなつて来ます。そのうち、何と言つても最も手取り早く又最も効果の上るものは、先ず行政整理であろうと思うのであります。政府におかれましても、つとにこれに着目せられまして、すでに昭和二十四年と二十六年との二回に亘りましてこれを行なつたのでありまするが、御承知の通り、いずれも殆んど骨抜きになつてしまい、所期の目的を達することができなかつた。更に又、今年もこれを行おうとしておるようでありますが、今年は果して成果を収め得る確信がおありになるのかどうか、行政管理庁長官にあえてお尋ねを申したいと思うのであります。行政整理はしかく簡単なものではない。例えば天引制度を何遍も繰返してやつている間にだんだん減るように容易に考えられておられるのは、人情の機微に胚胎するところの情実のあることを忘れておるのと、やり方に無理のあることに気が付かない人々の考え方であろうと思うのであります。大体我が国においては、政府国民の世話を一体やき過ぎる。否、ともすると干渉し過ぎておる程度にまで私は来ておると思うのであります。同時に、我々立法府にある者といたしましても、むやみやたらに法律を作ることは大いに反省しなくてはならんかと私自身は考えております。法律が出れば更に詳しい省令が出て国民がこれを知るのにまさに汲々としておる。そうして法律や政令が出るたびに、いつの間にか役人の数が増して行くのも、これは当然のことであろうと思います。それ故に、行政整理抜本的方法は、結局、国家事務を減らすということに帰着すると思うのであります。国家事務をこのままにして残しておいて、単に役人の数を減らすというようなことは、残つた役人に非常な過重負担をかける無謀なやり方であると言わざるを得ない。かかる観点からいたしまして、すでに国民の自由に任してもさして弊害のない事務も多々あることと思われまするし、又強固な民間団体に任せて少数の役人がこれを監督しさえすればいいような国家事務が、つぶさに調査すれば相当あることを疑わないのであります。例えば自動車月賦売買の場合におきまして、従来は商習慣といたしまして、いわゆる譲渡担保として取扱われておつたのでありますが、稀にいざこざが起きるというので、自動車抵当法なる動産担保法作つたのであります。これにはかく言う私も参画いたしまして、誠に大いに反省をいたしておるのでありますが、やつてみた結果、これが利用は今日極く微々たるものでありますが、これがために自動車登録制というものが生れまして、結局六十万台と言われる多数の自動車の戸籍が作られた。それで移動ごとにこの登録簿に記入するために、全国でおびただしい役人を使わねばならんことになつたのであります。かかる事務民間団体でも少し監督さえすればでき得ることであろうと思われるし、又、自動車定期検査の、ごときもそうであろうと思うのでありまするが、かくのごとき事務は、各省を通じてまじめに精査すれば頗る大きいものであると私は思うのであります。又公共団体に任すべき国家事務も相当あることと思われます。即ち国家事務地方事務の配分問題でありまするが、これについてはすでに研究しておると聞いておりまするが、その後一体その結果はどうなつたのか、伺いたいのであります。ただこの際、地方事務が増して、地方負担が多くなるようなことでは同じことになりますから、この点は目下政府において着々手を打たれておるところの町村の合併を急速に促進せしめまして、地方公務員の数なり議員の数なりを、従来の合計数の半分ぐらいにとどめるよう、然るべく手を尽すことが極めて必要だと思うのでありますが、政府は私の申上げたようなことにつきまして思い切つた抜本的の策を立てる意思がないか。行政管理庁長官は如何に私のこの際申上げたことについてお考えになるか。御所信を承わりたいのであります。  なお、もう一つ行政整理について申上げたいことは、同じ系統の事務が各省に跨がる場合でありまして、この場合、各省間に積極、消極の権限の争いとなりまして実に事務渋滞を来たし、国民のみが非常な迷惑をこうむつていることは実におびただしいのであります。これは結局、各省局課の配合なり機構の改正となつて、実に面倒なことではありまするが、根本的に十分に検討して、或る点に達したらそれこそ思い切つてこれを強行する英断が望ましいのであります。聞くところによると、これ又相当長く政府で研究されているようでありまするが、未だその結論を得ないのかどうか。或いはこれはもう諦らめて放棄したのか。その辺の模様も又併せてお伺いたしたいと思うのであります。  第五点として質問いたしたいことは、道路の問題であります。  昨日の施政方針で珍らしくも道路のことが出て参りましたので、いささか意を強うしましたが、まだ少し物足らないと思いますので、附加えてお尋ねをいたしたいと思うのであります。およそ一国の産業を勃興させ、文化の発展を期する最も根源となるものはエネルギー源、即ち動力源と、運輸交通であろうということは、今更私の申上げるまでもないことであります。終戦後の我が国はいわゆる特需景気にあおられまして一時生産が活発化された際に、動力の不足を来たし、今までのごとく石炭一辺倒では到底いけないことがわかり、にわかに慌てて電源開発に取り掛り、貧乏世帯のやりくりをして莫大なる資金を投じて、朝野の識者がこれに狂奔している有様であります。今から三十年前に声を大にしてこれを叫びました京都大学戸田博士は、恐らく地下で今日の状態を笑つておられると思うのでありますが、それはともかくといたしまして、これを強力に実現しつつあることは誠に結構なことであります。併しこれと車の両軸をなすところの運輸交通、特に陸上交通については、その国民経済に及ぼす影響度の認識が政府部内において極めて薄弱であるということを常に遺憾に思つておるものであります。と申しましても、百陸上交通については鉄道輸送道路交通とありますることは御承知の通りでありまするが、鉄道輸送につきましては、我が国としましては、諸外国に比しても遜色のないまでに異常の発達をいたしておりまするが、……尤も経営が上手であるとか下手であるとかいうことは別問題でありますが、道路並びにそれに伴う交通は実に貧弱そのものであると評せざるを得ない。常日頃切実に響いて来るものではないためか、とかく粗略に取扱われて来て今日まで我が国の産業の発達と文化の向上にブレーキをかけて来たことは計り知れないものがあると確信するものであります。そこで私辻総理大臣並びに関係大臣お尋ねいたしたいことは、道路に関して如何なる認識と抱負と計画とをお持ちになつておるかということであります。第二点として申したいのは、過ぎ去りしことはいたし方ないといたしましても、今後の我が国陸上交通として、鉄道に将来とも重点を置いて行かれるのか、それとも跛行状態に陥つているところの道路政策に重点を置かれるのか、この二点を承わりたいと思うのであります。  第三点としてお尋ねいたしたいことは、私の考えるところによれば、鉄道線路の延長は大体この辺で一旦打切るべきものでなかろうか。難しい資金を投じて、あえて新らしい新建設線を設ける、ごときは全く愚策で、恐らく外国の識者の笑いを招くものであろうと思うのであります。すべからくその鉄道敷設の約十分の一にも足らない費用でできる道路を敷いて、そうして、ハス、トラックによりその効果を挙げ得るものと確信するのであります。政府は従来からある鉄道の効率を上げる短絡線、その他すでに大部分着工せる線路を除きたるすべての新線を、思い切つてこの際切り捨てる気持があるかどうか。由来、建設新線に対しましては、いろいろの事情が伏在すると思われますが、国家百年の計のためにこれが打切りの勇気があるかどうかを承わりたいのであります。  第四番目にお尋ねしたいことは、昨年国会を通過しました道路整備費財源等に関する臨時措置法に基きまして、揮発油税収入道路改良に充てることとなつておりますることは御承知の通りでありまするが、承わるところによれば、二十九年度の収入見込額が二百三十七億になつておりまするが、そのうち百五十一億を道路費に充てあとの八十億ほどを交付金として地方に廻すということでありまするが、たとえこれが道路費に使えという紐付でありましても、果して実行できるかどうか甚だ疑問であるのみならず、形式上、私は明らかに法律違反であると思うのでありまするが、この点の政府の御見解を承わりたい。  最後にお尋ね申したいことは、我が国道路は、世界中で、いわゆる国らしい国の中で最も悪いと言われておるイタリアにも遠く及ばないのでありまするが、一体、道路について政府はどういう今後の計画を打ち立てておるのか承わりたい。聞くところによれば、我が国のこの一級、二級に属する国道を全部改良を施し、そのうち一日に車両五百両以上が通過する部分に鋪装を施し、そうして橋梁をも永久橋にするということになりますると、建設省の調査によりますれば、実に二兆八千億を要するとのことでありまするが、若し然りとすれば、毎年二百億円ずつ資金を入れるといたしましても、約百四、五十年かかることになると思うのであります。百年河清という諺がありまするが、それ以上に気の長い話だと考えるのであります。尤も、道路の改良によつて直接的には車両に関する損失額が相当莫大に助かるのみならず、間接的には資源開発や産業に裨益するところ極めて大でありまするが、これを別といたしましても、車両の増加によつて税収入が加速度的に増加しまするのは自明の理でありまするから、前に申上げました年数も相当に短縮せられることは考えられるわけであります。つきましてはこの際、抜本的に思い切つた道路行政に関する措置をとられる意思があるかどうかということを承わりたい。例えば今回のMSAの援助によつて、一般的な経済援助は得られないにいたしましても、道路政府国土防衛計画などとも密接な関連があるのであるから、これとからみ合せて、米国から援助される金を、一石二鳥の使い方ができるような交渉はできないものかどうか、政府の所信を承わりたいのであります。  以上により私の質問を終りまするが、政府といたしましてはでき得る限り詳細に御答弁をお願い申上げたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  私がしばしば憲法改正はしないと言うことについてのお尋ねでありまするが、お話通り、私の憲法改正しないと申す場合の多くは、憲法九条に関する場合であります。再軍備はしない、或いは防衛力漸増はするが、これを以て直ちに戦力に至らしめないから、憲法改正する必要はないと、こう申しておるので、これは私の憲法改正はしないという個々の場合をお調べになればわかると思いまするが、お察しの通り憲法九条に関する場合が多いのであります。然らばこの憲法改正する必要がないか。これは、この憲法なるものはお話通り国基本法でありまするからして、軽々になすべきものでなく、又輿論が憲法改正を必要とするときに至つて考えべきものであると政府考えておるのであります。故に私は、今日憲法改正の必要ありや否やということは別問題といたしまして、この憲法は国の基本法であるから、軽軽に改正すべからざるのみならず、憲法あり方等については絶えず研究いたすべきものと考えておるのであります。  又防衛計画についてお尋ねでありますが、御承知通り今日は日米安全保障条約によつて日本防衛計画は立てられておるのでありますが、米国政府としては、予算の縮減の方針のために、日本に駐屯しておる米国軍についても引揚げたいという考えを持つており、従つて日米安全保障条約によつても、米国駐屯兵は漸減する、日本防衛力漸増するということが条約に明記されておるのでありますから、米国駐屯兵力を漸減したいという場合には、我々は自然、漸増考えなければならなくなるのであります。このために二十九年度の予算においてもこれに対応するだけの保安隊漸増考えております。併しながら、これが直ちに、再び申すようでありますが、戦力に至らしめないだけの用意はいたしております。委細のことは予算案によつて研究を願いたいと考えております。  又、統帥権についてのお尋ねでありますが、今日我々の考えておりますことは、旧憲法における統帥権のような問題は考えておりません。海陸自衛力漸増いたし、空軍等も多少の措置をいたしますが、併しながら、この場合、自衛軍指揮監督総理大臣にあると考えておるのであり、又旧憲法におけるような独立した統帥権というような考えは持つておりません。  行政改革についてのお話でありますが、これはかねて私が政府として申しておりまする通り行政は簡素化したい。行政簡素化によるにあらざれば、行政整理なども完全に理想的の行政整理はできませんから、機構簡素化については十分考えており、又お示しのような事務各省に跨がつておるような事務についてはどうするか、これは研究いたしまして行政簡素化の線に沿うて努力いたすつもりでおります。  次に、予算の一兆円にとどめることについては、しばしば申しております通りその必要があり、今日においては是非ともインフレ防止のためにこの線を守らなければならんと考えますが、そのために、防衛費のために、ほかの費目、殊に中小企業とかいうような、国民の経済生活に関するものについて、その圧縮の結果、影響をこうむるようなお尋ねでありますが、この点については、政府としては相当の用意をいたし、中小企業その他については特に配慮をいたしておる考えであります。委細のことは予算案によつて御研究を願いたいと思う。  又、道路交通鉄道についてのお話でありますが、鉄道拡張は、今日において打切るべきものとは考えてはおりませんが、併しながら新線の多くは、これは収支償わない鉄道が多くありますので、今日のような財政の窮屈な場合においては成るべく繰延べたいという方針であります。併しながらそのために、交通政策日本交通政策を疎かにしておる考えはないのでありますが、道路についてはますますこれを拡張したいと考えております。  その他の点は主管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  6. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 統帥権の問題についてお答えいたします。  私は、政治は軍事に優先するものなりという考えを持つております。(「勇しいな」と呼ぶ者あり)従いまして、将来自衛隊が創設された暁におきましても、その指揮監督は、内閣の首長である総理大臣がこれを持つべきものなりと考えております。又軍事行政については時の内閣がこれに責任を負うべきものと、私はこう考えております。  なお、将来自衛隊が仮に出動する場合がありましても、その出動については、原則として国会の承認を先ず要すべきものという建前をとるべきだと考えております。ただ緊急止むを得ざる場合においては、時の内閣総理大臣が一応命令を発動する。その命令を発動した場合においても、事後において国会の承認を受くべきものであるという建前をとるべきだと、こう考えております。    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  7. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 高木議員仰せのごとくに、今度の緊縮予算は、インフレを防止すると共に、これによつて物価の引下げ、国際収支の回復を図り、以て我が国の経済自立を図らんとするにあるのでありますから、その目的を達成しますために、飽くまでこれを貫徹する方針、覚悟であります。  予算のうちに防衛費が若干増額を示しておりまするが、この程度の防衛費は、独立国としては必ずしも多額ではないと考えておる次第でございます。  なお、予算重点的配分によりまして国政の執行に遺憾なきを期しており、又緊縮予算に伴いまする起りやすき摩擦等につきましては、極力これを避ける措置を講ずる所存であります。(拍手)    〔国務大臣塚田十郎君登壇拍手
  8. 塚田十一郎

    国務大臣(塚田十一郎君) 行政改革を抜本的に是非ともやりたいという強い考え方のございますことは、只今総 理からお答え申上げた通りでありますが、今度の行政改革におきましても、機構の簡素化と人員の整理ということの二本建にして考えをいたしておるわけであります。  この二本は、勿論相互に関係があるわけでありますから、大体そのように目標を立ててやつており、機構の簡素化におきましては、勿論、中央地方を通じて現在の機構が戦前などから比べてかなり大きいということを頭に置きまして、できるだけこれを小さくしたいという考え方、従つて部局の整理、それから殊に目立ちますのは、課、係か非常に膨脹しておりまするので、こういうものを成るべく少くしたいという考え方を以て検討いたしております。  又、出先機関なども非常に殖えておりますのでありましてこれは今日のこの地方自治体のあり方そのものとも関係をいたしておるように考えられますので、それらのものと関連しながら、国の出先機関の整理ができないかということを検討いたしております。それから人員整理につきましては天引をやつては無理だという考えは、正に私どももその通りでありまして、そうでないように鋭意努力をいたしているわけでありますが、ただいろいろ検討いたしてみますと、やはりこの整理は、例えば今度の整理におきましては、この人員整理の前段階としまして法令の整理、それからして縦に重複事務の整理、横に共管事務の整理、更に陳情行政が非常に目に余るようになつておりますので、こういうものも何とか直すことができないかというようなことについて目星を付けて、目標を付けて検討いたしているのでありますが、例えば法令の整理をいたします。若干の法令が整理される予定になつておりますが、その法令の整理ができましても、実はその法令の整理からしてどれだけの人間が整理できるかという横の連絡が、なかなかこれは今の予算の編成の方針によりまして付きにくい、そういうような関係が、この重複事務の整理、共管事務の整理をいたしましても、やはりあるわけであります。結局におきまして人員の整理は、或る程度は天引という形にはなつておりますが、ただ天引をやりつ放しというと、非常に後に無理が残りますで、天引の形の整理を一応考えておりましても、その裏付けになるように、天引が無理に陥らぬようにという考え方で、只今申上げましたようないろいろな事項を併せて強力に検討してこの実現を期しているわけであります。  なお、法令の整理におきましては、御指摘のように、民間に任せられるような仕事が相当あるのじやないかと考えられますので、そういうものは成るべくこの機会に国家事務から民間事玖に移したいという考え方で検討いたしております。(拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎君登壇拍手
  9. 戸塚九一郎

    国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申上げます。  道路産業の基盤として極めて重厚なものであるということは、只今御指摘の通りでございまして、政府もその点については十分認識を持つておるつもりであります。殊に我が国の現在の道路が、最近の車の激増、並びに大型車、重量車が非常に多くなつたというような関係から、たださえ不十分な道路が一層補修を要する面が多くなつてつて、誠に困難をいたしておる状況であります。二十九年度の予算につきましても、政府としては、この緊縮の際であるのでありますけれども、最も重点を置いて多少の増額をみておるようなわけであります。勿論これは甚だ道路の面かけからみれば不満足なものではございますが、その点は時節柄止むを得ないと考えるのであります。ことに御指摘もございましたが、揮発油税……、特別措置法にあります見合いの財源による計画も、建設省としても逐次計画いたしておつたのでありますが、このたびは地方財源の関係等からして只今お話のありましたように三分の一程度を地方に譲与するというような関係になつて参りまして、誠にこの点についても遺憾に考えておるのでありまするが、ただ地方に交付いたしましても、確実に道路の整備にこれが充てられるようにということについて十分の研究をいたしておる次第であります。なお特別措置法についてこの計画が違法であるというお話が、ございましたが、この点については又別の御審議をお願いすることになると考えております。そういうわけで、道路については財源が乏しい。只今やつております、殊に二十九年度までやります特定道路の行き方でありまするが、これは考え方によつては、道路行政としては変則なものであるというふうにも考えられるわけでありますけれども、我が国の現在の実情から考えて変則である、変則でありましても、やはりこの方法は今後継続して参つて少しでも道路の整備をいたすということが必要ではないかと考えております。  なお今後の計画につきましてお話がございましたが、先ほど二兆何がしという需要額があるというお話で、ございましたが、これは道路の整備の方法次第でいろいろに考えられると思いますが、特別措置法に基いて五カ年計画を立てる。建設省において一応の計画を立てておりましたのは、一、二級国道並びに重要府県道に対して、鋪装或いは改修を一応必要な所という見当で、五カ年に改修鋪装をいたしましようと考えましたのは、千七百億ほどになると考えております。これで一応の行き方が差当りではできるのではないかというふうに考えておつた程度でございます。なお今後の道路の整備の計画につきましては、無論、国の財政との関係がありますので、十分に参るということは甚だ困難でありまするが、いろいろの方法を考えて少しでも早く多くの整備をいたして参りたい。これがためには国としての道路の整備についての財源も考えなければなりませんが、又一面には外資の導入とか或いは民間資金の投資というようなことで、この特定道路式のやり方考えて行くことも必要ではないかというふうに、かように考えておる次第であります。    〔国務大臣石井光次郎君登壇拍手
  10. 石井光次郎

    国務大臣(石井光次郎君) お答えいたします。  鉄道がもう相当たくさん全国に網を張つているから、少しくやめてもいいじやないかという意味お話が出ておりましたのでございますが、鉄道が戦争中に非常な大きな被害を受け、又その修復が遅れておりまして漸くこの頃になりまして少しずつ戦前の状態に帰つておりますが、まだ十分ではないので、ございまして私どもとしては、人命並びに輸送の安全というような点から、修復、修繕というようなものに重点を置いておりまするが、新らしい線をやめるということはどうかと思うておるのでございます。本年の予算では初め九十億の新線建設が認められておりましたが、災害等のために七十億にそれが減りまして来年の予算、目下提出されておりまするのは、更にいろいろな財政資金の窮乏のために、新線には二十五億円の予算が見積られただけでございまして、昨年から着工いたしておりまするものを細々とやつて行くだけでありまして、更に新線を加えることはできない状態でございます。これは私どもといたしますると、鉄道敷設法に百数十線の予定が掲げてありまするし、その中にはやりたい線がいろいろあるのでございます。道路だけではどうしても交通は完全でございませんので、輸送の量でありまするとか、距離の関係とか、或いは天候の関係、特に雪の深い地帯では、鉄道によらなければ、自動車輸送を道路によつてやることもできない地帯もあるのでございまして、こういうものを考えますると、将来は財政の余裕のできる限り成るべく新線を重点的にやつて行きたいというふうに思うておるわけでございます。(拍手
  11. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 荒木正三郎君。    〔荒木正三郎君登壇拍手
  12. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 私は日本社会党を代表いたしまして、政府施政方針に対しまして若干の質問を申上げたいと思うのでございます。  先ず第一の問題は平和への見通しでございます。三年有余に及びました朝鮮戦争も、休戦が成立いたしまして政治会議へと進みつつあります。これは、両陣営がその対立を武力によつて解決することは徒らに破壊と荒廃を招くのみであつて、何らの成果も収め得ないのみならず、若し飽くまでも武力によつて解決を強行しようとすれば第三次大戦に発展する危険がある、これは世界の勤労大衆や有識者の堪え得ないところであつて、ここに平和的手段による以外には解決の道がないということが明らかになつたからであります。この朝鮮休戦を契機といたしまして国際外交正常化の希望と努力は、冷たい戦争の継続の中にあつて、これに逆らう大きな底流となつておるのであります。この平和への方向は今後次第に強まつて来るものと考えるのでございます。一月二十五日からベルリンにおいて開かれておりまする四カ国外相会議はその第一歩であり、アイゼンハワー米国大統領が原子力の管理を提唱し、ソ連も又これに応じたことは、全面的な軍縮に進む端緒となるものとして我々は大いに歓迎するところであります。我々は平和への方向を一段と強めるために、日本の平和建設の根本方針を今こそ打ち出すべきときであると固く信ずるものでございます。(拍手)すでにアメリカにおいてもアイゼンハワー米国大統領は、年頭の教書におきまして「現在我々は戦時経済から平和経済への過渡期にある」と述べて、平和経済に移行しつつあることを示すと共に、予算の規模を縮小し、社会保障の充実に乗出さんとしているのであります。そのために防衛費の大幅削減は必至の運命にあると言わなければなりません。(「軍事費は削減しているのじやないか」と呼ぶ者あり)ソ連においてもマレンコフ新政権は、従来の重工業偏重の政策を緩和いたしまして、消費財や食糧の増産、住宅や教育施設の充実、民生安定、福祉の増進を力説いたしているのであります。ヨーロッパ諸国においては、この傾向は一層顕著であつて、平和時に処する諸準備を進めておるのであります。東西貿易の再開について積極的な方針をとつているのは、この現われであると思うのであります。然るに吉田内閣は、本年度の予算において示すごとく、民生安定、経済自立の諸費用を削減し、ひとり防衛費のみが王者の、ごとく君臨しておるのであります。(「怪しからんぞ」と呼ぶ者あり)まさに軍事予算の性格を露骨に現わしておるのであります。世界の国々がそれぞれ平和経済建設の方針を明らかにしつつある際、吉田内閣はMSA再軍備を打ち出しておるのであります。かくては労使の対立はますます激化し、中小企業は崩壊し、失業者の増大となつて現われて来ることは必至であります。かくては「日本はどこへ行く」と言いたいのであります。  そこで、私は首相お尋ねいたしたい第一点は、MSA再軍備政策は、ソ連、中国との国交回復を不可能にするものではないかということであります。周恩来中国首相は、平和中立政策を肯定し、日本との正常関係の回復、不可侵条約の締結の可能性を述べておるのであります。又ソ連においてもマレンコフ新政権は、日本が独立と平和の方向に沿つて措置する限り、ソ連との友好関係の回復ができると提唱いたしておるのであります。我々は、MSA再軍備を望むか、或いは全面講和を図り、アジアの平和と繁栄を望むか、その岐路に立つているものと判断しなければならないのであります。我々は断じてMSA再軍備に反対するものであります。  第二は、東南アジア諸国、特にフィリピン、インドネシア、ビルマ等との賠償問題の解決を困難にするのではないかということであります。延いてはこれらの国々との国交回復にも重大なる障害を来たすのではないかということであります。イギリス労働党のヘヴアン氏はかように申しております。「米国が共産世界の軍事的封鎖戦略の一環に日本を引き入れようとしていることは明らかな事実である。日本がこの政策に加担した場合、その結果は、はつきりしている。極東における白人の支配の手先と目されるであろう。」(拍手)「白人の支配ということが事実かどうかは問題にならない。米国にはそんな意思がないなどと言つてみても始まらない。その結果はアジアにおける民族主義の多くのものを共産主義の側に追いやるであろう」。かように申しておるのであります。(「よく聞け」と呼ぶ者あり)アジアの諸地域は、久しい間、欧米諸国の植民地としてその支配下に呻吟をして来たのであります。その多くは第二次大戦によつて独立を回復したのでありますが、このアジアには、今や欧米の支配から完全に独立しようとする民族運動が熾烈に行われておるのであります。アジアの多くの人人は、日本が欧米の手先になつて、再びアジアに現われて来るのではないかという心配を持つておるのであります。(拍手)MSA再軍備は、まさにそれを裏書きしておるのであります。(「アジアの孤児になるぞ」と呼ぶ者あり)  第三は、沖縄は永久に日本に還らないのではないかということであります。アイゼンハワー米国大統領は、年頭の教書において、「沖繩は永久にこれを保持する」と言つております。これはMSA、日本を最も恐れているものはアジアであります。このアジアの恐怖に応える言葉として、沖縄は日本に還さないと米国大統領をして言わしめたものであると、私は判断するのであります。真に日本がアジアの平和と繁栄のために尽すことにおいてのみ、沖縄は我々の手に還るものと信ずるのであります。(拍手政府は、アメリカ一辺倒の外交政策を是正して中国を含めたアジアの平和と繁栄を基礎とする外交を確立すべきであると思うのでありまするが、首相の見解を伺いたいのであります。今日アジアを考える場合、中国を除外して、その平和についても繁栄についても考えられないからであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  次に、第二の問題といたしましてMSAと安全保障の問題でございます。アメリカはその世界政策といたしまして、武力によつて共産圏と対決する方針をとり、経済的、軍事的援助によつて自己の陣営の拡大強化を図つて参りました。日本に対しても、この政策の一環として、安保条約行政協定によつて日本を軍事基地化すると共に、MSAによる軍事援助によつて日本の再武装を強化し、以て太平洋の防衛態勢を整えようといたしておるのであります。吉田内閣はこの要請に協力する態度を決定して、防衛予算増額を図ると共に、保安隊自衛隊に改め、その性格を一変しつつあります。更にMSA受入れの国内態勢を強化するために、警察法の改正、教員の政治活動禁止等の反動立法を企図いたしておるのであります。かくては、憲法改正、徴兵制への発展は吉田内閣の予定のコースと言わなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)民主的平和日本の建設を目指す我々の断じて容認できがたいところであります。(拍手)我々はMSA受諾に強く反対するものでありますが、以下数点について首相お尋ねをいたしたいと思います。  第一は、先ほども御質問がございましたが、吉田首相防衛力漸増する上と申しております。併しその防衛計画については今日まで発表いたしたことが、ございません。併しながら今回MSA援助を受けるに当りましては、日本防衛計画はアメリカに提示されてあると存ずるものであります。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)私どもはこの際、その吉田内閣の或いはアメリカの要請しておる日本防衛計画について明らかにせられることを要請するものでございます。その防衛計画に基いて行われるアメリカの武器援助の中には原子兵器が含まれているかどうかという問題であります。我々は世界において原子爆弾の洗礼を受けたただ一つの国民で、ございましての問題については重大な関心を持つものであります。又これに対する政府の態度についてもお伺いしておきたいのであります。これに関連いたしまして、日本防衛計画の中には原子兵器を持つ計画があるかどうかということであります。これは、本年度の予算の中において原子核の研究に対する予算が盛られていることを見まして、私はその計画があるのではないかという疑念を持つているのであります。その意味においてお尋ねをいたしておきます。第三は、憲法との関係についてであります。相互安全保障法第五百十一条によりますと、軍事経済技術援助を受けるための資格として受入国が六項目の約束をなすことを必要とし、その中には、二国間又は多数国間の条約又は協定に基く軍事的義務の履行と、自国と自由世界の防衛力維持増進のために可能な最大限度までの人的資源及び施設を提供することになつております。これに伴う諸義務は当然日本国憲法に抵触すると我々は判断するものでありますが、政府は如何ように処理しようと考えておられるか。  第四は、私どもの最も考慮している問題でありますが、MSAに繋がる国国がそれぞれ軍備を増強して共産圏と武力による対立を強化して行けば、一体、国際関係は如何ようになつて来るかということであります。これは、今日の国際情勢が示すごとく、又我々の歴史が教える、ごとく対立、ますます激化し、国際的緊張は一段と深刻化するものと考えるのであります。私ども冷たい戦争に悩まされて参りましたものにとつて、今日東西の対立が緩和される、このことが世界平和に繋がる一番重要な問題であると考えているのでございます。(拍手)ここに吉田首相の見解をお伺いしておきたいと思うのであります。  次に、安全保障の方式の問題でございます。MSA再軍備は地域的集団安全保障形式でありますが、この形式は実質的には特定国家群を対象とする軍事同盟にほかならないことは明らかであります。この方式は現在重大な困難に当面し、世界にはこれに代る別個の安全保障方式をとろうとする考えの人も少くないのであります。即ちヨーロツパの安全保障の方式として、イギリス首相チャーチルは新ロカルノ構想を提唱し、西欧とソ連との間に不侵略条約を結び、平和の基礎を固める方式を示唆いたしております。又アメリカでもこの考えは広まりつつあるのであります。アメリカ民主党の大統領候補であつたステイヴンソン氏は、六カ月の世界一周旅行を終えて帰国の後、アメリカ圏の世界と共産圏の世界のほかに第三の世界のあるということを認識し、国際紛争を辛抱強い話合いによつて解決すべきことを説き、対ソ不侵略保障体制を提唱いたしたのでございます。政府日本の安全保障を、安保条約行政協定、MSA再軍備の線で進めて行こうとしておられるのでありますが、これは東西の対立を激化し、極東の平和と安定を阻害することになるのであることは勿論であります。日本が再軍備によつてアメリカの軍事戦略体制の一翼となることは、日本の安全を保障するどころか、求めて仮想敵国を作り、アジアにおける両陣営の対立を激化し、日本を戦争の渦中に巻き込む危険があると我々は考えるのでございます。(拍手我が国の当面する国際的国内的諸条件の下におきましては、中立と不侵略体制こそ最も有力な安全保障方式であると我々は信ずるのであります。(拍手)そこで首相にお伺いしたいのは、対ソ不侵略による安全保障方式については如何ようなる見解を持つておられるかということであります。  第三の問題は、経済自立と東西貿易についてであります。日本経済が危機に直面していることは、政府みずからも認めているところでありますが、これは吉田内閣が特需に依存して放漫政策を続けて参つた結果にほかならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)現在、世界経済は後退の兆を示しつつあります。延いては、国際間における貿易戦は、今後ますます激しくなると予想されるのであります。この間にあつて日本が輸出を振興し、正常な経済体制を打ち立てるためには、吉田内閣政策を変更して出直す必要があると思うのであります。昨日の外務、大蔵、通産、各大臣演説においては、いずれも輸出振興方策として市場の開拓を力説しておられるのでありますが、共産圏との貿易の問題につきましては極めて消極的であります。我々は日本経済自立の要件といたしまして共産圏との貿易を重視いたしておるのであります。米英においても不況対策について真剣な検討が行われているようでありますが、殊にイギリスにおいては、昨日も述べられましたように、英連邦会議で非ドル地域即ち共産圏との貿易を打開すると決定いたしておるのであります。(「イギリスの独立宣言だよ」と呼ぶ者あり)ア大統領も記者会見で、東西貿易のあり方については目下全面的な検討が加えられていると述べられているのであります。今や東西貿易は、アメリカの好むと好まざるとにかかわらず、必至の情勢にあると言わなければなりません。(拍手)この際、日本が徒らに欧米の後塵を拝する態度をやめて自主性を回復し、積極的な方針を樹てるべきであると信ずるものであります。これに関しまして外相にお伺いいたしたいと思うのであります。なお、貿易に関連をして、共産圏に対する渡航制限を直ちに緩和する意思政府にないかということであります。これも併せてお伺いしておきます。  次に、教育の政治的中立性の問題でございます。政府は教員の政治活動を規正するために、近く法案を国会に出すということは、昨日の吉田総理演説によつても明らかであります。教員の政治活動につきましては、教育基本法地方公務員法及び公職選挙法によりまして規正されているところであつて政府が今回更に特別立法をなす意図について我々は了解するに苦しむと共に、誠に遺憾に堪えないと考えておる次第であります。(拍手)第一に指摘しなければならない点は、今回の措置は、吉田首相の言う占領政策の是正に名をかりて占領中の諸制度を一挙に反動化しようとする現われの一環であつて(「ノーノ一」)と呼ぶ者あり)警察法の改正、知事官選論とその性格を一にするものであると思うのであります。(拍手)教育と警察と知事を一手に掌握することは、独裁者の好むところであるかも知れませんが、民主主義は一挙にして崩壊するのでございます。  更に、今回の措置はMSA再軍備と深い関連性があるということであります。(「その通りだ」「池田とロバートソンが話した」と呼ぶ者あり)先般池田特使がワシントンにおきましてアメリカ側と会談をいたしました際、次のような了解に達したことが議事録として公表されているのであります。「日本政府は教育及び広報によつて日本に愛国心と自衛のための自発的精神が成長するような空気を助長することに第一の責任を持つものである」というのであります。このことはMSAに関する会談の際行われたものでありまして、MSA再軍備を推進するために、日米双方において責任を以て愛国心を養成すると共に、自発的に再軍備に協力をさせようというものであります。これを実施に移そうとすれば、政府に忠誠を尽す教員でなければならないということに相成るわけであります。これは誠に重大と言わなければなりません。文相にお伺いいたしますが、池田・ロバートソン会談の内容について政府は了解しておられるかということであります。吉田首相は曾て「日本歴史は万国に冠たり、日本の国土が世界で最も美しいということを青少年に徹底して教育してこそ、愛国精神が養われる」と言つておられる。日本の歴史が世界に冠たるかどうかは主観によることであつて、これを他人に押付けることはできません。成るほど日本の山河は美しい。私の少い経験でも私はそう感じております。併し政治が悪いために山は裸になり、河は氾濫してだんだん汚くなつて行くのが今日の事情であります。(拍手)吉田内閣が十年も続くならば、日本中の山は禿山になつてしまうかも知れないのであります。禿山になれば愛国教育はできなくなります。私はこの際、首相の愛国心について伺つておきたいのであります。  第三は、大達文部大臣は、平和教育は困つたものである、何とか今のうちに禁止しなければならないと言つております。(「憲法を知らんのだ」と呼ぶ者あり)平和教育とは何のことか。何を指しておられるか。日本国憲法は平和憲法と言われております。戦争を永久に放棄して恒久の平和を理想とする憲法だからであります。この憲法に基いて教育基一本法第一条に教育の理想を掲げ、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期す」とあります。平和を愛する人間を作ることが教育の理想として規定されているのであります。(拍手日本の教育は平和教育だと名付けても一向おかしいことはないのであります。私は、なぜいけないのか、御説明を伺いたいと思うのであります。  第四は、教育の中立性が現に犯されているという事実があるかどうかという問題であります。大連文相はよく山口県日記を取上げて、あたかもこれが中立性を犯しているかの、ごとき発言をせられております。私は問題になつている一文をここに紹介します。「再軍備反対の声が強いのはなぜか」という題で、再軍備について議論の代表的なものを六つばかりあげてみます。どれが正しいか考えてみましよう。  一、日本にしつかりした軍隊がなければ、いつソ連や中共がせめてくるかもしれない。  二、強い軍隊があれば外国からせめてこない。  三、いまの世界のありさまからみて、ソ連や中共は日本へせめてくるはずがない。だから軍隊をつくる必要はない。  四、いま軍隊をつくればアメリカに利用される。アメリカについて戦争をすれば、日本はまためちやめちやにやられてしまう。だから軍隊はないほうがよい。  五、軍隊をつくるには多くの費用がかかる。軍隊をつくる金があれば、貧乏で困つている国民の生活をよくするのにまわした方がよい。  六、国と国との間の問題は戦争で解決しようとせずに、どこまでも話しあいで解決できるはずだ。  などですが、あなたはどれに賛成をしますか。  これが日記帳における一つの問題になつた文章であります。これを以て直ちに教育の政治的中立性が犯されているということは、これは軽卒な判断であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)ただ、私の言い得ることは、これが果して小学の六年、中学一年程度の児童に十分理解できるかどうかという教育的な判断だけであると思うのであります。この山口県日記を唯一のよりどころとして全国七十万に近い教職員に対しまして、憲法違反の虞れのある、而も明らかに教育基本法の第八条に違反すると思われるような政治活動の禁止を全面的に行おうという吉田内閣の態度に対しましては、我々は応じて承服できないのでございます。(「教育を冒浸するものだ」と呼ぶ者あり)政府が今回企図しておる教員の政治活動禁止の措置は、全く教育の政治的中立性に名をかりて教員の基本的人権を剥奪し、日本の教育を逆コースに追いやろうとする極めて悪質なものであると信ずるのであります。(拍手)我々は政府がこの企図を放棄することを強く要請いたしまして、私の質問を終りたいと思います。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。  平和の見通しについてのお話でありますが、その見通しについては、昨日も申した通りであります。即ち、戦争の危険はだんだん遠のくということは事実であるが、同時に冷戦状態に入りつつあるのである。これが私の率直な見方であります。只今のお話では、ソヴイエトの外交云々、そのソヴイエトの宣言を文字通り考えておらるるようでありますが、これは私は甘すぎる見方であろうと思います。過去の歴史から申せば、ソヴイエト政府がなした平和宣言が、しばしば事実において打破られておるのであります。(拍手)曾つて日本との間に中立条約ができたのを、これをソヴイエトが一方的に破つたことは記憶に新たであると思います。若し諸君の記憶において社会党の諸君において健忘症でない限り、終戦の数日前において不可侵条約を破つたのはソヴイエトであります。この歴史上の事実があるにもかかわらず、これを無視してソヴイエトの平和宣言を文字通り受取るに至つては甘すぎると言わざるを得ない。(拍手)外交の知識のないものと言わざるを得ないのであります一我が国が、今日においてソヴイエトの平和宣言があつたからと言つて、これを機会に平和外交を促進すべき時なりというのはおかしな話であつて、平和外交は日本の常にしておるところの外交であります。今日においてソヴイエトの宣言があつたからと言つてこれを機会に特に促進すべしということは、私の甚だ承諾のできないところであります。(拍手)又、ソヴイエトとの間に不可侵条約を結んだらどうかというようなお話であつてつて以て日本の安全なり独立なりを保障したらばということでありますが、これは只今申したような過去の事実においても証明せられるがごとく、ソヴイエトの宣言をそのまま受取るわけには行かないのであります。暫らくソヴイエトの態度を見て、静かに日本政府の外交、日本政府のソヴイエトに対する態度をきめるべきものである。軽々にきめるべきものではないと確信するのであります。(拍手)又、MSA、MSA、再軍備、再軍備と言われるが、どこに再軍備があるか。(「ジェット機は何だ」「再軍備だよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)静かに聞きたまえ。MSAは名の示すごとく相互援助であります。再軍備、再軍備と誇張して言われることは、国民を欺くものであると言わざるを得ない。若し我が政府が向米一辺倒であるならば、諸君は向ソ一辺倒であると言わざるを得ないのであります。静かにソヴィエトの態度を見て、我が外交の方針をきめべきものである。  又、日本防衛計画を示せと言つておられるが、これは常に申す通り日本の国力に応じて人員を漸増するという基本方針については、如何なる場合においても変ることはないのであります。国家財政を勘案して保安隊を増強する、これが防衛計画であります。(拍手)又、共産国との間の貿易云々と言われますが、共産国との間、ソヴイエトとの貿易は、イギリスの貿易等において示されるがごとく、数字だけは示されておるが、数字だけ何千万ドル、何千万ポンドの貿易を開始すると、こう言われても、名前だけ貿易、何千万ポンドだけではわからないのであります。何をどう買うか、如何なる数量を、如何なる価格を以て買うかということがきまつて初めて貿易取引になるのであります。総額だけ申したところが、その総額が直ちに実現せられるかどうかは今後のことであります。又、中共に対しても同じことであります。中共においても何千万円を買うとか買わないとかいうことがよく言われますが、果してそれだけ実現できれば結構であります。日本としては、ソヴイエトなるが故に、共産主義国であるが故に、これと貿易をしないとは言わないのであります。貿易ができれば結構であります。又、ソヴイエトとの間の国交についても、相手方が日本をして仮想敵国となさざる限り、日本に対して国交を開始しようという考えがあるならば、喜んでこれに応じますが、今日ソヴイエトは日本を仮想敵国となして、おる国で、これと国交を開こうということは、これは相手方の気持を尊重せざるところであつて、相手方の気分を考えればできないことであると私は思うのであります。  その他は主管大臣から。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手
  14. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お答えいたします。  MSA第五百十一条の軍事的義務につきましての御質問でありますが、これはもう毎回繰返して申す通り日米安全保障条約において日本の負つておる義務以上には出ない。これは前から申しておる通りであります。イギリスのべヴアン氏の言を引いていろいろお話がありましたが、御承知通りベヴアン氏は社会党左派に属しております。    〔「労働党だよ」と呼ぶ者あり〕 私どもの納得しかねるような言説がたくさんあるのであります。なおロカルノ条約とか、いろいろの話がありましたが、これは世界の人々が何とかして平和を維持しようとの考察からいろいろの考えを述べておられるのでありますが、要するに、私の昨日申した通り、共産圏側の征来のやり口を見ますと、防衛力の弱い所へ浸透して来る、常にその手段をとつておるようでありますので、単独に又は集団的に我々としては防衛をやはりやつて行かなければならない。中立化或いは無防備化ということは特に避ける必要があると思います。(「その通り」「日本に来ているのはどこだ」と呼ぶ者あり)なお、MSAの援助の中に原子兵器が含まれるかという御質問でありまするが、援助の内容につきましては、今後の交渉に待つところが非常に多いのでありますが、日本側としては原子兵器等のごときものを要望する意図はないのでありまするから、そういうものは援用の中には含まれておらないはずであります。(拍手)共産圏との貿易につきましては、只今総理からもお話がありましたが、我我としては自由主義諸国並みに、つまり自由主義諸国と同様の程度のことはやりまして将来その範囲で貿易の増進を期待しております。  中共等に渡航の制限を解く気持はないかというお話でありますが、中共のよな、国交のない、又我が国を仮想敵国と考えておるような国に対しては、渡航を制限するのが当然であると考えております。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  15. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 貿易のことに対するお尋ねと存じますが、只今外務大臣がお答えいたした通り、世界に広く自由の貿易が行われて日本の輸出が拡大されますることは誠に望ましいことでありますが、併し東西貿易と今仰せられたけれども、今日の世界の政治経済情勢から言つて、果して多くを期待できるかどうか、これは疑いなきを得ないと思うのであります。  更にお話の中に、特需やMSA援助が何か日本経済の自立に危機でももたらすような危惧の御意見があつたようにも拝承したのでありますが、これは全く見解の相違として、御賛成をしかねるのであります。    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  16. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 貿易に関しますお尋ねにつきましては、只今外務大臣、大蔵大臣からお答えいたしました通りで、附け加えることは何もございません。ただこの機会に、いわゆる中共貿易について御質疑がありました点に触れまして数字的に申上げますならば、昨年の夏、国会で日中貿易促進の御決議がなされまして以来、政府としても一段とその趣旨に副つて極力輸出制限の緩和に努力いたしましたことは御承知通りでございますが、累次の品目の解除を行いました結果、彼我の貿易量は大いに拡大いたしました。昭和二十七年と昨年の昭和二十八年の一月から十月までの実績の数字がございますが、輸出につきましては、船積の実績は、昭和二十七年においては月平均玉万ドル弱であるが、二十八年の一月から十月までにおきましては二十八万ドル強に相成つております。又輸入につきましても、同様の期間を比較いたしまして、月平均百二十四万ドルが二百四十五万ドル強というふうに殖えております。この実績を申上げて御参考に資したいと思います。(拍手)    〔国務大臣大達茂雄君登壇拍手
  17. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 教育の政治的中立性、それに関係するお尋ねにお答えを申上げます。  第一に、教育の中立性を維持する必要に鑑みまして政府において目下これに必要なる法案の作成を急いでおります。成案を得次第、本国会に提出をいたしまして御審議をお願いしたい、かように考えております。  只今荒木議員お尋ねの中に、この今用意しつつある法律案がMSA受入れに関係があるとか、或いは又池田・ロバートソン会談に関係があるとかいうようなことを仰せられましたが、これは何らの関係はありません。又教育の中立性ということとMSA援助ということは、これはまるで縁のないことでありまして、これは関係があわ得ない。これは事理の当然であると思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)又池田ロバートソン会談におきまして、教育についてどういうことが話合いになつたか、これは私は存じません。ただ、私は愛国心が国民の間に振起せられるということは真に望んでおるのでありますが、併しこれは何もロバートソンさんから言われてこういうことを考える、こういうことはあり得ないのであります。殊に、今回の教育の中立性を維持するための法律、この法律案というものが愛国心の振起とは直接の関係もありません。  次に、然らば中立性侵犯の事実があるかどうか、こういうことについてのお尋ねであります。実はこれは私どもといたしましては、容易に学校教育の内容を捕捉することが困難でありますが、併しそれでも私どもが承知しておる範囲において教育の中立性が侵犯せられておる、若しくは侵犯せられる危険があると考えられる事例は相当多数に上つておるのであります。(拍手)現に今日この中立性侵犯の事実をめぐつて、或いは教育委員会と教員との間において、或いは父兄と学校との間において或いは生徒児童と学校との間において、現に紛争をしておる事例も相当たくさんあるのであります。又その以外におきましても、私どもが入手しておる事例も、これも十指に余り、二十に及び、三十に及んでおるのであります。そこで、今、荒木議員は問題。山口県の小学生日記の一節をお読み上げになりまして、これが果して中立性を侵犯しているかどうか、こういうことを仰せられたのでありますが、私は、山口県の日記の記載の全部がことごとく中立性を侵犯しているこうは無論考えておらんのであります。その中に、教育の中立性を侵犯すると認めて差支えない記事が相当ある、こういうことを言つているのであります。今、荒木君は、まあ比較的に当り障りのない部分をお読み上げになりまして(拍手)これを以て山口県の小学生日記の問題となつているこれが中心である、こういうふうにお話になりましたが、私どもは、今お読み上げになりましたような事柄を問題にしているのではありません。小学生日記を、これは荒木君は十分御熟読になつていると思いますが、そのほかの部分を御覧になればよくわかります。それから、これらの事例の詳細につきましては、いずれ法案が提案されまして御審議を頂く際に、委員会か或いは本会議において詳しく申上げます。  次には、私が平和教育をしてはならん、こういうことを言つたというふうに仰せられましたが、私は、平和を愛する、そういうことに寄与するいわゆる平和愛好の精神を鼓吹する教育、これはいけないなどと言つたことはありません。ただ、今日いわゆる平和教育という名前の下に学校において行われる教育については、これは問題があり得ると考えているのであります。平和を愛しなければならん、平和を喜ぶ、平和な社会を建設するようにしなければならん、これは無論何も差支えない。然らばどうすれば一体平和社会を建設し、或いは国際間に平和を招来することができるか。この方法論に及んで、いわゆる平和三原則とか或いは四原則とか、つまり平和社会を作るためには、再軍備をすることは絶対いけないとか、或いは全面講和をしなければならんとか、或いは無抵抗中立の態度をとらなければいけないとか、平和を招来するための方法として特定の政党の主張するところの基本的政策をそこへ持つて来てそうして子供にこれを教え込む、ここに問題があるのであります。如何なる特定政党の基本的な政策を教えても、それに平和教育という名前を、看板を付ければ、それでどんなことを教えても学校の中では差支えない、こういうことを若し考えるならば、それはいけない。かように私は考えているのであります。(拍手)    〔荒木正三郎君発言の許可を求む〕
  18. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 荒木君。
  19. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 愛国心について首相答弁が漏れておるようであります。これは原子に関する予算が盛られております。これは……
  20. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 荒木君の登壇を請います。
  21. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 質問漏れに対する答弁を求めているのであります。
  22. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 吉田内閣総理大臣。    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  再軍備はいたさないということはしばしば申しておる通りであります。愛国心は読んで字のごときものであります。社会党の諸君には答弁ができないかも知れないが、我が党の答弁としては幾らもあります。(拍手)    〔「その通り」「何を言つておるんだ」「自由党大会じやないぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然〕
  24. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 相馬助治君の登壇を請います。    〔「あれじやわからん」「そんなことがあるか」「答弁しなさい」「これは悪例を残すぞ」「休憩々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然〕
  25. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 相馬助治君の登壇を求めます。    〔「登壇」「駄目だ、ああいう答弁があるか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然〕
  26. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 相馬助治君の登壇を求めます。    〔矢嶋三義君発言の許可を求む〕
  27. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 矢嶋三義君。
  28. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 議事進行について。只今の吉田総理大臣の荒木正三郎君の質問に対する答弁の言葉の中には、総理大臣として本会議において述べるべき言葉として不穏当の言葉があつたと確認いたします。(「その通り」と呼ぶ者あり)議長において速記録を調査され、不穏当の個所がありましたならば、然るべくお取計らい下さるようお願いいたします。
  29. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 矢嶋君にお答えいたします。議長は、矢嶋君の御意見の通り、速記録を調査いたしまして、適当な処置をしようと思います。  なお、この件につきまして議場の諸君の御意向を伺います。只今議長がとろうとする処置に対しまして、賛成の諸君の起立を請います。    〔賛成者起立〕
  30. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。(拍手
  31. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 相馬君の登壇タ求めます。    〔相馬助治君登壇
  32. 相馬助治

    ○相馬助治君 一般的に見て、一九五四年度における国際情勢は一応冷戦の継続であり、アジア諸地域におきましては局地戦争の危機をはらみつつあるとは申されながら、国際的緊張はかなり緩和された方向に見受けられるのであります。併しながら、このことは、内政外交ともに、これが施策の基本方針は、当然、国際情勢をどのように認識するかによつて決定されるものでありますし、特に強力なる外交の推進は国民の支持協力なしに行われ得ないことは申すまでもございません。首相は現在の国際情勢の認識をどのように持たれておいでになるか。この点に関し、この国会を通じ、昨日施政方針演説にも触れられてはおりまするが、より明確に、詳細に、而も率直にその所見を承わりたいと存ずるのであります。  次に国際連合の問題でありまするが、これは現存するただ一つの世界的平和機構であると存じます。勿論、国連の現在の実態は必ずしも満足するものではありませんけれども、これに加明盟の一日も早からんことは国民の一致した願望であろうと存ずるのでありまして、特に国連憲章改正の機に際しまして、いよいよその必要を痛感するものでありまするが故に、これが加盟促進に関し、首相は如何なる構想を持ち、如何なる積極的方策をお持ちになるか、お伺いしたいと存ずるのであります。  第三に、新聞の報ずるところに従いますると、総理大臣はアメリカ訪問の決意を固められたやに見受けられまするが、この際、首相は、平和条約に調印した当の責任者といたしましても、少くとも次の二点については強力なる要請をなすべきだと不肖私は考えるのであります。即ち、先般奄美大島が復掃いたしましたが、沖縄、歯舞、南樺太、千島等の領土は未だ返還されておりません。不幸なる、又不平等なる安保条約、著しく日本の主権を制限しております行政協定、これらの存在が日本の独立を片輪なものとし、不完全なものとしておることは、諸君の又異論のないところだろうと思うのでありまして、これが改訂と先に述べました領土の回復とは緊急不可欠の問題として、この際、関係各国に向つて強く要請されなければならない。これらについて首相は如何なる見解を持たれるか。この際、明快なる答弁を私は期待するものであります。  次に、警察法の改正或いは教職員の政治活動制限等、吉田内閣によつていわゆる一連の反動法案が次々に用意さ日れて参つたのでありまするが、それと揆を一つにしてか、先般、首相はその意見として知事官選論に触れられたのでありまするが、不肖私どもの見解を以ていたしまするならば、憲法改正することなしには知事官選不可能と思考されるのでありまするが、首相はこれに対して如何なる真意を持たれるか。責任ある立場においてその見解を承わりたいと存ずるのであります。  次に岡崎外相に対し以下四点に亘つて質問いたします。  即ち、只今も安保条約行政協定の根本改訂に対し首相にその見解を問うたのでありまするが、特に外相よりは、所管大臣として、軍事基地の問題、或いは労務、需品等の細部に関し、アメリカ当局に対し現在及び将来に亘つてどのような構想を持ち、持たれんとするか。要しまするに、これが改訂は国民一致の要望と思考されまするが故に、外相の率直なる見解を披瀝されたいと思うのであります。  第二に防衛支出金のことでありますが、今般アメリカとの交渉におきまして、当初五十億の削減を予定したそうであるが、その希望は如何なる事情か達せられなかつた。本年度五十億と計算した基礎に一体自信があつたのかどうか。且つ又将来どのような年次計画を以てこれが削減の実現を図らんとするものであるか。アメリカとの了解事項でありとするならば、予算編成上、日本において将来実に大きな問題であろうと存じまするが故に、これが具体策、具体案をお聞きしておきたいと思うのであります。  次には賠償費について本年度予算に百五十億を計上してありますが、これはどのような構想の下になされたものでありますか。御承知通り、今日東南アジアとの通商経済の推進は我が経済自立のため不可欠の問題であります。我々は我が国の支払能力を超えた賠償には勿論強く反対いたしまするが、政府自身といたしましては飽くまで誠意を以て、東南アジア関係各国との経済的政治関係の改善を図らなければならないことは論を待ちません。これは、これら諸地域との貿易が著しく振わぬ原因の一つとして、賠償問題の未解決が指摘されておるからでありましてこの際、政府は中間賠償の実施を提案するとか、或いは吉田首相御みずからが陣頭に立つて誠意ある積極的解決の道を選ぶとか、何らかの誠意ある政府の積極的施策が国民によつて望まれていると思うのでありまして、(「そうだ」と呼ぶ者あり)外相といたしましてこの問題について如何ようにお考えになるか。通り一遍の政策を私は希望するのではなくて、具体的所見を承わりたいと思うのであります。  第四に、中共における邦人引揚に連関して、中共紅十字会会長李徳全女史の招待に対する政府の態度は極めて不可解であると存じます。正式に国交回復せざるこの国との交渉において中共紅十字会の果した役割は実に大なるものであつたと私は信じます。(「その通り」と呼ぶ者あり)島津社長の発意によつて李女史の日本招待が約束されていたにもかかわりませず、如何なる理由か、外務当局の頑迷にして固陋なる拒否態度によつて、邦人引揚が不幸その中途頓挫しておりますることは、由々しき大事と言わざるを得ません。帰国に胸躍らせ港に集結した人々が、再び奥地に送り還されつつあるという現実を我々は知るとき、私は実にここに言うべき言葉を知らないのであります。(拍手)事はいやしくも国際信義の問題であり、事はいやしくも人道の問題であります。国民注視のこの事柄に関し、外相の率直にして而も今後の見通しを含めた厳粛なる答弁を、私は国民の名において要求するものであります。(拍手)  次に蔵相に対してお伺いいたしたい。  昨日の蔵相の財政演説を拝聽して私は奇異な感に打たれた。それは過表数年に亘る政府提案の予算をインフレ予算と断じておるが、(笑声)一体誰がこの予算作つたのか。この予算を実行して来たのは誰であつたのか。この反省を欠きつつある政府が、今日緊縮予算の名の下において、徒らに国民大衆に説教をしても事は始まらない。一面これは神を恐れざるの言動であると言わなければならない。この予算においては、防衛支出金と保安庁経費並びに軍人恩給を加えますると、実に二千二百六十八億、予算総額の二二・八%、如何に陳弁するとも、これはMSA受入れのための乞食予算であり、再軍備を本格的に強行せんとするところの軍事予算なりと非難されても、一言の抗弁も持たないと私は思うのであります。(拍手)併し私がお尋ねしたいことは、このことではない。何が故にこのような何人の考えても無理であろうと思うような、先ほど緑風会の高木君の解れたこの軍事予算を組まなければならなかつたのか、その政治的理由を私はここにお尋ねしたいと思うのであります。  このような予算におきましては、如何にデフレ政策を強行するにもかかわりませず、他面、生活必需物資の値上り、そうして大衆への圧迫、このことによつて国家の力を以て救済せねばからぬ生活困窮者の激増、こういうことが当然予想せられるのでありまするが、蔵相はこれに対してどのような考えを持つておるか、国の台所を預かろお母さんであるところの小笠原蔵相に向つてこのことをお尋ねしておきたいと思うのであります。  次に投融資の問題でありまするが、無計画、無責任な投融資がインフレを助長することは、これはあなたの見解と私も同じである。問題は、まるで準備のないところに突如としてかような投融資の大幅引下げによつて一体如何なる経済界の混乱が起るかという問題であります。我々をして言わしめろならば、この際、投融資の個々を再給討し、効率を高め、必要な重点に対しましてその規模を拡大し、経済に関しましてこれの計画性を持たせ、生産の上昇、貿易の振興をこそ図るべきであると思うのでありまするが、この問題に対して蔵相は如何に考えられ、今津この投融資の規模については逐年引締めの傾向に持つて行くのか、或いは然らずか、これらについて所見を承わりたいと存じます。  最後に蔵相に聞きたいことは、一月二十二日の閣議の席上で、吉田内閣総理大臣は、「補正は行わない。不慮の災害が起きて補正が必要な場合にも一兆円以内の実行予算の節約によつてこれを賄う」と申したのであります。蔵相は昨日の財政演説においでこれを再確認したのであります。お聞きしたいことは、この線に沿つて行くとするならば、決定されんとする今度の予算はどのように執行して行くのか。具体的に言うならば、何%か落ちの実行予算各省は組むのか。不慮の災害の起きた場合を考えて如何ほどの節約量を最初から見込むのか。この点について交渉なしと逃げを打たれることは私はできない。この具体案についてここに説明を求めるのであります。  税制の問題がこれに連関いたしまするが、今日、中央地方の関連において直接税と間接税の関連において実に大きな問題が税金の問題に内在しておる。税制が絶えず浮動いたしますることは、政府、あなた方自身にとつても我々国民にとつても甚だこれは迷惑であると言わなくちやならない。この際、財政当局に抜本的改正用意ありや否や、構想を承わりたいと存ずるのであります。  次に、愛知通産相に対しお聞きしたい。  現在まで輸出の増進がうまく行かなかつたことは、理窟を抜きにして、国内の物価高と、もう一つは米国政治干渉によるということは、今日国民の常識となりつつある。今日MSAの交渉で、経済援助が最初の企画通りうまく行かなかつた。世界銀行からの外資導入も期待が持てない。そうして再軍備だけは押付けられる。このことは、米国に使いした愛知君が骨身にこたえて御自身御承知であろうと存じます。本年度予算を見ると、貿易振興のための積極予算が何もない。急にこの頃になつ大臣であるから無理がないと、そんな気楽なことを我々は言うておくわけに行かない。こういつた予算の下において輸出の拡大を図らんとする計画と所見とを、昨日の演説をより敷衍して具体的にお聞かせ願いたい。  なお、MSA援助の結果、余剰農産物、即ち小麦買入れに伴う対米勘定について見ると、これは救済でない。私どもの調査によりまするならば、これは国際収支には何らのプラスになつていない。経済審議庁長官としての愛知君が憂えるところの、出際収支の逆調に拍車をかける懸念すらあるのでありまして、これをどのように解釈され、どのようにされんとするのか。これに対する態度を明快にして頂きたい。  次には、このようなデフレ予算というものは、当然として、結果的に中小企業者に、資金、資材並びに消費需要の減退から来る営業の不振等、手ひどい打撃を与えるのでありまして、これに対しては当然強力なる保護政策が期待されなければならない。昨日の演説に現われた中小企業対策のような通り一遍のものでなく、その施策の全般について詳細に承わりたいと存ずるのであります。  次に犬養法相に向つてお聞きしたい。  警察法改正が今回の国会に上程されると伝えられておりまするが、伝えられる政府原案は、現吉田内閣の官僚独善の性格に一貫せるものであつて、国警によるところの自治警の征服であり、保守陣営を巧みに利用してその縄張りの強化を図らんとする旧内務官僚、警察官僚の陰謀であると今日言われており、戦後の警察制度が、財政の点において、能率の点において、幾つか改善の余地あることを私は認めるものでありまするが、不幸なる警察国家再現を思い合せまするときに、今般の政府の意図について、私は当然国民の名において、質すべきことは質し、批判すべきことは批判しなければならない。その構想の大要と改正の主要点並びに法相の見解を承わつておきたいと思います。  次に私は石井運輸大臣に尋ねたい。  かねてより吉田内閣は綱紀粛正がその一枚看板であつた。ところが今日造船の疑獄が新聞に大々的に報ぜられておる。問題は司直の手に委ねられておるので、これが内容について批判することは差控えますが、運輸省幹部とその造船疑獄はどのような関係にあると認識されておるか。あなたは所管大臣として百パーセントこれに潔白であるとここで言い切ることができるかどうか。この点について綱紀粛正の責任を私は追及するものであります。(拍手)  次に私は自治庁長官に聞きたい。  今般の予算は、中央、地方を通じて見まするに、当初の原案に対して一兆の予算の枠を守ろうと必死に頑張つた大蔵当局、失地回復を叫んだところの各省大臣、そうして選挙目当ての、こんな予算では大変だという自由党、与党諸君の、この三つの、三ツ巴の攻防戦によつて結局、問題点の多くは弱いところに、具体的に言うならば地方財政に押付けて中央においては、首相のお声の通り一兆億円にとどめ、体裁を整えたというのが今度の予算であります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)結局、地方財政の規模は昨年に比して推定五百億くらいこれは膨脹しそうである。一体こんな予算を押付けられて府県知事や市町村長はどうしようとするのであるか。この地方自治体の意思を代表し、その利益を守るのは、自治庁長官であられるあなたである。そういう意味で、閣僚の一人に聞くのでなくして、その地方自治体の意思を代表するあなたに、このことについての見解を私は尋ねておきたいのであります。  第二に、地方税の問題でありますが、これが又、中央政府の御都合主義によつて地方税の根本が絶えず浮動しておる。そうして今般も税制上同一であるべき遊興飲食税と入場税がまるきり別々にこれは取扱われた。一体これはどういうわけなんだ。中央における税制改革の気運と相待つて地方自治庁においては当然地方改正の根本方針がなければならない。ないならば仕方がない。そのときは無能であるが故に我々は退陣を要求しなければならない。あると私は確信する。従いまして、この構想について、あなたの見解と、それから決意とを私は承わつておきたいのであります。町村合併の問題もいろいろな点で行き悩んでおるようでありますが、これについての進捗の状態、今後の見通し、これらも又承わりたいと存じます。  文部大臣に私はお尋ねしたい。  先ほど荒木君が、教育の中立性に関し文相の意見を質された。時間的には大分長々とお話をされたようでありますが、私どもの聞きたいことは、そのような現象的なことではないのであります。政府がかねてから日教組の組合運動を目の仇にし、これを圧殺せんとする機会を狙つておつたことは、世上噂の通りでありましよう。好機まさに至れりとなし、今日教育の中立性を守るという美名の下に、教育の中立性を根本的に破壊するかのごとき政府の意図が今日新聞等によつて伝えられておるのでありまするが、この際、私は文相の構想をお聞きしたい。今研究中だ、立法の手続中だ、ではなく、文相自身が本問題に対して如何なる所見を持つか、これを聞きたい。又かかる立法措置に至つた理由も聞きたいのであるけれども、それはさつき荒木君に言つた以上のことはあなたも答弁できないであろう。従つて構想だけははつきりこの際お聞きしたいと思うのであります。  なお、政府部内の財政当局、地方自治庁の強硬なる反対を押し切つて、あなたは地教委存続の予算を復活することに成功したようであります。併し又一方においては、当然本年度十一月になさなければならない半数改選の選挙費用の全額を景気よく削つてしまつたのであります。一体地教委に対して文部当局は基本的にどのように感じておるのか、これを助長する気なのか、或いは頃合いを見計らつてこれをぽんと打切ろうとするのか、これらの点について一つ見解を承わつておきたいと思います。又このような騒ぎをしているうちに定時制学校施設費の補助、公立文教施設費予算というものは相当数削減された。青年学級補助費、義務教育教科書無償配給費等は全廃せられてしまつた。このようなことはかねての大達文相の構想とは大分これは違うようである。これらについて、途中から君子豹変するの理に従つて、これはこういうことの要求をやめてしまつたのかどうか。かようなることについて文相の見解を私は承わつておきたいと思います。  最後に、私は労働大臣に対しましてお尋ねをしたい。今の吉田政府のやり口は、国家公務員法を作つて国家公務員のストライキ権を剥奪し、その代りに人事院というものを与えた。そうして今日その人事院を廃止せんとしておる。公労法においても又然りである。公共企業体の者からストライキ権を奪つて仲裁裁定の考え方というものを政府は持つて、その法律を作つておることは御承知通りであります。ところがこの仲裁裁定がなかなか吉田内閣の思うように行かない。そこで公労法を根本的に改正して、仲裁裁定に政府の意図を反映させんとしておるということが報ぜられているけれども、極めて事は重大と言わなければならない。さようなる意思があるのかどうかお尋ねしたい。なお、先般の国鉄の争議は誠にこれは困つたことである。私はいいことだとは思つておりません。併しながらその責任が、いずこにありやとするならば、あの組合の諸君が、あのような手段に出ざるを得なかつた理由というものをつらく思い含蓄ときに、それは明らかに公労法の精神を蹂躪し、仲裁裁定を軽視したところの政府並びに当面の責任者であるところの国鉄総裁の責任であると思うのであります。ところが国鉄総裁はみずからを責めることは何らなく、十八名に亘る大量首切りをするというがごときことは、片手落も甚だしいと思います。労働大臣のこれに対する見解を尋ねておきたいと思うのであります。  私に与えられた時間は極めて少いので、私は箇条書ふうに以上に亘つてお尋ねをいたしたのであります。どうか吉田内閣総理大臣関係閣僚諸君、不肖社会党第二控室にお答えするのではなくて、本議場を通じてこれらの問題を国民諸君に明らかにする意味において、明快にして而も懇切なる答弁を要求して私の質問を終る次第であります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  平和が破れて戦争が勃発いたした後において、平和が確立するまでの間に、相当の時間をとるのは歴史の示すところであります。故に今日戦争の危険は遠ざかつたとは言え、その後における状態として、冷戦状態に入り、又その状態が当分続くのではないかという心配を持つことは当然であります。従つて日本の外交といたしましても、平和外交を基調とすることは当然でありますが、個々の問題についての態度については慎重に考える必要があると考えるのであります。  国連加入の問題については、政府としてはでき得るだけその加入の早からんことを希望いたして、種々交渉をするところもありましたが、何分国連加入国は、現在においてヴイートー権その他を持つておる以上は、この加入という問題も決して容易な問題ではないのでありますが、併しながら国連に対する世界の輿論が起つて、国連の強化、或いは又平和の希求というような輿論が勢を得ると共に、日本の加入も、これがやがてできることと私は確信いたします。  領土の問題については、施政演説の中にも申しておきましたが、でき得るだけその国民の要望に沿うように努力いたす考えでおります。  安全保障条約行政協定は、改訂する必要を未だ認めておりません。  知事公選の問題につきましては、現、在の地方制度がいいか悪いか、幾多の問題があるのであります。従つて公選廃止の論も起りますが、政府としては現在の制度をどう改めるか等については地方制度調査会等の審議を待つて十分研究いたす考えでおります。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手
  34. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 行政協定等につきましては、只今総理からお話通りで、ただこれに関連しまして、軍事基地と言われましたが、これはいわゆる施設とか区域とか、日本側で提供しておるもののことだと思いますがこれにつきましては、我々としては国を守るために米駐留軍が必要とするものは提供する方針でおります。併し米国側もでき得るだけ少い施設を使おうということで、現に、現在でも幾つかを返還しつつありまして、最小限度にいたすつもりでおります。  なお第二に、いわゆる防衛分担金の問題でありますが、日本防衛力増強によりまして経費が増大する場合には、従つて防衛分担金も減少されることは話合いができております。今回もそのような事情で七百万ドル、即ち二十五億二千万円だけの減額がきまりまして、今後も防衛力が増強される場合には、これに応じまして又防衛分担金の減少ということも起るはずであります。賠償につきましては、我々政府としましても、まじめにこれを考えておるのは勿論でありまして私自身も昨年秋、東南アジアに参りましたのも、主としてそういう問題について検討をいたす考えであつたからであります。今回百五十億の予算を計上しておりますが、これはフィリピンとの中間賠償協定、又国会の御承認を得ますれば、インドネシアとの中間賠償協定、こういうものは今直ちに実施する必要がありまするから、これに必要な額と、又その他にも全般的に一、二の国と賠償協定ができる場合も考慮されるのでありますが、その場合に全然予算がないというようなことでは誠意のほども疑われまするから、そういう点も考えまして但しそれも年度初めからできるか、或いは年度の途中にできるかというようなことも考慮いたしまして、一応百五十億というものを計上したのであります。  それから中共の紅十字代表招待の問題についてお話を伺つておりますると、相馬君の御意見は、何だか日本側で紅十字代表を招待しないから、それで今まで港に集結しておつた引揚者が又奥地へ送り返された、こういうふうに聞えたのでありますが、そういうわけは私はないと思う。又そういうことでありとすれば、これは甚だ不可解なことと思います。が、政府としても、何でもかんでも絶対に反対といわけではありませんけれども、今のところこういうことをしなければ引揚げができないという理由が私にはわかないのであります。    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  35. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答いたします。  自衛力の不十分な我が国が、独立用にふさわしい程度の自衛力の充実を回つて行くことは、何ら世界情勢に逆行するものではないと存じます。独立国たる我が国予算の編成について、いやしくも外国の強制や圧迫を受ける、とのあろうはずはございません。  次に、民生安定のためにつきましては、生活保護費、社会福祉の経費は二十八年度に比べまして増額をいたしまして、七百七十四億円を計上しておますることは予算書の示す通りでございます。  投融資の問題についてのお話がございましたが、従来この投融資には、多小過剰投資乃至不要不急投資のうらみたしとしなかつた向きもありまするので、今回の緊縮予算に対して大幅な減額を行なつたのでございまするが、併し国が必要とする電源開発その他必要の部分に対する投融資は重点的に確保いたしておりまするので、お説のようにこれによつて混乱を招くというようなことはないと信じております。本来申しますると、産業資金の調達というものは、これはできるだけ民間資本によるべきものでありまして民間資本で調達ができない、又困難な真に止むを得ないものを国の財政で関与すべきであろうと考えておるのであります。後におきましても、この原則に基きまして、財政投融資の規模をそのときの    〔状況に照して適正に決定して参りたい、かように考えております。〕  補正予算についてのお話がございましたが、今後補正予算を編成することは避くべきものであると考えております。  予算の実行に当つて何%節約するように指示したかというようなお話がございましたが、これは国の経費でありまするから、パーセントに限らず極力節約に努むることは当然でございます。(笑声)なお不時の災害等に対しては予備費を以て対処する所存でございます。  税制についてどう考えておるかということでございましたが、これは税制調査会の答申を尊重しまして、国税及び地方税を通じてこの税制改正を行うことが一番よいと考えておるのでございまするが、御承知のように現在の財政及び経済事情から見まして、消費意欲を刺激したり、或いは歳入総額の減少を来たすような租税の軽減措置は適当でないと考えますというところから、よく皆様が御指摘になりました低額所得者、これに対する分が過重になつておるので、その不合理な現状を是正するために若干の調整を加えることといたした次第でありまして、そのほかには自然奢侈的消費の抑制とか、或いは地方財源の偏在是正に必要と認める税制改正を行うこととして、不日提案をする次第でございます。  なお緊縮予算に伴つて、摩擦乃至しわ寄せがいろいろの方面に行くのではないかということでございまするが、その摩擦乃至しわ寄せに行かざるよう努力いたしますると共に、予算書ではつきりいたしておりまする通り、輸出振興費とか、中小企業助成費等は、前年度よりも相当増額いたしてございます。(拍手)    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  36. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 最近における我が国の輸出が伸び悩みまして、輸入が非常に増大したその原因につきましては、昨日申上げました通りでございまして、一つは世界経済の動向でございまするし、又一つは世界市場における輸出競争の激化ということが、対外的な原因として挙げられると思います。而してもう一つの大きな原因は、国内物価の割高であるというところから胚胎しておるものと考えるのであります。従いまして私は只今相馬君の言われたように、何か米国日本の国内の経済政策に干渉するから、その干渉を受けておるから輸出が伸び悩むのであるというような御意見のような点が、ございましたが、さようには考えておりません。(拍手)私どもの輸出伸び悩みに対する原因考え方は、今申しましたようなところにございまするから、従つて対策といたしましては、先ず、例えば経済外交の推進というような面におきまして対外的に輸出阻害の原因となつておりましたようなものを払拭するために、今後あらゆる努力をいたしたいということが一つでございます。又いま一つは、財政と金融の引締めによりましてデフレ的な効果を国内の経済の上にできるだけ早く現わして、その面から国内の物価水準を引下げる、或いは国内の消費の減退というようなことを起すというようなことによりまして、基本的な政策をやつて参る。こういう二つの大きな点から、我々の政策を進めて参りたいと考えるのでありましてこれが進んで参りまするならば、私どもの見通しといたしましては、大体今年度末において国際収支の均衡がとんとんになる。具体的に申しまするならば、輸出は十三億ドル以上になり、輸入が二十一億ドル強、そのほか貿易外収支、特需の関係もございますから、大体それでとんとんに近くなる。但し昨年凶作の関係等におきまして、いわゆる食糧の緊急輸入をやりました。その緊急輸入の本年への差しかかりの分がございまするから、その分までも消すことは或いはできないかも知れませんが、本年度末においては大体収支均衡になるものと考えておるわけでございます。(「そんなに簡単に行きますか」と呼ぶ者あり)  更に次の御質疑でございますが、MSA法第五百五十条による小麦の輸入、即ち米国余剰農産物の輸入の問題でございまするが、申すまでも、ございませんが、我が国としては、そもそも食糧が不足でございます。而も昨年は凶作でありました。そうしてMSA法第五百五十条によつて入れまするところの農産物は、円価によつて購入するわけでございまするし、特にその一部、少くとも五分の一は贈与になるわけでございます。従つてこれは国際収支に非常な改善にこそなれ、これが弊害になるということは断じてございません。而もその価格につきましても、当初は相当問題があつたのでありまするが、米国側の譲歩、好意によりまして妥当なところに落付くものと考えておりまするから、これは我がほうにとつて非常に有益な結果になると思います。(拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  37. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えをいたします。  お尋ねの警察法の改正案は、本国会に提出いたしまして御審議を請いたいと思います。只今、法制局の意見などを徴しまして作成しておりますので、二月の上旬には提出いたしたいと考えております。いろいろ御意見が、ございましたが、その御指摘の通り、現行の警察法には、よい点も又不備な点もありまして御承知のように、占領政策の一環としてこれは制定されたものでありますが、よい点と申せば、戦争前や戦争中の警察に見るのと違いまして、国民が何となく親しみを持つて来た。これは確かによい半面だと思つております、その半面、御指摘がありましたように、能率の点であるとか、或いは近来犯罪が複雑化しまして農村で起つた犯罪、犯人が都会に入りますとか、都会で起つた犯罪が、犯人が農村に行くとか、いろいろ犯罪が複雑になりました上に、同時に数カ所に起る大仕掛けな騒擾事件も想像し得ますので、これに対処し得るには、現行の警察制度では不適当ではないか、こう考えましたことが、今度思い付きました主な理由でございます。  で、要点といたしましてはいろいろございますが、先ず第一に、この警察運営に、これが何かの形で関与するという点は存置いたしたい。或る場合には、国民が警察運営に対して親密な協力者になる、或る場合は、何と言いますか、けむたい監視者になるという味は残すべきだと考えましてこの意味におきまして、中央、地方を通じて、公安委員会の存置ということは堅持いたしたいと思つております。この公安委員会で、中央も地方も、それぞれ警察長官、或いは警察本部長が適任ならざると感じましたときは、罷免、懲戒の勧告権を持つというふうにいたしましたから、先ほど御心配のような官僚独善の傾向がありましたならば、忽ちにこの罷免、懲戒権を動かされるということになる、これによつて国民が警察運営の、或る意味で監視の権利を持つということになると思うのでございます。  それから第二には、先ほど申上げましたように、今の国情に照らしまして、もつと能率的な警察組織によつて治安の確保をいたしたい、こういうふうに考えまして、現在の国家地方警察と自治警察の二本建という警察制度を今度やめまして、これを都道府県警察の一本にしたいと、こう考えております。で、これによりまして、警察の機能を、只今申上げましたような犯罪の複雑化、そうして同時に、多発的に起る大仕掛けな騒擾事件に処するように能率を挙げたいと考えておりまして、同時に機構を簡素化することによりまして経費の節約も図つて行く次第でございます。  それから第三には、国家的な治安に対する政府責任を、もつとはつきりして果し得るようにいたすために、国家公安委員会の委員長に、国務大臣をこれに充てるということにいたしたわけでございます。これによりまして大仕掛けな国家的な事件に対しまして、責任が明確になるというふうにいたしまして、かような大仕掛けな事関が都道府県の警察を指揮し得るようにいたしたのでありますが、我々の普通頭にあります普通犯罪、これは一切挙げて、今までの自治警的な活動に任せたいと考えております。  又、細かいことは、いずれ他日機会を得まして十分に御説明をいたしたいと思います。(拍手)    〔国務大臣石井光次郎君登壇拍手
  38. 石井光次郎

    国務大臣(石井光次郎君) お答えいたします。  今回の山下汽船の事件に関連いたしまして、計画造船をめぐつて何かありやせんかというような声がいろいろあるのでございます。これに関連いたしましてお尋ねを受けましたので、綱紀粛正を標榜する吉田内閣の、その関係の閣僚といたして、それは、お前は潔白ということが言えるかというお尋ねでございますが、これに対しまして、潔白であるとお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣塚田十一郎君登壇拍手
  39. 塚田十一郎

    国務大臣(塚田十一郎君) 国の緊縮財政のしわが地方財政に寄らないようにということは、実は私も今度の予算編成の全過程を通じまして最も注意をし、又最後まで強く主張した点でありまして、そのように大体今度の地方財政の財政計画もなつていると確信をいたしております。従つて昭和二十九年度の財政計画におきましては、二十八年度までのもので、既定財政規模で是正を要するものは、この機会に是正をいたしまして、その上で国と方針を合せて、緊縮すべきものは緊縮すると、こういうようにいたしたわけであります。  それから税制についてのお尋ねでありますが、税理論若しくは税制の大系そのものだけから考えますれば、若干おかしなところも御指摘のように確かにあると思うのでありますが、ただ今日のこの地方税制を考えます場合には、一番困りますのは、どのように税種を考えましても、どうしてもこの都道府県によつて偏在をする、この偏在を是正することができないと、国民負担の軽減を十分できませんので、この偏在の是正というものの考え方と、その他のいろいろな考え方と総合して考えましたのが、今度の政府考えた結論であると御承知願いたいと思うのであります。  それから最後に、町村合併でありますが、町村合併は大体このようになつております。昭和二十五年の十月の国勢調査の時におきましては、一万百六十六カ町村あつたのでありますけれども、それがだんだん減つて参りまして、昨年の四月一日までに四百九十カ町村減りまして、九千六百七十六カ町村、その後一月二十七日現在までに百九十五カ町村更に減少いたしております。この百九十五カ町村のうち、昨年十月の町村合併促進法が施行せられましてから減少いたしましたものは、百八カ町村ということになつております。今後三年間の計画で、大体現在の三分の一程度にこれを減少したいということ、殊に明年度は明後年の選挙を控えておりますので、全体計画の六五%明年度中に完成いたしたいと一生懸命に努力いたしておりますし、大体その目標が貫徹されるのじやないかという見通しをいたしているわけであります。(拍手)    〔国務大臣大達茂雄君登壇拍手
  40. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) お尋ねの第一点は、教育の中立性維持に関する法律案について、その構想を示してもらいたいということでありましたが、これは先ほど申上げましたように、只今慎重に検討しております。不日、成るべく早く提出いたしたいと存じておりますので、その際、提出した法律案について御承知を頂きたいと思います。  それからお尋ねの第二点は、地方教育委員会というものを一応存置することにしたけれども、折を見てこれを廃止する下心があるのではないか、こういう意味お尋ねでありましたが、さような下心はありません。  それから第三点は、二十九年度予算に計上してあります文教予算についてのお尋ねでありましたが、今回提出せられた予算のうちに計上せられている文教関係の経費、これは文教の見地からみまして、これを以て十分満足すべきものとは考えておりません。併しながらかような予算緊縮の折柄でありますから、これも止むを得ないことと存じておりますので、若しこの予算が成立いたしました場合には、その執行については十分効率的に、有効にこれを執行して参りたい、かように考えております。  ただついでに申上げますが、御指摘の中に青年学級の補助費、これが全然計上されておらんというふうな意味のことをおつしやいましたが、これはほぼ前年並みの補助費が計上されております。その点念のために申添えておきます。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎君登壇拍手
  41. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) お答えを申上げます。  公労法は御承知のごとく占領中の法規でありまして、我が国実情に副わない点が多々あると、つとに指摘されて来ておるところであります。又最近におきましても、各方面においてこれが改正の意見も出ておる状態でありますので、政府といたしましては、事務的にこれを検討いたさせておりまするが、目下この改正案を出すか否かということについては諸般の事情を勘案、考慮中でございます。  ただ政府として、ひとり公企体関係のみでなく、我が国の労使関係全般につきまして、経済自立を阻害するような年中行事的なベースアツプは何とかして慎んでもらいたいという希望を強く持つておりまするが、併しながらそのために、仲裁裁定の内容に政府が干渉するというような考えは今のところないのでありまして、仲裁制度の合理化或いはこの改善ということを考えておる次第であります。  又、次の御質問の、昨年の国鉄職員の給与に関する裁定についての処分のことでありまするが、政府はこの裁定を極力尊重いたしたのでありまして、これが履行については、極めて財政困難なる事情にありながら最大限の努力をいたし、且つ又公労法の定める手続に従いまして国会の御議決を得て、本年一月から裁定全額を履行することといたしましたことは御承知通りであります。然るに、組合側はなおこれを不満としまして、国鉄業務の正常な運営を阻害する行過ぎの行為に出る者があつたことは、公労法の精神に照らしまして誠に遺憾に堪えないところでありまして、これに対しまして相当の処分がありますることは当然と考える次第であります。(拍手
  42. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲り、本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時三分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)