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説明員(平賀健太君) 修正になりました点、極く概略を申上げますと、先ず
裁判所法でございますが、
裁判所法におきましては
政府提出の原案におきましては簡易
裁判所の事物管轄の範囲を引上げまして従来二十万円までということにいたしたのを、これが十万円にな
つたのでございます。それから民訴訟法の改正におきましては、先ず項目別に申上げますと、第一は上告手続の合理化に関する規定、改正規定があ
つたのでございますが、三百九十四条で以て上告
理由を制限いたしましたが、これは修正にな
つておりません。修正になりましたのは、三百九十九条でございます、原審で適法要件を備えない上告、或いは適法要件に準ずる適法要件が欠けた場合に準ずる箇所がある上告を、却下することができるという点でございますが、三百九十九条第一項の第三号、この第三号が削除にな
つたのでございます。即ち第三号は、「上告が法令ノ違背ヲ
理由トスルモノニ非ザルトキ又ハ判決ニ影響ヲ及ボサザルコト明ナル法令ノ違背ヲ
理由トスルモノナルトキ」、こういう事がある場合にも上告を却下できるということにな
つておりましたのを三号全部削除いたしました。結局原審が上告を却下できるのは従来の、従来でも上告不適法として却下されたもの、それだけに限るということに
なつたわけでございます。
それからこの民事訴訟法の改正の一点といたしましては、仮差押、仮処分の上告の制限がございましたが、これはそのまま
政府原案
通りでございます。
それから仮執行宣言付判決に対する上告提起等の場合における執行停止等の要件の加重、これも原案のままでございまいす。
次は、調書及び判決の方式等の合理化でございますが、調書及び判決の方式等の合理化に関する原案の改正規定は全部削除にな
つたのでございます。でありますから百四十三条以下ずつと三百九十一条までこの調書及び判決の合理化に関する改正を加えるというのが当初の案だ
つたのでございますが、これは全部この改正規定は削除になりましたのでございます。
それからなお調書及び判決に関する規定といたしましては六百七十七条の改正規定がございますが、これも従いましてやはり削除になりました。
それから非訟事件手続法の十条、十七条及び十八条、これもやはり調書或いは
裁判書の簡易化に関する規定でございました。これの改正規定も全部削除にな
つたのでございます。
それからなお四百九条は、これは上告
裁判所で原判決を破棄した場合におきまするところの破棄差戻しの
裁判をしました場合に、原
裁判所に訴訟記録を送付するという規定でございます。これは本来調書、判決の合理化とは
関係のない規定でございますが、この規定も削除にな
つたのでございます。
要するに修正の主なる点は三百九十九条の一項の三号が全部削除に
なつたことと、それから調書、判決の合理化に関する改正規定が全部削除に
なつたこと。即ち最高
裁判所の規則に細部を任せるという規定が全部削除になりまして、現行法
通りということに
なつた次第でございます。
以上が修正の概要でございますが、それからなお、
民事訴訟用印紙法等の一部を改正する
法律案、これにつきましても、原案におきましては、この印紙額の増額の仕方が少し物価指数とも必ずしもマッチしていない、少し急激に過ぎるというような
理由を以ちまして、原案よりも若干減額にな
つたのでございます。で例えば三十円としたのを二十円とする、六十円としたのを三十円とする、或いは百二十円としたのを百円、六十円としたのを五十円という
程度に若干減額されておるのでございます。まあ一番問題になりますのは何と申しましても、
裁判所法の簡易
裁判所の事物管轄の範囲二十万円を十万円にしたこと、それから民事訴訟法の改正案の修正におきまして原審による上告却下の場合に関する三百九十九条第一項第三号の改正規定が削除に
なつたこと及び調書、判決の合理化に関する規定が全部削除に
なつたこと、この三点が主な一番この修正案の骨子になるものと考えております。
で、法務省といたしましては、その修正に対してはかように考えておるのでございます。即ちこの
裁判所法、或いは民事訴訟法に対して全然改正が行われないで、民事上告特例法がこのまま失効するということになりましては、これはひとり最高
裁判所の負担が非常に増大するだけではなしに、その結果といたしまして、訴訟が非常に遅延する結果を招く、
従つて非常に訴訟の当事者に対して非常に迷惑を及ぼす、こういう点から申しまして、特例法を失効するに任せて、民事訴訟法、
裁判所法に対して何らの改正を加えないということは、これは非常に好ましくないと考えておるのでございます。それから仮にこの
裁判所法、民事訴訟法については、この際は改正を加えないで特例法を更に再度延長いたしまして、その間に機構改革、最高
裁判所の機構の問題について結論を得るようにしては如何、こういうことも考え得られるのでございます。併しながら何と申しましても、最高
裁判所の機構の問題は、非常に重要な問題でございまして、各方面の利害にも非常に重大な
関係がありますし、早急に結論を得るということが非常に困難であります。而も最高
裁判所の機構というのは、我が国の司法制度のやはり根本に触れる問題でございまして、一年とか二年とか、そういう限られた期間の間に急いで早急に結論を出すという筋のものではないのじやないかというふうにも考え得られるのでございます。従いまして
裁判所法や民事訴訟法にはこの際改正を加えないで、特例法を更に若干延ばすということにしましても、果してそれが妥当な措置であるかということにつきましては、法務省としては非常に疑問を持
つておる次第でございます。従いまして今回の
衆議院の修正はかなり原案に対して大幅な修正が加えられておるようでありますけれ
ども、とにかく
衆議院におきまして慎重に
審議されました結果、
先ほど御
説明申上げましたような修正を加えることが適当であるとされたのであります以上、法務省としては止むを得ない修正だと考えておる次第でございます。で、特例法の失効に任せる、或いは特例法をこの際なお延長するというような考え方よりも、やはりこの修正後の、この修正による、この修正された
法案のほうがよりよいのではないかと、そういうふうに法務省としては考えておる次第でございます。