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1954-05-20 第19回国会 参議院 法務委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十日(木曜日)    午前十時五十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            上原 正吉君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            青木 一男君            大谷 贇雄君            小野 義夫君            楠見 義男君            三橋八次郎君            小林 亦治君            棚橋 小虎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君   政府委員    法制局第二部長 野木 新一君    保安庁次長   増原 恵吉君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    法務省民事局参    事官      平賀 健太君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日米相互防衛援助協定等に伴う秘密  保護法案内閣提出衆議院送付) ○裁判所法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○民事訴訟法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○民事訴訟用印紙法等の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今から委員会を開きます。  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題に供します。本委員会は本日二時間の総括質疑を以て終了いたすことにいたしておりまして六人の質疑者から通告がございました。但し、只今小林委員棚橋委員から質疑はいたさない旨の通告がありました。従つて四人の方でございます。それで質疑者の間に、総括質疑であるから、総理大臣のご出席を希望いたす旨の御要求がございました。その点は政府側お伝えしておいた通りでございますが、総理大臣の御出席は如何なものでございましようか。副総理から御答弁を願います。
  3. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) その点は前から委員長からも御要求があつてつたのでありまするが、総理大臣内閣委員会に今防衛庁設置法案自衛隊法案が出ておりますで、そのほうにかねてから要求されて、今出席して答弁をしております。実は予定は昨日済むつもりでおつたのでありまするが、それが遅れて、今日継続して又質疑応答をやつておりますので、今のところ時間的に見通しがつきませんし、それから昨日本会議、今の内閣委員会相当所労も見えておりまするし、すぐの出席は困難であろうと考えまして、よければ代理をしようと思つておる次第であります。
  4. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 副総理もよく御承知通り、この秘密保護法案については、国民軍機保護法国防保安法復活ではないか、憲兵政治復活ではないかという点を恐れておる。政府においては、併しそれに対しては勿論確信がおありになることと思う。特にその点は重大でありますし、なかんずく首相戦争憲兵政治の暴圧というものを身を以て体験された方でありますから、特に短い時間でも、その点についての政府の所信を明かにせられたい、私は国民の希望しておるところを考えて、特にその点を考慮せられたいと希望するのであります。
  5. 青木一男

    青木一男君 総理大臣都合については、只今総理からもお話がありましたので、今早急に当委員会出席してもらうことは私は困難だと思います。それで副総理総理の職務を代行する権力を持つておりまするから、やはり他の委員会でもそういう例がたくさんありますし、この際は副総理出席を以て総括質問進行したいと思います。そういうふうに計らつて頂くということを提案いたします。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 副総理にお尋ねしますが、私が聞いておるのでは、内閣委員会における総括質問は、あとそんなに時間がかからないように聞いておる。従つて少し無理をして頂ければ、内閣委員会を終了して直後にこちらのほうに来てもらうようなことはまあできないことはないと思うのです。但し若し体がお疲れになつておるというふうなことであれは、一時間なり御休憩されて、そうしてやつてもらつてもいいと思うのです。私ども法務委員会としては午後の日程は勿論あるわけなんですが、若し総理大臣のほうで、そういうふうに重要法案だから俺も一つ出ようということになれば、これは当然私ども日程もこれは各委員で相談をいたしまして本日の終了の時間を少し勉強するとか、そういうふうにすれば何とか都合がつく、全体の私ども審議予定を崩さないで都合がつくと、こう私どもは思つておるのです。そういう状態ですから、もう少しそこを総理に御折衝をされて、折角の機会でありますから、直接この委員会にやはり出て頂く、こういうふうに私は強く希望するのです。と同時に、副総理にお尋ねしたいのは、先ほどその点余り明確に理由をお述べにならなかつたわけですが、午後でしたら御出席が可能なように私内閣委員会のほうの情勢は聞いておりますが如何でしようか。
  7. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 内閣委員会総理答弁は、実は予定は昨日中に終るつもりであつたのでありまするが、開会が遅れました等の事情によりまして、昨日、私が承知しておりますのは、大体半ば程度済んだということであります。私今あと質疑通告者のことを承知しておりませんけれども従つて今どの程度進行しておるかということを申上げかねまするが、病後で相当まだ体も回復しておりませんし、私の判断では、総理の健康の上からかなり困難だと思つております。まだこの委員会のことを話してはおりませんけれども、私はかなり困難だと、かように考えております。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 委員長からはすでに政府のほうに出席方要求してあるのですが、この委員会要求のあることは副総理のほうから総理にまだお話になつておらないのですか。
  9. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 要求があつたことは話しておりますが、今日のことは何も話してありません。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 その要求のあつたことに対するお伝え願つた回答はどういう回答なんですか。あなたに対するお答えは……。
  11. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 体の健康上できれば副総理答弁してもらえんかと、そういうことでありました。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことは甚だ心外ですが、一体副総理総理に対して委員長要求いつお伝えになつたのです。
  13. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) もう最初委員長から聞いた後ですから、一昨日、月曜か昨日です。火曜日には総理は来ませんでしたから……。こういう委員会から要求があつたということを言うたときに言うたように思つております。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 この法務委員会日程がきめられる前のように思うのですが、そういうことになると……。その点は委員長どうなんです。
  15. 郡祐一

    委員長郡祐一君) その点私からお答えいたします。当初総括質疑に入ります前、前の予定総括質問に入ります前、羽仁委員から御要求がございました。それからその際にお伝えをいたしたその後におきましても、最終の段階においては、丁度一昨日でございましたか、私委員会にお諮りをいたしましたように、副総理出席を求めようというときに、今日は副総理出席の必要はないからという委員会お話がございました。あの前におききましても、そのような御要求のあることを伝えておきました。それから日程がきまりました後におきましても伝えておきました。その間数回伝えておりまするから、緒方国務大臣が数次に亙つてお話があつたことは当然だと思います。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 この日程が作成された後に委員長としても緒方さんにお伝えになつておるようですが、副総理のほうから総理に対して日程が作成された後において、委員長から要求のあつたことを改めてお伝えは願つておるのでしようか。
  17. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) それは昨日伝えております。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 その昨日の御返事はそれじやどういうことなんでしよう、先ほどの返事は少し前のような印象を受けたのですが……。
  19. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 昨日は内閣委員会出席要求されて、この出席要求のほうが前でありました。その出席要求されて、それに出席すべく待機しておつたのでありまするが、そのときの話が先ほど申上げた通りであります。
  20. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 総理の御健康が国会お出ましになられないようでございましたらともかく、隣の部屋までお出ましになつておりまするので、それをこの重要法案がこちらにかかつておるのでございますから、如何にも大変軽視されたような感じがいたしますのでございますが、どうでございましよう。緒方大臣、こちらの二時間というのも煎じ詰めて、時間を短くすることにいたして頂ければ、ちよつとでもお寄り願うようなお取計らいは願えないものでしようか。
  21. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) それは内閣委員会のほうの要求が先にありましたので、月曜の日に総理内閣委員会に出るつもりで参つてつて、出ずに帰つたのですが、火曜日には体の都合国会に参らずに、それから昨日は内閣委員会に四時から出席して、七時頃までおつた。病後でありますために、甚だ疲労をしており、今日は十時からというので、先ほどから内閣委員会出席して答弁に当つておりますが、その内閣委員会進行状態も知りませんけれども、今日出席ということは、こちらのほうにも内閣委員会終つた出席ということは、かなり困難じやないかと考えておるのでございます。
  22. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 各委員から御発言がございましたが、只今緒方国務大臣説明によりますると、吉田総理大臣の健康の状態出席をしてもらうことが無理のように存じまするので、最終総括質疑は、副総理出席によつて進行を願いたいと思います。 (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  23. 亀田得治

    亀田得治君 只今委員長からのまあ御希望がありましたが、隣の委員会まで来ていて、健康の理由ということを議事録の上で正式に載せられて、それを私ども了承する、これはちよつと相当問題があろうと思うのです。それでなんでしようが、これは委員長休憩されてもう少しそこを検討してくれませんか。私は総理大臣が健康上の理由国会答弁に立たない、これは重要なることなんですから、而も隣の委員会には来ておる。こういう状態を簡単にこれはさようですかというわけにはなかなかこれはいかない。私ども委員としても、若し身体の調子が悪ければ、時間を幾らか縮めてもいいと、こういうふうに私どもも申しておるわけですし、それからこういう日程は、副総理も聞いておいて欲しいのですが、極めてスムースにもう全員が一致してこれは作つておる日程なんです。だからそういう点も十分考えてもらわないといけないと思う。だから委員長が今最終的にお諮りになろうとしたようなことは、私少しまずいと思うのです。若しそういうことをお諮りになるのなら、重要なことですから、委員全部を集めて、もらつてつてもらいたい。健康とそうして答弁しないというこの二つが、ここで結び付くわけなんですから、大変なことになる。法務委員会としてこういうことを認めるのは、そういう意味で、私ども決してこの法案について、議事進行をどうしようとか、そういう気持一つもない。ただ筋だけを通して行きたい。これは絶えず法務委員会で念願しておる。そういう立場から申上げておるので、必要であれば、私ども午後の審議を更に勉強して、夜にかけてもいいというくらいに、私どもは思つておる。そういうことですから、只今委員長がお諮りになつたのは、もう少しちよつと慎重にお取扱い願いたいと考えるのです。
  24. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 私の宣告に対する御意見のようでありまするから、申上げます。緒方国務大臣におきましても、総理出席については、いろいろ努力をされまして、他の政府側の方においても努力をされたように、私承知いたしております。緒方総理からの総理大臣出席に関する御報告を承わり、私は実は各委員の御意見も、承わつたのでありまするから、御進行願いまして、そうしていずれ休憩の時間に入ることと思います。私は先ほど申しましたように、緒方国務大臣出席によりまして、議事の御進行を図ることにいたすことを、一応申上げております。その間におきまして、休憩の時間等もございまするから、その間におきまして、更に緒方国務大臣吉田総理大臣に対して、健康の事情従つて出席の能否というようなことを御交渉下さることは、私も希望いたします。この委員会といたしましては、只今亀田委員お話通り、円満に進行して参りましたので、引続き議事を進めたいと思います。
  25. 上原正吉

    上原正吉君 先ほど亀田委員から御発言がありましたが、この委員会が円満に進行して参つたことは亀田委員の申しておる通りでございますけれども、今日の総括質疑は成るべく総理が出て来るように、総理都合が悪かつたら副総理でもいいというふうに私は了解しておりますので、その了解がはつきりしませんという点はあつたかも知れませんが、必ずしも今日総理が出て来るということが全員一致した委員会進行の定めではございませんので、念のために申上げておきます。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 丁度只今楠見さんもお見えになりましたが、上原さんのような意味に私どもは解釈しておりません。これは総理に対する最終質問を席かでもやるという気持で私ども考えていたのですよ。総理が出られなければ副総理でもというお話は一昨日の打合会のときには全然私ども開いておりません。だからその点ははつきりしておるのですから……。委員長少し強引過ぎると思うのだ、こういう状態議事進行するということは……。
  27. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 委員長として申上げます。総理出席要求されます御要求亀田委員羽仁委員から特に強かつたことは承知いたしております。従いましてその意味合政府側要求をいたしたことは勿論でございます。併しこれが懇談会のときに総理大臣でなければ進行が絶対に不可能であるというような決定は私はしていないと存じます。それで強引か強引でないかは、御判断次第でありますけども、私はここまで総括質疑を運んで参りましたので、若し私が先ほど申しげましたように、緒方総理が申しましたように、総理が健康上の都合で成るほど内閣委員会のほうには出席しておるが、当委員会には出席できん、これは遺憾なことでございますけれども緒方総理からさように申しますので、それによつて総理に対する質疑進行いたしたいと申上げたのであります。それでそれはどうしても御反対であれば、今まで議事進行について討論採決などはいたしませんでしたけれども採決をいたしてでも進行を図るより仕方がない状態に相成ると思いますので、そういう場合の採決はいたさないことに大体法務委員会としてはいたしておりますが、動きのつかないときはいたし方ございませんから、そういう方向にせざるを得ないのでありますが、さようなことでなく、私の申上げるように御了解を頂き、更に只今の時刻でございますと、丁度質疑の時間が午後にも引続くと思いますので、その間昼食のための休憩をいたそうと思いますから、更に緒方総理から吉田総理の最近の状況を確め総理の意向を確めた上で午後に継続いたします。又従いまして緒方総理からその報告をして頂くことを希望いたしまするが、私は総括質疑にお入り願いたいと思います。併しそれでもいかんとおつしやるなら、委員長といたしましては、これは扱いのしようがありませんから、採決ででもおきめを願うよりいたし方がございませんから、どうかそういうことのないように御協力を願います。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 採決されるのであれば、こういう状態で健康上の理由理由にして委員会要求最後要求総理大臣が否認する、こういうことが一つ前例になりますから、非常に大きな問題だと思う。私ども会派に帰つたつて了承されません、とても……。総理大臣国会に、重要法案について最終答弁に立てない、その場合の健康というものは相当なものでなければいけない。現にうちの会派の諸君が隣で、質疑をしているわけですからね。おかしいじやないか。これに対して私どもそんなこと考える余地がない。誰が考えたつてそうですよ。だからどうしても強引におやりになるなら、私はこういうことが一体法務委員会として筋が通るものかどうか、法務委員全部を集めて一つお諮り願いたい。前例にもなると思いますから……。
  29. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは副総理に聞いて頂きたいのですが、特に人を縛るという法律案は、国会審議が鄭重になされなければならないということは御了解頂けると思うのです。それで、法務委員会が、今委員長からも御説明がありましたように、従来の伝統の上からも、人を縛るのに党派的な見地から人を縛るということでは、裁判所もその権威を守るのに非常な困難を感ぜられましようし、そういう意味でやはり多数によつて押切るということを参議院の我が法務委員会では今までやつて来なかつたのです。ところが不幸にして今の委員長の御意見のようなことでありますと、そういうような甚だ悲しむべき状態が起つて来ると思います。私は結局こういうような人を縛る法律は、最後裁判所責任をとられることになるので、日本裁判というものが公平なものだという確信を少しでも崩したくないと思うのです。そういう意味からも是非総理の御出席を願いたい。先ほどの御説明の中に、今日の内閣委員会の今後の質疑通告者が何人おるかということについてもまだはつきり御承知がございませんし、そうして又総理只今の健康状態なり、気持なりということもはつきりわかつていないことでありますので、お願いできることならば今それらの点を確めて頂いて、それでこの委員会審議が理想的に行くように御尽力が願えないでしようか、そういう点を伺いたいのであります。
  30. 青木一男

    青木一男君 総理国会へ出ておられる場合でも、委員会へ出ない場合もありますし、衆議院参議院関係もありますので、私の承知しておる限りでも、参議院委員会総理が出ておるために、衆議院総理出席要求を本会議でしたにもかかわらず、参議院委員会出席しておるという理由で副総理で間に合した例は私は幾つも知つておるのであります。これはお互いに国会ではそういうような譲歩をし合つて、そのために副総理が設けられてあるのでありますから、私は副総理代行ということも認めて然るべきであると思います。私は少くとも副総理代行で満足しますから、私の質問を許して頂きたいと思います。
  31. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 重ねて申上げます。本日の最終総括質疑につきましては、現に緒方国務大臣出席を得ております。これによりまして進行することにいたします。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 議事進行で……。若しどうしてもそうされるなら、私どもはそういうことを認めた責任はとれませんので、退席いたします。従つて定足数もこれは明確にされて議事進行されるならして頂きたい、それだけ申上げておきます。
  33. 楠見義男

    ○楠見義男君 速記をとめて下さい。
  34. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記をやめて。    〔速記中止
  35. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。
  36. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは副総理に本当に心からお願いするのですが、この日本民主主義というものをどうか成長させたいということよりほかに私何も考えていないのです。特に国会を通じて、そして又それでも解決しない場合には、裁判所によつて公平な解決があるのだという感情を国民が抱いているということがなければ、これはとんでもないことに私はなると思うのです。で、昨日の裁判所の判決についても十分御承知のことと思いますが、ああいう場合にも私たちとしては、やつはりそれが日本裁判は決していわゆる階級裁判というものではない。で、裁判は公正なんだという感じ国民の間に高まつて来ることを願つているんです。今法務大臣の使命はそこにあるのだと思う。裁判所権威まで落ちてしまえば、実際これは幾ら声を大にして叫んでもすることができないようになつてしまう。そういう点をお考えになつて、特にこの法律案最後裁判所で処置なされなければならない問題でありますから、どうか一つ決して御無理を申しげておるつもりでは、又申上げるつもりもございません。ですから最大の御努力を賜わつて、本日の午後に、首相がかい時間でも出席せられるようにお願いしたいと思います。如何でございましようか。
  37. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 誠真誠意日本民主主義を育成して参りたいという御意見は全然私どもも同感でございまして、そういう観点から、この法案審議等につきましても考えて参りたいと思つておるのであります。今、この法案が非常に重大な問題を含んでおるから、今日の午後にでも総理出席ができるように交渉しろというお話でありますが、それは私委員会先ほど来の模様を見ておりますから、その通り伝えて、総理に交渉いたします。いたしますが、今は現に内閣委員会出席しておりますし、それから、かなり内閣委員会質疑応答の時間も長いようでありますので、今日そのあと出席できるかということは、仮に私が総理と話合いいたしました後にも、かなり困難じやないかということを考えております。それは一に健康上の問題でありますが、今の申上げた趣旨で交渉はいたします。
  38. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは総括質疑に入ります。
  39. 青木一男

    青木一男君 私は二点について、政府を代表する緒方総理から直接御答弁を得たいと思います。  第一点は、この法律憲法との関係でございます。勿論こういう法案を出す以上、憲法違反法案を出すはずはないと思うのでありますが、当委員会における論議においても、二つの点において憲法違反の疑いがあるのではないかという議論が出ておるのでございます。一つは、憲法第九条の戦争放棄との関係であります。一つは、憲法における国民基本的自由権との関係でございます。戦争放棄の条項から、軍事的な秘密というものはないだろういう前提で、憲法違反問題が起きておるのでございます。この点について、我が国が国家安全のために自衛措置をとるためには、かかる防衛秘密保護の必要さという点から提案されたと思うのでありますが、そういう点につきましても、政府委員答弁によりますと、憲法自由権保障というものは絶対的なものでないからして、この公共の安全、全体の利益擁護のために或る程度の制約は止むを得ないというような見地から、憲法との調和を考えてこの法案を出されたものと聞いておるのでございますが、政府は、この法案提出について、これらの憲法との関係について如何なる信念の下にお出しになつたかということを先ず以てお伺いいたしたいと思います。
  40. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。今御質疑の中にもありましたように、政府としましては、この法律案憲法には決して違反しない、こういう信念に基いて立案いたしたのであります。この独立国として国が持つておりまするこの自衛権発展といたしまして、いろいろな防衛の手段を講ずるのでありまするが、日米安全保障条約日本の国力が十分でないために、日米安全保障条約を結んでおり、そのアメリカの軍隊が駐留する、或いは日本防備力が増強しまする上に、アメリカの兵器を借りる、或いは船舶を借りるというようなことに伴いまして、こういう法律を必要とするように至つたのでありまして、そういう意味から憲法第九条の日本の非武装、日本がいわゆる軍備を持たないという趣旨には、日米安全保障条約以来決して牴触はしていない。そういう意味でその日米安全保障条約発展といたしまして、こういう問題は起つて参りましたけれども憲法に違反していないという信念は、少しも変つておりません。  それから第二十一条の自由の権利でありますが、これにつきましても、その法案にもありまするように、十分その点には憲法に牴触しないように、又この法案そのもの趣旨も、憲法に違反しない範囲において、立案いたしているのでありまして、その点は只今御言明になりましたように、政府といたしまして、信念において憲法に違反しない、こういう工合に考えます。
  41. 青木一男

    青木一男君 第二点は、この法律の運用についてでございます。我が国の現状から見て、この種の法案の必要であるということは、多くの国民から是認されていることと思うのでございますが、併し一審心配されているのは、この運用についてでございます。殊に戦時中のような軍機保護法、或いはこれらの類似の法律の運用の行過ぎがあり、国民の自由というものが著しく拘束された苦がき経験からして、この法案が同じような方向を迫るのではないかということが、反対論の主なる動機ではないかと考えるのであります。それでこの点については、政府がこの運用について、しつかりした考えを持つておれば、私はこの法案の適用においてそう不安なことはないと考えるのであります。大体においてこの法案は善意の人、即ち反国家思想とか、或いは不法行為とか、そういうような反国家、反社会性の行為がない場合に、善意でこの法案に触れるということは殆んどないように私は見るのであります。殊に過失の場合におきましては、過失によつてこういう罪を犯すということは、第四条によつて特定の人だけがこの法律に牴触するのでありますから、先ず普通なことをしている善意の人には、この法案の適用はないというようなこの法案は建前でできていると思うのであります。併しこれは検察事務その他の行政上の適用の如何によつては、この法律を拡大解釈され、或いは濫用されるということの懸念があるのじやないかと思うのでございますが、政府はこの点について、法の運用について、飽くまでも立法の趣旨に反しないように、国民自由権その他の侵害に亙らないように、十分注意をしてこの法律の運用に当りますことは当然と思いますが、その点についての政府の確たる御所見を承わつておきたいと思うのであります。
  42. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 戦争中に国家総動員法に始まりまして、いろいろなこの国民の権利を圧迫する、拘束し、圧迫する法律が制定され、その悪用によりまして、非常な不安な社会状態をかもし出したことも、まだ我々の記憶になまなましいところでありますし、この点につきましては、政府としてもその記憶が国民になまなましいことが想像されまするだけに、十分の注意を払つてこの文字の、文字に至るまで十分の注意を払つたつもりであります。この法律の運営につきましては絶対に戦時中の過誤を再びしないように万全の努力を払うつもりであります。
  43. 青木一男

    青木一男君 一般人につきましてはスパイ行為をやるとか、スパイ行為の協力をするとか、そういうような反国家性、反社会性の行為をやるということは、普通の場合にはそういう不正な行為以外には考えられないのでございますが、一番問題になるのは、報道関係の人々が当然の仕事をやる間に知らず知らずの間に法に触れるような事態が起きはしないかということが心配されるのでございます。それで殊に第三条の第三号に「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を、他人に漏らした者」というこの一カ条が新聞その他の報道関係の業務に適用されれば、これは由々しきことになるという御心配があるようでございます。この点について私も先般政府委員質問したのでございますが、この「業務により」というこの「業務」の範囲には報道関係の仕事は入らないのである、これは従来の立法例の用語から、或いは判決例等からもはつきりしているので、その点は少しも懸念がないのであるということを明言されているのでございます。それでこの点は私は大事なことと思いますので、更に政府委員からもう一編その点の見解、立案に当つての見解を伺い、更に政府の代表である緒方総理からその点の確認を得ておきたいということを考えるのでございます。
  44. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) お尋ねの通りでございまして、「業務により」とありまするのは、その業務により当然知るべくして知るということでございまするので、新聞記者関係は入つて参りません。
  45. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 只今官房長から申上げましたように、この第三条の第三号の業務という中には、新聞等、言論報道に関することは入つていないのでございます。
  46. 青木一男

    青木一男君 よろしゆうございます。
  47. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 青木委員質疑は終了いたしました。午後二時まで休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩    —————・—————    午後二時二十七分開会
  48. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 午前の休憩前に引続き秘密保護法案に対する質疑を続行いたします。  本日の御質疑は、質疑時間を制限いたしてありまするから、質疑時間終了の五分前、並びに質疑時間が終了いたしました場合には、委員部のほうからその旨お伝えをいたしますから、さよう御了承を願います。
  49. 楠見義男

    ○楠見義男君 秘密法案についていろいろ政府委員の方との間に質疑応答が重ねられたのですが、外務大臣に極く簡単に一つだけお伺しておきたいのですが、それはMSA協定第三条において「両政府の間で合意する秘密保持の措置を執るものとする。」こういう規定がありまして、同じく附属書のBで、事前の同意の問題があるのでありますが、私が今ここでお伺いしたいと思いますのは、第三条にいわゆる「両政府の間で合意する秘密保持の措置」とはどういうことを指しておるのかということでありますが、条約局長の御説明を伺いますと、この問題については立法措置をとるという義務を日本側は負つておらないし、又どういう刑を量定するかということも負つておらない。この保護法の第一条の第三項にイからニまでありまして、武器の装備品等の構造、性能、使用の方法等、イからニまでのこの内容については口頭で以て向う側に一方的に日本側から通報をする。それに対して向うからは何らの異議の申立てもない。従つてここで「両政府の間の合意」というものができ上つておるようなふうにもとれまするし、或いは又この法律ができてから向うにこの法律を示して合意をするというように理解されるような答弁も又他の政府委員からありまして、一体ここで言つておる両政府の間の合意というのは、どういうことを考えてこの協定を結ばれておるのか。この点をお伺いいたしたい。
  50. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 今おつしやつたイからニに至る範囲というものは、やはり先方からも異存がないという旨を申しておりました。これは合意の一部であります。それから附属書にありまするアメリカ側で定めている秘密保護の等級と同等のものを確保するということもやはり合意の一種でありまして、そういう合意に基きまして、日本としては一番適当に合意を果すにはどうすればいいかということで、結果においてこういう法案が必要であるという結論が出たわけでございます。
  51. 楠見義男

    ○楠見義男君 もう少し詳しくお伺いしたいのですが、私のお伺いの仕方がまずかつたかもわかりませんが、私のお伺いしておる意味は、さつき条約局長の説明の例を引いて申上げたように、日本側としては立法的措置というものの義務を負つていないのだ、又安保条約その他においては立法その他の措置というふうになつているけれども、今度は幸いなことにはそういう義務は負つておらない。ただ、秘密保持の問題については、内容だけを向うに一方的に通報して、向うから今おつしやつたようなことになつて来ておるのだ。そこでこの法律日本政府責任においてといいますか、日本政府の自由な立場においてこの立法ができておる。そこで内容の問題について、内容については合意ができておるようなふうにも理解される。それで以てこの条文が果しておるのか、或いはこの法律が制定されたあとに、こういうものを日本政府としては立法措置を講じましたと、そこで如何ですかと、こういうことで向うと合意の取次ぎになるのか、もう法律がこのまま通つてしまつたら、もう合意という問題は起らないのか、こういう問題なんです。
  52. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 只今合意いたしておりますのは、今申した通りイ、ロ、ハ、ニという、こういう範囲で秘密保持をやるということ、それからもう一つは、そのやり方についてはアメリカでやつておるのと同等といいますか、同種類といいますか、そういうような秘密保持の仕方、こういうことが合意の内容であります。従いまして例えば理論的に言いますれば、それを法律でやらなければいかんとか、いや法律でなくてもいいのだというようなことは、これは日本政府が理論的には、適当にきめ得ることであります。ただ、若しアメリカで以てやつておるような秘密保護の等級を同等に日本でやるということになりますと、実際問題としては法律を以てせざれば、その約束は果せないのじやないか、果せないと私は考えております。  なお、この法律ができて、これを認めて、それから合意するのではなくして、もうすでに合意はできておると言つてよろしうございます。それの合意に基いてこの法律を出したんでありますが、これが若し仮に成立しないということであれば、或いはこのアメリカでやつておるような秘密保護の等級と同じようなことを確保する措置がこの法律でもとられないという場合には、或いは修正されたか何かして……、そういう場合にはやはり今までの合意と違うことになつてしまいまして、国際的にはそれでは約束を果すということにはならないであろう、こう考えております。
  53. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の合意の問題で、内容とそれからアメリカと同等の秘密保持というお話なんですが、この同等という問題は、この法律でも政令で以て機密だとか、厳秘だとか、秘だとか、部外秘だとか、そういうクラシフアイをやつておるわけなんです。これは従つて実はここで言う法律の問題ではないようなんですが、それ以外に同等という場合をお考えになつておる場合に、例えば刑の長短とかいろいろそのほかのことも同等という中に入つているでしようか。今の秘、厳秘、極秘云々のクラシフイケーシヨンですね、それだけのことなんでしようか。その点はどうなんでしようか。
  54. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私の考えでは、ただクラシフイケーシヨンをしただけで、それが実際に守れないような措置でありましたならば同等ではないと考えております。ただ、アメリカ側の法律はそういう機密保持と同時に、重要なものにつきましては何と言いますか、ツリーゾンと言いますか、叛逆罪等の意味も加味してありますから、今ここで議題になつております法律案の刑罰よりはよほど重いものがずつとあるわけであります。併しそれは今申したようなほかの意味も入つておりますから、日本ではツリーゾンというようなことはございませんから、その点をどかしまして、丁度機密保持に必要な程度アメリカの刑事罰はどういうものであるかということを、これは研究中でありまして、理論的には必ずしも正確と言えるかどうかわかりませんが、そういう点も見まして、アメリカと同等のものは単に行政措置でクラシフイケーシヨンをやるだけではなくして、或る程度刑事的な罰も加えて秘密を保持するということが必要である、こう私は考えております。
  55. 楠見義男

    ○楠見義男君 ちよつと時間がないのですが、……それでは外務大臣、有難うございました。  それでは緒方さんにお伺いします。この秘密保護法の問題で午前中も青木さんから、この法律ができ上つた場合の運用の問題について御質問がありましたが、その御質問趣旨も恐らくこの法律運用の適否というものが一般の国民に非常に大きな影響がある。特に旧時代の軍機保護法当時の経験に鑑みてその点は一般も非常に懸念しておるという、こういう趣旨からの御質問つたと思うのであります。これはひとり青木さんに限らず、一般にそういう非常な心配を持つております。そこで御意見を伺つたのでありますが、実は私ども会派の一部でもこの法律についていろいろ検討をいたしておりまするが、同時にこういうような考え方はどうだろうかという一つの考え方があります。それについての御意見を伺いたい。それはこの法律においてはいろいろ字句の点で心配をしたりいろいろしておりますが、それに対して又政府の御答弁もありましたりいたしましたけれども、或る場合には水かけ論に終る場合が多い。そこでこの法律を適用する場合を慎重にさせるというような手続を一つ考えたらどうか、例えば教育中立法における一つのクツシヨンとして教育委員会の請求を待つて論ずる、こういうような一つのクツシヨンを設けたらどうか。そのクツシヨンを設けるという考え方は、実は今申しましたようにまあ戦争中の例から考えても、できるだけこれは濫用を阻止しなければならない。同時にこの法律に引つかかる事態というものが丁度破防法と同じように極めてレア・ケース、およそ事件としても極めて少数の事件であるというと、それから第二番目にはこれについては罰金刑等もなくて、いわば重罪であるということ、こういうような点からいたしまして一つのクツシヨンを設けたらどうか。その構想は、例えば総理大臣の請求を待つて論ずる、検察庁は総理大臣の請求を待つて論ずる。その総理大臣が請求をするについては、一つ委員会の議に付して請求をする、その委員会は勿論これは内閣の管理に属するのでありますが、委員会の構成としては人権擁護に非常に関係がありますから、人権擁護局長のような人は必ず入つて傾く、それから外務関係がありますから、外務省の例えば条約局長のような方も一人入つて頂きたい。それから言論報道に重要な関係がありますから、新聞界の長老のような方に人づて頂き、又更に放送関係の長老のような方に入つて頂く。そういうような構成で以て委員会を作り、その委員会の議に付してそうして請求をして行く。その請求するまでには、全国の警察なり或いは検察庁に対してこういう事犯が起れば、総理大臣に通報するようにという訓令はあらかじめ出しておいて頂くわけなんでありますが、そういうような手続を経てそうしてこの問題を論じたらどうか。こういう考え方があるのでありますが、そういうような慎重な手続をとる必要があると私どもは考えておりますけれども、それに対する政府の御所見をお伺いしておきたい。
  56. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お説のようにこれは極めてレア・ケースだと思われますし、それから運営の仕方如何によつては非常な問題も起すだろうと思います。一般に言論方面等にも戦争感じたような暗い感じを持たせることがないとも限りません。でありますが、今のところ政府では今お示しになつたような、今構想の一端をお示しになりましたが、そういうことを考えてはおりませんけれども、目の前にいろいろな戦時中の法律の例もございますので、よく一つ研究して見ますが、ここでははつきりしたことは申上げられません。
  57. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の点は私どもも真剣に考えたいと思うのでありますが、仮に今回間に合わないという場合でも、一つ是非お考え頂きたい。先にも申上げたように極めてケースは少い、而も重大である。それから法律の内容は不当な方法とかいうようなふうに、言葉自体が必ずしも明確でない、あいまいな字句でありますから、従つてできるだけこれは慎重にやらなければならないということでありますから、是非一つお考えおき頂きたいと思います。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 総理大臣が健康上の理由で御出席になりませんので、どうしても総理大臣に確かめたいという一、二点だけは別に残しましてそれは極めて短時間になりますから、それでは総理との質疑応答も甚だ中途半端なものになろうかと思いますので、その予備的な質疑として一つ総理総理大臣の時間を差引いた分をここで確かめておきたいと思います。  先ず第一は、この法律が出まして、非常に世論の関心を受けておりますことは、こういう法律が制定されますと、いわゆる秘密主義、こういうことがいろいろな形で強くなるのじやないか。結果としてそういうことが例えば国会議員の場合には国会に対する質疑応答、あらゆることに現われて来るのではないか。そういつたような面からもこれは相当心配されている問題なんです。法案の細かいことにつきましては、本日は申上げる段階ではないのですから、ただむしろこの法律をどういう気持で取扱つて行くか、こういうことが非常に大事なんです。只今も楠見委員からもお話のありました通りなんです。そうなりますと内閣の最高の責任者、この人かどういう気持ちを持つているか、国会なり国会議員に対するあらゆる材料を提供する、そういつたような問題について……。私はこのことは最終の段階で是非総理大臣に確かめたいと思つておりましたところ、昨日我が党の中田委員総理の外遊に関する質問、これに対する本会議における答弁なるものが、御承知のように、答弁をいたしませんという答弁をしている。私はこういうことがこのまま済まされて行くと、いわゆる秘密保護法によつて心配されている一つ秘密主義、こういうことが非常に悪い影響を与える、そういう立場からお聞きするのですが、副総理総理大臣のああいう態度に恐らく同調され、補佐されてああいう結果なつているのだろうと思いますが、一体総理大臣があのような答弁することができる法的な根拠というものがあるのかないのか。あるとすればどういうところに根拠を置いておられるものか。この点を先ず明らかにしてもらいたい。
  59. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 総理大臣の昨日の本会議における答弁は、答弁ができないということを申したのではないので、そういう意図でもないことは私もよく知つているのでありますが、それは国際上の影響を考えなければならないが、今まだ御質疑に対して答弁のできるところまで行つておらない。という意味は、答弁ができる時期になつたら、政府総理の外遊に対する計画を発表する。今はその段階なつていないということを申したのであります。これは普通の国会質疑応答で、別に法律上の根拠というものを考えてやつたものではございません。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 答弁要求しているほうの議員は、現在の段階における諸般の状況についてお尋ねしているわけなんです。外遊に関する一切の計画というものは或いは説明ができないかも知れない。併しながらその三分の一も二分の一も触れることができない、このようなことで私なかろうと思うのであります。このようなことがいやしくも本会議において堂々まかり通つたならば、大変なことになります。本会議ではなかなかそういう質議応答が細かくできませんから、私は委員会においてこそ、こういう秘密保護法と関連して首相にこれを質して見たい、こう思つているのであります。ところが只今の副総理お話を聞きますと、どうも法的の根拠ということが余り明確でないのですが、私はああいうことは明らかに違法だと考えている。私の考えの根拠を申上げましよう。それでは……それに対して若しあなたのほうで反撥があれば申してもらいたい。反撥ができなければそういう態度を改めてもらわないといけない。御承知のように旧憲法の五十四条ですね、ここでは国会への国務大臣出席というものは、国務大臣の権利としてこれが認められている。権利としてだけ認められている。ただ、議員の要求があれば、国会に出て答弁しなければならないというのは、議院法でこれはきめられている、旧法時代においては……。ところが現在の憲法では私から申上げるまでもなく、六十三条においてはこれは、憲法上の義務として国務大臣にそれを課しているのです。これは六十三条と同じような外国の憲法なんかを引用するまでもなく、出席して答弁する、こういう義務なんです。昨日のようなものはあれは答弁じやないのです。口を動かせば答弁なつたというようなものじやない、議長の質問に対して答えるべき義務が憲法上あるのです。これを否定する根拠はどこにもない。外部に知れては困るという場合には法律秘密会の要求をして、そこでなされたらいいわけなんですね。そのために秘密会の制度というものがあるわけです。拒否して実質的に答えられないというような根拠はどこからも出て来ない。ただ幾らか手がかりになりますことは、これは国務大臣答弁に直接国連のある規定ではございませんか、例の議院に於ける証人の宣誓及び証言等に関する法律、議院に証人として呼ばれた人が宣誓をして証言をする。その際に官庁等の秘密事項につきまして、一定の手続をとれば、証言を拒むことができることが規定されておる。この場合には幾らか引用できるのでありますが、その際におきましても国会においてその証人に対し重ねて発言をしろ、証言をしろといつた要求があつた場合に、最終的には内閣総理大臣が国家の重大な利益にそれが影響があると声明をしなければならないわけです。その声明を待つて初めてその証言の場合におきましても黙つておることが認められる。これは併し国務大臣に関する直接の条項ではありません。いやしくも国務大臣に関しては、若し都合が悪ければ秘密会の要求をするなりして、一切答えて頂くということが憲法上、法律上の建前なんです。たとえこの法律総理大臣が幾らか引用されまして国家の重大なる利益、こういうことを恐らく考えておられるのであるかも知れませんが、若しそうであれば、外遊ということを発表することがどうして国家の重大なる利益にですよ、この法律は今まで私聞いてみますると、一回も発動されたこともない、非常に限定された意味のものなんです。これは秘密保護法の審議中においても政府委員から答弁をされておる、極めて稀な場合なんだ。従つてこの法律を引用するにいたしましても、その引用というものは外遊計画のその一部をも言えないというような根拠には絶対私はならないと思う。私どもはこういう見解を持つておるのですが、この見解は間違いだというふうに副総理はお考えでしようかどうですか。
  61. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 法律の見解としてそれが間違いであるかどうかということは私は批判いたしませんが、総理のとりました態度は、国会から出席並びに答弁の御要求がある。それに対して懇談的に、政治的に今は答弁がしにくい時期であるから、これを少し時期を変えてもらいたいという意味の懇談をしたのでありますが、議長を通じてしたのでありますが、その結果質疑の内容について答弁ができなければ、そういう意味答弁だけでも、とにかく憲法第六十三条もあることであるから、出席を拒否し、答弁をも拒否するという立場は、これは政府としてとるべきではない。従つて事情がそうであるならば、そういう答弁だけでもすべきではないかということで、議長とこれはすべて懇談づくであります。法律の、憲法のこの個条を無視したとか何とかということではなしに、懇談的に、政治的にそういう一応の話合いになりまして、それに基いて総理答弁をしたのであります。従つてこれは答介しないとか答弁をすることができないということではなくて、今はそのときでないから、従つて又追つて答弁する時期がある、こういう意味を含めた答弁であると思うのであります。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 これは甚だけしからんことを聞いたのですが、議長が副総理と相談してそんな答弁の方式というものをとつて来たとおつしやるのですが、私議員としてちよつとそういうことは了承できませんよ。はつきり議長がそういうことをおつしやつているか。
  63. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 議長を通して懇談したのでありまして懇談の内容にそういうことを私が申上げましたが、それを議長の職権の上に、どういうふうに解釈されたか、又各派の代表の人と、議長が会われた場合に、どういうふうに表現されたかということは、私は存じません。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 議長と副総理との間の問答の点は、これは私も会派において確かめてみましよう、そういうことは……。これは議員の一つの特権なんです。仮に議長といえどもそういうことは軽々しく左右できる私は問題でなかろうと思う。議長がそういうみずから院の権限を縮小するといいますか、放棄されるようなことをおつしやるとは私は思わない。恐らくそこに言葉の了解の仕方の違いがあるのではないかと思いますが、これは私も確かめた上で、次に総理が出られるときまでに、その点を整理して、私は更に聞いてみたいと思う。そこで只今総理のほうでは、総理答弁しないと言つているのではないのだ、只今の特別では都合が悪いという意味なんだ、もう少し時期を待つてもらいたい、そういう意味なんだ……、ところが国会議員が要求しておりまするこの要求の根拠というものは、これは国会が内閣の行動を監督するためにこれは与えられておるのです。広い意味での行政監督権に基いた特権なんです。従いまして要求されたほうが、自分の立場からいつて都合の悪い時期でありましようとも、その時期における状態というものをこれは答弁すべき義務がある。議長との間に、その点が何かぼやかされたように感じますが、私はそういうふうに考える。都合の悪いことであつても、答弁をしなければならない。今都合が悪いのだから、答弁はできないとおつしやるのだが、それは成り立たないのですよ。併しながら都合が悪いというのは、例えば総理が外遊をされる、或いは、外遊以外の問題でもいい、なにが行動を起そうとされる。ところが国会が監視権があるというのは、それはいいか悪いかということの批判を事前にやるべきことなんです、事前に……。そこにこそむしろ意味がある。そういうことをよくあなたたちお考えになれば、自分が都合が悪くつても、話合いがつかないで、どうしても今の時期で御答弁願いたい、こういうことになれば、やはり答弁の義務があると私は考えのですが如何でしようか。
  65. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 答弁の義務は憲法に基いてあります。ありますが、あの問題についてあのときにおいてはああいうお答えをするより政府としてはいたし方がなかつた。と申しますのは、総理の外遊というものは大体用意はいたしておりますが、まだ現に国会進行中において確定するわけにはいかない。あらゆる準備を進めております。おりますけれども、今公のところにおきましてこれを確定したと申すわけには参らない。そういう意味で今の段階において答弁が困難であるから、できないからその段階ではないということを申上げたのであります。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 準備を進めておるということをお認めになつているわけでしよう。準備を進めておる、その準備の状況を質問者は聞いておるわけでしよう。それをそのままどうして言えないわけですか。何もアメリカとの具体的な借款その他の項目の内容が言いにくかつたら、それは言わなくてもいいでしよう。何ら質問者に対して答えられない、こういうことが前例なつたならば大変なことですよ。都合がよいとか悪いとか、準備中だとか単なる形容詞で逃れるものなら、時の総理大臣というものは、都合の悪い質問に対しては皆それで行きますよ。そんなことは許されるものではない。あなたはもう準備自身を認めておる。実際に外務大臣なんかが中心になつていろいろ連絡をとつているでしよう。そうしたらその状態国民に知らして、これがどうして悪いのです。準備状況にあるものはあなた一切今後答弁を拒否するつもりですか。ほかの問題でも一緒でしよう。単にこれだけではない。予算の編成にしたつて、今年の予算を編成するときに来年の方針を幾らか聞きたいというときには、予算委員会においても大蔵大臣の答弁を皆求めておるでしよう。大体考えの固つておるものは大蔵大臣としては答弁しておるでしよう。これが当然なんです。あなたの場合は準備しておるけれどもそれは言えないというのですから、これは私は許されないと思う。準備もないというのなりこれはいたし方ないでしようか、それはどうなんですか。
  67. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 考えが固まつたもの、今そういう言葉を使われましたが、考えが固まつたもの、即ちきまつておるものは答弁ができると思います。今準備しておるものは決定しておるわけではないのでありまして、旅行そのものが確定しておるのではないのであります。確定しておるということは申上げてないのであります。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 併し例えば具体的に言いますと、少くともどことどこの国を訪問する、それぐらいの日程なら、幾らかの変更はありましようとも、そういうことぐらいは確定しておるわけでしようが、どうなんです。
  69. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) その準備はしておりますが、確定はしておりません。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 その準備というものは目標国に対していろいろ連絡をとつておられるわけでしよう。私そういうことがどうして発表できないかと思うのです。こことこことここへ行くつもりでおる、そんなことを秘密にされるその総理大臣が、こういう秘密保護法なんかをお使いになつて御覧なさい、それで皆心配するのですよ。運用上どうかといつたような甚だ危惧すべき状態というものがここにすでにできておるのでしよう。国会議員のこの審議権というものが重大なここで障害にぶつかつているわけです。そんなことをざつくばらんに育つていいことだと私ども常識的に思うのですが、どうしてもそれは言えないことですか。訪問先の国のことぐらいまでも……。
  71. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) この法律には、その防衛秘密の限界がはつきりしてありまして、これ以上に秘密にすることはないと思います。今の旅行のなんにつきましては相手方というよりも、日本の出先機関との往復はあると思いまするが相手方にどこまで届けておるかということは私は承知しておりません。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 副総理は私の質問を少し感違いされたようですが、防衛秘密保護法の秘密事項はちやんと法律できめてあるから、これ以上拡がる心配はないというふうなことを言われておるのですが、私が今国会議員の立場からお聞きしておるのはそのことじやないのです。この秘密主義といわれるような考え方を改めませんと、例えばこの法律ができますと、この法律に関連するいろんな秘密事項を国会議員が予算委員会その他において聞く場合があるわけですね。今の総理のような考え方を私ども是認しておきますと、そういうことについてこれはすべて国家の重大な利益に関係あることだ、国会議員にも知らすわけには行かない、こういうことで拒否されることを私どもは心配しておる。法務委員会における審議の途中におきましては、今もらう予定秘密、この程度のものはこの法律で言う国家の重大な利益に関係あるとは思われないから、国会議員の御説明要求があれば説明できるでしよう、こういうふうに私どもが開いておるのですが、これは併し事務当局の見解に過ぎない。そこを心配しているのですよ。ところがこういう秘密兵品でない外遊のことすら、準備段階であるからと言つてお話にならないような態度でこの秘密保護法というものを成立さけることは、その後における運用というものを私ども非常に心配する。その点は私が心配するのは尤もでしよう、どうですか。それは単なる杞憂ですか。
  73. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 外遊のまだきまつていない日程を言わないから、これは秘密保護法の運営について非常に間違いを起す虞れがあるという因果関係は私は浮んで参りませんが……。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 たまたま外遊問題に現われた吉田総理の考え方、吉田内閣の考え方というものが問題なんです。秘密外交ということはいつも言われておるでしよう。四日の日に出発するというのでしよう。それが二週間前になつても国家としての最も重要な国会の内部においてすらそれに対して少しも触れられない。こんな秘密主義はないでしよう。納得行きませんよ、こういうことは……。あなた、立場を変えてよく考えて御覧なさい、その点を……。
  75. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 秘密外交ということを言われますが、外交の折衝中において秘密があることは如何たる民主主義国においても当然あるので、私は少しも不思議ではない。いわゆる秘密条約というものを締結して国民に知らせない、国民の批判の外にそういうものを締結することは、これはいわゆる秘密外交でありますが、日本の悪法の建前から申しましても、今まで政府がやつて来た経過から見ましても、国会の目に触れないような条約は決して結んでいないのであります。秘密外交ということは当らないと思います。今の外遊の問題につきましては、いろいろな反響がありまするから、できればやはり決定した後に公表いたしたい。殊に国会という国権の最高機関、公式の上にも公式の機関において発表するものは、できれば、許されるならば決定後、確定後にいたしたいというのが政府の考え方です。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 これほど問題になつている事柄ですから、やはり至急発表するのが当然なんでしよう。
  77. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) できるだけ至急に……。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 時間がありませんので、私余りやつていると、総理大臣に対する時間を食つてしまつたら大変ですから、もうやめますが、(笑声)とにかくこれは一つ総理大臣によくこのことを副総理から伝えてもらいたい、その点の考え方を……。
  79. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) どの点の考え方ですか。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 国会議員が外遊の二週間前になつてその経過について質問をしている。これに対して少しも答えない。これは秘密三義の最たるものなんだ。本人はどうお考えになつているか知らんが、いやしくも総理大臣が暫く国を留守にして、昨日や今日の思いつきで行けるわけじやない。いろいろな準備でうんと、長くかかつて整えて行くわけでしよう。国会議員も皆心配するわけです。その出発の余り長くないときに質問をしている。それに対して答えなんていうのはべらぼうな話ですよ、こんなことは……。この点総理大臣がここにおこしになるときにやはり同じような答弁でしたら、これはなかか秘密保護法の運命というものに或いは関するかも知れませんよ。
  81. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) それはどうかな。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 それはどうなるかはわかりませんが、そういう考え方でこういう秘密保護法なんかを扱つてもらつちや困る。必ずそういう考え方だと、私は今度は法律に盛られた事柄については、これはもう国会議員に対しては秘密会といえども説明しない、こう言い切るにきまつている。その辺のところをよく一つ検討されて肚をきめて最終質問に応じてもらうように一つ総理を通じてお願いしておきます。
  83. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 不幸にして時間が制限されておりますので、いろいろ伺いたいことはあるのですが、余り断片的に伺いますと、お答えもなさりにくいだろうと思いまして、最初に私の心配しております点全体を申し上げまして、それでそういう意味合において一つ一つあとから伺わして頂きます。この法案について国民が心配していることは、特に緒方総理が多年言論界で御苦労になつた点からも十分御注意になつておることとお察しをいたします。その点一等主な点は、やはり今亀田委員からも切々とおつしやつたような秘密政治の復活ということだと思うのです。これは先ほどおつしやいましたように、どうか言葉の上で御解決にならないで、国民の心配しておる点をお察し下すつてお答えが願いたいと思うのですが、これがその秘密というものがだんだん国民を圧迫するようになつて来るという点が第一の心配と、それから第二は、憲法というものをやはり国民が頼りにしておる。ところがその憲法があつちから外れ、こつちから外れて、この法律だけを見ていれば、それほど大したこともないかも知れないと思うのですけれども、世間の言葉にもある通りこれくらいはよかろう、あれくらいはよかろうと言つておるうちに大変な怪我になつてしまうという意味で、国民が敏感であることはこれも御了察頂けると思う。そういうように第二は憲法関係、それから第三は、どうも今日本に大した秘密があるとは思えない。戦争に負け、長年占領されておりまして、国の中の問題は殆んど外国にすつかりわかつておる。それから又外交上の協定に基いてアメリカ日本に提供する秘密でありますから、結局最後のことになれば、外交上の解決しかできないことですから、日本アメリカとそんなに外交関係を超えて固く結ばれておるということはないことは言うまでもないのですから、幾ら刑罰を重くして見たところで、アメリカ日本との関係で借りる関係というものは、外交関係で間違いがあつた場合には済まんというようなことでしかないのですから、アメリカが大した秘密日本に貸すということは想像できないのです。それなのにこういうかなり重い秘密保護の手当をなさるということから、国民が抱く第三の心配は、やはりこれが抑圧政治になるのじやないか。で防衛秘密保護すると言つたつてそれは大したことがないので、そうじやなくて、こういうことで国民の口を塞ぎ、目を塞ぎ、耳を塞いで行くのじやないか。これも恐らく御同情願えると思う、こういう心配がありますことは……。  それからそれと関係いたしまして、国内には抑圧政治をやり、そして国外にはアメリカといわゆるもう取返しの付かないような関係に入つてしまつて日本としては近くにある中国或いはソビエト同盟とか、そういう国々とも成るべくいい関係を結んで行きたいと、これは私は政府も御同感と思うのですが、そういう関係までもだんだんむずかしくなつて行くようにポイントのリターンといいますか、これは戦争中さぞ御苦労になつたことと思うのですが、そういう方面に国民を引返すことのできないようなところまで連れて行かれるのじやないか。ですからこの法律が表面にありますところからだけ読んだのじや、どうもそう大した秘密もあるように思えない。それから又日本で今までそうスパイが至るところ横行したという実際の例もない。それから最近の御承知日米安全保障条約の行政協定に伴う刑事特別法などでも、あれを犯したと思われるような実際重大な事件が殆んどございません。これは政府にも伺つたのですが、僅か四件しかない。それもいずれもやはり簡単に申せば本当に下らない事件です。で本当は日本にある本当の軍事土の秘密で、いずれかの国が探知したいと思うのは、保安隊ではなくて在日米軍にある。その在日米軍の秘密の探知ということについてもそれほど深い深刻な活動はない。こういう状況ですから、どうしてもこれは今申上げたような国内に対して国民の目を塞ぎ、耳を塞ぎ、口を塞ぎ圧迫する感じ、それから国際的にはアメリカと余りに深い関係に入つてしまつて、他の世界の全面的な国々との関係を打開することが一歩々々難になつて行くのじやないか。こういう心配がやはり国民の心配だと思う。それから最後のまあ第四といいますか、第五といいますか最後の心配は、やはりこれはお察しが頂けると思いますが、原爆、水爆の問題、それで原爆、水爆の問題については副総理もよく御承知のようにイギリスも非常に敏感にこれを問題にしております。それで時間がないので簡単にしか申上げられませんが、要するにアメリカは今の状態では日本に原爆、水爆の基地を置くこともできるし、そうしてそれを基地として使うこともできる。そうして日本にはそれ、全然相談もしないということになつていることは御承知通りでこれが一番世界で広島の、世界で最初のああいう経験をした日本としては、二度と再びこういう経験をしたくないと思つていることは御同情願えると思う。ところでこういうものができると、そういうものの解決がいよいよ困難にたつて行く。それで原爆、水爆をどうかやらないでくれというような努力もやりにくくなるのではないか。これも決して無関係のことを申上げているのではないので、時間がないので言葉が足りませんが、どうか無関係のことを申上げているようにおとりにならないでもらいたいと思う。大体以上のような輪郭で質疑とさして頂きたいと思います。  第一に伺いたいのですが、これは本法案を考えて行きます上に第一に必要なことは、そして動かすべからざる点と思いますが、そして先日から十数回に亙りました場合の委員会審議の際の政府答弁として一貫されておりましたが、日本に本来の意味における軍事的秘密がないのだということが、政府お答えとして今まで私は伺つておる。又私も固くそう信じております。私はこの点においては政府のお考えになるところも少しも違わないと思うのでありますが如何でございましようか。でこれが第一点です。従いましてこの今アメリカから借りる軍機の、軍機といいますか、防衛関係秘密というものは、例えて申せば本来の意味における軍機、即ち旧軍機保健法や国防保安法というようなものの形で以て保護せらるべきものではなくつて、現在各官庁に民主主義諸国、民主主義の政治の下でも各官庁にそれぞれありますところの行政上の秘密というもののほう、この一つのどつちに行くかということでこの問題が起つて来る。でこれが各行政官庁にある秘密保護ということでありますれば、現にこの自衛隊法ではそういうふうな態度をおとりになつているわけです。そういうことであれば、これは今の疑いというものもよほど薄くなつて参りますし、そして国民の心配する秘密というものに圧迫されるというものも非常に薄くなつて来る。そして一般国民にこれのためにいろいろ迷惑の及ぶということもないということになつて来るだろうと思いますが、それで先ず第一点は、憲法との関係におきましても日本に本来の軍事的秘密がないという政府のお考えはこれは動かないものと伺つてよろしうございましようか。そして従つてこの本法案政府内部の行政上の措置が中心であつて、一般国民を圧迫するというところに中心があるのではない。なかなかこの法律案は多少一般国民関係するような部面がございますけれども、併し主たる点はその政府部内の問題であるのだというように、今まで政府お答えになつております。この点をどうか動かない政府確信としてそれは外さない、それをいやしくも逸脱しないというお考えが頂けると思うのですが、如何でしようか。
  84. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今の軍事秘密の問題、それから今回のこの秘密保護法を制定するに至るまでの考え方、これは決して国民憲法上の権利を圧迫するというような趣旨……これを第一段階としてこういう趣旨のことを考えておる、それに基いたものではない、行政上の必要から出ておるのかどうかという御質問は全く同じ意見を持つております。
  85. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そうすると第三の点ですが、このこういう法律案審議されましたときに政府の動かない見解として伺つておきたいのは、この憲法保障しております主権在民の原則であります。こういうことについて今更伺うのは、甚だ私としても心苦しいのですが、併しやはりこういう重要な問題は、我々の不断の努力によつてつて行かなければならないと思いますので、やはり主権在民ということであれば、やはり国民ができるだけというか、すべてを知る権利というものが尊重される、これが第一の問題、最高のものである。極く止むを得ないものだけが、国民のそういうような最高の権利というものに対して、多少の制約を受けるというふうになつて行くものと思うのですが、そこで今国民がやはり最も心配しておりますのは、この秘密、それからその防御秘密の本体をなすところの防衛力というものが、この本当に民主的なものとして成長して行くのか、それとも手の着けられないようなものになつて行くのかという、まあ昔の言葉を借りて言えば、サーベルが人間を引つぱり廻すというようになつて行くのかという点なのであります。これは私どもも実際非常に苦労する点なんですが、私はこの点について、三点伺つておきたい。  それは第一は、国民生活の安定なくして防衛力というものを置きますと、必ずこれは腐敗する。これは副総理に向つて私からくどくど御説明申上げるまでもなく、御了解のことと思います。国民生活が安定している場合には、防備力というものを置いても、そう腐敗しないのです。又規律も保たれることでしようが、国民生活が安定していない、国民が食うに困るというのに、防衛力のようなものを置かれれば、必ず腐敗するのじやないか。従つてこの原則を常に我々は第一のものと考えなければならん。それから第二に、主権在民、そうして国民生活の安定というものがないのに、防衛力を置きますと、必ずこれはとめどもなく大きくなつて行きます。その点旧憲法時代にも、天皇の大権を以てしてもそれは抑えることができない、実に恐るべきものになる。その点こういう一種の武力ですから、武力のような物理的な力がどんどん大きくなつて行くというのを抑えるには、主権在民の力によるよりほかにない。又国民生活の安定ということよりほかに私はないのだと思う。ですからこの基本線が少しでもないがしろにされますと、とめどもなくこれは大きくなつて行く、そうして外へ出かけて行くという、その侵略の慮れがある。国民はこれを繰返したくないと思います。こういう点について、少しでも私は、つまり国民生活の安定がない、そうして主権在民が確立していない、そこに防衛力を置けば腐る一方、そうしてふとる一方、最後に寝てばかりいられないと、どこかへ出かけて行く、こういうような慮れのあるところに、これは秘密が結びつくことが恐ろしい。こういうふうになつて来ますと、これに私どもは非常に絶望的な気持さえ抱くのです。この点についてのどうか動かない御見解を伺つておきたい。
  86. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 新らしい憲法の下における防衛力は、どこまでも民主的なものとして育てて参りたいと考えております。これにもう今の憲法の建前から当然のことでありまするが、この点は日本の過去におきましていろいろ不幸なできごとがありましたので、この点は特に政府におきましても強くその考えを徹底させたい。今日防衛力の漸増、いわゆる再軍備という議論が巷に相当強く行われているにもかかわらず、政府がその意見ににわかに応じかねますのは、何と申しましても、政治の基調は国民生活の安定、充実というところになくちやならんのでありまして、そこに防衛の限界がある。国際環境の如何にかかわらず、そこに一つの物差しが、限界があるというふうに考えているからでありまして、主権在民、申すまでもなく主権在民、それが国会におままして、国会の中にそれが具体化されまして、防衛力の持ち方、或いは運営につきましても、すべて国会の批判、決議に待たなければならない、その立場は絶対に捨てないつもりでおります。
  87. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 第四の問題でございますが、今の問題と関連しましてそうして楠見委員からもお述べになりました点も、それに関係すると思うのですか、この主権在民の、国民がすべてを知る権利というものが現実的に現れて来るものといたしましては、申すまでもなく新聞記者、国会議民、それから学者の活動ということだと思うのです。で、これもさつきの楠見委員のお考えにもありましたように、外国の例に、例えばアメリカの原子力関係なんかの場合には、その原子力の問題についてはやはり委員会というようなものが設けられている例もあるのですが、私の伺いたいのは、やはり政府の今までの御答弁の中には、新聞記者、国会議員或いは学者といえども、その新聞記者、国会議員、学者としての活動のほうじやない而で、この法律案などに触れる場合には、やはり容赦なく取締らざるを得ないようなお答えがあつたのです。併しこれは副総理御自身御経験がありましたように、新聞記者なり、国会議員なり、学者というものは、長年世間の信頼を受けてその仕事をするためには、みずから持するところはおのずからある。決して外部から眺めるように、野放しにできないというようなものではない。なかんずく新聞記者、国会議員、学者は、みずから持するところはおのずからあるのです。従つていやしくもそういうような人々に対して、この本案を以て不安を与えるということは、厳に避けるべきだと思う。こういうことを十分にされないと、あたかも一種の防衛秘密というか、区々たる防衛秘密を以て、国を守るというような問違つた考え方に行くのじやないか。で、新聞記者、国会議員、学者というようなものは、建設的なものであり、防衛秘密保護というようなものは、建設的なものではないのですから、この点において、どうか今申上げたような言論の自由、或いは学問、研究の自由、又国権の最高機関たる国会の活動というものに対して、一指も染めようとするものでないというように確信をいたしますが、その点について政府の所信を披瀝して頂きたいと思います。
  88. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 私は自分の経験を言うちやいけませんが、特にこの民主主義の下におきましては、言論の自由というものが、普通一般の常識で想像されている以上に大きな問題であり、尊重されなければならん問題で、言論の自由ということによつて、すべての政治悪というようなものが回避されるような気がいたしているのであります。併しこの学者も、新聞も、政治も、なかなか完全な理想的な境界まで行つているかどうかということにつきましては、これは勿論議論があるので、新聞の立場を以ていいますれば、新聞それ自身に高い良識とそれから常に絶えざる反省が、自省があることが必要である。つまり言い換えれば責任感でありますが、それが両々相待つて参りまして、この政府がその自由の縄張りの中にできるだけ入らんようにやつて参りたいとは思いますけれども、こういうアメリカの援助に関連した装備の秘密というようなものは、これは先ほど申しました行政的な考えから来るのでありますが、こういう秘密は止むを得ない、こういうものは今後も或いは起り得るかと考えております。
  89. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その点については重ねて総理大臣からも伺つておきたいと思います。  で、最後に二点ですが、私の時間が制限されておりますので、詳しく伺えなければ、後に首相からも伺つておきたいと思います。その二つといいますのは、こういう法律案が、その他のいろいろな立法、或いはその他の政府のさまざまのなされることなどと並行いたしまして日本がこれ以上アメリカと深い関係に入つて行くということは、日本が国際的に全面的に自由独立の将来を開いて行くという面に、国民としてそろそろ限度が来ているというように感じているのじやないか、これ以上深い関係を結べば、それはすべて逆効果になり、いわゆる折角アメリカとの間に親密な関係が結ばれるといたしましても、それはことごとく反米的な効果しかもたらさない。これはくどくど申上げるまでもない、最近の世間を御覧になつて、私の申上げることは決して過言でないと御覧下さると思いますが、従つてこの法律案、こういうような立法というものを今後これ以上拡大されて行くというお考えは私は万々ないというように思いますが、その点について伺つておきたい。  それから最後の問題は、すでに国会の議決を以て、原爆、水爆についてその兵器としての使用禁止ということを、これは日本国民の、世界のすべての国々の中で特別な又意味を持つてそうした国民の悲しい願いといいますか、切望を現わした決議がなされたことは御承知通りであります。こういう立法がなされて行きますときに、やはり時期を失すると、原爆、水爆の問題についても、国民が或いは我々が少しも手を出すことができないという状況になつては大変でありますので、この原爆、水爆が武器として使用されるときに、禁止という国会の決議というものを尊重せられて、その方向に努力をせられて頂きたい。政府の御答弁の中には、併し自由主義諸国、それから共産主義諸国の両方の戦略、戦術の関係から、日本として必ずしも水爆、原爆の禁止ということがそう強く言えないような面もあるというような外務省からの答えがあつたのですが、これは併し私はそれよりもつと乗り越えた大きな問題であると思う。それで日本自身、米ソ対立の犠牲になるということは、これは国民として考えないことだと思いますので、イギリス、インドその他の国々もこういう点において同じような考え方を持つて行かれるわけですが、そういう米ソ対立というような問題を、一層高い見地に立つて、原爆、水爆というもので国際問題が解決されるというふうには言つて欲しくないという点で是非政府が尽力され、力を尽されたい。それで現に民間でしばしば言われていることですが、世界各国のそれぞれ責任ある方々がその原爆、水爆問題については見解を明かにせられているのに、日本国民が頼りとしておる総理大臣がその問題について一言もなさつていないということを国民が悲しく思つているという点も附加えて、以上二つの点についてお答を頂いて、そうしてなおそれらの点について首相からもお答えを頂きたいと思います。
  90. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 日本の国際的の立場につきましては、多少所見を異にしておるかとも考えます。と申しまするのは、日本は、平和条約によりまして、何と説明いたしましようとも自由陣営の中に入つておることは、これは事実であります。ただ、かというて、まあお述べになりましたような、どこまでも何と申しますか、アメリカ本位の考え方というようなことはあるべきではない。日本は、その間におきましても自主的な立場を常に考えて、それによつて国際的の日本の位置を築いて参る、これは申すまでもないところであります。米ソの犠牲になつてはならん、仰せまでもないのでありますが、ただ、その犠牲にならない方法について多少所見が違うのではないかということを今お話の間に感ずるのであります。私は、今の米ソの対立というものが終局において戦争にはならないのだと、私はもう大きな戦争は原爆、水爆ができたあとにはないという見通しを持つのであります。そういう点から、これは今日の日本が自由陣営の中にあることが決して戦争に拍車をかける立場におるとは思つておりません。併しながら日本がその間に自主的に方針をきめて行くことは申すまでもないのであります。原爆、水爆に関しまする国会の決議を尊重いたしまして、日本の世界情勢に対する影響力がどれだけあるないにもかかわらず、その実現につきまして、国としてできるだけの努力をして参らなければならんことは申すまでもない、かように考えております。
  91. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 緒方国務大臣に対する総括質問只今まで続行いたして参りましたが、亀田委員が十五分間、羽仁君が十分間を留保されています。この取扱い、即ち今後の進行につきまして御懇談をいたしたいと思います。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  92. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。
  93. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 政府委員の御答弁によりますと、本法によつて保護する防衛秘密事項というものは、アメリカ秘密であると同時に日本秘密である、こういうふうな御答弁であつたと思うのでありますが、併し、この法律によつて保護される対象になつておる防衛秘密というものは、MSA条約によつて供与される武器に関する秘密ということになつておりますから、内容から申せばアメリカ秘密ということになるだろうと思います。ところが、将来日本で武器なんかについていろいろ発明などがあつた場合に、つまりアメリカの今度の保護されておる秘密以上の、もつと重要な発明等があつた場合に、政府はそういうものを保護しようと思つておられるのかどうか。つまり秘密事項として特別に保護しようとしておられるのかどうか。若しそういうものに対して保護するということになれば、この法律によつては直ちにそれを保証することはできないのでありますから、この法律を改正するなり、修補するなりして、この法律によつて保護しようとされるのであるか、或いは別個に日本秘密というものに対する立法を別にして、つまりこの法律と二本建によつて保護しようとしておられるか、その点お尋ねいたします。
  94. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) この法律によつて保護しまするものはすでにきまつておるのでありまして、併しアメリカに新らしい秘密兵器が出た、そうして日本に供与される場合でも、これは改めて法律を必要とすると考えます。
  95. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 法律を改めて作つて二本建によつて保護しようとしておられる、こういうことですか。
  96. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) それは仮定のことで、法律を作るとも何ともまだきめておるわけではないので、そういう場合が若し起りますれば研究をいたさなければならんと存じます。
  97. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 それでは只今のことは政府がはつきりおきめになつておらんとすればそれで打切ります。  その次に、この法律の中には相当用語等に不明確な点がありまして、適用上はつきりしない点が頗る多いと思います。又拡大解釈をされる危険のある点も相当にあると思います。そうしまするというと、将来言論機関に携わる人々、或いはその他の人々が、演説をする、或いは文章を善く、いろいろな場合に、前以て一体どの範囲まで差支えないのか、どうであるかということを政府のその筋の取締官の意向を聞き合せるというようなことが必要になつて来るところがあると思います。副総理は新聞人として長いこと御関係になつておりましたから、そういうことの場合はよくおわかりになつておることと思いますが、そうなりますというと、検閲制度の復活との間は五十歩百歩でありますが、そういう検閲制度というものが復活しないようにするためには、どういうふうにしたらいいか。それについての副総理のお考えを承わりたい。
  98. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 戦争中の国家総動員法ができました後にできましたいろんな戦時立法、特に言論関係のもの、国防保安法とか、軍機保健法でありますとか、いろいろなものができましたが、その当時の法律と比べますと、今回の秘密保護法案は、相当親切に書いてあると考えます。国会の論議を通しまして、更に文理、或いは政府の考え方等も明白になつて参つておるのであります。私が今仮に新聞社側におるといたしましても、このアメリカから供与された装備品、或いはそれに関する情報というようなものに関して、どこまでが新聞社で扱つていいかどうかということは、この法律で大体私は危げなく行けるのではないかと思つておりますが、今の検閲制度というようなことは政府としては考えておりません。それだけに法律の立案につきましても、更に又その後法律ができた後の措置等におきましても、十全を尽したいと考えております。
  99. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 只今の御答弁では甚だ不満足でありますが、時間もありませんから、これ以上追及しても同じでありますからやめます。
  100. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは先ほどお諮りいたしましたように亀田委員の残余の十五分、羽仁委員の残余の十分の取扱いにつきまして懇談いたしたいと思います。    午後三時四十三分懇談会に入る    —————・—————    午後四時二十五分懇談会を終る    〔委員長退席、理事上原正吉君着席〕
  101. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) 速記を始めて下さい。  次に、裁判所法の一部を改正する法律案民事訴訟法等の一部を改正する法律案民事訴訟用印紙法等の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。三案につきまして衆議院におきまして修正されておりますので、この修正案につきまして政府当局から説明を聴取いたします。
  102. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 修正になりました点、極く概略を申上げますと、先ず裁判所法でございますが、裁判所法におきましては政府提出の原案におきましては簡易裁判所の事物管轄の範囲を引上げまして従来二十万円までということにいたしたのを、これが十万円になつたのでございます。それから民訴訟法の改正におきましては、先ず項目別に申上げますと、第一は上告手続の合理化に関する規定、改正規定があつたのでございますが、三百九十四条で以て上告理由を制限いたしましたが、これは修正になつておりません。修正になりましたのは、三百九十九条でございます、原審で適法要件を備えない上告、或いは適法要件に準ずる適法要件が欠けた場合に準ずる箇所がある上告を、却下することができるという点でございますが、三百九十九条第一項の第三号、この第三号が削除になつたのでございます。即ち第三号は、「上告が法令ノ違背ヲ理由トスルモノニ非ザルトキ又ハ判決ニ影響ヲ及ボサザルコト明ナル法令ノ違背ヲ理由トスルモノナルトキ」、こういう事がある場合にも上告を却下できるということになつておりましたのを三号全部削除いたしました。結局原審が上告を却下できるのは従来の、従来でも上告不適法として却下されたもの、それだけに限るということになつたわけでございます。  それからこの民事訴訟法の改正の一点といたしましては、仮差押、仮処分の上告の制限がございましたが、これはそのまま政府原案通りでございます。  それから仮執行宣言付判決に対する上告提起等の場合における執行停止等の要件の加重、これも原案のままでございまいす。  次は、調書及び判決の方式等の合理化でございますが、調書及び判決の方式等の合理化に関する原案の改正規定は全部削除になつたのでございます。でありますから百四十三条以下ずつと三百九十一条までこの調書及び判決の合理化に関する改正を加えるというのが当初の案だつたのでございますが、これは全部この改正規定は削除になりましたのでございます。  それからなお調書及び判決に関する規定といたしましては六百七十七条の改正規定がございますが、これも従いましてやはり削除になりました。  それから非訟事件手続法の十条、十七条及び十八条、これもやはり調書或いは裁判書の簡易化に関する規定でございました。これの改正規定も全部削除になつたのでございます。  それからなお四百九条は、これは上告裁判所で原判決を破棄した場合におきまするところの破棄差戻しの裁判をしました場合に、原裁判所に訴訟記録を送付するという規定でございます。これは本来調書、判決の合理化とは関係のない規定でございますが、この規定も削除になつたのでございます。  要するに修正の主なる点は三百九十九条の一項の三号が全部削除になつたことと、それから調書、判決の合理化に関する改正規定が全部削除になつたこと。即ち最高裁判所の規則に細部を任せるという規定が全部削除になりまして、現行法通りということになつた次第でございます。  以上が修正の概要でございますが、それからなお、民事訴訟用印紙法等の一部を改正する法律案、これにつきましても、原案におきましては、この印紙額の増額の仕方が少し物価指数とも必ずしもマッチしていない、少し急激に過ぎるというような理由を以ちまして、原案よりも若干減額になつたのでございます。で例えば三十円としたのを二十円とする、六十円としたのを三十円とする、或いは百二十円としたのを百円、六十円としたのを五十円という程度に若干減額されておるのでございます。まあ一番問題になりますのは何と申しましても、裁判所法の簡易裁判所の事物管轄の範囲二十万円を十万円にしたこと、それから民事訴訟法の改正案の修正におきまして原審による上告却下の場合に関する三百九十九条第一項第三号の改正規定が削除になつたこと及び調書、判決の合理化に関する規定が全部削除になつたこと、この三点が主な一番この修正案の骨子になるものと考えております。  で、法務省といたしましては、その修正に対してはかように考えておるのでございます。即ちこの裁判所法、或いは民事訴訟法に対して全然改正が行われないで、民事上告特例法がこのまま失効するということになりましては、これはひとり最高裁判所の負担が非常に増大するだけではなしに、その結果といたしまして、訴訟が非常に遅延する結果を招く、従つて非常に訴訟の当事者に対して非常に迷惑を及ぼす、こういう点から申しまして、特例法を失効するに任せて、民事訴訟法、裁判所法に対して何らの改正を加えないということは、これは非常に好ましくないと考えておるのでございます。それから仮にこの裁判所法、民事訴訟法については、この際は改正を加えないで特例法を更に再度延長いたしまして、その間に機構改革、最高裁判所の機構の問題について結論を得るようにしては如何、こういうことも考え得られるのでございます。併しながら何と申しましても、最高裁判所の機構の問題は、非常に重要な問題でございまして、各方面の利害にも非常に重大な関係がありますし、早急に結論を得るということが非常に困難であります。而も最高裁判所の機構というのは、我が国の司法制度のやはり根本に触れる問題でございまして、一年とか二年とか、そういう限られた期間の間に急いで早急に結論を出すという筋のものではないのじやないかというふうにも考え得られるのでございます。従いまして裁判所法や民事訴訟法にはこの際改正を加えないで、特例法を更に若干延ばすということにしましても、果してそれが妥当な措置であるかということにつきましては、法務省としては非常に疑問を持つておる次第でございます。従いまして今回の衆議院の修正はかなり原案に対して大幅な修正が加えられておるようでありますけれども、とにかく衆議院におきまして慎重に審議されました結果、先ほど説明申上げましたような修正を加えることが適当であるとされたのであります以上、法務省としては止むを得ない修正だと考えておる次第でございます。で、特例法の失効に任せる、或いは特例法をこの際なお延長するというような考え方よりも、やはりこの修正後の、この修正による、この修正された法案のほうがよりよいのではないかと、そういうふうに法務省としては考えておる次第でございます。
  103. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  104. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) 速記を始めて下さい。  本案に関しまして、いずれ衆議院側より説明を聴取いたしまして、その後御質疑を願うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十六分散会