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1954-05-08 第19回国会 参議院 法務委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月八日(土曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————   委員の異動 五月七日委員西川彌平治君辞任につ き、その補欠として加藤武徳君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事                  上原 正吉君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            中山 福藏君            棚橋 小虎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    法務省民事局参    事官      平賀 健太君   —————————————   本日の会議に付した事件国際連合軍隊に関する民事特別法  の適用に関する法律案内閣送付)   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) これより本日の委員会を開きます。  先ず国際連合軍隊に関する民事特別法適用に関する法律案を議題に供します。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 民事特別法に関連して先ず第一点として伺いたいのは、国連軍の過去における不法行為、それに対しても今度の議定書なり、或いはそれに基く民事特別法によりますと、日本国責任を負うと、こういうことになつておりますが、この点は、独立国体面から言つても非常に余りにも行過ぎじやないかと考えるのですね。よく法律等で遡つて適用されるということがございますが、それはやはり一般的に認められる合法的な行為なんですね。こういう許されないことをやつた、その問題について遡つて国責任を負つてやりましよう、これは私非常に不都合だと思うのです。議定書がそういうふうになつておるから、実はこれは法務当局としては仕方がないのだと、こういうふうなお考えだろうと思うのですが、私委員会開会前に実は余り詳しくない人のほうがいいのだと申上げたのは、そこの考え方の問題なんですね。そういう点についてどういうふうにこのような遡及を認める立場についてお考えになつておるか先ずお伺いしたい。
  4. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 若しこの遡及しないということになりますと、事柄国際法一般原則によつて決定するということにならざるを得ないと思うのでございます。そうなりますと、この国連軍の軍人、軍属などが公務上の不法行為を過去においていたしておるといたしますと、日本国としてはそれに対して裁判権がないということにならざるを得ないのでございます。普通の方法といたしましては、外交上の手段を以ちまして、日本政府被害者に代りましてその関係派遣国から損害賠償を取る、或いは被害者がその派遣国本国裁判所訴えを起しまして損害賠償請求をするということになつて来るわけでございます。勿論日本政府損害賠償責任を負う筋合じやございませんけれども、そういう経路を経まして、被害者満足というものが得られることになつて来るわけでございます。ただ、そういたしますと、外交交渉をやるとか、或いは本国裁判所訴えを提起するということになりますと、非常に手続が面倒になりまして、容易に被害者満足ということは得られない。やはりこの場合も、今後における公務上の不法行為の場合と同じように、日本裁判所裁判権を持つ。そして日本国派遣国の代りといたしまして一応損害賠償をしてやつて、そうして日本国賠償いたしますと、その賠償額の四分の三に相当するものは結局派遣国から日本政府に償還されるわけでございますから、今後発生しますところの不法行為の場合と同じように処理することが、被害者に救済を与える点においては最も簡易迅速に目的を達することができまするので、こちらのほうがより合理的ではないかという考慮に基くものでございます。  それから、今のは公務上の不法行為でございますが、公務外不法行為の場合、これは今後に起きますところの不法行為の場合でも、日本政府としては全然責任がないのでございまして、過去におきますところの公務外の私の不法行為については、日本政府は勿論責任がない。ただ事実関係日本政府調査いたしまして、賠償額はこのくらいが相当であるということを関係派遣国通知をいたしまして派遣国のほうで加害者に代りまして慰藉料被害者に払うという手続になるわけでございまして、これは日本国主権を害するというような問題は全然ございませんので、この点は遡らせても一向差支えない。むしろ被害者に急速に満足を与えてやるという点においては、遡らせることのほうがより便宜であり、合理的である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 この公務上の行為による損害が国民に起きたと、そういう場合は、これは常識的に考えて、やはり日本外交政策犠牲者なんですから、私は日本政府がその被害者に対して一時立替えて適当な措置を至急してあげると、これは当然国家としてなすべきことではないかと実は思つておる。だから、そういうふうにさえすれば被害者の問題は片付いて行きますし、あとはやはり日本政府外交交渉によつてその加害者である国との間で正規折衝をして、国際法原則に基いてやる。私はそのほうが、たとえ外国軍隊日本の国土におるということを認める立場をとつておる場合であつても、この日本立場というものがやはり一つの枠内ではあるが強いのではないかと思うのですね。それをこういうふうな規定で行きますと、初めから公務上の受けた迷惑、これを日本政府がとつて代つてやる、これから受ける印象というものは、何と言いますか、被害者立場からだけ考えると、先ほどの御説明のようなことも考えられるのですが、この外国不法行為をそのまま何か日本が肩替りする、こういう印象が極めて強いのですね。勿論その損害額の全額を肩替りするのではないので、あとから四分の三返してもらうのだと、こういうふうになつておるけれども、一応何か外国不法行為をそのまま日本政府が是認して行くような印象が極めて強いのですね。これは私は非常にまずいと思うのです、こういう規定の仕方は……。普通の国際法原則で堂々とこれは処理して行つてよい問題だと思うのですね。被害者については、今申上げたように、政府がそれこそ一時的に適当な手当をしておく、そういう方法がどうしてとれなかつたものかということをお尋ねしたい。或いはアメリカが諸外国と結んでおる、アメリカ軍が派遣されておる国との協定が殆んどこういうふうになつておるのか、何かそういう事情でもあつたのかどうか。その辺のことを少しお聞きしたい。
  6. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 只今アメリカ云々というお話がございましたが……。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 アメリカじやない、連合国
  8. 平賀健太

    説明員平賀健太君) そういう事情は実はございません。それから本来から申しますと、これは行政協定ができましたときに同時に又国連軍協定というものもできまして、平和条約発効のときから、こういう取扱いが実施されなくちやならなかつた事情にあつたわけでございますが、御承知通り刑事裁判権の点について問題がございましたために、今日までこの協定締結が遷延したという事情があるのでございます。  それからなお、過去に遡りまして日本政府がこの国連軍不法行為というものを認めるというようなことになる点、これはまさしく仰せ通りなのでございますが、実はこの行政協定もそうでございますが、国連軍協定では、一面におきましてはやはり日本主権というものが非常に認められておる点があるのでございます。なぜかと申しますと、若し国際法一般原則によりまして賠償を取るということになりますと、結局外交交渉で取る。そうなりますと、或る不法行為があつたかどうか、事実の認定の問題、それから不法行為があつたとして損害額はどれだけであるかという賠償額認定の問題につきまして外交交渉で結局合意によるということになりますので、日本国主張が必ずしも通るとは限らない。仮に極端な場合を考えまして、向うで理不尽のことを言つて日本側丘当主張を否定するというようなことがありましても、これを貫く手段がない、日本側決定権がないということであります。ところがこの規定を遡及して適用いたしますと、事実の認定の問題、損害賠償認定、これは日本国の専権に属する。最終的な決定権日本国が持つ。要するにこの件に関する限り日本国裁判権がある。終局的な決定権があるということに非常に利点があるのでございます。たとえ向う側がそれに不同意でありましても、日本国決定がものを言うという点があるのでございまして、一般原則解決するよりも、この点から申しますと、日本主権というものが非常に大きくものを言うという点があると思うのでございます。そういう関係で以ちまして被害者に急速に満足を与えるという点、それから結局日本国内法適用いたしまして日本国が最終的な決定権を与えるという点におきまして、国際法一般原則によるというよりも、更にこちらのほうがいいのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 国際法一般原則によれば、成るほど交渉ということが必要になりますから、そういう意味では幾らか面倒な点ができようかと思うのです。併しこれは独立国の問においては当然予想されることなんです、如何なる問題についても……。その反対にそういう対等の折衝というものを省略するような考え方がここに出て来ておるわけです。その前提となるものが結局民事特別法の第一条なんです。外国軍隊所属員公務損害を加えた、それに対しては日本の国がその賠償責任を負う。それは日本公務員が同じような行為をやつた場合と同じような考え日本の国が責任を負う、こういうこと、これが原則ですね。この考え方が私はおかしいと思うのです。計算関係を事前に明確にしてもらつておる点は、成るほど便利かも知れないが、その前提となるものは外国軍隊不法行為をやつた。それは日本官吏不法行為をやつたのと同じような立場日本国家責任をとるのだ。これは私計算関係は明白であつても、日本の国のその際における立場というものは相手国に従属しておるような非常に卑屈な立場になつていると思うのです。堂々と相手方に不法行為責任を問うなら問う。但し計算関係は相当多くなると思うから、簡単にこういうふうにしようじやないか、こういう約束でいいわけなんです。責任自身日本国家国内官吏と同じように負うのだと、この前提があるから私困る。いわんやそういう疑義のあるものについて更に遡つてまで責任を負う。こういうことになると、ますます国の立場としてこれはおかしいのじやないか。そういう立場で申上げておる。これはつまり現行法の批判になるわけですが、民事特別法の第一条というものをあなたたちはこれはもう日本体面を少しも汚すことのない規定だ。こういうふうにお考えになつているのでしようかどうでしようか。その点……。
  10. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 行政協定の十八条、国連協定のやはり十八条、民事特別法の一条、二条、この精神は、御承知の例の北大西洋条約でございますが、あの条約に基く軍事協定でやはりこれと同一原則がとられておるわけでございます。あの規定をそつくり持つて来たのでございまして成るほど国際法一般原則から離れまして、本来外国政府責任であることを日本政府肩外りするという点はまさしく仰せ通りに存じますが、ただ、これらの一連の協定の非常にいい点は、日本でこういうことがございますと、日本国内法が結局において適用される。そうして日本国内機関が、終局的には裁判所でございますが、裁判所裁判権を持ち、本来は日本裁判所裁判権がないにかかわらず、日本裁判所裁判権を持ち、日本国内法適用して事柄解決して行くという点に非常に大きな利点があるのではないか。日本主権はこれで十分尊重されますし、結局終局的な解決というものが非常に的確に確実に行くという利点があるところから見まして以前はこういうような協定の例はなかつたのでございますけれども、新らしい例として、非常に合理的なものではないかというふうにむしろ私どもは考えておる次第でございます。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 その計算関係便宜にされる、そういう意味では従来のやり方に比較して利点があろうと思うのです。いろいろな計算関係の場合に、その問題の起きておる国の法律によつてやる。若しそういうことが合意された場合には、そのことだけを合意しておけばいいのです。これは便宜上の問題です。それをただ外国軍隊がやつたことについて日本の国が責仕を負う。この点は新らしい方式かも知れませんが、計算関係便宜ということを超えた少し行過ぎなやり方だと思つておるのです。これがすでにアメリカとの側でこういうふうに合意されておるものですから、大体当然なことのように考えられておるわけですけれども、決してこれは当然ではないと私は、思うのです。アメリカ軍なり或いは国連軍日本に駐屯しておるこの身分関係というものは、日本内閣総理大臣との繋がりというものはどうなります。
  12. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 日本内閣総理大臣との繋がりということになりますとどういうことになりますか、要するに日本に駐留いたしておりますと、やはり一般国際法原則に従いまして日本国内法に服しない点もありますし、服する点もございますし、一般外国人並み地位を持つておる部分もございますし、そうでなくて外国軍隊として外国主権を代表する国の機関といたしまして、特別の地位を与えられ、従つて日本国内法に服したい。そういう関係で以ちまして政府行政権に服しない一般外国人とは一つた資格を持つ、そういう点があり得るということになるのじやないかと思いますが、どうも御質問の趣旨を私よく了解いたしていないかも知れません。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 それはつまり私もわからんことを聞いておるのです。わからんことをされるものですから、わからん質問が出て来るのです。内閣総理大臣国連軍との関係ですね。これは漠然とこういうふうに聞かれたら、なかなかおわかりにならんでしよう。私もわからん、これは別々のものだと思うのです。指揮系統が全然違うのですから、そうでしよう。そういうものについて私は安保条約を結ばれたり、行政協定を結ばれた政府としては、こういう考え方での計算関係便宜にしようということはわかるのですが、この第一条のような書き方自身は私はちよつと納得行かないのです。何らの、例えば国家公務員に幾らか準ずるような性格を持つておる地方公務員というような場合であつても、直ちに一方のほうの制度をこちらへ準用していいかどうか。内容はわかるが、併し制度のずつと繋りから言つておかしいじやないか。そういう点私は絶えずいろいろな問題が出るわけです。同じことで国連軍の場合には、こういう書き方をされると、非常に私は問題だと思うのです。一般官吏と同じようにというのはどうしてそういうことが、何らかの繋りが、もう少し深い繋りがなければ出て来ないわけでしよう。併し何か内閣総理大臣繋がりがあるようには思うのです、ここにおるのですから……。だからそれを法律的に説明してどのような繋がりになることになるのか、その点の御説明をお願いしたいわけです。そういう繋りというものを背景にして実はこの第一条のような書き方になつているのだから御了承を願いたい、こういうことなら大体納得できるわけですが、つまりこつちもわからない、その点……。
  14. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 内閣総理大臣との繋りというものは、直接に別にないと思うのでございますが、民事特別法のやはり根拠になります規定は、結局日米行政協定の十八条の第三項という規定がこれに当るわけでございまして、公務米軍の要員が不法行為をいたしました場合には、日本国日本国法令従つて審査をし、被害者との合意によつて解決することもできるし、又日本国裁判をすることもできる、そういう合意が成立し、或いは裁判があつた場合には日本国がその支払いをする、裁判の場合には日本国が当事者になる。それから日本国がこの賠償をいたしますと、その四分の一は日本国が負担するけれども、残りの四分の三に相当する額はアメリカから日本政府に償還をする。そういう規定に十八条はなつておるわけでありまして、その十八条はそのままでは国内法として実施できませんので、実施するために第一条が出て来たこういう次第でございますので、内閣総理大臣との繋りというのじやないと思いますが、やはり行政協定の十八条の規定根拠になつておると思うのでございます。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 行政協定十八条も問題なんですが、行政協定十八条よりも、民事特別法の第一条のほうがもつと私の言う立場からすると疑義があるわけです。今あなたが十八条を説明されましたが、その程度であればまだいい。これは大体計算関係立場で書いてあるから……。ところが第一条というものは「国の公務員又は被用者がその職務を行うについて違法に他人損害を加えた場合の例により、」こんなことは要らんことでしよう、全然……。而も国家公務員に準ずる地位国連軍人たちに対して予定しておるということがここから出て来るわけです。そういうふうに解釈していいかどうかということなんです。そうなりますとこれは単なる行政協定十八条で言う計算関係だけという考え方じやなしに、少し問題が別な、質的に違つた方向にまで入つていると思うのです。だから私は若しそういうことが納得されるものであれば、実質的には同じような規定を置かれることは、政府立場として止むを得ないかも知れませんが、この際そういう妙な言葉なんかは削除してもらつていいのじやないかと実は思つているのです。身分的に日本官吏と同じような扱いをする、こんな根拠は少しもないのです。
  16. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 私の御説明の仕方がまずかつたかと思うのですが、行政協定十八条の第三項国連軍協定でも同じでありますが行政協定十八条の第三項を見ますと、要するに米国駐留軍なり国連軍用員公務上の不法行為をしました場合には、不法行為に基く損害賠償請求日本国が次の規定従つて処理するものとする。(A)といたしまして、「請求は、請求が生じた日から一年以内に提起するものとし、日本国被用者行動から生ずる請求に関する日本国法令従つて審査し、かつ解決し、また裁判する。」こういう規定になつております。この「日本国被用者行動から生ずる請求に関する日本国法令従つて」というのがこの民事特別法におきまして「国の公務員又は被用者がその職務を行うについて違法に他人損害を加えた場合の例により、」結局国家賠償法或いは民法の不法行為に関する規定が終局的には適用になるのだということなのでございます。決して駐留軍なり国連軍用員日本公務員同一とするわけではないのでございますが、この協定でこういう規定になつております関係で、民事特別法はこの規定表現を受けまして現在のような表現になつておるのでございます。  それから協定の(B)を見ますと、「日本国は、前記のいかなる請求解決することができるものとし、合意され、または裁判により決定された額の支払は、日本国が円でする。」日本国支払いをする。  更に(C)におきまして、「前記支払解決によつてされたものであると日本国管轄裁判所による事件裁判によつてされたものであることを問わない)または支払を認めない日本国管轄裁判所による最終の裁判は、拘束力を有する最終的のものとする。」要するに事実の認定、それから損害賠償額の算定につきましては、日本国決定が終局的なのでありまして関係国はいや応なしにこれに拘束をされる、異議が言えないということになつておるのでございます。この十八条の三項を受けましたのがこの民事特別法の一条なんでございます。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 その点大体この程度で一応了解しておきますが、この規定適用を受ける事件、これはどの程度を予想されておるわけでしようか。実際の状況を少しお話願いたい。
  18. 平賀健太

    説明員平賀健太君) この国連軍関係は大体広島県の呉が中心になつておりまして、平和条約発効後も若干やはり事件が発生しておるわけでございます。その中には示談でと申しますと、結局国連軍関係軍当局被害者との間に示談が成立いたしまして、すでに解決済みのものもございますが、まだそういう解決されていないのが、調達庁調査によりますと、約七百件くらいと推定されております。で、今度の協定発効いたしますと、これは遡つて賠償するということになります関係で、現在調達庁出先機関が呉にございますが、呉調達局と申すのでございますが、この呉調達局とそれから国連軍関係当局との間で事実の調査その他の準備をいたしておりまして協定発効いたしますと直ちに賠償手続ができるようにというので、目下準備を進めておる状況でございます。大体七百件くらいと推定されております。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 この示談解決済みのものは、現在まで国連関係でどれくらいあるのですか、件数……。
  20. 平賀健太

    説明員平賀健太君) これも調達庁調査でございますが、公務上のものが約百五、六十件、それから公務外のものが七十件くらいであるように聞いております。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 これはそうすると、今まで正規条約並びにこういう法規がないわけですから、先ほどお話なつたような外交交渉でやつているわけですか。どういうやり方をおとりになつていたわけでしよう…
  22. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 国連軍との協定締結が非常に遅れました関係で、政府のほうでも非常にこれを心配いたしまして、国連軍の間と事実上話合いをいたしまして、とにかく日本側が一時立替払いをする、立替払いをしたら、一つあとでいずれ協定ができるであろうから、その協定ができたところに従つて日本国立替払をした費用を償還してもらいたい、そういうことで一つ解決しようじやないかということを、こちらから国連軍のほうに申入れたのでございますが、向うのほうでいろいろな点で難色がございまして、今日まで事実上のとりきめというものができていなかつたのでございます。でありますから、現在までは日本側として責任を負うべき筋合いではないものでありますから、被害の申告があると一応事実の調査をする。そしてこれを国連側通知をしてやる。そして賠償についての斡旋をしてやる。その事実上の斡旋をする程度で、日本側としては実は立替払いという措置もとつてなかつたのであります。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 これは併し随分国際法の信義を無視したやり方ですね。国連軍というのは、日本におつてやるんだから、少々迷惑をかけたつて君らは遠慮しておれ、こういうような印象を受けるんですがね。そういうことじや大変だと思うのです。そういうことだと今後例えば四分の三返してもらう、こういうふうになつてつても、日本がこの法規によつて全部払つてしまつても、返さんのと違いますか。それは今までの例から言つたつて、そういう点どうなんですか。その折衝外務大臣ですね。今までの一切示談解決付いたという七十件、そういう交渉外務省でおやりになるのですか、先ずその点……、この管轄と言いますか、責任者を……。
  24. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 実際問題といたしまして私が承知いたしておりますのは、従来米軍関係調達庁が所管をいたしておりますので、調達庁事務当局外務省事務当局向う側折衝したわけでございます。向う側もこれは難色があつたと申しますのは、細部の手続上の点でございまして、別に悪意があつたわけではないと思うのでございます。要するにいずれ国連協定ができるんだから、近いうちにできるんだから、それまで待つてもいいじやないかということだつたんでございまして、別に向う側責任を回避するとか否認するとかという、そういう悪意に基くものではないように私承知いたしております。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 これはまあ悪意といつても、善意といつても、やはり事実関係で判断する以外に方法はないので、七十件が解決付いたとはいうが、一つも実行されておらんのでしよう、どうなんです。
  26. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 現在まで処理未済が約七百件ございまして、約二百三十件というものは、そのほかにこれはもう示談で以て賠償済みなのでございます。約二百三十件くらいは公務上と公務外とございますが、この二百三十件くらいのものはもうすでに賠償済みなのでございます。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 その賠償済みというのは、つまり日本政府被害者に払つたという意味でしよう。それを相手からもらつたということですか、どういう意味なんですか。
  28. 平賀健太

    説明員平賀健太君) それは向うの軍側が払つたのでございます。これにつきましても解決済みでございますので、日本側が遡つて四分の一を負担するという問題は起らんのでございます。これは解決済み日本国の少くとも負担外でございまして、向う賠償したのでございます。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 するとさつきの七十件というのは、そのどれにも当らない、この七百件と二百三十件のどれにも当らない、こういうわけですね。
  30. 平賀健太

    説明員平賀健太君) こういうことでございます。処理未済のものが約七百件くらい、公務上と公務外合せまして約七百件。それから処理の済んでおりますのが、公務上が百六十件くらい、公務外が七十件くらい、約二百三十件になるわけでございます。で、七百件のほかに二百三十件というものはすでにこれは国連側賠償済みなのでございます。今後処理を要しますのは七百件くらいであると推定されておるわけであります。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 結局損害額のうちの四分の一を日本政府が負担する、こういうことになつておるわけですね。これは現在の国際法立場からいうと、やはり四分の一だけ日本が損する恰好になるんだと思います。理論的には……。その四分の一というものを国際法原則から見て例外的にこちらが負担するという結論を出した根拠は一体どういうところにありますか。
  32. 平賀健太

    説明員平賀健太君) これは北大西洋条約に基く軍事協定、これが同様になつておるのでございます。ヨーロッパではまあアメリカの軍が駐留したり、或いはヨーロッパの本土のほうにイギリスの軍隊が駐留したりしております。そういう外国軍隊が駐留しております場合、その駐留されておる国がやはり四分の一を持つ、それから軍隊を派遣しておる国が四分の三を持つというので、その割合をこちらもやはり踏襲しておるわけでございます。で、国際法一般原則から言いますと、北大西洋の軍事協定並びに今度の日米行政協定国連軍協定、いずれもこれは一つの特例を作つておるわけでございますが、ただ、この四分の一を負担しております代りに、不法行為の有無、損害賠償額認定、これが日本側に一方的に与えられておる。若し仮にこれが日本側が全然負担しないということになりますと、而も日本が全部終局的な決定権を持つということになりますと、やはり派遣国のほうとしましても、日本側決定に全部信頼するという点では不安を感ずるでありましようし、日本側もとにかく四分の一持つ、だから日本国もやはり決して無茶な認定はしないだろうという安心感を与える。そういうようなところからこの四分の一負担というのが北大西洋の軍事協定において先例が開かれたのだと思うのでございます。要するにその四分の一、四分の三というのは、北大西洋の例にならつたわけでございます。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 やはりこれは不法行為の問題ですからね。責任加害者である国、これは如何なる強国であつても、やはり不法行為である以上は、全部責任を持つ、こうあるべきだ。併し駐留しておるのだから、それに関連して駐留されておる国も何か少し考えよ、こういうことなら、それは又別個の立場駐留軍の費用等に関連して考えたらいい問題であると思う。責任そのものを四分の一と四分の三に分けてしまつておる。今お聞きすると、どうも大した根拠もない。NATOのほうでそういうふうにやつておるから、それを踏襲したのだということなんですが、ちよつと納得行かんと思うのです。ヨーロッパの諸国だと、そのために主権の侵害云々というような問題は余りないと思います。いろいろな情勢が違いますから、日本の場合だと相当やはり問題があろうと思います。私まあそういう考えがあるものですから、同じ四分の一と四分の三でありましても、やはりこういうことは相当厳格に立法される場合に、やはり検討してみるべきじやないか、そういう感じを持つておるわけですが、相当、これは意見になりますのでこの程度にいたしておきます。
  34. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の問題に関連して……。今問題になつております民事特例法の適用に関する法律、これの附則の第二ですか、これはいわゆる法律の不遡及、過去に遡らないという原則と関連しないのですか。
  35. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 一般法律は遡及しないというのが原則になつておりますが、併しこういう或る人の既得権を害するとか、殊に刑事の刑罰法規なんかは不遡及は動かすことのできない原則でございまして、これ遡及するというようなことは、罪刑法定主義の関係から、絶対に許されないことでございますが、その他のこういう民事の法規なんかにつきましては、遡つて適用いたしましても、国民の利益のほうが厚くなる、厚くなりはこそすれ、決して既得権を害するという問題は生じませんし、却つてこちらのほうが合理的であるという場合には、遡及する例もあるのでございます。そういう見地から申しまして、これは協定のほうにもやはり遡及するということになつておりまするし、弊害が生ずる虞は全然ございませんので、法律のほうでも遡及するということにいたしたのでございます。
  36. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そこで今御説明のようなことで、折角確立しているところの法律の遡及しないという原則が、民事の関係では民衆の権利を擁催するという利益があるからといつて、民事の関係では遡及する例を殖やすことが、刑事などにおいて確立された法律不遡及の原則に悪影響がありはしないでしようか、どうでしようか。
  37. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 民事の関係におきましては、必ずしもこの不遡及の原則というのは絶対的なものじやないのでございます。例えば昭和二十二年に新らしい民法ができました際に、その民法の規定では、この改正規定原則として過去に遡つて遡及する。ただ旧法によつてすでに生じた効力は妨げないという、遡及をむしろ原則としておるのが実は多いのでございます、民事のほうにおきましては、これは要するに国民の既得権を害するとかそういうものがないものでございますから、むしろ新法のほうが合理的である、旧法よりも合理的である。で、既得権を害しない限りにおきましては過去に遡つて新法を適用したほうがより合理的であるという見地で以て、民事の関係では遡及適用規定した規定が非常にたくさんあるのでございます。
  38. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その前に、平和条約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律というのが、この委員会で議題になつたことがあるのですが、これは法律を遡及しないという原則よりも、もう少し大きな問題で、過去に一遍裁判したものをその裁判が正しくなかつた……、戦争中ですからね。それで戦争中に日本が行なつた刑事裁判というものをもう一遍やり直してみようという法律がここで議題になつて、それで裁判所のほうの御意見を伺つてみたとこるが、非常にこれは日本裁判の権威という点から憂慮に堪えないという苦しいお気持の御説明があつたのですが、そのときには、私の記憶では民事と刑事と両方並んでこういう法律案が提案されたと思うのです。民事判決と刑事判決と両方出て来たように思う。それでまあ今の御説明のようであると我々も安心するのですが、前にそういう例があつて、これは法律が遡及するという問題とは違うのですけれども、併しまあ似たようなことですね。やはり民事関係では、外国人が戦争中に不当な利益を受けられたということで、それを正当に直すという利益はあるでしようが、併し日本裁判というものが、当時、その時裁判所からの御意見では、戦争中といえども日本裁判は公正であつたというように確信を持つておられる。それにもかかわらずこういう法律を作つて再審査をやる。それが民事のほうだけでなく刑事のほうでもやつておる。ですからこの際政府として、この民事について法律不遡及の原財を必ずしも崩すものではないという意味において、法律発効の前までのものに遡るという例をここで一つ殖やして行くわけなんですが、それが刑事における法律不遡及の原則というものを少しも覆そうとするものでないということがはつきりおつしやられるでしようか、どうでしようか。
  39. 平賀健太

    説明員平賀健太君) その点は、こういう例ができましても、殊に刑事におきますところのこれはまあ不遡及の原則というものを覆すことにはならないと思つております。要するに黙つておきますと法律というものはやはり遡及しないのが原則でございまして、遡及する場合には、必ず法律規定が要るわけでございますから、それから又新らしい法律を施行した後に過去のすでに廃止した法律適用するという場合にも、これは必ず法律規定が要るわけでございますから、不遡及の原則の例外を作りまして遡及するという場合には、必ず法律が要るわけでございますから、原則が歪められるというような虞れは全然ないと思います。
  40. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をやめて。    〔速記中止〕
  41. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記始めて。  本日はこれを以て散会いたします。    午前十一時四十九分散会