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1954-04-27 第19回国会 参議院 法務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聴会 ———————————————— 昭和二十九年四月二十七日(火曜日)    午前十時二十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            上原 正吉君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            青木 一男君            楠見 義男君            三橋八次郎君            小林 亦治君            棚橋 小虎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   公述人    弁  護  士 大竹武七郎君    東京新聞編集局    長       児島 栄吉君    弁  護  士 水野東太郎君    会  社  員 鳥羽 律定君    弁  護  士 和島 岩吉君   —————————————   本日の会議に付した事件日米相互防衛援助協定等に伴う秘密  保護法案内閣送付)   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今から法務委員会公聴会を開会いたします。  本日は日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案について正名の公述人方々から御意見を拝聴いたすのでありまするが、本日の議事の進め方といたしましては、お手許にお配りいたしました通り、午前中は大竹氏、児高氏の両公述人、午後は水野氏、鳥羽氏、和島氏の三人の方に御意見を述べて頂きます。なお、委員各位の御質疑は午前、午後いずれもそれぞれ公述人の方の公述が午前の分、午後の分が終りましたあとで、まとめてお願いいたしたいと存じます。  公述人の御両氏に一言御挨拶を申上げます。本委員会といたしまして秘密保護法案が極めて重要な法案であることに鑑みまして、委員会慎重審議を尽しますために本日公述人としての御出頭をお願いしたのでありまするが、極めて公務御多端の各位が御出席頂きました段、先ず以て厚くお礼を申上げます。  本委員会が今後適切な審議をいたし得ますよう、有益な御意見の御陳述を願いますと同時に只今述べました通り委員各位の御質疑に対してそれぞれ御答弁を頂きますようお願いをいたします。  なお、公述人各位に申上げますが、お一人の公述時間は大体三十分ぐらいでお願いいたし、その後に只今申述べました通り委員各位よりの御質疑にお答えを願いたいと思います。  それでは先ず大竹公述人に御発言を願います。
  3. 大竹武七郎

    公述人大竹武七郎君) 大竹でございます。  アメリカ合衆国から装備品等の供与を受ける以上、それに伴い要請される秘密保護の処置をとることは止むを得ないと思います。而して刑事特別法我が国に駐在しておるアメリカ合衆国軍隊秘密保護のための立法でありまして、その目的内容が本法案と異つておりますから、刑事特別法があるからこの法律案は必要ないということにはならないと存じます。結局この法律案は非常に望ましいものであり、進んで希望するというほどのものではありませんけれども、止むを得ないものであると考えます。併し又一面この法律案内容は、言論、出版、その他表現の自由を制限することになりますから、防衛秘密範囲最小限度の必要止むを得ざるものに制限し、且つその範囲をできる限り明確にしておく必要があると存じます。  一々具体的に秘密事項を列記することは、却つて秘密を暴露することになりますから、立法上成る程度抽象的な言葉を用いることは止むを得ませんが、用語を正確にし、その意義及び範囲を明確に規定する必要があると存じます。この意味におきましてこの法案中「公になつていないもの」及び「情報」という用語が私は不安に存じます。規定ようとしておる趣旨は或る程度推察できるといたしましても、法律上の用語として如何なるものでございましようか。「公になつていないもの」というのは、政府の未だ公表しないものという意味とは違うことは勿論であります。従つて一度どこかの新聞雑誌に小さく掲載されたが、まだ公知の事実とまでは言えないというようなもの、又はAの国においては秘密にしているけれども、Bの国におきましてはすでにAの国にはこういうものがある、その内容はこういうものであるというようなことが相当広く知られているという場合を仮定して、而してそのBの国から文書等によりましてその内容我が国に流れて来ているという場合に、それを我が国の某が公になつておるものと解釈したというような場合に、如何に相成るものでありましようか。又「情報」という言葉は我々の日常生活におきましては、これは情報程度だがというように不確実なものであるという意味を含ませて用いられている場合がしばしぱあります。それをそのまま法律上の用語とするということは、これはよほど考えなければならんと思うのであります。  この法案に言う「防衛秘密」は元来事柄性質上当然秘密性のあるものの中から、本法で保護するものを指定して、而して指定のあつたということを明らかにするために第二条の標記を附するというのか、又は法律規定によつて指定されて初めてそれが秘密性を有するに至り、法律上の防衛秘密となるかという点が、本法案におきまして刑罰法令として考えて見ますと、最も問題になる点であるると私は思います。これは後日違反事件が起つた場合に、範囲の問題に関係して参ります。即ち指定していることを知らなかつたが、秘密にされているものだろうとは推察していた、又は指定有無は知らないか、何人が考えても当然さよう考えられる、又はさよう考えられないというような場合に、範囲の点を如何解釈するかということが問題となると思います。この点は旧軍機保護法軍用資源秘密保護法等法律を作る際、議会等におきまして問題にされた点と私は記憶いたしております。  そして日米防衛協定附属書Bにより防衛秘密には等級を附することになつておりますが、防衛秘密のうち高度の秘密事項につきましては、そのうちの或るものは何人が常識的に考えてみても秘密であるということが明瞭であるというものもありましようが、秘密性程度の低いものの中には、常識上当然秘密であることがわかるとまでは言えないというものがあると思います。この法律案第二条によつて附せられる標記によつて初めて防衛秘密であるということがわかる程度のものもあるんではないかと思うのであります。秘密を取扱う地位にあるものは、その職務執行の安全を図るがために、相当広く、これも秘密だ、あれも秘密だというよう秘密にしてしまう、標記を附してしまうということがないとは言う、ないと私は考えます。  又戦時中に作られた一連の秘密保護法のうちでも、軍事保護法につきましては、法律による指定を待つまでもなく、本来軍事上の秘密というものはあるのだという考え方が強かつたのであります。これに反し軍用資源秘密保護法におきましては、従来は秘密とされていなかつたものを、同法の規定によつて指定して秘密とするという考え方が強かつたのであります。それらは主として規定をしている事柄如何によることでありますが、少くとも我が国独自の立場において指定されたものであると言い得ると思います。然るにこの法律案日米防衛協定に伴い必要ありとして立案されるに至つたことと、敗戦直後我が国占領下にあつたという我が国特殊事情から、現在我が国独自の立場から見た高度の防衛秘密というものが戦前、戦時中のように存在しているものかどうかという点も考えなければならんと思います。  併し私は部外者でありまして、そういう高度の秘密性を持つたものが現にあるかないかということは断言いたしかねるのでありますが、私が今申上げたような点も立法上一応考えてみる必要があるのじやないかと思うのであります。結局私はこの法律案につきましては、現状の下においては、本来秘密性を有するという考え方よりも、法律規定により秘密性を附与するという考え方のほうが強く、又そう考えるべき事項が多いのではなかろうかと思います。但し、これは現状の下において起案されたこの法律案においては、という条件の下に申上げているのでありまして、将来我が国の情勢が変り、我が国独自の立場における而も高度の秘密性を有するものができて来れば、おのずから又考え方も変るかも知れません。  なお、私はこの法律案に関する国会の速記録を全部通読しているわけではありません。ときぞ、新聞紙上等に現われたものを見ているに過ぎませんが、それによると、政府当局側答弁指定又は標記有無にかかわらず秘密秘密であり、秘密と知りつつ漏洩すれば犯罪になるという御見解をとつておられるのではないかと推察される節があります。政府当局の持つておられると思われるこの解釈は、旧軍機保護法伝統的解釈をそのまま踏襲しておられるのではないかと思うのでありますが、私は同法とこの法律案とは成立ちも内容も違うから、同一に解釈すべきではないと思うのであります。  併し政府当局が、右のよう解釈をとつておられるといたしますと、法案成立の暁において、違反事件が起つた場合、警察検察庁も、それが防衛秘密であるかどうかということがわからないので、防衛当局に照会しなければならないということになります。そうすると、防衛当局から内容を示さずに、結論だけ防衛秘密であるとかないとかという回答をして来ることになると思います。これは軍機保護法のときすでにそういう実例があるのであります。そういう回答に接しますと、捜査当局といたしましては、内容はわからないままにそれに従わなければならないということになります。結局極端な場合を想像すれば、防衛当局希望的見解如何によつて警察検察庁取扱いが左右されることになり、ひいては裁判所までが防衛当局行政的見解影響を受ける結果となる恐れがあります。このままで行きますと、旧軍機保護法の轍を踏むことになるのではないかと私は思います。私は旧軍機保護法違反事件を取扱つた際の苦い経験に鑑みまして、特にその点を強調いたしたいのであります。何とぞ御審議の際、特にこの点を慎重にお取扱い頂きまして、十二分の議論を尽されて、にとどめ、後日の解釈参考資料を残して頂きたく、切にお願い申上げる次第であります。  この法律案は、防衛秘密保護目的といたしておりまして、刑罰を科するということは、その秘密保護一つ手段に過ぎないことは今更申上げるまでもないことであります。而うして防衛秘密は、それはどどこにも転がつているというようなものではありません。防衛秘密を取扱う者は国民中の極く小部分に過ぎません。従つてその秘密保護ようと思うならば、これを取扱う者、例えば保安庁の役人、防衛隊の幹部、政府から装備品等の製造又は修理の注文を受ける工場の役員、従業員等、例えばまあこういう者がその取扱いを慎重にし、秘密を厳守するということが最も肝要な事柄であります。一般国民に内つて秘密厳守刑罰を説くということは不必要であるとは、私は申しませんが、余りにそれのみに力を入れ過ぎますと、本末顛倒と相成ると考えます。先ず第一にお手許に御注意願いたいと、私は防衛関係者に申上げたいのであります。この意味において、法案第三条第一項が、第一、第二号と第三号とを書き分け、三号については、第一、第二号のよう目的手段の存在を必要とせず、単に業務により云々規定したこと、及び第四条に、業務により知得し、又は領有した防衛秘密過失により漏らした場合を特に処罰する旨規定していることが理解されると思います。私はここに規定されております。「業務により」というのは、防衛秘密を取扱うことを業務とするものと解釈いたします。その他の業務に従事するものが、たまたま業務上知り得た秘密というものはここに入らないと考えます。業務の全部であるか一部であるかということは問わず、いやしくも業務防衛秘密を取扱うものは業務によりに入ると考えます。この意味解釈いたしますと、現在修正意見として、第三条第一項第三号及び第四条の「業務により」の上に、「防衛関係の」という五字を加えようとする御意見があるように開いておりますけれども、私をして言わしむれば、それはあつてもなくても結論は同じになると思います。而してその防衛関係業務に従事している者は、普通人とは別にその業務を取扱うものとして、必要な程度の注意、義務が要請されるのは当然であると思います。この点に関し、いろいろ説もあるようでありますけれども、私は右のよう解釈しております。  なお、第三条第一項の第一、第二、第三号を見ますと、第一号前段により、我が国の安全を害すべき用途に供する目的を以て防衛秘密を探知し、又は収集した者を罰する規定がありますが、その者がその秘密を漏らした場合、どの規定によつて処罰する御趣旨でしようか。又第四条の場合におきまして、過失によつて漏らされた秘密知つた者我が国の安全を害すべき目的を以てこれを他人に漏らした場合に、どの規定によつて処罰されようとしているのでしようか、疑問になります。或いは立案者のお考えとしては、それは第一項第二号におのずから含まれているとでも解釈しておられるのではないかとも思いますけれども、併しその書き方を見ますと、防衛秘密で通常不当な方法によらなければ、探知し又は収集することができないようなものということになつておりまして、私が今申上げたようなことを正面から基定していないのであります。非常に仔細に論じ詰めて行けば、或いは第二号に入る場合もあるかも知れませんが、併しこれは裁判上におきましては、持に第三号の秘密だということを重ねて立証しなければならなくなるのでありして、結局結論として私が申上げたいことは、どうも第二号の書き方が非常によく、余りに考え過ぎたがために、正面からぴたりとこう規定していないという憾みがあるように思いまして、私はこの第二号を何とかもう少し明瞭に書き変えなければならないのではなかろうかと考える次第であります。  本日私がここにお呼出しを受けましたのは、主として立法技術又は刑罰性令解釈の面から意見を述べよという御趣旨ではないかと拝察いたしまして、その意味におきまして以上申述べた次第であります。その余はお尋ねがありましたならばそれにお答え申上げることにいたして、一応この程度で終らして頂きたいと存じます。
  4. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 有難うございました。
  5. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 次に児島公述人にお願いいたします。
  6. 児島栄吉

    公述人児島栄吉君) 児島でございます。私は法律上の専門知識はございませんけれども、仕事性質言論報道に関連しておりますすら、その立場から見解を申上げて御参考に供したいと存じます。  本問題についての世間一般の声は御承知のことと思いますので、先ほど申上げたよう報道言論についてに限りますけれども、この法律お作りになろうとされる動機は、MSA協定に伴う当然の帰結として守らなければならない秘密という意味と、それから本来的に日本に存在する一つの高度な意味での秘密を守ろうとされるそういう意味と、二つ含まれておるように思うのであります。併し私のここで申上げようとするのは、この法案のでき上つた法文字句、その字句によつて今後運用される、その運用の過程において間違いがないようにと念願する故に、その字句の点についていささか申上げたいと思うのであります。  先ず第三条の一号におきまして「わが国の安全を書すべき用途に供する目的をもつて、又は不当な方法で、」云々とございますが、この「又は不当な方法」と、こういう文字が我々の仕事にとつて誠にあいまいな表現に感ぜられるのでございます。と申しますのは、不当な方法ということは、どなたかが不当だと断定されることでございますが、今までの政府側の御説明によりますと、「社会通念に照らして妥当とは認められない方法」という、こうい表現になつておりますが、「社会通念に照らして」ということは、その一々の事例に即して常に考えなければ、一般的に不当である、ないというここに標準がないのでございます。従つて我々の仕事では、そういう一つ一つ事柄について常にこれは社会通念に照らして間違いないということを実証するよう方法を用いて取材活動をしておるのではございませんので、あとでこれが問題になつた場合に、どなたが「不当な方法」と断定されるか、そういう点について非常に不安な感じがするのでございます。  それから第二号におきましても、「通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができない」とここに書かれておりますが、これも同様な意味においてあいまいな表現感じられるのであります。  それから第三号におきまして、先ほどもございましたが、「業務により知得し、」とございますが、この「業務」というものは、今までの御説明解釈によりますと、一般防衛関係に従事する者以外の者は入らないということを御説明なさつておるのでございますが、これは従来ともそうでございましたが、法律案成立、通過さすときの御説明には御尤もでございますが、一旦ここに法文文字として現れた場合に、今後これを解釈する場合に、「業務」の解決にはつきりした規定がなければ、我々報道に従事する者は不安を感じてしようがない。従つて何らかの方法において、例えてみれば「防衛関係業務により知行し又は領有」と、こういうふうに書いて頂ければいいのではないかと思うのでございます。こういうふうに我々の仕事についての不安な感じを持つ根本について少し申述べさして頂きますと、我々は一般の人よりも多くの機会において秘密事項に触れやすいのでございます。つまり社会通念だとか、或いは普通一般の人とかいうことを引用されて御説明を伺つていますけれども、そのよう一般ということとは我々の仕事性質が違うのでございます。要するのに知り尽されておることを新聞に書くというのではございませんので、知らないことを書くというのが我々の仕事でございます。つまり秘密に触れる意思、いわゆるスパイ的行為だとか何とかいう動機は抜きにしまして、秘密に近づくこと自身が我々の日常生活なんでございます。従つてこれはその目的如何にかかわらず、一番危険な秘密に近づきやすい仕事そのものを安全な、不安な気持に置かないよう表現にして頂きたい。例えてみれば、取材に出かける一般新聞記者がもう当然世間一般の人が知らないことに近づくことによつて自分仕事が達成されると、こう思つております。又社内におきまして編集しておる人も、内外の二ユースが厖大に日夜殺到しておりますので、ここにはどんな機会にどんな組合せによつて、偶然の拍子に秘密事項が飛び込んで来るかわからないのであります。そのものを機械的に扱つておるのございまして、それを後日何らかの判定する人の主観的な解釈によつて、それは普通では取れないことだとか、不当だとかというふうに判定されてはいるのでございまして、御説明はしばしばそういうことは心配要らんと言われておるのでございますが、法文上から我々の秦人考えでございますが、読みますというと、いろいろな不安が横わつておるのでございます。この点はつきましては皆さん我々の仕事性質をよくご諒察願つて、慎重に御審議願いたいと希望する次第でございます。  それから第二条にございます「防衛秘密を取り扱う国の行政機関の長は、政合で定めるところにより、防衛秘密について、標記を附し、関係者に通知する」とこう書いてございます。これはMSA協定の一部にもございますことで、当然の申合せになつておるのでございましようが、この「関係者」の意味がいわゆる業務に携わる方々という意味でございましようが、我々秘密に最も近づきやすい仕事をする者にとつて何らかの連絡といいますか、あらかじめこれを理解し得るよう措置が欲しいのでざいますが、それはこの法文の問題ではなくて将来の運用の問題になると存じますが、この法文では私は何だか物足らない感じがございます。というのは、先ほど来申されましたが、安全に、何でももう秘密にしてしまうということにすれば、非常に仕事がやりやすいから、我々としてはもう何も取れないということになるでしようけれども、言論根本は、幾らか秘密というものを暴露する気持ちではなく、自然の形において歴史的に漸次秘密秘密でなくなつて来るということが社会の発展ではなかろうかと思うのでございます。つまり消極的に秘密を守るよう気持というものがどつかにある。余りに行き過ぎた秘密の守り方をしますというと、それは言論発達、理論の発達ということには却つて害があるのではないか。むしろ大の虫を殺すすためには小さな虫をむしろ我慢してもらうほうがいいのじやないかと思うのでございます。そういう意味におきまして、できるだけこの新聞事業報道言論事業に携わる者についてはよくご理解を頂きたい。例えば仮にアメリカの例を取りまして申上げると、こういう種類秘密保護する場合に、成るべく行政的な措置において関係者を処罰するというふうに取締つておるように承わつておりますが、これで読みますというと、あなた任せになつてどういうことになるか、よく我々取材活動者にとつて納得の行くような状態において導いて頂かないというと、結果はすべて我々の責任になつて関係者はむしろ無関係者になつて来るのではないかと心配するのでございます。例えば秘密に属するという認識を持つているか持つていないかということが、この法案によると範囲を決定するキイ・ポイントになつておると思うのでございますが、秘密に属するという認識は、これは教えてもらわなければ本当はわからないのでございます。想像で行きますというと、これは人によつて違うのでございまして、余りにまちまちになると思うのでございまして、何とかしてこの秘密に属するという認識を与えるような、やはり新聞記者に何らかの措置が必要ではないか。この点につきましては立法上の知識もなければ何もございませんので、皆さんただ示唆として申上げる次第でございます。  それからこのことに関連いたしまして、少し理論的には離れて来るのでございまして過去の経験を申上げるのでございますが、我々が、新聞取材に参りまして、責任ある人からいろいろなことを承わるのでございます。そのときは確かに二ユース・ソースというものがはつきりしておりまして、そこから来たのには間違いないのでございます。そうしてその人も余り大して深い意味がなく、何と言いますか、自然の形に洩らしてくれたんでございましようが、あとになつて、そのソース・ニユース源というものを問題にしなければならないときになりますというと、その言つた人は、俺は知らないと言うわけです。新聞の記事を書く者にとつて、絶対に嘘を書いたり、真実でないものを報道する気分は毛頭ないのでございますが、そういう事実に基いて、作り上げるのではなく、一つのその基礎、根拠となるものがあるが故に、一つ報道を作るのでございます。そのときに、肝心のニユース・ソースに当る人が、知らないとこう言つてしまいます。これは大体その当局に当る方がこの秘密事項に関連することばかりでなく、他のことにおきましても、やや責任を回避される傾向がございます。この責任を回避したり、他人責任を転嫁したりするよう気分がどこかにここにこう存在していやしないか。何とかして私は一般に余り罰したり取締つたりということよりも、このよう種類協定に伴う秘密保護であるならば、それに従う業務の方がうんと内部的に取締られたならば、相当な効果が挙がるのではないか、こう思います。つまりこの法案お作りになるついでに、何か言論に別の影響を与える、又そのついでに何らか特殊なものが生れて来たのでは、却つて言論が大きく阻害されるのではないかと存ずる次第でございます。何とかしてこういう、ふうな私の考えているような方向に持つてつて頂ければ……、決して我我新聞記者は、スパイ行為をしてよろしいとか、或いは、法律上の用語は別としましても、不当な方法によつて探知することがよろしいのだとか、そういう馬鹿げた非常識なることは申上げておるのではございません。つまりこういう法案或いは他の類似の法案によつてスパイの行為を取締つたり、或いは又国際的にとり結んだ協定に伴う自然の帰結としての秘密を守るということは、これは当然のことと思いまして、我々は反対するものではございませんが、往々にして将来の運用において法文の拡大解釈をしたり、或いは又真の報道言論の自由といいますか、そういうものの発達をここに考えないで、この法案自体、秘密の保養ということ自体、そのものの局所的な重要性にのみ頭が行き過ぎて、全体に与える影響を忘れられないようにして頂きたい、こういうことが私の意見といいますか、考えでございまして、こういうふうなことは我々の仲間全体の新聞に携わる者の共通した考えでございます。  それから、あとに少し二、三点追加さして頂ければ、私個人の考えでございますが、この公けにするということについて、公けにされていないものとか秘密だとか、こういう点につきまして、一つの疑問がございます。例えば外国の電報、雑誌、通信その他によつて現われて来た。アメリカにおいて公けにしていないかも知れませんが、一般には知れ亙つておる、それを転載するなり引用した場合に、これはどうなるのであろうか、これは一つの疑問でございます。特に最も激しい極端な例の場合を考えますと、ソ連で万一アメリカのことを何か書いたとします。それが何らかの形によつて、先ほど申上げたように、マス・コミユニケーシヨンのこの世の中に、何かの方法で我々のところに入らないとも限らないのであります。それがたまたまどこか新聞の端つくれに載つたとします。そうすると、これは公けにしていないものを載せたことになるのではないか、その点につきまして我々は先ほど来引用いたしました当局の御説明による秘密に属するという認識は、本当にはつさりはしないのでございます。ややあるかも知れない、感じはどこかに本当はあるのでしようけれども、真に秘密と思わないかも知れません。そういう限度のものが現われて来た場合に、相当これは問題があるの百ではないかと存じます。こういう点につきましていろいろ疑問がございますが、又後刻御質問のときに個々の問題について申上げたいと思うので、要は本案についての必要性は我々は感ずるけれども、字句において今後拡大解釈されないようにその根源をこの法案そのものにおいて払拭されて頂きたい。どうも、そのときの説明は御無理御尤でございますけれども、あとになつて拡大解釈されるのがこの種法案に多いのでございます。過去において軍機保護法とか、国防保安法その他についても随分苦い経験がございますので、特にしつこいような発言をいたしましたのは一つ御了察を願つて御勘弁下さい。いずれ又後刻申しますけれども、この程度で終りたいと思います。
  7. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 有難うございました。  以上を以ちまして午前の公述人公述は終りました。公述人に対し御質疑のおありの方は御発言を願います。
  8. 亀田得治

    ○亀田得治君 大竹さんに二つばかりお伺いしたいのですが、この防衛関係に携わつておる当局者、この立場をもつと重要視しなければならない、この点私も非常に同感なんです。そういう立場から考えますと、第三条の第一項の第三号或いは第四条、こういうころに一般の場合少し違つたよう規定がしてある、その意味と了解しておる、こういうわけなんですが、どうもこれだけでは足らんのじやないか、こういう私、感じがするのです。例えば業務防衛秘密を知つていて、それを洩らしたと、こういう場合には普通の人よりも非常に刑罰つてそのものをもつと重くするとか何かそういうことが考えられていいのじやないか。普通の場合には私ももつと軽くしていいんじやないか、こういうことが一つ考えられるのですが、そういう点についてどのようにお考えになられますか、参考にお聞きしたい。  それからもう一点は、第二条の標記等の措置、これも私どもは非常に疑問に思つておる点を御指摘になつたわけですが、あなたの先ほどの御意見でありますと、標記等の措置があるということが防衛秘密一つの要件だというふうにとれます。私もそういうふうにこれが解釈されれば非常にいいと、こう考えるのですが、併しそういうふうにするには、こういう第三条の雷き方では無理なんじやないか、解釈だけでは無理なんじやないか、こう思うのです。例えば第一条の第三項で防衛秘密の定義がここにあるわけですが、この定義そのものの中に、行政機関による一定の措置がなされておるものというふうなことが、形容詞として加えられておるというふうにならないと、解釈だけとして先ほどあなたがおつしやつたよう結論には達しにくい、こういうふうに感ずるのですが、この三つについて一つ意見をお伺いしたいと思います。
  9. 大竹武七郎

    公述人大竹武七郎君) 第一の刑罰の点につきましては、第三条の中には情状の重いものと軽いものとが両方共に一カ条の条文の中に入つているように思うのであります。例えば第一号の「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」これは重いと考えます。又第三号も重くして然るべきだと私は思います。ただ第一号の後段のような場合は、比較的に軽いものもあり得るんではなかろうか。それを条文の数を非常に節約しております関係上、第三条の中に、一ヵ条の中に入れてしまつて、十年以下というふうに一括いたしましたために、一つ一つに当てはめてみると、お説の通り重すぎるなと思うものと然らざるものとがあるというように私は考えます。まあ中を持たしてあるので、仮にそのまま成立してしまえば、裁判所が適当にその範囲内で処理するほかないのでありますが、なお条文の数が多くなつてもかまわないということで、できますならば只今の御説のように多少そこに刑の差をつけるということも適当ではないかと思います。  第四条につきましては、実は私は秘密防衛という立場から見ますと、第四条の規定は非常に必要な規定だと思うのです。こういうことによつて洩れて行くというケースが多いのではないか。多いと言つても絶対数が多いのではなくて、第四条のようなケースが比載的に多いんじやなかろうか、又その点を最も用心しなければならないんじやないかと思うのであります。御存じの通り軍機保護法の第七条には、三年以下又は一三千円以下ということになつておりまして、この法案と多少差はありますけれども、この法案のほうは軍機保護法に比較いたしまして、一般的に刑を下げて来ている、又過失罪であるということも考えなければなりませんので、私はまあまあというよう考えまして、強いてこれ以上に刑を重くしたがよいというまでの意思は申上げなかつた次第でございます。  第二条の標記の点に関しましては、私は標記のあるということは判断の一つの資料に過ぎないと思います。この法案全般を通読いたしますと、立案者はどうも私と見解が違つてつて秘密というものは元来存在しておるのだ、その取扱いを慎重にするために標記を附するに過ぎないという頭で立案しておられるのじやないかと思うのであります。従つて今のお説のよう解釈がこの案文から出て来るのは御尤もだと私は存じます。併し私はそれではいけないのじやないかということを申上げたのであります。軍機保護法規定してあるような軍機というものは、秘密が元来存在しておるという前提に立つて考えてよいのかも知れませんが、この法案防衛秘密と言われておるようなものは、実は私は実体が何であるかというようなことは知らないのであります。知らないけれども、想像しておるところによれば、米国から供与される装備品等千に関する秘密であつて、旧軍機保護法当時のような非常に高度の秘密というものがあるかどうかということを疑問に思うのであります。と同時にこの法案内容は恐らくアメリカ側の要請によりまして、日本の政府当局が協議して、何が秘密事項であるかということをおきめになるのだろうと思うのでありまして、そういうふうな行政的な面が大分入つて来ますから、私はやはり何が秘密であるかということを指定するという措置が欲しい。指定したことを標記によつて現わすというのでありまして、標記を附すること自体を指定と私は考えていないのであります。その標記を附することの前提に指定行為というものを欲しい、そういうふうにしておくのが相当ではなかろうかと考えます。標記があることが即指定であるというふうに考えますと、例えばその標記の附せられていない文得ではあるが、附せられているものと同一内容のコピーのごときものが含まれないことになるのであります。これは実は軍機保護法時代に問題になりまして、大正十一年の大審院判例というものがあるのでありますけれども、これは併し軍機保護法に関する判例でありまして、私のようにこの内容が相当軍機保養法と違つているという前提でものを考えます者には、直ちにこの大正十一年の判例も持ち出せないのではないかと考えるのであります。その点床におきまして先ほど発言の際も申上げました通り、私の考え政府当局の立案の趣旨とは違うかも知れないけれども、私が申上げたようにするほうがいいのだということを申上げたのでありまして、この条文から私が言つているよう結論が明確に出て来るというには、そこに多少懸念があるのでふります。
  10. 亀田得治

    ○亀田得治君 児島さんに一つお伺いしますが、言論界の人たちの特殊な業務ですね。そういうことに関連して防衛秘密といつたようなものの取扱い方について新聞人等に対して特殊な措置ですね、そういうことを政府考えていないか、こういうふうな趣旨のことを二、三回おつしやつたように思うのですが、その点もう少し具体的にお話願えませんか。
  11. 児島栄吉

    公述人児島栄吉君) 今の御質問にお答えいたしますが、具体的にこういうことということを考えていないのでございますけれども、要するに関係者に通知するというこの規定ですね、これだけで以ていいかということが始まりなんです。つまり方法についてはこちらもいろいろ場合よつて違うと思うのです。一般的にこれは法文上に掲げないことで運用上のことになると思いますので、先ほど余り申上げませんでしたが、例えば関係者のおられるところに出掛けて行く新聞記者ですね。これ等には或る程度の連絡が実際この制度上どうきめていいか非常に問題なんですが、理解のつくような連絡が欲しいと思うのです。というのは、あらかじめこちらからこういうものはどうだろう、引つかかるか引つかからんかということを聞きますと、それは非常にいい連絡のようですけれども、それをやりますと検閲が始つて来るわけです。要するに事前の検閲制度によらずして、而も内容を全部言わなくても、何らかのその秘密の所在についての暗示といいますか、理解のつくよう知識を頂きたい、こういうことなんでございます。そうでないと、お前たちに通知をする義務がないということに、これは裏返せば出て来るわけでございますから、その点を要望的に申上げたんでありまして、方法はまだここに持ち合わしておるわけではございません。
  12. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 最初に大竹さんに伺いたいのですが、先ほどお述べ下すつた中に、旧軍機保護法と本法案との違いとして二点お挙げ下すつたように思うのですが、それは旧軍機保護法では本来秘密があるという立場に立つている。そうして本法というか、現在の場合には本来秘密というものが存在しない。それから第二におつしやつたのは、現在日本に本法案で問題になるよう秘密考えられるものは、MSAによつてアメリカ政府と日本政府とで考え秘密というものだから、従つて高度の秘密というものの存在するということは比較的ないのじやないかという考えでしたが、その考えは現在の日本の憲法なり、何なりそういう本質的な意味点床から、現在日本にいわゆる秘密というものが存在しないという点をも含んでおつしやつておられるのでありましようか。
  13. 大竹武七郎

    公述人大竹武七郎君) 憲法上軍備が云々というところから引出して申上げたのではありません。現実の問題として旧軍機保護法時代には相当軍事上の秘密として高度のものがあつたように承知しております。然るに現在はアメリカからどの程度の武器を供与されておるか知りませんけれども、そんなに嶄新ないいもの、非常に高度な秘密性を持つたものは来ていないのではなかろうかということ、而もそれは私は当局者でないから知らないかということで申上げたのでありまして、この点については私の想像から、そんなに高度の秘密性のものはないのじやなかろうか。仮に非常に高度な秘密性のものがあるとすれば、それは自然犯的な考えもとり入れて来なければならないでしようが、そうでなくて、現実の問題としてはそこまで考えるのは実情に合わないのじやないでしようかという考え方から申上げた次第であります。
  14. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私どもが保安庁長官ですか、木村さんにお尋ねを本会議などでしたときに、今高度の秘密がないというふうに思つておるだろうが、木村さんの例の調子で、大いにさに非ず、それでフリゲートというふうに言うけれども、フリゲートに何の高度の秘密があるとお考えになるかも知れないが、併しフリゲートの中に何ですか、レーダーのようなものですか、何か眼鏡のようなものですか、それには秘密のものがあると言われるのですが、そういうものは今大竹さんのお考えでは、いわゆる高度の秘密に属するものが私は木村さんの説明を開いているときには何かそれはパテントのよう意味のものじやないか知らんというふうにも思つてつたのですが、旧軍機保護法時代の御経験からお考えになりまして、そういつたものは今おつしやる高度の秘密の範疇に入るでしようか、入らないでしようか。
  15. 大竹武七郎

    公述人大竹武七郎君) 私はどうも実際問題といたしましてどの程度のものがあるか存じませんので、どうもお答えがいたしかねます。
  16. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それでは第二にやはり大竹さんにお伺いしたいのですが、旧軍機保護法時代に、軍機の秘密の漏洩というものによつて実害がどの程度まであつたものでございましようか、教えて頂きたいと思います。
  17. 大竹武七郎

    公述人大竹武七郎君) 旧軍機保護法時代におきましては、普通裁判所で処理されました事件の中には、非常に重大だと思われるものは少かつたように思います。併し軍事上の秘密は軍自体が持つで、おつて、当時は軍法会議によつて処理された部分が相当広範囲じやないかと思いますので、通常裁判所関係の私どもでは知り得ない部面があつたのではないかと思います。
  18. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると第三に伺いたいのにいわゆる「業務により知得行し」という点について、ご意見では、防衛秘密を取扱う業務、これを中心に考えるほうがいいのじやないかとうことなんですが、そこで教えて頂きたいと思いますのは、私の考えでは一般の人た対象とする本法案ようなものを作るよりも、現在の必要から言えば、防衛庁というか、防衛秘密を取扱うことを仕事ししている人々というものに関係する法案というものを考えたほうがいいのじやないかというよう考えも抱いているのですが、その際に今お話になりましたような、そういうことをすることは、又敗戦前のそういう軍法会議のようなものができて来るという虞れがあるでしようか、その点について若し御意見がおありならば伺いたい。
  19. 大竹武七郎

    公述人大竹武七郎君) そこまで行きますと、その辺までは実は余り詳細に考えて来なかつたというのが正直なところでありますけれども、軍法会議のようなものの復活ということは、これは絶対に私は反対でありまして、この法案の中には防衛関係の事務に従事しているものの点が相当多分に入つております、而うしてそれ以外のものも入つておりますが、防衛関係者だけの規定にするというのでは少し足らない点があるのじやないかと思います。
  20. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 最後にやはり大竹さんから教えて頂きたいのは、先ほど「業務により知得し」というのを、修正意見としてその上に「防御の業務により知悉し」という修正意見があるようだが、それは上へ附けても附けなくても同じことだというようにお述べ下すつたように思うのですが、児島さんからの御意見にありよし場合には、新聞業務ということも防備に関係して来る場合があると、そういう場合も考えられますし、又我々国会議員も予算の審議その他防衛に関係して来る場合があると思うのですが、それらとの関係はどんなふうにお考えでしようか。
  21. 大竹武七郎

    公述人大竹武七郎君) 修正意見があるようだがと申上げたのは、実は昨晩と今朝の新聞に出ておりますので、それを見て申上げた次第で、あります。結論といたしましては防衛関係のという文字が入つていてもいたくても解釈上は同じになる、原案でもそう読めるのだというふうに私は思うのであります。但し防衛関係のということを入れると、装備品等の製造又は修理の注文を政府から受けている工場の末端の従業員のごとき者が入るか入心ないかということが、或いは疑問になつて来るんじやなかろうかということも一応考えてみたのでありますが、だんだん考えた結果、それは結局どつちにしても同じことだと、防衛関係のという五字があつてもなくても結局は同じことになるんだ、原案でもそういうふうに読めるんだというふうに私は結局そういう結論になつたのであります。申上げるまでもなく旧軍機保護法におきましては「業務二因リ」ということと「偶然ノ原因ニ因り」ということと書き分けておりました。而して「業務ニ因リ」ということは、その当時からこの種の法律に慣用的に用いられておる言葉でありまして、大体その解釈もきまつて来ているように思いますので、或いは古いことに私の頭が捉われているかも知れませんけれども、原案のままでもそういうふうに読めるのだというように私は思うのであります。
  22. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 重ねて伺つて失礼ですけれども、私どもの感じではこの「業務により」というのは業務に二種類ある。それは秘密を守るほうの業務と、それから秘密を分けにすることを正当の業務とするものと両方あるのじやないか、従つて業務により」というのですけれども、例えば例の人事院規則の政治行為というものも、それがその業務というか、仕事をするために正当にしなければならないものは含まない、それから国会議員の審議というよ、うな場合もそれから新聞記者仕事の場合も、秘密を一明かにする、国民に知らせるということが必要である。そういう点で何か業務というふうにここに書いてあるのですけれども、私ども見ますと、業務の中には秘密を守るほうのことが業務であるというのと、秘密を公にするのが業務というのと、両方あると思うので、それを、秘密を公にするほうのものがここに入つてしまうのは困るように思うのですが、そういう慮れはないでしようか。
  23. 大竹武七郎

    公述人大竹武七郎君) この案におきましても第三条第一項第三号及び第四条の規定は、秘密を守るほうの人、秘密を、取扱うことを業務としている人を特に対象にしておればこそ、ほかのものとは違つてこういう規定を設けたものと私は思うのであります。秘密を公にする業務というのは、どうも少し私の考えとは違うのでありますか、新聞社なら新聞社の方が業務上やつておられることは、そういう秘密を公にする業務ではなくつて業務を行われる際に、それに関連して秘密を知り得る機会がほかの人より多いという程度に過ぎないと私は思うので、業務そのものではないと思う。従つてこの法案よう業務によりと規定している場合には、それは含まないというように私は思います。
  24. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どうも有難うございました。  次に児岳さんに伺つておきまが、大体二点ありますが、やはり先ほどお述べ下さつた第二条の関係者の問題なんでが、関係者についてという言葉についてお述べ下さつたのに、二律背反といいますか、なかなかむずかしい点があるように思われるのです。事前検閲とか或いは敗戦前までございましたような、始終新聞社や雑誌社にたくさんの差し止めの通達というようなものが来る。あんなふうになることは飽くまで反対だという御意見は、さつき伺いましたのですが、そういうふうにしないで、それで而も或る程度の連絡をとるというところの要点は、どういう点にあるというふうにお考えでございましようか。その点教えて頂きたいと思います。
  25. 児島栄吉

    公述人児島栄吉君) 先ほど同様の御質問がございましたのでお答えいたしましたが、方法といたしましては、大体日常取材記者が行く場所においてですね。そこに責任ある人が適当なる方法、その都度違うと思いますが、それに、よつて事前に秘密の所在ですね。所在という甘栗は誤解があるといけませんが、秘密の存在の示唆を与えて頂くということが望ましいと思うのです。というのは、先ほど申上げたように、機械的に秘密に近づておるわけなんです。つまりその場合に、大体のそのアウトラインを示唆されれば、非常に慎重になると思うのです。で、親切な注意があつてこそ、初めてこの法の運用がうまく行くと思うのでありまして、機械的に、結果論的に、この法の制定の精神にはなかつたのだけれども、運用上、結果論的にしぱしば勾引されたり、或いは相当の時間を空費したりするというようなことがございますので、その点についての希望を申上げたわけです。従つて内容を、我々の仕事がそういう性質だからと言つて、ここの本法に規定する一般国民以上に何らかの特権を主張するものではないのです。要するのに、運用上、結果論的に我々が不利なことにならんような親切な措置が望ましいということになりますと、これは法案の問題そのものでなく、運用上の問題になつて来ると思いますので、ここでは強く申上げなかつたのでございます。従つて若しも御審議願えるとすれば、そういう運用に至るまで、ここに何らかの示唆のあるよう字句を用いて預ければ、多少でもこれが一つの防止になるのではないか。こう思います。
  26. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 お差支えなければ、今お考えになつている案を具体的にお示し願えませんでしようか。
  27. 児島栄吉

    公述人児島栄吉君) 案というほど成案のものを持つていませんから、今のような答えで御想像願いたいと思うのですが、ただ一言申上げるのは、先ほど御質問の中にあつた検閲制度の復活ということには我々持つて行きたくない。検閲制度というのは憲法上禁止してあるかも知れませんけれども、結局事実を作るものは、我々はあつてはならないと思うのです。飽くまで検閲制度を作らないという定めがある以上、それを我々は守らなければならん。こういう考えから言つたのでありまして、それはどなたも同じじやないかと思います。我々だけの特権として申上げているわけではないのでございます。
  28. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 第二点に伺いたいのは、先ほど言論発達秘密秘密じやなくなつて行くところにあるとお述べ下さつて、大変深く教えられたのですが、いわゆるその御意見はこういう点について、例えば軍事上の秘密というものが過去において、実際国家の幸福とか、国民の安全とかいうものと絶えず密接な関係があるように言われて来ている。まあ現にそれなればこそ、敗戦までは、軍機保護法というようなものが非常な圧力を持つていたんでしようが、これは原理上そういうふうなものがなくなつて行くことがよいことだという御意見なんでしようか。
  29. 児島栄吉

    公述人児島栄吉君) そういう意味では、現在我々の国が、基本的にこの国家の安全を防衛するに最も密接な関係のある軍機というその因ですね。これは現在ないから、そのないという現状においては何も申上げることはできないと思うのでございますが、本来的なものをここに仮定して申上げることは、非常に困難を感ずるのでございますが、でき得べくんば、あらゆる場合においても、新聞言論報道業務に携るものにとつては、なるべく秘密を少くしてもらいたい。つまり秘密をあばいてその秘密を特定の目的のためにどうかするということは、それは却つて全体の安全を阻害するが故に罰するとか取締るとかいうことが出て来るのでしようけれども、秘密というものをただ初めつから規定して、観念的にそういうものを我々は認めないとか認めるとかいうことじやないのですけれども、そういうものを画いて仕事はしていないのでございます。つまり秘密と特定にしているものをあばくということよりも、日常社会が本当の自然の形において発達する過程において、我々がそれを発射的に運搬しているわけです。その我々の報道の仕方が単に或る意図を以て、特別の原図を以て暴露しようとか何とかいう意味と少し違うところを御理解願いたい。そういう、言論自由の立場というものは、一方に存在するということを御理、解願いたい。それは一面から言えば、業務であり、職業であるかも知れませんけれども、言論社会一つの重大な要素であるということをお認め願つた以上は、そういう一つの機能があるということ、これは我々自身もその好むと好まざるとにかかわらず、そこに現われて来る事実を報道しているわけです。併しそれが全体の社会に危害を与える、安全を阻害するということが自分ではつきりわかれば、それはやりません。やりませんというのは法律上から規定されてやらないのではなくて、人間の本来の信念から、社会人類に処して行く上においての自分の信念、心からやらないのであります。ここに私は言論が単なる法律に縛られない、むしろ法律を作る根本があると思います。
  30. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 最後に、一点だけお二方から教えて頂きたいと思うのですが、第三条第一項第一号「わが国の安全を害すべき用途」この我が国の安全を害するか害しないかということについては、随分重大な意見の対立が起るのじやないかと思うのです。例えば先般来アメリカにおいて起つているようなさまさまな事件、又それにアメリカとの関係でイギリスなどでも起つている、例えば原子核研究に関するアメリカの軍が秘密考えているものを守ることがアメリカの安全を保つのか、むしろそれを国際的に公にすることがアメリカの安全を守るかということについて、例えばローゼンバーグの事件というようなものも起つて来たのじやないか。まあローゼンバーグ事件がそれに直接当るかどうかわかりませんが、そういう考え方もあり得る。「国の安全を害すべき用途」というのが、どうも私は先ほど大竹さんの御意見にもありましたように、元は軍がこれを判断した。国民が判断しない。現在は文官優位というようなことになつて、何も軍の判断だけでなく、もつと広く政治的判断ということによつて国の安全ということを考える。つまり軍人だと、とにかく戦争に勝ちさえすればいいということだつた。我々から言うと戦争をやらないほうがいいというようなところから、変つて来るのじやないか。「国の安全を害すべき用途」という言葉が大分私は問題があるのじやないか。例えて言えば、金銭つまり私的利益といいますか、金をもらつてそういうことをするとか何とかいうことであればそれは悪意だということがわかるのですが、そういうふうにしたほうがいいのじやないかという考えもあり得るのじやないかと思いますが、この点につきましてお二方の御意見を伺いたい。先ず大竹さんの御意見を教えて頂きたい。
  31. 大竹武七郎

    公述人大竹武七郎君) お説の通り、何が「わが国の安全を害すべき用途」であるかということについては、いろいろな考え方があると思います。議論の余地は相当あると思いますが、私のように刑事裁判事件に関与し、その立場からのみ物を見ております者から見ますと、結局は最終的には裁判所が判断し、裁判官の良識というものが判断の基準になるとお答え申上げるほかないと思います。
  32. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 誠にその通りで、今大竹さんのおつしやる通りなんですが、例えばローゼンバーグ事件などのときにも、アメリカの大審院といいますか、最高裁判所の中でも有力な反対意見というものが生じたりしておりますので、それから先ほどの御意見の中に、旧軍機保護法時代にはとかく検察庁や裁判所、裁判所とまではおつしやつたかどうか……検察庁あたりが軍の意見で動かされていたのではないかという慮れがあつたという御意見がありましたのですが、その意味からこういう文句が第三条第一項第一号にあつて差支えないものでしようか。それとも何かはかに措置がないでしようか、如何でしようか、重ねて伺つて失礼ですが……。
  33. 大竹武七郎

    公述人大竹武七郎君) 旧軍機保護法時代のことを申上げましたのは軍事上の秘密事項に該当するかどうかということが、警察官又は検察官の取扱い中に問題になつた場合においては、それが一般に公表されていないために、検察当局としては軍当局に照会して、それが軍事上の秘密として扱われているかどうかということの回答を求めるほか方法がなかつた。軍のほうからは、内容は示しにくい関係もありましようが、該当するとかしないとかいう簡単な結論だけを回答して来たのであります。そういう回答をなされますと検察官といたしましてはその反対の解釈をとるということはなかなか困難であります。根拠がないのであります。従つてそれに従つた判断をし、処置をとるほかなかつた。  それが仮に起訴されますと、裁判所の判断も独自の見解ではありますけれども、延いては影響を受けるということがあつたのではないかということを申上げたのであります。この法律案におきましても、何が防衛秘密か、防衛当局は何を秘密にしているかということがわからないといたしますと、やはり同じ方法によるほかなくなつて来る虞れがありますということを申上げたのであります。そこでなおもつと適当な規定の示し方なり文句なりがありはしないかということになるのでありますが、これが妥当に解釈され、良識ある判断が行われますならば、私はこの案文でいいのではないか。これより以上にいい文句を一つ考えて、そこで言うてみろと言われても、私は実は今のところ持合せがないのであります。
  34. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 重ねて伺つてよろしうございますか。……先ほどから問題になつております「公になつていないもの」というのは、この議会の質疑に対する特に政府のほうからの答弁は、どういう形でも公になつていれば、それは公になつているものとみなす。例えは公になつていなかつたものを誰かがスパイ行為によつて探知して、そうしてそれを裁判の法廷において述べられたというものもすでにそれは公になつたものである。だからそれが最初に不当な方法で探知した人の場合には秘密だつたけれども、その不当な方法によつて探知した人が起訴されて裁判される。その裁判が公開されるかどうかという点においては、これは政府答弁は必ずしも明確であつたとは言えないのですが、併し裁判公開の原則というものはここでも守られているものだという答弁をしておつたのですが、従つてそういりように不当な方法で探知した秘密であつても、それが裁判の過程において明らかになつたものは、すでに公になつたものとみなす。それから外国のどこの新聞雑誌に発表されたものでも、それは公になつたものというふうに考えるという答弁があつたのです。そういう答弁があつたとすれば、ここに「公になつていないもの」ということについて先ほどお二方からお述べになりました問題は解消したものと考えてよろしいのでしようかどうでしようか。大竹さんから……。
  35. 大竹武七郎

    公述人大竹武七郎君) どの程度に知られていればこの法案にいわゆる公になつていないもの又はいるものと解釈すべきかということが、私は問題として残ると思います。例えば非常に専門的な雑誌に掲載され、而も小さく掲載されたに過ぎないというもの、大新聞に出てしまつたというもの、又裁判所の法廷は無論公開ではありますけれども、併し起訴状なり、判決文の書き方自体、審理の方法如何によつて内容が余りに外部に公にされるというほどに行かない場合もあり得るというように、問題を考えて行きますと、結局としての結論はどの程度なつたらば公にされたと見るか、されていないと見るかという具体的ケースの判断問題に帰してしまうのではなかろうかというように考まえす。
  36. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 もう一つ大竹さんに教えて頂きたいのは、さつきの裁判の公開の問題なんです。それを政府のあのときは犬養さんでしたか、責任者……、政府のほうの答弁としては、裁判所公開の原則は適用されるけれども、同時に裁判が公開されないというよう規定されている場合にも適用される。従つてその裁判公開がされるかどうかは、裁判所の判断にお任せするよりかしようがないという答弁をされていたのですが、この法律案性質上、政府はそういうよう程度の態度でよろしいものでしようか、どうでしようか。その点如何でしようか。
  37. 大竹武七郎

    公述人大竹武七郎君) 政府はそういう態度でよろしいかと言われると、どうも私は少しお答えしにくいのでありますけれども、憲法の規定及び裁判所法の規定によりましてもでき得る限り公開して行くということは必要であります。而うして実際のやり方といたしましてはこれは戦前の裁判所においても現に行わせたことであります。即ち軍機保護法違反事件のごときものが法廷において処理ざれたのであります。その際にどういうふうな処理、即ち公開禁止をしたかしないかという同じ問題が戦前からあるのであります。ただ違うところは、基本となる法律がその当時とは違つてつて、現在は憲法と裁判所法になつておりまして、現在の法律から言えば強く公開の原則が主張されておりますので、これを貫いて行くということが、やはり裁判の原則であると思います。併しその漏洩されたという秘密内容自体が、この憲法の八十二条に該当するようなものであつて、公開禁止を必要とするということになつて来れば、これは別問題でありまして、結局はやはり裁判所の裁判官の全員の意見できめるほかないのではないかと私は思います。
  38. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 児島さんについてお教え頂きたいと思います。
  39. 児島栄吉

    公述人児島栄吉君) 只今のお話の国家の安全を害するという文句でいいか、或いはそういう判断は裁判所に委せておくという政府の態度でいいかと言われますが、これは私は法律知識はございませんけれども、本当にあの文字通りですね、国家の安全を阻害するというこを弁護する余地はないと思います。従つてそういう文字通り解釈が本当にうまく行われて判断が正鵠を得ればそれでよろしい。ただ疑念の点はたくさん出て来るでしようけれども、これはその都度裁判には裁判の手続がありますから、その都度やればいいのであつて令法を余り詮索いたしますと、いろいろな点に疑問が出て来てまとまりがつかんような気がするのです。ただ私はあの条項について強く申上げたことをもう一遍間違いなく敷衍いたしたいことは、「又は不当なる方法で」とある、又は「不当なる方法で」というのは、前段は目的であつてあと方法手段というようなことになつて来ておるものを一緒にしてあるわけです。従つてああいう点は除いたほうがいいと、従つて我々の考えでは、国家の安全を阻害するような、社会全体に害毒を与えるようなそういう目的は排除したいというのが我々の信念でありますが、そういうことと同時に併記されて、手段としてそこに出ておるのですけれども、それは不当な方法というものは、新聞記者が非常に機械的に危険秘密のところに接触しやすいそのものが、ひよつと目的なくその方法の枠にはまつてしまうとですね、これは判断によると、不当なる方法だ、「又は」の中に入つておるために解釈上拡大解釈が行われる、こういう意味で申上げたのでありまして、御質問の趣旨に対してはお答えにならんか知れませんけれども、正当な解釈運用して頂けばいいとこう存じます。
  40. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  41. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて……。公述人に対しての御質疑はございませんか……。それでは御質疑か尽きたものと認めます。  公述人の御両所に一言御挨拶を申上げます。本日は有益な御意見の御開陳を得、又各委員の御質疑に対しまして適切な御答弁を得ましたことを本委員会の今後の審議上裨益するところ誠に多いと存じまして、厚く御礼を申上げます。  午前の公聴会はこれを以て休憩いたしまして、午後一時から再開いたします。    午後零時八分休憩    —————・—————    午後一時三十八分開会
  42. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 休憩前に引続き公聴会を開会いたします。  公述人各位に御挨拶を申上げます、本委員会におきましては秘密保護法案の重要であり且つ関係するとこるが多大であるに鑑みまして、公聴会を開催いたしましたところ、極めて公務御多端の各位の御出席を得ました段、厚くお礼を申上げます。  なお公述人方々に御意見をお述べ頂きます時間は、大体お一人三十分程度にお願いいたしたいと思います。なお午後の公述をお願いいたしますお三人の御発言が終りました後に、各委員より御質問いたし御答弁を願いたいと存じますから、さよう御了承を願いたいと思います。先づ水野公述人よりお願いいたします。
  43. 水野東太郎

    公述人水野東太郎君) この法律の制定することが必要かどうか、又そして制定されることができるかどうかと、こういうようなことを最初に暫く申上げてみたいと思います。  日米相互防衛援助協定の第三条で、我が政府が米政府の供与する秘密の物件、労務、情報についての秘密の漏泄又はその危険を防止するため、両政府の間で合意する秘密保持の措置をとることと、まあかようなことが協定では義務付けられておるのでありまして、そうして附属書のBにおいては、その秘密保持は、米国において定められておる秘密保護の等級と何等のものを確保すると、かような工合に定められており、且つこれに対するところの、我が国として、適当な措置をとるということに相成つておるわけであります。ところで又一方、第九条の二項で、  「各政府がそれぞれ自国の憲法上の規定従つて実施するものとする。」と、かようなことが定められておるのであります。そうして、これは申上げるまでもなく、我が国では憲法において、一戦争放棄を宣言して、軍備はしないということに相成つておるのであります。そこで最初に申上げました相互防衛援助協定によりまするならば、かよう協定に基いて、この秘密防衛のためにかよう法律を作るということの必要もあり、国際信義的な義務もあるのではないかと、かよう考えられるのであります。  ところが、後に申上げました自国の憲法上の規定従つて実施するという、かよう趣旨我が国における戦争放棄、軍備しないというこの憲法、こうしたこの特異の観点から見まするならば、この立法我が国の憲法上は違反ではないかと、かような議論が取上げられるように相成ると思われるのでありますが、で、この立法は、この協定に表われておりまする、最初に申上げました点と後に申上げました点との間に、丁度はさまつているような存在ではないか、かよう考えられるのであります。そこで、この法律提案の理由として、政府当局説明せられるところでは、こうした援助法によりましての諸外国においては、現在ある法令で、かよう秘密保持ということは維持せられておるので、格別の措置をする必要はないが、我が国では刑事特別法だけであり、殊に、御承知の通りアメリカの秘密のことのみでありまするので、我が国には当然この法律で行われない関係上、この刑事特別法だけでは、かよう秘密保持の問題は今後は保護できない。かよう事柄から、どうしてもこの立法が必要なんだと、かよう説明せられておるのであります。ところが、かよう考え方には、先ほど後段の意味において申上げました、我が憲法における戦争放棄と、軍備をしないという、かような極めて特殊な性格を、我が国が憲法上持たなければならないということに対する考え方が足らないのじやないかというふうな私は感じがするのであります。協定の義務の面から申しまするならば、何らか秘密防衛のための措置を講じなければならないのではありますが、これは飽くまでも援助されるいろいろのもの、或いはその情報に対してのみ、秘密保護というようなものを考えることはともかくも、更にこの秘密防衛の問題を、我が国のまあ安全というようなところへ結び付けて、そうして秘密防衛という立法をするという考え方には、相当考慮しなければならんものが残されているのではなかろうか、かよう考えてみたいと思うのであります。  そこで今少しこの法律が求めておりますることについて申上げたいのは、この立法のうちで使われておりまする言葉、は、「防衛秘密」という言葉を使つているのであります。ところがこの内容を検討いたしてみますると、その実質的の事柄軍事秘密ということに相成るのではなかろうか。言葉の使い方はともあれ、実質は軍事秘密ということに相成るのではないか。かよう軍事という言葉を使うことにつきましては、いろいろな面で盛んに論じられていることでありまするし、まあ予備隊或いは保安庁等についての相当盛んな論議が行われておりまするので、さようなことについてくだくとは申上げませんが、さよう考えられるのではないか。と申されますことは、一九四八年相互防衛援助法の第四百十一条を一応ずつと見てみますると、おしまいのほうには商船を含まんとかような言い方をいたしているところなどから見まするときに、やはりこれは軍事的なものだと、かようなことがそこらあたりからも言われるのではないかと、かようなことが考えさせられるのでありまして、そこでこういうまあ軍事というようなことから、憲法論を強調いたして参りますことになりますと、憲法違反論というものが、この立法については相当強く論じられるし、又仮にこの法律が制定されたといたしましても、この法律から生じまするところのいろいろの法律上の問題といたしましては、違憲論ということが相当強く論じられる、かようなことに相成るのではなかろうか。かようなことに考えられますので、この法律を作ることのまあ必要ということの考え方は、最初に申上げました防衛協定からどうも出て来ることは止むを得んのではなかろうかと、かよう考えられますが、併しながらこの立法内容については、相当考慮して行かなければならないことがいろいろあるのではなかろうかと、かよう考えられるのであります。そういうよう意味におきまして、憲法違反の問題が論じられ、且つ将来も続けられるであろうということは考えられながら、この立法というものは、現実の問題といたしましては、現在アメリカの占領から離れて、現在のアメリカの援助を受けつつある、そうして防衛援助協定がすでに定められた今日においてのこの現実から申すならば、これは止むを得ない措置だということだけは、この際感ぜざるを得んよう考えるのであります。  そこで政府のほうで説明せられているようでもありまするが、仮にこういう秘密防衛に対する制裁法規をきめるにしても、十分国民の権利ということを考えて、最小限度にこの制裁ということは考えるべきだという工合には述べておられるのでありまするけれども、併し内容に入りますると、必ずしもさように言うておられることが、完全にこの法律に現われているかどうか、相当疑問があると私は考えます。内容に入りましてその点はそれぞれ申上げて見たいと思います。殊にこの法律について考えて頂かなければならないことは、我が憲法では御承知の通り十一条から四十条に及びまする大量な国民の人権に関しまするところの規定があるのでありまして、我が国の憲法が如何に人権尊重ということを強く要求しておるかということが十分看取されるのでありまして、かよう意味から人権尊重に反するよう立法というものは、この法律には限りません、常に極力かような人権侵害を及ぼすことの憂いの多い立法ということは、立法当時これをできるだけ抑制しなければならない、かよう考えるのでありまして、こうしたこの法律に類しまするような曾て様々なたくさんな法律があつたのでありまするが、かよう法律があるために、如何に数多く、実に目を蔽ひ、耳を塞ぐような人権侵害が行われた事実があつたかということは、今更申上げなくても十分おわかりのことと思うのでありまして、こうした法律は常に例えて双刃の刃だとかように言われておりますように、かようなことは立法をされるときに十分に慎重な研究をされて、そうして立法ということを行われなければならないことでありまして、よく立法当時に、この法律ができても、その取扱いなり解釈については、決して軽々にこれを行わしめない、殊に人権侵害等のないように十分な措置趣旨の徹底というようなことは必ずするのだ、かようには立法当時大いに立法当局者は常に言うのでありますが、さて実際はさように参つておらないというのが実情なのでありまするから、さような点もこの立法に際しましては十分御考慮頂くべき事柄の大きな一つだと考えるのであります。  さて、そこで只今まで私が申上げましたよう意味から、私といたしましては第一条をかように変えられるものならばお変えを頂きたい、かよう考えるのであります。それは第一条を目的、定義といたしまして、その第一条の第一項にこういう文字を入れて頂きたいのであります。「この法律は、日米相互防衛援助協定及び船舶貸借協定により米合衆国から供与される秘密装備品等及び情報についてその秘密を守るためにとるべき措置規定したものであり、その適用については、これを厳格に解釈し、人権をいささかも侵害する解釈適用をしてはならない。」  これはなぜこの法律ができるかという目的を先ず第一に掲げまして、はつきりこの法律成立せしむるゆえんを先ず書きまして、さてその解釈については、人権を侵害するというようなことにならないような格段な注意を行なつておく。こういうようなことで、この立法というものに対して、せめて我々が懸念されまする心配のないよう方法をとつて行くようにいたしたい。従つて原案の一条一項が二項に相成るわけであります。こういうような工合に先ず一応いたしまして、さてそこで第一条の三項でございまするが、ここに書かれてありまする言葉のうちで、「公になつていないもの」、かよう言葉が使われておるのでありまするが、どうも公になつていないというようなこの記載法は、甚だあいまいではないかと思われまして、何か適切な言葉ないか思つていろいろ考えたのでありますが、余り時間の余裕もありませず、適切な言葉が見付かりません。そこで私はただこれだけでは足りないのではないか。更にもう一つ附加えて頂くならばいいのではなかろうかとかよう考えまして、かようにお加えを頂きたいと思うのであります。「公になつていないもの」の次に「又は公になることが秘密保護目的に反するもの、」もうすでに公になつているものはこれはまあ、一応問題の取上げ方にはいろいろありましようけれども、一応公になつているものは問題にならん、こういうことなんですが、と同時に公にされることが一向内容的に差支えないのじやないかというようなことは、解釈土いや、さようなことは書かんでもいいと言われれば、言われることでありましようけれども、かようにはつきりしておいたほうがむしろよくはないか、かよう考えまするので、只今の字句を挿入することによつて、当初私が申上げましたいろいろの問題の解決になるのではなかろうかと、かよう考えたのであります。  それから三項の一号なんでありまするが、この一号のうちにイ、ロ、ハ、ニ、とこういろいろ書いてありまするが、これでありますが、これもいろいろ問題があつて、こういう書き方をせざるを得ないことでしようが、さてかよう程度に書かれておりますると、この法律を適用いたしまする場合、解釈する場合には、この解釈のし方で相当広くもなり、又相当面倒なところへ問題が持つて行かれるという虞れがありまするので、最初申上げましたようにこの立法は全く必要な最小限度というこの線を確保する意味から申しまするならば、これももう少しもつと具体的に、何かこれらのことに対して、非常に重要だと考えられる多くの問題を書き出し得るよう方法があれば、それに越したことはないのでありまするが、これもなかなか困難なことかも知れません。そこで重要な問題の取扱方に対して一つの絞りをかけて、そういうよう考え方から一号のしまいに、「アメリカ合衆国政府から供与される装備品等について左に掲げる事項」とあります。左に掲げる事項の次に、これだけの字句を御挿入下さつたらばどうかと思うのでありまするが、「左に掲げる事項のうち重要なる部分」これだけの、重要なる部分という言葉によつて、この法律取扱いがいよいよますます絞られて参らざるを得ないことには相成りまするが、と同時にこうした措置によりましてこの法律の適用、運用につきましては、非常に慎重に取扱わなければならないという面が多分点から見まするときはかよう字句を是非お入れを頂きたいというよう考えます。  それから第二条でありまするが、この第二条、そもそもこの第二条によつて第一条にきめられておる「防衛秘密」なるものがきめられるものかどうか。ただ、これはこの秘密保護するのに、いろいろ周知徹底させることのために、かような制裁をしないで、防衛秘密の何ものなりやをはつきりするためにとらるべきものだという意味法律なのか、やや疑問があるのでありまするが、この書き方を見ますると、「防衛秘密保護上必要な措置」という言葉がありまするところから考えますると、あとに私が申上げたよう意味立法ではないかと、かよう感じておるのでありまするが、併しながら実際に法律の適用、運用の問題に相成りますと、こうした防衛秘密についての一のの標記が附されますれば、一応解釈上、この標記の附されておるものは防衛秘密範囲に入るのだという解釈が容易に行われるのではなかろうか、かよう考えられます。従つてこの法律自体が、この法律の制裁法規の限界とならないものであるといたしましても、さよう意味においては、非常に重要な立法的な意味があると思うのでありまして、こういうことの取扱いにも当然慎重な態度をとるべきである、かよう考えられるのであります。  そこでこれも又少し字句をお入れ頂いたほうがいいのではないかと、かよう感じるのであります。それは第二条の「政令で定めるところにより」とありまする、その次に「政令で定めるに出て参りまするので、人権尊重の観ところにより前条規定範囲内において防衛秘密について」という、「前条規定範囲内において」という字句、即ち少くとも、この措置をとるのには、この前条に規定されておる範囲内、殊に私が先ほど三項の一号のしまいのほうに、「重要なる部分」という字句をお入れ頂きたいということと、これは関連して参る取扱い方でございます。そういうようなことにいたしますれば、この行政機関の長の防衛秘密に対しまする標記の附し方について、極めて慎重な処置がとられるであろうと考えるのであります。  次に第三条でございますが、この制裁は、これは刑事特別法がそのままここへ持つて来られておるようですが、これは刑事特別法と、これとがどれだけの差があるかということに相成りますると、格別差異を云々ということにも相成らんと思われまするので、一応そのままここへ持つて来られたのはこれでいいのではないかと、かよう考えます。ただ、ここでもやはり一応考えさせられますることは、言葉の使い方として、「不当な方法」という言葉、これは刑事特別法でも使つておる言葉をそのままここへ持つて来ているのであります。ただ、刑事特別法規定は、まあ大体三条が第一条というようなことになつておるのでありますが、この「不当な方法」ということが、どの程度のことをいうか、非常に解釈運用の問題につきまして、問題になろうと思われます。例えて申しますると、まあ弁護人が弁護権を行使するために、かような、探知或いは収集することについてどういうものかというようなことを弁護人が判断をするために、これを法廷においてその問題を取上げて論じます。或いは又これを論ずるために、みずからさようなことをしてみようというような場合、どういう工合のことにこのことが取扱われるようになるか。さようなことなども一、将来弁護権行使の観点から考えさせられる問題ではないかと、かよう考えるのであります。  それから第四条でございますが、これは刑事特別法にはなかつた条文で、新らしくここに作られた条文のようであります。まあ過失によりまする場合の責任ということもどうかと思います。勿論行政的な処分は当然出て参ることでありますから、或いはそのほうだけでいいのではないかというふうな考え方もあるのでありますが、若し刑罰制裁ということを考えまするならば、この「二年以下」ということはまあ重いのではないか。これは罰金だけでよいのではないか。かつて軍機保護法がありまする時代に、ほかにはこの「過失ニ因リ云々」という制裁法規はないようでありまするが、軍機保護法にはあります。その第七条は「千円以下ノ罰金」と、かように相成つております。まあかようなところから考えまして、これは「二年以下の禁こ」は重過ぎはせんか、全体から考えまして、ただ罰金五万円以下でよいのではないか、かよう考えられるのであります。  さてそこで、この立法成立いたしまして、問題が発生いたしましたときにまあこうした大体秘密を取扱う事柄でありまするから、当然捜査段階では、文句なしに接見禁止というようなことがまあ行われようと思います。更に法廷におきまする攻撃防禦も、これもまあ秘密に関するというよう意味合いから非公開というようなことが当然というほどに予想されるのであります。ということが非常に憲法において保障されておりまするいろいろな国民の権利の面について侵害というようなことに強く論じられる余地が残りはしないか、こういうようなことはやはり立法をされるときには、十分御考慮を願わなければならない事柄だろうと思うのでありまして、かよう事柄から、将来こうした刑事事件についての弁護権の行使というものは相当に制圧されやしないか、こういうようなことが考えられるのであります。更に申しまするならば、民間でたまたまかような装備品に対しまするところの研究が進んでおつた。或いは進めようとするときに、一体どういう取扱いが、これが出て来るか、正しい取扱いをされるならば、或いは問題はないということかも知れませんが、これは取扱い側の考え方で、この法律に当てはめられて、思わざる人権を侵害されるのみならず、さようなものの研究の発達が阻害される。かようなことがあるのではないか。こういうようなことも心配の一つということに相成りまするので、この立法につきましては、さような点から前後十分慎重な研究と、この制定に対しまするところの心がまえを必要とするものだと、かように信じます。一応私の申上げたいことはこれだけであります。   —————————————
  44. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 次に、鳥羽公述人にお願いいたします。
  45. 鳥羽律定

    公述人鳥羽律定君) 先ず本日の公聴会に私のような何の肩書もない地方人を、而も専門的知識としましては何一つつていないものを、一市民として今日の公聴会に出席さして頂いて非常に有難うございます。これこそ民主政治の末端に浸透する一つの現われと思いまして喜びに堪えません。  それでは結論から申上げますると、この法案に賛成する一人でございます。最近新聞雑誌などで特にこの問題を、この法案そのものに対しまして、言論弾圧、人権蹂躪の原因になるのだ。或いはこの法案は外国の隷属国の姿そのままであるというような非難の声を聞いておるのでございます。或いは運営如何によつては、法案そのものの性格によつて日本に再びあの恐しかつた戦争当時を思い出す暗黒時代が来るのではないかなど言われております。ところが私たちの周囲におりまする農山村の人たちは、ただ政治ということについてはこうした報道機関のそのままの批判をそのまま受けるだけで、ではこの法案は悪いんだなくらいに簡単に考えて、現在日本の置かれておりまする国際的立場や、或いは恒久平和はどんな方向で日本にもたらされるか、そういうよう根本の問題には触れないように見受けております。こうした政治の見方と申しますか、批判する力が少いのは、何も農山村に限つたことではないと思います。だから世論は反対だ、こう言われましても、反対を唱える方々が問題に対しまして一応の理窟をつけているかどうか、そこに疑問を持つておるのでございます。政治道徳と申しますか、政治理念と申しますか、そうしたものが少いために、先ほど申しましたように、じやこの法案は悪い、じやこの政党はいけないといつて、今日は右、明日は左というように選挙当日は好きな人に投票し、翌日は早やその党の悪日を言うような人たちを私の周囲にはよく見受けるわけでございます。勿論政治において、朝三暮四的なこうした考え方は、封建時代の知らしむべからずの影響があるかも知れませんが、とにかくいずれにいたしましても政党政治に対する伺い信念、深い信用があつてこそ、国民としての政治道徳も生まれ得るわけでございます。一応自分の支持しました党の政策に対しまして、選出したもの、選出された方も共同責任がある、こんなふうに私個人としては考えておる次第でございます。恒久平和を望んでおりまするものは、日本人ばかりでなく、世界中の人たちがみなその気持があるはずでございます。  さて現在の日本で平和を確立するには一体どうすればよいか、その点日本が共産圏内の国々と友好関係を保つことはどうしてもむずかしいように私自身は見ております。日本が、特に日本人が同じ民族に対して誤つた優越感を過去にも、現在も持つていることなどは非常に影響しておりましようし、私たちの耳に入つておりまする悪い材料ばかり、中にはよいこともございますが、帰朝談やら報道記事に見受けております中共と貿易さえうまく行かない、南鮮では李ラインでしよつ中問題を起している。こんなことを考え合せますと、どうも感心しないようであります。独立したけれども一人立ちはできない、あちらでいじめられ、結局私たちは一応表面的かも知れませんが、こちらの味方になつてくれるアメリカと手を組むよりほかに方法がないのではないか、こんなふうに考えておる次第であります。そうなりますと今度の日米相互防衛協定が一応平和への前提となる恒久平和への一段階と私は見ておる次第でございます。現在の日本では相手方から手を差延べてくれる国があつたら、その国と友好関係を結んで、荒廃した私たちの日本の国土を復興させて、独立国家としての体裁を整える、これもいたし方ないことではないかと存じております。  この前の日米行政協定ができましたときに、刑事特別法ができましたが、私は丁度これは親子の関係のようなものではないか、そういうふうに考えております。どうしてもこれはできるべく予想されて日米行政協定ができた、こういうふうに解釈をさして順いております。この日米行政協定のときと同じように、今度の防衛援助協定も、秘密保護法案とは不離不測のものではないか、当然こうしたものができることが予想されるのであります。アメリカが幾つかの国と相互防衛援助協定を結んでおりますが、そのいずれの国とも秘密保護法案趣旨規定が定められておるとのことでございます。特にイギリスのような国でさえ、米英MSA協定の第五条第二項に、同じ趣旨規定ができている。そんなことを聞きますと、日本としてもこれが必要となつて来るのではないかさよう考えております。  戦争後十年間、昔の国防保安法、軍機保護法か、いろいろやかましい巌重な法律に縛られておりまして、敗戦後こうした法律がなくなつて生活が非常に自由な、フリーなものになつていたところへ、昔と同じような窮屈な法律ができて、民主政治がゆがめられるのではないか、そうした危惧の念があることも事実でありましよう。そうしましてこの法律国民の間から無意味な罪人を作り出す直れが多分にあるのではないか。そうしたものが、民主政治の本質とかけ離れたものである、こんなふうにも言われております。ところがこの法律の実施の暁には、その運用には当然検察庁とか、警察方々の受持ちになつておるのでありますから、その点法の運用には御十分な御注意をお願いしたいと思つております。いずれにいたしましても社会通念上国家相互の秘密は、私たちの社会と同じように存在するはずでありますし、而もこれが日本の恒久平和の前提となつておるならば、必要性が認められると思うのであります。  実は四月十一日、十二日両日、私の住んでおりまする飛弾の山奥の鉱山の町で、農山村の人たちも入れてこの秘密保護法案の問題についてアンケートを試みてみました。職業の関係上、時折こうしたことをやつてみるのでありますが、今度のは公聴会に出るためにやつたのではなく、偶然今日のよう機会にぶつかつたわけでございます。小規模な、小さな統計なのでありますが、地方の人の気持と申しますか、政治に関する気持と申しますか、こんたものであるという一つの御参考になればと思う次第でございます。今度やりましたのは、ほかの問題も取上げましたが、問題の一つMSA協定に伴う秘密保護法案、これについて聞いてみたのでございます。選びました職業は農業、商業、公務員、学生、労働組合その中から男子三十六名、女子十四名、合計五十名の人たちを対象としてやつてみたわけでございます。年令は十九才から七十一才までをとつております。回答の結果はどんなふうになつたかと申しますと、問題は法案を知つているか、この問題に対しまして知つていると回答のありましたものが四一%、知らないとこう申しましたものが五九%、その次にこの法案は日本の国に必要であるかどうかという問題を回答しましたのが、必要であるとこういうのが四四%、必要でないとこう回答のあつたものが四八%、わからないとこういつたのが八%、以上のような結果がありました。ただ対象の人たちを今日のこの公聴会に材料にいたしたいとこう思つたわけでありませんために、日刊新聞を読んでいるとかいう、地方では比較的インテリ階級に属する家庭を選んでやりました。そういう関係上地方人としては相当平均した回答が寄せられておるわけでございます。ただ私の。意図しましたところは地方人の政治関心を知るためにやつたのでありますが、この回答から見ますると一般の輿論とほぼ一致するようでありますが、ここで先ほど申しましたような農山村の政治批判が、固い政治理念の上に立つておるかどうかというような点で私自身も疑問を持つておるのでございます。  専門知識がないために、条文についての法律解釈に触れることができませんでしたが、極めて大ざつぱな法案に対する賛成意見になりましたことを恐縮している次第でございます。どうか山の中の一地方民の声としてこうした声もあるんだというふうにお取り上げ下さるよう切にお願いする次第でございます。与えられました時間を十分に利用もいたしませず、抽象的な意見になりましたことを深くお詫びいたします。
  46. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 有難うございました。   —————————————
  47. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 次に和島公述人にお願いいたします。
  48. 和島岩吉

    公述人和島岩吉君) 座つたままでよろしうございますか。
  49. 郡祐一

    委員長郡祐一君) どちらでもどうぞ。
  50. 和島岩吉

    公述人和島岩吉君) 時間が制限されておりますので、できるだけ要旨を申述べたいと思います。  この法案は第一に、憲法違反の疑いが濃厚だと考えます。その理由として考えまするに、この日米相互防衛援助協定は実質的には防衛という名の下に再軍備を前提としたものを前提とされておるよう考えられるのでございます。この法案の形自体が実に奇妙なものになつておるのであります。この法案内容を見ますると、アメリカから供与された分について防衛秘密保護しておる。で日本自体の防衛秘密というものは固有のものは全然考えておらないように見受けられるのであります。提案理由の内容国民の人権に関することが過大であるから、必要最小限度にとどめた、こういうことを言われておりまするが、この部分についてではありませんが、併しこのこと自体がこの法案根本の無理を物語つておるじやないかと私は言いたいのであります。アメリカから供与された武器が、日本の防衛当局が受取れば、その日から日本の防衛当局の武器になるわけであります。その分については防衛秘密だ、国防保安、秘密保護法の対象だということは実に奇妙なことじやないか。若し憲法上この法案が合憲であるとするならば、全面的に日本の見地から防衛秘密保護すべきでありまして、アメリカから供与された分については防衛秘密保護するが、日本固有のものは暫く度外視するんだ。これはちよつと外国にも歴史にも例のない奇妙な法案じやなかろうかと私は言いたいのであります。このことからすべて以下申述べまするようないろいろの矛盾と無理が至るところに露呈しておるよう考えるのであります。  又次に、本法案の憲法違反の疑いを持ちます第二は、国民の基本的人権を侵害する可能性、虞れというものが至るところに瀰漫しておると思料するのであります。憲法が保障いたしております学問、研究の自由というような観点から見たら如何なりましようか。今日原子力の研究が盛んに行われておる、水素爆弾の放射能の調査研究がなされておる、原子力の平和産業への転換の意図の下になされておるものもあります。又放射能を被つた治療のためになされておる向きもあります。今日それらの有能な武器は、優秀な武器は、日本には供与してくれないと言つてしまえば、問題は暫く先へ延ばされるかも知れませんが、今日の当面しておりまする世界情勢から見れば、こういう可能性も十分考えられるのであります。そうした場合に、こうした秘密兵器、或いは原子力関係の武器などを供与されたような場合に、秘密のうちに日本政府に供与されるという場合も考えられるのであります。そういう場合を想定しますれば、いつの間にやら学問、研究の自由が制限され、医療の目的でやつた人たちが、規定される法条によつて罰せられる危険さえ生じて来るのであります。又言論その他表現の自由、又報道の自由、それらのものも危殆に瀕しております。報道の自由の脅威については、午前中児島公述人が述べておられましたから省略いたしまするが、言論その他表現の自由が危殆に瀕することは、今日のいろいろ当面しておりまする問題に当てはめて考えればすぐにわかるのであります。再軍備の可否、再軍備について憲法を改正する論議には必ずこうした問題が伴うて来るのであります。そういう点から考えてみましても、本法案国民の基本的人権を侵害する慮れあることは十分に肯けるんじやなかろうかと私は思料するのであります。  こうした考え方を私は基本的に持つのでありますが、併し暫くこれらの問題を別といたしまして、本法案が前提といたしておりまする相互防衛援助協定に伴うて必要な措置だということについてはどういうことになるかという点について第二に意見を述べて見たいのであります。相互防衛援助協定には必要な措置を講ずることが約されてあります。併しこの必要な措置というのは何かということが殆んど吟味されずに、頭から刑罰法規であるこの秘密保護法案が作られておるのじやないかという印象を私は受けるのであります。必要な措置、防衛についての秘密保護するために必要な措置がすなおに受入れられたといたしまして十分吟味の必要があるのじやないか。先ず考えられまするのは、提案理由にも言われておりまするが、各国の事例にも、こ種の場合にすでにそれぞれの国には秘密保持の法規がある。日本にはそれがないからそれを作るんだという理由を述べられておりまするが、これはどうも肯きかねるのであります。日本の立場と各国の立場とは違う。日本においても戦前においてはいろいろの軍機保護法その他の秘密保持の法規が設けられておつたのでありまして、そういう建前の時代ならば問題はないと考えるのであります。併し今日の憲法の建前から見まして全然それらの外国の立場とは違う。日本は国際紛議を戦争若しくは武力によつて解決しないという建前を憲法上明確にしておるのであります。で今提案理由の中に挙げられておりまする各国の事例はそうした立場とは違う。国際紛議を場合によつては武方によつて解決する、戦争によつて解決する建前の国々の事例であります。我が国立場とは全然立場を異にするのであります。これらについてこの立法者の意図は奈辺にあるのか。これらの問題の解決がないために、先ほども指摘しましたように、アメリカから供与された武器については防衛秘密として取扱うが、日本本来の防衛秘密は暫く論外だというような奇妙なことになるのじやないかと、私は考えるのであります。更にこの必要な措置というものをどういうふうに考えるのか。更に百歩を譲りまして以上申しましたような観点を譲歩しましても、なお且つこの取締りの対象を誤つてはおりはしないか、私はさよう考えるのであります。一々引例することを省略いたしまするが、私たちの手許へ配付されました資料を見ましても刑罰的な措置を講ずるまでに、いろいろの国民の側から見て安全感を保たせるようないろいろの機構、組織、措置というものが各国にはなされておるようであります。この法案の中にも二条の中に標記を附するというようなことを簡単に、極めて簡単に規定されてありまするが、これだけでは国民は安全感を持てないのであります。先ずこのなさるべき必要な措置というものが防衛秘密を保持する、保護する必要がありとしまして、先ずなさるべき措置刑罰を科しても国民が納得できる前提、である措置、これが何か。これらのことを法的に先ずきめるべきじやないかと考えるのであります。それがなされずに、頭から国民の人権を犠牲にするのは、金がかからんから、刑罰法規だけを設けるんだというのでは、憲法が泣くだろうと私は考えるのであります。更に刑罰法規も私は決して必要な措置の一部ではないとは考えません。刑罰法規もやはり必要だろうと考えますが、然る場合に、先ずどういうふうに刑罰法規を設けるべきかということを考えて見たいのであります。先ず第一に、取締りの対象はこの防衛秘密取扱いまする人たち、これらの人たちを先ず目標にすべきじやないのか。これらの人たちが防衛秘密を守りさえすれば、国民の側は殆んど防衛秘密にタッチする機会は非常に濃度が違う。これによつて大部分必要な措置が講じ得るのじやないか。そしてなお且つそれでも万全を期しがたいときに、初めて国民の側にも取締りを行うというふうにならなければ、刑罰法規の本質に反するんじやないかと私は省いたいのであります。  以上申しましたような観点からこの法案を見て行きますると、至るところに難点が生じて来るように私は思料するのであります。その二、三を先ず挙げて参ります。先ず本法案を見まして第一に言いたいことは大抵の人が申しておりまするが、取締りの対象が非常にあいまいであります。それらのあいまいさが姿の上にはいろいろの形で露呈いたしております。不当な方法で、防衛秘密を探知した者、或いは通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなもの、これらが解釈如何に困難な事態を想像させるかということは、すでに他の人たちから言われておるようでありまするから、省略いたしまするが、これらのものは先ほど来私が申しましたように、初めからこういう問題の取扱方が出発点を誤つておるからこういうことになるんじやなかろうかと私には考えられるのであります。  それから取締りの対象があいまいであると申しました。更に非常に広過ぎる、防衛秘密と言われるものが広過ぎるということを指摘したのであります。この第一条の二、三等をずつと抽象的にこの文句を見てもなんでありますが、これを具体的な場合に当てはめてお考えになればすぐわかると思いまするが、幾らでも広くなつておる。大抵の問題は防衛秘密の中に該当するということになるのじやなかろうかと、言いたいのであります。丁度昔の軍の機密とされたようなものをそのまま踏襲されているのではないかとすら思われるような広さを持つている。アメリカから供与されまする船舶、航空機、武器、弾薬その他の装備品及び資材が装備品等でありまして、そのイ、構造又は性能、ロ、製作、保管又は修理に関する技術、ハ、使用の方法、ニ、品目及び数量、これだとアメリカから供与されましたものについては、何を、言うても大抵これに該当するだろうと言えるのであります。非常に危険な法律だ、刑罰法規にはちよつと比類のない危険な内容を包蔵している。史に又犯罪行為の面から見ましても、非常に莫然としているのであります。「不当」な方法で」こういうことを構成要件にされた犯罪類型を考えますと、非常に危険を感ずるのであります。」不当というのは正当でないという答えくらいしか出て来ないのでありまするが、こういう「不当」の解釈の弾力性によつて、更に又今言いました犯罪の形態が幾らでも拡大されて行くのじやないかというところに、非常な危惧を感ずるのであります。国民の人権という点から見て、非常な危惧を感ずるのであります。更に「通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなもの」という第三条の二号の規定がありまするが、これも考えて見ると非常にあいまいなものでありまして、すらつと読んで行くと「収集することができないようなもの」と、普通の用語としては大して問題になり得ないでありましようが、刑罰法規にこういうあいまいな言葉を使われては、国民は非常に困るのではないか。できないようなもの、できないもの、及びできないものと類似のもの、というふうにも解せられる用語であります。これを他の犯罪類型に考えて見るとすぐわかります。賭博又は賭博のようなもの、それらのものが犯罪だということになると、刑罰法規としてちよつとは私は落第じやないかという感じがするのでありまして、「通常」とは何か、それは最後に裁判所の判定に任せばよい、任すといいますが、裁判所は立法機関ではありませんから、こういうものを任せられたら裁判所は非常に困るのじやないか。又国民の人権というような側から見ました場合に、裁判を受けるまでに国民捜査当局の権力の前にさらされるのであります。先ず捜査当局がこれが通常じやないということになつたらどういうことに、なるでありましよう。先ず捜査権力の前に立たせられ起訴せられて、裁判所に行つて初めて弁解が立てば、それで人権は辛うじて守られるのでありますが、それまでの間は人権は危胎に瀕するのであります。こういういろいろの難点が生じて来るのは、冒頭申しましたような基本的いろいろな無理があることが、こういう法規の形になつて露呈して来ているのじやないか、私はかよう考えるのであります。  そこで私の以上申しましたことを要約いたして見ますると、先ず第一に本法案については憲法違反の虞れはないか、私は憲法違反の疑いが濃厚であると考えるのであります。  第二に、必要なる措置として刑罰法規を先ず作られようとするのでありまするが、これは非常に問題じやないか。日米相互防衛援助協定が違憲でないとしましても、必要な措置というものを、刑罰万能思想の下に立案されておりはしないか、先ず必要な機構を整備して、そうして必要止むを得ない部分についてのみ刑罰を以て罰するような考慮がなされなければならない。これがためには秘密範囲をもつと絞るべきだと考えます。本法案内容をなしておりまする先ほど指摘しましたような広範囲な、丁度戦時中日本の軍部がやつておりましたような非常に広範囲な、何でも軍の機密になるよう法案は、人権の立場からして御容赦願いたいと思うのであります。もつと秘密範囲を絞るべきだと考えます。今日のこの種秘密兵器、秘密武器というようなものの観点から、うんと絞つてももうちつとも秘密保持の措置としては欠くるところはないと私は考えるのでありまして、各国の事例を見ましても、もつと具体的に、この秘密が漏れたら国の作戦を、戦争を敗けにするよう秘密とか、そういうふうに具体的にいろいろとアメリカあたりでも規定しているようであります。日本から言いますれば、これを漏らしたら、平和国家としての日本の安全を害するものというような観点から考え直すべきじやなかろうか、こういうふうに私は考えます。必要止むを得ない刑罰的な措置も、もう一度根柢から、対象をどういう人に置くか、国民の側にはどうしても止むを得ない範囲のみの刑罰措置を講ずべきじやないかというふうに考えるべきだと思料するのであります。この種防衛秘密を取扱う人たちは、先ず何が秘密かというような判断の基準を持つておりましようし、持ち得る立場でありますが、国民はそういうものを持ち得ない立場であります。  更に、立法技術に関連しまして申しますれば、法定刑が公平観を害することが先ず指摘されます。第三条の規定を見ますと、一律に三十年以下の懲役ということになつております。これは午前中も話が出ましたから簡単に申しまするが、「我が国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」こういう違反をやつた人たちは、先ず常識的にはこの程度の処罰を前提とせられても、一応肯けますが、それと同じように不当な方法でやるようなものまで同じようにする非常に不公平、公平にそむくと考えるのであります。中には研究好きのために、詮索好きのために、知らず知らずの間にこうい、防衛秘密を探知収集に当る人たちもあり得るのであります。それを前段と後段と同じような法体系を以て律しておるという、そして三の「業務により知得し、又は領有した防衛秘密他人に漏らした者」、こうしたものこそこの法案が若し必要とすればこういうものを基礎にして、基本にして段階を設けて、内容の序列を設けて、本法案の法体系を定めるべきじやないか、ということを言いたいのであります。  更に用語を明確にされたい。この法案全部にただようております人権軽視の思潮が、用語のはしはしにまで滲透しているのじやないか。先ほど指摘しましたようないろいろのあいまいな幾らでも拡大でぎるよう用語をもつと明確に、善意の国民には決してこの危険はない、危なくはないという安全感を与えるよう用語に変えてもらいたい。一言にしますれば、人民の権利尊重の筋金を入れた法案に改めてもらいたい。  要約、かように私は意見を申述べるのであります。簡単に過ぎて、論旨が明確を欠いたかも知れませんが、後刻御質問を受ければお答えをいたします。
  51. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 有難うございます。以上で公述人公述が終りましたので、これより委員各位質疑に入ります。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  52. 亀田得治

    ○亀田得治君 水野さんにお尋ねしますがこの法案につきまして弁護士会等で何か正規に御論議されて、そして何か結論をお出しになつているようなことが若しありますれば、結論だけでいいですから御参考に出してもらいたいと思います。
  53. 水野東太郎

    公述人水野東太郎君) 私が承わつたとろでは、まだこの問題についての持論は出しておらんようです。私ここへ参りますについて、連合会等でこれを研究して結論が出されておれば、一応それを附かせてもらつて私の意見ということで参りたいと、かよう考えて開きましたところが、現在のところはまだ出ておらんということの御返事でした。併し司法制度調査会連合会がありまして、何か司法制度調査会のほうでは、これを研究しようということに進んでいるという工合に聞いております。今日ここへ参るまでは結論を出しておらんということに承知しております、どうぞ御了承願います。
  54. 一松定吉

    ○一松定吉君 どうです水野君、和島君からもよく承わつたが、僕らも余りにもぼうつとしていて、どうでも解釈できて、どうでも罰せられるというようなことで、これは事実もう少し絞らないと、本当に国民は安心してこういうようなことの行動に関与することができないような点が非常に危険に思つておるが、両君の御意見がそうであると私も同感ですが、例えば不当な方法なんというのは、刑事特別法にも用いられておるけれども、こういうよう用語というのは、戦後にできた言葉で、それから今和島君が、言つたように、「収集することができないようなもの」こういうことは実にあいまい千万です。本当はこういうことはもう少しやはり絞らんと、本当にそのままにしておいたら、誰でもかでもちよつとしたことで引つかかるということになる。裁判所はよはど公正な立場で判断してくれればいいが、裁判所に行くまでの間に、和島君の言うようにやはりしぼられる、しぼられるというのは汗をしぼられるはうなんです。だからして、私はこのままではいかんと思うが、全くあなたがたの御意見と同感であり、共鳴したのですが、例えば第一条の3の「公になつていないもの」といえば、誰が公にしたということで公になつたのか。例えばアメリカ、では公になつておるけれども、日本では秘密にされておる或いは映画とか芝居、新聞に出たというやつは、それでいいのか或いはもう誰かが望んでそれを明らかにしたということが不法に新聞で発表した、それが「公になつたもの」というようなふうに解釈するということになると、大変なことになると思う。要するに私はこういう人権に重大な影響のあるような刑事罰はもう少し和島君が言われるように、本当に絞つて国民が成るほど安心だ、成るほどこういうことだけを注意すれば引つかからんということを注意するということになればいいと思います。あなた方の御意見がそうだと思うので、この点はこうしたら大分よかろうというふうに具体的に例をお示しになつたが、本当にこれはもう少し……。
  55. 水野東太郎

    公述人水野東太郎君) それを心配して思いついたことを言つたのですが、大体安全保障の行政協定に伴う刑事特別法という一つの既成事実が大分大きなものを言つてやりにくいことになつて来ているのではないかと思います。
  56. 一松定吉

    ○一松定吉君 何でも引かかるということになる。ものが言えないですよ。
  57. 水野東太郎

    公述人水野東太郎君) 憲法では、大変立派な条文ができておるのに、どんどん端から壊れるよう法律ができてしまう。これは非常に危険なんですね。そういう点で、どうしても立法当時に十分その点を考えてやつて頂かないと、この刑事特別法にしても簡単にそのまますぽつとできたのではありますまいが、今日から考えますと、非常にこの法律のできたことについては、納得の行かないことがあるのですね。
  58. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうして刑法の法文から、只今和島君の言われたように、公安を害するような問題についても、ちやんと分けて、首魁だとか或いは附和随行君だとか何とかいうようにちやんと分けてきめておく。絶対にこれをした者は、すぐ十年以下の懲役、こういうようなことになると非常に困るが、こういう点もやはり私どもはもう少しやはり階段をつけ、序列をつけるという和島君の御意見は、私も大変いいと思いますが、内乱罪でも、首魁とか、謀議に参与した者とか、群衆を指揮した者とか、或いは附和随行した者、既遂、未遂、教唆、そういうように分れて、教唆とか既遂とか未遂というものは、これは刑罰のなんで区別しているんですか、これは首魁であろうと、附和随行であろうと、何であろうと、ただ裁判所の考えでこの刑の量定をきめるということ以外にない。範囲が非常に広いから、それでは本当に危険だと思う。やはり御同感だと思う。我が意を得たりと思つているんです。これはもう少しこれを本当にまじめにやろうとすれば、このままでは行きません。もう少し大いに修正しなければ、まるで大ざつばなものを持つて来て、これでお前適当にやれと言つて小さくやろうとすれば相当な時間を与えられればやれますけれども、今もう会期が幾ばくもないというときに、まだこれは衆議院から上つて来ないでしよう、衆議院はどういうことをしているか知らんが、衆議院の諸君が一つこういう点をよほど頭に打込んで修正せんと、そうかと言つてこれを鳥羽君の言うように放つたらかしておくわけにも行かん、又水野君の言うように何とかしなければならん。秘密保護ということも必要であるが、本当に国民の安心することができるよう一つこれは絞らんといけませんね。まあ頭から公述者諸君に質問しても我々と同じよう考えであろうから、それ以上のことは申上げません。ただ意見を述べておきます。
  59. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは他に公述人に対する御質疑はございませんか。……公述人各位に一言御挨拶を申上げます。本日は十分御意見をお述べ下され、且つ、委員各位の御質疑に対して適切なお答えを得まして、今後本委員会審議の遂行上裨益するところ多大であつたと存じます。厚くお礼を申上げます。  公聴会はこれを以て散会いたします。    午後三時三分散会