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1954-04-16 第19回国会 参議院 法務委員会 第20号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十九年四月十六日(金曜日) 午後一時三十四分
開会
――
―――――――――――
出席者
は左の
通り
。
委員長
郡
祐一
君
理事
上原 正吉君
宮城タマヨ
君 亀田 得治君
委員
楠見 義男君 中山 福藏君 棚橋 小虎君 一松 定吉君
政府委員
法務政務次官
三浦寅之助
君
法務大臣官房調
査課長 位
野木益雄
君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 真道君
説明員
法務省民事局参
事官
平賀 健太君
法務省刑事局総
務課長
津田
実君
最高裁判所長官代理者
(
事務総局民事
局長) 関根 小郷君 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した
事件
○
公聴会開会
に関する件 ○
日本国
における
国際連合
の
軍隊
の地 位に関する
協定
の
実施
に伴う
刑事特
別
法案
(
内閣送付
) ○
裁判所法
の一部を改正する
法律案
(
内閣送付
) ○
民事訴訟法等
の一部を改正する
法律
案(
内閣送付
) ――
―――――――――――
郡祐一
1
○
委員長
(
郡祐一
君)
只今
より
委員会
を開きます。 本日は先ず
公聴会
の
開会
についてお諮りいたします。先般の
委員長理事打合会
におきまして、且つ本
委員会
にも御披露申上げました
通り
、
日米相互防衛援助協定等
に伴う
秘密保護法案
につきまして
公聴会
を開くことが必要であると
決定
しておりまするが、打
合会
の
決定
又
委員会
に御報告いたしました
通り公聴会
を開くことに御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
郡祐一
2
○
委員長
(
郡祐一
君) 御
異議
ないと認めてさよう
決定
いたします。 なお、
公聴会開会
の日時でございますが、これは
公述人応募
、
選定等
の日数も必要でございますので、四月二十七日午前十時より
開会
いたすことといたしたいと思いますが、御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
郡祐一
3
○
委員長
(
郡祐一
君) 御
異議
ないと認めます。なお、
公述人
の数及び
人選等
につきましては、
応募
の結果をも参酌いたし
決定
いたすこととし、
便宜委員長
と
理事
にお任せ願いたいと存じますが御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
郡祐一
4
○
委員長
(
郡祐一
君) 御
異議
ないと認めます。本
院規則
第六十二条によりますと、
公聴会
の
開会
には
議長
の
承認
が必要でありまするから、
只今
の御
決定
に基き私より
議長宛て開会承認要求書
を提出いたします。 ――
―――――――――――
郡祐一
5
○
委員長
(
郡祐一
君) 次に、
日本国
における
国際連合
の
軍隊
の
地位
に関する
協定
の
実施
に伴う
刑事特別法案
、
予備審査
、先ず
提案理由
の
説明
を聴取いたします。
三浦寅之助
6
○
政府委員
(
三浦寅之助
君)
只今議題
となりました
日本国
における
国際連合
の
軍隊
の
地位
に関する
協定
の
実施
に伴う
刑事特別法案
につき
提案
の
理由
を御
説明
申上げます。 本
法案
は、去る二月十九日署名されました
日本国
における
国際連合
の
軍隊
の
地位
に関する
協定
の
実施
に伴う
国内手続
についての
規定
を定めたものであります。
日本国
に駐留する
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁判権
の
行使
につきましては、すでに昨年十月二十六日署名された
日本国
における
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁判権
の
行使
に関する
議定書
の
発効
に伴い、その
国内手続
につき
日本国
における
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁判権
の
行使
に関する
議定書
の
実施
に伴う
刑事特別法
が公布施行されているところでありますが、今回締結されました右の
協定
は、その第十六条におきまして
右議定書
と全く同様の
規定
を設けており、
日本国
との間にこの
協定
の
効力
が発生した国に属する
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁判権
の
行使
につきましては、爾後この
協定
によ
つて
規律されることにな
つて
いるのであります。そこでこの
協定
の
発効
に伴いまして、一九五〇年六月二十五日、六月二十七日及び七月七日の
国際連合安全保障理事会決議
並びに一九五一年二月一日の
国際連合総会決議
に
従つて朝鮮
に
寧隊
を派賦した
アメリカ合衆国
以外の国で、
日本国
との間にこの
協定
の
効力
が発生した同が右の諸
決議
に
従つて朝鮮
に派かした
陸軍
、
海軍
及び
空軍
の
日本国
に在る間におけるものに関しましては、
右協定
の
趣旨
に則り、
刑事
上の
手続法
につきまして若干の
特別規定
を設ける必要が生じましたため、この
法律餐
を提出することといたしたものであります。 申すまでもなく、これらの
軍隊
の
構成員
、
軍属
又は
家族
に対しましても、
我が国既存
の
法令
は、
原則
としてその
適用
を見るのでありますが、
右協定
の
刑事裁判権
に関する条項によりまして
刑事手続関係
の
法令
につきましては若干の
特別措置
を必要といたしますので、その
必要最小限度
の
規定
をこの
法律案
にとり入れた次第であります。従いまして、この
法律案
に特別に
規定
していない
事項
につきましては、
原則
として
既存
の各
法令
が
適用
されることと相成るわけであります。 この
法律案
は、第一章
総則
、第二章
刑事手続
の二章十二カ条と附則からな
つて
おるのでありますが、ここにこの
法律案
の主要点を申上げます。 先ず、第一章
総則
の章は、一カ条でありましてこの
法律
において使用する語の
定義
を定めたのであります。この
定義
は、
日本国
における
国際連合
の
軍隊
の
地位
に関する
協定
第一条に定められている
定義
に則つたものであります。 次に、第二章
刑事手続
の章は、十一ヵ条よりなり、
国際連合
の
軍隊
の
構成員
又は
軍属
が
国際連合
の
軍当局
において
裁判権
を
行使
する第一次の権利を有する罪を犯した場合における同
軍隊
への身柄の引渡、
国際連合
の
軍隊
がその
権限
に基いて警備している
国際連合
の
軍隊
の使用する
施設
内における
逮捕
その他人身を拘束する
処分
及び
差押
、
捜索等
の
処分
の
執行
、同
施設内等
において
逮捕
された者に対する
日本側
の
受領手続
、
派遣国
の
軍事裁判所
又は
国際連合
の
軍隊
の
当局
の
刑事手続
に対する
我が国
の
当局側
の協力及び
派遣国
の
軍事裁判所
又は
国際連合
の
軍隊
による抑留又は拘禁についての
刑事補償法
の
適用等
いずれも
刑事手続
に関する
現行
の
法令
を以てしては処置し得ない問題をとり上げて特別の
規定
を置いたものであります。これを要するに、
日本国
と
アメリカ合衆国
との間の
安全保障条約
第三条に基く
行政協定
に伴う
刑事特別法
及び
日本国
における
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁判権
の
行使
に関する
議定書
の
実施
に伴う
刑出特別法
の場合と殆んど同
趣旨
の
刑事手続
を
規定
したものであります。 以上この
法律案
につきまして概略御
説明
申上げたのでありますが、何とぞ慎重御
審議
の上、速かに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
郡祐一
7
○
委員長
(
郡祐一
君) 次に、本
法案
の
逐条説明
を聴取いたします。
津田実
8
○
説明員
(
津田実
君)
日本国
における
国際連合
の
軍隊
の
地位
に関する
協定
の
実施
に伴う
刑事特別法逐条
について御
説明
いたします。
逐条
の
説明
につきましては、かねてお手許に
刑事特別法案解説書
というのを廻してございますので、御参照下されば幸いであると存じます。なお、
逐条
に入りまする前に、
只今提案理由
の
説明
にございました以上に、
一般
的な
事項
について細かかく御
説明
申上げたいと思います。 先ず昨年十月二十六日東京におきまして、
日本国
における
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁判権
の
行使
に関する
議定書
というのが署名されましたわけでございます。これから
議定書
と申しますのは、これを指すことに御了解願いたいと思います。この
議定書
は同月の二十九日から
発効
いたしたわけでございますが、これは
刑事裁判権
のみについての
議定書
でございまして、
一般
のその他の各般の
事項
につきましては当時といたしましては、まだ
協定
を結ぶに至
つて
おらなかつた次第でございます。ところがこれに伴いまして
国内手続
に関する立法を必要といたしますので、先般の
国会
におきまして、同
議定書
の
実施
に伴う
刑事特別法案
が
提案
されまして御
審議
を願いまして、御可決を頂きまして、同法は昨年の十一月十二日に公布即日施行に
なつ
たわけであります。ところがその
議定書中
におきまして、将来この
国際連合
の
軍隊
の
日本国
における
地位
に関する
一般協定
が締結された場合には、この
議定書
は同
協定
に統合されるべきものであるということが示されておりましたところ、本年の二月十九日に至りましてこの
国際連合
の
軍隊
の
地位
に関する
協定
というものが罪名を見た次第でございます。で、この
協定
はすでに
国会
に
提案
されておりまして、御
審議
をお願いしてあるわけでございますが、同
協定
の第十六条には前のこの
議定書
と形式的に殆んど同じ
規定
を
協定
いたしております。でそれは要しまするに前の
議定書
をこの新らしい
協定
に取込んだとこういうに相成る次第でございまして、実質は全く同じでございます。 そこでこの従来の
議定書
につきましては現在どのような国が署名いたしておりますかと申上げますると、
オーストラリア
、
カナダ
、ニュージーランド、
グレートブリテン
及び
北アイルランド
、フランス、イタリー、
フィリピン
それからオランダという国が前の
議定書
に署名いたしておるのであります。ところが今度の
協定
につきましては、この
統一司令部
として行動いたしまする
アメリカ合衆国
のほかに、やはり
オーストラリア
、
カナダ
、ニユージーランド、
グレートブリテン
及び
北アイルランド連合王国
即ち
イギリス
、それから
南アフリカ連邦
、
フィリピン
、この六カ国が現在署名いたしております。併しながらこの
協定
の
効力
は
国会
の御
承認
を得ました上で、
日本国
がこれを受諾した後十日経
つて
効力
を生ずることになるわけでありまして、勿論未だ
効力
を生じておりません。そこでそれは
日本国
が受諾いたしまして十日後に
効力
を生じますが、それまでに他の国についてはどうであろうかと申しますと、これに署名いたしております先ほど申上げました国々のうち
アメリカ合衆国
、それから
イギリス
、
オーストラリア
、
フィリピン
は無条件でこれを受諾するということにな
つて
おりますので、
日本国
について
効力
を発生すれば、この時にこの
協定
が先ず最初に
効力
を発する、こういうことになるわけでございます。それからその他の
筆名国
につきましては、本国の受諾を要するわけでございまして、その受諾があつた日の後やはり十日を経て
当該国
については
効力
を生ずる、かように相成る次第でございます。 で、今回この
提案
されました
刑事特別法
は、この
協定
の
実施
に伴
つて
必要な
国内手続
を定めたものでございますが、前の
議定書
の
刑事特別法
との
関係
につきましては、前の
議定書
に署名をいたした国で、今度の
議定書
に署名いたした国があるわけでございます。それは今度の
議定書
が
効力
を発生いたしまするごとに、今度の
協定
によるわけでございまして、前の
議定書
はその都度
効力
を
当該国
について失
つて
行く、かようにな
つて新
らしい
協定
に乗り移
つて
行く、かように相成る次第でございます。この
刑事特別法
につきましても応じような
関係
が出て参る次第でございます。
一般論
といたしまして以上の点を申上げまして、次に
逐条
の御
説明
に移りたいと思います。この
刑事特別法
は前の
議定書
の
刑事特別法
と全く同様でございます。多少
議定書
という
字句
を
協定
という
字句
に変えましたとか、多少の
字句
の修正をいたしておりますが、その他は全部同じでございます。勿論実質も全く同じでございます。 先ず第一条は、
定義規定
でございまして、これはこの
刑事特別法
の用語の
定義
を定めたものでございます。で、この
法律
におきまして「
協定
」と言
つて
いるのは、
只今
申上げました
国際連合
の
軍隊
の
地位
に関する
協定
をいうものでございます。 それからこの
法律
におきまして「
派遣国
」というのは、千九百五十年六月二十五日、六月二十七日及び七月七日の
国際連合安全保障理事会
の
決議
並びに千九百五十一年二月一日の
国際連合総会
の
決議
に
従つて朝鮮
に
軍隊
を派遣しておりますところの
アメリカ合衆国
以外の国であ
つて
、
日本
との間にこの
協定
が
効力
を有している間におけるものをいうことになるわけでございます。即ち
日本国
と
協定
の
効力
がある間における国で、而も
アメリカ合衆国
は除く、こういうことにな
つて
おります。
アメリカ合衆国
を除きました。これは
アメリカ合衆国
につきましては、別に
日米安全保障条約
に基く
行政協定
に伴う
刑事特別法
がございますので、それによ
つて
律することに相成りまするから除いてございます。 それからその次に「
国際連合
の
軍隊
」といいまするものは、
当該派遣国
がこれらの
決議
に
従つて朝鮮
に派遣いたしました
陸軍
、海軍及び空軍であ
つて
、
日本国内
にある間におけるものをいう、こういうふうにな
つて
おります。従いまして、この
派遣国
が、
決議
に
従つて朝鮮
に派遣するために出した
軍隊
、それが
日本国
におる問ということでございます。従いまして未だ
朝鮮
に到達しない前におきましても、
朝鮮
に派遣する
目的
を以て
日本国
に取りあえず来たようなものは無論含まれる。併しながらかような
目的
を持たない
軍隊
は、たとえ
当該派遣国
の
軍隊
でも、ここにいう
国際連合
の
軍隊
には入らない、かように相成るわけであります。 その次「
国際連合
の
軍隊
の
構成員
」と申しますのは、その
軍隊
に属する人員で、現に服役中のもの、いわゆる
軍人
というものでありまして、
現役軍人
或いは召集中の
軍人等
を指すわけでございます。 それから
軍属
と申しまするのは、
派遣国
の
国籍
を有する文民で
国際連合
の
軍隊
に雇用され、これに勤務し又は随伴するものを言うのでありまして、そのうちで二重
国籍者
につきましては
派遣国
が
日本国
に命令を以て連れて来たもの、それから
通常日本国内
に居住しておる人が
軍属
のような仕事に服してもこれは除くという
除外例
を以て
軍属
を
定義
いたしました。 次に、
家族
につきましては
日本
の
国籍
を有するもの、つまり
日本人
を除きまして、この
国際連合
の
軍隊
の
構成員
又は
軍属
の
配偶者
及び二十一歳未満の者、或いはそれらの父又は母或いは二十一歳の子でありまする場合には
生計費
の半額以上がそれらの
構成員
又は
軍属
に依存している人、かような者を
家族
と言います。で、この
構成員
、
軍属
、
家族
の点につきましては全く
日米
、つまり
アメリカ在日米軍
の場合と全く同じ範囲にな
つて
おるのであります。 その次に、第七項におきましては、
国際連合
の
軍隊
の使用する
施設
の
定義
を掲げてあります。これはこの
協定
の五条一項に掲げておるところの
施設
を指すものでありまして、
日本国
が第五条によりまして、
合同会議
を通じて
国際連合
の
軍隊
に使用を認めた
施設
を指すわけでございます。この
施設
というだけでございまして、区域というのはございません。
日米
の場合におきましては区域というものも提供いたしておりますが、
国際連合
の
軍隊
に対しましては
施設
だけを提供するということにな
つて
おります。この点
日米
と違うところでございます。 その次は第二条でございます。これは
刑事手続
の章、この今度の
刑事特別法
におきましては、
日米
の場合と異りまして、罪に関する章は設けておりません。その点につきましてはこれを設けると否とは全く
日本
の裁量によることに話合いにな
つて
おりますが、
日本側
としてはこれは設ける必要が認められないという意味におきまして罪の章は設けないことにいたして
刑事手続
の章だけを設けた次第であります。第二条以下につきましても勿論先般の
刑事特別法
と全く同じでございます。で簡単に御
説明
をいたしますと、第二条は、
施設
、
国際連合
の
軍隊
がその
権限
に基いて警備しておる
施設
内におきまして
逮捕
をしたり
勾引状
、
勾留状
の
執行
をしたりするような場合におきましては、この
当該軍隊
の
権限
ある者、主としてこの
司令官コマンデイング・オフィサー
と申しますが、
司令官
の同点を得て行うか又はその者に
嘱託
をしてする、こういうことになります。これは
協定
第十六条の十項と、十項に関する
公式議事録
に関連して設けた
規定
でございまして、
軍隊
が
軍隊
として駐留いたしております場合におきまして、こういう強制的な
処分
を行う場合にすべき
国際慣例
として当然な事柄だというふうに考えられる
事項
を
規定
したわけでございます。 それから第二項におきましては、たださような常に
同意
を得て、或いは
嘱託
して行おうとする場合では
目的
を達し得ないような場合、即ち死刑、若しくは無期、懲役三年というような重い懲役又は禁固に当る罪にかかる
現行犯
を追跡しておるような場合に
施設
の中に飛込む、こういうような場合は
同意
を得ずして直ちに追跡をして
行つて逮捕
ができる、こういうことにな
つて
おります。これは
緊急性
とその
犯罪
の
重大性
から当然のことだと考えられる次第でございます。 次に第三条は、
一般刑事訴訟法
の
規定
におきまして、
検察官
或いは
司法警察員
がこの
国際連合
の
軍隊
の
軍人
或いは
軍属
を
逮捕
し或いは
逮捕
された者を受取るというような場合におきまして、その
当該構成員
又は
軍属
が犯しました罪がこの
協定
の第十六条第三項に掲げる罪のどれかに該当する場合には
刑事訴訟法
の
規定
にかかわらず直ちに
被疑者
を
当該軍隊
に引渡す、これはどういうことかと申しますと、
協定
第十六条第三項と申しますのは、
国際連合
の
軍隊側
に第一次の
裁判権
がある場合でございます。どういう罪かと申しますると、
構成員
又は年属の犯しましたところの
当該国際連合
の
軍隊
の
財産
若しくは安全のみに対する罪、又は専ら
当該国際連合
の
軍隊
の他の
構成員
、
軍属
若しくは
家族
の身体若しくは
財産
のみに対する罪即ち
国際連合
の
軍隊
の
所属員相互
間の罪というようなものが主なものでありますが、つまり言うと、
日本
に
被害法益
が及んでいないような罪が主なものでございます。さような罪、それから
当該軍隊
の
公務執行
中の作為又は不作為から生ずる罪、かようなものでございます。 恐縮でございますが、
解説書
の十ページのところの「
公務執行妨害
」と書いてございますが、「妨害」というのは「中」の誤りでございます。かような罪は
日米行政協定
の場合におきましても又
司際連合
とのこの
協定
におきましても、
当該軍隊
が第一次の
裁判権
を持ち
日本側
が第二次の
裁判権
を持つ、かような
犯罪
でございますので、第一次の
裁判権
を持つ
事件
につきまして
日本側
が先ず
逮捕
した場合は、
被疑者
を
相手かた
の
軍隊
に
引渡し
てやる、こういうのが第一項。 第二項
はさよう
に
司法警察員
が
引渡し
た場合におきましても捜査をして速かに書類と
証拠物
を
検察官
に送致しろ、かような
規定
でございまして、これはむしろ念のために刑訴の
規定
により
事件送致
をしておかなければならないという
司法警察員
の
義務
を
規定
したものでございます。 次は第四条でございまして、第四条は、
国際連合
の
軍隊
によ
つて
逮捕
された者の
受領
に関する
規定
でございます。例えば
国際連合
の
軍隊
の
施設
の中で
日本人
が何か
犯罪
をいたします。さような場合は勿論
施設
の中には
日本
の警察官は通常おりませんので、
当該軍隊
の
法律執行員つまりMP
などが
逮捕
するわけであります。或いは
日本人
に限らず
当該軍隊
の
構成員
にいたしましても、
日本
に第一次の
裁判権
があるようなものを
逮捕
するような場合があります。つまり言うと、
当該軍人
が
施設
の中で
日本人
に傷害を与えた、或いは
日本人
のものを盗んだ、かような場合には、
日本
に第一次
裁判権
がございます。さようなものにつきましては向うから
日本
に渡す、こう言
つて
来る場合があります。その場合におきましては、
日本側
はこれを受取らなければならないのでありますが、ただ単に受取るわけには参りませんので、これは
裁判官
の発する
逮捕状
を持
つて
行つて引渡し
を受ける、そういうことを
規定
したのが第一項でございます。 併しながら
裁判官
の
逮捕状
を受けるいとまがないような場合、或いは向うから言われた事実がどうもよくわからないから、
逮捕状
をもらうことができないというような場合は、速かに出かけて
行つて
一応
受領
するわけでありますが、その
受領
の際に、
日本
の
法令
を犯したことを疑うに足る十分な
理由
がある場合は、この場合はその場で
緊急逮捕
をいたしまして、後に
裁判官
の
逮捕状
を求める、こういうような
手続
をするということになる。併しながら、その場合
逮捕状
が発せられないときは、宜ちに釈放することになります。 又引渡す旨の通知が
国際連合
の
軍隊
からありまして、
司法警察員等
が出かけて
行つた
場合におきましても、いろいろ検討してみてもそれは
犯罪
にならない、或いは
犯罪
の嫌疑がないというような場合は、すぐその場で受取
つて
釈放する、こういう必要があるわけであります。これが第三項でございます。それから第四項は、その場合におきますところの、
引渡し
のあつた場合におきます
刑事訴訟法
の
規定
の準用に関する
規定
でございまして、特に御
説明
申上げる必要はないと思います。 それから次は第五条でございまして、第二条は
施設
内の
逮捕
の問題でありますが、第五条は
施設
内の
日本側
がする
差押
、
捜索等
の問題でございます。
軍隊
が警備しておる
施設
内におきまして、或いは
施設外
にありましても、
軍隊
の
財産つまり国有財産
、
軍隊
の
財産
につきまして捜索又は
差押
、検証をする場合には、あらかじめ
権限
ある者の
同意
を得てする、又は
嘱託
してする。
裁判所
又は
裁判官
の検証の
嘱託
は
裁判所
又は
裁判官
からする、こういうわけでありまして、これは勿論大体
逮捕
の場合と同じような形にな
つて
おります。 その次は第六条でございますが、第六条は、この
協定
によりまして
派遣国
の
軍事裁判所
、つまり
派遣国
の
軍法会議
が
裁判権
を
行使
する
事件
でありましても、つまり肯うと、
派遣国軍
に第一次の
裁判権
があるというような
事件
でありましても、
日本
の
法令違反
の罪であります場合には、
検察官
、
検察事務官
、
司法警察職員
、或いは
鉄道公安職員
は捜査することができる、
刑事訴訟法
上の
規定
に従
つて
捜査することができる。又
裁判所
、
裁判官
は
令状発付
その他
刑事訴訟
に関する
法令
に定める
権限
を
行使
できる、こういうことにな
つて
おりますが、これはもとより当然なことなのでございますが、或いは疑義があるといけないということから従来設けておる
規定
でありまして、これは六条の
規定
がなくても当然しかく解釈さるべきものと思われますが、念のために設けておる次第でございます。 次は第七条でございまして、第七条は
証人
の
出頭等
の
義務
についてでございます。
派遣国
は、自己が第一次
裁判権
を有する罪、或いは
専属裁判権
を有する罪につきまし、
日本国内
で
申事法廷
を開きまして、
当該国
の
構成員
、
軍属
、
家族
を
裁判
するわけでありますが、その際の
証人
が
日本人
であるという場合、或いは
日本
に
一般
に居住する
外国人
というような場合がございます。その場合如何様にしてその
証人
の
出頭
を求めるかということにつきまして
規定
したわけでございます。それは直接本人の
出頭
を求めるのでなくして、
日本
の
裁判所
に
嘱託
すると、こういうような考え方をと
つて
おります。そこで
軍事裁判所
の
嘱託
によ
つて日本
の
裁判官
から
当該軍事裁判所
に
出頭
すべき旨を命ぜられたもの、或いは
当該裁判所
において宣誓若しくは証言を求められたものは応じなければならない。これは
一般証人
は
日本
の法廷において証言する
義務
は当然あるのでありますが、
軍事裁判所
において証言する
義務
は必ずしもないのであります。ここでその
規定
を設けました。併しながらかような
日本
の
裁判官
から
出頭
すべく命ぜられたものが
出頭
しない、或いは宣誓、証言を拒んだときは一万円以下の過料に処すという
規定
を設けておりますが、これは
日本
の
当該規定
の場合よりもずつと軽い罰で済ませる、こういうことにな
つて
おります。これも従来から存しておる
規定
そのままでございます。 その次は第八条でございますが、第七条の
出頭命令
に応じない
証人
について、更に
軍事裁判所
から
嘱託
がありましたときは、
勾引状
を発して勾引する、かような
規定
でございます。この
軍事法廷
をして完全にその
裁判
を遂行せしめるために、是非必要な
承認
が
出頭
しない場合は、かような
強制措置
も止むを得ないというふうに考えて設けられております。その
勾引状
につきましては、
日本
の
裁判所
の
証人
に対する
勾引状
の場合と全く同じであります。 次は第九条でございますが、
裁判所
、
検察官
或いは
司法警察員
が保管しておる書類或いは
証拠物
につきまして、
国際連合
の
軍隊側
の
裁判所
或いは捜査当局から、
刑事
事件
の審判或いは捜査に必要があるから、それを提供してもらいたいという申出があつた場合、これは
協定
にもございますが、相互協力という建前にな
つて
おりまして、その場合には閲覧若しくは謄写を許し或いは謄本を作成して交付し、又はこれを一時貸与し、若しくは
日本
裁判所
等で必要のない場合は永久に引渡すということを
規定
したものでございます。 次は第十条でありまして、この
日本国
の
法令違反
の罪は、当然
日本
の
刑事訴訟法
によ
つて
措置ができるわけでありますが、
日本国
の
法令違反
ではない罪というのがございます。例えば
当該軍隊
の逃亡罪というようなものにつきましては
日本
に何ら
規定
はありませんので、
日本
では処置することができない。併しながら
刑事
事件
について相互協力をするという
協定
の建前もございますし、更に逃亡兵をそのまま
日本
で置いておくということになりますと、
日本
の治安にも相当影響する場合が多多出て参りますので、かような
当該国
の
刑事
事件
については協力をしてやるという建前をと
つて
おるのが第十条でございまして、その協力の仕方を
規定
しておる、かような
刑事
事件
につきまして、
軍人
、
軍属
、
家族
の
逮捕
の要請を受けたときは
逮捕
し又は
逮捕
させる、こういうことにな
つて
いるのが第一項。 それから第二項
はさよう
なものの
逮捕
要請があつたとき、これが人の住居或いは建造物等にいるような場合、その場合は令状なくして当該の家に入るということは勿論憲法の精神に反するわけでございますから、そこでその場合は
裁判官
の許可状を得て入
つて
捜索することができるということを
規定
したのが第二項。それから追跡して行くような場合は、もはや
裁判官
の許可を得るいとまがない場合がございますので、さような場合は、許可を得ることを要しないというのが但し書の
規定
でございます。 それから第三項は、さようなものを
逮捕
したときは、直ちに
軍隊
に引渡す、これは当然なことでございます。 それから第四項
はさよう
な
構成員
、年属、
家族
を引き渡した場合におきましては、
検察官
にそれを通報する。これはいろいろの中央折衝、或いは統計上の必要等もございますので、
検察官
に通報し、
検察官
によ
つて
中央に通報する、こういう形をと
つて
おります。と申しますのは
司法警察員
の中には自治体警察もございますので統制が困難である場合もありますので、かような
規定
をいたしております。 それから次は第十一条、同じく
日本国
の
法令
による罪以外の
事件
についての協力の問題でありまして、
日本側
に捜査について協力を求めて来た場合これに応ずる
手続
でございます。先ず参考人を取調べたり実況見分をしたり、書類その他のものの所有者又は保管者に提出を求める。これは
検察官
、
司法警察員
がするのであります。そういう
処分
を受けるものに対しましては、さような要請によ
つて
さような
処分
をするものである旨を告げなければならんというのが第三項でございます。かような協力につきまして何ら法上の規制がありませんとこれらの方法を講ずることができない場合もありますので、正当な
理由
がないのにかような
処分
を拒んだものにつきましては一万円以下の過料に処する、こういう第四項の
規定
を設けております。 その次は第十二条でございますが、これは
刑事
補償に関するものであります。この
派遣国
の軍事
裁判
、或いは
国際連合
の
軍隊
におきまして抑留或いは拘禁されましたものが、
日本
の
裁判所
で
裁判
を受けまして無罪になりました場合には、通常の形におきましては
刑事
補償の余地がないわけでございます。併しながらそれは
日本
が
嘱託
して抑留或いは拘禁する場合もありまするので、さようなものにつきましてはやはり
刑事補償法
の補償の
規定
の適用があ
つて
然るべきものと存じますので、これを
刑事補償法
による抑留又は拘禁とみなし
刑事
補償をする、かような
規定
が第十二条でございます。 以上全くこれは
日米行政協定
の
刑事手続
の場合、それから先ほど申上げました
議定書
の
刑事手続
の場合と全く同じ内容でございます。 次に附則について簡単に御
説明
申しますと、これは「
日本国
と
アメリカ合衆国
以外の国との間における
協定
の最初の
効力
発生の日から施行する。」であります。
効力
発生前には勿論
刑事特別法
の必要がございませんので、その日から施行するということにな
つて
おります。 それから第二項におきまして先ほども申上げましたように
議定書
に伴う
刑事特別法
によ
つて
手続
をいたします。さようにいたしたものが今度はこの
協定
の
効力
発生の日から
議定書
が
効力
を失いまして、この
協定
に乗移るという場合に、前の
議定書
に伴う
刑事特別法
によ
つて
行いました
手続
処分
の
効力
如何という問題が起りますので、それは新らしい相当
規定
によ
つて
やつた
手続
処分
とみなすということを
規定
してこの一貫性をとつたわけでございます。 それから更に
法律
が施行後乗移
つて
来る場合もあり得るわけでございますが、さような場合におきましては、乗移つた後は乗移つた前の
手続
処分
もやはりその乗移つた後の
手続
処分
に関する相当
規定
によ
つて
なされたものとみなすというのが後段でございます。 それからその次、第三項は前の
議定書
の
刑事特別法
の一部を改正する規応でございます。それは前の
議定書
につきましては
議定書
の
刑事特別法
におきましては「第一条第二項中「
議定書
に署名し、且つ、
日本国
との間に
議定書
の
効力
が発生したもの」」かようにな
つて
おりますが、この
議定書
は今度の
協定
に乗り移りますごとに
効力
が
当該国
の間になくな
つて
参りまして、最終に乗り移つた国が、乗り移
つて
しまえば
議定書
は必要ない。従
つて
議定書
に伴う
刑事特別法
は必要ない、こういうことになりますために、それはそういうことが起つたときにその
効力
をなくするための改正でございます。この二項というところに「この
法律
は、
議定書
が
効力
を発生したすべての国と
日本国
との間において
議定書
が
効力
を失つたときは、
議定書
の最後の失効の時に、その
効力
を失う。但し、その時までにした行為に対する罰則の適用及びその時までに
派遣国
の
軍事裁判所
又は
国際連合
の
軍隊
によ
つて
なされた抑留又は拘禁についての
刑事補償法
の適用に関しては、この
法律
は、その時以後も、なおその
効力
を有する。」かようにいたしまして、前の
議定書
に伴う
刑事特別法
は当該
議定書
が
効力
を失つたときには失効するということにいたしまして、
法律
が二重に存する事態を防ごう、こういうことにいたした改正がこの最後の項でございます。 以上を以ちましてこの
刑事特別法
の
逐条説明
を終ります。
郡祐一
9
○
委員長
(
郡祐一
君)
只今
の
刑事特別法
提案
説明
並びに
逐条説明
につきまして、次回以降に御質疑を願おうかと存じますが、若し御質疑がございましたら、お願いいたして結構でございます。
楠見義男
10
○楠見義男君 簡単なことだけ一つ伺
つて
おきたいのであります。先ほどお話で従前の
議定書
の
実施
に伴う
刑事特別法
と今回の
協定
に伴う
刑事特別法案
との間には、大体同じようだという
趣旨
の御
説明
があつたかと思いますが、若し違
つて
いる点があれば、違
つて
いる点だけを特に抜き出して簡単にその場所だけをお示しを頂きたい。それが一点と、それからもう一つは
施設
の問題があ
つて
も
区域
の問題はないのですが、この
日本国
における
国際連合
の
軍隊
の
区域
に関する
協定
、この
一般協定
の第五条ですか、第五条の二項に
国際連合
の
軍隊
の
区域
を使用し得る場合のことが
規定
されているのですが、この
区域
以内における問題はどうなるのか、その点と二つお伺いしたい。
津田実
11
○
説明員
(
津田実
君) 前の
議定書
の特別法と今回の
刑事特別法
の違いでございますが、先ず第一条のところの
協定
とありまするのが、前は
議定書
というふうにな
つて
いる、あとの点も全部
議定書
が
協定
に変つたという点でございます。それから第一条の七項が、新しい
規定
でございます。これは従来は
議定書
の場合は
施設
ということにつきまして
協定
は何らございませんで、従来の慣行と申しますか、従来の事実上の
施設
にな
つて
おつた。それが今度は
協定
上の
施設
というものの
定義
が出て奏りましたので、ここにとり入れた次第でございます。そのほかは先はど申しました
議定書
を
協定
に直したほかは令部変
つて
おりません。 それから第二の第五条二項でございますが、これは
国際連合
の
軍隊
が
日米行政協定
によ
つて
アメリカ側に提供している
施設
、
区域
を使用できる、
日本
政府の
同意
を得て使用できる、こういうことでございます。この場合は当該
区域
は
アメリカ合衆国
の主管に属するわけでございますので、ただアメリカと
国際連合
の
軍隊
との間の使用の合意と、
日本側
の
同意
を条件にして使用できるということにな
つて
おります。管理その他は全部アメリカ側がするわけでございますので、こちらの
刑事特別法
の
関係
は出て参らないということにな
つて
おります。
楠見義男
12
○楠見義男君 そうしますと、その場合には
アメリカ合衆国
も
権限
に基いて警備しておる
施設
であり、それからその
国際連合
軍隊
も
合同会議
を通じてこの
区域
の使用が認められておるのですから、その場合には
国際連合
の
軍隊
もその
合同会議
というものを通じ、或いは
日本
政府の
同意
を得てや
つて
おるのだから、
権限
に基いて警備をしておる
区域
と、こう両方が競合するのですか。そういう場合であ
つて
もこれはアメリカ
軍隊
の
権限
に基いた警備
区域
と、こういうふうに理解するのですか。
津田実
13
○
説明員
(
津田実
君) その点は後者でございまして、アメリカの
権限
に基いて使用しておる。同じ使用という文句を使
つて
ございますが、この五条二項において使用するというのは
当該国際連合
の
軍隊
の固有の
施設
として使用するという意味でなくて、アメリカの使用している
施設
を使用する、いわば又借りのような形を考えておるわけでございます。
楠見義男
14
○楠見義男君 そうするとその
区域
内における
国際連合
軍隊
の
犯罪
行為というものは、全くこちらのほうで自由に管轄権を持つのですか。
津田実
15
○
説明員
(
津田実
君) その
区域
の中はアメリカが警備いたしておるということになる場合におきましては、アメリカによ
つて
逮捕
されるということになりまして、それは勿論
日本側
に引渡されるわけです。それからアメリカ側が警備していない
区域
のような場合、全然いない、演習場でございます。提供はされておるがアメリカ軍はいない。そこを
国際連合
の
軍隊
が使用して演習するというような場合におきましては、その
軍隊
内部のことにつきましては当然自律権によりましてみずからできますが、勿論
日本
の警察官も中へ入
つて
逮捕
ができるということは当然であります。
郡祐一
16
○
委員長
(
郡祐一
君) 他に
只今
の
刑事特別法案
について御質疑ございませんか。……それでは本
法案
につきましては
只今
説明
を聴取したばかりでございまするから、次回以降に御質疑を願うことにいたします。 ――
―――――――――――
郡祐一
17
○
委員長
(
郡祐一
君) 引続き
裁判所法
の一部を改正する
法律案
、
民事訴訟法等
の一部を改正する
法律案
、両
法律案
を議題に供します。両
法律案
につきましては昨日申上げました
通り
逐条
審議
の意味合いを以ちまして、先ず民事訴訟法第二十二条から第三百五十九条までについて御質疑をお願いいたします。 ちよと速記をとめて。 〔速記中止〕
郡祐一
18
○
委員長
(
郡祐一
君) 速記を始めて下さい。 資料として配付されました規則の要綱案について、関根最高裁民事局長から御
説明
を願います。
関根小郷
19
○
説明員
(関根小郷君) 昨日の
委員会
におきまして、今度の
法律案
が若し通過いたしますると、最高
裁判所
の規則に任せられております分がございますので、そのルールの内容はどうかということをお問いがございまして、その大体の要綱をお手許に今日差上げました次第でございます。これは先般一度申上げたのですが、簡単に要約して申上げますと、現在の調書は六十年前の民事井松法施行以来同様の形式のままの調書でございまして、言葉を換えて申上げますと、年月日順に綴じるだけでございまして、いわゆる大福帳式の型でございます。それを何とかして合理化いたしまして、利用者の便を図るということを考えまして、今度
法律
の改正案が若し通過いたしますれば、この要綱案のような形にして頂きたいという考え方でございます。 それで先ず第一は現在大福帳式でございます長所を弁論調書とそれから証拠目録、証拠調調書というふうな形にして
行つた
らどうか、これもお手許に差上げてございますが、調書の様式を実際のものに合せまして、お手許に差上げてございます。これが主張
関係
書類
とそれから証拠
関係
書類
、雑
書類
、この三つに記録を分けまして、調書の上ではこの要綱に書いてございますように、弁論調書と証拠目録と証拠調調書、こういうふうに三別するという考え方でございます。そういたしまして、この狭義の弁論調書には、いわゆる形式的記載
事項
のほかに、事実及び
法律
に関する当事者の主伐、いわゆる弁論等を記載する。そういたしまして、この弁論調書には、当事者の準備書面にいいのがありますれば、それを引用する。それから弁論調書には、
裁判所
書記官が署名押印いたしまして、
裁判
長は、現在の
法律
では署名捺印ということにな
つて
おりますのを、
裁判
長が判を押せばいいようにしたらどうかという考え方でございます。 それから第三といたしまして、証拠目録、これも実物の模型がございますが、この証拠目録も一見してどういうものが証拠にな
つて
おるかということをわからせるために、目録を作るわけでございまして、これも
書類
によりましていろいろありますが、例えて申しますと書証の目録、或いは人証の目録ということにいたしまして、申請があ
つて
それが採用され、或いは弁証に例をとりますると、それについての成立を認めるかどうかということは一見してわかるようにしたらどうか、これも実物を御覧頂くとわかると思いますが、それが証拠目録の点でございます。 それから、この証拠目録につきまして、一々
裁判
長の署名或いは押印という
手続
を簡略化いたしまして、
裁判官
が認印すればいい、或いは
裁判所
の書記官が認印すればいいという形にしたらどうか。これなどにつきまして、一々
裁判
長の署名を要するということは如何かという点から、こういう考え方で参つたらどうか。 それから第四といたしまして、証拠調べ自体については、非常に詳しく書くべきじやないか。例えて申しますと、一問一答でや
つて
おりますので、それを一問一答式で、でき得べくんば書いたほうがいいんじやないか。これもお手許に差上げてございます記録の見本には、そういうような形で、赤い文字で書いてございますが、でき得べくんばこういつた方向にして行きたい、こういう考え方でございます。 それからなお、この要綱の中の最後の点でございますが、証拠調べを長期間に亘りましていたした場合、そのあとで証拠調べを見ますると、結局
事件
の
裁判
をしなくとも和解ができてしまうということがままございます。そういつたことのときに証拠調調書を一々細かく作らなくとも、当事者が納得いたしますれば、その本当の要綱だけを書けばいいというようなことも考えられるのじやないか、これなどにつきましても当事者に
異議
がないという場合だけを限りまして、そういつたことが考えられる。で、現在の民事訴訟法の
規定
では、こういつた行き方がどうしてもできませんので、特に今度の
法律案
が通過しますれば、こういつた行き方に参りたいという考えでございます。又御質問がございましたら、お答えいたしたいと思います。
一松定吉
20
○一松定吉君 大変よいお考えで、簡略にすることは結構ですが、今までのような形式にすると、
裁判
長並びに
裁判所
書記という方が署名捺印しておつたが、いわゆる訴訟記録の偽造というような場合には、いわゆる今までの定説によると、署名者の資格を偽わるということにな
つて
おつた。今度署名がない。捺印だけということになると、これはどうなる。その文書偽造ということについての始末を……。判事、書記官の名前がないと、そのときいわゆる今までの解釈は、署名の資格を偽わることが文書偽造だつた。内容の変更は内容の偽造であるので、だからそれは変造になるのでして、偽造にならないというような議論が学説で、判例もきま
つて
おつた。今度この名前がない、判だけだということになると、そこにどういうふうに変造、文書偽造ということに対して取計らうお考えですか。
関根小郷
21
○
説明員
(関根小郷君) 今の一松
委員
の御意見、これは弁論調書のほうは重要なものでございますので、書記官の署名を要するということにいたしてあります。それからそのほかの証拠
関係
の目録等につきまして、今申上げましたように、認印、判を捺すだけでいい。これは
刑事
関係
の問題でそういうことはないかと思いますが、若し今御心配のように偽造、変造というような問題が起きて参りますことを予熱いたしますると、或いは印章偽造、文書偽造の問題にからみまして、刑法上の問題が出て来るかと思いますが、署名がない点につきまして、印章偽造という問題はあり得るかと思います。併し私、そこの点までそういつたことまで予想いたしておりませんので、よくもう少し研究いたさないと……、専門家である一松
委員
にもお教え頂きたいと思います。
一松定吉
22
○一松定吉君 大変これはよかつたのです。その点私、今これは咄嗟の考えだから、印章偽造は勿論これは刑法で処罰があるが、文書偽造というものを、その点についてもう少し研究して、どういうふうにしてそういうときに救済するかということを、一つ考えて頂かんと、必ずそういうことはありますよ。署名者というものはなくなる、印だけ捺すということになると、印だけ捺して、これと同じようなものを以て、そうしているくと自分の利益にこれを利用するということは、必ずあり得べきことだ。その上に文書偽造というようなことではなくて、印章偽造というようなことでどうだというような問題は、これは当然起り得べきものだと思うのです。まあ一つ御研究願
つて
、適当の時期にお答え頂ければ結構です。これは非常に、成るほど簡素にな
つて
、私ども専門家から見てこれは非常にいいと思う。私も賛成せざるを得んのだね。まあ具体的の内容については別ですけれども、大体についての私の考えは、記録を閲覧するのに一見してすぐわかるというやり方で、非常にいい。もうすでにこういうような方式をぼちぼちとりつつあるところもある。
刑事
事件
なんかで、証拠申請なんかのときに、こういうようなことは非常にいいのです。いずれ
逐条
審議
につきましては、又時を変えてお尋ねすることにいたして、今のところは取りあえずその点だけお伺いしておきます。
郡祐一
23
○
委員長
(
郡祐一
君) 調書及び判決書等の簡易化等につきましては、又改めて御質疑を願う機会はあると存じますから、又そこへ戻
つて
御質疑下す
つて
も結構でございますから……。次はこのたびの改正の大きい眼目が含まれていると思います控訴及び上告
関係
、上告制限、上告却下等の点を含んでおりまする三百八十三条乃至四百九条ノ六、これまでを一括して御質疑願いたいと存じます。
一松定吉
24
○一松定吉君 これは昨日問題に
なつ
たこの百十四条の問題で、今日今この解釈の印刷物をもらつたのですが、この「原告が担保提供期間内に、担保を供しないときは、
裁判所
は終局判決によ
つて
その訴を却下する。この判決は口頭弁論を経ずに為し得る意味で、『得』とな
つて
いるが、」とありますが、一体却下は必ずしなければならないという解釈は、これはどこから来るのですか。
平賀健太
25
○
説明員
(平賀健太君) 担保の提供ということは訴えの要件に相成ります
関係
で、若し要件が備わ
つて
いなければ却下すべきものである。併しながら要件が備わ
つて
いない場合に却下いたします場合には、必ずしも口頭弁論を経なくても事案が明らかでありますので、口頭弁論を経ることは要しない、そういう意味でこの
規定
の最後が「得」とな
つて
いるのではないかと昨日民事局長から御答弁申上げたのでありますが、帰りまして私ども参考書をいろいろ調べましたところ、やはり同一の解釈のようでございまして、「得」とあるけれども、
裁判所
の裁量によ
つて
却下してもよろしい、却下しなくてもよろしいという解釈はちよつと見当らなかつたのでございます。
一松定吉
26
○一松定吉君 併し百十四条の法文をそのままずつと読下してみれば、担保を供すべき期間内に供しなかつた時は、「
裁判所
ハ口頭弁論ヲ経スシテ判決ヲ以テ訴ヲ却下スルコトヲ得」と、これは一ツの言葉じやないかね、これをあなたがたのように担保を供しない時は終局判決によ
つて
却下することができるのだ、それは口頭弁論を経ずしてすることができる慮味だと、こう解釈するのは、これはこの百十四条を真正面から解釈すれば、こういうことは出ないのみならず、担保を供すべき期間内に、例えば四月の二十日までに供せよということであつたのだが、二十日まで担保を提供しないのだというときに、
裁判所
は口頭弁論を経ずして判決を以て訴を却下することもできるが、併し却下せんで、口頭弁論を開くこともできる。そうして開いてお
つて
や
つて
おるうちに担保を提供したような場合には、いわゆるこの但書で判決前担保を供したときということに当るのだ、なぜそう解釈ができないですか。この解釈にすると担保を供しないということそれ自体を捉えてすぐ訴が却下できるのだ、口頭弁論を経ずして訴が却下できるのだと、成るほど口頭弁論を経ずして却下できるということはわかるが、口頭弁論を経ても却下はできる。なぜかというと担保を提供しないのだから、そう解釈するほうが当事者の権利を擁護することもできるし、又口頭弁論を進行しておる間に担保を供するということもできるのだから、若し今のこのような解釈にすると、二十日なら二十日までに担保を供せいいうのに、二十日までに供せなかつたならば、直ちに却下するということになると、当事者の虚を衝くようなことになる。ところがこの民事訴訟法の百十四条の一項は、今ここにタイプに印刷したような意味でなくて、これは訴を以て却下することもできるし、却下せんでもよろしい。却下せんでどうするのだ。却下をしなければ口頭弁論を経るのだ、そうして口頭弁論を経て適当な時期までに担保を供すればそれでよろしい。終局判決に至るまで担保を供しないときは、すぐに却下をしてもよろしい。こういうような意味に解釈するほうが、この法文を活かす意味においていいのじやないかと私は思うのですが、今あなたの見当るとか見当らんというのは、それは学説ですか。
平賀健太
27
○
説明員
(平賀健太君) 学説を一通調べたのでございますが、訴が元来不適法であります場合には、これは相手方があることでありますから、不適法であるのに却下しないでよろしいというわけにはこれは行きませんので、
裁判所
の裁量にこの点が任せられておるとはちよつと考えることができないと思うのであります。成るほど百十四条は「得」とな
つて
おりまして、一松
委員
仰せられるような解釈の余地もあるかのようにも考えられますけれども、併しそもそも訴が不適法なのでありますから、相手方としては、
裁判所
の自由裁量によりまして却下したり却下しなかつたりということは、これはやはり訴訟の公正というものが維持されないわけであります。そういうふうに考える次第でございます。
一松定吉
28
○一松定吉君 それならばですね、このいわゆる二項を削ることは不穏当ですよ。この百十四条の二項は「口頭弁論ヲ経スシテ訴ヲ却下スルトキハ
裁判所
ハ判決前原告ヲ審訊スルコトヲ要ス」とこういう
規定
によ
つて
、お前は
裁判所
の定めた二十日までに担保を供せんからして訴を却下するぞというようなことで、原告を審訊するということになると、それならにわかに担保を供しなければいかんというわけで、怠慢を自覚して自分の権利を擁護するという意味のこれは二項なんだから、その二項を削
つて
しま
つて
不意打ち的に担保を供しなかつたからと言
つて
、口頭弁論を経ずしてさつと却下するということは、これは訴訟を簡素にするという意味からはいいかも知らんけれども、当事者の主張を軽率に取扱わせるという意味からするならば、これがあるほうがいいので、これを削るということは如何でしようか。
平賀健太
29
○
説明員
(平賀健太君) 一応御尤もであると思いますが、ただこれは不意打ちに突如として却下するのではないのでございまして、やはり担保提供
命令
を出しまして、いつ幾日までに担保を提供しろという
命令
が出ているわけでありますから、決して不意打ちではないのではないかと考える次第でございます。ついうつかりして担保の提供を忘れておるという場合に、この審訊をいたしますと、成るほどと気が付くことがあるかも知れませんけれども、まあ訴訟というものはそういうついうつかりして怠慢である人までも万全な措置を講じて、それから生じますところの結果を防止すると、そこまで行くべきではないのではないか。一応これはいつ幾日までに担保を提供しろという
命令
が出ておりますし、その
命令
に従わない場合には訴を却下するということは、訴訟法にちやんと書いてあることでありますから、決して不意打ではないのではないかと私ども考えております。
一松定吉
30
○一松定吉君 訴訟法に書いてあると言
つて
も、それは
現行
の訴訟法を基礎にして、やはりこの二項があ
つて
の訴訟法ですね。今度のやつは二項を削るというんでしよう。二項を削るというんだから、私はやはりここの一項で審訊も何もせずにすぐに却下するということはよくない。二項があれば二項によ
つて
原告を密謀して、忘れたとか忘れんとかいうのではなくて、何故に担保を提供することができなかつたということについては、いろいろの事情があるでしよう、複雑な事情がある場合があるでしよう、そういう場合に
裁判所
に聞いてもら
つて
、成るほどそうか、それなら担保はまあ暫く供せんでも、口頭弁論だけは進行してお互いの主張を明かにしよう、そのうちに担保を提供せよと、こういうほうが親切であるように思うが如何ですか。
平賀健太
31
○
説明員
(平賀健太君) この一項につきまして、期間内に担保を供しない場合には、口頭弁論を経ないで
裁判所
は訴えを却下するんだという
規定
がすでにあります以上、担保提供
命令
によりましていつ幾日までに担保を提供せよという
裁判
があります以上、その
裁判
で、その
命令
で定められました期間内に担保を提供しない場合には、訴を却下されるということは、当然その
命令
は原告としてはわか
つて
おることでございますので、その際に十分予告を受けておることではないかと思うのでございます。そういう意味を以ちまして、決して不意打ではないということを申上げた次第でございます。
一松定吉
32
○一松定吉君 今あなたの御説の
通り
であれば、
現行
の民訴を作成するときに、立法するときに、二項は要らんことになる。二項を特に設けたのは、つまり今私の言うような場合もあるから、これを鄭重にして、当事者の権利を擁護するという建前から、特に
現行
法では二項というものを設けてある。然るに今度の、二項を削
つて
しまうんだということになれば、而も一項の解釈は、担保を供しないときにはすぐ訴を却下するんだ、但しそれは口頭弁論を径ないでもいいんだということがここに書かれたという解釈にすると、一層解釈が狭くな
つて
しま
つて
、私はこの当事者の権利を擁護する
現行
法第二項のあるほうがいいと思います。
平賀健太
33
○
説明員
(平賀健太君) この
現行
の民事訴訟法第百十四条ができました際には第二項はなかつたのでございます。第二項は後にな
つて
追加されました
規定
でございまして、これは昨日も御
説明
申上げましたように、占領期間中に言わば占領軍の示唆によりましてこの第二項の
規定
は入つた
規定
なのでございます。で、大正十四年にこの民事訴訟法が施行されまして以来この第二項が追加されますまでは、第一項だけで大かた処理して参りまして、別段の不都合というものはなかつたのでございます。そういういきさつでございます。
一松定吉
34
○一松定吉君 ますますおかしいのでありまして、第一項だけでは悪かつたから二項ができたんだろう。その悪かつたから二項ができたのを、今度はそれは占領中だから二項をこしらえたが、占領がやまつたから、この占領中に必要であつた二項はもう要らんように
なつ
たということは、君、折角設けたということは、当事者の権利の擁護のために必要で二項を設けた、それを今度は必要がなく
なつ
たんだということになれば、独立国に
なつ
たから必要がなく
なつ
たのだ、こういう解釈よりしようがないことになるが、それでは二項を設けたというのは、一項では不十分だということで二項を設けたんだが、然るに二項というものはあることが悪いということで今度二項を削るというような意味なら了承しますよ。併しながら元は一項であつたのに二項を設けた、その設けたのは一項だけでは不十分であるし、当事者の権利を擁護するのに不十分であるということで二項を設けたならば、その二項を今度削るということについては、その設けたよりも、削るほうがこういうような利益があるというようなことが明らかにならなければこの二項を削るということはよくないのみならず、今あなた方のいうように「却下スルコトヲ得」というのはこれは口頭弁論を経ぬことだけを言うのであ
つて
、却下は当然却下できるということに解釈すれば、なお第二項は必要だと思いますがどうです。
平賀健太
35
○
説明員
(平賀健太君) 先ほどの私の
説明
或いは足りなかつたかも知れないのでございますが、この第二項を削りましても、
裁判所
におきまして、なお事情があり、一応調べて見る必要があるということになりますと、口頭弁論を経まして、審理いたしまして「訴ヲ却下スルコトヲ得」これは勿論できるわけでございます。口頭弁論を経ることを一項は決して禁止しているのではないと思うのでございます。
一松定吉
36
○一松定吉君 それだからこの「得」という言葉を私は今のような解釈をしなければならんと思います。「得」ということは口頭弁論を経んで却下もできるが、口頭弁論を経ることもできるんだということで、「判決ヲ以テ訴ヲ却下スルコトヲ得」なんだから、却下せんでもいい、そこでこの「得」が活きるのてあ
つて
、あなた方の言うように、この「得」というものは必ず百十四条では却下するのだ、「得」ということは口頭弁論を開かんということになるとあなたのような解釈は出て来ないのじやないですか。
平賀健太
37
○
説明員
(平賀健太君) 要するにこの百十四条の一項というのは担保提供
命令
に従いません場合には、「訴ヲ却下スル」という運命は免れないのでございますが、口頭弁論を経るか経ないかというと、その点が
裁判所
の裁量に任せられておるのでございまして、或いは当事者のほうから何か事情の中立があるというようなことで、これは調べてみる必要があるということになれば、口頭弁論を経ることも勿論できるのであります。若しこれを仮に口頭弁論を経ずして判決を以て訴を却下することを要すという普き方をいたしますと、口頭弁論を経てばいけないことにな
つて
しまう。それではやはり窮屈過ぎまするので、口頭弁論を経ると経ないとは
裁判所
の自由裁量に任せられるのであるが、最後には併し「訴ヲ却下」の運命は免れない、この
趣旨
をこの一項の条文は表現しているのではないかと思うのでございます。
一松定吉
38
○一松定吉君 私が解釈するのは、これは
裁判所
が口頭弁論を経んで判決を以て訴を却下することもできるし、口頭弁論を経て判決を以て訴を却下することもできる、こう解釈すれば、この条文そのまま解釈できるわけですね。
平賀健太
39
○
説明員
(平賀健太君) 私の申上げているのもその
趣旨
でございます。全くその
通り
でございます。
一松定吉
40
○一松定吉君 それならば、君、この今日のこのあれは間違いですよ。まあこのくらいにしておきましよう、あなたをいじめるのじやないのだから……。
中山福藏
41
○中山福藏君 ちよつとお尋ねしておきますが、今のお話私ははつきり理解できなかつたのですが、これはこういうことじやないんですか。
裁判所
がこういうよりな改正案を出されたというのは、一項さえあれば二項がなくても賄えるという意味から来ているのじやないのですか。あ
つて
もなくてもとにかくこの二項というのは一項さえあればいいのだ、こういう意味で改正案が出ているのじやないのかと私は思うのですが……。
平賀健太
42
○
説明員
(平賀健太君) 二項を削除したします
理由
の一半は、まさしく仰せの
通り
でございます。二項がなくても決して下都合は生じない、実益がないということが第一で、それから第二にはやはりこの審訊の
手続
をいたしますというと、それだけやはり訴訟が延びるわけでございまして、これは相手方にと
つて
はやはり不利益になるわけでございまして、余り実益がない、而も訴訟がそのために解決が遅れる、そういう
理由
で以て二項は削除したい、こういう
趣旨
でございます。
中山福藏
43
○中山福藏君 今参
事官
のおつしやる
通り
であるとするならば、なおこの第一項の「得」という字はやはり任意解釈しなければあなたの
目的
は達せられんのじやないかと思うのですが、これは口頭弁論を経てもいいし、経んでもいい、どちらでもそのときの事態に応じて便宜な措置をとれ、こういう意味に解すると、これは二項がなくてもこれはいいと思うのですが、そう解しなければ意味がどうも徹底しないように思うのですが……。
平賀健太
44
○
説明員
(平賀健太君) 結局くどくど申上げましたが、そういうような
趣旨
でございます、百十四条の一項というのは……。
中山福藏
45
○中山福藏君 ああそうですか。じやわかりました。
郡祐一
46
○
委員長
(
郡祐一
君) 速場をとめて。 〔速記中止〕
郡祐一
47
○
委員長
(
郡祐一
君) 速記を始めて。
中山福藏
48
○中山福藏君 百四十三条の改正案でございますが、これは何でございますか、「調書ニハ最高
裁判所
規則ノ定ムル所二依リ期日ニオケル審判二関スル重要ナル
事項
ヲ記載スルコトヲ要ス」と書いてあるのですが、これは最高
裁判所
の規律すべきところの重要な範囲、範疇というものをおきめにな
つて
のちお出しになるつもりで、これはお書きに
なつ
たのでございましようね。
平賀健太
49
○
説明員
(平賀健太君) まさしくその遁りでございまして、最高
裁判所
の規則の中で細かいことが
規定
されるということを予定しておるわけでございます。
中山福藏
50
○中山福藏君 そうするとこの
現行
法の百四十三条の重要
事項
と思われる項目はここに一から六までございますが、これだけの部分にまだほかにお加えに
なつ
たものを規則の中にお入れになるつもりでございましようか。大体これは重要
事項
だと思われるのですが、
現行
法に書いてある項目は……。
平賀健太
51
○
説明員
(平賀健太君)
現行
法では調書の記載
事項
の第百四十三条、百四十四条その他にもあるのでございますが、最高
裁判所
のほうでよく実情を御存じでありますので、いい規則ができることと私どもは信じておるのでございますが、
現行
法の中に
規定
しておりますような重要な
事項
は大体規則の中で洩れなく取上げられるというふうに私どもは考えておる次第でございます。
中山福藏
52
○中山福藏君 そういたしますと、これはこの百四十三条、百四十四条これらの項目に必要
事項
を追加されたらそのほうが簡単に行くんじやないですか。これをわざわざ削
つて
、新たに規則のうちにはめるということはどうもおかしいような感じがするのですがね。むしろこれは
法律
にあるべき
事項
ではないかと思うのですが、規則のうちに入れるよりも、そういう考えがするのですが、如何ようなものでございましようか。
平賀健太
53
○
説明員
(平賀健太君) この調書の記載
事項
と申しますのは、結局訴訟で問題にな
つて
おりますところの実体法上の権利
義務
に直接
関係
があることではないのでございまして、又非常に技術的な
事項
にもなりますし、この
法律
で細かく
規定
するよりも、やはり最高
裁判所
の規則できめることとしたほうが立法政策としまして、妥当ではないかというので、この百四十三条の改正案ができておるのでございますが、この
現行
法のままにいたしますと、昨日も最高
裁判所
のほうから御
説明
になりましたように、
現行
法のままでは、どうしても合理的な調書の記載方式の改正が行詰る。
現行
法のままでは、どうしてよやはり如何にいい合理的な調書を作ろうとしましても、
現行
法のままでは差支えるという事情がやはりあるのでございます。そういうわけを以ちましてこの規則に譲るという案ができておるのでございますが、この規則に仮にこういうふうに譲りましても、最高
裁判所
としては訴訟の実情をよく御存じのことでありますし、又規則制定諮問
委員会
にお諮りにな
つて
作られることでございますので、十分最高
裁判所
を信頼いたしまして、決して国民の権利
義務
に影響を及ぼすようなことがないがしろにされるという懸念はないと考えていいのではないかと思
つて
いる次第でございます。
中山福藏
54
○中山福藏君 これは百四十三条並びに百四十四条の
規定
を見ますると、実体
関係
の
規定
もあるし、
手続
関係
のよのも、これは両面含まれておると思うのですが、これはまあ師にかけて、今度分類しては面倒だから一括してこれを規則に譲るというふうにも見えるのですが、これは実体的の
規定
のうちに百四十四条なんかのうちに入るのが相当であるように私はこれを拝見すると見えるのですがね。
関根小郷
55
○
説明員
(関根小郷君) 今中山
委員
のお問いの、規則を作るときのことに触れるかと思いますので、便宜私から御
説明
申上げたいと思います。今お話がございましたように、百四十三、百四十四条と御覧頂きますと、百四十三条は調書の内容と申しますよりも、むしろ形式的要件、どういう
事件
についてこの調書ができているかという、例えば
事件
の表示とか、
事件
番号、それから
裁判官
、
裁判所
の書記官の氏名と、そういつたものでございます。ところが百四十四条に参りますると、内容でございますね、どういうことを当事者が言つた。或いは
証人
がどういうことを言つたか。それから
裁判官
がどういう
裁判
をしたかというような内容的のものであります。簡単な言葉で申上げますと、百四十三条は要するに形式的記載
事項
、それから百四十四条は
実質
的記載
事項
ということになろうかと思います。 そこで若しルールに譲
つて
頂くとしますと、これ以上附加えるものがあるのかどうか。それから更にこれを削るかどうかという問題になろうかと思いますが、現在この民事訴訟法に
規定
してございます形式的記載
事項
も、
実質
的記載
事項
もこれに追加するべきものが特にあるかと申しますと、特にございません。併し先ほど私が御
説明
申上げましたように記録、それから調書を内容別に分けますと、例えて申上げますと百四十四条の中には、調書には弁論の要領を記載してございまして、この弁論の要領、先ほど私が御
説明
申上げました主張に
関係
する分でございます。当事者が金を貸した借りないというようなこと、それから更に進みまして
証人
の陳述が第二号にございますが、こういつたものは証拠の
関係
のものということになろうかと思います。更にそれから進みまして五号に、「書面二作ラザル
裁判
」こういうのは
証人
を調べるか調べないかという
裁判
、これは調書に載ります。そういつたのを今度の方式で、先ほど御
説明
申上げました方式で行きますと、百四十四条の内容毎によりまして区別をするわけでございまして、その区別を区別した内容に応じて百四十三条のほうの記載、形式的記載要件を区別してや
つて
行くということになるわけであります。例えて申上げますと、証拠の
関係
の部分については、いちいちその細かい百四十三案の要件全部を書く必要がないのじやないか。百四十三条を全部書く必要があるのは弁論の要領を書く主張調書、狭義の弁論調書というふうに非常にざつくばらんな言葉で申上げますと、百四十三条と百四十四条をそれぞれ内容に応じてばらして、その内容毎にその百四十三条と百四十四条を併せて作
つて
行かなければならん。そういたしますと非常に技術的なものにな
つて
しまう。でこれを
国会
の御論議を経ましてお願いするのには余りに実際的技術的な問題である。さればこそ憲法七十七条が最高
裁判所
に譲るということができて来たゆえんでもあろうかと思います。こういうふうな問題になりますと、でありますので、百四十四条と百四十三条を規則に譲
つて
頂ければ、先ほど申上げましたような合理化のほうに進み得るのではないかという次第なのであります。
中山福藏
56
○中山福藏君 ただ私の感じでは、訴訟記録を作成の便宜のために分類されるというような感じを持つたものですからお尋ねしておるわけですが、実体的
規定
と形式的
規定
とごちやまぜにして記録作成の便宜にこれを供する。いわゆる権利
義務
の実体に
関係
あるものまでもこの規則に譲
つて
しまうということは、どうも余りその権利
義務
の
関係
というものを軽視する傾きがここに生れて来やせんかと実は懸念したものですから、一応お尋ねしたわけです。これ以上はお尋ねする必要はないと思うのです。
郡祐一
57
○
委員長
(
郡祐一
君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
郡祐一
58
○
委員長
(
郡祐一
君) 速記を始めて。
一松定吉
59
○一松定吉君 百四十七条「口頭弁論ノ方式二関スル
規定
ノ遵守ハ調書二依リテノミ之ヲ証スルコトヲ得但シ調書が滅失シタルトキハ此ノ限二在ラス」これを「口頭弁論ノ方式二関スル
規定
ノ遵守」をとあるのを「口頭弁論方式二関スル
事項
ニシテ調書二記載シタルモノ」これをこう変えなくちやならんわけは、それを一つ……。
平賀健太
60
○
説明員
(平賀健太君) これを改正いたしましたのは、この「口頭弁論ノ方式二関スル
事項
」の中には、至
つて
形式的なものもございますし、必ずしも調書に記載しなくてもいいような
事項
も或いは出て来るのではないかということであ
つて
、若しそういう場合に調書に記載がないからと言
つて
、その方式が直ちに遵守されないということにな
つて
はやはり困りまするので、調書に記載のあるものにつきましては、調書の記載を、争うことのできない証拠になるのでございますけれども、調書に全然記載のない場合につきましては、ほかの立証方法も許すと、そういう
趣旨
でこれを改めたのでございます。
刑事訴訟法
とやはり歩調を合わせた次第であります。
一松定吉
61
○一松定吉君 おかしなことじやかね、これは今度の修正の
通り
に読みかえるとするとですね、「口頭弁論ノ方式二関スル
事項
ニシテ調書二記載シタルモノハ調書二依リテノミ之ヲ証スルコトヲ得」と、そうするとちつともわからないのですがね。記載したるものは
異議
を持たせることはできんとか、記載したるものはその
通り
のものであ
つて
、
効力
を変更することはできんということであるのならばわかるんだが、「
事項
ニシテ調書二記載シタルモノハ調書二依リテノミ之ヲ証スルコトヲ得」これはやはり
現行
法のほうがいいんじやないか。そうでしよ。百四十七条のこの「口頭弁論ノ方式二関スル
規定
ノ遵守」まであるからして、遵守から下の「ハ」から生きているのだろう。遵守とあるのだから、これはつまり「口頭弁論ノ方式二関スル
事項
ニシテ調書二記載シタルモノ」これまで変えるのだ、「モノハ調書二依リテノみ之ヲ証スルコトヲ得」とこうなるでしよう。「
事項
ニシテ調書二記載シタルモノハ調書ニ依りテノミ之ヲ証スルコトヲ得」というのはちよつと意味がわからんようだけれども、調書に記載したるものはそれを
効力
を有するとか、これを変更することができんとか、或いは調書に記載したるものはこれは
異議
を言うことはできんとか、調書に記載したるものはこれは反証を上げてこれを復すことができんとかという意味ならはわかるんだが、「調書二記載シタルモノハ調書二依リテノミ之ヲ証スルコトヲ得」、調書に記載したるものは調書に記載した
通り
なんだ。どの調書によりてこれを証するのですか。この調書によ
つて
これを証するのですか。
平賀健太
62
○
説明員
(平賀健太君) これは一松
委員
のおつしやる
通り
の
趣旨
の
規定
なのでございまして、この文句は
刑事訴訟法
の「第五十二条公判期日における訴訟
手続
で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによ
つて
これを証明することができる。」という
規定
が五十二条にあるのでございますが、この
規定
の体裁を変えたわけでございます。併し
趣旨
は一松
委員
のおつしやる
通り
の
趣旨
なのでございます。
中山福藏
63
○中山福藏君 これはなんですかね、こういう
規定
をこれは普通学校を卒業した人がわかるでしようか。こういう書き方で、私どもでもこれちよつとわからんですよ。これは
一般
の大衆に大体
法律
というものが、わからせるということを本旨とするというのが時代向きじやないかと私は考えたのですが、これはなんですか、
現行
法と同じ意在のことをお書きにな
つて
いるのですか。
平賀健太
64
○
説明員
(平賀健太君) 大体同じ意味でございますが、この調書の記載
事項
を規則に譲るということにいたしましたので、この規則でどういうふうに定まるかわかりませんが、重要な言葉は全部盛られると予想されるのでございますけれども、やはり
刑事訴訟法
と同じように改正をしておいたほうが適当ではないか、というのでこういうふうに改めたのでございます。
一松定吉
65
○一松定吉君 これは私
現行
法のほうがよくわかる。「口頭弁論ノ方式二関スル
事項
ニシテ調書ニ記載シタルモノハ調書ニヨリテノミ之ヲ証スルコトヲ得」だからそれを
刑事訴訟法
の五十二条は「公判期日にづける非訟
手続
で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによ
つて
これを証明することができる。」というのは、却
つて
このほうがわからんね、民訴の百四十七条のほうがよくわかる。今中山君の言うように素人が見てもわかるということであ
つて
、これ却
つて
わからんように改正するというのはどうかと思うのだがね。これは意見の相違だからこれ以上は言いますまい。
中山福藏
66
○中山福藏君 これは同じ意味だとおつしやいますが、この「口頭弁論ノ方式ニ関スル
規定
ノ遵守ハ」ということが書いてあるのですね、「方式ニ関スル
事項
ニシテ調書ニ記載シタルモノハ」とか、遵守されたから結局調書にその法式というものが定
つて
、
規定
の方式が定ま
つて
お
つて
、それを遵守しておるという精神に則
つて
、この「調書ニ記載シタルモノハ」という意味でしようね。これは同じ意味だとすればどうも非常にわかりにくいように思うのですがね、これは。
平賀健太
67
○
説明員
(平賀健太君) この同じ意味と申しますのは、この調書の記載が絶対的な証明力がこれはある、事実は調書の記載とは違うのだ、反証を挙げてその調書の記載と異る主張をすることができないという、そういう点ではこの改正案、
現行
法と同じでございまして、ただ
現行
法でありますと、若し調書に記載していないことがありますというと、方式が遵守されなかつたことにな
つて
しまうわけであります。ところがまあ口頭弁論の方式といいましても、例えば
裁判所
で口頭弁論開いたとか或いは公開したとかいうようなことは、もうまあそれは一例でありますが、非常に重要なことではございますけれども、必ず特別の場合でなければ
裁判所
以外で口頭弁論が開かれるというようなことはございませんし、又弁論を公開しないということは殆んどない。特に弁論を秘密にする、公開しない、特定の場合を除きましては必ず公開されるのでありまして、それをいちいち調書に書かれなくてもいいじやないかということも考えられるわけでありまして、仮に
裁判所
で開いたということは、いちいちの調書には書く必要がないということに仮に規則がなりました場合は、
裁判所
で開いたということが若し調書に記載がございませんと、
裁判所
でないほかのところでやられたことにな
つて
しまうわけであります。そういうことにな
つて
は不都合を生ずるということを考えまして、調書に記載された限りにおいては、これは絶対的な証明力があるのであるけれども、調書に記載のない
事項
につきましては、これは反証も許す、或いはそのほかの証拠で以ちまして方式が遵守されているとか、遵守されていないとか、そういう主張ができるということにしたのであります。その点では
現行
法と少し違
つて
来るだけであります。
一松定吉
68
○一松定吉君
現行
法より却
つて
悪くならんかね。
現行
法は口頭弁論の方式に関する
規定
を遵守したかせんかということは、調書によ
つて
これを立証して、反証を許さんのだから、そうすると調書に判事が立会つたということがなかつた、判事の名前が調弁にはなかつたということにな
つて
来ると、百四十七条の
規定
の遵守をしないということがこの調書によ
つて
これを証せられるが、ところがこのこつちの新たのほうは「口頭弁論ノ方式ニ関スル
事項
ニシテ調書ニ記載シタルモノ」は、この調書を遵守しなければいかんが、調書に判事が立会つたということが記載してないときには、反証が挙げられるという意味だね、それならわかる。
平賀健太
69
○
説明員
(平賀健太君) そういう意味でございまして、判事が列席したという記載が若し調書になかつた場合にはどうなるかと申しますと、実際なかつたのだという証拠を挙げて、この口頭弁論は不適法であるということもできますし、いや実は判事は立会
つて
おつたのだという証拠を挙げて、口頭弁論は適法だという主張もできる。
一松定吉
70
○一松定吉君 だからこの
現行
法
通り
すると、判事は立会
つて
いないにかかわらず、立会つたと書いてあつたときには、立会
つて
いなくても立会つたことに証明力があると、こうなるね、
現行
法では。ところが今度こつちのほうでは調書には立会
つて
おるということを書いていないのだ、だからしてこれは立会
つて
いなしのだからいけないのだということを、反証を挙げて争うことができる、それならば立会
つて
おるということを書いてあるが、本当は立会
つて
いなかつたのだが、その時分には反証を挙げられないことになる。立会
つて
いないのに立会
つて
おると書いてある。ところが
現行
法では立会
つて
いなくても立会
つて
いても、立会つたと書けば反証も挙げられんのだ、
現行
法では……。こつちの新法の今度改正する
法律
は、判事は本当は立会
つて
いない、立会
つて
いないのだけれども、立会
つて
おるとこう書いてある時分には、それはやはり反証を挙げられんことになり、
現行
法も同じで
現行
法も立会
つて
いないけれども立会
つて
おると調書に書いてある時には反証を挙げられない。ところがこつちのほうでは判事が立会
つて
おるともいないとも書いてないというときには、これは本当は立会
つて
いたということを反証を挙げ、若しくは立会
つて
おつたのだけれども書いてないのだということの反証を挙げられる。こつちのほうが反証を挙げられることが広いことになる。そうすると調書の信憑力というものは、これよりも
現行
法のほうが、反証が挙げられん、挙げることができんということのほうが効果的じやないかと思う。そこは多少違うね、成るほど……、まあいいでしよう。それから百四十八条をなぜ削るのですかね。この
現行
法では
裁判所
で必要ありと認める時には、職権を以て速記者をして口頭弁論における陳述の全部又は一部を筆記せしむることができると、非常にこの訴訟の弁論の
手続
等について速記を入れてやるということになると、信憑力を強めることになる、それを削
つて
しまつたりするということは、何か蓄音機でも取るというのか、或いは速記というと限定されるから速記者でなくて、機械を使うという意味で、百四十八条が邪魔になるという意味で削るのですか。この百四十八条の削除は。
平賀健太
71
○
説明員
(平賀健太君) これは百四十八条が邪魔になるという
趣旨
ではないのでございまして、速記を取るか取らないかというようなことは、やはり訴訟
手続
に関することでございますので、これは最高
裁判所
の規則で一つ
規定
したらいいのじやないか。それは速記だけではないのでございまして、最近では録音というような手段もございますし、
現行
法では録音なんかできないことにな
つて
おりますから、録音なんかもやはりとり入れるべきものではなかろうかと、そういう必要もございますので、これは決して速記ということは廃止する意味じやなくて、規則の上にこれを委ねまして、なお速記以外の、ほかの適当な方法があれば、それもとり入れる余地を残そう、そういう
趣旨
なのでございます。
中山福藏
72
○中山福藏君 この百八十九条をお削りになるというのは、これはどういうわけですか。百八十九条ですよ、判決の言渡しに関するものですね。
平賀健太
73
○
説明員
(平賀健太君) この百八十九条はこれは判決の言渡の方式を
規定
いたしておるのでございますが、この判決は言渡によ
つて
効力
を生ずるということは、百八十八条で
規定
してございまして、この百八十八条は全然手を付けずに、これは基本的なことでございますので、
現行
法
通り
勿論存置するわけでございます。併しこの百八十九条というのは言渡の方式に関することでございまして、これもやはり最高
裁判所
の規則に譲つたほうが適当ではないかということであ
つて
、百八十九条を削除することにしたのでございます。決してその言渡の方式を簡素にしてルーズにするという
趣旨
で削除するというのではないのでございます。
中山福藏
74
○中山福藏君 大体併し判決の言渡というのは、民事でも
刑事
でもその
裁判
の結果というものを明確に言渡されることで、相当重要な事柄と思うのですが、こういう事柄を規則でやるということは、余りに判決というものを軽んずるということになるのじやないでしようか。そういう簡単な取扱いをするということは、私はこの判決の言渡なんかというのは厳粛なものだと思
つて
おりますがね。これこそ本当にやはり
法律
できめられるべきものだと思うのですが……。
平賀健太
75
○
説明員
(平賀健太君) この百八十九条を削除いたしました
理由
は、先ほど申上げました
通り
でございますが、例えば欠席判決かなんかでありますと、
現行
法は判決原本に基き言渡さなければならないということにな
つて
おるのでありますが、非常に明瞭な欠席判決なんかでありますと、必ずしも判決原本に基かなくてもいいのじやないか、そういうような場合があるわけでございます。でありますから判決が言渡によ
つて
効果を生ずるということは、これは基本的なことで大事なことでございますので、百八十八条はそのまま存置するということにいたしたのでございます。それからなお
刑事訴訟法
、
刑事
の判決におきましても
裁判
の言渡、
刑事
では
裁判
の宣告と申しておりますが、
裁判
の宣告の場合には、やはり
刑事訴訟
規則できめておるのでございます。
刑事訴訟
規則の第三十五条「
裁判
の宣告は、
裁判
長がこれを行う。判決の宣告をするには、主文及び事由を朗読し、又は主文の朗読と同町に
理由
の要旨を告げなければならない。」これは
刑事訴訟
規則で
規定
しておるのであります。従来この民事と
刑事
が、ほかの点もございますが、非常に片ちんばにな
つて
おります。やはり合せたほうが合理的であると思われるのでございます。
一松定吉
76
○一松定吉君 私はやはり中山君の言うように、判決はやはり「判決原本二基キ
裁判
長主文ヲ朗読シテ之ヲ為ス
裁判
長ハ相当ト認ムルトキハ判決ノ
理由
ヲ朗読シ又ハ口頭ヲ以テ共ノ要領ヲ告クルコトヲ得」というほうが、判決の神聖を維持し、いい加減に判決の内容を変えたり、判決主文があとで変つたりするようなことができないようにして、非常に峻厳にやるということのほうがいいと思う、
現行
法のほうがね。併しまあこれも意見の相違だから、我我がこれを今政府の出した原案を通すか通さんかは我々の意見によるのだが、やつぱり百八十九条は存在するほうがいいと私は思う。
刑事訴訟
規則に委ねたように、最高
裁判所
の規則によ
つて
云々というのは、それは却
つて
そのほうが悪い。そういうことがやつぱり
国会
の
承認
を経ずして最高
裁判所
が勝手にきめたということが、そういう欠陥を生んでいる、私はこう考える。
中山福藏
77
○中山福藏君 これは削る削らんは私どもがきめるのだが、これは非常に重大な問題だ。
一松定吉
78
○一松定吉君 これは重大な問題だ。最高
裁判所
がそういう勝手な規則をこしらえてきめたりするということのほうが悪い。それだから我々が最高
裁判所
の規則に一任するということは、立法府としてよほど考えなければならないということはそこから出る。百九十一条を改めて「判決二於テハ最高
裁判所
規則ノ定ムル所二依リ主文ノ外事実及争点並
理由
ヲ明ニスルコトヲ要ス」これは現に百九十一条にその
通り
あるじやありませんか。それをわざわざこれを削
つて
最高
裁判所
の規則に譲るというのはどういうわけですか。つまり「主文ノ外事実及争点」、百九十一条の
現行
法では「主文、事実及争点、
理由
、当事者及法定代理人、
裁判所
」それを主文、事実及争点、
理由
、それから当事者及び法定代理人、
裁判所
というのもやはりこの判決に明かにするほうがいいのに、わざわざ百九十一条を削
つて
「最高
裁判所
規則ノ定ムル所二依リ」云々とこうすることは、如何にも最高
裁判所
万能主義のように思われるのだね。この百九十一条は今度新たに改正しようという
趣旨
と同じことでなければならんのに、これを削らなければならんという
理由
、それを御
説明
願いたい。
平賀健太
79
○
説明員
(平賀健太君)
現行
法の下におきましても判決につきましては、この百九十一条のほかに、簡以
裁判所
の判決につきましては、三百五十九条の
規定
があるのでございます。多少簡易化されておるのでございますが、三百五十九条の
規定
がございます。それから控訴審の判決につきましては、三百九十一条がございまして、この「判決ニ事実及
理由
ヲ記載スル二八第一審判決ヲ引用スルコトヲ得」第二番判決の引用を認めておる。こういう簡易化された判決をも認めておるわけであります。判決につきましてもこういうふうに三つ
規定
があるのでございまして、特に控訴審の判決には、一審判決を引用できると書いてございますが、併し実際の場合には、判決には場合によ
つて
は事実の記載なんかにおきましては訴状であるとか、或いは準備書面であるとかを引用しても差支えない場合があるのではないかと思われるのであります。ところが
現行
法の下では、果して訴状や準備書面を判決中に引用することが適法かどうかということがやはり疑いが出て来るわけでございます。 それからなお今のは判決でございますが、この判決の
規定
は、
決定
にもやはり準用されておるのでございまして、
決定
、
命令
にも第二百二十四条で以て準用されておるのでございますが、この判決には成るほど
裁判官
の署名捺印、これは欠くべからざるものと考えるのでございますけれども、
決定
、
命令
なんかには必ずしも
裁判官
の署名捺印まで必要ないのではないか。押印だけで足りるということも考えられるのでございます。でありますからこの判決の形式的
事項
につきましてはやはりこれも規則で、
裁判
の形式的な記載
事項
につきましてはやはり規則に任せておいて、
裁判
の生命とも申すべき主文、事実、争点、
理由
、これだけを
法律
ではつきり明記しておいて、細目の方式は規則で定めることのほうがむしろ合理的ではないかということで以て、百九十一条をこの
通り
に改めようとしておるのでございます。なお、そのために判決を非常に簡略化いたしまして
裁判所
の手を抜くというふうなことを決して考えておるのではないのでございます。
一松定吉
80
○一松定吉君 これはね、あなた方と我々と考えが違うのだが、判決というものは公平にして峻厳、無私、そうして
裁判官
に対する国民の信頼というものを高めて、この
裁判官
は公平無私の判決をしたので、少しも偏頗の
裁判
ではないのだということを国民に信頼せしむるような方法でなければいかんわね。そうするについてやはり
裁判官
の署名も捺印もあり、そうして一つのその
裁判
に対して有難味を持たなければならない。それをただ主文のほかに事実、争点と
理由
だけ書いて、あとは判事が印を押して名前も書かんでもいいというようなことは、判決のいわゆる峻厳にして公平無私であるというようなことと多少違うように私どもは考えるのだね。而も百九十一条の第二項第三項は、「事実及争点ノ記載ハ口頭弁論二於ヶル当時者ノ陳述ニ基キ要領ヲ摘示シテ之ヲ為スコトヲ要ス」そこで当事者の主張がこれは明かなんです。
裁判官
は判決に署名捺印するに支障のあるときは、他の
裁判官
判決にその
理由
を記載して他の判事が署名する。そこまでしている。
裁判
長はなぜ署名しないのか。
裁判
長が転任したから署名ができないとか、
裁判
長が身体が不自由であ
つて
筆をとることができんとか、それで他の判事が責任を明かにするためにしたのだということによ
つて
、判決の威信を維持し、国民の信頼を高めるということでなければならんわね。それをそういうことはやめてしま
つて
、この印を捺せばいいというようなことは、余りに
裁判
というものを軽視するのじやなかろうかと私は思う。その点はどうですかね。
平賀健太
81
○
説明員
(平賀健太君) 印だけと申しましたのは、主としてこれは
決定
、
命令
につきまして私申上げたのであります。判決におきましてはやはりその判決の神聖を保ちますために
裁判官
の署名捺印はやはり要すると思うのでございます。判決も印だけでいいという
趣旨
でこの百九十一条を改めたのでは決してございません。それからなお
刑事訴訟法
におきましても、
刑事
の重大な判決につきましてやはり判決書の方式につきましては、
刑事訴訟
規則で二百十八条であるとか二百十九条という
規定
があるのでございまして、起訴状記載の公訴事実を引用することができるとか、或いは調書判決を認めるとかいう
規定
があるのでございまして、民事でもやはり同じような必要が生ずるわけでございまして、このように改めようという
趣旨
でございます。
一松定吉
82
○一松定吉君 百九十一条には、確かに
裁判官
が署名捺印しなければならん、
裁判官
が署名捺印することができなかつたときには、その他の判事が署名捺印しなければならんということがあるが、今度修正しようというこの百九十一条にはそれがないのですが、それはどこから来るのです。その署名捺印が必要だという論拠は、それは最高
裁判所
の規則でそこまで定めるという、これから定めるという意味でそれは心配ないとこうおつしやるのですか。そういうことがきまらん以上は、この百九十一条、新たな百九十一条だけでは
裁判官
が署名捺印する、署名捺印できないときには他の判事がするというような
現行
の百九十一条の一項若しくは三項の
規定
はない。一項、三項の
規定
がないのに、あなたの言うように百九十一条を削
つて
もその
通り
やるのだということについては、どこを根拠にしてそういう主張ができるのですか。
平賀健太
83
○
説明員
(平賀健太君) とにかく判決というのは、これによりましてその判決が確定いたしますと、当事者の権利
義務
ということが確定して来るわけでございまして、非常に重要な意味を持
つて
いるものでありますから、飽くまで神聖を担保とする必要がある。そういたしますと事柄の性質上、やはり署名押印ということはやはり不可決のことではないかと思うのでございます。従いまして最高
裁判所
で規則を作られますときも、この点は決して無視されることはない、まあそういうふうに私ども預じておる次第であります。
一松定吉
84
○一松定吉君 それならばですね、最高
裁判所
がただそうするだろうということをあなたが言うだけであ
つて
、百九十一条のように明記はしないということは欠陥じやありませんか。最高
裁判所
があなたの言うようなことをや
つて
我々に見せて、この
通り
するのだから安心するのだよということならいいが、最高
裁判所
のほうはそうはできない。それが昨日あたりから論議の中心にな
つて
いるのですね。だからあなたが言うように我々は最高
裁判所
が
裁判官
の署名捺印を規則のうちにきめるだろうということは、これは一つの想像に過ぎないので、堅くきめるのだということの確定的の意思表示があればこれは別ですよ。けれども明文も何にもない、現に
現行
法の明文も何もないやつを削
つて
最高
裁判所
の規則に護る。それで
裁判官
の署名捺印ということはどこから来るかと言うと、最高
裁判所
が規則を作るときにそうするだろうということでは、これはちよつと信用できんじやないですかね。
平賀健太
85
○
説明員
(平賀健太君) 要するに、この調書の点でも
裁判
書の点でもございますが、やはり気法の
規定
の下に立脚しました最高
裁判所
を我々としてはやはり
国会
に対して私どもが信頼をいたしておるのと同様に、やはり最高
裁判所
の良識というものに我々は信頼を置いておるわけでありまして、この信頼がなければ規則に護るというような立法はできないと思うのでございまして、判決のような重要なものにつきましてはこれは当然その神聖を川保するためのそれにふさわしい方式を規則でお定めになるということを期待してもいいのじやないかと、そういう意味で申上げたのでございます。
一松定吉
86
○一松定吉君 それではあなた同じやありませんか、あなたのように憲法の七十七条を根拠にしておつしやるならば、最高
裁判所
が憲法七十七条によ
つて
そうしてこの
手続
上の問題やその他の問題は最高
裁判所
が規則を定めるのだ、これに信頼すればよいのだということであれば、そういうような最高
裁判所
がどういうようなことをするかせんかということは、
国会
議員たる我々が審査も何にもしないで最高
裁判所
に任せればいいということでは、余りに立法
手続
を軽視するものです。憲法七十七条にはこういう
規定
があるから、その
規定
に従
つて
最高裁刊所はこういうことをするのだろうということならば、あなたいろいろなこういう判決においては「最高
裁判所
規則ノ定ムル所二依リ主文ノ外事実及争点並
理由
ヲ明ニスルコトヲ要ス」ということは要らん。最高
裁判所
に任せればいいのだ。最高
裁判所
の規則によれば、こういうことは最高
裁判所
がちやんと公平無私にするということであれば、百九十一条の「主文ノ外」云々の制限を加える必要はないことになる、それはちよつと、あなたの言うのは少し我田引水の理窟であ
つて
、直ちに首甘はできませんね。
平賀健太
87
○
説明員
(平賀健太君) 先ほど民訴百九十一条の3項の点、「
裁判官
判決ニ署名捺印スルニ支障アルチキハ」とあるこの「トキ」、この
規定
は非常に重要だと仰せられたのでございますが、まさしくこれは重大なのでございますが、
刑事訴訟法
規則五十五条を見ますると、「
裁判
書には、
裁判
をした
裁判官
が、職名押印しなければならない。」と署名押印ということがはつきり出ているわけでございます。「
裁判官
が署名押印することができないときは、」という工合に
裁判官
の一人が署名押印できない場合の措置を
刑事訴訟
規則にちやんと
規定
いたしているわけでございます。それで署名押印の点では民事、
刑事
の判決、これの署名押印の点ではどちらも重要性に差等があるとは考えられませんし、この
刑事訴訟
規則の五十五条から考えましても、この
法律
が
通り
ました焼、できますところの最高
裁判所
の規則におきましても判決の署名押印についてはやはり五十九条、
刑事訴訟
規則五十五条に相当する
規定
が当然設けられると考えてもいいのじやないかと思うのでございます。
一松定吉
88
○一松定吉君
刑事訴訟
規則を引用して、これをあなたが我々に民訴を改正するに、
刑事訴訟法
の運用について最高
裁判所
の定めた規則があるからその
通り
多分やるのだからとかおつしやるが、この最高
裁判所
の
刑事訴訟法
に関する規則の制定というものは、これは我々がいわゆる何の
審議
もしなかつた、憲法七十七条の
規定
からこれは来た。
刑事訴訟法
にそういう
規定
があるからすぐ民訴もそういう
規定
をするのだということにな
つて
来ると、刑訴にあるようなことは民訴にあることを片つ端から削
つて
ありますからあとは最高
裁判所
の規則に委ねるということになるのですか。そういうようなことよりもやはり、明らかにして、こういう最も大したことを、細末の小さいことはどうでもいい、中山君が今言うように、又私が今言うように
裁判
の言渡というものは最も神聖にして当事者の信頼するような形式方法をとらなければならないということを前提とするならば、やはりそういうことをここに書いておいたほうが、私は「主文ノ外事実及争点並
理由
ヲ明ニスル」ということと同じように若しくはそれ以上の効果のある
裁判官
が署名捺印しなければならないというようなことは重要なことなんですから、それを書かなければならないのに、書かんところに我々が疑問を持
つて
今あなたにお尋ねしている。
刑事訴訟法
運用に対する規則がこうな
つて
いるので多分そうするんだろうと、だろうをあなたは前提としてこの
現行
法を改正するということについては、少し我々も考えなければならないと思うので、こういうことをお尋ねするのですけれども、併しこれ以上のことは議論になるからこれはいたしません。
中山福藏
89
○中山福藏君 ちよつとお尋ねいたしますが、これは条文についてお尋ねするのではないが、大体
裁判所
などでけどう考えておられるのですか。
日本人
というものは大体
法律
の知識が非常に乏しいと私は考えている、普段から……。併し失際は現在
日本人
の民主主義的な行き方から申しますれば、みずからを治めるという気分、みずから
法律
を知るという気持のあることは或る意味においては言えると思う。従
つて
みずから
法律
を知るということは、
法律
の解釈が非常に安易で奔易に解釈が引きるという、法文の
趣旨
を国民全般べ親しみをも
つて
理解するというような立法措置を講ずるというのが本当ではないかと実は私は考えている。それでそれに当られる方々は特にそうお考うにな
つて
然るべきではないかと思よが、こういう民訴に削らなくてもいものを簡略にしたり、削除したりせられて、これを最高
裁判所
の規則に譲るということに、
一般
国民とは何らの
関係
がなく雲の上で
事件
を処理するというような感じを実際私ども持つのですが、むしろ時代に逆行しておるこれは法的処置ではないかというような感じもするのですがね。どういう意味で、こういうようなこの規則に殆んど全部譲るというようなことをなさるのか、或いは
刑事訴訟法
とか、
刑事訴訟
に関する最高
裁判所
の規則があるからとか、他に
規定
があ
つて
、それと重複するからというような簡単なことから出発しておるということになれば、これは成るほどそういうような統一的な事柄をおやりになるということは結構ですけれども、時代というものはそういうものじやないと私は考えるのです。現在の時代ですね、
法律
を国民全般が容易に知り得るというこの立場をですね、最高
裁判所
みずから作
つて
行くという形が、法治国の精神を生かすということになるんじやないでしようか。私はそういう考えで、逆行しておる改正じやないかと思うのです。ただ単に改正をするのだから、改正するというような、形を整えるのだというような感じを受けるのですね。今度の一兆億予算という首相のかけ声があれば、歳出面を落としておいて、一兆予算の枠内に、すべての歳出を合わして行くというようなそれと同じような行き方じやないかと思うのですよ。特にそういう感じがする。最高
裁判所
の規則に譲
つて
しまつたら、実際に国民は殆んど規則を読みませんよ。たまたま読んだところで、
手続法
の
刑事
、民事に関するくらいのもので、これは現在普通読むように辛うじてな
つて
いる。規則に譲られたら読みませんね、これは……。私は時代にそういう点は逆行するのじやないか。いわゆる観念的に
法律
をもてあそんでおる結果が、こういうようになるんじやないかと思うのですよ。私は国民大衆と
法律
というものが、国民大衆の中に
法律
が融け込んで行くという、時代にマッチした態度ではないというような感じを受けるのですが、どうです、あなたがた若い方々はどういう感じを持
つて
おりますか。我々年寄りはそう考えるのですが、どうですか。一つそういうところで意見を述べてもらいたいのですが……。どうも雲の上で仕事をするという感じを私どもは受ける、こういうような改正は……。
平賀健太
90
○
説明員
(平賀健太君)
法律
を国民にわかりいいようにすると、これはまさしく仰せの
通り
でございます。そういう見地から見ますと、
現行
の民事訴訟法、この文語体で書きましたこの
現行
の民事訴訟法というのは、
一般
国民にはむしろ親しめないものじやないか、非常にわかりにくい、寺門家が見ましても、いろいろな疑義が生ずる点がございまして、用語もむずかしうございますし、却
つて
この
現行
の民事訴訟法なんか非常にわかりにくいのじやないかと思うのでございます。そういう点から言いますと、
現行
の民事訴訟法も、本来ならば全面的に改正いたしまして、これを
刑事訴訟法
と同じような工合にやはり口語体に直しまして、用語ももつと日常の用語をたくさん取入れまして、国民にわかりいいものにするという必要があるわけなのでございます。で、将来そういう改正が、全面的な改正が行われるべきものと思うのでございますが、今回は左当
つて
この上告制度の問題が中心になりました
関係
で、そこまでは手が行き届かなかつたのでございます。併しもつとわかりやすい、親しみやすいものにしなくてはならんということは、まさしく仰せの
通り
なのであります。 それからこの
法律案
におきますように、いろいろな点を最高
裁判所
の規則に譲りましても、やはり最高
裁判所
の規則も官報で公けにされますし、それからこういう六法全書にも勿論載るわけでございまして、
現行
法よりも、
現行
法の状態よりももつとわかりにくくなるということは、むしろないのではないかと思うのでございます。むしろこの判決なんかを規則に譲るという
趣旨
は、現在の判決というのが明治以来の古い型をそのまま現在まで踏襲してお
つて
、判決自体が非常にわかりにくい、
法律
の
規定
がわかりにくいよりも、もつと当事者が、素人の当事者が読みまして、判決というのが非常にわかりにくい。そういうことを改めまして、本当に当事者にわかりやすい合理的な判決にしたい。そのためには現在のように
規定
があつちこつち分れたりしてお
つて
、非常に制約がある。それよりも規則で本当に実のある、
実質
のあるわかりやすい判決を書けるようにという
趣旨
で、規則に譲ろうという
趣旨
でございまして、決して雲の上で、
裁判所
が
裁判所
に自分の手を省くだけの便宜を与えよう、そういう
趣旨
では決してないのでございます。
楠見義男
91
○楠見義男君 ちよつと速記を……。
郡祐一
92
○
委員長
(
郡祐一
君) 速記をとめて下さい。 午後三時五十七分速記中止 ―――――・――――― 午後四時十三分速記開始
郡祐一
93
○
委員長
(
郡祐一
君) 速記を始めて下さい。
楠見義男
94
○楠見義男君 私は一つだけ、先に戻るのですが、百五十一条の第四項を削除しておりますね。これは削除の
趣旨
はこういうものをしないという意味なのか、或いは先ほど来話がありますように、規則のほうにこういうような一つのものを入れる、こういう意味なんですか、どうなんですか。
平賀健太
95
○
説明員
(平賀健太君) これは訴訟記録の製本なんかの作り方、まさしくこれは
書類
の作り方の細目に関する
手続
でありますから、規則に譲
つて
規則で
規定
しようとこういう
趣旨
であります。こういうものをなくすという
趣旨
では決してございません。
郡祐一
96
○
委員長
(
郡祐一
君) よろしうございますか。……次回は来る二十日午前十時から
開会
することにいたします。本日はこれを以て散会いたします。 午後四時十六分散会