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1954-04-15 第19回国会 参議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十五日(木曜日)    午後一時十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            上原 正吉君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            青木 一男君            小野 義夫君            中山 福藏君            一松 定吉君   政府委員    法務大臣官房調    査課長     位野木益雄君    法務省民事局長 村上 朝一君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君   説明員    法務省刑事局総    務課長     津田  実君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局民事    局長)     関根 小郷君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局総務    課長)     磯崎 良誉君   参考人    警 視 総 監 田中 榮一君   —————————————   本日の会議に付した事件裁判所法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○民事訴訟法等の一部を改正する法律  案(内閣送付) ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (東京大学助教授に対する人権侵害  容疑事件)  (裁判所書記官等俸給調整につい  ての最高裁判所通達に関する件)  (検察審査会審査事件の結果等に  関する調査に関する件) ○参考人の出頭に関する件   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは只今から委員会を始めます。  民事訴訟法等の一部改正法律案、及び裁判所法の一部を改正する法律案を議題に供します。  なお、両法案につきましては、総論的な御質疑が今後も続くことと存じますが、便宜上民事訴訟法等の一部を改正する法律案逐条によりまして、数段階に分けて御質疑を願うほうが便利かと存じますが、そのように扱いまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  3. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは、これは私御意見があれば如何ようにお願いいたしてもいいと思うのでありますが、民事訴訟法等の一部を改正する法律案の第二十二条の改正から第三百五十九条の改正まで、これが訴訟手続における調書及び判決書等簡易化と申しまするか、手続規定規則への委譲等の問題でございまするので、三百五十九条までを一つグループにいたし、次に三百八十三条から四百九条の六まで、即ち控訴及び上告関係上告制限上告棄却等の諸点を一つグループにいたし、次に四百十三条から六百七十七条まで、即ち抗告及び強制執行等一つにまとめ、従いまして民事訴訟法の一部改正を三つの段階に分ちまして、改正法第二条から第四条までの非訟事件手続法と諸法の関係を一括いたし、更に附則を一括する、裁判所法の一部を改正する法律案は特に段階を設けるほどの必要もございませんので、一括して扱う、このように進めて頂けたら、便宜かと存じております。  なお、最高裁判所規則制定権につきましては、法務省裁判所側で協議をされまして一応の考えがまとまつておるようでありまするから、その点を村上民事局長からお述べを願いたいと存じます。
  4. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 憲法第七十七条の訴訟手続に関する事項につきまして、最高裁判所規則制定権を認めているのでありまするが、訴訟当事者実体法上の権利義務に直接関係のあります事項は、たとえ訴訟手続に関するものでありましても、本来法律を以て規定すべき事項でありますので、規則制定権範囲には属しないと考えるのであります。元来憲法訴訟手続に関する事項につきまして規則制定権を認めておりますのは、訴訟手続に関する事項裁判所がみずから処理に当る事項でありますし、又その実際に最もよく通じておりますので、最高裁判所規則で定めることが合理的であるという考慮に基くものでありまして、これらの事項に関しては規則制定権をもつて司法権個有の領域に属するものとして、国会の立法権を排斥し或いは制限する趣旨ではないと考えるのであります。  従いまして冒頭に申上げましたような法律規定すべきもの以外の訴訟手続に関する事項のうち、どういう範囲のものを法律で定め、又最高裁判所規則で定めるかということは、どちらがよく実際に適するかという立法政策上の妥当性の問題でありまして、法律事項規則制定事項との間に一定の限界があるわけではないと考えておるのであります。ただ、前回も繰返し申上げましたように、法律で定められております事項について規則でこれに抵触する定めをすることが許されないことは申すまでもないと考えておるのであります。この点につきまして法務省のみならず最高裁判所当局におきましても全く同一の見解を持つておるわけでございます。
  5. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今民事局長説明に対しまして御質疑がございましたら、お述べを願います。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 これは質疑というよりも、これに対して少しいわゆる質疑をしても、又前回の繰返しのようなことにもなる点もできるかと思いますので、折角委員長のほうで各条審議に入ろうということで先ほど了解を得たわけですから、各条審議の際に、もう少し具体的にこの原則に照して又質疑をしてみたい、こういうふうに考えます。そういう意味で一応この質疑は保留しておくような恰好で御了承願つておきたいと思います。
  7. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 承知をいたしました。それでは先ほどお諮りいたしましたように、このたびの改正法律案第一条民事訴訟法の一部を次のように改正するの中味の第二十二条から第三百五十九条まで、即ち訴訟手続における調書及び判決書等簡易化手続規定規則への委譲等を盛つております部分について御質疑を願いたいと思います。なお、先ほどもお諮りいたしましたように、このたびの改正法律案については、基本となるべき考え方というものはさして数多くないように思いますので、従つて総論的な御質疑逐条審議のうちに当然出て参ると思いまするから、そのような御質疑をこめて御審議頂きたいと思います。  それでは只今申述べました第二十二条乃至第三百五十九条について御質疑のおありの方から順次御発言を願いたいと思います。
  8. 中山福藏

    中山福藏君 ちよつとお尋ねしておきますがね、この第二十二条の価額算定に関する、いわゆる金額ですね、三万円から二十万円に引上げられたというこの引上げ基準というものはどういうふうにして御算定になつたのですか。これは二十万円というのは、ただこのぐらいが妥当であろうというお考えでおつしやつたのですか、二十万円ですね。
  9. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) これは貨幣価値の比率その他の数字基礎があるわけではございませんので、提案理由の際にも御説明申上げましたように、現在地方裁判所事件簡易裁判所事件との間に、事件数の上におきまして非常な不均衡がございますので、その不均衡を是正するということ、一面簡易裁判所事件に対する上告審高等裁判所でやり、地方裁判所事件に対する上告審最高裁判所でやります関係上、或る程度簡易裁判所事物管轄引上げますと、最高裁判所の負担の調整にも役立つという観点から、事物管轄引上考えたわけでありますが、この二十万円という線は、実は十万円という考え方もございまして、十万円の場合、二十万の場合、いろいろ過去の件数基礎といたしまして将来の予想件数を出してみました結果、前回申上げましたようなことで、二十万円くらいが適当であろうという結論になつた次第でございます。
  10. 中山福藏

    中山福藏君 私いつも疑問を抱いておる問題なんですが、大体今度印紙法訴訟用印紙法改正がここに出ておるわけですが、これは印紙増額するということは、まあ世相の変遷ということから結論付けたものだと思うのですが、これは算定基準というものは、とにかく物価指数というものから考えますと、百倍、二百倍或いは高いのになると三百五十倍くらいにはね上つておるのですね、物価が。そこで原告訴訟を提起する場合において、自分訴訟によつて権利を保護してもらおうという問題は、曾つては僅かに一円だつた。併しこれが百倍になつておると百円になる。同様な考え方で比率的に現在は百倍にはね上つた価値があるからというので、そこで算定して、もともと簡易裁判所に提訴すべきものを、今度は地方裁判所自分勝手に判断して、物価指数の面からこれだけの価値があるんだということで訴訟を提起するようなことが、常識的には私はできると思うのですがね。これは金額なんかは戦前或いは戦時中、戦後、元百円のものはやつぱり今も百円として裁判所ではお取扱いになつておるのです。併しこれは訴訟を提起する者自身から言うと、そのときの百円は現在一万円くらいの値打があると、こう見るわけですね。そうするというと、管轄原告自身考え方からは如何ようにも勝手にきめられるということになるんじやないかと思うのですね。そうするとここに裁判所のほうは、印紙だけはこれはもうこれだけ事情が変つたんだからこれを増額しなきやならんということになつておるのに、その半面、原告方の物の価値というものは、元の姿で管轄をきめられるというようなここに弊害が出て来ておるんじやないかと思うのですがね。そういう点については裁判所のほうでは相当考えになつてその管轄の問題をお取りきめになつたのでございましようか。そういう点まで踏み込んで御調査、或いは御審議なつたということがあるのでございましようか、ちよつと承わつておきたいと思います。
  11. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 只今民事訴訟用印紙法改正の点にもお触れになりまして御質問がございましたので、印紙法改正の点、特に訴訟に貼用いたします印紙額の点を改めております、この点について一言御説明申上げますが、現在の印紙法によりますと、訴訟物価額五百円までが貼用印紙十五円、二千円までが三十円、五千円まで五十円、五千円を超えるものは千円刻みで印紙額が変ることになつております。督促手続でありますとこの半額になりますし、又控訴審ですと五割増ということになりまして、十五円というような数字でございますと印紙額銭未満の端数まで出ることになるわけでございます。  なお、訴訟物価額区分いたしますのに、千円ごと区分するという区分の仕方は、現在の物価指数から考えまして適当でないということで、この区分最低訴訟物価額一万円といたしまして、それに対する貼用印紙額を百円といたしました。で、あと一万円を超えるものは一万円ごと区分いたしまして、増額した印紙を貼るということに改めたわけであります。併しながら全体としてこの訴訟貼用印紙額増額になつておるわけではありませんので、それは貨幣価値が下り、物価指数が上つて参りますと、それに応じまして訴訟物価額というものは上るわけでございます。曾つて十万円であつたものが、訴訟物価額貨幣価値変動伴つて十倍になりますと、訴訟物価額百万円として算出するわけでありますから、おのずから貼用印紙額が高くなつて参ります。で、この印紙法の第二条の改正におきましては、全体としては印紙額増額考えておりません。ただ区分を今まで以上に、千円ずつという小刻みでありましたのを一万円ずつというふうに改めた趣旨であります。  それから簡易裁判所事物管轄引上について訴訟物に対する評価当事者評価というようなものを考慮に入れたかという御質問でございましたが、無論その点も考えました上で立案いたしたわけでございます。
  12. 中山福藏

    中山福藏君 私のお尋ねしたいのは、三万円から二十万円に引上げたんだから、元二百円くらいのものでも二十万円くらいの価値があり、或いは二千円のものでも二十万円と、物価指数変動によつて貨幣価値変動によつて、まあ金額から見ればそういうふうな姿に現れて来るんじやないかと思うのです。それで裁判所が、これは二十万円しか、この訴額は、この品物、例えば損害賠償請求をするときにおいても、これは裁判所では五、六万円のものだと思うけれども原告自身からはこれは三十万円の値打があるんだ、俺は物価指数からこういうふうにして計算したんだという工合にして、自分が三十万円の訴訟を提起するんだ、請求訴訟を提起するんだと言つて地方裁判所訴えを起したときに、これはこつちの管轄と違う、それはそれだけの値打はないからと言つて却下される場合があるかも知れませんね。そういうときにはその価額というものは、一応これは直ちに却下ということでなくて価額というものをこういう場合には一応何か審議する方法というものをきめておかんと、裁判所がただ原告の書いた訴額というものだけに基準を置いてそのまま受付けられるものか、或いは又裁判所がそれを審議をしてみて、それだけの値打はないということで却下されるものか、そういう点を裁判所は現在そういうことは少しも行われておらないようですが、やはり原告の書いた、書き上げた金の価額によつて管轄をおきめになつておるようですが、非常に貨幣価値変動しておりますので、例えば元百円の訴訟を起すのに、今は十万円の値打があるのだ、実質は元は百円だつたけれども、今は十万円にはね上つておるのだと、こういうことで裁判を起した場合においては、それはそのまま受付けられないような現在の裁判所の状態ですがね。そういう点は裁判所ではどういうふうにお考えになつておるのでしようかね。
  13. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 曾つて百円で買つたものが現在三十万円の値打がある。それを被告が不法に毀損してその物の価額相当する損害を受けた。そういうことで三十万円の損害賠償請求訴えを起すような場合、そういう場合ですとその場合の訴訟物は三十万円の損害賠償請求権であります。その価額は三十万円を基準として管轄が定められ、又貼用印紙額が定められるわけであります。裁判所審議の結果、その物の価額は五万円が相当だと判断いたしました場合は、五万円の限度において請求を一部認容いたしまして、それを超える部分請求は棄却する、こういうことに相成るわけであります。
  14. 中山福藏

    中山福藏君 そこを私はこれは日本銀行で全部物価指数が大体わかつておりますからね便宜上これはこういう時代には五年前にはこれだけのものがこういうふうに変つておる。十年前にはこれだけの品物値打が現在はこういうふうに変つておるということを、一応これはやはり印紙法なんかを改正される場合は、物価指数というものをやはり各弁護士会ぐらいには御通知になつて、こういうふうに物価変動しておるのだから、前にこれだけの値打のものは現在これだけの値打訴額を一応きめて出してもいいのだというくらいの、これは幾分煩雑にはなりましようけれども評価手続はおとりになつても差支えないのじやないかという感じがするのですがね。これは印紙税というのは国家の手数料と見て差支えないわけですね。自分のほうからはこれだけの手数料を上げておいて、元の物価というものはそのままで、元のままで針づけにするということは、ちよつと平均が考え方の上にとれないのじやないかというように私ども常識的に考えるのですがね。非常に日本銀行のあれを見ますと、相当にはね上つておりますからね。その点はちつとも今裁判所は関心を持つておられないように私ども考える。これは一々裁判所で御吟味になるというよりも、むしろ日本銀行物価指数の統計が示しておりますものを御参考になさると一目瞭然わかるのですね、鉄鋼類幾らであつた、現在は幾らになつておるということが全部わかる。一々御審議なさる必要はないと思う。従つて原告はそれに基いて訴額をきめて提訴するというふうにやつたほうが簡便迅速に行くのではないかというような気がするのですがね、そういう点は何もお考えになつていなかつたのでしようか。
  15. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 先ほど申上げましたのは、金銭債権訴訟物になつておる例でございますが、金銭債権でなく、例えば不動産所有権或いは占有権訴訟物になつております場合、これは不動産訴訟を起す当時における価額基準になりまして、管轄が定められ、又貼用印紙額が定められるのであります。不動産基礎のその時における価額評価、これは無論中山委員御指摘のような日本銀行物価指数も参酌いたします。又地方税法に基きまして固定資産税課税標準不動産価額というものが評価されておりますので、そういうものも標準にいたします。その他諸般の事情を総合いたしまして、個々に不動産価額を認定して行くわけでありますが、ただ聞いておりますところによりますと、これを一つ一つ正確に評価換しようといたしますと、その都度専門的な知識を持つた人が現場へ行つて見なければならん。それほどのこともないというので、当事者固定資産税課税標準価額に関する証明書を持つて参りましてそれを基礎として訴訟物価額をきめて来る場合にはそれに従います。又それもございませんときには、旧賃貸価格に対する宅地は何倍、建物は何倍、農地が何倍というような一定の各裁判所ごとに内規のようなものがありまして、それによつて評価しておるように聞いております。なおその点詳細は最高裁判所関根民事局長から……。
  16. 中山福藏

    中山福藏君 もう結構です。私は大体割切つておりますけれども、あの念のために聞いておくのですが、実は戦時中に、例えば三万七千円で不動産売買契約をして現在までそれが履行されていない。その場合がここにあると仮定しますと、その契約が履行不能になつた場合に、三万七千円の元金並びにこれに対する損害というものを払えという訴訟を起すことが普通なんですね。ところが、その今不動産というものは一坪五万円なんです。全体が三万七千円であつたのが坪五万円になつているのです。そしてそれから考えますと、もう大変なこれは印紙代が要るわけなんです。ところが、元の三万七千円で裁判を起すと、これは簡単に事が済むわけですね。そうするとやはりそこに一つの例えば被告からの抗弁が、そういう点について管轄違いだなんということが現われて来るのじやないかと思うのですね。そういう場合がたくさん私はあり得ると思うのです、都会地においては殊に……。従つてそういう点についてはもう少し簡便に訴訟を取上げて、殊に今度は上告制限なんかということをなさる場合においては、こういう煩瑣なことは事前においてはつきりとさしておくということが裁判を簡明ならしめることじやないかと実は考えたわけですから、念のために聞いたわけなんですがね。まあそれで結構です、私は。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 私もこの二十二条につきまして少し御質問いたしたいのですが、この改正法が実行されますと、実際上、例えば離婚訴えとかそういつたようなものは二十万一千円とこういう訴訟価額をこれは原告が出して来る、今まで三万一千円で大体やつておる、そういうことになろうかと思うのですね。そうすると、二千円貼ることになりますか、今度は二千百円ですか、今度はそういうことになりますが、これはどうなんですか、この三十万円とか五十万円とかそういう算定じやないといけないというふうなことを裁判所のほうがおつしやるつもりがあるのですか、どうですか、事案によりまして……。私ども従来の経験では殆んどそういうことはない。もう三万一千円ですべて通過しているわけですが、その例から行くと、二十万一千円、こういうふうにすべて書いておいていいように思うのですが、どうでしよう。
  18. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 民訴法の二十二条は、訴訟管轄訴訟の目的の価額によつてきまる場合の算定の仕方、即ち管轄に関する規定であります。従いまして離婚訴訟を例にとりますと、離婚訴訟価額二十万円を超えるものとみなされて地方裁判所管轄になるということだけが二十二条によつて定められておるわけであります。その場合の貼用印紙をどうするかという点でございますが、従来は民事訴訟用印紙法の第三条によりまして価額算定不能の場合には、三万一千円とみなして印紙を貼つたのであります。その点の改正民事訴訟用印紙法等の一部を改正する法律の中にございますが、現在の三万一千円というのは、地方裁判所事物管轄最低が三万円であります関係上、地方裁判所管轄とするために三万円を超えるものとみなされる。従つて地方裁判所のうち最低の線で三万一千円とされておる。今度事物管轄が二十万円に引上げられますと、二十万一千円ということも一応考えられるのでありますが、そういたしますと貼用印紙額が急速に、急激に上るわけであります。現在三百十円でありますのが二十万円といたしますと、二千円になる。普通の訴訟でありますと、貨幣価値変動伴つて訴訟物価額そのものが上つておりますし、印紙額につきましては増額の必要がないわけであります。この三万一千円をどの程度に上げるかということが一つの問題なんです。三百十円から二千円に上げますことは、やや急激に過ぎるということで、この案におきましては五万円とみなすということにしたのであります。五万円といたしますと、その価額だけから申しますと簡易裁判所事物管轄に属するものと同一になるのであります。管轄民事訴訟法の二十二条できまり、貼用印紙額印紙法の三十条できまるということで、三百十円から五百円に上げる程度にとどめたのであります。
  19. 上原正吉

    上原正吉君 この二十二条の次、もう百十四条についてですけれどもいいでしような。
  20. 郡祐一

    委員長郡祐一君) これは先ほど申しましたように二十二条から三百五十九条まで一括してどうぞ御質問のある方……。
  21. 上原正吉

    上原正吉君 百十四条の第二項を削る、まあ意味はわかりますが、この第二項がどうして生れたか。昭和二十三年に定められたとあるのですが、こういう規定はどうして生まれたか。担保を供すべき期間内に供さなければ却下してもいい、口頭弁論経ずして訴を却下してもいい、但し原告にその旨を事前審訊してそれを教えなければいかんと、こういう規定は削除されても当然だと思うのですが、こういう規定がどうして生れたか、その生れた経緯を伺いたい。
  22. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 百十四条の第二項におきまして、担保提供がない場合に訴を却下するについて、当事者審訊しなければならないという規定は、これは格別そういう規定が必要だということで入つたのではないように聞いているのです。当時御承知のように占領下でありまして、司令部係官からの相当強いサゼツシヨンがあつたかのように聞いております。  なお、この規定を準用いたしております二百二条で、これは不適法な訴でその欠缺が補正できない場合の却下の場合、やはり同様に百十四条の第二項を準用いたしまして、当事者審訊するということになつております。これもやはり同様の経緯で入つたと聞いております。従いましてその百十四条の第二項も、二百二条の第二項も実際に殆んど活用されておらんのでありまして、徒らに審訊のための呼出しという手数を重ねているに過ぎないという状況であります。
  23. 中山福藏

    中山福藏君 ちよつと民事局長にお尋ねいたしますが、只今の百十四条の規定ですね。これは本来から言えば、やはり一応警告を発するというようなことが極めて私は民主的だと思いますけれども、それがまあ面倒であるとすれば、やはり支払命令書決定書の送達の場合に、その決定書に何日間に異議の申立のない場合には云々という言葉があるように、一つ警告付のなにを、処置をするというような便宜的なお考えを付けられるほうがいいのじやないかと思いますが、そういう点は如何ですか。どうも審訊しないで却下するということは、余りこう何だか不親切なような感じも受けるのですがね。これは簡単には参りませんでしようけれどもね、この事件を処理するにはどんなもんでしよう。
  24. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 担保提供したかどうかということは、担保は供託によつていたすわけでありますが、簡単に証明できるわけでありまして、担保提供がないということは裁判所にはつきりわかるわけでありますから、これを更に審訊手続をとりますと、却下されるほうの側にとりましては鄭重な手続になりますが、相手方もあることでありまして、若し大した実益のない手続なら簡素化するほうがいいんじやないか、一面却下の決定に関しては即時抗告の途も開かれておりますので、不服があればそれで救済ができるというふうに考えております。
  25. 中山福藏

    中山福藏君 それでこれは却下並びに抗告ということになりますれば、それだけその事件が煩雑になるわけでございまして、私はむしろ、勿論この何ですね、供託書の提出がなければ却下する、これは別にかれこれ審訊する必要はないわけなんですけれども、実は供託金ですね、供託金の場合でも従来は非常に面倒で、書記官のほうで手続がうるさいと言つて時効にかかるといつたことがたくさんあるのですよ。非常に忙しい弁護士なんかは、なかなか一々いつどういう供託金を積んだか、まま旅行なんかして時日を経過させることがあるのですね。そういうときに私はいつも考えるのですが、ああいうときは全部会計係が一応調査して、お前さんの供託金は何月何日過ぎるというと時効にかかるのだというふうに、やはり丁嚀にこれはお取扱いになるということが、本当の親心でないかと実は考えておるのですがね。裁判所はやはり単に法律によつて物を処理して行くというだけの簡単な気持ちでなくて、やはり指導的な法律倫理といいますか、法律上の倫理的な考え方を以て国民を指導して親切というものはこんなものだということを、やはり法律の中に含ませるということが私はいいんじやないかと実は考えておるものですからお尋ねしておるわけなんですがね。それでまあそれは御参考のために供託金の場合を言つたのですが、やはりこういう場合でも、一応は単に供託書を出さんからお前さんには何も尋ねずに、このまま却下するのだということでなくて、一応こういう場合は警告的な審訊をおやりになつたほうが、やはり私はいいんじやないかというような気もするのですがね。ただこの改正法を見ますと、如何にして訴訟手続を簡略に、迅速にするかという点しか現れていないような気がするのです。そういう親切心が込められていないような気がするのです。法律は冷いもので氷みたいなものだということはわかるのですけれども、併し今日の何では、やはりそういう点も一応お考えになるほうがいいんじやないかという気もするものですから、一応お尋ねしておくわけなんです。
  26. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 先ほど却下の決定に対して即時抗告ができると申上げましたのは、間違いでありまして、これは判決でやるわけでありますから、控訴であります。中山委員御指摘の通り審訊するということにいたしますと親切ではあるかと思いますが、実際の例から申しましても、当事者が審理の期日に出て来て初めて担保提供されていることがわかつた却下ができないことがわかつたというような実例もないようでありまして、この百十四条第二項のできました由来から申しましても、成るべく手続を簡易迅速に進めて行くという上から、これを削除するほうが適当ではないか。かように考えております。
  27. 上原正吉

    上原正吉君 今のに関連するのですが、百十四条には「判決ヲ以テ訴ヲ却下スルコトヲ得」とあるので、私は実際には自動的に判決が、却下されるのでない限りは審理の取扱いは行われると、素人ですからわからんのですが、そう解釈しているのですが、そう解釈しておつて当局のお扱いは差支えないのでしようか。必ず却下するのではなくて、自然に却下になるのではなくて、却下することができるというのですから、片つ端しから却下してしまうのではなからうと思つてそう解釈しておるのですが……。
  28. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 百十四条の第一項に「却下スルコトヲ得」とございますけれども、これは却下してもいい、しなくてもいいという意味の「却下スルコトヲ得」ということではなくて、却下はしなければならないのであります。ただ口頭弁論を経ないで却下することができるという意味で「得」と書いてあるのでござとます。当初定められました期間内に担保提供するか、少くとも判決前に担保提供されませんと、これは却下の判決をしなければならんことになつております。
  29. 上原正吉

    上原正吉君 そうすると口頭弁論を経て却下することもできるわけなんですね。
  30. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 口頭弁論を開くことも無論できますけれども、開きましても殆んど実益がないということで実際は余り開いていないのではないかと思います。
  31. 一松定吉

    ○一松定吉君 何ですか、百十四条の一項だね、二項は削るというのだね……、一項に「裁判所口頭弁論ヲ経スシテ判決ヲ以テ訴ヲ却下スルコトヲ得」と、そうするとこれは却下するという任意規定で、却下せんでもいいという解釈じやないか。百十四条の一項は「口頭弁論ヲ経スシテ判決ヲ以テ却下スルコトヲ得」だから、だからして口頭弁論経ずして判決を以て却下することができるので、却下せんでもいいという任意規定じやないのですか。
  32. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) これは却下しなければならんというふうに解釈すべきものと考えます。訴訟費用の担保原告が日本に住所等何もない場合に提供させるのでありまして、担保なしで訴訟を進めて参りますと、相手方に損害を加える場合が生じて参りますので、担保提供がないというときには却下せざるを得ないのだ、こういうふうに考えております。
  33. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると「得」というのは任意規定じやなくて判決を以て訴を却下しなければならんという規定ですか。
  34. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) そう解釈しております。
  35. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると今までの法律用語として、「得」というのは裁判所の判決を以て却下してもよい、却下せんでもいいという解釈ではないのですか。「得」というのは今までそういうことに法律の解釈ではなつておる。あなたの解釈では必ず却下しなければならんということになる。それならば「裁判所口頭弁論ヲ経スシテ判決ヲ以テ訴ヲ却下ス」と、こうすればいいじやないですか。「得」と書いたのは、あなたのような解釈は初めて聞くのだが、それで間違いないかね……、任意規定ではないか。今までの「得」という法律の用語は却下できるが却下せんでもいい……。若しあなたの言うように却下しなければならないのならば「判決ヲ以テ訴ヲ却下ス」、こう書かなければならんのじやないか。それは今までの用語と大変違うが……。
  36. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 「得」とあります場合には、裁量によつてしてもしなくてもいいと解釈する場合が多いのは、御指摘の通りでありますが、必ずしもそう読まなければならんものでもない。各条文の趣旨から却下しなければならん場合も、そう解釈せざるを得ない場合もあると思うのであります。なおその点につきまして現在裁判所がどういう解釈をとつておりますか、関根民事局長からお答えいたさせます。
  37. 一松定吉

    ○一松定吉君 裁判所の解釈を聞くのじやないよ。立法者としてこういうものを出したときに、これはどう解釈するかというそんなことは裁判所が判決するよりも、立法のときにおいて法律はこういうような趣旨だということを明らかにしなければならん。裁判所が解釈するからそうするのだ、裁判所がそう解釈するからそうしなければならんのだということではなく、立法者がどう解釈するかの問題です。つまりこれはあなたの言う通り、必ず却下しなければならんものであるならば「裁判所ハ判決ヲ以て訴ヲ却下スベシ」、若しくは「却下ス」と……。「却下スルコトヲ得」というならば却下してもいいし、却下せんでもいいのだ。今の法律の用語例はそうなつておりますよ。私は寡聞にして「判決ヲ以テ訴ヲ却下スルコトヲ得」ということは却下せなければならんのだと解釈することは、僕は初めてだ。
  38. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) そういう場合に、期間内に担保提供いたしませんと、その訴が不適法になるわけであります。不適法な訴は却下しなければならんということはこれはこの規定の前提にあるわけであります。そこで口頭弁論を経ないで却下することができるという意味で「得」という言葉が使つてある、かように考えます。
  39. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこで今までの二項というものが必要があつたのだ。二項の必要があつたのはそこなんだ。期間内に粗保を提供しないというのは、一体どういうわけだということを明らかにするために原告審訊をしておつたのです。その審訊することをやめて、そうして勝手にもう審訊も何もせんで、期間内に担保提供せんから訴を却下するのだというのは君行き過ぎじやないか。それならば二項の趣旨を活かさなければいかんよ。相手方に不意打を食わせるようなことはよくないし、又この法文の解釈は我々専門家からすれば、いわゆる「訴ヲ却下スベシ」、「裁判所口頭弁論ヲ経ズシテ判決ヲ以テ訴ヲ却下ス」、こうすればあなたの言うように却下することになるが、却下することを「得」なんだから却下してもいいし、却下しなくてもいい、裁判所の判断による、こう解釈しなければならない。そこでそういう場合に担保提供しなければどうするか。二項があつてその場合には原裁判所原告審訊して何故に担保提供ができんかということを聞いた上で適当な措置をとる、こういうふうにして二項が生きる。二項を削つてしまつて今あなたの言うように、「得」というのはそれは必ず却下されるのだ、こういうふうに解釈するのは……どうですか君、間違いないかね。間違いなければ私はこれを修正するよ。本当に君のようにだね、これが必ず訴を却下しなければならんのだというならこういう字句の用例はいかんです。どうです、君の言うように解釈するとすれば、この通りに字句を使うことはできん。それでも君がそうと言われるなら納得ができんから、私は個人でもいいから修正意見を出すがね。
  40. 中山福藏

    中山福藏君 関連して……。只今一松委員がおつしやる通り、これは法律家としては文理解釈上「得」という場合は、今おつしやつた通りだと私は思うのですがね。これは併し用語が一応誤つているのじやないかと思うのですがね、どんなものでしようか、これは……。
  41. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) これは繰返し申上げました通り、現行法のままで先ほども申上げましたような解釈ができる、かように考えております。
  42. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると今あなたのやつは、二項を削つて一項はそのままにしておいて、これは必ず訴を却下すべしという意味だと、こういう御説明ですね、そうですね。
  43. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 適法要件を欠くわけでありますから、これは却下しなければならん、かように考えます。
  44. 一松定吉

    ○一松定吉君 要件を欠いて、却下するかせんか、要件を欠いておつても、裁判所に裁量権を与えておれば、要件を欠いたから裁判所却下しなければならんということにはなりませんよ。若しあなたの言うようなら、要件を欠いているから訴を却下するというふうにしてこれを限定するような意思表示の書き方ならばいいけれども、「却下スルコトヲ得」というふうな今の用例では、却下してもいいけれども却下せんでもいい、裁判所の判断に委せられるということにならんのですか。今までの法律のすべての法律の解釈では……、「得」と書いてあるが……、「裁判所ハ……得」ではいかん、却下するのだ。それなら「得」という用例はよくない。穏当を欠くですね。まあ併しそう解釈するならば、あなたがそれなら法務大臣を呼んで聞いてみなければわからんよ。君の言うことだけじや君が提案者じやないんだから、法務省が提案しているんだから……。その点いいですか、研究の余地はありませんか。あなた個人の解釈ですか、法務省全部の解釈ですか。
  45. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 私の解釈で、法務省民事局長としての解釈であります。その長につきまして一松委員からの有力な御意見もございますので、なお帰りましてよく検討はいたしてみます。
  46. 一松定吉

    ○一松定吉君 それならよろしうございます。
  47. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつとお諮りいたしますが、亀田委員から東京大学助教授に対する思想調査かと考えられる人権侵犯問題と裁判所書記官等俸給調整についての最高裁通達に関する件について質疑をいたしたいというお申出がありましたが、只今田中警視総監、戸田法務省人権擁護局長が参つておりますので、両法案の審議中でございまするが、これに対する質疑をここでいたしまして御異議ございませんか。
  48. 一松定吉

    ○一松定吉君 政府に伺いますが、つまり訴訟手続を簡略にするために、わざわざ民事訴訟法規定してある法文を削つて最高裁判所規則の定むるところによる云々とあるのは、これは簡易にするということで私も了解しますが、これを削る前に、最高裁判所規則の草稿というものを出して見せて頂きませんと……出ておりますか。
  49. 郡祐一

    委員長郡祐一君) これは私から申上げますが、先般規則の要綱……まだ委員会にかけておりませんそうでありますが、事務総局における試案というものを御配付しておりまするから……。
  50. 一松定吉

    ○一松定吉君 おりますか。
  51. 郡祐一

    委員長郡祐一君) はあ。多分お手許に行つておると思いますが、それについても本日引続き御質疑があると予定しておりましたが……。表紙にはルールをこしらえまする委員会規定とその人名と、それから試案が出ておりますから……。
  52. 一松定吉

    ○一松定吉君 それならいいですが、これがないと……、これと現行法の削除するものと比較して……、成るほどここにありますが、これは本当の基本的な構想である。この構想だけを見て、我々は民事訴訟法の現行法の重要な規定を削るということに直ちに賛成できんが、もう少し具体的に出して頂いて現行法と最高裁判所の定める規定というものとを比較研究してみて、なるほどこれならばいわゆる権利の擁護にも欠るところはない、そして訴訟手続を簡易にすることができるんだという比較研究の機関を与えるについては、これだけじや困るよ、君。これは一つあなたのほうで御提出なさる準備はあるんですか、なさらんのですか。
  53. 郡祐一

    委員長郡祐一君) この点も政府、裁判所側の答弁あると存じますが、只今段階では、まだ事務総局全体としても諮つていないので一応試案を提出いたしますが、順次裁判所側でも考えがまとまるに従つてより完全なものを出して参るという工合に了解をいたしまして、一応この試案を提出してもらつたんでありますが……。
  54. 一松定吉

    ○一松定吉君 併しながら今の裁判所民事訴訟法の現行法の重要な法廷における手続規定を我々が削除することに直ちに賛成はできませんよ。最高裁判所の定める規定と比較研究して、成るほどこれならば訴訟手続が簡易に行く、そうして当事者の権利を侵害することなくて円満に訴訟の進行ができるんだという比較対照をして……それでないと審議はできませんがね。今あなたのようにお考えになつて、政府のほうからそういうような最高裁判所規則というものの草稿も原案も出さずして、ただ最高裁判所規則の定めるところによるから、これも削れ、これも削れじや、これは、君、大変なことになると私は思いますが、他の委員諸君はどうお考えになりますか知りませんけれども……。
  55. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 私も一応これは第一案を出しましただけで、更にもつと完全なものが本委員会審議中に提出さるべきものと考えております。私ども審議に十分役立ち得るものを裁判所側に提出を要求はいたしておりますが、この点について……。
  56. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすれば私は審議を遅延せしめるという意味でも何でもありませんし、本当に審議を促進し、我我が成るほどこの何条は削るがよかろう、何条は削るがよかろう、これを削つて最高裁判所規則がこういうことができておるから、これで我々は満足するんだ、こういうように行かなければ審議ができんじやないですか。
  57. 郡祐一

    委員長郡祐一君) お話の通りだと思います。
  58. 一松定吉

    ○一松定吉君 政府のほうでその点御考慮を給わりまして、そうして我々がこれを審議するについてなるべく早急に草稿でも結構ですし、試案を出して頂いて、試案とこれと比較して、試案の通り間違いなくやりますか、そうですが、それならこの削除に同意します、というふうに行くのが本当ですわね。
  59. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 私からも最高裁の民事局長にお尋ねいたしますが、先般委員会の要求で一応の試案、構想をお出しになりましたが、更に御研究の結果、より詳しいものをお出し頂けるものと考えておりますが、如何ですか。
  60. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今一松委員、それから委員長からのお話についてでありますが、実は表題には基本的構想、構想という文字が使つてございますが、終りのほうを御覧頂きますと、具体的の方策の概要が書いてございます。この概要の内容をお読み頂きますと、現在の法律ではどうしてもだめだという点がおわかり頂けるんじやないかと思います。それからなお詳細の規則案をお出しいたしまして御覧頂くということも考えられますけれども、この程度で若しどうしても法律でだめだという点がおわかり頂けるなら、この程度で如何かという気がいたすんでありますが、これは先般の委員会で私現在の法律ではこういつた方策をとり得ないんだということを御説明いたしましたんですが、なおルールの細かい点までお出しいたしますると、やはりこういつた国会でお忙がしい中を、細かい技術的な実際的な規則まで御審議頂くのはむしろ如何かと考えておる次第でございます。
  61. 一松定吉

    ○一松定吉君 御尤もでありますが、細かい点まで審議するということがこれだけの委員会では困るならば小委員会でもこしらえて、そうして特別にそれにかかつて審査するということになるから、細かいことまでお示し下さつても差支えないと考えますから、その点は御懸念にならぬように願いたい。実はこの前の委員会の際どなたからかお話しのあつたように、刑事訴訟法の運用に関する最高裁の定めた規則が刑訴の精神を著しく制限して規定せられたような実例もあるのですから、本件民訴法の或る手続規定を削除して、その部分を最高裁の規則に譲るということでは満足ができませぬ。なぜかと言えば、その定められた規則訴訟法の精神に反し、訴訟当事者の権利の伸張に重大なる影響があるようなことがあつては、折角我々が国会において法律案審議することの権能が侵害されることになる。その点についてはやはり国会の審議権を蹂躙することなく、而して一面は最高裁判所規則によつて訴訟を円満に迅速に進行することができるようにしよう。要は当事者訴訟進行の権利を侵害することなく、円満に、而して訴訟遅延でないようにということの趣旨がこの手続法の改正だと私は思う。それならばやはりそういうような草案を出して我々に見せて、それで私どもが比較研究して、成るほどこれは最高裁判所規則にすれば、訴訟手続が極く簡素に行く。而して当事者の権利を侵害することがないということなら、安心して、長く行われた現行法の訴訟手続に関する規定の削除に私ども同意ができるでしよう。それだけの親切をもつてつてくれないと、もうあと五月八日でお終いとすると、審議未了に終るかも知れませんよ。ですから私は法務省の、政府の出した法案について、できるだけ御協力を申上げたいと思うから、そういうことを言うのですから、あなたのほう、いろいろ御都合ございましようけれども、成るたけそういう案を出して頂いて、そして我々が委員会以外でもその規則とこの法案の修正案と比較研究し、原案と比べてみて、審議の便に供するようにして頂いたほうがいいよ、君……。
  62. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今一松委員のおつしやる点御尤もだと思います。ただ、今一松委員はまだお手許に今されただけで、内容をごらんになつておらないのではないかと思います。内容をごらんになつて頂きまして、この程度法律改正しなくちやいかんというお気持になるかどうか、私どもはこれをルールの案を作りますことは、この方策がいいとなりますと、これをただ条文化するだけでございます。それで大体御承知のように刑事訴訟法ではすでに相当範囲において最高裁判所規則法律から譲られております。今度の民事訴訟法改正規則法律の問題は、刑事訴訟法の範囲内、むしろ刑事訴訟法と比較いたしますると、非常に小部分、而も方式の点等でございまして、国会の審議にむしろ適さないくらいの問題でありますので、むしろお求めがありますれば再考いたしますけれども、一応差上げましたそれをお読み頂きまして、これではどうしても足りないのだという御指摘がございますれば、差上げたいと思いますが、私どもこれをただ条文化するだけのことになろうかと思います。
  63. 一松定吉

    ○一松定吉君 私はあなたの言う刑事訴訟規則というものを承知しているから言うのです。刑事訴訟規則が刑事訴訟法の運用に関する手続であるが、あの刑事訴訟法に規定してあるところの精神が必ずしも規則に出ておらない。例えば三十九条かの、弁護士の面接の規定等が、勝手に検事が時間をきめて、そうしていろいろなことをやつたりする。刑事訴訟法の二項では防禦の方法を侵害するような制限をしてはならんということになつておるのに、それが今度は規則では制限されている。そういうようなことはやはり本法の原則をこわさない程度においてしなければならん。だから今あなたのような構想は、これが構想をいよいよ成文化するときに、或いは我々予期しないような方面に走らんとも限らないから申上げる。ただ大ざつぱなことだけで、それは規則に任せる、規則に任せるということで、長い間馴致して、馴れておる、これをやめてしまつてやることは、訴訟手続を簡素にするという上からはいいかも知れませんよ。当事者訴訟の進行について、権利を侵害し、当事者の予期しないような損害を招くことが万々一手続を簡素にする、簡素にするというために行われるような時分には、折角我々が心血を絞つて審議したことが無駄になる。なぜ最高裁判所規則を見なくて、勝手にこんなものを削つてしまつたのかという非難を受ける惧れなしと限らんから、それで申上げるのですから、成るほど今これを受取つて内容調べんでそういうことを言うのは甚だ失礼でありますけれども、併しこの通りに規則ができるということはわからんでしよう。これは最高裁判所がこしらえたのではなくて、これに書いてある委員会によつてこしらえたもので、最高裁判所がいよいよ規則を作るときに、これじや都合悪いから、こうしなければならんということにはならんとも限らんじやないですか。それならば我々はやはりそういうような草案を見て削除する規定と比較研究して立法に当るということのほうが親切丁寧じやないのかね。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 関連して……。私もこの点は非常に遺憾だと思つております。国会にこの改正案が出されて、こちらから質問が始まつて、初めてこういうものが早急に作られて来ておる。従つて而もこの案は御説明によりますと、単なるこれは事務同案であるわけなんですね。規則制定の権限といいますか、権限を持つておるのは、最高裁、最高裁が諮問する諮問委員会規則制定のための諮問をする委員会、この委員会にすらこれが諮られておらない、本当の事務局案なんです。だからこれがこの通り改正法通過後に規則の上に現われて来る、こういうことは必ずしも保障されない。それから各条毎にこれが書かれておるわけじやないから現行法との比較ということになりますと、これはなかなか的確な比較というものはむずかしいので、先ほど議論になりましたような法文の中の一つの字句にしても、全く相反した解釈がなされるようなやはり微妙な問題がたくさんあるわけです。これと現行法を比較せよと言つたつてこれは無理だと思う。私はそういう総論的なことばかりで時間を費やしては甚はだ相済まんと思いましたので、百四十三条の具体的な条文の審議段階で更にその点をもう少し実はお聞きしたいと思つております。丁度一松先生からそういう要望も出ておりますので、これはもう少し、これを見てもらえば、現行法のままではいけないということは御了承願えるはずだ。こんなことでその後に来るものを示さないで、それで適当に了解してくれということは非常に大ざつぱだと思う。私は委員長も大体そのことを、先ほどの発言でありますと了解されて、そうして委員長から最高裁のほうにやはりそういうものを至急準備して出してもらいたい、こういう意味の実は催促をされているのであると思う。だから私は一つ端的に関連して聞きたいのですが、これは委員長からも実は要求されているんです。その要求に一体応じられないつもりでこのままでやつてくれ、こういうことなのかどうかね。一つはつきり今の一松さんの質問にお答え願いたいと思う。
  65. 一松定吉

    ○一松定吉君 これはね。今亀田君のお話御尤もです。これは若しこれが引き延して審議未了に終らせようと思うならば、我々がそれを最高裁の規則の原案の出るまで審議せんと言えばどうしますかね。私どもはそういう考えはないんです。できるだけ促進して、そういうような一つ訴訟の非常に遅延しているようなものを解消して、そうして而も当事者の権利を侵害しないような方法があれば御協力申そうというわけなんですよ。だから我々の審議に便利になるようにあなた方も協力せなきやいかんよ。本当に亀田君の言う通り、最高裁のほうから出ているものは何もないんです。最高裁が規則をきめる、その最高裁から規則の原案も何も出さないで、あなたがたがこういう構想というものを出して、最高裁に押し付けて、国会でこういうことになつた、我々が国会に提案したのはこの構想だから、これによつてお前がたは作れと、そういうこともやるまいと思うけれども、想像はされますよ。やはり本当に促進するならば一つ昼夜兼行でおやりなさい。そうしてこの期間内に御協力したいというのが我々の考えです。あなた方がどうでもいいということならばこれは審議未了に終りますよ。今日は十五日だ。後一カ月よりないんだから、不服を言うわけでも何でもないよ。本当にあなた方に御協力する意味においてこういう憎まれ口を叩いておるのだから。
  66. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をやめて。    〔速記中止〕
  67. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。  最高裁判所規則として新たに制定されますものについての要綱は、可及的速かに当委員会に御提出を最高裁側のほうに要求をいたしておきます。  ちよつと速記をやめて。    〔速記中止〕
  68. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。  両法案につきましての審議の途中でありまするし、又時間の都合によりましては、両法案の審議に引続きお入りを願いたいと思いまするが、只今東京大学助教授に対する人権侵犯事件につきまして御質疑を願いたいと存じます。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 これはすでに新聞にも出ておることなのですから、一般的に知られておることですが、事件の性質上非常に重要な問題だと思いますのでお尋ねをしたいと思います。  それは三月の三十日に東大の関野助教授が自分が持つておる書物を調査された。警察官によつて調査を受けた。こういうことから来ておる事件なんです。関係者の申出によりまして、人権擁護同においてもすでに問題の調査に着手しておられるように聞いておりまするので、先ず今日まで明らかになつ事情について、擁護局のほうから先ずお聞きをしたいと思います。  それからなおそれに関連して、これは勿論警視庁の警察官でありますから、警視総監においてもそれに対する処置を考えておられると思いますが、その点どのように現在のところなつておるか。これは総監のほうから一つ局長の後にお答えを願いたいと思います。
  70. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) お答えいたします。  お尋ねの件につきましては、本月の八日東京法務局人権擁護部におきまして人権侵犯事件の申告を受けましたので、同法務局で早速調査いたしましたところ、次の事実が判明いたしました。  被害者の関野雄は東京大学助教授であるが、去る三月三十日午前十時二十分頃、東京都台東区谷中三崎町二十二番地の自宅において、谷中警察署員安蒜安正によつて不当な捜索を受けたものである。  即ち同日同時頃、制服制帽を着用した一人の警察官が案内簿を手にして訪れ、玄関より中に入りガラス戸を閉めた後、応待に出て関野雄の妻都に対し、雄が文部教官であることを確めた後、勤務先を訊ねた。雄の在否を聞くこともなく、都の「東大でございます。」との返事を聞くや、玄関の間四畳半をじろじろと見廻して、本棚の置いてあるのを見ると、「本を見せてもらいたいんです。」と言うが早いか、靴を脱いで帽子も取らず上り込んで本棚に近づいた。この威圧的な態度に圧倒されて、都は思わず「はあ」と答えたところ、警官は本棚の中から、マルクス=エンゲルス「芸術論」等を抜取り内容を調べ出した。  此の間警察官と都との会話を隣室の六帖の居間で聞いていた関野雄は、警察官の意図が大体察知できたので、彼の面前に出て来て、なぜにかようなことをするのかと詰問し姓名を尋ね、警察手帖の呈示を要求したところ、顔面蒼白となり逃げの一手で姓名も明かさず警察手帳も見せようとしなかつた。  尻込みする警察官を夫婦で隣室に招じ入れ、被害者雄も名刺を出し、正式に警察手帖の呈示を求めたところ、ようやくしぶしぶ手帖を示した。その結果、前述谷中警察署員安蒜安正ということが判明したものであります。  これが大体今までの調査しました結果の概要でございます。
  71. 田中榮一

    参考人(田中榮一君) 私のほうで調べましたところを御報告申上げます。昭和二十九年三月三十日の日に、谷中警察署の初音町の派出所の受持巡査で安蒜安正という巡査が、これが防犯連絡の上から、たまたまこの台東区谷中三崎町二十二東大助教授の関野雄というかたのお宅に参りまして、戸締りのことであるとか、或は押売り、それから窃盗というようなことについていろいろ御注意をいたしまして帰ろうとしたところが、この巡査がたまたま玄関の狭い部屋に、大変立派な書物がたくさん、ぎつしり詰まつてつたので、丁度出て来られました妻女のかたに、大変立派な本がおありのようですと、一遍見せて頂いてよろしうございましようかと、こういうふうに言いましたところが、妻女が、どうぞ御覧なさいませと、で、今いい本は大体疎開しているんだけれども、大した本でないかというようなことで、巡査が、それでは失礼でしようがちよつと見さして頂きますと、こういう意味で、靴を脱ぎまして上つて、一番とつつきのところの本を、一、二冊見ているところで妻女が又奥へ入りまして、御主人の助教授の方を呼んで来て、そこで思想調査でないかということで詰問を受けたのであります。  かような事実がございましたので、私のほうといたしましても、誠に如何にもどうも思想調査のようなことになりまするので、直ちに監察官をいたしまして、第六方面本部に直ちに調査方を命令いたしまして、第六方面本部におきまして、監察的の意味におきまして事実を、本人を呼び出しまして調べたのでございます。その結果この安蒜巡査は丁度拝命いたしましてから十五年ぐらいなるのでありまして、学業の成績は余りよくないのでありまして、常に下位にあるほうでございまして、執行のほうも余り大した執行力もない巡査でありまして、ただ本人は、本人の言うところによりますと、非常に書画とか骨董とかそういうものが好きでございまして、ときどき親しいお宅をお伺いして、いい書画なんかを拝見して喜んでおつたというようなことも本人も言つておりまして、要するに、立派な本がたくさん詰まつてつたので、本人の言うのも、多少私はそういう気持から来ておるのではないかと思いますが、大変立派な本があるので、ちよつと拝見さして頂きたいという、そうした極めて単純な気持から妻女にお願いいたしまして、妻女のほうでは、ではどうぞということで、一応御了解を得て上へ上つたというのでございます。たまたまこの突き当りにあつた本がマルクス、エンゲルスという、カナで書いた、ほかの本は非常にむずかしいので、片カナで書いてあつたので、それをいきなり取つたというようなことを言つておりますが、本人の今日までの成績等から見ましても、本人がそうした、本人自身が、思想的な方面に関心を持つておる巡査とも我々は考えておりません。単に外勤巡査といたしまして十五年間やつて来た巡査でありますので、特にそうした方面に本人が興味を持つておるというようなことは全然ございません。そうしてその場におきまして夫妻から非常にお叱りを受けたので、本人が非常に恐縮して警察手帳をお見せして、帰つて直ちに署長に報告したのであります。署長といたしましては、それは非常に疑われる行為をやつた。とにかくそういう行為をやつたことは、これは行過ぎであるからして直ちに行つてこれは陳謝しようというので、署長と二人で、私のほうも若しそういうことがあつたとすれば、これは非常に行き過ぎであるから、一応その助教授のところへ行つて十分に了解を得るし、又行き過ぎがあつた点があるならば、これは十分陳謝せねばならんから、さような措置をとれということを私も連絡をいたしまして、署長も確かに行き過ぎた点がありますからというので、安蒜巡査を連れまして妻女のところへ参りまして行き過ぎた点、又非常に誤解を受けた点は十分お詫びをいたします、こう言つて二人で妻女に陳謝をしたそうであります。ところがたまたまその際に御主人が六区方面本部のほうへ抗議に出かけられて留守だつたそうであります。従つて助教授直接にお目にかかつてよくお話をすればよかつたのでありますが、丁度不在中に行つたのでありまして、助教授に御了解を得られなかつたようでございます。  なお、この六区方面本部に関野助教授が参られたときも、六区方面本部長からよくその事情をお話いたしまして十分御了解を得たのでございますが、ただ私のほうとしまして、今この安蒜巡査のやつた行為が果して思想調査だかどうかということは、私どももこの巡査の平素の勤務振り、それから本人の素質等からいたしまして、絶対にそんなことのできる巡査ではないのでありまして、先ほど申しましたように、要するに本人がそうしたものに非常に一つの興味を持つてつた。思想とかそういうものではなくて、要するに一つの本であるとか、書画であるとかいうものに対して、一つの趣味と申しますか、興味を持つてつたというようなことから、何気なく気やすだてといいますか、ちよつと見せて頂けないでしようかと言つてつたのが、これが私は大変過ちを犯したと考えております。取りあえず警視庁といたしましては、とにかく仮に本人がそういう気持でなくても、一応そういう疑いを受けたということにつきましては、これは誠に遺憾に堪えないのでありまして、署長におきましても本人の将来を戒め、又十分にこうした疑いを将来起すような行為をしないようにという意味から、現在としましては署長において本人を訓告処分に付しまして、そうしてその受持ではちよつとまずいと思いますので、他の受持のほうへ現在転勤を命じまして、十分に将来を戒めておるような次第でございまして、なおこの点につきましては助教授のほうから人権擁護局のほうへ提訴がありましたので、私どもとしましては十分に一つ人権擁護局のほうにおかれまして、公平な立場において御調査を願うことを希望しておる次第でございます。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 一応の御説明を聞いたわけですが、お二人の御説明が結論において大分食い違つておると思うのです。警視総監のお話によりますと、何か余り強制的なものでもなかつたような印象を受ける。併しこれは本件の非常にポイントだと思うのです。本当に了解を得てやつたことなら何でもないことだし、そうでなしに、一つの意図なり、強制的にやつたことなら、これはもう質的に非常に重大な問題だし、がらつと変つて来るわけです。だからその点をあいまいにさしたのでは大変なことです。  それで総監に先ずお聞きしますが、今のようなあなたは報告をされたのですが、これは安蒜巡査の署長の報告に基くものか、或いは署長なり、安蒜巡査だけじやなしに、相手方の被害者ですね、被害者のほうからも一応事情をお聞きになつて、それを総合された結果に基くものかどうか、この点を明らかにしてもらいたい。
  73. 田中榮一

    参考人(田中榮一君) 私の只今申上げましたのは別にその助教授のほうからはお聞きいたしておりません。これは方面本部におきまして、安蒜巡査を調査いたしました。その供述調書を通じまして、その内容を読みました上で、実は御報告を申上げておるのでございます。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 これは私常識的に考えてそういう調査だけではいけないと思うのです。すでにお聞きしますると、一定の処分を安蒜巡査に対してされた。そういう処分までされる場合には、もつと客観的にものごとを確定しなければいかん。それにはどうしたつて被害者のことをあなたのほうで直接事情を聞かれる、これが先ず何よりも必要じやないかと思うのです。で私どものほうが……、まあ勿論私ども直接調べる権限もありませんが、情報によりますと、左翼関係の書物を二冊取つて、そうしてこの二冊が問題なんだ、こういうふうなこともその巡査が発言したように情報では聞いておる。やはりそうすると、これは非常に実は行過ぎておる。そういうことが事実だといたしますると、先ほどなされたような軽いそういう処分で果して適当かどうか、そういうことにも関係して来るわけでしよう。だからこれは何としてももつと客観的な、双方の言い分をあなたのほうが聞き取つたということがなければ、これはおかしい。そんなあなた緩いものであれば、何も署長までが帯同して、そうして謝りに行く必要がないでしよう。で私、謝りに行つたということをあなたが聞かれたこと、そのことからしたつて、実態はもつと深刻なんじやないかということにやはりお考え頂いて、そうしてもう少し真相を明白にする、そういうことをしてもらいませんと、自分の部下のやつたことだからということでそれを庇う、こういうことでは、ときどきこういう問題が起るわけですから、そういうことが改められなければならない。まあ自分たちがやつても、又上官が適当にやつてくれるだろう、こういうことなんです。それはどういう思想を持つていようと、こういうことはもう自由なんですから、これは学者の生命なんですから、右翼、左翼、いろいろ思想はあるでしよう。そんなことは自由なんですから、これはもう良心的な学者にとつては、そういう立場の如何を問わず、こういうことが新聞に出されることが非常にやはりこれは苦痛なんです。私はそういう意味で、総監の只今お答えになつたようなことですと、甚だこれは不満なんです。でもつとその点を突込んでお調べに私はなるべきだと思うのですが、それはどのようにお考えになりますか。
  75. 田中榮一

    参考人(田中榮一君) 私のほうの調べといたしましては、まあ巡査を一応調べまして厳重に調べました結果、大体巡査の言つておりますことが……、まあ多少大同小異はありましようが、大体さような状態ではなかつたかという実は推測をいたしたのであります。ただ、この事態の如何を問わず、私どもとしましては、警察官がその思想を調査したというような疑いをかけられたということ自体が、それはその警察官の執行として不適当であると、かような考えからいたしまして、その事実は事実として別としまして、一応そういう疑いをかけられた行為をやつたということに対して、一応処分をいたしておるのであります。若し又これが更にそれ以上に何か違法……、警察官としてあるまじき違法処置であるとすれば、これは又別の考えを持たなければならんと思いまするが、一応こうした思想調査をやつたような疑いをかけられるような行為をやつたということは、これはどうも警察官として誠に執行が不適当である、かような見地からその事実をそのまま形の上において見たままにおいて、一応これを処分いたしたのでございます。又、なおこの点につきましては、私のほうでも、更に又この助教授のほうにも十分に当りまして、事情一つ調査してみたい。又かたがた人権擁護局におかれましても、これは警察以外の立場におきまして、第三者としての御調査が今なされておりまするので、その結果によりまして、又私どもといたしましても十分な処置をとりたいと、かように考えております。  なお、先ほど御発言の中に、部下を庇うというお話もございましたが、非違をやつた部下を庇うということは、それは全体として警察の威信に関する問題でございますので、私といたしましては、何か悪いことをした警察官を、それを飽くまで庇うという意思は毛頭ございません。この点だけは申上げておきたいと思つております。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますると、私は今総監からもおつしやつたように、是非直接この被害者からも事情をもつと聞いてもらいたい。その結果これは非常に不当なことをやつたということが明白になれば、もつと強い処分もあり得るというふうに理解しておいてよろしうございますか。
  77. 田中榮一

    参考人(田中榮一君) 勿論警察官としてあるまじき非違をやりましたならば、それに対する当然の措置はせねばならないと考えております。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 それから私はこういう事件が安蒜巡査によつて起されたけれども、これは単に安蒜巡査だけの考えではなく、やはりもう少しこの背後に大きな動きがあるのじやないか、こういうふうなことも考えるのです。そういう一巡査が私そんな出過ぎたことまで、なかなか単独にやるものじや私はなかろうと思つているのです。で直接この上官が何かそういうことを指揮したかどうか、こういうことはまあわかりませんか。若しそういうことがわかつておれば、勿論大変なことですが、そういうことがなくとも、何かそういう傾向というものがこの安蒜巡査のおる署にあるのじやないか。署長なら署長が大体そういう考え方で平常から動いておるから、署員が集つて、まあ食事でもしたり、いろいろお茶でも飲むときに、どこそこの教授は、あいつは怪しかるとか、怪しからんとか、こんな想像話もしているのじやないかと思うのですね。そういう雰囲気があるものだから、ひよいと何かの拍子にこういう間違いが私はできるのじやないかと思つている。こういう点も、これは具体的なこういう事件を契機にして、十分一つお調べを私は総監としてはもらいたい思います。まあなかなかそういうことは的確な証拠というものはないでしようが、一体に末端の警察官だけでこういうことはやれんのじやないか。相手は助教授ですからね。特に玄関を上つて行くのですからね。相当私はこれはいかんと思います。ちよつと街の交通整理でもやつているとか、街で警邏をやつている、そういうときに、ついでに何かちよつとあつたというふうな、でき心のようにも私は思えないのですね。それはどういうふうにあなたはお考えです。
  79. 田中榮一

    参考人(田中榮一君) 今回の事柄につきましては、警察署長も実は思想調査と疑われたことについて非常にびつくりし、又監督者一同も非常に事の意外に驚いておるような状況でございまして、それであればこそ大変申訳なかつたということで、助教授のお宅まで署長がわざわざ行きましてお詫びをしておるという状況であります。従つて平素さような助教授の思想の調査をすることを命ずるとか、そういうようなことは絶対に現在やつておりません。  それから今の安蒜巡査というのが先ほど私申上げましたように、そういうセンスのまあないと言つたほうがいいくらいの男でございまして、本当にその場のでき心といいまするか、そうした興味心からつい警察官であるという身分を忘れて気安だてにそういうことをやつたのだ、こういうふうに我々は見ておるのでございまして、思想調査であるとか、まあそうした事実というものは、現在我々といたしましては、その事実を認めないのでございまして、ただその事柄自体を外部から見ますると、成るほど制服の警察官が教授のお宅に行つた、そうして本があつたから本をちよつと拝見したいと見た。たまたまその見た本が、マルクス、エンゲルスだというので、条件は極めてどれもこれもうまくできておるのですが、実際問題としてはそうした思想調査のためにやつたとか、そういうのでは全然ないのでありまして、本人もその点だけは誠にそういう結果になつたということについて、何とも申訳ない、こういうように言つておるわけでありますからして、この点だけ一つまあ御了解を願いたいと思います。  なお思想調査とか、そういうことは現在警察といたしましては全然やつておりませんから、この点も一つ御了承願いたいと思います。
  80. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 人権擁護局長のお話と総監のお話を伺いまして、非常に私は違つた気持がするのです。それで警視総監のお話を伺いましてみますと、何も悪いことはないので、まあ私聞いたところでは、それで何も悪いことのないものをなぜお詫びに連れていらつしやつたり、それから本人を処罰なさつたりなさるのだろうかということが私不思議で、少くともまあ警察官というものは、言つてみれば本当に政治の末端で、その人たちが正しいことをしておりますときに、そう私は頭を下げて歩く必要がないと思うのです。それで、だけれども私はここにおかしいことが二、三あるので伺いたいのでございますが、防犯のために戸閉りのことなんかを注意に行つたとおつしやるのですが、それは各戸を歩かしていらつしやつたのでございましようか。たまたま今の関野助教授のところだけにそういう問題を持つてつたのでございましようか。それはどうなんでしようか。
  81. 田中榮一

    参考人(田中榮一君) この防犯連絡と申しますのは、大体一年に一回ぐらいだと思いますけれども、これを我々のほうでは受持ち連絡と言つております。一年に一回ぐらい各家庭を訪問いたしまして、そうしてまあ押売りが来ておるかどうか、それから最近のこの辺の窃盗、それから家の建付けがどうであるとか、それから防犯上御注意申上げる点、それから又例えば高級カメラとか、こういうようなカメラの番号、レンズ番号なんかを全部お聞きしまして、そうして或いは貴金属でも若しお届けがあるならば、これを台帳に載せておくというようなこと、それから又住所、それから氏名、年齢と、その程度のことを承わつております。併しこの防犯受持ち連絡というのは、これは飽くまで相手方の任意に待つてつておるものでありまして、強制的に亘つてはいかんということで、相手方が言わなければもう仕方がない。そのまま帰るというようなことにいたしております。従つて安蒜巡査の参りましたのは、この助教授の私宅だけを訪問したのではなくて、順々にこう廻つて参りましてたまたま関野助教授のところでこういう事件があつたわけでございます。私のほうで処分したと申しますのは、大体この警察官が受持ち連絡に行つてそうしてその家の家族の承諾が仮にあつても、靴なんか抜いで中に上つてつて、そうして家族と応対するということは、これは厳に禁じておることでございますから、少くとも玄関先で用件が済んだならば、私用をそこで足してはいけない。用件が済んだら必ず直ちに辞去するというのが建前になつております。従つてこの安蒜巡査は自己の職責を果してから後に、まああとは私のことになると思うのでありますが、本を見せてくれと言つて、靴を脱いでのこのこ上り込んで行くなんということは、これはもう警邏員としてあるまじき行為だと、かように我々は考えておるのでありまして、この点は我々としてはこの警邏員の職責を逸脱した行為と、かように考えて、一応処分しておるわけでございます。
  82. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 安蒜巡査が、まあ、ふだん禁ぜられていることを侵して座敷へ上つたというほど、書画骨董が好きだつたという解釈をいたしますと、私握り出すもの、本が少しおかしいと思うのです。書画骨董に趣味のある人だつたら、もつとそんなにしてまで見なければならないというものは、もう少書画骨董らしいものを引張り出すのじやないか。まあ、これは常識的に思うのでございますがね。大体関野助教授という人がどういう思想傾向の人か私ちよつとも存じない方なんでございますけれども、マルクス、エンゲルスの本は、私は書面骨董なんかと恐らく方面の違つた本だろう、私どもつている範囲ではそういうふうに思いますが、たまたまそれをつかみ出してみたいということも私とても了解できないのです。そんなものをわざわざ禁を犯してまで靴を脱いで私見せてもらうということは、どうしても了解に苦しみます。それから若し警視総監がおつしやることを私ども本当に信じたいとするならば、関野助教授は少し私妄想狂かなんか、自分で捏造するような人じやないかというように考えなければならないのでございますね。その点を一体警視庁ではお調べになつたか、どうでございますかと思うのでございます。この関野助教授の言つたことについて、つまり人権擁護局に訴えて参りましたその内容について、少しお調べになつたかどうかということでございます。
  83. 田中榮一

    参考人(田中榮一君) 提訴せられました事項につきましては、一応人権擁護局のほうについてお聞きいたしておるのでありまするが、ただ関野助教授がどういうような方であるかどうかということについては、私どもとしては判明いたしておりません。ただ巡査の陳述した事柄について一応我々としましては判断をいたしておるような次第でございます。  又今お尋ねの靴を脱いで座敷に上つたということでありますが、まあ、この巡査は余り成績はいいほうではございませんが、昭和十四年に拝命をいたしまして今日まで、成績は優秀ではございませんが、一応大過なく勤めだけは勤めておるという巡査でございますので、まさか今までも随分防犯指導でほうぼう廻つておりますので、家人の承諾なくして、御了解のなくして、靴を脱いでのこのこ上るなんということは恐らく考えられないと考えております。恐らく靴を脱いで上つたからには、やはり妻女の一応の本人が御了解を得たものということで上つているものと私どもは実は考えているのでございます。又若しこれが了解を得ないで上るようなことは、これは非常に不届きなことでありまして、まさか十五年も警察官をやつているのでありますからして、その辺のことは子供ではございませんから、大体よく常識的にわかつておるものと考えております。一応上るからには、やはり一応その妻女の御了解を得たのじやないかというふうに私ども考えている次第であります。
  84. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 署長がお詑びをおつしやつたという点は、どういうお詫びの点でお連れになつたのでございましようか。聞いて見れば、何もお詫びを言う筋はないと思いますが……。
  85. 田中榮一

    参考人(田中榮一君) これは受持連絡に、仮にその妻女が承諾しても、警察官して一般の民衆の宅へのこのこ上つて、而もこうした思想調査だとか何とかというような容疑を受けたということは、これは警察官として先ほど申上げました通りに、余り適当な行為じやないという考え方と同時に、又思想調査でないということを御了解をして頂きたいという意味でお伺いし、又のこのこ上り込んだということは、警察官として適当な行為でないのでありまして、この点をお詫びしたいと思う、こういうふうに言つたわけであります。
  86. 中山福藏

    中山福藏君 擁護局長一つお尋ねいたしますが、あなたそれは提訴されてからこの事件について相当もうお調べになつておりますか。お調べになつておりますれば、その範囲一つ明確にして御説明を願いたいと思います。
  87. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) 四月の八日に申告がございまして、この事件を重要な事件だと考えましたので、早速調査いたしました。調査いたしました範囲は、被害者である関野雄及びその妻、それから本件の安蒜巡査、これにつきまして、詳細調査いたした次第であります。
  88. 中山福藏

    中山福藏君 その調査の結果を一つ御報告願いたい。
  89. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) 調査の結果は、先ほど大体概要を申上げましたのが大体その調賛の結果でございますが、その前に先ほど亀田さんのお話の中に、私どものほうで調べたのと新聞に出たのと違うのがございますのでちよつと申上げたいと思います。この二冊の本が問題だというようなことが新聞には出ておりますが、私のほうで両方調べました結果では、さような事実はないと思います。そこで今度の警察官のこの行為でございますが、私どもの調べましたのは、警視総監の只今の御報告とはいささか違つております。安蒜巡査が参りましたのは、私どもの調べでは大体十時二十分頃ということになつておりますが、入つて来てガラス戸を閉めて、すぐ何も言わずに、障子の所にこう紙を貼つてないままのいわゆる覗き穴みたいになつているのであります。これを見て、なかなかお宅では非常に用心がいいですねというのが最初のようであります。それでお宅は文部教官ですか、御主人はどちらに勤めておりますかというのが最初のきつかけのようでありました。それで東大ですという返事から、部屋の中を見廻しておつて、そこにあつた本箱にぎつしり本が詰まつておりましたので、それを見ておりましたが、これを見せて頂けませんかというのが極くほんの僅かの時間、そのときにはもうすでに片足を靴を脱いで上りかけておつた。とめるも何もしないうちに見せて頂きますと言うので、奥さんとしてその場でどうしていいかはつとしているうちに上つてしまつたというのが、私のほうの実は調べた結論でございます。警視総監のこととは多少違いますが、諸般のいろいろ事情調査いたしますと、或いはそうであつたんじやなかろうかというふうに私のほうではさように事実を認定いたしておる次第であります。  そこで今度のこの安蒜巡査の行為というものは、本人は思想調査をしたのでないということを言つておりまするが、客観的には諸般の事情から見て思想調査をした疑いが十分にあるんじやなかろうかというふうに私は考えております。従つて憲法十九条の思想の自由、憲法三十五条の住居不可侵に違反する人権侵害ではなかろうかというふうに考えておる次第であります。なお、警察官の職務執行法の第六条にも違反するのじやなかろうかというふうにも考えております。御承知のように思想調査ということが只今全国的に問題になつておりまする折に、警察官のかような行為というものは、私は人権擁護上甚だ遺憾であるというふうに考えておる次第であります。
  90. 中山福藏

    中山福藏君 あなたの今御報告された点は、誰と誰と誰の証言に基くものでありますか、その人名を一つお知らせ願いたい。そうしてその人名をお述べを願つて、特に各人の述べた供述の重点を一つお知らせ願いたい。全部お知らせ願う必要はない、誰はこう言つておる、誰はこう言つておる、これを総合的に考えて結論を下すとこうなるということを一つ御明示を願いたいと、こう考えます。
  91. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) 人権擁護局におきまして調査いたしましたのは、関野雄及びその妻の都、それから警察官の安蒜安正、この三名につきまして調査をいたした次第であります。そこで安蒜巡査が昭和十四年以来巡査を拝命いたしておりますが、なぜこの関野雄の宅に行つたかということを安蒜巡査に聞いてみますと、安蒜巡査は、私が関野さんの宅に行つたのは三月三十日の午前十一時頃だと思う。なぜ関野さんの所に行つたかと申しますと、今までのパトロールが外勤と変り、私どもの受持の区域が変つたので、新らしく私の受持区域になつた地区を廻つて、防犯予防の見地から区域内の家を訪問したのであります。だから関野先生の家に行つたのはこの日が初めてであります。私はこの日案内簿を持つて参りました。戸籍簿というものは現在はなく、案内簿と称して、各自から任意に氏名、家族、同居者その他勤務先、或いは職業を書いてもらい、それを提出させるのでありまして、私は関野さんの玄関に入つて、初め奥さんに、最近押売があるから気を付けて下さいと注意し、その後盗難予防の話をいたしましたということになつておるのでありますが、関野雄及びその妻の都の言によりますると、先ほど私が申上げたように、押売の話というものは最初全然なかつた。ただ障子の紙の貼つてない覗穴を見て非常にお宅は用心がいいじやないですかという質問があつたので、それは前の廻つて来るお巡りさんに教えられてこういうふうにいたしましたというふうに答えておりました。いろいろ諸般の事情を私のほうで考えてみますと、やはりこれは関野雄及び都の言うことが大体正しいんじやなかろうかというふうに私のほうとしては認定いたしておるわけであります。そこで先ほど申上げたように、その玄関の四畳半にあつた本棚を見ていましたが、急に上つた。そして十冊ばかりのマルクス等の本を引出して見ておつた。そこで奥さんが、そういう本に御趣味があるのですかと言つて尋ねたところが、いや、趣味はないというようなことだつたそうです。この点はやはり安蒜巡査について聞いてみますと、安蒜巡査も、ただ何となく見たくなつたのだ、自分はマルクス等についても、別にそういう本についても趣味もないし又わからない。ただ何となく見たくなつたので上つたということが私のほうの調査では明らかになつておるのであります。それらの点から見ましても、果してこれが何のために見たかということは、これは本人以外には勿論わかりませんけれども、いろいろ諸般の事情考えてみますと、ただわけもなく警察官たるものが本を見たくなつて、人の家へ上り込んで見るということは、これは常識上も考えられませんので、いろいろの点を考えてみますと、客観的には思想調査という言葉が適当な言葉かどうかわかりませんが、どういう思想の本を読んでいる人であるかということを見たんじやなかろうかという疑いを私のほうでは持つている次第であります。なお、警察官としては最初参りましたときに、その目的、それから要求に応じては、警察官である身分を示す証票というものを示さなければならんことになつておりますが、これもなかなか最初は明らかにしませんで、隣りの部屋に入れられて初めて、関野助教授から、私も名刺を出すから、あなたも身分を明らかにしてもらいたいというようなことから、身分を証明する証票を見せた。まあこういうことが私ども調査の結果に出ておりまして、それらの点からも、先ほど申上げたような職務執行等の関係があるのではなかろうかというような考えをいたしておる次第であります。
  92. 中山福藏

    中山福藏君 只今お聞きした範囲では、思想調査に行つたかどうかということを、自由その他の証拠によつて傍証によつて明確にするという結論は出ていないと私は考える。但しあなたのいわゆる常識的な客観的な現在の世相から推して、これは思想調査であるという御認定をなさるということは、これは御自由でございますけれどもね。証拠とその結論とが因果関係がぴつたりと来ているかどうかということは、いささか私は疑問を持つわけであります。先ずそれ以上は今日お調べになつていないわけでありますから、それ以上お尋ねいたしません。  そこで、私は警視総監に一つお尋ねしておきたい。これはこういうことは現在のこの日本の状態から推して、よほど深甚の考慮を要する問題であると同時に、警察官に対しては一応上官としてこれは一応現在の世態を説いて、その行動というものを一々自戒自律しておくべきものだということを、これは何と申しますか、指令しておかれるのが当然だと思うのですが、この案内簿というものが現在あつて、これで一年に一回くらい各家庭を訪問して防犯の事前予防行為をやるということは、これは警察官として当然だと思いますが、将来こういうことを一つお互いに、これは憲法第十九条のいわゆる良心及び思想の自由というものが許されております今日においては、これは学者の生命とも言うべき学問の自由でありますから、殊に憲法第二十三条によつて学問の自由というものは明らかに書かれておるわけでありますから、よほどお互いに注意しないというと、現在のいたくない肚を探られる事態というものが私は惹起されるのではないかということも恐らくある。今日こういうような、何といいますか、思想混乱というか、惑乱されておる今日においては、これは十分一つ御注意を払つて頂かんと、間々こういうことが起つたとしたら、誠に私は日本のために悲しむべき事態だと思うのであります。こういう点につきまして、一つ将来のお考えを警視総監から承わつておければ、大変結構だと思います。
  93. 田中榮一

    参考人(田中榮一君) 私といたしましても、今回こうした思想調査の疑いをかけられるような行為をやつたということは、誠に遺憾に考えておる次第でございまして、今までもいわゆる防犯指導といいまするか、多数の御家庭を警察官が訪問していろいろと連絡をいたしておりまするが、こうした事案は殆んど一回も過去におきまして起つておりません。今回が初めてでございまして私どもも誠につまらないことをやつて疑いをかけられたというような気持で一ぱいでございます。従いましてたまたまこうした事件が起りましたので、今後も十分に一つこうした疑いのかけられないように、部下一般にも示達いたしまして最善の注意をいたしたいと、かように考えておる次第であります。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 最後に一つちよつと要望もかねて申上げておきますが、先ほど警視総監は警察官が家の中へ上るのだから、少くとも承諾は得ておるだろうというふうなことをおつしやつておるんですが、これは非常に重要な点ですよ、この事件で……。相手が女なんですね。そういう場合にちよつと見せてもらいたいからと、こういうふうに現職の制服の警官が言う。相手が急に言われたような場合に「はあはあ」と、こう言つている間すうすうと行つてしまうわけですね。これは常識的に想像できるんですよ。そういう状態を承諾を得たと見るか、得ていないと見るか、重要なことでしよう。それを警視総監のほうは、どうもその辺をやはり擁護する気持はないと言つておるが、どうも擁護するような気持が動いておるように思うのですね。だから、そうじやなしに、私ども実質的にそれが強制されておるかどうか、そういう立場からこれを見ておるのですね、全体のそのときの情勢を判断して……。そういう立場からこれは冷静にやはり考えてもらいたいですよ。その点どういうふうにお考えですか。やはり承諾があつたようにお考えになつておるのか知らん。先ほど局長から報告され、又その報告はあなたのほうにも行つておるはずですね。
  95. 田中榮一

    参考人(田中榮一君) これは本人の言うことでありますから、私も全面的に本人の言うことが正しいとは思つておらないのでありますが、本人も上る際に、奥さんのほうに、妻女のほうに、上ることを差支えないだろうかということを何でも二回か三回に亘つて、「ちよつと上つて差支えございませんでしようか」と言つたところが、「どうぞ」とこういうようなことで、それで靴を脱いで上つたと、かようにまあ陳述いたしておるのであります。仮にそうでなくても、勿論警察官でありますから、ずかずか妻女の答えもなしに上るということは、私といたしましては考えられないのでありまして、少くともその間に相手方がどういうように受けられたか、これは実際問題、事実の問題でありまするから、我々もよくわからないのでありまするが、「上つてよろしうございますか」「どうぞ」、或いは妻女のほうで止むを得ず言つたかも存じませんが、安蒜としては「どうぞ」と言われたものですから、一応御承諾を得たものという気持で上つたものと、私は解釈いたしております。その辺が巡査と妻女との二人の話でございますか、会話でありますから、それがどういうふうに、妻女が心理的に受けられたかということは、これは私どもわかりませんが、一応とにかく上つてよろしうございますか、よろしうございます。どうぞ。では見せて頂いてよろしうございますか。どうぞ。こういうことで本人が上つておるのであります。かような点から、或いはその承諾をとる方法が不十分であつたかも存じません。或いは短時間のうちにやつた会話でありますから、或いは不十分であつたかも知れません。或いは妻女のほうが変に圧迫的な、心理的な気持になつてつたかも存じませんが、警察側としましては、一応どうぞと言われたものですから、一応承諾を得たものという気持で上つたと思います。まあ事実はさようなことになりますが、いずれにいたしましても、かようなことで、こうした誤解を受けるということは非常に遺憾に堪えないことでありまして、今後十分注意をいたしたいと考えております。
  96. 亀田得治

    亀田得治君 総監が只今二回も三回も、上つてもいいかという意味の承諾を求めた、そういうように今長くおつしやつている中でちよつと言われたのですが、それは事実ですか。安蒜巡査が二回も三回もいいですかと念を押しているのですか。そんなことが事実だとしたら、一回聞いて返事しない。更に二回聞くと、そのこと自身はもう圧迫でしよう。もう少し、そういう点は一番肝心なところですから……。一回、二回聞いてだめなものなら、そこで帰らなければいかんでしよう。だから事実をかばおうとすると、おつしやつている間に余計なことが出て来るのです。その点どうなんですか。
  97. 田中榮一

    参考人(田中榮一君) これは巡査の陳述でございますからちよつと……。「お宅は教官と書いてありますが、どこの学校にお勤めですかと聞くと、東大の助教授でございますと答えましたので、私はたくさんの本があるけれどもちよつと見せてくれませんかと言いますと、都は、快くどうぞ御覧下さいと答えましたので、私は、併し先生の読まれる本はむずかしいでしようねと言うと、都は、ここに置いてある本は大したものではないのです。いい本は田舎に疎開したままになつておりますし、又焼いてしまいました。常に使用しておる本は学校に置いてあります。どうぞ御覧下さい。こう言つたので、実はそのとき奥さんが上に上んなさいと申しませんが、快く御覧なさいと言われましたので、上つて見ることを納得されましたことと思いましたので、書籍の置いてある場所まで、玄関の土間から一尺ぐらい前方にありますので、靴を脱いで座敷に上り込んだまま立つて、いろいろな書籍を並べてありましたので、そのうちの一冊、二冊を取出して表紙をめくつたのであります。」こういうことになつておるのであります。最初御覧下さいと、上つてよろしうございますか。どうぞ御覧下さい。又ここで、どうぞ御覧下さい。こう言つているのですね、本人の言うことには。ですから自分のほうでは、上つて見ろとは、どうぞ上んなさいとは言わないけれども、御覧なさいと言つた中には、自分の靴を脱いで上つて見ていいというように解釈して、実は上つたのだと、こういうことを言つておるわけです。
  98. 亀田得治

    亀田得治君 まあ一つこれ以上は議論になりますから……。ともかく遺憾な事件ですから、一つもう少し擁護局とも十分に連絡をとつて、適切なやはり処置を考えてもらいたい。警視総監のほうは、やはり非常に一方的だと思います。今日のお話は……。で、局長のほうは、まあ三人お調べになつているのですから、まあこの三人しかないわけですからね、証人といえば……。だからこの三人の言をどのように解釈するか、これが問題であります。警視総監のほうは、その三人のうちの一人しか根拠にされておらないわけですから、非常にやはり片手落ちが、一応なきにしもあらずだと思うのですね。そういう点、一つ十分御注意願いたいと思います。
  99. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 他に本件について御質疑ございませんか……御質疑がございませんければ、本件についての質疑はこれを以て終ります。   —————————————
  100. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 裁判所書記官等俸給調整についての最高裁通達に関する件について磯崎最高裁総務課長が見えておりますが……、亀田君。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 これも少し緊急を要する案件でありますので、本日若し御報告願えるようであれば、して頂きたい。若し御準備の都合があれば、追つてでも結構なんですが、この司法関係のこの労働組合、職員組合ですね。これに対して、この組合を脱退することを条件にして昇給をさせる。こういうふうなことが、今労働組合の中で非常に問題になつている。で、これについては、まあこれは抽象的に申上げては、いろいろな間違いもあるわけですが、憲法上のこの団結権の問題、それからもう一つは、そういう問題に関連して、大蔵省が司法当局に対して、そのような何か条件を、まあ強制したというわけでもないでしようが、強硬に何か希望を述べたというようなことも、影響しているようにも聞いている。これは両方とも非常に重要な問題を含んでいると思いますので、一体この間の経過なり事情がどのようになつているのか、又その結果がどのように出ているのか、こういう点について一つ、詳細にお伺いをしたいと思うのです。
  102. 磯崎良誉

    説明員(磯崎良誉君) 只今亀田委員からお尋ねのございました裁判所書記官を含みますところの裁判所職員の号俸調整の問題は、非常に重要な問題でございまして、最高裁の当局といたしましても、慎重に検討いたしている段階でございます。ただ、考え方の基本は、飽くまでも裁判所職員の利益ということを本意として、ものごと考えて行きたいというふうに考えておりますとは、申上げられると思うのであります。この問題に関しまして、裁判所職員の間には、賛成、反対の両方の意見がございますようでありますし、又司法部の職員組合は、昨日と本日、全国の大会を開きまして、この問題を討議いたしているようでございます。毎年この職員組合の大会のあと、組合の幹部諸君と事務当局の責任者との間で、いろいろ問題につきまして協議懇談をいたしますが、恐らく明日あたり大会を終えて帰京いたしますところの組合の幹部諸君との間で、話合があろうかと存じております。話合の結果、或いは今まで十分に理解の行つていなかつた点について、双方に理解をし合えて、その結果或いは話が円満に進むといつたようなことも、考えられないものでもありませんので、若し亀田委員のお許しを得られますれば、その組合との懇談のあとの状況におきまして最初からの詳しいいきさつを、所管の人事局長からお答えいたしたいと、かように存じますが、よろしうございますか。
  103. 亀田得治

  104. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 次に、前回検察審査会審査事件の結果等に関して御質疑がありましたので、津田総務課長から説明を願います。
  105. 津田実

    説明員(津田実君) 検察審査会におきまして起訴相当の議決がありました案件についての処理の仕方について御説明を申上げます。  起訴相当の議決がありましたものにつきましては、直ちに当該検事正におきましてその内容を管轄の検事長、検事総長及び法務大臣に報告をいたすことになつております。でその際に、検事正の意見なども付して参ることになつております。一方当該検事正におきましては、直ちに当該事件につきまして関係検察官から事情を聞きますことは勿論であります。更に多くの場合は次席検事或いは上級の検察官をして事件を担当せしめまして更に捜査をいたすわけでございます。でその結果に基きまして判断をいたしまして起訴手続をとる、或いは従来の不起訴の意見を維持する、かようにきめるわけであります。その間におきまして検事長或いは検事総長、つまり最高検察庁或いは法務省は最高検察庁を通じましてこれらに対して意見を述べることは勿論ございます。或いは指示をいたす場合もあるのでございます。  而して今までかような事件につきましての検察庁側の態度といたしましては、勿論検察審査会の議決を十分尊重いたしますと同時に、その議決のよつて来たる内容を詳細に検討いたしまして捜査の資料といたすわけでありまするが、従来の実績に鑑みますると、その処理状況は次に申上げる通りになつております。即ち、検察審査会発足の昭和二十四年二月以来昨年末までにおきまする全国検察審査会の総受理件数はすでに説明があつたかと思いますが、四千二十三件でありまして、そのうち起訴相当の議決のあつたものは五百六十件であります。でこの五百六十件につきまして検察庁におきまして再検討の結果起訴相当の議決を容れまして、従来の不起訴の見解を翻えしまして起訴手続をとりましたものが百二十六件で、これは起訴相当の議決に対しまして約二二%になるわけであります。而もこの起訴手続がとられました百二十六件につきましてその裁判結果を検討いたしますると、有罪の判決があつたものが八十件、無罪の判決があつたものが二十三件、かように相成ります。更に細かく申上げますると、まだ未決のものが二十三件、こういうことになつております。起訴件数百二十六件に対しまして無罪の件数二十三件と申しまするのは約一八%になるわけであります。無罪の率が一八%になる。ところが全部の件数の、検察庁の起訴いたしました件数に対しまして最近数年間の無罪の比率は最高の年で〇・五%、更にこの検察審査会の起訴相当議決のありました事件の有罪判決結果を見ますると、そのうち二千円以下の罰金にとどまつたものが十一件、そのほか罰金が十一件、六箇月以下の懲役で執行猶予を付されたものが十件というふうでありましてその三分の一は有罪判決と申しましても非常に軽い刑に相成つている次第であります。  で、かような事実から見まして、この議決を尊重いたしまして起訴いたしましたものにつきまして非常に無罪率が高いという結果を来たしておりまするのは、検察審査会の議決そのものについていろいろ問題があるかと思うのでありますが、勿論検察審査会そのものは十分その職権において議決をされることは間違いないのでありまするけれども、これらの点から鑑みまする場合、いろいろ証拠法に対する見解の違いだとか或いは理解の違いというようなものとか、或いは一般に起訴の標準と申しますものが、一般事件の場合相当選択されておるということについてのやはり経験のない人々が多いのでありますが、これらの点に対する見解の違い、即ちまあ加罰性に対する過大な評価といいますか、そういうものに、基くものかと考え得る点があるのでありますけれども、いずれにいたしましてもそのような選ばれた検察審査員がそのように議決をするに至つたという点につきましては、検察庁側でも考慮いたしまして、事件の処理をいたしておる次第でございます。
  106. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 御質疑ございますか。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 昨日お尋ねしたのは、審査会が起訴すべきものと決定したけれども、約七〇%余り検察官は採用しておらんわけですね。その事情をお調べになつておりますか。これを実はお聞きしておるのです。その内容をお調べになつたことがあるか。  それからもう一つですね、この審査会を通つて起訴された者が無罪になつたものが相当あるとか、或いは有罪になつたものとしても非常に判決が軽いとか、検察官が何かいやいやで事件を扱つており、そういう結果が一つはこういうことになるのじやないか。どうも俺のほうは積極的じやないんだが、あの諸君があんなことをきめるというような、そういう点があるのじやないか。そういうことは想像できますよ。それではこの前問題になつたように審査会の本当の意義がなくなるので、これはどういうふうにお考えですか。二つに分けてお答え願いたい。
  108. 津田実

    説明員(津田実君) 只今御指摘の点でございますが、これにつきましては勿論先ほども申上げましたように起訴相当の議決がありまして、その内容、それについての経緯検察官の意見等をあらかじめ報告して参つております。それに対して勿論上級検察庁或いは法務省において、その内容を全事件に亘つて検討いたしておることは、勿論、更に処分をいたします場合におきましては、その処分に至つた経緯並びにその処分の理由をやはり検事長、検事総長、法務大臣に報告してもらいます。それによりまして勿論首肯し得べきかどうかということは、当然判断いたす、上級官庁で判断いたしておるわけでございまして、この点につきましては、すべての報告書が中央に参つております。それによりまして検事正の処置或いは検察官の処置が相当であるかどうかということは、常に中央において審査をいたしておる次第でございます。  それからこの検察審査会の第二の問題につきましては、検察審査会の制度そのもので、検察官が不起訴の処分をいたしました場合に、それが相当でないと思われる場合におきましては、それにつきまして審査会は独自の職権によつて意見をきめて検事正に通告する。かようなことでございます。もとよりさような他の違つた機関の通告によりまして、十分そのよつて来たるところを検討して、起訴すべきか否かを判断するべきものであることは、当然のことと考えます。又今までの運用におきましても、さような点は十分考慮されておることを確信いたしております。ただまあ気分の上でいやいやであるかどうかというような問題がございますが、これはしばしば検察審査会そのものについていろいろの意見があるわけでございますが、法務省或いは検察庁におきましては、当然これは恒久的に存置すべきであり、かような意見は常にこれは聞かなければならないという意見がしばしば出されております。その点いやいやこの議決の通知を嫌つておるというようなことはないと言い得るのであります。併しながら検察官も一個の職権を持つており、自己の最も信ずるところによつて判断をいたさなければならない職責を持つておるわけでございますが、審査会の議決につきましては、十分反省をして、そのよつて来たるところを検討しなければなりませんが、検討いたしました結果、なお且つ不起訴の意見を維持すべきであると確信いたしました場合におきましては、これはやはりそのまま不起訴を維持するのが検察官の当然の職権であり、又責務であるというふうに考えられるわけでございまして、検察審査会もさような趣旨にできているものと解釈いたします。従いましてそのような態度で検察庁は臨んでおるのが従来の運用でありましてその点はここにはつきり申上げられると思うのでございます。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 どうも質問と答弁がぴつたり合わないのですが、こういうふうに聞きます。それじや検察審査会で起訴すべしと決定したもののうち、約七六、七%が起訴されておらないわけです。検事はその検察審査会の意見に従わなかつたわけですね。それは正しいと、それで全部が正しいかどうか知らんが、十中八九までその処分が妥当であつた、こういうように判断されておるのですか。そういうふうに端的に一つ結論だけ聞きましよう。
  110. 津田実

    説明員(津田実君) 法務省といたしましては、その間の事前の報告、事後の報告を検討いたしました結果、その処分は、さような処分は妥当であるというふうに考えております。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 その判断は事件の抜き書きのようなものじやなしに、一件一件について記録をお調べになつて出された判断ですかどうか。
  112. 津田実

    説明員(津田実君) 中央におきまして、一件々々事件の記録を見ていることはいたしておりません。まあ一般検察庁の場合におきましても、勿論記録を見る場合もございます。記録を見ないで下級検察庁の報告或いは重要部分の資料等を見まして、判断いたす場合も多いのでございますから、その点は大体それと同じくらいの程度で一件一件全部記録を見ているわけではございません。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 そこが重大なんですよ。それでは丁度先ほどの警察官の行為を警視総監が擁護するような恰好になつちやう。やはりこの民間の正義感というものはこれは起訴すべしとこう出しておるのなら、具体的なやはり理由というものがあるのですよ。恐らく。これが年間を通じて僅か六、七十件のもんでしよう。六、七十件ですから、そういう例外的な処分なんですから、それを採用しないということは、これは一件々々の記録を調べても、そんなに私は手間でないと思う。専門家がずつと見れば……。それをされないでどうもおやりになつておるようですね、今の答弁ですと……。私それは非常に怠慢だと思うのですが、従つてその先ほど大体結論は妥当とおつしやつておるのは、どうも私必ずしも妥当でないと思うのですが、どうお考えになりますか。
  114. 津田実

    説明員(津田実君) その点勿論御意見御尤でございまして、一々記録を検討して、更に中央において或いは検察庁において検討するというようなことも、勿論万全の措置として或いは考え得るところかと思います。それらの御意見につきましては十分検討いたしまして考慮いたしたいとかように考える次第でございます。
  115. 中山福藏

    中山福藏君 ちよつと関連してお尋ねしておきますが、五百余件のこの審査請求に対して百二十有余件ですか、起訴されたというのが……。そのうち有罪になつたのは八十件、こうなつておると、無罪になつたのは二百三十件とおつしやいましたね。そうすると、一応察検官が不起訴にしたものを、素人の審査委員が起訴すべしということにして、そのうちの八十何件有罪になつたということになれば、若し審査会がなければ八十何件というものは有罪の判決を受けないということになりますね。本質的に……。若し審査会がなければこれはその被告は罪を犯しながら何も処罰されないということになつて、結局素人との頭のほうが検察官より場合によつてはこの通りよく、審査の力もあるのだということを如実に示しているというような感じも、或る意味において受けるわけですね。だからこれは丁度石炭の燃えかすを更に戦時中に拾つて、いろいろな炊事をやつたというようなもので、かすでもやはり役に立つ、いわゆる検察官の調査洩れでも、ときにはこういう有罪になるべきものがあるのだということがはつきりわかつて来ると思うのです。その意味において私はやはりこの審査会というようなものは重要な役割をするものと私は考えておるわけなんですが、そういう不起訴処分をせられた検察官、而も不起訴処分に一応なつた事案を取扱う検察官、その人はそういう不起訴処分にしたということについては何も責任はないわけですか。そういう点をどういうふうにお取扱いになつておるのですか。そういうふうな検察官のいわば有罪になるべきものを不起訴にしたというのですから、粗漏な取扱いをした検察官については、やはりそれはそのままで放置しておくということになつておるのでしようか。法務省としてはどういうことになつておるのですか。
  116. 津田実

    説明員(津田実君) 只今御指摘の点でございますが、検察庁が受理いたします事件、つまり警察から送致いたして参る事件、その他検察官がみずから認知するところの事件につきまして、それを検察官は全部に亘つて捜査いたしますが、併しながら捜査の結果犯罪事実が認め得るといたしましても、起訴猶予という処分にする事件が非常に多数に上つておりますことは、その率を只今はつきりしたことは申上げかねますが、勿論起訴事実の中で、事件の中で起訴される事件よりも起訴猶予ということになる事件のほうが多い。従いましてここに起訴手続がとられまして有罪の判決を得た事件と申しまするのは、裁判所は一旦検察官が起訴いたしますと、如何にこれは起訴猶予の範囲に該当する軽微な事件だと申しても、有罪の判決をいたさなければならん。従いまして有罪の判決という結果になりまして、これは要しまするに勿論検察官は間違つたという、起訴猶予の処分をすべき情状がないのに、起訴猶予に付したというような事件も無論ないとは申上げませんが、併しながら私ども中央で見ておりまするものといたしましては、起訴猶予にする標準が一般の方々と検察官と違うという結果から起つたものが殆んどであるというふうに考えておるのでございます。
  117. 中山福藏

    中山福藏君 ちよつとついでにお尋ねしておきますが、そういうようになつ事件に対する審査会の、不起訴処分に付されたものに対する審査会の取扱つた件数と比率はどういうふうになつておりますか。
  118. 津田実

    説明員(津田実君) その不起訴処分と申しますのは、起訴猶予も含まつておるのでございまして私どものほうで申しますると、不起訴処分の中に起訴猶予と、その他のものがある、その他のものというと、例えば時効にかかるとか、或いは法律では罪とならないものとか、そういうようなものは或いは犯罪の嫌疑がないもの、こういうようなものの全部を含めて不起訴になりますが、不起訴処分、そのうちで犯罪事実は認めますが、情状等を参しんして今回は刑を科する必要がなかろうということで起訴猶予もございます。その比率につきましては今ちよつとはつきりした数字は申上げかねます。
  119. 中山福藏

    中山福藏君 私のお尋ねするのはそこなんです、起訴猶予とはつきり不起訴にすべきものと、その比率はどういうふうになつておるかということをお尋ねしたわけですが、おわかりにならなければこういう審査会の問題として相当注意を払うべき問題だと思うのですが、結局ここには不起訴処分に付された起訴猶予は別としてはつきりと不起訴処分に付されたうちでも有罪になるやつははつきりわかるわけです。そうすると結局それだけ検察官の取調べが粗漏であるということの焼印を押されることになるのではないかと思います。判決の結果はつきりしておるのではないかと思うのです。そうすると検察官としては一つの責任というものがそこに生れて来るのではないかと私は考えるのですが、その意味において検察審査会というものは誠に通俗的ではあるが必要である、こういうふうになりますと、審査会の使命はどういうふうにして活かすか、その使命並びに運営をどういうふうにして巧妙にやつて行くか、並びにこれを一般に如何に周知せしめるかということは、これは検察当局は勿論として、裁判所としても相互援助的な立場において国民一般に知らしめる必要があるのではないかと思うのです。実際に三百有余の審査委員会が各地にありまして、その総合的な統轄委員会というものは日本の審査会にはないわけです。これは一つ裁判所と御相談をなさつて連合会を一つおこしらえになつて、やはり中央に統轄機関というものをこしらえて、そうして審査会の意義というものを国民に徹底せしめるということが必要ではないかと思うのですが、そういう点について裁判所とも一つ御協議になつて、おやりになる勇気はないのですか。それを一つ最後にお尋ねしておきたいと思います。
  120. 津田実

    説明員(津田実君) 現審査会法に改正すべき点ありやなしやという点につきましては、従来最高裁判所事務当局としましても研究中であります。法務省におきましても研究中であります。従いましてそれらの問題、今御指摘の問題につきましても研究問題としてそれぞれで研究するのは至当だと思いますが、法務省におきましても勿論研究しております。
  121. 一松定吉

    ○一松定吉君 不起訴処分にしたときに昔は抗告という手続をやつたね。今検察審査会ができてもその手続はあるのだね、今僕はちよつと見ないが……。
  122. 津田実

    説明員(津田実君) この前の裁判所構成法にはその規定はございました。只今御指摘の通りでございます。裁判所構成法が廃止になりまして、裁判所法検察庁法にわかれたのであります。検察庁法におきましては、明文の規定としてはさような規定はおいておりません。併しながら実際問題としていろいろ上級官庁に申告等がございますので、ございました場合には、高等検察庁或いは最高検察庁、或る場合については法務省におきまして必ずその申告の内容について検討をいたして、相当の指示をいたしております。
  123. 一松定吉

    ○一松定吉君 裁判所構成法のときにも検事の不起訴処分に対する抗告をなすことができるという規定があつた。それは検事の取扱について公正な措置をしなかつたのがいけないということで、いわゆる不服の申立の意味において上級検事局に向つて抗告するという手続が行われたのだが、裁判所構成法の規定が廃止せられたとしても、その手続はやはり今もできるのではないかね。
  124. 津田実

    説明員(津田実君) 法律の明文はございませんが、事実上は勿論やつております。ですから、申告がございました場合に、その内容を検討し或いは原処分検察庁を調査し、適宜の処置をとるということをいたしております。御承知の通り不起訴処分は何どきでもこれを取消して起訴し得るわけでありますから、その点につきましては誤つておれば、勿論後に直すということは当然いたしております。
  125. 一松定吉

    ○一松定吉君 法律規定がないができるなんということはちよつと考えられないが、法律規定に取扱わせるという規定がないのですから、下級の検察官のやつたことに対して、これは不穏当であるというので是正さすべく、それを指揮監督する立場にある上司に向つて、そのやり方が不都合だからと言つて是正を求める意味の申立、即ち抗告というようなことで、法律がないけれどもするということになつて来ると、そんなものは取り上げんでもいいというようなことになりますけれども、それはどうなりますか。
  126. 津田実

    説明員(津田実君) 法律の明文に準拠いたしましての抗告という形のものは、勿論それはそういう形式を持つた書面でされる場合もあり得るかと思いますが、それにつきましては一応の審査を事実上いたしておる。併しながら法律上審査すべしという規定は勿論ございません。そういうことを今申上げたわけです。
  127. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうなると君、その下級の検察庁の人の不起訴処分に対してやつたことは、権能のない、法律規定のないことをやるんだから知らん、放つたらかしておいても仕方がないと……。私の言うのは、そうではない、下級の検察官のやつたことは、これは告訴若しくは告発事件について正しいやり方でないんだから、その間違つたやり方を是正するために、いわゆる上司の監督の発動を求めるという意味の抗告だ、こう見れば、監督権の発動を求める意思表示だとすると、やつぱり権利があることになる。それが、権利がないんだけれどもそれに準じてやるというようなことになると、何か準拠すべき法文がなければできないが、そんなことになると不起訴に対しての是正を求めるための告訴、告発人の意思表示ということは何らの価値がないことになる。そんなものじやないと思うが、それはどうですかね。あなたの言うようなことは、法律に何もなければない、ただ準拠すると、それでは準拠するについての法律規定がなければ準拠できないんだが、そうでなくて、いわゆる下級の検察官に対しては上級の検察官が、いわゆる検事一体の原則からして、指揮監督権があるんだから、こういう間違つたことをしてはいかんからその間違いを是正すべく言つて下さい、下級検事に命じて下さいということを、監督権の発動を求めるという意味において、それが抗告という形において現われるんじやないかと、こう聞くんだよ。元の裁判所構成法のときもそういう意味でやつてつて、抗告することを得という規定はありやしませんよ。
  128. 津田実

    説明員(津田実君) 只今御指摘の監督権の発動を求める意味の申告と申しますか、それは如何ような形でもできるわけでございます。それに対しては当然監督権を発動しなければならない……。
  129. 一松定吉

    ○一松定吉君 そのいう解釈なんです、私は……。そこでそれはできるとして、この検事が民間から告訴、告発すると、これは非常に、現行犯とか或いは検事の認知の事件が多いためでもありましようが、近頃なかなか告訴、告発といつた事件は容易に着手しないね。これは何ですか、何とかの方法によつて、検事の活動の機構を定める、これは現行犯係り、これは検察庁の認知係り、これは告訴係り、告発係りというようにして、それぞれ責任を持たしてやれば、告訴したんだから、告発したんだからといつてつたらかしするということはないように思うんだが、そういう点についてはどう考えていますか。
  130. 津田実

    説明員(津田実君) 大検察庁におきましては、直告係りと称しまして、直接告訴のあつた事件につきましてそれぞれ検事を置いております。東京には現に数名おります。併しながら非常に小さい検察庁におきましては、それほどまでに参りませんので……。でありますが、大体そういう事件につきましては主として議のある比較的上級の検察官に当らしめておるという大体の方針をとつております。
  131. 一松定吉

    ○一松定吉君 只今あなたの言われるのはどうか知らんが、とにかく告訴、告発事件については民間からやつたものはどうも捜査の手が伸びないで、いつまでもいつまでも、長いやつは二年も三年も放つたらかして、懐ろの中へ入れておるというようなことがあるんです。これは一つ御注意を願いたいと思つているんですが、あなたにお願いするのは無理かも知らんが、法務大臣からでも、或いは検事総長からでもそういうようなことについて、一応やはり部下の検察官に向つて御注意をなさつておくということが私はいいと思いますから、これを御参考のためにお願いしておきます。  それから、その告訴、告発したやつに対して、この告訴、告発人には、これは起訴の価値がないんだ、不起訴にするんだというようなことで、必ずこれは通知の手続をとつておりますか。それはとつておれば今言う通り、俺の告訴したのはこれは不起訴になつたが、この不起訴はよくないから、それでは一つ検察審査会に出ようというようなことになれば、この検察審査会というものが活動ができるようになるんだが、それを不起訴にはしたけれども、そのまま放つたらかしてあつたということになつて来ると、検察審査会に向つて活動を要求する機会を見出すことができない。ということになると非常に権利の伸張を阻害されることになるんだが、その点はどうですか。
  132. 津田実

    説明員(津田実君) 告訴事件につきましては全部処分通知をいたしております。告発事件につきましては要求がある分につきまして通知をいたしております。
  133. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういうときに、これは検事のほうでは痛手になるかも知れんけれども、この不起訴事件に対しては、お前さんは検察審査会に不服の申立ができるぞというようなことを、何か印刷してやつたらば非常にいいと思うが、そういうことまで考えていませんか。それは非常にいいことだよ、やるべきことなんだ。それはどうです。それはやつていないが、これからやるようなお考えはないんですか。まあやつていないことはわかつているが、検察庁は非常にそれは痛い手なんだね。まああなたは検察庁じやないんだから、そういうことについて一つ考えつて、強いてお答えは要りませんよ。そこまで一つ考えてやればこの検察庁の検察審査会というものは非常に効力は有効適切になつて民衆も成るほどこれは検事の不起訴に対してはこういう救済法があるかということでやれるし、又検事も、検察陣も俺の不起訴がかけられては困るからというので丁寧にやると、非常にいいことになるんですが、これは一つ考えつておきたい。
  134. 上原正吉

    上原正吉君 関連して……。この判決を送達する場合にはいつまでに控訴ができるということを付けるというふうなことをやつておるんでしよう、どうですか、素人だからわかりませんか……。
  135. 津田実

    説明員(津田実君) 不起訴の通告をいたした場合ですか。
  136. 上原正吉

    上原正吉君 いやいや判決を送達した場合に、言渡した場合に、この判決に対して不服ならば控訴ができるとか……、いつまでにやれば控訴ができるということを言添える必要があると私は思うんですが、そういうことをやつておるんだと思いますがどうなんです。
  137. 津田実

    説明員(津田実君) これは刑事事件の判決についてという前提でいたしますと、勿論告知いたしております。それから略式命令の場合につきましても、不服の申立をする途、その期間を書いたものは、当然一緒に中に入つておるものと一体をなしておる命令書になつております。
  138. 上原正吉

    上原正吉君 そこで私は不起訴処分については、この処分に不服ならば検察審査会に再審を願うことができるということの手続をやるのが法律運用の慣行であつて然るべきだとこう考える。そうでなかつたら、そういうふうに法律に定める必要があれば、提案をして頂いて、そういうふうになるのが本当の民権を保障する途だと、或いは又人権をそれから民権を擁護する途だとこう考えるわけですが、お考えは如何でしようか。
  139. 津田実

    説明員(津田実君) それらの点につきましては、検察審査会改正の際に考慮いたしたいと思いますが、なお事実問題としてもやり得る事柄でありますので、考究いたしたいと思います。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 告訴の事件のことが随分出ますけれども、これは随分いろいろな現在の取扱いに欠陥がありますよ。例えば告訴を取上げるとも取上げないとも何も言わないのがある。そしてあれはどうなつたのかと聞きに行きますと、いやまだやつているんだ、こういうことなんです。蛇の生殺しみたいですね。こういう行き方があるのだな。検察庁のこれは一番ずるいやり方だ。取上げないとも言わんから攻撃もできないし、それかといつて審査会へも持つて行けない。それじやすぐやるのかと思うと、すぐ進めることもない。そうすると、ああいうのはすべて時期があるのですね。本人自身は余り時間が経つと自分のほうで気が抜けてしまう。大体気が抜けてしまつた頃に、人の目に付かんようにそうつと検察庁のほうで処理してしまう。こういうことが相当やはりありますね。だから私もこれを機会に告訴事件の取扱い方というものをもう少し検討してもらう必要がある。  もう一つ、さつき一松先生のお答えに対して大きな検察庁では直告係を設けて決して粗漏にならないようにやつていると言いますが、これはお調べ願いたいのですが、大阪の地検では今までは直告係を別に設けていたのです。ところが最近直告係を廃止したはずです。廃止してすべての検事に告訴事件幾らかずつ割当る。今までは直告係に五、六人おられたようですが、そこべ何十件、何百件来ても告訴事件を持ち込んだわけです。ところが今度はあの制度を廃止されたように私は聞いたのです。あなたのさつきの答弁と非常に違いますからね。私こういうことに例えば大阪の地検がなりますと、全部普通の事件をやつている各検事に幾らかずつ公平に渡るわけですから、結局このやつはみんな後廻しになつてしまう。そうしていわゆる警察を通つた事件だけが優先的に……、絶えず事件がこう輻輳するから結局そういうふうになる虞れがあるのですが、今までは幾らかでも直告係があれば、仕事を片付けて行くわけですが、こういうふうになると、ますます告訴、告発というものは余り問題にせんことにしよう、そういうふうな方針じやないのですか。この審査会の事務官を減らしたり、どうもいろいろなことを考えるとそういうふうに思うのですがね。そういうふうに方針をきめているのじやないですか。
  141. 津田実

    説明員(津田実君) 大阪の件につきましては御指摘がありましたが、一応調査いたしますが、これは検察庁内部の編成で、できるだけ早くあらゆる事件を、つまり未済を処理しなければならんということで、いろいろ当該検察庁の幹部が苦心いたしておるわけでありまして、そのことからいろいろ編成替をやるというようなことをやつております。殊に東京地検の場合におきましては、現在においては、なかなか人の関係事件が思うようにはけないというようなこともあり得る。これは検察官の数の問題にも非常に関係いたしますので、現在におきましては昭和五年乃至九年の検察官の数の比率と余り違わない比率を以て、当時の件数の数倍に当る事件を処理しておるというような状況でございますので、勿論一般の民衆のいろいろ要望については副いがたいような結果が不本意ながら起つておるということはあり得ると思います。いずれにいたしましても、未済事件の未済期間でございますね、受理してから処理するまでの期間がありまして、常に統計表等によつて監督官がにらんでおるのが殆んどすべての状況でありまして、未済期間の長いものにつきましては、それぞれ個々に注意を与えておりまするので、できる限り早く処理するようにいたす方針は勿論変つておりません。具体的の人の係の編成につきましては、当該検察庁の具体的の事情を聞いて見ませんと、何ともお答え申上げかねます。
  142. 一松定吉

    ○一松定吉君 議事進行で一つ……。私はこういつた一つ動議を出したいのですが、今亀田君のお聞きいたしましたいわゆる告訴、告発の事件に対する検事局の捜査というものは、殆んど等閑に附されておる。それは今亀田君の言うように、若しくは津田説明員のお答えになつたように直接の告訴、告発係というものをこしらえてやつて行けば、その事件自分に割当てられておりますから、自分の責任ではしからはしまで処理する。そうして警察から送致された事件と同じように皆んな平等に割当てられますと、その告訴事件は皆んな放りこんでしまつていると、それが半年なり一年経つてしまうというようなことで、それが結局非常に事件の停滞を来す原因なんです。でございますから、この処理の問題についての政府当局の意見と並びに検察審査会に対して告訴、告発した人が不起訴処分に対する不服の中立のできるような方法を、これは法文に一条そんなものを入れさえすればできるのですから、そういうことをするために、検事総長並びに検事正、これを一つここにお出でを願つて、そういう意見を一つ交換する機会を作つて頂きたいということの動議を提出いたします。それは確かにいいことです。
  143. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 御趣旨承わつておきます。
  144. 一松定吉

    ○一松定吉君 皆さんが御賛成でありますれば……。そういうことをやれば、今の検察審査会の活動もできますし、それから又検察官も告訴、告発に対してなおざりにするということもできないし、非常に私はいいと思うからして、これは皆さんにお諮り下さつて、よかろうということであれば、委員長のほうで適当な方法によつて、この係官は検事総長なり検事正がよかろうと思いますが、係官を一つ御喚問賜わりまして、そういうことの一つ審議をやつて頂いたらいいと思います。
  145. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 御趣旨は皆さんの御異議のないところと存じます。あとで政府側とよく相談をいたします。民事訴訟法の一部改正法案については民事局長がおいでになつておりますが、如何いたしますか。
  146. 亀田得治

    亀田得治君 それからもう一つちよつとそれに入る前に検察審査会の人の整理の問題ですね、これはどうもやはり不適当と思うのです。で、予算措置等にも大した影響がないように聞くのです。この点は一つ考慮してもらいたい。そうしてじやどういう方法でその点を処理するか、これは私が内閣委員長から聞きますと、部分的な問題としては単に法務委員会だけじやなしに、農林委員会、あつちこつちにやはりあるそうです。そういつたようなのはやはり各部署共釣合をとれたやり方で当然これは処置すべきものじやないかと思うのです。だからそういう意味一つ委員長のほうから代表して内閣委員長のほうに一遍折衝をしてもらいたい。その間の結果を又お聞かせ願えば、私どもとして適当な処理の方法が出て来るだろうと思います。これは一つ要望しておきます。
  147. 郡祐一

    委員長郡祐一君) これは委員各位の間に定員法の審議は一応前回で終了いたしましたが、その後は修正をなさるか、あのままで行くかの御意見があろうかと思います。従いまして皆さんの御意向に従つて行動はいたしますが、これは委員各位においてもどのように扱うかを一つ考えおき願いたいと思います。政府側のほうには毎回定員法を修正いたしますときには、果して予算上差支えないかどうかという点で当該の主管省と大蔵省の意見の違うような場合もありますので、この点は政府側においても一つ一応支障はないかといつた御答弁は過日ございましたが、その点は政府側においても裁判所側と御研究を十分しておいて頂きたいと思います。これを私からお願しておきます。
  148. 一松定吉

    ○一松定吉君 それから民事訴訟法の一部改正につきましてこれは公聴会を開くのですか。
  149. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 民訴につきましては、過般参考人を呼びましたので、このあとに秘密保護法について公聴会を開きたいと思いますので、若し参考人が先般の参考人で不足でありますれば、参考人を更に呼びますことは考えてよろしいと思いますので、公聴会は例の広告をいたしましたり、何かの手続が大分暇どりますので、公聴会は大体秘密保護法だけについていたして、参考人の形で民訴のほうは進めて参りたいと思います。
  150. 一松定吉

    ○一松定吉君 結構です。それで結構ですから、参考人ならば最高裁の民事の係りと、それから地方裁判所若しくは高等裁判所の民事の係りと、それと弁護士会と、それと訴訟上に対する学界の権威者この四人ぐらいの一つ意見を聞いてこれはやはりやるということは私はいいと思うからこれは一つ考えを願つておきます。
  151. 郡祐一

    委員長郡祐一君) さような意味合いで先般の最高裁の小林俊三さん、それから高裁の斎藤さん、それから教授の菊井さん、それから弁護士会とこれだけお願いをいたしました。
  152. 一松定吉

    ○一松定吉君 喚んだのかね。
  153. 郡祐一

    委員長郡祐一君) いたしました。ちよつと速記をやめて。    〔速記中止〕
  154. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは速記を始めて。次回は明十六日午後一時から開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十二分散会