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中山福藏君(中山福藏)
○
中山福藏
君 これは第一条のところ、これをうまく巧妙に使いますと、百万円超したのを百万一円超しますと、これを十に分割して十万円それがしというものを十口分に分けて貸しますと
利息
が年に五分儲かるのです。例えばこれは十万円
未満
のものは年二割、そうすると百万円以上の場合には年一割五分ですから、これは一つ話合でこれを十に割
つて
くれ。わしのほうは馬鹿臭いけれども、お前さんを助ける
意味
において貸すんだから、これを十に分けて一つ貸すからということになりますと、二割と一割五分の差金がこれは五分開きが出るわけです、同じ百万円貸すにしてもですよ。そうすると百万円について五万円年に儲かるわけですね。これに対して予防
方法
は講じてないわけですが、そういう場合があるということは思われませんでしようか。私はそういう場合があると思うんですがね。金貸しはかくかく法規の網をどうしてくぐるかということばかり考えるわけですからね。
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1954-04-02 第19回国会 参議院 法務委員会 第15号
公式Web版
参考人の出頭に関する件 ○利息制限法案(内閣送付) (会議録情報)
0
昭和二十九年四月二日(金曜日) 午後二時五十七分開会
—————————————
出席者
は左の
通り
。
委員長
郡
祐一
君
理事
上原 正吉君
委員
小野 義夫君 加藤 武徳君 楠見 義男君
中山
福藏
君 三橋八次郎君 棚橋 小虎君
政府委員
法務省民事局長
村上
朝一
君
大蔵省銀行局長
河野 通一君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 真道君
—————————————
本日の会議に付した事件 ○
参考人
の出頭に関する件 ○
利息制限法案
(
内閣送付
)
—————————————
委員長(郡祐一君)(郡祐一)
1
○
委員長
(
郡祐一
君)
只今
より
委員会
を開きます。 先ず
参考人
より
意見聴取
に関する件についてお諮りいたします。一昨日の
委員長
及び
理事打合会
におきまして、
裁判所法
の一部を
改正
する
法律案
及び
民事訴訟法等
の一部を
改正
する
法律案
の両案につきまして
参考人
より
意見
を聴取いたすことを申合せておりますが、両案につきまして
参考人
の
出席
を求め、
意見
を聴取いたすことに御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり]
委員長(郡祐一君)(郡祐一)
2
○
委員長
(
郡祐一
君) 御
異議
ないと認めます。 なお、
参考人
の数、
人選
、
意見聴取
の
日取り等
は
便宜委員長
に御一任願いたいと存じますが、御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
委員長(郡祐一君)(郡祐一)
3
○
委員長
(
郡祐一
君) 御
異議
ないと認め、さよう取計らいます。大体
只今
予定
しております期日は、八日来週の木曜日に行いたいと思います。又その
範囲
は、
裁判
官二名、弁護士一名、
学識経験者
一名、このような
範囲
でそれぞれの
機関
に
人選
を依頼し取計らいたいと存じております。 なお、念のため申しておきまするが、六日、来週の火曜日に
秘密保護法
について
外務委員会
と
連合委員会
を開く
予定
にいたしております。
—————————————
委員長(郡祐一君)(郡祐一)
4
○
委員長
(
郡祐一
君) これより議案の
審査
に入ります。先ず
利息制限法案
(
予備審査
)を議題に供します。
村上民事局長
より
内容
についての御
説明
を願います。
ちよ
つと
速記
をやめて。 [
速記中止
〕
委員長(郡祐一君)(郡祐一)
5
○
委員長
(
郡祐一
君)
速記
を始めて。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
6
○
政府委員
(
村上朝一
君) 先ずこの
法案
の大要につきましては先般
提案理由
を御
説明
申上げました際に申上げてございますので、本日は逐条について御
説明
を申上げたいと存じます。 第一条でありますが、本
条は現行法現行法
の第二条に代わる
規定
でございます。
現行法
の第二条は「
契約
上ノ
利息トハ人民相互
ノ
契約
ヲ
以テ
定
メ得ヘキ所
ノ
利息ニシテ元金
百円
未満ハ
一ケ年
ニ付
百分ノ十五百円以上千円
未満ハ
百分ノ十二千円以上百分ノ十以下トス若
シ此限
ヲ
超過スル分ハ裁判
上無効ノ
モノトシ
各
其制限ニマテ引直サシムベシ
」とございます。このように
元本
を百円
未満
、百円以上、千円
未満
、千円以上の三
段階
に分けまして、
利息
の
最高限度
をそれぞれ一割五分、一割二分、一割と定めておりますが、この百円、千円を以て線を引きました
元本
の
区分
は、明治十年に
太政官布告
として制定されましたとき以来変らない
区分
でございまして、現在の
貨幣価値
から見ますと、甚だしく不合理なものとな
つて
おるのであります。又
利率
の
最高限度
は、
大正
八年にこの
法律
が
改正
になりますまでは、二割、一割五分、一一割二分の三
段階
であ
つたの
でありますが、
大正
八年の
改正
以来現在の
通り
改められておるのであります。現在の
経済情勢
から考えますと、すべての場合に通ずる
貸金
の
利息
の
最高限度
としましてはやや妥当を欠くのではないかと思われるのであります。かような点が
現行法
のこの
太政官布告
という古めかしい体裁及び
条文
の
表現
と相待ちまして、とかく
利息制限法
を軽視する
傾向
をもたらした一つの原因にな
つて
おるのであります。 そこで
元本
の
区分
及び
利率
の
限度
をそれぞれこの案にありますように改めようとするものでありますが、
改正案
におきましては、十万、百万の線で
元本
を
区分
いたしまして、
利息
を二割、一割八分、一割五分と改めておるわけであります。この
元本
を十万、百万のところで線を引きましたのは、必ずしも
貨幣価値
の比例のみによ
つたの
ではございませんので、いわゆる
庶民金融
と称せられるものの
実情
なり、
金融機関
による
貸出金利
の
取扱い方針
、
基準等
を参酌いたしたわけであります。
利率
は
正規
の
金融機関
による
貸付金利
の
趨勢等
を考えまして、現在におきましては、すべての場合に通ずる
最高限度
としては年二割、一割八分、一割五分程度を相当と考えたのであります。
現行法
におきましては、先ほど読みました
通り
、
限度
を超える
部分
の
利息
を
約定
の
裁判
上無効ということにしております。
裁判
上無効と申しますのは、
裁判所
においては無効のものとして取扱われるが、
裁判所外
では無効ではなくて
裁判所外
で
債務者
が任意に
支払
つたときは、その取戻しの
請求
ができないという
解釈
が多年の
判例
とな
つて
おるわけであります。尤も学者の多くは、この
裁判
上無効というのは、
法律
上無効というのと同じ
意味
であるというふうに言
つて
おるのでありますけれども、かような
学説
上
疑義
のあります
裁判
上無効という
表現
を使うことを避けまして、
判例
の
解釈
しておりますような
裁判
上無効と同じ
効果
を認めようという
趣旨
で、第一項におきましては「
超過部分
につき無効とする。」、第二項において、任意に
支払
つたときは、返還の
請求
ができないということにした次第でございます。従いましてこの第一条は
元本
の
区分
及び
利率
の点を除きましては、
現行法
の第二条と
趣旨
が異ならないわけでございます。この
利息
の
私法
上の
制限
につきましては、いろいろな
考え方
があるわけでありまして、
貸金
の
利息
というようなものは、これは本来
経済法則
によ
つて
きまるものであ
つて
、これを
法律
を以て
制限
しようとしても
実効
は期待できない。
契約
自由の
原則
によ
つて当事者
の
自治
に任せて、ただ
債務者
の窮迫無知に乗じて不当な
高利
を定めたような場合にのみ、
具体的事案ごと
に
裁判所
の
判断
によ
つて
減額させることがいいという
意見
もあるのであります。少くとも一律に
利息
を
制限
することは、
消費生活
のための
貸金
いわゆる
消費信用
の場合だけに
限つて
、
生産活動
のための
貸金
、
生産信用
と申しますかの場合には、
当事者
の
自治
に任せていいという
考え方
もあるのであります。併し
債務者
が
訴え
を起したり、或いは
訴訟
で抗弁を出したりして初めて減額されるということでは、
債権者
の側の圧迫に対して
債務者
を
保護
するというこの
立法
の
目的
から考えますと、多く期待できないのみならず、窮迫無知に乗じて不当の
高利
を定めたものであるかどうか、殊に幾らから
不当高利
と見るべきであるかというようなことが逐一
訴訟
において争われるということになりますと、相当立証その他困難な而も出て参りまして、
債務者
の
保護
に十分でないということもございますし、又いわゆる
消費信用
と
生産信用
とを明確に区別することも、困難な場合が多いのでありまして、
生産信用
の
産業資金等
にありましても、一時的な異例な場合を別といたしまして、極端な
高利
を払いましては、健全な
生産活動
の継続は不可能になるわけであります。従いまして
消費信用
以外には
利息
の
制限
は無用であるということも言えないかと思うのであります。
もと
より
経済法則
に逆行いたしましては、
私法
上の
契約
の
効力
を
制限
いたしましても、それだけでは完全な
効果
は期待できないでありましようけれども、少くとも
債権者側
から
裁判
又は
強制執行
により、即ち
国家権力
を借りて強制的に
高利
を取り立てるということは、これは
利息制限立法
によりまして有効に
制限
することができるのであります。
現行法
も先ほど軽視される
傾向
にあると申上げましたけれども、この
意味
におきましては、現に有効な働きをしておるわけであります。この
改正案
は
利息
の
私法
上の
制限
に関しまして、
現行法
のと
つて
おりますのと全く同一の
政策
を踏襲したわけであります。
債務者
の
保護
を徹底いたしますためには、第二項のような
規定
を設けないで、
制限超過
の
利息
を
支払
つたときは、それを取戻すことができるようにするほうがいいのではないかということも考えられるのでありますけれども、そこまで徹底いたしますと、現在の
実情
から申しまして、
却つて金融
の道を塞ぐ虞れもあるのではないかという点も考えられますので、この点につきましても
現行法
の
内容
をそのまま踏襲したわけであります。 なお、先にこの国会に提案されまして、
只今大蔵委員会
で審議されております
出資
の
受入
、
預り金
及び
金利等
の
取締
に関する
法律案
との
関係
について一言申上げますが、現在
一般
に
利息
を抑制する
法律
としましては、
利息制限法
のほかに
物価統制令
というものがありまして、
暴利行為
となるような不当な
行為
につきましては
罰則
があるのであります。併し、この
物価統制令
も不当の
高利
という抽象的な
基準
でありますために
取締り
に困難がありまして、殆んどこれは
実効
を挙げておりません。一方
貸金業者
につきましては、
貸金業等
の
取締
に関する
法律
がありまして、これは
貸金業者
が営業を始めます前に、
業務方法書
に
利息
を記載しまして
大蔵大臣
に届け出ることにな
つて
おるのでありますが、
運用
の
実情
は
日歩
五十銭を超える
利息
が書いてございますと、
大蔵省
は届出を受理しない。併し
日歩
五十銭までならば受理するという
運用
にな
つて
おるのであります。
貸金業者
がこの
業務方法善
に記載した
利息
の
限度
を超えて
利息
を取りましたときは、
貸金業法
によりまして
刑罰
が科せられることにな
つて
おりまして、この面から
利息
の抑制が行われておるわけでありますけれども、
日歩
五十銭という
運用
、これは月にいたしますと一割五分、年十八割なのでありまして、これが非常に高いということは申すまでもないのであります。今般別の
理由
によりましてこの
貸金業
の
取締
に関する
法律
が廃止されることになりました。これを廃止するに当りまして、高
金利
の
取締り
につきましても、こういう
業務方法書
に
利息
を記載さして
取締
るというような迂遠な
方法
をとらずに、直接
金利
を
制限
するということと、又
物価統制令
の
運用
上による不便を回避するために、新たに
出資
の
受入
、
預り金
及び
金利等
の
取締
に関する
法律案
に第五条を設けまして、その第五条におきまして
日歩
三十銭を超える
高利
に対して
罰則
、これは三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金でありますが、
罰則
を以て臨むことにしておるのであります。この
只今
申しました
罰則
と
利息制限法案
とによりまして、
利息
の
制限
というものが三段
構え
となるわけであります。即ち
利息制限法
の
限度
内、これは
最高
が年二割とな
つて
おりますが、
日歩
五銭五厘でありますが、この
限度
内は
裁判所
に
訴え
を以て
請求
し、
国家
の力を借りて
保護
を受けることができる。この
限度
を超えて
日歩
三十銭までの
利息
は
裁判所
に
請求
することができませんが、
刑罰
の
制裁
はない、いわば放任されるわけであります。
日歩
三十銭を超えますと、これは反社会的な
行為
として
刑罰
の
制裁
がある。こういう三段
構え
になるわけであります。 次に
金融機関
の
金利
につきまして、
臨時金利調整法
という
法律
がございますので、これとの
関係
について一言申上げますが、
金融機関
の
金利
につきましては
利息制限法
の
適用
があることは勿論でございますが、このほかに
臨時金利調整法
第五条によりまして、
日本銀行政策委員会
におきまして
金融機関
の
貸付金利
及び預金の
金利
の
統制
をしているのであります。この
臨時金利調整法
における
金利
の
統制
は、これは
金融機関
のみを対象にいたしております。又その規制の
趣旨
が
金融機関相互
間の競争を排除する
金利統制
ということを目標にいたしておりますので、
利息制限法
が
経済
的な弱者、弱い立場にある
債務者
を
保護
するという、いわば
社会政策的立法
であるのとその趣きを異にしております。この点から申しまして
臨時金利調整法
は
利息制限法
の
適用
を排除するものではなく、格別の
効力
を有するものと従来
一般
に解されているわけであります。即ち
利息制限法
の定める
限度
を超える
利息
は、
臨時金利調整法
に基いて定められております
金利
の
最高限度
を超えると否とを問わず、
裁判
上無効と解されております。又
臨時金利調整法
に定められております
限度
を超えまして
金融機関
が
利息
をとりますと、
利息制限法
の
限度
内でありましても、これは法令に反する
行為
として
銀行法
その他によりまして、役員の解任なり事業の停止、或いは免許の
取消等
の
行政処分
が行われるわけであります。この
改正案
と
臨時金利調整法
との
関係
も従来と全く同様でありまして
臨時金利調整法
に基いて定められます
金利
の
最高限度
はこの
利息制限法
の
制限
の
範囲
内にとどまることが
もと
より望ましいのでありますが、
利息制限法案
が
民事
上の
効果
だけを考慮して
利息
の
限度
を定めまして、別に
罰則
を以て
制限
する
限度
が定められておりますので、そのことを前提として
行政官庁
が
行政監督
の必要上
金融機関
の
金利
を定めるということになるわけであります。従来の実績から申しますと、
現行法
の千円以上、年一割という
限度
が
実情
に即さないためにでございましよう。
正規
の
金融機関
の
金制
はしばしばこの
限度
を超えて定められた例があるのでありますが、今度の
改正案
の
金利
でございますと、大
部分
のものがこの枠内に納まります。
金融機関
のうち信用金庫或いは
協同組合等
の極く一部のものはこの枠外に出るものもございますが、これは
大蔵省当局
の今後の
行政指導
によりまして、この枠内に少くとも
金融機関
のものは納める
方針
であるということであります。 次に、第二条は
利息
の
天引
の
効果
を定めたものでありまして
現行法
にはございません新設の
規定
でございます。
利息
を
天引
いたしました場合に、
利息制限法
がどういうふうに
適用
されるかにつきましては、
消費貸借
の要
物性
、即ち
消費貸借契約
、即ち
貸金
というものは現実に
金銭
を授受するか少くともこれと同一視すべき
経済
上の
利益
を与えた事実がなければ、
消費貸借
は
成立
しないという
民法
の
原則
と関連しまして、
天引
の場合の
効果
について
解釈
上いろいろ
疑義
があるわけであります。
現行法
で
規定
がございません結果、いろいろな説があるのでございますが、最も合理的だとされておりますのは、
天引額
のうち
利息制限法
の
限度
内の
利息
に相当するものは、
経済
上
現金授受
と同一視すべき
利益
の交付があつたものと見て、即ち要
物性
を満たすものとして
元本
を算出するのであります。この
計算方法
によりますと、長期間の
利息
を
天引
しましたときには、
限度
内の
利息
でありましても、
利息
の総額が嵩みます結果、
手取額
に比してはるかに多い
元本債権
の
成立
を認めることになります。その結果、更にこの理論を修正することが必要にな
つて
来るわけであります。そこでこの
改正案
の第二案におきましては、
現行法
の下における
天引
の場合の
学説
のうち一部有力な
学説
に従いまして、
受領額
に対する
限度
内の
利息
に当る
金額
を
受領額
に加えた額のみについて
元本債権
の
成立
を認めることとしたわけであります。この
条文
の
表現
はやや技術的に過ぎる嫌いがございますけれども、要するに
利息
を
天引
した場合の
元本
の
計算方法
を
規定
したものであります。 次に第三条は、
現行法
の第四条に当るわけであります。
貸主
が
利息
のほかに礼金、
割引金
、手数料、
調査料等
を取ることがあるのであります。これらのものは
利息
、即ち
元本使用
の
対価
たる実費を持
つて
いる場合が多いばかりでなく、これらの
名義
を用いまして
利息
の
制限
をくぐることを防ぐ必要がありますので、これを
利息
とみなすこととしたのであります。尤も
名義
の如何にかかわらず、
契約
の締結に関する
費用
及び
債務
の
弁済
の
費用
という実質を持つものは、これは
元本使用
の
対価
ではないんでありますから、
利息
とはみなさないということにしております。これらの
費用
の
負担
につきましては、それぞれ
民法
の
規定
によりまして、
当事者
の意思によ
つて
或いは
債権者
の
負担
となり、
債務者
の
負担
となる場合があるわけであります。 次に第四条は、
賠償額予定
の
制限
の
規定
でありますが、
現行法
の第五条に代る
規定
であります。
民法
の四百十九条によりますと、
金銭債務
の不
履行
による
損害賠償
の額は、
約定利率
がありますときは
約定利率
により、又
約定利事
がないときには
法定利率
によ
つて
きまるわけであります。例えば年一割の約束で借りた
債務
、借金を
弁済期
に
支払
いませんと、同じ年一割の率による
損害賠償
をするわけでありまして、この場合、実際の
損害額
とは
関係
なく この率によるわけであります。ただ、
当事者
が特に
債務不履行
による
賠償額
をあらかじめ定めましたときは、
民法
にいう
賠償額
の
予定
でありまして、これは
約定利率
なり
法定利率
とは
関係
なく、別に定めることができるわけでありまして
裁判所
はその
賠償額
の
予定
を増減することができないことにな
つて
おります。実際の
損害
とは
関係
なく、
予定
された
賠償額
を
支払
わなければならんという、ことにな
つて
おるわけであります。
利息
は年一割でありましても、
弁済期
以後は年三割を
支払
うということならば、その
賠償額
の
予定
として
裁判所
がこれを増減できないというのが
民法
の
原則
でありますが、
現行利息制限法
の第五条は、この
賠償額
の
予定
に関する
民法
の
規定
の
例外
をなすものでありまして、
裁判所
が実際の
損害
に比して不当に高額であると認めたときは、減額することができるということにな
つて
おるのであります。而も
商事
にはこれを
適用
しないということにな
つて
おりますので、
商事
の
金銭債権
に関する
賠償額
の
予定
は、
民法
の
原則
に奥
つて
完全に
契約
の自由が認められるわけであります。
現行法
の第五条の
規定
は
賠償額
の
予定
について、完全なる
契約
の自由が認められております。
民法
の
原則
に比較いたしますと、
債務者
の
保護
になるわけでありますけれども、
具体的事案ごと
に
裁判
によらなければ減額されないということでは
債務者
の
保護
に十分でなく、殊に実際の
損害額
に比して不当な高額であるかどうかという証明は極めて困難なのであります。そこで一律に
賠償額
の
予定
を
制限
することが
債務者保護
のために最も適当であるわけでありますが、一面この
賠償額
の
予定
というものは、期限を過ぎますと、従来よりも高い
金利
を払わなければならんという
不利益
を与えることによ
つて
、
債務
の
履行
を確保するという
目的
を持
つて
おるわけでありまして、かような
目的
のために、
約定利息
よりも高い率による
賠償額
の
予定
を認めることが適当と思われますので、この案におきましては、
賠償額予定
の場合の率を、第一条の
約定利息
の
限度
の二倍まで認めることにしたのであります。又非常に高い
賠償額
を
予定
して、これによ
つて
不当に
債務者
を圧迫する
手段
とするということを防ぐ必要のありますことは、
商事
につきましても
一般
にその必要があると考えられるのでありまして、
商事
と申しましても現状から申しますと、
貸金業者
の多くは
株式会社等
の
組織
にな
つて
おりますので、
貸主
が
商人
であるために
商事債権
という推定を受けておりますけれども、借主必ずしも
商人
ではないわけでありまして、
商事
についても
一般
的に必要があると考えられます。又
商事債権
という名前で
現行法
第五百条は殆んどその
適用
をする場合を見ないほど潜脱されておる
実情
でありますので、この
商事
の
例外
を認めないこととしたのであります。
附則
の第三項におきまして
商法施行法
の一部を
改正
しまして百十七条を削除いたしましたのは、百十七条におきまして「
利息制限法
第五条ノ
規定ハ商事ニハ
之
ヲ適用セス
」とありますので、この
規定
を削除いたしたわけであります。普通の
株式会社組織
の
貸金業者
が金を貸しますときには、
弁済期
までの
利息
は、
利息制限法
にある年一割の
範囲
内の
利率
を定めましても、
弁済期
を過ぎますと、
日歩
三十銭なり五十銭という高い
賠償額
の
予定
をするのが普通のようであります。これは
商事
については
契約
自由の
原則
が認められていると申しましても、
裁判所
に参りますと余り高い
賠償額
、いわゆる
遅延損害金
は公の秩序、善良の風俗に反するということで
制限
をするわけでありますけれども、
公序良俗
というような抽象的な
基準
で
制限
いたしますために、或る
裁判所
では
日歩
二十銭ぐらいで
制限
するところもあり、或るところでは
日歩
五十銭でも
公序良俗
に反しないという
判断
をしておるところもあるのであります。
裁判所自身
どこで線を引くかということに非常に苦心があると思うのであります。そこでこの
改正案
のように、第一条の
限度
の二倍という
限度
で
賠償額
の
予定
を
制限
いたしますと、一律に
日歩
十一銭であります。
日歩
十一銭までならば認められる、それ以上ならば認められないということになるわけであります。でこの
改正案
の第三項におきまして
違約金
は
賠償額
の二倍とみなすということでありますが、
違約金
即ち
債務
の
履行
を怠つたときに
支払
を約束する
金額
というものは、或いは
損害賠償額
の
予定
であることもあり、又いわゆる
違約罰
と称せられる
制裁
のこともあるわけでありますけれども、いずれも
弁済期
に
債務
を任意に
履行
させることを心理的に強制するというための、
履行
を確保するための
手段
として利用されるものでありまして、実際又
賠償額
の
予定
であるか、
違約罰
であるかという区別は非常にむずかしいのでありまして、これを若し
賠償額
の
予定
について
制限
はするけれども、その他の
違約金
については
制限
をしないということでありましたならば、折角の第四条の
適用
を免かれる、脱法的な
契約
が行われる虞れもありますので、
違約金
はすべて
賠償額
の
予定
とみなしてこの第一項、第二項を
適用
するということにした次第であります。 次に
附則
の第四項におきましてれ、「この
法律施行
前になされた
契約
については、なお従前の例による。」ということにいたしておりますが、従来の
金利
よりも今度の
改正案
によります
利率
は高くなるわけでありますが、この旧法の下において
裁判
上無効とされておりました
契約
を
新法施行
後この
限度
まで有効とすることは妥当でないというので、
一般
のいわゆる不遡及の
原則
に従つたわけでございます。 以上御
説明
を終ります。
委員長(郡祐一君)(郡祐一)
7
○
委員長
(
郡祐一
君)
只今説明
を聴取いたしました
利息制限法
に対して御質疑のある方は順次お願いいたします。
中山福藏君(中山福藏)
8
○
中山福藏
君 先ず基本問題について二点だけお伺いしておきたい。それは
予定賠償
の場合に、
最高
の
利息
の二倍というふうにここに堰を設けられているわけですが、これは併し
裁判
をや
つて
おりますと、大体長いのは二、三年、
最高
裁まで行くと五年ぐらい
ちよ
つとむずかしい
事案
はかかる。そうすると
最高限
の二割の
利息
で堰とめられておるということは、非常に
債権者
に
不利益
の場合が出て来ると思うのですが、これは何年経
つて
も結局
最高利息
の二倍しか取れない、こういうことをお考えにな
つて
おるのでしようかどうですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
9
○
政府委員
(
村上朝一
君) その点も無論考えたわけでありまして、この第一条の
利息
の
制限
が従来のように年一割以下という非常に
実情
から見まして安い率でございますと、その二倍ということでは
債務
の
履行
を確保するという
手段
としては非常に弱いものと思います。今度の
改正案
によりまして第一条の
金利
もかなり
実情
に合うように引上げておりますので、
賠償額予定
の
限度額
としましてはその二倍ぐらいが相当じやないか、かように考えたわけであります。
中山福藏君(中山福藏)
10
○
中山福藏
君 大体
予定損害
という場合、その額については
裁判所
は
予定
された
限度
で従来判決を下されるわけですから、今度はこれが作られますと、非常に年数によ
つて
は第一条の
規定そのもの
よりも下廻るだろうと考えられるのですが、零細なところに行くのではないかと思われますが、どんなものでしようりか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
11
○
政府委員
(
村上朝一
君) その点は第一条の年二割の二倍でございますから年四割になるわけでございます。
遅延掛寄金
は長ければ長いほど額が殖えるわけであります。期間が長く
なつ
たら、零細になるということはないと考えられます。
中山福藏君(中山福藏)
12
○
中山福藏
君 これは何ですか、第四条の
意味
というのは、それに
釘付
にするという
意味
じやなくして、年に二倍という
意味
なのですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
13
○
政府委員
(
村上朝一
君) そうです。つまり第一条が
弁済期
までの
利息
の
利率
でございます。第四条は
弁済期
後の
利率
になるわけであります。
つまり弁済期
までは年二割で抑えておる場合、
弁済期
を過ぎますと年四割の割合で
損害
金が発生する。
中山福藏君(中山福藏)
14
○
中山福藏
君
利息
を標準にして
予定賠償
額を定めるという
意味
じやない、この四条はそうじやなくして、年
最高利息
の二倍を
予定
するという
意味
ですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
15
○
政府委員
(
村上朝一
君)
弁済期
までの
利息
の
最高限度
を年二割と抑えられておる場合
遅延損害金
の
最高限
は年四割と抑えられる。
約定利率
が年一割の場合、
遅延損害金
は年四割と定めることもできるわけであります。
約定利率
が二倍という
意味
でなく、
限度
が二倍になるわけであります。
中山福藏君(中山福藏)
16
○
中山福藏
君
予定賠償
額というものは、結局あなたのほうの
解釈
のしようもいろいろりましようが、大体賠償金というものの増減の額は、
予定
されただけの額ということで、
違約金
の額を定めるのではないのですか。年々二倍ずつ重
つて
行くというと大変な大きものになりますが、
違約金
というものは大体最初から
予定
された
予定賠償
ですから、若し不
履行
の場合、これだけの
予定
の額を払うという
予定賠償
なのです。
予定
されたというような
意味
にも解されるし、又
予定
されないという
意味
にも解されるのですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
17
○
政府委員
(
村上朝一
君) 第四条は、
賠償額
を
予定
する場合の
予定
する
限度
をきめたつもりであります。つまり仮に五万円貸して年一割五分という
約定
の場合には、このままにして置きますと、
弁済期
後も年一割五分の遅延
損害
が発生して来る。これは
民法
四百十九条の
規定
によりまして一割五分の
利息
が発生するわけであります。
弁済期
が過ぎたならば、その倍の年三割の
遅延損害金
を払うという約束をした場合には年三制になる。ただ、その
弁済期
を過ぎたら、どれだけの
遅延損害金
を払うかという
限度
を年四割よりも高い
限度
にきめることは四条で
制限
する。年四割までの
範囲
内で認める、こういうことです。
中山福藏君(中山福藏)
18
○
中山福藏
君 これは
違約金
という性質としているのですから、
違約金
というものについては
制限
はないわけですね、本質から言えば……。併し一年の
利息
の二倍、これは毎年取
つて
いいということになれば、この
条文
の書き方はどうでしようか、不明確ということになりはしないでしようか。これでわかりますかね。どうでしよう。
ちよ
つとわからんのじやないか。
違約金
を年二倍ずつ殖やして行くということになるのか、
違約金
と言えば大体これだけ払わないんだから、これだけ
違約金
を払うという限定されたものじやないですか。どちらを指しておられるのかはつきりしないと迷うのじやないかという気がします。この書きようでわかるのでしようか。
違約金
というものをこれだけ
違約金
を払うということになりますと、一年に
最高限度
額の二倍のいわゆる
利息
の二倍に相当する額を払う、これが
違約金
だ、こういう
意味
に書かれたのか、或いはこの
債務
の
履行
を怠つた場合にはこれだけの
違約金
を払えばいい、こういう
意味
に書かれたのか、或いはこの
債務
の
履行
を怠つた場合にはこれだけの
違約金
を払う、これだけの
違約金
を、払えばいい、こういう
意味
にも解せられるのですがね、これでわかるでしようか、どうでしようか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
19
○
政府委員
(
村上朝一
君)
違約金
は
賠償額
の
予定
とみなしております。この
趣旨
は普通は
弁済期
を過夢ますと、
違約金
なり或いは
遅延損害金
として百歩何銭というきめ方をするわけであります。その
日歩
何銭が第一条の
利息
の年二割ですと、
日歩
五銭五厘になりますが、その二倍即ち
日歩
十一銭よりも高い割合を定めてはいけない。それ以上のものは
保護
されないということです。例えばいついつかまでに払わなければ一万円の
違約金
を払うという約束の場合です。こういう場合はこの率によ
つて
定めた
違約金
でない場合は四条の
適用
によらないという
趣旨
でありますが、ただこれがこの
表現
でそういうふうに読めますかどうですか、その点或いは
中山
先生のおつしやるような疑問があるかも知れません。
中山福藏君(中山福藏)
20
○
中山福藏
君 これは毎年これだけの
違約金
を払うとか、毎月これだけの
違約金
を払うのだと言うのだつたらわかる。
楠見義男君(楠見義男)
21
○楠見義男君 今のに関連して……、
金額
で定めた場合には四条の
適用
がない、こうおつしやるのだけれども、その場合も四条の適応があるのじやないですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
22
○
政府委員
(
村上朝一
君)
只今
の
説明
間違えました。
金額
で定めた場合も、例えば一日遅れても一万円払うというようなときには、やはり一日分の
利率
の倍額で抑えられるわけであります。
中山福藏君(中山福藏)
23
○
中山福藏
君 これはこの注文の書き方が……、これは例えば年二割なら二割、年一割五分なら一割五分と分れますね。毎年これだけの
違約金
というものを払
つて
行くという
意味
になりますれ。重な
つて
行きますか、毎年々々、年に従
つて
あなたの御
説明
のようになれば、毎年々々重
つて
行くわけですね。
予定賠償
というものはそういうものじやないのじやないですか、額は一応限定するのじやないのですか、よく証文にはそう書いてありますがね。この
債務
履行
を怠つたときは、これだけの賠償金はあらかじめ払うという額をきめてきめるのですよ。
委員長(郡祐一君)(郡祐一)
24
○
委員長
(
郡祐一
君)
速記
をとめて。 〔
速記中止
]
委員長(郡祐一君)(郡祐一)
25
○
委員長
(
郡祐一
君)
速記
を始めて。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
26
○
政府委員
(
村上朝一
君) 定額の
違約金
を約束した場合に、
弁済期
から
弁済
をしたときまでの期間に対する四条の割合による
金額
を超えている
部分
については無効だ、そういうことになるわけであります。
上原正吉君(上原正吉)
27
○上原正吉君 この二条の
天引
利息
を
制限
したのは大変適切な処置だと思うのですが、
実効
を挙げるのはなかなか困難じやないかと思われるのですね、例えば十万円の借用証書を書かして全部書類を揃えて現金は八万円か渡さない、そういう
方法
で
天引
利息
を取る。併し二万円には
天引
利息
を払つたということになりますと、任意に払つた
利息
で取返す権限がないというほうに入
つて
しまうのじやないですか、実際の処置として……。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
28
○
政府委員
(
村上朝一
君) 例えば十万円の貸借につきまして二万円
利息
を
天引
してしまつたという場合ですね、そうしますと、この第二条の計算によりまして、例えば期限が六カ月先だ、で
制限
が年二割だといたしますと、六カ月ですから年一割が
限度
です。
利息
は一万円しか取れない、それを三万円取
つて
いるわけですから、現実に受領した八万円に対する
限度
内の
利率
による
金額
、つまり八千円だけが
利息
として認められるわけで、つまり差引きしました二万円のうち八千円を超す一万二千円は
元本
に入つたものというふうにこの二条で計算するわけであります。従いまして十万円の債権が
成立
するのではなくして、一万二千円を差引きました八万八千円だけの債権が
成立
する、こういうことになる。
上原正吉君(上原正吉)
29
○上原正吉君 それは十万円の書類を作
つて
二万円の
利息
を
天引
頂戴した領収書があれば、そういうことが証明されますけれども、実際に八万円しか受取らなかつたという証拠が何も残
つて
いなければどうにもならないじやないですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
30
○
政府委員
(
村上朝一
君) 今の例で実際は八万八千円しか
元本
が残
つて
いない。にもかかわらず証書は十万円にな
つて
お
つて
、十万円
請求
の
訴訟
を起されたという場合に、証拠は何も紙に書いたものに限りませんから、他の証拠も、例えば
債務者
自身の供述も証拠になるのでありまして、それも
裁判所
に信用されなければこれは止むを得ないわけですが、書いたものがなくても二万円
天引
きされたという立証がつけば、八万八千円の
限度
に
制限
される……。
上原正吉君(上原正吉)
31
○上原正吉君 立証がつけばですね、それはわかりました。それから
利息
の
天引
をした場合には、第二条の
規定
は大変こういうものに適切だと思うのですが、
天引
きし得る期間の
制限
がなければ、これもその
実効
を挙げ得ないと思います。一年分や二年分
天引
きしたのならいいけれども、三年分も五年分も
天引
きされたら、どれほど少い
利率
でも非常に高いものになる。年に一割、五年間
利息
を
天引
きしたら
元本
は半分にな
つて
しまうのですからね。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
32
○
政府委員
(
村上朝一
君)
改正案
の第二条は、実は長い期間の
利息
を
天引
きした場合の不都合をこれで救済するつもりなのであります。先ほども申上げましたように、従来の
計算方法
ですと、
天引
きした額のうち
限度
内の
利息
に相当する
部分
は
消費貸借
の要
物性
を満たす、現実に同じ
利益
を与えたものということでそれを
受領額
に加算いたしますから、長期間に亘りますと
債務者
に非常に不利なことになるわけです。この計算によりますと、長期間の
利息
を
天引
きした場合には、
受領額
を
もと
にいたしましてそれに対する
限度
内の
利率
をかけたものを
天引額
から差引きまして、その残りが和本に入
つて
しまいますから、現実の受渡した
手取額
が少なければ、それだけ
元本
の額が少くなるということになるわけです。仮に計算して申上げますと、年二割で
元本
十万円を貸しまして三年間
天引
きしたといたします。そうすると六万円
天引
きして、四万円受領したという場合、従来の
計算方法
ですと、これは年二割が
利息制限法
の認める
限度
であるといたしますと、三年分の
利息
六万円は要
物性
を満たしておるということで、要するに四万円受領して、六万円の
天引
き額は要
物性
を満たすものとして、十万円の債権の
成立
を認めるわけであります。この
改正案
の第二条の計算によりますと、四万円に年二割の三年分、即ち六割をかけました二万四千円、これを
天引額
六万円から引きますと、三万六千円は
元本
十万円の
弁済
に充てたものとみなしますから、結局十万円から三万六千円を引いた六万四千円だけが
貸金
として
成立
する、つまり
手取額
四万円に対して六万四千円の
元本
が残る、こういう計算になります。
上原正吉君(上原正吉)
33
○上原正吉君 三年くらいならそれでわかりますけれども、仮にこれを五年、八年としますと、如何に
利率
が低くても非常に手取が少くなる。先に払う限りでは……。ですからこういう
制限
があ
つて
、二割しか
天引
しないとい
つて
も、今まで三年分の
天引
で貸しておつたものを五年分の
天引
で貸すということになると、手取が少くな
つて
しまう、そういうことになるのじやないですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
34
○
政府委員
(
村上朝一
君) 七年、十年というような、長期の貸借の場合には、普通
利息
の
天引
というようなことは行われないのじやないかと思いますが、非常に長い期間の
利息
を
天引
するということになりますと、或いはそういうような、
債務者
に不利な場合も出て来るかと思いますが、少くとも現在行われておりまする
計算方法
よりは遥かにいいということにはなります。殊に
天引額
が多ければ多いほど
受領額
は少いわけですから、そうすると
受領額
が少いということは
天引額
のうち
元本
の
弁済
に充てられた額はそれだけ多くなるのであります。
上原正吉君(上原正吉)
35
○上原正吉君 ですけれどもそれを長期にすれば、やはり
元本
に対する
利息
も大きくなるのですから、
元本
の
弁済
に充てられる
金額
が減
つて
しまう。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
36
○
政府委員
(
村上朝一
君) 今の五年間
天引
の場合ですが、年二割で五年間
天引
しますとゼロになりますから、これは金は貸さんということにな
つて
、五年より長いものは考えられない。
上原正吉君(上原正吉)
37
○上原正吉君 ですから一年一割にしても、四年分の
利息
を差引くということになると、結構
高利
になるのじやないですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
38
○
政府委員
(
村上朝一
君) 四年分を十万円から差引きますと、
手取額
三万円に対する年二割、四年間ですから一万六千円を除いた六万四千円が
元本
に入つたことになるわけです。ですから手取二万円で
元本
が三万六千円……。
上原正吉君(上原正吉)
39
○上原正吉君 三万六千円の
利息
を払わなければならんということになると非常に高い。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
40
○
政府委員
(
村上朝一
君) 受取
つて
五年先に三万六千円返せばいい、こういうことになるわけでございます。
中山福藏君(中山福藏)
41
○
中山福藏
君
ちよ
つともう一つお尋ねします。あなたのおつしやることはよくわか
つたの
ですが、私が不思議に考えますことは、これは
民法
の
規定
に
違約金
予定賠償
という条項があるわけですね、それを
民法
の一部
改正
という形をとらずに、私は当然そこに項目を分けてこれはその条項のうちに書き加えるのが本当の体裁じやないかと思うのですが、
予定賠償
金のいわゆる
違約金
とかこういう問題について、
利息制限法
にこれを加えることに
なつ
たというのはどういうわけですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
42
○
政府委員
(
村上朝一
君)
利息制限法
は第一条以下すべて
金銭
を
目的
とする
消費貸借
に関する
規定
でございまして
民法
の
違約金
の
規定
はすべての
債務
に通ずる
規定
でございます。で
中山
委員
の仰せのように
金銭
を
目的
とする
消費貸借
の
利息
に関する
規定
も、
民法
の
消費貸借
のところに入れるということも考えられるわけでありますが、
現行法
の建前はこれは
民法
とは別の特別法で行くということにな
つて
おりますので、
金銭
を
目的
とする
消費貸借
に関する
違約金
については、こちらのほうへ
規定
する、かように考えております。
中山福藏君(中山福藏)
43
○
中山福藏
君 わかりました。それからもう一点、これは成るほど非常にいいことだと私はこの
法律
を見て考えたのですが、ただ一つ私が一番解せないことは、終戦後の物価指数が百倍、二百倍と飛躍的な形をと
つて
いるわけですね。そうすると十年前に百円貸したものはやはり今も百円というような
基準
にな
つて
、そうして
一般
に
裁判
が行われておるのですね。これは併しその
貨幣価値
の変動というものは相当
裁判所
としても考慮なさる必要があるのじやないか、実はこれは社会の実際面から考えまして、いつもこの点について私疑問を持
つて
おります。それでそういうふうなことは、例えば十一年前の百円というものは大体今百倍から二百倍くらいの普通の物価は上
つて
おるわけです。従
つて
貨幣価値
が二百分の一に減
つて
おるわけですね。そうすると十一年前に百円というものを貸した者は今の金にこれを換えてみますと、その価値というものはこれは百倍或いは百五十倍、二百倍、こう現われて来るだろうと思うのです。こういう点については、
裁判所
のほうとしてはお考えに
なつ
たことがございますか。又法制審議会なんかではそういう点について考慮を払われたことがあるでしようか。これは
利息
の問題ですけれども一応
元本
についても私は関連してお尋ねしておきたいと思います。そういう点について審議されたことがあるのですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
44
○
政府委員
(
村上朝一
君) インフレーシヨンによりまして
私法
上の
法律
関係
に、いろいろ結果において不当なものが現われて来ることはこれはありがちでございましていわゆる事情変更の
原則
というようなことが考えられる場合もあるわけでありますが、
貸金
その他証券なり或いは現金を握
つて
いた間に、
貨幣価値
が下
つて
しまつたというようなことによる
損害
というものは、これはインフレーシヨンに伴う止むを得ないものと
一般
に考えられておるのではないかと思います。この点について特に法制審議会その他で法制上の対策というようなことを考えたことはございません。
中山福藏君(中山福藏)
45
○
中山福藏
君 私はやはり
裁判所
としては
貨幣価値
の変動というものに相当目をおつけにな
つて
、
利息
制限
というものも御吟味なさるのがこれは常識であるべきだと実は考えておるわけであります。
利息
だけの
制限
ということになりますと、これは
債務者
を
保護
するという立場にな
つて
来るのであります。そうすると
元本
に対する
経済
上の変動による
貨幣価値
の数字というものを考慮すれば、これは
債権者
を
保護
するという
意味
にな
つて
来ると思うのですが、
債務者
だけの
保護
ということに重きをおいて
債権者
の
保護
ということをなおざりにするというような嫌いが或いは現われて来るのじやないかと実は思うのですが、まあ全然そういうことが法制審議会なんかでは議論されないということは、これは片手落ちではないかという考えもするのですが、これは
利息
と
元本
というものは相対立しておりますから、関連事項としてお尋ねしておくわけですが、これは一回もそういう議はありませんのですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
46
○
政府委員
(
村上朝一
君) これまでのところございません。
中山福藏君(中山福藏)
47
○
中山福藏
君 それだけ伺
つて
おきます。
楠見義男君(楠見義男)
48
○楠見義男君 さつきの上原さんの御質問に関連してお伺いするのですが、例えばさつきの例で言われた十万円に対する六万円先取りの問題ですね。これは十万円に対して三年の期限で二割だと丁度六万円になる、ところが、実際もら
つたの
は、借りたのは四万円だ、四万円に対して六万円になりますと三年間で言えば一五〇%にな
つて
年利は五割になる、
利息
制限
にはこの
法律
によると引つかかる。そこで一体証書面に十万円という字があれば十万円というもので計算をするのか、実際の
金利
を
制限
しようという建前から行けば、借りた金に対する
金額
なんですから、それが利子はあとで払うか前で払うかという相違だけが出て来るわけです。だから例えばもう少しわかりやすく言えば、十万円というけれども、実は八万円借りて二万円は先に払
つて
おる。これを八万円に対する
利息
として見れば三万円は二割五分に当る。ところが十万円とすれば二割になる。それはこの
法律
ではどういうふうに見ておられるのですか。証書面の十万円というものを
保護
するのか、或いは
債務者
の八万円借りたのに対して二万円を取
つて
おる、こういうふうに
保護
して行くのか、それはどちらを
保護
されて行くのですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
49
○
政府委員
(
村上朝一
君) 十万円の
貸金
の証書を作りまして二万円
天引
して八万円渡したという場合に、八万円だけについて
元本
の
成立
を認めるべきではないかという議論も現にあるのであります。それに対しまして
天引額
が
利息制限法
の
限度
を超えていなければ、それは
経済
上現金を授受したのと同じ
利益
を与えておるものと見て全額について
元本
の
成立
を認めるという
解釈
と、従来も両方あつたわけであります。大審院の
判例
及び多数の
学説
は
限度
内の
利息
の
天引
はこれは
経済
上
現金授受
と同一の
利益
を授受したものということで、それを含めた
元本
の
成立
を認める
解釈
にな
つて
おりますので、その
解釈
に従
つて
この案を作つたわけであります。
楠見義男君(楠見義男)
50
○楠見義男君 その
限度
内というのが問題なんですね。今の
計算方法
で十万円に対する六万円、四万円に対する六万円というこの説例で参りますと、四万円に対する六万円はこれは年利五割にな
つて
限度
外になるわけですね。その場合にはこれは認めないということになるのですか。それとももう飽くまでそれは十万円とする。十万円とするかしないかというのが今おつしやつた
限度
内の問題に引つかか
つて
来る。その
限度
内をどういうふうに
解釈
するかによ
つて
非常に大きな違いが出て来るのですね。それはどうも今の
判例
だけでは解決すべき
限度
内というところが解決されてないように思うのだけれども、どうですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
51
○
政府委員
(
村上朝一
君) 第二条の
計算方法
は一応
只今
の例で申しますと、十万円全額について
元本
が
成立
したものと仮定いたしまして、そのうち手取り額を
元本
として
限度
内の
利息
を算出しまして、
天引額
がその額よりも多ければ、その多い
部分
だけは
元本
に入
つて
しまつたものということで
元本
を算出するわけであります。
楠見義男君(楠見義男)
52
○楠見義男君 そこで根本論になるのですが、一体
利息制限法
というものはどういう法益を
保護
しようとしておるのかという問題です。先ほどもお話があつたように、三十銭を超える場合については反社会性として
罰則
を以て臨むとか或いは“政処分の対象として臨むとかいうようなお話が出たのですが、そういうふうに反社会性という点に強調を置き、そうして又
債務者
を
保護
するという観点から行けばおのずからそういう
立法
の精神であるとすれば、今の説例の場合でもどちらをとるべきかということが自然に結論づけられるわけなんです。そこで先ほど上原さんからお話があ
つたの
ですが、例えば二条なら二条というもので、実際の証拠というものは単に被害者の言つたというだけでは、恐らく
裁判
上の問題に
なつ
た場合に、それだけではなかなか行かないのではないか、と同時に無知或いは窮迫状態に陥つたものを救済すると言うけれども、実はそういう無知、窮迫の人々はむしろ
裁判
に持出すとかなんとかということができなくて、そうでない人間が
裁判
上の問題としてこれを利用しようということ、普通の場合は、破産なんかの場合は別でございますけれども、そうでない場合に大体そういうことになるのじやないか、こういうふうにも思われるのです。そうすると今のお答えによ
つて
も、それから又上原さんの御質問の何から言
つて
も、結局これは従来と同じように守られない
法律
といいますか、になる。本当に擁護せんとする法益といいますか、そういうことは擁護できないのじやないかという気がするのです。それはどうでしようか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
53
○
政府委員
(
村上朝一
君) 反社会性のあるものを
罰則
を以て臨むというのは別に提案にな
つて
おります
法律
の問題でありまして、この
利息制限法
自体は
債権者
、
債務者
の
関係
におきまして
債務者
の
経済
的に弱い地位を
保護
するというところに主眼があるわけです。守られない
法律
ではないかという点でありますが先ほども申上げましたように、この
限度
を超えたものを、
裁判
外で任意に授受する高い
金利
で金を借りてそれを返すということが行われて来る。それまでもこれで抑える力はないかと思います。ただ
債務者
が払わない場合に
裁判所
に
訴え
て、或いは執行吏のところに持
つて
行
つて
強制執行
までして強制的に取立ることはできない。この
限度
までであれば
裁判所
でも認めて
保護
されるけれども、この
限度
を超えるものは
債権者
が
裁判所
に
保護
を求めてもこれに応じられないという点で、現在の
利息制限法
も同様でありますけれども、この
法案
も、
債務者保護
もその程度における
実効
を期待できるかと考えております。
楠見義男君(楠見義男)
54
○楠見義男君 そこで今の反社会性という問題は社会悪とこう見るわけですね。従
つて
日歩
三十銭以上のものについての
法律
ができておるわけですが、
利息制限法
における
制限
の基本観念は一体どこにあるのか、さつき申上げたように、大体苦しくとも無理をして今まで取られておる、払えないという場合もあろうが、払えないという人間がたまたま救済される、こういうことになるわけですね。それはこの
利息制限法
でそういうものを救済するという基本観念はどういう点に置かれておるのですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
55
○
政府委員
(
村上朝一
君) 同じように苦しくとも、誠実に払う者はこれは
法律
で抑えられない、ずうずうしい者が
保護
されるという結果になるのではないかという御質問かと思いますが、少くとも金を授受しますときに、公正証書などを作りまして
債務
名義
をつけて行こうというときにこの
法律
がありますと、この
限度
を超えて
債務
名義
はつけられないわけであります。そのときからすでにそれだけの働きはするわけであります。成るほど或る程度我慢して払つたものは損をするという嫌いは殊にこの二項に関連してございますけれども、まあ止むを得ないじやないかと考えております。
楠見義男君(楠見義男)
56
○楠見義男君 これは
意見
にもなるのですが、
裁判所
というか、
法律
が
保護
すべき法益、その
保護
を必要とする基本観念というものを掲げてお
つて
そうしてたまたまそこに来ない者はこれは本人の意思に従
つて
、
法律
がこれを守ろうと言うのに、守
つて
欲しくない、任意にこれにぶつか
つて
来ないのは、これは止むる得ない。ところがたまたまぶつかつた者をこれを
保護
しようというようですが、その
保護
する旗印を掲げておることについては、くどいのですが、さつきの社会悪とか何とかいう一つの基本的な
考え方
があ
つて
、それを掲げずして
法律
が
保護
するとか
保護
しないとかいうことは私はおかしいと思う。だから近頃の
法律
、
立法
例でも、この
法律
はこういうことを
目的
にして或いはこういうことに資することを
目的
としているのだということを、
法律
の
趣旨
を宣明しているのであります。
利息制限法
においては然らば何を
目的
にして、何を
趣旨
としてや
つて
いるのかという点は、今の話では結局正直者は余り
保護
されずに、開き直つた者だけが
保護
されるというようなことにな
つて
、どうも解せないような気がするのですが、そこに一つの旗印があればはつきりとわかるのですが……。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
57
○
政府委員
(
村上朝一
君) 旗印はやはり不当な
高利
の抑制ということでありまして、抑制
方法
が
裁判
上の
保護
を与えないという形によ
つて
、不当な
高利
が抑制されるわけです。或る者が
保護
され、或る者が
保護
されないというようなことでありますが、少くとも
国家
機関
の力を借りて、この
限度
以上の
高利
を強制することはできないという
意味
におきまして、その不当な
高利
の抑制という働きはできるのじやないかと、かように考えております。
楠見義男君(楠見義男)
58
○楠見義男君 そこで別にこれは言葉尻をつかまえるわけでもなく、又私の
意見
になりますが、さつき申上げたように、不当なものを抑制するという基本観念であるならば、さつきも設例の十万円、六万円の場合はそういう観念から
限度
というものを
解釈
するのが、守らんとする法益から見て当然の帰結じやないかと思うのですが、これは私の
意見
になりますから別にお答も要りませんけれども、私はどうもそういう旗印を掲げる以上は、むしろ
債務者
を
保護
するという観点から
限度
というものをきめるのが至当じやないか、こういうふうに思うのです。これは私の
意見
なのですから……。 あとは少し細かいことでお伺いしたいのですが、先ほどの御
説明
を伺
つて
、御
説明
についてお伺いしたいのですが、
臨時金利調整法
との
関係
の問題なのですが、今回の
利息制限法案
によ
つて
、今までは枠に出ておつたものも大体納まる、ただ若干のものがそれに納まらない、それについては
大蔵省
の
行政指導
の而によ
つて
納めるようになる見込だ、こういうお話があ
つたの
ですが、その若干のものというものについて、例えば農業協同組合とか、そのほかのことをお挙げにな
つたの
ですが、そういうのは一体どのくらいの
金利
を取
つて
おるのでしようか。その
実情
だけを伺いたいと思うのです。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
59
○
政府委員
(
村上朝一
君) 後ほど表にして差上げたいと思いますが、農業協同組合が平均年一割九分五厘、最低一割九分三厘、
最高
二割一分七厘、水産業協同組合も平均が年一割九分五厘、これは年五厘五毛から二割九分二厘まで、信用協同組合、手形及び証書貸付が
日歩
五銭以内、年一割八分三厘、手形割引は五銭以内、当座貸越しが五銭以内、信用協同組合のほうは年一割八分二厘でありますから、百万円以下のものについては
限度
を超えないわけです。
楠見義男君(楠見義男)
60
○楠見義男君 それから
法律
の中に入
つて
、第一条の分け方なんですが、明治十年の
太政官布告
の場合には、二割、一割五分、一割という刻みですね、それから
大正
八年のときには一割五分、一割二分、それから一割と、こういう刻み方をや
つて
おるのですが、いずれにしても従来の
最高
は二割で、その次に一割五分、最低が一割と、こうな
つて
おりますが、今度は二割、それから一割八分、一割五分と、この刻み方をや
つたの
はどういう事情なんですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
61
○
政府委員
(
村上朝一
君) これはいわゆる
金融機関
によ
つて
行われております
貸付金利
というものは、大体現在における正常な
金利
の一つの目安になるのじやないかというところから検討したわけでありますが、先ほど申上げましたように協同組合の極く一部を除きまして、大
部分
金融機関
による
金利
を枠内に収める率としては、この年二割、一割八分、一割五分という
区分
が相当だということでこの数字を出したのです。
楠見義男君(楠見義男)
62
○楠見義男君 昔のことで甚だ恐縮なんですが、
大正
八年に
利息制限法
を
改正
したときに、今申上げたように従来の二割、一割五分、一割を一割五分、一割二分、一割と率を下げてやつたときの事情を、恐らくこれは
一般
の金融情勢とかそういうものがあつたと同時に、これが守れるというつもりでこの
法律
の
改正
をやつたんじやないかと思うのですが、甚だ恐縮ですが、過去のことで恐縮ですけれども、そのときの事情はどういう事情か、簡単にお聞きできたら……。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
63
○
政府委員
(
村上朝一
君) そのときの事情を実は詳細今申上げる準備をしておりませんが、このお配りいたしております資料の中に
金利
のグラフがございます。これを御覧頂きますと、
大正
八年に
改正
になります前数年は、相当低
金利
にな
つて
おるのであります。これは
金融機関
による
金利
のグラフであります。
大正
八年には
利息制限法
の
改正
までや
つて
この率を下げたわけでありますが、下げた直後にこの図にありますように、市中の
貸出金利
が上
つて
いるわけであります。で、このときからもうすでに
利息制限法
というのは
金融機関
によ
つて
も守られていなかつたということが窺われるのであります。
大正
八年の
利息制限法
の
改正
当時、或いは将来の
経済情勢
の見通しについて、多少の齟齬があつたんじやないかというふうに考えております。
楠見義男君(楠見義男)
64
○楠見義男君 そうしますと、結局
金利
が下がる
傾向
のときには、例えば今の御
説明
のように、
大正
八年の
改正
前の数年とか或いは昭和五、六年から終戦に至るまでの、こういうふうに下降
傾向
のあるときに
利息制限法
というものは実は余り働かない
法律
になると、その
範囲
内で大体やるから……。それから高く
なつ
たときは又守られない、こういうことにな
つて
、いずれにしてもこれは或るときは守られないし、或るときは用をなさない、こういうようなことになりはしないでしようか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
65
○
政府委員
(
村上朝一
君) これはいわゆる
正規
の
金融機関
の例でありまして、
金融機関
の
金利
がこれは
日歩
二銭以下の線に下
つて
おる昭和の初年頃におきましても、
金融機関
以外の
貸金業者
の
金利
も恐らく
利息制限法
を越えるものがあつたんじやないかと思います。で
利息制限法
が無用であつたという時期はなかつたんじやないかというふうに考えております。
楠見義男君(楠見義男)
66
○楠見義男君 そこで無用であつたかないかということがわかるのは、
裁判所
の問題、
裁判所
の処理されたという事例の件数ですね、件数が一つのめどになると思うのですが、これはなかなか実際問題としてお聞きしてもむずかしい問題だろうと思いますけれども、その状況はどうなんですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
67
○
政府委員
(
村上朝一
君)
裁判所
へ持ち出しますときは、
利息制限法
の枠内で持ち出すのが普通でございます。
裁判所
へ現われました事件だけから必ずしもいわゆる
貸金
の
請求
の中のどれだけが現実には
限度
を超えてお
つたの
かどうかということはつかめないんじやないか、かように思います。
楠見義男君(楠見義男)
68
○楠見義男君 そうするとこれも私の
意見
になりますけれども、そうすると守られたか守られないかということもわからん、知り得るチャンスというものは殆んどないということにならないでしようかね、これは
意見
ですけれども……。
金利
が安いときには大体その
範囲
内でや
つて
おるから問題はない。ずつと上つたときは、これは今お話のあつたように守られない。それじや守られておるかどうかということは
裁判
では出て来ない。こうな
つて
来るとこの
法律
というものは一体守られているんだから守られてないかということは知り得る機会というものはどういう機会にあるのでしようか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
69
○
政府委員
(
村上朝一
君)
裁判所
に出るという形では常に守られておるわけであります。
裁判所
ではこれ以上の
金利
を認めた例はないのでありますから、常に守られておるのでありまして、
裁判所
へ出ないところで守られなかつただろう。殊に
正規
の
金融機関
以外の対象についてはずつと守られない場合のほうが多かつただろうと思いますけれども、少くとも
裁判所
においてはこれ以上のものは認めておらなか
つたの
であります。
楠見義男君(楠見義男)
70
○楠見義男君 その程度にして、あともう一つ第三条の但書のなんですが、
利息
に含まれないとみなされる
契約
の締結及び
債務
の
弁済
の
費用
ですね。これについては通常かくあるべしというような標準は恐らく個々の事例によ
つて
違うでしようから、そういう場合はないようにも思えるのですが、これの認定はどういうふうにしてや
つて
行くのでしようか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
71
○
政府委員
(
村上朝一
君) この
契約
の締結の
費用
、これは
民法
の五百五十八条ですか、売買
契約
に関する
費用
は
当事者
隻半分して
負担
する。例えばまあこの
規定
が有償
契約
ということで
消費貸借
にも準用されるわけでありますが、公正証書作成の
費用
であるとか、証書に貼用する印紙の
費用
であるとか、そういうものが
契約
の
費用
に入るわけであります。これは
債権者
債務者
半分して
負担
するわけであります。尤もこれは任意
規定
でありますから、
当事者
の合意で
債権者
或いは
債務者
の
負担
とするということもあり得るわけであります。それから
弁済
費用
のほうは、
民法
の四百八十五条、「
弁済
ノ
費用
二付キ別段ノ意思表示ナキトキハ共
費用
ハ
債務者
之ヲ
負担
ス」ということがありまして、
原則
として
債務者
が
弁済
の
費用
を
負担
する、こういうことになります。
楠見義男君(楠見義男)
72
○楠見義男君 私のお伺いしたいのは、単純な
契約
の締結という
費用
でなしに、ここにもいろいろありますけれども、例えば調査料というような、調査料という名目は使わない。併し
契約
を締結するのに、単に例えば或る場所へ行くまでの足代だとか、或いは紙代とか、或いは公正証書を作るならその印紙代とか、何とかいうそういうだけでなしに、いろいろ
契約
を締結するにはかくかくの
費用
が要るというようなことで、
契約
締結の
費用
を出して、それを先に取る、こういう事例があるのじやないかという心配をするわけです。その場合借りる
金額
が少ければ少いだけその
費用
がかぶ
つて
行きますから、非常にこの
利息制限法
を脱法する
手段
に使われはせんかということを想像されるわけであります。そこでここで言
つて
おる
契約
の締結の
費用
というのは、どこまでも締結の
費用
というのか、そういう観念はあるのでしようか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
73
○
政府委員
(
村上朝一
君) 抽象的に申しますと
元本
費用
の
対価
と認められる実質を持
つて
おれば、これは
費用
でなくて
利息
であり、そうでない
費用
はそこから除かれると、こういうことになるわけでございますが、具体的には、例えば調査料と称する場合でも或いは
契約
の
費用
の中に入るものもあるかも知れない。実質がどういうものかということによ
つて
、但書の
費用
に入るか或いは本文の
利息
に入るかということになろうかと考えます。
楠見義男君(楠見義男)
74
○楠見義男君 ですからそういう、ここに「調査料その他何らの
名義
をも
つて
するを問わず、
利息
とみなす。」こういう文句もあるのですが、ところが調査料でも、今おつしやるように
契約
の締結に欠くべからざる
費用
というものがあるということになれば、それに籍目して脱法
行為
に利用されるという虞れがないか、こういうふうに思うのですが、従
つて
この
契約
の締結の
費用
というものは、はつきりと具体的にあらゆる場合を挙げては言えなくても、大体こういう場合の
費用
だというように通常の観念としてこの
立法
に当
つて
お考えにな
つて
おるものはないのですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
75
○
政府委員
(
村上朝一
君) 但書によ
つて
契約
の締結に関する
費用
としてはつきりしておるものを申上げますと、先ほど申上げましたような証書作成のための手数料であるとか、紙代であるとか、印紙とかそういうものの程度であろうと思います。例えば担保物を見に行くための旅費であるとかそういうものは、
債務者
が
支払
えばそれまでですが、
債権者
がその金を取るということになりますと、やはり本文で
利息
とみなされる額に入るかと思います。
上原正吉君(上原正吉)
76
○上原正吉君 この第一条と第四条との
利息
は複利で計算することができるというのですか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
77
○
政府委員
(
村上朝一
君) 複利の場合につきましては
現行法
におきましても別段
規定
がないのでありますが、
民法
では法定重利という
規定
がありまして、一年分以上
利息
が延滞しますとそれを一方的に
元本
に組入れることを認めているわけです。一年分以内の短期間ごとに複利計算して行きまして、一年分を通算すれば、この
限度
利息
を超えるというようなときには、やはりこの
限度
で縛られるのじやないか。一年分以上に亘る場合にはやはり法定重利による組入と同様の
効果
が認められているのじやないかとかように考えております。
上原正吉君(上原正吉)
78
○上原正吉君 それからこれはやはり私
意見
なんですが、
利息
を
天引
して金を貸すということは、いわゆる社会悪そ、
経済
的優位にある人が弱者を虐げるということを防ぐ
手段
として、
利息
を
天引
して金を貸すということは禁止すべきだと思うのです。これは実際問題として
利息
を
天引
して金を、貸す場合には、
利息制限法
を免れるということ以外に効用がないのです。手形割引みたいな場合も考えられますけれども、これは
正規
の
金融機関
で
正規
の手続でやる場合は別としても、金貸業者は
利息
の形で
利息
を
天引
する場合には、やはり
利息制限法
を免れる
手段
として用いる。
利息
天引
とい
方法
で金を貸す場合には、暴利を負るということは防ぎ得ないのです。何ら証拠がない。書類だけは完備しておるから防げない。これじやなくて、ほかの
法律
でも結構ですが、さつきお述べに
なつ
た
法律
でも結構なんですが、
罰則
を以て臨むならば、
貸金業者
の
取締
法とかいうようなもので
天引
きして
利息
を取るということは禁止すべきであると思うのです。
天引
きして
利息
を取らなくても同じことなんです。いずれにしても、担保を信頼するか或いは
弁済
能力を信用するかして金を貸す。貸す金はどつちみち何ほどかの金を幾ら
天引
きしても残りは同じなんですから、例えば十万円の金を貸して二万円の
利息
を
天引
きして八万円を金を貸して十万円の証書を作
つて
も、八万円の金を貸して八万円の証書と二万円の
利息
を払うという証書を作
つて
も、どつちみち渡した金は八万円で、それに対して十万円受取られるということの危険に対しては何ら
内容
上変りがない。ですから
天引
きして八万円渡した場合には、八万円の証書を作り、十万円の証書を作るということを
法律
で禁止して、それを
罰則
を以て臨むということが実際問題として暴利を
取締
るというという
目的
のためには私どもは是非必要なことだと常々考えておるのですが、これはそういう
法律
を作る場合には御考慮願いたいと思う。これは
意見
ですから、それで結構なんです。
中山福藏君(中山福藏)
79
○
中山福藏
君 これは第一条のところ、これをうまく巧妙に使いますと、百万円超したのを百万一円超しますと、これを十に分割して十万円それがしというものを十口分に分けて貸しますと
利息
が年に五分儲かるのです。例えばこれは十万円
未満
のものは年二割、そうすると百万円以上の場合には年一割五分ですから、これは一つ話合でこれを十に割
つて
くれ。わしのほうは馬鹿臭いけれども、お前さんを助ける
意味
において貸すんだから、これを十に分けて一つ貸すからということになりますと、二割と一割五分の差金がこれは五分開きが出るわけです、同じ百万円貸すにしてもですよ。そうすると百万円について五万円年に儲かるわけですね。これに対して予防
方法
は講じてないわけですが、そういう場合があるということは思われませんでしようか。私はそういう場合があると思うんですがね。金貸しはかくかく法規の網をどうしてくぐるかということばかり考えるわけですからね。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
80
○
政府委員
(
村上朝一
君) いわゆる脱法的な
手段
を講ずる場合であります。
刑罰
法規なんかですと、よく脱法
行為
を処罰するという
規定
があ
つて
、
刑罰
法規には適当なんでありますが、
民事
の実体法規につきまして脱法
行為
は無効であるというようなことを
規定
すること自体が余り
意味
のないことであります。ただ百万円を十口に分けて貸したということが第一条の
利息
制限
をくぐる
目的
でや
つたの
である、実際は百万円一口の貸借
関係
であるが、証書面だけ百万円を十口に分けたに過ぎないんだということが
裁判所
において明らかになりますれば、
裁判所
としては、これは百万円の
消費貸借
一つ一個と見まして第一条の
制限
は
適用
して行くと思うのです。
中山福藏君(中山福藏)
81
○
中山福藏
君 局長は
民事
局長なんでしよう。そういう
裁判
をするだろうとおつしやる。これは若し一日ずつ日をずらして行けば、これは泥を吐かん以上は、やはり別個の貸借
関係
になると私は思うのです。そうするとやはり百万円について五万円儲かるのです。それは処罰する
規定
がないとか、或いはこれを一個と見なすとかいう特別の
規定
があるか、或いは同じ
消費貸借
の
関係
、
当事者
の間においては、これは百万円が十万円ずつ分割された場合は一個と見なすという特別の
規定
があれば、それはあなたの仰せられるようなことになると思いますが、如何でしようか。そういうような
裁判所
に力があるでしようか、一個と見なすという……。これはなんですよ、借りた人と貸した人が、これは百万円借りるつもりだつたけれども、こういうふうに話合いでや
つたの
だということを泥を吐かない以上は、水掛論にな
つて
なかなかむずかしい問題じやないかと思うのですが、どうでしようか、あなたのおつしやるようにうまく行くでしようか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
82
○
政府委員
(
村上朝一
君) 百万円を貸そうという合意ができまして、今日十万円現金を受取つたあと、一日ずつずらして十万円ずつ十日間に分けて受取つたというときには、
消費貸借
の要
物性
はその都度十万円ずつ満たされて行くわけでありますから、十日間かか
つて
百万円の一個の
消費貸借
が
成立
するわけであります。泥を吐かなければ、成るほど
裁判所
は認めるわけには行かないのでありますけれども、ただ
裁判所
としては証拠がなければ認めるわけに行かないのでありまして、
債務者
が
訴訟
でそういう主張をいたしまして、そういう立証があれば、
裁判所
としてはこれは一個の
消費貸借
というふうに認定するだろうと考えます。
中山福藏君(中山福藏)
83
○
中山福藏
君 その認定が問題なんですけれども、これは
当事者
を変えてでもやれるわけです。そういうものについて認定がなかなかむずかしいだろうと思うのです。だからそういうふうな煩雑な事態が惹起するということを予防するということは、やはり
利息制限法
をお作りになるときには当然お考えにならなければならんと私は考える。それが一つ抜けておるのじやないかと思うのです。どうも私はそういうところに疎漏があるような気がいたしますが、これでいいでしようか。
政府委員(村上朝一君)(村上朝一)
84
○
政府委員
(
村上朝一
君)
現行法
におきましても千円以上は年一割百円以下ですと一割五分でやはりそこに五分の差があります。ただ従来
只今
おつしやつたような
意味
で脱法的に幾口かに分けて
消費貸借
をした、そのために
債務者
が苦しめられたというような例は聞いておりませんし、又
現行法
においてそういう場合の手当はしておりませんのんで、
改正案
におきましてもその点考えなかつたわけであります。
中山福藏君(中山福藏)
85
○
中山福藏
君 今までの
利息制限法
は極く
金額
は少いのですからね、そういう場合が起らなか
つたの
です、実際は……。こういう商法に基いた
訴訟
といえども或いは
民法
に基いた
訴訟
といえども、額が、非常に
利息
は低いものですから、私が
只今
述べたような場合が起り得なか
つたの
です、多くは……。今度は二割とか一割五分とか大きな額になりますから、相当まあ数字から言えばですよ。だからそういう場合をここにまあ想像することができるのです、そういう場合があるということを……。これは千万円ということになりますと、これを分割してやるというと大変大きな金になる。だからこれはやはり予防措置というものをこの場合設けておくということが安全じやないかと実は考えるわけなんですがね。それは老婆心みたいなものですから、一応やはりそういうことを私が考えた場合、当局としてはどうでしようか、同意されるということが当然だろうと思うのですがね、どうでしようかね。
委員長(郡祐一君)(郡祐一)
86
○
委員長
(
郡祐一
君)
速記
をとめて。 〔
速記中止
〕
委員長(郡祐一君)(郡祐一)
87
○
委員長
(
郡祐一
君)
速記
を始めて。 本日はこれを以て散会いたします。 午後四時五十八分散会