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参考人(
上山恵美子君) 私は
盗聴器事件で
中心的に被害者に
なつた
上山でございます。私は昭和二十七年に
鳥取市高等学校の普通科を卒業いたしまして、その年の六月に今町にありました山陰興業株式会社という藁工品を作
つておりました会社に入社いたしました。そのときに工場のほうで畳の下に入れるこもを作
つていた
田中球恵さんを初めてそこで知
つたわけなんでございます。
田中さんのアパートが会社の
ちようど裏つ側にありまして非常に近か
つたものですから、親しくなるにつれて、おぼん休みによくたずねて行くとまあいろいろ話し合
つておりました。そうして二十八年の二月に会社バ非常にや
つて行けなくな
つて困
つているからやめてくれないかということで、企業整備という形で首になりました。それでそれから私はしばらく家におりましたが、
鳥取市の駅前市場商業協同組合という魚屋さんの組合がありまして、そこに六月に事務員として入
つたわけなんでございます。それからもその駅前市場商業協同組合とそれから今町の
田中さんの家とは非常に近くなもんでして、
田中さんもよくお魚なんかも買いにいらつしや
つておりました。それで続けて
田中さんの所に遊びに
行つてお
つたわけなんです。
そのうちに
鳥取市の今町にありました以前の山陰興業株式会社という会社がつぶれてしまいまして
田中さんは失業したわけなんです。それで
田中さんが家にいらつしやいまして今年の三月に、
田中さん働く所がないからとずつと就職を探していらつしや
つたのですけれ
ども、パチンコに勤めるということを三月に聞いたわけなんです。それで私は今度の
事件が起りましたのは、九月の十四日に私が
田中球恵さんから開いたわけなんですけれ
ども、
ちようど十四日の晩に私がそこへ行きましたら、
田中さんがかぜを引いてふせ
つていらつしや
つたんです。すぐ私の所に来て耳もとに口をつけるようにして、小さい声で教えて下さ
つたわけなんです。それで日にちはいつかはつきりわからないけれ
ども、約一月ほど前に
警察の人が来て
盗聴器をつけさしてくれと言われて、そして菓子折を置いて帰
つたということを聞いたわけなんです。そうして主人は
承知の上でそういうことをして、そしてある日
田中球恵さんにつけられているということを教えてもら
つたというわけなんです。しかし私は絶対にその菓子も食べてないし買収されてないから、あなたには教えるとおつしや
つたわけなんです。しかしこういうことを
言つてはいけないと主人が
言つているのを教えたのだから、気がつかれりや大
へんなことになるから、あなたもうここに来ないでくれ、しかし急にば
つたり来なく
なつたということになると、また変だから、だから徐々に来なくな
つてくれとおつしや
つたわけなんです。で、私はそのとき非常にびつくりいたしまして、すぐにでもそのかくされている
マイクを探さなければいけないと思
つたわけなんですけれ
ども、その日夜八時ごろだ
つたものですから、その日はそのまま帰
つたわけなんです。それで九月の十五日の日に
共産党の闘志ですけれ
ども、宮本みどりという女の同志と
一緒に朝八時ごろ
調査に来たわけなんです。そしたら
田中さんがあまりわつさわつさや
つてもらうと、主人に感づかれては悪いから大掃除をするということにして、そして夫婦除をすれば出て来るだろうからそうしてくれとおつしや
つたわけなんです。おつしやいましたけれ
ども、しばらく探しておりまして、私が
ちようどえんの下にでもかくされているのではないだろうかと思いまして、えんの下をのぞいておりましたら、宮本同志が上川さんあ
つたと
言つてかくされていた盗聴機を引つぱり出したわけなんです。盗聴機は
中村さんの家からコードが出ておりました。そうしてそのコードの上を壁と同じ紙で張
つてありまして、そしてその盗聴機は壁とそれから水屋の間に隠されておりました。なかなか見つけることができなか
つたわけなんです。そして私が
共産党員であるからやられたのではなくて、私でなくても今までいろいろな形で平和を守るためにどうしたらいいだろうかというような話をしておるのを開かれていた。
警察が聞いていたり、それからいろいろ聞込みをしたり何かしている例が
鳥取市を
中心にいたしまして、特に今年に入りましてから非常にそうい
つた例が多くな
つて来ております。それでこれは私だけの問題ではないということを考えまして、すぐ
民主団体に訴えまして、
一緒にこの問題について闘
つてくれるようにと言いましたところ、すぐ皆さんがかけつけて来て下さいまして、そしてこういう問題に
なつたわけなんですけれ
ども……、話が非常に前後いたしますけれ
ども、
田中さんのところの盗聴機に手が触れたときにも、私はもう何というのか、無我夢中で傍にありました鋏でコードを切
つてしま
つたのです。そしてそのコードが
中村さんのところから出ているということがわかりまして、
中村さんの
奥さんに、あなたのところにはこういうことがないだろうか、誰かに二階を貸していらつしやるということがないだろうか、確か私はあるだろうということを言
つたわけなんです。そしたら
奥さんはそういうことはないとおつしやいました。そして私は
ちようどそのときに
警察が二階に今いるのではないだろうかということを考えておりましたので、誰かが今二階にいるのではないかと言いましたところ、いやそういうことはないとおつしや
つたのです。そしたら二階から子供さんが顔を出していらつしやいまして、そしてその子供さんに陽子ちやん二階に誰か来ているのじやないと言
つたら、おじちやんが来ていると、まあ顔を出して言つわけなんです。誰かいるとそれはたしか言
つたわけなんです。そして
奥さんに調べたいから二階に上らせて下さいと言うと、そしたら全然何も知らないし、誰もいないからそういうことはいけないとおつしやいましたのですけれ
ども、確かに陽子ちやんは二階に誰かいると
言つているし、誰かいらつしやるはずだから、それで
奥さんが先に立
つて私が二階に上
つて行
つたわけなんです。そうしましたら
中村さんのところは何か引越しのようなことで雑然としておりましたが、
ちよつと階段を上
つてすぐ目に付きましたのは、下からコードが上
つて来ている気配がはつきりと見えたわけなんです。それでそのコードを私が引張りますと、ここへ持
つて参
つておりますけれ
ども、コードの捲取機が壁とそれから箪笥の間にかくされておりました。そして私はそれを引張り出しまして、
中村さんに、
中村さん実は私が
田中さんのところに
行つているということを
警察が
知つて、そしてこういうものを仕掛けて話を聞いておるのだと、それでこういうことは非常に不安だし悪いことではないだろうかと、私は本当に誠意をも
つて中村さんの
奥さんにそう
言つたのですけれ
ども、
中村ざんはいやそういうことは知らない、ここへ来ている人がお父さんの知り合いの人であ
つて、そういうことをする人ではないということを言
つたわけなんです。私は
マイクが手に触れたときにすぐ鋏を取
つてそれを切取
つたように、
中村さんの二階でも捲取機に手が触れたときに憎しみで一ぱいにな
つて、それを切り取
つてしま
つたのです。そうしているうちに
民主団体の
方々がそこへお出でになりまして、そうして
田中弁護士さんもお見えになりました。そこで
先生に
現物品をどうしたらいいだろうかということを相談いたしましたら、正式に預書を書いて、そうして
警察のや
つたことがはつきりわかり、そのことが何ゆえどういう目的の上でや
つたのかということがはつきりわかるまではこれは絶対に返さなくてもいいから、預書を
民主団体の名前において書くようにということをおつしや
つたわけなんです。それで私たちは
日農、それから東部労協、それから自由
労働組合部落解放
委員会、日本
共産党因幡地区
委員会と五
団体の名前で盗聴機の
現物品を一時預かることに
なつたわけなんです。そうして私が
田中さんの家を何ゆえ借りていたのかということを申上げますと、私は二十八年の末頃に
ちようど秋ですけれ
ども、日本
共産党に入党いたしまして、勤めのかたわらずつと平和活動をや
つて来たわけなんでございます。それれで今年の三月にビキニの水爆実験をアメリカがやりまして、非常に大きな
損害を三たびにわた
つて日本人が受けたということ、それから毎日のラジオの報遵で水爆のおそろしさというものがなまなましく伝えられるのを聞くにつけて、どうしても私たちは水爆を禁止しなければいけないということを強く考えまして、それ以来ずつと平和活動家としてや
つて参りました。そのために私は今まで
田中さんの家に私がよく遊びに来ておりましたし、それからそこにある職場に勤めている男の同志ですけれ
ども、その同志が私が
田中さんのところによく遊びに
行つているということを
知つておりまして、よくたずねて来てお
つたわけなんです。そうしてそこで私たちは平和
運動の問題について話合
つた。それからずつと以前から私はその人に対してはつきりした形ではなか
つたわけですけれ
ども愛情を感じておりましたし、そういう
関係から
田中さんの所をお借りするように
なつたわけでございます。それから平和活動家として私がはつきり働くようになりまして、その問題
がただ個人的に今までそこでその人と会
つていたという
関係から平和問題をそこでいろいろと打合せをしたり、それから簡単に今後どういうふうにしなければいけないだろうかというようなことを話すのに、一週間に一度、または十日に一度ぐらい
田中さんの家を借りるように
なつたわけでございます。この問題が起きましてから、私はいろいろと噂さに上
つているわけでございますけれ
ども、
警察が側面的に
中村さんの
奥さんに
ヒロポンをや
つている人があなたのところにいるから、
調査のために
盗聴器を備えつけられているのだというようなことを
田中さんに
言つておるものですから、
田中さん先ほ
どもそれではときどき来て話をしている
上山さんが
ヒロポンに
関係したことをしているのではないかということを先ほ
どもおつしや
つておりましたけれ
ども、私は
ヒロポンというようなことを全然知りませんし、そういうようなことで何か私を
犯罪者扱いにしようとしているということに対して、私は
警察に対して非常に憎しみを感じておるわけでございます。そうしてどういう目的で
捜査をや
つたのか
言つて下さいということを、私たちが本当に何回も
抗議団に加わ
つてそのことを話しているにもかかわらず、そのことは
捜査上の
秘密で申し上げられないと言い、そうして一方私を何か
犯罪者として扱
つていることについて非常に私は憤慨しているわけでございます。
大体以上です。