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1954-09-18 第19回国会 参議院 法務委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月十八日(土曜日)    午前十一時五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高橋進太郎君    理事            小野 義夫君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            青木 一男君            長島 銀藏君            梶原 茂嘉君            岡田 宗司君            棚橋 小虎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    最高検察庁検事    総長      佐藤 藤佐君   —————————————   本日の会議に付した事件検察及び裁判の運営等に関する調査  の件  (被疑事件処理に関する件)   —————————————
  2. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これより本日の委員会開会いたします。  昨日に引続き被疑事件処理に関する件を議題といたします。検事総長の御出席を得ましたので、この際御質疑を願います。
  3. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 検事総長に簡単にお伺いしたいと思います。  今問題に、現在もなつておりまする検察庁法十四条による法務大臣指揮権発動に関する事柄でありますが、当時あの指揮権発動について、法務大臣から理由として示されておりまするところは二つあるようであります。一つ事件法律的性格であります。一つ重要法案審議状況ということになつておるようであります。この二つ理由で、前犬養法相は当時の措置が妥当であつたものと信じておられるようであります。検事総長としては、伝えられておるところによりますと、この発動は妥当ではないというふうに言われておるのであります。妥当でないのか、妥当であるのか。妥当でないとすれば、どういう理由で妥当でないのか。こういう点について御見解を伺いたいと思います。
  4. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) お尋ね検察庁法第十四条に基きまして、犬養法務大臣佐藤榮作氏の逮捕請求について別途指示あるまで逮捕請求をしないようにという指示をされたことでありまするが、これを世間では一般強権発動、或いは指揮権発動と呼んでいろいろ批判があるのでありますが、この指揮権発動ということは、これは犬養法務大臣もその当時述べられておりましたように、全く得意な事例でありまして、私どももいまだ経験はしたことはないのであります。で、こういう強権発動されるということにつきましては、すでに二日前にその御意向がわかりましたので、この段階において逮捕請求をしなければ、すでに勾留されているいわゆる贈賄者側被疑者はもう勾留満期、釈放の期も近づいているし、もうこれ以上は延ばせないので、この機会を逸しては、いわゆる適当なる捜査方法がどうしてもほかに見つからないから、やむなく逮捕請求をしなければならんのだということをいろいろ事情を申し上げ、また具体的な証拠に基いてその逮捕理由なり、また必要なことを具申いたしまして、何とかそういう強権指示というようなことにならないで、逮捕請求一つ認めていただきたいということで、再三、二日間にわたつて折衝いたしたのでありまするが、とうとう私どもの懇請は受入れられなく、正式な稟請書を出し、またその稟請書に対し別途指示するまで逮捕請求をしないようにという指令を受けたのであります。そういう指示は、われわれ検察官としてはどうも忍びがたい、この具体的な事件についてやむなく逮捕請求をするのであつて、この時期を失しては我々の考えておるような予定通り捜査を進めることができないからということを再三申し上げたのでありまするが、とうとう、まあ、ああいう結果になつてしまつたのでありまして、私どもとしましては、あの当時も、また今も同じ考えでおりまするが、あの機会逮捕請求をしなければ事件捜査に非常な支障を来たすということを、これは大臣にも再三申し上げ、最初のうちは十分御了解を得たと私のほうでは思つてつたのでありまするが、四月十九日の午前に、どうしてもやめることができなければ、十四条の発動もやむを得ないというような御意向が現われたのでありまして、あの指揮権発動ということにつきましては、捜査に非常な支障を来たすし、又検察官の士気にも非常な影響を及ぼすということがわかつておりましたので、ああいう結果になつたことを、私どもとしては非常に遺憾に存じておるのであります。
  5. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 検事総長なり検察陣営の方々のお気持、あの措置を非常に遺憾とせられた、あの時期に逮捕請求しなければ捜査の実を挙げ得ないという観点から、今検事総長の言われましたようなお気持になられることは無理はないと思う。私のお伺いしたいのは、その点ではないのでありまして、法務大臣としては、事件法律的の性格から見て、もう一度再検討をすることを適当と認められたようであります。それからいま一つ理由は、国会における重要法案審議状況と、この二つ観点から、今逮捕請求を認めなければ捜査に不十分の点があるということを認識しながらも、なお、しばらく延ばすという措置をとられた、その理由とされるところについて、検事総長はどういう見解を持つておられるかということをお伺いしたいのであります。
  6. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 犬養法務大臣が申されますには、重要法案国会で今審議されておるし、その審議状況にかんがみて、しばらくの間、すなわち、重要法案の通過するまで逮捕請求をしないようにという、こういう簡単に申上げれば、そういうことでありましたので、二日間にわたつて折衝しておる間に、事件性格疑義があるからというようなことの疑念は、どうも私には感ぜられなかつたのであります。あるいは大臣はお考えになつてつたけれども、ついおつしやらなかつたのか、あるいはおつしやつたのを私がくみ取りようが悪かつたのかもしれませんが、私としては重要法案審議にかんがみて、一つ何とかしばらく待てないかというふうに聞いておつたのであります。そのほうの理由だけで、非常に私も強い印象を受けております。そこで折衝してもなかなか聞いてもらえません。最後には重要法案は目下国会審議されておるのでありまするから、むしろ重要法案審議にかんがみられるならば、国会のほうの審議にゆだねられて、そうして国会のほうで、これは重要法案審議のほうが先だから逮捕あと回しということでやられるなら、またこれは筋は通るかもしれませんが、何とか政府のほうでなく、国会のほうでそういうことを御しんしやくなさるようなことができないものかということまで、まあ実は突込んで申し上げたのでありまするが、それもお聞き取りになれなかつたのでありまして、事件性格ということは、指示書の冒頭には書いておりまして、突然そこに事件性格という言葉がありましたので、私どももどういう御趣旨か、ちよつとくみ取りにくかつたので、法務省事務当局に伺いましたところが、いや、これは事務当局のほうであまり関与していない、大臣みずからのお筆先のようなことで、結局どういう趣旨かわかりませんでしたが、おそらくは第三者収賄のことでも疑点を差しはさまれておられるんではなかろうかというふうに一般に推測はいたしておりました。
  7. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私今の御答弁を伺いまして、やや実は意外に感ずるのであります。理由とした第二の国会における重要法案審議、これはもつぱら政治上の問題であります。検察行政観点から検挙の時期を延す等の問題については、やはり検察行政に属する検察権発動に関連する理由がなくちやならない。そういう観点から、その事件法律的性格という言葉に実際に実は関心を持つてつたのであります。先日小原法相、それから昨日犬養法相も、法律的性格というのは、第三者収賄のことである。普通の場合における第三者収賄についてはさほど疑念はないのであるけれども、相手が大政党幹事長として多額の資金を扱う立場にある者に関連しての第三者収賄というものは、相当検討を要するものである、そういう観点から、なお一つ念を入れて検討をするようにという趣旨の話があつたのであります。これは常識で考えましても、相当私は検察庁当局とされましても重要なところではなかつたかと思うのであります。そういう点についての大臣検事総長との間に十分なお話合いがなかつたといたしますると、やや実は意外な感じに打たれるのであります。検事総長とされましては、その点については何ら疑問はない、政党幹事長という立場に関連する第三者収賄というんですか、については別段の疑義はないと、かように考えておられたわけでしようか、その点を一つ伺いたい。
  8. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) お尋ね第三者収賄の刑法の規定は、御承知のように、たしか戦時中に設けられた規定がそのまま残つておるのでありまして、実際上第三者収賄によつて取締をした事例はごくまれであるのであります。今回の事件について第三者収賄規定で取調べを進めるかということについては、これは勿論捜査当局において十分検討をいたしたのであります。第一線の検察庁において十分研究して、そうしてさらに、私どものほうに相談に来られたので、私のほうではいわゆる検察首脳部会議を開きまして、なおそれには、法務省の次官や刑事局長も加わりまして、そうしてその法律問題は一応協議はいたしたのであります。勿論問題として十分慎重な検討はいたしたのであります。その検討した結果は、当然大臣にも逮捕請求稟請をするときにはは申上げたのであります。その際に特段な御疑問はなかつたように思われますけれども、あるいは私の記憶違いかもしれません。
  9. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 第二のこの重要法案審議経過云々に関連するのでありますが、検事総長言われましたように、あの時期において逮捕の実が挙らなければ、捜査上非常な困難に当面するというお話であります。また、先日検事総長と談して発表されたところによりましても、そのことが相当はつきりと出ておるわけであります。私の伺いたいのは、それほどあの時期において逮捕請求することが本質的に非常に重要であるということでありますれば、御承知のようにあれは国会に対する逮捕許諾請求であります。国会においてこれはどういうふうに結論が出るか、すぐに許諾が与えられるか、あるいは相当の時間がかかり、結果において国会も御承知のように会期末を控えて押し迫つてつたときだと思うのです。そういうこともありましてあるいは許諾が出ないということも、これはないわけではなかつたと思うのであります。検事総長として全体の検察の進捗を指揮指導されておる立場から、国会における許諾関係等について何らかお考えがあつたかどうか、全然それは国会のこととして考えられなかつたか、その点をお伺いしたい。
  10. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 国会議員逮捕につきましては、開会中は国会の院の許諾を得なければならんことになつておりまするので、そういう関係法務大臣にも逮捕請求するについては稟請する手続が慣例にたつてつたのであります。法務大臣におかれましては捜査の初めから、随時捜査経過なり進展の工合を御報告申上げまして、十分御了解を得ておつたのでありまして佐藤氏の逮捕請求というようなこともやがて起きるだろういうこは、これは大体大臣も御承知にたつてつたろう思うのであります。四月十九日までは別に御依存がないようにくみ取られましたので、私のほうではそのまま捜査を進めておつた。よもや大臣のほうからああいう異常な指示をいただこうとは、ゆめにも考えておらなかつたのであります。それから国会のほうは、これは院の許諾でありまするから、場合によつては拒否されるかもしれん、また有田氏の例によれば、期限付き許諾というようなことも、ああいう異例のことがあつたのでありますから、まあ国会請求してみなければ、許諾になるか拒否されるかということのはつきりしたことはわからないのでありまするけれども、私どもの見通しとしては、まあ大丈夫、国会でも許諾してくれるだろう、こういう見込みで逮捕請求手続をとつたのであります。
  11. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私は誠に法律にはうといのでございますが、二、三お尋ね申上げたいと思つております。あの大きい造船疑獄を中心にいたしましての今回の検察庁のお働らきに対しましては、国民ひとしく感謝を申上げ信頼をおき、そうして大きい期待を持つてこの結末を待つておりましたときに、実に、私どもから申しますと、あの検察庁法の十四条の実は乱用といいますか、悪用といいますか、この強権発動されましたことによつてもろくも、この信念を持つてやられました事件が頻挫を来たしたということに対しましては、私はもう国民こぞつて失望したと申しましようか、その結果検察庁に対するまたいろいろな非難も出て参つておりますということにつきましては、特に母の立場を守つておりますところの、それこそ全国多くの婦人たちが子供を育てますというその見地から申しましても、今後にかけまして非常な問題を持つて悩んでおると思つております。そこで私の伺いたい点は、このような結果から見ますというと、結局はこの非常な封建思想でございますところの、長いものにはまかれよう、権力のあるときに悪はかくれてしまうというようなことが、教育の面から見まして非常に重大な問題でございますときに、昨日も小原法相のおつしやることを伺つておりますというと、これはまあ法理上からいつたらそれに違いないのでございますが、この検察庁法の十四条というものは、もう日常茶飯事行われておりますことで、一日に何件も何件も取扱つておりますというお話でございました。それでその検事総長稟請に対するということは勿論わかつておりますけれども、しかしその当を得ないところの法務大臣がございまして、日常茶飯事と言われていることが、若しもその悪用乱用によつてされるようなことがありますならば、まあ、今現在までのことは仕方がございませんけれども、私どもが本当に憂えまして毎日々々こうしてひつくり返しひつくり返しこの問題について言つておりますことは、実は将来のことを案ずるからのことでございまして、そこでお伺いしたいのは、今度の事件がこの不当な、乱用されましたところの検察庁法の十四条につきまして、その後小百原法相をまじえられまして何か今後打つ手について研究でも進められているのではないかと思いますが、その点はいかがでございましようか。
  12. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 今回の事件に関しまして、検察庁法第十四条に基く、いわゆる強権発動の問題が識者の間に強く批判せられまして、また検察部内におきましても、一体こういう制度はこのままでいいのか、あるいは機会があつたらこれを何とか改正すべきではないかという意見もあるのでありまして先般加藤前法務大臣の御在任中に全国検事長、検事正を会同したことがございますが、この会同の席上でも検察庁法第十四条の存廃、改正の問題について長官方から意見が述べられたのでありまして検察部内においては非常に関心を持つておるのでございまするが、まだ具体的に法務省検察庁の間でこの改正問題を協議した、議したということはございません。
  13. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 実は今度の問題が起りましたために、国民一般、こういうことがあるんだ、こういう強権発動すれば、もろくも検察陣というものは敗れなくちやならんということになりまたすというと、国民の不安がここにあらためて起りましたということを私は非常に心配しているのでございます。それでこういうものを取り除く、こういう検察庁法十四条の条文を取り除いたら大変なことが起るんだという、昨日犬養法相答弁にもございまして、それを私ども了解できますのでございますが、しかし乱用悪用ということを考えましたときには、どうしてもここに一つ何か打たなければならない手があるんじやないかというように、まあしろうとながら私も考えておるのでございますが、そういう点につきまして今後一層の御研究を願いたい。お願いを申上げておきます。  それからこれに引続きまして私が非常に心配しておりますことは、こんなこともあるんだなということから、非常に心配になりました今度の問題をもとにするんでございますが、やすやすとこんなことで、検察陣を抑えることができるということであつたならば、逆にこの十四条の発動、つまり検事総長稟請に応えるということでなくつて、その前に検察陣を抑えるというようなことが、あるいはあるかもしれないなということを、私は心配し出したのでございます。つまり最後の形といたしましては、事務総長稟請書に応えるということになるかもしれませんが、その前に私はこの圧力を加えるというような問題があるのじやないか。そこで私は例の二十六年に日米講和条約がサンフランシスコで結ばれます直前の、ことに共産党関係の人が、当参議院議員でもいらした細川嘉六氏ほか、ずいぶん大勢の人が検挙されまして、そうして実に泰山鳴動して鼠一匹も出なかつたという、一方から言いましたら、非常な人権蹂躙の許すべからざる問題を引き起しました。あのときの当の責任者でいらした、大橋法務総裁でございましたが、その当時の世の中の、これは噂でございますから、問題にはならんと思いますが、噂といたしましては、これは大橋、当時の法務総裁から非常な圧力検察陣営にかかつてつたというようなことも聞きましたのでございます。私はこれに対して今御返事を伺おうとか、あるいは問題にしようとかという意図ではございませんけれども、昨日から実に政府答弁を伺つておれば伺うほど、むしろ私どもは不安が募つて来ております。そこでこんな例まで思い出して来たわけなんでございますが、私の心配は逆に稟請の前に何か指図といいますか、願われるというようなことがたまにあるようなことはございませんでしようかと伺いたいのでございます。しかし答外の範囲でないとお思いでございましたら、決して御遠慮は要りませんから……。
  14. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) お尋ねの、検事総長から法務大臣に対して個々の事件の取調なり処分について正式に稟請するということは、これはもうごくまれなことでありまして、そこまで行かないうちに、お互いに相談し、また協議すればいわゆる納得ずくで事が運べて行つたのでありまして、前の犬養法務大臣はこの点について非常によく検察事務を御理解下さいましてみずから、自分納得ずくですべてのことを取り運ぶのだからというようなことを、これは国会でも恐らく申し上げたように聞いておりますが、私どももその方針で指揮監督していただいておつたので、非常にありがたく思つて、われわれは敬意を表しておつたのでありました。この点は犬養法務大臣に限らず、歴代の法務総裁なり法務大臣も同じような方針ですべてお互い話合つて、そうして納得ずくで事を進めておつたのでありまして、今度の事件についても、もちろんその方針お互い行つてつたのでありますが、どうしても意見が合わない、納得しかねる指令が来そうだということで、それでははつきりと記録に残しておくほうが後日のためにもなるというようなところから正式に書面を出して、又正式に書面指示を受けたような次第でありまして、平素も勿論正式な稟請、正式な回訓ということはありますけれども、これは事前においてすべて意見が一致して、いわゆるお互いに納得した事務の進め方をしておつたのであります。その稟請なり回訓のある前に、大臣のほうから干渉がましいこと、或いは弾圧と思われるようなことは私の経験では一度もございません。
  15. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 よく了解いたしましてございます。  次にお伺いいたしたいと思いますことはよく問題になりました自由党支部長会議におきますところの吉田総裁演説の中で、いわゆる暴言と思われます点の中で、ことに私が伺いたいと思いますことは、検察当局逮捕しなければ調査ができないなぞというようなことは、私は当局能力を疑いますという、その通りの、能力を疑いますということをおつしやつていらつしやるのでございます。これに対しまして今度の小原法務大臣は、先頃の八月二十八日の検事長会同におきましてのごあいさつを見ますというと、たまたま例の指揮権発動に関連していろいろの問題が発生しましたために、吉田総理大臣からこの際私に事態の調整に当るようにとの依頼がありましたので、あえて老躯を提げて出ましたというごあいさつでございました。つまりあくまで指揮権発動の跡始末に雇われてお出になつたような感じでございまして、法務大臣をお引受けになるのに、もちろんこれだけでないと思つておりますけれども、ごあいさつにはそうございます。それだけの責任を持つていらつしやる方がこの検事総長会同におきまして、八月十日自由党支部長会議における吉田自由党総裁演説中、法規を軽視したり、検察当局を誹謗したかのごとき言葉があつたように伝えられましたが、同二十日吉田総理大臣より、右は用語不適当のため誤解を生じたので遺憾であつたが、自分としては法規を軽視したり、忠実に職務を遂行した検察人たちを非難するつもりは、ごうもなかつた旨の御挨拶がありましたから、この機会に各位にお伝えしますという御挨拶がございまして、昨日もよくよく伺つてみますというと、これは直接小原大臣吉田総裁にお当りになつたのではなくて、第二者第三者を通して最後刑事局長のところに書面で来たものを見たと、もし私が聞き誤りでございませんでしたら、仰せになりましたのでございます。私はこのことにつきまして非常に検察当局を侮辱していらつしやるのではないかと……侮辱と申しますとあまり言い過ぎでございましたら、軽視しておるのではないかという感じを持ちましたのでございます。ということは、このことは非常に重大なことであつて、そうしてこれこそ十分に納めていただきたい。皆納得するように、ただ検察陣だけでなくて国民全般が納得するようにして頂かなければならないのでございますが、しかもこの用語が不適当……どこが不適当だと幾ら考えてみましてもわかりません。確かにこの能力を疑うとおつしやつたことについてどう解釈していいか、これはこういう解釈の方法もある、こうも思えるというようなことでなくて、もう歴然とした言葉で簡単な言葉でありますので、これはどうも仕方がないのでありますが、そこで私が検事総長にお伺いいたしたいことは、こんな結末をもつて一体全国検事長は納得いたしまして、それならよくわかりましたと言つて私は引き退つたかどうか。或いは一般の特にこの事件関係して非常にそれこそ命を賭してやつておりました、事件に直接当りました検事たちが、ああこれでもう事が済んたで皆納まつたかどうか。その点を私伺いたいと思つております。
  16. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 八月十日の自由党全国支部長会議における自由党総裁としての吉田総理発言に関して、新聞やラジオの報道を見まして私ども一同非常に驚いたのであります。そこでさつそく私ども検察の大先輩であられ、また直接の監督官であられる法務大臣にお願いいたしまして、吉田総理新聞に報道しておるようなことを本当に発言されたのであるか、また総理真意が一体どこにあるのであるか、その点をぜひ一つその事情を伺つていただきたい。もし何か誤解があつてその誤解に基いての発言であるならば、ぜひその誤解を解くように一つ御尽力願いたいということをお願い申上げたのであります。その後法務大臣から、吉田総理に会つたとき、非常にあの発言について遺憾の意を表せられたということでありまして、またその後に書面で、あれは用語不適当で誠に遺憾であつた自分真意は決して既存の法律を無視したり、また検察官を非難するような意思は毛頭なかつたのだということをまあ釈明されたあいさつ書面をいただかれたということでありまして、そうしてその後二、三日たつて、ただいま仰せのように、八月二十八日の全国検事長会同の席上で、大臣吉田総理発言、またその発言伴つて善後処置と申しますか、その後の経過をずつと御紹介下さいましたのでありまして、そのお話によつて法務大臣としてはかれこれお考えになつてまたそのほかに何か直接総理大臣から法務大臣に同じような趣旨のお手紙もいただいたようなお話もございました。そういうところからお考えになつて大臣がまあ了承されたということでございましたので、このお話を承わつた会同員一同としては、まあ法務大臣が了承されたなら、我々も了承しようというような態度で終つたと思います。この長官が各現地にその様子をお伝えになつて、第一線の検察官がそれをどういうふうに受け取られたか、ただいま宮城委員仰せになつたようにその伝言によつてすつかり釈然としたかどうか、また心から了承したかどうかという点についての報告はまだ受けておりませんけれども、まあ大体了解したのではないかと私は想像いたしております。
  17. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 最後にもう一つお伺いいたしたいのでございますが、ときどき検察フアツシヨ、あるいは検察陣営に何か閥がある。たとえば小原閥とか、塩野閥とか、ときに宮城閥なんというのも出て来ますが、そういうことが言われておりますので、幾分検察陣の内容のわかつております者は、幾らそんな噂が立ちましても、そんなことがあるはずがないくらいのことは承知しております。でありますけれども、なかなかときには、私はこういうことは政治にも利用されるのじやないか、悪用されるのじやないかと恐れるようなことがございますのでございますけれども、こういう点について検事総長何か今までお悩みになりましたようなことなんかございましたら、一つお答え願いたいと思います。
  18. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 戦前におきましては、いろいろ外部から只今仰せのような何々閥何々閥というようなものが検察部内にあるやに風評が立つたのであります。戦争終了後も司令部におきまして、そういう噂を大へん気にしましてそういうようなことがあるのか。またあるならそれに対して何とか対策をしなければならんがというようなことを非常に、まあ私など信任関係に基いて個人的に司令部の方々からそういうようなことを言われたことがあります。そこで私が就任以来そういうようなことのないようにということを念頭に置いて部内を統率して、及ばずながら部内の協力一致の態勢を作り上げることに努めて来たのでありまするが、私がそういう、こう部内に派閥があつたりして非常にやりにくかつたというようなことは経験いたしておりません。
  19. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 昨日犬養法相答弁のうちに、今度の検察陣の働きに対しまして信頼も持ち、尊敬も持ち非常に感謝もしておりましたのでということを、実に目を潤ませながらここでおつしやつていらつしやいました。で、私はそれを聞きながら、そんなに検察陣を信頼していらつしやるのなら、その検察陣を統率している検事総長がことこまかくわけて、その逮捕の必要性をお説きになつた場合に、なぜそれに応じて下さらなかつたか。なぜ十四条の強権発動なさつたかと私は聞きたかつたのでございます。しかしそれは控えました。そしてまたそんなに思つていらしやるのなら、発動する前におやめ下つたら、これはまた検察陣の士気鼓舞にも非常な効果があつたのじやないだろうかというようにも私は考えまして、犬養法相のために私は惜しいことだと昨日もしみじみ思つたことなんでございます。けれども犬養法相がおつしやりながら、しかもなおそのことが乗り切れなかつたということは、そうして発動したあとにおいて職を辞さなければならないという、まあ昨日のお話などから申しますというと、責任をもつてお引きになつたようでございますけれども、それを伺つておりますというと、そこに言うに言われない背後にもやもやしたものがあつて、そのもやもやを私ども突きとめて、そうしてそれが国民の疑惑を解くことだというように努力いたしましたのでございますが、そのもやもやは、ついに解くことができなかつたのでございます。で、このことが私は今後にかかつての大きな問題でございまして、そういう点から言いますというと、今後国民の本当に信頼している、最後のよりどころとしておりますところの検察、裁判というものがこれはしつかりしてもらわなければ、世の中はまつくらになりまして、実に私どもその家庭に責任を持つておりますものでさえも、非常に今混乱の状態に陥つておりますときでございますから、どうかいつも厳正公平な立場をとつてお立ちなすつております現検事総長がどうか御自愛下さいまして、本当にこれから国民の信頼に応えていただけますように全検事を士気鼓舞せられていただくようお願い申上げまして私質問を終ります。
  20. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 簡単に一つ……。
  21. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) ちよつと小野君が先に発言を求めておられますから……。小野君簡単に願います。
  22. 小野義夫

    ○小野義夫君 ただいま検事総長の御答弁を承わりまして、昨日の小原法務大臣の御答弁とまさに非常な大きな行き違いが起つておるということを発見するのでありますが、新らしく法務大臣になられた方と検事総長はかくも非常に見解が違つておるということになると、今後の検察陣の運営にも私は相当の悪影響があるのではないか、その第一点は私が昨日、今日の新聞にも出ておりまするが、いろいろ前置を省略いたしまして簡単に要領を、第一点を一体この十四条のいわゆる行使、指揮権の行使というものは、何か先例とかもしくはその他法規上の制約があつて、容易にこれを行うべからざるものであるかどうかという質問に対しまして、小原法相は率直にこれは茶飯事である、日常茶飯事である、ただ形式が今つまり書面をもつて請求し、書面をもつて答えたというのが、いわゆる異例といえば異例であるけれども自分はこれを異例とか何とかという言葉は不当である、こういうことは日常茶飯事で、いつでもどんどんやつて差支えないのだということを述べられている点が、私は非常に御見解に、やはり総長はどうも異例なことであるとおつしやるし、それからそういう指揮権というものは常時私はもう、初めは伝家の宝刀で容易に抜いてはいけないのだという考えを持つておりましたし、国民多数も抜くべからざる宝刀を抜いたんだと、伝家の宝刀というものは一生、一代に一遍ぐらい抜くべきもので、あまり日常茶飲に菜つ切り庖丁のように抜くべきものではないという考え方を持つておる。ところが私のよく聞いてみるところでは、それは日常の事務で、書類でもつてかみしもを着たということは違つておるが、その内容自体はこれをやらなければ大変なことだという、いわゆるそういう権利を行使することができないのだと、非常にむずかしい何らの制約もなく、約束もなく法規上の手紙もないんで、それをぎようぎようしく言つているのが、むしろこれはこの事件に限つて言つておられるのですが、その点はいかがですか。
  23. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 御承知のように検察庁法第十四条では、検察官に対して法務大臣一般的に指揮監督することができると、個々の事件の取調、処分については、検事総長のみを指揮することができる。こういう規定になつておるのでありまして、まさに大臣のおつしやられるようにこの規定に基いて法務大臣一般検察事務について日常指揮監督をなさい、又個々の事件の取調、処分については、検事総長のみを指揮しておられるのでありまして、その指揮しておられるその根源は、たしかに十四条に基いてございまするが、これまでの経験によりますると、検察庁法第十四条というのは、新憲法と同時に発足した新しい制度でございまするが、この制度が出て以来下級官庁のほうからこうしたい、或いはこうしてくれという稟請があつたのに対して、それほいかんというふうに、つまり違つた見解で指揮されるということは異例の措置つたのでありまして、同じ意見ですね、こうしたい、じやあこうしろという指揮されることは、それはもう毎日あることでありまして、ただ下から稟請するその意見について、全然拒否されるような、つまり意見の違う指示をされたということは異例の措置であつたとこういうことなのであります。
  24. 小野義夫

    ○小野義夫君 さよういたしますと、まあこれはひとり検察行政に限らず、一般の行政官庁におきましても、省内会議その他におきまして、いわゆる局長会議だとかその他が全員反対の場合もしばしばあるんで、常にいわゆる大臣とその他の所属官吏のいわゆる意見が合一するのが定石であるというようにお考えになつているが、いやしくも上官として存在して、自己独自の判断がく、常に下僚の言うことに、極端なことを申せば盲判を押していいというのではなかろうと考える。そこに非常に本問題に特長がございますので、私の次に伺いたいのは、この検察制度、いわゆる検事総長を首班とする検察陣営、それからそれを指揮監督するところの法務大臣、これは昨日も小原大臣に聞いたのであるが、責任内閣制度においてはともかく超然たる、いわゆる内閣の運命がどうなろうと、あるいはその他のことがどうなろうと、独自の見解において、どこまでも中心的に憲法上の独立性、いわゆる司法権、裁判権のごとき意味においての独立性が何か保障されておるかということをお尋ね申したところが、それはそういうものではない、責任内閣においてはやむを得ない、こういう御答弁であると共に、今後もやはりそういうことはやむを得ないのであるということを答弁されておるのですが、私の今伺いたいのは、いわゆる検事一体の理論から見まして、そういう方々が会議し、そうして結論を出せば、おおむね諸般の事情を考察せられたものとは思いまするが、事いやしくも立法府のことや或いは政治のあり方、いわゆる政治情勢というようなことは、よほどこれは検察陣というのも重大でありまするけれども、国の政治の行政並びに国家の外交、その他立法、予算あるいは信任、不信任等の諸問題を控えた場合におきまして、あるいは少数内閣もあり得るが、あるいは対等の内閣もあり得る。で今日の政界の情勢が十三国会以来いかなる混乱の状態に、政界混迷の状態になつておるかということは、これは検察陣の方々も考慮せられたことと存ずるのでありまするが、一体そういう政治情勢その他から超然して、そうしてその時期のいかんを問わず、断々固としてやらなければならんというようなふうに認識せられたのであるか、それともまあこれは一つの政治情勢というものも大いに考慮に値するものであるという考え方でやられたのであるか、私は与党なるがゆえにかくのごとき質問を申し上げておるのではなく、将来日本の政治のあり方並びに立法府とそれから行政府とあるいは司法権との間に、どういう関連と調和を保つかということが大きな問題として、今憲法改正を前にして論議せられるのでありまするから、このことに関しまして検察庁の皆様の御意見はどうで、当時政治上の情勢はむしろこういう場合に断固としてやることがいわゆる政治の浄化とか、廓清とか、あるいは政治のあり方に適合するのであるという見解であつたかどうかを一つ承わりたい。
  25. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 検察庁法第十四条の運用につきまして、上司と下僚との間に意見が違うことがあり得るのじやないか。それはほかの行政官庁も同じことだということをおつしやられたように思うのでありますが、なるほど検察事務に関しましても上司と下僚との意見が違うことがあります。ありますけれども事務の運び方としてはその対立したままの意見ではなく、上司と下僚と十分話合つてお互いに納得して、上司が下僚に指揮し命令すると、こういう運びになつておるのであります。ことに検察事務は言うまでもなく司法に準ずべき特殊な事務でございまして、その公正なる職務の遂行を担保するために、検察官の身分も一般の行政官よりも厚く保障されておるというところも、これは検察の職務にかんがみて司法と同じように公正なる職務を行わなければならん。またその職務を行うには、特殊な技術的な素養もなければならんということで検察庁法ができ上つておることと思うのであります。その意味において検察庁法第十四条におきましては、個々の事件の処分や捜査については、これは検察官にまかせておく。法務大臣は直接には現場の検察官に個々の事件捜査なり処分を指揮しない、こういう建前になつている。そういうふうに全然個々の事件捜査、処分についてタツチしないということになつては、法務大臣国会に対する責任というところから考えましても、それではどうもいかん。やはり特別な場合には、法務大臣責任大臣として検察事務を指揮監督しなければならんというところから、さような個々の事件捜査処分を指揮するときには、検事総長のみを指揮することができる、一般検察官を指揮することができない、こういうような特殊な制度になつたことと思うのであります。そこで私どもは日常個々の事件捜査処分について法務大臣稟請するという場合には、個々の事件捜査、処分でありますから、多分に技術的な、特殊な知識を要する問題が多いのでありますけれども、私のほうから法務大臣事件を報告し、又決裁を求める場合には、できるだけ大臣の御理解を得るように事件の報告をなし、また納得をした上で指揮していただくというようなやり方をしているのでありまして、これまでの法務大臣の御方針としても十分私ども言葉を納得されて、そうして理解ある指揮指導をしていただいておつたのであります。今回の事件についてももちろんそういう手続方法をとつてつたのでありますが、法務大臣のほうから先ほど来申上げましたように重要法案審議にかんがみて、別途指示するまで逮捕請求をしないようにという、そういう指示をされたのでありまして、これは多分にその当時の政治情勢をお考えになつて捜査官としては技術的にどうしてもそうしたいだろうけれども、国務大臣として見られるところでは、国家的見地に立つてこうするほうがいい、うういう御判断のもとに指示されたことと思うのでございまして、私どもは制度が法務大臣指示を受けなければならん制度になつておりまするので、その指示に従つて法律の許す範囲において努力いたしたのでございます。
  26. 小野義夫

    ○小野義夫君 これを要約しますると、私も大いに了解いたします。法務大臣は自己の立場において政治情勢その他各般の諸情勢を推してこのこともやつた。また検察当局ではいわゆる法の命ずるところによつて、また慣例に基いてなすべき最善の努力をされたというので、両々その職責に忠実であつた考えられるのであります。  次に、時間がありませんから、もう一問だけでやめまするが、それは、昨日同僚の議員が、これは十四条は悪法だ、悪法もまた法なりという御見解、必ずしもその十四条を悪法とおつしやつたのじやないが、悪法でも法律だという意味におきまして論ぜられたから、私もそれでは何かこれを削除修正の意思なきやということを法務大臣お尋ねしたのです。ところが、これを取つたらこと大へんだ、それこそ検事フアツシヨというようなものが起つて来ても、防止する方法がなくなつてしまう、これは前の、むしろ一般に個々の問題以上に広範に全部を指揮監督するのでありますけれども、ただそれではいかんからというので、むしろ原則の一部を割いてもつてあのただし書があるのだから、これはよすわけにいかんということをおつしやられたのでありますが、今検事諸君の御会同におきまして、あるいは検事総長としてはこれは何らかの立法的手段によつて改正の要があるのではないかというようなお言葉を拝したのですが、果してそういうお考えを現在持つておられるかどうか、われわれ立法府としては参考のために聞いておきたいと思います。
  27. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 私は今のところ十四条ただし書削除の意見は持つておりません。十四条も適正に運用せられるならば、りつばな制度だと思つております。
  28. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 今の問題に関連するのでありますが、簡単に伺いたいのです。今度の十四条発動は、十四条の発動だけの問題じやなくて、国会に対する国会議員逮捕許諾請求というところに特段の意味合い、性質があることはこれは申すまでもないのであります。もちろん国会議員一般国民も、法律の前に区別さるべき何らの根拠も理由もないのであります。ただ、国会開会中においては、国会の持つておりまする特別の役割から、院の許諾を必要とするということになつていると思うのであります。今回の事件は発端早々から、多分に政治的色彩と申しますか、政治に関連した一つの大きな疑獄でありました。昨日法務大臣はそうでないようなことをしばしば言われておりまするけれども、私はそうじやないと思います。そもそも発端のときから、この事件相当広範囲に国会関係者に及ぶであろうということは、一般に予期されたことだと思います。それが最後において今見るような結果になつたのであります。私は仮定の問題として言いたくありませんけれども、あのときの状況から見れば、あるいは法務大臣検事総長の言われる稟請をそのままお出しになつて国会で果して許諾があつたかどうか非常に疑問だと思います。これは仮定でありまするから、論外ではありまするけれども、あるいはあのときの情勢によつて国会において逮捕許諾請求を拒否したかもわからん。もしそうだと仮に考えれば、問題は現在以上に深刻であつて国会とそれから検察陣の対立といいますか、そういうふうな形になつて相当趣きの違つた問題が、現在われわれの目の前に提供されたであろうということを私は考えておるのであります。これは仮定でありますから論外であります。それで私の聞かんとするところは、今後もこれは重要な問題と思いまするが、現在の政治情勢において、また政党のあり方から見て多分にスキヤンダルが伴うおそれはあると思うのであります。現在の問題も残念ながら検事総長の努力にかかわらず、内容は適格に鮮明されておらない。今後も起つて来る可能性は多分にあるのであります。もちろん国会自体の自粛立法によつて処置する面もありまするけれども検察陣営の活動ということも今後あり得るのであります。こういう国会に関連した政治的の一つの疑獄、こういうものに対して一般検察権の行動と、私は相当つた考え方において検察権の発動考えられるべきではなかろうか、こういう感じを持つのであります。この種の大きな規模の疑獄について、検事総長として何らか格段の心がまえ、考え方、検察権の行使の方法とかいうものについて格別のお考えを持つておられるのか、単純にこれは普通の犯罪としておやりになるのか、その点をお伺いしたい。
  29. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 今回の事件が発生いたしましたのは、昨年の暮からでありますが、私どものところに報告され、いよいよ事件が進展するようなきざしが見えたのは、一月になつてからでございますが、ちようど国会開会中でもございまするし、その国会が五月にならなければ閉会にならない。また場合によつては延長されるかもしれんということも考えなければならん。到底この事件国会閉会まで待つというようなことはできない事情にありました。証拠の発覚に基いて、その証拠を追うてだんだん捜査を進めたのでありますが、その捜査を進めるに当りましては、この事件が政界、財界の有力者に及ぶ事件であるということが大体見通しがついておりましたし、国会開会中でもありまするので、事件の進め方としては非常に慎重なかまえでやつたつもりで、世間では非常に手ぬるいという非難もあつたくらいでありますが、私どもとしては慎重に慎重な態度で事件を進めて来たのであります。ただ、その点だけ普通の事件以上に慎重にやつたということは違いますが、捜査方法において普通の事件と別に特段な違つた取扱をしたというようなことはございません。
  30. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 法務大臣検事総長一人を指揮監督する、こういう法の建前になつておりますが、法務大臣というものはこれは内閣の閣僚の一人でありますからして、その立場は内閣の方針に従つてやらなければならんということはあきらかであります。これは昨日も小原法務大臣がそういうふうにはつきりと述べられております。言うまでもないことであります。ところでその法務大臣が個々の検事をもし指揮監督する、一人々々の検事を指揮監督するということになりますると、これは検察の事柄が内閣の方針によつてことごとく干渉を受けるということになるのでありまするからして、そういうことはどこまでも避けなければならん。検察のことは政治というものからは独立をして行かなければならんということは、これはまた法の建前でありますからして、それだからして法務大臣検事総長一人を指揮監督するのであつて、個々の検事を指揮監督するものではないと思うのであります。こうなりますというと、検事総長というものは、つまり言えば検察の独立と政治からの独立という建前に立つて法務大臣からの指揮監督を受けながら、内閣の方針検察の独立をどういうふうに調和して行くかという重大な任務を持つているものであると私は考えるのであります。つまり言えば検事総長というものは単なる一個の検事ではなくて、検察全体の総意を把握して、その上に立つて内閣の一員である、閣僚の一人であるところの法務大臣の指揮監督を受けながら、一方では検察の政治からの独立という任務を遂行して行かなければならん職責を持つているものである、こういうふうに私は考えているものでありますが、この点については検事総長はどうお考えになりますか。
  31. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) ただいま仰せのように私も存じております。そういう趣旨から検察庁法第十四条ができていることと理解しているのでありまするが、ただ裁判と違いまして司法の一部ではありまするが、検察を全然行政から独立させるということは、これはやはり大きい政治の運用の面から見ると、どうもそれでは調和がとれないというので、個々の事件捜査、処分については法務大臣国会責任を負うている法務大臣検事総長のみを指揮するというああいうただし書をつけて司法と行政との調和をあの点に求めているのではないかというふうに理解いたしております。
  32. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 検事総長というものが一方では検察の独立ということを強くその立場に立つて、そうしてときの政府方針とどういうふうに調和を図つて行かなければならんかという立場にあるのでありますからして、もちろん自分立場をあくまで固執して、一つ一つ政府方針と杆格をする、行違いができるということではならんのでありますから、その点はある程度まで政治的な調和、考慮を払つて行かなければならんことは明らかでありますが、しかし立場から申しますというと、法務大臣というものは政府方針に従つて検事総長を指揮監督をして行く、検事総長検察陣の全体の総意を受けて、検察の独立ということを建前として法務大臣との間に折衝をして行く、こういう立場にあるということは、ただいま検事総長もお認めになつておるようであります。しからば、この間のあの検察庁法第十四条の発動をされましたときに、検察陣営全体のこれに対する意向、全体の感じというものがどういうものであつたかということは、これは私は外部からあのときの検察陣営の空気を見ておつたのでありますが、この政府検察庁法第十四条の発動に対しては、全般に非常な不満の空気がみなぎつておる。これでは検察の独立ということはできない、全く政治の力によつて政府方針によつて圧倒されてしまつているのではないか、こういう不安があの当時検察陣全体にみなぎつてつたということは、私はこれは明らかなことであると思うが、その点検事総長はどういうふうにごらんになつておるか。
  33. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) あの事件処理に当りまして、どうしても法務大臣のほうで検察庁法第十四条に基く異例な指示をしようという意向が見えましたので、私のほうから極力検察立場、あり方を十分説明申上げまして具体的なこの事件としては、どうしてもこの機会を逸してはならない状態であるから、ぜひ逮捕請求を認めていただきたいということを懇請いたしたのでありまするけれども、私ども意見が通らなかつたのであります。そうしてああいう強権発動されましたので、検察当局としてはあの指導権の発動によつて捜査にも非常に支障を来たすということはわかり切つてつたのでありまするから、部内一般にあの指揮権発動については非常に遺憾の意を表しておつたということは事実でございます。
  34. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 検事総長があのときに検察陣の不満を述べられて、そうして何とかしてその十四条の発動を阻止したいと、こういうふうになつて御努力になつたことは私ども認めるのでありますが、しかしついにその阻止ができなかつた、このために検察陣全体が非常な失望、又不満の空気におおわれておつたということは、ただいま検事総長もお認めになつておるところであります。しからばそういう部内の空気を十分に察知して、それを把握されておるところの検事総長は、あの場合検察庁法第十四条が法務大臣によつて発動されたというときに、何らそれに対してはつきりした態度に出ない。このときこそ検察の独立ということを念頭に置いて、検事総長としては穏便なる話の間に、そういう折衝ができて目的を達することができないとすれば、何らか他の方法によつて検察の独立ということのために措置をとらなければならんだろう、こう私は思うのでありますが、それはどういうふうに検事総長はお考えになりますか。
  35. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) お説のようにあの当時検察庁としては、そういう法務大臣指示を受けないで独自の行動に出すべきではないかという批判もあつたのであります。しかし私ども検察当局といたしましては最善の努力をして、しかも制度上法務大臣からああいう指示をされた以上は、ここは隠忍自重してその指示に従つて法律に許されたる範囲において努力をするよりほかにはない。ここにもし反対の意思表示をするとか、何らかの行動をもつてこれに対処するというようなことになりますならば、秩序を守る検察当局がみずから秩序を乱すことになりはしないかということも憂えられたのでありまして、私どもはどこまでも法律、制度がある以上は、その法律に従つて万全の措置をするよりほかはない、これが公正な検察の途ではないかというふうに考えて、あえて軽挙妄動はしなかつたのであります。
  36. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 検事諸君があの事件のために、寝食を忘れて非常な努力を払つておられたということは、国民全般がこれを認めております。ところがあの検察庁法十四条の発動の際に、また、それから後において、検察陣が、すでにこういう命令が出た以上は何ともしようがない、全力を尽して自分たちはあれに対処したのである、こういうふうに検事総長は言われますが、私は検事総長は全力を尽して対処されたとは考えておらん。個々の検事の諸君としては、先ほども申すように、法務大臣の直接指揮監督を受けるものではありませんから、ああいう命令が法務大臣から出た場合に、これに対してどうする方法もないのであります。だからして黙つて仕事に従うよりしようがない。ことに秩序の維持に当るところの検事諸君でありますからして、法務大臣の命令に対して直接かれこれ言うことはできないのであります。法の建前からもできないのであります。だが、検事総長は違うのであります。検事総長というものは個々の検事のように、小さなどろぼうや、或いは詐欺師を一々調べておるのが検事総長の仕事ではない。検事総長というものは、大きな検察陣全体の意思を代表して、政治的な立場に立つて、この検察陣と、ときの政府の政策との間の調和を図つて行かなければならん人であります。その人があの際に何らの方法も講ぜず、黙々としてただ一つ、小さな検事のような立場でもつて、これに対する責任を行使せられなかつたということにおきましては、私は検事総長自分の職責を尽されたものではないと考えるのであります。何とかあの際、検事総長はとられるべき方法があつたのではないかと思うのでありますが、この点はいかがでありますか。
  37. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 先ほど以来申し上げましたように、私としては法律の範囲内においてできるだけの努力はいたしたのでありまして、最善を尽したつもりでおります。
  38. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 国民は、あの検事が不眠不休の努力をされて、そうして事件をあの大詰めまで持つて行つて、いよいよ最後のどたんばで、あの十四条の発動のために、九仭の功を一簣にかいたということで、非常な失望を国民はいたしているわけであります。これは検事に対する不満ではないのでありますけれども検察の個々の検事の御努力に対しては、十分国民はそれを認めているわけでありますけれども、あの際に、検察陣の総帥であるところの一体検事総長は何をしたのであるか。こんなことをされて黙つて引つ込んでいるのか、こういうことが偽らざる国津の感情であります。その国民感じというものが、今日では検察庁というものは頼むに足らんものである。小さなこそどろや、詐欺師は挙げて、いろいろなことはやるけれども自分らもしじゆうひどい目にあつているけれども、一体国民の血税の金の一億円がどこへ行つたかわからない。その結末もどうなつたかわからない。政界の有力者に対しては手も足も出ないのではないか。そんな検察では仕方がないじやないか。これは今日国民の偽らざる感情であります。かように検察陣国民の信を失わせた責めは、私は検事総長にあると思うのであります。あのときの検事総長の態度いかんによつては、かようにまで国民を失望、落胆させ、また検察に対する信頼を失わせない方法が私はあつたと思うのでありますが、もう一遍検事総長のあのときの態度を反省されて、一つ何とか方法があつたのかどうかということをお述べを願いたいと思います。
  39. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 繰り返して申し上げるようでありますが、先ほど以来御答弁申上げた通りであります。
  40. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 棚橋さんいいですか。……じや亀田君。
  41. 亀田得治

    ○亀田得治君 時間がもうほとんどないようでありますから、私は検事総長に対して、実は七月三十日の検事総長談話に関連する問題とか、相当お尋ねしたいことがたくさんありますが、それらの点は一つ次回の法務委員会に別に譲りたいと思います。  で、この際ぜひ二、三だけ一つ簡単にお聞きして、結論だけを一つ簡単に総長のほうからお答え願いたいと思います。それは問題になつておる検察庁法十四条のただし書ですね。これはまあいろいろな角度から説明が、いろいろな人によつて、今までされて来ておるわけですが、こういうふうな解釈に立つてつておるというふうに、検事総長考え方を判断していいかどうか。それをお聞きするわけですが、この検事総長から法務大臣に対して稟請する書類ですね、その書類が、法律的に欠点がないという場合には、いろいろな憲法論とか、そういうことは要りませんが、とにかく現在の制度から見て、法務大臣はこれを承認すべきなんである、こういう考え方を持つておられるかどうか。法律的に欠点があれば別ですよ。その点を法務大臣が指摘するというふうな事態の場合には別ですが、法律的に検事総長が出した書類に欠点がないという場合には、法務大臣は承認をして行くべきである、今まで実際はそうだつたのじやないか、法的な解釈としても、そういうふうに考うべきなんである、こういうわけでしようか、あなたのお考えは。私はそういう考えを持つているのですが、検事総長はどうなんでしようか。
  42. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 稟請をする場合には、その稟請趣旨を十分に法務大臣が理解されるようにこちらで説明をいたします。そうして御理解を得た上で指示をしていただくというような方針で今までやつております。
  43. 亀田得治

    ○亀田得治君 私のお尋ねしておるのを、少しこう何かはずされたような管外のように聞えるのですが、もちろんそれは理解をしてもらうように検事総長が説明をなさるでしよう。しかしその説明が了解がされないということがありますね。了解がされない際には、了解されない理由が、この点が法律的におかしいじやないか、こういう意味で法務大臣が指摘をされない以上は、これは了解を当然して、承認を与えてくれるべきものだ、そういうふうにお考えになつているかどうかということなんです。
  44. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) こちらから法務大臣に十分説明をいたしまして、そうして疑問の点があれば、こちらで十分に釈明をいたしますし、大臣のほうで反対ならば、反対の気持を述べられるということは、これは当然のことでありまするが、もしその説明をした際に、何ら異議が述べられないというような場合には、これは御了解になつたものというふうに、こちらとして了解しておるのでありまして、それに沿うた指示をされるのが、普通の事務の運び方でございます。
  45. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは普通の事務の運び方であると同時に、検察庁法第十四条のやはり正しい解釈の仕方、こういう意味でしような。……はあ、それで、はつきりいたしましたが、そこで私午前中の質疑を、よく実は聞かなかつたわけで、あるいはむだな質問になる点もあるかと思いますが、この問題で検事総長法務大臣に書類を出されて、そうして説明された。これに対してもちろん法務大臣もいろいろな意見をおつしやつたわけでしようが、最後は拒否されたわけですが、その拒否をされるときの理由というのは、いわゆる重要法案審議状況、このことだけであつたように、午前中検事総長お話になつたようですが、それは間違いないのですね。
  46. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 法務大臣から申されたことは、その重要法案審議にかんがみて、別途指示するまで逮捕するなと、つまり逮捕重要法案の通過するまで待てと、こういう趣旨が非常に強く印象に残つております。そのほかの法律的性格云々というようなことは、別に問題にはならなかつたように記憶しております。
  47. 亀田得治

    ○亀田得治君 非常に重要な問題ですから、おそらくそういう法律的な問題が出ておれば、これは検事総長の記憶に残つておるはずだと思いますから、おそらくそれは問題にならなかつたのだろうと思うのです。そこでそういたしますと、本件の場合には、当然これは検事総長の要求を認めてやるべきこれは性格のものなんです。それが認められなかつた。で、あなたは四月二日、あの指揮権発動された際に、直後に検事総長談話を発表されました。その発表の中で、誠に今度の法務大臣の指揮は遺憾であると、いろいろなことを述べて、遺憾であると、こういうふうに発表されておりますが、この遺憾というのは、言葉をかえて言うならば、もう少しこれをまあはつきり言うならば、指揮権発動は妥当でないと、こういう意味のことだろうと思うのですが、どうですか。
  48. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 指揮権発動のあつた直後に、各新聞社の記者諸君が見えまして、そのとつさの間で述べた言葉を、亀田委員は今問題にされておるのだろうと思いますが、別に正式に談話を発表したというわけではないのであります。何も書いたものはございません。その当時述べた言葉を思い起しますと、この異例な指揮権発動によつて、今後事件捜査に非常な支障を来すであろうし、また検察陣一般の士気にも影響をするだろうということを考えると、非常に遺憾だということを述べたと思います。そういう趣旨言葉を述べたと記憶しております。
  49. 亀田得治

    ○亀田得治君 少しはつきりせんところがありますが、あと五、六分ということですから、一つもう一遍お聞きしたいのは、この指揮権の問題に関して、吉田自由党の総裁が、自由党支部長会議で、八月十日にお話をしておる。で、これがいわゆる吉田暴言として問題になつておりまするから、検事総長も、録音を翻訳したその成文をすでに御覧になつておると思いますが、あの中で明らかに検事を誹謗しておる。それからまた、法規を無視した考えというものが述べられておる、こういう点について検事総長としてはどういうふうにお考えになつているでしようか。
  50. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) その点につきましては、先ほど午前中に宮城委員からも同じような御質問がありましたので、詳しく御答弁いたしましたから、それを引用させていただきます。
  51. 亀田得治

    ○亀田得治君 私、まあそれを聞かなかつたわけですが、じや、それに対して検事総長として、吉田総理から、何らかのあいさつはもらつておるわけでしようか。
  52. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 私は、吉田総理に直接会つて言葉を聞いたということはありません。小原法務大臣にお願いして、総理のその当時の発言事情なり、また、発言真意を伺つてもらい、また誤解の点があれば、誤解を解いていただくということを法務大臣にお願いいたしまして、法務大臣から、総理は、用語が不十分で誠に遺憾である、決して法律を無視したり、検察を非難する気持は全然なかつたのだというごあいさつがあつたということを、法務大臣から伺つております。
  53. 亀田得治

    ○亀田得治君 その伺つたというのは、八月二十日の検事長会同の際に、法務大臣のほうから伝えられたということなんでしようか。
  54. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) その点も先ほど宮城委員に対してお答え申上げたのでありまするが、私のほうから法務大臣にそういうお願いをして、その後法務大臣から、総理からこういうあいさつがあつたからということのお話を承わり、また二、三日たつて、八月二十八日の検事長会同の席上においても、同じようなことを伺いました。
  55. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういたしますると、大体その間の経過もわかりましたが、昨日法務大臣のお答えによりますと、法務大臣自身が総理大臣に会つておるわけじやない。池田幹事長を通じて法務大臣が申入れをしたということなんだが、法務大臣は、直接池田幹事長にも会つておらない。法律省に使いに来られたのは、小金国会対策委員長、その国会対策委員長は井本刑事局長に会つて、その総理大臣言葉だと言つて伝えて行かれておるわけなんです。で、従つて法務大臣としては、その国会対策委員長にすら会つておらんわけなんですね。そうしてあなたとしてはすいぶん、なんですね、関所をたくさん通過して来て、あなたのところへ来る場合には、もう大分違つておるかもしれんですね、第一……。私はこういう重要な問題ですから、なるほど普通の検察行政の問題であれば、法務大臣を通じていろいろなことを総理に申し込む。これも普通の事態としてはいいでしよう。ところが、世間が言つているように、実にこれは暴言なんですから、なぜもつと直接的に総理真意を確かめる……、これは私検事総長としてたくさんの検事を指揮して行く上には、非常に必要なることじやないかと思つているのですが、かような間接、間接、間接のまた聞きのようなことで一応ピリオドを打つておる。手続としても私はなはだ腑に落ちないのですが、検事総長ほそれでよろしいという考えでしようか。
  56. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) ただいま委員のおつしやるようないろいろな段階を経た、径路を経たということは私はわかりませんです。ただ書面総理からこういう趣旨のごあいさつがあつたということを聞いておるのです。
  57. 亀田得治

    ○亀田得治君 ところがその書面ですが、あなたは今書面とおつしやつたわけですが、法務大臣から出された資料によりますと、その書面の内容というのは、用語不適当のため誤解を生じたので遺憾であつたが、自分としては、法規を無視したり、検察の人を非難するようなつもりはごうもなかつた、こう書いてある。しかしこの言葉はいわゆる吉田暴言というものとはあまりにも違うわけなんですね、あまりにも。用語不足といいますけれども、少しも不足でもなければ、実に尽しておる。ことに政治資金規正法を否定するような言語なんかは、実に具体的にしやべつておるわけなんですね。逆に尽しております。一方でですね、そういうことを盛んに言うておいて、それとまるきり違つたことを、あれはああいう気持じやなかつた言つてぱつと出されても、これはちよつと納得行かんのじやないですか。暴言といわれることが、非常に抽象的なことで、どうにでも取れるものだということなら、これはこういう意味だというような註釈も可能かと思うのですが、あの暴言というものは、そんなに簡単に用語不十分であつたとか、不適当であつたとか、そういう意味には取れない性質のものだと私は思うのですが、検事総長はどういうふうにその点をお考えになるのですか。
  58. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) その点は、先ほども申上げましたように、八月十日の夕刊及び十一日の朝刊の新聞で、いわゆる吉田総理の暴言問題を知りましたので、その報道を見まして、私どもは非常に驚いた。また遺憾に思いましたので、さつそく検察の大先輩であり、また直接の監督官である法務大臣を通じて、ぜひ総理のこの発言をなされた事情、また発言真意一つつていただきたい、もし誤解の点があるならば、その誤解を十分に解いていただきたいということをお願いして、それからしばらくたつて、先ほどのような向うからごあいさつがあつたということを知らしていただいたのであります。
  59. 亀田得治

    ○亀田得治君 最後に、これは検事総長に対する要求にもなりますが、先ほどの検察庁法第十四条の解釈につきしましては、あなた自身は相当やはり確固たる信念を持つておられると私感じておるのです。そういう点は、むしろ昨日の法務大臣の解釈は相当あいまいであると共に、そのあいまいさというものが、ややもすると、昔の何といいますか、司法大臣式な考え方、そういうものが相当にじみ出ておるように実は感じたのです。だから、そういう点は一つ検事総長としてしつかりがんばつてつてもらいたいのでありますが、その信念から行きますと、ああいう吉田暴言といつたようなものは、これは一つ検察陣の名誉にかけても、もつとこれは直接、まあ追及といつちや私少し言葉は語弊があると思いますが、もう少し直接質すべきものは質して、やはりあちらが本当に間違つたということなら、やはりあやまつてももらう、そういうふうなことがしてほしかつた、実はこう考えておるのです。しかしまあ一応今検事総長意向も聞きましたから、私はまあこの問題についての全般的な刑事政策上の取扱い方ですね、捜査が始まつて終了して、その後の発表の仕方なり、いろいろなことについて非常な疑問を持つておるわけですが、まあそういつたような点について、いずれあらためて御質問をしますが、その際にこの問題に幾らかまた関連してお聞きしたいと思います。本日のところはまあこの程度でとめておきます。
  60. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私もいろいろお聞きしたいことがございますが、それはまた次の機会に譲りまして、本日はただ一点だけお伺いしたいと思います。それは、衆議院の決算委員会において吉田首相を証人として出頭することを求めているのです。ところが今の形勢では、外遊を前にして有相は公務多忙であるので出られないというようなことで、首相は証人として出願しないような形勢にある。そこで決算委員会は、証言法に基きまして首相を告発するかもしれないような段階に来ておるのであります。告発をされますれば、これは検事が取調べる、もし起訴ということになりました場合には、これはその点について、検事総長にその係りの検事は指揮を仰ぐことになるかと思いますが、さようでしようか。
  61. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 誠に仮定な御質問で、具体的にお答えするにはどうかと思いますが、これまで例もなかつたことでございまするが、法文の建前から解釈いたしますると、国務大臣について取調べをなし、刑事事件として起訴相当であると検察官のほうで認めた場合には、これは総理大臣の承認を得なければ起訴の手続を運ぶことができない、こういう制限が憲法上認められておりまするので、総理大臣の場合といいましても、国務大臣として同じような取扱いになるのではないかと解釈いたしております。
  62. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますと、その際にまた個々の事件について検事総長に対して法務大臣は指揮監督することができる、この検察庁法第十四条の問題でございますがね。これが又発動されて、総理大臣がこの問題で以て許可をするということに至らない前に、この間と同じようなことの起り得る余地もあるわけですな。そういう可能性もあるわけですわ。その点いかがでししようか。
  63. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) こちらから稟請する前に、法務大臣のほうから指揮されるという場合も手続としてはあり得ることでありますが、法務大臣は十四条の趣旨を十分理解されておるのでありますから、具体的な場合には適正な運用をされるだろうと私どもは期待いたしております。
  64. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 すでに先例は開かれたのであります。従いまして、昨日の法務大臣の証言によりますると、あれは適法であつたばかりでなく妥当であつた、こういうことでございますから、私どもはその際に、またああいうような指揮権発動がなされることをおそれる。その際にも、あなたはこれは検事として反対してはいけないというとで、また隠忍自重するようなことですな、あなたのお言葉を借りれば、隠忍自重されるようなことも起りかねないのでありまして、私はそれを非常に危惧する。もちろんこれは仮定でございますから、あなたに御返答を求めようとは思いませんけれども、しかし今後そういう場合もあるということも、これは検事総長として這般の情勢からおわかりのことでありましよう。従つてそのときにまああまり隠忍自重ばかりされないようにお願いをいたしまして私の質問を終ります。
  65. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 私は、先ほどあるいはこういう質問が出たかどうかと思いまするけれども、ただいま検事総長お話ですと、検察庁法十四条の指揮権発動は今回のこの件に対しては異例な措置であつたという御説明でありました。昨日法務大臣から承わつたところによりますると、例えば外国の日本に現在おる方々がいろいろ問題を起しまして、これらに対しては十四条の指揮権が絶えず行われておる、こういうことを聞いておつたのでありますが、そういたしますと、検事総長の御意見とだいぶん食い違つたところがあるのでございますが、昨日小原法相から承わつたように、十四条の発動というものがときどきあるのでございますかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  66. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) その点も先ほどどなたかに申し上げましたが、法務大臣事件について指揮をされるというのは、これは勿論検察庁法十四条の規定に基いてそういう権限を持つておられるのであります。ところが日常の事務につきましては、検察官がこういうふうにしたい、あるいはこうしてくれという稟請をした場合には、法務大臣のほうで十分それを検討された上で、じやこうしよう、じやこうしろというふうに命令されるのでありまするが、それが稟請趣旨と命令の趣旨とが常に合致しておるのでありまして、あるときには書面を用いることもありますし、書面を用いないこともありますが、何ら問題は起きない。で、今回は検察当局のほうから稟請した趣旨に対してその通り指示を得られなかつた、反対の指示を下されたというところに、非常に異例な措置になつたのでありまして、あるいは戦争前のいわゆる旧憲法時代、司法省時代には司法大臣から検事に対して個々の事件についても検事の意思に反して命令を下されたということが、あるいはあるかもしれませんけれども、新しい制度になりまして、つまり検察庁法の十四条という、以前になかつた特別の規定が設けられた。この規定が設けられてから後は検察官稟請趣旨とは違つた指示をされたということは今回初めての異例の措置であると思います。
  67. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 了解いたしましたから、これで打切ります。
  68. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでは最後に、委員長から二つ検事総長にお伺いしたいと思います。公務御多端の折御出席下されましたことは、委員会としてきわめて感謝するところでありますが、実は当委員会開会に当りまして私から一言申上げましたのは、要するに当法務委員会としましては、現在疑惑を投げておりまするこの一連の被疑事件の打切ということを通じまして、これを審査の過程において解明することが国会と共に検察権の権威の確保、それの維持を図るゆえんである、こういうことで審議を進めるということを申上げたのであります。そこで最後一つだけお伺いしたいと思うのでありますが、なんせ今回の事件検察行政始まつて以来の事件であるということをたびたび法務大臣からもお話があつたのであります。しかして特に佐藤幹事長逮捕稟請、いわゆる指揮権発動ということがまたそれの中核をなし、かつまた検事総長の声明等から見ますと、この指揮権発動が遺憾であり、それを欠いたためにあとの事件を打ち切らざるを得なかつたような印象をすら与えておるのであります。しかしながら佐藤幹事長逮捕請求ということは、要するに内閣の運命にも関する問題であり、またこの種の事件によつてしばしば内閣が破壊したことも御承知通りであるのであります。従つて検察当局としても事ここに至つて逮捕稟請をやられるというに当りましては、相当のこれは証拠その他の傍証によつて確たる証拠を把握の上でなされたことと思うのでありますが、そういう観点からするならば、仮に逮捕のことができなくとも、それらの資料をもつて一応起訴をせられ、公判を通じてその全貌が明らかにせられるような方法がなぜとられなかつたのか、その点が第一点であります。それから第二点は、もし本件が、この逮捕請求が、それほど一連のこの事件の中核をなすものであるならば、先ほど棚橋議員からも話がありました通り検事総長としては、あるときは身を挺してもこれについてはその主張というものを貫くべきでなかつたかという感じ国民はするのでございますが、これについてもう一度御回答を願いたいと思います。なお更に、今回造船疑獄等一連の関係を一応打ち切つたようなお話があるのでございますが、どうもそうであるという一つ観点に立つならば、証拠が薄弱であつたのにかかわらず、いたずらに巨額の国費を使い、証人一万をこえる調べを行なつて、いわゆる泰山鳴動鼠一匹に陥つたんじやないか、何かそこに今回の事件について検察行政について欠くるところがあつたじやないかどうか、その点が一つであります。もう一つ観点に立ちまするならば、折角検察陣営が非常に日夜をわかたざる大努力をせられたにかかわらず、しかも相当巨額の血税がこれら一連の関係に流れておるにかかわらず、今回打切りの措置に出られたということは、何か政治的にゆがめられたのではないか、従つてそこに国民としては検察の独立とその権威とに対する疑念が生ずると思うのでございますが、これらに対して、今後検事総長としてはどういう方法手段によつてこれらを国民に解明せられ、そうして検察行政の独立と権威保持のためにいかなる方法をとられるのか、その点について特に伺つておきたいと思います。
  69. 佐藤藤佐

    説明員佐藤藤佐君) 検察当局といたしましては、すべての事件について、ある証拠に基いて犯罪の嫌疑をかけ、また証拠に基いて捜査を進めるのでありまするが、今回の事件につきましては、先ほど来申上げましたように非常に慎重なる態度をもつて捜査を進めたのでありまして、問題になつておりまする逮捕請求をするにつきましても、逮捕理由、また逮捕しなければならん必要性は、具体的な証拠に基いて、いわゆる疎明資料を十分備えてそうして逮捕請求稟請いたしたのであります。そういう逮捕理由なり逮捕の必要を認めるに足る十分な疎明資料を備えておつたのでありまするが、その逮捕をすれば、逮捕をしてそうしてつまり贈賄者側逮捕せられている間に収賄者側を逮捕して、そうして両者の交通、談合のできない状態において取調べを進めるということによつて、適確なる事実の真相をきわめることができるだろうという期待を持つてつたのであります。ところが逮捕ができないことになりましたので、この期待が裏切られ、つまり捜査に非常な支障を来しまして、初めに十分と思つていたような証拠も、だんだん時日が経過するに従いまして、その証拠も証拠力がだんだん薄くなるというような変化も来すのでありますし、また逮捕できなかつたことによつて十分事実の真相をきわめることができないということになつたので、不起訴処分の結果を見るに至つたのであります。幾らかでも嫌疑があるならば、公訴を提起してそうして裁判所で有罪か無罪の判断を仰げばよいじやないかという御意見のようでありまするが、これはなるほどそういう御意見もあるだろうと思いますが、具体的な事件処理するに当りましては、過去の幾多の事件経過にかんがみまして、こういう事件はこれだけの証拠を十分備えなければ、公訴を十分に維持することがむずかしい。つまり有罪の判決を得るには、これだけの証拠を備えなければならんだろうという大体の見当がつくのでありまして、今回の事件につきましても、その後任意捜査を進めまして、そうしてあらゆる努力をいたしましたが、どうもどこまでも公訴を維持するに足る証拠を、十分に備えるということができませんでしたので、嫌疑不十分として不起訴処分をいたしたのであります。  それからその次に、異例な指揮権発動を見たのに、どうしてそのまま隠忍自重したか、何らかの行動なり意思表示をすべきではなかつたかという御意見でありまするが、この点は先ほど棚橋議員に申し述べた通りでございまして、同じことを繰返すのも恐縮と存じますので、前の答弁を引用させていただきます。  それから最後の御質問は、指揮権発動によりまして、当該事件捜査に非常な支障を来たした、また他の事件にも相当な影響をこうむつたということは、これはいなみがたい事実であると思うのでありまするが、そのほかに政治的な干渉なり或いは圧迫を受けて、事件処理を左右せられたというようなことは毛頭ございません。
  70. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これで委員会を閉じたいと思います。本日はこれをもつて散会いたします。    午後一時十六分散会