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羽仁五郎君 おつしやることはよくわかるのですけれ
ども、併し私の申上げている点についてはもう少し深く認識して頂くことが必要ではないかと思います。そこで、お聞きしておきたいのですが、
交通事件のみならず
一般に
警察で現在行われている
点数制度ですね。この実際について或いはわざわざお出かけ下さらなくても文書でお出し願
つてもいいかと思うんですが、第一はその採点を取る段階はどういう段階でお取りになるのか。これは言うまでもなく今御
説明になりました
検挙主義ということじやないということだ
つたんですが、
外勤警察官が
警察へやはり
事件の疑いのある
事件を持
つて来たときに
点数をそこで一点なり二点なりというものを付ける、その付ける人は誰なのか。いわゆる比較的下級の監督の地位にある方がお付けになるのか、それとも相当上のほうの万がお付けになるのか。それからその
点数を付ける段階とそれからその
点数を付ける人の判断がどの
程度までの人が判断するのか。で、まあ例えばこの
検察庁で以て処分をなす
つてから
点数が付くということならば、その
点数の段階が最終の段階で、最終の段階であれば裁判の結果を見て
点数を付けるということになるんだと思います。その場合に
検察庁で不起訴にされた、或いは裁判で無罪に
なつたということはマイナスの
点数になるのかどうか。まあ私は
警察の
実情を少しも存じないものですから、少しでもありませんが、つかま
つて中へ入
つてそつちのほうからはよく存じておりますが、お仕事をなさる面には一向タッチしたことはないので、素人の質問で或いは当
つていないかも知れませんが、それはそちらでお考え下さ
つて、この質問はこういう
意味であろうというようなことで、あとから御
説明をして頂ければ有難いと思うんです。こういう点をもう少し本質的に、日本の
警察を本当に民主化して、
警察官が本当に民衆に愛されるというものにして行くかどうか非常に重大な問題である。依然として民衆と
警察官とは敵対
関係になるかどうか。この間朝日新聞の中に出てお
つたので、お読み下す
つたと思いますが、イギリスのどこかの王様がデンマークでしたかへ訪問された。そのときに警視総監が先導された。そこに小さい子供がその警戒の
警察官の列をくぐ
つてちよこ
ちよことよその国の王様がお歩きにな
つているところへ歩いて来た。そうしたらば警視総監がその小さい子供の手を引いてそうして外国の王様の先導というか、案内をなす
つた。それでそのデンマークでしたか、そこの大学生がその警視総監に向
つて、あなたは我々の国における最も美しいものを外国の王様に見せて下す
つたというので、花束を贈
つたという話があるのですが、私は日本の
警察がこれと比較できないようなものであるというふうに申上げることは遠慮しますけれ
ども、併しそれは又デンマークにおいても美談であるのでありますが、併しそういう方向に是非行
つて頂きたいと思うのであります。それで私はこの
点数主義、
検挙主義の弊害の
一つは、
警察官の待遇が十分でないということにあることをよく知
つています。私はしばしば治安維持法があ
つた時代に
警察に長いこと置かれまして、
従つてそういう下級のというか、いわゆる
巡査の当時外勤の仕事の話やなんかをよく聞いたことがありますが、それらの面から言
つても、やはりいわゆる
通常の俸給で到底生活ができない。そうしてやはり何かの手当或いはそういうものによ
つて辛うじて生活をするというような場合に、一方においてはそういう原因がある。他方においては人権の擁護という点の意識が十分でない。そういういろいろな社会的な原因があり、又その社会生活の不安定というような理由もあり、いろいろな点があろうと思うのです。そしてそれが又
交通事件などを起す側の人の間に、社会生活が安定していないために、円タクの運転手も、決してああいうスピードを出して走りたくないでしよう、自分の生命にも
関係することですから……。けれ
ども現在の政治が不安定であるということに原因がある。さまざまの原因があるので、
従つてこれを除くということは、日本の現状においては容易じやないということは十分にお察しを申上げるのですけれ
ども、併し同時に、そういうものであるということを考えられて、要するに問題は人権を尊重し、
従つて、第一線に立
つて働いておられる
警察官が本当に民衆に愛せられ、我々が
警察官の姿を見るごとにそこに温かい気持、そうしてさわやかな空気を感ずるか、それとも
警察官を見るごとにそこに恐るべき空気、冷たいそうして圧迫的な空気を感ずるかということは随分重大な問題であると思う。それで今の点を、そういう
意味で
只今御
説明下す
つた程度以上に考えて頂きたいというお願いと、それからそれらについて私のほうに理解の誤
つている点があるならばそれを正したいと思いますので、
資料を頂戴することができれば有難いと思うのであります。
それから
検察庁のほうにお願いでありますが、例えば無
免許運転ということが重大なことだという御
説明がありましたが、これは誠にそうだと思う。けれ
ども、我々の
一般の素人といいますか、国民のほうから考えますと、
検察庁或いは裁判官、まあ裁判官をここへ引合いに出してはいけないかも知れませんが、要するに
法律を扱
つておられる方というものは、非常に概念というもので仕事をなさる。
免許証を持
つていないというのは無
免許運転という範疇にお入れになるわけですが、実際において国民の人生において発生する
事件というものは無
免許運転をやろうと思
つているわけじやないでしよう。それぞれの事情、それぞれの場合で、
免許証を持
つていないということは即ち無
免許運転だという字句の解釈のようなわけには行かないでしよう。ですから、概念的にだけお示しがありますと、或いは
警察のほうで概念に示された御意思というものを尊重する結果、
免許証がなければ即ち無
免許運転である。
従つてこれは、この場合はどうもそう害はないのだけれ
ども、併し実際において、そのお示し下さ
つた概念のほうか。言えば重大な概念に入
つて来るということがあるのじやないかと思う。これは裁判官の場合でも、或いは
検察庁のお示しに
なつた、それからさつき御
説明になりましたいろいろな刑事などの場合でも、とかくいわゆるこれはまあ国際的にも、そして日本では特に長い間の問題ですけれ
ども、概念で仕事をする。民衆のほうは生活から来る問題なんです。そこに食い違いがあ
つて納得しない。
従つてそこに又人権の侵害というものが起
つて来るということが多々あるじやないか。
従つてこの
基準をお示し下さる場合に、成るべくそのいわゆる
法律上取
扱いよい簡単な概念ということでなく、そのことがどういうことを
意味するのかということをも含んだ親切なお示し方を願いたいというように思います。それで、私はここにお示し下さいました
資料にあるような、
起訴猶予理由が付けられておりますような極めて軽微な、そして実際に実害のない
事件というものが、これはこの検事局のほうへ
送致されて来ることを検事局は恐らく歓迎してはおられないだろうと思う。逆に、併し、さつきの
警察官の給与が十分でない、そして
警察官が生活に困難をしているというようなこともあり、
警察官が検事局に送
つて来た
事件が
起訴猶予或いは不起訴にな
つて行くということに対して感ずる感情というものもあろうかと思う。そうすれば、折角送
つて来たものを問題にならんというふうにはねられる問題もそこに出て来るだろうと思う。それらの点をも含めて、やはり私はここにお示し下さいました
資料を、役所の外から我我国民が拝見すれば、やつぱり現状は甚だ憂うべき状態だという印象に尽きると思います。で、この
程度のものをお巡りさんが
事件として取上げて、そうして
検挙といいますか、それで
警察署に持
つて来てひねくり廻して書類を書いて、そうしてこれを検事局に送られる。検事が又これをいろいろ研究せられて、そうして検事は現場を見ていないのですから、いろいろと苦心されるでしよう。これは問題は実害はないようだけれ
ども、併しどうだろうか。そんなことよりも何よりも現場で
事件というか、それを取扱
つた警察官がその
事件の性質を一番よく判断し得るはずなんです、だからこのようなものは問題にならんということが、検事が苦心してその結論に到達せられるという努力は多としなければならない。併し現場のその
警察官が問題にならないということを判断できないのがおかしい。それができないというのは、ほかに理由があるからである。人間はいろいろな理由があると、当然判断し得る判断さえも誤ることがある。白痴のごとく、或いは小児のごとく、何らそれの条件に
関係がなければ常識的に、そうして民主的に判断ができるのに、それがほかの条件があるために、折角今御
説明下さ
つた点数制度というものは決して
検挙主義というものではないという御
説明があ
つたにもかかわらず、現実にここに出ている
事件はいずれも最近の
事件です。昭和二十九年の極く最近の
事件です。ですから、最近もこういうものはまだこういうことが行われているということを、これは私はお役所の中のことを存じ上げませんが、併し役所というものを外から見ると、こういう今申上げたように、これはひどいことが随分行われているものだという感じを抱く。これはどうか
一つ最後にお役所の中のほうからばかりお考え下さらないで、お役所の外のほうから、国民のほうからも考えて頂いて、ここには問題がある。而も相当重大な問題があるというふうにお考え願えれば有難いと思うのです。