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1954-03-02 第19回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二日(火曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            小野 義夫君    委員            青木 一男君            加藤 武徳君            楠見 義男君            三橋八次郎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   政府委員    法務政務次官  三浦寅之助君    法務省保護局長 斎藤 三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    国家地方警察本    部警備部警ら交    通課長     後藤田正晴君    法務省刑事局参    事官      下牧  武君   —————————————   本日の会議に付した事件連合委員会開会の件 ○参考人の出頭に関する件 ○犯罪者予防更生法の一部を改正する  法律案内閣送付) ○交通事件即決裁判手続法案(内閣送  付)   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今から委員会を開きます。  先ず連合委員会に関する件についてお諮りいたします。交通事件即決裁判手続法案につきまして地方行政委員会より連合委員会開会されたい旨の申入れが、ございました。つきましては、連合委員会開会いたすことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕   —————————————
  3. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 御異議ないものと認めます。  なお、連合委員会開会いたします回数、日時等については、委員長にお任せを願いたいと存じます。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕   —————————————
  4. 郡祐一

  5. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 先ず、犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案予備審査)について政府提案理由説明を聴取いたします。
  6. 三浦寅之助

    政府委員三浦寅之助君) 只今上程に相成りました犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申上げます。  この法律案は、平和条約第十一条による被拘禁者の赦免、刑の軽減及び仮出所等に関する審査事務をつかさどる中央更生保護審査会委員の数三人を五人に改めることによつて、これらの事務の適正且つ迅速を図ることを目的とするものであります。中央更生保義審査会事務のうち、現下最も重要且つ多量なのは、平和条約第十一条による被拘禁者釈放に関するものであり、これが釈放は、我が国勧告裁判国同意決定とによつて行われることになつておるのでありまして、政府としては国民の強い要望の次第もありますので、鋭意その促進に努力しておりますが、現在巣鴨に残留する七百八十余人の者は、米、英、蘭、濠の四カ国関係でありまして、これらの関係国は、政治的な全面釈放については多大の難色を示し、個別的、司法的に処理する意向を寄せておりますので、我が国においてもこれに即応する勧告手続を要するに至つておるのであります。従いまして、かかる要請に応ずるための調査及び審理をつかさどる中央更生保護審査会事務は、極めて精緻にして複雑なものとなり、現在の三人の委員によつては、処理し切れない状況にありますのと、社会各層に亙る学識経験者意見を綜合して有効適切な勧告を行う必要がありますので、三人を五人に改正しようとするのであります。  この法律案におきましては、右の改正に伴い、委員のうち過半数が同一政党に属することにならないよう、その任命及び罷免に関する規定を改めるほか、審査会議決等に関する所要の改正もいたしております。  なお、附則においては、この法律施行する日を規定するほか、この法律施行により新たに任命される二人の委員のうち、一人についての最初の任期につき特例を設けております。  以上申述べましたように、平和条約第十一条による被拘禁者釈放等に関する事務の完全な処算目的として、この法行案を提出いたした次第であります。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことを切望する次第であります。   —————————————
  7. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 本法案につきましては、次回以降において御質疑を願うことといたし、次に交通事件即決裁判手続法案に関し、過般の委員会において要求いたしました資料につき政府側よりその説明を聴取いたします。
  8. 後藤田正晴

    説明員後藤田正晴君) 先般御要求ございました資料につきまして御説明を申上げます。  先ず交通違反事件検挙点数制度及び交通違反事件取締基準はどうであるかということについての資料の御説明を申上げます。交通違反事件点数制度と申しますのは、実は交通専務員につきましては、これは専務員は直接本庁の課長なり、或いは署の係長なりが直接把握しておる関係上、専務員については勤務監督の特別なそういう必要性がございませんのでやつておりませんので、資料はありません。  それからそれ以外としまして交通取締に従事いたしますのは、いわゆる外勤警察官でございますが、この外勤警察官につきましては、勤務独立をいたしております関係上、勤務実績判定資料、つまり何と申しますか、メリツトの制度を採用いたしまして件数主義に陥らないように事件の質を見て点数を本人の勤務実績判定資料にするという意味点数制を採用しておる一部自治体警察があります。ただ、国家警察のほうにはその制度は採用いたしておりません。なお、この点数制度につきまして交通事件について点数をとつておるというところは、又自治体警察の中でも数が少ないのであります。この点数制度と申しますのは、事件検挙のみならず防犯の成績とか、或いは通常勤務上の、当番上の、いろいろな第一当番、第二当番、第三当番という当番がございますが、それぞれの当番基礎点、そういうものもありますし、或いは功績賞なり功労賞などをもらえば、それについてはどういつた加点があるとか、或いは懲罰を受ければ更に減点が幾らやられる、こういつたような制度でございまして、交通のみについてそういうことをやつておるということは全然ないのでございます。先ほどちよつと申しましたように、自治体警察の一部にございますが、それも全体そういう制度が広く行われておるというものではないわけでございまして、特別に、従つて私のほうに資料と申しましても実はそういつた資料手許にございませんので、その点御了承を賜りたいと思うのでございます。実はこの制度は由来がございまして、占領軍の例のアメリカのメリツト・システムのあれとして採用されたものなんでございます。ただ、そこに果して人間の勤務成績点数に表われるかどうかといつたようないろいろな問題もございましたので、全国一律にそういうものが行われたということではございません。まして独立後そういう制度をやめたというところもありまして、現在では一部にしか行われてないというのが実情のようでございます。  それから第二番目の交通違反事件取締基準についてでございますが、これも御承知の通り交通警察は極めて地域性のある警察でございます。つまり対象としますものの質が極めて多様性を持つておるとか、或いはその量が地域によつて非常に異る、或いは道路状況なりその他施設の状況が極めて複雑で、地域によつて非常に差があるといつたようなことで、取締りにつきましても一律に基準を定めて、全国にこのようにというようなやり方は実はやつていないのでございます。その地その地の実情従つて処理をするように、こういうように極めて抽象的な指示をいたしておるにとどまるのでございます。  そこで、国警におきましては、先ず自動車でございますが、自動車については無免許運転或いは速度違反或いは酩酊運転、こう言つた無謀操縦等悪質事犯は、これはその都度、まあどこでも送れるように、送致をする。但しそれ以外の、悪質犯以外の事犯、軽微なものについては大体違反が二回以上重なつた場合に送致をしたほうが適当であろう。こういつた基準を、極めて抽象的な基準でありますが示しておるにとどまるのでございます。  なお、自動車以外の歩行者につきましては、これは行政上の措置といたしまして、現在交通違反カードというものを作つておるのでございますが、この違反カードを渡すわけでございます。そうして気を付けて下さい、こう言つて渡しておるわけでありますが、それが大体三回以上に及んだときは送致したほうがよかろう、こういつた程度指示しか現在実はやつてないのでございまして、各地々々でそれぞれ然るべき基準と申しますか、扱いを定めてやつておるというのが実情でございます。  なお、ここに警視庁基準ちよつと資料に書いてございますが、警視庁のもここに書いてございますように、現場措置、訓戒、送致、この三つの段階に分けまして、それらの一応の基準みたいなものを定めておりますが、これも極めて実は抽象的なので、各署の管内で実情がそれぞれ東京都といえどもつておるということから、抽象的な基準に実はなつておるのはここに書いてある通りであります。  以上で交通違反事件検挙点数制度と、交通違反事件取締基準と申しますか、送致その他の取扱基準でございますが、それの説明を終ります。  次が、通行禁止又は制限並びに速度制限、これが一体どういう根拠によつて行われておるのか、こういうことで、ございましたが、これはここに書いてございますように、先ず通行禁止制限につきましては、道路交通取締法第六条及びそれに基く道路交通取締法施行令第五条によつて通行禁止及び制限が行われておるのでございます。道路交通取締法第十六条によりますと、一つ制限禁止権者公安委員会でございます。その場合には、道路標識令による道路標識に基いて禁止又は制限措置がとられるわけでございます。いま一つ制限禁止権者警察官又は警察吏員ということになつております。この場合は制約がございまして、緊急の必要性があるということ、いま一つは一時に限られると、この二つ制約の下に警察官又は警察吏員制限禁止ができる。そこで緊急の必要とか一時とかという概念は、これは社会通念によつて決せられるわけでありますが、先ず我々の扱いといたしまして、公安委員会に報告を警察官がいたしまして、道路標識による禁止又は制限をするようないとまがないといつたような緊急の場合に一時的にやる、こういうことで現在警察官又は警察吏員禁止制限をすることがあるわけでございます。これはどういう場合であるかと申しますれば、例えば事故が発生をして、そこを通られるというとどうも危険が更に加わるといつたような場合に一時巡査がとめる、こういうことであります。その場合には道路標識令による標識によつて禁止制限をするわけではございません。これは一般巡査の適宜な判断によつて禁止制限をやつておるわけでございます。  なお資料工事というのが公安委員会の場合に書いてございますが、工事はこれは絶対要件になつていないのでありますが、一般に周知せしめる必要がありますので、同時に告示をするほうが適当であろう、こういうふうに考えます。  この資料の二に禁止又は制限方法と書いてございまして、これがあたかも警察官若しくは警察吏員の行う場合にもそのように一般に公示し、且つ標識令による所定様式道路標識又は区画線でやるのだと読めますが、これは実は誤りでありまして、これは公安委員会がやる場合に限るのでございます。  それからなおそのほかに、これは私のほうの所管ではございませんが、申すまでもなく道路管理者による制限禁止という場合があるわけであります。  次に制限禁止の事例がございますが、これはお読み取りを願いたいと思います。  もう一つの問題の速度制限根拠でありますが、速度制限根拠は、道路交通取締法の第十条第一項及びそれに基く道路交通取締法施行令第十五条、これによつて速度制限が行われておるのでございます。そこで道路交通取締法の第十条第一項は、諸車の最高速度命令に委任いたしておりますが、それを長けまして施行令でどのようになつておるかと申しますと、普通の自動車で専ら人を運搬する自動車、その場合に乗車定員が十人以下の車の場合には、その車は昼は六十キロ、夜は五十キロが速度制限になつておるのでございます。但しその自動車は長さが三八メートル以下の小型四輪及び小型の三輪それから軽自動車、これは除くのでございます。それらを含めて先ほど申した車以外の車、例えばトラツクとかそういうものになりますが、そういうものは昼は四十キロ、夜は三十五キロ、これが制限になつておるのでございます。  その次はそれらの車それ自体についての最高速度制限があるほかに、公安委員会道路或いは区域又は時間を限つて交通の危険の状況を見て速度制限をすることができるようになつております。これが法の第十条第二項できまつておるのでございます。  なおそのほかに、この点もお手許に配付しました資料の書き方がまずいのでございますが、2の(二)、(三)と書いてございますが、これは算用数字の2の中に入らない別の扱いにお願いをいたしたいと思います。算用数字の2に入るのは(一)だけでございます。それでここの算用数字2の(二)と(三)のことを簡中に御説明申しますと、速度制限只今申しましたように車それ自体にあることが一つの場合と、道についてある場合が一つ、これだけあるわけでありますが、そのほかに緊急自動車というものがあるわけでございます。緊急自動車と申しますと、消防自動車、それから救急自動車警察用自動車、それと検察庁自動車で専ら犯罪捜査の用に使う自動車警察隊長が認定してあるもの及び保安庁の自動車警察隊長緊急自動車として認定をしたもの及び公共用応急作業自動車警察隊長緊急車両として認定したもの、これが緊急車両に相成つておるのでございますが、緊急車両最高速度は車それ自体最高速度道路最高速度制限を超えて制限公安委員会がきめることができるということになつておりまして、これは東京では大体八十キロでございます。全国的に見ますというと、平均大体七十キロ、これが緊急自動車最高速度になつておるようでございます。いま一つ最高速度の問題では自動車専用道路。この道路の場合には、その車それ自体最高速度及び先ほど申した道路最高速度を超えた範囲速度制限がきめられる。こういうことになつておりますが、これは例えば神奈川県のあのなんといいますか、十国峠はたしか自動車専用道路があつたように記憶しておりますが、これらはまだ最高速度そのものがきめてはないようでございます。従つて全国的に見てこの規定が働いておる場合は殆んどないようでございます。  次に軌道車最高速度でございますが、先ずこれは法令による最高速度がきまつておるのでございますが、これは道交法関係でなしに他の法令最高速度がきまつているのでありますが、その速度を申しますと、併用軌道の場合は動力制動機を持つている軌道車平均が二十五キロ、最高が三十五キロ以内ということになつております。その他の軌道車、つまり動力制動機を持つていない軌道車になるわけでございますが、これは平均十六キロ、最高が二十四キロということになつております。なお無軌条電車法令上の最高速度は旦は四十キロで夜は三十五キロということになつております。なお、そういつた法令上の最高速度範囲内で公安委員会道路なり区域なり時間を限つて制限ができる、これは自動車の場合と同様でございます。速度制限方法といたしましては、これはやはり道路標識令所定様式にきめられております標識制限する、これは道路について付ける場合です、そういうことになつております。  速度制限基準をここに書いてありますが、これは当然常識的に考えられることだろうと思いますので、説明は省きたいと思います。速度制限の例を書いてございますが、大体まあ東京都内のような所では通常三十二キロでございます。大体第二京浜とかああいつたような所はもうすこし走れるようになつておりますが、大体大都会で多くの交通量があるし、複雑な交通の質を持つているという所は大体三十二キロ程度が多いのでございます。  その次に、交通整理信号機及び警察官手信号という資料がございますが、これを御説明申上げたいと思います。交通整理信号機なり、或いは警察官手信号が一体如何なる根拠によつて行われているのか、こういうことでございますが、これは道路交通取締法の第五条に根拠を置いているのでございます。その第五条で信号機道路標識、それから警察官手信号等に従う義務が一般に課せられております。同時に第二項で「信号機道路標識及び区画線の点差、設置及び管理について必要な事項は、命令でこれを定める。」こういうことになつております。それを受けまして道路交通取締法施行令第一条第三項とありますが、これは御訂正を撒いたいと思います。第一条第四号でございます。第四号に、信号機というものの意義を書き、同時に施行令第二条に信号意味つまり手信号の場合警察官が水平に手を下げた場合にはとういう意味を持つかといつたように、信号意味規定いたしております。同時に同施行令の第四条で信号機設置若しくは管理公安委員会又はその委任を更けたもの、こういうような規定があるのでございます。  なお、交通整理基準といたしましてはこれは各公安委員会或いは警察本部でその基準を定めているのでございます。ここで警視庁交通整理規程というものを同時に資料としましてお手許にお配りいたしておきましたが、これを御覧になつて頂きたいと思うのでございます。勿論交通整理目的は、これは交通の安全と能率と便利、これを図るために整理が行われている、こういうことになるわけでございます。で、警視庁の場合には、信号機信号の場合は単独式信号系統式信号の二種類がございます。単独式と申しますのは、もうこれはその交叉点々々々でそれぞれのサイクルがきまつているのでございますが、系統式のほうは一カ所で青であるならばその道路が三十二キロの道路であるとするならば三十二キロで走つて行けば、次の信号も必ず青になつているというような信号方式が、これが系統式信号、こういうことになつております。但しこの系統式信号は如何にも合理的なようではございますが、一路線について青の場合には必ず青という以上は、それに相交叉いたします道路のほうの交通がそれだけ犠牲にならざるを得ないという欠陥を同時にこれは持つている方式でございますので、必ずしも至るところにこの方式を採用するというわけには参らないのでございます。あとは手信号によつて警視庁もやつております。大体この三つやり方で行われておる、こういうことでございます。なお、お手許にタイム・サイクルについての資料をお配りいたしておりますので、お読み取り願えれば仕合せだと思います。  いま一つは、自動車運転者適格は一体どういうのが適格であるか、こういうことで資料を出して欲しい、こういう御要求でございましたので、「事故運転者施行した心理検査について」という警視庁資料を一、二と区分をいたしまして、二つ手許にお配りいたしてございます。で、運転者適格は、これは申すまでもございませんが、運転技術、それから法令知識構造上の知識、及び身体条件、この四つが揃つておる場合に、この四つについて試験をして、合格した者に運転免許証を交付する、こういうことになつておるわけでございます。で、運転技術については技能試験を行い、洪令知識及び構造知識につきましては、それぞれ筆記試験をいたしております。身体条件につきましては、重点を視力の検査と四肢の運動検査、これについてやつておるのでございます。  そこで現在の試験で、お手許に配付いたしました資料でおわかりのように、心理検査が極めて重要なるものであるという結果が一応警視庁資料に出ておるのでございますが、この心理検査が、現在の運転者試験の場合には必ずしも十分なる方法で行われていないということは誠に残念なことでございますが、私どもとしても認めざるを得ないのでございます。ただ、この心理検査警視庁資料では一応こういうように出ておりますが、果してどこまで客観性があるか、又やり方それ自体に無理があるのかないのかといつたような点をいま少し検討を加えなければならんのではないか、こういうように考えておるのでございますが、まあ心理検査筆記試験等では或る程度わかるのでございますので、全然心理検査が、名前は心理検査としては行われませんが、やつていないというわけではないわけでございます。まあいずれにいたしましても、もう少し心理検査については真剣に検討を加えて行かねばなるまいと、かように考えておるのでございます。ただ、何分にも現在年間の運転者の免状を取る者の数が三十万人あるのでございます。従つてこれに数倍する受験者全国にあるわけでございまして、なかなか必要にして且つ十分と言われるだけの試験は、我々が見てもそれだけの試験を必ずしも行うことができないということは、これは私どものほうとしても認めておるわけでございますが、これらについては、将来もう少し検討を加えて十分な試験をできるだけやつて行きたい、かように考えておるのでございます。  私どものほうからお手許に御配付いたしました資料は以上でございますので簡単でございますが御説明を終りたいと思います。
  9. 下牧武

    説明員(下牧武君) それでは法務省関係資料について御説明を申上げます。「正式裁判の申立に関する事項」というのと、「無免許運転」というのと、それから表題なしのがございますが、最初表題なしのほうから御説明いたします。  前回羽仁先生からこの処罰を受けるものと限界にとどまるものとの基準はどうだというお話がございましたが、第一線の取締の面では、只今国警のほうから御説明がございまして、検察庁でどういたしておりますか、実例を挙げてテイピカルな違反態様ごとに一応の見当を付けて頂く意味におきましてこういう資料を差上げたわけであります。お読み下さればわかると存じますが、例えば、無免許運転にいたしますれば、朝の五時三十分頃、乙に書いてあります。こういう非常に早い時刻に練習をしただけであつて、而も免許を持つた運転者が横に乗つてつて、そうして指導しておつたというような事情がある場合はこれを許しております。次の酩酊運転にいたしましても、乙に書いてございますように、酩酊度検査いたしました結果、非常にその酩酊度が少い、正常運転に差支えがないといつたようなやつは、これは起訴猶予にいたしております。それから速度違反にいたしましても、乙のように五キロぐらいしか超えていないというのは非常に違反程度が軽微というのでこれも猶予にしております。それから免許証の不携帯も、初めは持つていたんだけれども、途中でどつかなくしてしまつて、そうしてなくしたということをちやんと警察署に申告したというような場合には情状酌量の余地ありということで猶予にいたしております。それから無燈火にいたしましても、日没後間もない時刻に、乙に書いてありますが、五時二十五分頃、こういう時刻に、而も二つ付けなければならんのが一つだけたまたま消えておつたというようなのは許しております。信号無視にいたしましても、初め青信号であつて、ぽつと停止線を超えようとしたときに急に注意信号に変つたというようなときに、これを乗り切つたというような場合、これも許しております。流し違反にいたしましても、銀座で客を降した直後にすぐに代りの客が乗り込むというので断りかねたというような場合、常識的に判断いたしまして、そういうふうな特殊の場合、それからUターンにいたしましても、地理不案内で標識に十分気付かなかつたとか、又特殊のそういう具体的危険もなかつたというような場合はこれを許しております。軌道敷内通行にいたしましましても、道路の幅員が非常に狭いんで、どうもやはり追越すには少し無理しなければいけないというような地理的状況にある場合、本当の短距離の間をちよつとやつたというような場合は大目に見ておるというわけでございます。それから交叉点内の追越しにいたしましても、ここに書いてあるのは、これは本制限は二月十日公布せられて、而もそれは二月十二日の違反である。而も十分その事実を知らなかつたように思われる。それから標識にも十分気が付かず、具体的危険もなかつたというような場合、それから無警告の追越しの場合も、初めぽつと鳴らしたけれども、前の車が気付かないでそれをえいつと行つたというような場合で、而も具体的に危険がなかつたというような場合、それから駐停車方法違反にいたしましても、まあその当時の交通状況から見て、そう交通に妨げとなつたようなことがない、而も三十秒ぐらいちよつと客を降すためにとまつたというような軽微なものは許しておるというようなことで、成る程度交通違反事件は定型化しておりますが、やはり検察庁におきましては、比較的具体的の事情を調べまして、そうして尤もだと思われる、情状の酌量の余地あるものは許すということになつております。  それから次は「正式裁判の申立に関する事項」という書面でございますが、お尋ねは、正式の裁判の申立をする率が非常に少いのでございますが、それは被告人がその裁判に心服するというよりも、まあ不服はあるのだけれども、何かの事情で我慢するというのがありはしないか、その資料をということだつたと存じます。調べてみましたところ、この統計的な資料をすぐ作ることがなかなか困難ことで、個人に当つてみないとわかりません。ただ実務の経験からいたしまするというと、成るほどそういう場合がないとは言えません。それでその理由を一般的に考えてみますと、ここに書いておきましたように非常に漠然たるものでございましようが、手数や費用が非常にかかるというようなこと、それから少しの落ち度はあるし、まあ罰金の額も大したことはないから我慢しようというようなもの、それから正式裁判の申立ても余りごたごたするだけで大した効果も期待できないというようなところにあるのじやないかと存じます。私どもといたしましてはこういつたことがあつては困りますので、それで法正的にはいろいろ手当をいたしておるわけでございます。先ず略式命令を出します前に、本人に異議があると略式命令が出せませんから、警察官から略式手続というのは一体どういうものだ、而も不服があれば正式裁判の申立てもできるというような概略を説明いたしましてそしてその異議がない場合には異議がないと、説明を聞いたけれども異議はございませんという意味の書面、俗に同意書と申しておりますが、それを取つて裁判所へ略式命令を請求するわけです。裁判所じやそういう書面がついておりませんと、これは略式命令を出すことができません。正式裁判に廻さなければいけないというふうに法律上縛つてございます。それから東京など非常に忙しいところではこういう説明をするほかに、公衆の控え場に掲示をいたしまして、そして略式命令というのはこういうものだという説明をするようにいたしております。それから裁判所が略式命令を出します場合もこの略式命令の中に不服があれば正式裁判の申立てができるのだということをはつきり断わるようにいたしてございます。このたびの即決裁判手続におきましても口頭でそれを告げるというふうに措置いたしておるわけでございます。  どうも数字的な資料が御要求通り出ませんので、御了承頂きたいと思います。
  10. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは御質疑のおありのかた……。
  11. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 順序では、この前私が質問しましたのは、第一には点数主義というものがどうなつているか、それから第二には微罪の程度というものであつたのですが、今の警察のほうからの御説明では、この交通事件について点数主義というのは大体において、或いは原則的にやつていないと、他の事件についてはやつておられるでしようか、どうでしようか。
  12. 後藤田正晴

    説明員後藤田正晴君) 先ほど御説明いたしましたように、交通事件については交通専務員と外勤員と両方が当るわけでございますが、専務員についてはそういう制度はどこもないわけでございます。点数制度というのは外勤員が独立勤務に服しますので、勤務実績判定資料として取つているところが若干ある、こういうわけでございます。そこで勤務実績判定点数の中に交通警察上の点が入つておるかどうかということでございますが、これは入つておるところと入つてないところがあるわけでございますが、一般的にこの制度を採つておるところでも入れていないところが交通については多い、こういうことでございます。ほかの勤務上の点については当然だから入つておるわけでございます。そういう制度を採つておるわけでございます。そういうことになります。
  13. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは前にもたびたび私が申上げたことなので、重ねて申上げるのは甚だ恐縮なんですが、この点数主義というものがあるのかないのかわからないが、大体考えられておるものですね、これは外国にも例えばアメリカなんかにも、或いはその他にもあるところもあるでしようけれども、この日本の点数主義というものにはいろいろな問題が従来あつたようでしざいます。で、私が一番この問題を強く気付きましたのは、戦争前といいますか、始まつていた当時といいますか、上海の工部局の委員最初は日本からどなたかお入りになり、後にはその工部局の警視総監というのかな、それを日本の方がなさつたりして、日本の警視庁からでしたろうか、警官がかなりたくさん、数百名あつちへ行かれて、あすこに勤務されたことがあります。その選ばれたのも一段質の下のほうを選んだのじや勿論ないように当時の新聞では報ぜられておりました、日本の警察官としてはかなり質のいい人たちが送られたらしいのです。当時日本で発行されておる英字新聞で神戸で発行されていたジヤパン・クロニクルという新聞がありました。それ及び上海で発行されていた上海イヴニング・スタンダードでしたか、そういうように国内的にもそして国際的にもこの上海工部局における日本警察官のいわゆる行動取締り、警察権行使の実情についてかなり激しく問題になつたことがあります。その要点はですね、要するに簡単に申上げると、イギリス、まあ当時は両方ともイギリスを例に引いておられるんですが、イギリスの警察官で、そうして警察官の素質がよい、つまり昇進するというんでしようかね、これはいい警察官だという判定を下す基準は、飽くまで現場でそうして簡単にそうして有効に処理ができる能力があるかないかといこうことだ。ところが日本の警察官はそういうことで判断されていないらしい。それでつまらない事件を現場で解決できないで、そうして一々警察署に、本署に持つて来る、而も被疑者というんでしようかね、本人を連れて、或いは呼出をかけて警察に持つて来る。工部局ではこの日本の警察官やり方にすつかり驚いたと言うんですね。この日本の警察官は現場で事を処理する能力が全くないのじやないかといといように考えられる。ところが後に至つてそれには原因があることがわかつた。日本の警察官が職務上の能力があるかないかを判定されるには、警察に幾ら事件を持つて来るかということ、事件を余計持つて来れば、これは有能な警察官であるということになつて、捜査部長になつたり警部補になつたり上に上つて行くんだが、全然何も持つて来ない奴は、あいつはぶらぶら遊んでいるんだろうというように判定されて、無能な警察官というふうに判定されるらしいという記事が載つていました。でこれについてはもつと政治的な論評も加えられていたんですが、それは今ここでは略しますが、私はこれはたびたび国内的に……国内的というか、日本で出ている英字新聞にそうして又国際的な上海のイヴニング・スタンダードなどに、この問題がしばしば論ぜられ、而もこの問題が日本の本質的な政治の問題にまで入つて来て議論をされたので、当時実に赤面をしたというか、事情をよく知らないことがありますけれども、併しそれを論じている人は……私は事情をよく知らないけれども、論じている人はかなり事情に通じているらしい。従つてその論拠には聞くべきところがあるんじやないかと思つたんです。これは警察ばかりじやない、日本の官僚主義の万般に亙ることであつて、例えば似たような例では、同じ上海の例などでもそうですが、土地の売買などのときに、イギリスの場合には常に領事が自分で出て、そこの売主と買主とが本人であることを確めて、そうして原簿にそこで書入れてサインさせて、それで話が済むということで、五分ぐらいで済む。ところが日本の場合にはそれこそ何というんでしようか、戸籍謄本とか抄本とか土地の地図とかいろいろなものを集めて、何度も領事館に通わなければできないという類似の例が多々あります。今問題の交通違反のことで特にこの点を考えて頂く必要があるのじやないか。一般点数主義というものが警察の仕事をなさつて行く上に勿論有益な点もありましようが、有害な点のほうが多いのじやないか。その有害の最も大きな点は、理由なくして人権を侵害するということだと思います。これは憲法もこれを重く見ている点でありますし、而も比較的素養の余り高くないことから、或いはその仕事をやつている間に起つてくる悪い習慣から、とかく最も重要な点が軽く考えられやすい。それでそこに軽い違反が起つているのに、そうしてその違反に実害がないのに、そのほうが極めて恐るべきことのように思われて、それでもつと大切な人権の蹂躙ということが平気で行われる。これが交通事件だけじやなくて警察官の頭が、一般に国民の人権というものを侵すことが如何に官吏として許すべからざる罪であるかということの意識がだんだん薄くなつてつてしまう。それで至るところで人を引張るということが起つてくる。これは交通事件から、延いてはやがて一般に基本的人権が至るところで蹂躙される。民主主義の基礎が覆える虞るべきことになつて集る。この点でこの点数主義については十分考えて頂きたい。幸いにこの交通事件については点数主義というものがそんなに強く実行されていないということがよく御説明でわかつたように思えるんですが、只今検察庁のはうからの御説明を伺うと、実例としてはやはりそうでないということがここに出ているように思うのであります。今御説明になりました無免許運転の場合の起訴猶予の理由、例えば朝非常に早く五時頃人通りのない所で、そして免許証を持つている運転手が脇についておつて、そこで運転の稽古をしていたというような人をとにかく検察庁まで送るんですね。これはどういう理由で以てこういうことをするのか。恐らく点数主義が形式にあるかないかにかかわらず、その精神においてはやつぱり事件を自分が余計警察へ持つて来る。署へ持つて来る。或いは検事局へ一応送る。書類だけでも送るということよりほかに理由がないのじやないか。それから今この横察庁からお出し下すつた資料は、本当に重要な資料です。第二の免許証を携帯していない場合の起訴の理由、或いは自動車の無燈火、二つの明りの、而もまだ夕暮になつたばかりで、二つの明りのうちの一つがついていない。これなどは実際その場で解決できた問題ではなかつたかと想像される理由があります。それから流し違反の場合などもそうです。そこで前の客が下りて、そしてすぐ次の客が乗せてくれといつたためにやつたというそういうときには、その場で解決できることだ。それから軌道内の通行にしても同様です。無警告追越これらに検察庁がお示し下さいました起訴猶予の理由、起訴猶予ということにこれが当るかどうかということ、それより軽い処分はないかも知れませんが、併しこれをお巡りさんが、検察庁がこういうふうにいろいろお考えになつて起訴猶予をしなければならないかどうか。検察庁がこういうことにまでお仕事をなさらなければならないということは、現場に立つておる警察官が如何に事件をその場で処理する能力ということを重く見られていないかということがわかると思います。警察官がその場で処理する能力が十分に認められれば、警察官が民衆に愛されるということにもこれはなるのです。あのお巡りさんは話のわかつたお巡りさんだ。随分叱つたけれども、併し結局許してくれたということになる。ところがろくにどういう悪いことをしたのだかもその本人にもわからないうちに、お前は検察庁へ、検事局のほうへ事件が行つているというふうになるんですからね、この点はどうでしようか。なかなか警察は国家地方警察とそれから自治体警察と、まあ現在の政府がその両方どれくらいそれぞれの意義に従つて認識しておられるかは別として、併し警視庁なら警視庁がこの点についてのもう少し……、今申上げたことの意味はおわかり下すつたことだと思うのですが、お考え下さり、そうして新らしい方向というものを確立される必要がないだろうか。今問題になつております法案の審議についても、これはやはりその点がどうであろうかということで、折角簡易にしようということが問題になつて来るもけです。手続を簡易にするということは、民主的な慣習が存在している場合にのみ許されることで、若し民主的た慣習がないならば手続を簡易にするということは危険です。人権の確保の上から……。そこで今申上げることは、この法案について最も第一に重要な点であると思うので御説明を願いたい。
  14. 下牧武

    説明員(下牧武君) 点数制の点につきましては、むしろ警察の所管で私からお答えするのはどうかと存じますが、一応合理的な理由はあると存じます。ただ、その点数をどう採るかということで、何でもかんでも検挙して来て、ものになりさえすればそれが点数になるのだという点数のきめ方はいけない。それで現場で違反検挙しまして、そこで最も妥当な処罰を講じた場合に、それもやはり点数になるというふうな点数制度であれば、非常に合理的なものじやないかと存じますが、只今私の承知している点数主義はそういうふうな方向で動かされている。而も交通事件なんかにつきましては点数が非常に、点とか二点とかもう極く微々たるもので、そのために何でもかんでも無理押しに検挙して行くという風潮は、その点数なるが故に出て来るということはないのじやないかと考えております。  それから送致の点でございますがこの送致基準をどう定めるかということはこれは訴訟法から申しますれば検察庁の責任でございます、それで検察庁といたしましては、この無免許運転の例をおとりになりましたが、この無免許運転というのは交通事件としてはこれはやはり重要視しなければならないので、無免許というものを緩く取締をいたしますというと、基本が崩れて参ります。それで無免許運転というのは全部送致するというふうに検察庁から指示しているのだろうと存じます。それで、その場合に具体的に現場で処理さしてもいい事件もございましようが、一応無免許運転といつたようなものをしておきながら、その場で済まされるというよりも、一応検察庁まで来て、これは大変だという観念を植えつけるほうがいいというので、恐らく無免許運転は例外なしに送致するという指示をしているだろうと存じます。それから無燈火のようなのは、先ほど後藤田課長から御説明がございましたように、一回だけの違反で送つて来ているのではなくて、やはり二回とか重なつたのでそれを送致をして来ているということで送致になつているのだろうと思いますが、まあ全体的に申しまして只今おつしやいましたこの点数の弊害ということは、私どもとしては十分考慮しなければならん面でございまして、警察やり方検察庁として喙を容れることはできませんけれども送致基準を定めるとか、そういう場合にもそういう弊害の起きないように、好意的に話合つた上で善処するというふうにいたしたいと存じております。
  15. 後藤田正晴

    説明員後藤田正晴君) 只今羽仁先生のお説如何にも私御尤もな点が多いと思います。なるほどこの点数制度というものには、私はやはり相当な、運用の如何によつては、欠陥を孕んでおる制度ではないか、こういうふうにも考えられる面があるわけであります。併し同時に他面この制度のいい点という点もこれ又羽仁先生も御了承願えるところがあるのじやないかと思いますが、そこで問題はどうも点取主義、検挙主義になりはせんかという、ここが私は一番問題だと思うのですが、そういつた弊害を生ずる可能性があるということは、これ又先ほど申上げるように否定いたしません。ただ現在やつておるところの制度は、これは今私は国家警察におりますが元自治警におつたことがございますので、記憶いたしておるのですが、外勤警察官と申しますのは防犯に重点が置かれておる、つまり。パトロール・マンというのは犯罪を起さないのだ、これに重点を置いた勤務をするのだということになつておりまして、検挙というものを中心においた警察の週間に外勤はなつていないのでございます。従つてこの点数の場合にも勤務状況勤務の規律ですね、独立勤務でございますから、それがいいとか悪いとか、或いはどうも防犯上の処置がこの事件は悪かつたのじやないか、或いは人が死んだといつたようなときに、警察官が果して人命救助に適切なる働きをしたのかどうかといつたような点が、これが実は外勤警察官勤務の重点になつておるのでございます。従つてこの点数という点を中心にして運営をして行く、こういうふうに実はなつてつたのが私ども自治警におりました当時、そういうふうな運営をいたしておつたのでございまして、お話のような検挙中心に点数制ができておるということでは実はないのでございます。と申しますのは、点数制が全般の問題じやないので、独立勤務をいたします外勤警察官についてのみ行われているということからそういうことになつておるわけでございます。ただ、私はそう申しましても羽仁先生のおつしやるような弊害が絶無とはこれは申しません。従つてこれはよほど注意して運営をして行かなければいけない、同時に羽仁先生のおつしやるのと逆のことを、実は私ども警察におりますと心配するのでございます。と申しますのはこれは外勤警察官のみについてではございませんが、一般の話ですけれども警察というのは華やかな事件は一生懸命にやる傾向が、これは人間の弱点としてあるわけでございます。従つて殺しとか、たたき、或いは大きく新聞に扱われるような事件、内容は私申しませんが、そういうことになると無暗に一生懸命になる。ところが実際の民衆が一番苦しんでおるのは何かと言えば、これは盗犯なんです。窃盗なんです。実際は一番窃盗に苦しむ、終戦後恐らく窃盗に入られない家庭はなかろうというくらい窃盗は多いわけなんです。ところが窃盗で現状に臨検をしてくれる警察官が、警察署が果してどのくらいあるかということになると、これは非常にやかましく幹部が言つても少ない。というのは重要な殺し、たたきになるとこれはえらくお褒めも預かるしするので、一生懸命にやるということになるのですが、なかなか小さな事件は、いわんや交通なんというものは全然やつてくれないというのが実は実情なんです。そういう逆の面も出て来る弊害を生む恐れがある、こういう点も私どもとしては実は警戒をしておるのでございます。いずれにいたしましても羽仁先生のおつしやるような弊害の点も十分我我も気を付けなければなりませんしいたしますが、ただ外勤警察官について行われているこの点数制というのが、必ずも検挙それのみじやなしに、むしろ逆に防犯とかそういう外勤警察官本来の任務についての点数制を中心に動かしておるのだ、この点は是非一つ御了承を賜わりたいと思います。
  16. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 おつしやることはよくわかるのですけれども、併し私の申上げている点についてはもう少し深く認識して頂くことが必要ではないかと思います。そこで、お聞きしておきたいのですが、交通事件のみならず一般警察で現在行われている点数制度ですね。この実際について或いはわざわざお出かけ下さらなくても文書でお出し願つてもいいかと思うんですが、第一はその採点を取る段階はどういう段階でお取りになるのか。これは言うまでもなく今御説明になりました検挙主義ということじやないということだつたんですが、外勤警察官警察へやはり事件の疑いのある事件を持つて来たときに点数をそこで一点なり二点なりというものを付ける、その付ける人は誰なのか。いわゆる比較的下級の監督の地位にある方がお付けになるのか、それとも相当上のほうの万がお付けになるのか。それからその点数を付ける段階とそれからその点数を付ける人の判断がどの程度までの人が判断するのか。で、まあ例えばこの検察庁で以て処分をなすつてから点数が付くということならば、その点数の段階が最終の段階で、最終の段階であれば裁判の結果を見て点数を付けるということになるんだと思います。その場合に検察庁で不起訴にされた、或いは裁判で無罪になつたということはマイナスの点数になるのかどうか。まあ私は警察実情を少しも存じないものですから、少しでもありませんが、つかまつて中へ入つてそつちのほうからはよく存じておりますが、お仕事をなさる面には一向タッチしたことはないので、素人の質問で或いは当つていないかも知れませんが、それはそちらでお考え下さつて、この質問はこういう意味であろうというようなことで、あとから御説明をして頂ければ有難いと思うんです。こういう点をもう少し本質的に、日本の警察を本当に民主化して、警察官が本当に民衆に愛されるというものにして行くかどうか非常に重大な問題である。依然として民衆と警察官とは敵対関係になるかどうか。この間朝日新聞の中に出ておつたので、お読み下すつたと思いますが、イギリスのどこかの王様がデンマークでしたかへ訪問された。そのときに警視総監が先導された。そこに小さい子供がその警戒の警察官の列をくぐつてちよちよことよその国の王様がお歩きになつているところへ歩いて来た。そうしたらば警視総監がその小さい子供の手を引いてそうして外国の王様の先導というか、案内をなすつた。それでそのデンマークでしたか、そこの大学生がその警視総監に向つて、あなたは我々の国における最も美しいものを外国の王様に見せて下すつたというので、花束を贈つたという話があるのですが、私は日本の警察がこれと比較できないようなものであるというふうに申上げることは遠慮しますけれども、併しそれは又デンマークにおいても美談であるのでありますが、併しそういう方向に是非行つて頂きたいと思うのであります。それで私はこの点数主義、検挙主義の弊害の一つは、警察官の待遇が十分でないということにあることをよく知つています。私はしばしば治安維持法があつた時代に警察に長いこと置かれまして、従つてそういう下級のというか、いわゆる巡査の当時外勤の仕事の話やなんかをよく聞いたことがありますが、それらの面から言つても、やはりいわゆる通常の俸給で到底生活ができない。そうしてやはり何かの手当或いはそういうものによつて辛うじて生活をするというような場合に、一方においてはそういう原因がある。他方においては人権の擁護という点の意識が十分でない。そういういろいろな社会的な原因があり、又その社会生活の不安定というような理由もあり、いろいろな点があろうと思うのです。そしてそれが又交通事件などを起す側の人の間に、社会生活が安定していないために、円タクの運転手も、決してああいうスピードを出して走りたくないでしよう、自分の生命にも関係することですから……。けれども現在の政治が不安定であるということに原因がある。さまざまの原因があるので、従つてこれを除くということは、日本の現状においては容易じやないということは十分にお察しを申上げるのですけれども、併し同時に、そういうものであるということを考えられて、要するに問題は人権を尊重し、従つて、第一線に立つて働いておられる警察官が本当に民衆に愛せられ、我々が警察官の姿を見るごとにそこに温かい気持、そうしてさわやかな空気を感ずるか、それとも警察官を見るごとにそこに恐るべき空気、冷たいそうして圧迫的な空気を感ずるかということは随分重大な問題であると思う。それで今の点を、そういう意味只今説明下すつた程度以上に考えて頂きたいというお願いと、それからそれらについて私のほうに理解の誤つている点があるならばそれを正したいと思いますので、資料を頂戴することができれば有難いと思うのであります。  それから検察庁のほうにお願いでありますが、例えば無免許運転ということが重大なことだという御説明がありましたが、これは誠にそうだと思う。けれども、我々の一般の素人といいますか、国民のほうから考えますと、検察庁或いは裁判官、まあ裁判官をここへ引合いに出してはいけないかも知れませんが、要するに法律を扱つておられる方というものは、非常に概念というもので仕事をなさる。免許証を持つていないというのは無免許運転という範疇にお入れになるわけですが、実際において国民の人生において発生する事件というものは無免許運転をやろうと思つているわけじやないでしよう。それぞれの事情、それぞれの場合で、免許証を持つていないということは即ち無免許運転だという字句の解釈のようなわけには行かないでしよう。ですから、概念的にだけお示しがありますと、或いは警察のほうで概念に示された御意思というものを尊重する結果、免許証がなければ即ち無免許運転である。従つてこれは、この場合はどうもそう害はないのだけれども、併し実際において、そのお示し下さつた概念のほうか。言えば重大な概念に入つて来るということがあるのじやないかと思う。これは裁判官の場合でも、或いは検察庁のお示しになつた、それからさつき御説明になりましたいろいろな刑事などの場合でも、とかくいわゆるこれはまあ国際的にも、そして日本では特に長い間の問題ですけれども、概念で仕事をする。民衆のほうは生活から来る問題なんです。そこに食い違いがあつて納得しない。従つてそこに又人権の侵害というものが起つて来るということが多々あるじやないか。従つてこの基準をお示し下さる場合に、成るべくそのいわゆる法律上取扱いよい簡単な概念ということでなく、そのことがどういうことを意味するのかということをも含んだ親切なお示し方を願いたいというように思います。それで、私はここにお示し下さいました資料にあるような、起訴猶予理由が付けられておりますような極めて軽微な、そして実際に実害のない事件というものが、これはこの検事局のほうへ送致されて来ることを検事局は恐らく歓迎してはおられないだろうと思う。逆に、併し、さつきの警察官の給与が十分でない、そして警察官が生活に困難をしているというようなこともあり、警察官が検事局に送つて来た事件起訴猶予或いは不起訴になつて行くということに対して感ずる感情というものもあろうかと思う。そうすれば、折角送つて来たものを問題にならんというふうにはねられる問題もそこに出て来るだろうと思う。それらの点をも含めて、やはり私はここにお示し下さいました資料を、役所の外から我我国民が拝見すれば、やつぱり現状は甚だ憂うべき状態だという印象に尽きると思います。で、この程度のものをお巡りさんが事件として取上げて、そうして検挙といいますか、それで警察署に持つて来てひねくり廻して書類を書いて、そうしてこれを検事局に送られる。検事が又これをいろいろ研究せられて、そうして検事は現場を見ていないのですから、いろいろと苦心されるでしよう。これは問題は実害はないようだけれども、併しどうだろうか。そんなことよりも何よりも現場で事件というか、それを取扱つた警察官がその事件の性質を一番よく判断し得るはずなんです、だからこのようなものは問題にならんということが、検事が苦心してその結論に到達せられるという努力は多としなければならない。併し現場のその警察官が問題にならないということを判断できないのがおかしい。それができないというのは、ほかに理由があるからである。人間はいろいろな理由があると、当然判断し得る判断さえも誤ることがある。白痴のごとく、或いは小児のごとく、何らそれの条件に関係がなければ常識的に、そうして民主的に判断ができるのに、それがほかの条件があるために、折角今御説明下さつた点数制度というものは決して検挙主義というものではないという御説明があつたにもかかわらず、現実にここに出ている事件はいずれも最近の事件です。昭和二十九年の極く最近の事件です。ですから、最近もこういうものはまだこういうことが行われているということを、これは私はお役所の中のことを存じ上げませんが、併し役所というものを外から見ると、こういう今申上げたように、これはひどいことが随分行われているものだという感じを抱く。これはどうか一つ最後にお役所の中のほうからばかりお考え下さらないで、お役所の外のほうから、国民のほうからも考えて頂いて、ここには問題がある。而も相当重大な問題があるというふうにお考え願えれば有難いと思うのです。
  17. 下牧武

    説明員(下牧武君) この検察庁基準の示し方、おつしやる通り非常に抽象的な基準ではいけませんので、具体的にわかりやすく示すべきだと存じます。それで先ほど引例なさいました無免許運転免許証不携帯、これなんかは一応法律の上でははつきり区別されておりますので、その点は私どもの承知しておるところでは区別して基準は示してあるのじやないかと存じますけれども、ただ一般的な問題といたしまして、余り形式的に扱うということじやなくて、現場の警察官に或る程度その判断力を与える。そうしてそれがそういうふうにして事件を固めて行きますれば、だんだん、この程度のものはもうこれは訓戒、現場の説諭でよろしいという基準がだんだんできて来るのじやなかろうかというように私ども今考えております。今後の運用に当りましては、その点従来通りというよりも、検察官と警察との話合いで、よく話合つて、そうしてその辺の大体の基準がわかるように漸次持つて行くようにしたらどうかということを、よりより後藤田課長にも意見を申述べております。そういう動きにするようにしたらどうだろうか、余り形式的に何でもかんでもというやり方はこれは考えものじやなかろうか。ただそれが又行き過ぎますというと非常な弊害が出て参ります。それで現場の取引なんかが行われるようになると、これは困りますから、その辺を注意しながら或る程度常識的な判断を働かせるというふうに運用したいと、実はかように考えておるわけであります。
  18. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それは例えば無免許運転という場合ですな、その無免許運転は、その基準は示されておる。併し無免許運転という形をとつておるけれども、併しそれに何かの理由があり、そして又そこに実害が直ちに発生し、又は発生する虞れがあるというようには考えられないというような場合は除外するというようなお指図は不適当なものでしようか、どうでしようか。と申しますのは、最後に我々が判断しなければならないのは、即決裁判というものをなさいますときにその即決裁判というのはどういう意味のものであるか、そうしてそれに不服かあつてれどういう場合には不服であり得るか、それからその不服がある場合には正式裁判ということが或いは願えるということの御説明を願う場合、これはこの場所で口頭でおつしやる、或いはそこに掲示、貼出されるという場合なんですが、その口頭でおつしやる、或いは掲示をなさるというのは、私が今まで承知しておる範囲内ではなかなかわかりにくいのです。むずかしい言葉でおつしやるし、むずかしい言葉で書いてありましてね、我々でも御説明を伺わなければよくわからん、そういう意味かと……。御説明をなさるときにやはり国民のほうの気持になつて説明をなさるというよりも、お役所のほうのお立場から説明というようになつておる場合がどうも多い。国民の教育の程度かまだ十分高くないので随分むずかしい言葉であると、それで頭がこんがらがつて何を言われたのかさつぱりわからない。要するに正式裁判なんかやると、もつとひどい目にあうぞということなんで、そこが一番大きな点なんです。現に警察なんかはそういうふうにおつしやつておるお話を非常に耳にしていますよ。お前ここで恐入ればこれで済むのだ、恐入らなければもう少し思い知らしてやるぞというような場合が非常に多いのです。ですからなぜここで今まで正式裁判の申立が少ないかといこことを、折角御苦心なさつて資料を出してもらつたのですが、やはりそこに非常に困難な大きな理由があるのじやないかと思います。そこで私は実は略式裁判乃至は即決裁判に不服な場合には正式裁判を願い出すことができますよということをどんな工合におつしやいますか。録音でもここで各委員に聞いて頂けば、成るほどこれじや正式裁判を申出るものがないだろう(笑声)というふうな模範的なことでは困るのです。そういうことは許されるかどうかわかりませんが、テーブルの下へでも置いておいて録音すればわかるが、こういうことで即決裁判できめるということは問題があると思う。そういう点についても留意を賜わりたいと思うのです。
  19. 下牧武

    説明員(下牧武君) この基準の示し方でございますが、これは余り具体的な点をまとめるのはやはり問題があると思います。それで現場で余り細かいことをほじつて聞くわけには行かないと思います。成る程度形式的に見て、これはもう明らかに問題にならないというものだけを適当な措置を講ずる。その適当な措置といたしましてもそれをただ注意しつ放しでなく、やはり或る程度は本人に薬をきかせなければなりませんから、本人が一口注意を受けたということは何らかの形で残して、もう一遍やられたら、今度は処罰をされるぞということを何らかの形で残す。るういう意味で現在は違反のカードなんかを作りまして、そしてそれを所管の署に廻わす。同時に検挙した署で保管しておくというような措置が講ぜられておるのでございます。そういうことでこの基準の示し方は具体的でなければなりませんが、事件の性質からいつて或る程度形で入つて行くような示し方をしませんと、とても一々細かいことを聞いておるようなことをしては却つていけないと思います。  それから本人の不服の申立の点でございますが、私どもの経験からいたしますと、大体この事件は始んど全部が現行犯でございます。それで例えば信号無視にいたしましても、信号を知つてつたか、知らなかつたか、そういう点が争いになる。争いになるのはもう大体ポイントはきまつております。駐車違反ということになりますと、それは駐車禁止区域であることを知つてつたかどうか、駐車区域に停めてはいかんということは本人は知つておりますので、そういう点が問題になると思います。それで事件の性質といたしましては非常に何と申しますか、犯罪事実ということがはつきりしておる事件です。ですから検察官を呼びましてこういうわけだということで調べる。ですから駐車区域に気が付かなかつたというような弁解をします。その場合に場合によつては併しこういうところに標識が出ておるのではないか、と申しますのは、逐条説明のときに御説明いたしましたように現認報告書というものをとつておりまして、そこに地図が書いてあります。そしてこの区域が駐車禁止区域になつている。そしてこことここに標が立つておるということを現認報告書ということで警察官が作つておりますから、それでこことここにあるじやないか。気が付かないわけはないだろう。それでこういうことで気が付かなかつたということでやる場合もありますし、そうですかというので頭を下げる場合もある。そこで実際の経験から行きますと、大体これになるのは本人が恐入つている事件で、悪かつたといつて自認しておる事件でございます。そういつた場合に恐る恐る一体罰金はどのくらいになりましようかといつたようなことで、さあこのくらいだろうというようなことをはつきり言いませんが、見当を立てて言う。そうするとうちは今困つておるんでとか、いろいろ弁解が出て来ます。ただ、その場合にこの種の事件といたしまして、余りに細かく家庭の事情までも一々斟酌する性質の違反とは違う性質で、或る程度これは形式的に行かなければならない。行政取締法規ででございますから、そういう場合にまあ冗談ですけれども、そういつても夜店で物を値切るようなわけにはいかんという冗談を言いまして、まあ我慢しろと、又場合によつてはもう少し下げてやつてもいいなということで求刑を下げるということもございますが、そういうことで大体のところで参りますが、さて罰金の命令をもらつてみるとどうもちよつと重過ぎると、といつてこれをじやあ正式に申立ててどうこうというと、そこまでも行かないというのがどうも大部分ではないかと思います。それで一番、と申しますのは、罰金が確定いたしましてからこの分割払いを希望して来るのが非常に多いのでございます。それでまあ我々普通に考えていましたときに、例えば流しの運転手でしたら料金売上げを持つておりますから、それでちよつと立替えるくらいできるだろうというくらいに考えておりますが、やはりそういうものはきちんと会社に納めて、そうしてやはり自分の給料の中から払うようにして、会社では見てくれないらしい。そういうことで分割払いを希望するのが非常に多い。そういうところは大体希望に応じて本人にできるだけ便宜を図るように徴収の面では考えております。そういうところでどうも犯罪事実そのものというよりも、その犯罪事実に附随した情状というものは勿論罰金の面でございます。それから起訴、不起訴の面でも考えますけれども、もう一つ踏み込んで家庭の事情まで行くというような主観的な事情までは考えません。その点との睨み合せでございますが、本人にとつては同じことでございますから、やはり家庭が困つておればこつちも困るということで、やはり割切れない点もあることと思いますが、そういう点はもう少し押し切らなければならない。事件の性質としてそういう場合もあるわけでございます。でございますからこのまあ不服申立ての理由が少いというのもすつかり割切れて、全部ということには参らないと存じますが、大体においてはまあしようがないという軽い気持で、罰金を納める面において或る程度緩めてやれば、或る程度満足をするというような事例が多いように我々は認めております。
  20. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の申上げるのは、そういうような点を含めましてですね、やはりこの正式裁判を受けるのが、あなたの権利である。そして、それが一番いいのだということが十分、そのおつしやつておられておるかどうかという点なのです。それで我々国会議員としても、国民の人権を簡略に取扱うということが許されないわけでありますから、常にあなたとしてはこの問題について、あなたというのは、事件を起した人にとつて、やはりたとえ問題は比較的簡単な問題であり、そして、それに対する罰金なり何なりというものが、軽微なものであろうと何であろうと、人権が侵されるか侵されないかという問題が重大問題になつて来るわけで、それを今の御説明で納得しているかどうかということなんです。だから本来は正式裁判に行かれるのが当然であろうというふうに十分に説明されて、併しこの場合には、こういうような点、こういうような件で、この理由で正式裁判に行く必要はないというふうに御本人がお考えになる場合にこの手続をとれるのだという点が、どうもいつも逆になつておるように思うのです。で、正式裁判に行くやつのほうが、行こうと思うほうが考えが偉つているんで、簡単にできるのじやないかというような印象が国民に与えられて来る場合が多いということを申上げる。これは御承知のように、前の陪審法の場合にも同様です。陪審法についての陪審申立が少いということが、陪審法の廃止の理由にもなつておりますが、陪審法を請求する申立の場合が少いということが問題なんです。そこに国民がそれだけの権利を求めないということはあり得ないのですから、求めないとすれば、そこに理由がなければならない。ところが、そつちのほうはお考えにならないで、申立が少いから陪審法は廃止したほうがいいんじやないかということになつて、やめるということになつてしまう。そうすると、あの場合には、明らかに起訴陪審でないのですから、従つて国民は、起訴陪審でないのですから、陪審を請求しない。或いはそれで一遍にきめてしまうというようなことと同じように、結局正式裁判の申立をする場合が非常に少いということは非常に問題だと思うのです。それで政府政府といいますか国民と、それから広い意味政府と、相互において、人権の尊重ということが十分認識されていない結果が、そこにあるんじやないか。だから要するに、長いものには巻かれろという、権力がある前では、今丁度御説明になりましたが、十分納得していないが、まあしようがない。いわゆる没法子という気持がどうしてもここに出て来る。こういうことが我々国会議員としては非常に大きな問題で、そこで即決裁判でやつていいかどうかということの恐らく問題はそこにあろうと思う。だから最初に申上げましたように、手続を簡易にするということは望ましいことではあるけれども、併し、それは民主的な慣習がある場合にのみ許されるのであつて、若しそうでないと、手続を簡易にするというよりも人権が尊重されないということになるほうが大きい。そういう意味の点で、従来のお考え方を十分に変えて頂く必要があるんじやないかと思います。従来の考え方を変えて頂くという失敬なことを申上げるのは、甚だ私としても心苦しいのですが、併しさつき申上げましたように、昭和二十九年の例に、こういう例が出ているということです。私はこれは明治二十九年くらいだつたならばよかろうと思います。ですから今までに検事局では、こういう起訴猶予の理由を付してこの事件が解決されたことが多々あるのです。それにもかかわらず、これが前例にならないで、何か相変らずこういうことを検事局に持つて来る人があるんです。持つて来るお巡りさんがある。これを見れば、これは明治二十九年ぐらいにはこういうことがあつて、今日にはこういうものがないというのならば、それで納得できるのですが、昭和二十九年の二月に至つて、まだこういうものが、お巡りさんが持つて来て、それで検察局でこういう理由を付して猶予されるというのは相当問題じやないかと思います。  それからこれは希望を申上げたのですが、なお伺つておきたいことは、実際の実情を見ますと、東京都内なんぞばかりかも知れませんが、駐車禁止区域というのが実に広いのです。丸ノ内なり或いは浅草なり或いはなんなりというところでは、えんえんとして駐車禁止区域が続いていて、そこで自動車をとめて置くということは全くできないのですね。これは運転手に聞いてみてもその通りで、随分長い道路がずつと、私は一々指摘しませんが、駐車禁止区域になつております。これは実際にその必要はあるものか。又そうすることによつて問題が解決しているかどうか。それからもう一つの例は、消防栓というのでしようか、火を消すための水道栓がありますが、その近所に駐車してはならんということになつております。これも果してそういうことが実際の必要として、今申上げる運転手なり或いは交通の自由という意味の人権を尊重して、ああいうことをなさつているのかどうか。勿論火災の場合に、直ちにその水道栓が使用せられなければならんことは言うまでもない。併しその車の中に運転手がいれば、火事だ、どいて下さいと言えば、どかない運転手は恐らくないでしよう。それにもかかわらず、あそこを恒久的に駐車を禁止しておられるということは、どういう理由によるものであるか。これは御説明を伺つておかなければならん。こういう点からも、前からも、本日最初から申上げて来たのですが、やはり私の判断に理由なしとしないのじやないかと思う。で、今の交通禁止区域が非常に広いということは、御説明しにくいと思いますが、消防の水道栓のほうはどうですか。
  21. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  22. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて下さい。
  23. 後藤田正晴

    説明員後藤田正晴君) 只今の駐車禁止区域の問題は、成るほどたくさんあるわけでございまして、ただ、これはまあ一線の警視庁参考人からも、よくお聞きを願いたいと思いますが、恐らく私はあれでもまだ交通の安全という面から見れば、足りないのじやないかというくらいに実は感じている。ということは、日本の建物がガレージを、大きなビルデイングを建てると声に、必ず総坪数幾らの建物を建てる場合には、ガレージは何坪のを建てねばならんというようなので、そうしてその道路には置かなくてもいいのだというような、何か建築法上のやり方でもとれば別ですけれども、そうでないものですから、もう無暗に車をほうぞれにとめねばならん。そうしますと、御承知の通りに、道巾が狭い。それに道路と、交通の質が、私は外国の事情はよく知りませんけれども、こんな複雑しているのもちよつと少いのじやないか。自転車から始まりまして電車まであるわけでございますから、こういう質が非常に複雑している。人口が極めて稠密である。而も車は現在東京都内では恐らく十八万台あるのじやないかと思います。これは戦前の恐らく四、五倍になつておりやせんかというように思いますが、えらく数が殖えているといつたような状況で、これはもうその駐車の区域を、どこにでもとめられるということであつては、これはとても危なくてしようがないのじやないかというように思います。ただお説のように、余りにも目に立つということはこ九は事実でありますけれども、これは果してあのやり方が適切なりや否やということは、これは第一線の一つ警視庁参考人をお呼びになるそうですから、その人から聞いて頂けば仕合せだと思います。私は恐らく止むを得ないじやなかろうかというように実は思つております。  それから消防の消火栓、これは成るほどお説のような見方も私は成り立つんじやないかと思いますが、実は消防の消火栓のある地域から十メートル以内が駐車禁止になつてつたのでございます。それを昨年の九月私のほうで政令改正をいたしましたときに、まあ強引に五メートルにしてしまつたのですが、なかなかこれは役所のことでございましてむずかしいのです。やはり消防となれば消防の立場がございますから、やはりいざというときのことを考えますでしようし、どうもそういうふうに距離を縮めてくれと言われては困る、こういうことでございますけれども、今度五メートルということで半分に縮まつたんですが、ただこれを無制限というわけには私は参らんではないかと思います。駐車と申しますと、今羽仁先生おつしやつたように運転手がおればいいのですが、駐車の概念は、運転手がおる場合とおらん場合と両方あるのでございます。おらん場合ということのはうがむしろああいう場合には多いのでございます。まあ営業運転手の車などの場合には、大体人待ちですから運転手が中におるようでありますけれども、オーナー・ドライヴのときにはこれは大体留守の場合が多い。いざといつてもエンジンのスイツチは切つておりますし、鍵を持つて出ておりますから押さなければならないといつたようなことで、消防の消火栓のあるところを全面的に駐車禁止をはずしてしまうというわけには、これはちよつと無理ではないか、こういうふうに考えております。
  24. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 非常に広い範囲に亙つて駐車の禁止をなさるということは、これはやはり都市行政全般に関係して来ることで、今もお活のように東京は多いし、従つてまあ警視庁の場合自も多いのですが、警察の見地ばかりから考えて、それで都市行政の上からは何にも手当していないというのが現状です。これは恐らく都長官の責任というようなことでガレージというものが作れない、道路政策というのも破れ放題というようなことで、警察のほうでは実際困るのだから禁止してしまう。それで国民なり或いはその自動車を運転する人々のほうからはそれから受けるところの無理が非常に多いので、そこで違反事件というものが起つて来るということになつて、その違反事件を中心に又人権が侵害されるということになつて来る。だから問題は都市行政の問題で、これは常に法律が或る制限を人権に対して加えるという場合には、それに対してどれだけのことがしてあるかということのバランスにおいて考えなければならんので、そちらが全然やつていないのに禁止する、或いはそれを違反として検挙するということばかりやるということが問題だということを申上げているので、そういうふうに御了解を願いたい。  それから第二の点は御説明通りで、その運転手がおるのに今までもそこに駐車を禁止するという理由が私はないじやないか。現在まで運転手がいても、そこにとめちやいかんということになつている。又国としてオーナー・ドライヴの数は少い。外国の場合に比べて……。だからオーナー・ドライヴの場合に困るじやないかというような場合に、運転手がそこにいるのに、又いるのかそれは当然である場合まで禁止なさる。今のお考えについては、十メートルを五メートルにして頂いたことは非常に有難いことだと思うのですが、その同じ御精神を、運転手がいる場合には駐車していいというお取扱いはお願いしてもそう無理じやないじやないかと思いますが、どうですか。私のようにそういうことをろくに知りもしない人間から専門家に申上げるのは甚だ如何かと思うのですけれども……。私は以上で質問を終ります。
  25. 後藤田正晴

    説明員後藤田正晴君) 只今の件はよく一線とも一つ将来よく検討してみたいと思います。ただこの機会に私は二点ばかりちよつと先生にお答えしておきたいのですが、一つは、どうも警察一般国民の立場を考えておらんじやないか、こういう声で、これは実は私としては非常に残念なことなんです。と申しますのは、私も実は交通警察の素人なんでございますが、交通警察を担当いたしまして非常に感じることは、交通警察は味方がないということなんです。およそどんなものでも半分敵があれば半分味方があるものなんですが、交通警察は攻められ通しなんです。これは如何にもおかしいのではないか。私ども従つて交通警察運営上の判断の尺度は必ず被害者の立場、つまりは一般通行人の立場でものを考えて交通警察を運営して行こうではないかというので、実は全国の課長に私はまあ指導をしておるのでございます。と申しますのは、運転手のほうは運転手の組合がある。労働組合がある。これは大変な力を持つておる。この面からの攻撃を私はしよつちゆう受けるわけです。ところが経営者の方面はこれは又大変な力を持つておる。この方面からも又攻撃を受ける。いずれにしても味方がない。ところが一番気の毒なのは、交通事件で何が一番かわいそうかと言えば、被害者です。つまり一般通行人の利益を保護してそれを反映してやるという声が実際私のところには届かないのです。私はそれが交通政策運営上一番残念にふだんから思つておるところなんですけれども、これは私どもとしては従つてまあ何とか交通事故を少くして、気の毒な人を一人でも少くしようじやないかという観点で、現在は運営せざるを得ないのじやないか。と申しますのは、事故が毎年四〇%殖えておるのでございます。全国で不自然死傷者と同じ数か、それをオーバーするだけの数が交通事故で毎年なくなつておるといつたことでございますので、その点を何とか一つやろうではないかというような観点で実は運営いたしておるので、この点は是非御了承を賜りたいと思います。  それからいま一つは、現場の警察官がもう少しうまくやつたらどうかという御意見、これも如何にも御尤もなんです。ただまあこう言つては妙なあれになりますが、私どもが第一線で巡査の服を着てやれば、これは恐らくできると思います。そこで現在の第一線の巡査に私は余り広い範囲の裁量の余地は任せたくない。これは却つて逆の面の弊害が出て来る虞れがある。それといま一つは、交通違反は全部現行犯でありますから、そこでその場で処理をすべきものでありますが、それをやりますと、あとからく来るたくさんの交通がみなとまつてしまうというような、他の交通の妨げになるというような面が実は多いのであります。そういうような観点で交通事件扱いは一応本人に都合のよい日を聞いて、そうして署へ来てもらつて、署でこれは検察庁送りにするかしないかというような扱いをするのが適当であろう。第一線の警察官にはそれはちよつと無理ではないかと考えておりますので、この点も合せて、先ほどの御意見も、ございましたので、お答えいたしておきます。
  26. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今おつしやつたことは御尤もだと思つて拝察するのですが、私が先ほどから申上げておることはそれとは関係なく十分にお考え願いたいと思います。それでこういうような即決裁判というような法案を出すということと関連して、第一線警察官の給与及びその処遇を改善するというようなお考えが私はあるべきじやないかと思う。手続を簡単にすれば、その簡単な手続に関係して来る人のレベルを高くしないと、簡単な手続をやることが問題だと思います。その点もお答え願えればいいのじやないか、これは重大な問題ですから御研究を下さるなり何なり……。  それから第二は、今お話のように随分御苦心なさつておるということはよくわかるのでありますが、併し具体的な例で申上げますと、東京部内だから警視庁の管轄で国警ではないでしようが、全国で恐らくそういうことがあると思いますが、何かの事件があつてこれは交通違反事件じやないのですけれども自動車をとめて、お巡りさんが我々や運転手をお調べになる。一時敗戦後暫くは、ああいうふうになさるときに、ちよつと失礼しますというふうにおつしやる。或いは丁寧な警察官ですと、実は今こういう事件がありましてそれで調べておりますので、というように理由をお告げになる。私はそこまで行くのが当然だと思う。こつちも随分急いでいるし、急いでいないにしても、人が自由に交通しているものをそこでとめるのですから、それには理由を告げるのが当り前です。一時はややよくなつて来たと思つていたのですが、最近は言語道断になつて来ましたね。初めから人を睨むような顔付きで、失礼千万な顔を自動車の中に突込んで、それで、名前は、というふうに言います。羽仁五郎と言われると、びつくりしてですね、そのドアを閉めて、それで何もお調べにならないで、どういうわけでしようか、お調べになる理由があるならば何も羽仁五郎といつて恐れる必要がないのですし、若し羽仁五郎でないとどういうことをするのか。まあ窓から差入れられたお顔を拝見すると、只今説明がありましたように、いろいろの御意をなさつているにもかかわらず、最近又悲しむべき傾向があるのじやないかと思う。これらはあまり細かいことに立入るのは如何かと思うのですが、最初に申上げますように、交通事件の解決について手続を簡単にするということが許されることであろうかどうであろうかということを判断するには、民主的な慣行が確立し又は拡張されつつあるか、それとも逆行しつつあるかということが判断の基準として極めて大事なことでありますので、それらの点についても、若し御弁解なり何かあるならば伺つておきたいと思いますが、そういう点についてはどうでしようか。
  27. 後藤田正晴

    説明員後藤田正晴君) 先ずあとのほうからお答えしますが、御意見の点は私全国の課長会議の節には、更に私から直接そういつた場合の警察官の心がまえについて、こういう声がある、よく一つ部下の指導をやつてもらいたいということを、私直接各県の課長に申し伝えるようにいたしたいと思います。
  28. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それは私だけの主観に基くかも知れませんから、なおお調べ下さつて、如何にもそういう印象があるということであればね……。
  29. 後藤田正晴

    説明員後藤田正晴君) それは、今の場合は道路交通取締法二十三条の二でやつている場合と、警察官職務執行法でやつている場合とあるわけであります。二十三条の二でやつている場合には運転手に限るわけであります。従つて羽仁先生に、あなたの名前は、とこういうようなことを聞くことは実はおかしいと思うのですが、聞いたとすれば、それはその場合は、警察官職務執行法に基いての取扱いになつているように思います。いずれにいたしましても、そういう場合の態度その他については、先生おつしやるように、一時は非常によかつたのです。最近又よりが戻りつつあるという御意見でございますので、これは又私のほうから十分注意を加えておきたいと思います。  それから処遇の問題は、これは役人全般の問題で、ございまして、予算にからむ問題だと思いますので、私から何とも申上げかねるのですが、私は一般官吏のレベルを一応基準にした場合には、警察官の待遇は、昔とは全然違つて一般官吏よりはいいということをお答えしておきたいと思います。これは非常に私はよくなつている、レベルは高いのではないかとこういうふうに思います。
  30. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それは一般より高いというのみならず、扱われることが、特に第一線において人権というものと重大な関係がありますし、それから又日本の警察についての悪い風習も随分あるから、そういう面からいろいろ公務員の制度としての関係もあつて御告心ではあろうと思うのですけれども、私は絶えず警察の問題について警察官の素質を向上して頂きたいということを申上げていますが、その点からも、いろいろな点から一つ工夫御苦心下さつて警察官の素質が劣悪ということであつては、警察を置くことの意味がないのですから、根本的な問題に関係して来るから、そこで御苦心を願いたいと思うのです。
  31. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  32. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて……。本日は本案についての質疑はこの程度を以て次回に譲ることにいたします。  なお申上げておきますが、土田中央更生保護審査会委員長から二月十二日に戦犯者の刑の減刑等についての報告を聞きましたが、秘密会にいたしましたので、印刷はしてありませんが、速記録ができ上つておりますから、若し御希望の委員は速記録を適宜御覧頂きたいと思います。  次回は三月四日午前十時から地方行政委員会との連合委員会の形式において参考人からの意見の聴取をいたしたいと思います。  本日はこれを以て散会いたします。    午後零時三十七分散会