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国務大臣(
小原直君) お答え申上げます。私が八月二十八日全国の検事長会同において、あいさつした
言葉の中に、私の就任した当時の事情を簡単に述べてあります。なるほどその中に、「偶々例の
指揮権発動に
関連して色々の問題が発生した為、吉田
総理大臣より此の際私に
事態の調整に当るようにとの依頼がありましたので、」云々と、こういう
言葉を申しております。これはその
通りであります。ただし、この
指揮権発動に関していろいろな問題が発生したということの中には、それこそいろいろな問題があ
つて、御
承知のように、あの当時は世の中が騒然として騒がしくなりました。あるいは
検察の
不信を申しましたり、或いは
政府の強権
発動の不当を鳴らしましたり、又政党と
検察庁との
関係についてもかれこれ言われたりいたしております。あるいは法務省と検事の間にいざこざがあるかのごとき評判も世の中に流れておりました。そういうようなことを一括して、とにかく問題があるから、この際私に出てそういう問題を調整してくれんかと、こういう
お話があ
つたのでありまするから、それはその
言葉の中に合せて皆含んでおるわけであります。それと、八月十日の
自由党支部長会議において吉田
総理大臣がなされた演説についての
法務当局に対するあいさつの
言葉があるのであります。これは、当時かような演説をなされたということが、当日の夕刊及び翌朝の朝刊に大へん大きく取り扱われてお
つたのであります。その新聞の記事はまちまちでありまして、どれが実際であるかはつきりいたしません。そこで何かこれに録音でもあるならばと思
つて私のほうで調べましたところが、NHKで録音をと
つておるということがわかりました。これを手に入れようと思いましたが、なかなかちよつと手に入らない。そのうちに、御
承知のように週間朝日とそれから産業経済新聞にこの録音の翻訳が出ておりました。あとからレコードを借りて調べてみますと、全く同じもので、それが真相であ
つたのであります。この録音によ
つて当時の
総理大臣の演説がわか
つたのであります。それを見ると、当日の夕刊や翌朝の朝刊に書いてある新聞の記事とは相当隔りがある。問題は、結局まあ、党の幹事長が金を取るのはこれは止むを得ないのだ、政党
政治には幹事長がやはり金を集めて、政党の賄いをせんければならんのであるという
意味を述べて、つまりそれに対してあたかも
佐藤幹事長の
逮捕牽制が出たかのごとく誤解されておるかのように見えたのでありますけれども、これは確かに間違いであります。それによると、まるで
佐藤幹事長の
政治資金規正法違反の
事件に対して
逮捕牽制があるかのごとく言われておりますが、それは間違いであるということはよくわかります。それからなおそれに
関連して
逮捕しなければ真相を得られないというようなことでは、検事の能力を疑う、
逮捕ということは容易のことではないので、人権の尊重の上から英国等においては云々という長い演説があります。その点に関して、検事の能力を疑うと、こういうことがまあ
検察側を誹謗したととれるということにもなるのであります。そこで
法務当局の私といたしましては、少くもこの
法律を誤解されたり、また
検察官に対しておもしろくない
言葉を言われたことに対しては、やはり御本人の
総理大臣の意思を確めたい、こういうことで、私は党の幹部、殊に池田幹事長に対して、この点をよく
総理大臣に伺
つて御
趣旨を明らかにしていただかなければならんと、こういう要求をしたのであります。それが池田幹事長から吉田
総理大臣に伝わ
つたものとみえまして、八月の二十日号に池田幹事長が小金対策
委員長を使いにして、このあいさつの
文句を私に渡されたのであります。それがここに掲げられてある
総理大臣のあいさつであります。で、これをときの検事長諸君に披露をいたしまして、
検事総長等には、その数日前にすでにそのあいさつのことを話をいたしております。ここでいろいろ懇談いたしました結果、
総理大臣の意は、なるほどああいうことであるならば、
言葉は足りないで不都合であ
つたが、自分の考えは
法律を無視したり、忠実に働いておる
検察官を誹謗する意思はなか
つたのである、こういうことを言われておるのだから、これはやはり了としたらいいじやないかということで、検事長全体はそれを了承するということになり、われわれもそれに同意をいたしたのであります。