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千田正君 大体前一回は聞いておりますけれ
ども、非常にこの問題は重要であ
つて、腑に落ちない点がありますので、特に農林大臣が御出席にな
つておりますから、大臣として御答弁を是非頂きたいと考えます。それは今度の臨時特例法によるところの十六条にありますところの漁船損害補償法の
関係でありますが、日本の漁業に従事しているところの漁船は現在百十万トン、船価にしまして七百三十億、これが十二億貫の漁獲をなして参りますので、国民の蛋白給源とな
つておりますが、更に二百数十億円の輸出をして外貨を獲得しておる
状況であります。我々は非常にこれは重要な産業であり、又日本の資源の基幹をなすものであるというふうに信じておりますが、そしてこの漁船のうち百トン未満の漁船は六十九万トン、船価にしまして五百二十五億円で、漁船の七六%を占めております。又この漁船によるところの漁獲は実に全生産の九〇%以上を占めておるのでありまして、この百トン未満の漁船中二十トン未満のものが大体において半数の三八%であり、この二十トン未満の漁船に対しましては、
昭和二十八年度から漸く
国庫補助の途が開かれましたが、二十トン以上百トン未満の漁船の災害補償に対しましては、従来何らの
国庫補助の途がなかつたわけであります。今この二十トン以上百トン未満の漁船の従事している漁業、即ち「いわし」揚繰網、「いわし」刺網、「さば」釣、「さば」巾着網、以東底曳、以西底曳或いは「さんま」の棒受、「いか」一本釣、「かつお」の一本釣、「かつお」旋網、いずれも中小漁業の漁業
経営体中五十六を例にと
つて経営調査をした数字によりまして、この結論を見ますというと、黒字の
経営体が十六件で二八%五、赤字の
経営体が四十件で七〇%五ということにな
つております。更にこれらの漁業は沿岸漁業の資源枯渇、米軍の演習によるところの漁場の制限、更に李ライン問題或いはソ連、中共、台湾国民政府等の漁船の捕獲問題、更に最近の水爆事件等、国内問題、国際問題が
原因とな
つて、これら二十トン以上百トン未満の漁船による漁業
経営はますます困難にな
つて参つて来たのは当然でありまするが、若しこのままにするにおいては、日本の漁業の中堅層は壊滅すると
言つても過言ではないと思います。殊に、
農業においては各種の
農業災害に対する国家の財政的援助があるに比しまして、漁業に対してはその災害等に対して国家の援助はただ漁船保険を除いてはないのでありまして、実に漁船保険の補償法というものは漁業にと
つては重大なる、いわゆる根幹をなすものと我々は考えるのでありますが、この意味からいたしまして、第十六国会、即ち
昭和二十八年七月に漁船損害補償法が政府提案で審議された際、衆参両院で全会一致で二十トン以上百トン未満の中小漁船の保険に対して
国庫補助の途を開いて、日本の漁業の中堅層の壊滅を防ごうとしたのであります。而も
国庫の
補助は二十九年度から実施することにな
つて、その
金額も僅かに一億円
程度のものでありますが、これを一度も実施しないのに、
法律を無視して、二十九年度
予算編成に当
つては政府の独自の考えで削減して、その辻褄を合せるためにこの特例法を提案することに
なつたのでありますが、政府の認識も甚だ私は
不足であると言う以外にないのであります。殊に保利農林大臣は、農林大臣就任の当時から、水産
委員会におきまして、相当広汎に亘
つて日本の漁業の進展に関する抱負経綸を述べておつたのでありますが、その施政方針と大いに矛盾しているのじやないかと私は思うのであります。それに対し大蔵大臣は、本
委員会におきまして同僚議員の質問に対しまして、こんなに重要な問題であつたならば、農林当局がもう少し強く
要望してくれればよかつた。このように言われたに至
つては、実際農林大臣が果してこの問題に対して真剣に考えておられたかどうか。これは農林大臣の責任を我々は追及したいと思うのである。よ
つて私は農林大臣に特にお願いしたい二つの項目がありますが、第一点は、日本漁船の中堅層であり、又日本の漁業生産の中堅であるところのこの二十トン以上百トン未満のものに対し、財政的援助によ
つて壊滅から救おうとすることが現在の日本の漁業の
政策上最も必要であると思うが、この点はどうお考えになられるか、それとも僅か一億か二億円でも財政上困難であるから、日本漁業の中堅層が壊滅しても止むを得ない、こういうふうにお考えになるのかどうか、先ずこれが第一点であります。第二点は、衆議院は、この
法律案は一年の時限法として修正可決し、更に附帯決議をして、第十五条即ち漁船保険の規定については、本法即ち一年の時限法たるこの
法律の有効期限にかかわらず、可及的速やかに
予算措置を講じて、二十トン以上百トンまでの漁船に対しても、二十トン未満一トン以上の動力漁船と同一の取扱いをなすよう政令を改正実施すべきであるという決議はしてありまするが、この附帯決議の趣旨を尊重して政令を改正し、或いは補正
予算或いは予備費の支出その他で速かに実施する意向を持
つておられるかどうか、あるならば一体いつ頃かということと、それとも政府はこの
法律をも無視して
予算を削減するのであるから、国会の附帯決議も問題にはならないというので全然突つ放すつもりであるのかどうか。第三点は、この特別法の
成立するか否かは別として、第十六国会において修正可決しましたところの
法律は、すでに政府は
昭和二十八年の八月一日に実施しているのであります。二十九年四月一日から各地の保険組合は二十トン以上百トン未満の漁船に対して掛金或いは加入を慫慂して、国家
補助があるものとしてすでにもう契約を
開始しておるのでありまして、こういうような面に対する責任は一体どういうふうにとられるつもりか、まあこの三点であります。この点につきまして農林大臣から懇切な御説明を願いたいと思います。