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参考人(
山本豐君)
漁船保険の
関係につきまして、私から
意見を申述べたいと存ずる次第であります。この
法律案には
水産関係に関しまする
規定が三カ条ございます。
一つは第十三条で、これは
漁業調整委員会に関する
補助の
関係であります。
一つは第十五条で、これは
保護水面の
管理委員会に関する
補助の問題であります。もう
一つは第十六条の
漁船損害補償法に関する
補助の
関係であります。この
保険の
補助関係の
規定は、非常にややこしくな
つておりますので、一応簡単に過去の
経緯を申述べたいと思うのでありますが、大体この現在の
漁船損害補償法の
改正が昨年の
昭和二十八年の八月一日付でこの
漁船損害補償法の一部
改正に関する
法律案が
公布にな
つたのであります。そのときの
改正の要点を申しますると、
内容は
一つには従来ありませんでした
満期保険制度を認めること、もう一点はこの今度の
法律に
関係を持ちまする、従来
漁船保険の
加入をする場合に、いわゆる
加入を奨励しますために、
協同組合の地区内にいわゆる資格を持
つておるそういう者の三分の二以上が
賛成をいたしました場合には、その区域内におきまするすべての人のすべての船が当然にこの
保険に付さなければならない、こういうふうないわゆるこれを
通称義務加入と申しておるのでありますが、そういう
制度があるわけであります。それが従来は
予算の
関係もございまして、
トン数が二十トン以内のものに
限つてお
つたのであります。それをこの
機会の、昨年の八月一日
公布の
法律の中に新らしくその二十トンの
制限を百トンまで、
トン数百トンまでの
漁船に適用すると、こういうことに改めたのであります。そうしてそういう場合の国の
補助というのは、
内容を申しますると、いわゆる
加入した場合の
保険料、漁家が負担いたしまする
保険料の三分の一を国が負担する、こういう
内容でございます。この事項は
漁船保険の
関係者が一年以上に
亘つて非常に要望してお
つた点でありまして、それが昨年の八月一日
公布の
運びに相成りまして、
漁民のみんなは非常にまあ喜んでお
つたのでありまするが、然るに今回この
整理法案の中にそれが又取上げられまして、そうして全然元に返すと、こういうふうなことが
規定されておるのであります。それがこの十六条であります。そこで次にこのいわゆる二十トンから百トンまでに対して国が
保険料の半額を負担する、こういうことの
妥当性如何の問題を、これは昨年にもいろいろ議論があ
つたのでありまするが、ここで繰返して考えを申述べて見たいと思うのであります。
第一にこれらの
漁船の
所有者であります。これは普通には
業種を申しますると、いわゆる
以西底曳網漁業、これは
東経百三十度
以西でありますが、いわゆる
以西底曳網漁業と申しておるものであります。それから
東経百三十度
以東に従事しておりまする
沖合漁業の
以東底曳網漁業、こう申すものがあるわけであります。なお
旋網漁業でありますとか、或いはかつお、
まぐろ漁業でありますとか、こうい
つたような
業種が大体含まれるわけでありまして、これらは普通に申しますると、まあ捕鯨或いは
北洋等と比べましてややちかまでありまして、まあ
沖合漁業と通称申しておるのでありますが、そういうふうな
漁業が大体の
内容をなしておるのであります。然るにこれらの
漁業は、いわゆる
終戦後いち早く
漁業の
制度の
改革というものが、取上げられまして、そこでいわゆる
沿岸漁業調整があ
つたわけであります。そういう
関係で
沿岸には今日資源が非常に枯渇しております
関係上、非常にシヤツト・アウトを食います。更に又遠洋に伸びんといたしまして
終戦後いろいろとや
つて参つたのでありまするが、御
承知のように、例えば
以西については
李ラインというふうな問題があります。その他いろいろ各
方面に
制限を受けつつあるわけでありまして、そこで非常に
終戦後これらのいわゆる業態の
業種というものが非常に
経営難に陥
つて参
つて来ておるのであります。にもかかわらず、これらの
漁業というものは非常に
日本の
漁獲量を上げる
意味において非常に大切な
地位を占めておると思うのであります。これは
試みに考えて見ますると、成るほど
隻数では非常に少量でありまするけれ
ども、併しそのいわゆる
漁獲量でありますとか、或いは又いわゆる
船価でありますとか、こういうようなものについては大体四、五割を占めるような状況であります。
漁獲量につきましては詳しくはわかりませんけれ
ども、戦前は大体
沿岸の
本当の
零細漁民、これらと
沖合漁民との比が大体
沿岸が七割で
沖合が三割ぐらいであ
つたかと思うのでありますが、
終戦後はこれらの
漁業はだんだん伸びつつありまして、大体五割、五割ぐらいにな
つておるかと思うのであります。そういうふうに、
日本の
食糧増産の
見地からこれらの
漁業というものが非常に大切な
地位場を、占めておるのであります。然るに先ほ
ども申上げましたような
事情で、
現状は非常にまあ
経営難に陥
つておる、こういう事態にありまするので、何とかこれを打開する
方法はなかろうか、いろいろ考えまして、それにはこれらに対する
金融の問題、或いはこれらの船が繋留しまする漁港の問題、こういうふうな問題が非常に大望あるというので、いろいろと
施策を
政府におかれてもや
つて参
つておるのでありまするが、併しながら大体その大きないわゆる
資本漁業等におきましては、
開発銀行その他からも
信用力等がありまして、
相当にこれは金も流れるのでありまするが、又
沿岸の
零細漁業につきましては、
中央金庫だとか、そういうふうなところからも融資の途はあるのであります。併しこれらの中間の存在がいずれにもつきませんで、実は宙ぶらりんの形に置かれておるのであります。これらを
金融面等から援助する
一つの裏付けといたしまして、
是非とも
保険に
加入せしめることか何より大切であろう、かように考えられまするので、我々といたしましては、これを何とかして
保険に
加入せしめるように
施策を講じたいというので、折角従来ありまするいわゆる
保険料の
国家が半額
補助する、この
制度をこの際百トンまでに拡張してもらいたいという要望で以てこういう
法律の制定の
運びに相成
つてお
つたのであります。もう
一つここで申述べたいことは
水産に関しまする
保険は今日も
相当に歴史は古いのであります。
最初の
漁船保険法ができましたのは
昭和十二年でありまするから約十六、七年に達しておるのでありまするが、併しこれを
農業の
関係の
農業共済保険等の発達の過程と比べますると非常に遅れております。
水産につきましては
ひとり漁船保険のみしか今日まだないのであります。
農業におきましては御
承知の
通りに厖大なる
農業共済保険制度がすでに確立されております。その金額におきましても、
農業のほうでは何十億という国の
補助が出ておるのであります。
水産につきましては僅かにこの
漁船保険だけでありまして、而も
漁船保険の先ほど申しましたように
保険料に対する
国家の
補助金は年々僅かに七、八千万円に過ぎないのであります。そういうような
事情でありますので、この際この
制度を
一つ活用して頂いて、百トンまで拡張してもらうというのが我々の懇願であ
つたわけであります。よく世間にはそういうものは
資本漁業だから、こういうものは
保険料の
補助までして何する必要はないのじやないか、こういうふうな声もたまには聞くのでありまするが、併しながら先ほど申しましたような理由によりまして、これらの
漁業というものは
日本の
食糧増産の観点から立
つた水産業というものを考えますると、決して
資本漁業でも何でもないのでありまして、これがいわゆる
日本の普通のありきたりの中
漁業でありまして、
試みに、例えばこの二十トンから百トンまでの問の現在
隻数を申しますると約六千隻ありまするが、そのうちでいわゆる
皆さん御
承知の五社
関係の船というものは僅かに五%くらいしか占めていないのであります。そのほかは
全国各港に散在いたしますいわゆる
沖合漁業の
中堅をなしておるものであります。然らばこれらを救うために
予算がどれくらい要るかと申しますると、大体一億一千万円くらいの
予算がございますれば、これらの二十トンから百トンまでのいわゆる
中堅をなす
漁船の
義務加入が可能になるわけであります。これは勿論全部でございませんが、五、六割を
加入せしめるといたしまして、約一億程度の
予算で事足りるのであります。こういう
意味で私たちは折角できましたこの遅れておりまする
水産業のこの
保険制度の中で
唯一の頼みとするこの
制度を二十トンから百トンまでに拡張いたすことによりまして、これらの
中堅漁業の
経営の安定を図りまして、外に向
つては
輸出原料になりまする
漁獲高を上げ、うちに対しましては各
地方の
大衆漁業、さばでありますとか、いかでありますとか、或いは又さんまでありますとか、こういうような
大衆漁獲をできるだけ大きくするということは、今日の
日本の
自主経済を立てる上におきましても非常に不可欠な
緊要事であると思うのであります。
次に先ほどこの経過におきまして申述べましたようにこの
法律は御
承知のように昨年の十六
国会でありましたか、要するに
政府が
満期保険を含んでおります
法律の一部を
改正する
法律を出しました際に、
衆議院におきましてこれは
議員のかたから特に提案があ
つて、そうしていわゆる
修正に相成
つて成立してお
つた法律であります。そういう
経緯がございまするので、先般来二十九年度の
予算の編成に当りましても、
政府当局といたしまして
議員が立法されたものと一官庁である
水産庁が適当に妥協するということはどうしてもできかねるというふうな
事情で、又
議員のほうにおかれましても、これは
法律で作
つたものであるから当然
予算をつけるべきである。それのよしあしは
国会で論ずべきであるというふうにも言われまして、これも御尤もでありますので、我々はいわゆる
漁民の
代表といたしましては、何とかしてもらいたいとは思いながらどうにも口出しができなか
つたので、今日に至
つたような
事情であります。そういうような
意味におきましても、而もごの
法律は四月一日から
施行になり、
公布は八月一日であります、昨年の……。
従つて実際言いますと、一遍も
施行を見ずして
もとの原案に復活するというような態勢でありまして、この点は私はよくわかりませんけれ
ども、甚だ奇怪だと思うのであります。同じく
水産の条文で三条ございますが、このうちの特にこの十六条につきましては……前の十三条なり十五条につきましては、これはたしかこれも詳しく
正権ではございませんが、
漁業調整委員会に対する
補助はこれも
法律で全額であると思うのでありますが、過去二年間に
亘つて実際にその法文
通り実施されてお
つたと思うのであります。それが又十五条につきましては、これも一年でありましたか、
法律の
通りに実施されました。然るに十六条につきましては、これはまだ目の目を見ないうちに闇から闇に葬むられるというような
事情になります。而も我々が
水産業の
金融対策として
唯一の頼るべきこの
漁船保険ということの漸進的な拡張の芽を出した、こう思
つて非常に喜んでおりましたものが、こういう
機会に巻添えを
食つてもとに戻されるというようなことは非常に遺憾に思
つておるのであります。どうかそういう
気持でおりますので、何とか
一つ慎重に御審議を願いまして、我々の願意が達成できまするようにお願いしたいのであります。