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吉田萬次君
只今当局の
概略の御
説明を承わりましたが、
文部省の
考えておられるのと又県の
考え方、又その
末梢におけるところの市町村における
考え方と非常にそこに差がありまして、切実な
末梢における叫びというものは県へも届いておらんし、恐らく
文部省のほうへも通じておらないと思います。
従つて愛知県が
全国で一審発達した県であり、成るほどパーセンテージから申しましても、すべての点において優秀であるということは私も存じております。殊に私の
出生地でありまする
関係上、この問題について極めて注意深く検討もいたしました。併し
愛知県の現在の
状況、又私の住んでおる一宮市の
現状というものを見ると、
只今仰せに
なつたような実現ということは私は不可能じやないか、机上の空論に等しいじやないか、それよりも先ず
内容を充実して行く必要があると思うのであります。たとえてここにその
愛知県の
状況を見ますると、
学校給食の
現状というものは、
愛知県の
学校給食は戦後食糧の不足の事情によりまして
アメリカ政府の厚意によ
つて多大の
無償物資の
援助を受けて
小学校全
児童にこれを
実施して来たのであります。その間
昭和二十五年七月八大
都市に
完全給食、いわゆる
パンですが、の
実施を行い、翌年二月
市制地域、続いて二十七年一月から
県下一円に
実施して来たのであります。
然るに
昭和二十六年六月に
ガリオアの
資金が打切りになりましたのに
伴つて、同年中は
政府予算により更に同様の
負担軽減の
措置が講ぜられ
継続実施して来たのでありまするが、二十七年の四月以降
パン用小麦が
原麦代の
全額国庫補助から二分の一
補助に
なつたために、
パン代の
父兄負担というものは二円六十五銭から四円八十三銭に増加し、更に同年十月以降
給食用脱脂粉乳が
全額国庫負担から
父兄負担に切換えられて、その結果
父兄負担は一ポンド四円九十五銭から急騰して七十四円九十五銭に増大したために、一時
ミルクの
需要数量が減じましたが、日毎に
需要数量は増加して来ているのでありまして特に昨年の十三
号台風後の
完全給食移行は四十八校、三万七百四十二人の多くに及んでいるのであります。今なお
完全給食の
実施しておらない二百五十
有余校、約十万人の
児童の
完全給食移行奨励のために目下
努力しておるような次第であります。
それから
学校給食実施の
状況でありまするが、
小学校につきましては
県下全
児童が
給食を受けているのでありますが、
中学校につきましては、公、私立を合せて二十三万九百五十四人の
生徒数がありまするが、教育
委員会に届出て
小学校と同様の
給食を
実施しているのは十一校、九千百人であります。なお台風十三号によ
つて災害を受けた
中学校八十一校、一万五千三百人に対しては目下ユニセフからの寄贈による
ミルク給食を
実施しております。
それから
定時制の
夜間高等学校、
定時制のこの
高等学校については公、私立合せて五十五校、一万四千六百十三人のうち、現在
学校が自主的に
給食を行な
つているのは数校でありまして、
定時制生徒並びに
関係者は
給食を強く要望しているけれ
ども、まだ
実施せられておりません。
それから在籍の人員を調査してみますると、
小学校児童数は四十八万八千三百九十五人、
中学校の
生徒数二十三万九百五十四人、公立のほうが三百十八佼でありまして二十二万一千五直九十四人、私立のほうが三十五校で九千三百六十人、計三百五十三校、二十三万九百五十四人とな
つております。
定時制高等学校の
生徒数は一万四千六百十三人というようであります。
又
給食の
費用につきましては、現在
小麦が
政府半額補助のために
パン一食五円二十五銭かかり、
ミルクは一回二円十銭であります。
従つて完全給食におけるところの
給食費の
父兄の
負担というものは次の
通りであります。
昭和二十七年の三月以前は
パンが二円六十五銭、
ミルクが二十二銭、副食物が五円、計七円八十七銭であります。それが
昭和二十七年四月以降になりますると、
パンが四円八十三銭、
ミルクが二十二銭、副食物五円、合計十円五銭、
昭和二十七年十月以降になりますると
パンが四円九十五銭、
ミルクが三円八十五銭、副食物が六円、計十四円八十銭、
昭和二十八年四月以降になりますると
パンが四円九十五銭、
ミルクが二円八十五銭、副食物が七円、計十四円八十銭、
昭和二十九年五月十六日以降
パンが五円二十五銭、
ミルクが二円十銭、副食物が七円五十銭、計十四円八十五銭。なお右は名古屋市を標準とした価格であり、他の郡市部におきましては若干それを下廻るものと
考えられます。
それから第五に
学校給食厨夫の設置
状況であります。名古屋市が三百四十二人、百九佼、その他の
都市が二百五十九人、百五十五校、郡部が四百三人、四百六十九校、計一千四人、七百三十三校ということにな
つております。厨夫の設置
状況は以上の大部分が市制の地域でありますが、逐次郡部にも設置せられつつあるような状態であります。
第六は、
学校給食の
調理施設の調べであります。名古屋市は専用
調理室が九十九校、兼用
調理室が十校、その他の
都市では専用が八十六校で兼用が六十九校、郡部のほうは専用が百三十校、兼用が三百三十九校、計専用が三百十五校、兼用が四百十八校ということにな
つております。
調理室の専用室は以上のように四二%でありますが、実際の完全な
調理施設は若干下廻るものと思われるのであります。
第七は
学校給食の効果でありますが、
学校教育計画の一環といたしまして、特に
家庭及び地域社会におけるところの食生活改善を行い、国家経済の立場から
給食奨励をしなければならんと思うのであります。
第二、にその他
栄養改善による健康の保持増進と疾病の予防、それから
栄養の知識を与える、食事訓練の
実施、手の清潔、食器類の清潔、咀嚼の習慣、食事の作法、それから偏食の矯正、
調理場の清潔整頓、民主主義思想の
普及、郷上食の合理化、円満なる社交生活の指導、欠席者を少くするというようなことは
考えられており、又効果があると
考えます。
第八に
学校給食の隘路でありますが、
学校給食の
普及充実を図る目的の下に今回
学校給食法が制定せられましたが、併しながら今後の
学校給食の
普及の上に幾多の問題が残されておりますが、
学校給食運営の上に特に大なる支障をもたらすものはいわゆる準援護
児童の問題であります。
生活保護法の該当者が
愛知県では
児童数が一万一千七百七十八人、それからその他から
全額の
補助を受けておる者が七百三十九人、そうして
補助費がこれは月額八万三千三百四十八円、単価が百十二円、それから一部の
補助を受けておる者が一万一千七十一人、
補助費が百十九万四千七百五十四円、一人の単価が百七円、
全額を必要とする準援護者が九千四百九十七人、一部必要とする準援護者が六千五百三十人、右に示すように
補助を必要とする者が
小学校全
児童の五・六%あるのです。一部
学校においてはこれら支払いの困窮者の分を共同
負担において決済している向きもあるような
現状であります。
そこでこれを基本にいたしまして
考えてみますと、
ミルクの代とそれから原麦の代金を国庫で
負担してもらわなくちやいけない、これはおよそ百億円くらいのものだと想像するのであります。それから副食費は受益者の
負担とし、それから
ミルク、原麦の加工料及び運賃はこれも受益者の
負担でいいと思うのであります。それから
給食用の罐詰の配給はこれは
山間部において
是非行な
つて頂きたいということ、それから砂糖の輸入税を免税にしてもらわんと非常に困るというようなこと等でありまして、
愛知県の現在の運営というものはどうしておるかといいますと、
愛知県がこの
給食のために二千万円の無利子の金を出して、そうして加工賃であるとか
小麦の購入費、加工賃の千二、三百万円、
小麦の購入費千七、八百万円というようなものに対する貸付金をし、更に又特別な金を貸しておるような
現状であります。而もこれが
パンや何かの製造につきましては、農協などで直営でや
つておるところは非常に成績を挙げておりますけれ
ども、併しながら一般としてはまだ十分と言えんので、ほかに冨山、松山、というような所、特に富山、松山は非常に
パンがまずくて点数を付けると五十点くらいしかないということであります。それから名古屋の筒井
小学校は直営の
パンを作
つておりますが、これだと殆んど
理想に近いものができるということであります。
中学校に及ぼすということは先ず
小学校の充実を図
つてからでなければできんのでありまして、更に末端における現在の一ノ宮の
状況を
考えますと
給食の推進協議会というものを作
つておりまして市会議員一名、保健所一名、
学校代表一名、
給食掛当教員が一名、業者の代表二名というようなことで集
つていろいろ検討し、
予算もこれによ
つて査定せられておるのであります。そこで従来は
給食というものは女のやる仕事で男というものが余り関与しないようなことから非常に男子の
職員がやるということに対して相当の趣味を持つた人でなければやる人が少い、そこで現在
愛知県では名古屋大学で
栄養士を作
つておりますが、学芸大学の
栄養士というものを作ることをしてもらいたいというような相当強い希望があります。それから末端へ参りますと末端の
現状というものは今現在
パン粉が、百グラムから百四十グラム、それから
ミルクが二十グラム、これを一合の水に溶かして加熱しております。副食物も勿論加熱しておりまして、一食分が十二円五十銭かか
つておりまして、それで漸く所定の
栄養量を保持しておるという
状況であります。これを月二十回や
つておりますが、
生徒一人に対して二百五十円ずつ
負担さしております。三十円くらいこれでは足らんような
状況であります。原料代としましても
パンが五円二十五銭、
ミルクが四円、副食が三円二十五銭はかか
つて、十二円五十銭はかかるのであります。そこで一宮市におきましては三百円とらんとこれが完全にできないのでありまして、二百五十円で二十回はやれないのであります。これは要するに休みとか、いろいろなもの、夏休みであるとか、或いは休日であるとかいうようなものを見越してそうして辛うじてや
つておるのでありまして、光熱費その他全部市で
負担してや
つて漸くこれでやれるかやれんかということであります。市のほうからも厨夫の料金であるとか光熱費、水道料金、消耗費というようなものを全部
補助してお
つて辛うじてや
つておるのであります。名古屋市では三百円取
つておるのでありますが、併しながら足らんで、PTAからいろいろ寄附さしてや
つておるような
状況であります。かような状態でありまして、
生徒は二百五十円ずつ出しておりますが、準
家庭の
児童は二百五十円出せませんで、大体一万人に百七十人という状態で
児童の支出が百円、市の
補助百五十円というような状態でや
つておりますけれ
ども極めて困難でありまして、十分な
給食というものに対しては手がなかなか及ばないような状態であります。
従つて田舎のほうへ行きますと、この
負担に対する不平が相当強く出ておりますによ
つてこの点は極めて留意して、そこで考慮してもらわないといけないと思うのであります。
愛知県の
現状及び末端の一宮の
状況はこのようでありますけれ
ども、今日の
状況は頭打ちというお言葉がありましたが、その
通りであ
つて、これに対する関心の強い人は非常に要望し、半面において非常にこれに対する反対の声も出ておる、これは施設及び運営のよろしきを得なければ
給食というものは極めて困難なものである。そうしてこの問題を軽卒に取扱われ、或いは法令によ
つてこれを施行するというようなことを
考えるならば、その将来というものを
考えて頂かんとむずかしい問題だと思うのであります。
ちよつと
愛知県の
状況を御報告しまして御参考に供し、そうしてどうかというと
文部省としても相当肚を据えてや
つて頂かないといかんと私は思います。