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証人(
池田正太郎君) 一々の事項について申上げます前に、是非申上げなければならない全般的な問題がございます。その第一は、この
資料が出された。」とについて、
学校も
PTAも
教育委員会さへも全く寝耳に水であ
つたということであります。
大将軍小学校では
PTAが非常に活発に
活動しておりまして、
教育の問題は常に学級会、
地域会、
教育懇談会、
総会などで話合い、十分な批判も
学校は受け、又
学校の事情も説明もし、全く
学校と
PTAが一体とな
つて教育を進めて参りました。そうした機会会に問題とならないことが忽然として今出て来たのでございますから、驚いたのも無理はございません。そこで早速
学校と
PTAは代表を送
つて教育委員会にこの事情をお伺いたしたのであります。すると、指導部超て、指導主事のかたがたは、すべてこういうことについては全く知らない。そういう報告を出したこともないのみならず、従来
大将軍校の教・育について偏向があるなどとは全く考えていなか
つたから、特別の指導や注意を与えたことさえないではないかというふうに反対に言われたのでございます。又
教育長や
教育委員のかたにお伺いいたしましたが、どういう結果であ
つたかということは、先ほど
PTAのかたがおつしや
つた通りでございます。
第二に、
市教委に出された陳情書を元にしてこの報告は書かれていると書いてございますけれども、
市教委の書類によりますと、そういう陳情書を受取
つた記録はないそうでございます。
第三は、直接現場の事情に明るい
PTAの
意見でございます。歴代の
PTA会長を初め、
役員は従来
大将軍の
教育が、いわゆる
偏向教育と言われるような事実があ
つたとは考えられないという
意見書に揃
つて署名していられます。これはお
手許の
資料にございます。現在の
PTAは
総会の
決議を以て、この
資料に対し強い抗議と激しい憤りの意思を表明いたしております。以上の三点からだけでもおおよそこの
資料の性質が事実に相違するものであることをお認め頂けるものと存じますが、更に以下逐次項目を追
つて申上げます。
二、事件の概要の項について申上げます。これは給食の問題でございますが、その事件があ
つたということ以外は殆んど大部分誤謬と歪曲であると申して差支えざいません。第一、日が十四カ月
間違つているということがその一点でございます。第二、
父兄側はこの声明の三十三名について調査した結果、実際に給食費の出せない
子供は煙か四、五人程度に過ぎないと抗議したとありますが、これは全く事実に相違いたします。この三十三名のうち、その後
学校、民生
委員会、民生安定所などが協議して調査いたしました結果、今日までにそのうち二十五名が生活保護法及び法外援助によ
つて給食費の救済をされております。この事実は明らかに貧困で給食費が出せないということを裏付するものでございます。残りのものもいわゆる救済の限界にあるということは、民生
委員長の
声明書が示す
通りでございます。
従つて先生が何かの意図で金を持
つて来るなと言
つたということが全く虚偽であることは明白であります。第三、
父兄の抗議を無視して闘争に入りとありますが、この問題は八日に給食を中止する以前、五日に
役員会、本給食
委員会、六日には保護者
大会を開いて事前に相談したのでございますが、その結果
PTAでは更に
総会を開きまして、六十名ばかりからなる特別
対策委員会を作
つて対処したのでありますから、事実は全く逆であることが明らかでございます。第四、ビラを児童に貼らせたとありますが、
学校が貼らせたのでないことは、
PTA総会で
はつきり他の保護者のかたが
証言されて、
会員すべて確認しているところでございます。第五、共産党云々以下のことは、
学校として全く関知しないところでございまして、そういうことが
偏向教育と何の
関係があるかと申したいのであります。更に附加えて、この問題が真に
教育的立場において起
つたものであることについて申上げます。給食費未納の問題は、
昭和二十六年頃から起
つておりまして、局年中に私の
学校では約二万四千八百円の未納金があり、そのうち、市のほうから補助金が七千五百円ありまして、残る一万七千三百円は
PTA会費で負担していたのでございます。ところがこういう方法はよくないし、又こういうことがだんだん殖えて行くことはやり切れないから、公費による補助金増額の要求をせよということが
PTAの
総会で
決議になりまして、
昭和二十七年には
PTA予算から未納金のための補助金の予算は削られたのでございます。そこで私どもは
校長会を通じ、再三公費による補助金増額の要求を続けて参
つたのでございます。ところが
昭和二十七年に入りましても、その見通しは全く立たず、
校長会でも費用の負担ができない。児童には給食を止めさせるも止むを得ないという空気が出て参
つたようでございます。私どもの記録によりますと、
校長は四月十七日と五月七日の
職員会議でそういう報告をいたしております。そこで私どもは
職員会を更に五月九日に開きまして、その対策を協議いたしました結果、費用を出せない
子供こそ実は一層給食の必要がある。若し給食を中止すれば欠食するより仕方がないではないか。だからやめるならば全体の
子供をやめて、その対策を考えなくてはならない。併し飽くまでやめない方針で補助金増額に
努力しようというので、一学期閥はそういう交渉を続けて参
つたのであります。ところが二学期の八日から給食を支給せよという通知を受けたのでございますが、その直前に補助金の通知がございました。それによりますと、半年分として四千三百二十円配付するということでございました。当時私の
学校では一学期間にすでに一万三千五百円の未納金がございましたので、この状態では、もはやこれ以上給食を続けることはできないというふうな考えを持
つたのでございます。そこで近隣の
学校はどうであるかということを調査いたしましたところ、貧困にして費用の出せないためすでに給食を受けていない児童が数百名に及んでいる事実を
知つたのであります。その後の
教員組合の調査によりますと、七万名の児童のうち約二千名が欠食してお
つたのでございます。私どもはこの事実を知るに及んで、教師としての良心から激しい積りを感じました。そうして若しそういうかわいそうな
子供に中止するよりは、全児童に中止して、この問題の解決に
努力しようということで立ち上
つたのでございます。
第三、
教育の
実情等の項について、日の丸軽視、皇室侮辱と言います。が、日の丸を軽視したことはございません。現にその教材は遊戯という教材でございまして、日の丸の教材を軽視したのではございません。その反対に、私
たちの
学校では祝日に年々日の丸を校門に掲げておる事実によ
つてこれが反証されると思います。君が代が出たりラジオのスイツチを切れということなんでありますか、そういう事実はありません。母親が、自分の子はラジオで君が代が鳴
つていても平気でラジオを切るということを不審な
気持ちで昔
つたということは聞いております。天皇巡幸の当時云々という言葉がありますが、これは児意の言
つた言葉でございまして、教師がその母親にこういう表現をしてはよくないという注意をした。その注意を受けた母親がそういうことを
言つております。皇太子云々の件は全く事実がございません。これは学級を調査いたしましたけれども、
父兄も一様にそういうような事実がなか
つたことを認めております。親への反抗ということは、
学校としてはそういうことは考え得ないことでございます。その他
水害地救援に出かけたことは事実でございます。これは他の
学校の多くの教師
たちと共に
水害地の救援に出かけたのでございます。ビラを配
つたということも、たまたま
父兄会の或る一部の席で
水害地の
実情を知
つて頂く
意味で配布したのでございますが、そのビラには再
軍備反対、
政府云云の言葉はございません。
PTA会長と
校長を懲罰にかけると言
つたとございますが、会長、
校長をも含めて一同大笑いをいたしたような事実がございまして、常識で判断して頂けば、こういうことがあり得るかどうかおわかりであろうと存じます。
以上概略申上げましたように、全く不可思議な
資料と申すほかございません。併し重大なことは、この不可解な
資料によ
つて教育の現場が如何に恐るべき影響を受けているかということであります。
新聞には片寄
つた特別な
学校のように書き立てられますし、
従つて社会一般もそういう目で見るのは自然の勢いでございますが、これに対しましては、児童も
父兄も教師も義憤を抑え得ないのであります。これ以来
PTA総会の
出席者は俄に増加いたしまして、この
資料の
出所を追求せよという意気が高く挙
つておりますのは、これを証すると存じます。その事情はお
手許の
決議文によ
つて御覧頂きたいと存じます。教師の真に正しい
教育を求めて
努力しているにもかかわらず、こうした不可解な
資料によ
つて圧迫を受け、
教育が乱されることについては、何としても承服しがたい感じを持
つているものでございます。何とぞ公正な御批判をお願いしたいと存じます。