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政府委員(楠本正康君)
只今学校給食と野菜等の問題に
なりましたので、私から一言述べさせて頂きます。
日本の学童は、般にカルシウムの不足と、各種ビタミンが不足しているというのが
日本人の学童の共通的な欠陥です。この形態は、必ずしも学童だけでなく、
日本人全体が各種ビタミン及びカルシウムの不足ということが考えられるわけです。特に学童においてこの傾向が著しいわけです。これは極めて重大な問題でありますが、そこでなぜそうい
つた欠陥が
日本の食事に来ているかというと、これは野菜の食べ方が諸外国と違
つているということなんです。外国は、大体ビタミン及びこのカルシウムは、主としてカルシウムは牛乳から摂る。併しビタミン類はやはり諸外国においてもこれは野菜から摂
つている。ところが
日本人は菜食でありながらなぜ一体ビタミンの不足が来るかということに
なりますと、これは
日本人の野菜を食べる
方法が、例えば漬物であるとか、或いは茹ものであるとかいうようなことに
なりまして、そのうちの有効成分というのは非常に散逸したものを食べているのが現状です。例えば私
どもがいろいろ実験をいたして見ますと、簡単に茹てもビタミン或いはカルシウム等は殆んど大部分が消失されてしまう。漬物等も、浅漬程度の、晩に一晩漬ける浅漬程度でもビタミン、カルシウム等は大体半分以上流れてしまう。かようなものを食べているところに根本的な問題があるわけです。ところで私
どもは、今後は何としても野菜を生で食べる習慣をもつとつけなければいけないのじやないか。これはいろいろ貯蔵とか、生産とかいう問題がございます。併しながらこれは目下
一つ農林省の特産課といろいろ相談をいたしまして、野菜を生で食べるということを、もう少しやらなければ
日本の食生活の改善というものは根本的に成り立たないのだ。そこで問題はなぜ甘菜を生で食べないかというと、危なくて食べられないというのが現状です。例えば殊に洋菜類等をこれ又試験をいたしてみますと、例外なく寄生虫卵が付いている、今のような状況で生で食べていたら、これはカルシウムやビタミンは摂れたかも知れませんが、みんなもう寄生中で干上
つてしまう、こういうわけで或いはまあ腸チフス、赤痢等も野菜類から起きる、それでこわくて生で食べられない。それで何としても安心して生で食べられる野菜を生産することが、
日本の今後の食生活として極めて重大な問題である。その点は目下農林省と相談をいたしておりますが、これも屎尿を腐熟して使うような
方法にすれば、従来の営農形式を著しく変えなくてもできるんじやないかという見通しに立
つております。
それから次に食生活改善の面と野菜の点を考えてみますと、食生活の改善というものは、これは今後パン食というものを普及するということですが、ところがこの小麦と米とは蛋白質の性質が根本的に違
つております。それで米の蛋白質は塩と比較的調和がとれやすい。
従つて白米に漬物なんというのはその
意味で非常に調和がとれるわけです。ところが小麦の蛋白質は塩とどうも調和しかねる、むしろ甘いほうの味と調和がとれるというのが、これは蛋白質の組成上の本質的な問題です。そこで粉食をして行くということになると、漬物とか味噌とかいうような塩辛いものの形態ではなかなかむずかしい。こんなことを考えて参りますと、やはり野菜を生で食べるということが、これが栄養上は勿論、食生活の改善の上から
言つても当然の
結論になるわけです。
そこで
学校給食の話に戻りますが、
学校給食においても私
どもは今後何とかして取りあえず生で食べるような仕組みを考えなければ駄目だ。こうさえすれば粉食というものはより一層普及して行くばかりでなく、
日本人に最も欠けているビタミン問題、カルシウム問題が直ちに解決する、かように考えておるわけで、この点は目下生産面について農林省と相談をいたしております。
次に先ほど
お話のありましたいも類或いはかぼちや等の主食に代替できるようなものはどうだという、こういう
お話でありますが、これは誠に御尤もな
お話でありまして、私はこの
学校給食というものは
日本人の食生活の行き方の
一つの膜であるとも考えております。こうな
つて参りますと、どうしても朕のことを考えなければならん、それには
日本の主食というものが余り窮屈に考えられるところに
日本の食生活の根本的な問題がある。米を食べなければ食べたような気がしない、こういうところに根本的な問題がある。これは同じように麦を、パンを食べなければ食べたような気がしないとな
つても窮屈な話にな
つて来る。世界各国の食生活を見ますと、主食はこれでなければ食べたような気がしないというようなのは
日本だけであ
つて、支那等においても主食はさまざまなものを主食として喜んで食べている。ヨーロツパ、アメリカ又然り、これは御承知の
通りです。そこで
日本におきましても今後主食というものは何も米にこだわらん、これは当然な話ですが、と
言つて麦にもこだわらないという感じは同じように持
つていいわけです。それで場合によ
つたらいもでも主食と考える、或いはかぼちやでもよろしい、或いは豆でもよろしいというようなふうに考えて来れば、極めてこれは
日本の生産計画から
言つても、又食糧の総合計画から
言つても、極めて幅のある主食体系が整
つて来る、ここが重大な問題だと思うのです。そこで
只今御
指摘のようにやはり、勿論粉食、パンが主食であることには
異議はございませんが、併し場合によ
つたらいものたくさんとれるときにはいもでも主食に代替させる、かぼちやでも代替させるというような躾をしてこそ、初めて
日本の今後の食生活というものは正しい姿に帰
つて来る、それはやがて
日本の食生活、主食の食糧政策を幅を持たせて、それだけ
日本の国内需給が楽にな
つて来るという根本問題だと思う。
従つて只今の御
意見はいずれも誠に私同感と存じまして、今後
結論的に申上げますと、先ず野菜というようなものはもつと豊富に、而も生で食べさせることを考える、それからもう
一つ、主食についても勿論パンが主食ではあるが、偶にはいも或いはかぼちや等においても主食を食べた感じを出さなければいかん、こういうことが言えると思います。
それから次に
お話のありましたジュースの問題は、
只今御返事がありましたと私も全く同様に考えておりまして、これは今後相当
日本が裕福にな
つたとしてもジュースというようなものを大衆的な食糧に切替えることは、これは極めて困難な面が、全体生産計画から言いまして困難な面があるのじやなかろうかというように考えられます。以上御
質問に若干の
意見を加味してお答え申上げました。