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参考人(
宮崎松記君) 癩の予防は大きな国策でありまして、
癩患者を
収容いたします場合には、かなり無理をして行かなければならないことが往々にしてあるのでございます。それは
癩患者が療養所に入所いたしました者は相当の長
期間を予想しなければなりません。それに
子供があり、或いは老人がある場合には、又その他家庭問題がございますると、これを一応
解決してやらなければ、入院させ又入院させた
あとでも
患者たちが安心して療養ができないのであります。それで私
どもは
患者を入院させますと同時にその
子供の処置につきまして第一問題があるのでありまして、できるだけは
患者の
子供たちだけを
一つ所に集めるということは、決して今までの
かたがたが
お話になりました
ように、いいこととは
考えておりません。できるだけその親族或いはその地元の養護
施設に引取
つてもらうことを絶えず私
ども努力し、又
関係当局にもその
ように
お願いをして努力して参
つておるのであります。併しながらどうしても
子供の処置がつかないことが往々にしてあるのであります。併し
患者はどうしても入れなければならない、
子供を何とか世話しなければならないという場合に、その最小限度の必要に迫られまして、只今各
国立療養所には保育所を持
つておりまして、そこで
子供たちの世話をいたすのであります。
子供たちが親を入院させすときに同時に
子供をよく診察いたしまして、不幸にして
病気に少しで“かか
つておりますれば親と一緒に病院に入れますので問題はありませんが、
子供を診まして如何にも健康である、癩という疑いは持てないという場合には、如何にしてみすみす病院に入院させまして、
患者である親と同層さして感染させるに忍びませんので、親一は分離いたしまして保育いたしておるのが現在の問題にな
つておりまする
龍田寮と申します保育所であります。これは病院は
熊本市外の十キロの所にあまして保育所は
熊本市内にありまして十キロを隔てた所で保育をいたしております。親が入院いたしまする前は
子供たちは普通の
学校に
通学ができておるのであります。何ら差別されないし、
患者である親の許から差別なく
教育を受けておるのでありますが、一旦親が
恵楓園に入院します途端に
子供たちは一般
学校に
通学を取消されるという実情に相成るのでありまして、これは親として一面から申しますと、公衆衛生の犠牲にな
つて自分は病院に入る、そうすれば大事な
自分の
子供の新吉さえろくにして預けないということに相成りまして、親の気持が如何にこの問題で深刻であるかは御想像頂けると思います。親は隔離をいたしておりまずので、どうしても私が親権を代行いたしまして、親
たちの
立場に立
つてこの問題に当らざるを得ない
立場にございます。新らしくできました憲法或いは
教育基本法はすでにこの
教育の
機会均等を語
つておりますし、昨年八月十五日に御制定になりましたらい予防第三条には、
癩患者と親族
関係にあるゆえを以て差別してはならないという、旧予防法にはない新らしい高いこの精神を盛
つた条項をお定めにな
つております。今まで私
たちは長い間この問題を
お願いして参
つたのでありますが、もうこうい
つた新らしい
国会において、国民全体の意思としてそうい
つた、新らしい法律を定められたことでありますから、もう何とか
解決せざるを得ない。
患者たちもしきりにそれを迫
つて参りますし、私も
患者に言われるまでもなく、私自身も決意をいたしまして、何とかこれは
お願いします。長い間の問題でありまするが、
解決したいでお
つたのを、何とか
解決しなければならないという羽目に追い込まれたのであります。それで昨年の十一月であります。どうしても何とか、もう少くとも二十九年の四月頃からは
解決してもらいたいということで、今まで秒長
先生にそのたびごと
お願いいたしますると、P・T・Aの
反対がある、P・T・Aの了解さえあれば、校長としては明日からでも
入学さして結構ですという
お話を何回も繰返しておられた。それで私
ども考えまして、私
どもが親権を代行しております
子供たちの
入学を、P・T・Aにまで頭を下げて
お願いしなければならないものかということを一応
考えましたけれ
ども、やはりこの
子供たちを
入学させることが先ず大事なことでありますので、私はさつき
瀬口さんが
お話になりました
ように、
瀬口さんを県会議長室にお尋ねしまして、事情を申上げて是非
入学を許して頂きたいということを申上げました。ところがそれは甚だ困難な問題と思う、容易な問題ではないという
ような、これも私
どもの期待に反するお言葉でありまして、今
瀬口さんがおつしや
つたように、私は甚だ不満な気持を持
つてお別れしたのであります。そのとき私が申しましたのは、今までP・T・Aの
会長さんなどに申しましても、むずかしい、困難だということである。それでは一度全
会員に
一つ私から直接
説明をし、
お願いをする
機会を与えて頂けないか、それでもできないとなればこれは私
どもも
考えなければならないが、今までは
幹部のかただけでいけないということを承わ
つておる。それで全
会員に私に話をさせる
機会を作
つて頂けないかと申しましたら、それも、もう来年の四月から是非
お願いいたしたいのだから、早急にそうい
つた機会を作
つて頂きたいということを申し上げてお別れしたのであります。その後再三私
瀬口さんのところに電話なりその他で御連絡をしましても、公務御多端、或いは上京だとかいうことで、一向いつ頃私の
お願いするP・T・A
総会を開いて頂けるか私には一抹の不安がありまして、このまま同じことを繰返すのじやないか。
たまたま
人権擁護週間でありまして、私
熊本地方法務局の前を
通りましたら、大きなポスターが出ておりまして、何かそうい
つたことで問題があ
つたら相談しろ、私初めて思い余りまして、
熊本地方法務局に相談を申上げたのであります。余り法律によ
つてどうとか、強権によ
つてどうというのじやなくて、そうい
つた、たまたま
人権擁護週間でありましたから
法務局長に相談しましたら、
法務局長は即座に、そういうことがあるということを
自分たち知らなか
つたことは、非常なこれは怠慢である、我々としては当然お世話すべき問題であるから、事情はよくわかりましたから、何か文書にして出して頂きたい。早速どういう形で出しまし
ようかと申しましたら、申告という形がいいから、申告をお出しにな
つたらということで、申告をいたしたわけであります。で、そのときも私
ども、事
教育に関することですから、余り表面化しないことが望ましい。
地方法務局長も勿論そういう御
意見でありまして、私
どもが
法務局に御相談したことは飽くまで
秘密にし
よう、或いはそうして頂きたい。で、そのつもりでありましたけれ
ども、丁度
人権擁護週間にもな
つておりまして、新聞
報道機関の方々がいろいろな資料をお集めにな
つておる際でもありました
関係でありまし
ようか、毎日新聞と西
日本新聞にその事実が掲載されたのであります。早速
地方法務局長は
関係の課長を帯同されまして私のところにその点をお詑びにお見えになりますし、ここにおいでになる
瀬口さんにもわざわざ
地方法務局長が参られまして今のことを十分話されまして、すでにその点につきましては関口さん自身も御了解がついておると私は思
つておりますが、未だにそうい
つたことをお繰返しになるということに私どうも
納得が行かない点があるのであります。それからその新聞に出た
関係もありまし
ようか、早速十二月の八日に
総会を開いて頂きまして、それから或る、それを掲載しました新聞の当事者は、これは結果的にい
つて却
つてよか
つたじやないですか、新聞に出なければいつ
総会を開いて頂けるかわからなか
つたのに、新聞に出たからこんなに早急に
総会が開けて、甚だ済まなか
つたけれ
ども、結果論的に見ればよか
つたという
ような話も伺
つたのであります。第一回の
総会のときに私必らず相当の
反対があるということを覚悟して参りまして、一時間半ばかり
瀬口さんが
会長として司会されたP・T・A
総会に臨みまして、私そのときかなり悲愴な覚悟をも
つて臨んだのでありますが、だんだん話をいたしておりますうちに、皆さんのうちに、私の希望的観測であ
つたかも知れませんが、或る婦人などは眼頭を熱くしておられるという
ような情景が見られたのであります。終りましてから
会員の質疑に移りまして、相当の私は
賛成の
意見の強い
発言があ
つたと見ております。その当時の録音もいたしてありますが、相当の強い
賛成、これは今まではわからなか
つた、よくわか
つたという
ような。ただ御
反対にな
つたのは、私今
考えますると、ここにおいでになる
近松さん以下ここに傍聴においでにな
つておりますいわゆる
反対実行委員の方々が私の話しまするこの前のところにお集りにな
つて盛んに
反対をされたという記憶が今残
つておるのでありまして、その当時から
近松さん或いはここに傍聴なさ
つておる方々が
反対の
意見を持
つておられたので、今
瀬口さんが申されました
ように
出席者も余り多くありませんで、P・T・Aの
意見を聞こうということがありました。私は意思をお聞きになるなら先ず
瀬口さん自身が、さつきは
啓蒙とおつしやいましたが、私
どもに
啓蒙する
機会を与えて頂いて、このことを判断するだけの知識を与えてから賛否を問うてもらいたいということを私はお申入れいたしたのでありますが、遺憾ながらここに私
ども当時のP・T・Aの皆さんに配られた賛否を問う書面の写しを持
つておりますが、それにはただ一ぺんのことでありまして、ただ
黒髪校分教場の癩未
感染児童を
本校に入れるかどうかについてということでありました。
最初に書いてありますのは
本校に入れることに
反対するという一項でありました。その次が
本校に入れることに
賛成するということでありました。
反対か
賛成か、その中間もありませんし、而も
反対を冒頭にいたしておられるのでありまして、賛否を問う場合に我々の
社会通念からいたしまして
賛成か
反対かと問うのがこれは常識であります。この書面を見ましても
反対を期待されてそんな処置をとられたんじやないかと私は非常に遺憾に思います。それからその結果につきまして私
どもは非常に関心を持
つておりまして、いずれにしましてもその結果を伺いたいということを私
ども再三申し上げましたけれ
ども、私
どもにはお示し頂けません。それは、これは何も無記名でありませんで、記名捺印による回答でありますから、何も
秘密にされる必要もありませんし、私
どもとしましてはどの方面に
反対がありどの方面に
賛成があるか、それを知
つて、
反対の方々に対しては私
どもは
啓蒙の手を打ちたいと思
つたのでありまするが、これに対して私
どもに対してはその集計された数さえお示しを願えなか
つたのであります。
近松さんや
瀬口さんのおつしや
つたことに対しまして私
どもとして
説明を申し上げたいと思いますが、時間がございませんので、又適当な
機会をお与え下さ
つて十分私
どもの両氏の御
発言に対する
説明をさせて頂くことができれば非常に幸いに存じます。
で、いずれにいたしましても、私
ども保育所に預か
つておる
子供につきましては健康上差支ない。よくあそこから
患者が出たということを一々
お話になりまするけれ
ども、私
ども絶えず健康管理をいたしておりまして、少しでも疑いがあれば病院のほうに、親が病院におりまするから、病院のほうに移しまして、そこでいわゆる
診断の確定をいたすのであります。只今まで百六十名の
児童を保育いたしておりまして、そのうち九名だけ病院のほうに移しております。これは将来、癩が
発病するかもしれないという疑いを持ちまして九名だけを病院に移しまして、そうしてそのうちから五名の
診断を確定した。これは
恵楓園内で癩という
診断を確定いたしたのであります。それは
恵楓園に移しましてから数ヵ月、長いのは二年
たちましてからやつと癩という私
どもの確定的な
診断を下しておるのであります。伝染病が
発病しない以上伝染の危険のないことはこれは当然なことでありまして、私
どもの
子供に
発病しておる者はおりませんし、従いましてそこから通いました、癩の
子供が癩の感染源になる、癩の感染の危険ありということは到底
考えられないことでありまして、私
どもは断じてそういうことはいたしておらないつもりであります。私
どもは国立癩療養所の
施設長としまして全国民に対して
癩予防の責任を負うております。何を好んで今おつしやる
ような危険なるものをわざわざ
学校に通わしてくれと
お願いするか、それをお
考え頂いても十分おわかり頂けると思います。若し私
どもがそうい
つたことをいたしまするならば、当然私
どもの責任を追及して頂くべきでありまして、ただ
子供が危険だということで通わして頂けないということは、何としても私
ども承服できません。それから全国的に見ましても、ほかの療養所ではすでに
通学は実現或いは実現しつつありますし、お隣の鹿児島県の鹿屋市にありまする療養所のごときは、そこのP・T・
A会長が非常な高い見識を持
つておられまして、こうい
つた子供こそ温かく迎え入れる、それが
教育の本旨だ、そうい
つたハンデイキヤツプのついたかわいそうな
子供を温かく迎え入れて平等に
教育してやるということが
教育の本旨だ、我々はそれを誇りにしているという
ようにこの
法務局の御紹介に対しては回答を寄せておられます。私
どもは、どうか
瀬口さんも今後十分御検討頂きまして、そうい
つた気持を以て
入学に御
賛成頂ければ誠に幸いだと思
つております。なお、
瀬口会長は
医者であられますので
お話はよくおわかり頂けると思いますし、又私の希望いたしますことは、
医者であられる
瀬口県会議長、P・T・
A会長がどうか一度
恵楓園においでにな
つて医者として
一つ最新の癩医学を御検討頂けないか。佐伯という剛全長は
医者であられまして、このかたは
最初は
反対をされましたが、私のところへ数回お見えになられまして
患者を御覧になり或いは最新のいろいろな
病気の研究をお聞きにな
つて、
最初は
反対されましたが現在は強い
賛成の
立場をと
つておられます。そのことは
幹部の皆さんは非常に不満の
ようでありまして、P・T・Aの副
会長ともあろう者が癩療養所に行くとは何ごとかというお叱りを受けて、現に副
会長の職責からやめさせられておる
ような現状であります。又もう少し詳しく御
説明申上げたいと思いまするが、又の適当な
機会をお与え頂ければ誠に幸いでございます。長時間をとりまして誠に恐縮でございました。