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1954-09-22 第19回国会 参議院 文部委員会 閉会後第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月二十二日(水曜日)    午前十一時二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀  末治君    理事            剱木 亨弘君            竹下 豐次君            荒木正三郎君            相馬 助治君    委員            田中 啓一君            谷口弥三郎君            中川 幸平君            吉田 萬次君            加賀山之雄君            安部キミ子君            高田なほ子君            有馬 英二君            須藤 五郎君            長谷部ひろ君   国務大臣    厚 生 大 臣 草葉 隆圓君   事務局側    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    中央教育審議会    長       亀山 直人君    文部省初等中等    教育局長    緒方 信一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○教育文化及び学術に関する調査の  件  (大学教育に関する件)  (北九州炭鉱地帯における欠食児童  問題に関する件)  (昭和三十年度文部省関係予算並び  に文教政策に関する件) ○参考人の出頭に関する件   —————————————
  2. 堀末治

    委員長堀末治君) それではこれから文部委員会を開催いたします。  この間お話のございました中央教育審議会会長亀山さんが出席されておりますので、大学教育に関する件を議題といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堀末治

    委員長堀末治君) それでは本件について御質疑をお願い申上げます。
  4. 竹下豐次

    竹下豐次君 亀山会長さんにお尋ねいたします。この新制大学の問題につきましては世論もまちまちであります。これは御存じの通りであります。私など聞いております範囲におきましては、どうも今のような状態では困るのじやないか、これを何とかこの際研究を重ねてみて、必要があつたならば大学学制等いろいろ改正しなければならない点もあるのじやないか、併しそれは、まだ私としてはもとより研究も届いておりませんので、どうしたほろがいいというような意見を持ち合せがないわけであります。この際研究を重ねて行く必要があるというような考えを持つておるわけであります。この委員会におきましても、私のみならずこれは大事な問題であるから研究してみよう、こういうことで文部当局のほうのお話も一応聞いたわけでありますが、すべて教育の問題につきましてはあなたの会長をしていらつしやる中央教育審議会でございますか、このほうで重大な責任を持ちまして有力なる活動をお願いしておるわけでありますが、今日のところ審議会ではこの問題をどういうふうにお取扱いになつておられますか、直接今深くお入りになつていないならば今後どういうふうにしようという御計画でもありますか、そういう点をお差支えない限りお伺いいたしたいというふうに考えておるわけであります。いろいろ細かい質問もほかの委員からもおありになるだろうと思いますが、一応それだけ私ども気持を申上げまして、先ず御説明をお願いしたいと思います。
  5. 亀山直人

    説明員亀山直人君) 私今お尋ねのことは新設大学の点だと思うのですがね、その特にどういうことでしようか、たくさんあり過ぎるということでしようか、設備とか何か教育教授陣の不十分というような点でしようか。
  6. 竹下豐次

    竹下豐次君 今お話の点をすべて包含しておるわけであります。私など殊に、ほかのかたは長く委員になつていらつしやいましてお詳しいのだろうと思いますが、私はこの頃文部委員になりまして余り深く研究もしておりませんが、教授大学先生資格の問題、或いはその養成の問題、或いは設備が不十分であるからこれもよくしなければならんという問題もあるようであります。それから関係大学も今のままじや困るのじやないか、この前何新聞でしたか、文部省研究しておるかのような形で新聞に出ておつたのを見ますと、どうもやはり専門教育などにももう少し力を入れる必要があるのじやないか、それについては元の専門学校みたような形に改めて行くということも必要じやなかろうか、種々雑多な問題が絡まつておるように思うのであります。その全体について一つお願いいたします。
  7. 亀山直人

    説明員亀山直人君) 全体ですか、中央教育審議会の現在のメンバーは昨年の一月に初めて会合しまして、それから開いておるのでありまして、今まで三十数回総会を開いておりますが、その大部分は今までは義務教育のことを論じておつたのであります。併しやはり大学も非常に大事な問題でありますので、その一番初めに入学試験の問題から中央教育審議会で問題になりまして、それで今第四特別委員会というものを特に設けまして、大学入学者の選考及びそれに関連する事項ということで第四特別委員会を作りまして、河原春作君が主査になりまして、この問題は相当大事でありますので、その委員も普段は特別委員会は三人か四人特別委員にしておりますけれども、この問題に限りまして九人の特別委員をお願いしまして、そうして今審議しつつある際であります。それはこの七月の二十六日に第一回を開きまして、九月十三日に第四回を開きまして特別委員会は今頻繁に議論をしております。それでその特別委員会結論を出しまして、そうして中央教育審議会総会に或いは案なり或いは審議の途中で主な問題の点を総会に持つて来まして、そうして総会で全体の委員意見をそこで開陳しよう、そういうわけでありまして、今特別委員会が盛んにやつておりますので、その特別委員会審議の模様は詳しくは私は存じません。それで総会でいろいろ議論になりました点だけを今御説明いたしまして、そしてなおいろいろ御質問の点に答えたいと思います。  一番初めにとにかく大学の数が多いし、入学試験が非常に大変だというところから問題が起りまして、それでこれをどらかしてもら少し避けることはできないか。背の入学試験中学校入学試験くらいな子供が非常に苦しんだのでありますけれども、今は大学にみんな大勢集中して来て、そうして青年が非常に苦しむ。それで入学試験予備学校さえできておるような次第なので、どうかしてこれを緩和すべきだ青年の尊い時間を無駄に費してエネルギーを無駄に費していけないからして、これをどうかして緩和する方法はないか。そういうふうな議論になりまして、それからだんだん問題になりまして一体大学の数が多過ぎるかどうか。まあ常識では汽車弁当のあるところにはみな大学があるということで、何百という大学があるというわけで私は非常に多過ぎると思うのであります。多過ぎるという結論が出ればそれじや又それをどうしようということになりますので、総会大学が多過ぎるのじやないかということを問題にいたしました。ところがいろいろ議論がありましたが、中には少過ぎるという議論もありまして、これは私は非常に驚いたのですけれども、少過ぎるから、入学者が多いにかかわらず大学の数が少いから入学試験が大変なんだ。入りたい人が楽に入れるくらい大学を作るべきだ。アメリカなどは州立大学というのは州の青年が入りたいと思う数だけの教育する義務があるというので必要な数に応じてどんどん教授力を増加するようにして施設をしているのだ。それが理想だというふうな話も出まして数が少いのだという議論がありますのですが、これは非常に私も驚いたのでありますが、ところがそれだけでは議論が尽きませんで、併し一体志願するというのはもう少し根本的に考えたら何のために志願するのか。学問ばかりを勉強したいというのではない。就職の問題も絡んでいるので志願者が多いのだから、それに応じて学校を建てるというのは適当でない。私などは個人考えですけれども幾ら学校を建てたつて八千何百万人の人がいまして、これが生存競争みたいなものでありますから、どうかして人より多少とも違つた、要するにデレクシヨンがなければ就職が得られないから学校を幾ら建てても無限に希望者はあるのだ。こう思いますので、どうも入学試験がなくなる程度までたくさん学校を建てるということは日本の国力ではできませんし、どうもそれは適当でない。これは私個人考えであります。もう一方で大学課程にはやはり中学校や何かよりもむずかしい学問をやるのでありますから素質が必要だ。大学課程を受けるだけの素質のある人だけが大学教育をやるべきで、素質が十分でない者が大学教育をやつてもそれは無駄だ。それを選ぶべきだというふうな議論もありまして、大学入学試験を緩和するためにどんどん造るべしという議論は必ずしもみんなの賛成は得ておらないわけであります。入学試験といいますけれども、極端に言えば東京大学に一番集中している。が、もう少し精密に言えば、東京大学だけじやない、東京にある大学に集中するのだ。それはなぜだ、学問だけを目的にしているわけじやない、それはやはり卒業してから先の就職目的にしているので、東京にある大学ならば、東京大学とは限らない。一橋大学でも工業大学でも、明治でも法政でも、慶応、早稲田は勿論のこと、国立大学私立大学に限らず、東京にある大学に集中するのだ。それはなぜか、これは別に調査したわけじやありません。委員の各自の持つている印象をそこに述べているのですけれども、これは例えば香川県なら香川県にある国立大学を出ましても、その大学卒業切符は、その近所会社とか官庁とかだけにしか通用しない。ところが東京でありますと、明治でも法政でも、神田にあります私立大学や何かでも、その切符は全国に通用する。Aの会社に行かなければBの会社に通用するから、全国的に通用する切符なんだ。然るに静岡とか香川とかというような地方国立大学や何かは、その切符は、その近所しか通用しないのだ。そこに根本があるのだ。そういうわけでありまして、それじやなぜそういうように地方大学を卒業しても、全国的に通用する切符にならないか。それはやはり教授の陣容、或いはいろいろ研究施設や何かで、いい先生がなかな集まらないという議論もありますし、又先生はたとえよくても、文化的に東京文化地方とかけ離れてしまつているので、そういう大学設備教授陣だけの問題ではないという考え方の委員もおられまして、そういうような意見も闘わせまして、そうしてまあそういうような点をもつと細かくいろいろ研究して、そうしてこれを解決するところの方法を、案を出してもらおう。それで、そのために特別委員会を作りまして、そうしていろいろ事実の調査及びそれに対する案などを今作つてもらつているわけであります。今まで出ております総会での案は、前の文部大臣の大野さんの案でありまして、簡単に申しますと、旧帝大大学院にすべきだ。それで普通の方々の地方にあります新設国立大学は、普通の六・三・三・四の課程大学にして、そうしてその上へなお学問を勉強したい人は大学院に入るのだ、その大学院だけを目的にした大学、旧帝大はそういうものにするのが一番いいという天野さんの説が今出ております。が併し、それにつきましては、そう簡単には行きませんので、まあいろいろ議論もありますし、そういうような点を特別委員会で検討してもらつている、そういうような状態です。まあ大体そんなところでして、特別委員会にはお約束をしまして、特別委員会審議の途中でいろいろ又問題もあるだろう、大きな問題になりましたならば総会に持つて来て、みなで審議をしようというわけで、今特別委員会審議を続けている。そういう状態であります。
  8. 竹下豐次

    竹下豐次君 今の第四特別委員会というのは、なかなかむずかしい問題ありますので、急速に結論をということも困難であろうとは思いますが、大体いつ頃までに結論をお出しになる御予定なんでしようか。
  9. 亀山直人

    説明員亀山直人君) 先ほど言いましたように、今の委員は昨年の一月六日に初めて第一回の会合を開きました。そして任期が二カ年なんです。任期が二カ年なんでありますので、来年の一月十日か、その辺のところで任期が切れるわけです。中央教育審議会というものは、そういう抽象的なものは廃止されるまで継続されると思います。けれどもども任期は切れますから、成るべくその前に結論を出したい、こう思つておりまして、主査河原君でありますが、そういう意向を伝えてありますし、皆さんも一応の結論は来年の一月といいましても、もうじきでありますが、それまでに出すつもりでおります。それで会合は大体文部省がこの委員たちを頼みましたときは一月に一度くらいの会合でよろしいというので、実業者諸君なぞもお忙しいのに応じたのであります。が併し、一月に一度ではなかなか進行しませんから、一月に初め二回、二週間に一遍ずつ会合を開きましたのですがね、そういう約束じやなかつた。それでは頻繁過ぎて我々は困るというおかたが大部ありましたので、そうかといつて一月に二回では多過ぎる、一月に一遍ではどうも少な過ぎるというので、以下三週間に一遍ずつ開いておりますし、それから特別委員会はもつと頻繁に、八月などは三回も開いております。そういうような状態であります。大体今年一杯くらいに大体の鮎論は出るだろうと思います。
  10. 竹下豐次

    竹下豐次君 それは文部省から諮問があつたわけではありませんで、審議会としても文部省結論が出たら建議するという建前をおとりになる御予定ですか。
  11. 亀山直人

    説明員亀山直人君) 私はそういうようにしたいと思つております。大体昨年の一月に第一回の会合文部大臣希望を述べられまして、大体いろいろ学校制度や何か、占領当時にできたものだ。今は占領が終りましたので、占領当時、特殊の事情でできたものだから、そういう占領の事実がやむと、不適当になつたものが相当あるだろうから、それを検討してくれというお話でありまして、私どもは一括的に諮問を受けているものと見まして、大体自主的に考えてはおります。併し又必要に応じまして、文部省が特殊の項目について質問されることは私ども歓迎もいたしまして、実際そういう特殊な項目について特に諮問されたこともあるわけであります。そういうような状態であります。
  12. 竹下豐次

    竹下豐次君 お話承わりますというと、第四特別委員会というものをお作りになつて研究していうつしやいます。ただその差当り目的としては入学の問題、採用の問題、入学の許可の問題、それが差当りの目標になつておる。併しそれにはいろいろな関係があるわけで、従つてほかの問題もいろいろ研究しなければならんというように、そういうふうにして今研究を進めていらつしやるように承わつたのでありますが、そうしまするというと、広く考えますれば、その資格の問題、入学試験の問題など、いろいろやはり学校学制の問題なり或いは教授陣の問題なり、殆んどすべて大学問題を研究なざらなければ結論が出ないのではないかというふうに想像されます。そうなると差当りの第四特別委員会目的入学云々ということになつておるけれども、本質は大学教育全体の問題をこの特別委員会研究なさるというふうに了解してよろしうございますか。
  13. 亀山直人

    説明員亀山直人君) よろしうございます。ちよつと申しますけれども大学入学試験につきましては文部省の中に他のもう少し小さい特別な、名前は忘れましたけれども審議会がありまして、入学試験を緩和するような非常に技術的な問題につきましては他の、名前は何と言うか知りませんが、審議会みたいなものがあるのです。ですから、そこでやればいいのでありまして、私どものほうはもう少し深く論ずることになつていますから、非常に根本的な問題になつて来る。財政の問題も入つて来るでしようし、地方自治体の問題にもなつて来るでしようし、非常に広汎な問題だと思つております。
  14. 竹下豐次

    竹下豐次君 大学学制の問題につきましてもいろいろな批評があります。極端なことを申しますというと、今の学芸学部なんというものは元の師範学校よりも実際卒業生は劣るじやないかというような批評まで、これは一般の批評だと思うのですけれども、されているような向きもありまするし、そのほか工学部施設にいたしましても、途方もないことで我々素人から見ましても、あれで一体大学という名前を付けるようなことはもつたいないような学生が、大学生だということで頭のほうが高くなつて実力はさつぱりない。努力して勉強しようとしても教授陣も十分でないというようなことは困るというふうにも私個人としては考えておるわけでありまして、それから大学先生就職の問題なぞにしましても、長い間文部省関係資格審査委員会がございまして、今でもあるだろうと思いますが、それで相当に厳重な審査をして下さいまして、先生たち誰が見てもこれは立派な先生だというような人たちが専門的に審査されまして、書いた論文を検査しておられたようであります。まあ私なぞはこれで以て本当に大学の権威というものができるなと喜んでおりましたところが、近頃は大分私なぞが見るところでは、余り高級といつては悪うございますけれども、高低をつけて甚だあれでございますけれども教授陣がどうかというようなところまでも学校のほうにその選定をお任せになつているというようなことも聞いております。これがいいか悪いかということについてもいろいろ議論があるだろうと思います。それから大学立場としますれば、これはやつぱり任してもらいたいのが人情だろうと思つております。或る大学は任された、自分のほうは任されないというようなことになると、如何にも格付されたようなことになりまして、生徒の募集にも影響して行くというようなことにもなりかねないことであります。併しそういう点はよほど考えないというと本当に大学格下げしてしまうというようなことになつても因るのでありまして、格下げというのが元の専門学校程度格下げして、そこで実質的の実力養成するような組織に変つて行くならこれは別であります。徒らに大学という名前を残しておいて、頭だけは高くなつているけれども学校を卒業して役に立たないというような卒業生が出たら、これはもう本人に非常に気の毒であるというのみならず、国家全体の立場から非常な損害であると思うわけであります。  そういう問題、かれこれたくさん御研究になる材料が多いことだろうと思つておりますが、実は文部大臣から第一回の中央審議会の際に、いろいろ今会長さんからお話のありましたような意味で、この際問題を研究してもらいたいといろお話があつた。その後の審議会で、どうも下のほうから、小学校から中学校というふうにだんだん研究を進めて行つて大学のほうは後廻しになりそうだというような噂をちよつと聞きましたので、そうなつたならこれは大学についてはいつになるかわからない、小学校だけの研究問題にしましても、今の制度をそのまま維持して行くということにしても、その教科内容から、先生養成から、一切のことを研究していつたら、これはやはり何年もかかるような問題かも知れないという心配が私どものほうでもありまして、これでは大学の問題はいつになるかわからないということになりそうだが、一体文部省審議会のほうでは、大学の問題を今の制度のままに、そのままにということを前提として、それを内容的に御研究になつておるかどうか。それじやちよつと困るが、というような気持を私は持つておりました。併し今お話を承わりまして大学の問題をすでにお取上げになりまして御研究になつておるということでありますので、私それじや非常に心から満足いたす次第でございます。
  15. 亀山直人

    説明員亀山直人君) ちよつと補充いたしますが、大学の問題に関連いたしまして、もう一つ国立大学管理法という問題がありまして、これには第一特別委員会という、天野さんが委員長になつておる第一特別委員会というのがありまして、そちらのほうで審議しております。相当な委員それから専門員などおいて審議しておりますが、何分中山伊知郎君とか、我妻君とか、外国へ行かれるかたがあつたりしまして、そう頻繁には審議しておられないようでありますけれども、これらにも大体我々の任期のうちに一応の結論を出してもらいたいということになつております。従つて近くそのほうの結論総会に出て来るだろうと想います。その大学管理法ということを落しましたので補充いたします。
  16. 竹下豐次

    竹下豐次君 私やはり急いで御研究を頂くことが非常に必要でないかという気持を先ほど申しましたように持つておるわけでありますが、今の制度を御研究の結果そのままにしておいて、その内容を充実して行くのだということがいいということになりますれば或いはいいのかも知れませんけれども、若し制度を変えて行くのだということになりますような、そういうような傾向でもありますならば、少し急がないというと、つまり悪いままに固つてしまつてあとで手が着けられないということになる心配があるのじやなかろうか。殊に大学の数を減らすとか、或いは総合大学を単科大学にするとか、或いは学部を他に移すとか、そしてその代りほかの学部をこつちのほうにもらうというようなことになりますと、それは私は考えようによつては或る程度好ましいかとも私自身考えておりますけれども、いろいろ政治的の関係が絡まつたり、或いは経済的の関係が絡まつたりしまして、年を経るに従つて、日を重ねるに従つて改革がいよいよむずかしくなつて来るのじやないかというように私は心配しておるので、ちよつと急ぐ気持ちを持つている。それをお含み願いたいと思います。  それからもう一つお伺いしたいのですが、天野さんの御意見が今の問題になつておるということでありましたが、それも一つの行き方であろうと思います。そうしますと、こういうふうに了解していいのじやないかと思つておりますが、天野案によりますと、元の帝大あたりの旧大学に代る大学院ということになります。ところが大学院は今度の制度によりましても非常に長い期間いろいろな項目などたくさんありまして研究されておる制度になつておるのでありますが、旧帝大よりも又一段高い大学院、実質的に高いものができるのじやないか、これも結構だと思います。それで一方においてそのほかのいわゆる大学というものは元の大学よりも格下げになる……。
  17. 亀山直人

    説明員亀山直人君) 元というのは今のですか。
  18. 竹下豐次

    竹下豐次君 旧帝大時代のですね、恐らく今の大学でもでき得べくんば元の帝大くらいのものに皆作りたいというのが念願のようでありますが、実際今皆そう言つておりますが、そこまで行つておりませんが、その理想を今は全く文部省は捨てておられるわけではないだろうと思いますが、ただそこまで行つていないということだろうと思つておりますが、この天野さんの考えによります大学というのは、元の旧帝大などに比べまして格の下つた大学ということを初めから認めておいでの上の案なんでしようか。
  19. 亀山直人

    説明員亀山直人君) そういうわけではないのです。併しその今の天野さんの案ば唯一の案というわけではないと思いますけれども総会で提案されました一番具体的な案ですね、総会で提案されましたうちでは一番というよりも殆んど唯一の具体的な案なんです。それですから申上げたので、特別委員会でも天野さんの案が採択せられるとは限りません。今それは審議中でありまして、どういう案になつて出て来るかは私はちよつとわかりません。まだ未確定ですから余り天野さんの案が確定的のもののようにお考え願わないほうがいいと思います。
  20. 竹下豐次

    竹下豐次君 そうは思つておりません。ただどういうお気持でしようか、それを承わつておきたいというのです。時間の関係で更に私あとでお伺い申上げます。
  21. 相馬助治

    相馬助治君 私竹下委員質問に関連して一点伺つておきたいと思いますが、中央教育審議会会長さんがこの委員会に御出席になるというような機会が非常に少いものですから、この基本的な問題を一点お伺いしておきたいと思うのであります。あれほど世論を沸かして反対の声が多かつた例の教育二法案を提案を文部省がいたします場合に、そのただ一つの根拠として中央教育審議会の答申書を我々の前に当時示したわけです。この一事を以てしても中央教育審議会というものが非常に現在の日本の文教政策を遂行して行く上において存在の大きなものでありますので、私どもはこの委員会審議というものを常に注視しています。ところが不幸にして中央教育審議会の議事録が我々の手に入らないのです。厚生省だとか農林省だとかいろいろな、こういうところにもそれぞれの委員会がありますが、これは特殊な問題を除いては大体国会ですとその議事録が手に入つておりますが、中央教育審議会に関しては文部省がかなり口が固くて手に入らない、それでやはり私尋ねたいのは、そういうことから出発してお聞きしておかなくちやならないのです。が、当初大臣が六・三・三の学制について中央教育審議会諮問をされたやに聞いております。この六・三単制のうちでも現在非常に問題なのは私は大学学制と、こういうふうに考えております。この大学学制の場合にも短期大学というような六・三・三制の枠からちよつと外れたものが今過渡的にできて、それが現在は恒久化したというようなことになつていると思うんですが、この大学制度というものを抜本的にこの際考え中央教育審議会意見をまとめて大臣に諮問するというふうにお考えになつているか、或いは又現在出発している大学学制のまずい点を、直し足らない点を補つてこれを充実して、なんとかこれなりに完成したいというふうに考えているか、この基本的態度について会長の御意見を承わつておきたいと思います。  それから第二に入学試験に関する小委員会を設けてここで大学の諸問題について考究しておると、こういうことですけれども説明を聞いて初めてわかつたんですが、入学試験の関連に絡んで大学の基本的なものまで考えて行くということは、私どもにしては理想の形でないように考えるんですが、この点についてはどのようにお考えであるか、これが質問の第二点です。  それから質問の第三点は、先般八木澤委員を小委員長とする給与に関する答申が文部大臣になざれたようですが、甚だ批判がましく恐縮ですが、あの給与の内申を見ますると、中央教育審議会理想的に考えていた案でなくて、むしろ現在の法律できめられた給与、即ちあれほど問題のあつた三本建の給与を半ば以上是認して、これに見合うような答申がなされておる。失礼な言葉を許して頂くならば、大臣に対して法律できめられた委員会として答申する権限を持つ中央教育審議会の答申案としては、甚だどうも食い足りないという批判が各方面にあることは会長も耳にされていると思うのです。併しここでは私はその批判をとやかくするのではないのですけれども、要するにこの大学学制の問題を中心として、この抜本的な改正を目途とした丙申をする決意、決意といつては恐縮ですが、お考えがあるかどうか、そうして又これに絡んで、この現在地方財政、中央財政の上で問題になつておりまする教員の給与の問題に関して、又抜本的な考え方の御用意があるかどうか、この間の内申で一応給与の問題は打切るというふうな建前かどうか、この三つを伺わせて頂きたいと思うのです。
  22. 亀山直人

    説明員亀山直人君) その三つは大変長い御説明つたので、私よく覚えておりませんからして、もう一度言つて頂きたいと思うのですが、おしまいのほうから私お答えします。給与の問題ですね、三番目は。この前答申にある給与が食い足りないとおつしやるのは、三本建に反対することを希望しておられたのかと思いますけれども、この三本建という問題を私、会長としましていろいろ調べますと、あれは非常に中央教育審議会で論ずるにはふさわしくない問題なんですね。あれは非常に細かい数字があつて、それはもう本当に技術的に非常に細かい点まで考慮しないと話がわからないんです。それで中央教育審議会のメンバーが、その非常に細かい数字をいろいろ議論し出したらなかなか了解に行かないんです。私大分年をとつて六十幾つなんですが、なかなかその細かなことがたくさんありまして、それをよく了解しないと見当違いだつたり不適当な答申になりまして、私は内心はどうもこれは三本建ということを論議するのは、中央教育審議会では非常に不適当だと、こう思つてつたんです、正直なところ。そうしましたところが、特別委員会ではやはり同じように考えたんでしようか。その答申の原案にはそういうふうに触れておりませんので、それで併しどうも世上に問題になつておるところに触れておらないので、このままではいけないというので、それで説明書を付けまして答申したわけです。そうしてもつと根本的に考えてもらいたいという希望は出してありますけれども、あのデテールの中に飛込んだらそれは泥沼に入つたようものでして、私どもはなかなかわからない、国会でも随分御議論があつたということを聞きますけれども、例えば一つの言葉をたつた一つだけでも説明いたしますと、何といいまするか、教員に参与をされる人がもとの師範学校を例えば出たとしまして、そのときAならAという給与をもらうその人が今度もつと高い学校を、例えば大学を出た高い教育を受けたらば、さつき言いました低い教育を受けたAという人と同じ給与になる。こういう説明をされる人もあるし、いや、そうじやない、高い教育を受けただけ高いサラリーをもらうのだ。こう説明されるかたもあるのです。私はどうもどうしてそういう同じたつた一つのことを二つの違う説明があるか先だんだんだんだん問い質して見ますと、低い学校を出てAという金をもらう、そうしてそれが何年間、三年なら三年教員として勤めているためXだけ上つて、AプラスXになり、そのXだけ給料が殖える、その年限だけ大学にいて勉強したならばBなる男がもらう給与はAプラスXと同じ額だけもらうのだ。初めて教員になつたときもらつた給料はその高い教育を受けたほうが高いけれども、その高い教育を受けるだけの年限、同じ年限だけを教員として勤めていたならば、昇給額が、やはり高い教育を受けて卒業して教員になつたときにもらう余計額と同じなんだと、そういうので、成るほどとわかつた。そういうふうにいちいち言葉一つでもなかなか複雑でして、とてもあの泥沼の中に入りましたら中央教育審議会では事柄自身をわからせるのに大変だと思うのです。そういうわけで、そういう非常に技術的な、さつき竹下さんのお話のような大きな問題ならいいけれども、ああいう非常に技術的な細かな問題に中央教育審議会が入るのは私はその任務じやないとこう思つておりますから、あの給与の問題につきましてとつたのは、私は決して誤つておらないと、こう思つております。それが三番目のお答えです。  第一のほうは相当抜本的な題目は、大学入学者選抜ということでありますけれども、結局それは東京の諸大学に人がまあ希望するのは、それは地方大学が完備していないからだろうとか、文化の分布の問題だとか、或いは地方の財政の問題だとか、日本全体の経済状態とか、非常に広汎な問題を取扱うのでありまして、現在の大学制度を是認して、それに少しの改良を加えるというのじやありませんで、もつと根本的な改革を目指している、そういう委員会であります。ですから、名前の付け方は少し悪かつたかも知れませんけれども、名の付け方が悪いとおつしやればその話が出て来たいきさつがありまして、それでそういう名前になつたのですが、日本の現状でありますと、幼稚園に入るときから大学の、極端に言えば東京大学、或いは東大に入りたいという考えから、どこの高等学校に入つたらいいだろう、それにはどこの中学校に入つたらいい、その中学校に入るには小学校はどこでと、幼稚園から継続しているわけでありますから、大学入学者という名前では困るという委員もありまして、それじや高等学校中学校と、もつと広い名前にしようかというのでありましたけれども、その委員も結局は大学入学者というのは選抜ということになるから、大学入学者でもいいというので意見を撤回されたようなわけでありまして、そういうわけで、ちよつとそれは委員会の歴史的な名前の付け方でありますけれども、根本は相当抜本的なことを考えたわけであります。二番目は何でしたね。
  23. 相馬助治

    相馬助治君 中央教育審議会が比較的秘密主義で、これは会長の意思であるかどうかということですね。
  24. 亀山直人

    説明員亀山直人君) それはやはり自由な討議をいたしまして、そうしていろいろ世間に対するジヤーナリズムとかその他の影響を考えながら、自分の本心でないようなことを言うようなことがあつてはいけませんので、非常に自由な、本当に思うことを言おうというために秘密にしておる、こういうわけであります。
  25. 安部キミ子

    安部キミ子君 ちよつと根本の問題に触れますが、中央教育審議会の性格といいますか、その文部省との関連ですね、そういうものはどの程度に権限があるのでございますか。その点をお伺いいたします。
  26. 亀山直人

    説明員亀山直人君) 文部大臣諮問機関でありまして、文部大臣諮問に応じてやつておるわけであります。ところで文部大臣からAの項目、Bの項目という一々項目の指定を受けて諮問するというのでなしに、一括して占領当時と今と非常に事情が違つているので、今は適当と思わないというものを見出してくれというわけで、一括して諮問を受けたものと了解しまして大体はそのつもりで進めて行つておりますけれども、併し文部省のほうと密接な連絡をとりまして、文部省が特に御諮問になりたいというものがありましたらば、喜んでそれに応じますからということを申してありまして文部省のほうから特に諮問されることもあります。
  27. 安部キミ子

    安部キミ子君 そういう場合に中教審の答申と文部省意見との食い違いのときに、どういうふうに調整をされますか。
  28. 亀山直人

    説明員亀山直人君) 意見の食い違いと言いますと、私のほうは事実上は答申はしつ放しでありますから、文部省意見が違いましたらば改めて又議論をするということはしておりませんのです。例えばどういう例でしようか。
  29. 安部キミ子

    安部キミ子君 例えば教育二法案の内容なんかも先ほど相馬さんがおつしやいましたように発表されませんので、中教審の態度というものは詳しく知ることはできません。併し世論の伝えるところによりますと、あの二法案にいたしましてもいろいろな異論があつて収拾できなかつたというふうな意見も聞いておりますし、とすれば、そのものの考え方、一つの線というものは中教審としてはまとめて答申なすつたに違いないと思いますから、その答申が果して文部省と同じ線であつたかどうか、若しそれが反対の線であるにもかかわらず文部省が強引にあの二法案を出したということであれば、中教審の存在というものはあつてなきがごとくであつて、何も意味ないんじやないか、むしろ世論では中教審というものは都合のいいときだけ文部大臣が利用して、本当に教育考えて正しい結論が出たときには聞きつ放しだ、そういうふうな存在であれば金をかけて中教審におえらがたの顔を列べても意味がないと、こういうふうに世間ではいささか失望しておる点があるのです。そういう意味で中教審がどの程度、正しい線だと思つて主張なさることが、文部省に主張することができるかどうか、そこの権限の問題になるんですけれども、どういうふうにお考えになりますか。
  30. 亀山直人

    説明員亀山直人君) どういうふうに考えるかというよりも、その教育中立のあの審議のことを申そうと思います。それは特別委員会の原案が出まして、そうして若干の修正を私が提案してみんながそれに賛成したわけですが、最後に日教組が非常に困るというようなところで適当なる措置をしてくれ、こういう答申なんです。適当なる措置をやるべきだと、それにつきまして適当なる措置というものにつきまして、法律を作つてこれを取締るということに不賛成だというかたもありました。全員ではありません。それで多少の修正が出まして、その修正案の中に法律によらざる適当なる措置というような提案もありましたけれども、それにつきましては二十人の審議会委員の申で賛成がたつた二人しかない。それで、もう一つの案は適当なる措置というのはやめて、文部省において案を作つて、もう一度中央教育審議会にかけるべしという提案がありまして、そういう提案に対して賛成者はその提案の御当人一人たけでした。それで結局その法律によらざる適当なる措置という提案は、提案者とほかに、もうお一人だけで二人しか賛成者がない。そうして文部省に案を作れ、そうしてそれを中央教育審議会にかけろという御提案は提案者お一人だけなんです。それで修正案は全部消えまして、そうして原案を二十人の審議会委員の中で決をとりましたところが二十人の中で私が座長ですから十九人がその賛否を言える人たちです。十九人の中で十五人が特別委員会の提案、それにちよつと字句の修正がありましたけれども十九人の中で十五人が賛成されたのでありまして、あの答申にそのままでは賛成されないかたが一、二ありましたけれども、それは全部少数であります。ですから中央教育審議会意見というものは多数決できめるのでありますから、やはりそれは中央教育審議会が、特別委員会の原案は多少の修正を経ましたが、その原案で大多数が賛成したのであります。十九人の中で十五人が賛成です。残り十九人から十五人を引きますと四人でありますが、四人のうちの一人は特別委員会の原案、それに多少の修正を、今私が申しましたが、多少の修正をせざるその一番初めの原案に賛成だということでありまして、つまりあれに不賛成のおかたは三人しかないのであります。ですから中央教育審議会は多数決でありますから、中央教育審議会はあれに全部賛成した、こういうわけであります。
  31. 安部キミ子

    安部キミ子君 今後も中教審のあり方というものが従来の通りでよろしいというふうにお考えになりますか。例えば私たちが見ますと、今のお話を承わりましても、あのような、世論が反対している悪い法案を中教審の大多数の人が賛成して出されるというところに私は中教審のメンバーの、人の構成に問題があるのじやないか。そのように正しい教育の道というものを正しく審議する機関でないものを文部省諮問機関として置いておるということは、私は至つて不賛成な感があるのでありますが、今後もこれでよろしいというふうにお考えになりますか。
  32. 亀山直人

    説明員亀山直人君) それにつきましては、私は中央教育審議会会長に選ばれておるのでありますが、それはそのメンバーは文部大臣が岡野文部大臣のときと、それから天野文部大臣のときとどの程度に御選考になつたか知りませんけれども、その御選考によつてできました中央教育審議会のメンバーの会長でありますので、若し不満であればそれは文部大臣に言つて頂いて、中央教育審議会のメンバーを変えて頂くより仕方がないと思います。  それからちよつと私申しますが、中央教育審議会は適当なる措置というものを要望したのでありまして、その適当なる措置という中には、適当なる措置と言つたからには、どうしてもそれはその法律で規定されることもあり得る。法律で規定されることはいやだというかたは法律によらざる適当な措置ということを提案されたのであります。それは先ほど申しましたように、たつたお二人しか賛成がないのでありますから、適当なる措置という言葉につきましては、中央教育審議会の大多数が法律によるということも含まれるということを承知の上で賛成したのであります。ただ法律ならどんな法律でもいいということは決して中央教育審議会のメンバーでも考えておらないと思います。ですから適当なる措置ということにつきまして文部大臣が案を作つて国会に出した、そこで国会は最高の権威でありまして、その法律を国会が賛成されたのでありますから、これは中央教育審議会とほ全然無関係なんでありまして、私どもは国会がおきめになつたのは如何ともしかたありませんし、個々の人々はその法律が適当でないという意見もおありになつたでしようけれども中央教育審議会はその法律がいい悪いは一向関知しませんが、法律によつて規制するということもあり得るということは認めておるわけであります。
  33. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の問題に関連してお尋ねいたしますが、教育二法案とそれから中教審の答申とは私ほかなり距りがあると思うのです。中教審の答申の内容と、政府が国会に出しました法案、その法案の内容と比較してみますと、かなり距りがある、こういう点中教審ではどういうふうにお考えになりましたか。
  34. 亀山直人

    説明員亀山直人君) それは法律の案が明らかになりましたときに中教審で、もう一度議論しましたけれども、今、今というのはその当時ですが、今中教審がとやかく言うのは適当ではないという結論になりまして、もう何にもしないことにいたしました。
  35. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 かなりの距りはあるということはお認めになつたわけですか。
  36. 亀山直人

    説明員亀山直人君) そうです。
  37. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで先ほど安部委員からも質問があつたのですが、中教審はいろいろの問題について答申をしておられる。併しその答申の内容文部大臣によつて採択されない、或いはそれ以上に行過ぎた措置がとられるという場合が相当あるわけです。私はこの間答申された義務教育学校職員給与に関する答申、この問題についてもちよつとお尋ねしたいと思いますが、いろいろの答申があつてもそれが文部省によつて十分に採択されない、こういう場合が過去にもあつたし、将来も相当あるのじやないか、そういう点について中教審としては何らか検討を加えられたようなことがございますか。
  38. 亀山直人

    説明員亀山直人君) 検討を加えたことはございません。検討を加えたことはございませんが、併し諮問機関でありまして、諮問に応じて文部省が答申のまま採用するかしないかというようなことは文部大臣の権限でありまして、諮問機関たる中教審に限りません、すベての諮問機関はそれはやむを得ないことだと思います。ほかの委員会でも随分答申の通りにせられないものもたくさんありますので、それは初めから諮問機関という性質を、そういうことはやむを得ないことだと思つて了解しております。
  39. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは昭和二十九年の八月二十三日ですかに答申になつている義務教育学校職員給与に関する答申、これは非常に緊急性がある問題として答申されておりますか、どうですか。
  40. 亀山直人

    説明員亀山直人君) それは多少緊急性がある。主査は非常に緊急性があるという意見でしたけれども、私はそう主査の言うほどは緊急性はないと思つていましたけれども、併し主査が非常に緊急性があると言いましたので、その通りに事を運んだわけであります。ということは、地方自治体で金がないために、相当立派な教員でも年が来ればどんどんやめさせるということがあつて、それを防がなければならない。それには予算時期以前にする必要があるということで、その点が非常に緊急性があるという意見です。それは御尤ものことと思いまして、それは何度も、その答申は三度も練り直しました。
  41. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでその内容は非常に私は概括的に述べておられると思うのですが、現在の給与制度というものはよくない。だから新らしく給与制度を立てよう、こういう……。
  42. 亀山直人

    説明員亀山直人君) よくないというよりも不十分……。
  43. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 こういうことが第一項に謳われております。現在の制度でどういう点が一番主な点ですね、困るというふうなお考えであるわけですか。
  44. 亀山直人

    説明員亀山直人君) その点も中央教育審議会で余り漠然としているじやないかというので議論がありまして、主査説明がありまして、特に三つの点につきましていけないという点がありましたので、それではそういう説明を付けるべきだということで、説明が付いているわけです。この答申に説明が付いておりまして、第一、第二、第三という三つの点につきまして特定の説明が付いています。そういうわけでありますから、そういう点が直接具体的なことなんです。
  45. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ちよつと時間の関係もありますから、私は今日はこの答申はかなり緊急性があると認めて答申をしておる、こういうふうに了解をして、一応私の質問はこれで終ります。
  46. 竹下豐次

    竹下豐次君 私立学校の問題ですが、私大、今日は主として大学のことをお尋ねしたいわけですけれども、どうも従来私学に対する長い間の文部省の態度、それから地方庁あたりの態度にしましても、教育関係人たちの態度などは、官公私を相当に差別待遇して行く観念を頭に持つておられるのではないかというような感じを私どもは非常に強く持つております。これは申すまでもなく学校のことでありますから、殊に文部省が認可した以上、官学にも劣らない立派な卒業生を出すように私学もしなくちやならないわけであります。ところがどうも私学だから余りかれこれ言わないのだ、よく言えば遠慮し過ぎておられるような傾向があるように思いますし、悪く言うと放つたらかす、これは極端な表現で済みませんけれども、そういうような感じがするのであります。あなたの中央教育審議会ではどういうふうにこの私学の問題をお取扱いになつておりますでしようか。
  47. 亀山直人

    説明員亀山直人君) 私学の問題は今までは論じておりません。私の任期中に私学の問題は論ずる暇はないと思います。
  48. 竹下豐次

    竹下豐次君 大学の問題を研究するにしましても、とにかく大学程度以上の卒業生を作るというのが目的で、そこに私学であるとか官公であるとか、名前が違うだけです。御研究になるなら一緒にして御研究にならないというと、妙なことになつてしまうのじやないか、かように考えますのでお尋ねしておるわけです。
  49. 亀山直人

    説明員亀山直人君) そういう点で私学が多少論ぜられると思いますが、併し、私学を特別に題目としては論ずる暇はないだろう。例えば夜間大学を置いたらどうだとか、私学は相当置いておるところがあるが、その経験はどうだろうかと、やはりそういうようなときに自然に論じられて来ます。
  50. 竹下豐次

    竹下豐次君 就職問題にしても、学校を卒業しての実力関係にしても、どうしてもこれは一緒に御研究を頂かないと、折角の御研究が中途半端になつてしまうのじやないかと懸念いたしますので、お伺いしたわけです。
  51. 堀末治

    委員長堀末治君) 本問題は、この辺で打切ります。   —————————————
  52. 堀末治

    委員長堀末治君) 次に、北九州炭鉱地帯における欠食児童に関する件を議題といたします。厚生大臣お見えになつております。なお、厚生大臣十二時に出掛けなければならんので、長い間お待ちでしたので、そのつもりで、はしよつて質問願います。
  53. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 実は今日は高田委員から質問があつて、そうして厚生大臣に是非出てもらいたいと、こういうお話であつたわけです。ところがどういうわけか見えておりませんので、私が、まあ代つて質問するということはどうもおかしいと思うのですが、私も若干質問がありますので、お尋ねしたいと思います。  それは御承知であると思うのですが、この北九州炭鉱地帯における小中学校の学童の間に欠食児童が非常に増加している。これは炭鉱不況による結果であるというように考えられるわけです。こういう事例はまだほかにあるかもわからんけれども北九州炭鉱地帯の例は、非常に顕著なことだと私ども考えておるわけです。で、この前の委員会で、何とか救済の手段がないかというような意味の質問をしたわけです。これは厚生省並びに文部省両方に対してしたわけです。ところが現行法規を以てしては、こういう救済手段、有効な救済手段は先ずないのじやないかというように私は強い印象を受けたわけです。従つて、こういう事態になつておりますので、何とかこういう学童の特殊な事例ですね、こういうものについて何とか救済の方法がないのかどうか、特にこれは厚生大臣の御尽力を願わなければならん問題であるというように考えますので、大臣のまあ所見なり、いろいろ対策なりですね、一つ温かいまあ点をお聞かせ願いたい、かように考えているわけなんです。
  54. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) お話のように実は北九州、殊に北九州とそれから長崎、佐賀関係、最近北海道関係、こういう方面の炭鉱、殊に中小炭鉱におきまするいろいろな関係からの欠食というものが最近目立つて多くなつております。私も先月これらの地区を廻りまして、今月は北海道に廻りまして、つぶさにそういう事情のお話も承わり、憂慮いたしておる次第でございます。そこで昨日、社会局長から事務的にはお話を縷々申上げたかと存じております。炭鉱不況による欠食児竜の取扱いという問題が一つの大きい昨今の問題であろうと思います。で、それがいろいろな点から考えまして、いろいろやり方があると存じます。又やらにやならない問題じやないかと思います。子の中で私どものほうで恐らく考えられる点は、只今お話の或いはやれない印象を深くお持ちになつたということもございましたが、十分この地方の実情によく即応したやり方をいたしますると、現在の生活保護法を中心にしました教育扶助という点からやり得る方法も多々あるし、又やつて行かにやならない問題もたくさんあると存じております。そういう意味におきまして、昨今極く最近、今月の十四日であつたと記憶いたしまするが、地方の府県知事に対しまして、この点を強く強調して、手ぬかりのないようにやるようにいわゆる通知を出して置いたのでございます。従いまして真にこの生活困窮のために欠食をするというような状態がありますならば、これを防止するのに生活保護法の教育扶助を適用いたして参りますると、なし得る限度を必ずやり得ると存じております。ただ全体の炭坑不況という点に対するいろいろな意味からの欠食という点を、全体的にする場合におきましては、いろいろ問題があると存じまするが、具体的な問題といたしましては、さような今申上げましたよらな場合には、厚生省といたしましても、さようなことのないようにいたして参りたいと考えております。
  55. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでですね、結局生活保護法の適用を受ける家庭の学童ですね、これは救済せられると思います。けれどもこの法律によつて救済せられる学童の数ですね、これは私相当限定されると思うのです。これで救済できない学童が北九州並びに長崎、佐賀ですか、方面の今度の欠食児童の中には相当あるのじやないかと存じます。この点は私は別に数字を持つているわけではありませんけれども、大体そういうふうな感じを持つているわけであります。そこでですね、生活保護法による教育扶助の面で、大多数が救済せられるのだと、こういう結果が出れば、私は非常に結構であると思う、併しそういうことでは若干は救済されるにしても、大部分は救済されないのだと、こういう結果が出て来ることを心配しているわけであります。そういう点は如何ようになる見込ですか。
  56. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) 実は御指摘のように生活保護法によりまする生活扶助、つまり生活だけの扶助をいたして参つている中には、若しもその中に学童がありますならば、学童の教育扶助というのを含めた金を入れて、そうして生活扶助をやつているわけであります。ところがそれに該当しない人、該当しないが或いは給食費の担ができない、或いは学用品が買えない。まあ現金と申しますか、もともと生活扶助には該当しないけれども、子供を学校にやるだけはどうも費用がないという人があるはずです。そういう人に対しましては単独に教育扶助だけをいたし得るのでございます。現在いたしております。これは生活扶助と併せていたす場合と、いわゆるその中へ含めてやります場合と、それから生活扶助はいたしませんでも、学校で完全給食をやつている、併しその金がどうしても月に二、三百円要る、それならその中に生活扶助は受けておらないけれども教育扶助だけを、給食費か出してやる、こういう両方で出しております。両方の合計が今年の三月におきまして五十七万五千九百十二人いわゆる教育扶助としていたしております。そしてその中で給食だけの扶助をいたして、給食だけと申しますか、給食扶助はその中で二十一万六千八百八十一名でございます。これが給食扶助でございますが、この給食扶助の中にも生活と合わしてやつておるものと、それから単独、単給と申しておりますが、単独でやつておるのと両方あります。そこでお話のような、親は生活扶助は受けていない、併し子供の給食費が出せないという場合におきましては、それが生活扶助に親が該当しない場合でも真に教育扶助が必要であると認められまする場合には教育だけの立場からの給食費の負担ができることになつております。
  57. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この間の局長の御説明によると生活保護といいますか、生活扶助といいますか、そういうものを受けていない家庭の学童に対しては救済の余地がないかのように私は聞いたわけなんであります。これは私の聞き間違いであつたかも知れません。そうすればかなり私は救済の途は広いと思うのです。そこでお尋ねいたしますが、そういう給食扶助とか教育扶助、こういうものを実施する場合、これは誰が認めればいいことになりますか。
  58. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) これは市或いは府県知事でございます。その事務は社会福祉事務所の社会福祉主事に委任しております。社会福祉事務所地域地域にございますから、従つて社会福祉事務所の社会福祉主事が調査をいたすとか、或いは民生委員等と協力いたしましてその実情に即応したやり方をやつております。実は昨日そういう御印象を頂いたといたしますると恐縮に存じまするが、この十四日に出しました社会局長名の通牒はこの点を特にはつきりいたして、生活保護法による教育扶助の適用というので殊に最近御指摘のような炭鉱方面が給食欠食というのが強くいわれておりまするから、そういろ点に対して適用を受くべき人が取扱いの不十分のために適用を受けておらないというようなことは誠に気の毒だと存じまするし、又適当ではないと存じますので、強くその点を喚起する意味における通牒を出したのであります。
  59. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると生活保護法の適用を受けなければ学校給食の補助もできないということになるのじやないですか。
  60. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) そうじやございません。これは病気の場合も同じでございます。医療の場合も生活保護法で生活扶助を受けておらない場合でも病気になつて医者の治療ができないという場合には、生活保穫法による生活保護を受けておらん人でも病気の医療扶助だけをいわゆる単給でやる。それから或いは分娩とか埋葬とか、埋葬の場合は違いますけれども教育扶助の場合におきましては生活扶助を受けておらないでも今申上げたように単給で扶助をいたし得るようになつております。
  61. 安部キミ子

    安部キミ子君 今私大臣のお話を聞いていておかしいと思うのです。自分の子供を教育もできない、給食もできないというような家庭が果して生活扶助を受けていなくても十分だろうかということを考えるのですが、もうここの段階に来たら当然その家庭は生活保護を受けなければならない家庭になつているのじやないですか。どうでしようか。これは別問題ですか。
  62. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) 生活扶助を受けておる中には、生活扶助の計算の中には学童がおりまする場合には学童に対しまする教育扶助というのは入つております。その金の中に生活扶助を受けておる子供が学校行つておりまする、義務教育を受けております子供がおりまする限りには小学校の一年には幾ら、二年には幾らという計算によつて基本を計算いたしまして、収入があつたらその収入を引いたあとはやつておりまするから、学用品なりすべてのものはいたしております。
  63. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうしますとそういう扶助を受けておる、給食扶助を受けておる家は生活保護法も受けているのじやないですか。
  64. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) そこで生活保護法は受けておらないが、欠食ということにもいろいろ形があろうと存じますが、給食の場合には金がないから食べられん場合もありましようし、或いは弁当を持つて行けぬ場合もありましよう。弁当を持つて行けぬような場合におきましては少くともそのうちには生活扶助を受けている家があつて、そうして弁当を持つて行かんような場合にはこれは子供の食う分を親が食つているということになりましよう。併し給食を学校がやつてつて、そうして家は生活扶助全受けていない。給食扶助が受けられないからやつて行かれないという場合におきましては生活保護法による教育扶助は可能である、やり得るということであります。
  65. 安部キミ子

    安部キミ子君 只今のお話によりますると、いずれにいたしましても教育扶助を受け、給食扶助を受けているような家庭は、当然私は生活に困つているような家庭だと思います。従いまして生活保案を受けますにはいろいろの規定があつて、而も今年度の予算では或る程度限界がある。枠を拡げるということはできないかも知れませんけれども、私はこの枠をこの際こういう場合におきましては早急に拡大してもらわなければ本当の保護法にはならないと思いますが、その枠の拡大を大臣は考えておいでになりませんでしようか。
  66. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) その点からちよつと実際の状態から私が今申上げたのでありまするが、従来の取扱いをそのまま率直に申上げて……。それで安部さんは生活扶助を受けないと教育扶助を受けられんじやないかという御見解のようでございますけれども、実際はそうじやなしに、生活扶助をやつておらない家でも教育扶助を現に東京あたりしているところがたくさんございます。その数がそれも含めまして二十一万六千という数字であります。これは生活扶助を受けんでも、生活扶助を受けぬ家庭で学校給食費が出せぬ家庭はないじやないかというような御質問のようですが、必ずしもそういう実情じやない。どうしてもやれない場合には、東京は大体三百五十円程度だと思います。月に。そういう金は生活扶助は別にいたしまして教育扶助をいたす。そこで今の拡大して、拡大というのは恐らく生活扶助を受けんでも教育扶助だけをやつたらどうかという意味の拡大というのと、それから拡大にはいろいろあると思いまするが、その拡大の意味はどういう意味かと思いますが伺いたいと思います。
  67. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は教育扶助を受け、給食扶助を受けるような家庭は当然生活保護法によらなければその家庭は困窮していると思います。これは今あなたのお話だと保護法は受けなくとも給食扶助と教育扶助は別にできるのだ、そういう家庭の姿があるのだとおつしやいますけれども、私は自分の子供に弁当も持たしてやれないような家庭が、どうして親が自分たちだけのうのうとおいしいものを食べ、十分な栄養をとつて生きて行く、生活を営んでいる姿とは思いません。やはりこういうように子供に現われて来る場合はその元である家全体に困窮というものが迫つていると、こういうふうに考えますので、只今の法規によりますると、生活保護法を受けるには大変な枠があつて面倒くさいし、気安くは受けられないようです。そこでこの際うんと巾を拡げて、その人たちを広い範囲に救つてもらいたい、そのことを私はお願いするわけなんです。
  68. 中川幸平

    ○中川幸平君 大臣の御答弁の通りの家庭が、先だつて大田区の南蒲田小学校へ視察に行つた際に給食の問題を尋ねたのですが、二百五十円もするのです。ところで生活保護を受けているのは四十何人いるらしい。それは結構だけれどもその境に四十何人か五十人、どうしても納められない人間がいる。何とかしなければならんという話なんです。結局委員会の議長も来ておつたので事務局の意見も聞いたのですが、何とか心配してもらいたいという話なのです。ところが今聞くというとそういうところは今救済の方法はあるらしい。文部省のほうでそれが徹底しておらんじやないかと思うんですけれども、非常に困つていた。千八百人のうち四十人が生活保護を受けてもらえる。その境の四十何人か五十人が非常に困るんだといつてつたのです。そこまで見てやれば非常に助かると思うんですが、それはわからないのですか。
  69. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) それで事実生活扶助は受けんでもいろいろの関係で支給ができない。併し今のお話のように給食の費用の負担ができないという家庭、これに対しまして生活保護法による教育扶助の給食費の負担というのが、必要がありまするならば今の法律においてなし得るのであります。当然なし得るし、なしております、現に。従つて今の安部先生の御指摘はこれをもうちよつと広く適用したらどうか。広くという意味がいろいろあると思いますけれども、従来生活保護法の教育扶助という実施が、該当し得ると認定されるものはなし得るのであります。だから私はそういう該当すべき人が、この生活保護法のいわゆる適用を受くべきものが、こちらの発見が不十分のために欠食等が多いというようなことになると、誠にいわゆる適正な法の執行ができておらないから、さようなことのないように特段の注意をせよというのが今度の通知なんです。従つて家庭を十分民生委員なり、或いは福祉委員調査をいたしまして、欠食の場合にも学校で給食しておつて欠食の場合と、今のお話のように家から弁当を持つて行けない、学校に給食のないような場合、特に北九州等における炭鉱地帯におきまして学校で給食をしておる場合には、割にはつきりしてやりやすいと思う。その学校の負担すべき費用が負担ができませんから、その負担すべき費用を支給しますと、若しやこれに該当する家庭でありますと、その金額だけをやつた学校で十分昼は食べられる。
  70. 安部キミ子

    安部キミ子君 昼ですね、お弁当が持つて行かれないような子供は、家へ帰つて朝晩の食事といえども私は十分与えられないと思うのです。朝晩の食事は食べなくても、親は昼の弁当だけ世間の手前なり、子供に引け目を感じさせないという親心で弁当を持たしてやりたいのは私は人情だと思います。でございますので、昼の弁当を持つて行かれないような家庭は当然困窮に私はなつている。従いまして生活扶助は受けなければならん段階の家庭だ。そういう意味で今までの枠がこういうふうな事態になつたので、成るほど長崎市或いは佐賀県の何々町には今までは何戸の扶助を適用される戸数があつたということは、それは既成の事実として当然それは責任はとつておいでになると思いますけれども、それ以外にこういう事態になつたので、それに該当する、生活保護を求める家庭がたくさんできて来る。私は当然教育扶助を受け、給食扶助を受けている家庭は生活扶助を受けなければならない家庭だと、こういうふうな前提に立つて今大臣にお話している。勿論私は教育の面で、今ここは文部委員会だから教育面だけ、給食だとか、教育扶助の面だけをやつているのではないのです。その子供が家庭に帰つた時は、その子供の家庭そのものは困離していると思う。むしろ学校内で現われた困窮振りよりも、もつと家庭のほうが困窮じやないか、こういうふうに考えておりますので、これとはイコールだと私はこういうふうに考えておるわけなんです。そこでうんと幅を拡げてすれすれのその線に外れる線が上になるか下になるかはちよつとむずかしいですけれども、併し幅を拡げてうんと親心を示してもらいたい、こういうふうな意味でお話しておるわけなんです。
  71. 堀末治

    委員長堀末治君) ちよつと申上げますが、大臣は大分早くから来て、十二時に帰らしてもらいたいというのが、一大分遅れているのですから、恐縮ですけれども成るべく御質問をはしよつて頂きたいと思います。
  72. 高田なほ子

    高田なほ子君 昨日のお約束をあなたのほうがお破りになつたので、大変失礼かと思いますけれども……。  前委員から多分御質問があつたと思うのですが、私は焦点だけお尋ねしておきたいと思います。大達文部大臣にもかねがねここでお話を申上げておつたわけですが、非公式のお話を承わつて見ると、結局北九州の炭鉱地帯における学童給食という問題ではない、いわゆる欠食児童に対する救済の手は、現在の法規では到底延べることが困難だというようなことで、大達文相も可なり悲観的な見通しを、非公式な席であつたわけですが話された。私はやはり現在の生活保護並びに教育扶助という面から考えて、北九州の炭鉱地帯の窮状というものを俄かに、現在の法規では打開することは可成り困難ではないかという、これは常識的な考え方を持つているわけであります。それで特に大臣に御出席つた理由は、こうした一連の法規はあるにしても、何とかここで政治的な手を打つて北九州の、炭鉱地帯における特殊な事情の中で、子供たちの欠食をどのような方法かで救う途はないか、こういうような御相談を申上げ、何とか大臣の善処をお願いしたい。実は事務当局のかたもお見え下さいまして、県当局に対して、現在の生活保護法の執行を適正に、且つ徹底させるよう通牒を出された旨の御答弁があつた。私はこれも妥当な方法だと思う。併し現状ではとてもそれでも不可能ではないかという危惧を持つているわけであります。こういう状況と、それからそういう状況に対する打開策について、何か別途の方法が考慮される途はないか。こういう点についてお尋ねしておきたいと思います。
  73. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) 今実は安部先生にお答え申上げましたのも御質問の要点は同様であつたと思います。北九州、北海道の一部或いは、長崎、佐賀、あの地区におきまする最近の炭鉱十界の不況のために、欠食児童が相当数ある。従つてこれに対する何かの方法をしてくれ、そこで私どものほうでいたしまする方法といたしましては、生活保本法による教育扶助、なかんづく給食費の負担というものの取扱いの問題である。そういう制度がはつきりあり、そういう予算もちやんと組んでおりますから、従つてこの取扱いのやり方の問題、取扱いのやり方は、従来相当これを厳格にいたしておつたのであります。厳格にいたしておりましたが、併しかような情勢の場合でございますから、それは実情に即した取扱方をしてよろしい。取扱方の実態は、先ほども申しますように一般のところにおきましては府県知事であり、実際の事務に当つておりますのは社会福祉事務所が当つております。社会福祉事務所の社会福祉主事が、これを調査しながらいたすのでありますので、私は先にちよつと触れましたが、学校等で給食の方法等がありますると、これは一番やりやすくなし得る。これらの現在の困つた状態を打開するのに一番やりやすい状態である。家からいちいち弁当を持つて参りまする場合には、いろいろな困難さがあると思う。家庭の生活扶助というものが発動の主体になつて参ります。学校給食の場合にはその給食費の負担になりますから、その場合におきましては教育扶助だけを官給ができるわけであります。そういう場合におきましては実情に即して割に実際上やりやすい場合が生じて来はしないか。そこで今回通知を出しましたのもそういう点を十分検討して一つ考えながらやつて欲しいという意味を含めて各関係方面とも連絡して手ぬかりのないようにしてくれというのでいたしておるつもりでございます。そこで実は先ほどもちよつと申上げましたが、私も七月、八月、福岡、長崎、佐賀、北海道方面へ参りまして、一番最初に話を聞き、陳情を受けましたのはこの給食の問題、欠食の問題であるのであります。この点については従来の線を崩すという意味じやないけれども、これを生かす意味においてそういう取扱いを十分検討してもらつたら、全然それがタツチできないというようなものじやないということを申してもおりまするし、今度通知を出しましたのもそういう趣旨であります。従つて只今御質問の点に対しましても今後私どもも努めてこれらの県に対しましてはそういう心持を伝えたいと存じまするが、そういう方法をいたしますると、現在の生活保護法におきましても、これをこのままの取扱いにおいてなしましてもなし得る途は、真に欠食児童に対しましてなし得る途はあると存じます。
  74. 高田なほ子

    高田なほ子君 甚だくどいようでありますが、東京都でも生活保護法の保護を受けておるこの家庭では若干の恩恵に浴しておるわけですが、そのすれすれの線のものについてはこれは可なり今日の社会的な問題になつて来て、東京都でも学童給介を実施している学校において給食を受け得ないものに対する東京都の教育扶助以外の扶助が三百万あると聞いておる、食べられないものに対する。そうすると北九州の佐賀県、長崎県等の地方財政はかなり財源的に逼迫している模様で、地方財源の中から東京都のような富裕府県と同様の措置をするということは極めて困難になつて来ると思うのです。学童給食をやつております学校では、或いは教育扶助という面で実際に昼食を食べさせることはできるかと思いますが、給食の行われておらないところでは、当然これが家庭の負担になるわけですが、数カ月に亙る給料の遅欠配と、それから生活保護法による給与というものの額は大臣も常に仰せの通り可なりこれは低いものであります。若干の値上りがしたとは言いますけれども、実際においては生活保護法それ自体で以て十分な子供への食べ物を食べさせるということもこれは不可能なことであります。どうしても北九州炭鉱地帯の特殊事情というものを勘案して、この通牒一本では片付かないように私考えられる。具体的には私補正予算あたりで生活保護法による三十数億の前々年度の赤字といつたようなものを勘案されて、それに何らかの方法で補正予算を附け加えて行かれるというようなお気持があられての通牒だと思いますが、この点については如何でございましようか。
  75. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) 実は生活保護法の全体といたしましては、御承知のように二百八十億くらいの予算を計上いたしております。そのうちで教育扶助が本年度十五億五千八百余万円になつております。その中で現在月々給食扶助、給食のために費用を負担しておりまするのが一千三百万内程度であると一応推定される。人員では先にちよつと本年度だけを申上げましたが、本年度の三月が二十一万六千八百八十八名、いわゆる教育扶助の中の給食の費用を受けておりまする人員がそれだけになつております。それで、これらの動きを見て参りますると、今まで給食だけの費用、給食の費用を受けております人が一番多かつたのは二十七年でございまして、二十七万一千、その後二十八年が二十一万、二十九年が二十一万とずつと減つてつております。これはいろんな食糧事情が緩和されて楽になつたという傾向がありましようが、それが昨今増加して参つたのであります。昨年の推計では、只今申上げましたのでありまするが、去年よりも少し増して参つております。これはだんだん今のような情勢ですから、増して来ると思う。増して参りましても教育扶助が十五億七千万円も計上いたしております現在では、なおまだ月に一千一百万円程度でございます。全体の現金は二百八十億持つておりまするから、この中の流用は、彼比相通することは、自由にできまするので、従つて補正等もせんでも、現在のところでは給食問題が、人員が増して参りましてもやり得ると考えております。
  76. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると補正予算には何らこれについて考慮できない、それから生活保護法の中で予算の流用を考えれば大体できると、こういう御答弁になつておりますが……。
  77. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) それで、生活保護法全体といたしましては、現在の見通しでは、なかなか今の二百八十億では足らんのじやないか、全体として考えますと。併しこれは法律による十分の八の負担ででございますから、府県が実施いたしまする場合には、当然国庫で負担をすべき責任額でございます。責任負担を負わされておる。従来はこれは予備費から取つて必要の額だけは出しておりまするから、補正によらずに予備費支出でその必要の都度予算がない場合は出しております。これで抑える、殊に給食等で抑えるという考えは持つておりませんので、予算の点につきましては心配せんでもいいものじやないかと考えております。
  78. 高田なほ子

    高田なほ子君 いろいろお尋ねしたいこともあり、又私はあとに疑問が残つておるわけですが、私はもう何も申上げないつもりです。ただこの北九州の欠食の子供が、何とか厚生大臣の本当の気持からこの欠食児童が救われて、それで弁当を盗んだりそれから栄養失調になつておる五百名に余るような北佐世保地区の子供でも、栄養失調から、食事をしないために倒れて行くことを、何とか防いで頂ければ、もう私は何も申したくないのです。通牒を十遍お出しになつても三遍お出しになつても或いはお出しにならなくてもいいのです。問題はこの北九州の子供たちがどういうふうに救われて行くかということを、大臣が、私は実際に責任を持つておやり下されば、これに越したことはないと思うわけです。重ねて申しますが、私は北九州炭鉱地帯から陳情も受けておりません。ただ新聞で知り、長崎県教育庁の悲惨なデーターを見まして、もう誠に切ない気持でいつぱいになりまして、大達文相にも篤とお願いをし、又お忙がしいあなたにも長時間ここに御列席を頂いて、私は本当に心の底から何とかこの北九州地区の子供たちがたとえ一食でもいい、一碗でもいい、どうか何らかの方法で、政治的の手を打つてでも、この子供たちが救われますように、これはどうぞ草葉厚生大臣の、あなたの厚生大臣としての名誉にかけても、北九州炭鉱の子供たちは救つて頂きたい、私はもう時間がございません、多くの疑義はございますが、まだいろいろ伺いたいこともございますが、もうこれでとめますから、どうぞ重ねて私の真剣なこの声を忘れないで頂きたいと思います。どうぞ一つお願いいたします。
  79. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) 御心情私も同樣でございます。従つてこれには炭鉱の不況に対する根本の方法と合わして考えて来なければならんと思いますが、そういう点と、併し同時に学校給食という問題とも睨み合わして考えて来なければならんと思う。学校給食等が若しやそのために中止になり、或いは学校給食等がありながら負担ができない子供があるために、その人たちが気の毒な状態になつておるというような場合におきましては、真に気の毒な人たちに対しましては生活保護法による教育扶助の給食という点を十分活用してなし得るように今後努力をいたしたいと存じます。これらの点につきましては具体的にその地方その町等の事情もいろいろあることと存じますので、これらの点は当該地方関係者を十分今後督励して参りたいと思つております。
  80. 堀末治

    委員長堀末治君) それじや大臣はいいですね……。どうも有難うございました。  ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止〕
  81. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を始めて下さい。  それでは前町に引続きまして、明年度の予算並びに文教政策に関する件を議題といたします。
  82. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今日は文部大臣に給与問題その他についてお伺いするとこういう予定になつてつたわけです。ところが文部大臣がお見えになつていませんので緒方局長から説明を聞きたいと思います。ただ私は文部大臣地方に出張せられていろいろの意見を述べられていることについては、緒方局長に質問をしても要領を得ないと思うので、これは大臣見えてから質問をいたします。  先ず給与問題についてお尋ねをいたしますが、先ほども中央教育審議会会長亀山さんにお尋ねした問題です。義務教育学校教員給与に関する答申がなされております。で、亀山会長説明によると、中教審としてはかなり緊急性のある重要な問題であるとこういうように考えて答申をした、こういう御説明であつたわけです。これを答申を受けた文部省はどういうふうに考えておられるか、その教員給与の対策の問題ですね。特にこの中に述べられているのは、最近給与の遅配、そういう問題が起つておるということが述べられております。これは文部委員会としても重要な問題として先般来質疑をしておつた問題です。又ここには述べられておりませんが、定期昇給すらまだ実施されておらない府県がございます。そういう今現われている給与問題一つを取上げてみても、このままに放置できない問題が幾多ある。そのほかに、この中教審の答申を見ると、非常に抽象的ではありますが、答閑に付することのできない重要な問題があると思う。そこでこの答申を受けた文部省としては、特に義務教育学校の教職員給与問題についてどういう対策を考えておられるのか、初めにお伺いしたい。
  83. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 只今御指摘にございましたように、中教審の給与に関しまする答申は大体二つの問題があろうかと思います。一つは今お話のございました現下の地方財政の逼迫から来まするそれの及ぼしまする給与の問題、それからもう一つは、根本的に給与の制度を再検討をする、そういう意見が述べられておるようであります。第一の問題の昇給昇格或いは昇給ストツプ等の問題でございますが、これは前にも申上げましたように、究極は地方財政の根本的な再建整備等の問題にかかつて来るかと存じます。御承知のように義務教育費国庫負担法のこの現行の制度におきましては、地方義務教育職員の給与費の負担は御承知のように都道府県でございます。その実績の二分の一を国庫が責任を持つて行くというのがこの法律の建前でございます。従いまして私どもといたしましてはその国の予算につきまして十分な予算を組んで地方で支払いました実績の半額をそれで十分支払つて行けるということに努めなければならんということが第一だろうと考えます。その点につきましてこれは二十九年度の予算につきましては御承知の通りでありますが、来年度におきましては、先般会計課長から御説明いたしましたように、相当の児童数の増もございます。それらの問題、それらの事態に対処いたしまして、教員の定数の問題、それから給与単価の問題、これは昇給財源を十分見込んでおるというようなことで、これから大蔵省と折衝するわけでございますが、そういうことで十分やつて行くことが国としての勤めであろうと考えます。そこでもう一つの根本的に給与制度そのものを再検討するという問題でございますが、これはなかなか一朝一夕に私は参らんと思います。中教審といたしましていろいろ御意見がございますが、私どももこれに対しましては十分に検討いたしまして、特に教員につきましては特殊性がございますから、それに対応いたしまする給与制度考えようということは当然必要である。答申もございましたので、今後十分検討して行きたいと考えております。ただ今公務員全般について政府としても全体の立場で検討がされておるようでございます。それらの問題とも関連いたしまして一つ検討して行きたいと存じております。
  84. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私が今お尋ねしておるのは、今のような御説明をしてもらおうと思つてつておるわけではないわけです。ただ緒方局長は国の責任分ということを非常におつしやるようですが、これは文部省は教職員の待遇給与の問題については、何といいますか、責任を持つて全般を考えるべき立場に立つておるわけです。従つて地方が負担した半額を国が負担するようにするのだということだけでは、これはうまく行かないですよ。地方が今日教員の給与について適当な支出をなし得ない事情にあるのと又適当な支出をしておらないと思われる府県ができておるわけなんです。その一つの例としては四月の定期昇給さえまだ実施されていないという府県があるわけです。これは私今日文部省からどの府県がまだ実施されていないのかという資料の提出を求めたわけです。そういたしますと、九月十日現在で五県、五県がなお昇給が実施されておらない、こういう資料をお出しになつております。併し資料のことについて先に尋ねますが、私どもの若干調査したところではもつと多いのですよ。十一ぐらいあるのですがね、まだ。県を読み上げてもいいです。それは青森、岩手、秋田、福島、茨城、石川、奈良、島根、高知、福岡、佐賀、宮崎、鹿児島と、十三ですね、これぐらい、この県がまだ未実施である、こういう私ども調査になつております。文部省のほうでは五つ、非常な食い違いがあるわけです。私非常に困つたことは、この間石川県に行つたのです。そして私は石川県の知事に会つた。そうすると、石川県の知事はこう言つているのですよ。実施していない所は二十県ぐらい出る、こういう話なんです。いやそうじやないのだと、この間文部省から文部委員会で資料をもらつた、ところが六つだけまだ実施していない、こういう資料だつたと、こういうふうに話をしましたところ、それは文部省が間違つているのだろうと、こういうことです。私としては知事と話をする際に、こんな不正確な資料をもらつてつては話のしようもなかつた。そこでこれは私実際不正確だと思う。私は現に石川県に行つて知事と会つて定期昇給をやつたかどうかという話をしたまだやつていませんよ、石川県は。文部省はやつたように書いてある。そうすると、これ一つ見ても文部省の資料を信用するに足らないということになるのですがね、どうですか。この調査はどうせられたのですか。
  85. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) この調査の資料の御要求がありまして、これを提出したのでありますが、今御指摘のように私ども若干間違いをその後発見いたしたのでございます。実は私どものところから地方にまあ出張いたしまして、そしていろいろ情勢を聞きまして、その報告に基いてその判断をいたしました。その報告は持つてつたのです。例えば石川県のごときも行きまして、これはちよつと前に参りましたが、八月一ぱいにまあ実施するという見込みを以て帰つて来た。それに基いて実はこれはそういう見込みの部分も加えて出したような実情でございまして、若干そういう点が間違つておるかも知れません。これはこの点はお詫び申上げなければならんと最初から思つていたのですが、なお石川県のほかにもあるかも知れませんが、なお詳細に調査いたします。  なお、県のほうから、教育委員会のほうから積極的に報告して来ることもございます。只今申しましたように私どものほうから出かけて行きまして調査する場合もあります。又電話なんかで問い合せたりしておりますけれども、併し刻々の状態が直ちにわかるという態勢になつておらんものですから、御要求がありまして取り急いでまとめたのがまあこのようなもので、杜撰な点があつたことはわかりました。更に調査いたします。その点は御了承頂きたいと思います。
  86. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで問題は、私は資料の不備を強く攻めようという意味じやないのです。問題は、定期昇給すら実施されていない所が相当あるという問題ですね、これをどうするかという問題です。これは定期昇給は大部分実施されていない、こういう状態です。こういう状態をそのまま放置しておくということは私はいろいろの面から考えても非常に悪い影響があると思います。そういう意味で文部省としては、こういう定期昇給が実施されるようにやはり対策を私は立てるべきだと思う。それがなかなか立たないということでは済まされないと思うのです。この問題に対する具体的な対策、これをお聞きしたいと思います。
  87. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) これは私ども地方に参つたりしまして、実際に教育委員会の責任者ともよく話合いをし、まあいろいろ事情を聞いているわけですが、これは一々の事情を私ここで申上げることはできません。まだ実施していない府県等につきましても、やはり先ほども申し上げましたように、同じことを繰返すのは恐縮でございますが、根本はやはりその府県財政で、これは御承知のように従来やはり累積する赤字を持つておる。これに対しましては各府県とも年度計画を立てまして、これを解消する努力を今やつておるところでございます。特に今年度からその努力をしようということで始まつておるようであります。それから二十九年度につきましても、いろいろ中央財源も問題もあり、地方財政制度が若干変りまして、そのための問題もあるようでございまするけれども、当初見込んだ財源と大分食違いが来た、そういう点からまあ当初予算通りに行くと、年度末に赤字を出すことが相当に多いわけです。それにつきましては、各府県とも今年度は少くとも赤字を川さんように節約してやつて行こうという努力を今盛んにやつておる。事業費、人件費、事業費は勿論先ずその節約の対象になりますけれども、更にやはりどうしても人件費に及ぶというようなことが非常に大きいようでございます。そこで、どうしても昇給財源を見出し得ないと、当初予算には組んであることはあつた、組んであつてもそういうことで大分節約をしなければならない。まあ県を挙げて、ただ教職員だけではなくて、各部門においてそういう努力を相当真剣にやつておるというのが実情でございます。そこでこの影響を受けておるのが一つの問題であると考えます。併しこれはやはり県の教職員だけではなくて、府県におきまする一般公務員もその赤字の影響を受けておるわけであります。これはお話通りです。定期昇給はちやんとやつて行くということになつてございますし、給与水準というものはこれは保つて行かなければならない。これは当然であると考えますけれども、二面さような地方団体の財政から来まする実際上の何と申しますか、影響がそこに及んでおるというのが実情でございます。そこでまあそういうふうな赤字、これを消して行く、財政を健全にして行くというふうの努力、そういう問題と、もう一つはやはり資金繰りの問題がなおあるのではないかと考えます。昇給をしようと思つても実際にまあ資金がないという問題もあるだろうと考えます。これらにつきましては、私どももこれにつきましては御承知のように国庫負担金は各四半期ごとに前以て概算交付をいたしております。これを成るべく早く交付するということを一つ考えなければならないと考えております。次は第三四半期でございますが、第三四半期に入りましたならば、成るべく早く出すということが一つの助けになろうかと思います。  それからもう一つは前から問題になつております「十八年度の負拠金の不足額でございますが、これは相当額ございますが、これにつきましては、大蔵省と折衝を続けておりましたけれども、大体結論が出まして、そこでこれを成るべく早く出したい、かような考え方で今大蔵省と更に出し方につきまして折衝をいたしております。そういうふうな関係から私どもといたしましては、具体的にはこの資金を成るべく早く出すと、文部省でできる範囲におきましてもこれをやるということに努力をしたいと考えております。  それから地方財政全体の赤字から来まする影響につきましても、これはお話の遮りに文部省としましても、特に教育関係につきましてはその責任がないということではありません。それにつきましては、自治庁とも十分協議をしまして、成るべく早くそういう事態が解消されるようにやりたいと思いますけれども、併しこれはなかなか困難な問題であるということは言えると思います。なかなか一個一個にすぐ対策を立てて、これを平常に復するということはなかなかむずかしいんで、やはり各地方団体におきまする財政の立て直しという努力が真剣に続けられて、それに対しまして或る面においてはやはり協力する意味もなければならない、かように考えております。
  88. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで、まあお話にあつたように、定期昇給ができないという一番大きな理由は赤字財政が原因になつていると思うのです。で、赤字財政を克服するために協力してくれというのが知事側の申入れです。けれども成るほどきれいな言葉に聞こえます。赤字財政を健全財政にするために、教員の給与もストツプして、まあ我慢してくれというと、非常にきれいに聞こえますよ。併しよく考えてみますと、これは教員の給与というものを、教員というものをですね、私は犠牲にしていると思うのですよ、やはり。そういう上に立つて赤字財政を克服する、こういう考え方は私どもはやはり賛成できないのです、賛成できない。これは従つてですね、ちよつと緒方局長の説明を聞くとやむを得ないような見方をしておられるものですからね。そんな見方をしておられてはしわ寄せが皆教員に来るんじやないですか。赤字の立て直しは教員のしわ寄せでやつて行こうと、こういうことに私はちよつと大げさになるかもしれませんですが、大体そうですよ、どこでも。石川県知事に話したときも、公共事業費は削られないと、これは知事がつとまらんからとはつきり言つておる。だから一番余計食つているのは教員だから、教員の分の金を減すのは仕方がないだろう、そういうような教員のしわ寄せで赤字財政を克服されては、日本の教員なんかたまつたものではないですよ。今日やむを得ないというようなことですけれども、もう少し有効な対策を考えないと、日本の教育なんかどこに飛んでしまうかわからない。今後私は恐れるのは、こういう傾向がだんだん拡がつて来るのではないか。こういう心配一つつておるわけです。だから今有効な対策を樹立するということは非常に私は必要だと思う。ただ金を少し前に渡してやるとか、そんなことでは救われないと思う。  そこで、私はこの問題の抜本的という解決策は私にもありませんけれどもね、併し半額負担を八割負担くらいに増加すれば、この問題は非常に緩和されるというように考えておる。従つて国庫負担の率を増加する考えはないかどうか、そういうことは検討される考えはないかどうか、伺つておきたい。
  89. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) お話通り赤字が、地方財政の逼迫がすべてその教育費にしわよせされる、こういう実情であれば、これは誠に遺憾です。そういうことであつちやいかん。併し私ども、石川県の例が今ございましたが、それは存じませんけれども、私ども聞きましたところでは、教育費のみならず各行政部門に互つて真剣に節減をしているということが、実情であるように考えます。その点につきましては、教育委員会というものは、これは知事の部局と別になつている点からいたしましても、教育につきましては相当慎重な考慮が払われるのではないかと期待しております。  それから何も人件費だけの問題ではない。先ほど公共事業費の問題もございましたが、それらの問題につきましても、或いは補助事業等につきましても、県の単独事業はもとよりでございますが、いろいろ検討されているというのは実情でございます。何もやむを得ん、拱手傍観という意味では決してありませんけれども、そういう実情であつて、今荒木委員もなかなか抜本的な対策はむずかしいというお話でございますけれども、これはなかなか非常ににむずかしい問題であるということを卒直に申上げます。  それから今のお話のように、現在の制度におきましては、地方が出しましたその額の二分の一を国が責任を持つて負担をする、こういう制度になつておりますので、飽くまで主体は地方にあるという制度でございます。ただこれを改正をいたしまして全額国庫負担にするというような制度が若しとられますならば、これは仮にとられますならば、それは全部国で給与負担することになりますので、若しも国家財政がそれを許せば、十分な給与費が出ることができるようになれば問題はないと思う。併しながらこれにつきましては、又ほかの面からいろいろと検討を要する点がありわしないか、全額負担でなくても八割負担にいたしましても、今すぐ直ちにそういうふうにやつたらいいという結論はなかなか出て来ない考えます。とくに全部負担になつて参りました場合には、その身分取扱いをどうするかという問題がすぐ起つて来るのじやないかと考えます。それから或いは又給与の基準というのをどの辺で押えるかというような問題も起つて来るかと思います。従いまして、これは慎重に検討しなければならんと思います。ただ地方財政が困つておるから、それですぐ国の負担を増加する、或いは全部これを移して国が負担をするということにしたら、直ちに問題が解決するというふうにはなかなか行かんのではないかと、かように考えております。これは検討は中教審の答申等もそれらのことも含めて答申がされておるように考えますが、一応検討ということにして、併し只今私がここでそういう考えがあるとかないとかいうことは申しかねますので、御了承願います。
  90. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は今出しているのは、全額負担の問題には全然触れていないんです。今半額国庫負担だからこれを八割程度まで国庫が負担するように負担率を殖やしてやつたらどうか、こういう問題を提起しておるわけです。これは半額負担のときも、これによつて国庫支出が殖えるという性質の問題じやなかつた。これは交付金を地方に渡さないで、国庫で集めておいてそらして半額負担にした。従つて八割負担の根本的な検討は私は必要ないと思う。やつぱりこの段階に来れば教職員の待遇の維持改善ですね、いわゆる身分の安定、そういう問題についてやはり相当私は根本的に検討を必要とする段階に来ているんじやないかと思う。ですからこれは国庫負担分を増額するその率をこれは私は相当真剣に検討してもらいたいと思う。特に文部省はどういうふうに見ておられるか知りませんが、定期昇給を実施していない府県ですね、これは私がちよつと調べたところでも割合に給与水準の低いところですよ、悪いところですよ、いいところがストツプされているというのじやないんです。悪いところが逆にストツプされておる、こういう見方をしておるわけです。そうなればなお更私は研究すべき問題があるんじやないかというふうにに考えるわけです。これも国庫負担の半額を更に七割なり八割なりに殖やして行くという方向に努力するということは、今日の事情からいつて私は相当真剣に考慮されなければならない問題だというふうに考えているんですが、どうですか。
  91. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) これは私この席で、増額する方向に努力をするというふうには申しかねます。ただいろいろお話がございましたように、各府県間のアンバランスもありますし、特に今お話のように給与水準の低いところがむしろ昇給ストツブになつておる。これはまさに地方財政のアンバランスから来る問題だと思います。根本的にはやはり地方財政制度の調整ということが更に考えられなければならんじやないかと私は考えておりますけれども、併し今い話のような点からもこれは検討すベき問題ではあると思います。ただ私がここでそういうふうに努力をいたしますということは申上げかねます。
  92. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 では根本問題は次回に譲るとしても、差当つて京都府にしても佐賀県にしても、赤字克服のためにかなりの教員の人数を減らす、こういうことが考えられております。こういう問題を文部省で何か傍観しているように私には見えるのですがね、どうですか。こういう問題を止むを得ないと見ているわけなんですか。京都でも千五百人からの教職員を整理しようとしている、こういう案が出ているでしよう。こういうのを止むを得ないとして傍観しているわけなんですか。
  93. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) これは教育委員会とも、いろいろ実情がもたらされておりますし、いろいろ先ほどちよつと申上げました二十八年度の赤字の問題等についてもいろいろ実情を聞きまして、又例えば京都でございますと、京都の実情がいろいろございましてそういう問題についても大蔵省と折衝をいたしておるわけでございます。或いは、あすこは御承知ようにいわゆる政令府県でございますので、而もああいう赤字の実情でございますので、これの及ぼす影響が非常に大きいのでありまして、特別にいろいろ措置するようにということで大蔵省方面ともお話をいたしております。この結果についてははつきり申上げかねますが、まあ併しながら、一応これは飽くまでやはり地方財政全体の問題でございますし、文部省といたしまして、教育の見地から給与水準が低くならんようにする考え方は必要でありますけれども、一面、差し迫つた地方の財政の建て直しといろ問題も絡んで参りますので、ただ一方的にこちらから問題を提起するだけでは問題の解決はどらかと思います。まあ止むを得ないというわけじやございませんけれども、併しながらなかなかこれは対策はむずかしいということになると存じます。
  94. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは質疑はからから廻つているわけなんです。要するに私の聞きたいのは、定期昇給ができないところがある、これを見殺しにするのか、何かその救済する手を考えるのか、こういう点ですよ、結局言えば。もう非常に困難だから、しようがないというふうにもとれるのですが、これなら私は文部省は要らないと思うのです。文部省がいつも言うように、それは私から見れば、教育の中立性に干渉するようなことばかりやつている、実際の話。こういう大事な問題にはそつぽを向いて知らん顔をしている。私は露骨に言えばそうとれる。だからこの定期昇給の問題は非常に重要ですよ。これをこのままにしておくかどうかという問題、一つこれを、簡単に答えてもらつても困るのですが、一つつてもらわなければたらない、どうしますか。
  95. 堀末治

    委員長堀末治君) 荒木さん、これはなかなかあなたの御質問だ。併し、局長ではちよつと答えられない。あなたの御満足の行くような御答弁は私はできないと思う。今日は大臣おりませんが、あなたの御趣旨のことを大臣にもよく伝えて、文部省としても、それに対して速急に一つ方針がきまらないでも、成るべくこういうものはどうかせんならんという方針をきめるように、一つ大臣と御相談願うようにしたら如何ですか。
  96. 中川幸平

    ○中川幸平君 この給与問題は文部省にとつて大事な、むずかしい問題で、大達文相が地方行つていろいろ言われる、あなたが地方行つていろいろ言われることについても、非常に我々と意見が違つておるということは、全国の不均衡是正ということになれば全額国庫負担が一番いい。それを社会党がなぜ反対したか、こういうことになる。そこで半額国庫負担とした以上はその地方々々の財政と睨み合わせて……、けれども義務教育学校の職員だけは昇給をしないと、ストツプしたということは悪いけれども、その地方の財政が赤字であるから、一般公務員も一つ辛抱してくれと言つて、私はやつておることであると思うので、それだからそれをあながちにその地方の公共団体を干渉するがごとく私は文部委員会として速急に私は責めるということはどうかと思うのです。こういうデフレ政策の時代だから、或る程度忍び得るだけは忍んで、やはり地方団体といえども国家のその基準に沿うべく努力はしている。努力はしているけれども、財源がないから仕方がないというのが今日残つている点であろうと思う。それだから成るべくその県を督励する。それを文部省に督励させるということは私は無理だと思う。
  97. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは私はやはり文部省が知事に定期昇給やつてくれと、こういうことで解決する問題じやないのですよ。対策を文教政策としてこれを打開するのにどういう政策、どういう考え方で解決を図つて行くかという、これを立てなければいかんのですよ。立てなければならん段階に来ている。中川さんもおつしやるように、赤字財政で困つている、こういうお話もあるけれども、それはこれから私はだんだんひどくなつて来る、どうしますか。石川県なんか来年はもう上らん、ほかのほうは上つて行く。石川県の教育はそれで持つて行かれると思うのですか。
  98. 中川幸平

    ○中川幸平君 全額国庫負担に賛成して皆さんかそれに持つて行くように努力すれば、それが一番いい。
  99. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 全額国庫負担の意思があるかどうか。
  100. 中川幸平

    ○中川幸平君 全額国庫負担をやろうとしたら、社会党が反対したから駄目だつた
  101. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 私が先ほど来申上げておりますのは、現行の制度におきましてはこれは、府県にその給与負担という問題は任されている問題でございます。府県がやるという建前になつておりますから、そのことを繰込しません。併し、でありますからその府県の財政が健全にならなければ、現行の制度ではなかなかむずかしいだろうということを申上げる。そこで負担制度等につきまして、或いは給与の何といいますか、基準等につきまして、これは検討しなければならんことは私どものほうでも考えております。従いまして、私どものほうですぐ全額国庫負担にするという意思があるということは勿論申上げかねますが、そういう問題は篤と一つ検討いたしまして、或いは大臣とも、よく御相談いたしまして、又申上げることにしたいと思います。
  102. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ただ一言申上げておきたいのは、緒方さん、あなたの考え方は非常に便宜主義で御都合主義だと思う。なぜかと言うたらね、まあ怒らないで聞きなさい。教育二法案を出したときは、教員というものは全国民に奉仕しなければならんのだ、だから国家公務員法を適用するのは当り前だと、こういう論法でずつと来たでしよう。今度は学校先生の給与問題については、これは国は従なんだ、地方が持つてるんだ。だから地方任せだと、こういろ言い方ですね。非常に私は便宜主義、御都合主義で、都合のいいように言つている。教員の給与についてもやはり国はどこまでも責任持つてやるんだと、このくらいの気持を持つて制度上悪ければ直して行つたらいいじやないですか。どうも私そういうふうにとれるのですがね、そうじやないですか。御都合主義にとれるのですがね、どうでしようか。
  103. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) いや御都合主義じやないつもりでございます。その現行制度の建前について一応申上げました。今後も検討はいたしたいということを申上げました。
  104. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは委員長、大臣にどうするかということを一つ具体策を今度の文部委員会に出してもらうことを一つ要望して私の質問を打切ります。
  105. 堀末治

    委員長堀末治君) それじやどうぞそのつもりでお願いいたします。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  106. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を起して下さい。  癩非感染児童の入学問題について参考人より意見を聞くこととし、その日時と参考人の人選等は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 堀末治

    委員長堀末治君) それではさよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十一分散会