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政府委員(福井勇君) それで、その御意見について一言、まあ日本人だけで研究したい云々ということについて、御指摘の点に関連しておりますのでお答えしておきたいと思いますが、まあ世界各国十六カ国くらいこの問題について取組み始めておりますが、私たちは
学術、技術者としても戦力になるかならんかというような点は、まあ公平に
解釈して、こういうものを使う国民の心持ちによるのでありまして、例えばこの前も
予算委員会においても私申したのでありますが、この原子力をまあ戦力に使
つてはならんということは当然の
お話であります。世界の人数がそう思
つておるのでありますが、この原子核研究についてどの点からは戦力であるかというような判定はなかなかむずかしい。又使えば戦力になるということについては、丁度私は工作機械のマシンツールあたりとちつとも変らない。これは七ミリ砲弾を削ることもできるし、又十三・七ミリも削
つて、これが工作機械というものも戦力にまあ繋
つておる。原子核研究所もそれに繋
つておるというのと少しも違わんのでありまして、これを平和産業の利用方面に使えば極めて世界的に歓迎される。又工作機械のほうも、鍋も釜もこれによ
つて削るということになりますので、その点については使う者の、その国民の心持次第だと、こう思
つておりますが、ただこの原子核研究について日本人だけでやりたいというようなことを言われたのはこれは当然でありますが、ただその
学術の研究というものは世界中同じような普遍的なものでありますので、この点については私は丁度藤岡先生の話は途中でちよつと入
つて四、五分聞いただけで、私もちよつとほかの
委員会に出ましたので、聞き漏らした点がある、と言うと大変これは私の答弁がどうかと思いますが、例えば原子核の研究などについて日本人だけで、国内では当然日本人だけでやるということがこれがもう理想であり、そうでなくちやなりません。ところが、資料を得るというような点については、日本の藤岡さん、惑いはまあ湯川さんや茅さんたちが、或いは嵯峨根さんたちがずつと指導されておりましても、まだ世界の水準から見れば遺憾ながら戦争中から戦後にかけてずつと差がついておるということを私たちは国民全体認めておると思います。そこで、その研究ということについては世界と交流しなければならんというわけで、私は学者は、日本の国内の研究所は日本の学者でやるべきですが、広く海外へ出して、この遅れておる原子核研究、延いては原子力研究に及ぶものをあらゆる努力をして、
国会な
どもあらゆる援助をされてこの研究に邁進してもらうように願いたいと、こういう私たちの
考えを、私たちじやない、私の
考えを持
つているのであります。そういう面については私は原子核研究もすぐやろうとしてもなかなか日本人の学生だけではできないので、その資料、その研究をするためには、丁度私の一案としては、ヨーロツパに今後作られる合同原子核研究所、ヨーロッピアン・カンシル・オブ・ニユークレア・レザーチというあの中立国において作られるスイスの合同研究所へ学者をたくさん派遣するとか、或いは政治家が、或いは実業家が、産業利用にこれが役立つようなふうに向いておるとすれば、その調査に
一つ積極的に行くとか、或いは又アメリカのほうにおける原子核研究も同時に連絡をと
つて、もう十六カ国もや
つておるのでありますので、それらに遅れないようにするためには学者の交流、交流と言
つてもこちらから向うに教えに行くわけには行かないから、教えてもらうほうに出すほうでございましようが、そういうことについて積極的にやらないと、産業利用についても憾みを後世に残す、こういう心配があるのでありますが、私たちが明治、大正、
昭和を通じて科学枝術者の嘆いておりますことは、日本の産業界にしても、政界などにおいても、こういう見解が少いのではないかという批判のあるのが非常に心配なところであります。