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政府委員(
福井勇君)
文部省といたしましては従来
原子核研究所の設立ということについて、
学術会議に諮問いたしまして、
学術会議の
意見を全部取入れて
原子核研究所を東大に附置するというようなコースで進んで参りました。その点についてこれは
平和産業だけに、或いはこれが戦力に撃がるというような誤解が世間にあるというようなことについてどう考えるか、というような
お話のようでありますが、私たちはこの
原子核研究所というものについては少しも戦力に繋がるというような、日本の状態で繋が
つて行くというようなことは心配しておらないのでありますが、丁度そのいい例といたしまして今回ヨーロッパの合同
原子核研究所が中立国であるスイスに、御存じでございましようが作られて、その作られる
内容も、先般国際
理論物理学会に出席して来られました、この
研究所の先ず設立並びに
構想を殆んど
中心とな
つてや
つておられるところのイタリーのアマルデイ博士、それからこれにやつぱり同じような重要な位置で参画しておられるフランスのペラン博士、これらの人々と直接私会いまして、その
内容もよく承わり、そうして向うからの
資料も現在私は向うから送
つてもら
つたのを得ておりますし、現在も連絡中でございます。その
お話の中にもありましたが、ヨーロッパでは
原子核研究というものは中立国でも何でも今後相当飛躍的にやらなくてはならんので、一弱小国存ではなかなか賄い切れない。そこで相当まあ一億
電子ボルト或いは二億
電子ボルトというような目標を立てるとなると、相当の
費用も要しますから合同でやることに
なつた、それにはイギリスな
ども参加し、そうして大体今のところ十一カ国、イギリス、フランス、ドイツ、イタリー、スイス、西独、ユーゴー等々十一カ国であ
つたと記憶しておりますが、第一年度大体八十四億円で今スタートしたようでございます。そうい事実いろいろ見まして、日本もできる
程度のことはや
つて行かなくちやなるまい。特に又ヨーロッパの合同
原子核研究所を検討して見ますと、合同して極めて高い
設備をすると同時に、自国においてもなおこの設立をして行かなくちや遅れるというので、例えばイタリーの例をと
つて見まするというと、イタリーは同じ
原子核研究スイスの合同
原子核研究所に参加して曲るアマルデイ、ローマ
大学或いはミラノそれからチユーリンゲンだ
つたと思いますそれらのところに
原子核研究所を設ける。或いは又フランスの例にとりますというと、ペラン
原子核委員長の下に、同じペランは合同
原子核研究所にも高い地位でおるし、自国においてはパリ—の郊外のサツクレーとそうしてシャテイーオン、このニカ所に合同
原子核研究所を自国において建てるというようなふうに、それぞれの国でも二、三カ所自国の経費で賄い切れるキヤパシイテイなものを建てて行くというような状況にあり、
世界の各国、大体十五、六カ国もそれぞれそういう線に沿
つて行くように思いますので、これに日本がもうすでに非常に遅れておりますから、このユーロピアン・カウンシル・オヴ・ニユークレア・リサーチというようなものに乗り遅れないようにや
つて行きたいというのが
文部省の
学術会議に諮問した意向であり、
学術会議が又同じように一致した
意見を出して下さ
つていると思
つております。そうして戦力については、又これはペランやバーミンガム
大学のパイアールス博士がこの聞参りましたときに
説明しておりましたが、その席ではやはり
世界中、戦力ということと非常に混同し易い、又間違えられ易いので、自分らの国のほうでも学者の中では非常に困
つている場合がある。併し
原子力つまり。パワーとして戦力に使われるのは大体御存じでございましようが、二百万
電子ボルトくらいなものだとまあパイアールスは
説明しておりました。そういう
程度のものが戦力に使われるが、
原子核のほうから言えば、
原子核研究の総合的な分野で言えば、まああの人が挙げた数字で申しますというと、
原子力というのは
原子核から見れば五%くらいにしか当らんだろうということを同席のウイラー博士に尋ねたところが、そんなものですね、ということをそのときに申したようであります。それは日本においての会談の席でありました。そういう関係まいろいろ見ますというと、私たちは
文部省におきましてはこれが戦力に利用されるというようなことは現段階においては少しも心配はない。又
文部省はそういう目標には絶対に近付いてはならないというふうにまあ確信を持
つておるわけであります。