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参考人(
鍋島直紹君) 私
佐賀県知事をいたしております
鍋島でございます。簡単に本県におきまする
給与の
状況につきまして申上げますと共に、先般来御
承知の
通り七月分の
給与につきまして
分割払いをしなければならないような
財政状況にな
つたのでございます。この点につきましては、私
責任者といたしまして、非常に申訳なく且つ
責任を痛感いたしてるのでございますが、その
状況につきましても併せて申上げたいと考えておるのでございます。
要するに、
給料分割払いの点におきまする
地方財政の問題に密接な繋がりを持
つて来るのでございますが、先ず総括的な問題といたしまして申上げますと、多少数字に亘るかも知れませんが、
昭和二十六年度の
佐賀県の
予算四十二億、
うち十三億が
教育費でありまして、三一・八%、二十七年度が五十億の
予算の
うちで十二億の
教育費でありまして、端数は切捨てます、三三・一%、二十八年度におきまして未曾有の
災害がございましたので
予算が膨張をいたしまして七十四億、
うち二十億が
教育費でありまして二八・三%、現在これは節約をする予定ではございますが、二十九年度に八十億の
予算を一応組んでおります。
うち二十五億が
教育費で三一・七%というような、大体三〇%ちよつというのが
平均であろうかと考えておるのであります。そういうような
状況の中でございまして、二十九年度の四月一日の現在におきまして、
児童数を
学級数で割りました一
学級当りの
生徒人員が、私
たちの資料におきましては四四・二に
小学校においてな
つております。
中学校におきまして四六・七六ぐらいにな
つております。なお教員の
配当の面におきましては、
予算的には実は一・三程度に一
学級当りな
つておるかと思うのでございますが、実際上の
配当は恐らく、私直接の
教育委員会の
事務内容は詳しくわかりませんですが、
予算的には一・三に近いのでございますが、実際上は一・二を切
つておると思います。一・一八くらいであ
つたと思います。これは
小学校、
中学校におきましては
予算の面から見ますと一・六くらいにな
つておるかと思います。併し実質の
学級当り教員の
配当率は一・四四か四五くらいにな
つておるかと思います。この点
財政上の
影響が非常に強く来ておるのであります。
次に、
給与の問題につきましては、只今申上げました
学級数の率の問題、或いは一
学級当り生徒数の
問題等につきましては、
生徒数の点では
佐賀県が或いは
全国平均より多少多いのではないかと思います。併し
配当率の問題の、実質の
配当率の問題につきましては、恐らく全国的な
平均より多少下廻るか、その前後であろうかと考えております。
それから次に基本給、
学校の
教職員の
給与の問題でございますが、
小学校におきまして一万四千六百十二円、これは全国の
平均に比しまして相当低くな
つております。
中学校におきましては一万六千八百七十四円、これは二百七十六円、多少上廻
つておるんじやないかというふうに考えております。
高等学校におきましては一万九千百五十九円、これは
全国平均よりちよつと下廻
つておる指数ではないかと考えておるのでございます。
そこでそのような
状況の中におきまして、それではいわゆる
基準財政需要額からどの
程度一般県費を
教員給与に持ち出しておるかということになるわけでございますが、大体二億ちよつとであります。
昭和二十六年度におきまして二億から三億の間であります。
昭和二十六年度におきまして二億七千万、
昭和二十七年度におきまして三億六千万、これは二十七年度に高給の職員が非常にたくさん
教育庁になる
関係上やめ、恐らく
退職金その他が非常に殖えた
関係であろうと思います。
昭和二十八年度におきまして約二億五千万というものが、実は
一般の
基準財政需要額を超えまして
一般財源を
教育費へ持ち出しておりますところの額でございます。
大体以上のような
状況に
給与がな
つております。そこで基本的な私の態度といたしましては、御
承知の
通り義務教育は国家の
施策でございますので、飽くまで
平均、いわゆる国民全体が同じその
施策の恩恵を受けなくてはならない、
従つて義務教育にでこぼこがあ
つてはならない、いわゆる
佐賀県の
教職員であり、
生徒であるがために隣の他の府県から見ると
教育程度が下であるとかという形であ
つてはならない、おのずから限度がございましようけれども、何とか
義務教育の面は全国民が同じに
施策の恩恵を享受するという形におきましてして行かなければならないということであります。で、そういう
意味におきまして、どうしても
地方財政というものが如何に苦しくあ
つて多少ここに
赤字の懸念がありましても、やはりこの点は私として
責任者といたしましては、自分の県民だけが余りにも間隔のあるところの
教育を受けて
行つた場合、非常に多くの
影響を及ぼすということを第一に痛感いたすのであります。
第二に、そういう
教育そのものが、大部分が
人件費であり、今のように持出しておるのでありますが、
教育そのものの実態が、これはもうすでに
教育の御
専門家でありますから申上げる必要はないと思いますけれども、
一般の県の
事業その他に比べまして、
人件費そのものが
事業費的と言つちや非常に言葉に語弊があるかもわかりません。併し
人件費そのものが
一般事業費或いは
人件費と観念的に分けますものとは
違つて、
教育人件費そのものがやはり
事業費的な
事業を行う、いわゆる人間に対して人間が教えるのでありますから、
人件費がやはり
そういつた面の
事業的な素質を基本的に持
つておる、いわゆる
教育というものがそういうものだというふうに、多少言葉の語弊がございましようけれども、考えて、
教育費の点につきましてはできるだけの
予算措置なり何なりを考えて来ておるのであります。で、そういう
状況におきまして今日まで実は
参つたのであります。ところが御
承知の
通り府県財政の
赤字の
原因等につきましては、すでに申上げる必要ございませんが、簡単にいわゆる
義務的費用、いわゆる
国家政策の全くの根幹でございますところの義務的な費用、いわゆる
国庫補助の
裏付けであるとか、或いは
公共事業の
裏付けであるとか、
社会保障事業のいろいろな面におきますところの
生活保護費の
県負担であるとかいうような、或いは
給与の問題、いわゆる
国家公務員が上りますと、人事院勧告によ
つて我々もそれに
従つてスライドしてべ
—ス・アツプをするというような義務的な面、そういうような点のみを取上げて申上げましても、これは多少数字的になりますが、
給与改訂費が、
昭和二十六年度から二十九年度までの間におきまして約八億
佐賀県において
ベ—ス・アツプその他の
関係において上昇をいたしております。それから
生活保護、
保健衛生、
伝染病予防とい
つた真義務的ないわゆる県費を以て国費に
裏付けをするいわゆる
地元負担をするというのが約四千万、それから現在
災害その他におきまして起債をお願いいたしまして、去年十三億、それ以前のものが十八億、合せまして三十一億に亘るいわゆる県の借金を持
つております。これの
返還金を約二億と合せますと十億くらいのものが、実は
昭和二十六年度から九年度までに
義務的費用のみを考えましても、必然的に膨脹をいたしておるのであります。これは
国家施策の真に根幹に繋がるものでありますと共に、義務的に金を
支出しなければならないものでございます。にもかかわりませず、
一般財源の伸びは、
県税収入におきまして三千万、
平衡交付金及び本年度から来ますところの
譲与税、
入場譲与税等を合せましても二十六年度から二十九年度の伸びは五億四千万、合せまして約六億前後、
従つて差引四億というものが全くの真に
国家施策に繋がり、これはどうしても全国民が
平均に享受すべきところの
政策そのものにおきましても、私
たちのようないわゆる窮之県におきましては四億の持出しをしなければならない、いわゆる義務的な
支出の増に対しまして、
収入というものは伴
つていないという
状況になるのでございます。この基本的な問題は、全体
予算の中で一三%或いは一五%、その前後を浮動いたしまするところの
県税収入であります。そのほかに
平衡交付金を合せまして、
一般財源といたしましても大体自主的な財源というものは、実に全
予算の二割八分前後でありまして、三割をすでに二十八年度
切つた、いわゆる七割以上七十数
パ—セントは
国庫支出金、いわゆる
国庫にお願いをするというような
状況にな
つて、ここに
赤字というようなことに至らざるを得なか
つたのであります。この間のいろいろな事務は詳しく申上げませんけれども、昨日
地方行政委員会におきまして申上げて実は御批判を頂くべくいたしております。これは最善の策を私としましてはまじめに、放漫であるとか何とかいうことじやなくして、一面節約もいたしましてや
つて来た結果が以上のような
状況にな
つておるのでございまして、これは一個人の
責任を以てやることでございますから、多くの誤りがあろうと思いますが、率直に
一つ御批判を頂きたいと思うのであります。
そこで最後に実は七月分の
給料の
分割払いの点につきまして簡単に申上げます。これはそうい
つた予算措置、
赤字というもののほかに、いわゆる県の歳計、現金の
資金繰り、いわゆる
資金繰りの問題があるのであります。本年度に入りましてから、
上四半期の
資金繰りというものは非常に苦しくなりまして、実は二億五千万余を国からお借りをいたしまして
資金操作を行い、六月になりまして約三億五千万の
地方交付税を頂いたのであります。ところが
佐賀県におきまして
警察職員一千三百、それから
教職員八千、
県庁職員三千二百と思いますが、大体その前後の数の
給料が月二億でございます。月二億のほかに六月には
期末手当といたしまして〇・七五分一億三千五百万円、これをお払いをしなければなりません。一面におきまして
災害復旧或いは
一般行政というふうに切り詰めましても、どうしても
災害復旧の点に相当の
支出をいたしませんと
一般業者の面に、或いは
中小企業に
影響を及ぼすというような苦しい中におきまして六月三億五千万円を損いたのでありますが、そのほか
国庫補助等々参りましたけれども、どうしても
一般支払とそれから
雨季前におきます、いわゆる梅雨が降る前におきますところの
災害復旧を極度に急いだ
関係におきまして、
資金繰りにここに非常に
窮況に陥
つたのであります。そこでこの
資金繰りの
窮況の
原因の第一といたしましては、去年二十八年度から実質上の
赤字、いわゆる支払を了した
赤字といたしまして繰越して二十九年度分で払いましたところの二億七千万約三億近い金と、それから次に
原因の第二におきまして実は昨年
災害が非常に起きておりまして、
土木災害のみにおきまして三十億の
災害を受けております。ところが当初三割或いは五割というふうな勢いで
復旧をいたすような御予定もあり、
特別立法等もできたのでありますと共に、私としましては全力を挙げて次の
雨季及び次の
台風期間前に何とかこれを一応めどのつくまでいたしたい、そういたさなければ
農地復旧にしろ道路にしろ或いは橋梁にいたしましても次の堤防の崩れた下の
復旧ができないという有機的な関連におきまして実は十二億五千万の
工事を去年の夏から強行いたして
参つたのであります。ところが本年二、三月にな
つて予算措置そのほかが明らかにな
つて参りましたときに、約六億五千万の御
予算の
措置を
願つただけで、約六億の
認証外工事、いわゆる仕越し
工事をいたしたことにな
つたのであります。そこでそれに伴いまして、仕越し
工事でございますので、どうしてもこれを二十八年度の金から払いませんと雨委前に何としてもこの
工事が終了しないし、業者に迷惑をかけるというような形におきまして、実はこの仕越し
工事費六億が大きな
一つの
財政資金のやりくりに
影響を及ぼして
参つたのであります。これは私の
責任でございます。
認証外六億をや
つたということがよか
つたのであるか悪か
つたのであるか。併し私といたしましては、現場の実情なり堤防の実情と次に来たるべき
雨季それから
梅雨季等を考えますと、どうしても時期的にそれを完遂して来なければ更に大きな惨害を及ぼすということを考えまして実は実行いたしたのでありますが、御批判の余地があろうかと思
つております。ただ、本年は幸いに一億近く平年度より
少い程度の被害でございましたけれども、その点は多少効果があ
つたと思
つております。
原因の第三番目におきまして、御
承知の
中小企業なり
中小炭鉱、特に
佐賀県におきましては
炭鉱が七十幾つございましたものが現在四十九ぐらいに減
つております。而も三千五、六百から四千近い
失業者を出しておりますと共に、現在非常に苦しい
炭鉱が方々にあるのであります。これの
救済のため、いわゆる少くとも
飯米或いは味噌ぐらいは何とか県独自の立場からも多少貸出す必要があるのじやないかと、これは
経営者に貸出しまして厳重に監督してそうして行くの百でございますが、勿論
学童等への遅欠酒も多少起
つておりますし、その
救済のため或いは
中小企業の
零細企業のため約一億銀行に預託をいたしまして、そうして貸出しをしておるのであります。その
資金が動かなか
つたこと。
それから第四の
原因といたしまして、従来までそうい
つたいろいろなことは
資金繰りの
関係におきまして
一般金融市場が非常に協力をしてくれまして、これはどの県もそうであると思いますが、
佐賀県におきましても二億や三億の金は十日とか或いは十五日とかいうふうに
国庫補助の
収入の季節的なズレ或いは
地方交付税のズレ、
支払等の
関係におきましていろいろな協力をしてくれまして、実は割合に簡単に
スム—ズに
資金繰りがついてお
つたのでございます。ところが遂にどうしてもつかなくなりましたと共に、この
一般市中金融が杜絶しまして、殆んどそういう
金融の途をやることができなく
なつた。更に
政府資金の
引揚げが非常に強化され、
短期資金等もお借りいたしておりましても、どうしても返してくれというようなことで、私としましてもお返ししなければ次に貸しても預けませんので、どうしてもお返ししなければならないという、
一般金融市場及び
政府資金の
引揚げというようなものが実は総合して
原因に
なつたかと考えております。併しこの点は多少私は見方といたしましては、
責任者としましては見方を誤ま
つてお
つた、いわゆるもつと深刻にこの点を考えるべきであ
つたということを実は反省をいたしておるのであります。
以上申述べました四つの
原因等が一緒に重なりまして、
佐賀県におきまして
資金繰りの窮乏の
状態に陥
つたと思います。特に六億に亘る
災害復旧の仕越し
工事というものが、実は
金融上の
資金融資と共に特別な私の県の事情といたしまして浮かんで来るのではないかと思
つております。
従つて六月の
期末手当を一カ月遅らせまして七月十五日に支給いたしました。そうして七月二十一日に払います俸給につきまして何とか全額を払いたい、二億全額を払いたいということで
大蔵省との交渉も始め、
市中金融との交渉もございましたが、
市中金融の交渉が行詰り、
大蔵省も多少時期的にお遅れになるというような点がございまして、どうしてもできなか
つたのであります。一面
教職員組合関係は二十一日から
学校が休みになるからその前に
給料を渡してくれという要望を受けましたので、実は一日繰上げまして半額だけをそれじやお渡ししよう、そうしたら
あと資金がついてから、一週間ぐらい遅れるだろうと思うが、
資金がついてからあとの半額をお
渡しようというようなことも実は私としてはとらざるを得ないという事態に陥
つたのであります。併しその後
自治庁、
大蔵省の御協力を得、御尽力を得ますと共に、実態を御認識頂きまして一億八千万円の
政府財政調整資金を七月二十七日でございますか、八日でございますか、即刻と
つて頂きましたので、七月分におきましては、ここに一応
分割払の点は終了し、
無事あとの分を払いまして
一般支払も済んで何千万円かを持越して八月に入
つた、こういうことにな
つたのでございます。八月分につきましては
地方交付税の
早期支給等の問題もございますので、更に努力をいたしまして、もう今後かかるようなことのないように私は全力を挙げるつもりでございます。
以上が大体私の県におきます
教育関係の
給与費の
状況と
分割払いをせざるを得なくなりましたところの主な
原因であろうと考ております。どうかよろしく。