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1954-08-02 第19回国会 参議院 文部委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月二日(月曜日)    午前十一時七分開会   —————————————   委員異動 七月十五日委員谷口弥三郎辞任につ き、その補欠として榊原亨君を議長に おいて指名した。 七月二十四日委員榊原亨辞任につ き、その補欠として谷口弥三郎君を議 長において指名した。 七月三十日委員田中啓一辞任につ き、その補欠として平井太郎君を議長 において指名した。 八月二日委員平井太郎辞任につき、 その補欠として田中啓一君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀  末治君    理事            剱木 亨弘君            荒木正三郎君            相馬 助治君    委員            郡  祐一君            田中 啓一君            谷口弥三郎君            中川 幸平君            吉田 萬次君            竹下 豐次君            高田なほ子君            永井純一郎君            長谷部ひろ君   国務大臣    文 部 大 臣 大達 茂雄君   事務局側    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    文部省初等中等    教育局長    緒方 信一君   —————————————   本日の会議に付した事件派遣議員報告教育、文化及び学術に関する調査の  件  (大阪市立大学接収校舎に関する  件)  (炭鉱地区生徒欠食問題等に関す  る件)  (文部次官通達に関する件) ○本委員会運営に関する件 ○参考人の出頭に関する件   —————————————
  2. 堀末治

    委員長堀末治君) それではこれから文部委員会を開会いたします。  それでは先般京都大阪奈良出張いたしましたその調査の御報告をお願い申上げます。
  3. 剱木亨弘

    剱木亨弘君 去る七月十五日より二十二日までの八日間に亘り行いました京都府、奈良県、大阪府の現地調査の結果につきまして、派遣議員加賀山委員荒木委員相馬委員、それから私、剱木委員の四名でございましたが、その出張派遣議員を代表しまして私から御報告申上げます。  調査事項旭丘中学のその後の状況、それから大阪市立大学接収校舎の問題、文化財保護保存状況その他教育一般実情でありました。  先ず旭丘中学校の問題について申上げます。旭丘中学に関しましては七月十六日終日その調査に当つたのでありますが、すでに学校が午前中の夏期短縮授業を行なつているときでありましたため、私ども府市当局よりその後の経過を聴取することなく、最初に学校視察をいたしました。学校におきましては、先ず六月一日授業再開に当りまして校長事務取扱に就任いたしました松本校長より学校運営方針について簡単な説明を聴取いたしました。校長は就任以来一切を白紙に戻して、過去にこだわることなく、生徒学習指導に専念していること、特に六月十五日新たに正式に教員の任命が行われ、留任した事務員一名以外は全く新らしい教員組織が確立してからは、全教員一致して全体の討議によつて運営し、個人討議を避け、生徒会その他の活動も規約に従つて行わせ、明朗な教育が行われていること、なお開校の当初には一部の生徒は先生に対して反撥的なところもあつたのでありますが、そうした面は次第に除去されて行つた旨説明もありました。  その後授業実情を参観しましたが、生徒学習態度も平常且つまじめであると見受けられました。校舎が狭隘でありますため、三十三学級に編成すべき生徒を三十学級に圧縮し、且つ職員室も極めて狭いために、図書室をもこれに充当し、図書閲覧室は僅か十数名が閲覧し得る程度の狭さでありますが、その運営はすべて生徒みずからこれに当つているということでありました。なお現在木造八教室を増築中であり、その完成によつて、更に運営が全きを期せられるであろうことが関知せられました。  松本校長事態を収容するに極めて適当な人材であり、信頼できる人であると思いました。  なお休校中の生徒学習不足は、暑中休暇の初めと終りの、それぞれ五日、計十日間を補習授業に充てて、これを補う予定であるとのことでありました。  次に市及び府当局とは、市の応接室において会見いたしました。先ず市の教育長より、旭丘中学事件顛末日誌参考として経過説明がありましん。その内容は七月十五日本委員会におきまして文部当局より説明のあつた事項と重複することもありますので、それらは省略いたしまして、その概略を御報告申上げます。  事件発端となりました北小路、寺島、山本の三教員は、四月一日付転補発令されましたが、その後の三名の行動が上司の命令及び職務上の義務違反であるとの理由によりまして、五月五日、地方公務員法第二十九条第一項第一号及び第二号に該当するとして懲戒免職処分を受けております。三教官の転補は偏向教育理由とはなつておりませんが、旭丘中学の過去における教育の実態につきましては、本年二月、市教育長より、旭丘中学校長に対して出しました勧告に尽きていると教育長は申しておりました。この勧告内容は、衆議院の文部委員会会議録にございますので、ここでは省略いたします。  なお三教員懲戒免職処分につきましては、現在人事委員会及び京都地方裁判所において係争中の問題でありますため、教育委員会としては、この件についての意見の開陳は差控えられました。又旭丘中学PTA対立は後に述べますように、相当甚だしいものでありますが、これは従来の行きがかりによるものであるとの説明でありました。  府教委本件に対する見解については、芦田委員長より述べられましたが、その内容は次の通りでありました。  府教委として事件の推移を見ていると、組合側管理授業と、市教委側補習授業両者が共に子供を巻込んで、これを利用していると考えたので、その事態を憂慮して調停をすることにしたのであつて本件そのもの調査したり批判したりはしない、又指導助言も差控えていたということでありました。  なお先般成立した教育法律によつて、従来旭丘中学で行われた教育が、その適用対象となるかどうかとの問題につきましては、市教委意見は開陳されませんでしたが、二法律について市教委としては、判定対象となるかどうかという基本問題と、法律専門家でない委員で構成している各教育委員判定能力という問題と、二つの重要なポイントがあるという見解が申述べられました。京都市教委では、二法律に関する次官通牒は、各学校に配付いたした由であります。  次に旭丘中学PTA関係者との懇談の模様について申述べます。  本校には、事件以来、いまだPTA父兄会等が結成されておりません。当初私どもは、学校において父兄懇談する予定にしておりましたが、いまだ対立中のPTA両派学校に招致することは校長立場として好ましくないという申し出もあり、市教育委員会において、それぞれの父兄と会見したのであります。  その前に一応お断りしておきますことは、学校を参観しました際、約十名の婦人が、新聞紙上、私たちの来校を知つたということで、校庭に参られ、一刻も早くPTAを結成して学校と共に子供教育を考えられるようになりたいという陳情がありました。  市教育におきましての両派父兄との懇談両派別々に行いました。今仮に両派市教委による補習授業派と、学校にとどまつて授業を受けた管理授業派と呼ぶことにいたします。今日こうした呼び方をいたしますのは、如何かと考えられるのでありますが、話を聞きますと、両者対立相当に甚だしいものがございます。  補習授業派父兄は、管理授業派父兄が六月十日三教員の支持を主張する父兄会を開催し、旧職員の復職を主張しようとした点について鋭い批判をされ、特に過去の旭丘中学における教育は個々の具体的ケースよりも、生徒会指導方針といつたものに根本的な問題があることも述べられました。管理授業派父兄斡旋案不満であるとの意見を述べられ、補習授業派父兄が、PTAが一本となつて活動することを回避し、その呼びかけに応じないという不平を開陳されました。又新校長の在任が一時的であるという懸念についても述べられました。  次に三教員並びに旧教員を含む京教組との会合について申上げます。この会合府教委斡旋によりまして特に府教委応接室において行いました。  先ず京教組書記長より三教員異動人事に関する本件発端から説明があり、三教員異動人事が従来の毎年の定期異動の際と異り事前に話合いがなかつたという点を強調しました、又三教員よりは、三名の異動はその意に反したものであり、市教委表面偏向と言わなくてもあれは偏向だと考えられるために、父兄生徒職員もお互いを守り合うために苦情を申立てたのであるが、遂に話合いができなかつたのであると申述べました。なおこの際旭丘教員の一部の人が転任校において免許科目以外の教科を担当させられていること、例えば音学の教師が数学を担当させられる等の問題が起つているという話もありました。その他三教員の公判における証人の証言内容、三教員の生活の問題等話題となりました。  以上旭丘中学のその後の経過について調査した事実の概略を申述べましたが、三教員処分に対する訴訟問題も除いて学校における生徒学習等一応順調に進んでいることを認めました、特に松本校長の下四十数名の新教員が一致団結して教育に専念している状況は誠に喜ばしいことでありました。併し父兄間におけるわだかまりはなお相当に甚だしく、両派の話がいずれも過去の事実を基礎としたものでありまして、新校長の下に新たに発足した学校を新しく考えるという点が欠けているのではないかと推察されました。  以上で旭丘問題に関する報告を終ります。  次に大阪市立大学接収校舎の問題について御報告いたします。本件につきましては去る七月十七日の当委員会におきまして、文部当局より一応の説明がありましたので、成るべく重複を避け、現地視察によつて見聞しました実情について申上げます。  御承知のように大阪市立大学は、昭和二十四年新学制により旧大阪商科大学大阪市立都島工業専門学校大阪市立女子専門学校を併せ、商学部、経済学部、法文学部理工学部、家政学部の五学部及び経済研究所より成る総合大学として発足したのでありますが、旧大阪商科大学杉本町校舎昭和二十九年六月その一部を大阪海兵団に転用されており、昭和二十年十月には更に占領軍当局から一週間以内の立退き命令に接し、現在問題となつております杉本町校舎施設全面的接収となり、市内に散在する小学校校舎、南区の元道仁小学校、西区の元桜川小学校、南区の元大室小学校等にそれぞれ移転し、更に昭和二十四年、前述の大阪市立大学の創設に当つて、西区の元明治小学校校舎、元靱小学校校舎、北区の元北野小学校校舎等の旧小学校施設をも使用するに至つたのであります。昭和二十七年八月、杉本町校舎の一部接収解除に伴いまして、商、経、法、文の各学部の一部がこれに復帰したのでありますが、現在でも旧明治小学校、旧靱小学校大学本部経済研究所、商、経、法、文学部教養課程の学舎として使用されており、理工学部は旧北野小学校校舎を使用するなど、四分五裂の観を呈しております。昭和二十六年以来大学学長大阪市長等より文部大臣特別調達庁長官等方面接収解除に関する陳情懇願等がなされ、昭和二十七年八月その一部が解除されましたけれども、残余の土地三万五千九百五十一坪、建物三千八百七十四坪、即ち鉄筋コンクリ—ト三階建二棟、体育館及び室内プ—ル運動練習場屋外体育施設等々が未解除であります。最近この未解除施設病院施設から米軍海兵隊施設に転換され、その施設入口横大学構内への入口が仮設されている状況であり、学生職員運動場通つて校舎に入ることになつております。又、本館玄関前に未返還区域出張つており、校地の三万は金網に囲まれて接収施設と接しており、甚だ感じが悪い状況であります。校舎後方運動場では、米軍の演習が行われ、しばしば喧騒をきわめ、研究授業教育上甚だしい支障を生じております。又、海兵隊移駐後は風紀上面白からぬ事件も若干発生しており、特に女子学生普通住宅より離れている通学区間を毎日心配して登、退校しているような状態でありました。  なお大学用地施設に隣接する附近民有地接収され、多数の兵舎が建設されている実情でありますから、教育環境としては、これら大学以外の施設についても同時に考慮されなければならないという問題も包蔵していることを附加えておきます。  これらの事実から我々は米軍接収が一時も早く解除されることを切望するものであり、特に、大学施設接収大阪市の多数の小学校校舎の転用となり、延いては大阪市における小学校教育の不正常授業に影響していることを考えますとき、本校舎早期接収解除が極めて重大な問題であると痛感したのであります。  次に、文化財保護保存状況について視察の順にその概要を申上げることといたします。  文化財視察につきましては、文化財保護委員会より、関野建造物課長が同行し、多大の便宜を得ました。京都府においては、先ず京都国立博物館を見ましたが、現在収蔵庫工事昭和二十八年度以来進行中であり、予定通り進行しますと昭和三十年度で完成することになつております。これは予定通り進行させたいものと考えました。  なお本館明治建築として由緒あるものでありますが、その構造耐火構造でありませんので、将来は別途に耐火構造本館を建設する必要があると考えられます。  醍醐寺では五重塔が昭和二十五年ジエ—台風被害を受け、根本修理を必要とするものでありますが、風害復旧費では素屋根建設にとどまつていたものであります。素屋根の間から傾斜した九輪の望まれまする光景は全くあわれな状況でありました。本年度より解体修理予算措置ができたようでありますが、早急なる改修か期待されるわけであります。  又、宇治平等院鳳凰堂でありますが、これも昭和二十五年ジエ—台風被害を受けたもので、屋根替工事から根本的解体修理を必要とすることが判明し、すでに本尊及び壁画を仮堂に遷し、中堂の解体も殆んど終了いたしておりました。壁画部分模写も実施することになつております。  奈良県におきましては、去る七月五日に起りました法隆寺の土塀の水害について実地視察いたしましたが、完全崩壊箇所は約八間でありますが、このほかに相当斜傾箇所もあり、修理を要する部分相当間数に及ぶものと認めました。  なお法隆寺におきましては、金堂の修理状況、新収蔵庫における焼損、柱梁収蔵計画実情を見ますと共に、宝庫防災施設改良工事を実施すべきであることを痛感いたしました。  薬師寺におきましては、問題の月光菩薩像頸部の接合が完成している実情視察しました。本尊台座修理は、予備調査を行う段階であると承知しました。  唐招提寺は、宝蔵の修理が切望されており、又管理につきましては、今後の適当な措置を感じました。  次に先般の大雨により、その被害が甚大であると報ぜられております法華寺の鐘楼の実情視察いたしました。その損傷は、今回の水害以前より極めて甚だしいものであることが認められ、復旧について早急適切な措置を講ずべきであると思いました。なお同寺の書院とその庭園は、重要文化財として指定されたいとの陳情がございましたが、書院の荒廃は甚だしく、早急な手入れを必要としており、文化財保護委員会としては、目下調査中であるということでありました。  次に奈良国立博物館でありますが、京都博物館と同様、諸外国乃至は東京博物館の例にならい、施設近代化充実が必要であると認めました。  又奈良国立文化財研究所は、奈良市の寄附その他により、漸く施設が整備した状況でありまして、研究費増額等その運営内容充実が望まれるように見受けました。  又本県では特に正倉院の新宝庫視察しましたが、法隆寺その他の収蔵庫と比較し、その防災施設と共に、防湿、保温等極めて充実したその設備に感嘆しました。  大阪府におきましては、金剛寺観心寺とを視察しました。金剛寺におきましては、積年修理を担当しております現場主任の竹原氏の説明を受けましたが、こうした特殊技術者の待遇と、後継者養成等は、文化財保護行政の上に、極めて重要な問題であることを痛感させられました。  又観心寺におきましては、防災施設として貯水槽が完成したのを見ましたが、宝物の収蔵庫が極めて貧弱であり、今後の充実が望まれました。  なお奈良県では、平城宮趾保存及び飛鳥宮趾調査について、大阪府では、明治初期建造物である桜の宮、泉布館重要文化財指定について陳情がありました。  次に教育一般情勢、特に教育財政について御報告いたします。  先ず京都府でありますが、御承知のように京都府ではすでに教員給与遅配が起つておる実情でありまして、その財政状況は極めて悪いのであります。教員給与国庫負担に関しましては、政令一〇六号の撤廃が要望され、当面の問題としては、本年度教員給与政令単価が、二十八年度に比べて低くなることについての不満が開陳されました。  なお高等学校危険校舎改築補助についての措置希望されました。  京都市教育委員会からは、都市人口増に対する措置、特に校地買収についての国庫補助措置について希望が申し述べられました。  京都市は京都府と異なり、給与遅配は起つておりませんが、ベ—スアツプがなされていない状況であり、特に府、市の高等学校教員間のアンバランスに問題があるようであります。  なお京都占領中、軍の担当官の強力な意見により、高校施設中学校施設に転用し、義務教育優先の実を挙げたのでありますが、その影響が今日高校施設不足となつて現われていることが痛感されました。  なおPTA関係者からは、府、市の負担すべき学校需要費が少く、PTA負担が過大となるから、適当な措置をされたいとの陳情がありました。  奈良県におきましては、県の総面積の七割が山地、二割が高台地で、僅かに一制の平坦地京都大阪に接し、その平坦地における交通が至便であつて、京阪神の郊外地となつている実情から、総体的に大きなアンバランスを生じていること、山地には三学級以下の小規模学校が多く、例えば十津川村では、児童生徒数二千四百五十人に対し学校数四十二校、一校当り五十七人というような実情にあるため、僻地教育振興法による僻地指定その他に格段の考慮を要することがわかりました。これらの事情に加え、更に本県は定期昇給も行われておらず、その貧弱な財政事情もあり、教員定員の確保が極めて困難でありますので、義務教育費国庫負担は、半額でなく八〇%負担というような高率負担希望されました。  又勤務地手当制度を検討し、地域給を含めた基本給を一本とし、僻地教員を優遇すること、人件費のみならず、産振法その他地方負担金が出せないために国庫補助を受けられない貧弱地方を考慮し、地方財政事情により国庫負担率補助率等に差違を設けることなどが問題となりました。  なお奈良県では県立百医科大学国立移管について熱心な陳情がありました。  大阪市は教育施設不足が大きく訴えられ、二千三百七十七の教室が基準に照応して不足している旨の説明を聞きました。又都市人口増により三十年度入学者に対し、更に九百七十二教室不足するそうであります。また校地不足も大きく、校地買収に対する措置、起債の枠を増大することが切望されました。  大阪市における老朽、若朽校舎は四百五十教室に達しており、その一部を実地に見たのでありますが、その実情は誠に驚くべきものでありました。又二部教授も七百二十六学級について行われており、大阪市の実情とは思えないような状況でありました。特に大阪市の校地問題が考慮さるべきであるということが大阪府におきましては話題となりました。又市の教育施設の窮状について大阪市と他の市町村との自己負担程度差に大きな原因があるであろうとの意見も聞かれました。  以上要しまするに地方財政の貧困に起因する教育財政の窮乏、教員給与昇給停止遅配等現実に極めて緊急の問題であること、都市人口増に伴う学童増に対する措置僻地教育の問題、都市における校地買収問題等が、目下地方教育事情の重要問題であると痛感いたした次第でございます。以上御報告申上げます。
  4. 堀末治

    委員長堀末治君) 質疑はございませんか。御質疑はございませんようでしたらこの御報告はこれだけにいたしまして、ではちよつと大臣が見えるまで休憩にして……。
  5. 相馬助治

    相馬助治君 休憩になるのでしたら、ちよつとその前に……。只今剱木委員から報告になりましたように私もその視察に同行して参つて見て参つたのですが、報告の中にもかなり詳しく述べましたように、大阪市立大学の問題は非常に地域社会としての大阪立場から見ても、社会的に教育的に重要な幾つかの問題を孕んでおりますし、且つ私は市の理事者学校管理者のいる前で指摘したのですけれども、この種の問題が東京乃至は東京附近であつたならば、とうに国会の問題となつてこれが議論の焦点に何回か供せられたほどの問題であろうと考えるにもかかわらず、事今日に至つている事情はどういうわけなのであるかということを疑問に持ち、且つ私はその点を従来の参議院の文部委員会水産大学その他についての問題の経緯を実例を引用して申述べました。そこでわかりましたことは、外務省関係に首を下げて頼んでおけばこの種の問題は解決するのであつて、余りに政治問題化して騒ぐことは相成らんのだ、こういう考え方からして、これをいいとか悪いとか私言うているのではなくて、こういう考え方からして政党運動を抑え、職員運動を抑え、同窓会の運動を抑え、そして今日にまでやつと持つて来たところが、今日に至りますというと、病院から海兵団使用目的が重大な変更を来たし、従来は教員なるが故に生徒たち我慢をしていたが、今回は我慢のでき得ないような現実な問題があるというところから問題になりつつあるのであつて、若しこの大阪市立大学の問題を早急に解決し、或いは父早急に解決できない場合にも、いつ頃までに接収解除されるという希望を明確に学生に与えなかつたならば、私は不測の事態が生ずることも測りがたい状況だということを現地について見たのであります。これは加賀山劔木荒木の各委員も同感であつて、かかる現実状況を許されることは、これは教育上云々だなどということよりも、これは社会正義から見て不正である。これは何らか超党派的に取上げて解決のために尽力しなければならんということに期せずして意見は一致したのであります。  従いましてこの委員会においても議題に供せられておりまするが、この四日間のうちに是非とも関係方面を呼んで、そして何らか結論を生み出すべく努力しなければなるまいと思いまするので、報告に詳しく出ておりましたけれども、蛇足のようですが、あえて私からも所見の一端を加えて、各委員の御協力をこの際お願いして置く次第であります。
  6. 高田なほ子

    高田なほ子君 相馬委員にお尋ねしますが、女子学生などに大分困つているという御報告があつたのですがね、で、女子学生が困つているというのは、なんか問題があつてもね、外聞を憚つりしてなかなかそういうことは公表もしないし、すべきことでないとされおりますけれども、いろいろな場合にその災害というものはかなり具体的に出て来ている例が多いわけですがね。この学校でもやはり学生側としてもそういうような具体的なことがあつたようなことは何も報告されなかつたのですか。
  7. 相馬助治

    相馬助治君 報告になりました。簡単に掻摘んで申上げますと、その特長的な事例として二つ挙げられたのです。  一つは、現在学校附近に特殊な婦人は余りいないけれども、絶無であるということは言えない。従つて向うの兵隊さんは特殊な婦人であるか、学生であるかの認識が定かでないためか、全く聞くに堪えないような揶揄的な態度、言葉を以て報いられたという事例があるということが一つ。  もう一つは、この附近に下宿ですか、部屋を借りて自炊しているのですが、とにかくその附近に住む女の生徒のところへ一杯機嫌の向うの兵隊さんが入つて来て、何も乱暴したわけでもなんでもないそうですけれども、何かわあわあ言つて、何なくをそこは逃げてしまつたそうですけれども、そのことがあつてから、もう恐ろしくてその附近には下宿できないという恐怖症にその女性がかかつているということですね。それで問題は、ホ—ム・ル—ムや何か、特殊な研究のために遅くまで学校に居残つたりなんかということが、すぐわきに兵隊さんがいるので女の生徒の場合には支障がある、こういうことでございました。それで私がその学生のために一番問題だというのは、そういう女の生徒に対するそういう問題だけでなくて、全くこの金網一本の向うでは、アメリカの兵隊さんが広い地域で楽しげに遊んでおり、又一方では演習しているのですね。それから学校の敷地の中にずつとこういうふうに向うの施設が入つておりまして、そこでアメリカの兵隊さんがいろいろ何かやるわけですね。そのすぐわきの金網のところを伝つて生徒が入つて来るのであつてちよつときざな言葉で言えば、青春の血に燃える青年学徒諸君が、偶発的な小さな事件からおかしな騒ぎにならないと予想できない。そういうことから私どもは一生懸命やるから諸君も自軍して欲しいということを言つてつたのです。そういう状態です。従つて高田さんの今の御質問に対しては名前とか何とかは、はつきりしませんけれども、そういう二つの例が挙げられて生徒から報告になりました。
  8. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 只今劔水委員から詳細に報告がありましたので、私はそれで結構であると思うのです。ただ併しこの際視察に参加いたしました一人として申上げておきたい点は、この旭丘中学の問題であります。この問題につきましては文部省のほうでは割合に事態が静穏になつて大体解決しているというふうな意向が述べられたのでありますが、私はまあ剱木委員報告にありましたように学校教育という面については非常にうまく行つているように思います。併しその報告の中に指摘されましたようにですね、三教員の懲戒免職ということについてはなお人事委員会並びに裁判所において審理中でありますし、又現場の教職員もこの措置に対しては非常な不満を持つておるという事実、それからこの問題を契機として父兄間の対立相当私は深刻な対立を示しているという事実ですね、これは旭丘問題がまだ解決されておらない非常に重要な問題をまだ残しておるということです。従つてこの問題に対する今後の処理というものは重要であるというふうに私は特に感じました。特にまあ両派父兄というと語弊があるかも知れませんが、事実はそういう形になつております。そういう両派父兄からいろいろ意見なり実情を聞いたのでございますが、やはりこの対立の原因は、私は教育委員会がとつた懲戒免職というような措置に対する不平というものが非常に大きな原因になつておるというふうに感じました。而もこれについては新聞紙の報道では文部省が京都市教育委員会にこういう処置についての指示を与えたということが報ぜられておりました。これは後刻私は文部省に詳細その経過を伺いたいと考えておりますが、特にこの旭丘教育を非難する側の父兄が一様に申しておつたことは、旭丘教育の難点とするところは生徒会運営にあつた。その運営が悪いと、こういう点を指摘しておりました。そこで我々委員としてもそれではどういう生徒会運営がなされておつたのであるかということを、その当時その学校に勤務しておつた懲戒免職になつた三教官及びその他の先生から生徒会運営について聞いたのですが、少くとも私はその中において文部省が言つているような偏向教育ということは私は認められない。まあ他の委員がどういうふうにお感じになつたか私は知りませんが、やはりこの点については相当その見方に相違があるということです。で、そういう事情でありますので、今後の事態の解決のためには、私は文部省も余ほど慎重な態度をとるべきであるというふうに感じ、若し指示を与えたということが事実であれば、これは私は容易でない問題であるというふうに考えております。そういう意味において旭丘問題は京都市の教職員の諸君からは非常に不満を持つて今日なお見られておるということ、それから問題はなお今後にあるというふうに感じましたので、一言附加えておきたいと思います。
  9. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  10. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を始めて。  それでは今いろいろと荒木さんその他から切々と私立大学の問題がございましたので、その点について先ず一つ大臣に御質疑を願つたらどうかと思いますが、如何でございましようか。
  11. 相馬助治

    相馬助治君 議事進行について。  速記をとめて下さい。
  12. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  13. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を始めて。
  14. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは大阪市立大学接収問題について文部大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、文部大臣は、先ほど私ども視察をいたしました報告を聞いておられないので、若干重複するというきらいがあると思いますが、これは皆さんにお許しを頂きたい。この市立大学の問題につきましては、当文部委員会としても事態の実相を調査する必要があるということになりまして、先般大阪市立大学並びに市当局に参りまして、いろいろ実情を聴取いたしたのでございます。で、その結果いろいろの事実が判明したのでございますが、第一の問題は、従来市立大学は、朝鮮事変等のために負傷した将兵の治療のための病院施設として転用されておつたというのでございますが、この病院施設が不必要になれば返還するという大体の了解があつたようであります。従つて学校当局として、もそのことを期待しておつたわけでありますが、ところが最近傷病将兵の施設が必要でなくなつた、朝鮮事変等の結果、そういう必要がなくなつた。そこで返るものだというふうに考えていたところが、六月に至つて突然海兵隊の施設に転用されることになつた、そういうことから学校当局としても、これではいつ返るかわからないというふうなことから、関係方面に非常に力強い陳情を行われて来たのであります。そういう実情を私ども聞いたのでございますが、これは私が申上げるまでもなく、教育施設がほかの施設に比して優先的に接収解除になるべき性質のものだ、そういう了解もアメリカ側とはついておるというふうに開いております。又参議院のいろいろの決議においても、その趣旨は幾たびか議決されておる問題であります。そういう意味において、文部大臣も、この接収解除についてはいろいろ御尽力になつておることだと思います。又前の文部委員会において管理局長から、かなり詳細な御報告もありました。併しその報告を聞きましても、いつ解除になるかということについては目途がついておらないということになると思います。特に私はいろいろの点が指摘されなければならんと思うんですが、先ほども申したのですが、この大学施設接収されているために、小学校が六校に亘つて大学に、接収という言葉はおかしいのですが、使われておる。そうして大阪市では七百学級以上の、数はちよつと記憶ありませんが、相当大きな数の二部授業が行われておる。特に最近生徒児童が非常に増加をして来て、接収された小学校では他の小学校と合併している、そのために二部授業をやつておる、こういう事情であり、小学校生徒の中から、自分の学校を早く返してもらいたい、こういう要望が熾烈に起つておる。こういうふうに、大学教育自体でなしに、大学教育自体も重要な問題がたくさんありますが、それが小学教育にまで波及している、こういう実情であります。そういう点から、私はこの際大臣に、経過を開くということは前に管理局長から説明を聞いているので、大臣もそれ以上にはやはり文部省として私は同じ経過をお聞きすることになると思いますが、何かこれについて文部大臣は、特に御所見、或いは見通し、その他いろいろ政府部内においてなされた御努力、そういう点について一応お伺いしたいと思います。
  15. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 大阪の市立大学の問題は、只今お話になりました通りでありますし、又従来の経過についても、この前の委員会管理局長から申上げ、又或いは調進庁のほうからもお聞取りを願つたんじやないかと思います。私の承知しておるところでは、学校施設接収されたものについては、できるだけ早く返すということに、原則的にそうなつておる。従つて殊に病院としては使用を廃止されたのでありますから、その原則、建前から言えば、可能な限り早く返してもらう、こういうことは当然なことであると思います。ただ、まあ向うはどういう都合で海兵隊にそれを使用するということになるのか、これは向うの都合で、はつきり私はわかりませんが、文部省としましては調達庁のほうにお願いをして、やはり建前もそうなつておることでありますから、何とか早く返してもらいたいということの折衝をお願いしておるのでありますが、これもまあ結局経過報告だけになるかも知れませんが、調達庁のほうでもその旨は了承し、又米軍当局のほうにも話合つておるのでありますが、調達庁自身としても、いつ頃それでは返してもらえるか、その辺はまだ見通しがつかないようであります。今後ともその関係方面にお願いもして、せいぜい米軍との話合いを進めてもらうようにしたい、こう思つておりますけれども、なかなかまあこれは相手のあることといいますか、はつきりしたことにはならんので、その点甚だ遺憾でありますが、まだいつ頃になつたら返してもらえるのか、その見通しは只今までのところではつかないというふうに私は承知しております。これは今後そういうことで努力して参りたいと、こう思つております。
  16. 相馬助治

    相馬助治君 関連して……。私も視察したのですが、行つて見て実に非常に問題が緊急な状態に立ち至つておるということ、それから現場を見なければ気分的にわからないんですけれども、将来これは恐ろしい問題が予想されるということ、こういう二つの点から非常に重要なことだと思つてつて参つたわけであります。その一つは学生運動、或いは職員の立上り等も荒木議員から触れられたように、今病院なんだ。この病院使用目的が終れば当然として解除されるのだ、こういうことが井関さんあたりからも公式であるかどうかわからないけれども言われたらしくて、市長も最後に了解して学校の当局者も了解して、これを子供に、生徒に言い含めて来たらしい。ところが現実には重大な使用目的の変更をする場合には日本政府の事前了解を得ることという取極めがあるはずだと思うのです。どうも開くところによると、そういうふうな十分な了解もなしにどんどんと施設を新たに入れて既成事実を作つて、そうして学校のほうには又このまま海兵隊が入るのだというふうに押付けたという空気があるために先生が憤慨して、それから生徒も押え切れない状態なんです。これが一つです。  それからもう一つは市立大学のほうは金網で阻まれて大部分は向うさんが使つていて、向うは楽しげにやつている。生徒たちはひどいところに入つてちよつと極端に言えば身動きもできない状態で授業をやられておるようです。而も各所に分散させられて大学の体を備えていない。而も一方からは、小学校から返してくれという矢の催促で学校自身も困つておる。いわばこれらを総合しますと、立上つて一泡吹かせて、そうして大衆運動的にやらざるを得ないような破目に追込まれて来ているわけなんです。私ども四人で火をつければ、おだてれば明日にも生徒は大挙して来るようなことがはつきりわかるような状態です、おだてなくてもちよつと言えば……。(笑声)私たちは参議院の文部委員会で十分これは考えてやる。文部大臣にもお願いしてみよう。外務省にもこれをお願いしてみよう。たから諸君は学生としてまじめに勉強していなさいと、大層気の利いたことを言つてつて来たわけです。従つてそういう状況から私は大臣に向つておきたいことは三つほどあるのです。一つは重大な使用目的の変更になつたときにどういう経緯で日本政府は了解を与えたのか、こういうことです。了解を与えるも与えないもなくて向うは軍事上必要なら使うのでしようけれども、併し取極めによれば使用自的が変更する場合には日本政府に事前に通告しなければならないというように安保条約には規定されているはずです。従つてそういう関連はどうなつているのか、六月のときの交渉はどうなつているのか。それからもう一つは来年の十月一日まではとにかく何が何でも使う、こういうことを言つているのだそうです。十月以降はその後は解除されることを期待していいのかどうかということに対しては、それは言明の限りでない。それは十月になつてみなければわからないのだ、こういうことなんだそうです。そこで従つてこのことは今すぐに海兵隊を追い出さなくても、実を言えば、さようなことを言うと学校学生から叱られるかも知れんけれども、率直な話になればいつ幾日になれば完全に解除してやる、それまで我慢しろ、こういうことになれば何とか収まるかも知れんが、先きのことは先きのことでわからないということならば、それは収まらないと思う。そういう十月一日という日にちを切つてあるのはどういうことを内容としておるのかということを文部大臣に伺つておきたい。今お知りにならなかつたならば各関係の大臣とお話の上でこれはお聞きしたいと思うし、今知つていたならお聞きしたい。第三の問題はこれは水産大学の問題のように、水産大学だけが困つているのじやなくて、少し大げさに言うと大阪市の義務教育はこの問題のために非常に重大な問題に立ち至つているということなんです。日本でも一、二という二部教授の多い市です。そこへもつて来て六校も大学に使われている。そこで勢いこれというのも皆アメリカの兵隊がいるからこういうことになつているのだというふうに小学生諸君が了解している状態なんです。これは義務教育上且つ又私は日米親善の上からも極めて重大な問題だと思つて見て参つたわけなんです。従つて今の義務教育の関係から見て、所管大臣として本問題についての大達文相の所見並びに決意を含めて御見解をこの際承つておくならば大変にありがたいし、同時に学校当局等も一つの希望をもつのじやないかと思うのです。私は以上三点を是非大臣からこの際御見解を承つておきたいと思うのです。
  17. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 今のお尋ねでありますが、この使用目的の変更についての了解の問題、それからやはり今聞きますと、来年の十月までは使う、併しそのあとのことは何とも言えん、こういうことを言つているということであります。どうも併し、言い分はわがままに思うのですれども、それらの点につきましてはなお実際上のどういうことでそうなつているのか、又それに対してどういうふうな外務省及び調達庁のほうで話になつているのか、そういう点について私はよく詳細存じませんので、管理局長からなり或いはその方面から御説明申上げたほうがいいと思いますが、なお私もこの問題についてよく調べてみたいと思います。  それから大学を使われている結果として、小学校をその代りに大学に使つている、順押しになつて結局義務教育方面にその皺が寄つている。殊に大阪のような二部教授の多いところでありますから、これは誠に困つたことであります。ただこれは私が十分詳細に使用の関係についての取決めと申しますか、申合せと申しますか、そういう点は十分存じておりませんが、今まで聞いておりますところでは、接収というか、日本の建物を向うが使つている、その場合に教育関係の建物については成るべく早く返すように考慮する、すぐ返すということではないのですが、できるだけ早くそのほうは空けるようにしたいということがたしかあつたように思います。それで、併し又別に病院に使つているものについては多少考慮するというようなことがあつて病院に使つておればすぐにはできんが、そうでなければ教育関係のものは成るべく早く優先的に返すようにということがあつて病院に使うのをやめたのだから、これはすぐ皆返すべきだということに一応学校側若しくは学生のほうでそう思つたということは私は無理はないと思うのです。ただ即時に返すということになつておつたかどうかわからんが、そういうふうに一応思い込むのも無理はないし、従つて勝手にということはないでしようが、合同委員会で話があつたのかないのか知りませんけれども使用目的を変更して海兵隊の何かに使うということになれば、取決めの、殊に建前から見てこれは違反しているとか何とかいうことでなくても、少しわがまま過ぎるというふうに私は思います。それが学校大学学生、ひいては小学校のほうまでいろいろ気持ちの上から言つても甚だおもしろくない影響を与える、これは当然あり得ることでありますから、これは一つ外務大臣のほうにお願いをしまして、何とかできるだけ早く解決したいということで頼むよりほかしようがない、こういうので、これはまあアメリカが相手でありますから、追い立てるということもなかなかむずかしいことだろうと思います。できるだけ早く一つ何とか今の影響としても、今相馬委員の言われたように面白くない点がある、当然そういうことだろうと思います。これはお互いに面白くないことでありますから、できるだけ急速に解決するように、又来年の十月一日まではあけられないという恐らくは事情もあるだろうと思います。ただ今そこにおる、管理をしておる米軍側のほうからすぐあけ渡すというはつきりした権限はないような点があるのじやないかと思いますが、少くともその辺も明らかにしてもらうように、一つ外務省へお願いをし、私からも外務大臣にお願いをして、調達庁の方面で一つはつきり評価してもらうように進めて参りたいと、こういうふうに思います。
  18. 剱木亨弘

    剱木亨弘君 その今の相馬委員の質問に関連してでございますが、実はさつき休憩中も皆さんにお話したのですが、私ども今度四名で行きまして、実は四日間で或る程度の目鼻はつけるくりいのつもりで帰つて来たのですが、これは文部大臣に質問をしてどうこうという問題でなしに、やはりこれは文部大臣と外務大臣その他関係のおかたの努力によつて何とか目鼻をつけたいというつもりで我々も希望しておるわけですが、まあ水産大学の場合は越中島の問題でございますが、これはいわば日本が国内的な問題として使つておる、併し駐留軍に大学接収されているのは大阪だけの問題で、ただ一つ残つた問題、而もそれは病院である場合はこれは今までは大学当局も我慢してもらつておつたけれども、海兵隊に転換されたという状況で、どんなことがあつても私は日本政府としてこの教育施設を返せということは、これは正々堂々と言つていいんじやないかと思います。それで今日から四日間でございますが、まあ恐らく明日は閣議で外務大臣とお会いになることだと思いますし、その前後適当な時期に篤と一つ御相談頂きまして、四日間の間に私どもこの理事会で日程をきめるつもりでありますが、日程のうち一日だけできれば外務大臣もお見え願つて、この問題について、どうして解決するかということについてこの際解決点を早急に見出したいと思います。その点お含み下さいまして、外務大臣にもその点お話おきを願いたいと思います。
  19. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) かしこまりました。
  20. 堀末治

    委員長堀末治君) それではあとの質疑に入りたいと思いますが、ちよつと速記をとめて下さい。    午後零時二十五分速記中止    —————・—————    午後零時四十八分速記開始
  21. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を起して下さい。  それでは午前中はこれで休憩させて頂きます。  午後は二時から始めます。    午後零時四十九分休憩    —————・—————    午後二時三十五分開会
  22. 堀末治

    委員長堀末治君) それでは休憩前に引続いて委員会を開会いたします。  先ず先に御報告を申上げますが、先ほど理事会を開きまして、あとここ五日までの大体の日程をこういうふうに取決めましたから御了承を願います。本日は先ず高田さんの緊急質問がございますから、それを終つて、その次は今の教育二法案に対する次官通達の件を議題に供したいと存じております。それで本日は終りまして、明日は成るべく午前、暑いときですから早く済ますようにお気張りを願つて、午前十時に開会さして頂きます。丁度隣の地方行政委員会のほうに佐賀県知事が参考人として出ておられますそうですから、この機会に、あそこの財政状態から、今この学校職員給与の関係を一通り聞き取る、こういうことで只今交渉いたしましたら、明日十時から出て来るから、こういうことでございます。これを先ず聞くことにいたしまして、続いて先般承わりました自治庁並びに大蔵省から予算の関係について一通り説明を聞きましたですが、何もこれに対して質疑はいたしておりませんから、この質疑をいたしたらどうか、かように存じております。幸いに時間が許しますれば、明日午後一時三十分から、文部省内のこの間参りました映画室で、映画の鑑賞がある。「アンドロクレスと獅子」という劇映映画と、「日本の猿」という文化映画と、これがあるそうでございますから、若し何ならこれを御覧になつたらどうか。これは明日の時間のことでございますから、幸いにできたら御覧下すつたらどうか、かように存じております。  それから四日の日は、先ほど午前中に問題になりました市立大学接収解除の問題について、恐らくこれは政府のほうからいろいろ御相談の結果のお話は聞かれたことだろうと思いますが、その問題を聞きたいと思います。続いて五大市の教育委員から陳情が参つております。いろいろ学校整備の問題で陳情があるから、是非聞いてやつて欲しいということで、これを午後聞くことにいたしまして、幸いに時間がありましたら、何かそれらに関係する関連質問を一ついたしたい。  それから五日の日は、地方教職員給与に関する問題、それから今日まだ残つているかと思う旭丘中学校の問題、或いは免許法の問題、こういうものを承わりまして、その他、他に残つたものがあつたら、それらを五日の日に片付けるようにしたらどうか。かように存じます。そうして幸いにこれも時間が許しましたら、午後一時三十分から、国立博物館で浮世絵の展覧会があるから、これを御覧下すつたらどうか。続いて映画「文楽と鎌倉の美術」その他の映画がございますそうですから、幸いこれも何とか都合して御覧下すつたらどうか。大体こういうふうな、日程を立てましたが、それで今から五日までの日程は、大体こんなところで取り運ばせて頂きたいと存じます。どうぞ御了承をお願いいたします。  それでは高田さん。
  23. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは大臣に、北九州の炭鉱地帯が最近非常に困窮状態に陥つたために、家庭の困窮度の限界底をつき、それによつて及ぼす教育上の諸影響について、緊急の措置をとらなければならないと考える諸問題について、お尋ねをしたいと思います。  先ずお尋ねする前に、御承知のように全炭鉱数の九制を占める中小炭鉱の、その五割を占める北九州の炭鉱地帯は、昨年の六月の大水害復旧しない。それに加えて最近の金融引締に伴つて、賃金の不払い、それから首切り、或いは山を全然休んでしまうというような悲惨な状態に陥らされておりまして、北九州一帯の炭鉱業関係者の家庭生活の困窮の度というものはお話にならないという状態を呈しているということは、最近の各新聞又いろいろな報道によつて知ることができるわけであります。具体的に生活が苦しくなつたために労災保険を目当てにする。そのために指を切つて労災保険を生活に当てなければならないというような、とても想像の及ばない困窮状態が来ている。又炭鉱地帯における家庭の主婦達は、附近の山の「わらび」とか「ふき」というような野草を採つて漸く生活の足しにしているというような状態でありますが、新目尾の炭鉱では、約三千五百万という賃金の未払いを残したままで全員炭鉱坑夫が解雇になつてしまつた。この中で失業保険をもらう者もあればもらえない者もある。何故もらえないかというと、失業保険に入つておらない者、それから失業保険費をもらうために町まで行くバス代四十円というものを持合せがないために、わざわざここでは職安が新目尾の炭鉱地に出張して失業保険費を払つているという状態、勿論家庭の主婦たち附近の山の山菜を採つて生活に当てなければならないというような、実に傷ましい状態であるし、筑紫炭鉱でも半年間に約坑夫の収入が現金で一万円ぐらい、現金の支払いができないために金券支払いをしているので、長い行列を作つて味噌とか醤油とかいうようなものを漸くとつている。従つて家庭では、炭鉱の長屋を覗いて見ると、殆んど長屋の中には箪笥のようなものも、茶箪笥のようなものも影をひそめて、漸く二、三枚の煎餅布団がここにおいてある。附近の質屋ではこれらの品物を三分の一ぐらいに安く買いあさつて、誠に悲惨な品物が質屋の店頭に並んでいるという状態であります。今日突然この文部委員会にお見えになつた佐賀県の岩屋炭鉱の状態を伺つて見ましても、やはり非常に悲惨な状態が繰返されているようでありますが、労働組合が失業者をどういうふうにしたら生活を得させることができるかというので、土方などに斡旋をしているそうでありますが、とてもそれでは間に合わない。それで家庭の主婦が川の葦を切つて葦簾を作つて一枚の作り賃が五円くらい、幾ら働いても大体一日二十枚か三十枚というような状態であつて、誠にお話にならない状態である。ここに傍聴にお見えになつた佐賀県の高等学校書記長の先生が、先ほども、お母さん方をお慰めしようと思つてお話をしていても涙ばかりでお話さえもできないような状態であるということを言われましたし、質屋に行つて見ると、子供の長靴のようなものまでも鍋、釜と共に質屋に入つているというような誠に気の毒な訴えをされているわけであります。私どもは文部委員という立場に立つて、家庭の生活環境が子供の上に及ぼす諸問題については、とても見遁すことのできない問題でありますし、なかんずく婦人新聞の報道によると、この影響は、遂に子供が級友の弁当を盗むというような、想像もつかないような教育危機に見舞われることが実は報道されているわけであります。この報道は、長崎県の岩松炭田を中心にしたところの長崎県教育長が、岩松地区の小学校十九校を対象にして調査をした例でありますが、この例は、長期欠席或いは短期欠席或いは欠食児童、栄養不良というような具体的な数字が上つております。参考のために私はこれを取上げて読んで見ますが、岩松炭田の児童の状況は、長崎県教育長を中心にしてこれが調べられたのでありますが、調査町村は佐志町ほか八町村、調査学校数は、小学校十九校、中学校十四校、うち炭鉱児童は、小学校一万三千六百八人、中学校四千四百六人という数字でありますが、殆んどがこれらの小学校は炭鉱に働くところの家庭から通学している子供によつて占められているのでありますが、こういう数字の中で、長期欠席者が小学校で四百九十三人、中学校で三百五十二人、その理由は、欠食のため。教科書が買えないため。貧困で親類に寄食中である、居候に行つている。それから炭鉱が休んでいるために生活が困難である。父が失業している、休職のために家出をしてしまつて、父親が行方不明である。両親が出稼ぎで留守番のためにという六つの理由がこの長期欠席児童の上にかけられている重要な原因になつているわけであります。続いて短期欠席者は、小学校は三千二百五十人、中学校が千二百二十三人。その理由は、衣類がない。食事がない。教育費が納められない。これ又重要な理由がここに三項上つております。更に欠食児童の調査をしたのを見ますと、朝食事を食べて来ない子供、小学校で五百一名、中学校で二百九名、昼食事をすることのできない者、小学校八百五十一人、中学校四百二人、夜食事をすることのできない者、小学校二百五十六人、中学校百六十三人。その理由は、金券で米が買えない、つまり現金がないために米が買えない。それから休校、賃金の不払い、失業のため。三番は代用食で弁当を持つて行けない。おかずが全くない。こういう傷ましい理由によつて、朝、昼、晩の欠食児童の数が極めて大きな数字を示しております。更に栄養不良の子供たちは、大体小学校で三百九十七名、中学校が三百八十四名、その状態はどういう状態になつているか。顔色が悪い。体重が減つている。居眠りばかりしている。こういう状態です。私どもは戦時中子供子供のあの食糧が不測のときに、居眠りをする児童があつたことをつきとめたときに、これが栄養不良だということを知つて非常に私どもみずからも驚いた経験を思い出しまして、胸が詰まるような状態であります。それからいろいろな経費を納入することができないという児童の数でありますが、PTAの会費を払うことができないという者が、小学校千二百十六名、中学校は七百四十人。学級費を払えないという者が、小学校千二百五十八名、中学校が六百六十一名。その理由は、父が失業している。食生活に追われている。金券のために現金が一文もない。それから給料不払いのためにこれ又現金がない。続いて学用品の、或いは又服装が非常に困つている状態ですが、小学校千八百六人、中学校六百五十人。その状態は、シャツがない、ノ—ト一冊を教科書代りに使つている。四季を通じて一着しか着るものがない。教科書がない。これ又誠に哀れな状態です。それから最後が問題になつて来ると思う。最後はこういうような生活環境の中で、子供たちが悪意を持たないところの非行をあえてしている。この数は、小学校五十二人、中学校四十九人。その状態はひもじいので人の弁当を盗んだ。学友の金品を盗んだ。万引をした。古鉄を盗んだ。こういう状態です。昼の食事のためにザリガニをとつている子供が非常に多く、又生活を補うために古鉄のようなものをほじつて学校を休む子供も多いと私は具体的に聞いておる。北九州の炭鉱の生活苦というものはこれはいろいろな条件が重なつておるので、私どもは今その原因をここで追及しようとは思いません。ただ文部大臣にこの際どうしても善処願わなければならないのは、これらの欠食児童に対してどういう手を一体私たちは伸べて行かなければならないのか。又学用品も買えない子供たちが盗みにまで入つて行く現在の状況というものをどういう方法で一体救つて行くのか。これはいろいろな法律や手続もあるでしよう。けれどもどもはこうしたデ—タを挙げての、僅か十九校のデ—タではあるけれども、これは北九州の炭鉱地帯における中堅炭鉱の状況でありますから、もつと下の貧困な炭鉱地帯に行けば恐らくこれ以上の悲惨な状態が出て来るのではないだろうかと想像されるのです。私は教育庁のこうした愛情の上に、ここに作り上げられたデ—タを新聞報道をこのままこの数字を信じまするときに、どうしても緊急な措置をとつてもらわなければならないと思いますが、文部省としましてはいろいろの新聞報道でこういう実情も或いは御調査になつているのではないかと思いますが、先ず実情調査がされておるのかどうか、長期欠席者、或いは短期欠席者に対して文部省当局としてはどういうような手を打とうとするのか、或いはこれらの学童給食が行詰つている子供たちに対して何らか緊急な措置はとられないものか。私は本当にヒユ—マニズムという立場の上に立つて大臣からこの点についての具体的なお考えをお伺いしたいと思います。
  24. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 北九州と申しますか、近来この炭鉱関係の事業が非常に不振に陥つている。その結果炭鉱事業に従事しておる人が非常に困窮しているということは昨年炭鉱の不況当時から私どもしばしば聞いたことでありまして、金券を発行してやつておるというようなことも聞いておりました。それが最近の一般的な金融引締めと言いますか、経済事情の下に、一層それが厳しくなつてつておることは容易に想像のできることでありまして、今詳しいことは、これは長崎県でありますが、詳しい話を伺つて誠に傷ましい限りであると思います。私どものほうで実は地方から余りさような報告も参つておりません。ただ過日長崎県の副知事でありましたか、見えまして、これは今お話になりましたように中小商工業、特に中小炭鉱、あそこは、長崎県は中小炭鉱が非常に多いので、いわゆる抵抗力が非常に少いのであるから特に悲惨な状態を呈している。今の長期欠席の問題等事情も伺いました。副知事が見えたことはこれは一般的な炭鉱業に対する何らかの少くとも応急的な救済措置であるとか、或いは全般の中小商工業に対する措置であるとかいうことに帰着するのでありますが、さしむき子供が、長期欠席をしている、或いは栄養不良のような状態になつている。ついては無償の給食をするということも事実は困難であろうと思うけれども、ユニセフのミルク、これは昨年の水害或いは冷害等においてミルクの寄贈を受けて、これを無償で冷害地或いは災害地の学校に配つた、これは当時御報告申上げて御承知通りでありますが、そういう計らいができとないものだろうかという御相談でありました。私どものほうでもいろいろその点について省内においても協議をしたのでありますが、どうもやはりユニセフの今までの何から見まして、自然災害に基くものでないものですから、これは到底望み得ないことであるということで、実は残念ながら方法がない。結局これは何と申しますか、学校方面においてそういう悲惨な状態現われているわけでありますが、一般的に中小炭鉱が非常に悲惨な状態になつている、或いは一般の中小商工業の経済事情の関係から深刻な影響が来ているということでありまして、結局その方面の手当に待つほかはない。それから個々のこれがために非常に貧困に転落した人々に対する措置としましては、やはり生活保護法でありますか、そのほうのいわゆる社会保障制度による救済の手に待つよりどうもいたし方がないという実は結論でありまして、文部省といたしましても、これは当然に厚生省で御心配を願う筋のものでありますが、厚生省のほうにその点は文部省からも申入れをいたしまして、何とか一般の生活保護、これに関連して子供教育費とかいうこともこれに含まれるわけでありますが、その点について十分一つ緊急に対策をお考え願いたいという意味のことを実は申入れて相談をしているのであります。厚生省といたしましても、そうなかなか簡単に対策も立たないような実情であります。ただ今日では失業保険が九月までですか、継続するそうです。ですから失業保険をもらつている炭鉱の坑夫というような人はそこまでは細々でも何とかつなげるでしようが、九月になつて失業保険も切れてしまうということになれば一層問題は深刻になつて来るだろう、こういう見込でありまして、只今のところさような意味でありますから、これは一般的な救済という問題にどうしても落着かざるを得ないのでありますから、厚生省にその点は申上げているのでありますが、私どももできるだけ正確な資料を集めまして、そうしてそれをやはり厚生省のほうに連絡をして緊急に対策を考えて頂くようにしたい、こう思つているわけでありす。なかなか文部省だけでこの問題を解決するということは子供だけの問題にいたしましてもなかなか困難な実情にあるということ、これは容易に御想像頂けると思いますが、これは今の自然災害で、水害であるとか震災であるとかいうことになれば従来のやり方もありまして、やりようもあるわけですが、ただ特殊な業種が非常に不景気に陥つたということから来ているのでありますから、根本的にはこれも基礎産業の一つでありますから、その炭鉱に対する国家的な措置というものが根本的なものである、応急的にはやはりそれによつて困窮にあえいでいる人々に対する社会保障的な国の恩恵の手が伸びるという建前で行くほかはないのじやないか、実はそう思つているわけであります。決して手をつかねて見ているという気持ではありませんけれども、実際はさようなわけで、これが簡単に私どもの手では解決ができないという実情にあります。この点を一つ御了承頂きたいと思います。
  25. 高田なほ子

    高田なほ子君 お気持のほどはよくわかりました。併し水害とか災害のときには、とにかく国が予備費といつたようなものの中から繰り出して一応救援の手を延べておるわけであります。丁度この問題は水害とか或いは災害とかいうような問題とは違つているかも知れませんけれども子供の置かれておる状態というものはほぼそれに匹敵するような状態だと思うのです。こういうところにこそ私は法律を抜きにしたいわゆる政治力が必要なんであつて、その政治力を子供を守るという建前から文部大臣に私は託したいと思うのです。勿論厚生省の中の教育扶助もあるようですけれども、この教育扶助の支給される限界というものもこれ又きまつておる限界があつて、それだけではなかなか教育をすることができないし、失業保険とおつしやつてもこれは僅かに二百五十円くらいなものですから、これ又四、五人の子供を抱えた場合にこれも又どうすることもできない。こういうようなときにこそ、明日開かれるという閣議に文部大臣という立場から子供たちを何とか国として法律を先ず抜きにしてもです、これを解決するような措置を講ずるべきであるということをあなたが本当に堂々立つて私は主張して頂きたい。教育二法案のときに、敵ながら私は大臣はあつぱれだと思つた。野党側の連日の攻勢に最後まであなたは執拗にとにかく闘われた。あの熱心をこそ私はこういう問題に文部大臣に本当に注いでもらいたいというのはここなんです。そうすればあなたが二法案でどんなに頑張られても私はちつとも不思議だとは思わない。とにかく文部大臣子供たちの守り手である。厚生省もさることながら、文部大臣が先ず子供の環境のために立ち上るということを私は強く望むのですが、この教育扶助を何とか増額してこれを臨時的に措置するというような具体的な方法を講じることは不可能でしようか、如何でしようか、その点を具体的にお尋ねしてみたい。
  26. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 只今大臣からお話がありましたように、私どもといたしましても、事務当局といたしましても、厚生省の社会局方面といろいろ相談をいたしております。で、生活保護法の中には今仰せになりましたように教育扶助がございまして、義務教育に関する経費につきましてはこれで保障する建前になつております。御参考に申上げますと、二十九年度の予算は保護費の増額で二百七十七億、このうち教育扶助が十五億六千万円となつております。まあこういうような状況でございまして、先ずこの教育扶助の実施によりまして貧困な家庭の教育の実施につきまして保障して行くというのが筋であろうと考えておるのであります。そこで私ども、先ほど大臣からお話がありましたように、地方の実情につきましても十分注意をいたしまして、成るべく早く資料を厚生省のほうに提出いたしまして十分に措置をしてもらうように要望いたして参りたいと考えております。この予算がございますから、これによつて先ずその資料が正確に出ますと、その実施につきましては厚生省のほうで実施して行く、こういうことになると思います。
  27. 高田なほ子

    高田なほ子君 厚生省と多分私は文部省としても一、二度お話合いをされておるのではないかと思いますが、その結果どういうような御意向でございましたか。差支えない限りここで発表してもらいたいと思います。
  28. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) まだ具体的にその話は進んでおりません、率直に申しまして。と申しますのは、先ほどお述べになりましたような佐賀県の実情等につきましては、私ども教育長なり副知事等から一通り話は聞いておりますが、正式に全国的な状況につきましてはまだ十分な実態が把握できておりません。又それほど全国的に切実な問題として私どものほうには報告がまだ来ておりません。従いましてこれは厚生省といたしましてもそういうふうな一般の生活保護の問題につきましても実態の把握ができていないのじやないかと想像いたすのでありますが、まだ具体的に申上げるほど話が進んでおるわけではありません。併し原則的には先ほど申上げましたようなことで話は進んでおります。
  29. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部省のほうでは最近のうちに北九州のこういう問題の起つておるような炭鉱の状態を実際に行つてお調べになつてるわけですかどうですか。
  30. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 実際に行つて調べたわけではございません。併し佐賀県等につきましては教育長が出て参りましてその実情をお話にもなりましたし、そのほかの県につきましてもできるだけ調査いたしたいと考えております。行つて調べたわけではありません。
  31. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうも私はこの役所の仕事というのは気に入らない。はんこをつけることばかりつけて仕事はちつとも進まない。短兵急にはこういう問題を進めようと思つても、解決しようといつてもなかなかできることじやないと思うのです。騒ぎ出してからものを解決するというのは私は遅いと思うのです。そういうことをするから吉田内閣不信任ということが先に起つて要らない摩擦が起つて来ると思う。多分この学校の先生がたも心を痛めておられると思うが、なかなかこういう問題と取組まれることは困難だと思う。どうぞ一つこの騒ぎというものが起らない先に、新聞の報道を見て私たちが胸を痛めるがごとくに文部当局としても早急に手を打たれるように、どうぞ一つ大臣が厚生大臣並びに吉田首相まで動かしてここに温かい手が伸べられれば、決して吉田内閣不信任ということを言うわけではないから、どうぞ一つ政治がそういう小さな面に早く及ぼすことができるように、一つどうぞ御尽力願いたいと思います。
  32. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は今高田さんから詳細な数字を挙げて御質問になりましたから簡単にお尋ねするのですが、北九州の炭鉱地帯は前々から非常な長期欠席者を出しておるということで教育界ではかなり問題になつておる。今一一数字を挙げられると我々が知つておる以上に悲惨な状態である。ですから私は事務的に折衝されるということもこれは大いにやつて頂きたい。併し文部大臣は私は閣議でこの問題を出して差支えのない大きな問題だと思う。勿論今デフレ下にあつて各地にああいう痛ましい事実というものが出ておる。併しその中においても北九州の炭鉱地帯の例は私は最もひどいものだと思う。こういう問題の処置については閣議で一つ問題にしてもらいたいと思う。文部大臣見解を承わりたいと思う。
  33. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 実情は実は私には想像はいたしましても性格な実情はわからないのでありますが、今荒木さんの言われましたように、北九州の状態はただデフレ下の一般的な中小商工業の困難というよりも遥かに深刻な状態であろう。これは昨年からそういうことでありまして、これは実は閣議の席おいてもときどきその話は出て来るのであります。何とか炭鉱業が元に立行くようにしたい、これは石油との関係があるようであります。そういう話も実はときどき出て参つておるのでありまして、殊に通産大臣のほうにおいてそれについては昨年来ずつと頭を悩ましておられるような実情であります。けれどなかなかこれは一般の経済情勢でありますから、政府でこうすれば、ああすれば、という考えが仮にあつてみたところで、それが直ちに実態に好影響をもたらすというものでもなし、又実際打つ手自体もいろいろな困難が伴つておるじやないかというふうに私は思つている。この問題は決して政府として対岸の火災視するというようなことでなしに、それぞれの関係方面においては、昨年来随分頭を痛めておられることであると私は考えております。今お話になりましたように、この問題を更に関係各省において検討して何とか目前の事態だけでも処置のつくような方法を講ずるという必要のある点は私もその通りだと思うのですが、従つてこれを関係各省の間に一つの問題として具体的に一歩でも解決のできるようにすることに私は毛頭、異存はありません。又私としてそういう意味で努力したいと思つております。
  34. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると今の答弁ですと閣議で相談したいと、こういうお考えであると了承していいのですか
  35. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) その通りです。
  36. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 一つ善処を重ねて要望しておきます。
  37. 堀末治

    委員長堀末治君) 次に御質疑ございませんか。
  38. 中川幸平

    ○中川幸平君 関連質問。  今炭鉱の話が出ましたが、聞いておりますと、それはひとり炭鉱だけではないので、中小企業全部が全部そういう状態で、今期も駅から来る途中或る人に聞いてみると、実際悲惨なものらしいのです。けれども月給を安くするとが、時間を長くするということでどうなりこうなりやつております。これが直らなければ私は立ち行かんということを聞いておる。この前も聞いておつたらそういうことです。そういうようなことで先だつて炭鉱業者が前に自由党の政調会室に陳情に来られましたが、あとで非常に評判が悪かつた。ということは少し零細に……、品質の悪いものはこれより高く売れんとか何とかいつてやつたんでありましようが、みんな自由に設備を替えた。それで又外国炭を入れたとか、そういうことをして、そしてまあ設備を替えたりしなくていい加減なところで応じて売込みすればよかつた、のみならず非常に労働攻勢が強過ぎる。我々も地方を廻つてみると、中小業者は何とか一つ労働条件を緩和してくれとか、それから賃金もあんまり高くしてもらつては困ると、そういう点を社会党も一つ多少考えて、事業自体が潰れぬことに一つ協力してもらうようなことも考えて、同時に炭鉱業者だけでなくて、全国のそういう中小業者が困つておるということを大臣のほうに持つてつて、やはり予算を殖やしてもらうということを考えて頂かなければ、とても炭鉱業者だけの予算を考えてもらつても全国至るところ中小業者がみなそういう状態にある。炭鉱業者はそのことはちよつとしかも知れんけれどもまあ大同小異、そういうことになつておるのですから、そういう予算をもう少し、もう少しじやない、ここで増額してもらつて、せめて就学学齢児童だけでも欠席のないように一つこの際処置してもらいたい、まあ私もそう思うのですが、どうかよろしくお願いします。
  39. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ちよつと中川さんのお話がありましたので。これは私は文部委員会として特に今困つている小中学校生徒児童、そういうものの応急対策ですね、これをやつてもらいたい、こういう要請なんです。それは勿論こういうデフレ政策の下においていろいろ犠牲が出るということは、この政策がとられる以上政府においても十分お考えのことであつたと思う。併し我々から言えば、そういう犠牲に対する対策というものがないというところに私は問題があると思う。併しこの問題は今私は議論しようと思つていない、そういう意味で文部委員会としては、もう今ひどい炭鉱地帯ですね、そういう所の子供に対する施策、これを一つ早急にやつてもらいたい。こういう意思でありますから御了承願います。
  40. 中川幸平

    ○中川幸平君 了承しました。   —————————————
  41. 堀末治

    委員長堀末治君) それではこの問題はこの辺にいたしまして続いて義務教育学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法ほか一件に関する次官通達に関する件、これがまだ続きが残つておるようでございますから、これを議題に供します。どうぞ御質疑を願います。
  42. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでこの問題と私は重要な関連のある問題として先にお尋ねをしておきたいと思うのは、この七月三十日付の朝日新聞の第一面トツプに「教育法律を初適用」という見出しで大きな報道がされております。その中の記事を見ますと、私は重要な点が二つあると思う。その一つとしては文部省の見解として受取られるような記事としてはこういうことがある、「このような事例も従来通り看過されるのでは、教育法律施行の異議がなくなるとしている。」これは恐らく文部省だろうと思う、文部省が「人事院規則の適用を受けることとなつたのに、このような事例も従来通り看過されるのでは、教育法律施行の意義がなくなるとしている。」こういう文部省は見解を持つているのかどうか。余り私は突然な尋ね方をいたしましたが、私が申上げるまでもなく官公労の機関紙に吉田疑獄内閣を打倒し国会を即時解散させよう、こういうスロ—ガンがある、これはスロ—ガンというよりもこの官公労は官公労の第五定期委員会議案として、官公労の組合員に配布された議案として、その議案の中に吉田疑獄内閣を打倒し国会を即時解散させよう、こういう記事がある、これが看過されておるようでは教育法律施行の意義がなくなるとしていることです。私どもはこれはこの教育法律に私は抵触するとは思わない、当然これは看過されていい性質のものだと考えている、それにこういうものが看過されておるということは二法律の施行の意義がなくなるという、こういう見解をとるということは私は了解に苦しむのであります。そういう意味で文部省が看過さていることを非常に遺憾に思つているのかどうか、先ずお伺いしたい。  それからこの記事を見ますと文部大臣意見として、文部省としては重大な関心を持つて事態の推移を注視する必要がある。こういうことを言つておられる、こういうことを言われたのかどうか、お伺いしたいと同時に、この文部大臣の私は発言は、これは千葉県教育委員会に何らかの影響力を与えようと、そういう意図の下に発言されているのではないかと思うが、私はこういうことがあつてはならないと思うが、如何に文部大臣であろうともこの法律の提出責任者であろうとも、この法案の適用について教育委員会に何らかの影響力を与えるような発言は私はよろしくないと思うのです。ところが今申しましたように、重大な関心を持つて事態の推移を注視する必要がある。何か教育委員会を監視しているかのようにとれる。これは私は好ましいことではないと思うのです。そういう意味で先ず右の二点を初めにお尋ねいたします。
  43. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) この朝日新聞でありますか、七月三十日の記事、これの記事の一々の内容等についてはこれは私はこの通り申しておるかどうか私自身も余り記憶はない。実際を申上げますと朝日新聞の記者の人が見えて、そうして官公労、ここにありますが、この官公労という機関雑誌にこういう記事が載つておる。これが、その発行人が、発行責任者ですか、発行責者が公立学校教員であるというふうに思つておる。この場合においてこの前の教育公務員特例法の実施によりまして、政治行為の制限は国家公務員並みの制限を受けるのだ。で、この事例が該当するかどうか。つまりこの政治行為の禁止の規定に違反するものかどうかと思うかと、こういう質問があつた。これに対して私はそれは明らかに違反すると、こういう返事をいたしたのであります。それから千葉県の教育委員会に対してそのことを通達と言いますか、そのことをあんたのほうから言つてやりますか。こういう質問があつたように記憶しております。それに対して私はこの一々の行政措置について直ちにこれを通達をするとか、まあ性質は助言であり勧告でありますけれども、そういう通知を出すという今つもりはない。併しとにかくこれは千葉県の教育委員会の扱う仕事であるから、これをどういうふうに扱われるかということは十分文部省としては何と言いますか、関心を持つて見ておることだということは言いました。これは新聞記者がそういう質問をしたから私が返事をしたのでありまして、その新聞がそれをどういうふうに発表するか。或いはその言つた言葉がそのまま新聞に文字通り現われたものであるかどうかも実は私は、はつきり記憶はないのでありますが、私の記憶しておる限りでは今申上げたのが実情です。これは私は新聞記者のほうでそれを記事として掲載をするかしないか、これは新聞記者の、新聞の考えであります。私は新聞にそういうことを書いて出してくれと、こう言つたわけではありません。これが実際千葉県の教育委員会に新聞として出た場合に影響を与えるか与えんか、それを意図して私は話したわけでもなし、又仮に影響を与えたとしても、文部省の見解はこうであるということを質問に対して言うことは当然な私はことでありまして、影響を与えるからそういうことを言つちやならん。こういうものでは私はないと思います。御批評は御批評でありますが、私は何ら差支えないと、こう思つております。
  44. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうするとこういう問題として取上げられたと申しますか、表面に出て来たのは、朝日新聞の記者の質問ということから端を発しておるということなんですが、これはまあ新聞社のほうの御随意でありますから、私どもそれについてとやかく批評することはございませんが、併しこの新聞記者の質問に対してですね、私はどう考えても重大なる関心を持つて事態の推移を注視する必要があるという言い方は、これは私は教育委員会に私は或る制約を加えるという結果になると思う、こういう言い方はですね、私は文部大臣としては避けるべきじやないかと思うのです。この法の適用は、これは教育委員会の良識によつてさるべき問題であつて、これは他の如何なる機関といえども影響力を与えるようなことはよろしくないと思う。それから文部大臣は今の答弁の中で、これは該当する、そう思つておる、こういうことなんですが、これは私は問題があると思うのですよ、先ず第一にこの官公労の、機関紙に載つておる第一のスロ—ガン、これはスロ—ガンとして決定されたものではないですよ、こういう議案をかけるということで、いわゆるこの会議に参集する人、或いはこの組合の構成員になつておる人に議案を周知させるという性質のもので、仮にこのスロ—ガンが抵触するものであると仮定しても、私はそういう考えを持つておりませんが、仮に、仮定するとしても、これはスロ—ガンでなしに議案ですよ、それですね、抵触するという文部大臣の判断は私は間違つていると思う、どうしても人事院規則から出て来ない、こういう議案です、議案を法律に違反しておるものと断定することは私はできないと思う。
  45. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) これはまあ、荒木さんの法律の解釈はあなたの御解釈として承わる、私のほうは人事院規則に抵触するものである、こういう見解をもつております。
  46. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは水掛論になつて話の進め方がないわけです。そこで私は文部大臣にお聞きいたしたい。官公労というのは、どういう組合によつて構成されておりますか、文部大臣承知であればおつしやつて頂きたい。
  47. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 私も大体のことはどういうものであろうかということは承知しておるつもりですが、政府としてどういうものだということを申上げる立場でもありませんし、又それにはつきり責任を持つて申上げるほど官公労は研究しておりません。
  48. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そんなことはない。これはね、官公労を組織している労働組合、或いは職員組合、どういうものがこの組織の中に含まれておるかということを知らないで、このスロ—ガンが違反しておるとか、違反していないとか、そういうことは私は言えない、そういうことは無関係であると判断されるのですか。
  49. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) これは官公労がそういう決議をすることがいいとか悪いとかいうことを私は言つておるのではありません。この文書自体が政治目的を有する文書である。これを官公労という機関新聞ですか、これによつて一般に配布される、一般にそれを流すというか、そのことが人事院規則に抵触する、こういうことを言つておるのです。
  50. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私の言つておるのはですね、このいわゆる教育公務員特例法の一部改正ですね、国家公務員の例による、あれですね、あれを適用されるのは、国家公務員と、それから公立諸学校教員です。ところが官公労というのは国鉄労組もはいつている、公共企業体である。何らこれに拘束されない、又地方公務員もこれは国家公務員法は適用されない、そういういろいろな、何らこの法律に関係のない組合がたくさん入つておる、その中に一部この法律を適用される組合がある。従つて官公労の中に適用される組合があるということで、この官公労全体のこの運動をこの教育法律で私は制約することができないという面があるんじやないかということを言うために、どういう組合が入つておるかということについて御存じですかということをお尋ねしておるわけです。そういうことについて、どういう見解をとつておられますか。
  51. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) いや、わかりました。了承しました。国家公務員を規制するいわゆる人事院規則の規定は、個々の公務員に対する政治行為の制限でありまして、団体としてそれを制約する、こういうものではありません。従いまして、官公労という一つのいわば団体として、人等院規則に抵触する、こういうことは私はなかろうと、ただそれに関係しておる個々の人人の身分によつて、それに関係した人のうちでも、国家公務員でなければ、勿論国家公務員に関する規定の適用があるはずはありません。併し、その身分が国家公務員である人が、それに関係をしておれば、やはりその人は人事院規則の事犯として問われければならない、こういうように私は思つております。
  52. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 で、これはこの官公労の機関紙の発行責任者は、成るほどこれは公立学校職員、教職員、併しこれは決して、この人がこういう内容を出して、これは印刷しておるわけでも何でもない。これは官公労のいわゆる議案として、或る機関で決定された、それを単に載せているに過ぎない。この編集責任者は、個人としては政治目的なるものは何もないはずです。この佐久間君は政治目的も何もない。政治目的もない。又一定の政治的行為をしようという意思も本人にはない。ただそういう事務局長という地位ですね、この編集責任者になつておるということだけ出しているわけなんです。だから私は佐久間君に政治的目的があると追求してみても始まらない問題だと思うのですよ。そういう点どういうふうに解釈しますか。
  53. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 人事院規則の規定は、まあこれは御承知通りに一定の政治的目的というものを前提にして、一定の行為を禁止しておる。その場合、政治的目的を持つて、これこれの行為をした場合というケ—スと、それから例えば文書、図画、本人が政治的目的がなくとも、文書、図画自体の政治的目的が示されておる、つまり政治的目的を有する文書、図画の頒布、その他それに関連する行為、こういうことを禁止しておるのであります。従つて文書自体に政治的目的を有するものを頒布し、その他の行為をした場合は、その頒布者がその政治的目的を持つておるかおらんか、乃至は頒布者がその政治的目的によつてその文書を作つたか作らんか、これは別問題であります。文書自体が政治的目的を有する場合には、それを配布とか頒布とかいうような場合は、これは人事院規則において制限されておる行為である、こういうように私は思つております。
  54. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は政治的目的、或いは政治的行為ということについては問題はまだ残つておると思うのです。というのは、これは政治的行為であると判断できるかどうかという問題です。というのは、これはスロ—ガンとして、これを官公労の会議に議案として出すと、決定されているわけじやない、議案として出す。そのためにその官公労の必要な部面に議案として騰与版にするか、これは印刷にしてありますが配布する、その上で決定を見るわけなのです。議案として出された、これが政治的自的を持つ政治的行為であるというようには判断できないと思うのです。その点を伺いたいと思います。
  55. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 人事院規則の、これは第六項の十三号でございます。問題の条項は十三号でありますが、御承知のことと思うのでございますが、これは「政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること。」と、これがその禁止をされるその政治的行為であります。ここで「政治的目的を有する」というこの政治的目的は、先ほどお話も出ました前の第五項にあります。そこでその第五項にありますような政治的目的を、その文書自体が有する場合、これはまあその人のやつた行為は、これはあるかないか、これは問わないのでありますが、文書自体から客観的に判断しまして、政治的目的があると判断されるものにつきましては、この禁止にかかるわけであります。そこでこの官公労の機関紙でありますが、これは議案でありますかどうかは……議案も書いたものでありますが、併しながらこの文書自体から、文書自体に政治的目的が判断できれば、これはもう明らかにこの十三号違反だということに相成るわけであります。ここにありますような特定の内閣の打倒ということが書いてありますが、これは政治的目的を有する文書であります。そのことはここに掲げられてありますので、これは議案であろうと何であろうと、この文書からその目的は十分察知できる、証明ができるわけであります。それはその人事院規則の第六項の第十三号に違反する、かようなことであります。でありますから、これはまあ議案だからというお話でありますけれども、議案自体が政治的目的を持つているわけですから、その議案、ここに書いてあります文書というものの目的は、これは明らかであります。
  56. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私はですね、これは官公労の機関紙は、これは特定の人に配られている、第一にね。それから特にこの機関紙は、はつきり上にも議案と書いてある。決定じやないわけですね。而も官公労に入つているいろいろの組合の中には、この法律には無関係であります、そのほうが多いのですよ。国鉄にしたつて全逓にしたつて、それから地方公務員にしたところで、適用されない、言い換えれば一部分が適用されているだけかも知れない、或いは半分ぐらい、であるかも知れない。その数は私は問題にしていない。半分よりも少いのですよ、国家公務員と教職員だけ合せても。公企業関係と地方公務員を合せたつて少ないです、その数は別として。そうして、議案としてのこれに政治的目的があると断定することは、私は第一間違いであると思います。    〔委員長退席、理事剱木亨弘委員長席に着く〕 それからこの議案をですね、官公労として提出するということは、これはこの会議の性格上、国家公務員関係が何も発言しなくても、こういう議案は議案としてきめられておるわけです。何らそれは差支えない。ただ発行背任者が公立学校の教職員であるというだけで、この佐久間君が該当するというのは、私は少しおかしいと思うのですよ。
  57. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) これは今私が申上げました通りでございまして、これは議案であつてもなくても、議案であつてももこの議案の中に、政治的目的ありまするし、それがこの文書に掲げられてありますから、文書が政治的目的を有する文書であるということは明らかであると思います。  それから只今のお話の中に、これは先ほど大臣の答弁の中にございましたけれども、この規則を受けるのは個人なんです。国家公務員、それから今度の特例法の改正によりまして公立学校教員、これが規制を受ける対象になるわけでございまして、官公労という団体、或いはそのほかこれに加盟しまする労働組合が、規制の対象になるわけじやないのであります。でありますから、ここにありますように政治的目的を有する文書を発行した者が、これを発行した個人が国家公務員であり、或いは公立学校教育公務員であれば、これは明らかにその人自身が仮に政治的目的を、発行という行為に対して政治的目的を持つてやつたということでなくても、それが立証できなくても、文書そのものが政治的目的を持つていることが立証できれば規制を受ける、引つかかつて来る、こういうことになるわけであります。ちよつと今お活の点は何かほかの団体が、規制を受けない団体或いは人が中に入つているというお話でございましたけれども、その官公労が議案を作つたという行為じやなくして、この議案を載せた、その文書を発行した、その行為が政治的行為の禁止に引つかかつて来る、こういうことを申上げたのです。そのやつた人は明らかにこれは公立学校教育公務員でありますから、今度の改正によりまして人事院規則の適用を受けるわけであります。
  58. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは私は政治的目的があるというふうに判断できないのです。「吉田疑義内閣を打倒し国会を即時解散させよう」これだけとれば政治的目的があるということになります。併しこのスロ—ガンを議案として配布したときに、それが政治的目的があるということは断定できないのです。
  59. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 同じことでございますけれども、この議案に吉田内閣打倒ということが書いてあります。これは明らかに政治的目的がこの議案の中にある、その議案を載せている文書でありますから、これはもう文書に政治的目的が十分に載せてある、そういうふうに言えると思います。いずれにいたしましても私どもいろいろと研究を実はいたしまして、人事院規則でございまするから解釈は人事院の解釈事務的にはいろいろ打合せをいたしましたが、人事院におきましても担当者におきまして、これは明らかに政治的目的を持つ文書である、かように断定をしております。それから法務省の意見も十分聞いたのでありますが、担当者におきましては同様な意見を述べておられます。
  60. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私はこの問題は人事院の見解も聞く必要があると思います。で、今人事院の見解を聞いているということでありますが、当文部委員会としてもやはり人事院の見解を直接聞く必要があると思うのです。私はどうしてもこの議案として配布されたこのスロ—ガンというのはこの二つを関連させて考えてみたときですよ、これが政治的目的を持つた政治的行為である、こういう判断はできない、こういうふうにまあ考えているわけなんです。一応これ以上は……。
  61. 剱木亨弘

    理事剱木亨弘君) 速記とめて下さい。    〔速記中止〕
  62. 剱木亨弘

    理事剱木亨弘君) 速記始めて下さい。    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕
  63. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して尋ねますが、人事院規則の今十三号を読まれたと思うのです。この十三号、第二項の人事院規則の解釈では職員が政治的目的を持つ文書、図画を著作しということになつておりますね、第二項は。これは官公労の佐久間さんであつて職員個人佐久間ではないわけです。官公労組としての図画であるのに、それを佐久間個人に持つて来ているということはやはりこの人事院規則の解釈の飛躍があると思う。私は官公労組がやつた仕事、それを佐久間個人のようにあなたは解釈をしておられるけれども、人事院規則のこの解釈を見ても職員が政治的目的を持つ文書、図画を著作し又は編集した場合というように特定個人の罰則規定というものが私ははつきりされていると思うのです。ところがこの場合は官公労組としてのものであつて、佐久間個人の私は見解ではないと思う。そういう意味で文部省の解釈は飛躍していると思う。
  64. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 繰返し御答弁することになりますけれども、この十三号はお話の通り個人の政治的行為の禁止を規定しておるわけであります。その個人が政治的目的を有するかどうかということは先ほど申上げた通りであります。即ち文書そのものが政治的目的を有するかどうかということであります。  それで今お話の点は「職員が」という点、職員が文書を発行した、佐久間孝一君はこれは職員ではないじやないかというお話じやないかと思いますけれども、これは明らかに職員でございます。千葉県の高等学校の先生でありまして、今専従休暇をもらつているわけで、この人事院規則の第一項でありますが、「適用の範囲」というのが書いてあるのを御覧になりますと、これは適用の範囲は休暇中のもの、「休暇、休職又は停職中の者及びその他理由のいかんを問わず一時的に勤務しない者をも含む」こういうことになつております。一般職全部を含む、専従休暇をもらつて実際に学校の教鞭をとつていなくても、これは学校の先生の職務を持つておりますから、明らかにその適用範囲に入る、こういうように御了承願います。
  65. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういうことを言つているのではないのです。解釈に書いてあるのです。「職員が」と書いてあるから、佐久間さんが職員であろうと何であろうとそんなことは問題でない。このスロ—ガンというものは佐久間個人ではなくて、官公労組としてのこれはスロ—ガンじやないですか。そうだとしたら官公労組のスロ—ガンを飛躍して、そこに名前が出ておつたからといつて、そこまで飛躍するということは、これは法律というものは保護規定ですよ、私は保護規定だと思う、人事院のくだくだしい解釈というものは、わざわざ人を罪に陥れるためにこういう法律を作つているんだと思わない。結局濫用を防ぐために法律があるということは、これは民主主義社会の原則ですよ。警察国家ならどんな法律でも拡大解釈をしてきゆうきゆうとつちめればいい。併し私どもが民主主義社会を容認している以上はその法律の精神も又そういう解釈をしなければならないと思うし、人事院の法解釈にしても人事院の、政治目的の解釈にしても、民主主義社会の原則を守るという建前においての解釈なんであつて、全官公労のスロ—ガンを持つて来て、佐久間孝一君の名前が出ていたから、佐久間孝一君職員それ自身が政治的目的を以つてつていると、そういう解釈というものは飛躍し過ぎているのです。法の適用というものは法の精神を準用して考えなければならないと思うのです。そういう警察のようなガリガリ頭で法律を解釈していたら何もこれはできませんですよ。  大体伺いたいけれども、吉田内閣というものはあるけれども、吉田疑獄内閣なんというのはないのです。これは特定なものでも何でもないじやないですか。(笑声)そういう解釈だつて成立つのです、言わせれば。だからそう飛躍するものじやないのですよ、そうじやないですか。
  66. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 高田さんに申上げますが、この規定は政治的目的を有する文書を著作するとか、或いは作つたとかいうことはちつとも必要ないのです。例えば誰彼の説、何がしの説とちやんと名前をはつきりさせて、そうしてそれに内閣打倒、或いはその他の人事院規則に言うところの政治的目的をそこへ書いた、そういう文書でもそれを国家公務員、或いは公立学校の教職員がそれを配ればやはりこの規定に抵触することになる。決してその本人が作つたものであるとか、或いはその人がその趣旨に賛成をしているとかいうことは要件ではないのであります。これは人事院規則を御覧になればつまりつまり……。
  67. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう見ているのですよ、私は。
  68. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) そうですか。「政治的目的を有する署名文は無署名の文書」、だから無署名であつても差支ないし、署名してあつても、署名は、その頒布する人間、或いは発行する人間の署名である必要は一つもない。例えば評論家が書いたものであつても、政治家が書いた、署名した文書であつても、それは差支えない。ただその文書が政治的目的を有する文書であればそれでたくさんである。それを発行し、回覧に供し、或いは掲示し、或いは配布し云々、こういう行為が禁止せられているのでありますから、その発行し、掲示し、配付し、或いは多数の人に対して朗読する。その人が自分で作つた文書である必要もなければ、又その発行し、掲示する人がそういう目的を持つているということも必要ではない。こういうふうに私どもとしては解釈しております。従つてこの佐久間何某がそのスロ—ガンを作つたか作らんか、こういうことは、この場合には、この法律に抵触するか否かに関する限りは問題にはならないのであります。
  69. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 多数の人じやなしに、これは特定の人ですよ。
  70. 高田なほ子

    高田なほ子君 重ねてそれじやあお尋ねをいたします。多数の人というのはね、これは人事院の解釈では、多数の人とは不特定多数を指し、父兄に対する行為は含まれない。不特定多数というのは、例えば組合なら組合ではなくて、一般の外来者も加えて、そういうのを不特定多数というので、組合なら組合の会議というものはこれは特定多数である。即ち団体というものは特定なものであるということは、これは特定多数であつて、この第四項に示されるところの不特定多数という意味には入らない。私はそういうふうに解釈する。そういうのが正しい解釈であると思います。
  71. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 多数の人に対する場合は、これは同じようにこの朗読し、聴取させる場合、この場合はこれを発行した場合、従つて多数の人に云々ということは、この場合には関係のないことであります。  なお念のために申上げておきますが、多数の人に対する場合に、これは特定、下特定の関係は起らないのであります。むしろ多数の人という場合には、特定の多数であつても、不特定の多数であつても、皆この十三号に該当するものであると思います。多数の特定の人々を集めた会合の席上でそういうような文書を朗読したり、或いは聴収させるという場合にもこれは入るし、不特定の場合も入ると思います。併し少くとも今度の佐久間孝一君の場合は、これは多数の人に云々という場合ではないので、そういう文書を「発行し」とこれにかかるものと御了承願いたいと思います。
  72. 高田なほ子

    高田なほ子君 法律はやはりそれで取締るという場合には、あらゆる条件というものが完備した場合にそれが対象になるのであつて、その中の一つの条件が欠けておつても、これが一つ該当するからと言つて、それが処罰の対象になるなんてことは、これは法の行き過ぎですよ。法の精神を遵法させるために、人等院から各項に亘つて詳細な説明を加えて、その法の濫用に亘らないことを規定している。従つて多数の人というのは一体どういう人かというところに疑義があるのですよ。政治行為というのはやはり多数の人を対象にした場合に問題が御るから、人事院としては、多数の人とは何かというので、第四項に、多数の人とは不特定多数を指し、父兄に対する行為は含まれない。不特定多数ということに対するこの見解というものは、大臣、それは違つていませんか。もう少し研究してからそういう何をしてもらいたい。
  73. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 今申上げたように、この十三号に書いてあることは、ここに多数の行為を引括めて書いてあるのじやない。これが全部、発行し、回覧に供し、掲示し、配付して、或いは多数の人に対して朗読し、聴取させ、或いはそれの用に供するために著作し、編集すると、この全部が揃わなければ違反にならない、こういうものではない。これは明瞭でありまして、発行する行為、回覧に供する行為、掲示する行為、配付する行為、これは一一が政治行為の、制限される政治行為に該当するもの、かように私どもは解釈しております。    〔「どうも拡大解釈だな」と呼ぶ者あり〕
  74. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは大変飛躍したことをお尋ねしますが、仮に私が教員であつた場合に、こういうものを書いて発行して、自分で持つていても、それでも罪になるのですか。一つでもなると言つたら、そうじやありませんか。
  75. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) いや、発行するということは、多数、若しくは不特定の人にこれを読ませるとか、配るとかいう意味で発行するのでありますから、発行するということ自体がそういう意味であります。ただ印刷して自分の、或いは箪笥に入れておくだけでは、これは発行にはならない。
  76. 高田なほ子

    高田なほ子君 だから大臣はお笑いになつているけれども、そうじやないのですよ。そういう疑義が起つて来るから、どういう場合に発行した場合に、どういうところに発行したらいけないかという条件がここについているのでしよう。私はこれは裁判所にやつてもらいたいのですけれどもね。何もここで私は文部省と、法解釈をやりたくないのですけれども、余り飛躍しているから、私はそういうことを申上げるのです。発行しても、その発行したものが、不特定多数の場合には、この十三号の要件には、はまらないということになつているのです。そういうことじやなかなかこの四項にはまらないという考え方、解釈を人事院ではしているのです。それはやはりこの十三号の適用を最も遵法的にやるために、多数というものの解釈がされている。
  77. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 甚だ恐縮でありますが、今のお話の人事院の解釈ということでございますが、人事院はこの人事院規則の運用方針というのを出しております。この該当の第六項第十三号でございますが、これにはそういう解釈はしておりません。
  78. 高田なほ子

    高田なほ子君 茶色の表紙のを御覧になりましたか。人事院月報です。
  79. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) それは又別のなにじやないかと思いますが……。
  80. 高田なほ子

    高田なほ子君 人事院月報ですか、それは。
  81. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 人事院の運用方針です。
  82. 高田なほ子

    高田なほ子君 それじやその該当というのを人事院へ行つて尋ねて下さい。今あるのか、ないのかと言つていますけれども、私どももやはり人事院の見解を質した上で今尋ねているわけですから、こういう工合に私ども一つの問題でもいろいろ疑義が残つているのでありますから、荒木委員の言われるごとくに、私どもも更にこの問題を研究してみたいと思います。多数ということの解釈については可なり議論がある。
  83. 相馬助治

    相馬助治君 いろいろ具体例が上つて議論されたので、聞いていてなおわけわからなくなつちやつたのですがね。(笑声)私はやはりこの際緒方さんにお尋ねしておきたいと思うのですがね。この法律の建前から言うと、主体と、目的と、行為という三つの要件が揃うことは、これは不可決な要件だと思うのですね。そうすると佐久間君というものが教職員であるということだとすると、主体は、主体的な条件は揃つている。主体は揃つている。そうするというと、今度はその次に人事院規則で示されている目的を明らかに持つて、佐久間君自身がそういう意思を持つて、その次今度は人事院規則がやはり禁止した行為をやつた、こういうことになれば、一応これはこの法律が目的としている一つの、何と言いますか、罪というか、法律が適用しようとしている行為であるというふうに、これは確定ずけられると思うのですね。そうすると文部省の見解としては、あの場合に、主体と、目的と、行為と、これが矛盾なく成立要件として整つている、かような解釈ですか。
  84. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 只今お話の主体はこれは問題ございません。お話の通りでございます。ところがその禁止されます政治的行為ですね、これは政治的目的を以て、これこれの政治的行為をやつた場合という規定の仕方と、それから、これは意味は同じことでございますが、政治的目的のためにこれこれの行為をした場合、こういう立て方が一つあります。それからもう一つの立て方は、その行為者そのものの政治的目的は全然関係なく、その目的物であります……まあここは文書でありますが、文書が政治的目的を有する、その政治的目的を有する文書を発行したと、こういうことになる。その発行するという行為そのものには目的はついていない。その目的物になります文書が客観的に政治的目的を有する、そういう文書を発行した場合、こういう規定の仕方に三通りあるのです。で、只今の第十三号は政治的目的を持つて、或いは政治的目的のために文書を発行したというふうにはなつておりません。政治的目的を有する文書を発行した者、こういうことになつております。でございますから、先ほどから申上げますような解釈になるのであります。
  85. 相馬助治

    相馬助治君 そうすると、佐久間君自身がそういう意図を持つて、そうしてそういう内容のある文書を発行したというのじやなくて、佐久間君の意思にかかわらず、法が禁止している目的を持つた文書、今度はこれは一つの要件になつてしまつておるのですね。そこで発行した、だから佐久問君は当然この法律によつて対象になるのだ、かような解釈をしている、こういうことですか。
  86. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 只今お話の通りでございます。
  87. 相馬助治

    相馬助治君 そうしますと、やはり私がこれを解釈していたのとは全く違つて来ますので、その場合には私は明らかに罪に問われるのは佐久間君なのだから、佐久間君というものが教員であつて、そしてそういう意志を明らかに有して、そうして意思を有したままに行動に訴えたという三つの要件が揃わなければ罪に問われないというふうな解釈をしていたのですけれども、今聞くというと、佐久間君が教員であつて佐久間君がそういう意思が第二にはあろうがなかろうが、文書そのものがそういう意思を持つていた場合には、その文書を発行した場合においては佐久間君が罪に問われるのであると、かように解釈するのだということがわかりました。従つてここで私は議論をせずに、これは荒木君の先ほどの提案で人事院並びにその他関係のかたの法的解釈をする、専門的な法的解釈をするかたの御参集を得る機会があるそうですから、その際に又改めて私自身ももう少し研究して問題にしたいと思うのです。  で、念のためにちよつと聞いておきたいのですが、仮にそういう信念で文部大臣は今度は千葉県の教育委員会のあれを見守つていてどうにもしなかつたときにはどうなんですか。
  88. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) どうにもしなかつた場合は、これは御承知通り行政処分というものはその処分理由になる事柄があつても、なり得る事柄があつても必ず処分をしなければならんというものじやありません。これは行政処分は刑罰の場合でもそうでありますけれども、殊に行政処分の場合はそうであります。これは行政処分対象として実際処分の権限を発動するかどうかということは、これは千葉県の教育委員会の裁量に待つ性質のものであります。それに対して適当であるか不適当であるかという批判は勿論あり得ます。併しそれを決定する権限は千葉県の教育委員会のみが持つておるのであります。従つて文部省としてそれを必ずそうやれということを命令する権限は勿論ない。ただ勧告助言ということがありますから、その勧告助言に従つて拘束力を持たない意味でこうしたらよかろう、ああしたらよかろうということが言えないわけではありません、文部省として言えないわけではないと思います。ただそれに従うか従わんか、拘束されるかどうかということは、これは当該教育委員会の裁量、意見によつてきまることであります。ただそういう助言をすることが法律上できないかと言えば私はできないとは思わん。けれどもそういう助言をすることが適当であるかどうかということは、やははこれは文部省の考えによつてきまるわけであります。この場合にはどういうふうに裁かれるか、これは文部省として無関心でおることはできません。
  89. 相馬助治

    相馬助治君 私は議論や主観的なことをお尋ねしておるのじやなくて、現実の問題として……。そこで千葉県の教育委員会では積極的に何か聞きに参りましたか、事務局に。
  90. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 事務局の課長が向うから聞きに参りました。その解釈について聞きに参りました。
  91. 相馬助治

    相馬助治君 解釈というよりも具体的な事例を挙げて如何取計らつたものでしようかということで聞きに参つたのですか。
  92. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 千葉県の教育委員会はどういう内容のものであるかということもまだ知らなかつたので、それを聞きに参りました。それと法律の解釈につきまして聞きに参つたわけであります。
  93. 相馬助治

    相馬助治君 そうするとこの問題は、騒ぎが起きたのは千葉県教育委員会が気付いたのでなくて、指導監督をする立場の文部省がお気付きになつて、それが談話のうちに何か出て、新聞社がこれを取り上げた。そこで千葉県の教育委員会が追つ取り刀で如何したものでしようかというので文部省に尋ねに来たという段階まで今行つているわけですか。その経過ですな。
  94. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 向うから聞きに来た段階であります。文部省に対しましては課長が聞きに来ました。
  95. 相馬助治

    相馬助治君 そうすると大達さんにお尋ねしておきたいのですが、文部大臣としてはどうしてもこういう法律が必要だと思つて、ここで刑事罰の原案を出して、あの法律の成立を期待した。そうすれば首尾一貫した、いい悪いは別ですよ、あなたというか、大達文政におけるところの一貫した指導が教育のためにできるという御確信であつたと思うのです。それが国会においてこういうふうになつてしまつた、こういうことから、これは大達さん自身にしてみれば極めてこれは適用の面からいつて遺憾であるということになつて来ると思うのです。そういうことになるとあれですか、大達さん自身としては又初一念完徹のために、次期国会に法律の改正を提案するという御用意がございますか。
  96. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) これは仮に刑事罰を科するといういわゆる政府原案と申しますか、それがそのまま成立した場合におきましても、文部省でそういう事件が起つたからこれを是非起訴してもらいたい、起訴すべきであるということを法務省なり当該関係の方面に申入れをする立場ではありません。これはそういう事犯が起れば、その事犯を処理する検察庁なりその他の方面で取扱われるというだけの問題でありまして、罰則がついたから文部省は喙を出せない、それから罰則がなくなつて教育委員会の行政処分に任せられたから文部省は喙が出せない、喙の出せない点においては同じことであります。むしろ教育委員会に対しては助言、勧告ができる。検察庁に対して助言、勧告する権限はないのでありますから、その点は違いがない。文部省は何もこの法律がどつちになつても、それによつて特別な行政的な権限というものが与えられる余地はない。これは法律を御覧になればその通りであろうと思います。ただあとの結論的のお尋ねでありますが、これはこの間、二法律も成立したばかりでありまして、これは国会の意思によつて決定されたことでありますから、それをすぐ又改正をする案を出すか出さんか、こういうことを今申上げる段階では勿論ありません。ただ罰則がないのでありますから、若し罰則がないというために、違反をしたつてどうもできないじやないかということで、委細構わずどんどん違反をして意としないというような実情というものが若しあれば、これは無論この佐久間君の一例を以てそういうことを判断するわけには参りません。参りませんが、今後の実際の実情を見て、刑事罰がついておらんのだから違反をしても一向差支えない、構わんというような一般の教育界に風潮が現われるとすれば、これは放つておくわけには行かない。併しそんなことを今日予断すべきでは勿論ありません。
  97. 相馬助治

    相馬助治君 速記をとめて下さい。
  98. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  99. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を始めて。
  100. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 先ほどから文部大臣は指導、助言があるというお話がたびたびあつたのですが、私も迂潤でそれがよくわからないのです。ちよつとどういうところから指導、助言ができるのか。いつかもこの問題はあつたと思うので、それを御説明願いたいと思います。
  101. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) これは教育委員会に対しては文部大臣はその教育委員会に対して指導、助言、勧告をするということができる。こういうことは法律に、文部省の設置法に明らかに書いてある。これはしばしば一般に言われております。
  102. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ちよつとそこのところを読んでくれませんか。
  103. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 設置法の第五条の十九号「地方公共団体及び教育委員会、都道府県知事その他の地方公共団体の機関に対し、教育、学術、文化及び宗教に関する行政の組織及び運営について指導、助言及び勧告を与える」と、かようになつております。
  104. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで私の聞きたかつたのは、こういう行政処分に対しても指導、助言、勧告するようになつておるのですかということであります。それは今のどの言葉に該当するのですか、行政処分ですね。
  105. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 教育に関する行政の運営、このうちに包含されるかと思います。教育委員会が掌つている教育に関する行政の運営という中に入る、かように考えております。
  106. 剱木亨弘

    剱木亨弘君 議事進行について。如何ですか、この辺で今日は散会にしては。
  107. 堀末治

    委員長堀末治君) 本日はこれで散会いたしたいと思いますが、その先に一つお諮り申上げておきます。  明日の本委員会におきまして地方教職員給与問題について参考人より意見を聞くこととし、参考人には佐賀県知事鍋島直紹君を決定いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 堀末治

    委員長堀末治君) それではさように決定いたします。本日はこれにて散会して明日は十時から開会いたしますから、成るべく時間御励行をお願い申上げます。    午後四時十七分散会