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国務大臣(
保利茂君) この
法案を御
審議願いました、立案いたしましたところは、終戦後流安工業が殆んど壊滅をした昭和二十一年、二十三年当時の掛声として努力をいたしましたのは、何とか百万トンの
硫安を作らなければならんということで、朝野を挙げて非常な努力が払われたことを回想いたしますと、今日二百二、三十万トンの状態まで
生産が伸びて来たということは大変なことではございますが、
従つて量的には
国内の需要を充たして余りあるという状態に達しておりますが、丁度昨年の今頃、最もやかましうございましたのは、成るほど量はたくさんある、量はもう不足はない、併し
国内の
価格が高くて、そうして
国内需要の余り分を外国に、
日本の農民に売るよりも安く売
つて、即ち
日本人の農民の
負担において
硫安が
輸出されておるということは、農村、農民の立場からして認めることはできないということが、この立案をいたしました元々であることは御
承知の
通りであります。そこで私
どもとしましては、それじや成るほど
硫安を
国内で要るだけ
作つて、百六十万トンなら百六十万トン、百七十万トンなら百七十万トンを
作つて、それだけで
硫安工業を持とうとすれば、勢い相当
コストは高くなるのではないか、そこでできるだけの、幸いに極東各国に、
日本に近いところに
硫安の
市場を持
つておるのだから、而も外国原料を仰がないで外貨獲得の有力な武器として
輸出上に貢献できる
産業であるから、数量もどんどん殖やして行かなければならん、併し今日の
状況は外国との、極東
市場においてすら
ドイツ等の製品に
価格上競争にならんというようなことで、勢い安い
価格で
輸出をしなければならん、安い
価格で
輸出をすれば、内地の農村、農民にそれだけかか
つて転嫁せられて来るという、この
矛盾を解決しつつ
硫安工業の発展を図
つて行くためには、一面
農家経済にと
つて、何と申しましても肥料の需要というものは重大な
関係を持ちますから、できるだけ
価格を安くしてもらわなければならん、少くとも内地の農民の気持から言いますれば、少くとも
価格は世界的レベルにおいて内地の農民に供給されるような形に速かに持
つて行く必要がある。それにはこの
出血輸出と表現せられるその分を決して内地農民に転嫁しないのだ、
経理上、実質上内地農民に転嫁するものではないという形をここに
一つとる必要がある。これが
輸出会社という構想に
なつたことは御
承知の
通りでございます。そこでこの
コストを
引下げて行くためには、今の施設の
合理化も第一に取上げられなければならん、或いは石炭、電力の豊富なる、低廉なる供給という面からも
考えられなければならん。そういうことで両々相待
つてこの肥料の調整、
硫安の調整を図
つて行こうというのがこの大体の大筋でございます。これは今頃そんなことを申上げればどうかと思いますけれ
ども、改めて私は申すべきじやないかと思う。そういう上から申しまして、今日の財政金融の
現状からいたしまして、御懸念のように果して五カ年間に二百三十億の
合理化資金の調達が可能なりや否やということは、これは何人も懸念するところでございますけれ
ども、とにかく
政府を挙げまして、この内地
農家の要請に応え、又肥料工業のあり方からいたしまして、
政府といたしまして、
通産大臣が言われますように困難は予想せられますけれ
ども、そういう
趣旨のものであるから、この
趣旨達成には全力を尽してこの
法案の
目的を達したい、こういうことで私は
通産大臣と全く同様な
考えを持
つております。