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1954-05-25 第19回国会 参議院 農林委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十五日(火曜日)    午前十一時二十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     片柳 眞吉君    理事            宮本 邦彦君            森田 豊壽君    委員            川口爲之助君            佐藤清一郎君            関根 久藏君            横川 信夫君            上林 忠次君            北 勝太郎君            河野 謙三君            江田 三郎君            河合 義一君            清澤 俊英君            松永 義雄君            松浦 定義君            鈴木  一君            鈴木 強平君   衆議院議員    川俣 清音君   政府委員    農林省畜産局長 大坪 藤市君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君    常任委員会専門    員       中田 吉雄君   ————————————   本日の会議に付し事件 ○酪農振興法案(内閣出、衆議院送  付) ○参考人の出頭に関す件   ————————————
  2. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは、只今から農林委員会を開会いたします。  本日は、先ず酪農法案を議題といたしまして、昨日は農林大臣に対して総括的な質問を行なつたのでありますが、なお御質疑を願いたいと思います。
  3. 北勝太郎

    北勝太郎君 この法は酪農振興か、乳業振興かという昨日の江田委員の疑問が出されておるのでありますが、私は乳業酪農というものは不離一体のものである。こういう工合考えるのでありまして、酪農振興乳業振興である。こういう工合考えておるのでありまして、これは酪農の精神であるデンマークの例を考えて見ましても、実はそれが理想体系だと、こういう工合に思われるのであります。そこでこれは是非一つ農民資本で、或いは農民発言権或いは農民意思というような経営がされるべきであつて、そうでなければ酪農経営というものを安定させる方法ではないと考えておるのでありまして、営利資本にばかり隷属させるということは、私は酪農振興に非常に危険があるというふうに思つておるのであります。営利資本名前通り、儲けるのが本意であつて農業合理的発達、こういうことは本意でないというような関係から、私はかく申すのであります。そこで本法案根本理念にそうした考えが入つておるのかおらないのか。どうも法案を見ますと、この乳業というものは酪農家とは離れた経営の下におるかのごとく、営利経営に一任するかのごとき考えが入つているように思われてならないのであります。この点について政府考え方はどうであるか。これを承わつておきたいと思います。
  4. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 本法に関連いたしまして、酪農振興か、或いは本法は逆に乳業振興目的としているのじやないかというような御意見がありまするが、私どもといたしましては、勿論本法の長大の眼目といたしましては、酪農振興であるということ、これは申上げるまでもないと思うのであります。農業経営一体をなしました酪農こそ、我が国の将来の酪農のあり方ではないかと思うのであります。只今指摘がありましたように、オランダでございましたか、デンマークでありましたか、そういう欧洲各国におきましては、酪農そのものと、製品のいわゆる乳業というものが、協同組合系統機関によつて縦にうまく合理的に結び付いておる場合が非常に多いのでありますが、日本におきましては、酪農と、それからそれに伴う乳業というものが多くの場合欧洲各国のような、いわゆる農業協同組合系統による乳業というものが割合に少いのでありまして、その点甚だ我々といたしましても遺憾といたしておる次第でありますが、理想としましては、酪農基盤にいたしまして、その基盤の上に立つ乳業というものが是非必要ではないかと、かように存ずるのであります。ただ只今までの発展過程及び日本の現在の事情といたしましては、欧洲に多く見られるような、合理的な形態になつていないという点は遺憾でありますが、その点につきましては、できるだけそういうような農民本当の自覚と申しますか、或いは努力と申しますか、それらによりまして、できるだけ協同組合的な組織による乳業発展というものに努力いたしたいと、かように存ずるのであります。
  5. 北勝太郎

    北勝太郎君 酪農民乳業経営ということが理想であるとするならば、この法案において農民乳業に対して進出する用意がどこにあるか、あの法案の中で、そういうような用意があるかないかという点について伺いたい。
  6. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) それらにつきましては、特にどこにそういうような意識と申しまするか、特別措置があるかという点につきましては、規定の形式上、表面上はそういうような規定は特にないのでありまするが、例えて申しますれば、いわゆる集的酪農地域に設定いたしました土地の具体的な酪農振興計画、この地域におきまして乳牛飼育頭数の増加その他いろいろな関係施設関係計画の場合にいろいろ論議いたすのでございまするが、その場合に、この点につきましては衆議院のほうにおきましても、その点を特に御考慮になりまして御修正を煩わしたのでありまするが、できるだけ生産者のいわゆる立場というものを強くその点に反映させまして、若し生産者側のほうがそういう力があり、又そういう意思があるということになりますれば、生産者集乳計画共同組織によりまする集乳計画は勿論といたしまして、それに伴うそれに更に附加えました乳業計画というものもできるだけ計画の場合に反映させるように、かように存ずるのであります。なお地方長官の承認の場合におきましても、その点につきましてはできるだけ酪農基本は飽くまで農民経営安定と申しまするか、農民の地位を強固にするということが終局の目的でありますので、その点につきましても、計画の場合或いは実行の場合できるだけそういうような方面に持つて行くように、私どもといたしましても希望をいたし、又法律の大体の考えといたしましても、或いは衆議院における修正の経過から考えましても、そういうような点につきましては、強く全体の法律考え方として織込まれると、かように申上げて差支えないのじやないかと考えております。
  7. 北勝太郎

    北勝太郎君 衆議院修正でありますが、その修正の中に第三条二項の第三に生乳生産者共同集乳組織の整備、こういう工合に害いてあるのでありまして生乳集乳までは、これは生産者がやるものということははつきりしておるようであります。そこでこの現在の乳価構成でありますが、実は集乳費まで製造方面で引受けて持つて行くのであります。集乳費生産費費用でやるというような今の乳価決定じやない。そうなりますと、乳価決定の場合に、集乳費用或いは集乳に関するいろんな落等が起るとか何とかいう問題は、これは生産者乳価から差引かれることになる。いわゆる牛乳代が安くなることになると、こう思うのでありまして、この点につきましてどうも腑に落ちんのであります。わざわざ牛乳を安くするような方法に持つて行くということは、これは考えられないことだと思うのでありますが、今までの慣行等生乳集乳というほうは、これは工場側に持たすべきではないか、こう思われるのでありますが、この修正についてどうも衆議院修正したのですけれども政府がこれを承認しておられないようでありますから、その内容を承わつてみたい。
  8. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 衆議院におきまする修正考え方といたしましては、少くとも集乳事業という言葉がいろいろ論議の対象になつたのでありますが、集荷工程と申しますか、或いは農民共同販売と申しますか、共同出荷と申しますか、その販売工程は、少くとも農民組織しております協同組合によつてやるのが当然であつて最小限度その点まではやらなければならない。乳業自体につきましては、いろいろ資本の問題なり、技術の問題なり、又地方における乳牛飼育頭数の問題なりに関連して問題がありますが、少くとも集乳工程までは生産者団体においてやるべきであるという考え方の下に、特に御修正に相成つたのであります。その場合におきまして、いわゆる価格構成というものはどうなるかという問題になると思いますが、酪農組合乳業者との間におきます取引の場合におきましては、多くの場合に、運賃につきましては、或いは生産者持ちという場合もあるようであり、又会社持ちという所もあるようであります。これらの点につきましては、いろいろ地方実情なり、或いは価格構成弾じき方と申しますか、出し方によつていろいろ違うと思いますが、乳価そのものが合理的であるということに相成りますれば、本来は共同出荷でありますから、その運賃相当額というものは乳価そのものに、プラスと申しますか、当然それを構成いたしました価格といたしまして、従つて運賃につきましては、生産者側が出すということのほうがはつきりしているのじやないかと思うのであります。地方によりまして沿革的にいろいろ事情があるようでありますが、それらの点がいろいろあいまいと申しますか、悪く言えば、からくりと申上げたほうがいいほどの、場合によりましては、そういうような事情もあるように見受けられる所もあるようであります。その点につきましては、はつきりいたしまして、例えば集乳所なり或いは工場までは生産者側が持つ、従つてその場合の乳価というものを適当な価格ではつきりきめてわかるほうが、具体的の場合に紛争処理のしようがいいのじやないか、かように考えているのであります。併しながら、そういうことも、いろいろ地方々々によつて違うと思いますので、一律にどうしなければならんということは甘いかねますが、模範文書契約等におきましては、それらの点につきましては、一つできるだけ各般の事情を考慮いたしまして決定いたしたいと、かように考えております。
  9. 北勝太郎

    北勝太郎君 この輸送機械の非常に発達して来た今日においては、組織が大きければ大きいほど輸送費がかからないし、牛乳の傷みが少いと思うのであります。例えば外国においては、四十石以上を一回に運ぶトラクターができておるという話です。そういう工合組織が大きくなるほど集乳費が非常に少くなつて来る、又遠距離まで運ぶことができる。例えばタンクにはクーラーみたいなものがついておつてタンクの中の温度はいつも下げてあるから、どの牛乳を混ぜても差支えないというような方法がとられておるという話を聞くのでありますが、日本のように、どうしても牛乳罐一本ずつどうでも持つて行かなければならないということは、これは大した容積がかかるのであります。それがために牛乳をたくさん運べないというようなことになります。従つて私は集乳事業というものは組織が大きいほどいいので、工場事業の一部にしたほうがいいと思う。そして工場がそういう進んだ輸送機械を以て遠距離まで運んで行く、又牛乳を一々罐で運ばないで、所々に皆集めて、検査をして受入れるという方法で行きますならば、それで非常に経済に行くのだ。これは集乳事業工場側でやらすべきものだという考えを持つておるのであります。その点についてどういうお考えを持つておられるか。
  10. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) その点に、只今の御意見の点につきましては、いわゆる何と申しまするか、協同組合として、農民協同組合で、少くとも共同出荷という体制は確立しなければならんという考え方で、私どもといたしましても、衆議院の御修正通り進んで参りたいと考えるわけでありまするが、只今の御意見のように集荷工程におきまして、相当設備の整つたトラツクなり、或いは輸送機関というものをやりますことが、御意見通り集乳区域も広くなりますし、従つて単位当りの経費も安く付くというような事情もありますので、いわゆる共同出荷というものと、集乳作業というものをどういうふうに結び付けるかという点につきましては、各地のいろいろな事情を加味しなければならんと思うのであります。ただその場合におきまして、乳価がどういうふうになるかという経済上の問題になつて来ると思うのでありますが、その場合には、いろいろな要素を織り込みまして、どちらが輸送費を持ち、或いは輸送事業をやるにいたしましても、考え方といたしましては、集乳事業そのもの農民団体でやつているというような考え方の下に、価格構成なり、或いは作業工程なりは、それを中心にして考えて行くというような考え方で差支えないのじやなかろうか。具体的な方法につきましては、いろいろ研究いたしたいと思いますが、さればといつて農業協同組合なり、何なりでそういう輸送機関を設備するということは、これは実際問題として困難かと思います。これは飽くまでも大きな力を持つておりまする会社なり、或いは連合会なりというものでやつてもらわなければならんと思いますが、そういうような点はいろいろ価格構成の面、作業の面、いろいろ考案いたしまして、各地実情に副うように一つつて参りたい、さように考えるわけであります。
  11. 北勝太郎

    北勝太郎君 現在の牛乳受入れ方は、所によつて違うかもわかりませんが、庭先で受取つておる、言換えると、自分のところの道路の入口に牛乳罐を出しておいて、それを持つて行くというのが普通なのです。そこで工場がちやんと工場費用でやつておるのでありますが、そういう実情と合わないのじやないですか。
  12. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) そういうような地方もございまするし、協同組合農民が部落々々に小さく集めましたものを、一定の工場なり或いは大きなプラント工場と申しまするか、集乳工場に持つて行くというような例もあるわけであります。内地におきましては特にそれが多いようでありますが、北海道等におきましては、只今の御意見のように、相当その点についてのシステムが、長い間のうちにでき上つていると思いますので、これは一律にどういう形態をとらなければいかんという点を割切るわけには行かんと思いますが、余りにその地方実情を無視しない限度におきまして、考え方というものと実際の問題との調和を図つて参りたいと、かように考えております。
  13. 北勝太郎

    北勝太郎君 この協同組合その他農民資本によつて生乳事業をやるのが理想だとするならば、政府はこれが育成についてどういう工合にお考えになつておるか。今仮に集約酪農地帯を作る場合に、会社にすぐやらすか、それから協同組合その他の方法農民資本でやるかということになりますと、最初会社にやらしてしまいますと、もうそこの酪農家はいわゆるその工場隷属機関になつてしまう。新たに地主と小作のような関係ができて、いろいろな紛争が絶えないと思うのであります。そこでどうしても一つ理想として、政府協同組合等農民資本でやらすとするならば、これが育成させる方法、及酪農の起る最初からそういう方針で進まなきやならんものじやないか。最初に先ずやらしてしまつてそれからのちに農民資本が進出するというのは随分無駄が多いことじやないかと思います。そういう点についてどうお考えになつておりますか。
  14. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 只今指摘の点は、実際ぶつかりました場合に非常に困難な問題を相当含んで参るだろうと思うのであります。先ほど申上げましたように、私どもといたしましては、酪農というものが基盤になるという考え方でございますので、飽くまで農業協同組合組織と申しまするか、農民共同の力による共同処理事業乳業というものを理想として参りたい、かように考えるわけでございますが、資金の点或いは技術の点、又それに伴いまする製品販売組織の点、これらの点につきまして、一概にそういうような形を実際問題として実行して参ることが困難ではなかろうか、こういうふうに思われる場合が非常に多いのであります。併しながら、考え方といたしましては、できるだけ酪農民の力というものを強く反映さしたいという考え方でありますので、その点につきましては、例えば、会社組織をとるといたしましても、できるだけ農民資本の力というものを多くそこに作用させる。併しながら、欠けております点で、全国的な販売網或いは技術点等もありますので、これらの点につきましては、それぞれ関係方面の援助を得てそこに協力させる、こういうような形態を一応とつて行かざるを得ないのじやないか。全国一律に、私どもの言うように理想の形ができるところはもう支障ないと思います。又それが一番望ましいわけであります。そこまで参らん段階におきましては、資本点等におきまして、できるだけ農民の力を参加させ、足らない点は別の方面の協力をそこに加える、こういうことでやつて行かなくちや仕方がないと考えるのであります。
  15. 北勝太郎

    北勝太郎君 農民資本等でやるものに対しては育成をしなければならないということは、政府はお考えのようでありますが、今言うように、いろんな事情から一概にはできん、これは無理からんことだと思いますが、然らばすでにやつておるところに対してはどういう方針でやるか。例えば、今北海道では、いわゆる農業資本でやつている、雪印とか、クロバーとかあるのでありますが、こういうものに対してどういう方針で行かれるか。徒らに営利資本本位のことばかり考えて、そうしてそういうようなものに対して折角でき上つて来て、而も雪印といい、クロバーといい、実は販売、宣伝その他の面について、もう農民として随分高い程度の乳製品処理販売までやつておるのでありますが、そういうものに対してどういうような育成をされるつもりかという点をお伺いしてみたいと思います。ただ、ここで私が申上げておきたいのは、非常に誤解があるのですが、雪印或いはクローバーというのは会社名前になつておりますので、恐らく営利資本会社だと考えられる場合が多いかも知れないと思います。国会なんかでも随分間違つた考え方をしておるのがあるように思うのです。それは会社という名前だからでありますが、あれは実は会社というが、本当農民資本でやつておるのであつて、いろいろな工程がありますけれども戦争前までは製酪協同組合であつた戦争中に企業合同で全部合わせられて、北海道は一本でやれというわけで、明治或いは森永というものを皆引つ込めさしてしまつた、こういうような関係になつておりますが、併し一遍に農民資本を負担することができんものだから、漸次引上げるということで、そうして明治森永の株も一時入つてつたことは事実なんです。併し終戦後明治森永の株は全部一切これは引上げしまつたのであります。そこで今はここにも表に出ていますように、直接の生産者である牛飼い農民は半分ばかり、それからその従業員が一割ぐらい、それから農業協同組合或いは協同組合連合会がこれの株を持つているのが大部分、そのほかに中央金庫の金が入つておるというわけでありまして、実は直接生産者ではないが、農業協同組合が持つておる、協同組合連合会が持つておるというような形なのです。そこで私は純然たる農民資本だと言いたい。一割ぐらい募集した株の金が入つておりますけれども、漸次買戻す方針でやつておりますので、遠からずこれは全部農民資本になる。それから又会社経営に当つておりまする役員等も、これは全部生産者農民がこれに当つておる、こういうような状況なのでありまして、純然たる農民資本だと言つていいと思う。この純然たる農民資本のものに対しまして、少しも政府関心を持たん。現在のような状況になつておるのに少しも政府関心を持つておらんように思われるのでありまして、私は非常に残念に思つておるのです。そこで全部は一遍に、一律にできんけれども、そういうような、せめては農民資本で漸やく全部の販売までやつておるというようなものに対しては、これが潰れるようなこととしちやいかん、こう思うのでありますが、それに対して政府はどういう考え方で、今のような火花を敬らすような営業者競争をさせておくのか。実除は或る程度競争はいいと思いますけれども、今のような行き方をして行ざますと、やがて農民に全部かぶさつて来る。農用は知らんものだから、今日はどこそこの会社は一円高い、今日は五円高いといつて高いほうにばかり売つてしまつて、そうして丁度猿芝居に「いも」を投げつけられたような形で農民が今くだけて行きつつある、こういうような場合に、これは政府として何か考えて手を打たなきやならんと思うのです。農民資本で折角酪農振興させなきやならんという考えを持つておりながら、それをそのままにしておいて、そうして営利業者に一部農民貸本の頭を叩かしてしまうという行き方をさすべきものじやないと私は思う。この点に対して酪農振興をするに当つて政府考え方基本方針を承わつておきたい、
  16. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 只今の御意見でありまするが、北海道は御承知のように酪農の先進地でもありまするし、又北海道にはそういう関係でいろいろ特殊な事情があるようであります。御意見のように雪印にいたしましても、北海道バターにいたしましても、資本構成なり或いは経営なりが相出内地と異つておりまして、且つは文会社という名前を持つてはおりましても、実質といたしましては協同組合組織に全く近いようなシステムでもあるようでありまして、その点につきましては内地の理論を以て直ちに北海道に徳用するという点につきましては、これに具体的の場合にはいろいろ問題があるのじやなかろうかと思うのであります。私どもといたしましても、いろいろと競争のための競争と申しまするが、不合理な競争或いは長続きのしない不当競争というものにつきましては、そういうようなことは結局は乳業というものを没落させ、延いてはそれか農民に非常な迷惑になるというようなことは、各地に今まで発生したことでありますので、そういうようなことのないように措置をいたしたいと思うのであります。本法におきましては、特に集約酪農地域につきましては、そういうような観点から不合理なる競争と申しますか、そういうものを或る程度是正ができまするように措置をとるような立法をお願いいたしておるのでありまするが、この点につきましては、集約酪農地域のみに限定せず、一旗にそういうような不当な、いわゆる長続きのしない一時的に農民を釣るよりな競争というものは、行政的な措置といたしましてもないようにいたしたいと考えております。
  17. 北勝太郎

    北勝太郎君 北海道では、今盛んに営利資本農業資本との間に火花を散りした争奮戦をやつていることは、先ほど申上げた通りでありますが、牛乳の一番盛んに需要される時期において、東京附近の千葉の話を開いても、もう営利業者のほうでは生産者乳代を下げたという話を聞くのです。而もその乳価北海道の今競争しているところと大差がないような乳価でやつておる。こういうことは常態だとお考えであるかどうか、私はこれは正常な行き方でないという工合考えているのです。そこでその点について、常態だと考えておられるのか、今北海道において乳価が高いのは或いは常態でない、今農民組織を頭を上げさせないように、潰すためにやつておるものか、どういうように観測されておられますか。
  18. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) いわゆる一時的な乳価の高い現象であるか、或いは経営的な、いわゆる合理的な乳価であるかという点につきましては、これは各地事情なり、或いはその土地経済的な全般の事情と関連いたしまして、甚だ判断しにくい問題ではないかと思うのでありますが、少くとも酪農と、それに伴います乳業、いわゆる酪農業と申しますのは、一年間或いは数年間を通じて、常時毎日々々取引をし、従つて価格というものが一時的な現象で或るときは高く、或るときは低いというような現象、而もそれが特殊の別の目的に左右されるということは、酪農振興のために有害なことではないかと思うのであります。そういう観点からいたしまして、酪農業乳業というのは御意見通り唇歯輔車関係にある、かように考えられるのであります。従つてその経済的な組織というものも、全く両者が一心同体の組織になつておることが理想的であると思うのであります。若しそれが相反した利害関係になつている場合には、どうしても只今のような現象を起すようなことが、場合によつては避けられないのでありまして、その点につきましては、日本の今までのいろいろないきさつからいたしまして、必ずしも合理的に行つていない。北海道等につきましては、その点が或る程度うまく行つてつたのでありますが、特に東京周辺につきましては、そのような現象があるようであります。ただ具体的の場合に、どこどこの乳価が特異的な現象であつたかという点につきましては、これは一々の場合にいろいろな状態をよく調査してからでないと判断が付かない、かような問題になるのじやなかろうか、ただ東京都の周辺におきましては、そういう不当な競争というものが一時行われて、それが或る程度復元作用を来たしておるというような事態も二、三見受けられるようであります。
  19. 北勝太郎

    北勝太郎君 局長さんは東京におられるから、東京のことしか御存じないようで、東京附近だけが特別に乳が下つて来ているというお話のようでありますが、東京附近では乳代は今の市乳の値段からいうと高過ぎる、実際高適ぎると私は思つておる。あんなにたくさんの費用をとらなくても、生産者に返していいはずだと思つているくらいですが、私は生産者の一員、北海道の一生産者ですから、北海道の乳が少しでも高いほうがいい、毎日一石二、三斗ずつの乳を私は出しているのですが、もう一日々々随分大きな響きが来るのです。従つて一円でも高いほうがいいのでありますけれども、併しながら、酪農経営は豚飼いや牛飼と違うのでありまして、一時の景気でこの事業を大きくしたり、小さくしたりすることではいけない、そうなりますと大変なのでありまして、これは永久計画でなければならない、それにはやはり正常な価格でなければならない。こう私ども考えておる。従つて正常な価格で、又消費者に対しても安い価格で売つて、外国品とは対抗はできんけれども、対抗ができないまでも、すべてを合理化した方法で消費者に供給するということが、生産者の我々の義務だと考えておる。そういうような意味からしまして、この乳価が正常な値段でなくて、ただ一時高いということは考えものだ。殊に北海道において聞くところによりますと、一升七十九円で買つているところもある。こういうようなことは、果して正常な価格考えられるかどうか。さつき言うような農民資本の頭を押えるために、特段なことをやつておるという工合にお考えにならんかということです。而も東京附近は市乳では非常に儲かる。農家から安く買つて売るのですから儲かる。そういうことは資本の力を以て、そういう市乳を売らん地帯の乳製品会社等に対して頭をしつかり押える、こういう行き方としか私は見ない。そこで北海道乳価が正常な価格とお考えになるかどうか、酪農の発達をさせるために、これは正常な価格で、これだけで行くべき方法だろうという工合にお考えになるかどうか。私はさつきも言う通り、少しでも高いはうがいいのでありますが、併し正常な行き方でなければならない。長続きするものでなければならない。そうでないと俄かに牛舎を作つたり、高い牛を買つたりして借金をたくさんした、その借金がたくさんになつた頃に、乳価が下る。一方征服してしまえば、営利業者は必ず乳価を下げて今までの赤字は取返すようにするのが当然のことなんであります。これは酪農の発達の上に非常に危険だという工合考えておるのでありますが、政府は、いやそうでない。北海道はあれで正常な価格だ。だからあれだけ払わすべきものだ。又ああいうような競争をどこまでもさすべきだというふうにお考えになるかどうか。私はどうしても、これは合理的なものでないと考えておる。その点についてお伺いしたい。
  20. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 酪農業が永久計画であり、従つて乳価も正常価格であり、長続きのする価格でなければならないということは全く御意見通りだと思うのであります。一時的に非常に突飛な高い値段、これは御意見通り正常価格ではないと思うのでありまして、飽くまで生産コストと申しまするか、生産費に償うような、経費に償うような価格でなければならないということは当然であると思うのであります。その意味におきまして特殊な目的のために一時的に不当な価格取引するということは、これは酪農業の永久性或いは将来長く続けて行くというような立場からいたしますれば、これは好ましい現象ではない、かように申上げて差支えないのじやないか、かように思うのであります。
  21. 北勝太郎

    北勝太郎君 果してそうだとするならば、これは私はほかのことだけ言うのじやないですが、今度は集約酪農地帯のことや、或いは酪農振興法から脅えて、どうしても農民資本から最初からやらす必要がある。そうすると、最初からそういうふうに出た場合において、途中で幾たびか営利商人に叩かれる危険があるのでありますが、その場合に政府が何かこれに対して一つ防ぐ方法を講じない限り、これは農民資本による乳業の発達というか、これが阻害されてしまうものである、こういう工合考えるのであります。従つて内地のほうにおける乳業についても、努めてこの農民資本による行き方をすべきものであると、こういう工合考えておる。先ほども技術の面において、資本の面においてと言われたのでありますが、その面において国家が食糧事情関係から、こういうような酪農振興する立場からして、或いは政府融資をするとか、或いは技術援助をする、技術もそうむずかしいものでないのでありまして、これはまあ北海道で今までやつた経験から言つても、直ちに私はできる問題だと思う。そこで最初からそういう方針で臨まれることがいいのではなかろうか、そうでなければ、今言うようなこういう危険性があつて、折角政府酪農振興言つているけれども農民が頭を上げそうになつたら叩くという手にかかつておる、而もその叩かれるのが農民に直接有利なものですから、自分の資本を食つていることを考えないで、猿芝居にいもを投げ付けるような恰好になつてしまつう、こういう工合考える。そこで基本的に政府方針がそこへ来なければならん。何も営利業者だからと言つて営利資本だけでやらす必要はないのでありまして、国家資本等をつぎ込んでやらすことがいいんじやなかろうか。折角酪農振興法をやる以上は、私はそういう方面にまで考えて行くべきじやないか。そうしてさつき言う集乳の問題等についても、進んだよい機械で運搬さして、今のような不合理な行き方をさせないようにしなくては、消費者に対して安い合理的な牛乳代で供給することはできなくなる。こう思うのであります。政府基本的なそういう考えを持つておられるかどうか、徒らに営利業者の手先になるような法の運用では、私はこれでもいいかも知れませんが、その運用について、政府はこういう基本方針だということを農民にはつきりさせるのでなければ、農民はうかうか酪農振興の手に乗つて来ない。こう思うのであります。その点について……。
  22. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 只今意見通り、これは何も酪農だけに限つた問題でないと思うのでありますが、農業協町組合等の農民団体による加工工程或いは販売工程等におきまして、一時的な利を以て、資本的な力が作用して、農業協同組合系統のやつておりますことにつきまして、いわゆる切崩しをやるというような現象は、これは酪農だけじやなしに、ほかにも相当各般の農産物の販売工程等において見られる現象だと思うのでありますが、酪農の場合におきましては、特にその辺が強く作用するのではないかと思うのであります。その点につきましては私どもといたしまして、先ほども申上げました通り理想形態といたしまして、農業協同組合等の系統組織による販売或いは処理工程をできるだけ強力に進めて参りたい。かように理想としては考えておるのでございます。そのために若し可能なことであれば、資金の面等につきましては、或いは農林金融公庫等の財政資金というものをできるだけ多額に投資いたしましてやつて参りたいと、かように考えているのであります。ただ地方によりましては、そういう力が盛上らないような地方も場合によつてはあり得ると思うのでありまするが、できるだけそういうようなところにおきましても、農民の力による処理加工過程というものについて私どもとしては努力して参りたい、かように考えるわけであります。
  23. 上林忠次

    ○上林忠次君 僕は素人で、考えておりますことは丁度今、北さんがおつしやつて殆んどもう満たされておると思いまするが、実は先般千葉へ行つたんでありますが、千葉の乳価がこれはまあ殆んど生乳で売つているのですが、安いと思う。これはまあ北海道と比べて、ああいうような辺鄙な地帯でこのバターを造つて、それで販売しているという地帯に比べてあれだけの生で売れる。而も市内に近いああいうような地方の便益のあるところで、あれだけの乳価で売られているというのは安いのじやないか。結局これはこの乳牛会社の手先になつていると申しますか、乳牛会社が、ここで儲けている。もつと高く買うてやつたらいいものを、安く買うてここで利益をあげて、ほかの地帯においてやつている自分の事業をプール計算と申しますか、安全に経営をしているのじやないかという気がしたのでありますが、なぜもつとそれじや高くするように、若しも会社が安くしか買わないなら、我々の資本で、農業者の資本一つ経営したらいいのじやないかということを言うのでありますが、なかなかそれができない。市乳は、集荷にしましても、ああいうようなあすこに一頭ここに一頭というように飼養しておりますような地域では集めるのにむずかしい、又これを配給するのもむずかしい、そういうような考えではなかなかできないというようなところで、その弱点をつかまえて会社が頭を叩いているのじやないか。全国のシテイ・ミルクとそれから乳製品原料のミルクの値段の状況を見ましても、大体一升五十円から六十円の間、少しはシテイ・ミルクのほうが高いのですが、余り差がないのじやないか。もつと高く買うてやつたらいいのじやないか、それじや自分の力でやつて行こうと言つても、先ほど申しますようなことで、集乳或いは配乳ができないというようなことで、そういうようなことで弱点があるのだ、結局全国を股にかけている会社におきましては、この生の乳の地帯で儲けて、それで以て乳製品を製造する地帯では割高で会社でうまく経営しているのじやないか。とてもこれに太刀打ちできない、農業者の資本としては太刀打ちができない。それがために北海道では相当大きな競争をやつているのじやないか。この際農林省としては、こういうようなシテイ・ミルクの地域をもう少し発展させる手を打たなくちやいかんじやないか、私そういうようなことを痛感したのでありますが、まあこの酪農地域をやられますにしましても、現在のところは最も効果のあるああいうような草地の多いところを地帯に選んでおりますが、現在のシテイ・ミルクが相当売れるのじやないか、まだ足らんのじやないか、先ずそこらに相当力を入れなくちやいかんじやないか。而もそれらの地域農業者の資本でやつて行けるような会社を作るなり、或いは融資するなり、目先の問題はそういうところに手を加えるべきじやないか。現在、農林省で考えておられるような計画で行きますと、結局、生乳の地帯がうとんぜられて、北海道地帯、或いは山岳地帯はこれで一時潤りが、将来どうなるか、全国の地域を股にかけた会社、市乳と原料ミルクとプールしたような経営をやつておる会社に対して、先ほどから言われておるように、利益を与えるのじやないか。而もいい条件で現在競争させるようなことになるのじやないかという気がするのであります。今のやり方で行くなら、結局農業資本を押える酪農奨励になるのじやないかという気がするのですが、先ほどもちよつと北さんの質問に対して、ぼうつとした感じのお答えを聞いておりますが、もう少し農林省が、この際もつとシテイ・ミルク区域に力を入れなければならないのじやないかということに対しまして、突込んだ御返答を願いたい。
  24. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 市乳地帯の問題でありますが、この酪農振興法によりまする集約酪農地域につきましても、これは決して市乳地帯を除外している意味じやないのであります。本法の狙いといたしておりますのは、飽くまで購入飼料というものに頼ることなしに、月給飼料を以て酪農を営んで行こう、こういう根本的な考え方にスタートいたしまして、飼料資源に恵まれておる集団的な地域を中心といたしまして、そこに只今いろいろあそこに一頭、ここに一頭というようなお話がありましたが、そういうようなことでなしに、全体として飼料資源に恵まれておる地域を中心にいたしまして、その地域酪農を集中的に導入いたしましてコストを下げて行こう、従つてその地域が、いわゆる山間地帯も勿論ありますが、都市近郊等におきましても、いわゆる飼料資源に恵まれておる畑作地帯におきましては、これは当然市乳を一つ目的といたします集約酪農地帯を設定するということを前提にいたしておるのであります。なお只今お話のように、農民的な組織と申しますか、酪農民がいわゆる商業的な資本というものに操作をされるというような点もありまするので、集約酪農地域のみならず、東京、大阪筆の大市乳消費地帯におきましては、できるだけ農民組織を強固にするというような考え方から、生産者組織等につきましても、寄り寄りその組織方につきまして考究をいたしておるわけであります。
  25. 上林忠次

    ○上林忠次君 大体現在どう考えられますか。又市乳が不足しておるんじやないか、先ずバターを造る原料乳の獲得よりも、市乳をもつと発展させなければならんのじやないかと思うのです。その点はどういう工合考えられておりますか。それからもう一つは、先ほど申しましたように市乳の値段が安いじやないか、ああいうような都会の近くで得られる乳の、まあ運搬費にしましても配給費にしましても案外安く付くはずであります。それが案外高くて、まあバターの原料に比べて安く買われているという点でありますが、割安に買われておるんじやないか、この点をどういう工合考えておられますか。
  26. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 市乳が足りないんじやないかという御意見と拝承いたしまするが、御承知のように乳牛の飼育の場合に、市乳という形体で消費いたしましたほうが一番栄養的に見ましても、いろいろな面からいたしましても、最も合理的であるのであります。従つて我々といたしましても、できるだけ市乳の生産、市乳の消費というものが多くなるように期待いたしておるわけでありまするが、然らば現在市乳が足りんじやないかというような御意見、これは誠にその通りじやないかと思うのであります。ただ御承知のように、夏場と冬場との市乳の消費に相当の逕庭があるのであります。夏場は非常に不足をし、冬場は或る程度過剰な状態を現出するというのが現実の姿であるのであります。勿論これらの日本におきまして特有な現象は、生活水準と申しまするか、国民の消費の慣行が一年をならして消費されるようなふうに向いております現在におきましては、だんだんとその傾向は少くなくて参つておりまするが、とにかく夏場は不足であり、冬は過剰であるというようなふうな状態を来たしております。併し全体の問題といたしましては、我々といたしましてもできるだけ市乳の生産増加と市乳の消費増加を期待いたしておる、かように考えておるのであります。従つて生産者のいわゆる原価生産コストを割らん限度におきまして、できるだけ末端の消費者価格を引下げるということが市乳の消費量を増加させる根本的の原動力でありまするので、その意味合におきまして、市乳地帯等におきましても集約酪農地域を設定いたしまして、できるだけ自給飼料によつて大量に市乳を生産する、市乳生産費にいたしましても、運搬費にいたしましても、或いは配給費にいたしましても、できるだけ単価を切下げまして、多量に市乳を消費してもらう、こういうような構想をとつて参りたい、かように考えております。
  27. 上林忠次

    ○上林忠次君 ところが現在やつておられます方式で行きますと、乳製品の原料乳地帯を育成するという方向に向いておるんじやないか。近くに先ず目を付けなければならないんじやないか。今の粉食の奨励にしましても、先ず乳を安く提供するということをやつてもらわなければならん、案外市乳は高い、その割に農家から買上げる市乳の値段は安いじやないかというような気持がするが、バターの原料は、これは外国の市場との振合もあつてそうこれは高くするわけには行かん、市乳のほうはもう少し高く買うていいやつを買わない、そうしてその利潤、利益を以て北海道あたりのバター原料の地域の乳が相当高くなつているんじやないか、それが先ほど申しましたように全国の会社が有利な地位にあつて農業資本の組合経営乳業会社乳業商社とが競争しているというのが現状じやないか。もう少し市乳地帯を育成するということが先ず農林省のとらなければならん点じやないか。アメリカあたりでも二十年ぐらい前は盛んに市乳の販売奨励をポスターを出してやつておりましたが、日本のほうではそういうような奨励もしない。片や粉食を盛んに奨励している、片手落をやつておるんだが、先ず目を付けるのはシテイ・ミルクの消費の向上、消費の増加というところにもつと目を付けなければならんじやないか。どうも行き方がちよつと的を外れた行き方じやないかと思うのですが、そういうふうにお感じになりませんか。
  28. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 集約酪農地域は原料乳地帯に限ると申しますのは、あのジヤージー種を導入いたします地帯は大体原料乳地帯に限定いたすつもりであります。と申しますのは、ジヤージー種につきましては、原料乳に適しておりまして、勿論市乳にいたしますれば、もつとそれがホルスタイン種より市乳価値が多いのでありますが価格等の関係からいたしまして、市乳に廻しているよりも原料乳にいたしましたほうが採算的にいいのでありますから、従つてジヤージー種につきましては原料乳地帯に限る、こういうふうに考えまして、集約酪農地域中のジヤージー種地帯は原料乳地帯に限定いたしたいと存じますが、市乳地帯につきましては、これは大体ホルスタイン種を中心とした集約酪農地帯を建設して参る、こういうふうに考えております。従つてその点につきましては、市乳を対象といたしました集約酪農地域は、これは都市近郊におきましても飼料資源に恵まれておりまして、地方経済的な実情からいたしまして、酪農を以て立つたほうがよろしいというふうな地帯につきましては、ホルスタイン極を中心としまして集約酪農地域を建設して参りたいと思います。
  29. 上林忠次

    ○上林忠次君 先ほどの問題が残つておりますが、値段の問題ですね、もつと高く農業者から乳を買えるんじやないか、市乳地帯はそれに対してどうお考えになるか。若しもつと高く買えるならもつと棚密な産地が形成できる、革地が少くても購入飼料で相当飼えるという余地があるんじやないか。現在それを会社に任しておるために、会社が市乳地帯で儲けたもので向うの乳製品の原料地帯の経営をやつて行く、そういうような酪農経営会社に任しておるからいけないので、市乳地帯の乳業者にもつと楽な飼育ができるように何とか手を打つて行かなければならん。融資のほうもあるし、こういうふうま生産業者ばかりの会社を作らせるというような展もあろうかと思いますが、その辺の手が打つてないんじやないかと思うのですが。
  30. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) それらの点につきましては、どうしても酪農振興させますためには、農民の期待いたしまする価格によつて生産されました牛乳が提供されるということが是非必要であると思うのであります。従つて今後におきましては、売買取引につきましては文書化を励行いたしまして、そうしてできるだけ協同組合組織によりまする収入システムを励行して参り、団体契約等を締結させるということによりまして、一方的に買叩かれるということにならないように措置をして参りたい、かように考えております。それも本法一つの狙いとなつておるわけで、あります。
  31. 上林忠次

    ○上林忠次君 とにかく結論は北さんのおつしやるのと同じですが、勿論原料乳地帯の乳価が高くなるというのは有難いことですが、こういうような全国を相手にしたような、而も我々生産者のタツチできないような市乳地帯の利益、この利益を元にして原料乳地帯のほうで生産者関係している組合と競争して、不利な競争をさせている。これがいつかは反撥が来まして、そういうような地帯の乳価も又がたんと落ちるのじやないか、又落ちる時期が来るのじやないか、そういうようなことが見えるなら、それに対する方策も今から講じておかなければならんじやないか、又市乳地帯生産者をもつと有利に導いて行くような方策を、今のうちに農林省も講じておかなければならないのじやないか、今のところ、そういうような地帯の乳業に対しては殆んど手放しで行つているという感じがする。私らはちよつと千葉を見たわけでありますが、もつと有利な価格が出るべきだ、ただ配給がむずかしい、手が出ないというところで、結局会社に利益を壟断されている。その壟断された利益が北海道のほうで、有利な地で生産者資本競争されている。そういうようなことをやつているのは農林省が打つべき手を打つてないためではないか。市乳地帯と原料乳地帯の資本関係、市乳の買上価格と原料乳地帯の乳の買上価格、この関係なんか見てみますと、そういうようなことが痛切に感じられる。こういうようなことも御参考に、一つ永久的な、恒久的な乳業地帯の発展ということを企画して頂きたいと考えるわけです。
  32. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  33. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 速記を始めて下さい。  それでは休憩いたします。    午後零時三十九分休憩   —————————————    午後二時四分開会
  34. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは委員会を再開をいたします。  午前中に引続きまして酪農振興法案の御質疑をお願いいたします。  ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止)
  35. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは速記を始めて下さい。
  36. 松浦定義

    ○松浦定義君 大体この酪農振興法の内容につきましては、最もその権威者である北委員から、相当広範囲に亘つて質問がありましたので、余り詳しい点についてわからない我々が申上げる必要がないと思うのですが、どうも昨日農林大臣の答弁或いは局長等の答弁等を見ておりましても、素人目に見ても、どうしてもこれは表題のごとき酪農振興目的とする法案であるかないかということについては、まだ私ども本当の心構えができないわけでありますので、一応二、三の点について私はお伺いしたいのですが、昨日江田委員も相当強くこの点は指摘されておりました。酪農振興目的についてということで相当御意見があつたようですが、私は更にこの点をお伺いいたしまするのは、今日までに恐らく日本農業の中心をなす問題等から見ましても、如何にこの酪農が必要であるかということは、まあ申上げるまでもないのですが、そのことの長い経過からして、今回この酪農振興法案なるものを提出をしなければならん、こういう事態になつたと思うので、昨日の農林大臣意見等から聞きますと、現下の我が国の食糧事情という点について非常にウエイトが強いといつたような御意見があつた。私はこれはまあ尤もだと思うのですが、この食糧事情のために酪農振興をさせるということは、例えばパン食をするためにバターを必要とするというようなことによつて食糧事情を緩和するのか、或いはこの酪農振興することによつて、例えば有畜というような意味合から本当農業というものの生産を高めて、そのことによつて食糧の完全な増収を図るというふうにするのか、どういう意味でこの食糧事情というものについて、この酪農振興法なるものが直接に影響があるかというようなことについて御方針を先ず承わりたいと思います。
  37. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 本法目的に関してでありますが、本法目的に関しましては提案理由にその詳細を説明いたしておるのであります。我が国の酪農は、御承知のように発展の歴史と申しましても、諸外国に比べまして極めて浅いのでありまして、そのために酪農振興基盤と申しますか、その点につきまして、いろいろ欠けておる点があるのでありますが、そのうち最も重大でありますのは、農業と完全に結び付いたところの酪農、こういうような点が極めて浅いのであります。御承知のように、酪農振興目的につきましては、大体三つに要約することができると思うのであります。第一は農業経営の安定に資するということであります。第二点といたしましては、酪農によつて農地の地方を増進する。それによつて食糧そのものを増産して参るという点が強く要請されるのではないかと思うのであります。等三といたしましては、総合食糧としての酪農製品、これによつて全体の食糧を賄う、この三つの大きな眼目があるのでありますが、そのうちいずれにいたしましても、これが全体といたしまして第三の点であります酪農による地力の増進を通しての農林物資の増産或いは酪農そのものによる酪農製品による食糧の総合的増産、これにいたしましても結局は大きな目的といたしましては、酪農業による総合的食糧増産、これは何も現在の食糧問題の解決のみならず、我が国が基本的に持つております食糧の資源の不足というものを補いますためには、日本としてどうしても将来長く日本農業政策の基本的命題として解決して行かなければならん、強力に推進して行かなければならない問題ではなかろうかと思うのであります。私どもといたしましては、飽くまでも農業一体をなした酪農を増進することによりまして、一面におきましては農業経営の安定に資すると同時に、他面におきましては我が国の総合的な食糧問題を解決して参る。かよううに考えまして、その基盤をなしまする集約酪農地域の設置の問題、或いは牛乳取引の問題、或いは乳牛等に関しまして、勿論本法によりまして、すべての問題を解決し得るわけには参らんと思います。我が国で最も欠けておりますいわゆる非常に乳牛の飼育密度の稀薄な点を先ず解消して参りまして、酪農に適しております飼料資源に恵まれた地帯を中心といたしまして、その地に強固な酪農を打立てて参りたいということが一つの大きな狙いとなつておるのであります。
  38. 松浦定義

    ○松浦定義君 今局長の御答弁を聞きますと、非常に一々御尤もな御答弁で、我々もそうありたいと思うのですが、然らば酪農振興法なるものを本年から制定するとしまして、この問題については前回にも北委員からそれぞれこの乳牛なるものが本当にみずから乳を生産し、それが農業経営の上に影響があるというのは、相当の長い期間を要するというような御質問があつたようでありますが、こういう問題は別といたしましても、今考えておられる集約酪農地区の設定につきましても、恐らくこの問題が投げかけられまして、酪農民は言うまでもなく、今日酪農を主としていない地帯におきましても、こういう制度があるならば、この点を是非この地域に入れてやりたいという意見が全国的にあつて、恐らく今年等の地域の設定については、農林省としても相当これを決定するには面倒な点があるのではないかと思うのであります。従つて日産百五十石といつたような相当大きな考え方を持つといたしますならば、なかなかそれまで口は一年や二年では到達しない。今申上げましたように、全国の酪農民の要望に対してほんの九牛の一毛にしか過ぎないような地帯しかやれない。それが今申されたように法律化して、立派な国の酪農振興になり、或いは又食糧自給態勢の基本にもなるといつたような大きな看板であるとするならば、私は非常に面倒性があると思うのですが、予算面においては余りはつきりしたことはまだ明確にされていないようであります。ただこれはないよりいいのだということならば別であります。考え方によつては、そのことによつて一部の酪農地帯が非常に急速の進歩をし、一方は進歩しないというようなことになりますと、結果的に見て、日本全体から行けばさしたる振興にならなかつたというような結論になるのではないかということを恐れるわけでありますが、そこで私はこういうことを立法化される前提として、無論農林省は長い商かつの御研究から出たと思うのですが、有しそうだとすれば、私は時期が遅れたと思う。終戦の混乱の中であの食糧の足りないとき、或いは農民が非常にいろいろの面で困つておるときに、少しでもこういうような温かい手を差延へることができたならば非常によかつたと思うのですが、まあ延びてしまつたということについてはいろいろ意見かあると思います。併し現実、午前中にも北委員が申されましたが、業者が不当な買あさりをやつておる。これが立法化されるということを前提としてこういうことをやつておるのではないかと考えられるのであります。そこで私はこの立法化に至るまでの経過として、やはり酪農業者といつたものが早くからそういうことを察知しておつたのではないか、こういうことが私は観われるわけであります。過去におきましても、例えば麦類の統制が撤廃になるとき、或いはその直前におきましては、製粉業者或いは精麦業者が不当な運動費を使つて、この統制撤廃の片棒を担いだというようなこともあつたわけであります。そういう意味合から考えて参りますと、この酪農振興法ができることによりまして非常に酪農民はそれに熱意を持つて来る。できるだけのことを政府は当然やるであろうが、取りあえず乳量においても相当の確保ができ、従つて戦争前或いは後におきまして、いろいろ企業整備よつて締出しを食つてつた。特に問題になつておる北海道における森永等は、一方的に森永だけが進出を続けておるのですが、森永にして見れば、進出じやなくこれは復帰だと言つておる。これは戦争中の一つの犠牲として、我々は撤退を余儀なくされたので、こういう時代になつて来たから出て来たのだということを言つておるが、あたかも現状における酪農業者、或いはそれを支持しておつた酪農民の一部におきましても、森永に対して不当な進出だということを言つておる。ところが私は、そのことは別といたしましても、すでにこういうような立法化を前提として、そういう業者が進出したということは、いろいろ今後において政府としても私は責任があるのじやないかと思う。例えば森永等のごときは、工場が建つてしまつて、いよいよ操業をする、看板をかけるまでは何の会社かわからないような形でやつてつた。いよいよ看板をかけるようになつたら、ああ、これは森永だということになつてしまつたということは、はつきりしておる。そういうようなことまでやつて、業者の間でも競争した、又競争するような目的にあるこの立法化というものが、未然に……、目の前で見ておるというようなことからしますと、これが若し今後政府として立法化しました後においては、業者と生産者との間のトラブルというものは、当然私は責任を負うべきであると思う。それで今、先ほど午前中に挙げましたように、こちらが五十円で買えばこちらが五十五円、ちよつと話をすれば五円ずつ上つたということで、現在ではもうとことんまで行つておる。従つて値下りを来たしておるということは、北海道では、まだこれから建設しようという新らしい地帯に対して、工場がどんどんできかけておるという実情から、牛乳生産者はどつちに行つたらいいか、もうちよつと待つていれば高く売れるのだからということで、ただ目先のことだけで非常に苦労しておるようでありますから、そういうことから考えますと、この立法化というものが、国全体におきまして、先ほど申されましたような、三つの原則が満たされるならいいけれども、ただ単なる、すでにやつてつた者が非常に不振をしておる。その不振挽回の一助にしかならないという形で、若しやられた結果がそういうようになるのならば、私はこれはいろいろ業者擁護のための振興法であるというような批判を受けても仕方がない、こういうふうに思われるのでありますが、こういう点については全然、業者がそういうような進出をする場合に、何ら政府としては、無論何ら関係しなかつただろうと思うが、放任しておいて、今こういう結果になつてしまつた、併し生産面はどんどんとこの法律を適用された地帯においてはあらゆる手を尽して努力するであろう。併しまあ最後に来ますと、いろいろの情勢等から見まして、価格の面についてもこれ以上変えられない、どんどんと値下りをする、工場も閉鎖する、閉鎖するより仕方がないから、まあ安くても出すというような形で、むしろ逆に今度は酪農民が搾取されるような形になる。牛飼が時間的にいつても非常に苦労するわけです。私も乳牛を飼つた覚えがありますが、このくらい一日中時間を潰してやらなければならんことがあるから、こういう面を十分お考えになつて、立法化に至るまでの措置として誤りがなかつたかどうか。こういう点をお伺いしたいと思います。
  39. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 只今の御意見の点でありまするが、本法立法化の過程において、いわゆる不当な競争を誘発するような事態を生ぜしめなかつたかどうか、こういうような御意見でございまするが、いろいろ私どものほうで、酪農振興基本的な考え方或いはそういうことをいろいろとやりまする場合に、民間団体等の意見も十分に参酌する必要がありまするので、立法化いたしまする過程におきましてはいろいろ団体或いは学識経験者、そういうようなかたの御意見も種々お伺いいたしたのであります。その結果結論を得まして、政府原案として提出いたしたのでありますが、その過程におきまして、或いは政府の意図を予察すると申しますか、そういうようなことで予察いたしまして、特別の操作をいたしました方面が、必ずしも絶無とは、これは断言できない、かように思うのであります。私どもといたしましては、御意見通り酪農はいわゆる恒久的な計画でありまするので、酪農そのもの農業本当一体となりまして、地方農業が繁栄いたしますように、集約酪農地域を設定いたすつもりでありますので、一時的な不当競争、こういうようなものはできるだけ防止して参りたい、かように存ずるのであります。ただ半面、集約酪農地域に指定した地域につきましては、独占的な弊害というものが考えられますので、その方面の取捨選択、計画の樹立につきましては、いろいろ各般の事情を考慮いたしまして決定すべき問題ではないか、かように考えております。
  40. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) ちよつと申上げますが、衆議院議員の川俣さんが見えておりますから、修正の部分について御質問があれば……。
  41. 江田三郎

    江田三郎君 第一条の修正をなさつたわけですが、この修正によりますと、ただ集約酪農地域振興というだけでなしに、この修正の文句から受取る感じは、その他の地域の、一般的な酪農の普及発達というようなことを目標としておるようにも受取れるのですが、修正なさつたほうの意図はどうでございますか。
  42. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) お説の通りでございまして、命題を酪農振興法と謳つておりますが、一点は集約酪農地域を指定し、一点は牛乳取引規定いたしておるだけで、これで以て酪農振興法だというのは、ややおこがましいので、表題だけでも変えるべきではないか、いわゆる集約酪農地域以外の有畜農家創設の基本でありまする農業経営の健全化ということを目途におきまして、農業経営の健全化のために酪農振興を行うのだ、こういうことで地域を拡大して考えておるわけであります。併しながら、それでは法文の中にそれを盛り込まなかつたではないかというそしりを受けると思うのでありますが、そこまで十分な改正を行うことができなかつたのであります。併しながら、目的の中にその点は明らかにいたしまして、将来改正の余地を残しておる、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  43. 江田三郎

    江田三郎君 そうすると、まあ川俣さんも率直に認められたように、目的だけは拡げたけれども、中身までは手が付かんと、こういうことになりますと、それでは余り中身を伴わんのに、目的ばかり変える必要はないではないかということも言えると思います。特に私ども本年度の予算を見て行きますと、集約酪農地帯でなしに、一般の酪農振興に使われておる予算というものは、いわゆる酪農振興として出ておる予算は、昨年度八十万円、本年度はそれが僅かに四十万円、それから農林漁業金融公庫の資金の貸出計画を見ましても、何を見ても、一般的な酪農振興の予算というものは、昨年度よりも悪くなつておるのでして、そういうようなときに、そういう現実を放つておいて、この目的だけを拡大されると、いわゆる羊頭狗肉のそしりを受けんとも限らんと思うのですが、さようなことについては本予算年度の間に、何かこれに看板に偽りのないような措置をすることを政府のほうからでも確約でもおとりになつてつたわけですかどうですか。
  44. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) 御質疑のような点について、衆議院農林委員会もやかましく政府に迫りまして、補正予算又は三十年度予算においては十分本法目的を達成するような予算的措置を講ずることという言明を得ましたので、この部分だけの修正にとどめたわけであります。従いまして、第一条は将来の予算編成の上に制約を加えたものと、こういうふうに御理解頂きたいと思います。
  45. 江田三郎

    江田三郎君 政府のほうは只今の川俣議員の言われることをその通り御承認なさつているわけですか。
  46. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 只今の御意見通りであります。
  47. 江田三郎

    江田三郎君 それから第十九条の修正をされておりますが、その際農林大臣に対し、この協定案作成の困難なときに「農林大臣に対し、助言、資料の提示その他必要な協力を求める」こういう修正をされていますが、この協定案作成が著しく困難なというのは、恐らく問題になるのは価格の問題だと思うのでして、それに対して助言を求めるというのは、具体的には修正者としてどういう内容の助言ということを考えておられるのか。これで「省令で定める手続に従い、」と書いてありますけれども、これは修正ですから、それに伴う資料が私どものほうでは政府のほうでどういう省令をやるのかわかりませんが、少くとも私たちが考えるのは先ほど申しましたように、価格の問題というのが一番困難な問題であろう、これに助言を与えるということになると、一番肝心な点は、将来乳製品の市価がどうあろうと、或いは餌がどうあろうと、とにもかくにも、この法案酪農振興法という以上は酪農の農家の生産費が完全に補償されるということでなければこの意味がないのじやないかと思うのですが、そういう点について修正をなさつた川俣さんのほうでは、具体的に何を考えておられたかこれをお聞きしたいと思います。
  48. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) 御尤もなお考えでございまして、私ども同様なことを考えます。従いまして、政令を以てその点を明確にいたしまして善処するようにということを政府に要望いたしておるのであります。その修正要綱につきまして、政府から案が出されておりますので、お聞き取り願いたいと存じます。
  49. 江田三郎

    江田三郎君 そうすると、省令の内容も、修正者のほうでかようなことを省令できめるべきだという意思表示をはつきりなさつたわけですか。
  50. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) さようでございます。
  51. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 第十九条に関する衆議院の御意見は、只今川俣委員よりお話がありました通り、いろいろ斡旋の場合に、斡旋の前提をなしまする紛争には、いろいろな形態があると思いますが、紛争の中心は、御意見通りに、価格に関する問題がその中心点をなすのではなかろうかと、かように考えるのであります。従つて価格の問題の場合に、それをただ単に地方にのみ任じておいたのでは解決のできない困難な問題が発生して来る。従つてその場合に、どうしても中央がそこに何らかの協力をいたさなければ実際問題として解決困難ではないかという御趣旨の下に、第十九条が修正に相成つたのであります。従つて紛争の場合場合によりまして、中央の専門委員と申しますか、酪農審議会の専門委員として地方に派遣されまする委員の助言の方法はいろいろあると思うのでありますが、価格問題もその中の一つの大きな項目になつて参る、かように存ずるのであります。この第二項に謳つてあります省令の問題でありますが、これにつきましては、地方長官農林大臣に申請するという一つの手続を定めているというふうに御了解を願いたいと思います。
  52. 江田三郎

    江田三郎君 そこでこの答えだけでなしに、今私がお尋ねしたのは、助言というとき、問題が起るのは価格の問題で起るのであろうと思う。そういうときに、酪農振興法の目的から言つて、当然生産農家の受取るべき価格というものは、生産費を補償されたものでなければならんはずであるが、そういうことを提案者は意図されてここに書かれたのであるか、又政府のほうも、そういうことを考えておるのかということを聞いておるわけです。
  53. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) 価格の問題が一番中心になることは江田委員の御指摘通りであります。大体私ども生産費を基準にしなければならないという考え方は一貫しておりますが、これは御承知のように、地域によつて相当の差がございまするので、生産費と申しましても、地域的に生産費が異る場合も出て来るであろうと思います。そこで基本としては、生産費を賄うに足るものでなければならないという原則はお説の通りだと思います。お説の通り考えて立案いたしたものであります。
  54. 江田三郎

    江田三郎君 政府のほうはどうですか。
  55. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) これは昨日も江田委員から質問された事項でありますから、明確な御答弁を願いたいと思います。
  56. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) その点につきましては、只今川俣委員より、修正になりました内容につきまして御発言の通りであります。政府といたしましても、中央で助言をいたします場合に、価格問題につきましては、少くとも酪農の再生産を補償するような価格というものは、これは飽くまで最低のものじやないか。これを下廻るようなことになつては、酪農そのものが、経済的に経営して行けないという問題になりますので、少くとも再生産を維持するような生産価格というものは、これは補償するという前提の下に、価格問題についての、いわゆる斡旋というものについては、その点は最低線として堅持すべきものじやないか、かように考えたわけであります。
  57. 江田三郎

    江田三郎君 そこでもう一つ具体的に聞きますが、政府のほうから出された資料によりますと、酪農家の平均手取が二十九年二月の市乳の場合で、高いところが六十七円六十四銭、安いところはそのときに四十四円四十八銭、乳製品の原料乳の場合に、高いところが六十六円五十七銭で、安いところは四十円というような数字が示されておりますが、勿論地域々々によつて、草の問題その他飼料の問題、いろいろ違いますけれども、それにしても、六十七円六十四銭と四十四円四十八銭であるとか、六十六円五十七銭と四十円というのは非常な違いがあるわけです。それをこの修正案によつて政府のほうがそういうときには助言をなさるということになると、我々はもう一歩進んで具体的に聞きたいのですが、大体あたな方のほうから出されておる資料による乳価というものが、現在の餌の相場その他から考えて、生産費を償つて再生産が可能であるとお考えになつておりますか。
  58. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 御承知の通り酪農形態におきましても、地域によりまして、自給飼料によつて経営いたしておりまするところ、或いは殆んど大部分というものを購入飼料によつてつておりますところ、或いはその中間的な過程にありまするところによりまして、生産費というものが大きく作用いたしますると同時に、乳牛の飼育密度がどの程度にあるかということによりまして、集荷されましたもののコスト計算というものか相当に違つて参る、こういうような事情があるだろうと思うのであります。で、私どもといたしましては、その点につきまして、できるだけ自給飼料によりまして、而もばらばらに飼育することなく、集中的に飼育いたしまして、それによりまして、いわゆる牛乳生産費を切下げますと同時に、集乳費等もできるだけ引下げて参りたい、かように考えるのでありまするが、それは地方地方によりまして、現在の段階におきましては非常に差異かある、かような恰好に相成つてつておるのであります。現在のところ特殊の地帯におきましては、相当高乳価のところもありますし、又地方によりまして、乳牛が非常にまばらに飼育されておる地帯におきましては、そこまで至つていない、非常に安いというような地帯も見受けられるようでありますが、これらのことに対しまして、我々といたしましては、今後いろいろ紛争の起きます場合には、勿論全部の地点について一律にどういう価格ということはなかなか困難じやないかと思うのでありますが、その地方の実態に即し、農業経営の実態に即し、或いは集乳その他工場の実態に即しまして、少くとも生産者に適当な価格、即ち再生産を償わないような価格になることは極力これを避けるという意味でそういう点は最低の条件としての斡旋委員の態度ということになるのではないかと思うのであります。
  59. 江田三郎

    江田三郎君 それは答えになつていないのです。そういう原則はよろしいのです。その原則から照し合せて、今の配られた資料による乳価生産費を償つていると考えておるのかどうかということなのです。地域々々によつて違うことは百も承知しております。あなた方が地域々々に各府県別の一升の平均支払乳価というものを出しておる、この表に出ている数字で、一体生産費が償われているのだ、再生産が可能なのだと畜産局は考えているのかどうか、これを聞いているのです。私ども酪農家から聞くところでは、今のような餌高では、こういう乳価ではやつて行けないのだということを言つて来られるから、それをあなた方のほうはこれでいいのだということになると、その助言の内容について、どうも私どもとしてはそういう態度では酪農振興法じやないじやないか、これは乳業資本振興法になるのではないかと、こう言わざるを得ないのであります。そこで若しこれで償わないということになるならば、現在の中間経費或いは乳製品や市乳関係の業者の販売費とか、宣伝費とか、そんなものをもつと削る余地があるのじやないか、こういう助言をする場合もあり得るわけです。根本的なあなた方の考えを聞きたいのであつて、抽象的な答えはもういい。具体的にどう思うかということです。
  60. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) これは飼料の価格、飼料にいたしましても、いろいろの種類があるのでありまして、従いまして、どういう飼料でどういうような飼育の仕方をしているか、或いは何頭飼育をしているか、又飼育いたしまする農家の労働条件がどういう状態になつているかということによりまして、いろいろと差異があると思うのでありまするが、現在におきましては、中心的な飼料をなしておりまする「ふすま」が相当投機的な状態になつておりまするので、現在のところ多少苦しい地帯もできておるのじやないかと考えられますが、全体といたしましては、大体において、なお再生産費は償なつているのじやないかと考えておりますが、相当飼料の事情或いは地方による乳牛飼育のやり方等によりましては、或る程度生産費を食込んで参ると思いますから、その点苦しい点が出ておるのじやないかと考えております。
  61. 江田三郎

    江田三郎君 この農家というものは牛だけ飼つているのじやないですから、たとえ酪農のほうで赤字を出しても、ほかのほうで埋合せをしたりして、まあ場合によつては娘を売ることもあるかも知らんが、ともかくやつているわけです。併し今それだからといつて、そういう形でやつているのだからやれるはずだというのは答えにならんので、そういう点は今あなたもお認めになりますように、これで足の出るところがあるかも知れんというようなときに、又しても乳価の引下げということは出て来ると思うのです。バターを入れたり、いろいろな外国製品を入れたりしている、こういうことをやつて来られたのでは、必ず乳価の引下げというものが出ると思うのですが、そういうときにあなた方のいわゆる再生産を可能ならしめる生産費を償うだけの価格を補償するのだということになれば、当然中間経費なり、販売宣伝費なりの圧縮ということに触れて来なければならんと思うのですが、そういうような助言をなさる必要がある場合には、そういう助言をなさる用意がありますか。それともそういう業者の販売費なり宣伝費なり、ああいう厖大なものは必要欠くべからざる経費と考えておられますか、これは同時に修正者にもお聞きします。
  62. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) 江田委員の御質問の通り、なぜこういう中立的な斡旋委員の活動を、更に拡大して期待いたしたかと申しますと、乳業資本家のために酪農農家が不当な圧迫を受けることをできるだけ排除したいという考え方でおるわけであります。従いまして、そこに紛争が生れた場合には、公正な考え方で、而も原則は江田委員の御質問のように、再生産を十分賄うような観点に立つて、併しながら、実情において非常な力を持つている乳業資本に圧倒されるような場合に、それを阻止いたしたいというのが生産者の立場であるのでありまして、そこに恐らく紛争が起るであろう、この紛争を一方的な経済的な力で押付けることのないようにいたしたいという考え方で、ここに修正を加えたわけでございます。特にこの法案が出ましてから、乳牛の値上りや又は飼料の値上りによります結果を招きますというと、却つて酪農振興どころではなくして酪農を衰微させる結果にもなりまするので、こういう乳価取引を公正にすると同時に、一面におきましては乳牛価格の高騰、飼料の価格の高騰を行政的に十分考慮しなければならないであろうことを指摘いたしております。ここではいわゆる乳業資本家からの圧力を、公正な斡旋委員によつて乳価を正しくいたしたい、こういう考え方で作つたものであります。
  63. 江田三郎

    江田三郎君 具体的に聞いているのですよ、今の川俣さんの答弁も、川俣さんにしては少しぼけていると思うのです。どうも年を取られたかげんか知らんけれども、もう少しはつきりしたことを私は聞いているのです。
  64. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) 江田委員に申上げますけれども、私の個人的な意見はここでは控えたいので、かなりぼけております。委員会全体の意見を申しております。
  65. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) この点につきましては、御意見のありました通りに、酪農乳業と申しますのは唇歯輔車の関係にありますので、共々に発展して参らなければならない性格のものであると思うのでありまして、生産費農民自身が償わないような場合におきましては、乳業自体の問題といたしましても、結局乳業というものは酪農によつてつておると、こういうようなことになりますので、先ず生産者自体が、酪農が成立しない場合には乳業そのものも没落をすると、こういうような事態に相成ると思うのでありまして、そこは双方が協力して参らなければならないじやないか、かように考えるのであります。従つてその根本といたしましては、飽くまで酪農農民の再生産を償うような価格構成というものが、先ず最低の前提として考えられるべき筋合のものである、私はこう考えておるのであります。勿論乳業資本等におきまして、いろいろ宣伝等をやつておる場合も見受けられますが、これは消費増という意味合におきまして、消費宣伝という意味合におきまして、必ずしも一概にこれを非難すべき筋合のものでもないのじやないかと思うのでありますが、いずれにいたしましても酪農というものは乳業の成立の前提条件でありますので、中間工程としてのいろいろな諸経費はできるだけ切り詰めて頂いて、その上でいわゆる酪農農民の再生産を償うような価格をきめる、こういう協力的な態度というものが必要ではないか、かように考えております
  66. 江田三郎

    江田三郎君 これはこの法案乳業資本振興法であるか、酪農振興法であるかということの試金石になる点だから、はつきりと答えて頂きたいと思うのです。この助言の際に、重ねて申しますけれども酪農農家の生産費を再生産を可能ならしめる、再生産を確保して行くという前提に立つて、必要な場合には乳業関係の中間経費なり、宣伝販売費などの削減をも助言する勇気が農林省にあるかどうかということなんです。そういうことは、もつと具体的に、はつきり答えて頂きたい。成るほど、宣伝費は、今あなたがおつしやつたように、乳の消費増という効果があるかも知らん。併しそれなら何もテレビで毎日乳業資本名前を教えてもらわなくてもいいのです。あそこまでやる必要がどこにあるかということです。それが一体日本の全体の乳の消費料を増加さすことになるのか。それとも一つ会社販売合戦として他の会社としのぎを削ずるためにやつているのか。このくらいのことは今までにわかつているのです。そういうぼやけた態度をとられると、この法案ができた暁に、あなた方に助言を求めたところで、どうせ碌な助言はしないのじやないかという不安を持たなければならない。重ねて言いますけれども、そういう場合に、乳業関係の経費を削減することについても助言をするだけの勇気が畜産局にあるかどうか。
  67. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) その点につきましては、いわゆる中間工程が不当に多数にかかつておる。こう認められますので、当然そういうような場合におきましては、中間工程の切下の問題に入つて来ると思うのでありまして、そういうような点につきましては、政府といたしましても、できるだけ中間工程のマージンの切下という点について強く主張するということは、当然こういうことを含むと考えるのであります。
  68. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) ちよつとお答えいたします。そこで一条の農業経営の健全化という建前をここに明示いたしたのでありますから、本法の趣旨に従つて農林大臣は勧告する義務を有するものという解釈を私どもはいたしておるのであります。ただ、それで十分かと言われますと、少くとも目的を明らかにいたしたからには、その目的従つて勧告すべきものと期待いたすのであります。
  69. 江田三郎

    江田三郎君 参考のために、畜産局長も同時に川俣さんにも聞きますが、私ども乳のことについてよく聞かされたことは、大体市乳の価格というものは、五割が生産者の受取る価格、あとの五割が中間処理経費なり、或いは販売、宣伝費なりだと、こういうことが普通だと言われておつたのですが、近頃の、私どもが買います十二円なり、十五円なりという牛乳から行きますと、どうもその比率は崩れているように思いますが、あなた方は常識論としてどういうお考えを持つておられるか。勿論地域によつて違うのだというようなことも言えるが、そういうことで逃げられないで、あなた方が一体常識で、酪農というものについてどういう比率がまあまあそういうところじやないかとお考えになつているか、それを参考のために聞かして頂きたいと思います。
  70. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) それらの点につきましては、いわゆる生産者と中間工程価格と最終の末端におけるところの小売価格、大体この三段階に考えられていいのじやないか、かように考えるのでありますが、大体におきまして、相当合理的に酪農が行われ、且つその集乳工程におきましても、加工工程におきましても、なお配給工程におきましても、合理的になるというような場合におきましては、只今の御意見通り生産者が全体の半分ほどを占めまして、最終の小売工程における段階において、それが倍になるというような形態が、大体において、我々がそうあるべき筋合のものじやないかと、概括的には考えられるわけであります。ところが地方によりまして、非常に牛乳の生産数量の少ない場合或いは消費が非常に稀薄であります場合、或いは工場が非常に小数量を取扱うような場合におきましては、そういうように半数ぐらいの生産者が占めまして、あとの半数で処理工程と配給工程を賄うというような形態は、なかなか具現できないという事情に相成るのではなかろうかと思つておるのであります。現在のところ生産者が一、中間工程において、一、消費工程において、一、最終工程においてというような、それに近い、勿論それは少しばかり生産者の占める割合が多いようでありますが、そういうような状態をとつておる場合が多いのでありますが、これらの点につきましては、できるだけ中間工程を合理化いたしまして、生産者の占める割合というものを大きくして参りたいと、かように考えております。
  71. 江田三郎

    江田三郎君 ちよつと一言だけ……。今のことは別に言質をとつたとか、何とかは考えておらんのですけれども、とにかく常識論として考えて、先ほど読み上げた、現在のあなた方が出された資料による全国の平均の乳価から考えて、或いは飼料の相場から考えて、今のままの形はどうも酪農振興せしむるような価格の内容でなかつたということは言えると思うのです。それを改善せしむるために、いろいろそれは乳牛の頭数を殖やすという問題、設備を改善するという問題、いろいろの問題がありましようが、ともかくもそういう基本的立場の上に立つて本当酪農振興さすような助言をするだけの勇気が農林省にはあると、こう受取つたわけですが、そういう意味でしようね。
  72. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 政府といたしましては、そういうような考え方の下に進むべきものであると、かように考えております。
  73. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) ちよつと私関連しまして、今の江田さんの質問ですが、牛乳生産費調査は、あれは統計調査部で現在やつておるのじやないですか。
  74. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) その点につきましては、サンプル調査といたしまして、一道五県で五十例ぐらいにつきまして生産費の調査を試験的に昨年度から継続いたしております。
  75. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それをもつと拡充するというような御意思がおありですか。そうしないと、生産費がわからんといかんと思うのですが、折角の統計調査部というような機能もありますので、これを十分活用してもらいたいと思うのですが、そういう御意思がおありですかどうか。
  76. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 本法におきまして、衆議院において酪農審議会を設けることになり、又委員の中に専門委員というものを置くことになりました。同時に農林大臣地方紛争を起しました場合に、いろいろ助言をするというようなことにも相成りましたので、現在の生産費調査ももう少ししつかりしたものに持つて行かなくちやならんと思いますので、それらの点につきましては、もう少ししつかりした生産費の調査ができますように努力いたしたいと思います。
  77. 森田豊壽

    ○森田豊壽君 酪農振興法のいろいろ振興上におきましては、ここに法文に書かれてありまする幾多の問題があるわけでありますが、殊にこのうちで必要なることは何かと考えます場合に、何と申しましても契約の文書化と、ここに書いてありますが、いわゆる団体契約を結びまして、生産者、即ち酪農家が安心して牛乳取引をすることができる、即ち先ほど来江田委員その他から、又委員長からお話がありました通りに、乳価のいわゆる生産費がどのくらいであるかということは地方々々によつても違うでありましようけれども、その基準を大体農林省は標準を示しまして、これによりまして団体契約を結ぶ、又この団体契約こそ、取引契約こそ、私は今日の乳価の状態から行きまして、まだ乳価が引合わないような状態にありまするときに、例えば飼料が高くて生産費が高いときに、こういう場合におきましても引合うようにさせなければ酪農振興はできかねるものと考えられるわけであります。この点から行きまして、団体契約は一年の契約にあらずして、この取引契約なるものは数年間を見越しまして、その数年間の間これを基準として契約するという、いわゆる基本契約を結びまして、その基本契約によりまして、その都度、その都度両者の間において交渉いたしまして決定するのでなければ、本当の契約の意味をなさんと思うのであります。この点に対する、これは非常に重要なところだと私は考えておるのでありまして、振興ができるかできないかは、いわゆる乳業者のために襲断されるようなことなく、生産者、いわゆる集乳者がどこまでも或る程度の地位を獲得することができるような契約を結んでおく、それが地方長官やその他が若し折合いが付かないときにはどうするかという問題になるわけですが、この点をしつかり結ぶことが最も重要じやないか。而も有畜農家特別措置法等によりまして、大いに我が国に牛を入れようとする際におきまして、入れてからあと引合わないものだという、今まで各人が言いましたような懸念があるとするならば、これは一大事でありまして、この契約書が或る程度価格を以ちまして基本契約が結ばれることであるならば、又それが短期でなく、相当の年限に亘りまして契約することが可能なら、酪農振興法もいわゆる筋金の入つた振興法だと思うのでありますが、これがただ、今までのごとくいわゆる乳業者酪農家の個人個人と契約するような状態であるならば、これは酪農振興法などと言いましても、要するに業者に自由にされることになるわけでありますから、この点に対する農林御当局のはつきりした信念をここで示して頂く必要があると思うわけであります。この点を一つ御回答願いたいと思います。
  78. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 只今意見通り、いわゆる酪農乳業との関係につきましては、これは長期的な契約であるのであります。従つてその契約の取引関係はできるだけ明瞭にし、安んじて農民酪農にいそしむことができますように、文書化という点をできるだけやつて行くようにいたしたいと、かように考えるわけでありますが、その場合に一応文書化の契約は、団体を通じて団体契約というようなふうに持つて参りたいと考えておるわけであります。なお契約の内容につきましては、只今意見通りに、できるだけ長期的な契約と、かような恰好に相成つて来ると思うのでありますが、従つて契約の内容といたしましては、基本的な契約というようなものと、附随的なものと大体二つのものに相成るのじやなかろうか。現在文書化契約のいわゆる模範文書化契約の説明というような点について補足いたしておるのでありますが、それらの点につきまして、価格等につきましても、いわゆる酪農を安心して長期的にやり得るような契約のやり方、こういうような点について考究いたしておるのであります。ただ現在までの状態におきまして、年間を通じまして相当季節的な変動があつたのでありますから、その点を一遍に一律に無視するわけにも参らんかと思うのでありますが、できるだけそういう季節的な変動をなくするという趣旨の下に、いわゆる長期的な契約を締結いたしたい。かように締結いたすように指導して参りたいと考えておるのであります。
  79. 森田豊壽

    ○森田豊壽君 衆議院のほうの代表者に一つつてみたいと思いますが、この問題は衆議院のほうにおいては、私といたしましては重点的にこういうことについてのいろいろなお考えがあつたのじやなかろうかと想像するだけで、何も知りませんが、この点に対しまして、一体どのくらいの程度まで農林省の方面と折衝をして具体的になつておるか、又乳業者方面から相当こういう団体契約に対しまする問題に対しまして阻止の運動があつたかどうか、こういう点につきまして一つお伺いしてみたいと思うのです。
  80. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) 本法には具体的に問題を処理しなければならない多くの要件を含んでおりますので、法律修正を書き加えるべき点もあろうかと思いますが、むしろそういうことによつて制約を受けるよりも、実際的な解決といたしましては、審議会が作られますので、審議会の意見によりまして、農林大臣が助言を行うことや、契約の問題につきましても審議会が大綱を明示する等、或いは生産品につきましても、大体の基準が審議会にかけられて妥当な方途を見出すだろうということに期待をかけて審議会を作ることにいたしたのであります。従いまして、要は運用であるという考えから、運用の重点を審議会に委ねておるのです。而もこの審議会は、説明があつたろうと思いますが、学識経験者というものを八名にいたしておりまして、他の生産者或いは乳業代表者四名よりも、その倍の八名という数字を出しております。これは議員などもむしろ入らない意味でありまして、この学識経験者の中には、特に中立斡旋委員的な色彩を持つた人を入れまして、斡旋に当らせる、或いは基本的な要綱を審議会で決定する等の処置を講じさせたい、こういう主として審議会に頼つておるという考え方であります。
  81. 森田豊壽

    ○森田豊壽君 今ばかに審議会にすべてを任したようなお話でありますが、これも考え方としましてはその一法だと思うのでありますが、畜産局長に一つお尋ねしておきますが、基本契約の標準と申しましようか、標準的基本契約ということはおかしいかも知れませんが、雛型と申しましようか、雛型というものには、どうしてもやはり生産費というものがどのくらいかということがきまらなければ出せないはずです。審議会が集めて原案を作ると言えばそれまででありますが、恐らく農林省としまして、参考として一つの雛型を出させるものと思うのでありますが、その雛型にどんな雛型を用意してあるかないか、その点を一つ聞かして頂きたい。
  82. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 文書化の場合のいわゆる契約の雛型につきましては、目下研究中であるのでありまして、でき上つたものは成立いたしておりません。
  83. 森田豊壽

    ○森田豊壽君 そうすると、その雛型には、大体私ども言つているような生産費は或る程度まで研究した末にそれを発表する、こういう恰好になるわけですね。
  84. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 雛型におきまする価格の問題でありまするが、これにつきましては、一応価格そのままの姿におきまして出すということにつきましては、いろいろ地方によりまして飼育形態が違いまするし、又集乳事情なり、或いはその地方酪農事情等によつて相当の径庭がありますので、これはそのままの形になりますと、甚だ問題が起きて来るのではないか、かように考えるのであります。従いまして、一応考えられますことは、いろいろな場合におきます価格を、どういう場合にはどういう価格にするか、これも雛型という形で一応お示しするような恰好に結論としてはなるのではないか、かように考えまして、そういう点につきまして今考究しておるわけであります。
  85. 森田豊壽

    ○森田豊壽君 もう一言。とかく農林省の畜産局にも、乳業者の圧力が過去からの伝統的なものがあり、相当強いと想像されるわけでありまして、その生産費を定めます場合において、その運動の圧力に惑わされないように、現畜産局長はそういう人ではないと思いますが、その点はくれぐれも私から念を押しておきたいと思います。これはいわゆる酪農振興法でありますから、酪農家生産者に有利なように考えてあげなければ振興はできないのでありますから、その点は十分に御注意を願いたいということを申上げておきます。もう一つ草種の問題でありますが、これをだんだん切下げて考えて行きますというと、いろいろな草を持つて来て栽培させるようなことを考えておられるようでありますが、しまいには何だか日本の国におきましては、酪農の適地、いわゆる購入飼料でなく、自然の飼料を以てやつて行くということになるというと、全部の牛を北海道へ持つて行こうじやないかという考え方にもなると思われるわけであります。この点が中央におきましても、地方の牛が安くなつて近いところの牛が高くなる、要するに乳価は別といたしましても、引合わない恰好になる場合もあるのでありまして、北海道委員も相当おいでになるようでありますが、何だか草種の問題をやつておりますと、適地適作ということから、そうなつて行くことも自然かも知れませんが、そういう徴候ありということを、書いてはないが、読んでいるうちに感じたのでありますが、この点は如何でございましようか。
  86. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 私どもといたしましては、これは草に限定はいたさないのであります。自給飼料によつてつて行こうと、こう考えておるのであります。なおいわゆる酪農製品といたしましても、結局今後の酪農はいずれの面からいたしましても、市乳による消費形態というのが最も理想的であり、且つ合理的であると思うのでありまして、市乳ということに相成りますというと、これは全国的にその需要に応じまして、その地帯が形成されて行くべきである。こういうような事情に相成るかと思うのでありまして、内地におきましても、その自給を中心といたしまして、できるだけ自給飼料の条件に恵まれているような地帯の酪農振興ということはどうしても必要であり、又そうであるべきである、必ずそうなると考えておるわけであります。
  87. 森田豊壽

    ○森田豊壽君 このくらいにしておきまして……。
  88. 松永義雄

    ○松永義雄君 先ほど来、団体契約のお話がありましたが、法文を読んで見ますと、団体契約のことが一つも書いてないようですけれども、どうなんですか。
  89. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 第十六条の文書化の点でありますが、法律の文面上は、勿論個人々々というような恰好でありますが、先ほど来申上げました通り乳業の集荷方面におきましては、少くともこれは生産者団体団体取引をやるということをその前提といたしておりますので、一々個人が契約するというようなことでなしに、組合等の団体によつて契約して行くと、こういう恰好に相成ると思うのでありまして、法文の中にも、組合員と組合との関係におきましては、勿論文書化というような点はないわけであります。と同時に乳業者と契約を締結しております場合の文書化ということに相成つておるわけであります。
  90. 松永義雄

    ○松永義雄君 そうすると、契約の相手方には個人も予想されておるのですね。
  91. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 法律の標準技術といたしましては、こういうふうに相成るわけでありまして、全部に一応文書化を進めるという意味合で、全部の人間を対象としておりますから、こういうような形になつておりますが、その裏といたしましては、結局団体契約というものも考えて、それを目標にいたしております。
  92. 松永義雄

    ○松永義雄君 個人との契約も予想されているかどうか。
  93. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) それは否定は全然いたしておりません。
  94. 松永義雄

    ○松永義雄君 否定していないんでしよう。それじや団体協約は特別に効力というものを認めて行かなければならないと思うのですが、そういうことは考えたのですか。もう一回言うと、コレクテイヴ・ヴアーゲンとか、何とかといつたようなことを考えたかどうかということを聞いているのです。
  95. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) こういうふうに文書化の場合に法律規定いたしまする場合には、個人々々というような書面に、存続期間こうこうというような、契約の内容を明らかにしなければならないというような一応標準技術になるだけの問題であるのでありまして、結局牛乳採取の場合におきまして、一々その生産者がそういうような契約を結びますことは煩瑣でもありまするし、又他面いわゆる団体による契約の取引というものが望ましいことでありまするので、契約のやり方といたしましては、団体契約が大体大多数の場合じやないかと思うのであります。ただ全部が全部というと、私どもといたしましてはそうありたいと思いまするが、そういう先例がないかというと必ずしもそうは言えないと、かような恰好になるのじやないかと思います。
  96. 松永義雄

    ○松永義雄君 私の聞いていることがあなたにはよくわからないんですが、牛乳生産者の利益のために団体契約を結んだ場合に、その団体契約の効力について何らか考えたことがあるか、これが何ら機会がないが、何か考えたことがあるか、そこまで生産者の利益を考えたことがあるかと、こういうことを聞いておるのです。
  97. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 只今の御意見でありまするが、例えて申しますと、農業協同組合の場合でありますというと、協同組合と個人組合員との関係におきましては、団体構成上、中におけるところの権利義務関係と申しまするか、その構成関係によつて外部関係規定されると思うのであります。文書化の場合におきましては、結局組合といわゆる会社との関係があるのでありまして、それを規定するのでありまして、それが団体組織を通じまして各組合員である個人に及んで来る、こういうような恰好になつて来るのではなかろうかと思うのであります。
  98. 松永義雄

    ○松永義雄君 私の質問に対する答弁にならんから、私のほうから説明しますよ。一つ団体とその相手方と契約を結んで代金を仮にきめたとすると、他の組合とその他の牛乳を加工する人と契約を結ぶ場合に、前者の若しきめた代金が生産者に利益であつたのならば、その利益であつたその代金が、他の契約にもそれが適用できるようになるのかどうかということを聞いておるので、団体契約、契約と言つたつて、言葉だけ形式でそんなこと言つたつて何も書いてないような法文では、さつぱり生産者利益にならんじやないかということを聞いておるので、その契約の内容をどうしてきめたらいいかということは、存続期間とか何とか書いてあるけれども、それだけでは不十分だ、いやしくも団体契約と言つた以上は、ただ多数の人が一体となつて契約したから、それは団体協約だといつて、それで終れりとするならばそれでもいいけれども、若し生産者の利益を図ろうと言つたなら、団体契約というものが基本というなら、もつと進んだ団体契約の効力というものがあるのだから、それを認めるかどうか、その法文にないのはどういうのだということを聞いておるのです。
  99. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) 松永委員のお問いになるほど突込んではおりませんが、原案に、集乳業者というような中間機関を認めるような表現がありましたのでこれを出荷組合的な考え方修正をいたしております。従つて農業協同組合が出荷組合のような形を取り得るようにいたしたのでありまするから、そういう意味で、出荷組合という一つ団体的な色彩を濃厚にいたしまして、中間業者であるような集乳業者というものを排除して、直接加工業者と処理業者と結べるようにいたしたというのが大体修正の骨子であります。従つて松永さんが言われるような、景通の労働組合の言うような団体契約でなくて、出荷組合という団体を作ることによつて生産者の利益を守つて行きたい、こういう考え方です。
  100. 松永義雄

    ○松永義雄君 その点の話はそれで終つて、その先の御質問をしたいと思います。牛乳を納めて、相手は、代金を払わなければならないだろうと思うのですが、その代金の支払について、何か確保することを考えられたかどうか、ただ代金を支払う義務が生ずる、それで終れりとしておるのか。
  101. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) そういういわゆる契約の内容が文書化契約の場合に、いろいろ問題になつて来ると思うのであります。いわゆる農業協同組合におきましては、協同組合法によりまして、団体協約的な契約も締結し得る能力を持つておるわけでありますが、その農業協同組合団体契約の場合におきまして、どういうような支払の仕方をするかという点につきましても、これは当然契約の内容といたしまして、これは論議され、又決定されるべきものじやなかろうか、かように考えるのであります。
  102. 松永義雄

    ○松永義雄君 一口に言えば、供出などは政府だから必ず金を払つてくれるでしようけれども、相手方が私契約者ですから、果して払つてくれるかどうか、それは非常に疑わしいのです。殊に牛乳というものは、これは僕は余り飲んだことはないけれども、腐敗しやすいものでしよう。繭でもそういう例が昔あつたことは私が申上げるまでもないのですが、とにかく契約を結んで、代価について問題があると、ぼやぼやしていると結局腐つてしまうということも考えられるのであります。生産者の地位が非常に弱いものです。牛乳を納めたから相手が必ず金を払つてくれる、契約書にあるから必ず払つてくれるというなら、今まで村は決して貧乏しやしないのです。そういう点について何か考えておられるのですか。
  103. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 牛乳取引につきましては、御承知の通り、継続的な契約でありますので、牛乳を引取ると申しますか、牛乳を引取ることにつきましては、これは第一の契約の前提要件ではないか、基本契約の根本をなす問題じやないかと思うのであります。次に、その価格を幾らにするかという問題と、その契約の履行といたしましての代金の支払い。これは契約の骨子をなす問題じやないかと思うのでありまして、これらの点につきましては、当然、普通の売買契約の場合にも、そういう基本的な点は、すべて合理的に解決されるということがなければ、その団体契約としての文書化契約が存在しないという恰好に相成るのではなかろうかと考えるのであります。
  104. 松永義雄

    ○松永義雄君 作らせるだけは作らせた。納めさせるものは納めさせた。代金が確実に払われるということが予想されなければ、生産者は、あなたがおつしやる通り存続期間の話が前からあつたように、長期間でずるずる行つて、品物をとれた、金は払つてもらえないという結果に陥る虞れがあるのです。そういう場合に対して、何か補償のことを考えておるかということを聞いておるのです。何も考えてないなら考えてないでいいのです。それを聞いているのですよ、イエスかノーかを聞いているのです。あなたがそこで何か言訳がましいことを言うからおかしいので、自由の契約に任せたのだから売る相手方が悪ければそれまでのことだというならそれでいいのですよ。イエスかノーか、簡単なことですよ。
  105. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 政府といたしまして、そういうことのないように指導はいたしておりまするが、不履行の場合に政府或いは都道府県団体において補償するということにつきましては考えておりませんが、団結契約を結びまする場合におきまする農業協同組合と組合員との関係につきましては、組合自体によつて決定すべき問題だと思うのでありまして、御意見の、政府においてどうするかという点につきましては現在のところ考えていない、かように申上げるよりしようがないのであります。
  106. 松永義雄

    ○松永義雄君 そうすれば取引は絶対に自由になつているかということを聞いておるわけです。どこに保護の精神があるか、こういうことです。
  107. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 取引は、自由と申しまするか、団体契約といたしまして、農業協同組合等においていわゆる乳業者と契約を締結する場合に、まちまちに或いは非常に不明瞭な契約が結ばれることは好ましくありませんので、政府といたしましては、できるだけ模範文書化契約の雛型というものを示しまして、それによりまして、できるだけ各地方が合理的な契約を締結するように指導して参りたい、かように考えるわけであります。まあ自由だと申せば自由ということになるのであります。
  108. 松永義雄

    ○松永義雄君 勿論モデルを作つておかなければならないことは言うまでもないのですが、例えば農協が金を何十万とられて肥料が来なかつたとかいうようなことはしばしば終戦後起つて、それで農協が破産していることはよく御承知の通りだと思います。問題は品物を渡してどうして金がとれるかということが重大問題なのです。幾ら立派な契約書を作つたつて金を払わなければ何にもならないので、それを裁判所に持つてつたら取れるということでは、それでは商売にならないのです。だから代金の支払について何か考えているかということを聞いているのです。そこまで心配してやらなければ、生産者は安心して多量のものを農協に集荷してそれを一挙に渡すというようなことは容易にできないことですよ。そこまで心配しておられるかということを聞いておるので、契約書に代金を支払いますということを書くとあなたは言うけれども、書くだけでは駄目なのですよ。だからそこまで何か考えておられるか、考えてないなら考えてないでいいのですよ。ほかのことを言わなくてもいいのですよ。
  109. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 代金支払につきましては、行政措置として不履行に終るようなことのないように措置いたしたいと思いますが、それを補償するという点につきましては考えていないと、かように申上げるより方法はないと思います。
  110. 松永義雄

    ○松永義雄君 補償でなくとも、代金の支払方法について何か考えているかというのです。
  111. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 代金の支払を確実にするという方法につきましては、いろいろな具体的な方法があろうかとも思うのであります。系統機関との結び付或いはそれに対します契約保証金と申しますか、こういう点に契約の内容として、いろいろ考えるべき点があると思うのであります。これはその契約につきましていろいろ具体的な契約を結ぶ場合に、どういうふうにしたならば代金が確実に入手できるかという点につきましては考究して参らなければいかんと思うのであります。
  112. 松永義雄

    ○松永義雄君 例えば信用保証協会というようなものがあります。例えば金を貸した場合に、県庁が出資して保証するというようなことがあると同じように、何らか代金の支払方法について、金を融通してやるとか何とかしないと、加工業者のいい悪いは別として、商売のそのとき、そのときの景気がありますからね、加工業者の懐ろ工合もあるのです。納めるほうは納めて景気が悪いから払えない、それでは加工業者が払わなければ農民は困つてしまうのです。問題はそこまで保証しておかなければ、作れ作れといつたつて一升や二升売るのと違いますからね、そういうことを考えておられるかということを聞いているのです。
  113. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) それらの点につきましては、結局代金の決済方法等を勘案いたしまして、或いは保証金を積みますとか、或いは手形取引をしますとか、手形取引に基く割引の制度をやるというようなことによりまして、これはまあ地方々々によりまして、或いは取引の状態によりまして、いろいろな方法考えられておると思うのでありますが、是非その点につきましては、売つた代金が取れないような方法につきましては、具体的な問題として考えて行かなければならないと思います。
  114. 松永義雄

    ○松永義雄君 契約が紛争を生じた場合に、これは斡旋委員に依頼すると、こう書いてあるのですが、トラブルが起きた場合に、先ほど申上げたように、すぐ腐るものですよ、牛乳というものは……。一刻もうちへ置いておけないのですよ、売るほうは非常に弱い立場ですよ。そういう場合にどうしますか。
  115. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) その点が非常にむつかしい問題だと申しますか、場合によりましては、そういう弱い地位に立つことがあるのであります。その点いわゆる団体取引と申しますか、生産者の立場をできるだけ強くして、対等に処理ができますような措置として、文書化契約で長期的な契約を締結して置く。これは基本的な契約の内容として、少くとも牛乳を引取るということは前提をなす問題ではないか、かように考えるのであります。従つて価格等につきましては、いろいろ紛争の内容によつて異るかと思いますが、生産者が少くともそういう非常な困難な不利な点に立たんように、斡旋委員の制度を設けて、且つ中央からもこれに対していろいろな助言をするというような方法をとつて参りたいと、かように考えております。
  116. 松永義雄

    ○松永義雄君 もう一点。斡旋委員の選任方法ですが、県知事というものがどうも偏しているのです。すべて斡旋委員を任命する場合に……、一口に言えば、消費者の利益のための人を斡旋委員に任命する方針に持つて行かなければならない。ところが県知事が任命する場合に、とんでもない人が委員になつている例がしばしばあるのです。この斡旋委員生産者代表も出ていることは勿論でしよう、それからここに公益委員と書いてありますが、第三者委員ですね。この選び方が両当事者に公平に選ばれているならいいですよ。第三者委員が……。これは川俣委員に特に聞きたいのですけれども、両方から利害関係者の代表者を出して、その中に第三者を入れる、その第三者が公平な人ならいいですけれども、公平に選ばれたということならいいですけれども、そうでないと、まさか多数決で推すわけでもないでしようけれども、とにかく不公平な例がしばしばありますから、その点についてどうお考えですか。
  117. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) これはよく十八条を御覧願いますと、その趣旨が入つておると思いますが、都道府県知事が毎年前以て委嘱した公益を代表する斡旋委員の候補者となつております。従つて委員はそのリストの中から当事者の同意を得て指名をする、こういう形をとつて公平を期したいという考え方です。従つて公益を代表する人は消費者の分を十分代表しておるだろうと思います。問題は食糧問題解決の一助になるのですから、そういう意味で十分その意思が出ておるものと私は考えておる。なお審議会の委員におきましても、学識経験者八名となつておりますが、この中であえて消費者代表を二名別建にしなかつたのは、学識経験者というものは公益的な立場を代表するので、従つて消費者の分も当然代表するものというふうに理解して、学識経験者八名としたのもそういう意味でございます。
  118. 松永義雄

    ○松永義雄君 今ちよつと気が付いたのですけれども、普通の労働争議の場合には資本家のほうが強くて賃金を払うほうでしよう。この場合は生産者が非常に弱い立場ですね。消費者代表というと、値を下げられれば、そのしわ寄せが若し農民のほうへ行くようなことがあれば農民は迷惑するということです。農民の立場が弱いということは、労働争議の場合と違うところがありはしないかという感じがする。だから公益代表という人が農民に理解のない人で、仮に消費者としての自分の立場だけから考えるような人だと、農民が弱い立場にあるだけに、それだけ利益を受けることが少いのじやないかという心配が生ずるのですが、それは無理かどうかということです。
  119. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) 御尤もだと思うのです。そこで消費者代表というものを審議会においても別建にしなかつたし、或いは斡旋委員の中にも消費者代表的なものをあえて加えないで、むしろ公益的な代表ということで、消費者という面も含んでいる代りに、全体の公益的な色彩を持つた人々というふうに理解して頂ければいいのじやないか、むしろ消費者というようなことで、生産者を圧迫しては困るという考え方です。同時にこの酪農問題につきましては、一つの別な考え方のある人もあるようです。例えば豊富にして低廉な牛乳を配給させて、食糧問題解決の一助にもしたいという考え方がありますけれども酪農振興法というからには、農業の健全経営という意味から酪農振興は取上げられたので、消費者の立場をとることよりも、むしろ生産者を保護したいという立場をこの立法はとつておりますので、消費者的な色彩を削除いたしておるわけです。ただ、それではこの乳価の問題のときでも生産者のことばかり考えていいかというと、食糧問題の解決ということになると中間経費は極力圧縮しなければならないというところから、中間業者の存在は許さないという意味に改正いたしました。そこで今度消費者と生産者との関係を斡旋する、こういうことになると思うのです。それだけ申上げておきます。
  120. 松永義雄

    ○松永義雄君 実際問題として、従来委員の選び方その他を府県知事が若し少しでも関与する場合には、とかく弱いものは損をするような、代弁者として出る人に弱いほうの味方をするような人が出ておらないという傾向かあるから、文章の形だけ読めば公平に行くのではないかということにはなりますけれども、実際問題として、弱いほうへ利益のある人が出て来ないという虞れがあるということを申上げて、質問は終りたいと思います。
  121. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) お答えいたしますけれども、この懸念を衆議院農林委員会で持たないわけではございません。併しながら、知事は消費県の知事でなく、生産県の知事としては大体農民の方向に好意を寄せざるを得ないのではないか。但し中に悪徳な知事があつて乳業資本家に迷わされないこともないけれども、現在の公選の知事から言うと、やはり生産農民のためを思うほうが多いであろうことも期待されるし、又生産団体農業協同組合というような組織を以て対抗すれば、或る程度対抗できるのじやないか。そこで個々に対抗しないで、出荷組合的な考え方を以て団体的な行動をとらせるようにしようという考えであります。
  122. 松永義雄

    ○松永義雄君 川俣さんがおつしやつたから、反駁しては悪いけれども……。
  123. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) その懸念なしとはしません。
  124. 松永義雄

    ○松永義雄君 公選知事だから、その土地の人を守ると一応考えられるのですが、繭のような例を見ると、必ずしもそうではないのですから、どうかその点はさように一つ御留意願いたい。
  125. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 川俣さんは向うのはうに用事があるようですから、川俣委員に質問がありましたら……。
  126. 北勝太郎

    北勝太郎君 十八条の三項が削られておるのでありますが、斡旋委員に要する費用は削つてしまつた。これは一体どこから出る見込みなのでありますか。或いは府県から出すのであるか、或いは政府が出すのであるか。
  127. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 第三項を削除いたしました結果、これは都道府県の負担となるというふうに考えられます。当初におきましては、これは当事者に負担して頂くというふうに考えておりましたが、当事者に負担させるということは、多くの場合、紛争について調停を申出るのは生産者側の場合が多かろうというようなわけで、生産者に不当な経済的な負担を加えることのないようにという趣旨で、その点は衆議院で削除に相成りましたので、当然これは都道府県の事務でありますので、都道府県が負担することになる、かように考えます。
  128. 北勝太郎

    北勝太郎君 それは、都道府県に負担をさせるように政府から命令でもするのですか。
  129. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) これはこの事務の性質として、都道府県の事務でありますので、当然都道府県がこれを負担する、こういう恰好になります。都道府県だけに経費を負担させるということにつきましても、長くそれを放任しておくわけにも参らないと思いますので、これらの点につきましては、予算等の場合に、政府といたしましても今後考究すべきものじやないかと考えます。
  130. 北勝太郎

    北勝太郎君 逆戻りになりますが、第三条の二項のうちの三号に、「生乳生産者共同集乳組織の整備」という、これは生産者生乳共同集乳をする費用を当然賄わなければならないということを法律で明示してあるように思うのであります。そういう意味でありますか。
  131. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) これは第三条の第二項の第三の「集乳事業」とありますのを「共同集乳組織」というふうに御修正に相成つたのでありまするか、原案といたしまして、「集乳事業」と、こういう表示をいたしておりましたが、集乳事業というものは、何か農業協同組合で特別な営利的な事業をやつているというようにとられては困るというような一つ考え方から、いわゆる事業というところは全面的に削除いたしたのであります。生産者の行いますのは飽くまで共同販売であり、共同出荷であつて生産者がみずから出荷しますのを共同的に処理する、こういうような観点から事業というのを削除いたします関係上、言葉の上におきまして、共同集乳組織というような言葉に表現を変えた、こういうことであります。
  132. 北勝太郎

    北勝太郎君 当然共同集乳費用生産者が負担しなければならないということを明示されておるように思うのです。わざわざこんな事項がなければ今までの商習慣で行けたのに、こういう事項を書いたものだから、そこで集乳費は当然生産者が負担せねばならんということになる。即ち集乳上の経費、人件費その他のものはすべて生産者が負担しなければならない。
  133. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) この点はいわゆる集約酪農地域におきまする集乳関係計画事項でありまして、どういうような計画の下に集乳をやつて行くかという計画上の問題であるのであります。従いまして、その経費の負担ということになりますると、各地方によつて違うと思うのでありまして、これはおのずから別じやないか、かように考えるわけであります。勿論生産者が自分の集荷の道具使をいまして集荷する場合或いは工場等からトラツク等が参りまして集荷して参ります場合、おのおのその作業の点においては形態があると思うのでありまして、その場合にどういうような費用の負担になるかというようなことにつきましては、いわゆる集乳計画を立てまする場合に綿密に計画をたてて行く、従つて従来からの慣習であり、而もそれが合理的であるということでありますれば、必ずしも急に変更する必要もないのじやなかろうか。特に北海道等におきましては、おおむね集乳につきましては農業協同組合において行なつておるというような事情もあるのでありまして、それの経費の負担関係等につきましては、おのずから別問題ではないか、かように考えております。
  134. 北勝太郎

    北勝太郎君 それでは大変局長のお話が違うのでありまして、北海道ではいわゆる生産者団体である雪印或いはクローバーという会社が全部プールでやつておる。而も今まで牛乳代が四十円ぐらいのときに集乳費を二割以上の九円を平均プールで価格が引かれておる。こういう大きな金が今度は農民の面接の負担だということになるのでは非常に困るのではないか。第一条の目的に、実は広い範囲における酪農振興がこの法律の目標だということになつておる。そうしますと、広い範囲における酪農振興という意味であると、これを北海道とすれば、北海道の全道の、酪農だけではない、最後にありまするように農業経営の安定をするという項目と矛盾する。非常に不便なところは今度は酪農の生産ができない。或いは又新らしく開発する場所ができましたときに、そういう場所に僅かな牛乳では、どうしても本人みずからが牛乳処理工場まで持つて行かなければならない。それではとても牛を飼うことはできないということになる。即ち農業経営全体の安定を図るということと、牛乳だけを生産すればいいという考え方とここに非常に矛盾が出て来る。この集乳費の問題につきましては、それを全道でプールで引受ければそういうところまで行くけれども、それが一地方だけに限られると、不便な所、牛乳が少い一石以下の所は酪農が成り立たない。北海道のような新開地におきましてはこれは重大な問題です。こういう所に営利業者のほうが大分割込んで来るのは必定なのです。生産者団体のほうでは全道の農業の発達ということが主であるけれども、一方乳業者は自分だけ儲ければいいのであるからして、そこで工場の附近だけには高い値を出す。こういう行き方をされるために全道の農業振興しないということになる、この項目は実は大事な問題だと思います。北海道の現状から見て……、それをどう考えられるのかというのです。
  135. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) 私ども衆議院では、北さんの御意見とは大分変つた見解を持つておるのであります。それは中間的な集乳業者というものの存在が必要であるかどうか、又集乳業者という専門業者があることが、却つて乳価を割安にするような結果になりはしないかということを非常に恐れておるのであります。そこで専門的な集乳業者があるほうが、集乳業が簡素に割安に行くというお考えを北さんはお持ちのようですが、私どもはそうではなく、むしろそういうことによつて個個に農民から取引されますというと、乳価を割安に押付けられるという危険のほうが大きい。それよりも共同組織によつて出荷するほうが、むしろ出荷費用はかかりましても、乳価を高位に維持できるという考え方で、専門的な集乳業者の排除をむしろ考えておるのでございます。そこで最初の案は集乳事業という表現で、集乳業を行うことができるということを表現しておつたのでありますが、修正案のように共同組織によるというふうに修正をいたしたのでございます。共同集乳組織と、こういうふうにして、酪農組合又は農業協同組合がまとまつて、場所は違うでありましようが、売る場合には共同して売るのだ、個々には契約しないのだということを表現して乳価の維持に努める、こういうふうに考えたのであります。或いは北海道のような特殊な所は、北さんの御説明のようなここがあるかも知れませんけれども日本全体から見て行くと、このほうが乳価を堅持する上から必要であろう、こういう考えですから、どうぞ御了承を願いたいと思います。
  136. 北勝太郎

    北勝太郎君 今のお考えは、実は我我の地方から言うと大変お話が違うのです。別に集乳業者がおるわけではないのです。即ち製造事業の一工程として、牛乳を集めておるのでありまして、それだけの違いがあるわけです。一つの集乳業者ができた場合にはそう言い得るけれども、実は工場自身が自分の工場牛乳が或る程度なければ、非常にコストが高いものになる。そこで広い範囲で集めて来なければならないというので、そのことが製造工程の一過程であつて、製造業者がみずから集乳して来る、こういうことです。
  137. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) みずからやられる場合、何と言いますか、処理工場集乳業を兼ねる場合におきましては、そのときはやはりそれだけの経費というものを乳価に見込んであると思うのです。これだけの集乳費がかかるから、乳価をこのくらいにしなければならないということで、これは生産者が負担するのと、或いは処理業者が負担するのと、どちらが割安に付くかという問題だと思うのです。或る場合には処理業者が安く付くというときには、出荷組合としてそれに委託することもできると思いますが、本来は出荷組合と言いますか、生産者団体が出荷権を持つことを本職として、若し処理業者が割合安くなつた場合には委託してもいいじやないか、むしろ出荷権を持つという考え方なのです。共同で出荷権を持つ、個々の取引は押える、こういう考え方で出ていますから、若しもあなたが、時には出荷団体集乳方式を処理工場に任せるというのも、個個が任せるのじやなくて、出荷団体が、生産団体が、酪農団体がそのほうがいいときめて任せることも決して不可能じやないと思います。可能ならしめている。ただここに、甲は私は処理工場と結ぶ、乙は出荷団体に出すと、こういうことを阻止しよう。やはり団体としてやろうと、こういう考え方です。
  138. 北勝太郎

    北勝太郎君 今のは実は広い範囲における生産者の少い、乳牛の少いところをどうして開発するかということを、農民全体の責任でやろうという工合になつておる問題なんです。そこで集乳費というものを別にされると、生産者の非常に少いところでは経済上引合わないことになるわけです。そこで酪農は振わないということになる。従つてその地方々々の農業の合理的経営ができなくなる。即ち農業の改良或いは合理的経営ということが主体であるか、それから牛乳を集めるということだけが主体であるか、これだけの違いになつて来る、そこで第一条にはそういう工合農業経営の安定に資するということが書いてありますから、従つてそういう仕事は社会にやらしていいものじやないかという工合考えます。そうしなければ小さい地帯は、乳牛の少い地帯はもう衰微してしまう、従つて農業改良も衰微してしまう、こうなろうと思うのです。
  139. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 只今の点は北海道におきまする事情といたしまして、これは或いは北委員のほうが私よりもより詳しいかも知れませんが、実は北海道におきましても、いろいろ雪印なり、或いは北海道バターなりと農業協同組合連合会と申しますか、北酪連が、或いは單位組合が団体契約を結んだような実際は恰好になつておりまして、そしてその事業雪印なり、北海道バターがやつておるというような恰好じやないかと思うのであります。いわゆる北海道の場合におきましても、すでに北海道においては生産者団体集乳権と申しますか、集乳事業はやつておるという法律上の形式になつておりまして、それを雪印で代行しているという形になるのじやないかと思うわけなのです。この形がすつかり、北海道にはもうすでにこの形ができ上つておると申上げたにうがいいんじやないかと思うほどでありまして、これを北海道でやつておられるようなことを、逆に持つて行こうというような考え方でなしに、この考え方自体は経費の負担区分とか、いろいろ問題がありますが、少くとも牛乳共同で集めて、共同販売をするという行為自体は生産団体で持とうじやないか、勿論それを会社が代行するとか、或いはプールでやります場合に、個人の負担関係をどうするかという問題は、これはおのずから別問題でございます。つまり農業協同組合で取りまとめて、集荷をするという場合に遠距離のものも近距離のものも同じような単位当りのもの、つまり工場渡し価格を一律にいたしまして、それを農業協同組合で集荷する。それを会社のほうが代行するという形になりますと、経費の場合には、そういう形をとりますと、遠い生産者のほうも近い生産者のほうも、集荷費はプールでやるということになりますから、同じことになるわけです。そういうようなことは、団体契約の内容といたしまして、協同組合でまとめてやろう。併しそのやる事業自体を会社のトラツクを以てやろうと何しようと、それは飽くまで代行関係でありまして、生産者にどういう負担を負わせるという問題と、おのずからこれは別じやないか、かように考えておるのであります。
  140. 北勝太郎

    北勝太郎君 大変話が食違うのですが、北海道雪印或いはクローバーは、生産者会社なのですから、総会等において大いに問題になるのはここなんです。これは一年も前の話ですが、全道プールのために牛乳代の二割も集乳費がかかつておる。こういう状況です。会社の附近の人は、そう高いものを負担したくないから、是非一つ、これは今あなた方の言われるようた方法に行つてもらいたいというのでありますけれども、集まつて来る全道の生産者の地帯は、三分の二ぐらいまでが牛乳の生産量が少くて一石か、二石しか集乳がない。こういう地帯においては是非プールにしてもらわなければ、我々の経営が成り立たない。一方会社工場に近いところでは、プールじやいけない。こういう問題が始終会合のことに起つているが、牛乳の量の少いところの人間の数が多いので、いつも工場地帯の酪農家は非常に不満を持つておる。従つて第一条に、農業経営の合理化ということに重きを置いているか、或いは酪農だけがうまく発達すればいいということに重きを置いているかということで、これは非常に両方の間に意見の相違がある。従つてこの集乳費までは集乳組織でやれということになりますと、そういう牛乳の少い地帯におきましては、これは非常に発達を妨げることになるわけじやないか。この発達を妨げることは、結局において、その工場に集まる牛乳が少いということになるので、いろいろなことをみんな計算しますと、やはり小さいところは助けて行かなければならないということになつて、今のところプールになつておる。こういう関係が、実は今度の営利業者工場と、生産者工場との間に大きな値開き等が起る因になつておる。そこでまあ北海道農業確立のために是非一つこうやりたい。やらせて行かなければならないというのが、いわゆる雪印やクローバーが堅持して来た方針なのです。これが崩れてしまう、そういう意見です。
  141. 上林忠次

    ○上林忠次君 大体おわかりなつたと思いますが、そういうような区域の選択のしよう、契約のしようによつて、或る会社は損だ。大きな不利益な地域が入つたために、それをプールするということで原料費が高くなるというようなことは、これは競争がフエアに行かないということがありますので、そういう辺鄙な地域で、誰も適切な価格で買手がないという地域がまとまつてありますならば、農林省はそういう地域に対しては最低のフロア・プライスを作つて、この地域は誰も買手がない、それなら集まつたところへ何か政府で施設をしてやつて、そこの乳はここで処理せよと、その処理の施設に対してはこれだけの助成をしてやるというようなことも考えなくては、競争というものはフエアでないじやないか、今のような協同組合だけが不利益をこうむつている、これは北海道の有畜農業のために、そういう辺鄙な運賃のかかる地域まで含んでいるということで競争はフエアじやないじやないか、そういうような地域は特に政府の助成が要る、そして特殊な施設をしてやるというところまで行かないと、中途半端な、今の統制でもないような時代のやり方としてはむずかしいのじやないか、そういうことはできませんか。
  142. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) お答え申上げます。一条の点は、広く有畜農家、特に酪農農家全体のことを考慮にして目的を明らかにしています。それから今御指摘の三条は、集約酪農指定地域の中の問題であつて、広汎な問題は一条のほうの問題、北さんの今指摘された集乳事業のほうの問題は、第三条の集約酪農地域の指定というところにある問題であります。即ち農林大臣はその区域内の農業の発達を図るために、酪農振興することを必要と認めたため、一定の地域を管轄する都道府県知事の申請に基き集約酪農地域を指定することができる。集約酪農地域を指定した中における計画を出しておるわけで、広汎なものじやないわけです。一定区域内です。
  143. 北勝太郎

    北勝太郎君 北海道酪農でなければ生きて行けないところなんです。これは府県においても高地とか、山のところ、そういうところにおきましては、やはり同じだと思いますから、そういう地帯の農業を発達させなければならんという目的のために、酪農北海道農業の欠くべからざるものとして役立たせるためにやられておる。そこで北海道は実際全部集約酪農地帯に指定さるべき、又指定するのが当り前の場所なのです。これは府県の水田地帯の農業とは全く違う。そういう意味でこれは必ず集約酪農地帯に全部指定すべきなんです。そうして開拓地等におい農業をどんどん改良し、又家畜を入れることによつて、家畜で食わしてもらうということにならなければならないと思います。そういう地帯の農業問題の解決は、実はこの酪農業というものに対して負わされた北海道の大きな使命なんです。
  144. 川俣清音

    衆議院議員(川俣清音君) 北さん、そういう広汎なことについて本法が十分措置していないことは私ども認める。一条で将来そういう点を解決しなければならんということで、一条にその目的を明らかにした。そこで三条は、北海道の或る特定地域の指定についての規定でありますから、その地域の指定地内における計画を示しておる条文の中に、三項一、二とあるわけですから、北さんの言われるのは一条の解釈から、修正から言つて、そういうものまで見なきやならんじやないかという説についてはその通りで、ただ三条の四項の二としては、特定面積の地域、こうなると、御理解願いたいのです。
  145. 河野謙三

    ○河野謙三君 畜産局長に三、三疑点をお伺いいたしたいのでありますが、私はこの間から申上げておるように、手許に酪農振興法というのが来ましたけれども酪農振興は結構でありますが、現在まで終戦後あなたたちの御努力によつて、ここまで積上げて来たところの全国の酪農の後退というものを防ぐということのほうが、将来を考えるより大事ではないかということを私は申上げているのです。その中で、例えば現在の餌は一体どうなつておるか、又家畜導入の計画を立てておられるけれども、これも希望多くしてなかなか要求を満たせない。それから畜舎、サイロ、老廃牛の差称え、こういうものについても農民の希望に対してなかなか変られないでしよう。あなたたちは毎年予算の獲得や何かに非常に焦つておられるが、なかなか思うように予算もとれないらしい。現在までにきまつておるところの酪農振興についてもいろいろの施策そのものについてさえもうまく行つていないときに、先のことを考えるよりも、自分の頭のはえを追うことが先きじやないか、こういうことを私は基本的に申上げておるのです。併しそれはそれとして、具体的にこの法案についてお伺いしたいのですが、先ず第一に伺いたいのは、従来の一般地域の家畜導入、これは二十九年度は乳牛の場合には幾らを予定されておりますか。
  146. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 大体有畜農家創設特別措置法によります資金枠が二十二億計上されておりまして、従つてその半数近くを乳牛の導入に持つて参りたい、かように大体考えておりますので、一万九千頭ぐらいの見当になるのではなかろうか、かように考えております。
  147. 河野謙三

    ○河野謙三君 一万九千頭としますと、今度この法律によつて集約酪農地帯が指定されますね、これは一遍にはできないでしようけれども、一応この考え方は五十カ所で一カ所三百頭ですね、そうすると、集約酪農地帯だけに一万五千頭の牛が入るでしよう。すると他の一般地区には四千頭しかないことになる。一万九千頭の割当さえも全国的な乳牛の各府県の要求から見れば、三分の一か、二分の一でしよう、そうすれば一般地区から乳牛の頭数についての要求が非常に強いときに、一方において集約酪農地帯を指定して、それに一カ所三百頭の牛をやると、こういうことで一体どうなるでしようか。
  148. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) ジヤージーを導入いたしまする集約酪農地域につきましては、一カ所一年三百頭ぐらいずつ二カ年という構想でおりますが、ホルスタイン地区の家畜導入につきましては、その地域酪農事情によりまして、全部が全部毎年三百頭ずつ導入するというふうには考えておりません。私どもといたしまして、できるだけ速かに最終目標であります五千頭近くの線になるように導入を運んで参りたいと思いますが、勿論これにつきましては、内地乳牛資源等の問題もありますし、資金枠の問題もありますし、又すでに乳牛が相当現におるという地帯もありますし、又それが稀薄であるという地帯もありますので、それらの点につきましては、その地方事情によりまして、できるだけ多数の乳牛を導入いたしたいと思つておりますが、必ずしも一遍に一地区について三百頭ずつ導入して行くというわけには参らないかと思います。
  149. 河野謙三

    ○河野謙三君 そうしますと、五十カ所のうち、ホルスタイン種を主としてやる所は何カ所ぐらいですか。
  150. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 五十カ所につきましても、これは地域別に個々の地域決定いたしませんというと、どの地域をジヤージにし、どの地域をホルスタインにするかという点につきましても……、我々といたしましては五十カ所程度集約酪農地域に指定したい、そのうちでできることならばジヤージーについては三十カ所見当を予定いたしたい、ホルスタインにつきましては三十カ所ぐらい予定いたしたいと考えておりますが、ジヤージーについての適地或いはホルスタインについての適地の問題もありますので、一応予算枠等におきましては、いわゆる飼料の自給度を向上するという場合におきましての飼料自給経営地帯におきましては五十カ所を予定いたしておりますが、その他の地域については各地から申請になつておりまするいわゆる申込の地域につきまして精査いたしまして、順次決定いたして参りたいと考えておる次第であります。その上で、これはジヤージーの適地であり、これはホルスタインの適地であるというような区分をいたして参りたい、かように考えております。
  151. 河野謙三

    ○河野謙三君 いろいろおつしやいますけれども、とにかく政府がかねて計画を立てられました無畜農家解消の年次計画によりましても、二十九年度に仮に一万九千頭いた、昨年は一万六千頭くらい、本年が仮に一万九千頭にしても、あの計画通りの数字ではありません。そういうふうなことになつておるにかかわらず、一方において集約酪農地帯を作つて、一万五千頭とは行かないまでも、とにかくこれに三千頭なり、五千頭のものをこの中から割かなければならないでしよう。そうすると、かねての政府計画と今度の酪農振興法によるところの集約酪農地帯計画と全くこれは盾矛するじやないですか。それとも最初に我々に約束しましたところの無畜農家の解消という計画は放棄されたのですか。
  152. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 昨年の有畜農家創設によります乳牛の導入構想でありまするが、これは大体集計いたしまするというと、一万八千頭近くになるのじやないかと、かように考えております。乳牛に対しまする希望が各地区とも多いのでありまして、乳牛の導入割合は他の家畜に比べまして増加いたしておりますので、さような恰好に相成つております。二十九年度におきましては、大体一万九千頭にいたしたい。さように考えておる次第であります。すでに一昨年来、有畜農家創設による家畜導入につきましても、各地方ごとにおのずから酪農の適地というものがありますので、その地域にできるだけたくさんの乳牛を導入するという趣旨で参つておるのであります。又そのうちで、更に最も適した地域を指定するというような恰好に相成つて参ると思うのでありまするが、すでに現在の導入におきましても、いわゆる酪農適地というものを一応大きく選定いたしまして、その地域に導入をいたしておる、こういうような事情に相成つておりまして、更にその点をもう少し具体的に細かくやつて行くと、どういうような恰好に相成つて参るかと思うのであります。集約酪農地域に指定いたしました地域につきましては、勿論有畜農家創設の精神によりまして、その精神に副つてつて行く、従来におきましても、各酪農地域ごとに有畜農家創設のための乳牛を導入をして行く、こういうようなことで進んでおりますので、その点を更にもう少し具体的に有畜農家創設の線に沿うて、その線を織り込んで一緒になつてつて参りたいと思う次第であります。
  153. 河野謙三

    ○河野謙三君 いや、私が考えておるのは、かねて計画を立てられました無畜農家解消の年次計画があります。これと今度のあなたのほうの計画とは矛盾しているのじやないか。例えば、今、北先生から、この法律が通つた以上は、北海道は全部集約酪農地帯の適地だと、御尤もだと思います。それに私は異論は挟めないと思うのです。そういうことになつて来ますと、一体従来の一般の酪農地帯はどうなるのです。私は北海道はいけないというのじやないのです。それは勿論北海道は適地であり、乳牛に最も重点を置くべきだと思うけれども、少くともこの法律が通ると、北さんの言うような要求をなさるのは当り前です。そうなると従来の計画一体矛盾するじやありませんか。それも導入計画集約酪農地帯に一万五千頭を入れる、これとは別枠で一般地帯のやつは相変らず一万九千頭を置くと、こういうふうになるのです。そうすると、牛が不足して牛の値段が膨脹すると、こういうことになるのでしよう。どうしても私は従来のあなたたちが考えておられましたことと、今度のことと非常にそこに矛盾があると思うのですが、どうですか。
  154. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 有畜農家創設の場合におきましては、二十二億の予算を以ちまして、牛、馬、和牛、乳牛、緬羊と、こういうふうな種類の動物を導入することになつて計画を立てておるのでありまするが、その場合におきまする乳牛による有畜農家創設につきましては、すでに酪農適地に乳牛を導入する、こういう大体の構想の下に計画を立てておるのであります。酪農適地じやないところの有畜農家創設につきましては、できるだけこれは、勿論全部一律にそういうふうにやるというわけにも各地事情によりまして参らんので、二割程度のものにつきましては、各地地方実情に副うように措置はいたしてありまするが、原則といたしまして、乳牛につきましては酪農の適地に有畜農家創設の場合におきましても導入して参ると、こういうような形をすでにとつているわけでありまして、この場合の酪農振興法による集約酪農地域につきましては、更にそれを細かく具体的に持つて行くというような恰好に相成つて参るのでありまして、決してその点について矛盾は生じないと、かように考えておるわけであります。
  155. 河野謙三

    ○河野謙三君 私は酪農の不適地に何でもかんでも農家が希望するからといつて希望のままに牛を入れろとは言わないのですよ。私は先ほどお話がありました、附近に牛乳処理場もないようなところを三頭か五頭飼つたからと言つてそういうものを一々相手にしているのはいかんと思う。それもあなたのほうの酪農振興基本方針の中にいろいろ書いてあるわけなのです。そういうことを言つているのじやなくて、とにかく全国にあなたのほうの基準に合うところの酪農の適地というものが、殆んど全国各府県にべた一面あるわけですよ。それから出て来る要求というものは、一年に三万頭も五万頭も出て来ているわけです。これには早く何とかして牛を世話してやりたいということは、畜産局長も変らないでしよう。それは変つておりますか。今度一方においてこういう法律を出して集約酪農地帯を指定して、内地の一般の酪農の適地であつても、こちらの方にウエイトをうんとかけて行くから、三年なり五年なりお前のほうは待てと、こういうことですか、それを私は聞いているのです。
  156. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 御承知のように集約酪農地域を設定いたしました場合に、これはウエイトのかけ方の問題に相成ると思うのであります。私どもの期待いたしておりまするのは、年年いわゆる導入頭数も殖えるし、資金も殖やしたいと、かように考えておるのでありまして、この点につきまして、現在の状態におきまして急にそのウエイトを集約酪農地域に一度にかけますというと、お説のような事態が生じて参るのでありまして、その点につきまして、程度と申しまするか、ウエイトのかけ方につきましては慎重に考慮を払つて参りたいと、かように考えておるのであります。その意味合から私ども理想といたしておりまする一地区に三百頭必らず導入するというようなやり方ではなしに、そこらの事情を勘案いたしまして、現にすでに乳牛が相当おるというような地帯についての集約酪農地域につきましては、その箇所に導入すべき頭数の割合を減らすというような、そういうような措置をとりまして計画を実行して参りたいと、かように考えておりまするが、いずれにいたしましても、最終の目標といたしまして、草資源と自給飼料によつてできるだけ乳牛が飼育されるような集団的な地帯につきましては、一応そういうような態勢を急速にとつて参りたいと、かような考え方の下に集約酪農地域という制度を立てて参りたい。これは従来からやつております酪農適地におきます乳牛の導入という基本的な線を、更に具体的に進めることにも相成りまする半面、従来やつておりましたような点こついて、全然ほかの地帯には乳牛を導入しないというようなことは勿論考えていないのであります。それらのやり方につきましては、酪農発展と同時に、又政府の予算の枠というものも考えまして、調整をとつて参りたい、かように考えておるわけであります。
  157. 河野謙三

    ○河野謙三君 私は酪農振興法の考え方そのものを否定するものじやないのです。ただ先ほどから申上げておりますように、従来年次計画を立てて酪農振興について、いろんな諸施策をやつておる。これがまだ緒に着いたばかりで、中途半端なのです。そのときに、いわゆる二兎を追うものは一兎も追えず、両方失うようなことになつていかんじやないか、そこでこの考え方を否定するものじやないけれども、時期の問題です。今これをやることによつて、何と申しましても、従来のあなた方の計画に非常に齟齬を来たす、非常な影響があるわけです。全国の北海道を抜いた各府県の乳牛の密度を見て御覧なさい。非常にまばらでしよう。これは要するに経済単位に行つていないのです。少くとも、一つの村で始めた以上は、その村で牛乳が一日にトラツク一台ぐらいできるようにしなければ、集乳費が余計かかるわけです。運賃も余計かかる、その運賃はみんな生産者が負担する。だから手を付けました以上は、一日も早く内地のこれらの酪農地帯を経済単位まで引上げるように、金の面でも物の面でも、あらゆる面で集中しなければならないと思います。そういうときに、ちよつと道草を食つたと申しますか。このほうへ色目を使つたら、これは私はとんでもないことになると思う。そういうことを申上げているのです。非常にこれは影響があります。一万九千頭のもののうち、新たな集約酪農地帯に相当量を割かなければならない。ところが一方、要求がないならいいけれども、たびたび申上げますように、三万頭も五万頭も、計算の仕方によつては一般の地域から十万頭も要求があるわけですから、その中にはあなたのほうの基準に合わない要求もあるでしよう。併し基準の条件に合つたところの要求が少くとも一万九千頭や二万頭じやないのです。本年度もこれを中途半端にするようなことはいかんと思う。更に私は次にもう一つ伺いたいのですが、一体資金の裏付はどうなつているのです。今年は予算を余計とつてあるのですか、公庫の金は幾らあるのですか。畜舎、サイロ、老廃牛の差称え等で、いろいろ低利資金を斡旋してやらなければならない。従来公庫に組んであるところのこれらの予算というものは、これは今度の集約酪農地帯には何ら関係のない金額、従来の計画従つて使われる金ですか。集約酪農地帯のこの法案が通ると、集約酪農地帯の指定地域に対する再会、サイロ、こういうものに対する予算は、一体どうなつているのですか。
  158. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 農林金融公庫の資金枠といたしまして、大体酪農関係施設というものを含めまして、その当時といたしまして、大体七億を計上いたしておるわけであります。その中に畜舎もあるし、サイロもありますし、或いは乳業施設というようなものもある。
  159. 河野謙三

    ○河野謙三君 そうしますと、今度の指定地のほうに当然やらなければならない金もある、従来の一般の酪農地帯にやらなければならない金もある、そりでしよう。この法案によつて必要な金は一体どのくらいありますか。
  160. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 総額の範囲内でありますから、当然今度設定いたします集約酪農地域におきましても、以いはその他の地域におきましても、これは経費が充当されるということになります。
  161. 河野謙三

    ○河野謙三君 私の計算では、大体集約酪農地帯に指定しますと、そこに牛を入れると、サイロ、畜舎だけでも、牛一頭当り、四万円、五万円の金を入れなければならない。そうすると、これは相当莫大な金になる。これは指定した以上は、当然あなたのほうで責任を持つて資金の裏付をしてやらなければならない、これを優先的にやらなければならない。そうしなければ一般の事業というものに応えられないじやないですか、私はそう思うね。
  162. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) その点につきましては、予算枠なり、資金の枠なりの獲得力につきまして、私どもといたしましても今後とも最大の努力をしなければならないと考えておるのでありまして、本年度につきましては、それらの点を十分に勘案いたしまして、経費を使つて参りたいと、かように考えておる次第であります。
  163. 河野謙三

    ○河野謙三君 あなたが努力されることは私は信じますし、努力どころじやない、あなた方が寝る目も見ないで畜産の振興に努力されていることは、私本当によくわかつております。わかつておりますけれども、遺憾ながら従来の財政当局の考え方はそう甘いものじやないので、今後来年度においても減らされるのはともかく、殖やされるような可能性はないのですよ。でありますから、先ほどの牛の問題と同様に、酪農振興の資金の面でも、二兎を追つて両方とも中途半端になるのじやないか、こういうことを私は懸念しておるので、これはいずれよく私の考え方をもう少し具体的にまとめて御質問したいと思いますが、更にその次にちよつと伺いたいのは、昨日も江田さんから、この振興法は河野が言うには乳業振興法だと、こういうことを言つておると言われましたが、確かに私はそういう臭みを感じておる。というのは、私は委員長にこの際お願いいたしますが、早急に中央金庫と北海道雪印名前北海道乳業と言いますが、あの会社との関係を少し聞きたいと思いますから、中央金庫を参考人に呼んで頂きたいと思います。今手許にもらいましたこれによりましても、資本金以上のものを中央金庫だけで貸付しておるわけです。而もこの資本は北先生の御説明にもありましたが、成るほど株主は生産者が過半数でありますけれども、それにしてもこれは一般株主というものは二割五分ぐらい入つておる。中央金庫から見ればこれは員外貨付です。純然たる員外貸付です。中央金庫の貸付についても私は疑いを持つておる、同時に私は一般の株主であろうが何であろうが、北海道雪印というのは天下公知の事実であつて、これは生産者会社だということはわかつておる。それを揚足を取ろうとは思わないけれども、この会社を救うことと北海道農民を救うことと一致しなければいけませんよ。この会社を救うことによつて北海道農民が犠牲になることはできませんよ。私はそれを考えるから、この際これは救いたい会社です。けれどもつて救えないものならば、この際一刀両断に出直すことが私は必要だと思う。北海道農民がこれによつて救われるということになるその見極めが、私は北海道の人間でありませんから、不幸にして付かない。いずれにしても、この会社は非常に不良の会社であるということは間違いない。私の聞くところによると、販売の売掛代金だけでも不良貸付が五億を超えておる。曽つては内務官僚の、今建設大臣をしている戸塚さんや何か集まつて販売会社を作つてその会社が潰れた。今度黒澤さんの何とかいう親戚の人が、神田で草野商店とかいう代理店をやつておるが、これが参る一歩手前だという。その他営業上非常にふしだらなことが重なつておる、私が調べたところでは……。こういうことは雪印の不幸であつて、同時に北海道酪農民の不幸であります。だから雪印を救うことが同時に北海道農民を救うことであるならばいいが、併しものは深みに入るということがある。そういう意味合で、今度法律によるところの乳業集荷業者の指定の問題がありますが、これは成るほど酪農指定地域に、例えば雪印会社がある、そこで新らしい会社は許可しない、こういうことによつて雪印なら雪印というものは救われるかも知れませんけれども、それをすることによつて必ずしも農民の利害というものは一致しない。今日まで酪農が盛んになつたのは、一つは生産に対して非常に需要が多かつた処理機関が非常に能力が多かつたというところで、娘一人に婿八人という形で、久し振りに酪農業が売手市場に廻つたということが非常に大きな酪農振興の基礎になつておる。社会主義の機構なら別でありますけれども、今の資本主義の機構において、ものを平面的に考えて、生産量と加工能力というものは常にマツチしなければならないということを考えることは、農家のためにとんでもない不幸であります。常に処理能力がオーバーしているところに、農民から見れば売手乳場であつて、そこに乳価引上げもできるし、いろいろの取引の条件も付くわけです。そういう点からいたしまして、目下のところ第三節の乳業の認可、許可の点につきましては、非常に農民の立場において私は疑いを持つておる。そういう点においてお考えなつたことがありますか。
  164. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 第三節におきまして、集約酪農地域につきましては地方長官の承認を求める、こういうような恰好に相成つておりまするが、その趣旨といたしまするのは、飽くまで不合理なる乳業というものが濫立いたしまして、その結果非常に不健全なる乳業経営になり、それがコスト高の原因になり、同時に共倒れというような現象になりまして、延いては酪農民決定的なる影響を与えたというような例が過去におきましても再々に亘つて行われたような現象があるのでありまして、この点を何とかして是正いたしたい、少くとも集約酪農地域につきましては、そういう不合理な状態が濫立することは防止いたしまして、合理的な経営というものがやつて行けるようにいたしたいというような趣旨から、こういうような条項を設けることにいたしたいと思うのでありまするが、これは何も乳業資本なり、或いは特定の会社なりを擁護するとかいう考え方は毛頭ないのであります。ただ、そのやり方によりまするというと、お説のように反射的な作用といたしまして、独占的な弊害というものも考えられますので、これらの点につきましては、行政当局といたしましてはよく一つ考えて行かなければならない、かように考えるのでありますが、乳業集約酪農地域におきまする全体の契約の場合におきましても、酪農民協同組合或いは当該の市町村、こういうような各方面の地元農民の意向を十分に取入れて、こういうことで、ただ乳業資本なり、そういうようなものに反射的に利益を与えさせるというようなことがないように是非やつてもらわなければならない、かように考えておるわけであります。
  165. 河野謙三

    ○河野謙三君 いや、私は畜産局長の人柄をよく知つておりますから、あなたが乳業資本を擁護しようとか、そういうふうなお考えなんというものは毛頭ないということは、誠心誠意酪農振興について一図に考えておられることは私はもう全然疑つておりません。ただ結果において酪農農民を不利益に陥れるようなことがあつてはいがんということで私はいろいろお尋ねしているんですが、そこで一体今加工業の施設ですか、この施設を合理的に持つて行きたいと言われますが、これは具体的にはどういうことですか。乳業の生産量と加工能力というものはこれは常に並行して行きたい、こういうことでしようか、それが合理的という意味ですか。
  166. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) これらの点につきましては、合理的と申しまするか、そこに相当の余裕があるということは当然必要じやないかと思いまするが、不当な施設が濫立いたしておりまして、工場がおのおの少量のものばかりやるというような形になつて参るというと、非常に不健全な酪農施設と相成りまして、延いてはどの施設も中途半端になりまして、負担せざるを得ないという事情になるのじやなかろうかと思うのであります。そういう形態というものはできるだけ防止して参らなければならん、かように存ずるのであります。一工場当りの能力等につきましては、将来の問題もあるのでありまして、その地方事情に応じまして最終目標というものを考慮に入れまして、どういう状態の場合に何年後にはこういう計画になるので、このくらいの施設をする、こういうような合理的な計画を、大体私どもといたしましては考えておるような次第であります。
  167. 河野謙三

    ○河野謙三君 畜産局長、少し大事をとつて、抽象的にものを言われますけれども、私が伺つているのは、例えば牛乳日産千石なら千石の府県があるとした場合には、その府県にあるところの加工業施設というものは、一体千五百石ぐらい持つておるほうがいいか、二千石持つているほうがいいかという生産力と加工能力の比例というものを、一体どういうふうにお考えになつているかということを伺つておるわけです。これは質問も非常にむづかしい質問でありますけれども、この機会に私は附言いたしますが、我々農林委員といえども、ただ農民の利益だけ考えればいいということは考えていませんけれども、一応この際我々が牛を飼つても、農民の立場だけを考えた場合、これは工場がたくさんできることは好ましいのです。幾らできてもかまわないのです。余計できればできるほど農家は条件がよくなるのです。買手市場が強くなるのです。その結果不当な競争をして潰れるのは乳業者であつて、農家はその間において非常に条件に恵まれるわけです。そうじやありませんか。さればと言つて、今私が申上げるのは、これは牛を飼つている農民だけの立場で言うのであつて、国の大所高所から見た場合には、それにも限度があるので、或る程度乳業の施設についてもチエツクをして行かなければならない。これは私もわかります。併しチエツクをするのが必要であるからといつて、あまりそれを極端にやられると、農家は、今度は買手市場に廻つてしまうわけです。乳を搾つている農家というのは、私はよく田舎へ行つて言うのだが、冷蔵庫を持たない氷屋と同じなのです。どうにもならないのです。冷蔵庫がなくて氷屋をやつて御覧なさい。買手がなければ捨てるより仕方がないでしよう。そういう非常に弱いものなのです。それを考えましたときに、これは酪農処理乳業、この事業の認可を許可するというということは簡単にやつていかんここです。それを非常に割切つて第三節に書いておるのだが、こんな農家が迷惑をするものはありません。これは先ほどちよつと私槍玉に上げましたが、この三節は雪印のためにもいいし、森永明治のためにもいいのです。併し酪農民のためにすれば非常にこれは大きな問題です。私はこれに非常な疑いを持つている。これについてもう少し具体的に一つ畜産局長の御説明を頂きたいと思います。
  168. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) この集約酪農地域におきまする乳業につきましては、本法によりまして、地方長官の承認を得るということになつておりますが、この法律規定の精神といたしましては、いわゆる不合理な乳業の濫立というものを防止するという趣旨であるのでありまして、合理的な乳業の成立は決して阻んでいないのであります。従つて規定の形式におきましても、各号に掲げております条件を満しております場合においては、地方長官乳業の申請を阻んではならないという規定の書き方をいたしておるのでありまして、この精神といたしますところは、飽くまで不合理なものの濫立を防止いたしたい。かように御了承を願いたいと思うのであります。従つて単数制というようなものを我々も念頭に置いておるのではないのでありまして、酪農振興計画なり、何なりにおいて、その当該地方において複数制というものが常例であるというようなことになりますれば、勿論合理的に複数制で、新らしく工場を施設することも結構でありましようし、併しながら、これは飽くまで当該集約酪農地域におきまする酪農協同組合、或いは個々の生産者、或いはその地方農業委員会、こういうようなものの大方の意見によりまして、それらの地方の具体的な計画において処理して参りたい。決してこれは単数制の独占を考えておるとか、そういうような点は毛頭考えていないのであります。飽くまで不合理なものの濫立を防止したいという考えで、条件を備えてさえおれば、阻んではいけないという考え方をいたしておるのであります。
  169. 河野謙三

    ○河野謙三君 そこで考え方はよくわかるのですが、合理的というのは何か。私が受ける印象は、例えば神奈川県なら神奈川県に一日千石の牛乳ができると考えた場合に、神奈川県の合理的な加工施設というものは千石の処理能力というふうにお考えになつているのではないかと思うのです。そういうことは農民のために非常に不合理な考え方です。同時に一方あなたのほうでは五カ年計画、十カ年計画で畜産の増殖計画をやつておられる、どんどん殖えて来るのです。農民の立場からみれば、今日は合理的であつても明日は不合理になる。そういう場合に考え方はよくわかりますけれども、具体的に合理的とは一体どういうことをあなたは言つておるわけですか、その物指しを示して頂きたいと思います。同時に時間が長くなりますから私は続けて申しますが、仮にあなたが集約酪農地帯に、この地帯の処理能力というものは幾らが合理的であると言つてきめまして、それ以外の企業許可につきましては不許可にしたといたしましても、これはナンセンスだと思います。例えば神奈川県一帯を集約酪農地帯に指定した、神奈川県に牛乳工場を作ろうとすると、これを許可しない、許可しなければ六郷の橋からこつち方に作りますよ。県境に箱根山のようなものがあれば、三島に作るというわけにもいかんけれども、東京と神奈川の間は、神奈川には作れないけれども六郷に作りますよ。逆に東京都を集約酪農地帯に指定する、東京で作つていかんと言えば、赤羽の橋向う、埼玉県に作りますよ。こういうことはナンセンスですよ、そういう面から育つても私はこの法律の第三節というものは、法律としては権威のないものと思いますが、その点はどうでしようか。
  170. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 処理能力の点につきましては、これは要するに相手方と申しますか、その地域におきます処理工場が複数であるか、単数であるかという問題とも関連して参ると思うのでありますが、いわゆる処理能力自体といたしましては、生産量にできるだけ見合つた、而も酪農は長期計画でありますので、一時的な現象をとらえての見合でなしに、長い目で見た場合の、いわゆる酪農振興とも見合つた処理能力を育てるということが最も合理的じやないか、かように考えております。
  171. 河野謙三

    ○河野謙三君 まあ私は疑問点が少しも氷解しないのですが、このまま一応私のお尋ねしたい点を順次お尋ねしたいと思いますが、次に……。
  172. 清澤俊英

    清澤俊英君 丁度いい問題が出ておりますので関連でちよつとお伺いしたいが、処理工場を合理的に置くというようなことを盛んに言つておられますが、実際問題として、集約酪農地帯というものができ上りました場合に、旧来の工場でもあれば別ですが、新らしくそこへ工場ができます場合には、それを地方農民としては成るべく中央や若しくは定評のある乳業者、いわゆる森永明治あたりから入つてもらうよりは、その地方処理して行きたいという希望が非常に強いと思うのです。そういう場合に資金面が一つ考えられておりませんければ、これは結局これだけの酪農集約地帯を作つて、例えばジヤージーの場合を考えてみましても、五千頭で百五十石が大体基本になつているように考えられますので、そういう大生産地区ができて、そこへ工場を作る場合に、その工場を作ることに対して何ら擁護がないとしますならば、これはもう必然的に地方農業委員に聞いてみましても、農業協同組合の幹部に聞いてみましても、結局は資金の面でまあ或るところから持つて来ないというような形になつて、そこへ又いろいろな魔の手が伸びて来て、結局落着くのは明治森永の新設ということが、実際上の道行きから結論的にそういうものができ上つて来やせんか、こう私は考えますが、そういう点はどうなんです。
  173. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 集約酪農地域乳業との関係でありまするが、いわゆる乳業自体を特別に取り出すことではなしに、集約酪農地域につきましては、乳牛の導入からそれに伴いまする各般の施設、特に飼料計画或いはそういうような一連の計画というものを、地方実情に即応するように農業協同組合なり、農業委員会なり、そういうようなものの意見によつて具体的に計画を立てるわけであるのであります。その場合に農業計画集約酪農地域における一連の計画一つとして考えるわけでございまするが、当該地方におきまして、酪農施設というものがない場合において、その中央におきまする農業協同組合等の意思によりまして、自分たちで酪農施設を作りたいというような場合におきましては、その施設につきましては、御承知の通りに農林金融公庫の金を融資するということに相成つておるのであります。なお運転資金等につきましては、協同組合系統機関のいわゆる運転資金というものが考えられるのでありまして、自己資金等につきまして、これは別問題でありまするが、施設資金と運転資金につきましては、これは十分賄い得るのじやなかろうかと、かように考えるわけであります。
  174. 松永義雄

    ○松永義雄君 これは東京に本店を持つているものが、随分他府県へ来て支所というか、そういう施設を作ることの許可を求めることができるのですか。
  175. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) これはこの場合の施設の承認は、施設ごとの承認でありまするので、勿論営業免許のような筋合のものではないのでありまして、従つて施設ごとに承認をするということになりますので、経営主体などには関係がないということに相成るだろうと思うのであります。従つて全国にいろいろな乳業施設を持つておるものにつきましても、当該施設を当該地域について施設しようと思いまする場合には、その地域地方長官の承認を得る、こういうような恰好になるのであります。
  176. 松永義雄

    ○松永義雄君 東京に大資本経営しているものが、どんどん施設を作つて許可をとれば、丁度大銀行が地方の資金を集めて東京へ集中すると同じように、東京の大資本がどんどん進入して行くということを許されるということになつておりますね、この規定では……。それは禁止するわけには行かないのですか、この法文は……。
  177. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) その点は当該地域につきましての施設を新たにしようとします場合には、これは地方長官の承認を得るわけでありますから、地方長官において承認をするその前提をなします集約酪農地域におきまする酪農計画において、そういう前提を持つております場合には、そういう結果になると考えております。
  178. 清澤俊英

    清澤俊英君 今の問題ですが、局長は施設資金並びに運転資金等ぐらいのものは、農業中央金庫からの融資で賄えると言われるが、法案を見ると、そういうものがはつきりと義務付けられていないですが、斡旋融資をするぐらいのもので何ら義務付けられてない。実際問題としてそういう金を借りるべく事実においてやつてみますと、なかなか面倒である。面倒でうろうろしているうちに、どうかと言えば、そういうものが始終でき上る、こういうふうに考えられる。これは一つ間違いますと、丁度初期の養蚕業が片倉やその他の大製糸によつて、集約的な大工場発展はしましたが、最近はだんだん分割工場を造つて地方的にこれを分割して行くことがいいというので、片倉自身がやつている。こういうような線が出て来て、終いに一つの大産業が独占的な大きなものになつてしまつた場合には、地方的にあとへ戻すのに大変な問題であると思う。初めからそういうものをちやんと考えて、農民酪農として考えるならば、それが基本としてやはり同じ集約酪農地帯を作つて行きますにも、それらを基本にしたものがもつと法案の中に出て来なければならないと思うのですが、そういうものが少しも見えないところを見ますと、そういう点に対してはどういう考えがあるのですか。
  179. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 集約酪農地域におきまする各般の乳業施設なり、或いは餌料の自給なり、畜舎等の問題なりにつきまして、政府資金と申しますか、予算をできるだけ多額に導入いたしますと同時に、各般の資金の斡旋に努めなければならないというような意味合におきまして、法文に第八条といたしましてその趣旨を規定いたしておるのであります。政府といたしましては、この法律の精神に基きまして、できるだけそれだけの予算を獲得し、且つ資金につきましても、そういう希望がありまする場合におきましては、これが獲得に努力をすべきものであると、かように考えたわけであります。
  180. 清澤俊英

    清澤俊英君 大体百五十石の牛乳の小売値段ですが、乳業施設の一般的なものを一つやるとしたら大体どのくらいかかるのですか、資本金と、これに対する収入から売上回収に対するまで相当期間がかかる、この乳業に対しまする運転資金等を考えたらどれくらいかかりますか。
  181. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 百五十石程度処理いたしまする合理的な施設ということになりますと、少くとも一億以上、大体一億近い金が要るのじやないかと、かように考えられるのであります。勿論これは百五十石処理するにいたしましても、連鎖式の最も進んだものを作るか、或いはそれまで至らん程度のものにするかによりまして、金額は大きく違うと思うのでありまするが、少くとも百五十石ということになりますれば、一億程度のものは施設費として少くとも要る、標準的ないいものになりますれば二億近いものが要るのじやないか、こういうふうに考えられるのであります。同時に、これに伴いまするいわゆる運転資金というものも、これは相当金額といたしましては多額のものになるのじやないかと思うのでありまするが、集約酪農地域を設定いたしまする場合に、新たに工場を作るというような場合におきましては、当初におきましては、どうしてもそれだけの乳牛は集まらんのでありまするから、順次そういうような最終目標に到達するまでの段階的な措置といたしまして、小規模のものを作つて行くというような恰好に相成るのじやないかと、かように考えるのでありまするが、初めの段階におきましては、そういう多額の金額を見るというふうには考えていないのであります。
  182. 清澤俊英

    清澤俊英君 厖大な資本がここに入り用になりまするが、これは実際問題として今の情勢から見ますれば、そう簡単に借りてすぐ作るなんということは、斡旋をするくらいのことを言うておられる範囲では、私はなかなか実際上としてはできないだろう、結局斡旋はどつかの有力工場の誘致が関の山になる、こういうふうに考えておる。そこで一つ間違えましたら、折角こしらえた酪農地帯というものは殆んど大会社の食い物になる、こういうふうに私らは非常にその点だけは憂慮しておる。実際問題としてできるだろうか、今あります酪農工場等が、地方的な酪農工場等が中金等に行つて金を借りる、県信連から金を借りる。大体貸しておりますか、貸しておりませんよ、これは……。森永等の大工場を持つて来るよりほかないのであります。非常に冷遇せられておる。そういう建前の場合に、実際これをやりますということになりますならば、別な線がここへ出て来る、結局実際上の問題は別な線が出て来て、事実は大工場の新工場ができ上る、若しくはその工場を中心にして集約酪農ができ上る、それを助けるような一つの方式になつて来やせんかと、こう思われるのでありますが、くどいようですが、お伺いしますが、まだあとお伺いしたいけれども、明日でもゆつくり整理してお伺いすることにいたします。
  183. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 実際問題といたしまして、なかなか資金等の借入ができないというような関係もありますので、特に法律第八条を新らしく設けまして、そういうことのないように一つ制度として措置をしろという立法趣旨であるのでありまして、今後におきましては特に集約酪農地域につきましては、そういうことのないように措置をして参りたい、かように考えておるわけであります。
  184. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 話を聞いてみると、今、清澤さんの言つた集約酪農地域の単位のことは、これは農林省のほうでおつしやつておるが、そうすると、その単位の集約酪農地域の完成というものは恐らく効率的な年次でやつて行く、六年とか七年とかいう年次になつて来る、そうしますと、そういうふうな効率的な完成速度で以て集約酪農地域というものを完成して行くとすれば、一体全国で以て今のような御計画で、実際にその集約酪農地域が指定できるのはどのくらいなピツチで、どのくらいな箇所数が指定できて行くかということを実は承わりたいのです。それは集約酪農地域計画というものを一度に綱をかぶせるのか、そういうような計画に基いてそれだけやつて行くのに、そこで以ておのずからそのものの範囲が限定されて行くような気がするのですが、それを実は承わつておきたい。
  185. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 只今の御意見でありますが、集約酪農地域におきまするいわゆる最終目標と申しますか……。
  186. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 いや、私の言うのは最終じやないですよ、ピツチなんですよ、問題は……。
  187. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) その最終目標に到達しまするためのピツチという点につきましては、これはできるだけ年次を早めたほうがいい、こういうふうに考えておるのでありまするが、他面乳牛につきましては、御承知の通り自然増加頭数というのがあるのでありまして、それらの自然増加頭数の絶対数と、それから地域の数と申しまするか、これらの点を勘案いたしまして、自然増加頭数の全体を或る地点に導入するということになりますれば、これは或る地点としてのピツチは非常に上るということになりますが、他面そういうことになりまするというと、集約酪農地域の指定の数を非常に少くしなければならんという条件になつて来るのではなかろうかと思うのであります。これらの点につきましては、これは実際に本法を運用する場合の非常な重要なポイントになるのではないかと思うのでありますが、御承知の通り各地から相当の希型箇所もあるのでありまして、一地点にのみ希望を満たすというような事情にも参りませんので、これらの点につきましては、一つ実情に副いますように、又できるだけ各地方の希望にも副いまするように措置をして参りたい。理想から申しますれば、できるだけ少ない地点を集中的に且つピツチを上げてやるということが理想的であり、合理的であると思うのでありますが、地方にいろいろな事情もありますし、又非常に要望も強い問題でありますので、さような点につきましては、環境の点につきましては慎重を期して参りたい、かように考えております。
  188. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 今の御答弁では、慎重を期してやるんじや答弁になつていないんで、大体の見当が一カ年間に三地区くらい指定するんだ、或いは五地区くらいまでやりたいんだ、それでいいんですよ、回答は私はそれだけ聞いているんです。
  189. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) その点につきましては、大体五十ヵ地区くらいなものは指定して参りたい、かように考えておるのであります。ただその中にはジヤージーを導入して参りたいという地域と、ホルスタインを導入して参りたいという地域があるのでありまして、ジヤージーにつきましては外国から持つて参ります関係上、予算の面と更に輸送能力と他の事情がありまして、たとえ二十カ所を想定して指定をいたしましても、現実にそこに一度に三百頭持つて行くわけにも参らんというような事態も出て参るのでありまして、これは私どもといたしましては、できるだけ多数のジヤージー種の乳牛の導入を図りたいと思いますが、予算がない、或いはほかの面で大いに縛られるという面が出て来ると思うのであります。ホルスタインについて考えてみますと、三十頭の地区につきましても、これにつきましても、すでに乳牛の相当おる所といない所で導入頭数もおのずから違つて参ると思うのでありますが、理想といたしましては、できるだけピツチを上げて各地区ごとに図つて参りたいと存じております。
  190. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 今五十地区くらいを指定すると、こう言われて、今百地区と言われたんですが、五十地区、五十地区とやつて百地区を完成する、こういう意味ですか。
  191. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 各地区と申上げたのです。
  192. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 五十地区は一度指定して毎年五十地区やつて行く意味ですか。
  193. 大坪藤市

    政府委員大坪藤市君) 毎年五十地区をやつて参るのではなしに、いろいろ申出もありますので、今年度の問題といたしまして五十地区くらいは指定して参りたい、かように考えておるわけであります。来年度におきましては、いろいろ予算なり或いはその他の融資の問題なりを睨み合せまして考えて参りたい、かように考えております。
  194. 江田三郎

    江田三郎君 先ほど時間がなかつたから私途中でやめにしたんですけれども、ここへ出ている資料で言つて生産費とそれから最終の販売価格の問題なんですけれども、バターやチーズのほうはなかなかちよつと計算がしにくいわけですが、一番簡単な牛乳について見ると消費量は殖えている、都市の場合には一戸当りの消費量というものが殖えている、従つてこの販売費というものは当然単価が下つていると思うのです。これは常識で下るわけです。一戸当りの消費量が殖えておれば、どうしたところで純販売に要する経費というものは減つていると思う。ところがその市販乳の小売価格というものが二十六年の東京の場合に十三円六銭が二十七年に十三円五十六銭になつて、二十八年が十四円二十一銭になつておる、つまり一円十五銭高くなつている、ところが生産者のこの受ける価格で行くというと、二十六年の四十三円六十二銭が二十七年の四十六円九十八銭、二十八年の四十七円ということで三円三十八銭しか殖えていないわけです。片方は一合当り、片方は一升当りですから、この小売価格がそれだけ上つておれ、は当然生産者の受けるこの原料の価格というのももつと上つて来なければならんはずなのが、そういう工合に上らない、販売コストは下るはずであるのに、こういう答えしか出ていないというところに、どうしても私どもの納得の付かない点があるんで、まあそういう点がこの相撲のテレビにちらちらしたり、河野君のいわゆる三原橋だつたか、数寄屋橋だつたかの大きな歴史的な記念物になるような広告塔が出ているんですが、そういう点についてなぜ一体こういうようなことになつているのかというようなことを、明日でいいですから、一つよくわかるように説明して頂きたいと思うのです。ただいい加減な説明でなしに、どうしても我々こういう点を考えるというと、この生産原価の合理化による切下ということだけあなた方言われるけれども、そうじやない、本当酪農振興して行くためには、生産原価でない、片方の乳業のほうに大いに合理化すべき点が残つているんじやないかという点が、どうしても頭の中にこびり付いておりますので、そういう点を納得行くように説明して頂きたいという点と、それから生産費の問題については委員長からも質問がありましたが、統計調査のほうでやつておる、こういうことですが、どうしても将来助言等をする場合に生産費の問題が大きくなつて来ますが、ところがこの資料で見ますというと、現在漸く二十六年の生産費が統計調査のほうから出ておる、一十七年か近く出るであろうと、こういうことなんですが、二十九年の五月になつてまだ二十七年の生産費も出て来ないということでは、これはまあやつてみたところで当座の急には間に合わんわけであつて、そういうようなものでなしに、もつと迅速にかようなことができないか、こういう問題が出て来ると思うのです。そこでこれについては幸い明日河野委員の要求で中金を呼ばれるそうでございますが、そのときに統計調査のほうを呼んで、もつと迅速な生産費の調査が出るか、出ないか聞かして頂きたいと思うのです。それだけです。
  195. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) ちよつと速記を止めて。    〔速記中止〕
  196. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 速記を一つお願いします。先ほど河野委員から、本法案に関連して農林中央金庫の当局を参考人として出席を求め、意見を聞くことにいたしたいとの御要求がありましたが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  197. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。なおその日時及び人選は委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 河野謙三

    ○河野謙三君 異議ありませんが、できれば更級さんだけは忌避して頂きたい。ちよつとあれは駄目だ、禅問答になつちやつて……。
  199. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認めます。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十四分散会