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政府委員(大坪藤市君)
只今の御意見の
通り、酪農を振興させますためには、最も優秀な草を造成しなければならない。而もそれを徹底いたしまするためには耕作に進まなければならん、御意見の極りだと思うのであります。従来この方面におきまして非常に立ち遅れと申しますか、遅れておりまするのは、現在までの家畜は主として和牛なり、或いは馬なりでありました関係上、そういうような進んだいわゆる草資源の改良ということが、ぴつたり現在までの畜産と経済的にマツチしなかつた、逆な言葉で申しますると、そういうような経費をかけて、手数をかけて革の改良をいたしましても、和牛なり、馬なりというものは経済的効果がぴつたりと当てはま
つて参らなかつたというような点が、牧野の改良というような点につきまして、現在まで立ち遅れを来たしております非常な原因ではなかろうかと、かように考えるのであります。併しながら、乳牛の飼育ということが中心にな
つて参りまするというと、その間の
事情は全く一変して参るのではなかろうか。つまり
只今の御意見の
通り、従来のようないわゆる牧道の改良でありますとか、牧棚であるとか、そういうことでなしに、草
そのものの質の改善、それが極端に効果を現わしますためには、耕作ということにな
つて参
つて来ると思うのであります。ところが御承知のように現在の牧野はいろいろ長い間の慣行と申しますか、地方々々によりまして使用権利用権、所有権なりというものがいろいろな
事情に分れておるのであります。で、牧野全体といたしまして、それらの点も案いたしまして、いろいろ日本全国の牧野にきしまして、これが我が国の将来の家畜、畜産の中心となりまする酪農との関連において、そういう点を、現在の牧野を全面的に改正いたしたいと、かような関係で研究をいたしておりますが、差当り当面の問題といたしまして、集約酪農の牧地につきまして、そういうような牧野法の改正の
一つの前提をなしております考え方の下に、集約酪農の地域につきましては、草地につきまして特別な例外規定を設けておるのであります。私たちは牧野或いは延いては草地全体につきましての改正ということを意図いたしたのでありますが、我が国におきましては、御承知のように、地方によりまして馬或いは和牛、そういうような家畜の使用形態が種々に分れておりますので、一足飛びにそこまで参るということにつきまして、牧野全体についての改正ということになりまするためには、そこに或る
程度のまだ距離があるんではなかろうかというような考えの下に、乳牛中心にや
つておるようないわゆる集約酪農につきましての一種の牧野法の改正ということを目途としておるのであります。ただ併しながら、先ほど申上げました
通り、我が国の牧野なり草地というものの使用慣行なり、或いは所有関係なり、或いは入会関係というものが
相当複雑な様相をと
つておるのであります。で、これにつきまして、形式論から申上げますれば、所有者が反対をいたしました場合に、これは仕方がないということにまあなることもあると思うのであります。又所有者でありますとか、或いは権利者が、牧野改良なり何なりをやることになると思いますが、これらの点につきましては、いわゆる集約酪農の地域につきましての牧野改良
計画、それらに基く管理
計画、使用
計画というものを村を挙げてや
つてもらうためには、いろいろな所有形態なり、或いは所有者個人によ
つていろいろな
事情があると思いますが、これは全体の
計画といたしまして進んでやらなければ、全体として本当の
計画なり或いは使用なりというものはできないじやないか、かように考えるのであります。そこで集約酪農地域の指定と申しまするか、そういうように酪農を中心としてや
つて参りたいというところにつきましては、先ず第一に、その当該地方におきまする農民全般の非常な御協力を求めるということが第一の問題じやないかと考えるのであります。いろいろ細かく考えて参ります場合には、一、二の反対者が出て参つた場合に、その人が大きな牧野を持
つておつた場合には、実際問題としていわゆる牧野の改良
計画はできないのじやないか、或いは地方の
実情に副うような利用状態が現出されないのじやないかというような御議論もあるかと思うのであります。併しながら、現在の法制の下におきまして、そういうような使用権なり、或いは利用権なり、或いは所有権というものを無視するというようなことには、これは法律上参らんと思うのであります。これらの点につきましては、法律では非常に生ぬるいということになりますと思いますが、一応そういうような
計画をこの本法の中に織り込んでいるのでありまして、これをできるだけ行政的な指導と申しますか、裏から言いますれば、協力という形で、先ず
一つ集約酪農地域における本当の牧野の改良というものを実行して参りたい、かように考えているのであります。同時にそれにつきましては、いわゆる今までいろいろ牧野の改良につきまして
予算等も計上いたしたのでありますが、なかなか広い草地を人力を以てやるということにつきましては、なかなか困難である。特に東北なり、
北海道なり、非常に広大な面積を所有と申しまするか、原野のままで放置されているというところにおきましては、とても人力ではいけないというような関係もありますので、
北海道につきましては……、府県に補助をいたしまして、
相当多額の機械力を動員するということにいたしたのであります。なお内地、これは
北海道も含むのでありますが、国といたしましても、現在の飼畜牧場に四カ所ほどいわゆる機械改良の中心地点を設ける。而もその機械につきましては、セツトといたしまして、外国等から輸入いたしまして、諸般の施設を備えると、こういうようなことにいたしまして、人力と機械力と二本建で今後改良を図
つて参りたい、かように考えているのであり言す。勿論その間にいろいろ地方におきましては、法律上この所有権を無視できないような関係もありまするので、集約酪農地域に指定された地域におきましても、そういう問題が起きて来るかと思いまするが、これは地方庁を中心といたしまして、できるだけ行政的な措置によりまして、その間の
調整をと
つて参りたい、かように考えているのであります。