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1954-05-24 第19回国会 参議院 農林委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十四日(月曜日)    午前十一時一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     片柳 眞吉君    理事            宮本 邦彦君            森田 豊壽君            戸叶  武君    委員            雨森 常夫君            川口爲之助君            佐藤清一郎君            重政 庸徳君            関根 久藏君            横川 信夫君            上林 忠次君            北 勝太郎君            河野 謙三君            江田 三郎君            河合 義一君            松永 義雄君   国務大臣    農 林 大 臣 保利  茂君    通商産業大臣  愛知 揆一君   政府委員    農林省農林経済    局長      小倉 武一君    農林省畜産局長 大坪 藤市君    通商産業省軽工    業局長     中村辰五郎君   説明員    通商産業省軽工    業局化学肥料部    長       柿手 操六君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○臨時硫安需給安定法案内閣提出、  衆議院送付)(第十八回国会継続) ○酪農振興法案内閣提出、衆議院送  付) ○農林政策に関する調査の件  (硫安工業合理化及び硫安輸出調整  臨時措置法案に関する件)   —————————————
  2. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは只今から委員会を開会いたします。  先ず、臨時硫安需給安定法案を議題にいたします。  最初に、この法案に関連いたしまして硫安工業合理化および硫安輸出調整臨時措置法案に対する今後の取扱いについて御協議を願いたいと思います。実は、当委員会から通商産業委員会に対して連合審査要求いたしておりましたが、通商産業委員会委員長から、先方でもいろいろ法案が輻輳しており、時間もないので、連合審査ちよつと受入れがたいという回答があつたわけであります。農林委員会のほうにおいて適宜通産当局に対して御質疑を願うことで御了承願いたいということで申入がありましたのであります。従つてこの硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案に対する御質疑等、如何にいたしますか、御相談をお願いいたします。ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止
  3. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 速記を始めて下さい。  それでは只今の御相談の結果、硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案については、適宜時間を割きまして、当委員会で御質疑を願うことにいたしたいと存じます。  先般通産省に対して要求されておりました昭和電工ほか三社の硫安コスト資料につきましては、只今その提出がございましたので、当局から説明を願いたいと存じます。なお、通商産業省希望により秘密会にしたいというふうに存じまするが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認めます。  只今から秘密会に入ります、国会議員政府関係者事務担当者及び農林委員秘書以外のかたはどうぞ御退場を願います。    午前十一時二十一分秘密会に移    る
  5. 柿手操六

    説明員柿手操六君) 只今手許にお配りいたしました「現状に放ける硫安原価推算表」につきまして御説明申上げます。開発銀行融資関係の九つの工場につきましての原価推算は、先般五工場につきまして私のところで推算いたしましたものを御説明を申上げましたが、更に残りの東洋高圧北海道工場昭和電工川崎工場別府化学別府工場日産化学富山工場につきまして推算するようにという御要求がございました。只今配布いたしましたようなふうに推算をいたしたのでございまするが、これは、御要求になりました当時にも申上げましたように、提出されました資料等から推算いたします場合に、先に五社について推算いたしました場合よりいろいろな点において調査が困難であつたのでありますが、できるだけ私ども手許にあります資料なり、それから時間の許す限りは各社担当の者も事情も聞きまして、できるだけの正確を期してみたつもりでございます。併しながら、相当どもの勘を働かした部分もありますので、その点はあらかじめ御了承を頂きたいと存じます。なお、よくわからなかつた点は、最近各社相当の再評価をいたしておるのでありますが、これなんかにつきましても、従来の資産をもとにしてやるより以外にないというのであります。再評価につきましては、この際は計算に入れないで推算をいたしたのでございます。会社別に申上げますと、東京高圧北海道工場から御説明いたしますが、これは最近非常に生産が好調でございまして、操業度上昇がかなり認められますので、従来我々は二十万トン程度生産であろうというふうに見ておつたのでありますが、今後は二十四万トン程度までは行くんじやないかというふうに想定をいたしまして、そういう操業度上昇というものを織込んでおります。更に石炭値下りということを四%乃至六%、原料炭については八・五%程度値下り見込みなしたのであります。操業度上昇と、そういう原材料の値下りのほかに、一方労賃ベース・アツプ及び運転資金増嵩というものを織込みまして、結局ここにお示ししておるような、「かます」当たり————という程度になつておるのであります。特にこうの工場の特徴といたしまして御覧頂けばわかりますように、運賃諸掛り相当大きくなつておるのでありますが、これは北海道における窒素肥料の需要をオーバーする生産がありますので、これが内地に搬出されるということでありまして、一般平均運賃七、八百円程度でありますけれども————程度運賃が余計かかるという特質を持つておるのであります。  次は、昭和電工川崎工場でございますが、ここは最近東京ガスとの企業提携をいたしたのでありまして、従来はここは東京に持つて来る大きな電力の調整的な役割を果すために、要するに東京における電気の来る量は一定でありますけれども、そのうち一般に使うものが二十四時間一定でありませんから、その一般が使わないときにこの肥料工場が使うというような意味において、殆んど電解だけであつたのでありますが、今申上げます通りに、東京ガスとの連繋、企業提携をいたしまして、ガス方硫安というものを相当大きく生産を開始したということが非常な事情変更であります。電解法の遺憾の生産量は大体十四、五万トンの程度でありますが、ガス法硫安相当増嵩したというようなことでありまして、電解法及びガス法硫安との操業度変更、無論総生産量ガス法硫安が殖えるために、電気単位当り消費量が減りますから、従つて一定電気生産が殖えるというようなことでありまして、操業度上昇も、二十一万五千トン程度から二十三万トンぐらいに増すだろうというような見込を立てて操業度上昇というようなことを織込んで計算をいたしております。その他に硫化鉱値下り見込んでおります。燃料炭につきましても一割程度値下り見込んでおりますが、労賃の値上りが最近相当ひどくありまして、この半年ぐらい前に比べて一九%程度ベース・アツプがあるのであります。それにそういうふうに生産が増しますことに伴なつて、やはり金利につきましても、操業運転資金相当要するのでありますが、操業度上昇によつてトン当りとしてはそう大きくならないという推算をいたしまして、結局—————程度のものの数字が出て来るのであります。  次は、別府化学でありますが、これは生産量は大体もうここ半年、一年ぐらい前から十一万トンベースを続けておりまして、これは最近変らないというふうに、私どもはもうこれが大体今の設備ではこの辺だろうというふうに存じまして、操業度は変らないというような想定推算をいたしておるのであります。ただコークス、パイライト燃料炭というものは、五、六%乃至一割の低下を認めまして推算をいたしたのでありますが、労賃のアツプはやはり一五%程度見込みました。従いまして、労務費及び本社費の中に労賃相当する部分増嵩計算をいたしまして、その他は大体余り変らないというふうな想定によつて、「かます」当り————という数字になつたのであります。  次に、日産化学富山工場でありますが、これは今回初めて推算をいたしたものでありまして、相当これは私どもの達観的な数字が入つておりますことを御了承願いたいのでありますが、この場合の操業度電解法七万三千トン、ガス法九万七千トン、十七万トンの操業度、これは勿論できるアンモニアを全部硫安にした場合の、換算硫安としての操業度でありますが、これを前提にいたしたのであります。そうして会社資料にあります原単位をとりまして、そうして石炭炭価等につきましても、私ども最近の一般石炭値下り状況を考えまして、ただこの石炭原料炭で特別な石炭でありますから、一般石炭値下りほどは下らなかろうというふうに見込みまして、九千円程度というのをまあせいぜい八千五百円ぐらいだろうというふうに値下り推定をいたしたのであります。労賃については現在交渉中でありますが、特にベース・アツプは行われていないということでありますから、従来の通りとして計算しております。本社費等、これもなかなかわかりにくいのでありますが、一応最近の考課状等から硫安の分担すべき本社費というものを推定いたしまして、生産最を以て割つて算出したのであります。そういたしまして弾きました結果が「かます」当り—————であります。これはガス法電解法との比率によつて結果は幾分変動いたしますけれども、先ず今の電気状況等から、この程度までは生産が伸びるものというふうな推定をいたしたのであります。  大体私のほうの推定も客観的な部分もありまして、極くあらましな推算をいたしたのであります。御説明は一応これで……。
  6. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは本日、それ以前に提出されておりまする両方の通産省資料につきまして、なお御質問がありましたら……。
  7. 河野謙三

    河野謙三君 結論として、今までお出し頂きました各社原価計算に基く単価というものは一応出たのですが、但し私は検討も済ましておりませんから、私自身是認したという意味じやありませんけれども、一応手許に頂きました各社単価、これから計算したところの国内需要百八十万トンの加重平均単価というものは幾らになりますか。
  8. 柿手操六

    説明員柿手操六君) この九社全部の平均意味でございましようか。百八十万トンというのは、この前御説明いたしましたように、十七工場原価をずつと並べて、低いものから百八十万トン積んだ場合の平均という意味でございましようか。
  9. 河野謙三

    河野謙三君 この九社のほかにまだ東亜合成とか、その他ありますけれども、これらは生産力も少いのだし、そう大して総平均単価を出す場合に大きな影響力は私は持たないと思う。でありますから、一部推定になるでしようけれども、大体この九社の単価によつて日本硫安工業原価計算の結果に基く単価というものは推定できるわけですね。そこで今度の法案によると、この国内でできます二百数十万トンのうら、国内の価格をきめる場合には、国内需要の百八十万トン前後を単価の低いほうから順にとつて行つて、そうして平均を出すということになつておりますね。そういう計算をした場合に一体どうなるか、こういうことなんです。
  10. 柿手操六

    説明員柿手操六君) まだ実はそういう計算をしておらないのであります。今ここに申上げました数字は、できるアンモニアを全部硫安にした場合の操業度の話をしておりまして、これはまあ大した差はないと思いますが、ただ会社によつてできますアンモニア硫安にする比率ウエートが違うものでありますから、正確に言うと、それをそれぞれ想定いたしまして平均する必要があろうと思うのでありますが、まあ大ざつぱな見当から言いますと、今九社につい推算いたしましたこの全体のアンモニア操業度ウエート平均しても、そう大した違いはないと思いますが、今まで申上げました各社操業度生産見込数量、この生産見込数量で一応加重平均の加算をしてみます。今それをいたしておりませんが、後刻計算して御報告します。
  11. 河野謙三

    河野謙三君 それでは一つこれはそう面倒な計算でもないと思いますから、午後の委員会に大体の御報告を頂きたいと思います。
  12. 柿手操六

    説明員柿手操六君) 承知しました。
  13. 松永義雄

    松永義雄君 この昭和電工金利が少し違つているのです。これはどういうわけですか。
  14. 柿手操六

    説明員柿手操六君) 昭和電工金利が多い……。
  15. 松永義雄

    松永義雄君 ええ。
  16. 柿手操六

    説明員柿手操六君) 昭和電工金利は非常に借入金が多いのでありまして、あの事業分量の割合に比べれば、いわゆる自己資本に対して借入の率がほかのほうより多いということでございます。
  17. 松永義雄

    松永義雄君 少しよそのことに亙るのですが、聞いていいでしようか。
  18. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) どうぞ。
  19. 松永義雄

    松永義雄君 硫安に関して……。一つざつぱな質問ですけれども硫安生産合理化ということは大体済んだということですか。又この先合理化についていろいろの処置をして行かなければならないということなんですか、その点お尋ねしたいと思います。
  20. 柿手操六

    説明員柿手操六君) 硫安合理化はこれは現在緒につきつつあるという程度でありまして、これから更に一層この合理化努力しないと、生産を落さずに国際競争に耐えて行くというわけにはなかなか参らないだろうというので、これは昨年も本年も、これは遡つて言いますと、昭和二十二年以来、復金による見返資金から合理化に出発しておるのでありますが、更に開発銀行制度ができましてから、毎年そのほうからの資金の融通を受けまして合理化を進めておるのでありますが、更にまあこの制度ができましたのを契機にして、今までの合理化に更にスピードを早めて一層合理化にこの際馬力をかけなければならないのじやないかというふうに考えております。
  21. 松永義雄

    松永義雄君 それは自己資金でできるというのですか。
  22. 柿手操六

    説明員柿手操六君) これはいつかも本委員会にお配りした非常にラフな資料ではございますが、硫安合理化計画というものをお出ししておるのでありますが、大体この法律の時限として、まあ五カ年間ぐらいと予想いたしておりますのでありますが、まあ大部分は三カ年間ぐらいのうちに十五ドル見当コストを下げて行くというふうなプランを立てておるのであります。その間の総所要資金としては二百二十七億ぐらい要るだろうというふうな想定をいたしておるのでありますが、そのうち通常のまあ細々した補強的な合理化につきましては、これは特に国家資金まで考える必要はないと思うのでありますが、そのものが大体まあ八十億見当はあろうと思うのであります。結局国の資金を注入して強力に合理化を推進するのが適当であるというような工事が百五、六十億に上るという見当を付けておるのでありますが、従いまして、その百五、六十億のまあ四、五割見当、まあ私どもとしては半分ということを希望しておるのでありますが、四、五割見当の七、八十億というものを財政投資に期待をしておるという実情でありまして、又その程度投資がなされなければ、なかなか合理化の進捗は困難ではないかというふうな考えを持つておるのでございます。
  23. 松永義雄

    松永義雄君 今二十八年度の政府融資ですが、それはまあ少し変化があつたようですけれども最初の枠、次の枠、実際の貸出金額、それはどれくらいですか、硫安に関して……。
  24. 柿手操六

    説明員柿手操六君) 私ども希望としては、先般来御説明をいたしております六社につきまして、まあ最低十億ぐらい、全体の所要資金は二十七億であつたと思います。従いまして、まあ半分として十三億でありますが、まあ十億ぐらいは是非ということで申込んでおつたのでありますが、私のほうで推薦いたしますリストにも、そういうふうなリスト作つてつたのでありますけれども、実際に開発銀行で融資された額は、合計七億一千万円になつておるのでございます。
  25. 松永義雄

    松永義雄君 七億一千万円貸出された、まあちよつと私の考えている数字と違うのですが、それはどつちにしてもいいのですが、二十九年度は御承知の通り財政投融資を著しく制限ちれる、それが又当然硫安に響く、市中銀行は金詰りになつておる、すると勢い硫安のほうへ廻る金が少くなるだろうと思いますが、二十九年度で開発銀行を通じて硫安に廻る金ですね、そういうものはどれくらいに枠ができておるのですか。
  26. 柿手操六

    説明員柿手操六君) お話通り、国の財政投資は二十八年度八百五十億が二十九年度は六百五十億になり、更に修正されて六百二十五億か、三十億になつたというような状況でありまして、更に又いろんな点からそれも圧縮しなければならんというようなことを聞いておるのでありますが、私どもといたしましては、硫安の市価をできるだけ低くするためには、やつぱりコスト引下をするほかはないというのでありまして、先ほど来御説明いたしましたような線に沿つて財政投資硫安については特に重点的にやることを私どもとして主張いたしております。今まだどの程度に枠をきめますか、まだ予算確定も、これは一応しておりますけれども、中でどういうふうに各産業の割ふりをして行くかという点につきましては、まあ関係各省、又省内おいてもいろいろ考究もいたしておるのでありますが、私どもの立場は少くとも二十億ぐらいは是非やつてもらいたい、少くとも十五億というような線でいろいろ今お話合をしておるという段階でありまして、まだ私ども希望程度でありまして、まだ枠が確定をいたしておらないという状況でございます。
  27. 松永義雄

    松永義雄君 結論からいうと、硫安会社合理化熱意が足らない結果が生じておるのではないかということをまあ聞くということになるのですけれど、昭和二十八年度であなたの挙げた数字が十億と言われたけれども、まあ大体九億くらいだ。それを六億くらいにして見たけれども、実際は貸出した金は三億二、三千万円に過ぎない。それで硫安会社はたとえ二十九年度において財政投融資減つて市中銀行貸出もまあ苦しくなつた。それでも二十八年度の成績を見ると、大して硫安資金には影響がないのだというふうなのが日本銀行の調査で出ておるのです。あなたのほうとちよつと違うということにもならないでしようが、要するにこれだけ枠をきめて、そして貸してやろうといつてつたのに、実際借りた金は少かつた。二十八年度ではそういう数字が出ておる。従つて二十九年度において、財政投融資減つて硫安の枠が減ることがあつても、実際上硫安に対しては影響は少いのだ。半面これは私が考える結論ですが、金を余計貸してやろうといつて枠作つても、実際借りるほうが希望が少い。硫安会社熱意が足りないのだ。そこまで手が廻らんとか、いろいろの事情があるということは考えなければならんかも知れないけれども硫安会社の状態はそういうふうになつているのではないかということを聞いているんです。
  28. 柿手操六

    説明員柿手操六君) 私の説明が足らなかつたのでそういう誤解が生じたと思うのですが、開銀投融資がだんだん窮屈になつて参りました。というのは、二十八年度では相当減税国債発行して、それを投融資の財源にするというような予定があつたのでありまするが、その後予定通りに消化しないというようなこと、いろいろな事情から予定融資額がそれほど順調に進捗できなかつたというようなことから、事業計画そのもの、先ほど申上げました六社で、二十七億の予算で以て合理化工事をやるという二十七億の工事を圧縮又は繰延したのではないのでありまして、二十七億要る金のうち、開銀に当初私ども十億くらいの投資は最低してもらいたいというような希望言つてつたのが七億一千万円に減つた。その三、四億というものは結局社債発行、私どもはむずかしかろうと思つたものを、社債発行を強行するとか、或いは増資を強行するとか、更には従来の市中取引銀行に対してもう一遍無理を言つて、少しそつちのほうを殖やしてもらうとかいうようなことにいたしまして、工事資金予算総額二十七億は変えないて、結局財政投融資のほうの減つた分社債融資市中銀行よりの融資等振替つたという実情でございまして、私どもが当初予定していた開銀融資希望の額より実際貸出されたものは減りましても工事予定通り進める。要するに資金調達の内容が変つたという実情でございます。
  29. 松永義雄

    松永義雄君 そうすると、又結論が少し変つて来るのですけれど、財政緊縮であるということで市中銀行もできるだけ貸出金の引上をする。非常に窮屈になつて来る。そうすると、市中銀行から硫安へ廻る命も自然少くなる。半面財政投融資は徹底的に少くなるということになると、硫安へ廻つて来る金は非常に少くなつて来る。実際の需要があるにもかかわらず少くなつて来るという結果を生ずるということになるということですか。
  30. 柿手操六

    説明員柿手操六君) そういう点、は、私ども合理化を急速に強力に推進をして行かなければならない今の硫安工業担当のものとしては、お話の点非常に心配をいたしておるのでありますが、私どもとしては、この硫安工業合理化促進の非常に急務であり、重要であることに鑑みまして、資金の枠はだんだん困難にはなつて来るのでありますけれども、これは各産業の中の調整をして頂いて、硫安工業については、従来に変らず更にこういう制度のできますと共に、強力にやつて行くように私ども政府部内で努力をいたしたいと、かように考えております。
  31. 松永義雄

    松永義雄君 そうすると、あれですね、先ほど来生産費のことが問題になつている。合理化が思うように進まない。そうすると、目先はとにかく、先行き生産費引下というものがずれて延びて行くということが考えられるのですが、そういうことになつて行くということですか。
  32. 柿手操六

    説明員柿手操六君) そういうことになりましては、この硫安法案の制定の趣旨に副わないことになりますから、そういうことにならないように、資金のだんだん窮屈になる一般情勢ではありますけれども硫安工業合理化につきましては格段の努力をして参りたいと、かように考えるのであります。
  33. 松永義雄

    松永義雄君 そうすると、まあ通産省努力が足りないというか、努力しても何か方針がそこへ行かないということになるか、どちらにしましても合理化が進まないとしたらば、金を借りようと思つて市中銀行が渋る。できるだけ会社はまあ自己資金でやるか、乃至は減価償却にしても、再評価にしても、何にしても、何とか自分の資金を、内部保留を殖やして行つて、そういう計画を進めて行かなければならんということが考えられるのですが、一体今の会社昭電疑獄以来、とにかく先ほども話したように、造船疑獄にしたつて何だつてみな経団連の一部の人が関係している。経団連の一部の人が肥料会社に関係している。まじめにやつているかどうか、国民がみんな心配して、できるだけ国際収支の上にも、米の生産費の上にも心配しているときに、こうした産業会社が勝手な贅沢をして、そうして政府の金を払わしているといつたような現象が至るところに見られて来つある、こうした肥料会社というものは、まじめにやつておるかどうか。そんなことをあんたに聞いたつて、まじめにやつておると言うだろうけれども、あなたの感想をちよつと聞いておきたい。だからこの交際費はどんなふうになつておるかということを聞いてみたんです。通産省熱意をききたい。硫安生産について、ただ数字を並べて、こうだ、ああだと言つても駄目なんだ、結局人間なんだ、どうですか、一つ会社の批判をしてみてくれませんか。そこらの経済雑誌と同じように、わかつておるはずです。あなたのほうは……。
  34. 柿手操六

    説明員柿手操六君) 今の肥料会社がどういうふうにやつておるかということにつきましては、私どもとしては、おおむねまじめにやつておると思いますけれども、これは今後こういう制度ができまして、政府も強力なるバツク・アツプをして、この合理化を促進し、輸出の増進も図るというような制度ができますと、これは監督権も相当な強力な規定もできますが、今後はお説のような点につきまして、一層強力な指導監督をして参りたいと、かように考えます。
  35. 松永義雄

    松永義雄君 監査権の問題ですけれども開発銀行が融資した会社に対して、過疎省は監督権と言いますか、監査権がありますか、法文上……。
  36. 柿手操六

    説明員柿手操六君) 開発銀行の融資をされた会社に対する通産大臣の監督権というものは、実は私はそういう方面の知識がないものでありまして、ちよつと即答をいたしかねるのでありますが、程度の問題として、全然ないことはないというふうに考えますが、それは実はそういう方面の法例について、ちよつと私今ここで即答する知識を持つておりませんので、後ほど調べましてお答えいたしますが、一般的にないということはないように、常識的な判断ですが、まあ考えます。
  37. 松永義雄

    松永義雄君 御承知の通り、造船会社に対しては監査することができない。造船会社に対して、今度監査の権限を持とうではないかというので運輸省が法案を作つたところが、作つた人が疑獄に引つかかつたために、悪いことをしておる運輸省が、その悪いことを監査する権限や、そういう資格があるのかということで、その法案が立消えになつたということが新聞記事に出ておつて、最近監査ということが非常にやかましくなつておる。政府投融資に対しては監査しなければならない。すでに運輸省には一部そういう法文がある。すでに昭和電工のことを今更蒸返えしたつてしようがないのですが、政府の出しておる金というものは、これは税金も入つておるんでしよう。予算面に出て来る血税なんですから、俗に言う……。それが今ここでやかましくなつて生産費で以て農民の利益がどうなるか。国際収支の面でどういうことになつているかということを言つておるのです。ただ金を貸してやればいいんだということにはならない。それから先ほど来委員の方々から究明があつて資料を出せということも今申したような大きな響きが来ることです。すじめにやつているか、いないかということを思うということなら、思わないと言つてみたつて、権限を持つて取調べた結果でなければ、ただ感じだけのことで、だから通産省としては、若しそういう法文がなきや、通産省関係の監督というか、そういつた政府の関係会社政府投融資がなされる場合には、それを監査する権限を持たなければならない。我々としては何も事を好んで官僚の権限を強くしようと望んではいないけれども、民間の自由主義というのは放漫主義になつておる。最近のは自由主義でも何でもありはしない。だから監査する権限を持たなければならない。通産省はどう考えるか。それがはつきりしないというのなら、それを確めた上で、政府としてどういう考えを持つておるか、そういう政府投融資に対して、どういう考えを持つておるかということを聞きたいのです。あなたにお聞きするのも無理かと思いますが、大臣が出て来たときに、十分大臣に資料を与えてもらつて、その上でイエスか、ノーかということを聞けばいい。
  38. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 只今松永委員質問は大臣に答弁を求めることにします。
  39. 河野謙三

    河野謙三君 今の松永さんの御質問に関連するのでございますけれども開銀合理化資金を出した場合に、借出すほうの会社はどういう義務を負うんです。金利を払つて金を返すということは、これは聞くに当らないけれども、それ以外に合理化資金を借出す会社はどういう義務を負うのですか。それを一つ御説を願いたい。
  40. 柿手操六

    説明員柿手操六君) そういうことにつきましては、私は余り研究をいたしておらないので申訳ございませんが、銀行から金を借りるのでありますから、勿論それの金利を払い、元金を返済するということが主体になると思うのであります。併しながら、これによつて合理化をして、そうしてコスト引下げることによつて国内の消費者に安く売る、輸出を振興するということは、これは当然融資を受けたものの義務だと存じますが、併しそれが契約上と言いますか、法律上特別の条件になつておるということは私はないと思います。
  41. 河野謙三

    河野謙三君 由来合理化資金というものは、硫安に限らず各産業に出まして、この金をやればこれだけ合理化される、これだけ石炭が安くなる、鉄が安くなるといつて金を借りて安くなつたためしがない、大体が……。でありますから、今度の硫安の場合は、私は少くとも金を借りれば金利を払つて元金を返すのが当り前、これは一応計画書によつて、この金を借りたならばこれだけ硫安が年次計画でこれだけ安くなるという先ず第一の約束がある。これは口先の約束でなくて、これが必らず実施されるということで、若し実施されなかつた場合にはどうする、金を引上げるとか、どうするとかという、これが私は義務がなくてはいけないと思うのですが、同時にその借りた金で一応硫安合理化をやるのだと言いながら他の方面に資金を廻した、硫安工業というものはいろいろ他のものをやつておりますから、そういうような方面に資金を廻す危険もある、そういうようなことをした場合にはどうするのか、こういう義務と言いますか、違反した場合の罰則と言いますか、こういうものは全然お考えになつていないのでしようか。
  42. 柿手操六

    説明員柿手操六君) そういうことについての法律上の措置というものは現在は考えておらないと思うのでありますが、今後こういうふうに御審議願つておるような硫安の二法案が成立いたしましたら、いろいろな監督なりり、或いは勧告なり、いろいろな指示もできますので、お話のような点が一〇〇%まではどうかと思いますが、相当程度達成し得る制度ができ上るのではないかというふうに考えております。
  43. 河野謙三

    河野謙三君 それでいろいろな監督指導ができるというのは、例えばどういうことができるのですか、具体的に一つ……。
  44. 柿手操六

    説明員柿手操六君) 硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法第三条にあります「通商産業大臣は、硫安工業合理化を促進するため必要があると認めるときは、硫安審議会の意見を聞いて、硫安生産者に対し、生産設備及び技術の近代化、企業形態の改善その他の措置を講ずべき旨を勧告することができる。」、こういうような規定も一つの例であります。
  45. 河野謙三

    河野謙三君 これはいずれ先ほど私要求いたしました通産委員会連合審査のときに十分審議いたしたいと思いますが、今のことは開発銀行の融資というものとの直接の結びつきの条文ではないのです。私は今申上げたのは、開発銀行が如何に硫安工業合理化しますという約束の下に金を貸したところが、若し合理化ができなかつた、悪意で合理化をしなかつた、他の方面に資金を廻した、こういう場合に開発銀行なり、通産省、農林省なんかは、どういうふうなそれに対して措置をとることになつているか、それを私は先ほどからお伺いしておるのですから、若し肥料部長からの御答弁の範囲でなければ、改めて私は別の方面で質問いたしたいと思います。
  46. 上林忠次

    ○上林忠次君 これは聞き違いかも知れませんけれども、先ほどの話では開銀の枠を七億を持つているのに、実際使われたのは三億七十万円、残りは使つておらないというわけですが、枠が七億何ぼ、政府の融資ですが、開銀を経て融資するのが、それが実際には三億七千万円しか使用しておらない、あとは自己資金市中銀行から賄つたというように聞きましたが、そうなんですか。
  47. 柿手操六

    説明員柿手操六君) ちよつと御質問がよくわからないのでありますが、先ほど松永さんの御質問に対してお答えしましたのは、初め二十八年度の開銀融資の私ども希望は十億であつた、併しながら、実際に開銀貸出を決定したのは七億一千万円であるということをお答えしたのでありますが、それに対して松永さんは十億の予定が七億になつたのだから、それだけ合理化の事業を繰延べ、或いは圧縮したのかというような御質問がありましたから、それはそうじやありません。合理化についての予算総額は二十七億でありまして、それは変つておりません。その二十七億のうち十億程度開銀から融資をしてもらいたいという希望を言つたのに対して、開銀資金の枠はだんだん予定より減つて来た、ついては工事はその通り認めるけれども、十億はちよつと金がない、だから七億一千万円程度にしてくれということで、七億一千万円が投資されたけれども、あとの分は前考えておらなかつた各社社債なり、或いは増資なり、市中銀行の借入を殖やすなりして賄つた、それから二十七億全体の金はと言いますか、この事業そのものは繰延べも中止もいたしておらないということをお答えいたしたのですが、それでよろしうございますか。
  48. 上林忠次

    ○上林忠次君 それで私ちよつと聞きそこないらしいですが、結局七億何ぼの枠があるのに自己資金で貼つたり、社債発行したりして、三位七千万円ぐらいしか実際には使つていないという意味のようにとつたのですが、残りは使えなかつたという……。
  49. 柿手操六

    説明員柿手操六君) そういう意味じやありません。
  50. 上林忠次

    ○上林忠次君 意味じやないですか、私合理化計画もできて、資金の融通もできるような手が打たれているのに、実際にそれをやらないとなると、これは話が違うかも知れませんが、そういうふうなことなら熱意がないじやないか。政府のほうに熱意がないし、借りるほうでも熱意がない。なぜ熱意がないかというと、今の値段が相当制よくできている。安定帯価格が割高なんだ。そう無理して設備の改善、企業合理化をしなくても結構やつて行けるというような安定帯価格が今行われているのではないかというような疑問が出たので、そういうことを問うたのですが、硫安会社コストを見ておりますと、相当安いところもあるし、高いところもある。高いところの消費量とマツチするところまで見てやるというようなことで行きますと、実際眠る会社があるのではないか。そう改善しなくても自分のところは現状のままで値段は相当高く決定されるということになりますと、改善、改良の意欲もなくなる。そういうようなことでは困るのであつて、大体日本の硫安が高いから輸入の硫安一つ考慮して、相当安いところだけはとるけれども、それ以上の高い工場に対してはもう輸入の硫安で間に合わすぞというところまで行かないと、眠つている連中は目を覚まさない。そこまで行かなければならない。それができないのは業者、政府とも熱意がないからで、結局硫安が高いところにとどまつているからではないかというようなことを考えまして、そういうようなことから、先ほど言つたように金があるのにやらない。金があり、又改善する個所があるというのに改善しないのだ、これはそういうようなことがあつては困るというので、結末におきまして、どうも今の安定帯価格のきめ方はまだはつきり知りませんけれども、業者メーカーは別に困つていないのではないかというような気持が常にするのでありますが、数字が少し違つたかも知れませんが、全体としてそういうような現在の硫安の高いというところには、そういうような関係があるのではないかというような気がするのであります。これは私の気持だけでありますから、何も御回答願わなくてもいいのですが。
  51. 松永義雄

    松永義雄君 あなたが言う数字と僕の知つている数字ちよつと違うのですがね。実際に貸出した金は三億二千万円ほどで、従つて二十八年度には枠ができておつたけれども硫安が少なかつたから、二十九年度において財政緊縮の結果、財政投融資減つても、硫安には実際上さしたる影響はない、そういうふうに日本銀行の出しておる雑誌に記載してあるのですよ、どつちが本当だかわかりませんが、そういう記事もあるということだけは一つあなた記憶しておいて、もう一遍調べて頂けるものなら調べて頂きたい。要するに文書をもう少し……、これは横へ曲げて結論を出せば硫安会社熱意がないじやないかという考え方が出て来るのですよ。
  52. 柿手操六

    説明員柿手操六君) それは大体松永さんのおつしやることと、私の言うことと違つてないのですが、どこが違つているかということが想像つきましたから、お答えをいたしますが、二十八年度に硫安工業に融資をする金額は七億一千万円にきまつたことは間違いないのであります。これはいつかここで御説明いたしましたように、東洋高圧が七千万円、東北肥料が一億円、日本水素が一億五千万円、昭和電工が一債二千万円、別府が一億一千万円、日本窒素が一億六千万円、合計七億一千万円を二十八年度に融資をするということに決定いたしたことは間違いないのであります。決定が遅れまして、恐らくこれは二月の末か、三月の初めじやなかつたかと思います。これが決定したのは……。従つて実際に三月三十一日末までに現金を融資したのがこの七億一千万円、全部じやなかつたかも知れません。その内訳の数字じやないかと思います。
  53. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 通産省資料につきまして、大体この程度でよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは秘密会はこれを以て閉じることにいたします。    午後零時十二分秘密会を終る
  55. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 只今秘密会議の記録中、特に秘密を要する箇所につきましては、国会法第六十三条によつて、これを公表しないことにいたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。なお削除の個所等は委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認めさよう決定いたします。  これで休憩いたします。    午後零時十三分休憩    —————・—————    午後二時二十八分開会
  58. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは只今から委員会を再開いたします。  通産大臣が三時半頃お見えになるそうでありまするから、臨時硫安需給安定法案の審議はそれからのほうが適当と思いますので、只今農林大臣が見えられておりますので、それまで酪農振興法案の御審議を願いたいと思います。
  59. 河野謙三

    河野謙三君 大臣に一つお尋ねしたいのですが、今国会で、政府は御承知のように酪農振興法案という法律を出しておられますが、衆議院を通過して今我々の手許へ来ておりますが、私は酪農振興法案の審議もさることながら、現在全国に漸く盛り上つたところの酪農振興熱というものが、今非常な餌高、従つて農家が採算が合わなくなつて来たという形において、酪農振興どころではなくて、酪農熱が非常にさめかけて来ているという、この現状を解決することのほうが、将来の問題を考えるよりは先じやないかということなんですが、そこで過日来、畜産局長にも餌の対策についていろいろ伺つているのですが、将来のことについてはいろいろのことをおつしやいますけれども、目先の餌の問題について何ら具体的な対策をお持ちになつていないようですが、これは一体どういうことになるのですか。聞けば二十一日に漸く飼料の需給安定法に基くところの審議会の懇談会を開いたということでありますが、懇談会の席上には農林大臣も政務次官も御出席にならなかつたのでありますが、併しこれは局長から懇談会の各委員の意見等もお聞きになつておると思いますが、この懇談会の結果も何ら具体的のものを政府も持合せがないし、委員も審議のしようがないということだつたそうですが、大臣としてこの餌の問題についてどういう考えを持つておられるか、先ず伺いたいと思います。
  60. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 昨年のこの凶作が禍いをいたしまして、そのしわが昨今の主として「ふすま」価格にしわ寄せになつて暴騰を来たしておりますことは、私どもといたしましても、何とか臨時応急の手もないかということで、畜産局においていろいろ苦心をいたしておりますが、結局はその需要に対する、一時的ではございますけれども、供給不足を来たしておるというこのことから因をなしておることは申すまでもございませんので、外地からの輸入の途がないか、値を安定させるための措置として輸入の途はないか、或いは又食糧庁で抱えております等外麦でありますとか、イラクの麦でありますとか、こういうものを少くとも相当大幅に処理すること等によりまして、この当面の臨時的な措置を講じて参りたいということで、当局においても具体的にその研究を進めております。なお、飼料審議会におきましても、この聞の事情につきまして御懇談を頂きまして、審議会の中に小委員会を設けまして、具体的な対策を御考究頂くということに相成つておるわけでございます。当面の対策につきましては、種々右申上げましたような点を配慮いたしておるわけであります。
  61. 河野謙三

    河野謙三君 当面の対策をいろいろお立てになつておるようでありますけれども、私はそれなら具体的に伺いたいのですが、私が承知しておる範囲では具体的な対策は何もない。従つてそれが相場に現われて「ふすま」は一地区じやない。全国的に僅か三十キロの「ふすま」が九百円で農家に渡されている。麦「ぬか」が七百八十円とか、八百円とかいうのを私は聞いています。大臣に改めて申上げますが、過日来畜産局長なり、食糧庁長官に言つておるのでありますが、農林大臣が政府の麦を製粉会社、精麦会社に払下げる場合には、その払下価格決定に当つて麦「ぬか」の予定額、「ふすま」の予定額、これはあるのです。これらの「ふすま」なり、麦「ぬか」の予定額からちやんときめて、そうして政府の払下価格というものはさまつておるのです。その場合に公定価格じやありませんけれども、おおよそきめておるのが麦「ぬか」が一応三百円であつて、「ふすま」の場合には工場渡しの三十キロの五百五十円ということが予定額になつておる。これは麦「ぬか」の価格を政府が責任を以て指導監督をして行かなければならん責任があると同時に、「ふすま」の五百五十円というものは政府が責任を持たなければならない価格です。麦「ぬか」は三百円僅かのものが予定価格なんです。然るに先ほど申上げましたように、それを袋に入れて、運質もかかりますけれども、何と農家の手に渡るのが九百円、麦「ぬか」の価格は三百数円のものが実に八百円になんなんとしておる、こういうことは一体、それも一週間や十日ならいいのです。決してこの頃の相場でないのです。長きに亙つてこういう相場が持続されておるのです。これに対して何ら今まで手を打つていない。そうして漸く審議会を開いた。審議会を開いても、そのときに政府が対策を持つて審議会に出て、こういうことでどうですという何ら具体案を持つていない。従いまして、今大臣は当面の対策を持つておられると言われますけれども、当面の対策は何もない。従つて相場は少しも下らない。私は今の無為無策で行くならば、この青草の出廻るこの時期には少しも相場は下らない。なお六月も七月も下らんと思います。こういうことで製粉会社、精麦会社が暴利をとつておることを黙認していることが一体いいか悪いかという、先ずその御見解を伺いたい、若しこれが不当の値段であるならば、不当な値段を抑えるために安定法の第七条に「政府は、国内の飼料の需給がひつ迫しその価格が著しく騰貴した場合において、これを安定させるため特に必要があると認めるときは、飼料需給安定審議会にはかり、その所有に係る小麦を売り渡す場合において、その相手方に対し、その小麦から生産されるふすまの譲渡又は使用に関し、地域又は時期の指定、価格の制限その他必要な条件を附することができる。」という条項があると思います。この安定法第七条を死文に終らせるという理由が私にはわからない。成るほどこれは恒久対策じやありません。併しこういうような事態が起ることを予定され、あらかじめ立法されておるのが第七条であります。こういう際に第七条を発動しない理由が私にはわからない。これらにつきましての大臣の御見解を伺いたい。同時に今の当面の対策とおつしやいましたが、一体どういう対策があるのですか。これを具体的に伺いたい。
  62. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 当面の対策と申しますのは、イラクの麦でありますとか、昨年の格外麦でありますとか、そういうものを応急の措置として飼料のために処分をいたしたいというようなことを研究いたしておるわけであります。安定法第七条の問題につきましても、事務当局においても十分検討はいたしておりますけれども、やつた結果がお話のように、要は価格を調節し得る目的が達成せられなければ意味をなさないことになるわけであります。その点につきましても十分検討は加えて参つております。詳しいことは畜産局長から御答弁いたします。
  63. 河野謙三

    河野謙三君 然らばどうされるのですか。第七条をやつてもうまい工合にはならん。私はもう研究している段階じやないと思います。農林大臣も私がこれから申上げることについて大体見通しを持つておいでだと思いますが、今餌は非常に上つた、これだけで大体有畜農家というものは参つておる。その上へ持つて行つて、酪農製品のストツクが非常に殖えて、そうしてすでに森永、明治その他の有力な会社は牛乳の買取値段をもう下げております。更にこれはもつと二段も三段も家の値段は叩かれるでしよう、こういう問題が起つております。一方横浜に今頃になつて最悪な事態が起つているときに、濠洲から十二万ポンドのバターが入つておるじやありませんか。続いてデンマークから十万ポンドのバターが入るというじありませんか。たださえも酪農製品のストツクが多くて、そうして生産農家の値を叩き始めておる。その上に又外国からバターが入つておる。一方餌は上つておる。而もその餌を下げる何らの具体策も持たない。これで一体畜産振興になりますか。畜産振興の騒ぎどころじやない。これは政府に今から適策がないならば、この夏から今年の秋には畜産には最悪の事態が起ると思う。現にこの間も畜産局長は面責されたはずです。全国の養鶏大会で、こんなに飼が高くては鶏を三割首をひねると決議しておる。あなたは知つてるでしよう。私は何も変な理窟を言つて政府を責めるとか、何とか言うのじやない。現に鶏は三割首を切るのだ、農家は値を叩かれ始めておる。デンマークや濠洲からバターが二十二万トン横浜に入つて来る。こういうことで一体酪農振興どころの騒ぎではない。こういう事態が起きて、一遍に如何に農林大臣でもすぐにこの問題をすべて解決するような名案はあるとは思いませんけれども、少くともじりじりこの悪条件を克服するだけの何か具体案を一つや二つは私は出してもらわなければならん。そうして呑気千万に我々の酪農振興法とは一体なんだと私は言うのです。これにつきまして、もう私は具体的に今日の問題の話を言つておるわけでありますから、具体的に今日の話を、私は具体案を出してもらわなければ納得できない。アメリカから五等麦を入れるとか、「ふすま」を入れるとか、これはこの間も話しましたが、いずれも取引が、契約ができましても、入つて来るまでには三月かかる。先の話じやないのです。今一体どうするかということなんです。大臣、一体あなたね、選挙区のほうへ一遍餌はどうだ、河野謙三はやかましく言うが、九州はどうだと照会して御覧なさい。畜産局でもほうぼうの酪農の大会なり、畜産大会にそれぞれの係官が出ておるでしよう。その係官が局長にどういうことを報告されておりますか、局長は又大臣にその報告を伝えておりますか、餌の不満が全国の農家に満ち満ちているじやありませんか。これにつきまして、そういう意味合で私はこれはどうしても大臣にこの段階では責任ある一つ御答弁なり、責任ある御説明を伺わなければいかんというので、お忙しいところでありますが、特に私は大臣の御出席を求めた次第であります。従いまして我々は政府から具体的な対策を一つお示し頂きたいと、こう思います。
  64. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 私は今日の特にこの「ふすま」飼料の価格の状態を心配しておりますのは、先ほども申しますように、結論すれば昨年の凶作のしわ寄せがここに参つておる。そこでそれは何も恒久的な現象として出て来ておるものでなしに、一時的現象としてこういう結果が、現象が出て来ておるけれども、併し一時的だろうとも、これを只今お話のように、明日の問題でなく、今日の問題として臨時的な手を打たなければいかんじやないか。幾ら外地から輸入をどうすると言つてみたところで、お話のように相当の期間かかるわけですから、そこでまあ食糧庁で今日持つておりますイラク麦の一万数千トン或いは昨年の格外麦を少し大量に放出する等の措置をとるという方針を以て只今検討を進めております。こう申上げておるわけです。
  65. 河野謙三

    河野謙三君 昨年の凶作のしわ寄せで不可抗力的にこうなつたんだ、こういうような御意味の御説明がありましたが、然らば私は申上げます。去年から農林省が餌についてとつた態度は、経過を言うとこういうことになつております。凶作なんだ、米が高くなつた、そこで米高に連れて粉が上りそうになつた。粉が上つては大変だというので、政府が大量に小麦の払下をやつた。又大麦の払下をやつた。幸い粉がよく売れた、粉の値段も上らずに済んだ。その間において「ふすま」がたくさんできた。たくさんできましたから、「ふすま」を比較的安く昨年の秋から今年の春にかけて推移した。その間に農家が油断して「ふすま」を余計使つた。農家が少し油断して余計使つたのはいけませんが、その間において政府が全く手放しで楽観して、その間において米の報償にまで「ふすま」を使つているじやありませんか。何で米の報償に「ふすま」を使わなければならん理窟があるのです。これは全然食糧庁本位の考え方であつて、畜産局の「ふすま」に対しての意見というものが全然食糧庁に反映していない。私は今も言いましたけれども、米を作る場所は大体牛を飼つていないところですよ。酪農地帯と米作地帯というものは大体分れているのです。米の報償に肥料をやるならわかるけれども、米の報償に「ふすま」をやつた。それが「ふすま」の偏在になつて、東北なり北陸のほうに「ふすま」た偏在になつて、非常に無駄な「ふすま」の配給をやつたために、折角たくさんできたところの「ふすま」が無駄に使われた。そこへ来て、その後今日になつて米は下つて来た。押麦のほうは売れ行きが悪くなつた。粉の売れ行きも悪かつた。従つて「ふすま」も麦「ぬか」も出ない。今になつてじたばたしているのですよ。年間の餌の需要量というものを測定してやつて行けばこんなことにはならない。去年の秋から今年の春にかけて全く手放しの楽観をしてそこに無為無策のうちにやつて来たためにここへ来ている。凶作のしわ寄せでも何でもない。無為無策のしわ寄せがここに来ている。大臣は事務当局からどういう報告を受けているか知りませんけれども、私が今申上げることについてはそう間違いはないと思う。併し私はそういう過ぎたことを言つても仕方がないから、過ぎたことは過ぎたこととして、ここで何とか今の九百円の「ふすま」、八百円になんなんとする麦「ぬか」を適正価格に近いところまで下げるような、何らかここに抜本的な対策を立てなければならん。それには需給安定法の第七条を今にして発動しないで、いつ発動するときがあるか。同時にこの効果が挙らないということと、もう一つ、製粉会社、精麦会社に適正価格を七割も五割も上廻る価格で儲けさしておいて、放つたらかしておくことはいいと思いますか。この不当利得を如何なる時期に解消されるつもりですか、製粉会社、精麦会社は五百円の「ふすま」を九百円で売つたり、三百円の麦「ぬか」を八百円で売つたり、その間に不当に利得したものを、これを儲け得だと、こういうふうに政府は考えておるのか、その点伺いたい。
  66. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 供出奨励のために「ふすま」を要らん所に配給したという御非難でありますが、これは私東北地方に参りました節、昨年、今年と二回に亙つて参りましたが、いずれも米を出すと「ぬか」がとれない。それに対して「ふすま」等の飼料を考えてくれないかというような強い御要望もありましたので、今日までの措置をとつて参つたわけでございます。その結果、或いは河野委員の御非難に当るようなところもあつたのではないかと、今日恐れるわけでありますけれども、そういう趣旨で要らんものを農家が受取るわけもなし、米を出すと「ぬか」がとれない、それに代るべき措置をやつてもらいたいということで、こういう措置をとつたことを御了承願いたいと思います。で、お話の、今日とにかくこの段階でどういうふうにして価格の上に措置を講じて参るか、これは先ほど申しましたような措置をできるだけ早く講じまして価格の安定を図つて行きたい、かように考えます。
  67. 河野謙三

    河野謙三君 今私がお尋ねしたことは、一つ答弁がなかつたが、製粉会社、精麦会社は農林省が予定価格よりも非常に高い価格で「ふすま」や麦「ぬか」を売つて暴利を貧つておる。これは元政府の手持のものでありますから、製粉会社、精麦会社企業努力によつての利益じやないのです。こういう不自然な暴利というものを一体どうされるつもりかということをお答え願いたいのと、今米の報償にやることについて決して無駄なものをやつたとは思わないとおつしやいますけれども、米を出して「ぬか」が足りないなら、米「ぬか」をやつたらいいじやありませんか。同時に現実に「ふすま」を米の報償にやつたために、その量が多かつたために、東北、北陸から「ふすま」が関東や関西の酪農地帯に逆流している事実は、農林大臣御存じのはずであります。私はそんないい加減な理窟を言つているのじやないのです。現実に「ふすま」の動きを見て御覧なさい。報奨用でやつたところの「ふすま」が米の産地から逆流しているじやありませんか。これを私は無駄だと言つているのです。事実を農林大臣御存じないですか。私は従つてこれも過ぎたことでありますから、とやかくはこれ以上言いませんが、今後再び米の報奨に「ふすま」というものは適当でないということだけははつきり御認識を願つておるつもりでありますから、今後こういうものについては再びやる意思はないということを私はこの際に言明願いたいと思うのです。そのことだけでも私は餌の全国的の、特に「ふすま」の全国的の価格に非常な私は好影響があると思うのです。その点は如何でございましよう。
  68. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 政府が売渡しますこの麦なり、小麦なりの加工業者が不当な利得を得ておる。御指摘のようなことは一概に無論否定はいたすものではございませんが、これを結論的に根本的に質せば、この自由経済か、統制経済かという問題になつて来るだろうと思います。自由経済でとにかくすべてが適正利潤の上に乗つて一定のマージンの下に取引をせられるということは、これはもう自由経済の中におきましては、損して売る場合もありましようし、得して売る場合もあるわけですから、そこに自由経済の妙味があるわけであります。併しお話のように、今日のそれじや「ふすま」の価格というものが適正であるか、これはもう決して適正であるとは存じませんので、それは別途の措置で以て、そういう暴騰しておる価格を引戻す措置を、先ほど申しますような措置を講ずることによつて或る程度矯め得るのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。多少業者が得をしたり、或いは企業上の危険を冒す、或いは時には如何かと思われるような儲けが出て来るというようなところに、初めてそれを、極端を是認しようというものではございませんけれども一定の経済事情の下における取引条件をちよつと超えたから、これはこういうようには私はとりません。併しこの「ふすま」の価格問題につきましては、今申します通りの措置をとりたい、こう申上げます。なお供出報奨の物資に「ふすま」を今後一切取扱わないということは、「ふすま」の価格をできるだけ低いところで安定せしめて行かなければならないことは、もう当然のことでございますから、それに著しい障害を及ぼすということが予見せられるにもかかわらず、即ちそれを報奨物資に取扱うが故に著しく暴騰せしめるというようなことが予見せられる場合にはいたしません。
  69. 河野謙三

    河野謙三君 米の供出の報奨に「ふすま」を使うことはいいか悪いかという問題につきましては、まだ大臣が具体的事実について検討が私は少し少いと思いますから、まだ今国会中にもしばしばお目にかかれることでありますから、この次お目にかかるときまでよく研究して来てもらいたい。例えば東北、北陸とは言いません。佐賀県なら佐賀県に行つて、あなたの非常に詳しい選挙区で調べて御覧なさい。あの狭い佐賀県でも米をたくさん供出するところは牛の数は非常に少いのです。
  70. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) いや、そんなことはない。
  71. 河野謙三

    河野謙三君 そういうことは全体的に、それは例外はあるでしよう。例外はあるでしようけれども、そういうことを頭からあなたは意地になつて否定されるようなことでは駄目ですよ。畜産局も大臣にもつと酪農の分布状態でもあなた大臣に報告しなさいよ。そういうことをまだその程度言つておられるから駄目なんです。例えば私の神奈川県のようなああいう狭い所でも米を出すところもあります。米を出すところは牛の数が少いのです。水田地帯は少いのですよ。牛は、特に乳牛は少いのです。こういう原則というものを立つて、私はもう少しお考え願わなければいかんと思う。これはあえて私は今日の御答弁は求めませんけれども……。それから今「ふすま」の問題は、自由経済であるからとおつしやいましたけれども、私は根本的にそれはお考えが違うと思う。麦類製品は麦から出発して、粉であろうと、「ふすま」であろうと、すべて間接統制の枠にはまつているわけです。この事実は法律によつてきまつているのです。併しこれを画然と公定価格にして配給統制、価格統制をやらないで、間接統制でやつて行こうということは事実でありますけれども、それが間接統制が即自由経済でないということは大臣御存じの通りのはずであります。従つて私が先ほどから申上げているように、麦の払下価格をきめるときには食糧庁の企画課が細かく製粉会社原価計算をしてこの払下麦で工場が適正な利潤をとつて而も粉は千円で売れるはずだ。「ふすま」は五百円で売れるはずだ。その場合にちやんと適正利潤が見てある。そうしてそれによつて払下価格をきめるわけです。その場合に五百五十円が五百円に下がることもあるでしよう。逆に六百円に上がることもあるでしよう。上下一割、二割の幅は直接統制をやつているのじやありませんから仕方がありませんけれども、余り中心値からはずれたときには政府には責任がある。責任があると同時に、そういう中心位から余りはずれたときのために安定法の第七条があつて、必要と認めた場合には政府が管理することになつておる。そうじやないですか。安定法第七条の立法の精神とはそうだと思う。必要だと認むる場合は、それじやどういう場合を必要があると認める場合というのですか。安定法第七条の必要と認むる場合というのは、ほかに意味することがあるのですか。今の自由経済でない、麦類製品は一切自由経済の枠にはまつているのじやない。間接統制の枠にはまつているのだ。こういう根本的な問題について大臣と意見が違いましようが、これをもう一遍御答弁願います。どこまでも自由経済とおつしやるのですか。それともう一つは、安定法第七条の必要と認める場合はいつです、何のことを指しているのです。それを御答弁願いたい。
  72. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 間接統制が自由経済なりや否やということは、これは疑問のあるところであろうと思います。それは政府が麦を売渡すに当りまして、麦及び附帯生産物でありますものの大体の価格を想定して、そうして国民生活に圧迫を来たさないという配慮の下にいたしておるわけでございますから、従つてお話のように著しくこれが上下して参るという場合におきましては、もとよりこれは政府は、その大体狙つておりまするところに安定するように措置をとらなければならん責任は十分あることは御指摘の通りに考えております。ただまあ言葉の、私の表現がまずいために無用の誤解を与えましたならば、これは訂正いたしたいと存じます。安定法第七条の御指摘のことにつきましては、これは一つ今日まで畜産局におきまして、いろいろ検討いたしておりますから、検討、研究の次第を畜産局長から御説明を申上げます。
  73. 河野謙三

    河野謙三君 畜産局長からはあとで、又大臣のおられないときにでもいろいろ御説明を伺えるのでありますから、この際大臣に伺いますが、一体大臣、今私が申上げましたように、「ふすま」が九百円だ、麦「ぬか」が八百円だという事態に対して、而もこれに対して根本的な対策がないために、今後私はこの値段で暫らく推移すると思う。ところが折悪しくこの間にあなたのところでは本年度の麦価をきめなければなりません。この間の御説明では本気になつて取組むつもりだとおつしやいましたが、取組んでみたところで、去年の値段を維持することができるかどうかというところにむずかしい目標がある。目標があるのだとおつしやいましたが、去年の値段と同じように仮にできたといたしましても、小麦は一俵二千円でしよう、「ふすま」が今三十キロで九百円だ。大十キロにして千八百円でしよう。小麦の値段と「ふすま」の値段というものは、大体小麦一俵について「ふすま」を六十キロに直した場合には、約五割から、せいぜい六割くらいのところへ落着くのがその間の価格比であります。然るに今九百円の「ふすま」は六十キロに直せば千八百円の「ふすま」、それを現実に農家が買つておるのでありますから、それで今度ここへ出て来るところの麦を、政府が買上値段をきめる場合に、去年と同じように二千円できめるようなことができますか、絶対に農家は承服しませんよ。あなたの努力によつてきめなければならんところの麦の値段、大麦、小麦、裸麦の値段と、一方において小麦、麦「ぬか」の現実における相場、農家が闇で買つておるところの「ふすま」、これとの比例がとれませんよ。小麦一俵の値段と、「ふすま」六十キロの値段と殆んどかつかつのところに来ておる。これで一体大臣、麦の値段はきめられますか。それとも大臣は農家経済から見て、「ふすま」が千八百円なら今年は小麦は三千円ときめてやる、こうおつしやいますか、できないでしようそういうことは……。この問題にもぶつかりますよ。これは一体どうされるのでしよう。
  74. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 麦価の問題につきましては、只今事務当局のほうでいろいろ資料を検討いたしておる段階でございます。適正なところできめたいと考えております。
  75. 河野謙三

    河野謙三君 検討はいたしておられるでしようけれども、現実に今申上げるように嘘でも何でもない。農家は九百円で「ふすま」を買つておる。六十キロで千八百円だ、そうして幾ら検討してみたところで二千円の上幾らにもきめられんでしよう。小麦の値段は、そうしますと、小麦が二千円が二千百円で、「ふすま」が六十キロで千八百円、これで一体正しい価格政策になるでしようか。そういうところの矛盾にもぶつかるのであるから、その面から見ても私は麦の値段を上げろというのではありませんけれども、そういう価格政策からいつても、この機会に麦「ぬか」なり、「ふすま」についての価格の安定について抜本的な、根本的な対策をお立てにならんと、すぐ大臣は壁にぶつかる、私はこれは特に大臣に御忠告申上げておくのです。そうでないととんだことになりますよ。いろいろほかのかたの御質問もあるでしようから、最後に私は、先ほどから大臣がここで輸入の低質品位の小麦を大量に払下げるとおつしやいましたが、それを具体的にイラクの麦を幾らとか、どこの麦を幾らとか、具体的に産地名、要するに銘柄別の払下数量をここで発表して下さい。
  76. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) イラクの麦は一万トン以上できるのじやないか、内地の等外も二、三万トンできればやりたいと考えております。
  77. 河野謙三

    河野謙三君 それは今月のうちにやるのですか。
  78. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 今検討いたしておりますから、とにかく当面の応急の、これではどれだけの効果が出ますか、やるだけのことは、そういうふうに残つているのですから、できるだけ早くやりたい。
  79. 河野謙三

    河野謙三君 それは一つの目標でありますが、それをやることによつて「ふすま」なり、麦「ぬか」の価格はどこまで引下げるつもりでおりますか。これは勿論相場のことでありますから、あなた方の思うように行かんでしようけれども、一応そういう払下をやる以上は、今の九百円の「ふすま」を八百円にしようとか、取りあえず七百五十円にしようとか、目標はあるはずです。その目標を立てて、その目標まで行かなかつたときは止むを得ないから第七条を発動するとか、又その次の払下をやるとか、いろいろ手を打つでしよう。一体今大臣がおつしやつたような数量をここで早急に払下げることによつて、価格をどの辺まで安定させようとするお見込みですか、畜産局長からで結構ですから……。
  80. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今大臣から申しましたイラクの麦の分は、大麦といたしまして七千トン、これはすでに政府が輸送中であるのであります。これはすでに決定いたしまして、ただ現物が西の方面に集中いたしておりますから、西の方面のままで払下をいたしますというと、それが相場の中心をなします関東の方面に響かないというような関係がありますので、現に輸送途中であるのであります。更に七千トンの分につきましては、これは近々うちに、又これも同様に輸送を伴いますので、その措置をとりたい、かように考えます。次に、申上げます六等麦の問題でありますが、これにつきましては価格との問題があるのでありますが、できるだけ農民に不当な価格にならないように、畜産の再生産に見合うような価格に、どれだけ格外品を集め得るかということで折衝いたしておるのでありますが、大体二万トン検討のものは棚下しができるのではないか、かように考えておるのであります。早急に実施いたしたい、かように考えておるのであります。これらの措置によりまして、できるだけ価格を安定せしめたい、かように考えておるものでありますが、御承知のように間接統制といたしましても、すでに需給がアンバランスでありまして、そのために価格が相当つているというような事情がありますので、そのためには先ず現物を出すことが先決問題であります。これだけの措置をとりたい、かように考えておるのであります。先般の飼料需給安定審議会におきましても、先ず何よりも現物をできるだけ早急に出すように具体的な方策を考究することが先決問題であるという意味の大多数の委員の御意見であつたのであります。当面の対策といたしまして、これだけの措置をとつて参りたい。同時に数回業界と懇談と申しまするか、食糧庁と一緒になつて業界に協力方を懇請いたしました。小麦の売渡しに伴います「ふすま」の価格の織込価格につきましては、これも更に一段とそういうような措置を強力にとつてもらうように、業界のほうに協力を求めたい、かように考えております。当面すでにそれらの措置をとりまして、今後の推移を眺めて参りたいと思いますが、このほかにもできるだけ速かにあらゆる方法を尽しまして、外国の「ふすま」を購入する、勿論これにつきましては、今月内に入れるということは困難かと思いますが、できるだけ期近の品物を入れるように努力いたしたい、これは常に続けて行かなければならない努力じやないかと思うのであります。幾らのところに下げるかという点につきましては、私どもといたしましては、それらの措置をとり、且つ今後は本格的な青草の時期と申しますか、青草が見えたのではなしに、現実に家畜の飼料として草こいうものがその飼料の対象になるのでありますから、大体において相当価格は下向きじやなかろうか、かように一応は考えておるのであります。
  81. 河野謙三

    河野謙三君 畜産局長にお尋ねしますが、そこで下向くつもりでやつておられることに私は間違いないと思うのだが、あなたのお考えの中には、これから牛乳の値段は必然的にもつと下がるということは、これは前提にしておられるでしよう。牛乳の値段はこれ以上下がらんと思つていらつしやいますか、消費者価格じやない、生産者価格です。もつと農家は牛乳の値段を叩かれるでしよう、今の酪農製品のストツクの場合、又余計にバターや何か入れた関係、そういう関係で牛乳の値段が幾らか下がるだろう。一方餌の価格は幾らまで下げて行かなければならん。こういう机上のプランではありまするけれども、あなたのお手許にそういうプランはあるのですか、そういうプランは一体どうなつておりますか。牛乳の値段が仮に百円に下つた。その場合に酪農家の経済から行けば、「ふすま」は幾らまで下げてやらなければ引合わん、こういうふうな一つのそろばんがあるはずです。そのそろばんはどうなつているのですか。それから江田さんの御質問もあるようでありますから、最後に伺いますが、バターは一体誰が入れたんです。輸入業者は誰です。販売は誰にさせるのです。私の聞いたところでは、横浜のCIFは百八十円です。それは三五%の税金がかかつて、一体誰に幾ら儲けさしているのです。その売る場合には国内価格に影響のないようにという条件があるように聞いていた。国内価格ということになると四百円から四百四十円ぐらいしている。その幅が如何にもあり過ぎますが、従つてそれを扱うところの業者というのは非常に暴利をとりますが、一体誰が扱い者です。誰に儲けさせるのです。儲けた金は一体畜産の振興費か何かの財政に積立てさせるのですか、どういう口銭を与えてどういう扱いでやるのだか、こういう点についての御説明を伺いたい。これは若し何でしたら、大臣もお忙しいようでありますから、今日でなく明日でも資料を出して頂きたい。輸入バターはどういうインポーターが扱つて国内で誰が売つて、それがどういうふうに口銭をとつて国内市場はどうなるのか。その間に非常な幅がありますが、この幅は一体どうするのだという説明資料を、今でなくてよろしうございますから、あとで私の手許に下さい。
  82. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 第一点の御質問の点でありまするが、乳価の基本をなしまする生乳の問題につきましては、これからずつと最盛需要期になりまするので、従つて乳価が今年度下るというような予想はいたしておりません。ただ現在まで地方によりまして相当牛乳の奪い合いと申しまするか、それらの関係でジグザグに上つておりましたところで、一部修正されたようなところが、これは生産者の場合でございますが、そういうようなところがありまして、そういう修正価格というものが、一、二地方によりまして見られたようでありまするが、全体の価格体系といたしまして、生産者の価格が現在のところ下つておるというようなふうに見受けておりません。又本年の夏を身近に控えておりますので、これが全体の問題といたしまして生産者の価格が下るようなふうには考えておりません。従つていわゆる飼料価格と乳価の関係の逆ざやになるというようなことが、本年のいわゆる最盛需要期においてはそのような現象は惹起しないじやなかろうか、かように考えております。
  83. 河野謙三

    河野謙三君 私は質問をやめようとしたのでありますが、余り現実とかけ離れた御答弁をなさいましたから……、現に各社で、森永でも明治でも、その他の会社がここで五円か、十円値を下げているじやありませんか、これはあなたのほうに行つておりませんか。現に下つておりますよ。そういう事実はあなたのほうに報告がないのですか。これから先のことは私はもつと叩かれると思う。あなたは、いよいよ例年から言えば乳価の上るときですから、例年並に上ると言われますが、これから先のことは別でありましよう。現実に各社において乳価というのは下げられているじやありませんか。そういう報告は畜産局長のところに行つておりませんか。
  84. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 何と申しまするか、取扱う会社によりましては、そういうようなことが一、二あるようでありまするが、全体の問題としてこれが全部そういうようなふうになるかという点につきましては、今後最盛需要期になりまするので、私どもはそういうことのないようなふうに、我々といたしましても努力いたしたい。かように考えているのでありまするが、ただ一時相当牛乳の奪い合いと申しまするか、その関係で不当な値を出したり、そういうふうな関係がありますので、修正と申しまするか、そういうような事情は多少あるようであります。
  85. 河野謙三

    河野謙三君 最後に私は大臣に伺いたい。私は今までずつと大臣の御意見を伺つておりますと、どうも大臣は忙がしい体でありますから、一々大臣が直接調べるわけに行かんでしようが、まだ詳細な実情の報告が大臣の耳に入つていないと私は思うのです。特に私はこの際、八つ当りのようでありますけれども、農業団体等がこの問題に対して少しも私は騒がない。従つてこういう問題を農業団体が一番先に大臣の耳に入れなければならないのに、農業団体がこれだけ餌が上つても、ただの一度も餌が上つて因るという陳情をしたことがない。私に言わせれば、この頃の農業団体はどうかしている。MSAだの、やれ何だとか、そういう思想問題についてはえらいやかましく活発にやつているが、具体的に農村のその日の経済に重大な影響を及ぼすものについては、農業団体は極めて不活発なんだ。悪意に解釈すれば、私は農業団体も一緒に商業資本と同じように餌が上つた、肥料が上つたと喜んでいると、私は曲解すればそういうふうに言える。そういうように、農村の事情を聞かれる立場にある大臣が、農業団体からそういう声がないために大臣を誤またせると思う。もう少し大臣は農業団体の意見もさることながら、広く農林省の畜産局は勿論のこと、もう少しこの際全国の畜産事情について、今の乳価の今後の推移、餌の問題、そういう問題について、詳細に直ちに大臣に御検討を頂くことをお願いして、もう少し大臣にこの畜産の問題について認識を深めてもらいたいということを特に私はこの際、痛切に感じますので、お願いして一応私は大臣に対する質問はこれで打切ります。
  86. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 御注意は有難く拝承いたし、私の経験の至らざるところ、勉強の至らざるところ、これは深くお詫びを申上げます。併しこの「ふすま」の問題、只今の問題にいたしましても、先日開かれました養鶏大会にも私出席をいたしまして、つぶさにその実情も伺い、問題の点につきまして事務当局に御勉強を願つているような点も、そういうところから来ているわけでございます。併し御注意は十分承わつておきます。
  87. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 先ほどの河野委員質問に対しての畜産局長の御答弁に、生乳はこれから需要期に入るから下らないという見込みだというお話でありましたが、原料乳については全く逆なはずです。そこでこのバターその他の乳製品の輸入と原料品の値下りということについては、どんな工合のお見込を持つておられるか、これを一つ承わつておきたい。
  88. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 昨年の暮から今年の初めにかけまして、例のバターの問題が強く論議されまして、できるだけ多量にバターを輸入せいという声が各方面から起きて来たのでありますが、もうすでに御承知の通り我が国の酪農は極めて底が浅いと申しまするか、需給に非常に敏感でありまするので、少しばかりのバターの輸入というものが我が国の酪農に非常な影響を来たす。こういうような意味合におきまして、数量をカバーするという意味合におきまして、これは常時輸入されておりますいわゆる雑品の枠の中から、これは年々大体輸入される一応の枠の中でありまするが、そのうちで特にそれを二十万ポンド分というものを輸入いたしまして、最近これが入庫いたしておるという事情にあるのであります。その場合に一番問題になりますのは、これが内地の市価に直接影響をしないようにというわけで、輸入の方法につきましていろいろと内部で検討いたしまして、直接市価に響かないような方法にはどうすればいいか、これらの点につきまして、各牛乳関係の関係者といろいろ協議いたしまして、全国的な組織の下にこれを輸入をいたしておるというような関係であるのであります。これらの問題につきましては、今後の輸入との関係におきまして、どういうことになるかということになると思いますが、現在輸入いたしましたものにつきましては、それらの点がありまするので、これは業界が一致して或る程度何と申しまするか、直接市場のほうに全数量が出廻らないような措置を業界と協力いたしまして講ずることが一番大切じやないかと思うのであります。なお今後の問題につきましては、だんだんと、特に北海道等におきましては、これは増産の時期に行くと思うのでありまして、外国から入つて来るというようなものにつきましては、業界とも協力いたしまして、できるだけ少くすると、こういうような措置を講ずる以外に方法がなかろう、こういうふうに考えております。
  89. 江田三郎

    ○江田三郎君 酪農振興法の問題についてお尋ねしますが、先ず第一に、これが衆議院において修正になりましたが、大臣としてはこの修正案に賛成なのかどうかということ。
  90. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 衆議院の修正点は、私どもとしましては、国会の御意志に従うことは当然のことでございまして、御尤もな趣意にも存じますので、参議院におかれて同様の御意見であれば私どもも全く異存はございません。
  91. 江田三郎

    ○江田三郎君 先ほどから河野委員質問を聞いておりましても、餌の問題というものがなかなか大変なことでして、大臣は昨年度の凶作のしわ寄せでこういう次第になつているのだというお話でありましたが、私どもは必ずしもそうは考えない。現在の乳製品の状態、その将来性、外国の事情、そうして現在の飼料の価格、将来の需給見込み、こういう点から考えまして、なかなか楽観をすることはできないのでして、どうしても酪農振興については根本的な草の問題と本格的に取組まなければならん、こう考えるのですが、ここに出されております計画で、集約酪農地区における草地の利用、こういうものがありますが、それだけのことについて見ても、例えばこれについて異議の申立があるというと、これはどうすることもできない、そして異議の申立があつた場合に重大な支障がないときには、この草地の改良をやるというだけであつて、恐らく主だつたところで異議の申立が出る、異議の申立が出れば必ず重大な支障があるにきまつているので、異議の申立が出たならば、この草地の改良計画というものは殆んど手も足も出ないということになるわけです。今度の衆議院の修正で行きますというと、これはただ集約酪農地帯だけでなしに、酪農経営全体の普及発達なり、農業経営の安定ということが第一条で修正をされているわけでして、従つてこの草地の改良計画というものは、集約酪農地帯以外の全国的な問題として考えなければならんと思うのですが、それが集約酪農地帯においてすらも今のような制約がある、一体他の地区においてはどういうことをするのか、勿論牧野法というものがありますけれども、牧野法にしたところで、これは公有牧野の問題だけであつて、殆んどこの各地に粗放のまま置忘れられている草の問題については手が付かないという状態、かような点について一体農林省として草の問題について根本的にどういう計画を持つているのか。第一、草を扱つている機構が、畜産局のほうでも扱つておるが、改良事業のほうでもやつておる。そうかと思うと林野庁のほうでもやつておる、私はその間にどうも一貫性がないと思う。例えば畜産局に草の改良のことを聞いてみても、重点はやつばり輸入牧草というようなものに置かれておる。そういうようなものと、飼料になるこの樹木野草との組合せをどうするのか、本当に草地の改良をやるということならば、何やらクローバーとか、何やらグラスというようなものだけでなしに、もつと総合的に計画がなければ、これはぺ一パー・プランに終つてしまうのじやないかと思うのですが、そういう点について一体どういう計画を持つておるのか、或いは草地の改良といつたところで、手でやるのか、機械でやるのか、これは一体どうするのか、こういうことについてどれだけの予算を組もうとしておるのかというような、一つ草をどうするかという大臣の根本的な考え方というものをお聞かせ願いたいと思う。
  92. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) お話の畜産の振興を叫んでおりまするその足どりと、草に対する問題の措置が手遅れになつて来ておるということは、現状からいたしまして、これは率直に認めざるを得ないと考えております。どうしてもこの日本の国土条件の下におきまして酪農を振興し、畜産を振興して参りまするために、高い購入飼料に大部分を依存して行くという形では将来の酪農というものが必ずしも安固たるものではない。従つてどうしても国土の上で自給し得べき草資源の利用と畜産とが結び付いて行かなければならん。で、それぞれお話のように草問題自体が畜産局のほうでもやつておる、林野庁でもやつておる、いづれも今日まで申しますれば研究試験の過程にあると、これはもう大観して申上げざるを得ないわけです。で、酪農振興が非常な足どりで進まなければならん段階におきましては、この問題は急速に一つ機構の上におきましても整備して参らなければならん、こういうことを考えております。
  93. 江田三郎

    ○江田三郎君 どうも大臣の答弁は、序論だけの答弁になるんでしてね、肝心の具体的のことは余り言わんで、この御趣旨のほうはというところだけに終るから困るんで、もつとはつきりと計画がなければ仕方がない。畜産局に計画がなければ大臣の腹の中には何かあるだろうと思うのです。私はこの際本当に大臣が酪農ということを考えているなら、雄渾な草の改良計画というものが出て来なければならんと思うのです。これは一つは法律的に処置する問題もありましよう。だから私は一つ具体的にお聞きしてみますが、例えば牧野法というものを、これを根本的に変える御意思はございませんか。こういうような公有の牧野だけに関する法律を、そうでなくして全体的にもつと拡げて行く、そうして例えば草地改良法というようなものでも作つて、そうして都道府県なり、或いは市町村なりが草地改良の計画を立てたら、それに対して異議があつたところで、審議会か、農業委員会というものにかけて、きちんきちんと処理ができると、せめてこういうようなことにでもしなければ、なかなか草の改良というものはできない。特に草地の問題というのは非常に長い間の封建的な慣例があつて、今なお昔そのままの状態で年々草地をよくして行くのではなしに、痩せさせておる。こういうような牧野さえも痩せさせておる、そういうふうな状態があるわけですが、抜本的に草を考える意味において牧野法を根本的に改正する、こういう考えはございませんか。
  94. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) どうも序論的なことばかり申上げまして非常に恐縮でございますが、先ほど申しまするように、この酪農振興が強く急速な足取りを以て振興すべく要請せられておりますのは、無論まあ先輩諸公には早くから唱道されておりましたけれども、国情におきましては、これは結局食糧需給の体制が壊れてしまつた、どうするということから酪農振興という声が一段と国民的要請になつて出て来ているわけです。従つてずつとまあ明治以来何十年という足取りで同じことでやつて来ておれば相当進んでおると思いますけれども、戦後のこういうふうな国情から急速にその振興を叫ばれ、その足取りと草のほうの関係が手遅れになつて来ておるということは、これは率直に認めざるを得ないわけであります。お話の牧野法につきましても、私はあまりよく承知いたしておりませんが、事務当局で申しておりますることは、江田委員お話のようなまあ趣意を以ちまして、牧野法の根本改正を検討いたしておるところでございますから、できるだけ速かに督励をいたして参りたいと思います。
  95. 江田三郎

    ○江田三郎君 この草地の改良というものは、私はこれはやはり国がいろいろ補助金も出して行かなければならんし、いろいろやつて行かなければならんと思うのです。併しそういうことだけでは私は足らんのじやないかと思う。何しろ広い草地なんですよ。そうして又日本ぐらい草に恵まれたところはないというだけに、どんどん草が生えるわけですが、こういう草を片つ方で少々の金を出してこの牧草の種子を蒔いたところで、ちよつと油断するというと、すぐに悪草にやられてしまうのではないか、そういう点についてまあ草地を改良する団体その他が国から補助金をもらつてやつたり何かするということは、これはやつて行かなければならんが、同時にこういうことについては、私はやはり国民運動というものがなければならんのじやないか。例えば堤防へ行つてみますと、牛が食わん利用価値のない草は、附近の草は全部刈られているが、それだけはちやんと残されている。残されているということはその種子が落ちるということなんです。ですからあまり悪草はこれはなかなか百姓だつて家に持つて行つても役に立たないものは刈らないから、そういうものを国民運動として悪草を駆除する、そういうのには私は小学生あたりにも手伝つてもらつていいのじやないか。小学生あたりに勤労奉仕をさせてはいかんということになつているけれども、勤労奉仕ではない、悪い草は追放するのだ、人間のほうの追放はよその国にやつてもらつたが、役に立たない草のほうの追放は国民が追放するのだというふうな広汎な国民運動が必要なんじやないか、そういうことを子供のときから、この草はいい草であり、この草は悪い草ということを教え込む、実践させる、かようなところまで行かなければ本当の草の改良ということは私は軌道に乗らんと思うのですが、そういうことはお考えになつたことはございませんですか。
  96. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) この草の改良に対して、そういう国民の認識と協力が頂けるように、政府としてもそういう機運を盛り上げて行くということは全く私は同感でございます。この僅かに春秋二期でございますが、草の週間といつたような、聞いたこともないようなことが行われているというようなことでは、お話の御趣意に副うようなことはできないと存じます。少し具体的にやり方を研究させて頂きたいと思います。かように考えております。
  97. 江田三郎

    ○江田三郎君 とにかくまあ食糧事情から差迫つてこの酪農振興を思い付くというのなら、それは思い付きはどつちから、思い付いてもいいが、とにかく日本が農業としては酪農をやつて行かなければならない、又酪農を振興しようというのであれば、この草の問題を置忘れたのでは私は日本農業の進歩も発展というものもないと思うので、そういう点が草に恵まれ過ぎているだけに、草を非常にお粗末に考えて今まで放つたらかして来ていると思う。そこで牧野法の改正なり、或いは草に対する国民運動なり、或いは又もつと草についての機構を整備して行く、或いはその草の奨励の仕方にしたところで、もつと輸入牧草みたような問題だけでなしに、もつと野草の改良なり、飼料樹の問題に今まで手を付けていなかつた点を十分考えられて、そういうような根本的な対策を立てて頂きたいと思うのですが、今日すぐにその答えというのも出ないと思うのですが、とにかく方向としてはそういうことを強力に、而も早急にやるという意思表示をして頂きたいと思う。
  98. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 只今の御趣意につきましては、私はできるだけ御意見の線に沿いまして努力をいたして参ります。なお一般的に申しましても、現在の草が改良せられれは少くとも十倍くらいの使用能力を持つようになるのではないかと思う、理想的に行けば……。ということや、それから又同時に特にこの原野になつております有畜の、遊地々々の原野と申しますか、これにつきましても、これは酪農振興畜産という面からのみではなく、やはり治山、治水の上に非常に大きなやはり問題を残しておるので、両面からやはりこの問題を取上げて参りたい、かように考えております。
  99. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 悪草退治の問題でありますが、今、江田さんから言われた通り、ただ食わせたり刈らせたりしているのではなく、悪草の種が、根が残つて困るのであります。結局草地の改良ということは耕作に進まなければなららない、こう私は思うのであります。耕して初めて草は絶える、何寸も下に押込められて草は絶えるのですが、そうしないと、耕さないで百姓の手、青少年の手でやろうと思つてもできるものではない、そこで耕作に進まなければならない、そうすると、結局草地の耕作権という問題が出て来る、その耕作権はそもそも誰に帰属するかということになるということですね、この点について伺つて見たいと思うのでございます。ややもすると、この耕作権の帰属がわかつて来なければ、草地の所有者はそれは必ずこれに対して承諾を与えないということは当然なことだと思うのであります。そこでそういうよう耕作権は、そもそも誰に帰属するか、その費用はその土地の所有者、草地の所有者に負担させるのであるかどうか、又収益は草地の所有者の収益になるのであるかどうか、こういう点について伺つてみたいと思います。
  100. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今の御意見の通り、酪農を振興させますためには、最も優秀な草を造成しなければならない。而もそれを徹底いたしまするためには耕作に進まなければならん、御意見の極りだと思うのであります。従来この方面におきまして非常に立ち遅れと申しますか、遅れておりまするのは、現在までの家畜は主として和牛なり、或いは馬なりでありました関係上、そういうような進んだいわゆる草資源の改良ということが、ぴつたり現在までの畜産と経済的にマツチしなかつた、逆な言葉で申しますると、そういうような経費をかけて、手数をかけて革の改良をいたしましても、和牛なり、馬なりというものは経済的効果がぴつたりと当てはまつて参らなかつたというような点が、牧野の改良というような点につきまして、現在まで立ち遅れを来たしております非常な原因ではなかろうかと、かように考えるのであります。併しながら、乳牛の飼育ということが中心になつて参りまするというと、その間の事情は全く一変して参るのではなかろうか。つまり只今の御意見の通り、従来のようないわゆる牧道の改良でありますとか、牧棚であるとか、そういうことでなしに、草そのものの質の改善、それが極端に効果を現わしますためには、耕作ということになつてつて来ると思うのであります。ところが御承知のように現在の牧野はいろいろ長い間の慣行と申しますか、地方々々によりまして使用権利用権、所有権なりというものがいろいろな事情に分れておるのであります。で、牧野全体といたしまして、それらの点も案いたしまして、いろいろ日本全国の牧野にきしまして、これが我が国の将来の家畜、畜産の中心となりまする酪農との関連において、そういう点を、現在の牧野を全面的に改正いたしたいと、かような関係で研究をいたしておりますが、差当り当面の問題といたしまして、集約酪農の牧地につきまして、そういうような牧野法の改正の一つの前提をなしております考え方の下に、集約酪農の地域につきましては、草地につきまして特別な例外規定を設けておるのであります。私たちは牧野或いは延いては草地全体につきましての改正ということを意図いたしたのでありますが、我が国におきましては、御承知のように、地方によりまして馬或いは和牛、そういうような家畜の使用形態が種々に分れておりますので、一足飛びにそこまで参るということにつきまして、牧野全体についての改正ということになりまするためには、そこに或る程度のまだ距離があるんではなかろうかというような考えの下に、乳牛中心にやつておるようないわゆる集約酪農につきましての一種の牧野法の改正ということを目途としておるのであります。ただ併しながら、先ほど申上げました通り、我が国の牧野なり草地というものの使用慣行なり、或いは所有関係なり、或いは入会関係というものが相当複雑な様相をとつておるのであります。で、これにつきまして、形式論から申上げますれば、所有者が反対をいたしました場合に、これは仕方がないということにまあなることもあると思うのであります。又所有者でありますとか、或いは権利者が、牧野改良なり何なりをやることになると思いますが、これらの点につきましては、いわゆる集約酪農の地域につきましての牧野改良計画、それらに基く管理計画、使用計画というものを村を挙げてやつてもらうためには、いろいろな所有形態なり、或いは所有者個人によつていろいろな事情があると思いますが、これは全体の計画といたしまして進んでやらなければ、全体として本当の計画なり或いは使用なりというものはできないじやないか、かように考えるのであります。そこで集約酪農地域の指定と申しまするか、そういうように酪農を中心としてやつて参りたいというところにつきましては、先ず第一に、その当該地方におきまする農民全般の非常な御協力を求めるということが第一の問題じやないかと考えるのであります。いろいろ細かく考えて参ります場合には、一、二の反対者が出て参つた場合に、その人が大きな牧野を持つておつた場合には、実際問題としていわゆる牧野の改良計画はできないのじやないか、或いは地方の実情に副うような利用状態が現出されないのじやないかというような御議論もあるかと思うのであります。併しながら、現在の法制の下におきまして、そういうような使用権なり、或いは利用権なり、或いは所有権というものを無視するというようなことには、これは法律上参らんと思うのであります。これらの点につきましては、法律では非常に生ぬるいということになりますと思いますが、一応そういうような計画をこの本法の中に織り込んでいるのでありまして、これをできるだけ行政的な指導と申しますか、裏から言いますれば、協力という形で、先ず一つ集約酪農地域における本当の牧野の改良というものを実行して参りたい、かように考えているのであります。同時にそれにつきましては、いわゆる今までいろいろ牧野の改良につきまして予算等も計上いたしたのでありますが、なかなか広い草地を人力を以てやるということにつきましては、なかなか困難である。特に東北なり、北海道なり、非常に広大な面積を所有と申しまするか、原野のままで放置されているというところにおきましては、とても人力ではいけないというような関係もありますので、北海道につきましては……、府県に補助をいたしまして、相当多額の機械力を動員するということにいたしたのであります。なお内地、これは北海道も含むのでありますが、国といたしましても、現在の飼畜牧場に四カ所ほどいわゆる機械改良の中心地点を設ける。而もその機械につきましては、セツトといたしまして、外国等から輸入いたしまして、諸般の施設を備えると、こういうようなことにいたしまして、人力と機械力と二本建で今後改良を図つて参りたい、かように考えているのであり言す。勿論その間にいろいろ地方におきましては、法律上この所有権を無視できないような関係もありまするので、集約酪農地域に指定された地域におきましても、そういう問題が起きて来るかと思いまするが、これは地方庁を中心といたしまして、できるだけ行政的な措置によりまして、その間の調整をとつて参りたい、かように考えているのであります。
  101. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 もう一つ。集約酪農地帯も勿論でありますが、この草地改良は主として国有地或いは公有地等においては、これは可能性があると思うのであります。併し個人の所有地について共同採草をする、或いは共同放牧をするということについては、これはなかなか所有者はうんと言わんと思うのであります。そこでそういう場合に、どういう工合にその問題をやつて行かれるつもりでありますか。うかうかしたために到頭牧地を皆とられてしまつたというようなこともあるのでありまして、そういうことは非常に困難な、個人の土地については非常に困難な問題も生ずると思う、それに対してどういうふうな方法で協力を得られるようにやられるのでありますか、それをもう一つ伺いたいと思います。
  102. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) これにつきましては、牧野の利用形態、或いは所有形態、或いは入会形態というようなことは、地方によりますと非常に違つているのであります。多くいわゆる牧野の所有形態なり、利用形態というものは、いわゆる共同所有と申しまするか、部落なり町村なり、そういうような共同利用或いは共同入会というような事態が相当多いのでありまして、そういうような所につきましては、部落を挙げての酪農振興というようなことになりますれば、これは問題ないと思うのであります。ただ個人間に分割されておると申しまするか、そういうような所につきましては、いろいろ問題ではなかろうかと思うのでありまするが、これは直ちに法律を以てどうこうするというわけには参らんのではなかろうかと思うのでありまして、これは各地方にいろいろそういうような状態がありまするが、先ず実際問題としては、手近にそういうような問題の起らんところから手初めといたしまして、だんだんその間に問題になるところを解決して参るというようなことで進むのじやなかろうか。その上でいろいろどうしてもそういう生温いことではいけないということになりますれば、或る程度立法的な措置を研究いたしまして、それによりまして問題を解決して行く工合になるんじやないか、かような段階になつておる次第であります。
  103. 江田三郎

    ○江田三郎君 この法案は酪農振興法ですが、これについて酪農振興法ではなしに、乳業資本の振興法になるんじやないか、特に例えば第二章第三節あたりは、これによつてむしろ乳業資本を殖やすことになるんじやないかということを河野委員あたりも盛んに言つておられますが、私もどうもそう言われると、そういう気がするのですが、それについて私結局これが酪農振興法であるか、或いは乳業振興法であるかということの、一番根幹になるところは、取引の契約をするときに紛糾が起きる。そういうときに大臣賛成の今度の修正案で行きますと、斡旋委員が出て行つて協定案を作成することが著るしく困難であるときには、農林大臣に対し、助言、資料の提示その他必要な協力を求めることができる、こういうことになつているわけです。そこで私一つ具体的にこれは大臣からお答えができないと思いますが、お尋ねしたいのですが、例えば市乳の場合に農林省で考えているところの市乳の原価の割合というものはどういうことになるのか。市乳の中の何割が原料乳の価格であつて、あとの何割が中間処理の経費或いは販売の経費、こういうことになるのか、その点をどう考えるかということをお尋ねしたい。結局乳業資本のほうは引合わんからと言つて今度の市価を下げているわけですが、ああやつて買取価格を下げて来る、そのときに引合わん、引合わんと言つたところで、仮に非常に厖大な販売宣伝費あたりを使われたんでは、それを全部農家が負担をしなければならないということになつたら、なかなか日本の酪農というものは軌道に乗らんと思います。だからそういう際に、およそここで若し助言を求められた場合には、農林省としてはどういう答えをするつもりなのか。それについての基本的な考え方を聞かしてもらえば、これが果して酪農振興法であるか、或いは乳業振興法であるかということがはつきりとして来ると思うのでして、その点審議の重要なポイントになると思うので、お考えを聞かしてもらいたいと思うのであります。
  104. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今御意見の条文につきましては、衆議院において御修正に相成りました条文であるのであります。衆議院におきまする御論議の中心は、地方々々で解決のできる問題のほかに、成る程度中央と申しまするか、国全体の問題としてそれを参照するというような、いわゆる紛争の内容をなす場合が多かろう、そういう場合に対処するために、農林大臣に対しましていわゆる助言、斡旋に対しまする側面的な協力、こういうような意味合において規定を御挿入に相成つたのであります。これにつきましては、紛争のいろいろ内容によりまして異なると思うのでありまするが、紛争の一番大きな問題といたしましては、いわゆる乳価の問題じやなかろうか、かように考えるのであります。乳価の問題につきましては、生産者といたしましては、最低としまして再生産費を償う限度におきまして、その上においてできるだけ高いほうの価格において決定されるということが望ましいと思うのでありまするが、片一方におきまして、国民全体のいわゆる食生活の改善というような意味合といたしまして、できるだけ安い価格の牛乳、こういう要請もあるのでありまして、これらの点につきましては、そのときどきにおきまする情勢、而もそういうような二つの要請を勘案いたしまして、できるだけ中間的なコスト引下げるというような努力、この努力が是非必要じやなかろうかと思うのでありまして、今回の酪農振興法の全体の趣旨といたしましても、そういうような点を最終の眼目といたしておる、かように了承願いたいと思うのであります。
  105. 江田三郎

    ○江田三郎君 通産大臣が来られましたから、私これでやめますけれども、この点は私一番根幹になると思うので、助言なり資料なりを求められたときに、どういう態度をとられるかということは、これは答えは畜産局長から答えられてよろしいけれども、大臣ともはつきり相談されて原則を示して頂きたいと思います。例えば今の場合に必ず生産費を確保するのだという原則をどこまでもとつて行くのかどうか、或いは逆に販売費、宣伝費なりというものをうんと使われるときには、それによつて乳業資本のほうが引合わんというときに、こちらへ食い込む虞れがあるかどうか、これは根本的な問題ですから、今日は通産大臣が来られましたから、途中でやめにいたしますが、この次までによく農林省の責任のある答えを聞かして頂きたいと思う。
  106. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは酪農振興法の審議は本日はこの程度にいたします。   —————————————
  107. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 通産大臣がお見えになりましたので、臨時硫安需給安定法案を議題といたしまして、農林、通産両大臣に対する総括的質問に入ります。なお、関連いたしまして硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案につきましても御質疑頂いて結構であります。
  108. 江田三郎

    ○江田三郎君 この臨時硫安需給安定法案の審議で私どもが一番問題にしておるのは、生産費が幾らであるか、この点でして、将来この生産費を基準にし、その他若干のものを斟酌して最高の価格をきめる、こういうことになつておるわけですが、若しこれが生産費というものを政府当局あたりで非常に高いものに見込まれておるならば、これはこの法案を作るために却つて現在の硫安の市価を吊り上げるということになるわけです。そういうようなむしろ農民を苦しめるような需給安定法には我々は賛成することができない。こういうことで、御承知のように生産費の問題について今までいろいろやつて来たわけです。そこでまあ私ども非常に遺憾に思いますことは、最初生産費に関するところの資料政府のほうではお出しにならなかつた。そこで国会法に違反するんじやないかというようなことまで問題にしたわけでして、その後秘密会資料が出されましたが、併しその後政府通産省のほうで直接出されたものでなしに、通産省を通じて開発銀行が融資のときに付けた資料から推算して出された数字もございまして、その数字をずつと検討して行つてみますというと、結論として、政府がこの前私たちに通産省のほうで示された生産費というものは、これは妥当な資料でない、こういう結論が出て来たわけです。そしてそれについては通産当局のほうも、これは必らずしも妥当適切な資料ではないと思うという言明があつて、そうして又新たに資料を出して来られましたが、併しこの新たな資料につきましても、私どもこの通りなかなか納得しかねる面があるわけです。それでそれについてこの間からお聞きしているわけですが、そこで具体的にお尋ねしますというと、この前通産大臣は、生産費というものは生産原価に適正な利潤を加えたものだ、こうお答えになつているわけです。そうして然らば一体適正な利潤というのは幾らかということが問題になつて来、仮にここに今通産省のほうで出されたこの推算数字、これは秘密会でしたから、この数字には触れませんけれども、この数字に、現在例えば本年度の肥料会社の配当は平均して二割です。この二割の配当金というものを逆算して一「かます」当りに掛けて行きますというと、現在の硫安の実勢価格よりも高いものが出て来るわけです。そこで適正利潤というものは認めるんだということを通産大臣はおつしやつたんですが、適正利潤というものはどれはどのものか、又現在やつている硫安会社の配当等があるが、適正な利潤であるということになれば、この法案が通つたために逆に価格が上るということになるわけですが、そういう点をどうお考えになつておるのかということをお尋ねしたい。
  109. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 硫安生産原価というものにつきまして、いろいろ御説明を申上げました。過去の説明につきましても只今御指摘がございましたが、いろいろその当時の資料或いは説明刷り等につきましては、私どもとしても、率直に申上げておりまする通り、なかなか的確につかめない点もございますので、そういう点から申しましても、只今御審議を頂いておりまする法律案が成立することが望ましいというふうに考えるわけでございますが、さて只今の適正利潤のお尋ねでありますが、私が原価と適正利潤を以て生産費とするのが普通の考え方であると申しましたのは、一般的に企業が再生産を続け得る程度のものという意味を申上げたつもりでございます。これを具体的に申しますと、その要素として考えられますのは、例えば税金でありますとか、法定積立金でありますとか、或いは配当というようなことがその具体的な要素として考慮されなければならないものであると思います。で、これをそれぞれ具体的に、例えば配当等につきましても、それならば幾らを以て適正とするかというお尋ねでございますが、これはそのときぞれの金利の状態なり、税率の問題なり、その他いろいろの経済事情にも左右されるものでございまして、硫安については何割何分を以て妥当とするということは申上げにくいと思います。要するに、これは今申しましたような、生産費を構成する要素について、そのとき、そのときの経済事情等を十分勘考して、審議会等におきましても十分御検討頂いてきめられるべきものであるというふうに私は考えます。
  110. 江田三郎

    ○江田三郎君 この法案の審議をやつておる間に、政府のほうでよく言われるのは、これによつて日本硫安工業も振興して行くんだし、同時に農家経済も安定して行くんだ、まあ二つ、両方共いいような説明があるわけです。そこで仮に今硫安工業というものが二割の配当をしている。而もこの二割の配当というものの中には、そこまで行く間には当然硫安業者のかたが騒いで来た出血輸出も含まれているわけです。そういうものがあつてなお且つ二割の配当というものができているわけです。で、一体それの片方であるところの農家経済というものは二割の配当ができるほどの安定した経営を今やつているのかどうかということです。そういうゆとりのある日本農業であるかどうかということになるわけでして、若しこの法案によつて硫安工業も振興するのだし、同時に日本農業の経営も安定するのだということになるならば、それならば私どもはこの二割の配当というものは理論的に少しおかしいのじやないか。そういう理窟はともかくとして、端的に今あなた方のほうでこうやつて数字を出された、現に硫安工業は二割の配当をしている。二割五分のところもありますし、一割五分のところもありますが、通算すると、今日の日本経済を見ても二割ということになつております。それだけのものから逆算した税金なりその他社内留保なりで行くと、それをプラスすると明らかにこれは高くなるのだから、高くなるものを我々にこれを認めろというのは、通産委員会ならとにかく、農林委員会に、日本の農業をどうしようかということを考えている我々に高くなる法案を呑めというのは、これは少し政府のほうが無理じやないかと思うのですが、そういう点については、この法案が通過した場合には必ずそういうことにはならないのだ、現在の価格よりも安くなるのだという保証は一体どつかにあるわけですか。少くとも今の愛知さんのお答えで行くと、まあそういうことも今度できる審議会でよく検討しということですけれども、審議会にしたところで、そうなかなか任せ切つてうまく行くというふうには我々は思わんわけです。或いは生産費調査についても、今までよく言われたように、権限がないからわからないのだと言われますけれども、成るほどこれによつて或る程度の権限はできる。併し権限を使いこなせるだけの人が果して用意されているかどうか、定員はどうなんだ。何もわからないものに定員をくれることはありますまい。定員の面から言つても、どうも仮に権限があつても、その権限を十分に活用して生産費がわかり得るような条件が私どもないように思う。その点非常に不安心なんですが、どうです。
  111. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 私どもといたしましては、こういう法律案の御審議をお願いしているそもそもの基本的な考え方としては、価格を上げるというようなことを毛頭考えているわけではございませんで、何としてもこれは合理的に下げて行くようにしなければ、本来の目的を達成することはできないということを基本的に考えておりますから、これをやつて、而も現在のいろいろの条件から御推算になりまして、法律が作られたあとで却つてコストが高くなるというようなことがあつては、如何にしても困るだろうという御趣旨は私も全く同感でございます。これができて、そうして価格の引下ということについてできるだけ努力ができるようにして頂きたいということを念願にしているわけであります。それからその次に、本法律案によつて権限ができた場合には、定員その他の関係からいつて、実際権限はできたが仕事が捗らないということがありはしないかというお尋ねでございますが、これは前にも私こちらに伺つて、或いは議運等においても率直に申上げたつもりでありますが、現在権限がないために、化学肥料部等の職員が非常に御要求資料等を作成いたします場合に、いろいろと困難な状態に遭遇しております。この人たちを以てすれば、権限を頂けば私は相当的確にコストの各要素が掌握できるものと、こういうふうに私は期待いたしております。
  112. 江田三郎

    ○江田三郎君 とにかく今の硫安工業というものはですね、国際価格に比して割高である、そうして輸出をすれば出血なんだ、併しながら、生産量国内需要量以上にできるのだという状態において、その業態を健全にして行かなければならん。そのために政府資金合理化資金として多額のものを貸すと、こういう業態が二割の平均配当をしておるということについては、どうお考えになりますか。
  113. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) その二割の配当ということは、先ほども御指摘がありましたが、会社によつても違うので、大体突込みにすれば現状はそのぐらいになるかと思いますが、これらの点は先ほど冒頭に申上げましたように、現在の経済情勢の下において、例えば金利状況も見なければなりませんし、できれば自己資本を増資等によつて調達してもらいたいという考え方もとらなければなりませんので、概して言つて二割が高いか、安いかということは、俄かにここで断定的に申上げることは私もできないのでございますが、併し基本的な考え方が、先ほど申しましたように下げよう、下げなければならないという努力をするということから言えば、私どもの考え方というものが、或いはその狙つておりますところがおわかり頂けると思います。
  114. 江田三郎

    ○江田三郎君 これはまあ愛知さん、この私どもの感覚の中にはですね、この硫安工業が工業として他の日本の生産工業と並べで見て、置かれている地位、こういうまあ見方もあります。同時にこの硫安工業についてはこれは農民と直接関係があるんだから、百姓の身に引比べてという立場があるわけです。この百姓の身に引比べて考えてみるというと、やれ出血輸出だなどと言つて大騒ぎするくせに、而もこの合理化資金は国から多額のものを借りるというくせに、そのくせに二割も配当しているじやないかというのは、百姓の感覚から言うと割切れないものがあるわけです。これはただこのほかの、例えば造船がどうであれ、石炭がどうであれ、何がどうであれというような観念だけでなしに、ともかくも農民と非常に関係があるだけに、別な角度からこの適正利潤というものを問題にしなきやならんと思うのです。又我々としてはせざるを得ないわけなんです。そこでまあ先ほどのお答えで行きますというと、こういう法案を通す以上は、いずれにしたところで現在の価格より上るということは考えられない。当然幾分下廻るべきものだ、こういうお考えですが、若しそうでありますならば、一体現在の実勢価格より下げなきやならんとするならば、引下げるという理論的根拠をどこに置くべきかということなんです。その際には現在の二割配当というものは少し多過ぎる、これを削れというような角度から、この実勢価格よりも下廻る価格を出して行こうというのが通産省のお答えなのか。それとも現在の二割配当というものは当り前なんだと、こういうことを一体是認されて、その後段にあるところの「参しやくして」というような点から出して行くのか、それは一体どちらなんだということなんです。それについてあなた方が一体日本の農業経営或いは農民の立場というものについてどういうふうな考え方を持つておるかということが、私どもによくわかりますので、その答えを頂きたいと思います。
  115. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この点は二割ということを前提にして、二割の配当をしなければならんということを先ず第一に優先順位をおいて、そこから他の要素を勘考して行くという考え方ではございません。これは先ほども申しましたように、生産物は何か、或いはその中に含まれる適正利潤とは何かということでいろいろ申し上げましたが、そのいろいろの要素を勘考し、且つ場合によりましては各会社別等の経理の状況や主たる構成等を考えて、諸般の経済状況からできるだけ低位に考えるべきものであると、こういうような考え方にいたしたいと思うのであります。それからなおこの点については何回かの御熱心な御審議のときに、当然政府側から御説明申上げたと思いますが、今御指摘の農民の立場に立つ立場、これは私ども通産省におきましても非常によく理解できるつもりでおります。そうして輸出をいたします場合に、例えば西欧諸国などと比べて、現在の少くとも輸出価格が常識的に申しましても、高いということは明らかな事実であると思いますので、それを引下げるためには、できるだけメーカー自体が努力しなければならんけれども、その合理化するまでの間の輸出による或る程度期待し得る、期待し得ると言いますか、見通し得る損失は、決して農村のほうにはかけないということで、この輸出機構も考えておるわけでございますから、それらの点から全部を総合して私どもの考え方がお汲み取り頂けるものと私は信ずるわけでございます。
  116. 江田三郎

    ○江田三郎君 まあ二割の配当というものは、必ずしもこれが適正な利潤ということでなしに、そのときの事情によつていろいろ変ると、こういうことで、まあわかつたような、わからんようなことになりますけれども、併しそれはまあ基準になるわけですね。この生産費というものが基準になる、その次に「農産物価格」、修正案で行きますと、それに「肥料の国際価格その他の経済事情を参しやくして定める。」と、こうなつておるんですが、まあこの参酌というものをどういう度合で参酌するかということが問題になりますが、その度合は別にしても、肥料の国際価格を参酌するということは、別な言葉で言えば、安い外国の硫安に近寄らせた価格を出そうと、こういうことだろうと思いますが、その点は通産省のお考えもその通りかどうかということ。それから第二に、農産物価格を参酌するということは、これは具体的にどういうことを意味しているのか、この点については通産大臣と農林大臣とお二人から答えて頂きたいと思います。仮に農産物の価格と肥料の価格との一定年次の比率を見て行く、そういうようなこととしましても、その一定年度というものをどこに置くかということによつて非常に違つて来るわけです。例えば昭和二十五年、二十六年に置くのか、或いは戦争中なのか、どこに置くのか、そういう点についてこの際原案を作られた政府のほうではどうお考えになつておるのか、国際価格というのは、これは衆議院修正ですけれども、今私が言つたような解釈をしているのかどうか、この点どうですか。
  117. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 農産物価格の関連におきまして、私から私どもの考えを申上げますれば、肥料価格と農産物価格の均衡をできるだけまあ保つて行く、その均衡の取り方は、例えば米価をきめます、麦価をきめます、そういう際にとつておりまするいろいろの基準資料等に合わせまして、それだけに合わして行くわけじやございませんけれども、その均衡を破らないように、できるだけ均衡を保つて行くような趣意で考えておるわけであります。
  118. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 私ども只今農林大臣から御説明いたしましたのと全く同じ考えでおります。それから国際価格等の関係の御質疑がございましたが、成るべく国際価格に近付けるということにおいてこれを参酌する、こういうふうに考えたらよろしいかと思つております。
  119. 江田三郎

    ○江田三郎君 農林大臣のお答え、ちよつとはつきりしないですがね、現在の米価なり、麦価をきめるときの基準年度をとつて行くと、こういうことですか。
  120. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 基準年次等も無論参酌して、均衡をどういうふうにとつて行くかということにおいては考えなきやならんと思いますけれども、それじやどの年度を基準年度にするかということを今きめておるわけじやございません。米価の決定或いは麦価の決定等との諸資料に基きましては、それらを重要な資料として肥料価格の決定に均衡を保つて行くようにいたしたい。こういう趣旨でございます。
  121. 江田三郎

    ○江田三郎君 持つて廻らんで簡明直截な答えはできんものですか、何か今のを聞いておると、何が何だかさつぱり要領を得ませんが、これはもうあなたのほうで原案を作つたのですから、衆議院修正じやないのですから、はつきりした答えができると思うのですが、もつとはつきり答えられんのですか。何かそういうことを開いておると、いつが何やらわけがわからんことになつて来て、年次のとりようによつてどんな答えだつて出るのですから、非常に困りますね、これはどうでしよう。もつとはつきり言つて御覧なさいよ。
  122. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 具体的には肥料審議会にも諮りまして、そしてきめるわけでございますから、今ここでこういうふうにいたしますということを申すことはむしろ軽率であると思います。
  123. 江田三郎

    ○江田三郎君 少くとも原案を作つた政府の考え方はどうかということなんです。そういうように具体的なことは審議会で答えるのだということになると、何も答えられんということになつてしまいますよ。一切これは審議会のほうでやつてもらうので、説明をここでするのは軽率であると思いますというようなことになつてしまう。そうでなしに、少くともそういう点はもつとはつきりできるのじやないかと思うのです。改めてもう一遍聞きますが、更に審議会々々々と言われますが、審議会というものはどこまでの権限を持つておるか、米価審議会の例に徹しますならば、審議会はあつてなきがごときなんです。本審議会も同じような性格を持つものかどうか、どういうことになるのですか、この審議会は……。
  124. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) これは法文にも明記しておりまするように、米価審議会等につきましては、あつてなきがごとくであるという御批判もございますけれども、これは米価審議会は米価審議会として十分その機能を果して頂いておるわけであります。肥料審議会におきましても、重要な事項につきましては肥料審議会の御答申を尊重して参るということは当然のことでございますし、又そういう建前の肥料審議会というものを作るわけでございますから、重要な事項とここに書いておりますけれども、重要な事項は肥料審議会にかけるのであります。
  125. 江田三郎

    ○江田三郎君 今の米価審議会でも十分機能を果しておるというなら甚だ結構なことですが、誰もそんなことを本気で聞いておる人はおりはしない。ましてこの際のやつは、審議会は需給調整及び価格の安定に対する重要な事項について、この原案で行きますと関係大臣に建議をすることができる、建議をするというような、こういう内容では私は殆んどこの審議会の権威というものはないと思うのです。そういう審議会に、何もかにも審議会ができてからきめるべきことだと言つてお逃げになるのは、少しこの法案の言葉に出て来るこの審議会と、あなたがお逃げになる審議会とは違つて、あなたはそういう非常に重要なことは審議会で審議をするのだというときには非常にウエイトが大きいように考えられます。我々もそれだけ聞いておるというと、審議会というものは大変権威を持つておるように思われる。併し一方こうやつて法案を見るというと建議をすることができるという、全くこれは米価審議会よりももつともつと権限のない、力のないものだということになりますが、一体この建議をすることができるというのは一体、具体的にもう少し言うて下さい。どういう一体審議会というものは力を持つておるのですか。
  126. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 審議会の建議というのには、この種の審議会におきまして諮問に答申するという場合が通常の形だと思います。それに積極的に肥料審議会が建言をするということはより一歩強化せられておる。私は従来の審議会のいろいろな何から言いまして、そういうふうに理解をいたしております。
  127. 江田三郎

    ○江田三郎君 私ばかり質問してもいけませんが、今折角、これは従来の審議会よりも強力なものであると言われるのならば、そういうことにして、今後あなた方がそういう線で運営されることを見守つておりますが、先ほどの基準年度の問題はしつこいようですけれども、もう一つはつきりとした答えができないのですか。麦価なり米価なりをきめる基準年度と同じ基準年度で行く、或いは行かないか、或いはいつにする、これは答えができないのですか。
  128. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 昭和二十五年とか、六年とかの平均をとることも一つの取り方だと思います。或いは今日のすべての経済指表の基準年次にいたしておりまする昭和九—十一年等を基準にとることも一つの取り方だと思います。これらは無論これから十分研究いたし、肥料審議会の御審議も経て決定をいたして参りたい、かように考えております。
  129. 江田三郎

    ○江田三郎君 最後に、そういうことしかでなければ答えられなければ仕方ありませんが、通産大臣の先ほどの説明で行きますというと、少くともこの法案を作る以上は、現在の硫安の実勢価格より上廻るというようなことはあり得ないことだ、当然これは下るべきものだ、こういうお答えでしたが、それについては農林大臣も勿論同じお考えとは思いますけれども、これは政府としてこの法案が通つた暁に、現在の実勢価格より肥料の、硫安の価格というものは下る。これは農林大臣も同感だと思いますけれども、念のために伺います。
  130. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 私は本案を立案する動機におきましても、そういう希望、期待を持つて立案をいたしておるわけでございますから、先ほど通産大臣が答えられた通り期待をいたしております。
  131. 江田三郎

    ○江田三郎君 それからもう一つお聞きしておきたいのですが、この第二条によつて「政令で定めるその他の重要肥料」ということがありますが、これは私どもが現実の肥料の状態を見ますというと、少くとも加里肥料の状態というものは現在好ましい状態ではないと思うのでして、農林当局のほうで考えられる適正な価格を非常に上回つた価格で実際に取引をされておる、こういうような状態になつておるときには、政令でこの加里関係のものを定める必要があるということにお認めになりますか、どうでしようか。この「政令で定めるその他の重要肥料」というのは、例えば加里肥料が何ぼになろうとかまわんということなのか。恐らく私はここで一番問題になるのは、価格の問題が一番問題になるだろうと思うので、今の千円の適正価格が千三百円もそれ以上もしておるという状態については、政令でこれを定めるような条件が来ているとはお考えになりませんか。それからそういうことをおきめになるのは、これは農林大臣だけできまるのじやなしに、通産大臣と一緒におきめになるのだろうと思いますが、それなら通産大臣のほうも併せて一緒にお答え頂きたいと思います。
  132. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 衆議院の御審議に当りましても、その点は重要な点として、議案の表題までも変るというようなことで審議の経過を辿つているわけでございます。これは硫安のほうでございますれば、外地原料によりませんから、非常に簡単に目的を達し得ると思つておりますけれども、加里とか、過燐酸石灰とかいうようなものは、原料はもう御承知のように海外に依存しなければなりませんわけであります。併しいずれにいたしましても、そういうこの追加指定をすることによつて目的を達し得ると認められる状態においては、これはそういう措置をすることは、これはやぶさかでないと考えております。
  133. 河野謙三

    河野謙三君 この間通産大臣に燐鉱石の取扱いの問題で御意見を伺いたいということで、大体私の質問の趣旨は事務当局に申上げておきましたが、これについて一つ通産大臣から御答弁を頂きたいと思います。若し私の趣旨が徹底しておりませんでしたら重ねてあとで申上げます。
  134. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この臨時肥料需給安定法の実施に当りまして、将来必要に応じまして、同法第二条に基いて過燐酸石灰を政令で定めました場合におきましては、農林大臣は同法第六条、これは修正の第六条だつたと思いますが、の定めるところにより、その指定する保管団体に対しまして所定の数量の過燐酸石灰を需給調整用の保留数量として買取らせるということと相成るわけでございますが、その際過燐酸石灰が長期貯蔵に適しない事情等がございまするのに鑑みまして、必要の場合におきましては随時新たなるものと交換し得るような、適宜の措置を関係者の間におきまして講じ得るようにいたしたならば、御懸念のような点が事実上解消して行くのでないかと、私どもはかように考えるわけでございます。
  135. 河野謙三

    河野謙三君 そういたしますと、通産大臣は必要が起つた場合には燐鉱石を需要団体である全購連に持たせて、そして需給調整の役割を果さしめると、こういうお考えでありますね。
  136. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) その点につきましては篤と考えまして善処いたしたいと存じます。
  137. 河野謙三

    河野謙三君 善処する時期はもう来ているのです。この法案の我々が審議に当つて、それがきまらんとこの法案の是非が我々判断できないのです。今大臣から進んで御発言がありましたように、衆議院の修正によつて、第二条にその他政令によつて必要と認むる場合は重要肥料を追加する、その重要肥料の中には何を含んでおるかというと、過燐酸加里、石灰窒素、化成肥料を含んでおる、こういう修正側の説明なんです。そういたしますと、衆議院の修正者の意見によると、必要が起つた場合には、過燐酸加里も石灰窒素も化成肥料も随時追加ができるように、この法案でしているのだとこういう、そういう説明でありますから、ここで必要が起つた場合は政令によつてすぐ追加するわけですね。追加するということは結局過燐酸の場合には、この法律によつて過燐酸のストツクをしなければいかんということになる、ところが過燐酸のストツクができないということになると、これは過燐酸に代り得る燐鉱石をストツクさせることによつてこの法案の趣旨を生かす以外に方法がない、でありますから、お考え願うのは結構でありますけれども、この法案を我々が審議しておるのでありますから、審議の過程において、この会期中に余り切迫しては困りますけれども、本日でいけなければ明日にでも、これははつきりきめて頂かんと我々は審議のしようがない、でありますから、この点は如何でございましよう、明日にも答弁ができますか。
  138. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) この本法案の必要ある場合に過燐酸石灰をも追加指定することを保留してあることはもうお説の通りであります。そこで過燐酸石灰を対象として追加措置を必要といたしまする場合、河野さんの御意見は過燐酸石灰を長期保管するには不適当であるから、従つて同様の目的を達するために燐鉱石を保管団体に保管せしめたらどうかという御意見であり、御尤もであると思います。この点は十分検討いたしますけれども、今日私どもが考えておりますのは、それは燐鉱石を保管することが目的でなしに、過燐酸石灰の最終製品をやはり保管するということが、長期保管に耐えないからそういうことをやつたらどうかということでありますから、随時新らしい製品の新品と取替えつ保管して行くということも一つの行き方であろうかと思います。いずれにいたしましても、そういう考えで更に過燐酸を追加指定する場合の情勢によつてこれは善処をいたして参る、こういう考えでございます。
  139. 河野謙三

    河野謙三君 それはね、大臣、私はこの間も平野政務次官に言つたのですが、この肥料のことであつたら私に任して下さい、私は経験者だから、……過燐酸を貯蔵することはできないのですよ、今までやつてできないという結論が出ている、今これは随時差替えたいということをおつしやいますけれども、大体肥料の時期というものは春秋年二回です、これが米の配給のように一年中ぐるぐる廻つていろんならいいのです、差替えても……。そういう関係でこれはできないのですよ。これは私は何も押付けた結論じやない、そこでこの衆議院の修正によつて、政令によつて過燐酸を追加する場合を考えているとすれば、そういう前提でおれば、過燐酸の貯蔵ということはできないから、燐鉱石を貯蔵するということを法律に一つの改正をして入れるか、さもなければ過燐酸というものを全然考えないで、重要肥料の中に過燐酸を含まないということにするか、どつちかでなければいけないのでありますから、ここはこの審議に当つて非常に重要な問題なんです。でありますから、どちらにされるかということを聞いているのです。そこで通産省なり、農林省はこの政令によつて過燐酸を追加する場合には、当然予想されるところの燐鉱石の貯蔵というものについてはどういうふうな処置をお考えになつているか、私はそれは実需団体である全購連にこの燐鉱石を保管させるというほかに方法がないと思いますが、如何でございましよう。
  140. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 肥料のことは無論これは河野さんが専門家ですから、よく御意見も承わりましたし、御意見は十分尊重いたしまして善処をいたすようにいたします。
  141. 河野謙三

    河野謙三君 そうしますとね、若し私の申上げたことに同意されるということになり、政府が進んでこの法案の修正に主要原料、燐鉱石の貯蔵という字句を一つ入れるか、これは入れなければいけない、若しあなたのほうが、それは今更政府提案のものに修正を加えることは困難であるとおつしやるならば、それは我々のほうで修正してもいいのですがね。いずれにしても、私が申上げるように過燐酸の貯蔵という事態が起れば、燐鉱石の貯蔵は必然的に起つて来るということはよくおわかりだと思います。そうであれば燐鉱石の貯蔵という字句をこの法律の中に一項入れなければならん、これはどうです。
  142. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) まあ河野さんの御意見もこれはもう権威ある御意見でございますから、十分尊重いたすことは申上げるまでもございませんけれども、同時に又新らしい製品と取替えて保管して行くことが全然できないことだ、こう断定せられることも又少し如何でございましようか。御意見は十分承わりましたし、そうしてこの法を適用すべき情勢が起りますれば、これは又そういうふうにいたさなければならんと考えておりますので、この際願わくば御趣旨のほどは十分わかつておりますから、衆議院で回付せられたところで一つ御了解をお願いいたしたいと、かように考えます。お願いいたします。
  143. 河野謙三

    河野謙三君 我々は無暗に修正しようなんというような、そういうつまらん考えは持つておりませんけれども、今申上げたように現実に即せない問題なのですよ。それで今全然保管はできなくはないじやないかとおつしやいますけれども、保管はできますけれども、要するに金の問題ですよ。非常に酸度の強い肥料でありますから、すぐに「かます」が痛む、輸送に耐えないということになつて、徒らなる保管料を払つて、徒らなる乱袋の手直し料を払つて、徒らなる運送費を払つて過燐酸そのものを貯蔵することになると、莫大な政府に負担が出て来る。そういう負担をしても、それ以外に方法がないなら別でありますけれども、それらのことにつきましては、非常に簡単に而も経費が安く保管のできる燐鉱石を保管することによつて、その需給調整の目的は十分果せるんだから、これをやることに何で私は躊躇されるか不思議でならない。それは一部の業者関係でそういうことをされると困るという反対もあるでしよう。そういうような一部のとらわれた意見によつて、こういう法案を農林大臣が考えておられるはずはない。我々もそういうことは考えておらない。私はこういうことに何で躊躇されるか、重ねて申上げますけれども、貯蔵できますよ。できますけれども、それは農林省の事務当局に聞いて御覧なさい。これは非常に事務当局は戦争中から戦後にかけて過燐酸の貯蔵については非常なる苦心をして、その間に如何にロスがたくさん出、如何に無駄な経費がかかるかということを体験しておられる。私よりも農林省のほうがもつとよく知つておる。でありますから、この法案は我々が徒らなる修正をするのじやないんです。これはどうしても最小必要限度その燐鉱石の保管という字句を入れなければ私はいかんと思う。これは我々の権限におきましても修正はできるのでありますから、我々の又委員の間でよく相談しようと思いますが、そこで私は更にもう一歩進んで通産大臣に伺いたいのでありますが、ただこの法律を修正することによつて目的を達することもできますけれども、法律を若し修正しないで、私が今言うところの目的を達するためには、通産省の燐鉱石の割当の行政事務ですね、これによつてできるのですよ。これは通産省は必要な場合にはおやりになる意思はないでしようか。具体的に今後、今まで各過燐酸の工場で燐鉱石の外貨割当をやつておりましたが、そのうち一部を過日来農林物資でやつておりますように、砂糖のように、餌のように、こういうもののように、一部実需団体であるところの農民団体にこの燐鉱石の割当をするという、この行政事務の処理によつてこの目的も達成し得るのでありますが、そういうことは通産省においてはお考えを願う余地はありませんか。
  144. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この点は先ほど貯蔵の問題につきまして農林大臣から御説明がありましたと同様の性質の問題でございまして、それは例えば消費者に対しまして所要の燐鉱石の輸入に必要な外貨を割当てれば解決する、これも成るほど解決の一つの方法であると思います。これはできないことはないと思います。併し私は一般的な外貨の割当につきましては、メーカーに対して所要の原料を割当てて、そこでできた製品を消費者に売らせるというのが普通の常道でございますから、只今の場合におきましても、そういう方法のほうが、現在やつておりまする輸入の許可と言いますか、外貨の割当の本則はむしろそのほうにございますので、それによつても私は解決できるのではなかろうか、併し御趣旨の点は十分一つ考えさして硬きたいと思います。
  145. 河野謙三

    河野謙三君 勿論消費者団体に燐鉱石の外貨を割当てるべきだという私は主張をしておりません。大部分は従来通り加工業者に割当ててその一部を、一面この法律の関連において需給調整意味も含めて、一部外貨割当を実需団体へやるということは私は当然じやないかと思う。現に砂糖はそうやつておりますね、その他農業物資、いろいろやつおります、いろいろ餌の問題にしても……。なお過日愛知さんのところの事務官のかたが見えて、砂糖の場合にそういうふうな外貨割当を、どこにどういうふうにやるかということにつきましては、農林省に任せます、我々のほうでは積極的な意見を持ちません、こういうことまでここで言つておられるんです。でありますから、そういうことであるならば、これは燐鉱石は農林資材でありますから、この燐鉱石をどこにどういうふうに割当てるかということは、農林省にこれは砂糖と同じようにお任せになつてもいいんだと思いますが、折角両大臣がお見えになりましたから、燐鉱石の外貨割当につきまして、今までと違つて、この法律との関連において一部実需団体に割当てするという御方針は、ここで御言明願えませんでしようか。先ほども申上げますように、検討するということでなくして、この法律との関連において私は今明日中に御言明を願わんと、この法律の是非の判断が我々できませんので、一つ特に急いで御言明を願いたいと思う。
  146. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 率直に申しまして、ちよつとはつきりと、そういうことにいたしますと、言明を申上げるまでに実は研究を積んでおりませんので、先ほど申しましたように、一般的な原則の問題ではございまするが、為替の割当というようなことにつきましては、メーカーに対し、加工業者に対して割当てるのが六則である。消費者自体に原材料に対する輸入資金を割当てることは殆んどございませんのが実情でありますので、先ほど申しましたように、なお篤と研究はさして頂きたいと思います。
  147. 江田三郎

    ○江田三郎君 関連して……。この燐鉱石の問題じやありませんけれども、今砂糖の問題も出て、通産大臣のお答えを聞いておりますと、そういうものについて原則として消費者に割当てるんでなしにメーカーのほうへ割当てるんだ、そういうことを言われましたか、そういうことは何ですか、昨年度の末に緊急措置として砂糖について実需者割当の方式をきめられた。そうしその後先だつての当委員会におきましても直消糖だけでなしに、粗糖についても、勿論これも全量というのではないんです。併し価格調整の要素として或る程度の実需者への割当というものを認めるんだということが政府のはうから言われたようですが、そういうことは通産大臣の気持としては根本的に又元へ帰るというんですか。そうしてこの最近のバランス・シートを見ますと、砂糖会社平均の配当は三割三分、それも利潤をずつと隠して三割三分以上、平均以上に出るということは体裁が悪いから三割三分、国民の必需物資が三割三分の配当をして、まだ利潤の隠し場に困るというような、こういう状態をもう一遍又やらそうということなんですか、どうですこれは……。
  148. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 砂糖につきましては、やはり先ほど申しておりまするように、いわゆる直消糖で、直接消費そのものの形でできるものは別でございましようが、原料糖、粗糖等につきましては、やはり私は加工業者、精製業者、製糖業者のほうに輸入割当をいたしますのが本則である、こういうふうに考えております。
  149. 江田三郎

    ○江田三郎君 これはこの間そういうことについては、インポーターに何制権限を持たすか、或いはメーカーに何割権限を持たすかという、輸入の根本方針をきめるところは通産省であるけれども、そこから先は農林省でやるんだ、こういうことであつて、そうして農林省の食糧庁長官の答えでは、粗糖についてもそういうことを考える、実需者割当ということを考えて然るべきだという答えがあつたんですけれども、その点は今まで食糧庁長官なり、或いは通商局の松尾君あたりが答えられたことと、今のあなたのお答えとは大分違つて来るのですが、又これは方針が変つたのですか。それで一体そのときに粗糖を実需者が輸入をして、それを委託加工するのは何か好ましくないのじやないかというような議論もありましたけれども、我々はそうは思わないのだ、今のように製糖工業が厖大な過剰施設を持つて、そうして三割三分以上も、過剰施設を持つていながら三割三分の配当をし、而もなお利益を隠している、こういうような独占形態というものを、少くとも砂糖をあなた方が国民の必需物資として考える以上は何とかしなければならんのじやないか、そしてこの輸入するところの粗糖の何%かをこれを実需者に割当てて、そして実需者が最も良心的で最も安いところへ加工を委託すると、こういうことが大きな牽制要素になつて国民生活を安定することに役立つのではないかという私どもの考え方については、食糧庁長官も通産省のかたも意見は同じだつたのですが、又変つたのですか、どうですか。
  150. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 先ほどから申しておりまするように、私は本則というか、原則として原材料というものは、直接の消費者のところに外貨を割当てるよりは、メーカーなり、製糖業者なりに割当てるのが本則である、こう申上げたのでございます。なお砂糖につきましては、これは只今御指摘の通り、農林省におかれて権限を持ち、又非常な関心を持つておられるところでありますから、その割当の方式なり、或いは随時臨機の措置等については、十分農林省、食糧庁と通産省は御相談をいたしまして、適宜な措置をとるべきはこれは当然かと考えるわけでございます。
  151. 江田三郎

    ○江田三郎君 農林省は、先ほど来私が言つている食糧庁長官の言われたうとを別にお変えになつたのじやないでしようね。
  152. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) ごの砂糖の関係はまあ私も粗糖のままで使用し得る、使用し得ないと、まあ使用することは衛生上、保健上不適当だというような公衆衛生局の公式の意見に基きまして、一応は精製加工の過程を経て消費者に供給するという措置をずつととつて来ているわけなんです。だけれども、その保健衛生上支障なしということになれば、本当を言えばまあ真つ白い砂糖を我々今日の国民経済の状態においては、私はまあ粗糖のままで消費ができれば、その程度が我々の実際の経済相応のものじやないかと思うわけですけれども、併し今日公衆衛生の見地から、粗糖はそういう上から危険である、好ましくない、そこで精製加工の過程を経て供給すべきであるという趣意に基いて、一面は製糖工業を振興せしめるという趣意も、この二つがからまつて(「振興じやないよ」と呼ぶ者あり)今日に来たつておるわけです。今日になればそういうふうな御批評も出ますけれども、ともかくも全然無の中から、戦後の無の中から製糖工業を興して来ておるというこの何は、又それはそれなりに私は認めなければならんじやないか、高く認めていいんじやないかということで、併しこの製糖業者が不当に儲ける、それを牽制するために実需者に或る程度割当をして、そして委託加工か何かをしてやるということは私は承知いたしておりません。私は粗糖のままで消費し得る状態、条件が整うならば、それは実需者割当をいたしてもいいんじやないかという考えは持つております。食糧庁長官の答弁がどういうふうな趣意で申上げておりますか、一応私聞き質しました上でこの問題は又お答えいたすようにいたします。
  153. 江田三郎

    ○江田三郎君 これはまあ硫安法案をやつておるのですからね、私も横道にそれた砂糖のことをしつこく言いたくないのですけれども、併しこういうことになると、これは困ると思うのです。砂糖行政なんかについて食糧庁長官がここで答えられても、それはどうも大臣としてはそういうことは聞いていないからというようなことになると、これはずつともう大臣に出て来てもらわなければならん。食糧庁長官というものは単なる説明員ではないと思う。政府委員として出て来ているのだと思うのです。そういう人がここで委員会で言明されたことが違うのだということになつたら、我々は大臣に聞く以外に、ほかの者に対しては一切開いても無駄だということになる、少くとも大事な問題についてはそうなるのです。今食糧庁長官がこの前言われたことは、粗糖を直接消費するという今のあなたの言われる問題じやない、勿論この粗糖の輸入というものの大部分が製糖工業べ行くべきだということは、これは原則としては私はそう思う。河野君は何か言いますと、それは違う、餌と同じように、餅代と同じように実需者というものを先に考えるべきだということを言われますけれども、まあそこまで、これは政府が変つて、私どもでも政権をとればそういうことをしますけれども、(笑声)とにかく今のあなた方資本主義の立場に立つている人にそんなことを言つても無理だと思う、少くとも国民の必需物資についてああいう暮から春にかけてべら棒な値上りが出て、そうしてそれをあれよあれよと言うばかりで、そうして製糖工業というものが先ほども申上げましたように、大変な利益を上げた、今日の日経あたりにその数字が出ていますけれども、あれを見て恐らく砂糖をなめる国民は誰だつて腹の立たないものはおらんと思う。そういう状態が今年もやはり同じことになるわけです。愛知さんが経審長官としての責任を以てやつておられますけれども、第一に特需収入というものは予定通り行かない、いずれ本年度の砂糖の輸入量についても今の計画通りには私は行かんと思う。去年と同じことを繰返さなければならない、もう一遍国民をひどい目に合わさなければならない、そういうときに、とにもかくにもほかの名儀があつたにせよ、応急措置として或る程度のものを実需者に割当てたということは、私は大きな価格暴騰を牽制をした役割を果したと思う、そういうことを原則論として、いつから消費者にやれということまで私は言わないけれども、価格の牽制用としては直消糖は当然のことであるけれども、同時に粗糖についても或る部分そういう特別な考慮が払われるべきものだ、そしてまじめなそういう役割を果した団体については、引続きそういう措置が行われるべきものだと、こういうふうに思う。それに対して食糧庁長官も、通産省の通商局次長のほうも同意をされたものを、それを大臣が出て来るというと、まるで逆ということになると、これは今後の法案審議は、大臣の出ない限り一切解決しないということになるが、それはどうですか。一体食糧庁長官とか、何とかいう政府説明員ではない、政府委員の言うことは我々はどこまで本気に聞いたらいいのですか。
  154. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 政府委員の、少くも農林省の政府委員の申上げていることにつきましては私は責任を持ちます。責任を持ちますから、食糧庁長官になお仔細を伺いまして聞取りまして、答弁を留保して置きます。
  155. 河野謙三

    河野謙三君 今の江田さんの問題にちよつと関連したことを……。農林大臣は加工業者に原料は割当てるのが当り前であつて、実需者団体には原則として割当てない、こうおつしやいますけれども、現に、今あなたがやつておられることで、大豆は実需者団体に割当てて、実需者団体が製油業者に加工を委託してやつておりますね、これは現在保利農林大臣の下においてそういうことをやつておる、こういうことは、今、前谷さんにいろいろこの間の答弁についての食違い等については、よく聞いてみるとおつしやいますけれども、これはよくお聞きになつて結構だけれども、現に大豆の場合においては、農業団体に大豆の割当をして、農業団体が製油業者に加工を委託しておる。この方針を現に農林大臣はとつておいでになる。私は又それが正しいと思う。でありますから、この点は若し今のお考えですと、今までにやつたのは間違いだ、今後改めるということの結論になるのですが、この点も併せてよく打合せ等をして頂きたいと思うのです。それから先ほどの問題に戻りますが、いずれにいたしましても、衆議院からこの法案は修正されまして、現在は硫安需給調整法でなくして、肥料需給調整法と変つて、第二条には重要肥料というものを追加して、その中には先ほどからたびたび申上げておりますように過燐酸というものを含んでおると、こういうことをはつきりと修正者は言つておられる。でありますから、ここでどうしても、この理窟に二つはない。若しあなたのほうで、燐鉱石について、私が先ほど申上げますような措置がとれないとすれば、逆にこの衆議院から廻つて参りました法律を元の硫安需給調整法に戻すか、さもなければ衆議院の修正通りに重要肥料というものを追加して、その中に過燐酸を含んでおるということにすれば、この法律の趣旨を生かす上においては、どうしても事務的に、この法律の中に燐鉱石貯蔵というものを一条入れるか、さもなければ、一方において通産大臣が行政措置によつて燐鉱石の外貨割当を実需団体にやつて、この法律の狙うところの需給調整、それによつて使命を果されるか、どつちかにするより方法がない。でありますから、今日若し両大臣でこの打合せができなければ、明日までにこの右にするか左にするか、御返事を頂けるでありましようか。
  156. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) この問題は先ほどからも繰返し申上げておりまするように、この法案の適用を、過燐酸と過燐酸石灰等を保留してあるという趣意は御説の通りであります。従いまして、この法案を過燐酸に適用する場合において、燐鉱石を保管団体に保管せしめるということが、よりその法案適用の目的を達し得るというような状態にある場合におきましては、十分考慮をいたす考えでおるわけでございますから、これは通産大臣におかれても私は御異存はなかろうと存ずる点でございまするし、通産大臣からも御意見がございましようけれども、それで一つ御了承願いたいと思います。
  157. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 只今農林大臣からお答えいたしました通りでございまするし、更に先ほど来、私は御説明申上げております通りの気持でございます。
  158. 河野謙三

    河野謙三君 そういうお考えであれば、結局言葉の裏を返せば、その燐鉱石の保管についての法律の上に字句の足らん点は、参議院の農林委員会において、その字句を追加して直せということを、こういうことをあなたがおつしやつたと、こういうようにとらざるを得ない。それでよくわかりました。それから次に加里肥料の……、違つたらもう一遍言つて下さい。
  159. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 何か御答弁がありますか。
  160. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 御解釈を押付けられるのは甚だどうも……。
  161. 河野謙三

    河野謙三君 押付けませんから言つて下さい。どうぞ言つて下さい。
  162. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 先ほど申上げたところで御了解頂けるだろうと存じます。原文はそのまま残しておいて頂きたい。御趣意は先ほど申上げた通りで御了解を頂けるだろうと思います。
  163. 河野謙三

    河野謙三君 農林大臣のほうが私によつぽど押付けていますよ。私は過燐酸は保管ができないと言つている。あなたはできると言つている。できるかできないか、私が言うようにできないとすれば、今法律を直すか、さもなければ通産省の行政措置によるか、その二途以外にないでしよう。ありますか。そこで保管ができるかできないか、私はできないと申上げている。あなたは農林省で、この仕事について戦前から長年苦労されたところの、体験されたところの……、これをやることによつて如何に国庫に無駄な負担をかけるかということは、これはすぐわかることだ。それを、だから農林大臣なり通産大臣はお調べになつて明日までに腹をきめて来て頂きたい。それをそれさえも聞かないで、保管ができる。できる、やれそうなものだということで農林大臣は僕に押付けておられる。私は農林大臣に押付けません。そんな失礼なことは考えておりません。農林大臣が私に押付けている。でありますから、これは私はどこまでも、若し今日お返事頂けなければ明日でもいいのです。明日までにお二人で、局長の見解というものも、事務当局の意見もよく聞かれてお返事頂けますか、どうかと、こう言うのです。
  164. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 保管ができないということを断定せられたが、先ほど河野委員も、幾らか含みある御意見をお話しになりましたが、これはまあそちらは専門家、こちらは素人、(笑声)議論を繰返す気持は毛頭ありませんが、ただ河野委員只今のような強い御意見を持つておられるということに基きまして、私ども省内において随分研究、検討をいたしました結果、先ほど申上げましたようなお答えをいたしているわけでございます。河野委員の御意見を今日只今つてかような答弁をいたしているわけでもございませんので、この点は河野さんも十分御承知のことと思いますし、御了承せられんことをお願いいたします。
  165. 河野謙三

    河野謙三君 いや、事情は、そこまでおつしやれば私が知つている事情も申上げます。これは衆議院の修正者も、非公式に私に話をしているのです。その必要は向うも認めているのでありますけれども、衆議院で三派か四派か知らんけれども、その間で妥協案を作る場合に、いろいろ問題になつて、その必要は知つているのであるけれども、一応繕い仕事でこういうふうにしたのだ、こう修正者が言つているのです。でありますから、我々は二院制度の本義を生かす意味において、参議院でも、衆議院で足らざる点は認めているのですから、我々は直そうと思うのです。併し成るべくならば直さないで、行政措置によつて、この趣旨を生かすような仕方はあると思うのですよ。これほど私は素直な、わかつた、おとなしい話はないと思う、如何ですか。
  166. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 先ほどもお答えいたしておりますように、この法案を過燐酸石灰に適用すべき状態に置かれましたときに、只今河野さんの御意見を十分尊重いたしまして、法案の適用の目的が達成せられるように善処をいたします。
  167. 河野謙三

    河野謙三君 そうしますと、この間の衆議院の金子君なり、綱島君の意見と同じですが、そういうことも予想されなくはない。併しそれはそのときにまつて法律を直せばいいじやないか、こういうことを言つたのですが、農林大臣もその必要があつたら、そのときになつて法律を直せばいいじやないかと、こういうことですか。
  168. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) これも軽率に、これはお答えいたしてはいかんと思いますが、私もそういう素養がございませんから、もう率直に申しますが、法律の字句を訂正しなくても大体目的は、狙つている目的は同じことでございますから、法律の字句の修正を伴わずともできるのではないかという解釈もあるようでございますから、そういう点につきましては、もう少し研究いたします。
  169. 河野謙三

    河野謙三君 私は法律は随分読み返しましたが、今の法律にはどこをつかまえても、法律を直さん限り、原料である燐鉱石の貯蔵というものはできません。若しできるというようなことを、今ここで見ておりましたら、経済局長が大臣に説明しておつたのですが、経済局長、若しそういうことできるならどこの法で、何条のどこでできるか説明してもらいたい。
  170. 江田三郎

    ○江田三郎君 ちよつと議事進行について……。結局今の問題とこの前河野君が問題にされた十一条の点ですね。これはもう一遍政府のほうでよく協議をして答えを出してもらわんと、今ここでは何遍やつても押し問答になつて結論が出ないのじやないか、そういう議事の進行をとられたらどうかと思います。
  171. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 速記ちよつと止めて下さい。    〔速記中止
  172. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 速記を始めて下さい。
  173. 江田三郎

    ○江田三郎君 先ほどの審議会の建議ということは、これは通常の審議会の諮問に対する答申というよりも、もつと積極的な意味があるのだ、そういうお答えでしたし、そういう態度でやつていられるのだということですが、どうも私その点については言葉の疑義がありますので、これは一つ法制局のほうを呼んで頂きたいと思うのです。これは旧憲法のときには、建議というようなことが出ておつたが、新憲法では建議という言葉がはつきり出ていないのだから、どうもそれがどういう具体的内容を持つているかということがよくわかりませんから……。
  174. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 私の記憶が違つておる……、違つておらないつもりですけれども、たしか一昨年軍人恩給の審議会を内閣に作りました節に、その建議という文字を入れるということに非常に意義を持たした記憶がございましたので、先ほどそういうふうなことを申上げたのであります。私はそういうふうに了解いたしております。
  175. 江田三郎

    ○江田三郎君 とにかく保利農林大臣が永久にその椅子におられれは安心ですけれどもちよつと変られるようなことがあつては困りますから、これはやはり法制局のほうを呼んではつきりさしておきたいと思います。
  176. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは本日は散会いたします。    午後五時二十分散会