○
説明員(
昌谷孝君) お配りいたしました
酪農振興法の
内容につきまして補足的に御
説明を申上げます。提案の理由で申しましたように、この
法律の
内容といたしましては、第一に
集約酪農地域の建設、それから第二に
牛乳取引の
公正化、その二つをこの
法律の
内容といたしております。
で、最近
酪農の
振興と申しますか、
酪農が非常なテンポで発展をいたしておりまして、年々二割乃至三割の
乳牛なり、
牛乳の
増産を見ておるわけでありますが、それでもなお且つ消費に追い付かないと申しますか、一向に
需給関係が緩和いたしませず、その
関係上
価格等についても昨年の秋以来むしろ
増産したにかかわらず、値が上
つておるとい
つたような結果を見ております。その
関係をこの際よく分析をいたしまして、今後の
酪農の
振興の
あり方というものをきめて参りたいというのが、この
酪農振興法の狙いでございます。従いまして
酪農を
振興いたします場合に、従来の
日本の
酪農の一番弱い点とされておりました個々の
農家の
飼料基盤が脆弱であるということ、又そうい
つた日本の
農業の
あり方から、必然的かとも思うのでありますけれども、
乳牛の
使用密度と申しますか、
乳牛の
使用頭数が非常に散在いたしておりまして、
酪農業が成立するための
条件として非常に悪い
条件にな
つているわけであります。幸いと申しますか、従来の
日本の
酪農の
あり方が、
市乳、
牛乳については
消費地を
中心にいたしまして自然発生的に伸びて参
つたので、その限りにおいては都市との
関係、
立地条件は当然に備わ
つてお
つたわけなんでございますが、
乳製品を
中心にして発達したり、又
乳製品の
原料乳としてだけしか
酪農がなかなか成立し得ないような
地帯、そうい
つた地帯の
酪農につきましては、従来のような単なる経済的な自然発生的な興り方だけでは、
日本の
酪農は一遍に合理的にならない。その合理的にならない点を、こう言
つた制度的な力によりまして一層推進することによ
つて、
飲用乳牛については販売との結び付きをもつと今よりも強くする。又
原料乳地帯につきましても、
販売乳が有利に安定して売れるような環境を作る。そういう
意味におきまして、
集約酪農地域ということを考えました。
行政措置といたしましては、二十八年度から試験的に実施をいたしておるわけでございます。二十八年度につきましては、御承知の
輸入ジヤージーによりまして移畜を試験的にや
つて見たわけなのでございますが、この行き方を
ひとり輸入ジヤージーだけでなしに、在来の
ホルスタイン種につきましても、この同じ
考え方で
日本の
酪農の現在の
成立基盤の弱いところを固め、強化し、そうして
日本の
酪農の将来の
合理化の
方向付けにいたしたい、そういう着眼でございました。従いまして、この
法律で考えておりますのは、
ジヤージーを入れて作ります
集約酪農地帯だけでなしに、
在来有畜農家創設特別措置法等によりまして導入をいたしておりますものにつきましても、今後一層その
考え方を強くいたしまして、と申しますのは、
有畜農家創設特別措置法につきましても、無
畜農家解消という基本の狙いと同時に、
乳牛の
導入標準というようなもので、
農林大臣が定めております
基準の中にそうい
つた思想があ
つたわけなのでございますが、それを更に鮮明にいたしまして、
集約酪農地域ということで将来の
酪農合理化の当盤たらしめよう、そういう趣旨でございます。
集約酪農地域の
法律内容といたしましては、
指定の手続、それからその
指定の手続が先ず最初に出て参るわけでございますが、
指定の手続といたしましては、
知事の申請に基いて
農林大臣が
指定をいたすという
やり方にな
つております。で、
知事の申請は、この
地域の
農業の発達を図るために
酪農業が非常に必要である。つまりその
地域の総合的な
農業生産力を高める上から、
酪農の
必要性のあるところ、そうい
つたところにつきまして政令で定めます
基準と申しますか、つまり
集約酪農地域として発展し得る
可能性を備えたところを選んで頂きまして、そうい
つた地域につきまして
酪農振興計画というものを作る。この
酪農振興計画は、この
法律では省令の定める手続というふうにな
つておりますが、別にお配りいたしました
資料に書いておきましたように、これが結局この
地域の
指定された後の
一つの
酪農振興の基本的な
基準になるわけでございますので、この
酪農振興計画にその
地域の
乳牛の
頭数増加に関する、つまり新たに導入を要する、又或いはその
地域内で
増産を図るその牛の頭数をどうするかということと、それから第二に、
自給飼料、これは
飼料作物と
草資源と両方含めまして、
飼料自給ということをどこまで上げるかという具体的の
計画、第三には、
集配乳牛の
合理化に関すること。この三つを最も主要な
内容といたしますが、その間に、例えば
衛生施設の完備の問題でありますとか、或いは
営農指導組織の確立の問題でございますとか、その他
酪農振興計画を総合的に実施いたして参りますために、その
地域について、
地域の
特殊性に応じて必要とされるようなあらゆる事柄についての
計画を定めてもらうわけであります。この
計画は、県が
関係の市町村なり、或いは
農業協同組合なり、その他その
地域で
酪農に
関係を有するかたがたの御意見を伺
つて作つて参るわけでありますが、この
計画を作るわけであります。で、
農林大臣といたしましては、
地域の
酪農の
必要性と
基準に適しているということと、それから今申しましたこの
計画が、
地域の
酪農振興の
方法として最も適当且つ効率的であり、又実現の見込みが確実にあると、そうい
つたことを確めました上で、その
地域を
集約酪農地域として
指定して参る。そういう段取りになるわけでございます。それから
計画の
変更なり、或いは
地域の
変更は、特に申すほどの
内容はございません。
指定解除でございますが、一旦
指定いたしました
地域は、それを大体五年くらいの間に
一つの第一次目標を達成するようなことを私どもは考えているわけでございますが、つまり
市乳供給地帯としての
集約酪農地域では五カ年後ぐらいの間に六十石分ぐらいの
牛乳が生産される。それが最も近代的な集乳送
乳施設によりまして大都市に送り込まれる。そうい
つた状態を一応の第一次目標といたしております。それから
原料乳地帯につきましては、百五十石
程度の
牛乳が最もこれが近代的な
工場設備によりまして
乳製品に作り得る。そういう
地帯を早く作りたい。そういうことでございます。そうすることが
消費者のためにもなり、又その
地域の
酪農民の将来永遠の安定のために一番いいんじやないか。そういう
意味で、そうい
つた目標に五年間
程度の間に持
つて行くということの狙いを持
つているわけでございます。そこでその
過程におきまして、先ほど申しましたその
地域が
集約酪農地域として成り立
つための
最小必要限度の
客観的条件を
失つて参つたようなもの、そうい
つたような場合には
指定を解除せざるを得ないことに相成るかと思います。それから
指定の解除の第二の要因といたしましては、
酪農振興計画を作りましても、なかなかその
酪農振興計画通りに事が運ばないような事態が出て参
つたわけでございますが、そうい
つた場合は、建前といたしては、その
計画を
変更するなり、或いは
計画の裏付けについての
指導助長措置を強化することによりまして、成るべくは解除いたしたくないわけでございますが、
知事の
意見等によ
つて、どうしてもや
つて行けないというようなときには
集約酪農地域の
指定を解除してもよいと言いますか、することができる、前段の
客観的条件を欠いた場合には解除しなければならないわけですが、第二段の達成の
可能性がない場合には、当然には解除いたしませんで、先ず解除しなくてもいいような努力をいたすわけでございますが、終局的には解除することもあり得る。そうい
つたふうな
規定にいたしております。
それから
酪農振興計画は、今申しました通りに、その
地域の
酪農振興のための総合的な
措置を欠いているわけでございまして、この中には本法の以下の第二節、第三節によ
つて、裏打ちと申しますと、つかえ棒をいたす、制度的
なつかえ棒をいたす問題もございますので、それから
有畜農家創設というような他の
法律による
措置もございますし、又
土地改良、
衛生関係の諸法規とか、そうい
つた他の
法律関係もあります。又単なる
予算措置だけの問題もございますが、要するに
振興計画というところに
地域指導の
総合性を求めておりますので、八条でそうい
つた振興計画達成上の必要な
予算措置なり、或いは
融資措置については、国ができるだけの集中重点的な援助をいたす。そういう
規定を置いたわけでございます。
それから第二節は、
集約酪農地域内にあります
草地の利用について、従来や
つておりました
草地改良事業の
実績等から考えまして、
草地改良をやる場合に、これを
一団地として公共事業的にや
つて参ることが、その効率を高める上からい
つて必要なんではないかという御意見を各方面から伺いますし、又二十九年度の予算におきましても、そうい
つた思想で、従来の
牧野改良事業に併せまして、
牧野改良センターとい
つたような、
機械力を導入して行う
牧野改良の
やり方を考えているわけでございますが、それを
集約酪農地域について、具体的に実施を容易にいたすための手段といたしまして、都道府県なり、或いは市町村なり、従来の
そういつた公共団体が自分で管理いたしております牧野以外の牧野につきましても、
そういつた公共団体が
所有者なり、或いは
使用収益権者の同意を得まして、まとめて強力に
草地改良事業をや
つて行けるような途を開いたわけでございます。
それから十一条は、その
草地につきましての
形質変更の場合の
届出規定でございますが、これは
集約酪農地域内にあります
草地と申しますのは、
指定の
基準の所でも相当重要視すべき項目でございますし、又
地方長官といたしましても、
草地の現状なり、或いはその
草地が他用途に転用されることについての認識と申しますか、その
草地を利用、確保するために、そうい
つた車地の
形質変更について
十分事前に承知をいたす必要もございますので、その
関係を
届出事項といたしたわけでございます。これは
農地法によります
採草放牧地の観念とほぼ同じ観念でございますので、権限の移動を伴います
形質変更は、
農地法のほうで
都道府県知事の許可制度なり、何なりにすでにな
つているわけでございまして、これは
草地の
所有者或いは
権利関係が移動なしに、形質だけが
草地から変る場合の
届出でございます。なお、ここにあります
届出を要する事柄として「政令で定める開こん、
造林」というふうに言
つておりますのは、別の
資料で御
説明いたしましたように、国の
計画に基きます開墾或いは国の
森林法に基きます県
知事の承知いたしております
造林、そうい
つた知事がすでに承知いたしてすでに
計画としてや
つております開墾、
造林等を除きましたそれ以外の開墾、
造林、それからまあ例が如何かと思われますが、例えば
ゴルフ場になるとか、或いは
工場敷地になるとか、そうい
つたようなもので
権利関係の移動を伴わずに形質の変るものの
届出でございます。
それから第三節は、その
地域内にあります
施設についての
新設又は
変更の場合の
承認、それから
既存施設の
届出を
規定いたしたわけでございます。これは今申しましたように、
集約酪農地域というようなことで、
一つのモデル的と申しますか、
酪農として一番こういう
条件があれば
酪農が非常に合理的に営めるとい
つたような
地域を、地元、県、国それぞれが力を合せまして
作つて参ろうというわけでございますので、その
過程におきまして集乳事業なり、或いは乳業なりというものが、その
地域の
酪農振興計画と齟齬するような形で出て参
つたのでは、折角の努力も実現が非常に困難になる、そうい
つたような見地から置いた
規定でございます。で、現在の終局の目的としてのその百五十石なり、或いは六十石なりという規模というものが確立されるまでの
過程の問題が特に多いわけでございますので、だんだん頭数が殖えて参り、
乳量も殖えて参り、又それに連れて
工場も合理的に営めるわけなんでございますが、その
過程において殖えて来た中途の段階で、合理的でないと申しますか、非能率的な
工場が幾つか濫立をいたして、折角現在の
日本の
酪農の一番の弱点といたされておりまする一
工場当りの
集乳量と申しますか、一
工場当りの
乳量が少いという
関係、これは別途お配りいたしました
資料の数字によ
つても御承知願えるかと思うのでありますが、現在の
日本では
日量百石以上の
乳製品工場というものは、お配りいたしました
資料では僅か四
工場しかないような状況でございます。で、極く最近の数字としてはもう一、二
工場殖えているかと思いますが、調べましたときの実情では、百石以上の
工場は四
工場しかないようにな
つております。で、大部分と申しますのが、十石以下の
工場、これが五二・六%とい
つたような数字にな
つておりまして、如何にもこうい
つた工場施設なり、
工場では、国際的に見ても、勿論これ以上の価格の低下と申しますか、
合理化を期待するほうが無理なような実情でございます。にもかかわらずと申しますか、一方でそうい
つた状況でありますために、私どもとしては
外国品が無制限に流れ込むことを防がざるを得ない立場にあるわけでございますが、防いでおりますればおりますほど、こうい
つた合理的でない
工場に存立の基盤を与えるような結果にもな
つておりまして、その
関係の矛盾を何とかして解きほぐさなくては、
日本の
酪農がこの段階からもう一段階飛躍するために、どうしても今申しました矛盾を何とか解決いたしたい。その
解決方法としての
集約酪農地域を考えます場合に、極端に合理的なものでなければ成り立たないような
市場条件を先に
作つて、それからやればとにかくといたしまして、一方で従来のような
工場の存在したものも、それを徐々にその一
工場当りの
取扱量を殖やして行く、又そうい
つた工場が現在ない所には新らしく建てて行くという、そうい
つた方向をと
つて参ります場合には、どうしても今申しましたような非
能率工場の
濫立或いは本当の
意味の
合理化の役に立たない、
合理化とむしろ逆行するような競争というようなものをむしろ或る
程度なくして行く必要があるんじやないか、そういう
意味で
酪農振興計画の線に
沿つた仕事をこの
地域では確保いたしたい、そういう
意味で
施設の
承認制をと
つたわけでございます。従いまして、その目的からして
承認を求めます
施設の種類は政令で書くことにいたしておりますが、別途お配りいたしました
資料にございますように、
集乳施設につきましては、普通の
集乳所は特に問題にする必要はなかろうと思
つております。で、この
集乳所の中でも、
クリーム分離機を持
つておりますものとか、或いは特殊の
冷却装置を持
つておりますものとか、或いは
濃縮装置を持
つておりますものとか、そうい
つた或る
程度遠くのほうから手を延して持
つて行けるようなと申しますか、撹乱できるよう なそうい
つた虞れのある
集乳所だけをここにいう政令で定める
集乳施設として定めたいと思
つております。それから
乳業施設につきましては、かねて
牛乳の
地元消費促進ということで、例の
高温殺菌を簡易に
施設できるようにというようなことを、私どもかねて厚生省のほうへもお願いしてお
つたような
関係もございますしいたしますので、
乳業施設の中でも、
日量一石未満のミルク・プラントは特別に
承認を求める必要はない。むしろこうい
つたものは
地元消費を促進するという
意味でどんどん今後もできる必要があるという
意味で、そうい
つたものは除きまして、それ以外の
集乳施設、それから
乳製品施設、そうい
つたものについてだけ
承認制度をとることにいたしたわけでございます。それからこの
承認も、まあ
集約酪農地域の
振興計画達成上の必要から出た止むを得ざる
措置という
意味で、
知事が
承認をいたします場合も、十二条二項の各号に挙げましたような、合理的であるという
酪農振興計画の達成のために、その
計画に適合しているということが最後の抑えになるわけでございます。そうい
つたことについては、むしろ
知事としては
承認を拒んではいけないという
意味で、ここのところは
承認を拒否できない場合を挙げたわけでございます。従いまして、こうい
つた線に沿
つて来ている
施設につきましては、
施設のできることを妨げない制度的な保障をいたして、止むを得ざる
措置としての
承認制度を
必要最小限度に限ろう、そういうことを思
つておるわけでございます。それからその
地域が
指定されます前に、すでにありました
施設につきましては、これは何と申しましても、それを
酪農振興計画に織込んでや
つて参る、それを将来の
中心工場にするか、或いは
現状程度でとどめて、別途に
中心工場の構想を作るか、それはいろいろ現地々々によ
つて事情があろうかと思いますが、取りあえず、すでにある
施設については、それを
中心工場にする
しない等のことにかかわらず、一応従来の
一つの存在という事実を尊重する
意味で、それは
承認を要することなく、
届出で足りるというふうにいたしております。で、こうい
つた届出施設が幾つかあるということは、その
地域の
酪農振興計画を作ります場合の
むしろ一つの前提というふうに考えてや
つて行く必要がある、さように考えておるわけであります。それから十四条の
変更は、新たに作ります場合の
承認と
施設を合したものでありまして、先ほど申しましたように、現在あります
施設は殆んどがまあ非能率と申しますか、弱小と申してよろしいような現状でございますので、いわゆる
酪農の全くの
処女地は
新設の
承認になる場合が多かろうかと思いますが、全くの
処女地という所も、実際問題としてはそうあるものではございませんので、そうい
つた所につきましては、
既存施設は
届出て、一応既成事実として認められましても、それが更に
集約酪農地域の
計画の進行と睨み合せまして、その
施設のどこについてどうい
つた拡充をや
つて行つて需要に応じて行くかという問題が
酪農振興計画の線で出て参るわけでございまして、その
意味でここに
新設ということと並びまして
施設の
変更ということが出て参
つておるわけであります。従いまして既存の
施設につきましても、将来の何年後かの
酪農振興計画に見合いますためには、十三条の
届出だけで足りる
施設は殆んどなく、大部分がそうい
つたものになるためには、次の条の
施設の
変更というところで、
振興計画の線に
沿つて施設を
変更して行くということになるわけであります。
それから士五条は、前段までが
施設の
新設変更を
中心にして書いてお
つたわけでございますが、十五条が、その
施設を使いまして事業を営みます場合の事業の休止、廃止とい
つたようなことを
届出制にしております。これは
施設の
設置者と申しますか、
施設を作る人と、それからそのできた
施設を
使つて仕事をする人とが必ずしも人格的に一致しておらない場合がありますので、その
施設について仕事を始め、又休み、廃止する場合を把握するという
意味で別途に条文を設けたのであります。
以上がこの
法律での
集約酪農地域についての
措置でございます。冒頭に申しましたように、
集約酪農地域は
酪農振興計画によ
つて総合的に
酪農施策が行われて行くわけでございますしいたしますので、この
法律では、既存の
法律等、そうい
つた酪農振興計画を総合的にや
つて行きます場合に、現状において制度的に非常に不安のある点、又新たに途を開くほうがより効率的であると思われます点を挙げまして、
草地と
施設の
承認、その二つだけを
法律内容にいたしております。そうい
つたことで、
計画そのものと、あとの二節、三節の
法律効果との間に
一つの断層が形式的にあるという感じを持つわけでございますが、その点は先ほど来申上げましたように、
酪農振興計画というものを
関係者が一体にな
つて進めて参るということが、この
法律以前の
一つの骨子的な
考え方としてあることを御了承願いたいと思います。
それから次が、この
法律の第二点になります乳の
取引関係の
規定でございます。
牛乳は御承知のように毎日搾られますし、又それを
毎日金に換えて売
つて行かなければ成り立たない部門でございます。ところがほかの
農産物等と違いまして、
牛乳につきましては、それを商品化する
過程におきまして、自家用とか、或いは極く狭い範囲はとにかくといたしまして、大量に専門的にや
つて参りますためには、これが商品化する前に一段階必要とする、
処理加工という段階を必要といたして参ります。これは従来の
酪農の発展の経過におきましては、
農業協同組合でない、
農業協同組合以外のものがや
つております場合が相当あ
つたわけでありますし、又農協といたしましても、これを完全に把握いたしまして
共同販売に乗せておるというような実情でもございませんし、そうい
つた関係をそのままにおきますというと、折角苦労をして
乳牛を飼い、
酪農振興の線に参りましても、その搾りました乳の価格決定なり、
取引条件について、非常に買手市場的なと申しますか、
牛乳という商品の特質上、宿命的に
売手側が
不利益な立場にあるというふうにも考えられるわけでございまして、その
関係を
生産者側に多少とも安心の行くような
措置が必要じやないか、そういうような
意味から申しまして、この
牛乳というものは、毎日々々の
個々ばらばらの契約でなしに、
一つの
供給契約と申しますか、
長期供給契約のような形をとらなければ
農家の側も安心して
増産ができませんし、又半面その乳を買います
処理加工工場の側におきましても、自分の
原料基盤としての
牛乳が或る
程度の
長期的見通しを持
つて確保できなければ仕事の
合理化もなかなか進みませんし、そうい
つたことを考えまして、
取引契約の
文書化を謳
つたわけでございます。こうい
つたやり方は、
牛乳の場合には、むしろ
牛乳という商品の特質から見て私どもとしては不可欠な
方法である、止むを得ざる
方法であるというふうに考えるわけでございますが、御承知のように、
昭和十三年にできました
酪農業調整法という
法律のときに、すでにそうい
つた考え方があ
つたわけでございます。あのときは、その後
昭和十六年が戦前の
日本の
牛乳の生産のピークをなしておりまして、そうい
つた上昇傾向にあ
つて、これ以上の
増産というものは、下手をすると
農家側に
不利益を来たしはせんかとい
つたような時代的な空気を反映して、
昭和十三年にあの
法律ができたわけでございますが、その後戦争となり、
乳牛の激減となり、戦後乳が足りなくて、むしろ売手市場的な形が今日までずつと続いたわけなんでございますが、将来と言いますか、今後私どもがこれ以上の
増産に馬力をかけて参りますということになりますと、必ずしも今までのような売手市場的な
関係は確保できないんじやないか、もうぼつぼつこの辺でそうい
つた虞れのある点を制度的に整備をいたしまして、これ以上
増産をすることは、勿論これだけで十分とは存じませんが、
農家側に多少とも
増産の不安を少なからしめよう、そうい
つたようなことで文書契約ということを考えたわけでございます。この文書契約をして
牛乳の継続契約につきまして
文書化をして頂き、その契約の写しを
知事に
届出る、そうい
つたことを
内容といたしております。で、
知事は
届出がありました場合に、必要な
内容の改善についての勧告をすることができるというふうにいたしております。この
内容の改善の勧告は、事の性質上、契約の実質的
内容自体に立入るというよりも、むしろ契約がそのままでは非常に不明確でありましたり、又は何か事故が起りました場合に十分な解釈ができなか
つたり、そうい
つた契約
内容の不備或いは不明確な点を改善させるということに重点をおいて運用するものというふうに考えております。それから
都道府県知事のこの斡旋の
規定でございますが、そうい
つたことで契約の長期継続化を図るということをやります場合に、それによ
つて長期契約としての
一つの安定性は得られる半面、その契約と申しますか、
牛乳の取引自体が非常に季節的なものでございまして、年に少くとも二回或いは四回くらいは当然季節的な価格の変動が予定されるわけでございまして、契約の形式としても、その点は基本契約と附随契約というふうな形で、むしろ季節季節の価格のことは基本契約に織込むのでなしに、基本契約から出て参る附随契約的なものとして、その季節的な変動に応じ得るような機動性を持たすように、私どもとしては契約を指導いたすつもりにしておるのでございますが、そうい
つた場合の
取引条件の
変更をやります場合に、買手側と
売手側との間に意見の不一致等が起り得ることが予定されるわけでございます。そこでそうい
つた場合に、これは当事者の契約は合意を
中心にいたすものでございますから、当然には、別に府県
知事に斡旋を依頼するということが直接当然には出て来ないわけでございまして、当事者の合意によりまする適当なる紛争解決の
方法を工夫するための余地を勿論残しておるわけでございますが、一般にこれもやはり
酪農業調整法以来の沿革もございますが、その斡旋を公平な第三者によ
つて裁いてもらうという気持、或いは少くとも最終段階ではそうい
つた公平な第三者がお
つて、そこで聞いてもら
つて、そこで見通しを立ててもらうという余地を残しておきますことが、今後生産者への安心感を与え、又乳業の
合理化を
計画的にやる場合にこうい
つた措置が必要であろうかということで、
都道府県知事に斡旋の依頼をすることができる途を開いたわけでございます。
都道府県知事といたしましては、これを本来の業務として斡旋することは妨げませんが、本法で狙いましたのは、本法による
都道府県知事の斡旋は単なる行政的な斡旋でなしに、十八条以下で
規定いたしましたような斡旋
委員という中立的な第三者を置いて斡旋をするというところに本法の主眼を置いたわけでございます。従いまして、他の斡旋手段を用いて安心のできない場合に、一応本法十八条以下を援用すれば、制度的に保障された第三者による公平な斡旋が受けられる、そういう途を開いて安心感を与えるということを狙いといたしたわけでございます。従いまして、斡旋
委員は他の立法令等によりますと、当事者の推薦したものは、というよりも、むしろ斡旋は第三者の中立
委員だけでやるようなことが多いように承知いたしておりますが、
牛乳取引の場合にはそうい
つた事情に、第三者だけでなしに、両当事者の事情に精通したものを加えまして、そうい
つた両当事者のそれぞれ推薦したものと、
知事があらかじめ作りました名簿の中から当事者の意見を聞いて選定いたします中立
委員というものと、その三者で以て斡旋
委員というものを構成いたすというふうにして、
牛乳取引の実情に応じた斡旋妥協が促進されるようにということを期した次第でございます。その際に斡旋申請いたします場合に、所定の手数料を納めますとか、或いは各当事者の推薦したものの費用負担はそれぞれの当事者が行うとかというふうな
規定にな
つておりますが、この点は公共性のある斡旋ではございますが、やはり売手、買手の間の、有利に売り有利に買うための
一つの保護手段でもありますので、一〇〇%の公共性だけというような主張もなかなか困難でございますし、又制度を濫用する虞れもなきにしもあらずとい
つたようなことで、申請者は所定の手数料を納める、一種の訴訟費用的な思想が出て来ておるわけでございます。それから当事者推薦
委員につきましては、先ほども申しましたように、斡旋
委員でありますと同時に、立場を弁護し或いは実情をつまびらかにするということを狙いにいたしておりますので、そうい
つた各当事者の推薦したものについては政令で定める
方法で当事者が負担をする、で、この政令で定めるというのは申請者が双方からの申請の場合には、それぞれ両当事者の推薦したものについて両当時者が負担を、することになりましようし、又一方から申請をいたしました場合には両当事者が協議をして、その当事者推薦
委員の費用負担をきめる、そうい
つたことをこの政令では
規定いたす予定でございます。
それから十九条で斡旋案が成立いたしまして、それを両当事者が受諾いたしました場合は、この協定書が即両当事者の契約を結んだことというふうになるわけでございます。それから不成立に終りました場合には、斡旋でございますから、事の性質上強制力もございません。面当事者に拒否権があると申しますか、強制力のない紛争の
解決方法なんでございますが、その場合には斡旋
委員が行いました斡旋の
やり方なり、
内容なりが果して公正なものとして納得されるかどうか、又当事者の拒否したことが、条理上当然のこととして受入れられるかどうかとい
つたようなことにつきまして、輿論と申しましようか、第三者の批判を仰ぐという
意味におきまして、その交渉の斡旋の経過と斡旋
委員が作りました協定案というものを公表することができるようにいたしたわけであります。それによりまして、今申しましたような斡旋の公平、中立性を確保いたしますると同時に、拒否することの社会的な反響と申しますか、そうい
つたことを問うという機会を作りまして、強制力のない斡旋に多少のそうい
つた輿論の批判とい
つたようなものを期待いたしたわけでございます。
大体以上が
牛乳取引についての
規定の
内容でございます。以下は雑則で型通りの報告
規定でございます。
それから罰則は司法罰は殆んどこうい
つた行政助長法規であります
関係上、司法罰を
規定されるような趣旨のものではございませんので、もつぱら過料という行政罰で行
つております。集約
地域内の
施設の
承認、
新設又は
変更の場合の
承認を得ずして設置し、
変更した者についての過料が十万円以下、これが最高でございまして、あと報告に対する罰則、それから
届出を怠
つた場合の罰則、そうい
つたものを掲げております。なお
届出の中の
牛乳取引の文書契約の
届出のときは、今日の段階で文書、このことの
届出義務違反を過料に処することは行き過ぎかと存じまして、これについては
法律上の義務を課しただけで過料等の罰則は予定いたしておりません。このことは
農地法におきまして、小作契約が文書において義務付けられ、提出を義務付けられておりますけれども、それに対する義務離反の罰則が設けられていないというようなこととの権衡上も、まだ今日の段階ではこれを罰則を以て指導する段階ではない、かように考えておる次第でございます。
大体以上が
法律案の私どもとして考えておりました
内容の概略でございます。