○
説明員(
柴田栄君) 十五
号台風によりまする
林野被害、特に
風倒被害に関しましては、
数字といたしましてはお
手許へ簡単な資料を差上げておきましたが、この際
ちよつと時間を頂きますれば概況を申上げたいと存じますが、大体北海道の
林野は総
面積で五百七十八万
町歩余に
なつておりますが、そのうち
国有林が三百四十万
町歩余、特に私
どもでお預りいたしておりまするのが三百十万
余町歩ということに
なつておりまして、従いまして、
被害に関しましても殆んど大部分が
国有林である。特に
民有林につきましては、
面積としては或る
程度ございまするが、比較的
林齢の低い山が多い
関係からいたしまして
被害の
程度は多少軽いという
状況でございますが、まあ
国有林を一位といたしまして
道有林、それから
大学演習林というようなところまで及んでおる次第でございます。
地域的にプロットいたしますると、一番激しか
つた所は、丁度これが旭川でございますが、
大雪山系、この地域が一番激しか
つたのでございまして、ここで千三百万石以上この一カ所で参
つております。それからその次に比較的固ま
つておりますのは、この青色で塗
つておりまするのが一カ所百万石から五百万石
程度までの
集団風倒の
箇所でございます。赤で塗
つておりまするのは五百万石以上でございます。この茶色で塗
つておりますのは百万石以下五十万石
程度の
集団。それから緑色で塗
つておりまするのは十万乃至五十万。あと点々と黄色に塗
つた十万石以内の
集団被害というのがこのようにばら撒かれております。最も激しいのはこの地区で、それからこの二重丸にいたしておりますのは、五月の風害によりまして風倒を起しまして合計で四百五十万
程度参
つておりまするが、この地区がこういうふうにダブ
つておるわけです。最も激しか
つた所を拡大いたしますと、これが層雲峡の地域でございますが、これが大雪山の一番高い所になりまして、
大雪山系がこういうふうに伸びております。そこでこれが層雲峡の温泉の所在地で、最も
被害をこうむ
つておりますのが緑色に塗りましたこの地域でございまして、これはもう殆んど全林一斉に倒れたり、挫折いたしたりしておる地域でございます。それからこの藍で塗
つておりまするのは
集団的にぽつりぽつりと倒れおる地域でございます。こんなふうに配置されまして、他は単木で折れたり倒れたりしておるということになりますが、ここの区域全部で四万四千
余町歩でございますが、これはもう非常に高冷の地域でございまして、比較的低い樹高の木、或いは叢生地等でございます。実際に原始林が密生いたしておりまする地域は、ほぼこの赤い線で区面しておりまする内部になるわけでございまして、概算いたしましたところでは、この緑色と藍で塗
つておりまする
面積の合計が一万三千
町歩近く
なつておりまして、大体原生林、樹林地帯の半分くらいが殆んど一斉に倒れておる、こういう実情でございます。而もこれはどうもはつきりわかりませんが、大体風倒を見ますと、ここへ西南のほうからぶち当りまして、ここでこう曲が
つたんではないかと思われるのでございます。こちらから吹き降した大風によりまして大体風倒を来たしておりまするので、御覧に
なつて頂きましても、これが川筋になるわけでございます。川筋の風向に直角の面が一斉に倒れておるわけでございます。陰になりまする所は非常に
被害が少い、南斜面が一斉に倒れておるという非常に特性のある倒れ方でございますが、これが全道大体同じような
状況にございます。
そこでこれはまあ第一番には、私
ども特急造材搬出いたしまして、極力利用できるものは利用する態勢をとらなきやならんということで、現地の営林局署を総動員いたしまして非常態勢で
調査と
対策を講じたわけでございますが、一応これを最小限度に
年次別に利用するといたしましても、何としても三十一年度まではどうしてもかかる、三カ年間に大部分を処理する。そういたしますると、三十一年度以降におきましては、まあ残りまするものは六、七、八百万石。これは搬出施設、地形等の
関係から殆んど作業不可能な地域に残留するのではないかという危惧をいたしておるのでございますが、まあその他につきましては成るべく早く処理する。而も従来
計画を変更でき得る限りは変更いたしまして調整をする。まあこういう
考え方で処理
計画を立てたわけでございますが、二十九年度におきまして既定の
伐採量が千八百六十余万石に
なつておりまするのに、更に
風倒被害を直ちに現在
伐採に着手いたしまして、二十九年度中に丸太にして搬出いたそうという量が約六百七十万石。このうちで既定
計画によりまして売払い
予定いたしておりましたものを
風倒木に振替えるもの等がございまして究極におきまして二十九年度には二千三百五十三万石
程度を処理する。こういう
考え方で今実行に着手いたしております。そういたしますると、差引きいたしまして四百九十万石
程度の
伐採量が増加いたすことになるわけでございますが、
風倒木或いは挫折木になりますると生立木に比較いたしまして歩留りが大分落ちて参りまするので、大体平均いたしまして春の
風倒木の処理の実績からいたしまして五〇%の利用率というのを見ておりまするので、最大計量以上に丸太の生産されまするのが二百万石
程度というふうに一応
考えておるわけでございます。そこで
風倒木を処理するに当りましてこの
風倒木全体の処理で問題になりまする点を
考えてみますると、非常に、御
説明申上げました
通り、地域的に而も
集団的に倒れておりまする
関係上、仕事が大変集中して参る。そこで従来立木売りをいたしておりましたものも、立木売りをいたしますれば、
対象を
一つとしてはなかなか困難であるというために、多くの業者が一カ所に集中いたしますれば、必ず混乱を起す。そこでその混乱を避ける意味におきましても、又実際的にも成る
程度の増産ができる。
資金その他の
関係から早く処分しなければならんという
問題等を起す、或いは気分的にも、増産するということでの需給のダブつき等からいたしまして価格の混乱を生ずるというような問題もございまするし、或いは一時的に巨大な作業
資金を調達しなければならんという問題もございまするので、できる限りそれらの調整或いは
対策を解決する意味におきまして直営で
伐採いたしまして、それらの諸問題を処理いたすということにいたしたいということが
計画の
一つになるわけでございます。更にこれと関連いたしまして非常に心配いたされまする問題は、
風倒木への虫害の集中でございます。これは従来の小規模な風倒の例からいたしましても、局所的にも極めて集中した虫害
発生を見ましてこれを放置いたしますれば、それから更に生立木に対しても虫害が蔓延して参る、これは大規模な風倒になりますると、かような今風のごとく一時に数千万石というような風倒は私
ども日本における記録では
ちよつと見付からんのでありますが、大正初年に樺太地区で起りました風倒で約一千万行
程度の
風倒木ができたというふうに記録されておりまするが、その際にもそれに引続きまして
風倒木以上に、概査でございますが、一千七百万石に及ぶ虫害枯損木を生じたというような例もございまするので、虫害防除の
対策につきましては徹底を期さなければならん、これは先の五月の
台風による風倒の
対策といたしましても、約四百五十万石
程度の
風倒木でございましたが、これを二カ年に伐り出し搬出するという
計画で
実施いたしますると同時に、虫害防除のために約三千万円を投じて防除いたしたような実例もございまするし、これは非常に大きな問題ではあるが、
是非とも処理いたさなければならん、かように
考えておるのでございます。更に心配いたされまするのは、御
承知のごとく北海道の春は極度な乾燥期に入りまするので、従来とも
森林火災によりまする
森林の災害は相当大きなものを繰返してお
つたのでございますが、今回のごとく非常に集中して而も大
面積に風倒を生じ、これから出まする枝或いは末木枝条等、乾燥いたして参りますると実に危険な
状態になりまするので、それは徹底的に科学的な予防
方法を施設と併せて講じますると同時に、地元の協力態勢を徹底いたさなければならん、かように
考えておりますが、これらも
風倒木処理に関連いたしま下る非常に大きな問題である、かように
考えております。更にこれは
治山治水、特に
治水の面からいたしまして、局所に集中して倒木を生じておりますので、而も大部分が天然生の原始林で非常に輻湊いたしましたいい形の山で守
つておりました地域を、一時に裸にいたすという
関係からいたしまして、先ず第一番には融雪期におきまする融雪時期を極度に早める、従いまして、もうすでに融雪時におきます洪水の危険は何としても或る
程度避け得られないのじやないか。これに対しましては、まあ一面におきまして、山の地帯においては極力末木枝条を排除いたしまして、末木枝条によりま下る水の停滞を防いでスムースに流してやるということは、精いつぱいやらなければならんと思いますが、非常に時間が長くかかりますので、下流に対しまする
治水の
対策は、これは実は勿論私
どもの力だけでは参らんのでございますが、全体として総合的に
是非とも
対策を
考えて参らなければならん大きな問題であると存じております。特にこの上川地区、
大雪山系をめぐります旭川中心の地域は従来でも非常に水害の危険の多い所でございまして、これを
考えますると恐らく融雪期には必ず水害の危険があるということを予見いたさなければならんのでございますので、これが
対策については、建設省或いは地元等にも十分連絡いたしまして、最大限度の
対策をしても、し過ぎにはならないと思いまするが、まあそれらが非常に大きな問題に相成ると、かように
考えられます。なお御
承知のように北海道は未曾有に近いような冷害をこうむ
つておりまするし、更に風害等によりまする災害もこうむ
つておりまして、地元の救済をこれ又相当徹底的に
考えなければならないという時期にも際会いたしておりますので、一面におきまして極力
風倒木の利用を進めまして、生産せられまする用材の冷害、災害救済の
対策にも法規の許す最大限度まで御利用願うということで
対策を
考えておるのでございますが、今
一つこの末木枝条につきましては、
先ほども申上げましたように、火災の面から言いましても、或いは融雪時の谷間に堆積いたしまする末木枝条の除去等によりまする水害の防除或いは虫害に対しまする餌木の除去等の面からいたしまして、事業上からも除去を必要といたすという
状況にありまするので、従来末木枝条を末木枝条として御利用願う場合には、売払いというような
方法をと
つておりましたが、事業実行の建前から除去を必要とするというために、これらも半面におきましては地元の御協力を得て除去いたしましたものを御利用願うというような
方向で、或いは御協力を願
つて現金収入の資に当てて頂くというようなことも
考えて頂きたいと、かように
考えておるわけでございますが、それと併せまして、先ず当面この冬におきましても
風倒木処理で約七百万近いものを増加事業をいたしまするので、それに要しまする事業では、金額にいたしまして、北海道を中心といたしまして約六億、千万石
程度になるわけでございます。そのうちで労銀に振向けられるものが約四億余ございまして、これは従来も地元の労力を以て大部分消化したしておりましたが、この際にはこれを極力冬季間の現金収入の
対象として就労を願うということで
計画をいたしておる次第でございます。本年度のこれらの処理に要しまする
経費は、
国有林野事業特別会計におきまして予備費を或る
程度現在留保いたしておりまするのと、一割節減に伴いまする節約の戻しを大蔵省と折衝いたしまして、ほぼ
見通しが立ちましたので直ちに実行に着手いたしておりまするので、先ず二十九年度の事業実行には特に補正予算を必要としないで、予備費節約戻しを以て大体処理できるという
見通しが立ちまして、目下すでに降雪期を控えまして伐木に着手いたしておるというのが現況でございます。災害等の救済の
方法といたしましては、すでに緊急復旧の屋根用材等に関しましては、北海道の道庁を中心としまする市町村の
調査によりまして、約百二十万石の直営
伐採丸太の払下を実行いたしている次第でございますが、公共施設の緊急復旧或いは更に各農家の家屋復旧等に関しましても極力御
相談を申上げて行くという
考え方で
計画を進めているのが大体の処理の
方針であります。