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説明員(庵原文二君) この表につきまして概略御
説明申上げます。
第一の目的としますところは、大体官房長から御
説明しましたように、通産及び建設の試案が大体において
事業の
促進に狙いがあるのでありまして、いわば手つ取り早く土地を収容或いは使用するということに主たる狙いがあるように思います。これに対しまして
農林省といたしましては、もつと
農民の立場に立ちまして親切な補償をやりたい、こういうような
考えでございまして、そのためには
農地等の資源の保全ということも併せて
考えまして、更に水没地等における
農民が集団的に他に移住するといつたような場合におきまして、再建整備について、企業者なり或いは
政府として
相当な
考慮を払うべきである。こういう観点に立
つておるわけでございます。その結果として、
開発事業等が円滑に
促進されるということを狙いといたしております。
第二の範囲でございますが、これは通産案によりますと、電源
開発事業を中心といたしまして、河川法の適用になる重要河川の治水利水
工事、それから道路法による一級或いは二級国道を対象といたしております。その他鉄道
工事であるとか、或いはガスの
工事であるとかいうようなものは、必要があれば政令で以て適用の対象としたい、こういうような要領であります。建設省の案といたしましては、これは土地収用法の改正をや
つて参るという
方針でございまして、別段新らしい法律を作るという趣旨ではございませんが、この改正によりまして、手続を簡易にするということが狙いでございます。対象
事業といたしましては、現在土地収用法の第三条で対象にな
つております
事業を全部包含する、こういう趣旨でございます。
農林省でも対象といたしますのは、大体土地収用法第三条によりますいろいろな公益
事業等、全部包含するつもりでございますが、ただほかの省と異なりますのは、こういつたような補償につきましては、単に公共
事業等のみならず、駐留軍或いは自衛隊の用地の取得或いは使用についても適用さるべきであるという
考えに立
つております。
第三の補償の
方法でございますが、これは三省ともまだ当事者間の
協議は自由である、こういうところから出発したのでございますが、通産及び建設が大体において金銭補償を原則といたしておりますのに対して、
農林省といたしましては、やはり当事者の交渉を尊重いたしますけれ
ども、でき得る限り現物の補償によ
つて生活の安定なり、或いは農業
生産力の保持を図
つて行きたい、こういう関点に立
つております。更にこの現物補償が行われます場合、これが契約の
通り正確に行われるかどうかということについて、知事等に竣工検査というような
制度を設けまして、それが的確に集団移住者等の利益になるということを確認するという
制度も併せて開きたいというふうに
考えております。この点は
農林省といたしましてま、例えて申しますと、百
町歩の
農地が潰れるならば、他の土地に同等以上の
農地を造成いたしまして国全体としての
食糧の
増産なり、その他農林、水産業の振興に減退を来たさないということを主たる狙いとしているわけでございます。
それから第四番目の補償額等の適正化でございますが、これは通産案によりますと、当事者が補償契約を結びました場合に届出制をとりまして、それが不当に高いとかいつたような場合には、それを下げさせるといつたような余地を残しておるわけでございます。つまり変更命令権というものを法律を以て規定したい、こういうのでございますが、建設省では現在電源
開発の補償につきまして、閣議了解事項として基準が付けられております。大体ああいつたようなものを法律を以て定めたい、こういう狙いでございます。
農林省といたしましては、できるだけ当事者主義を尊重する、私有財産を嫌がるのを無理やりに取上げるわけでございますから、そう強権を発動してこれを追つぱらうということは濫りにはすべきでないという観点から、調停
制度を十分に活用いたしまして、そうしてその間における折衝によ
つて適正なる補償額をきめて参りたい、こういう趣旨でございます。
それからその次の頁の第五の補償交渉手続でございますが、これは通産、建設ともに別段の規定はございませんが、
農林省といたましては、今まで補償交渉というものが当事者間で野放しにされておりまして、非常にその間補償金額が高きに失する、或いは又権力を以て圧迫して不当に安い価格で召上げられること等、いろいろなケースも
考えられますので、団体交渉の途を開きまして、両者の交渉が正しいルートにおいて行われるような
方途を講じたい、こういうことでございます。
それから第六の補償の斡旋調停機関でございますが、これは大体通産省と
農林省とに補償
委員会といつたようなものを新たに設けまして、この
委員をして調停、斡旋に当らしめる、こういうのでございます。建設省は現在の土地収用法を改正いたしまして調停
制度というのはやめてしまう。斡旋
委員というものを設けて斡旋を行い得る建前にな
つておりますので、これの斡旋によ
つて若し
協議が不調の場合は直ちに収用手続に入る、それによ
つて促進を図りたい、こういう趣旨でございます。
それから七番目の補償並びに土地等収用の裁定機関でありますが、これは通産省におきましては一般的には土地収用法によるわけでありますが、緊急且つ重要なものについては新たに総理府に裁定機関を設けまして、そこで裁決をする。それから建設省におきましては、現在土地収用法による収用
委員会は各府県にのみございまして、中央にはないわけでございますが、中央に中央土地収用
委員会のようなものを置いて二審制をと
つて行く、こういうことでございます。
農林省といたしましては、裁定のような強権に待つということは、先ほど申上げましたように成るべく避けたいという趣旨でございますが、併しどうしても事情止むを得ない場合のために、現在あります土地調整
委員会の機能を拡充強化いたしまして、これに裁決権を持たせるというふうに
考えております。その場合は当事者交渉或いは調停等の
段階を踏みまして、どうしても話がつかないというもののみに限定するという
考えでございます。
それから第八の被補償者の再建整備でありますが、これは
農林省以外の関係省においては別に
考えていないのでございますが、
農林省といたしましては、でき得べくんば再建整備
委員会のようなものを必要な道府県に置きまして、
相当数の
農民が集団的に他に土地を求めて新らしい村作りをするといつたような場合には、市町村長及び知事が再建
計画というものを立てて、これに対して行政庁はもとより、企業者もその線に沿
つて生活の再建なり村の振興に努める、こういうような
考えでございます。なお、その際に補償以外の必要な
資金につきましては別途に融資の途を講ずる必要があるのではないかということを
考えております。
以上申上げました各項に亘りまして、これを法律化して参りたい。通産、農林は新らしい法律を作る必要がある。それから建設省は現在の土地収用法の改正で行く、こういうことでございますが、総合
開発審議会におきます水
制度部会等の結論といたしましても、補償問題については新らしい法律を作る必要があるということにな
つております。それから
電力研究会でございますか、
電力会社方面からも、すでに国会に強力な権限を持つところの法律を制定してもらいたいという請願が出ております。そういうような情勢の下に、
只今この三省の間におきまして、それぞれ試案を作成いたし、又
協議をも始めておるわけでございますが、先ほど官房長の
説明のように、未だ具体的に法案という形で成案を得ておりません。
只今までの経過を申述べまして御参考に供する次第であります。