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政府委員(楠本正康君)
只今御指名によりまして極めて簡単に概要だけを御
説明申上げたいと思います。
現在都市の清掃事業は汚物掃除法によ
つて実施をいたしておりますが、これは都市人口僅か二千万当時の明治三十三年の代物でありまして、都市人口が倍以上に膨脹いたしました現状といたしましては、どうしても
時代に適し得ないいろいろな問題点がございます。これらの問題点を解決するために今回新たに清掃法を
考えたわけでございます。特に農村
関係等と密接な
関係ある部分に重点をおいて御
説明申上げますと、先ず第一に、現在都市の屎尿というもの、或いは塵芥は人口の膨脹によりまして著しく殖えております。これは申すまでもないことでございます。ところがこれを受入れるところの農村側の需要は、最近有畜
農業の普及或いは化学
肥料の普及というようなこと、並びに一般に農村の青年がこの屎尿のようなものを余り使いたがらんというような空気も出て参りまして、そのために都市の屎尿というものの農村還元が思うように参らなく
なつたわけであります。そのためにどうも困
つたことが各所に起きまして、不法投棄或いはその他いろいろな問題が起きております。そのために河川或いは東京湾等の近海が著るしく屎尿に汚染されまして、場合によりますと漁業等にも
影響を来たしておるというような
状況でございます。そこでこれに関しましては、私
ども一応これを衛生的に処理して処分するということを今回
一つ規定をいたしまして、農村に還元できない部分は勿論これは処分しなければなりませんが、これを衛生的に処理するということを規定いたしたわけであります。それから一方塵芥等につきましても、現在は焼却するという
方法で行われておるわけでありますけれ
ども、施設の
関係等もありまして、余り焼却等も行われず、主として埋立てという名前におきまして、単に適当な場所に積んでおくというような
状況でございまして、これが又環境衛生上悪臭その他の害があるばかりではなく、そこから漏れますところのその水が、地下水等に混入いたしまして飲料水をいためる、場合によりましては農作物等に
影響を来たすというようなところもかなり出ておるのであります。
従つてこれらの都市の塵芥につきましても、これを完全に処理する建前をと
つて進んだわけであります。
なお、もう
一つ特に
関係のある点につきましては、私
どもはこれらを全国的に一律に実施しようという意思もございません。そこで、都市並びに特に必要な都市的性格を持
つた町村のみに限
つてこれを実施する建前といたしておる次第であります。かような実施地区におきましては、生屎尿をそのまま畑に使うことは実は禁止をいたしておるのでありまして、或る一定の基準に
従つて処理したもののみを、かような都市並びに都市的性格を持
つたところにおいては実施するという
方法を
とつたのでありまして、これが
考えようによりますと、農村の営農
形式等に非常な負担がかかるのじやないかというようなことも当然
考えられますが、併しながら全国的にかようなことを実施するわけじやございませんので、単に都市だけで実施をする、こういうことでございまして、極めて稀に都市の中にある営農者が若干のこの制約を受けるということになる場合もあろうかと
考えられます。
それから次に、かような都市的性格のほかに、現在観光地等季節的に人の集まる地域の衛生状態が極めて不良でございますが、例えば富士五湖にいたしましても、上高地にいたしましても、極めて不良な
状況にありますので、これらに対しましても若干の規制をいたしたいと、かように
考えておる次第であります。これは必ずしも農村
関係等に著るしい被害はないと思います。ただこの場合にも、かような都市の実施
方式を準用いたします
関係で、観光地の生屎尿の使用ということは今後若干の規制を受けるという結果になると思
つております。
然らば、今後対策として何を
考えておるかという点が一番の問題点だろうと存じますが、私
どもは現在屎尿処理は、これは理想から申しますれば、下水道による水洗便所によ
つて処理することが最も理想でありまするが、併しながら我が国の現状といたしましては、市の面積の一五%下水道が普及するといたしましても五千億余りの経費がかかりますので、到底これは背負い切れない負担である。そこで取りあえず私
どもは消化槽というものを設けまして、消化槽に屎尿をぶち込みまして、水分と固形分とに分けて完全に衛生的に処理し、水分はきれいな水でありますから、これを川にそのまま放流する、或いは海に放流する、固形分はこれを農村に還元するという行き方をとりたいと
考えております。この農村に還元ができなくなりました
一つの原因は、これは輸送力に問題があるのでありまして、例えば東京都の屎尿も青森県に持
つて行けば喜んで使
つてくれるのでありますけれ
ども、何分にも多量の水分の
関係から、さようなことは不可能でありますので、一応水分と固形分とを分離することによ
つて量を減らせば、屎尿としての農村還元は容易となりますので、かような
方法を仕組んで参りたいと
考えております。なおこれらの消化槽の施設は、将来下水が完備した場合には、これをそのまま下水道の終末の処理場として活用することができるわけでありまして、つまりなかなか下水のパイプが普及できませんから、止むを得ずその最後の終末処理を前以て作
つて、遠い将来下水道が普及した暁には、トラツクで運搬する屎尿を下水によ
つて運搬するという形に持
つて行きたい
方針でございます。
それから次に、塵芥につきましては、これは一応焼却ということを
考えておりますが、併し焼却いたしましても、なかなかいろいろな雑物が含まれておりますので、必ずしも現在の日本の
状況では、これを農村に
肥料として還元することは不可能な
状況であります。そこで一応私
どもの
考えといたしましては、世界各国の例に倣いまして、先ず機械力によりまして塵芥を分別いたしまして、厨芥の部分を細かに刻み、これに特別な土壌バクテリアを作用させ、土地改良の資源を得たい
方針であります。すでにこの
方法はアメリカ或いは大陸地方におきましては、火山灰地帯の土地改良に活用されております。北欧諸国においては、干拓地帯の土地改良に使われておる現状に鑑みまして、我が国におきましても、かような
方法も同時に並行的に進めておきたい。土地改良は厚生省の仕事ではございませんけれ
ども、捨てるものを生かして行こうということを
考えております。
それから次に、これ又農村との
関係の問題は、現在都市の屎尿処理というものは極めて複雑な様相を呈しております。これを集収処理いたしますのは、多くはこれを請負によ
つて実施されております。勿論直営によ
つて市が実施しておるところもございますが、多くの場合請負の
制度が使われております。この場合、従来はこれを営業と申しますか、この仕事を殆んど何らの規制もしていなか
つたのでありますが、そこでいろいろな問題がおきております。例えば簡単に仕事をするために川へでも何でもぶつ散らかしてしまうというような事態もかなりある。又一方汲取料等も過大に要求するというようなところもありますが、今度これらの営業を許可制にいたした次第であります。許可制にいたしまして一定の制約を付して行くことに相成ります。そこで問題は、今後
農業協同組合等が仮に或る市の屎尿を系統的に汲取るというような場合には、一応許可の制約を受けるということに相成ります。これらも現段階においては当然なことだろうと存じておる次第であります。
大体以上が特に農村
関係の方面との
関係において主な事項でございます。なお現在我が国におきまする屎尿の排泄量というものは、大体米の倍と私
どもは換算をいたしております。約一億七千万石
程度でありますが、一人一日五合五勺と私
どもは換算いたしております。それで一億六、七千万石でありますが、これの約九〇%は農村に還元をされております。僅かに一〇%が下水、或いは浄化槽、或いは海洋等その他にまあ不法的に埋没その他の処分が講じられているわけであります。それらの農村に還元されております屎尿を大体化学
肥料に換算いたしますと、約二百五十億円に該当いたしまして、大体化学
肥料の四分の一余りがこれらの屎尿によ
つて解決されておる、こういうまあ恰好に相成ります。まあこれは参考までにちよつと申上げておきます。以上であります。