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説明員(小峰保栄君) 農林
関係の公共事業費のうち、国庫補助事業につきまして、私
ども数年来この検査をや
つておりますが、その経過を御報告したいと思います。
昭和二十六年度から
農林省関係の国庫補助事業を、私
どもとしては本格的な検査、と申しますと、えらい口幅
つたいのですが、全国の農林
関係の補助事業の現場というのは何万という数で、数えるほど多いのでありますが、このうちの五、六%しか実際上検査できないのでありますが、先ず大体代表的なものを検査いたしまして、
傾向としての補助工事というものの実態はややつかめたのではないだろうか、こう思
つております。二十六年度までは断片的にはいろいろ補助の不当経理と申しますか、不正工事と申しますか、そういうようなものもぼつぼつつかんでおりましたが、全国的に統一的な方針で検査を始めましたのは二十六年度、歴年で申しますと二十七年からということになります。それで二十六年度の検査につきましてはすでに、二十七年度もそうでありますが、検査報告の形で国会に御提出いたしまして、決算
委員会で現在慎重な、特に小
委員会をお設けになりまして慎重な審議を継続しておられるわけであります。
二十六年度は、検査時期は二十七年でありますが、二十七年は全国的に四十六都道府県というものを、数は少うございますが、ともかくも一応検査して歩いたということになるわけでありますが、その結果、それまでにいろいろ噂には聞き、断片的にはわか
つておりましたが、実態というものはなかなかつかめなか
つた補助工事というものの片鱗が窺えたわけであります。検査報告に載せまして国会に御報告した悪い工事というのが二百七十三件、金額にいたしまして、補助金が過大に支払われていると思われましたものが一億三千三百万円、こういう集計が出たわけであります。更に二十七年度、昨年検査いたしましたわけでありますが、これにつきましては前年の二百七十二件、これは一件十万円以上で申上げております。もう少し小さいものまで検査いたしましたが、十万円以上で一応申上げておきます。二十七年度は前年の二百七十二件に対しまして実に千七百五十七件というものが私
どもの検査の結果わか
つたのであります。それから補助金の過大に支払われているという金額、これが六億八千七百万円ということが検査報告に載
つております。金額的には実はあまり大きくないという御印象をお受けかも知れませんが、会計検査院の検査結果の報告というものは非常に実は堅過ぎるくらい堅く金額なんかも弾きますので、相当にこれは小さく結果的にはなるのであります。で、引続き二十八年度分につきまして、現在私
どもは検査をや
つているわけでありますが、二十八年度は御承知のように未曾有の大災害がございまして、普通ですと、大体二十八年度の検査は二十九年の四月以降に始めるというのが今までのやり方であります。併しながら、どうも過去二カ
年間の結果によりますと、工事ができて
しまつて補助金を交附して、あとから検査に参りましても、もうあとの祭り、文句を言うだけでよくならないということで、こういうようなわけで使われましたので、現在では少し早目でありますが、まだ工事に着手しない、査定を受けたばかりというようなところも、すでに現在全力を挙げて実は検査をや
つているわけであります。すでに農林
関係につきましては、一番大きな災害を受けた県、一県でありますが、検査を終りまして、若し御質問があれば、その結果についても御報告できる
段階にな
つております。これは私
ども実は相当に災害の復旧費の査定額が多いもので、見当を付けて行
つたのでありますが、私
どもが予想した以上のまあ水増しと申しますか、災害便乗と申しますか、そういうようなものがたくさんに発見されまして、私
どもとしても驚いているようなわけであります。
以上大体昭和二十六年度から始めました全国的の検査というものの概況を御報告したわけでありますが、
先ほど申しました検査結果として、二十六年度が十万円以上が二百七十数件、二十七年度が千七百件余り、こういう数が出た。これは一体どんなものがあるかということ、こういうことは誰しも疑問に思うのでありますが、ケースは千件も千七百件も出ましたが、結局はどうも人間の考えることでありまして、不正と申しますか、不当と申しますか、これの態様は大してそう複雑なものはないのであります。大体七種類か、八種類にこれは分類いたしますとできるものであります。一番大ざつぱに分けますと、先ずその査定が十分に行われなか
つたために招いた不正工事ということが先ず第一類に挙げられるわけであります。第二類に分けられますものは、施工において欠陥があ
つたもの、言換えますと、施工の監督がよくなか
つた。或いは施工をいたします事業主体なり、請負人なりのやり方がまずか
つた。この査定上の欠陥に基くものと、施工上の欠陥に基くもの、大ざつぱに分けますと、この二つの分類に分けられるのであります。それで査定の悪いものの具体的な例を申上げますと、先ず第一に架空工事、これは一番質が悪いのでありますが、これは申上けるまでもなく全然災害を受けておらない、従
つて災害復旧工事もや
つていない、そういうものに対して国庫補助金が行
つているというのが、ここ数
年間農林、建設を通じまして毎年幾つか私
どものほうにわか
つております。それから二重査定と申しますか、
農林省と建設省と両方から補助金をもら
つてしま
つた。それが私
どもが検査に行くまでそのままにな
つていて、補助金の二重取りにな
つている。こういうようなものの数は、勿論そういうのが、たくさんあつちや困ります。そう多くはございませんが、こういう事例もあります。それからこれは世の中に非常に多いと言われるものでありますが、いわゆる便乗行為、災害を受けた場合に、それに便乗して改良的な工事をやる。
ちよつと災害を受けたのに非常に大規模な復旧工事をや
つて、従来とは似ても似つかない立派なものを作
つてしまう、こういうようなものがあるわけであります。
大体査定の不備によるものは、今まで申上げたものが主たるものでありまして、それから施工の不備によるものというのは、一番遺憾なのは、いわゆる粗漏工事と申します、私
どもは粗漏工事と名前を付けておりますが、検査に参りますと、昨年補助金をもら
つて工事が完了しているのに壊れてしまう、その後、水が出ましてもう壊れてしまう、こういうようなものも全国に相当ございます。それから数が非常に多いのは設計
通りの仕事をや
つていない。いわゆる出来高不足と申しておりますが、設計
通りの出来高がない。これは実は一番数が多いのであります。それからこの実施設計と申しますか、査定のときには一応設計を作
つて、
農林省にお出しするわけでありますが、それに基いて災害復旧工事費というものはきまるわけでありますが、この査定は非常に急ぐ
関係で、相当大ざつぱな設計をやるというのが実情でありますが、実際に工事をやるときには、これを元にいたしまして、現地について細かい設計をやり直して、そうして実情に合
つた設計を立て直すということにな
つておるのでありますが、実際には実施設計は表紙だけは実施設計にな
つておりますが、内容は査定設計のまま、それで非常に大ざつぱな設計でや
つているというものが、相当にこれは
農林省でも建設省でも多いのであります。こういうふうに大体実施設計が悪い。それからできが悪いというようなものに、この施工上の欠陥に基くものは分けられるのでありますが、更に二十六年度の検査、二十七年の後半に私
どもが具体的に事例をつかんだのでありますが、地元の事業主体が、これは御承知のように災害復旧工事でも何でも、国庫補助事業というものは何割かの地元負担というものが伴うのであります。災害復旧で申上げますと、従来の原則的な国庫補助というものは六割五分かと思います。三割五分というものは現金なり、労力なり、何らかの形で事業主体に負担してもらわなければならんのであります。そういうふうな法律上の建前にな
つておるわけであります。この三割五分なり、或いはものによ
つてはもう少し多いものもありますが、これの正当な自己負担を忌避する
傾向が非常に多いのであります。これは噂には随分いろいろなことで聞いてお
つたのでありますが、二十七年の後半に至りまして、私
どもの検査で具体的なそういう面を見つける検査報告をと
つてみたのであります。そうすると、ぞろぞろ全国から出て来た。昨年、二十七年度は
先ほど申上げましたように千七百五十七件というものは十万円以上の検査で見つか
つておりますが、そのうち実に千五百十五というものは、この正当な自己負担をしていないという案件なのでありまして、中には国庫六割五分の範囲内でやれるんならや
つてしまつて、余りを持
つている。六割五分以下で工事をや
つてしまつて金を余らしちや
つて自己負担をしないどころではなくて、国庫負担の頭をはねてしま
つた。こういう事案も相当数見つか
つて来たのであります。そこで私
どもとしては、こういうようないろいろ悪い
事態を千五百も千七百も見つけましても、一応ただ検査報告の形で御報告するだけでは、一体これはいつまでた
つてもよくならないのではなかろうか、こういうことで、昨年の初めの二十六年度の検査結果によりまして、
先ほど申上げましたように二百も三百も見つかりましたが、分類しますと結局七つか八つのものと同じことであります。七種類か八種類になりますので、それぞれの原因、それからこれに対して対処するにはどうしたらいいかというようなことも考えて、いろいろや
つておりましたところに丁度昨年のあの六月、七月頃の大水害、又このまま放
つておきまして、会計検査院があとで見つけて歩くのではこれは何にもならん、こういうような
考え方から、前年度の検査結果に基きまして、八種類なり九種類のそれぞれの事案につきまして原因を調べ、対策を書きまして、各省、これは
農林省も入
つております。
農林省なり、それぞれの省に照会の形で会計検査院の
意見を表明して改善を図
つておるわけであります。参議院も一度どういうふうにしたらいいか、今の小
委員会の御決定によりまして、会計検査院の
意見を求められましたので、一々の分類につきまして原因、対策というものを書きまして、実は詳細に資料として御提出してあるわけであります。結局のところ、
先ほど最初に申上げましたように、査定の悪いものは査定をよくして行くよりほか仕方がないわけであります。それから施工の悪いために起きたようなものは施工上の監督というような面を強化するよりほか手がないわけであります。査定につきましては、昨年の大水害に対しまして建設省
関係などでは相当に査定事務の強化ということをおやりにな
つておるようであります。で、査定で一番問題が多いのは、いわゆる机上査定、机の上で査定をして
しまつて現場を見ない、本来ならば、これは必らず現場を見てからでなければ災害復旧費は幾らということがきまらないわけであります。事業の主体の出しました文書だけで査定をおやりになる、いわゆる机上査定であります。これが非常に全国に多いのであります。いわゆる問題を起します案件は主として机上査定であります。
農林省の実際で申上げますと、今まで大体箇所数にいたしまして二割見当しか実際に現場を
御覧にな
つていないのであります。八割ぐらいは書面だけを
御覧にな
つて、県庁なり或いは東京に書面をおとりにな
つて、それで工事金額をきめてしまうというのが現実の姿なのでありまして、ここに査定上の結果に基く不当工事というものが発生するわけであります。
先ほど申上げました架空工事だとか、二重査定なんというのは、これはあとから見ますと誠にどうも不思議なものでありますが、こういうものが全国にあとを断たない。それから便乗工事、こういうものがあとを断たないというのは、やはりこれは査定の結果が不十分、こういうことになるわけであります。それから地元が正当な自己負担をしなか
つたり、工事の手抜きをする。こういうようなことは、やはりこれは施工上の監督なり、何なりの機能が十分でない、こういうことに基因するわけであります。これは主として府県というものの監督機構が問題になるわけでありますが、こういう面の充実ということも是非心要なんじやないか。こう考えておるわけであります。
非常に簡単でありますが、大体
お話をこれで終わりますが、
一つ一つの事実につきまして、細かい御質問がありましたら又お答えいたします。