○
国務大臣(
保利茂君)
只今御説明を伺い、又
政府の
考えを求められている点は、いわゆる我が国経済の位置から申せば根本の問題であると思
つておるわけであります。従いまして、今日の段階において御満足の行く御説明は私は困難かと思いますが、御説明の順序に従いまして私
どもの
考えを率直に申上げたいと思います。
近時、世上を騒がせておりますこの
黄変米の問題、
当局者として誠に恐縮をいたしておるわけでございますが、一両年前からこの
黄変米の問題がやかましくなり、特にこの
黄変米の払下処分の問題に関連して、会計検査院等の批難事項に掲げられるに及びまして、この問題が非常に大きく取上げられて来た。それは会計検査院の批難を打つまでもなく、確かに私
どもとしても
当局者として
考えなければならない問題があ
つたわけであります。即ちこの変態的な国情、国勢の下に、而も非常な食糧下足、
従つてどうしても外国食糧に多量に依存しなければならない、その輸入にいたしましても、占領下の変態的な状態の下において輸入が行われておる、独立早々におきましても同様のことが続けられておるのであります。無論この数年来の
黄変米の問題は、やはり国際商品でありますから、日本だけが劣悪な
条件で取引を甘受してお
つたとは私は
考えておりませんけれ
ども、一般的な国際的取引のそのレベルにおいて
黄変米の問題が
発生したので、昨年ビルマとの協定或いはタイとの輸入協定等につきまして、大方変色一%以下のものでなければ日本ではどうも問題がある、
従つて一%以上のものは日本としては買うわけに参らんというようなことから、無論これは外交機関、それから
関係業者の非常な
努力によりまして、爾後変色一%以上のものは殆んど入
つて来ていないわけであります。ところが白色の米を培養実験をすると菌がやはり発見できる、それで白い米も油断がならんと、こういうことにな
つて、これは何も外国米を大量に輸入するようにな
つたから、そういうものが入
つて来ておるという性質のものじやこれは無論ないと思います。仰せの
通り、百五十万トンなどという外米の輸入は、
黄変米の問題があるなしにかかわらず、日本の経済がもはや許さんと、私は昨年の凶作気構えに再会して、如何にして台所を預かる私
どもとして台所を守るかということに非常に深刻な悩みをいたしました結果、私の
考えでは、とにかくまあ外米が一般消費者から歓迎せられないということは、これは私も率直に認めるわけでございますけれ
ども、さればとて、その配給日数を切落して、あとは麦なり何なりでおやり下さいということが、本当にこの大衆の台所で堪えられることであるかどうかということで、本来は大量輸入については、
政府部内におきましても非常に異論があ
つたわけですけれ
ども、外貨が減少して行くという大外からいたしまして、併し私としてはどうも大衆の台所を預かる
立場からいたしますれば、外米はまずいから、割も悪いからということはわかりつつも、併しながら、それよりも又、だからとい
つてうどんやパンだけにすぐ切換えて行く用意が実はないのじやないか。少くとも国民経済上非常に大きな犠牲であるけれ
ども、この一年間をとにかくいわゆる粉食への啓蒙時期として、切換える時期として食生活の改善についても
努力を払いつつ、そしてできるだけこの外米に依存して行くという
考えを生活自体の中から排除して行く
考えでなければいかんのじやないかというように
考えまして、かなり厖大な輸入食糧を入れたわけでございます。ところが白い米に有菌米がある、これはもう皆さんよく御
承知でございますから繰返し申上げません。又私が申上げると如何にも弁解がましくなるから、成るべく申上げないようにと思
つておりますけれ
ども、私は非常に割切れない
気持で実はおるわけなんであります。と申しますのは、ビルマやタイの米は日本が大部分買
つているのかというと、必ずしもそうではない、南方製米は世界の各国にこれが流れて行
つている、而もタイなり或いはビルマなりにしては、その国の国民生活を支えるところの主要な商品である。それが何らのトラブルなしに国際的に取引が行われてお
つて、それがいろいろその国際取引の基準以上の
条件で日本は買
つておる、それについても又
文句をつけられる、こういうことに現在はな
つているわけであります。恐らく今日あのビルマから来ておる特使等の口吻を焼いますのに、かなりの影響を与えておる、これは当然のことだと私は思います。それは日本の大事な輸出品に毒があるとか何とかになれば、これはお騒ぎになることは当然だと思います。それは別といたしまして、私の
立場からいたしまして、これは何も、そういうことは国際的に取引が行われておるということは無害だからじやないかということは言いたいところですけれ
ども、そう言えば科学を目秘することになるのでありますから、それは結局一件、毒性があるということは、これはもう否定できないことだと思います。それで食物として有害であるか、無事であるかということは、私
どもとしてはそれもどちらとも申上げ得ないわけであります。申上げ得るものは、国の保健衛生を掌
つておるところの食品衛生法の管理
当局者であるわけであります。従いまして、どこまでが有害であるか無害であるか、どこまでが差支えないか、差支えがあるかということは、私は絶対にその保健衛生法の
当局者の判断を
信頼して行くほかは私
どもとしてはございません。従いまして、最高二%半という
一つの新らしい基準が出ております。出ておりますが、どんなに食糧
事情が悪くなりましても、それ以上のものを配給するということは、これは断じてできない、それはいたすべきものでない、ただ併し二%半だからとい
つて三%半ぎり分れのものでもやるか、私
どもの
気持としましては……、とにかく今は再描精の実験をいたしておるわけでございます。どこまでこの実験の結果を生かし得ますか、とにかく手段を尽すだけ尽しまして、できるだけその有菌率を、含有率を低めて、消費者にいささかの御懸念のない状態において配給いたすつもりでおりますけれ
ども、併しこれとて、どうも食べ物のことでございますから、それを食べれば毒だ毒だと言
つておれば、食べ物でございますからいろいろ騒ぎが出て来ます。押付けて行くというわけには無論参らないことでございますし、できるだけそういうつもりで……、幸いここ当分の間、今の問題になる米をどうこうしなくても、問題にな
つていないものが
相当量ございますから、それを以て配給いたしつつ、同時に又厚生
当局においても更に研究を速かに進められるということでございますし、かたがた消費者に御迷惑をかけるような配給はいたさないで十分や
つて行ける、こういうふうに
考えておるわけでございます。
それから
申入の御
趣意でございますところの食糧増産の
関係、米穀の
国内自給増強ということでございますが、これは先ほど
お話のように、麦についても増産意欲というものはより大きいのではないか、これは私
どもそう思
つております。余談でございますけれ
ども、この間両総用水を見に行きましたが、あそこに一万八千町歩の受益面積が出ております。あそこは殆んど単作でございますが、それが一万八千町歩の受益面積が二毛作田に改田されることになりますれば、それだけでも
相当すでに麦の増産、米の生産力が増すことは当然ながら麦の増産ということが図られるのであります。ただ私
どもとしましては、できるだけ土地改良も推進して行きたい、未墾地の開発もいたしたい、或いは干拓もしたいというような土地
条件を整備する、農地
条件を整備するというところに五カ年計画の重点はあるわけでございますけれ
ども、同町に整備された農地の上に立
つての営農、農業経営がやはりこれにマッチして進歩しなければならんのではないか。そういう点においてはかなり具体的に進めもいたしているわけでございます。本音を申上げますれば、
農林省内部で計画しておりますところの五カ年計画が
予算と歩調が合
つて行かない。而も我々は五カ年計画だと言
つて五カ年計画で食糧増産はこうだ、
予算は五カ年計画でなくて二十カ年計画ぐらいにな
つてしま
つているということが実際の
事情と言われます。併し、いずれにいたしましても土地改良なり或いは未墾地開発なりの農地
条件を改善して行く余地があまりに多く残されている。そこでどこにどう、今ずつとばらまいたような形に
なつおりますが、併しそれもほんの一部にしかな
つていない。非常に私が参りましてからも、
お話を地方々々によ
つて伺いましても、かなり手を入れなければならないところが残されている、それを満たして行きますためには、一面国の経済の根本的建直しという大課題の上に立
つて緊縮予算が強行せられている、ここで私
どもとして、この農地
条件の整備に要請せられるところの要請と、財政面の要請との板狭みに実はな
つているわけであります。私
どもとしましては、とにかく食糧
事情が改善せられない限りは、何ぼ経済自立だと言
つても私は砂上の楼閣ではないか、極端に言えばそういうふうにすら私自身は
考えているわけであります。
申入の
趣意は全く私も同様に、全面的にさように
考えているわけであります。皆様の御協力も併せて
お願いいたして、さようにいたして参りたいと思います。