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1954-06-01 第19回国会 参議院 内閣委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年六月一日(火曜日)    午前十一時九分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     小酒井義男君    理事            植竹 春彦君            長島 銀藏君            竹下 豐次君    委員            石原幹市郎君            西郷吉之助君            白波瀬米吉君            井野 碩哉君            高瀬荘太郎君            岡田 宗司君            矢嶋 三義君            山下 義信君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君   委員外議員            鶴見 祐輔君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局次長   林  修三君    法制局第一部長 高辻 正己君    保安政務次官  前田 正男君    保官庁次長   増原 恵吉君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁人事局長 加藤 陽三君    保安庁経理局長 石原 周夫君    保安庁装備局長 久保 龜夫君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   説明員    保安庁長官官房    法規課長    麻生  茂君    保安庁保安局保    安課長     海原  治君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○防衛庁設置法案内閣提出、衆議院  送付) ○自衛隊法案内閣提出、衆議院送  付) ○自衛隊海外出動を為さざることに  関する決議案に関する件   ―――――――――――――
  2. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 只今より内閣委員会開会いたします。  防衛庁設置法案及び自衛隊法案、右二法案につき総括質疑を行います。岡田君。
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 総理にお伺いいたしたいと思います。現在世界最大関心事になつておりますものは水爆の問題でございます。これは世界の全戦略を変え、又同時に世界のいろいろな国際関係をも変えるものであり、更には人類全体に非常な大きな影響を与えるものであります。日本は御承知のようにすでに数回の南方海域における水爆の実験によりまして直接の被害を受けたのであります。この水爆の問題は、今日政治の上のみならず、軍事の上におきましても最大の問題である。若し今後世界戦争が勃発するといたしますれば、当然日本は現在の地理的位置からいたしましても、水爆或いは原爆被害を受けなければならないかも知れないのであります。若しこれを受けるといたしますならば、広岡、長崎に落ちましたあの原爆と違いまして、更にその数百倍、千倍の威力のあるものが我々の頭上に落されるようなことになつて参りますならば、それこそ文字通り我々は滅亡しなければなりません。国防問題を論議されておるわけでございますが、この国防問題におきまして、或いは海上から砲撃を受ける、或いは落下傘部隊が降下する、或いは陸上兵力がやつて来るというようなことよりもこの問題について我々は最大関心を払つておるのであります。自衛隊国防のために置かれるのである。こういう国防政策の一環からこれが置かれることになつたといたしますれば、この原爆なり、水爆に対して我々は如何なる防衛手段を持つか。その原爆なり、水爆に対する防衛ということが、これが示されなければ真の国防という問題の核心には触れないと思うのであります。その点について如何なる原爆水爆に対する防衛政策をお持ちであるか、又これをどういう方針でお立てになるかを総理大臣からはつきり承わりたいのであります。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 水爆の問題はお話通り人類全体に、世界に……、いい加減にやめてくれ給え、委員長写真をどうかして下さい。議事進行の妨げになる。(「答弁答弁」と呼ぶ者あり)水爆原爆の問題は、御承知通り世界関係をする問題であり、又水爆原爆のために各国共に新らしく軍備なり、防衛方針をきめなければならん、考え直さなければならん、いわゆるニユールツク考えなければならんのじやないかという議論アメリカにさえも起つておるわけであります。起つておることは御承知通りであります。故にこの問題はひとり日本の問題ばかりでなく、世界の問題、各国の問題になつて、どう結論がつくかということは我々も深い関心を持つて注意しておるわけであります。それから又国際連合等においても、御承知通りこの問題を取上げてどう処理するか。これを世界的といいますか、列国の所有を禁ずるとか、或いは列国監視の下に置くとか、いろいろ議論が起つておることは御承知通りであります。日本一国だけで原爆水爆の問題を目標として仮に考案を持つても、その考案が果してできるかできないか、或いは又それが適当であるか、適当でないかという問題もありましよう。無論政府としては非常な関心を持つて将来処するつもりではありますけれども、一応各国、殊に英、米等においてこれをどう取扱うか、或いは国際連合等においてどう取扱うか、或いは世界的監視の下に置くことにするか、或いは又これを所有することを禁止するということになるかという問題にも関係するであろうと思います。無論各国水爆に対する措置については、政府としても注意を怠りませんが、直ちにこれを目標として防衛方針を立てる、これは非常に政府としてむずかしい話であり、むしろ至難な問題ではないか、一国で以て考えるよりも国際的に考えたほうが実際的ではないか、こう私は思います。政府としては無論非常な関心を持つて注意いたしております。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 議事進行。この会議を開くに当りまして、委員長理事会の経過それから各派の時間の割当について御発表になりましたのですか。
  6. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 発表いたしました。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 我々は昨日からこういう審議の仕方には賛成いたしておりません。態度を保留しておりますので、それで我々の会派の時間の割当がどういうふうになつたのか承知しておりませんので、改めてここでこの結果と、それから会派割当の時間、それから順序とお伺いしたいのです。
  8. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 委員会を開きます前に各派にお集りを願いまして、委員長の案を発表して御承認を願いましたものを申上げます。緑風会質疑応答で四十分、社会党第四控室が四十分、第二控室が三十分、改進党二十分、無所属二十分、純無所属二十分、以上百七十分の範囲内で私がこれを取扱つて行くということで進めさせて頂くことを御承認願つております。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つ伺いたいことは、昨日緒方総理が、国防会議については、本日閣議の決定をしてその案を見せるということになつておりましたが、そういう手続がなされて、この総括質疑に入つたのでございますか。
  10. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) いろいろの問題がありますが、一応総括質疑終つたあとで、それらの点については、私は御相談申上げたいと思つております。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 了承いたしました。
  12. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今の原、水爆問題に対する首相お話は、それの国際管理等の大体外交的なお話が主でございました。私は軍事技術的にこれの防衛に対する対策があるかどうかということをお伺いしたいのです。お答えは至難のことである、こういうことでございました。私も誠に至難である、そういたしますと、今設けられます自衛隊或いはこれが今後どのくらい拡張されて行きますかわかりませんが、この自衛隊なるものは原、水爆に対する防禦といたしましては何ら考えておらないものであるか、そしてその防禦任務とするものでない、こういうふうに解釈してよろしうございますか。
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) しばしば申すようでありますが、日本防衛方針といいますか、方針としては、日米安全保障条約によつて米国との共同によつて日本防衛するということに方針を立てておるわけであります。そうして水爆に対する米国政府研究或いは考え方は、相当徹底しておるようにも考えられます。又世界管理に移すか、国際管理に移すか、或いはこれを禁止するかという問題についても、米国政府は国連その他において相当有力な発言権を持つておる現状でありますから、この問題はやがて国際的に決定せられることを持つて政府としては処置を講ずるほうが至当ではないか、こう思います。
  14. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、私の御質問お答えになつておらんわけでありますが、自衛隊は原、水爆の問題に対して対処する任務を持つておるものでない、こういうふうにお伺いしたのですが、そうでございますか。
  15. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その点については、所管大臣である私からお答えいたしたいと思います。原、水爆に対処するということは自衛隊考えておりません。
  16. 岡田宗司

    岡田宗司君 原、水爆の問題について只今総理の御答弁ですと、これは日本日米安全保障条約を結んでおるのだから、まあアメリカ考えてくれるだろう、アメリカが守つてくれるだろう、こういうことでありますが、そういたしますれば、総理アメリカが原、水爆の攻撃を日本が受けた場合に防ぐだけの十分の力を持つておる、そういうふうにお考えなつた上で、そういう御答弁になつておるのですか。
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。只今申した通り水爆原爆に対する防禦ということは、列国ともに、未だ英、米においても方式が立つておらないだろう、立つておらないと私は思います。従つて日本だけがどうするかといつても、今日のところは、今日まで原、水爆に対する研究についても、日本政府としては十分でないでありましよう。又問題が世界的の問題でありますから、日本だけで考えるということはむずかしくはないか。英米においても独立して考えることはむずかしいから、国際管理とか何とかいう方針考えておるのでありまして、そうして又イギリスアメリカにおいても、従来の国防力が果して水爆に堪えるか、原爆に堪えるかということは、新たにニユールツク等考えなければならん、こう言つておるのでありますから、日本において、今日これに対して問題の解決或いは対策を立てたり、或いは日本防衛基本政策のうち、水爆原爆に対する用意ありやと言われても、これは政府としては答えることが、むしろ用意ありと申したところが、事実用意がないはずであると私は思います。今日世界的に未定な問題でありますから、日本だけが、これに対して解決案を、対策を持つということは、これは無理な話であると私は思います。
  18. 岡田宗司

    岡田宗司君 首相お話では、日本側としてはこの問題について積極的に発言をしないようにと言われておりましたが、日本のごときは、今までの経緯から見まして最も原、水爆国際管理について強く要求すべき立場にある。今度アメリカに行かれる際に、この問題を使命一つとして加えられておるかどうか、その点をお伺いしたい。
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はアメリカに参るか参らないかというようなことは、まだ未定の問題であります。従つてどういう程度の意見をなにするか、私の今の考え方では、そういう具体問題については話すべきひまがない。アメリカ行つても極く短い期間で成るべく早く一廻り廻つて来る考えでありますから、従つて具体問題としてそういう問題を考えのうちに入れて行くかとおつしやれば、これは行かないと申すほうがはつきりいたしておると思うのであります。
  20. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今お話ですと外遊が未定だとおつしやる。こんな人を馬鹿にした話はないと私は思います。もう明後日お立ちになることがわかつて国会審議日程その他も組まれておる。あなたもそのために今日明日何かレセプシヨンをおやりになる。それで未定とは言えない。これは国民を馬鹿にし、議会を愚弄するものではないですか。
  21. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 未定は未定として申上げます。国会会期中はきまらないのが当然であり、レセプシヨンはいたしますが、これはその意味においてのレセプシヨンではない。年々やつております。春にも秋にも年々やつております。
  22. 岡田宗司

    岡田宗司君 官房長官はつきりと、首相外遊することを申述べておる、これは一体どういうことですか。
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は述べておりません。
  24. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は述べておりませんとおつしやられるが、官房長官発表されておることは、これは内閣発表なんです。あなたが外遊されるということを未定であるなどということは、国民を偽わるも甚だしいものです。そういう国民侮辱し、国会侮辱することはお取消し願わなければならん。
  25. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は自分の信念を以てお話をいたしておるものであります。未定は未定であります。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 未定の信念とはどういうことですか。
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 信念とは、国会開会中にきめることができないという信念であります。
  28. 岡田宗司

    岡田宗司君 すでにおきめになつておるから準備をしておるので、国会開会中にこの問題がきまらないのだというなら、なぜ四日に行き、そうして向うさんと打合せまでしてスケジユールまでお組みになつておるのですか。
  29. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは予定であります。
  30. 岡田宗司

    岡田宗司君 予定を立てるということは、すでにきまつておるから予定を立てるのでしよう。
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 予定予定であります。
  32. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカ案内状を出したのじやないですか。
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 案内状は出しておりません。
  34. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういうような、何といいますか、国会議員侮辱した御答弁をなさるとは以てのほかです。
  35. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 侮辱する考えはありません。
  36. 岡田宗司

    岡田宗司君 侮辱じやないですか。(「大変な侮辱ですよ、委員長注意しなさい」と呼ぶ者あり)
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 侮辱ではありません。
  38. 岡田宗司

    岡田宗司君 何ら誠意がないじやないですか。
  39. 山下義信

    山下義信君 今外遊のことについて岡田君が質問いたしました。総理は、これは未定だとおつしやつたのです。併しもう予定は周知のことでありまして、公式にも非公式にもしばしば国会議運等を通じて政府予定を示されておるのであります。従いまして未定ということは、総理のお言葉遣いが少しどうかと思いますので、外遊予定のあることだけはお認めになりましたほうがいいのじやないかと思いますが、如何でございますか。
  40. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それでは予定であります。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理は過日の本会議における中田議員質問に対しまして、外遊はするのだが、その目的、使命、そういうことについては諸外国に対する影響があるから言えないのだ、まだ発表の時期ではない、こういう御答弁であつて、その行くことについては、予定というよりも、殆んど行くことを前提として総理は御答弁になつておるのです。先ほどの岡田委員に対する御答弁は、全く私は国会侮辱したものだ。この日本の運命に関するような、この二法案審議が不十分であつて、それが中途半端で打切られるというような結果になつておる一番大きな原因は、総理外遊を四月にするということから日程が詰つて困難になつている。このことは自由党の諸君さえ非常に困つておる。そういうところからこの審議が遅れ、中途半端になつて来ておるのです。その外遊の問題については、審議に大きな影響を与え、これを未定だということは全く愚弄するものだと思うのです。私は御質問したいのですが、それでは総理国会が済んで、仮に三日に済んだ場合、四日に、これまで総理が行かれるということになつておりましたから、四日には総理は行かれるのか行かれないのか。もう四日といつても、すぐ目の前に迫つているのですから、その点についてお伺いしたい。
  42. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 予定はいたしておりますが、未定であります。四日に立つとはつきり申すことはできません。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 この問題は水掛論ですから、これだけにいたします。  次にお伺いいたしますのは、過日の本委員会におきまして、私が自衛隊が漸増されて行くならば、アメリカ軍がそれに見合うべく徹退するのか、又これに対する徹退交渉は始めるのかという御質問をいたしました。これに対して木村保安庁長官は、そのつもりである。そうして本年は増強されるが、それが訓練されて力になる来年の今頃においてアメリカ軍撤退交渉を開始する、こういうお話であり、大体岡崎外相もそういうふうに言われたのでありますが、総理は、アメリカ軍自衛隊の漸増と見合う撤退については、そういうような方法で交渉をせられるつもりであるか、又アメリカ軍日本からの撤退について、今度アメリカにおいて交渉をせられるつもりであるか、その点をお伺いしたい。
  44. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは主管大臣説明を以て政府説明と御承知を願いたいと思います。私は仮に行くとしたところが、この問題について交渉する考えはありません。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、原、水爆の問題についてもアメリカ交渉をしない。又アメリカ軍撤退交渉についても、仮に行くとしてもこれをしない、こういうふうに承わつてよろしうございますね。
  46. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今のところは何にもそういう予定は持つておりません。
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いいたしますが、インドシナの形勢ですね。これは東亜形勢に重大な影響を及ぼすものであります。若しジユネーヴにおける休戦が成立いたしますればこれはよろしうございますが、若し休戦が成立しないということになりますると、アメリカ側はすでにこれに対しまして大きな軍事同盟を以て対抗しようという、そういう計画を持つておるようであります。これはすでにダレス長官がしばしば言明しておるところでありますが、この場合東亜における日本位置工業力或いはその他から見まして、アメリカといたしましても日本を入れるということは、これはもうすでにアメリカ軍事評論家も又アメリカの軍人も又政治家も盛んに口にしておるところでありますが、日本といたしましては、このアメリカ軍事同盟或いは防衛同盟に入ることは、誠に日本を危険な地位に置くものであります。この点についてしばしば御質問を受けて御答弁をされておりますが、念のためにこのSEATOなり或いは太平洋防衛同盟なりに日本は入らないつもりであるか。この点を明らかにして頂きたいと思うのです。
  48. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この点につきましては、政府として未だはつきりした交渉を受けておりません。又ダレス氏の説明といいますか、答弁に対しても、アメリカ自身においても相当問題になつているようであります。又その他国際的に非常に微妙な問題になつているようでありますから、私はお答えをいたすことができかねますが、私個人の意見としては、日本は入らないほうがいい。入るまでは力がない、入ることによつて国民に危惧の念といいますか、杞憂の念を起させるということはよくないと思います。私としてはこういう問題は取上げるべきではないと思います。併しいずれは将来の問題で、公式の交渉があつた場合に考える。現在としては私は希望いたしません。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に自衛隊増強する方針がすでに立つておるようであります。本年はその第一年度計画であるようでありますが、まだその方式が明らかにされておりません。併しこれは政府としても、すでに大体を立てておつて、その第一年度の頭を出して来たものと私どもは解釈しております。いずれ自衛隊は拡張されますが、この自衛隊の拡張はアメリカの要求するようにこの地上部隊を主とするものか、或いはバランスのとれた三軍という方式によるかどうか、これをお伺いいたします。
  50. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その点は私からお答えいたします。しばしば申上げました通り日本自衛隊増強をどこに中心を置くかという問題であります。先ず我々考えらるべきことは、日本周囲海に包まれておるわけであります。六千哩になんなんとする海岸線を持つております。これらの海上の警備について相当の力を注ぐ必要ありと考えております。従いまして海上自衛隊増強は図つて行かなければならんと考えております。又今仰せになりました三軍方式と申しましようか、航空自衛隊のほうも日本の環境からいつて増強しなくちやならんのであります。併しながらこれは日本財政力に睨み合せてやらなければなりませんので、急速にこの増強ということは到底私は実現が不可能であろうと考えております。而して差当りの問題といたしましては、陸上自衛隊は御承知通り、本年二十九年度におきましても二方を増員いたしたのであります。これは三十年度においても相当数増加をして行きたい、こう考えております。併しながらこれも又日本財政力の制約を受けるのでありますが、必ずしもどれだけを実現できるかということにつきましては、只今不明であります。
  51. 岡田宗司

    岡田宗司君 首相もさようにお考えでございますか。
  52. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣説明を以て私のお答えといたしたいと思います。
  53. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いしますが、いずれ自衛隊増強されて参りますれば、保安庁総理府の一部に置いておくことは、これは事実上不可能になつて来る。又この問題について、機構が変更されるということも予想されるのですが、保安庁独立国防省というものに持つて行くお考えかどうか。保安庁独立国防省に近くするお考えがあるかどうか。
  54. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今のところそういう考え政府としては持つておりません。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に国防会議の問題について一点お伺いいたします。それは国防会議内閣諮問機関である、こういうふうに規定されておる。そうして事務局等も、昨日の答弁によりますというと、甚だあいまいであり、その権限も小さいしいたしまして、どうも国防会議というふうなものが打ち出されておるにかかわらず、何か非常にあいまいな、小さい機関のように思われるのですが、これはアメリカ国家安全保障会議、或いはイギリスフランス等国防会議のような、国防に関する最高機関である、どういうふうなものであるか、或いは内閣閣議にかける国防関係の議案その他をきめるための諮問的な機関であるか、その最高機関であるかどうかという点について、はつきりお示しを願いたい。
  56. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えをします。
  57. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この国防会議につきましては、昨日緒方総理から詳細に説明された通りであります。これは政府国防に関しての全責任を負うべきことは当然であります。その意味におきまして、この諮問機関政府内における国防方針を立てるについて一つの大きな役割を持つことは当然であるのであります。併しながらこの国防会議においてきまつたことは、十分政府としてはこれを取入れて実際の面に働きをさせるということの方向に持つて行きたいと、こう考えておるのであります。
  58. 岡田宗司

    岡田宗司君 最後に一つ、これは首相からとくとお伺いしたいのですが、自衛隊増強されて参りますと、今の募集制度ではできなくなる時代が来ると思う。そこで徴兵制度の問題が起つて参りますわけですが、この限界もそう遠くはない。そこで率直にお伺いいたしますが、国民、特に若い人々が非常に心配しておりますが、そういう場合には徴兵制度を布くおつもりかどうか。この点は首相からはつきりした御言明を願いたい。
  59. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今のところは徴兵制度を布く考えは持つておりません。
  60. 岡田宗司

    岡田宗司君 私の質問はこれで終ります。
  61. 山下義信

    山下義信君 私は防衛法案に関連しまして、しばしば首相答弁を煩わす機会を得ましたので、多くお尋ねする問題は残つていないのでございますが、非常に固い質問が今岡田委員からございましたので、私は余り固苦しいことをお尋ねしないで、できるだけ何と申しますか、安易なお気持でゆつくりと御遠慮ない御答弁を実は得たいと思うのでございます。それは私ども首相外遊につきましては、実はこれは思いとまつて頂ければいいのじやないかという気持は率直に申してあるのでございますが、それは大変長い道中のことでございますから、お障りがあつてはいかんと思いまして、思いとまつたらと思つたのですが、併しお出掛けになります以上は、どうか途中つつがなく使命を果して頂きたいと思う。エチケツトでございます。何も媚態を呈するのではありません。私は何といつても長い御旅行でありますから、恐らく総理としては留守中のことが随分お気にかかられることだと思うのです。でありますから留守中の政局がどうなるか、あとがうまくやつて行つてくれるか、木村長官もうまくやつてくれるかといろいろご心配だろうと私は思うのです。(笑声)私はこの際政局がどうなるかということは国民最大関心事です。でありまするから、この政局につきまして首相の本当のお気持といいますか、御希望といいますか、それを私は国民と共に聞きたいと思う。先だつて二十八日でありましたか、鳩山さんのほうへおいでになりまして長い間のお話がありましたようで、何やらぐちやぐちやもちやもちや面白そうなお話がありましたようです。これは多分日本の政局今後のことについて大変な深いお話もあつたろうと思うのです。面白そうなお話でございましたので、お差支えない限りは、一つどういう面白そうなお話をなさいましたか、これは一つ承わらして頂きたいと思うのでございますが、如何でございましようか。
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 面白そうなお話をいたしましたことは事実であります。併しこれは御承知を願いたいことは、鳩山君と私は長年の友人で、最近多少何と申しましようか、お互い面白くないことがあつたかも知れませんが、併し元来長年の友人であります。であるにもかかわらず、私も余り鳩山君と会う機会もなかつた。又鳩山君が箱根に行く途中私の所に休息かたがた寄られたときに、そのときにも「いずれ又君の所に行つて座談でもしよう」と言つて話合つたのであります。それで座談に終つて政局の話は少しもいたしておりません。何となればこれは鳩山君の健康という問題もありますし、それから又未だ政界の安定等について私の見込、或いは見通し等については、全然ついておりませんから、特にこの点あの点といつて問題にして協議するほどのこともなしいたしますから、全然座談に終つて、友人の間のよもやもの話をいたした、これが実情であります。  それから政界の将来については私は安定政権……、保守が合同して強力なる政権を作つて社会党の諸君と一戦いたしたいと考えております。(笑声)政治は無理はしないがいいと思うのであります。無理をいたすということは、将来のためによくないのであります。むしろ私は成行きに任すという主義であります。
  63. 山下義信

    山下義信君 我々いろいろ反対党の立場からいつて攻撃しますが、総理は何といつてもうまいところがあります。私はおだてるのじやりませんが、(笑声)時も時、折りも折り演出は確かに一流です。うまいときに鳩山さんをお尋ねになつた。なかなか演出には私は敬服しますが、総理大臣、あれは何ですか、玩具をやるとおつしやつたのですが、非常に興味深い。私は玩具がどのようなものか聞かして頂きたい。
  64. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 玩具は玩具であります。ただデパートで売つている玩具じやないのであります。もつとはつきり申せば、鳩山君の病気もだんだんよくなつたから、何か鳩山君がみずから立つて働けるような問題を持たしめたならば、鳩山君の健康のためによくないか、こう考えたのであります。玩具ということはどこから伝つたか知りませんが、そういう意味であります。
  65. 山下義信

    山下義信君 大変示唆に富んだ趣き深い御答弁を得まして感謝しますが、首相外遊についていろいろ伺いたいと思うのでありますが、多くは申上げませんが、たくさんの用件をお持ちになつてお出でになると思うのでありますが、これは想像でありますが、併し何もかもができることではないので、いろいろ心を遣うことと思いますが、多くの問題の中に、これだけは一つ何とか土産に持つて帰りたいというような問題があるとしますならば、大よそどういうふうなお土産を期待しておつていのであろうかと思うのでありますが、一つ承わらして頂きたいと思います。
  66. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の外遊予定であります。従つてお土産をいろいろ予定なさると御失望せられますから、これは余り期待せられないように希望いたします。私は極く軽い気持で一周りできれば見て行きたいと思います。又行くがいいと思いますが、これは余り、御期待に副うだけのことは、若し仮に行つたとしたところができないと思いますから、御期待なさらないように願います。
  67. 山下義信

    山下義信君 相当多額な旅費が要ることは申すまでもないので、その旅費はどういうふうに工面なさるかということは、これは固いこともありますし、やわいなこともありますが、旅費をたくさんお使いになりましてどうか損をしないように、どうか一つ十分土産を持つてつて頂きたいと思うのでありますが、殊に私は先ほど岡田君が切望いたしましたように、日本防衛増強、軍備促進といいますか、そういう話がどのように、どこから出ましても、どうぞ頑張つて頂きたいと思いますが、これだけは一つお約束が頂けましようか。
  68. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今お話いたした通り増強とか何とかいう堅い話が出るか出ないか、出すつもりがあるかどうか、これは出すつもりはないのであります。従つて仮に行つたところが、お話のような防衛問題というような話は、成るべく滞在は短くするつもりでありますから、そう御期待になつてもこれは御期待外れになりますから、御期待下さらんようにお願い申上げます。
  69. 山下義信

    山下義信君 なかなか味のある御答弁を頂きました。滞在日数が短いのでそういう話をするひまがないかもわからんというようなお言葉でありまして、成るべくそういう話が出ましたら逃げるように、逃げるように早くお帰りになることを私は切望いたしておきます。  中共にお寄りになるお気持はございませんか、お帰りがけに……。
  70. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 成るべく行つたところが早く帰りたいと思いますから、中共には参る考えは全然ございません。
  71. 山下義信

    山下義信君 中共の関係が非常に重大なことは言うまでもないことでございますが、イギリス総理が曽つて長い間お馴じみのところでありまして、ここには非常に関心を持つてお寄りになるということでありますが、イギリスヘおいでになりましたら、当然中共の話が出ると思いますが、十分お話合いをなさつてお帰りになることを願いたいと思うのでありますが、そういうお心持がございましようか。
  72. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この間も申した通り、余りむずかしいいろいろな私の予定について議論をいたしますというと、国際関係等に余りいい関係もできないかも知れませんから、外遊についてのお話はこの辺で以てお打切り願いたいと思います。
  73. 山下義信

    山下義信君 承知いたしました。それではお言葉に従うことにいたします。それではお帰りになりまして……、お帰りになりましてからのことはよろしうございましよう。(笑声)ですから、私は率直に伺いますと、総理が現職で行くか、総理大臣をやめて行くか、いろいろ世間で申しておりますが、現職でおいでになつて、而も長い間、長期の旅行、見聞を広められ、重要な問題を各国と話をされまして、そうして帰えられて、国民の一部では、私はそう考えんかもわかりませんけれども、反対党ですから……、併し国民の一部では、折角総理が国際の諸情勢、新情勢を十分検討して帰つて、話をして来て、途端に総理大臣をやめたのでは惜しいなという気持が、率直にですね、その新知識を持つて総理大臣をやつたらよさそうなものだというような話がありますが、どうですか。お帰りになりましたらお休みになりますか。又おやりになりますか。これは遠慮のないところお心持を率直に私は聞きたいと思う。
  74. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 来年のことを言うと鬼も笑うというので、(笑声)まだ未定の、予定に過ぎないものについて、帰つたらどうというようなお話は、私においてお答えがしかねますが、もう一つ、私が、やめたくなくても棚上げされるという場合があるかも知れません。(笑声)余り将来のことについてお伺い下すつても、私においてお答えはできないのであります。
  75. 山下義信

    山下義信君 私が最後に伺いたいと思いますのは、海外派兵の問題です。これは防衛法案に関して私は最大の中心問題と思う。あと総理への御質問が済みましたら、実は重ねてその点について委員から発言があるはずでございますが、総理は、海外派兵は断じてしませんと、こうしばしばおつしやる。これはただ信念的におつしやつたのでは、国民が安心ができない。いつも総理は、今の憲法が許しておりません、従つて海外派兵はいたしませんと、こうおつしやるのでありますが、只今の憲法の上に海外派兵のできないという法律的根拠といいますか、憲法の根拠といいますか、そういう点に基いてはつきりお示しを願わなければ、国民は安心できない。海外派兵ができないのか。併しながらできるのであるがしないのか。法制局長官は、憲法の解釈上、公務員の派遣と、こういう名前を使えばできないことはないのだと言う。できるのをしないというのか、憲法がこれを許さないからできないというのかということを総理のお口から、私は国民の安心するように御答弁を得たいと思う。
  76. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は、憲法の上からいつてみて、或いは法制の上からいつてみて、できるできないはとにかくといたして、国民が希望せざることをすべきではないと思うのであります。輿論政治の今日において、国民の輿望に副うようにいたすのが政府として努むべきことであつて、今日国民が海外派兵を望むかというと、多くは望まないであろうと思います。故に、海外派兵の問題は政府としては取上げたくない、又取上げる考え只今のところないのであります。将来は将来、国民が海外派遣を希望するという場合は別でありますけれども、今日は国民は海外派兵を希望せず、又その力もなし、故に私はしないと申すのであります。
  77. 山下義信

    山下義信君 国民の希望如何によるということはよくわかるのでありますが、私の伺つているのは、憲法上許すか許さないかという点でありますので、木村長官若しくは法制局長官から明快なる御答弁を得たいと思う。
  78. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 前回もお答えいたしました通りに、何分憲法第九条の第二項においては、交戦権を否定されておるわけでありますから、普通の常識で言われておる海外派兵というもうは、憲法の建前からいつて不可能であろうと考えておるわけであります。
  79. 山下義信

    山下義信君 いま一つ伺いたいと思いますのは、東南アジアと日本との関係は非常に重大でありますことは、今更申すまでもございません。そうして、この東南アジアとの関係を如何にするかということの中に、賠償問題をどういう方針で進めるかということは至大な影響があるのではないかと思います。従いまして、東南アジア諸国に対しまする我が方の賠償に関する基本的方針、態度というものは、どういう態度を持つておられるかということを、この際承わつておきたいと思います。
  80. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 関係国としては成るべく多額の賠償をという考えはありましよう。併しながら、日本としては、国力、日本の財政経済の全局から考えなければならんのでありますから、どれだけの損害があるから、果してその損害に対してどれだけ日本が賠償する力があるか、日本の国力と見合つての結果どう落着くかということになりますが、只今申した通り、損害をどれだけ与えたか、その損害に基いて日本がこれに対して賠償する力がどれだけあるかという彼我の関係において決定するより仕方がないと考えております。
  81. 山下義信

    山下義信君 この賠償につきまして、アメリカ側お話合いをなさるような御予定はございませんか。
  82. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) このたびの予定外遊によりましてですか、何も考えておりません。
  83. 山下義信

    山下義信君 お疲れのようでございますから、これでよしますが、私は最後に総理に、これはお願い申したいと申してよろしうございますか、例の中共の……、くどいようですが、たびたび総理も予算委員会でも申したのですが、中共の赤十字社、紅十字会と言つておりますが、向うの赤十字社長李徳全女史、これは婦人でございます、念のために申しておきますが……。(笑声)御承知のように、引揚の問題で日本の赤十字社長が日本に来て頂こうという約束をした。今島津社長はオスローにおります。そうして、杏徳全女史とお顔を合せております。杏徳全女史は、在留邦人手数百名を帰すことに尽力しようということを言つておられます。その李徳全女史に、旅券の交付、入国の許可につきまして、外務省が頑強にこれを拒んでおります。そこに岡崎さんも見えておりますが、なかなか承知いたしません。国会でもすでにこれは、その目的だけに限つて一つ日本に来ることをこれは政府承知してもらいたいという決議を両院がいたしました。参議院も昨日決議をいたしました。これは是非この杏徳全女史の来朝の実現について政府としても御承認を願いたいと存ずるのでありますが、私はこれは人道問題としても、中共との関係が云々とか、それが思想的に云々とかいうのでなくして、人道問題としてお取扱を願いたいと思うのでありますが、総理の御所見を承わりたいと思います。
  84. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見は伺つておきますが、中共に対するいろいろな問題がありますので、単にその問題だけを考えられない節もあるのではないかと思います。併し私はその問題については詳しいことは存じませんから、外務大臣からお答えいたします。
  85. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この問題は、適切な措置を講ずるように今後十分考慮をいたします。
  86. 山下義信

    山下義信君 大変よい御返事を頂きかけたのでありますが、岡崎外務大臣、適切な処置とはどういう御処置でございましようか。いま一歩一つお示しを頂きたいと思います。
  87. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今総理の申しました通り、中共との間にいろいろの問題があります。単にこれだけの問題ではないのです。従いまして、それらを勘案いたしまして適切な措置を講ずると、こういうわけでございます。
  88. 山下義信

    山下義信君 要領を得ませんけれども、これで私の質疑は終了いたしました。
  89. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 時間も余りないようですから、極く簡単に一つだけお聞きしておきたいと思う。大体岡田君の御質問に対してお答えなつたので、ほぼ首相のお考えがわかつたのでありますが、問題は吉田総理外遊をされようとされまいと仏印の問題の帰趨というものは、非常に多く関心を持たざるを得ない。従来自衛隊は、駐留軍の漸減に応じて駐留軍のだんだん減つて行くのを補完的に我が国の防衛力を自衛隊によつて増強して行こう、こういう考え方がしばしば述べられたんでありますが、この仏印問題が如何ようになるにいたしましても、アメリカとしては一つの地域的安全集団防衛体制を作り上げたいという希望は私はあると思います。それがしばしばダレスによつてそういう考え方が述べられております。すでに太平洋においては、三国による一つの集団安全保障体制ができている。そうすると、日本も今後そういう地域的な集団安全保障体制に入るということが一つの国際的な動きだと認めざるを得ないのですが、そういう点について、先ほど岡田君の質問に対して、総理は大体安全保障条約に基いた日米共同防衛の体制で行きたいというふうなお考えが強いようにも思うのであります。これはいろいろな自衛隊の性格、先ほど山下君の言われました海外派兵等の関連、実際は関連して参る問題でございますが、総理大臣としてその点をもう一度御所信を明らかにして頂きたい。これが第一点でございます。  それから第二点は、若しも岡田君にお答えなつたような、日米共同防衛体制として行かれるとすれば、今後の日本が他の東亜諸国とは防衛体制に、防衛に関連してはどういうふうな考え方でお進みになるのかという基本的な外交の方針、そういうものを第二点として明らかにして頂きたい。これだけを御答弁願います。
  90. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。これはしばしば申すのでありますが、太平洋同盟、何とか同盟というような話があるがというお尋ねがありますが、私は日本としては、未だ国力の十分回復せざる日本としては、余り多くの国際義務を負うということはよくないことであると思うのであります。故に日本防衛は、安全保障条約の範囲にとどめたいと思います。それ以上のことを考えるべき又時期でないと考えますから、しばしばお尋ねのある何とか同盟何とかいうことについては、成るべく避けたいと思います。又現に朝鮮のごときは、日本を入れない同盟を作りつつあるというようなわけで、余り突進んでいたしますと国際的誤解を生ずる虞れもありますから、政府としては徐ろに国力を養うことに重点を置いて、余り華々しい外交をいたしたくないものであると、こう考えております。又米国政府あたりからしてお話のような示唆若しくは交渉は何ら受けておりません。又東洋のいずれの国からも一緒に同盟してやろうじやないかという、共同防衛に当ろうではないかというような話合い、或いは示唆は、公式にも非公式にもそういう交渉は受けておりません。
  91. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 それだけで結構です。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理はまだ外遊の目的についてはつきりお話がございませんが、各委員たびたび伺つておりますがお漏らしになりませんが、もう出発の時期も近いようでありますから、その目的について、総理のみずからのことを国民に対してここでお話する時期になつているのじやないかと思うのですが、この点についてはお話をここで承わることができませんか、どうか。
  93. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。私はしばしば申しました通りでありますが、これは予定であります。従つて行くか行かないかわからんとも言えるわけであります。議会において重要法案等が通つて、そうしてなお時間の余裕がある場合には、又私も決心をいたした場合においては、議会において私の所信を申述べたいと考えておりますが、これは議会の末期で時間もないことでありますから、時間の余裕があれば、はつきり述べたいと考えております。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今朝の新聞を見ますと、これは毎日新聞ですが、福永官房長官の談といたしまして、「会期が三日まで延長されても首相外遊まで四日一日あるので内閣の最小限の人事がないとはいい切れない。総理外遊国会が三日までかかつても重要法案が成立すれば予定通り四日に出発する。なお総理外遊目的については、三日の両院本会議説明することとなろうが官房長官としても何らかの形で談話を発表したい。」、こういう官房長官談を発表されておるのですが、これはこの通りで間違いないのでございますか。
  95. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 官房長官の談話がどういうふうに発表せられたか知りませんが、私の考え只今申した通りであります。国会の末期において若し時間が、私の外遊の決意がきまつて、なお議会において説明する、お話をする時間があれば喜んでお話をしたいと思つておりますが、只今のところまだ決定をいたしません。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併しもうはつきりしているんじやないのですか。やはりすぐあとで毎日新聞はこういうふうに報道しているんですが、総理は、今日ですよ、本日「在京外交官および駐留軍高官約二百名を芝白金の公邸に招いて外遊あいさつのレセプシヨンを行う。なお二日には一萬田日銀総裁、石川経団連会長、杉大阪商工会議所会頭、本田本社社長」これは毎日新聞社長です。「ら財界、言論界代表を永田町の首相官邸に招いて同様のあいさつを行う。」、これは事実でございましようか。
  97. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先ほど説明いたしました通り、毎年議会の終り、或いは春秋二季には外交団及び財界の有力者を呼んで政府の所信を発表する場合もあれば、又議会中の慰労というようなこともあるので、春秋二季に園遊会のごときものを催したり、又招待をいたしております。外遊についてのためではありません。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は総理外遊目的をもつと早く発表して、そうしてこれに対して国民意見を十分入れてそうして行かれるのが、まあ百万ドルと言われております旅費は三億六千万円、それだけの国家資金を使つて行かれるのですから、そういうことをされるほうが非常に国のためになると思うのです。外遊に対する目的がはつきりすれば、そういうことではいいとか或いはそういうことでは困るとか、その要望やら批判やら、非難ではない批判です。建設的な批判も起つて来て、そうしてそういう意見を、反対、賛成のいろいろな問題についての意見を携えて外国へ行かれたほうが三億六千万円というのが非常に生きて来るのではないかと思うのですが、なぜ総理は……大体これを見ますと四日に出発されるのに、未だその目的をはつきりされないので、その点どうしても私は納得行かないのですが、重ねてその点を伺いたい。
  99. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。あなたの納得行く行かんにかかわらず、私としては未だ決意もいたしておらず、予定のつかない問題について、こういうような予定で行くということは私は申述べるべきでないと考えるのみならず、総理大臣も役人であります。役人の出張ごとにこの目的、ああいう目的といつて一々説明しなくてはならんということは私はないと思うのであります。果して、国民或いは議会からこういうお土産を持つて来いと言われても、持つて来られるか持つて来られないかわからないわけであります。又行く先々においていろいろな誤解を生ずるというようなことがあつても困りますから、決定をしました場合、その目的について議会で説明をいたす機会があれば、喜んでこういう目的で似て参るということも発表いたしたいと思います。これは只今のところ予定でありますからして、余り多くは答えたくはないのであります。
  100. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 役人であるから一々その海外に出張する目的が何であるかということを言うわけに行かんと言いますけれども、役人であればなお更、出張目的というものはちやんと起案書に書いて、そうしてはつきりこれの承認を求めて行かなきやならんわけです。それのみならず、ただの役人と違うので、一国の総理外遊するのでありますから、これに対してはやはりその目的というものをはつきりさして、そうして国民の納得の上に行くのが至当だと思うのです。どうして未だに、もう四日に迫つているのに、まだ決意していないということは、どうしても私は納得行かないのですが、じや四日に出発されないのですか。くどいようですが、外遊に関しては、その点もう一点だけ伺つておきたいのであります。
  101. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申した通り予定であります。(「ひどいもんだね」と呼ぶ者あり)
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国税を使つて行くのですが、(「ひど過ぎるよ実際」と呼ぶ者あり)血税ですよ、これは。(「馬鹿にしているよ」と呼ぶ者あり)吉田内閣は、これまで汚職についていろいろ国民の疑惑が深められている。従つてこの血税を外遊に使うというなら、これが死に金にならないように、本当の国のためになるように各方面の意見を十分徴して行くのが本当です。それには外遊目的をはつきり早く発表すべきです。ところが四日に出発されるとすれば、三日に両院に若し総理外遊の目的を発表したとき、これはそれがいいとか悪いとか又いろんな積極的にアドヴアイスする、こういうことであつても、その日がない。まるで国会を逃げるようにして外国へ行くような形になるのです。非常に私はこの点について不明朗なものを感ずるわけです。外遊目的について、何か国民に話することができないような内容があるのではないかという疑惑をますます深めるわけです。この点についてはもう押し問答になりますから、次にお伺いいたしたいのですが、この防衛法案審議の過程において、一番問題になりましたのは国防会議の問題であつたわけです。これは昨日緒方総理から御説明ございましたが、本日閣議で正式にこれを決定されるという御答弁を承わつたのですが、本日閣議で決定されるわけでございますか。
  103. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 昨日緒方総理からの説明にありましたあの案につきましては、閣議は決定いたしました。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこで昨日緒方総理がお示しになつ国防会議の構成に関する点が閣議決定されたと言われましたので、その案に基いて御質問申上げたいと思うのですが、この国防会議は非常に重要な会議であることは申すまでもございません。ここに諮問される事項は国防の基本方針防衛計画の大綱、それから防衛計画に関連する産業等の調整計画の大綱、防衛出動の可否、こういう非常に重要な事項が諮問されるわけです。従つてこういう重要な事項を諮問して、最後にこれを決定するものは、即ち国防の基本方針とか防衛計画防衛出動の可否、こういうものを最後にきめるのは内閣であるという御説明であつたのですが、その一番の最高の地位におられる総理がこの国防会議をどういうふうに運営するかということは非常に重要な問題であると思います。従つて総理にお伺いしたいのは、総理国防会議をどういうふうに運営されるお気持でおられるか、その点お伺いしたいと思います。
  105. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは関係委員といいますか、議員の意見を聞いて慎重に国防に対する対策研究する考えでおります。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは国防会議に限らないことでありまして、何事をやるにもみんなの意見、衆智を集めてものごとを決定するのは当り前のことであつて、何も国防会議のみに関したことではない。国防会議の重要なことは、これは国防会議の性格、目的からはつきりして来るのであつて、そんな頼りないことでこの重要な国防会議の一体議長が勧まりますか。
  107. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私から申上げたいのです。今木村委員は如何に運営するかという御質問であつたのであります。運営は各議員の十分なる討議を経てこれを決定する、これで私は尽きておると考えております。運営の方法については、そのときそのときによつていろいろな話合いの模様もありましよう。方式もありましよう。それは具体的にその場合においてきめられるべき問題であつて、あらかじめ運営の方式というものはきめるべきものでないと私はこう考えております。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは運営が非常に重要なんであつて、運営に当つては、これまで非常に議論なつ国防会議の性格は、例えば軍部独裁にならないようにするためとか、それが非常に大きなウエイトを持つておると思うのです、そういうところが。従つて国会の意思をよく反映するとか、そういうような点が重要なのであつて、その運営についての心構えというものを伺つたのであつて、そういう点を御質問したのです。それでこれは一番国防会議運営の最高責任者である総理からお答えができなければ、木村長官から代つて承わつていいのですが、私は総理の心構えを木村長官から伺うのはおかしいですから、やはり総理から聞かなければならん、そういう意味なのです。これを具体的に申上げますれば、国防会議で一番これまで問題になつているのは、軍部独裁になるのをどうして防ぐか、それからもう一つは、軍部独裁になることを防ぐために、この国防会議においては各閣僚、それから民間人も入れるということになつたのですが、その場合もう一つ問題になるのは、この総理とか、或いは長官が非常に権限が大きくて、それが戦争を挑発する危険もあるのではないかという疑問があるのです。そういう点については、昨日緒方総理答弁を聞きますと、この構成には考慮されていないのですね。
  109. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その点については私からお答えいたします。よく戦争挑発々々々々という言葉をお使いになるようであります。これはこの自衛隊の根本の性格を十分検討すれば、そういう言葉は私は出ないはずであると思う。申すまでもなく自衛隊の性格は、しばしば繰返して申しましたように、外部からの不当なる直接侵略に対して対処する部隊であります。こういう行動があつて初めて自衛隊が動くのであります。ここにこの自衛隊の性格、任務があるわけであります。戦争挑発ということは思いもよらんのであります。そうしてこの運営を如何にするかということは、防衛庁設置法、自衛隊法によつて明らかであるがごとく、制服部隊の我がままを許しません。これは協調を保つてつて行くのであります。幕僚長も、統合幕僚長もすべて長官の補佐をするのであります。併し内部部局において又参事官が百長官を補佐し、制服部隊と内部部局の参事官がそれぞれ長官を補佐し、この運営のよろしきを得れば、決していわゆる昔のような軍部独裁というものは想像もできんわけであります。勿論この国防会議におきましても制服部隊はこれに関与させておりません。幕僚長、統合幕僚長は必要ある場合にはこれを出席さしてその意見を求めることができる。構成員ではないのであります。内閣が全責任を負つてこの国防の大方針をきめて行こうというのでありまするから、いわゆる昔の軍事独裁というようなことは、片鱗だも私はないと。こう考えます。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その軍事独裁の面については、軍事独裁にならないように国防会議を設け、その構成がなされているということは承わつたのです。も一つ危険は、その国防会議の議長の総理首相とですね、それから長官との権限が非常に大きいのですよ。防衛庁長官は、部隊を新たに編成することもできる。又駐屯地を適当に変えることもできる。従つて、駐屯地移動であるとか、警戒警備のために行動するとかというようなことができるわけです。その場合、そういうやり方如何によつては外国に大きな刺激を与える可能性があるわけであつて、そういう方面の調整をどうするかということなんで、それともう一つは、国会の意思をどういうふうにここに、国防会議に反映するかということが非常に一つ重要な課題だと思うのです。文民優先ということで、軍事独裁をそんなことで防げるとは思えないのですけれども、一番の重要なことは、国会の意思をどう反映するかということが非常に重要だと思う。この構成とか、この内容ではそれが十分に果されていないと思うのです。そこで私はこの運用の最高責任者である総理大臣に、この国防会議を運用する場合に、国会の意思をどういうふうに反映させるおつもりであるか、この点を承わりたいのです。総理大臣に、この最高責任者である総理大臣に、国会の意思を国防会議にどういうふうに反映されるか。この機構ではそういうふうになつていないですよ。この点総理大臣にお伺いいたします。
  111. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 保安庁長官からお答えいたします。
  112. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 申すまでもなく、すべての国家の機関には国民から選ばれたる国会の御意思が反映するのであります。この国防会議できめられまする最高方針といえども、これは予算を伴うわけであります。予算を伴わない国防方針というものはないわけであります。方針はきまりまするが、それを実行する場合においては、勿論この国会審議を待たなくちやならんわけであります。その点に関しまして国会の意思を無視するということは絶対にあり得ないことであります。ただ申上げたいのは、国会において選ばれたる総理大臣によつて組織された政府が全責任を負つて事を処理するという建前がこれが民主政治であろう。従いまして国防方針を先ず時の内閣においてこれを決定するということは当然の義務であります。ただこの部隊を出動させる、いわゆる防衛出動なんかの大きな事柄については、国会承認を得ることを原則として、それを自衛隊法に織込んでいるわけであります。決して国会の意思を無視することはあり得ないわけであります。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこの国防会議の運営に当つては、議会に報告すべき事項とか、或いは議会の審議を経なければいけないという、国会の意思を十分尊重するという、そういう或る程度の義務を国防会議に課す必要があるという私は意見なんであります。そういう点で質問しているのですが、首相の、国防会議最高責任者としての総理の御見解を承わつているのに対して、御答弁がございませんから、その質問はこれだけにいたします。時間がないようですが……。(「まだある」と呼ぶ者あり)
  114. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) もう一問ぐらいどうぞ。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実は私はこの運営について御協力はしますが、併し先ほど時間の割振りについて御報告を伺いまして、実は御報告は了承いたしましたが、私のほうは会派としてこういう運営に態度を保留しているわけです。だから委員長のほうで適当に私が時間を超過したら打切つて頂いて結構です。私のほうはああいう機械的にこの重大法案の最後の総括質問に当つて、こんな簡単な時間で済まされることについては異議がございます。従つて私は質問を続けてやります。
  116. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 多少委員長で操作する時間を持つておりますから、続けて下さい。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこで委員長は、若し僕の質問が長くなれば、適当な時に委員長において打切られても差支えございませんが、私はそういう建前で質問をいたしますから。  更に総理にお伺いしたいことは、日本の国際収支に関連する問題ですが、最近特需に予想されたより非常に減つて来て参りまして、今後の日本の国際収支にとつて重大な問題になつておりまするが、本日の朝日新聞の報道によると、政府は特需確保のために日米交渉アメリカ側に申入れるという記事が出ているのでありますが、特需確保のために、政府は正式にアメリカと折衝するのでありますかどうか、その点伺いたい。
  118. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は承知いたしておりません。主管大臣からして適当な機会にお答えいたさせます。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外務大臣は如何でございますか。
  120. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 特需は常に一進一退でありまして、或る時は少い場合もありますが、只今の見通しでは、必ずしも予想通りになつておりませんから、これは一つは、国内における防衛産業のほうの欠陥もないことはないのです。そこでこちらのほうでも態勢を整えると同時に、アメリカ側にもいろいろ話をいたしますが、これは別に正式の交渉とかいう問題ではありません。できるだけアメリカ側の特需の発注を急いで、又多量にするようにこちら側の準備を話し、先方の注文を促す、こういうことであります。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この前にですね、前の総選挙の時でしたか、アメリカが特需の二年間保証について、国務省声明というものを出されたのですが、外務省としては、この当時吉田内閣の選挙を有利にするために、特需の二年間保証について国務省がこの発表を行なつたのだと言われておりますが、そういうことについて、外務省としては何か確認をとつておるのでありますか。
  122. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 特需に関するアメリカ大使館の発表は、全然選挙などには関係のないことであります。併しながら特需が一年間を通じては予想通り来ましても、或る時期に十分なることがなければ、産業が遊んで待つていなければならないというような事態も起りますから、アメリカ側としては予算もあり、年間を通じては予定通りの発注があるでありましようけれども只今のところ十分なる発注が出ておりませんから、工場を休めないようにその間の調整を図ろうという話でありますから、アメリカ側の発注に関する全体の考え方は何ら従来と変つていないと、こう考えております。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 特需の問題は実際問題としては非常に重大な問題なんです。これはもう御承知通りだと思うのです。昨年度七億八千万ドル、これに対して本年度は五億ドルそこそこではないか、こういうことになると実際問題としては非常に大きな問題になるのです。そこでこの問題は、総理外遊を機会に総理からも直接米国政府に対して考慮を求めるのではないかと言われておるのですが、この特需について、そういうアメリカ側の考慮を求められるのかどうか、この点総理にお伺いいたします。
  124. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今のところ何も考えておりません。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この外資の導入について次に伺いたいのですが、総理はもう何年越しになりますか、外資導入外資導入ということを随分言われております。そうして国会における総理の施政方針演説におきましても、曽つては、日本の経済の安定復興には外資がなければ、アメリカの援助がなければこれは促進できない。外資導入というものを非常に重要視されておつたわけです。ところが外資導入々々々々といつても、ちつとも当初予想されたような具体的な進展はしていない。そこで非常な期待外れになつておる。今度は総理外遊するというときも又外資の問題が起つて来る。大体講和条約が発効して日本の経済が困らん、それは外資が入つて来るから、アメリカの援助があるからであろう、こういうふうに期待されておつたのが、入つて来ない。又MSA協定においても、経済援助があるあるということをあれほど言つておつたのが、経済援助がないわけです。イギリスやフランスに与えられているように経済援助はないわけです。そういう下で再軍備をして行つたならば、底の浅い非常に今危機状態にある日本の経済がどうなるかということは見やすい道理なのです。総理アメリカに基地を貸したり、アメリカから要請をされて再軍備をする場合に、その交換条件としてアメリカの経済力というものを予定されていたと思うのです。それなくして日本側だけの負担において再軍備をすれば、今後の日本の経済は非常に困難な事態に立至ることは明らかです。そこで外資導入の問題はどうなつておるのか。今度の外遊については、これは新聞に非常にたくさんに報道されておるのですが、愛知用水とか弾丸道路とか言われておりますが、外資導入についてどういう話合いをされるか、その点を承わりたいのです。
  126. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 外資は漸次導入されつつあります。又現に交渉中のものもあります。相当の外資はそのうち参ると思います。
  127. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 時間が少し超過しましたから、もうあと一問ぐらい。
  128. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは次に伺います。総理はこの防衛法案が通つた後において、二十九年度の予算はすでに成立しておりますが、三十年度、三十一年度だんだん防衛力が増強する方向に行くわけです。而もこの防衛法案を通して陸海空軍三軍をここで建設し、そうしてはつきりした再軍備の段階に入つて行けば、今後の財政負担というものは私は相当なものだと思う。二十九度予算には、表面的には防衛費七百八十八億というように出ておりますが、併しこれを平年度化したり、或いは又その他装備等々考えると、三十年度のこの防衛費というものは、小笠原大蔵大臣は大体千四百五十億、せいぜい千五百億ぐらいにとどめると言つておりますが、到底そんなものでは足りないと思う。私の素人の考えでも、少くとも千七百億、内輸に見積つてそのくらいになりますよ。二十九年度の防衛計画を平年度化して、それに三十年度の新らしい計画を入れればそれだけで千七百億ぐらになります。それに防衛分担金或いは又賠償、対日援助の返済、こういうものを加えればその財政負担は大変なことになつて来ると思う。従つてこの防衛法案、これは我我絶体に反対の態度をとつて来ましたが、多数に押切られてこれが通つてしまえば、今後の国民の財政負担、経済負担というものは非常なものなんです。従つてこの防衛法案に基く再軍備と、今後の日本の経済について、総理はどういう見通しと、そうして日本の経済を破綻に陥れないためのどういう政策をお考えになつておるか、この点を承わつておきたい。
  129. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは日本の国力に応ずるだけの防備をいたすつもりであります。国力に不相応な防備はいたさないつもりであります。
  130. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この点は非常に重要な点であつて、この法案の提案の理由のときに、国力に応じてやると一方で言いながら、他方においては国力のほうは忘れちやつて、国内において間接侵略の危険があるとか、或いは直接侵略の危険がある、そういう国内の安全、治安を守るためにこういう実力を漸増して行く、こういうふうに述べておる。国力に応じてやるというならば、今の日本の経済は危機状態にあるのであつて、むしろ防衛費は減らさなければならん段階にある。この点は矛盾しておると思うのですが、総理只今お話とこの防衛法案による防衛費の膨脹というものとは矛盾しておると思うのですが、総理はそうお考えになりませんか。
  131. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はそう考えておりません。
  132. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どういう論拠で矛盾していないか。どうしても納得行かない。国民が納得していませんよ。こんなに日本の経済が窮迫状態になつて政府みずから経済危機と言つているのではないですか。経済が危機の状態にあるのに防衛費をどんどん殖やす政策をとるのは矛盾していると言うのですよ。それは矛盾していないというのは、どういう論拠で矛盾していないか、これを明らかにして頂かなければ、国民は納得できない。
  133. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は四囲の情勢から勘案し、殊に国際情勢をよく検討した上において、現在の自衛隊程度の日本の実力を持つことが相当考えておるのであります。各国国民所得、或いは総予算に比例して、日本自衛隊に使う金は決して多額のものとは考えておりません。勿論国民の経済は相当窮迫しておることは認めるのでありまするが、併しながら万一日本が外部からの不当侵略に侵されるようなことがあつては、元も子もなくなるのでありまするから、我々といたしましては、その程度の自衛力を持つということは、国家の大きな観点から見て当然な処置と、こう考えておるのであります。
  134. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 時間が相当超過いたしましたから、次の質問者に移りたいと思います。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで押切るなら押切つても私は止むを得ません。
  136. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 先ず伺いますが、MSA協定、或いは日米艦艇貸与協定、更にはこの防衛法案によつて、我が国は世界に二つの対立があるとするならば、米英陣営の側に立つて、そうして総理説明される戦力でないところの軍隊を持つて世界の平和に寄与されよう、こういうお考でございますが、併しながら何らかの部隊を持つということは、これは他国を刺激し、場合によりますと国際紛争に巻き込まれる虞れもあると私は考えます。従つて私は総理にお伺いするのでありますが、仮に総理外遊されるような場合があつた場合に、私は国際緊張の緩和、こういう立場から各国の文化交流の面についても一層の御努力をされても然るべきだと考えるのでございますが、世界の緊張緩和、世界の平和の確立という立場から、これらの点について総理は如何ようなお考えになつているか承わります。
  137. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 外務省としては、文化交流については特に注意をいたして、各国との間にこの交流に関する条約を結んでおります。でありますから政府としては、相当文化交流については注意をいたしております。
  138. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理はこのたび外遊された場合に、そういう点に更に努力されるおつもりはございませんか。
  139. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今のところはそういう考えはございません。
  140. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に伺いますが、日米安保条約の枠内において云々ということは再三答弁されております。私伺いたいのは、この二法案を検討して見まするというと、如何にもこの自衛隊アメリカの極東におけるところの補助部隊、こういう印象を受けるのでございますが、総理の自主的な日本の部隊というものを創設されるという立場からは、私はこの安保条約の廃棄と申しますか、アメリカの隷属下に置かれる虞れのあるこの我が国の自衛隊を、日本の自主的なものにするためにどの程度の見通しを立てておられるか、これらの点について総理に伺います。
  141. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは私からお答えするのが適当かと思います。
  142. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理から願いたい。
  143. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答え申上げます。
  144. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) しばしば申上げましたように、日本自衛隊アメリカの駐留軍の補助部隊ではないのであります。我々は日本の外部からの侵略に対して如何に防衛すべきかということについて、無論アメリカの力は借りなければならんのでありまするが、日本自衛隊の創設ということについては、我々は自主的にこれを勘案してすべての部隊編成その他のことをやつておるのであります。従いましてアメリカの補助部隊というようなことは断じてないわけであります。
  145. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理もそういうお考えでございますか。
  146. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣の御説明通りであります。
  147. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はこの審議の過程でも明確になりましたように、この自衛隊の武器というものは、殆んどその供給源をアメリカに仰いでいるわけでございますから、何と言つてもその隷属的な関係というものは、これは否定できないと思うのでございますが、意見になりますので次に伺います。総理は仮にアメリカに行かれたとした場合に、この日本の自衛力の急増、日本国防に関する話合いが向うから出そうだと予想しておられますか、それともそういう話がないだろうと予想されておりますか。出発を前にして恐らく総理はやはりいろいろ構想をめぐらし、予想というものを持たれておると思いますが、どういうふうにお考えになつているか、その点を伺います。
  148. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 仮に私が外遊するといたしましても、アメリカ政府からそういう問題が出るだろうというような予想も何も持つておりません。
  149. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それでは伺いますが、先般ヴアン・フリート大将、更にウイルソン国防長官もお見えになつたのでありますが、私は何らかこういうアメリカの高官のかたがたは、恐らく日本政府の或る筋とは話をして或る程度の話がまとまつているのではないかと推察をいたします。アメリカにおいてもノーランド議員のごときは、日本吉田さんは、言葉は適当じやないかもわかりませんが、ずるい。なかなかこちらの言う通りにならない。そうしてアメリカから引出すことばかり考えておる。日本吉田さんはずるい、こういうことをノーランド議員は盛んに言つております。従つて外電の一部の伝えるところでは、吉田さんがアメリカに行かれた場合には、先ず第一番に、日本は現在の自衛隊増強についてどういう計画を持つておるか、これを先ず確かめるであろう。そうして再軍備に対するところの吉田総理の決意、憲法改正に対するところの決意というものを必ず確かめるであろう、こういうことが伝えられております。私も又そういうことを堆察するものでございます。総理は先ほど外資導入の問題についても言及されましたが、恐らく経済援助というものを何らかの形で仰がれ、話をされると思うのでございますが、私が伺いたいのは、池田さんが渡米された場合に、自衛隊を三十二万五千くらいにして欲しい云々という要望もあつたわけでありますが、自衛隊の急増、それに伴うところの憲法改正に対するところの話合いが仮に出た場合に、吉田総理はどういう、御態度をとられるか、承わりたいと思います。
  150. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はそういう問題が出るとは考えませんからして、お答えはできません。
  151. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は仮に出た場合に、総理はどういう御態度をとられるかということを承わりたい。それは私はあなたに答弁したくないことを追及しようというのではなくて、我が日本吉田総理がこのたび外遊されるに当つて国民の最も関心事であるのはこの一点に集中しているわけです。従つて私個人にもいろいろと希望もありますし、国民全部も外遊される吉田総理にいろいろと期待もありましようし、又希望を持つておられるわけでありますから、この席上から私は国民に代つてお伺いいたしますが、総理はそういう場合にどういう御態度をとられるかということを承わりたいのでございますから、重ねて御答弁を求めます。
  152. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 態度は別として、そういう質問が出ないと私は確信いたします。
  153. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間がかかりますから重ねてはお尋ねいたしませんが、私伺いたい点は、仮にあつたとしたならば、如何ような態度をとられるかと伺つておるわけですから、答弁して頂くことはよろしいと思うのでございますが、これはすべての国民が最も関心を持つておるところでございますから、伺つたわけでございますけれども答弁がないならば次に一、二点伺います。私は伺いますが、総理アメリカに行かれたならば、アメリカの上下両院に対して演説をされるであろう、その演説の草稿については、アメリカ大使館当局においても、又外務省においても随分と心痛され、その草稿の完成に努力されているということを承わつておるわけでございますが、ここで私は吉田総理に伺います。それは吉田総理はずつと以前から憲法改正というものはやらない、軽々にこれを取扱うべきものではない、更に日本の国力に即応したところの自衛力を持つのであつて、再軍備をする意思は全くない、自衛隊増強も過分にする意思は全くないということを本日までここで答弁されておりまするし、更に部隊の海外への出動というようなものはあり得ないことだ、こういうことを答弁されているわけでありますが、又日本国民も今最もこの防衛法案審議について心配している点は、部隊の海外出動というものがあるのではないか、この一点を最も心配し、又国民はこれを希望いたしておりません。総理国民の希望しないことはやらないと先ほど答弁されているわけでございまするから、従つて現在総理のとらるべき態度は、日本の憲法からいつても、国民の希望からいつても、如何なる場合にも自衛隊海外出動というものはあり得ない、こういう立場をとらるべきだと思いまするので、これらの憲法の問題、自衛力の急増の問題、再軍備の問題、海外出動の問題について、今私が申上げたような立場において、アメリカの両院において演説をする場合に、そういう内容において演説をされるところの決意が固まつていると思いまするが、私はここで念のために総理の御所見を承わつておきます。
  154. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) アメリカ国会においては、元首以外の人は演説をしないということになつております。今のお話のような演説をする場合は全然ないのであります。
  155. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それでは公式に演説をしないとするならば、ともかくもアメリカ当局の高官のかたがたと公式に或いは非公式にいろいろと協議会を持たれると思うのでございますが、その場合に、今私が申上げたような立場において、吉田総理は対処される決意をすでに固められていると思いますが、さようでございますか。
  156. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この場合にどういう決意で話をするということは別といたしまして、私が従来申しておる通り、海外派兵は国民が希望しないからいたさない。憲法は軽々に改正いたすべきものではないという信念を、これはいずれの場合においても、内外に対してその信念を堅持いたすつもりであります。
  157. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 このたびの二法案におきましては、最高指揮官監督者としての総理大臣の立場というものは非常に高いものになつておりまするが、一部にはこういう説をなす人があります。この総理大臣の指揮監督権というものは、名目化するのではないかと、いうことは、総理大臣を補佐するところのスタツフというものがこの二法案の中にはない。従つて名目は総理大臣最高指揮権者となつておるが、実際はそうならないで、そこに軍事政治を支配する場合が起る虞れがある、こういうふうに批評する人があるわけでございまするが、従つて私はここに総理に伺いたい点は、総理の直属の補佐の立場に立つところの国防長官の任命方針ですね、それからあなたが最高指揮権者として、どういうような補佐機関を設けて、その使命を全うするかという点について、如何ようにお考えになつておるか、その点伺います。
  158. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 防衛庁長官以外の機関只今のところ考えておりません。
  159. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そこが問題でありまして、時間がなくなりますから追及いたしませんが、非常に総理の立場というものが高いものになる。ところがその総理を十全に補佐するところのスタツフというものが不十分だということが指摘されているわけでございますが、これは意見になりますから……、あと一、二点伺います。次に伺いたい点は、大ざつぱに伺いますが、国防会議についていろいろと論ぜられ、審議されたわけでございますが、総理総理諮問機関としての国防会議を軽く、自分の、総理の立場に立たれた人の諮問機関だと、こういうふうに軽くお考えになつておられるか。或いは諮問機関ではあるけれども、その構成、運営に慎重を期して、その国防会議の決定によるところの諮問というものは、よほどの場合でない限りは、その決定の通り内閣総理大臣として閣議決定して、それを実施したいと、こういうようなお考えでおられますか。総理大臣の大ざつぱな国防会議に対するところの見解を承わつておきます。
  160. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国防会議の決議或いは意向等については、十分尊重するつもりでおります。
  161. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そこで国防会議についてもう一点伺いますが、総理の前歴者を構成員とすることに本日閣議決定されたわけでございます。吉田総理としては、反対党の総理の前歴者も、具体的に言いますならば、仮に私は社会党左派に属しておりますが、社会党左派の内閣ができて、そうして社会党左派に属するところの曽つて総理大臣、この人は党の主張で再軍備反対、防衛法案反対という立場をとられるわけですが、そういうかたも国防会議の構成員として国会に推薦し、承認を求められるお考えはございますか、それらの点について伺います。
  162. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 適当な人があれば、政党政派を問わず任命する考えでおります。
  163. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この二法案審議の過程において、厖大な予算を、税金を使うところのこの自衛隊については、この予算の使途について厳正でなければならない。従つて内局の経理局はよほど注意しなければならないという立場から、木村委員を中心に熱心な審議が行われたわけでございます。併しながら保安隊発足以来、保安隊にも規律の紊れ、特に物質のいかがわしい事件が起つたわけでございますが、これは保安隊と限らず一般官庁にも官紀の紊乱というものがとやかく言われておりますけれども、これから日本自衛隊を創設して、そうして吉田総理考えに基かれるところの日本の存立を全うして行こうという立場において、その最高指揮権者としてそれらの規律粛正にどういう決意を持たれているか、この点を承わつておきます。
  164. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。
  165. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この問題については、終始総理と相談をしておるのであります。我々といたしましては、国民の血税によつてつておるのでありますから、この間において不正があるということは、それは国民に対して申訳ないと考えております。今後とも私は総力を挙げてかような過ちのないように十分に努力いたしたいと、こう考えております。
  166. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 割当時間が過ぎましたから。
  167. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう終ります。総理は、若し六月四日に外遊に立たれることに相成るならば、国会開会中に余裕があつたならば、国会に対してその目的なり或いは所信を披露するところの機会を持ちたいと思う、こういう意味答弁を先ほどなされておりました。これは恐らく私は六月三日を予定されているのではないかと思いまするが、その前提として、重要法案が通過したる後と、こういうことを附加えられております。で、それが六月三日であるかどうかということと、更に私は伺いたい点は、総理は海外派兵にしても国民の希望しないことは絶対にやらないと、それが私の信念だと、こういうことを本日も答弁されております。で、私伺いたい点は、先般のこの汚職問題の究明ということは、全国民の強く要望したところでございます。併しながら吉田内閣は、この国会の段階において、重要法案審議のために検察当局の逮捕許諾請求を検察庁法の第十四条に基いて指揮権を発動して、この逮捕を許容されなかつたわけでございます。この前提は、重要法案審議中であるという理由であつたわけでありまするが、重要法案審議が終り、あなたも余裕があつたならば外遊の目的を言明される、こういう段階になつたならば、当然あの前犬養法相が発動されたところの検察庁法十四条の発動というのは撤回されるべきである。又法務大臣の任命権者である、吉田内閣の責任者である吉田総理大臣は、そういう意向を法務大臣に対しても示すべきものだと考えるのでありまするが、如何でございますか。
  168. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 十分考慮いたします。
  169. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後に、ではこれで終りますが、私はここでまあ総理を追及するという立場でなくて、私は国民の大部分のかたが考えられている立場から、それらの人に代つて私は伺うのでありまするが、たとえ日本の再軍備というものを許容している国民においても、この吉田総理の再軍備はしない、憲法改正はしない、こういう言明の下に着々と軍隊らしきもの、再軍備に近いものをこの国民の税金によつて作り上げて行く、この態度に対しては欺瞞であるとか、或いはごまかし再軍備であると随分国民は不満を持つております。これは恐らく総理の耳に入つておると思う。仮に再軍備を肯定する人でも、国家の基本法であるところの憲法をはつきりと検討し、改正して然る後にやるならば結構であるが、いやしくも国家の基本法である憲法が、現在の平和憲法が現存しているのに、それに一切手をつけずにこういう既成事実を作り上げて行く、この態度に対しては絶対に許容できない、こういう圧倒的国民の輿論であります。ましてや再軍備によらずして日本の平和と存立を全うして行こうというかたがたにおいては、この吉田内閣の、吉田総理の自衛力急増方針というものに対しては絶対反対の念懣やる方なきところの気持を持つているわけでございますが、私はこの段階に来たならば、総理は憲法改正というものを極く近くこれを処理されると、憲法改正は近いうちにやらなくちやならないと、こういうふうに私は良心的にお考えになつておられると思うのでありますが、それは如何かということと、やはり率直に吉田総理はこの段階において、元はこういう考えであつたけれども世界情勢からいたし方なくこういう結果になつたという意味において、吉田総理国民に何らかの誠意あるところの発言をされて然るべきだと、こう考えますが、総理の誠意ある答弁を求めます。
  170. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は現在のところ欺瞞的再軍備をいたしているとは考えておりません。(「やつているじやないか」と呼ぶ者あり)私の申すことは、信念に基いてやつておるのでありまして、今日のこの際、憲法を改正して再軍備をするというようなことは、改めてここに言う必要は私は良心的にないのであります。
  171. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 実際はやつておるではありませんか。
  172. 山下義信

    山下義信君 私はこの際議事進行に関する発言をしたいと存じます。我々は防衛法案審議に関しまして、次の点について政府の明快なる御説明を得たいと思うのであります。  それは参議院といたしまして、相当審議をいたして参りましたが、なお一つ検討しなければならんことが残つていると思うのであります。それは自衛隊の持つ実力の実情は如何という問題であります。換言すれば、自衛隊の持つ武力、自衛隊の火器、弾薬、自衛隊の装備、自衛隊の行動に伴う通信機関の整備状況、自衛隊の機動に関する装備編成と道路交通等との関係の実情及び計画、非常事態における食糧兵站関係の準備並びに計画等、以上は自衛隊自体及び米軍との関係をも含めまして、詳細なる実情の説明を得たいと存ずるのであります。御答弁は適当なる機会でよろしいと思うのであります。
  173. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 委員長議事進行について。私は只今山下委員の提案に賛成であります。更に、私は議事進行としてですね、実はこの本委員会で二法案審議する段階において、最もお互いが関心を持ち、而も明快に解決されていない、何となくすつきりしない問題は、海外派兵と申しますか、海外出動と申しますか、この点だと思います。この件については、当院の外務委員会において、各会派全会一致で何らかの決議案を出されるやに我々は承わつておるのでございますが、この問題は当委員会と無関係の問題でもございませんので、適当なる再開に委員長から外務委員長に連絡をとられまして、その決議の内容等について、本委員会で何らかの協議なり審議のできるように委員会を運営して頂きたい。そうして最後に、すでに一時過ぎておりますので、山下委員の提案された問題については午後審議すことにして、ここで一応休憩して昼食時間をおとり願いたいということを議事進行としてお願いいたします。
  174. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは暫時休憩いたします。    午後一時九分休憩    ―――――・―――――    午後二時四十一分開会
  175. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 休憩前に引続きまして委員会を再開いたします。  休憩前に山下委員より発言された点について保安庁より説明を受けます。
  176. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) お答え申上げます。  先ず自衛隊の実力として、武力の点であります。  陸上自衛隊は、現在の保安隊を引継ぎます。現在の保安隊の持つておりますものは、自動拳銃九千五百。それではあとで資料を差上げます。申上げます。自動拳銃九千五百。騎銃等七万三百。
  177. 岡田宗司

    岡田宗司君 キ銃というのは機関銃ですか。
  178. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) カービンといいますが、短かい鉄砲。小銃三万二千三百。自動小銃三千。短機関銃千六百。軽機関銃八百。重機関銃千五百。四十ミリの高射機関砲二十。九十ミリ高射砲三。二・三六インチのロケツト発射筒、バズーカと普通呼んでおります。これが五千。それから三・五インチのロケツト発射筒三百四十。五十七ミリの無反動砲十五。七十五ミリ無反動砲十五。六十ミリの迫撃砲三百八十。八十一ミリ迫撃砲四百七十。七十五ミリの榴弾砲四十五。百五ミリの榴弾砲百七十。百五十五ミリの榴弾砲七十。八インチ榴弾砲二十七。百五十五ミリの加農砲十二。ハーフトラツク等四百。これは上に機関銃を積んでおりまするが、ハーフトラツク等、無限軌道のついた車であります。これが四百。特車等、これは戦車であります。特車等三百四十。軽飛行機五十。これに弾薬は現在演習用ということで七千トンを持つております。演習用と申しましても、これはいわゆる実弾であります。空包ではありません。そのほか米軍のほうから我がほうの用意整い次第渡してもいいというものが約六万トン。現在持つておるものは七千トンであります。  それから海は現在六十八隻で三万八千二百四十トン持つております。これに二十八年計画十六隻、すでに予算の御議決を頂いた去年の分でありますが、十六隻九千百二十トン、現会計年度二十九年度で議決を頂いておりましてこれから実施計画を立てまするもの十四隻、二千六百七十トン、それから今度の艦艇貸与法によりまして借りようというもの十七隻二方七千二百五十トン、現有で六十八隻と申しましたもののほかに、掃海艇が四十二隻、八千九百十一トン、合計いたしますと百五十七隻、八方六千百九十一トン。これは武力としては、御承知と思いまするが、三インチ砲をPFが積んでおります。これからもらいまするものは五インチ砲を積んでおるものもある予定であります。そのほか四十ミリの機関銃等を積んでおるものがあります。そうして現在もらつておりまするものは、弾薬は船の弾薬庫に満載できるだけもらつて、一船分と申しまするか、一艦分と申しまするか、それを持つておるだけであります。  次に自衛隊の行動に伴う通信機関であります。陸上自衛隊は、固定通信としましては、有線は各部隊と管区の中心とを結ぶもの、各総監部と中央との間を電々公社の有線を各一回線専用をしております。そのほか短波無線でありますが、各部隊に五百ワツトの無線機を持つております。それから各管区、方面総監部、方面総監部は一つでありますが、各管区は四つあります。それと中央との連絡は一キロの短波無線でやつております。このほかに移動通信としまして、野外の無線機、これはウオーキー・トーキーという簡単なものでありますが、七千二百三十。車載無線機、これは多少大きいものでありますが、四千七百五十八、この二つは移動の無線でありますが、移動すると言いますか、簡単な野外の電話機が一万一千三百四十一個。  それから海上自衛隊のほうでは固定の無線局は十カ所ございます。これは各地方総監部、横須賀、舞鶴、佐世保、大湊、そのほかに呉、大阪、下関、館山、鹿屋、東京、合計しましてこの十カ所に固定無線局を持つております。なお海上保安庁と共用の無線局が八カ所あります。それから船舶無線局としましては、現在PFの十八と、陸上支援艇の五十、合せて六十八と、掃海艇の四十二、このおのおのに百二十五ワツト乃至四十ワツトの船舶無線局を持つております。  航空自衛隊のほうは、本年度の計画でありますが、飛行場にそれぞれ五百ワツトの短波無線局と、電々公社の有線専用線を取付けるという計画で進んでおります。  次に機動力の点でございますが、自分で走れる車を一万六千二百四十九、陸上自衛隊が持つております。トレーラーを、引つ張られて歩く車を七千四百十六持つております。これは一つの管区隊にいたしますると、普通の各種車輌を約千七百二十と装甲車、特車、これは戦車ですが、合せて九十、千八百十というものを大体一つの管区に持つことになります。相当の機動力を有するわけでございます。  道路交通に関する状況の御質問がございました。道路交通に関しましては、保安隊としましては、今自分で道路網整備の計画というものはまだペーパー・プランのほか持つておりません。やつておりますることは、国道、府県道、その他必要な道路について、その道路の状況、即ち幅員、路面の状況、勾配、彎曲、橋梁の荷重能力、上部のオーバー・ヘツド、そういうようなものは詳細警備知識として調べておりまして、大体において部隊が現在行動をするのには先ず支障がないという状況に調査をいたしております。但し御推定になりますような、特車であるとか、百五十五ミリ程度の砲になりますると、橋梁或いは彎曲面等が十分でない向きがありまして、そういう場合の応急補強計画、そういうふうなものを立てて実際の移動に支障のないようにいたしておるのであります。  そのほか部隊としては施設部隊、いわゆる工兵隊に当るべきものにべーリー橋、これはこの間、九州の風水害のときに実際に佐賀県に架設しまして大いに好評を博したものでありますが、組立鉄橋……べーリー橋及び浮嚢橋というふうなものを持つておりまして……、
  179. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 どのくらい持つておるのです。
  180. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 浮嚢橋は現在ちよつとはつきりしませんが、百二十フイートーセツトがベーリー橋、浮嚢橋もそれくらいのものであつたと思います。  次に非常事態における食糧兵站等の関係というふうな御質問がありましたが、食糧関係につきましては、予算で認められておりまする乾パン等のいわゆる備蓄食糧は二十日分でございます。二十九年度で更に十日分認められておりまするが、これは又演習、その他いろいろの意味において十日分年度内に使うことになつておりまして、結局又年度末に二十日分というふうな備蓄食糧を持つておりますという以外には、年度内における措置はないわけでございます。  以上申上げましたものが御質問の要点でございまするが、自衛隊と米軍との関係に関しての御質問がございましたが、米軍とは、いわゆる米国よりとしてMSA等に基きまして兵器、弾薬等の貸与或いは将来の供与を受けることになつておりまするが、それ以外関係がございませんで、この関係意味における装備なり備蓄というふうな問題は生じておらないわけでございます。
  181. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 只今説明に対して御質問を願います。
  182. 山下義信

    山下義信君 ちよつと簡単に一点だけ伺うのですが、被服の備蓄状況、手持状況というものがどういう状況かということを承わりたいです。
  183. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 被服は現在までのところ実は追われ追われて参つておりまして、定数としては、例えば冬服は二着、夏服も二着、作業服は二着で、これは特に使用期間が非常に短くどんどん交替をしなきやならん、そういうふうなものを必要数に応じて持つておる程度でございます。
  184. 山下義信

    山下義信君 それじやあ、まあ大体着替えがあるという程度でございますね。毛布等の備蓄状況はどうですか。寝具……。
  185. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) いわゆる備蓄というものは只今のところまだ持ち得ていない。必要定数を持つているという状況でございます。
  186. 山下義信

    山下義信君 道路計画自衛隊自身でいろいろ計画中ということでありますが、俗にいう米軍の協力のといいますか、連絡の上といいますか、いわゆる軍用道路と俗に申しております、あれは防衛諸費ですね、あれから出まする道路等の計画等は、これは自衛隊には関係ないのでございますか。
  187. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) これは例えば、室蘭から千歳、札幌を経て小樽に行く道路等は、我々もこれを大いに活用しておるわけでありまするが、これが作られまする際には特別には保安隊とは関係なく、事実上我々が要望を建設省に申述べるということはありまするが、手続としての関係はございません、現在のところ。
  188. 山下義信

    山下義信君 陸上自衛隊用の弾丸として、今、手持が七千トン、米軍から近く提供されるというのが六万トン。この今仰せになりました各程の兵器、火器ですね、まあ火器、この何といいますか、一時間といいますか、一日といいますか、まあ時間で言わなきや一日といつてもなんでしようが、これらの火器が発射しまするときに必要な弾丸の所要量というものは、一体どのくらいでありますか。つまり言うと、七千トンという弾丸は、現在の陸上自衛隊の持つておる火器に使いますると同時間使えるのですか。或いは恐らく何分間の程度なんですか。この弾丸の所要量というものは概数どのようなものになるのでございましようか。
  189. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 現在一管区隊を一万二千七百ということで編成をしたいと考えておりまするが、それで持つておりまする装備を一分間最高発射能力といいますか、これで参りますると三十五トン六九、一分間で三十五トン六九という量になります。
  190. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 議事進行。この委員会は、昨日の十二時で時間切れになつたあの逐条審議の延長ですか。それとも資料に関する質疑の委員会ですか。どちらなんです。
  191. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 資料に対する質疑を今行なつております。
  192. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、私はこの委員会に実は入る前に、政府がたくさん資料を出されましたが、その資料の説明を聞いてから入るべきだと言つたところが、それは説明せずに入つてしまつておりますので、そうであれば、政府が出した資料に対しては質疑が許されるわけですね。それからまだ私要求して出してない資料もございますから、その要求した資料を出して頂き、そうしてまだたくさん出ている資料についてはわからない点が相当ありますから、この点について、資料の質疑の時間であればこれを私は質疑いたしたいと思いますから、山下委員或いはほかの委員終つたあとで私は資料に対する質疑を行いたいと思いますが、御了承願いたいと思います。
  193. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 ちよつと速記とめてもらつて……。
  194. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) ちよつと速記とめて。    〔速記中止〕
  195. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) では速記をつけて下さい。
  196. 岡田宗司

    岡田宗司君 ではお伺いいたします。  この今お伺いいたしましたところから見ますというと、まあ火力などは勿論大きなものは持つておらんようでありますけれども、まあ一連隊といいますか、一個師団といいますか、あれは戦争前の日本陸軍の最精鋭部隊から見ますというと、相当まあ増加しておるようであります。そこで、この一万二千何百かのこの一管区隊と申しますか、これの平常のそういう火力ですね。これはまあいろいろ総合したものでいいのでありますが、それと戦前の最精鋭部隊の一個師団の持つておる火力です。それを大体、まあ素人ですから簡単に御説明願いたいと思うのでありますが、大体その頃の何倍ぐらいの火力を持つものになりますかという点を先ずお伺いしたい。
  197. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) この点はいろいろと、こう今まで推測をされた数字を新聞等で私どもちよいちよい見受けたのであります。実は比較がなかなか困難でございます。それで、前提を設けまして、旧日本陸軍の甲師団、これはまあ乙師団に比べて火力は強いと思います。野砲編成であります、この甲師団と……、現在保安隊は一万五千で管区の編成をしております。今度は一万二千七百にしたいというふうに考えております。これで火力をさつき申上げました一分間に発射し得る火力というようなことで比較を……、一分間に機関銃で最大能力発射できるものは、その最大能力を発射するという仮定で、非常にこれは実際と必ずしも一致しないものであります。そういう仮定の下に比較をいたしますると、今度の自衛隊の管区では約二・七倍、保安隊の一万五千の場合には約三・一倍、くれそれも申上げまするが、さつき申した前提でありまして、実力は三倍あるかというふうに言われますると三倍あると必ずしも言い切れませんかも知れませんし、或いは通信の力、機動力等を考えますると、もつともつと力があるという大ざつぱな計算も成立つわけであります。今申しました前提に従いますると二・七倍とか三・一倍というような数字が一応計算の上で出て来るわけであります。
  198. 岡田宗司

    岡田宗司君 この火力は今後更に増強される見込みですか。それとも大体この三倍程度のものを維持して行かれる見込みか。近い将来においてこの倍数をもつと多いものにする見込みでしようか。
  199. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 大体現在持つている程度の装備を只今のところ続けて持つ、特に倍数を殖やすという考え方はございません。
  200. 岡田宗司

    岡田宗司君 従前の陸軍におきましては、まあ例の甲師団と言いますか、戦争師団ですね、これが若干ございました。そしてこれは、今の戦車にいたしますと、あの軽戦車に当るのでしよう。それでやつたのですが、現在のいわゆる特車、何と言うのですか、師団と言うのですか、まあ戦車師団と言いますか、現在の戦車師団に当るものは、従前の戦車師団に比べて、その戦車の大いさ、それから数というものから比較して、どの程度の力を持つているのでしようか。
  201. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) まだ現在は戦車師団とかなんとかいうふうな程度になつておりません。いわゆる軽戦車は二十トン程度のものでございまして、これを持つておるにとどまりまして、従前のものと的確に比較するだけにまだ至つておりません。
  202. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にこの戦車の問題ですが、これは更に軽戦車じやなく、非常に最近の大きい戦車、これは日本の場合は無理だろうと思うのですが、中型の戦車を以て装備するということをお考えになつておりますか。
  203. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 中型と申しまするか、三十二、三トンの戦車を現在二十ばかり北海道へ米軍からもらつております。なお二十ばかり引渡しを受け得る状態になつております。これはこれから訓練を始めようというところで、これは中型と言い得ると思います。
  204. 岡田宗司

    岡田宗司君 この戦車でありますが、こういうような戦車が漸次殖えて参りまして、これが機動力を発揮するという場合に、日本の道路、橋梁というものはこれに堪え得ないような状況にあると思うのですが、その点についてどういうふうにお考えになり、又これをどういうふうに将来処置して行こうとされるか。
  205. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 平素、現在借りておりまする戦車を移動させる場合には、ゴムの足袋みたいなものをはかせたり、トレーラーに乗せたりします。そうしますと、スパンの長さが拡がりますので、一定の橋梁の荷重のもので、戦車それ自体が通れないものでも通れるというようなことになつております。併しやはり通り得ない橋梁が相当ございます。これはやはり臨時補強、つつかえ棒をして通る、或いは迂回をする場合によつては河床を徒渉するというふうな方法によつて行かなければならんと思つております。
  206. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは今度はまあ航空侵犯の問題が、この問から自衛隊が航空侵犯を防ぐと申しますか、という問題が出ておりました。そこでどこかの国の飛行機が日本に近ずくというとき、常にレーダーで捉えなければならんわけですが、このレーダーは現在保安隊の任務に適するように全国に配置されておるかどうか。それからレーダーによつて一体どのくらいの距離の向うにおる飛行機が探知できるか。その二点をお伺いいたします。
  207. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 現在保安隊はレーダーをまだ装備しておりません。本年度法律が認められますると航空自衛隊で発足いたします。航空自衛隊の要員としてレーダー操縦する者を今年養成したい。漸を追うてレーダーを現在米軍がやつておりまするものをこちらへもらうということになりまするか、レーダー自体をもらつて来るか、近い将来の問題としては、航空自衛隊の要員でレーダーを動かし得るようにしたいと思つております。現在はありませんで、米軍のレーダーによる発見、それの通報を受けるということになると思います。
  208. 岡田宗司

    岡田宗司君 私はこれで終ります。
  209. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは増原次長、私は重大だと思いますが、四試七日に出された資料とどうしてこんなに違いますか。船の数まで違いますね。例えばここに出しておる、あなたから出されておるのでは、現有二十八年新造計画、二十九年新造計画、合せて百五十となつておりますね。これにMSA十七を加えると百六十七になるのですが、あなたの先ほどの説明はMSAの十七を入れて百五十七隻と発表されておる。それから例を挙げますと、例えば小銃はこちらのは九万五千六百となつておるのでありますが、只今説明のは遙かに少いし、これは一つの例ですが、至るところに数字が違つておりますね。それから飛行機は只今あなたは軽飛行機五十機という説明でしたが、こちらでは現有が百六十七ですね。MSAが来たら百四十七、数的に大変な違いがあつて判断に困るのですが、これはどういうわけですか。
  210. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 私よりほかの係から説明をいたしますが、航空関係は百六十七と申上げましたのは、T三四、C四五、T六G等、その他いろいろなものを合せてでありまして、一番しまいにLというのがありますが、これが五十、これが今持つておりまするもので、私の今申上げた数字でございます。なお船の関係は細かくは別のほうから申上げまするが、難船の数え方に違いがありまして、極く小さいものでありまするが、掃海船の四十二のうち十を雑船に数えてあるという違いだそうであります。
  211. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今説明の途中ですが、それは次長、逆ですよ、あなたのこの四月七日に出されたのは、註の二を御覧なさい。雑船を含まないと書いてあるでしよう。従つてこの表で行けば百六十七隻に雑船を加えればまだ大きくなりますが、あなたの今の説明ではMSAの十七に百五十七としてあるから、これはプラス、プラスで、もつと違つて来る。
  212. 麻生茂

    説明員(麻生茂君) 掃海船五十二隻と四月七日はあつたと思います。四月以降に民間から借りておる船二隻ばかり返しまして、あと八隻は実は曳船のような船でありまして、元来掃海船に適する船ではなかつた。それを雑船に落したわけであります。従つて十隻だけ掃海船のところで減つております。それは四月七日の難船に含まないという……、難船のほうに入るわけであります。十隻だけの相違があります。その点は四月七日とその後の警備隊との現況の相違でありますので、現在はこの四十二隻が正しいのであります。
  213. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それでは又それだと説明がよくわからないのですが、いずれ正確なものを出してもらいたいのですが、近日中でいいのですから、例えばこの小銃は四月七日の資料では九万五千六百となつておるが、今日の説明では随分違いますね。騎銃についても今日の説明では七万三百であるが、一方では三千九百というような数字が出ておる。至るところ、その標準が違うか何か知らんが、とにかく資料としては迷惑しますね。こういう二通り出されてはどれが一体どうかわからない。
  214. 海原治

    説明員(海原治君) 御説明申上げます。先ほど次長から御説明申上げました数字は、例えば騎銃、小銃、自動小銃を細かく区分して、七万三百、二万二千三百、三千と申上げた。この合計が先般の資料の合計の数と合つております。それから機関銃につきましても、先ほどの説明は、短機関銃、軽機関銃、重機関銃に区分し、この合計でございます。無反動砲、迫撃砲等についても同じでございます。従つて、先般提出しました資料の中で、更に一応小説と考えられますものを、騎銃、小銃、自動小銃と一応区分して申上げたのであります。
  215. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 数的なことはその程度にして、時間がかかるとお気の毒ですから、ごく若干伺いますが、船の種類にもよるでしようが、一トンの建造費は大体幾らと見ておればよいか。それからこの小銃弾一発は大体どのくらいに見ておればいいか、承わつておきたいと思います。
  216. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) その船の建造費でございますが、これは今保安庁が持つておりまするような船を大体前提といたしまして、トン当り平均百五十万内外かと思います。それから小銃弾一発のお尋ねがございましたが、ちよつとこれは記憶がございませんが、関連した数字で申上げて多少御理解願えるかと思うのでありますが、大体保安庁が使用いたしておりまする砲弾、銃弾、そういうものを平均いたしまして大体トンに直しまして六十万円見当かと思います。
  217. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そうすると、一発どのくらいになるのですか。それがピンと来るのですよ、頭に……。そのくらいのことは経理局長頭に入れておかなければいけない。  只今この説明にありましたこれですね、これは殆ど警察予備隊から更に保安隊時代に貸与された、例のあなた方の概算五百億というあの中に入つているものと、こういうふうに了承していいわけですか。或いは日本国民の税金で購入したものが若干入つているか。更にはMSAによる無償貸与を予定して受取つたものが入つているかどうか。その辺を伺つておきます。
  218. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 五百億に入つております。これは今までもらつておるものであります。そして御承知のように、火器、弾薬は今まで全部向うからもらうというか、貸してもらつておると申しますか、こちらで買入れたものはございませんが、さつき御説明を申上げた中で、それは車、通信、無線その他そういうものは大部分は我が経費で買上げたものでございます。
  219. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 さつき弾の備蓄の点について御説明があつたのですが、この数字から私、推察するのですが、万が一ちよつとした事件があつたときに手出しをすれば直ぐ品切れが来て困るのじやないかと思うのですが、その場合には米軍のほうから補給してくれるような約束はできているのでございますか。うつかり手を出さんほうが私は安全だと思うのです。それから飛行機にしても、領空侵犯に対しては着陸を命ずる、それを聞かない場合にはそれに対処する、要するに追払うというのですが、うつかり追払つて行くというと却つて危いのじやないかという感じがしますが、これは弾なんか消耗した場合は、別に交渉しなくても自動的に米軍から補給してもらえるような話合いか何か付いているのか、その辺を承わります。
  220. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 現在までの建前は、御承知のように国内治安維持ということでありまして、七千トンばかり向うからもらつてつております。先ほどちよつと触れましたように、約六万トンくらいのものをこちらの用意が整えば大体もらい得るというふうな状態でありまして、六万トンもらいますと、或る程度の用に足る。その後、今のところ弾薬につきましては、大体そこらで使用する分を米軍のほうから補給をしてくれるという、何と申しますか、まだこれは大体の話合いというところで、固く協定を取り交わしたとか何とかということにはまだなつておりませんが、必要なものは供与してくれるという黙契という程度のものであります。これはそういう供与をはつきりさせるように更に話合いをして行きたいというふうに考えております。
  221. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ここに示されたこれらの武器はおおむね何年製のものでございますか。そうして、これは世界の軍機の秘密という立場から考えて、やはり秘密に属する程度の武器がこの中に入つているのかどうか、その点、承わります。
  222. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) いろいろ雑多でありまして、製造時期は実は余りよくわかりません。非常に新しい……、勿論戦後に造つた新しいもの、例えば無反動砲等もらつておりますが、勿論、戦前の四十年代或いはちよつと前と思われるようなものもないではありません。なお秘密区分のお尋ねでありましたが、現在までもらつております保安隊のこの種兵器のには、いわゆる防衛秘密保護法に言う秘密区分のものはございません。
  223. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これで終ります。  私は富士の裾野の演習を見せて頂いたのでありますが、突撃の場合に騎銃を持つて参りますね、あれはどれに相当するのか、それから隊員はこの銃は太くて日本人の体格に合わないで、これを操縦できる隊員は少い、私たちどうしてもうまく操縦できませんと言つておりましたが、あの銃はここに示されたどれに当るのか、その二点を承わつておきたい。
  224. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 騎銃を持つておつたとおつしやいますれば、それは騎銃と申上げました七万三百の中にあるものであり、それは丈の短いものであろうと思います。小銃と言つたのは、ライフルといいますが、それは小銃二万二千三百の中に入ります。これは多少重いのでありますが、日本人の体力で扱いにくい、困るというほどのものではございません。
  225. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今の御説明の装備の中には、占領軍が接収した旧日本軍隊の武器ですね、そういうものも含まれておるのですか。
  226. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 旧日本軍のものでいわゆる九九式小銃、これが小銃の中に入つております。それ以外はございません。その数は今ちよつと記憶にないのですが、騎銃等の七万三百の中に若干この九九式小銃が入つております。
  227. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に簡単なことですが、陸上自衛隊業務計画と、先ほど御説明を聞きました装備との関係について伺いたいのですが、即ちこの業務計画によると、五月末に十三万編成の援助物資受入計画表の作製が終ることになり、十三万編成表と装備表が五月末に出されていることになつていると思いますが、先ほど承わりました装備と、この十三万編成表及び装備表の完成、こういうものとの関係ですが、そういう作業はもう終つておるのですか。
  228. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 業務計画は、現在作つておるものを示せと言われる建前で資料として差上げました。これを作りました前提は、法律が三月一杯に上るという仮定の下で作りましたので、この業務計画表が特に最初の部分についてはおおむね二カ月遅れるというふうに御了承願いたいと思います。
  229. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはここに出された全体として、ここに出された全体が一応二カ月ズレると了解してよろしうございますか。
  230. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) あとのほうは二カ月はズレませんが、始めのほうが二カ月ズレる。全体を調整いたしまして、終いのほうは予定通りにやりたいと思います。最初のほうが二カ月というふうに御了承願いたいと思います。
  231. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは三軍について同様でございますね。
  232. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 三自衛隊について同様でございます。
  233. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、これはどういうことかちよつと承わりたいのです。十一万編成の未済分の装備品の受入れが、十月末に完了ということに、この計画表ではなつておりますが、十一万の編成のこの未済分装備品というのは、これはまだ相当つて、それが本年十月頃受入れ完了ということになるのですか。非常にこの時期が遅れるので、その点よくわからないのですが、これはどういう関係でしようか。
  234. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) これは極めて一部分のものでございますが、正確に業務計画として現わしましたので、例えば先ほど他の委員への御説明申しました、中型戦車というのがございますが、これを最近二十両ばかり北海道へ受入れて持つて参りましたが、あと二十数両もらう。これなど十一万分に対するものを今受けておるわけでございます。百五十五ミリの加農砲或いは八インチ、そういうふうなものについて、若干ございますが、十一万のものについて受入れが完了してないものがある。それが十月末に全部完了する。こういうことであります。
  235. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今度十三万の編成においては、やはりそういう武器の受入れ完了というのは、こういうふうになるものですか。今後又ずつと、大体そんなに遅れるものなんですか。こういう点、我々素人はよくわからないのですが。
  236. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 具体的に細目の取極めはまだできておりませんで、実質的に或る程度の話合いがついて、これがMSAの細目取極めになるわけでございます。今度の十三万分、いわゆる残り二万分と申しますか、これは余り遅れることなく、受入れできるものと、大体向うも口頭で申しておりますし、我々のほうの準備も大体できておりますので、これは来年度に及ぶということなく受入れられるということになつております。
  237. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単にあと二つです。この貸与艦艇の引渡しですね、あれはアメリカで引渡しを受けるのか、向うからこつちへ持つて来るのか、それはいつ頃引渡し完了になりますか。
  238. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 貸与艦艇は、はつきりしました四隻、千六百トン型と千四百トン型、これは大体アメリカで受渡しをするという予定であります。こちらから向うへ参りまして、向うで受渡しを受ける。受渡しをアメリカで終りますのが大体十一月というような見通しでございます。
  239. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に、アメリカから貸与を受ける計画ですね、この七千トン級のあれは、何とか母艦というのですか、駆逐母艦というのですか、あれはいろいろないきさつがあるようで、難色を示しているようですね。そうすると、防衛計画を見ますと、あの七千トン級のがないと、あの防衛計画というのは一貫しないわけだと思うのですね。それで新聞その他を見ると、七千トン級は渡しにくい、その代りに飛行機を若干殖やしてやるとか、或いは又二千何百トン級の船を二つやるとか、そういうように違つた船、或いは兵器などとそれを交換して、そうして従来の防衛計画というものにマツチするものかどうか。一応七千トン級の駆逐母艦を前提としてできている防衛計画が、そうなると狂うと思うのですね。今後のああいう艦艇貸与の見通しですね、こちらで希望しても、向うでよこさないというようなときには、一体どうなるのか、その点。
  240. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 御尤もな御質問でありますが、七千トンのDTといいますか、駆逐母艦、これはああいう計画を立てましたのは、非公式にいろいろ向うの話を、係官等から探つて、適当なものがあるから、見込みがあるからということで、計画に入れたわけでございます。これは補給に使つたり、若干工作に使つたりという船であります。これが若し、まだこれは一部の係官が極めて非公式に言つておる、むずかしいかも知れませんが、と言つておる状態で、具体的にはこれから折衝をいたしますが、若し仮にこれが工合が悪いといたしましても、他の補給、工作に使用し得る船を借りることができれば、防衛計画には支障がないわけでございます。私どものほうでは、七千トンを借りるために、更に具体的折衝をいたしまして、仮に行けなくても、他の、代り得る補給、工作の船を借りよう、こう考えております。
  241. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 こういう事実はないですか。これは私も確証はないのでありますけれども日本アメリカに艦艇貸与について人が派遣されて、専門家が行つて見た。ところが七千トン級、今の駆逐母艦ですか、非常にこれはいいもので、近代的装備である、是非そういうものを欲しいと言つたところが、これは非常に近代的な装備であるので、向うで渡したがらない、そこで折衝が延びておる、こういうようなことを、非常な高度の近代的装備であるので、そういうものを日本に、向うでは知らして困るかどうか、そういう事情じやないかと、私ども素人から考えると思われるのですが、そういう事情で延びているということはないですか。その点。
  242. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) さような事情はございません。これから折衝を具体的に始める段階でございます。
  243. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう艦艇とか兵器の貸与を受けるときに、アメリカにおいて受取るのでありますから、あらかじめこつちから人が行くわけですね。そういうときに、やはりその現物をこちら側で十分に調べて、そしてまあ、表現は悪いですが、非常に旧式なものとか、実は役に立たんようなものとか、そういうようなことをやはりこちらが確かめて受取るべきだと思うのです。そういうことがなされておるのか。今度の艦艇の貸与協定の場合にもそういうことは十分なされたかどうか。そういうことを承わつておきたいと思います。
  244. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 大体において、どういう艦種、どういう性能、製造してから幾らというとこはわかります。こちらで。それに基いて、いわゆる附属書としてこういうものをもらうということをきめます。向うに参つてからは、具体的にその船を向うとこちらで見て、性能を確定して、そしてそれで訓練をして、自分で持つて帰るということでありまして、よく目的に副う、使える船を借りる、それは事前にもそういう調査をし、事後にもそういう調査をやるようにしております。
  245. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実は只今質問いたしましたのは、前に資料を要求したとき、数量とかその他は資料に出ておりますが、特に要求した性能及び製造年月、こういうものに対しては、資料として出されてないのです。今お話を承わりますと、アメリカから貸与を受ける武器については、事前にちやんとこれを、予定があつて、それと照らし合せて検査し、調べて、そうして受取るとなれば、そういう性能とか製造年月とかがわからんはずはないと思うのです。ところが、そいうものを資料として出されておらないので、めくら的に向うから渡すものを、はいそうですかという形で受取つているのじやないか。そうなると、日本防衛というものについて非常に役に立たないぼろ兵器とか、ぼろ軍艦をもらつて、そうしてそれに基いて防衛計画を立てるというのでは、非常な不利になるので、そういう意味から質問した次第であります。
  246. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) あの資料にいろいろ細かく、長さがなんぼで幅がなんぼで、どういう砲を積んでおくということを書き出せないのは、まだ例えば潜水艦千六百トン型をもらいたい、それは何型潜水艦というふうにきまらんのであります。これから交渉をしてきまる。今度の千六百トン型も、まだ附属書としては千六百トン型でありまして、千六百トン型の何型かということは実は確定しておらんのであります。併しあの資料として、千六百トン型の河船、何艦型とすればということで資料を差上げたのであります。故に、いざ借りますときには、例えば千六百トン型でも甲艦型、乙艦型、丙艦型とあれば、その乙艦型の何と、こうはつきりきまるわけです。それはこちらできまる、それによつて性能その他はぴしつとわかる、それでこちらで使い得る見込のものをもらう、向うへ行つてその船がどういう状態であるか、きちつと調べてそうしてもらつて来る、こういう意味でございます。
  247. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは増原次長だけの説明に、対する質疑を打切ります。
  248. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 次にこの際「自衛隊海外出動を為さざることに関する決議案」について、鶴見祐輔君より発言を求めたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 御異議ないと認めます。鶴見君。
  250. 鶴見祐輔

    委員外議員(鶴見祐輔君) 只今お手許に決議文案が出ておると思いますが、念のために読んでみましよう。  本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、ここに更めて確認する。   右決議する。  これが文案でございます。それで只今質問になりました件は、この案の趣旨ということでございますが、その前にちよつとその成行きを申上げると、なおはつきりすると思います。実は外務委員会でMSAの協定の審議をいたしておりましたときに、委員会に私もおりましたので、他の会会派の方々と御相談をいたしまして、MSA協定の本会議において可決せられる直後にこの決議案を出したい、こういうことで、ほぼ話がまとまつておつたのでありますが、併しそれはMSA協定の際に出すということは、国際問題と直接に関係があるようで誤解を招いてもよくあるまい。であるから、防衛法案が通過したのちにこれを廻したいという関係がございましたので、本来は内閣委員会、でお取上げ頂くところを前に外務委員会で取上げておりましたから、私がこの案を皆様方に御相談をいたしまして提出したわけであります。  内容は、自衛隊を作るということが憲法に違反しないかどうかということが非常に長い間議論の焦点になつておりましたけれども、それは結局自衛隊というものが何だということがきまつて来なければ、抵触するかどうかが問題になりませんから、それで自衛隊というものの内容をはつきりさしたいということが非常に大きな狙いでありました。結局、自衛隊というものが昔のような軍隊になるのであれば、これは憲法に違反する。けれども自衛隊というものが憲法第九条の条章の通りに厳格なる意味における日本の自衛のためだけのものであるということであれば、これは憲法に矛盾しないと私は考えておるのであります。従つて、この自衛隊の内容をはつきりきめることが大切である。どこできまるかと申しますと、今まででは、侵略のためには武力を使わない、或いは国際紛争を解決する手段としては使わない、或いはこれは厳重に自衛、日本の国を守るという意味だという抽象的な説明がたびたびあつたわけでありますけれども、例えば、今、侵略という文字を取上げて考えてみましても、第一次の世界大戦のあとでも、戦争の責任はどこにあるか、ドイツの侵略であるかどうかということは、非常に長い間の論争になつて、未だにきまつていないわけであります。第二次の世界戦争につきましても、連合各国日本の侵略というふうに申しましたけれども、現にアメリカの国内において押しも押されもしない中立の立場にある学者たちが、これは日本だけの侵略でないという議論を非常に学問的に発表しております。言い換えれば、この侵略という文字は、結局水かけ論に陥りやすくて、はつきりときまらないという事情でありますから、侵略をするような行為をしないといつただけでは、はつきりしない。又自衛ということにいたしましても、この前の太平洋戦争のときに、日本は自衛ということで満州事変から北支に発展し、遂にインド或いは豪州まで爆撃するというくらいに拡がつて参つたのでありますから、自衛という文字だけでもはつきりしない。そこで、どうしたらはつきりするかと申しますと、日本は幸いにして海の国でありますから、日本の領土というものが非常にはつきりしている。従つて今度できます自衛隊というものが日本の領土の外に出ないのだ、それが我々の考えている自衛ということであり、侵略と区別されるものである、こういうことにいたせばこれが明瞭になつて来る。かように考えまして、海外に出動をしないということを決議をしておきたいということが精神であります。  で、それはどういうわけでそういうことを考えるかと申しますと、その基礎は、申上げましたように、憲法九条の文字に従つてこれを厳格に解釈するということが一つ、いま一つは、憲法九条を支えておる日本国民感情、或いは今日の国民思想を我々は取入れてかように解釈をする、こう考えまして、私は最近、殊に戦争以後に起りました日本国民の中にある戦争に対する考えの変つておること、それを基礎として、これに矛盾しない程度において我々は自衛隊を持つものだということを、はつきり日本国民の意思を本院において表現をいたしておきたいし、同時に、日本自衛隊については外国において二種類の誤解があると思うのであります。一つは、日本がつい九年前まではあのような強い軍国であつたから、この新らしい自衛隊というものがもう一度日本の軍国主義の復活になるではないかという疑い或いは心配が日本に近接する国々の中にある。そうではないのだということを日本国民はつきりいたしておくことが、将来日本と周辺の国々との間の国交の上にも役立つでございましようし、第二の誤解は、日本は非常に勇敢な民族であつて、非常に大勢の人間を持つておる。従つて、できるならこの日本国民を、アジアにおける危険な戦争に、一方のほうの加担者として加勢してもらいたいという考えが又一方にあると思うのであります。現に今日の新聞にもニューヨークの電報として日本に占領中におりましたウイロビイ少将の意見がここに出ております。つまりアジアの戦争において我々アメリカは新式の武器を提供する、そうして日本とフイリピンの人的資源を使いたいということをいつておるようなわけでありますから、即ち一方においては、日本自衛隊の戦前のような軍隊になるようなことを恐れる国があり、他方にはその自衛隊自身を使うというのではないかも知れませんが、日本民族をもう一遍国際戦争に出てもらいたいという意見があります。従つて国内においては、一方においては日本民族がこの九年間に非常に清神的な変化を来たしておると思うのでありまして、本来日本人は決して好戦的な国民ではなかつたのが、いろいろの歴史の事情から、殊に最近におきましては戦争国民のような印象を受けて為りますけれども、本来は、平和愛好国民であつたのが、そのような歴史を最近に持つておる。従つて本来の平和愛好精神に我々は返つて、殊にあの戦争中に受けた我々の幻滅の結果、(「簡単にしませんか」「いいじやありませんか」「失礼じやないですか」「構わずにやつて下さい」「運命に関する問題ですよ」「こちらにお呼びしたのじやないですか」と呼ぶ者あり)それを基礎にいたしまして、私はこの二つの観点から、自衛隊というものを海外に出動をさせないのだということを決議して頂きたい、かような趣旨でございます。
  251. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 本委員会の要請によつて、わざわざお出で頂いて、委員の一人として非常にありがとうございましたが、この海外出動につきましては、本委員会としても、二法案審議する過程において各委員とも重大関心を持ち、質疑の段階においても再三再四問題になつた件でありまして、いずれ本委員会でもこの案件について協議いたしたい、こういう気持で委員各位はおつたわけでございまするが、審議の時間的都合上こちらで十分手を尽し得なかつたところを、発議者のほうでこういう心配をして頂いて、ありがたくお礼を申上げる次第ですが、ただ一点発議者に伺つておきたいのでございますが、それは、海外出動はこれを行わないこととなつておりますが、この海外出動を発議者の皆さんはどういうふうにお考えになつていらつしやるか、ということは、MSA協定の際もそうでありましたが、この防衛関係法案審議する過程において、領空、領海の問題とか、更にはこの他国から直接侵略を受けた場合に、具体的に言つて長距離砲等によつて攻撃された場合に、自衛のためにその拠点を叩くというような場合とか、或いは後方補給に従事するとか、場合によると、表現はいろいろむずかしいでありましようが、公務員として集団的に出張するとかいろいろな論議が行われて、この海外派兵、海外出動という定義が明確になつていないので、政府のほうで海外出動、海外派兵はしないと答弁しながらも、国民は何らかの形でそういうことがあるのではないか、こういう危惧の念を持つているわけです。そういう国民の持つ危惧の念を払い、そういうことを今後絶対に起させないために、何らかの委員としての意思表示をしたいものだ、こういうふうに私ども考えておつたわけでございまするが、ここの案文に丁度海外出動はこれは行わないことと、海外出動という言葉で現わされていますので、発議者の方々はどういうふうにお考えになつているのか、その一点と、それからもう一つは、発議者を拝見いたしますと、各派の議院運営委員の代表と、外務委員会の御有志のかたで発議なさつたやに拝見するのでありますが、さようであるか、その二点だけ。
  252. 鶴見祐輔

    委員外議員(鶴見祐輔君) 第二の点は簡単でございますから、それから先にお答えいたします。これは各派の共同提案という形で出るのではございません。従つて今外務委員会のほうで御署名を頂けるか方々の御署名、及びいま一つ委員会の審査を省略するというのがございますから、そのとき議院運営委員会のかたにお願いをいたす。  それから第一の点でありますが、今お話の点が、私は政府のいろいろな委員会における、衆議院及び参議院での答弁が必ずしも一致していないということを心配しておるのであります。今、例をお引きになりましたように、拠点を外国に持つて日本を撃つ場合、その拠点まで行かなければならんということになりますと、非常に足の長い飛行機で、或いはアジアの奥から、或いはヨーロツパから撃つこともありますから、日本の軍隊が海外に出動するということになると、きりがなくなるということであります。前線攻撃とか、後方防禦ということが非常に議論になることであると思いますので、こういう窮屈な文字を入れたわけであります。  それから自衛隊関係のない人たちの外国に行くことについては、我々は向も関係いたしておりません、今論じておりますのは自衛隊関係者だけでございます。
  253. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私のほうは千田正君が会派を代表して発議者になつておりますので、多くは異論はないのですが、外交の専門家としての鶴見さんに一点、平和条約と海外派兵の問題について、いつか私ははつきりさせたいと思つていたのですが、御意見を承わりたい。  それは政府が如何に海外派兵はしない、しないと言つても、いつかさせられるのではないかという危惧がやはり相当あると思う。それは御承知のように平和条約五条三項ですか、あれによつて、平和条約を結ぶときに、国連に加入しなくても日本は国連に加入したと同じ義務を負うということになつておりますので、日本は国連に加入していないけれども、国連に加入したと同じ義務を負うという条約を結んだ以上、国連から要求された以上は、政府が派遣しないといつても派遣せざるを得ない。あの条約の建前から行くとそれは拒否できないのじやないか。これは朝鮮戦争のときはたまたま国連協力の形は、弾薬の補給とか、軍需品の提供とか、基地の提供等々で協力しましたが、この軍隊、或いは部隊等の出動については、要請されなかつたから、いいようなものですけれども、条約に基いて国連から海外派兵を要求されたときにはどういうことになるのか。この点一つお伺いしたいと思つております。
  254. 鶴見祐輔

    委員外議員(鶴見祐輔君) それは私個人の考えお答えするほかございませんが、国連から日本に要求があつたという場合でありますが、この場合にどういう形で、どういう具体的な要求があつたかに従つて、時の政府日本の主体性を堅持して決定すべきものと、かように考えております。
  255. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 議事進行について。只今この発議者の一人の鶴見さんから説明を承わつたわけでありますが、私は議事進行として、この決議案の案文を拝見しましたし、説明も承わりましたので、本委員会においては、この決議案に賛成の意思決定をするように、案件としてこれを取上げられるよう提案いたします。
  256. 岡田宗司

    岡田宗司君 賛成いたします。
  257. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは矢嶋委員の提案は、一応理事会を開いた後にお諮りしたらどうだろうと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  258. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 暫時休憩いたします。    午後四時十一分休憩    ―――――・―――――    午後七時四十五分開会
  259. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 休憩前に引続いて委員会を再開いたします。  この際お諮りいたしますが、先ほど自衛隊海外出動を為さざることに関する決議案について鶴見祐輔君より説明を受けましたが、当委員会としてもこの趣旨に賛成であることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  260. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 議事進行について。これにて防衛法案に対しまする質疑を打切りまして直ちに討論採決に入られんことの動議を提出いたします。    〔「反対々々」と呼ぶ者あり〕
  261. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今石原委員の質疑打切りの動議に反対いたします。    〔「まだ動議成立してない」「まだ賛成者ないから成立していない、やり直しだ」と呼ぶ者あり〕
  262. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 今の石原君の動議に賛成いたします。    〔「では動議を議題にして下さい」と呼ぶ者あり〕
  263. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは只今石原君の動議を議題といたします。
  264. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今石原君から提出されました質疑打切りの動議に反対いたします。反対の理由は、日本の運命にも関するような重大なこの二法案審議に当つて、この審議がまだ十分なされておらない。この原因はどこにあるかといえば、その根本は、総理が病気の故もございましたが、国会を長期休んで、そうしてこの法案審議が遅れて来た。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)それで参議院に回付される時期が遅くなつた。そうして他の法案とも非常に輻湊しまして、十分な審議が会期中にできなくなつて来たということが一つの理由だと思うのです。  第二の理由は、一応最初きめた会期では十分審議ができないので、それでは国民に対して相すまないから、賛成反対の立場をとる人たち、賛成の人も反対の人も、とにかくこの法案日本の運命にとつて重大であるから、会期が短かければ、十分審議できるだけ会期を延ばして、そうして慎重審議しなければならん。あとでも討論でその意見は述べますから省略しますけれども、なぜこの法案を急いで上げなけりやならないか、一日を争つてなぜこの法案を上げなけりやならんか、その理由がどうしても見付からない。こんな重大な日本の運命に関係のある法案ならば、ここで十日や一週間延ばして慎重に納得行くまで審議することがなぜできないのか。そのできない原因は結局総理外遊にあるわけです。総理は四日に外遊するというので、そのために十分な審議ができない。それが国会審議にしわが寄せられて来ている。こんな私は不合理なことはないと思うのです。そのために我々がこの重大審議を怠るということは許されないことです。従つて、若し又この法案が通つた場合のことを考えますと、この法案を仮に賛成された方が、こんなはずではなかつたんだ、こういうような軍隊を作らせるはずではなかつた、それならばもつと十分にあのときにこの法案審議して欠陥を指摘してこれを是正すべきであつたというような悔いを残さないとも限らない。賛成する人も十分にこれを審議尽すべきだ。反対する人も十分に審議を尽して、日本の民族の将来にとつて間違いない結論を出すべきだと思う。それにしてはこれまでの審議は余りにお粗末です。更に又、一応会期が三日までに制限されたものとしまして、その範囲内でもまだ時間の余裕はあるのです。即ち本日残された逐条審議を精力的にやつて、そうして明日の本会議に上げる。これはもうぎりぎりのところでしようけれども、それだけのベストを尽さなければならない。それをなぜ一刻を争つて、殆んどこれに対して自由党の諸君が一言も質疑をしていないのです。これで国民に対して済むと思いますか。あとで欠陥が生じた場合、いやそんなはずではなかつたといつても、追つつかないわけですよ。従つて無所属クラブでは、こんな不合理な審議の仕方では国民に対して相済まない、(「正論だ」と呼ぶ者あり)本日中に質疑を打切つて討論採決にもつて行くことに対しては断じて承認することがてきない。そういうふうに無所属クラブとしては意見が一致したのであります。これまでこの結論を出すために相当時間を費しまして、他会派の方に非常に御迷惑をおかけしましたが、事情は今私が申述べたような次第でございまして、折角他会派の方が一応まとまつてそうして只今討論採決に入るまでに至りました。そうして石原君が今動議を出されましたが、その動議に賛成できがたいわけでです。非常にこれは遺憾でございますが、そういう事情を御了承の上、この点了解をして頂きたいと思うのです。  以上私は反対理由を述べましてこの質疑打切を認めることができない。(「委員長採決々々」と呼ぶ者あり)
  265. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは先ほど石原君の提案されましたところの防衛庁設置法案及び自衛隊法の二法案についての質疑を打切ることに対する動議について採決をいたします。動議に賛成の方の挙手をお願いいたします。(「反対」と呼ぶ者あり)    〔賛成者挙手〕
  266. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 多数でございます。動議は成立をいたしました。よつて防衛庁設置法案及び自衛隊法案の二法案についての質疑は終結をいたしました。  続いて討論に入ります。御意見のおありの方はそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。
  267. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は社会党第四控室を代表いたしまして、防衛法案並びに自衛隊法案に対しまして反対をいたすものでございます。  第一に、この自衛隊法案に基いて作られますところの自衛隊なるものは、明らかに日本国憲法第九条に違反するものであると断定せざるを得ないのでございます。自衛隊法案の第三条に、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」、こうありまして、これは保安庁時代におけそいわゆる保安隊の任務とは非常に違つたものになつておるのであります。即ち保安庁法におきましては、この点について「保安庁は、わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊を管理し、運営し、及びこれに関する事務を行い、あわせて海上における警備救難の事務を行うことを任務とする。」、かようになつておるのであります。かように保安隊から自衛隊へと変化いたしますと共に、公然とこの自衛隊は直接侵略並び、に間接侵略に対抗する武力としての存在になるわけであります。従いまして、これは私どもの常識からいたしますならば、明らかに軍隊と言わなければなりません。これに対しまして政府側は、総理大臣或いは木村保安庁長官緒方総理も、そのほかすべての大臣たちは、たとえ保安隊が自衛隊に切り換えられてもこれは軍隊ではない、こう言つておるのであります。併しながら木村保安庁長官は、若し直接侵略並びに間接侵略に対抗する武力が軍隊と呼ばれるならば軍隊と呼ぶのもよろしかろう、こういうふうに言つておる。併し自分は軍隊だとは思わぬ、軍隊というものの定義如何によるのだと、こういうことを言つておるのでありますが、木村保安庁長官の言う軍隊なるものの定義は示されておらないのであります。併し、世間において直接侵略並びに間接侵略に対抗する武力が軍隊であると呼んでおるならば、保安隊或いは自衛隊を軍隊と呼ぶもよろしかろう、こういうことは、明らかにこの自衛隊が実質において軍隊であるということを認めたものにほかならない、こういうふうに私どもは感ぜざるを得ないのであります。ところで、この自衛隊なるものの内容を検討してみますならば、明らかに軍隊であることに間違いはない。殊に今次の増強計画によりまして、自衛隊は三年の組織を持つことになるのであります。陸軍に当りますところの陸上自衛隊、海軍に当りますところの海上自衛隊、空軍に当りますところの航空自衛隊、こういうふうに、これはもう明らかに軍隊たる実質を備えて来ておる。この事実に対しましては、さすがに政府もこれをはつきりと軍隊でないと言い切ることはできなくなつて参りました。そこで、この軍隊なるものの定義がだんだん変つて参りまして、戦力なき軍隊などというとんでもない定義をお作りになつて、そしてこれが憲法に言うところの戦力ではない、こういうふうに断定されておるのであります。先ほど私ども保安庁の当局者から、この自衛隊が持つところのいわゆる戦力の程度について聞いたのでございます。勿論旧帝国陸軍時代から見ますならば、成るほど火力もその当時の三倍くらいのものを持つようであるし、或いは機動力も持つておるようであります。併し、全体として見ますならば、或いはいわゆる近代戦に堪え得ざるところの極めてちやちな軍隊である。従つて、そういう意味ではまさしく戦力なき軍隊と呼ばれるかも知れません。恐らくこれはいわゆる強固の軍隊と開戦をいたした場合には戦力なきことを証明するものでありましよう。併しながら、そうだからと言つて、これが軍隊でない、そうして又憲法に規定する戦力でないとは言えないのであります。これは今後立派に戦力になり、そうして軍隊になる素質を持つておる。本格的な軍隊になる素質をこの自衛隊法によつて備えるに至つておるのであります。従いまして、これが憲法に違反するものであることは誤まりもないことであります。憲法の第九条におきましては、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」こういう言葉が出ております。この陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊は陸海空軍でな、いというのは名だけであります。実質は軍隊であることは間違いない。陸海空軍であることは聞違いない。仮に一歩譲りましてこれが陸海空軍でないといたします。そういたしますならば、これは何になるか。こここに含まれるところのその他の戦力になることは明瞭であります。近代戦を遂行する能力、攻撃をする能力を持つておらないにしても、これは戦力の卵であることは明瞭であります。従いまして、仮に陸海空軍でないと一歩を譲りましても、このその他の戦力のうちにも入るべきものと、こう言わざるを得ない。そういたしますと、これは明らかに又憲法違反の実質を備えたものである、こう断定せざるを得ないのであります。政府は最初に警察予備隊を作りまして、その際におきましては、これは警察の任務を帯びるものである。普通の警察を補うところの力であつて、専ら国内の治安の維持に当るものである。こう説明をして参りました。併し、その後漸次増強されて保安隊になり、今日自衛隊に発展して参つておるのであります。だんだんに、おたまじやくしの足が取れ、しつぽが取れて、一人前の蛙になりつつある、こうなつて参りますならば、これは憲法に合わない存在になつて参ります。そこで、この自衛隊が憲法に合わなくなつて参りますというと、政府といたしましてはいずれ憲法を改正せざるを得ないことになるでありましよう。それを企てざるを得なくなるでありましよう。吉田首相初め現政府の人々は、現在の段階では憲法を改正する必要はない、こう言つております。併しながら、すでに子供は成長いたしまして、もはや三つになりました。子供は産衣を来ておるわけには参らなくなつた。こういうような段階に達した。そうして、首相も又国会等におきましては憲法改正をするということを断定はしておりませんけれども、すでに自由党におきましては憲法改正を調査する機関ができ、憲法改正の準備を着々と整えつつある状況にあるのであります。従いまして、かような憲法違反になるところの自衛隊を設け、これを漸次増強して本格的軍隊にいたしますと共に、この憲法を改正して行こうということを企図していることは明らかであります。私どもは、現在の憲法がいろいろな点におきまして不備もあるかも知れません。又その成立の過程におきまして、これはアメリカ側から草案を押付けられたものであるというようなことから、これを改正しなければならんという意見があるかも知れません。併しながら私どもといたしましては、平和を守るためこまこの憲法を守つていかなければならんと考えております。自衛隊が今日憲法違反であり、更にこれを発展さして行つてこの憲法を脱ぎ捨ててしまう、弊履のごとく捨て去ろうということに対しましては、飽くまでも社会党といたしましては反対せざるを得ないのであります。そういう意味におきましては、この防衛庁法、自衛隊法に対しては、飽くまでも憲法違反の立場から反対せざるを得ないのであります。  第二に、この自衛隊なるものは、一体本当に日本防衛の必要から生まれ、そして、その目的のために組織され、これが増強されているのだろうか。断じてそうではないのであります。政府当局者は、これは日本防衛のためである、こう言つております。併しながら、この自衛隊の前身である保安隊、その又前身である警察予備隊が置かれました状況から断じますならば、先ず警察予備隊が置かれましたのは、朝鮮事変が起りますと同時に、マツカーサ一元帥の一片の命令によりまして、何ら国会承認を経ることなく放置されて参りました。その予算も又国会承認を経ずして支出されてできたのであります。更に警察予備隊が保安隊になりました。七万五千は絶対に殖やしませんと言つておりましたものか、ダレス氏が日本に参りまして、そして警察予備隊の拡充を日本政府に要求いたしますや、日本政府はこれを容れまして、警察予備隊七万五千を十一万に増加し、又アメリカから武器を受けて、これを一属本格的軍隊にし、更にはアメリカから十八隻のフリゲート艦或いは又五十隻の上陸支援艇を貸与されまして、そして海軍を作るに至つたのであります。警察予備隊が保安隊に増強されました事情を見ましても、当時の日本の置かれました情勢から、日本が殖やすべきものであると判断してやつたのではなくて、ダレス氏によつて押付けられたものである。即ちアメリカ増強を必要として日本に押付けて参つてこれが殖えたということは当時の事態から明らかであります。又、最近これが自衛隊になつて、いよいよ本格的軍隊化して参りました。これが更に十三万に増強され、海軍、空軍が置かれることになつて参りました。このいきさつを見ましても、アメリカからの要求であることは明瞭であります。即ち昨秋池田勇人氏が首相の特使として向うに渡りまして、ロバートソン国務次官補といろいろと日本の軍備並びにアメリカからの援助という問題について協議をしたのであります。その内容は発表されておりません。新聞等に発表されたところを追及いたしましても、政府は言を左右に托してその内容を言わないのであります。併しながら池田・ロバートソン会談、その後東京に移されました岡崎・アリソン会談、そういうようなものから推して参りまして、又その後成立いたしました、今国会において承認されましたMSAの援助協定、こういうものから見ますならば、明らかに自衛隊も又アメリカの要求によつて増加されておることは明らかであります。更にこの増加の計画につきましても、日本側において五カ年計画とか或いは三カ年計画ができておるのかということを私どもは追及しておりますが、木村保安庁長官その他はこれについては何ら答弁を与えません。勿論細かい具体的計画は或いはできておらんかも知れませんけれどもアメリカとの話合いによりまして、そうしてこれを漸次増強して行くという一種の枠が成立しておることは、いろいろな点から推断して誤りはないと思うのであります。来年度におきましても自衛隊は更に増強され、更に三十一年度におきましても増強されるでありましよう。その後において更にそのテンポは早くなるものと、私どもには推測されるのであります。  然らばアメリカは何故に日本に対しまして警察予備隊を設けさせ、又これを増強さして保安隊とし、これを自衛隊に発展さしたのであるか。これはアメリカ世界政策、アメリカの戦略から来ておるものと断定せざるを得ないのであります。アメリカはソ連と対峙しております。アメリカは相対立する二大陣営の一方の旗頭である。そうして世界においてソ連と対抗する軍備計画を進めておる。これは単にアメリカが各地に基地を持ち、アメリカの軍隊をそこに配置しておるだけではない。軍事同盟国を求め、その国々にいわゆるMSA援助を与えて軍備を強化させ、いざという場合にアメリカの戦略に従つて、而もアメリカの将軍の指揮下にこれを置いて使う、こういうような方法で各国における軍備を促進しておるのであります。日本と同じように戦いに敗れ、軍備をことごとく禁じられました西ドイツにおきましても、今日アメリカは再軍備を促進しておるのであります。それと同様な立場において日本における再軍備を推し進めておるのであります。即ちアメリカは、東洋におきましては、中国が共産党の治下に入り、更に朝鮮におきましてああいうような事件が起りましてから、東洋におけるアメリカの戦略地点を固め、又東洋における人的資源に目を付け、工業力を動員して、それをアメリカ世界政策と戦略目的のために使わんとしておるのであります。アメリカ日本位置に目を付けております。そしてこの日本にたくさんの軍事基地を占領以来引続き保有し、多くのアメリカの軍隊を駐屯さしておる。而も地上軍につきましてはこれを漸次現地軍に置換えようという基本的な方針を持つておりますが、海軍、空軍はいつまでもこれを駐屯さして、そしてアメリカの戦略目的のために役立たしめようとしておる。又それぞれの国の原料なり工業力をそれに利用せんとしておるのでありますが、同時にマン・パワーに眼を着けておるのであります。アメリカは自分たちの生産いたしました、そして朝鮮事変において余つた武器を日本に押付け、そして日本の青年を武装いたしまして、アメリカ軍を引揚げた代りに現地軍としてネーテイヴ・アーミーズとして使おうとしておるのであります。このことは露骨には成るほど言つておりません。若しアメリカ日本の国内におきまして露骨にこのことを明示して、政府に再軍備を押付けて参りますならば、国民から猛烈な反対が起るのでありましよう。そして国民の反米態度というものは非常に強くなつて参るでありましたう。従つてアメリカはさようなことはいたさないのであります。そして日本政府に圧力を加え、日本政府が自発的に再軍備の方向をとるという形をとらえ、この自衛隊増強せしめておるのであります。自由党政府はこのアメリカの政策に協力をいたしまして、今日アメリカの戦略目的によつて動かされるところの自衛隊を作りつつあるのであります。私どもにとりましては迷惑も甚だしいものと言わなければなりません。我々はこの自衛隊が、アメリカから見ましてネーテイヴ・アーミーズとして、そしてこれが動員されるということに対しましては心から憤激を感ぜざるを得ないのであります。この点を考えまして、私どもはこの自衛隊の本質であると断じ、そしてこれに反対せざるを得ないのであります。更にこの自衛隊増強について、私どもは怪訝に堪えないのは今次十一万の保安隊が増強されて十三万になる。或いは海上自衛隊航空自衛隊増強されて行きますが、若し本当に日本の国を守るというのでありましたならば、当然やはり一定の国防計画がなければなりません。行き当りばつたりにアメリカからの要求によつて殖やすというようなことはないはずです。ところが増強計画は、三年計画とか、或いは五年計画というものがないと、こう言つておるのであります。私どもはこれは信ずることができない。恐らくすでに一定の基準があつて、これをやつておるのだろうと思うのでありますが、政府はこれを国会において明らかにしないのであります。我々が如何にこの点につきまして政府に問い質しましても明らかにしておらんのであります。如何なる国におきましても国防に一定の計画がないなどということはもつてのほかであります。勿論、防衛庁法におきまして今度国防会議が設けられることになります。そしてこの国防会議におきまして、国防の基本計画等が論ぜられることになる。そうしてそれが作られることになるのでありましよう。併しながらその以前におきましても、今日増強が行われるには一定の大体の計画によつておるものと言わざるを得ないのでありますが、これに示されていない。従つて今後これはどういうふうに殖えて行くのか、又これが日本の経済力との関係においてどういうふうな位置を占めるのか、そういうことが明らかでないのであります。そういうような点から見ましても、私どもはこの自衛隊計画が全く行き当りばつたりである、こういうふうに断定いたしまして反対せざるを得ないのであります。而も本年は日本の経済を見ますというとよくない。日本の経済は輸出入のバランスがとれておらんのであります。特需によつて支えられておる。或いはアメリカから若干の外資導入或いは海外からの援助というようなことで支えられて参つておりますが、それでもなお且つ多くのドルを失いつつある現状であります。政府はこの状況に驚きまして、そうして本年の予算はいわゆる緊縮予算といたしましていろいろな費目をぶつた切つておるのであります。その結果、日本は今日一種の不況の状態に立つておる。毎日の新聞を見ますならば、中小企業どんどんと倒産をしておる。又多くの失業者が出て来ておるのであります。単に中小企業や或いは労働者が苦しんでおるだけではない。相当大きな企業にも波及して参つておりまして、不況は漸次深刻化しておるのであります。恐らく昨年から見まするならば、国民所得が殖える、そうして増強計画に対して何ら経済的負担にならないなどということはあり得ない事態になつておるのであります。然るにもかかわりませず、こういう中において、自衛隊増強するためにのみ、その項目のみ多くの予算を殖やして来ておる。即ちバターか大砲かというような問題、これが私どもの眼の前に迫つておるのであります。我々は、国民経済を圧迫し、国民の生活を塗炭に陥れてまで、アメリカから要求され、アメリカの戦力の戦略目的によつて動かされるがごときネーテイブ・アーミイを作ることには断乎として反対せざるを得ないのであります。而もこの軍隊は、単なる国内において、日米安全保障条約によつてアメリカ軍と協力をして日本防衛するというだけのものではないようであります。行政協定の二十四条等から疑われますことは、海外派兵の問題であります。若し長官或いは総理の言明のように、海外派兵が憲法上の建前から行えないものである、又行わないというならば、国民は安心するはずでありますけれども、今日この委員会において海外自衛隊海外出動をなさざるの決議案が出るような事態は、海外派兵の危険があるということを物語つておると言わざるを得ません。アメリカはそのために自衛隊を育てておる。又、私どもは、インドシナにおける擾乱から結果いたしますところの東洋における形勢の変化、特にジユネーヴ会議等が決裂いたしました後に起るであろうところの事態、即ちダレス長官が言う太平洋における防衛同盟、或いはSEATO、こういう軍事同盟を作りまして、日本が若しこれに参加することを強要されるといたしまするならば、そのときには、憲法があろうが、何があろうが、アメリカの実力によつて海外派兵を厭でも応でもなさざるを得ない状況に追込まれることも又予想せざるを得ないのであります。私どもはかようなことから見ましても、今日アメリカの要求に従つて易々諾として自衛隊を作るがごときことには断乎として反対せざるを得ないのであります。なお多くの点におきまして、私はこの自衛隊並びに防衛庁法に反対せざるを得ない理由があるのでございますが、すでに時間でございますので、これを以ちまして私の反対討論を終りたいと存じます。
  268. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 私は自由党を代表いたしまして防衛庁設置法案及び自衛隊法案に対しまして、政府原案に賛成の意を表するものであります。討論の内容並びに要望事項等もかずかず用意しておりましたが、時間の関係上、全部を本会議に譲ることといたしまして、政府原案に賛成する次第であります。(「討論をやりなさい」と呼ぶ者あり)
  269. 山下義信

    山下義信君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、本法案に反対の意を表するものであります。  反対の理由の第一点は、言うまでもなく、本法案は憲法蹂躙の法案であるということであります。一国がその独立と存在を維持し、国民の生命、自由及び、幸福を追求するの権利を実効的に保護して行くためには、これらを侵害しようとする実力に対抗するための実力組織を保有しなければならないことは、これを認めなければならないし、又それは国家に課せられた重大な任務であります憲法上の義務であることは我々又認むるところであります。併しながら、その実力組織の任務は厳重にその範囲に限定があるのでありまして、憲法第九条がその保持を禁止する陸海空軍その他の戦力に至ることは許されないのであります。日本国憲法はその前文におきまして、われらの安全と生存は、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼することによつて保持しようと、決意を述べております。政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないように決意し、そのために特に第九条を設けまして、日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄し、その実効を挙げるために、陸海空軍その他の戦力を保持せず、又、国の交戦権を認めない旨を宣言しておるのであります。ここに陸海空軍その他の戦力というのは、前文及び第九条の条文から見まして、明らかに戦争遂行能力即ち対外的な戦闘を行う手段となる一切の手段を言うのでありまして、憲法第九条の第二項は、その前段において、陸海空軍その他の戦力即ち対外的実力組織の保持の禁止を規定し、その後段におきましては、国の交戦権即ち法律上の戦争能力の否定を規定しておるのであります。第九条第二項は、前段、後段相待ちまして、国の一切の戦争遂行能力を否定しておるものと解釈すべきであります。国の保有する実力組織が戦力と言えるか否かは任務によるのでありまして、国の保有する実力組織が憲法にいう陸海空軍その他の戦力と言えるか否かは、その実力組織の任務が対外的戦闘目的を有するか否かによつて決定すべきものでありまして、政府の言うがごとく、その実力組織の規模が近代戦遂行能力を有するか否かによつて定めるべきものではないと考えるものであります。憲法が禁止しておるのは近代戦の遂行ではなくして、一切の戦争であります。その戦争行動が近代戦的規模を有すると否とは憲法の禁止にかかわることではないのでありまして、一切の戦争行動は、それが近代戦的規模を有すると否とにかかわらず憲法上禁止されているのであります。一切の戦争行動を禁止する方法として、すべての陸、海、空軍その他の戦力の保持を禁止するものでありますが故に、その戦力の内容が近代戦遂行能力を有すると否とにかかわらず、戦争遂行能力の保持はすべて禁止されておるのであります。即ち、憲法が禁止している戦力の意義は、この実力組織の規模の如何によつて定めらるべきものではなく、その実力組織の任務によつて定めらるべきものと言わなければなりません。憲法が戦力の例として挙げております陸、海空軍という言葉は、まさにそのような対外的戦闘目的を有する実力組織を言い現わすものであります。政府が対外的戦闘目的を有する自衛隊を軍隊と呼んでもよいと言わざるを得ないのは、軍隊という言葉が一般に対外的戦闘任務を有する実力組織を有すると言い現わしたことを確定しておりまして、これを否定し得ないからであります。憲法の解釈に当りましても、言葉の持つ正当な意味は、これを故意に曲げることは許されないのでありまして、憲法が保持を禁止する陸、海空軍その他の戦力とは、まさに軍隊の保持の禁止であり、更に言葉を換えて申しますれば、対外的な戦闘目的を有する実力組織の保持の禁止であるのであります。自衛隊法第三条は、前論者も申しましたごとく、その自衛隊任務といたしまして、直接侵略に対し、我が国を防止することを主たる任務とすると明言しておるのでありまして、自衛隊はまさに憲法で保持を禁止する対外的戦闘目的を有する実力組織であり、軍隊でありまして、従つて自衛隊を持つことは憲法違反であると断定するものであります。政府が如何に言葉の魔術を以ていたしましても、我我は明らかに憲法違反である自衛隊に断乎反対するのが我が党反対の第一の理由であります。  第二の理由といたしましては、平和を念願する我が党は、平和の破壊を招来する虞れが多分にあります本法案に反対するものであります。自由、平等及び正義に基く恒久的な国際平和の実現は、我が党の基本的念願とするところであります。これがためには、民主社主義が、単に国内的のみでなく、国際的にも実現せられ、各国、各民族の間に正義と平等と経済的均衡がもたらされ、国際緊張の原因が除去されることを望むものであります。従つて我が党は、国際連合の世界性の強化、国連監督下における各国軍備の撤廃を主張し、一方又、植民地主義の払拭と、先進国と後進国間の経済的不均衡の是正のために、社会主義インターナシヨナル、アジア社会主義及び国際自由労連と連携いたしまして、果敢なる闘争を行わんとするものであります。相対立する二つの世界に対しましても、以上の理想主義的な平和の見地からその対立の解消に努めることは勿論であります。その原因としては、資本主義の矛盾と行き詰りにあることを認めつつ、他方、国際陣営の膨脹政策に基く国際平和に対する非協力的態度に対しましては、批判的にならざるを得ないものであります。併しながらこれに対しまして、専ら力を以て強圧せんとする態度に対しましては、我々は断乎として反対するものであります。自由世界、民主陣営の団結と協力は認めますけれども、力を以てこれに対処せんとすることには我々のにわかに賛同しがたいところであります。いわんや武力を以てせんとするにおいてをやであります。我が党は、平和確保の具体的手段として、国連による集団保障制度を支持し、いわゆる中立主義を排除し来たつたのであります。併しながら現行日米安保条約は変態的な不平等条約でありまして、当初からこれに反対し、その根本的改訂を主張いたしておるものでございます。かくて自衛権、自衛力に関する我が党の方針は、独立日本には当然自衛権ありとなし、自衛権の裏付けとしての自衛力が独立国にあります以上当然に保有すべきものであります。問題は自衛力の内容であります。自衛力即ち武力という考え方はとらないのでありまして、否むしろ自衛力の根本は国民の国を護ろうとする意欲であり、精神力であると考えるものでありまして、更にこの意欲の支柱となるべきものは、間接侵略を寄せつけないような強固なる経済的地盤であり、公正且つ平等なる社会秩序であると考えるものであります。従つて我が党は先ずその自衛力を培養すべきであるという立場に立つものでありますが、それには先ず国民の経済を再建し、勤労大衆の生活を安定し、以て基礎条件を確立すべきことを主張するのであります。而して自衛力の中には警察力あり、その他間接侵略に対する自衛力あり、理論上は直接侵略に対抗する防衛力もあり得ますけれども、我が党といたしましては、一切の戦力を禁止しております現行憲法を遵守し、保安隊を今次拡充せんとする自衛隊のごときは明らかに軍隊の様相を招くものと思うのでありまして、国内平和、政治と軍隊の様相を明らかにし、且つ又国際平和を、政治を第二義、第三義として武力によつてのみ国の平和を図らんとするがごとき武断政治に対しまして、かくのごときは平和を破壊する悪政治であるといたしまして、本法案に反対する第二の理由とするものであります。  第三点といたしましては、本法案米国より強要せられ、且つ又米国従属の防衛計画であるという点であります。政府が憲法を破壊し、国力を顧みず、ここに防衛力を増強し、自衛隊を設置せんといたしますことは、誠に米国の要求に従つたものでありまして、決して自主的に計画せられたものでないことは明白であります。疑いもなく米国の強要によるものである。MSA協定はこれを証明いたしておる。経済的生存に窮せる日本の窮状につけ込んで、軍事援助を条件といたしておるのであります。溺れる者藁をもつかみかねておる日本の弱味に、間断なき恫喝を以て、その本旨である再軍備を強いんといたしておるのであります。僅少なる軍事援助によつても当面の枯渇を癒やさんとする日本経済の弱体は、実に敗戦国として領土を割譲せしめられ、アジアにおける貿易権を抹殺されたことに基因するのでありまして、彼らみずから日本の咽喉を施し、その窮するに及んで、援助の美名の下に日本の再軍備を強要し来つたのであります。米国の着目いたしておりますところはもとより日本の人的資源であり、彼等の目的とするところは、日本人の犠牲におきまして米国自体の防衛を全うせんとするものであります。日米共同防衛という美名によりまして彼らは彼らの生存を全うせんとするものであります。従つて今回増強せられる自衛隊は全く米軍に従属する建前をとられ、いわゆる米国の傭兵的性格を顕著にいたしておるのであります。自衛隊の組織によりまして我が国を防衛するという観点からしますならば、四面環海の我が国といたしましては、当然航空とか海上防衛が主体でありますことは勿論でありますが、海上自衛隊航空自衛隊は名のみになりまして、内容は地上部隊に主力を注がれて、如何にも独立防衛三軍方式がとられたようなことになつておりますが、実質は地上部隊が主であります。我が方のみでは自衛の目的を達しがたきことは当局も言明いたしておるのであります。米国にすがるよりほかないと言つておるのであります。我々は、我が方が主となつて米国駐留軍の力を援助させるという関係が堅持されますならば、そういう場合が予想されますならばともかくでありますが、それとは反しまして、米軍が主となつて日本自衛隊が利用されるという場合を考えますと、国民は非常な不安に襲われるわけであります。朝鮮戦争の人海戦術を見ましても、日本の人的資源に目を付けられるということは誠に気持の悪い話であります。アイクが曽つて申したアジアはアジア人の手でということは、これを意味するのである。アジア人はアジアで血を流せ、これに多くのドルを投入することは米国民の欲せざるところであると米国国民は申しております。ノーランドは、我々は日本の人的資源を欲する。これに武器を与え、米国の極東における番犬たらしめんと公言いたしておるのであります。厖大なる軍事顧問団は、目に見えざる米国の間接的指揮官、兵器は申すまでもなく、米国の貸与兵器である。訓練はことごとく米国式である。現に二百名の自衛隊員が米国に教育を受けに行つておる。操典はことごとく米国顧問団が交付してその翻訳によるものである。こうして作られた自衛隊米国の従属に適するように編成されておるのであります。防衛出動に当りましては、指揮官は両方で話合うということになつておりますけれども、事実は米軍が指揮官となつて、何となれば我が方には少将級しかないからして、第一、作戦計画を立てようにも我々には情報というものを握ることもできません。又データもないのであります。すべて米軍の作戦に従わなければならんことは申すまでもないのであります。あらゆる面におきまして米国の傭兵的性格を持つこの防衛法案に対しましては、かかる見地から断乎反対せざるを得ないものであります。  反対の理由といたします第四点は海外派兵不可避であるという点であります。海外派兵はしないのかできないのか、その法的根拠に対しましても政府はいろいろ申しおりますが、併しながら、米国相互援助法からいたしましても、遂に海外派兵を拒否し得ざる虞れが多分にあることは明白であります。若し憲法上これを許さずというならば、本法案中にこれを明記すべきでありまして、これなき点は実に憂慮に堪えざるところであります。海外派兵の反対の立場からいたしましても断乎反対せざるを得ないのであります。  第五点は、国民の恐れておりまするところは徴兵制の実施であります。徴兵制が免れざるということは、これは明白であります。今日すでに徴兵制実施の前提といたしまして、政府は教育二法案の成立を図り、或いは警察制度の改正を現に企てておる、これらことごとく徴兵制の準備行動と言わなければなりません。我々はこの点からいたしまして断乎反対の意を表するものでございます。  第六点は、国力不相応の危険のある軍備であるということであります。この計画国民経済を破壊し、国民生活を圧迫することは極めて明白であります。詳細な論点は省略いたしますが、この点から私どもは断乎反対の意を表するものでございます。  反対の理由の第七点は、これら防御二法案は極めて欠陥の多い法案であるということでございます。第一、国防会議のごとき誠に無用の長物でございます。国防会議に対しまする我が党の見解といたしましては、かくのごとき国防会議の設置を無用とするものでございます。国防に関しますることは国会が中心になればよろしいのである、又、内閣が責任を持つてやればよろしいのである。内閣国会との直結こそ、内閣責任制、民主主義の骨格と言わなければなりません。その内閣責任制がややもすると侵されんとするがごとき、而うしてあたかも無用の長物化することが明白な、かくのごとき国防会議に対しましては、我々はこれを無用の長物とするものでございます。恐らくかくのごとき国防会議の設置を主張いたしまする者は、何らか一片の野心を包蔵するものの強要に基くものと言わざるを得ません。  又、法案の欠点の第二といたしましては、文官優越主義が崩壊せられておるということでございます。この制服幹部の文官任用の制限を撤廃することは、軍閥復興の基を作ることは明々白白の事実でございます。  第三は、無力にされた防衛庁長官の権限という点でございます。指揮権のない防衛庁長官、幕僚のない防衛庁長官、或いは幕僚会議長に実権が集中し、議長と幕僚長との上下の指揮命令系統ができまして、ここにいわゆる武官専横の基を開く端緒と相成つております。我々はかくのごとき構想は誠に将来のため憂慮に絶えずとするものであります。又今回新たに参事官の制度を作つておりますが、これらも徒らに多くの専横を作ることになるのでありまして、ただ単に内部部局長に一種の身分の箔を付けたに過ぎんのでございます。我々はかくのごとき制度の新設には反対をいたすものでございます。  その他補佐機関の混乱を指摘せざるを得ません。防衛庁には、即ちこの自衛隊組織には、政務次官あり、次長あり、参事官あり、幕僚長あり、幕僚会議議長あり、内部部局長あり、それらの所掌の事務が彼此混乱いたしまして、極めて不明確なる状態は、我々は本法案の欠点として指摘せざるを得ないのでございます。統合幕僚会議の設置は、やがてこれが統帥権の確立を図らんとする端緒になるのでございまして、私どもは飽くまで、内閣責任制の立場から、首相の行政権の最高の責任者として、これらの権限に対しまして種々なる制肘を試みるがごとき制度は、悪制度と断定せざるを得ないのでございます。その他多くの欠点がこの二法案中にありますことを指摘せざるを得ないと思うのであります。  今日、世界の情勢は刻々と平和の方向へあらゆる努力が集中せられておりますことは、言を待たないのであります。世界の情勢が全人類の悲願といたします平和の方向へ努力を試みつつあります今日に、かくのごとき世界の情勢に逆行するがごとき軍備拡張案に対しましては、我々といたしましては断乎反対せざるを得ないのでございます。我々は平和の理想を掲げんとするものでございます。平和に対しましては、渾身の勇気を以て邁進せんといたしておるものでございます。飽くまで民族の理想は平和になくてはなりません。自由にして平和、正義にして平等の社会の建設に邁進しなければなりません。然るに我々の民族の理想を臓し、平和を脅威し、他国の防衛の走狗となり、自由を奪つて国民の血を強要し、正義を蹂躙して、而もその手を臓し、その汚職政治の穢らわしき手で以て反省することをいたさないこの内閣の手によつて国民を犠牲にするがごとき本法案の成立に対しましては、飽くまで反対の態度を表明いたすものでございます。  以上の諸理由を以ちまして、我が日本社会党は反対の理由とするものでございます。
  270. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 私は緑風会を代表して政府原案に賛成の意を表するものであります。  近時世界の趨向は、国家間の紛争を武器によらないで平和的交渉によつて世界の平和を求めたいという傾向にあることは、朝鮮の休戦やジユネーヴ会議の状況を見ても明らかであります。併しながらそれだけの理由を以て我が国が防衛態勢を整える必要がないと言うことはできないのであります。無防備で平和が保てるならそれが望ましいことは申すまでもないことでございますが、世界文化の程度が今日のごとく低級でありましては、日本ばかりひとりみずから高うしてなすところもなく、いたずらに平和を待つてはいられないのであります。被統治民族の悲哀は歴史が証明いたしております。我が国もすでに占領中その悲哀を嘗め、而して我が国が独立した今日なお米国等援の助を受けなければ自立ができない残念な状態が続けられております。併し米国の援助は結局米国のためであるということは、MSA法が明らかに規定しておるところであります。自国を守るものはその国民のみであります。我が国は我が国民がみずから守らなければなりません。併し又、今日の複雑なる国際情勢は、一国のみでは独立は保てません。ここに国際連合の必要が生れます。我が国もやがて連合に加入しなければなりますまい。連合に加入すれば、もとより国際信義を重んじて、平素これに協力しなければ、強い発言権を持つことはできないということは当然のことでございます。ついては、我々は憲法に違反しない限度において防衛の体制を整備しなければなりません。今回政府が保安隊を廃止して防衛庁を新設し、保安隊を自衛隊に切替え、従来保安隊が国内治安を主たる目的としたのに、自衛隊として国防に主力を注ぐ体制に転換する計画を樹立し、その内容の充実を図つたのは、時宜に適した措置であると思います。併しながら我々は、自衛隊が侵略戦争に利用されないよう国民の深い注意と警戒を要します。而してその危険を防ぐ方途は、国民に穿き違いのない真の平和教育を徹底させることであります。なお又、考えねばならんことは、防衛体制は国の経済力と国力に応ずる限度でなくてはならんということであります。然らざれば、国を破滅に導き、国民をして遂に塗炭の苦しみに陥れることは、火を見るよりも明らかであります。併しながら一面、又、防衛体制を整えることによつて日本の国は我々の手によつて守るのであるという独立の気概を起さしめる効果が甚だ多い。この気慨は、他に依存の卑屈な考えから脱却して、みずから起ち上ろうとする大きな活力を与えまして、この活力が国力全体に及ぼす効果は正しく評価されなければならないのであります。我々は米国やソ連を恐れ過ぎてはなりません。日本の学者の発明や発見が、未来永劫、外国の学者に劣るものではありません。国民的確信を堅持するならば、外資を受入れ、援助も受けて、これを大いに発揚することができるのでありますから、外国の援助を受ければその国に従属することになりはしないかなどと無用の心配をする必要は毛頭ないのであります。(「ノーノーと呼ぶ者あり)日本を活かすか、(「何が無用なんだ」と呼ぶ者あり)活かすか亡ぼすかは、決して米国やソ連の考えによつて決定するものではありませんので、日本人自身の覚悟と努力如何にかかつていることを銘記しなければなりません。(「自由党に入れ」と呼ぶ者あり)我々は国民的自信を取戻して大いに活躍し、経済力を増進して、漸次国防体制を増大しなければなりません。  以上私は本二法案に賛成の理由を述べましたが、次に政府に対して二、三の点につき要望したいと存じます。  第一に、本二法案による防衛体制は、それが軍備であるか否か、即ち憲法第九条に違反するか否か、実にすれすれのところまで来ております。私はこの程度ではまだ憲法に違反しないと思つておりまするので、本案に賛成するものでありますが、この問題については国民の多数は大きな疑惑の眼をみはつております。而して現実の、事態は、防衛力の増強、将来の軍隊化、従つて憲法改正を当然のこととして要請しており又実際にその方向に向つて進んでおるのであります。(「政府の責任者は着席するようにさせて下さい」と呼ぶ者あり)然るに吉田総理国会の論議において、憲法は改正いたしませんとたびたび述べられ、これがため政府の言動に対する不信、延いては国政全般に対する不信をもたらしております。私は過日の内閣委員会におきまして、吉田総理に対してこの点を質しましたところ、首相は私の質問に対して、「政府としても憲法の研究については関係方面においてそれぞれ慎重にいたしております。又それぞれの権威者を集めて研究させておりますが、併し、発表いたしまして、そうして憲法の勢をこれこれでこれこれの学者或いはその他で以てやつているということになりますと、いたずらに世間を騒がしますから、発表はいたしませんが、憲法は国の重要なる法として、政府においても十分研究をするために用意はいたしております」と答えられたのであります。この首相答弁は、従来の憲法は改正いたしません一点張りの答弁に比べて一段の進歩を見るものでありますが、著々これを実行に移されますよう強く要望するものであります。  第二に、本法案を通じて感得しまするところは、両案ともその内容、形式共に不備の点が多い。例えば総理大臣防衛庁長官、統合幕僚会議議長、国防会議等、重要機関の権限の分界が明確でない。ついてはこれが運営を誤まらないよう十分の注意を要望するものであります。  第三に、本案の運営に当つては、政治優先の法律を厳守すると共に、権力の集中排除につき最善の努力をされんことを要望いたします。  第四に、日米安全保障条約、MSA協定等の実行面に、おきまして、今後米国からいろいろ要望があることと想像されます。条約を遵守すべきは当然の国際義務でありますが、万一不合理な要求のある場合におきましては、政府は絶対に我が自主権を堅持し、いやしくも彼に追随するがごとき卑屈なる態度をとることなく、毅然たる態度を以て断乎これを拒絶せられることを要望するものであります。  第五に、防衛庁設置法中、最も重要なる部分を占めている国防会議に関する法案は、当然本案と同時に提案さるべきにかかわらず、遂に会期中にその提案を見なかつたのは、実に遺憾であり、政府の怠慢も又甚だしいと言わざるを得ません。参議院内閣委員会の追及に遭つて急遽三派の協定を得て、一応政府案としてその要綱を示されましたが、我々の納得のできない点が甚だ多いのであります。内閣委員会における論議を十分尊重し、更に慎重なる研究を重ねて、完全なる成案を得られんことを要望するものであります。  最後に、政府国民の真の平和教育に特段の努力をいたされんことを重ねて要望いたしまして、私の賛成討論を終ります。
  271. 岡田宗司

    岡田宗司君 議事進行について……(「まだまだ」と呼ぶ者あり)
  272. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 何ですか。
  273. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今私が下に参りましたところ、この委員会が円満に進んでいるにもかかわりませず、自由党から強引に暁国会をやるということを緑風会に申入れたということを聞いているのであります。かくのごときことは、私どもは今までこうやつて協力をして参りましたことに対して背信も甚だしい。従いまして、直ちに休憩を宣せられまして、この事実を究明せられんことを要望いたします。(「賛成々々」「異議なし」「休憩々々」「今の動議に賛成」「休憩を宣しろ」「それを確かめるで休憩だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  274. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 事態を明確にするまで……(「背信行為だ」「そんなことはない」「何を言うか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)静かにして下さい。静かにして下さい。静かにして、静かにして……真偽の的確を期する必要があると思いますから、ちよつと休憩をして確かめることにいたします。    午後八時五十九分休憩    ―――――・―――――    午後十時二十三分開会
  275. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは只今より委員会を再開いたします。  この際、休憩をいたしましたあとの経過について簡単に御報告を申上げます。御承知のように、昨日、議長より、是非本日の夕刻までに委員会防衛法案の討論採決ができ得るように議事を進めてもらいたいという要望があつたことは、皆さんも御承知通りであります。御要望の線に近付けるためにいろいろ御協力を願つて、本日委員会を進めて参つたのでございますが、遺憾ながらその間いろいろな見解の異なる意見も出まして、委員会予定通り進行をしなかつたわけです。そこで私としましても、でき得る限り早い時間でこの二法案の結論を出そうといたしまして、微力でありますが、努力をしておつたわけです。そういう際に岡田委員から突然今晩の十二時過ぎに国会を開いて、二法案を本会議に上程をされようとしているという発言がありましたので、委員の皆さんもそうでありましようが、これで八日間引続いて十二時過ぎの国会を続けて来ているわけです。こういう状態の下で、更に徹夜でこの法案審議せられようというようなことが、動きがあるとしましたら、折角皆さんに御協力を願つて軌道に乗せている、御協力願つている私といたしましても、非常に意外でありましたので、それを確かめるために実は暫らく休憩をお願いしたわけです。  会派に戻りまして、その情勢を調べてみますと、やはり一部においてそうした動きがあつたようです。そこでいろいろ協議をしておりました際に、議長から事務総長を通じて私に対して通告がありました。議長は、内閣委員会が突然休憩に入つたということは実に意外である。議長としては暁国会を開くという意思は毛頭ない。従つて速かに委員会を開いて議事を進めてもらいたいという要望でありました。  そこで私は、議長の趣旨はそれでわかりましたので、各会派の意向を確かめておく必要があると思いましたので、三橋会長と一緒に緑風会に参りまして、緑風会の石黒、田村両氏にお会いをしてお話を申上げたところが、我々としては、そういう話は正式に聞いてはおらない。委員会が順調に進んでいることに対して非常に喜んでおつたところが、そういうことがやられているということは実に意外でもあるし、それまでにして暁国会までやる必要はないと思う。だから一つ委員会を順調に進めるようにしてもらいたいということでありました。次に改進党に参りまして、苫米地会長にお会いして、同様の話をいたしました。次には社会党の第二控室に参りまして、相馬氏にお会いをして、やはり同様のことをお話をしましたところが、やはり緑風会、改進党と同じような御意向でありました。そのほか純無所属、或いは無所属会派の意向も大体これと同じようでありまして、今晩委員会が討論採決をしても、これを縦軸に持ち越して本会議に上程せよというような意思はないようであります。そこで、それの確認を大体私はいたしましたので、委員会を再開をいたしたいと思つてお集まりを願つたわけです。  以上休憩中の御報告を申上げます。
  276. 岡田宗司

    岡田宗司君 私が先ほど突然にああいう発言をいたしまして、そして委員会を休憩させ、討論を中断させたということは、誠に申訳ないと思つております。併し私は、先ほど自分の討論を終えて、下に参りましたときに、そういうような噂を私の会派の人から聞いたのであります。併し私の会派の人から聞いただけでは、私はまだそれを本当は……、私ども会派の人から聞いただけでは、私はああいうことはしなかつたはずだ。併しながら私は、他の会派の人からもそういうような動きがあるということを確実に承わつたのです。又更にそういうようなことで、自由党の人んがそれを口にしながら動いておるということを又別のところから聞いたのであります。そこで私といたしましては、今までまあいろいろ自由党のほうの方々その他の会会派の方々から言われれば……私にもお気に副わないところがあつたかも知れません。併しながら私は昨日議長の斡旋によりまして、私ども会派におきましても議長の斡旋に応じたわけでありますから、その線に沿うて審議を軌道に乗せることを努力して参つたはずであります。併し私の努力が足りなくて、或いは五時という時間がずれて参りました。これは併しながら国会の各委員会においてありがちなことで、そう学校の時間割のように行くものでないことは、これはもう常識でございます。私はこれはいいことだとは申上げませすけれども、併しまあそのぐらいのことは若干御猶予を頂けるものだと、こう思つて、私どものほうとしても、私に対してもいろいろと意見を述べる人もありましたが、併し自由党の諸君ともお話合いの上でこの委員会を進めて参つたのであります。本日は別にこれというトラブルもなく、若干時間は延びたが今まで参りました。ところがそういうような話が起つた。そうしてそういうような動きがあつたということは、私はこれは少々不信行為ではないかと思います。なぜかなれば、申合せをいたしまして進めて参りましたのは、この委員会のことだけではない、即ち国会の末期になりまして全体の審議が乱れて参つた。そうして内閣委員会だけでなく、地方行政委員会においても激突の状況が起つて来た。そういうような関係から、議長が単に内閣委員会の問題としてとり上げて、そして調停というか、斡旋というか、それをされたのではない。それだけではない。つまり全体の運営を何とかうまくやつてくれという意味で各会派の代表を集められて、そしてそこでずつと御努力をなすつたわけでありまして、若しこの委員会だけは何とか無事にということでありますならば、議長は恐らく各会派の代表ではなくて、私どもを招致してお話を進められたかも知れません。併し各会派全体の代表をお招きになつてそういう話をされたということは、全体の審議を円満に進めるという建前からせられたものであろうと私は信じています。従つてその線に沿うて私も努力して参りました。然るにもかかわりませず、自由党において、私が先に申上げたような動きをせられたということは、これは私は明らかに不信行為であると思うのであります。そこで私は、これは明らかにしなければならん、こういうような事態では、私は委員会をそのまま進めて行くことはできない。今まで御協力を申上げて来た建前からしてもそう感ぜざるを得なくなつたのであります。そこで私は止むを得ずああいう発言をいたしまして、委員長に一時休憩を宣して頂く、そしてその事態を明らかにすることに努めたのであります。勿論私が私自身で下に参りましていろいろ聞いてみました。先ほど委員長が言われましたように、緑風会の方々も或いは改進党の方々も、無所属クラブの方々も、又、右社の方々にも、暁国会をやる意思はない。こういうふうになつた以上は、審議を円満にして行くには明日上程すればいいだろう。とにかく委員会は今日終れば明日上程ということがはつきりするんだから……こういうことで大体委員会が進められて行くような事態になつたと私は確信したのであります。併しながら私がこういう問題を起さざるを得なくなりましたその元をなすところの自由党さんのほうで、この暁国会の問題について如何にお考えになつておるか、そうしてまだそういうような動きを続けられるのかどうかということがはつきりしなければ、私といたしましてはこの委員会を進めるわけには参らんのであります。私はこの点については、自由党さんがこの問題について如何なる御意見をお持ちになつておるか。まさか、そういうことはないことだ、全然そういう動きはなかつたんだとは、そうは言い切れないと私は思う。私は自由党さんのほうで、この問題について、そういうような不信行為については、まあこの審議がとにかく軌道に乗つて進められている以上、しないということは言つてもらわなければならんと思うんです。この点については自由党さんのほうから、私は、はつきりとした御意見を承わりたいと存じます。(「同感」と呼ぶ者あり)
  277. 山下義信

    山下義信君 私は岡田君の休憩の動議に賛成いたしました故を似ちまして、この際どういうわけで賛成したかということを簡単に申上げておきたいと思うんです。討論中に休憩の動議その他の発言のありますことは、議事規則上若干の疑惑があることはよく存じております。然るにもかかわらず、私が岡田君の御意見に賛成いたしましたのは、只今岡田君の述べられたような事情を我が党の議員から私は別に連絡を受けて実は驚いたのでありますが、我々は本日の本会議と申しますかは十二時まででありまして、暁国会をやるというようなことは毛頭承わつておりませんし、予想もいたしておりません。そういうことは自由党さんのほうからは何らの意思表示は、この委員会に関する限りなかつたのであります。従いまして、十二時までということを目途として、是非それに間に合せるようにという強い自由党さんのほうの御要請といいますか、御要望というものが根本になりまして、只今委員会の論討採決の時間その他のスケジュールというものが理事会において組まれたのであります。従いまして自由党さんのほうからは、討論の時間というものを極力圧縮を要請せられまして、我々が普通常識では考えられないようなこの重大法案に対しまする討論時間を、私の場合で申しますれば二十五分に切詰められたのであります。私は恐らく少くとも三、四十分頂けるものと考えまして、およそ討論の腹案も、急遽ではございましたが、用意いたしましたところが、決定せられましたのは時間を非常に切詰めることが要請せられまして、お聞き下さるように、殆んど御聴取願われないような端しよつた討論をせざるを得ない状態になつたのであります。かくのごとくいたしまして、委員会議事の順序、所要時間等を非常に窮屈にきめられてこの席に臨んで見ますると、図らずも、十二時どころではない、明朝になつてでも続けて、或いは本会議をやるんだということに相成りまするならば、何が故にかくのごとき国家国民の安危に重大なる影響のありまする大法案を、さように討論を抑圧してまでも促進しなければならんかという理由がここに消滅いたすわけであります。従いまして私どもは、議長の御斡旋によりまするこの委員会の運営を軌道に乗せるということに御協力申上げるという基本線を遵守いたしまして、今日まで話合いの上に参りましたことが、根底から覆されるということは、非常にこれは不信な行為であると考えまして、その事態の真相を明らかにするために、暫時休憩という岡田君の要望に対しまして、私は賛意を表しました次第でございます。従いまして、私の岡田君の動議に賛成いたしましたゆえんをこの際開陳しておきまして、休憩中はどういう事態が明白になりましたか、自由党さん側のほうから明確なる御説明を私も受けたいと存ずる次第でございます。
  278. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その釈明がある前に、自由党から言明のある前に……。
  279. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 矢嶋君。
  280. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 自由党さんにしてみれば、五時かつきりに終らなかつた点について御不満があるかと思いますが、併しねがら昨日の経過から考えますと、一応五時を目途に委員会の討論採決が終るようにしよう、こういうことでお互いは努力して参つた次第でございます。従つて私は本朝来、自衛隊法の残つている逐条審議も是非やりたいものだ、やろうではありませんかと一度は主張いたしましたけれども、皆さん方の主張もあつて、その自衛隊法の逐条審議も打切つて参つたわけです。それまでしても五時を若干ずれたわけでございますが、これは私はいたし方なかつたと思うのです。そうして昨晩協議するときに、一日の本会議に上げるように努力しよう、委員長から何らかの申入れをしてはどうだろうかという意見も出たわけでございますが、そのときの話合いは、できるだけ一日の午後十二時までに上げられるならば上げられるように努力しようし、委員長も又、議長なり議院運営委員長にそういう予備的な申入れをしてほしいという一、二のかたの意見はありましたが、暁国会までやつて上げようというようなお話はなかつたと思うんです。そこで私は、今から自由党さんに承わるときに是非聞きたい点は、たしかにこの自由党の幹部のかたとしては暁国会というお考えがあつたようでございますが、内閣委員の皆さん方としては、党の幹部のかたに、この内閣委員会委員会討論はかくかく終る予定であるから、どうか他会派にも連絡をとつて、暁国会でもやつて、現在のこの二法案を上げてほしいというような申入れを幹部にされておつたのかどうか。それとも幹部とあなた方の間は何ら連絡がなくて進められた問題か。そういう経緯も合せて承わりたい。その御返答次第で発言を求めたいと思います。
  281. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 いろいろお話がありましたが、我々は内閣委員として、この防衛法案のずつと審議に当つて来たのでありまして、昨夜の理事会の申合せでもこれは皆さん十分御承知のように、今日の大体五時を目途として、これは委員長も最もよく知つておられることと思うのでありますが、委員会の討論採決を終りたい。それから先のことは、これは内閣委員会の関知することではありませんから、それは申上げませんが、五時を目途としてやりたいということでやつて来たのであります。ところが委員会のいろいろの審議の過程におきまして、或いは理事会の過程において、我々の全く知らざるようないろいろの理由によりまして、トラブルによつて、それがだんだん延び延びになりまして、ようやく先刻討論に入つたわけであります。討論の最中におきまして、これ又全く我々として全然知らないことによりまして、岡田君から突如として動議が出て、それに基いて、私は委員長は別に席を離れてそのたしかめに行くということを、委員長自体がその席を離れられおことも実はおかしいと思うのでありまするが、委員長はたしかめに下に行きたいからということで、突如休憩を宣して降りられたのであつて、我々としては全く寝耳に水というか、実にびつくりしたことなんであります。そこでいろいろお話がございまするけれども、我々は内閣委員としてこの法案審議に当つておるのであつて、ほかのほうでいろいろとどうこうするということは、これは内閣委員の全く関知しないことであつて、私は正論を言うならば、内閣委員会としてこの討論に入つている以上は、これは堂々と討論を進めて行くべきが、私は内閣委員としての職責ではなかつたかと思うのでありますが、併しもう休憩を宣せられた過去のことでありますから、それは言いませんけれども、いろいろの御疑念の点については、委員長緑風会その他の会派まで廻られたというのでありますから、私は自由党にも委員長が行かれまして、堂々と会長なり或いは対策委員長なり、或いは議運の委員長にお会いになつて、そういうことがあるのかないのかということを委員長が確かめてから、それからやつたらいいのじやないか。我々は何も自由党を代表して、私は内閣委員でありますから、自由党がどう考えられるか、我我は関知しないことなんです。
  282. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は自由党さんのほうに、そういうようなことをもうおやりにならないほうがこの委員会が進められるだろうと思つて、まあ、ああいつたお話を申上げたのです。ところが委員長のとつたことに対して攻撃的な(「そうじやありませんよ」と呼ぶ者あり)極めて挑戦的な態度をとられて、而もまあ各会派を廻られたが、自由党に行つて、自由党の参議院議員の会長なり、或いはなぜ国会対策委員長に確かめないかとおつしやるならば、そして又あなたのほうからそういうことについて内閣委員は関知しないというならば、各会派の意向はすでにわかつたのであります。自由党さんの会派の意向がわからない以上は、私どもとしてはもう一度委員長に下に降りて頂いて、自由党さんのほうの御意見を承わつて来て頂かなければ、これは公平を期せられないかと思うのですが、これは若し委員長に手落ちがあるとすればそういうことになるだろうと思いますが、それは自由党さんのほうで、そうしたほうがはつきりしていいと、内閣委員は関知しないことだから、そつちに聞け、こういうのでございますようですから、私は委員長にそうして頂いたらいいと思うのです。
  283. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) いや、そういう時間の余裕もないと思いますが、自由党の委員のかたで何かはかに御発言ありませんか。
  284. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 僕らは、石原君から申しましたし、これは何ら他意があつて申すわけでなく、内閣委員会として一番はつきりなさるには、やはり他の会派に行かれましたと同様に委員長が行かれまして、お確かめになつて御報告なさつたほうが一番はつきりすると思います。
  285. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  286. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 速記を始めて下さい。いろいろ御意見がありましたようでして、私は時間の関係があるので余り長いことを申上げません。ただ木村委員からいろいろ御意見のあつたために時間が遅くなつたという事実も若干あると思います。併しそれも理窟があつたから私は言つたので、木村委員の言われることが理窟のないことだつたら、私はあれだけの時間を待つことはなかつたと思います。自衛隊法が百二十二条あるのが、まだ十九条しか逐条審議が終つておらんのに打切らなければならんということは、やはり委員会としても完全な審議ができておらんことです。こういう理由を以ていろいろ御意見があるわけですから、私としてはこれを断ち切つて直ちに多数で議事を進めるということはどうかと思つたのでお待ちしたので、そういう点もあつたということを一つ皆さんも御了承が願いたいと思います。(「了解」と呼ぶ者あり)こういう事情でありますから、これから議事を続行いたします。討論を続行いたします。
  287. 山下義信

    山下義信君 それならば、先ほど休憩の意見を出し、それに賛成したということにつきましては、何らあとで異存がないということに御確認願えますか。
  288. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 御確認願えることと思いますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  289. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 今後の進行委員長に一任したのですから……。
  290. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 御異議ないようですから議事を進めます。
  291. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は無所属クラブを代表いたしまして、この防衛法案に反対をいたします。  この防衛法案は我々日本民族を危うくするところの重大な法案であります。而うしてこの二法案は、MSA協定を通じてアメリカ日本に要請しておる再軍備体制を実現するために、今国会に一兆円予算或いは警察法の改正、教育二法案、秘密保護法等々の一連の再軍備体制を実現するための法案と関連したところの非常に重要な法案であります。従いまして、この法案に賛成するものも反対するものも、我々日本民族にとつて重大な関係があるこの法案については、その審議は十分なされなければならないのです。国民の負託を受けて国会に出ている我々として、あとで悔いを残すような審議の仕方をすることは断じて許されないわけです。又この法案に対する態度は、真剣慎重而も厳粛でなければならないと思うのです。併しながら非常に遺憾であつたことは、吉田首相の病気とはいえ、長期の国会欠席、又吉田内閣にまつわるところの汚職事件が発生しました。更に又、吉田首相外遊、そういう問題が起りまして、この重大な法案審議が十分になされない。で、審議が十分になされないまま討論採決に入ることに対して、我々は非常に遺憾であります。で、不十分な審議の結果に基いて我々が到達した結論によつて反対の態度をきめなければならなかつたのでありますが、これまでの審議の結果に基いて私は反対の理由を明らかにしたいと思う。  で、反対理由は要約して七つの点にあります。  その第一は、この二法案が重大なる憲法違反を犯している。即ち憲法九条の明白な違反であるという点であります。ただに憲法九条に違反しているばかりでなく、その違反の仕方はアメリカの権威に隠れて憲法違反を犯しているという点にあるのであります。憲法違反の事実の第一は、この法案の前提をなすMSA協定自体が、これが憲法違反であります。少くとも重大なる憲法違反の疑いがあります。而もアメリカ側の解釈によつてアメリカ側の指示する解釈によつて、この憲法をカンニングするために、MSA協定の中に、MSA協定は憲法違反ではないと一項を挿入しているがごときは、全く子供だましみたいなものでありまして、こういうような、アメリカの権威に隠れ、アメリカの指示に従つた解釈によつて、そうして、このいわゆる闇の再軍備をするがごときは断じて許されない。又、政府が憲法違反でないということをいろいろ知慧をしぼつて考え出したその理論からいいましても、憲法違反でないということを実証することはできません。政府側のこの思想統一したところの憲法違反でないという論拠は、第一に、憲法九条一項で自衛権を認めている。第二に、国内警察行動は勿論のこと、直接、間接侵略に対する自衛実力行動は禁止していない。併し近代戦争遂行能力を持つことは、憲法九条一項違反にこれは流用される慣れがあるから禁止されておるのであります。従つてこれらを勘案すれば、戦力に達しない自衛実力組織を持つことは、その目的が国内警察力たると外敵防禦たるを問わず、現憲法下では許される。いわゆる戦力論、これが自衛隊は憲法に違反しないという政府の論拠であります。併しながら、これは憲法九条を曲解し、カンニングしているものでありまして、憲法九条の真の狙いは、第一に、国際的な国際紛争の手段として、戦争に訴えないということ、武力の威嚇行使をしないということ、そうして、その目的を達するには陸海空その他の戦力を持たないというところにあるわけであつて、問題は、国際紛争の手段として戦争に訴えない、武力の威嚇を行わない、武力の行使をしないということであつて、その武力というものが近代戦争遂行能力を持つか持たないかということではないのでありまして、政府は近代戦争遂行能力は何ぞやとの質問に対して、アメリカの駐留軍が日本から撤退した場合、それに代る実力を日本で備えたときに、近代戦争遂行能力を備えたものと考える。そのときに憲法を改正しなければならん。こういう答弁であります。併しながら木村長官は、衆議院における本間委員との質疑応答において、本間委員が、アメリカ軍日本から撤退して、それに代る実力を日本が備えたときに、日本がみずからそれを守る力を備えたとは言えない。なぜならば、日米安全保障条約によつてアメリカから保護を受けている。そういう状態では、完全にみずから守る力を持つたとは言えない。であるから、アメリカ駐留軍が撤退してのちに、それに代る実力を備えても、まだ日本日本を守る力を持つていないのだから、それ以上の戦力を持つても、アメリカ駐留軍が撤退してのちに代る実力以上の実力を持つても、憲法違反でない。こういう意見を本間委員が述べて、それに対して木村長官はその通りであるということをはつきり述べています。従いまして、そういうその実力というものは、明らかに、それが若し日本国においてそういう実力を備えたときに、戦争に訴えようと思えば訴え得る。武力の威嚇をしようとすれば威嚇ができる。武力の行使をしようと思えばできるのです。従つてそういう実力が憲法違反であることは明らかである。ところが政府は憲法違反でないという。而もなお今度発足する自衛隊の内容を見ても、それは明らかにそれが戦争ができる能力を持つており、それによつて武力の威嚇をすることができて、武力の行使をすることができる。いわゆる憲法の九条一項の違反をする実力であることは明白であります。今度の二法案のこの実施によりまして、いわゆるこの国土防衛という名の下に戦争のできる実力部隊を、はつきりと、今度の法案によつて規定するわけであります。又その組織を見ましても、今度は軍令と軍政に、二つにわけまして、そうして陸海空三軍を持ち、更に又、自衛隊法の八十八条では、「自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる。」と書いてある。この武力を行使することができるという、八十八条の武力行使とは何ぞや、こういう質問に対して、これは憲法の九条第一項において、武力の威嚇、或いは武力を行使しない、そういう項と抵触することは明らかであります。そういう憲法に抵触する武力の行使という規定をはつきり自衛隊法八十八条で規定しているのです。こんな明らかな憲法違反は私はないと思う。而も今、吉田内閣の重要な地位にある緒方総理は、昭和二十七年一月一日の朝日新聞の座談会におきまして、はつきりと今の憲法は明らかに自衛軍を否定しているということを述べております。そうして第九条の二項で「陸海空軍その他の戦力はこれを保持せず、国の交戦権はこれを認めず」云々とある。つまりこれは兵力及び潜在兵力を持つてはいかんということになつておるということを、はつきり緒方総理は述べておる。そればかりでなく、憲法に「あいまいな問題であるとすればそれをはつきりし、もし憲法違反の何か疑いがあれば当然憲法を改正すべき問題だと思う。憲法改正には非常な困難が伴うであろうということは予想されるが、それがために憲法をごまかしてはいかん。」ということを、はつきり緒方総理はここで述べておるのです。その緒方総理が、こんなにはつきり述べておる緒方総理が、吉田内閣に入つて、この憲法違反のこういう二法案を出して来ている。これは変節改論も極まれりと言うものだと思います。なおその他の点についてあらゆる階層からこの憲法違反が指摘されておりますから、憲法違反の点については以上をもつて私は省略いたしますが、この点がこの法案に賛成できない第一の理由であります。  第二の反対理由は、この二法案によつて新設される自衛隊は、日本が自主的に行うところのものでなく、従つて自主的に行われる自主的な軍隊ではない。これはすでに岡田委員或いは山下委員から指摘されましたから重複は避けますが、なぜ自主的に行う軍隊ではないか。その理由は、第一に、若し日本が自主的にこの再軍備を行うのだとすれば、今の日本の実情は、客観的な実情は再軍備をするような時代ではありません。日本の国力に応じた戦力の増強考えるならば、むしろ日本の国力、日本の経済は重大な危機の段階に入つているのであります。今の世の中では、中小業者が倒産し、不渡手形は激増し、生活難から自殺する人も毎日新聞に出ているのです。重大な経済危機なんです。そういう状態の下において防衛力を考えるとき、むしろ防衛力は減らすべきである。而も国際情勢においては戦争の危機はむしろ遠退いているのだ、戦争の危機は遠退いて、日本の経済は危機状態にある。そのときに、なぜ多額な防衛費を計上し、国民に耐乏を要求して、そうして再軍備しなければならないか。これは日本の自主的な理由によるものではなくて、一にかかつてアメリカという外部の力によつてこれが要請されている、いわゆるアメリカによるところの傭兵再軍備と言われるものであつて、自主的に日本が再軍備するものではない。如何なる根拠からも自主的にこれを再軍備するということは立証できない。更に又この自衛隊の内容をみましても、それはは自主的軍隊でないことは明らかであります。アメリカの武器を担がされる。大部分の自衛隊の武器というものはアメリカから貸与を受けたものです。それもアメリカから一方的に貸与を受けるのであつて、一応それを検査して受取るといいますけれども、若しそれが日本の要求に合わないような場合にこれを全部拒否できるかどうか。又アメリカ側の訓練を受けるわけです。審議の過程で明らかになつたことは、アメリカに二十九年度に四十名の留学生が行くわけです。アメリカの訓練を受けるわけです。又我々が資料として頂いたものを見ますと、二十九年度においては、極東空軍の委託によつて教育する人員としては、飛行機の操縦幹部七十名、通信の教育を受ける者が百三十四名、レーダーの教育を受ける者千三百名、このようにアメリカの訓練を受ける。そうして第三には、その服装を御覧になつても、アメリカの軍隊と日本の軍隊とは区別すること困難なような同じ服装、私はアメリカに留学に行つた日本の保安隊の人の話として聞いたのであります。アメリカに行つたところが、十二、三カ国の国からやはり訓練を受けに来て、皆同じ洋服を着て、ただ帽子と靴だけが変るだけで、日本人であることを自分は忘れた。そうしてアメリカの兵隊さんに話を聞いたところが、その兵隊さんは、自分が日本行つて、非常に日本という国は住みよいよい国であると思つた、こう答えた。このように、今、日本の国は、アメリカ人には非常に住みよくなつて日本国民には非常に住みにくくなつておるような実情である。又、日本でこれから造るところの武器、艦艇、そういうものはアメリカの規格によるものであつて、この点からもやはりアメリカ軍事政策に隷属する軍隊であると言わざるを得ない。更に又、軍需生産につきましても、小麦協定によつて贈与される三十六億円は、これは紐付きであります。アメリカの同意を得なければ、又アメリカの同意を得たところの種類の軍需生産のほうにしかこれは投資できないことになる紐付きの贈与であります。このように、日本の経済もアメリカ軍事政策に隷属する方向に軍事的に再編成されて行く。こういう点から見ましても、この自衛隊が自主的に日本において創設されるのではなく、又その自衛隊日本の自主的な日本の軍隊でないことは明らかである。これが反対理由の第二であります。  第三の反対理由は、この二法案自体が支離滅裂であるということであります。なぜ支離滅裂であるかと言えば、その第一は、アメリカ側の意向というものが一面において反映される。他面において又保安庁の意向も反映される。更に又、自由党、改進党、日本自由党三派の防衛折衝による意見が又これに反映されていて、従つて個々ばらばらにいろいろな意見が雑然と盛り込まれておつて、そうして実にあいまい極まる字句を使つていることであります。この二法案を見て、そうしてはつきりとその意味が何であるか、具体的に何であるかを了解することに苦しむのであります。  この内閣委員会の五月十八日の公聴会におきまして、元陸軍大学教授の岡村誠之氏はこう述べております。「この法案における言葉の不備と申しますか、そういうものは、全く言葉の冒涜になつている。この言葉の乱れと申しますのは、戦前からもございましたし、戦後は一般に防衛関係だけでなく、非常にひどいと思われる。この国防上の規定におきまして言葉を冒涜し、濫用するということは、これは師団の七つや八つ作つたり減らしたりすることよりももつと根本的な問題と考える。我が国の最近の防衛論議において、言葉を冒涜して、いわばごまかしの言葉を使われておるということは、新聞でも雑誌でも日々よく聞くところである。軍に関係することは、個人的に申すと、国のために人の生命をもらうのである。筋道の立たないことで、兵員が死に赴くということにはなりかねる。又、これは個人的な問題と共に、国といたしましても、ごまかし的の言葉で、名分の立たない、筋道の通らないことをやると、形だけの似たような国防力が形成されても、根本を覆えすようなことになる。それから又、この法案に現われているような概念の濫用、内容を問わない概念の濫用、そういうことによつて、その防衛の仕事自体が混乱し非能率になる。この言葉の濫用については、戦力なき軍隊とか、その他、戦車を特車であると言い、或いは自衛隊は軍隊であるとかないとか言い、又或いは極端になると海外派兵というものを公務員の出張であるというような言葉、それは許されない言葉と私は思う。人命並びに国の安危存亡に関する問題において、こういう内容の不明瞭な言葉で規定するということは非常に危険である。」こういうことをはつきりと、軍事専門家の元陸軍大学教授の岡村誠之氏が公聴会において述べておられるのです。  で、私は十分でございませんでしたが、この二法案審議するに及んで、私ばかりでありません、各委員とも実にその規定が曖昧、言葉がはつきりしない、朦朧としているのです。こんな朦朧たる規定によつて、そうしてこの日本の民族の運命にかかわるようなこの重大な法案を、我々はこれに賛成してよろしいでありましようか。そういうことは、国民の負託を受けている我我としては、断じて許されないことだ。これが反対の理由の第三であります。  第四の反対理由は、これは財政面から見て、到底日本の今の経済状態では、この法案に基き、そうして又、三派の防衛折衝で、この法案の背後となつているところの防衛計画の規模、それに要する財政負担等を考えてみますると、到底これは我が国の経済の負担し得るところではない。世界の大勢は、最近では軍備を縮小し、そうして減税を行う大勢にあるわけです。更に又、軍拡競争を止めて、東西貿易の交流を拡大することによつて、そうして国民生活の向上を図ろうという方向に向いているのです。どこの国でも今大勢はそうなんです。日本の場合は全く逆であります。戦争の危険がなくなつているのに、防衛費を殖やしてそうして再軍費をして行く。そうして又増税をやつて行く。又東西貿易の交流等については、むしろ逆であつて、日中、日ソの貿易が政治的な理由によつて遮断されている。その他具体的に計数を挙げて、今度この法案に基いて日本の再軍備を許すならば、これから累進的に財政負担は大きくなるのであつて、今氷山の一角として、二十九年度予算には七百八十八億の防衛費が出ていますが、これを平年度化して、三十年度の新規計画を加えて、三十一年度の計画を加えたらば、これは大変なことになつて来るのです。その全貌は国民に明らかになつていない。政府はその全貌を明らかにしていないのです。五カ年計画というものは明らかになつておらない。明らかにすれば、財政負担がこれは加速度的に非常に大きくなるのであつて、それを隠しておる。我々は統済の面を研究している者として、そういうことを、国民に隠している、隠されている事実を明らかにして、そうしてこういう法案に我々は対処する誤りない態度をきめるようにしなければならないと思います。時間がございませんから、計数的に如何に、この二法案に基く再軍備というのは、日本の経済危機を深め、底の浅い日本の経済をますます窮境に追込むかということについては省略いたします。更にもう時間がございませんから、あとはもう簡単に……。
  292. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 結論を急いで下さい。
  293. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 結論を急ぎます。  第五の反対論拠はビキニの水爆実験以後、武力によるところの国の安全を守るという問題は、これは一変したのであります。日本のこの二法案、再軍備は、ビキニの水爆実験以前に考えられた。ビキニの水爆実験以後においては、武力による防衛というものは、根本的に考えなければならない。この二法案によつて自衛隊を作つて、どうして日本を守れるか。むしろ日本の安全を確保しようとするには、如何にして米ソの対立を緩和し、米ソを如何にして戦わせないかということに努力すべきである。この二法案に基いて再軍備を行えば、むしろ米ソの対立を深めて、戦争の中に日本は巻き込まれる。そういう意味から言つても、この法案では我々は統対に賛成できない。  第六の反対理由は、この二法案によつてアメリカのこの要請に基く再軍備をやつて行けば、すでにアメリカ世界から孤立しつつあるのでありますが、日本はアジアから孤立してしまう。アジアから孤立して、日本はどうして経済的に……、日本の経済は将来成立つて行くでありましようか。断じて日本はアジアの孤児になつてはならない。アジアの孤児になる契機をこの二法案というものは作るものであります。そういう意味からも賛成できない。  最後の第七点の反対理由といたしましては、これまで述べましたように、この法案日本民族にとつて重大な危機をもたらす、重大な損失をもたらすものであるとともに、なぜこれに賛成する人があるか、それは結局日本の大多数の国民の犠牲によつて、一部の独占資本家が、この再軍備によつて軍需工業を通じて儲けよう、金を儲けようとしている。いわゆるデス・マーチヤントが、死の商人が国民の犠牲において金を儲けよう、こんなに日本民族にとつて危険な再軍備を、金儲けの道具にですよ、朝鮮戦争が終つて日本の経済が不景気になつた、この不景気打開策として、そうして軍需生産を盛んならしめ、そのためにこういう二法案を通じて、そうして独占資本家の利益を確保しよう、アメリカの独占資本とともに、日本国民の血税を利用して、そうして金儲けをしようというのが、私は結局この法案の最後の、表面には出ておりませんが、隠されたる真の理由であると思う。  以上七点の理由によりまして、この日本民族の運命に非常な悪影響を及ぼすところの二法案に断乎として反対する次第でございます。
  294. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は改進党を代表いたしまして、只今審議の対象になつております二法案に賛成の意を表します。以下その主なるものを申上げます。およそ独立国家として自衛権を保有することは、あたかも国民が基本的人権を享有し、天賦の権利として何人もこれを奪うべからざるものとしているのと同様であります。国連憲章におきましても、平和条約におきましても、国家固有の自衛権はこれを確認するところであつて世界共通の観念であり、独立国家の国民として何人も疑いを持たないところであろうのみならず、これを神聖なる権利義務として護らんとするところに、独立国家の本質があると存ずるのであります。我々は独立の完成とともに、切に世界の平和を念願し、その達成のために全力を傾注せんとするものでありますが、ただ徒らに小児病的に、品に筆に平和を希望するだけでは決して実現できるものではないのであります。世界が二大勢力圏に分れて相対立し、特に局地戦が身近かに行われている現在の国際情勢下にあつては、自衛体制を整えることこそ独立を維持し、平和と自由を守るゆえんであると、深く考えなければならないと思うのであります。中立を以て国是といたしまして、戦争に巻きこまれたことのない、久しく巻きこまれたことのないスエーデンですらが、如何に中立を維持することに苦心し、自衛のための軍備を充実し、それだけでは足りませんで、最近北欧三国と集団防衛体制にあるということは、今更ここに申上げる必要もないことと思います。自衛力なき国は、結局のところ外国の軽侮を招き、うち国民の精神を萎靡沈滞せしむるものであると考えるのであります。政府は従来独立国家として本来持つべき自衛軍備をごまかしまして、或いは警察予備隊や保安隊の名の下に国民の眼を覆うことに汲々としておつたのでありますが、我が党は、かかる魂のない、欺瞞的軍備反対し、公然と、堂々と、国力に相応する民主的自衛軍の創設を主張して参つたのであります。けだし、現在のごとく、外国よりの直接侵略に対する国土防衛を、挙げて外国軍備に一任するがごときは、独立国家としての態様を備えたものということはできないのでありまして、速やかに自衛軍備を整備充実いたしまして、外国軍隊の迅速なる撤退を期待するわけであります。又サンフランシスコ平和条約に基いて、米国と安全保障条約を結び、国防については協同防衛の責任を負うことといたしましたが、これは飽くまでも過渡的処置であつて日本防衛に当る米軍自身も、その米軍の早期撤退を強く希望しておるのが現状であります。更に我が国は、国連憲章加入を希望いたしまして、集団安全保障制度に参加し、積極的に世界平和建設のために寄与せんとしておるのであります。然らば当然自衛軍備を持つことが必要であると考えるのでありまして、我が党の主張は、これらの理由に基いておるのであります。  憲法の第九条の解釈につきましては、我が党としては、国際紛争を解決する手段として、軍備及び戦力は、これを厳に禁止するところでありますが、外国の直接、間接の侵略に対抗する自衛の軍備は、軍隊であり、戦力であつても、真に自衛のためならばこれを禁止するものでないという解釈をとつておるのに対しまして、政府はみずから安全保障条約に基いて直接、間接の侵略に対し、自国防衛のためみずから責任を負うという条約を結びながら、常に消極態度と持して参つたのであります。然るにMSAに関する日米交渉が開始されるに及びまして、憲法解釈はともかくといたしまして、にわかに従来の態度を改め、遂にこの際、自衛力を増強する方針を明確化し、駐留軍の漸滅に対応し、且つ国力に応じた長期の防衛計画を樹立いたすこととし、現在の保安庁法を改正し、保安隊を自衛隊と改め、直接侵略に対する防衛に当らせるという、いわゆる吉田、重光の共同声明となりまして、自由党は遂に我が党の主張に服するに至つたのであります。即ちその結果、差し当り現行憲法の範囲内におきまして、従来の治安維持を任務とした保安庁法に代るに、一つ自衛隊管理運営するための業務機関として、内閣組織の一つとして総理府の外局を設置し、防衛庁とするということを制定したのであります。他は、隊の任務、組織、編成、服務、等について、その使命、目的、性質を明らかにするため、自衛隊法を制定して、ここに審議の対象となつたのであります。私どもはここに初めて日本の将来の防衛体制の確立の基礎ができて参つたといい得ると思うのであります。即ち自衛隊法の第三条におきまして、自衛隊任務は、「我が国の平和と独立を守るため、直接及び間接の侵略に対し、わが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」と規定しておるのであります。直接侵略に対し、国を防衛することを主たる任務とするものは即ち軍隊であります。これをしも軍隊にあらずとするのは、白馬は馬にあらずと称するの類いであります。又後段の、必要に応じ公共の秩序を維持するということは、軍隊の本来の性格を妨ぐるものでなく、従来とも軍隊の従属的役割として如何なる場合にもこれらの役目を持つておるものであります。併しながら私どもは、新たに創設せられる軍備は、飽くまでも祖国の独立自衛のため必要であつて、この限界を超えてはならないものであるとしておるのであります。又決して過去の軍国主義の再現を許してはならないのであります。即ち民主主義国家にふさわしい、国民の意思を体し、平和を守ることを使命とする国土防衛軍であつて、如何なる名目の下においても、他国を侵略し、又は戦争を挑発し、若しくは他国を威嚇する手段に用いてはならないものであつて、現行憲法の厳に禁じておるところだと考えておるのであります。  以上の目的を以て、自衛隊法第二章第七条、第八条によりまして、自衛隊最高の指揮監督については総理大臣がこれを保有し、隊務の統括については国務大臣たる長官が内閣総理大臣の指揮監督の下にこれを行うこととなつておるのであります。又新たに国防会議を設けて国防に関する重要事項について審議する機関とし、その構成については、特に識見の高い練達の士を両議院の同意を得て任命する特別の配慮を設けますと共に、第七十六条の防衛出動については国防会議に諮らなければならないこととし、国会承認を必要としておるのであります。又特に緊急の必要により国会承認を得ないで出動した場合は、その不承認の議決があつたときは撤収を命じなければならないことと規定しておるのであります。又、旧軍閥時代の三軍割拠の弊害を矯めるために、保安庁法第四節において統合幕僚会議を設けておるのであります。自衛隊の服務については、所要の制限を課しますと共に、予備自衛官の制度を採用いたしておりますが、飽くまでも志願兵制度を採り、その組織編成は、我が国力に相応する限度において、法律、予算により、国会の定むるところによらんとしておるのであります。これらを通観してみますときは、民主主義国家にふさわしい新らしい軍備の方向を示すものとして、本法案は妥当なものと考えられるのであります。この本二法案に賛成するゆえんであります。  ただ本法案審議に当たりまして、憲法改正の方針について、依然として従来の説明を繰返すことより一歩も出でずして、政治の方向を明らかにせず、又長期防衛計画の策定をなしてこれを明示すべきにかかわらず、そのことなかつたのは甚だ遺憾であります。我々は、政治の大本は、国の方針を明らかにし、国民の判断を待ち、理解と協力を得ることこそ大切であつて、徒らに言葉の末に走り、現実を糊塗して既成の事実を作り、国民をして却つて帰趨に迷わしむるごときは、政治のあり方として甚だ反省を要することと考えるのであります。政府はよろしくこの際これらについて明確なる方針を打出すべきであることを特に希望いたしまして、賛成の討論といたします。
  295. 三浦義男

    ○三浦義男君 私は純無所属クラブを代表いたしまして、政府提案の防衛法案及び自衛隊法案に対して賛成の意を表明するものであります。その理由を申述べます前に一言申上げたいことがございます。それは、私ども自衛隊の設置、即ち防衛の漸増に賛成をいたすからと言いまして、決して平和愛好の精神を没却するものではないということを申上げおく次第でございます。  さて、只今より賛成の理由及び政府に対する希望を極めて簡単に申述べたいと思うのでありますが、先ずその第一は、我が国の現在置かれております国際的の条件、地理的の条件から申しまして、米ソ両陣営の中間に存在いたします我が国が、独立国としてこの両国に匹敵する武力を保有しない以上、自力を以て国の独立と安全を守ることができないことは明らかであります。若し非武装のまま外敵の侵入に任せますならば、その惨禍は極めて大なるものがあると思うのであります。又、自分の手で防衛に当らず、他国の軍隊にのみこれを委ねることは、独立国として誠に忍びがたいところがあると思うのでありまして、我が国は只今までは、保安隊、警備隊の組織によりまして、国内の治安、安寧秩序の維持に当つて参りましたのでありますが、外敵に対しましては、日米安全保障条約によりまして、米軍の力によつてこれに対処して参つたのであります。然るにアメリカは、その国の国内及び国際事情の変化によりまして、日本駐留の兵力の漸減を企てて参りました。それに対応いたしまして、我が国における武力の漸増をして、相共に外敵に当るものでなれけばならん情勢となつて参つたのであります。ここで保安庁、保安隊、警備隊の大きな性格的変更を余儀なくされ、両法案の提出と相成つたわけであります。  次に申上げたいことは、このたびの自衛隊の編成が、我が国の自衛力の漸増の問題に絡みまして、米国の軍隊は陸海空軍の漸減を企図して参りました。これに反しまして我が国の陸海空の防備はこれに伴わなければならないのでありまして、この両法案はこの三軍方式をとつて参つたということでございます。政府三軍均衡の漸増と申してはおりますが、審議の途上におきまして、我が国の置かれた地理的の条件よりいたしまして、海空に主力を置くということを明らかにされました。これ又、私は時宜に適したものと思うのであります。併し現在の自衛隊のこの様相を見ますと、必ずしもこの構想が如実に現われておるとは思われません。政府は今後この点につきまして、国力とのかね合いにおいて格段の努力を払うべきものと私は存ずるのであります。  第三は、これら部隊の武力行使の限界につきましては、政府は自衛権の範囲内においてこのことを強調しておりますのであります。この点は現在の憲法下におきましては絶対に守らなければならないことは当然でありますが、国民は、MSAの協定により、又、今後期待される国連加盟の問題とからみ、更に噂されておりますところのSEATO、NATO、これに関連して政府は自衛権の範囲内の行動と申されておりながら、海外派兵にまで及びのではないかという非常な不安を抱くのであります。政府は厳然として、自衛権の範囲内の行動、武力の行使に徹して頂きたいと思うのであります。  第四は、文民優位の点であります。このたびの法案におきまして、制服の内部部局に対する進出の制限が撤廃されました。文民優位に対しましては政府がしばしば言明しておるにもかかわらず、この点につきまして不安を感ぜざるを得ないのであります。政府の制服と背広の対立を解消したいという意図はよくわかるのでありますが、一歩運用を誤まれば、戦争前の武人優位が起らないとは限りません。政府はこの点につきまして格段の留意をいたされまして、文民優位のことに徹せられたいと思うのであります。  第五は、現憲法下においては兵力の漸増は限度があるのであります。又徴兵制度は採用されないということを言明されておりますが、政府は、我が国の国力、国民の感情をよく洞察されまして、これ又この言出を守られんことを切に希望するものであります。  最後に、自衛隊と憲法との関係及び防衛計画の実施について申したいのであります。自衛隊は、その装備において、構成の員数において、又陸海空の三自衛隊を有する点等を考うるときに、すでに軍備ではないか、戦力であると言われてもいたし方がないと思うのであります。又、政府は、自衛隊の設置は憲法に違反はしない。警察隊と軍隊との中間的存在であるというがごとき答弁もございました。或いは軍隊と言われるならば軍隊と呼んでも差支えないというような、非常にあいまいな御答弁があつたのであります。これは現在の憲法下において当然そう申さなければならんこととは思いますが、かくのごときあいまいな存在が自衛隊の志気に関係する点が非常に多いのではないかと思うのであります。私はむしろこの際、憲法を改正されてあいまいでない、志気の旺盛な真に祖国愛に徹し得る軍隊とせられたい思うのであります。かくしてこそ初めて国民自衛隊として、国の安全と独立を守り、国内治安の維持も期待することができると思うのであります。又、示されております防衛計画は二十九年度だけであつて、三十年度以降のものについては何ら御説明でありません。事、国防の問題は国民の非常なる関心事であります。政府はよろしく国防長期計画の大本を一日も早く樹立されまして、国民に示されることを希望するのであります。  以上を以ちまして私の賛成討論を終ります。
  296. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) ほかに御意見もないようでありますが、討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  297. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 御異議ないと認めます。それではこれより防衛庁設置法案及び自衛隊法案の二案について採決をいたします。賛成のかたは挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  298. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 賛成多数でございます。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。(拍手)  なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、あらかじめ多数意見者の承認を得ることになつておりますが、法案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、及び採決の結果を報告することとして、御承認願うことに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼び者あり〕
  299. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 御異議ないと認めます。  なお本院規則によりまして、委員長の議院に提出いたします報告書には多数意見者の署名を要しますので、本案を可とされたかたの署名をお願いいたします。  多数意見者署名    植竹 春彦  長島 銀藏    竹下 豐次  石原幹市郎    西郷吉之助  白波瀬米吉    井野 碩哉  高瀬荘太郎    堀木 鎌三  三浦 義男
  300. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 御署名洩れはございませんか……御署名洩れはないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後十一時四十九分散会