運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-05-26 第19回国会 参議院 内閣委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十六日(水曜日)    午前十時五十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小酒井義男君    理事            植竹 春彦君            長島 銀藏君            竹下 豐次君    委員            石原幹市郎君            西郷吉之助君            白波瀬米吉君            井野 碩哉君            岡田 宗司君            矢嶋 三義君            戸叶  武君            八木 幸吉君            木村禧八郎君            三浦 義男君   国務大臣    法 務 大 臣 加藤鐐五郎君   大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君    文 部 大 臣 大達 茂雄君    通商産業大臣  愛知 揆一君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局次長   林  修三君    調達庁長官   福島慎太郎君    調達庁総務部長 山内 隆一君    保安政務次官  前田 正男君    保安庁次長   増原 恵吉君    保安庁人事局長 加藤 陽三君    保安庁経理局長 石原 周夫君    保安庁装備局長 久保 亀夫君    法務省刑事局長 井本 台吉君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   説明員    海上保安庁警備    救難部長    砂本 周一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○防衛庁設置法案内閣提出衆議院  送付) ○自衛隊法案内閣提出衆議院送  付) ○調達庁設置法等の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは只今より内閣委員会開会いたします。  防衛庁設置法案及び自衛隊法案の二法案について一般質疑を続行いたします。
  3. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 木村長官一つお伺いいたしますが、第一に防衛計画について質問したいのです。御承知のようにこの二法案の一番具体的な基礎になるものは私は防衛計画であると思うのです。今度の二法案特徴は、保安隊というものは自衛隊になり、保安が自衛へ変つておる点、警備というものが国防変つて、或いは警備計画防衛計画変つて来ておるのですね。これは即ち今までの保安隊国内警備が主であつたけれども、今度は自衛隊になつていわゆる直接侵略に当る、そこで警備計画防衛計画に変わるわけです。従つてこの法案の一番具体的な基礎になるものは防衛計画、それでその防衛計画を実現させるための措置としてこの二法案が出て来たと、私はまあそう解釈します。そこでこの二法案を審議するに当つて、どうしても我々は具体的に前提となる防衛計画が示されませんと、今後の日本自衛隊の性格なり或いは特徴なりがよくわからん、そしてこの自衛隊については、これは憲法違反であるとか、これが日本独自の軍隊でなく、アメリカの傭兵ではないか、或いは又国力に応じたものでない、国力を超えた、国力に不相応な再軍備であるとか、いろいろ批判が出て来るわけです。そういうものを判定する具体的基準としては、どうしてもこの防衛計画がわからなければなりませんので、この防衛計画について具体的に保安庁長官から伺いたいのです。
  4. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 防衛計画は御承知通り二十九年度の予算に盛り上つて、これを実行するために我々はどれだけの数を増加すべきか、どれだけの船を持つべきか、どれだけの航空機を持つべきかということについて、もうすでに御説明した通りであります。そこで今後の防衛計画はどうあるべきかということにつきましては、常に申上げておりまする通りに、国際情勢或いは財政関係その他諸般の事情を十分慎重に考慮して立つべきものであろうと、こう考えて折角我々はこの防衛計画について検討中であります。昨日の伊能委員の御質問にもありましたように、この計画は何年計画で立てて行くかという計画も立てられているのであります。これを果して年次計画として何年で保有してやるべきかということについては、十分に我々は検討してやるつもりであります。只今のところその結論にはまだ達していないような次第であります。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この法案を出されるときには、三派で協議してそうしてまとまつたものであつて、そのときに防衛計画というものがやはり前提になつていたと思うのです。それで具体的な防衛計画がなかりやならんはずですね。それで聞くところによると、保安庁としては第八次計画というものを作成中である。或いは作成済だとも言われております。そうして吉田総理が外遊する場合に、それを携えてアメリカ行つて、そうして先ほど長官が言われた五カ年計画、そういうものについてアメリカとの間に折衝をされると言われておる。保安庁案として第八次のいわゆる長期防衛計画、五カ年計画というものがおありだと思うのですが、おありになつたらお示し願いたいと思います。
  6. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 防衛計画を立てるについては、何年、どう目標として立つべきかということを先ず第一に検討しなければならんことであります。そこで御承知通り、いろいろな観点から、或いは三年或いは五年或いは八年或いは十年というように論ぜられておることは御承知通りであります。で、我々といたしましても年次計画をどの目標におくべきかということについて今検討中であります。仰せの五カ年計画というようなものについても、一応我々はそれを目標にして検討いたしておるのでありまするが、まだ結論には達しておるわけではありません。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この二法案はいわゆる三党の防衛折衝話がまとまつて提案されたと思うのですが、そうして衆議院では吉田総理大臣が三党の防衛折衝で話合つたことはそのまま政府が守る。こういうふうに言明されておるのですが、保安庁長官はその点はどうお考えになりますか。
  8. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 三党でまとまつたことはこれは尊重すべきであろうと考えております。その線に沿つて我々研究いたしておるのでありまするが、三党折衝において防衛計画を立てるということを約束したようでありまするが、現実においては立ててはいないのであります。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは中曽根君はですよ、衆議院予算委員会木村長官に質問しているのです。が、そのときの経過によるとですよ、三党の防衛折衝に際して、防衛計画内容まで話合いが行われておる。そうして自由党側委員の案として提示されたものはですよ、その内容は第一に防衛計画は五カ年計画であるということ、これは恐らく長官は尊重して、やはり防衛計画は五カ年計画と言われたのはここから来ているのではないかと思うのです。それから第二は五カ年内に米軍に交替する兵力を作り上げるということ。第三番目が陸海空各々均衡な、均整のとれた兵力を作る。そうして数字まで提示されており、陸軍は十八万、海軍は十五万、空軍は一千機、これを五ケ年の最終目標に整備する。それから第四番目はその財政負担については総理はこれはアメリカMSAに期待する。大体事実を見ると、経過を見ると、その通りだ。それからその維持費でありますけれども、金額にして一兆四千億円程度である。それから第五番目は防衛分担金は漸次逓減して行く。そうしてこういう構想に基いて保安庁法の改正を行う。即ちこの二法案を出すということになつているわけで、これは自由党水田委員から自由党側委員の案として改進党に出された。これに対して木村保安庁長官中曽根委員に追及されてですよ、結局自由党であらゆる点から考慮して計画を立てられて、あなたがたに提示されたものと私は了承したいと思います。従つてその線に沿うて我々はやるということは十分御了解を得るものと考えておる、こう御答弁された。自由党で案を研究中であると思うと、作つたことはないと、そういうふうなお話でしたが、この中曽根君との質疑応答において、はつきりと木村長官自由党ではあらゆる点から考慮して計画を立ててあなたがたに示したものと思う。自分はこの線に沿うてやる。従つて十分御了解を得られるものと思うということを言われておるのです。従つてその長期計画がない、ないと言いますけれども、防衛計画はないと言いますけれども、大体この三党折衝において示されたこの線に沿うておやりになるのではないか。これが大体防衛計画輪郭ではないか。この点お伺いいたします。
  10. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 三党折衝の間にはそういう線に沿うて協議をされたことと思います。私はその間の事情は存じよらんのでありまするが、併しながら政府といたしましては、あらゆる観点から考慮をしてその線に沿うてやるべく努力はいたします。努力はいたしますけれども、それをそのまま鵜呑みにするということは、これはあり得ざることでありまして、政府は又そのときの財務状態、いろいろの観点から、これを検討いたしまして、最終結論を出さなくちやならんのであります。その線に沿うて考慮すべきことは勿論、我々として考えるべきでありますが、それが最終案とは私は申すことはできないと思います。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は最終案を聞いているのではないのです。このまま鵜呑みにするかどうかということも聞いているわけではないのです。大体ですね、この法案で一番重要な国防会議において、国防基本方針を立てるときに、やはり防衛計画と、これは密接な関連があつて、具体的な防衛計画基本的国防方針と合せて、これは立てなければならん。そうするとですよ、基本的な国防方針があつて、それに基いて防衛計画を立てなければならんのですが、それは自由党独自ではこれは立てられないのであつて三党の折衝においてこれを立てる。それが先ほど中曽根君が自由党案と言われたそのものについて、そのものに沿うてやるのであるという意味ですから、大体これに近いものではないか。鵜呑みにすることはないと言いますけれども、それではこの陸軍十八万、海軍十五万トン、空軍一千機、これの五カ年目標、この程度輪郭は大体この線に沿うてやる。こう考える。この規模については……。
  12. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 大体の方針はそのようでありましよう。併し具体的にこれを計画立てるにおいて、なお、これは研究を要すべき点が多々あろうと思います。御承知通り日本財政も固定しておるものではありません。どう変化するかわかりません。又国際情勢の動きも、これは御承知通り変転極りないものであります。いろいろな観点から考慮いたしまして、最終結論は下すべきだろうと考えております。なお、この五ケ年計画をしても、立てても、それは固定的のものではないと考えております。一応の案が仮りに立つているといたしましても、それはいろいろな事情からして又変更あるべきものと私はこう考えておるのであります。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体これが目安になるわけですね、目度になる、こう了承していいのですね、多少の違いは出て来ても……。
  14. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 三党折衝の結果、一応の目だてはそこにあることと了承する次第であります。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三党の折衝の結果でなく、それに基く政府で案を立てる場合、大体大まかにこの線に沿つて、これを目標としておるという点を伺いたい。
  16. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) まだそこははつきり申し上げることはできません。十分検討いたしたいとこう考えております。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併し尊重すると言われておるのですから。
  18. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) むろん尊重いたしたいと考えております。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから陸海空はやはりおのおの均整なる兵力を作るという心持について、どういうお考えですか。
  20. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 均整ということは、どういうことを意味するか、私ははつきり分らないのでありますが、とにかく日本といたしましては、御承知通り四面海でありまするから、これらの点を十分に考慮して、そしてどこへ重点をおくかというようなことも将来考えなくちやならん、均衡均衡と申しましても、何が均衡であるかということについて、私は先ず考えなくちやならん、それらの点について十分考慮した上で、日本防衛方向方式というものを立てたいと、こう考えております。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 二十九年度の計画では、三軍バランスになつておるがこれは均衡がとれてないのですか。
  22. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 均衡ということの意味はつきりしない、これなんであります。いわゆる財政的にどういう配分をするかということによる均衡であるか、或いは勢力関係でこれをバランスをとらして行くか、そのバランスをどうおくかということについてはつきり私は言えない、我々は一般的によく日本情勢を勘案して、そして日本防衛態勢重点をどこにおくかというようなことから、計画方式というものを立てて行くものと、こう考えております。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 二十九年度の計画はどこに重点をおかれたのですか。
  24. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 先ず陸であります。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併しこれまでと違うところは、空を新たに加えたということですね。
  26. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) もとより空は加えております。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今後どうですか。陸を重点にやるのですか。
  28. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私の考えではむしろ海空のほうに重点をおくべきじやなかろうかと考えております。これは私の私見であります。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今後はそうすると、空は相当重点をおかれる、世界の大勢を見ると、海軍はやはり空軍に従属するという傾向になつて来ます。アメリカ政策を見ましても、空軍は非常に重要視されておる。殊に軍事兵器など作る場合に、そうすると海空重点と言いますけれども、特に今後空というものに対して相当重点をおかれて行くのではないですか。
  30. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 申すまでもなく、日本は外国と戦争をするという考え方ではないのであります。日本防衛態勢を立てて行こうというのであります。それに基いて日本方式というものを決めて行かなければならん。申すまでもなく日本は九千マイルになんなんとする海岸線を控えております。これらの警備方式考えますると、相当数の船舶が必要であろうと考えております。これをどうすべきかということは、我々は第一に取上げなくちやならん。又日本の空からの不当攻撃に対してこれを防禦するには、やはり航空機が要るのであります。その方面にも相当考慮をめぐらさなければならんということは当然である。併しこれは今申上げる通り日本財政力に応じてやらなくちやならんのであります。我々はそこに重点をおいて方式を立てたいと考えても、これを考えるだけではいかんので、実行することになると、そこに難関にぶつかつて行くのでありますから、それらの点を十分に考慮して防衛態勢を立てて行かなければならんと、こう考えておるのであります。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この防衛計画については長期計画、これはむずかしい、立たん立たんと言いますけれども、その立たない理由は一体どこにあるのですか。
  32. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は三つあると思います。いわゆる財政面、もう一つ国際情勢、もう一つ兵器の進歩です。簡単に申上げればそういう点であります。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは安全保障条約行政協定MSA協定においても、アメリカ共同策戦というものが、そういう条約で義務付けられているわけですが、そういう場合に、アメリカのこの戦略態勢がわからないから、日本は自主的にきめられない、そういう点にあるのではないですか。
  34. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は今申上げた通り日本独自の防衛態勢をととのえる上において、そういう観点からなかなか容易でないと、こう申上げておるのであります。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この防衛計画を立てると言、具体的な面をいろいろ見ますと、日本独自の防衛計画防衛計画と言つております。又木村長官は主観的にはそう考えておられるかも知れません。いわゆる客観的にはアメリカ防衛計画に従属している。だからアメリカ防衛計画がなければ、日本防衛計画も立たない。こういうことに客観的にはなつていると思うのですが、如何ですか。
  36. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 無論アメリカ駐留軍の手によらなければ日本防衛態勢は十分ということはできないのであります。アメリカ駐留軍の力によつてなお且つ日本防衛態勢を確立することが、私は現実あり方であろうとこう考えております。
  37. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それはで暫時休憩をいたします。    午前十一時十五分休憩    ——————————    午前十一時四十二分開会
  38. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは休憩前に引続いて委員会を再開いたします。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほどに引続いて保安庁長官にお尋ねしたいのは、結局三党の折衝に基いて五カ年計画はそのうち作らなければならんのですね、いつ頃できますか。
  40. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これはちよつと今めどがついておりません。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いつまでも放つておくわけにも行かないでしよう。
  42. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これはやはりいろいろ事情もありましようから、そう早急に立てなくても私はよかろうと思います。非常に慎重にこれは検討して立てるべきであろうと私は考えます。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじやこれが立たないで国防基本方針というものは立ちましようか。
  44. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知通り国防基本方針というのは、これは大きな総合的なものでありますから、これも早急に立てなくちやならんというわけじやないんで、完全なものを作り上げるのには、あらゆる総合的の見地から判断してやらなければならん、いずれは立つことになりましようが、私はそう早急に立てなくてもいいと考えております。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に私はおかしいと思うのですね。国防会議において国防基本方針防衛計画の綱、防衛計画に関連する産業等調整計画というものを諮問することになつておりますが、そういうものはまだ立てなくてもいいというのでは、一体動きますか。
  46. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは国防基本方針を立てるのは結局国防会議においてやる。それを立てるについての資料は、各関係各省において十分検討をして、やるべきであろうと思います。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国防を担当する保安庁においてそういう構想がないのですか。
  48. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 国防基本方針は今申上げる通り保安庁独自では立てることはできないのであります。保安庁において立てるべきものは、別に関係庁としてやるべき仕事があるのでありますからして、その分担部分については十分検討してやるべきものであると思います。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは結局ですね、自主性なき軍隊と言われますが、アメリカ側と相談しなければできないということになつているのじやないですか。
  50. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 国防基本方針は何もアメリカから掣肘を受けるわけのものではないのであります。アメリカ駐留軍と今後如何なる提携をして行くかということも、これは国防基本方針になるのであります。アメリカの干渉とかアメリカに聞いてというようなことではないのであります。日本独自の基本的構想に基いて、この案を立てべきものと考えております、
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日本独自の構想というのはできるはずじやないか。それができないのは、やはり安全保障条約その他行政協定によつて共同作戦をやる、そのためにアメリカ側戦略国防方針というものがわからなければ立てられないというところに、一番の防衛計画も立たない。国防方針も立たない、そういう原因が私はあるのではないかと思いますが、そうじやないですか。
  52. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 国防会議ができますると、国防会議において十分基本方針を決定するについては研究いたすでありましよう。この研究する段階においては、無論各国の国防あり方その他は参考にすべきでありまするから、それらの点についても十分研究或いは資料を集めることは要すると考えております。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 空軍については、最初の政府考えでは、三十年度から空軍を設けるという考えでおつたところが、アメリカ側要請によつて一カ年早めて二十九年度から空車を設けることになつた、こうなつておると思うのですが、その点は……。
  54. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) さようなことはありません。アメリカ要請ということはございません。我々はできる限り早く練習させなくちやならんのであります。或いは練習機輸送機通信器、それらの点について充実いたしたいと、こう考えておるのであります。何分にも財政的の面の制約がありまするから、なかなか事は容易に運ばないのであります。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 防衛計画のこれまでいろいろの作業について、新聞雑誌その他これまでいろいろ報道するところによると、これはアメリカ戦略変つて、そのために日本空軍を早く作らせる、そういうことになつたので、政府は三十年度から空軍を設けるはずであつたけれども、二十九年度に早めて設けるように言われておる、非常にアメリカニユー・ルツク政策に転換した結果として、空軍を早く日本に作らせるということに重点をおいて来ている。又木村長官は昨年二月と思います。本年二月ですか、青森で視察の帰りに、新聞記者諸君会つて三軍バランスは再検討を要する、今後は空軍重点をおいて防衛計画を立てるようになるのだということを言われたことが報道されておつた。今後の防衛計画はやはりそういう方向に向くわけでありますか。
  56. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは余ほど検討の結果を待たなくちやなりませんが、少くとも私は海と空とは閑却されることはできない。今のままであつてはならん。相当の実勢を備えべきであろう、こう私は考えております。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 予算関係から行くと、やはり今後は空の予算相当殖える、こう見てよろしうございますか。
  58. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) まだ予算の点については我々は深く研究していないのでありまするが、我々の構想といたしましては、日本防衛計画は能率的で且つ経済的であることを欲するのであります。併し申すまでもなく、空については、なかなか平易な言葉で言えば、金を食うので、思うように行かんということは、木村委員も御承知通りであろうと思うのであります。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 アメリカニユー・ルソク政策或いはビキニ水爆実験、そういう結果、日本防衛計画について再検討しなければならん点が出て来るじやないかと思いますが。
  60. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) ビキニ水爆実験そのものだけじやありません。いろいろな観点から我々は今後の日本防衛あり方というものを十分に研究を要すると考えております。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 防衛を能率的に効果的にやる、僅かの予算を以て非常に能率のいい軍隊を持ち、防衛力を持つ、そのためには原子兵器を持つことが一番経済的である、これはいろいろ発表されておりますが、従いまして一番能率的に安い費用で一番破壊的な力をたくさん持つ、それで、想定敵に対して防衛の威力を発揮するには原子兵器を持つことが一番効果的であり、能率的である。これ最近のいろいろな試験の結果はつきりしている。従つて原子兵器を持つようになるのですか。
  62. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今原子兵器のことは考えておりません。我々は日本国防体制を如何に確立して行くかということであります。日本防衛に果して原子爆弾みたいな偉大な兵器を必要とするかどうか私は疑問であると思います。我々は今原子兵器というようなことは考えておりません。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併し日本は独自で防衛するようになることを目標にしているのでしよう。その場合に日本の独自の防衛、即ち戦力を結局持たないから持つように努力して行くのじやないですか。
  64. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は憲法の許す範囲内において日本防衛体制を作つて行くことを考えているのでありますが、この場合原子兵器というようなものは考えておりません。むしろ私は原子工業に重点をおいて、将来は電波兵器に力を注ぐべきであろうと私はこう考えております。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今我々はまあ出してもらつた資料をもつとよく見なきやなりませんが、今の部隊編成、それから部隊編成の中にあるいろいろな特科隊とかいろいろありますが、その中では原子兵器と関連のある教育訓練その他そういう計画みたいなものは含まれておらないのですか。
  66. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) まだその程度に至つておりません。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いやまだその程度に達していないと言われましたが、将来やはりそういうふうな訓練や、何かアメリカにいろいろ留学するのでしよう。そういう場合にそういう教育を受けるのじやないですか。
  68. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) もとよりそういう先進国に対して私は研究員を出したいと、こう考えております。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう原子兵器なんかの研究、それから教育訓練、そういう人たちも留学に出したい、こういうお考えなんですか。
  70. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) もとより私は原子兵器研究については関心を持つておるのでありますから、研究員も派遣したいと、こう考えております。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 我々に配付された資料によりますと、留学計画というのを出されましたが、その中にはそういう研究員も含まれておりますが、この留学計画の中に。
  72. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) まだそれ専門にというわけではありませんが、それに関連して海上自衛隊のほうから電子整備学校のほうに向けて留学させたいと、こう考えております。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 MSA協定による軍事顧問ですか、MSA協定によつて訓練の援助も受けるわけですね。そうしますと、その訓練の援助というのは、その顧問団による訓練の援助というものはそういう面も含まれますか。
  74. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) アメリカから供与を受けまする新しい武器について、その操作については訓練を受けることになつております。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 原子兵器なんかの取扱に関する訓練、そういうものも受けますか。
  76. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今のところは考えておりません。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣が見えましたが、大蔵大臣にお忙しいようですから先にお伺いします。この防衛法案前提になつているものは、いわゆる三党の防衛折衝によつて結論が見られておる、防衛折衝の際に防衛計画について自由党としての具体的な案は示されておるわけですね。それによると、大体五カ年計画によると、その毎年の維持費一兆四千億円程度ということになつておるのです。これは日本国力財政力等から言つて、大蔵大臣は負担し得るものか或いは又それを超えるものかどう考えますか。
  78. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 防衛計画についていろいろ三党の間に話合いがありましたが、実は成案になつておるとはまた承知いたしておりません。又防衛庁その他から、成案として示されたものも持つておりません。但し財政計画といたしましては、これは木村さんがよく御承知のように、本年の大体予算が、二十九年度の予算保安庁がたしか七百八十八億、それから予算外が八十億、それに防衛分担金が五百八十五億ですか、千四百五十三億たしかあると考えておりますが、それ以上日本で負担し得るかどうかという問題については、これも御承知のような賠償問題等に対するいろいろな交渉の今後の結果にもよることでありますし、更に又イロア、ガリオアについても目下交渉が進んでおつて、その結果によつて日本の負担が若干殖えることと考えておりますが、さればと言つて、他方国民の所得が非常に増加するかと言うと、これもお考えのように差向き国民所得の増加が多く期待できないと私は考えております。従つて的確なることは来年度予算編成するときに閣議等で話合わなきやなりませんが、大体の考えかたとして申上げれば、どうも本年以上に大きな財政支出をすることはなし得ない、こう私は考えております。これは極めて率直なお答えをいたしたわけであります。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体めどはわかります。そうしますと、三党防衛折衝の具体的な基本になつておる五カ年防衛計画の毎年度の維持費、これを総計した一兆四千億が約三千億になるのですがね、一カ年にして。これは非常に過大である、こう思われますが、そうでございましようね。
  80. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 国民所得が著しく増加するような情勢におかれ、又いろいろしますれば、これは一応多少の増額は考えられますが、只今申上げた通り国民所得に大きな増加の期待が寄せられず、又新しく今のガリオア、イロア及び賠償等の債務負担が殖えるものと考えれば、そう大きなことはできないと考えるのが私は常識であると考えております。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、我が国の財政面における日本防衛計画の限界というものは、今大体限度というものは大蔵大臣から言われたわけです。千五百億以内ですね、大体千四百億とか或いは千三百億とか、そうすると、予算面から、国力から見た限度というのはその程度とすると、これは木村保安長官に伺いたいのですが、大体日本防衛計画のめどというものは、そういうところにおかれるのじやないのですか。
  82. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは来年度のことでありまするから、今大蔵大臣からお話のあつたように、日本国力が増加して国民所得が今よりも上昇いたしますれば、そのときには又考えなくちやならんと考えています。これと同時に、国際情勢の変化というようなことも終始頭において、それと関連して国防計画というものは立てるべきであろう、こう考えております。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この前保安庁長官は、この防衛法案を提出する事由として、第一は国内、国際情勢の変化に伴つて、こういう二法案を提出する必要が生じたというふうに言われ、その国内、国際情勢の変化ということについては、殊に共産勢力が攻勢になつて来て国内おいてやはりいろいろな治安撹乱工作があるからと、こういうふうに言われましたが、これまで総理はたびたび国力に応じた漸進的再軍備をやるのだと言つておるのです。やつぱり、ですから国力に応じたということが一番重要であつて、そうして国内治安、対外的な脅威というものを勿論要素に入れなければならんでしようが、保安庁長官の御説明ですと、国力よりもむしろそういう内外の日本に対する脅威、治安的な脅威というものに重点をおいておられるのですか。
  84. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は常に申しておるように、いわゆる国力相当防衛計画ということは、これはあり得ないものである。先ず国力重点をおくことが当然であろう。それと同時に国際情勢を常に勘案して、これにも目を注いで適正な計画を立てるべきであろう、こう考えているのであります。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣に伺いたいのですが、国力から行くと、国力という観点から見ると、どうしても二十九年度の防衛支出が大き過ぎるのじやないのですか、今の政府のですよ、この一兆円予算を中心とする政策は大体二十七年度の通貨量或いは生活水準、生産水準、大体そこに持つて行こうとしているのですよ。そうしますと、最近の外貨の保有高を見たりしましても、日本の経済は非常に危機の態に陥つておる。そうすれば国力から行けば、むしろ減らさなければならないのじやないですか。国力に応じて防衛力考えて行く場合には、むしろ防衛費は二十八年度より減らすべきじやないですか、その観点から言つて
  86. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは日本のいわゆる一兆円予算の中でそれが一割四分に一切のものを入れて止まるということは、これはよその国に比べて遥かに少いものであり、又国民所得に比べても非常に少いものであり、今日のところそれが国力以上のものであるとは考えておりません。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は衆議院予算委員会において各委員の大蔵大臣に対する質疑を見ましたが、大蔵大臣は防衛費を国民所得或いは財政規模に比較して比率が非常に小さいから、大したことないのだと言つておりますが、これは比較の観点が違うのじやないのですが、そういう単に自衛負担でもそうですが、国民所得や財政負担を比較する場合に、日本の今の生活水準から考えたら、外国より遥かに低い生活水準、国民所得も小さい、ですから単なる比率関係ではいけないと思うのです。今大蔵大臣が御承知のように、中小業者はどんどん潰れて失業者が多くなつて来て、もうすでに経済危機だ、この危機を突破しなければならん、そうして一番非生産的な防衛に金を使つて、じや国内ですぐ共産革命が起るか、そんなことは予想されない。対外侵略があると予想されない。それなのに、どうして無理な防衛支出をやるのですか。
  88. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 私は自分の国は自分で守るところへ持つて行くのが本旨でなければならないと考えております。但しその程度はいつも国力を超えてはならん、こういうふうに考えておるのでありまして、あなたとちよつと違うのは、あなたは全然防衛は無用だとされておるのと、そこはちよつと考えが違うのでありますが、この程度国防を私は必要なりと考えておるのですが。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は全然無用だと言つたことは一遍もないのですよ。大蔵大臣が誤解しておるのです。私は一応大蔵大臣の政府側の立場に立つて政府側のこの法案を提案した理由、それから総理がいつも国力に応じて漸増して行くというそういう言明、そういうものに基いて質問しているのですよ。それからももう矛盾があると思う。本来ならば政府側の見解に立つて防衛費を減らすのが当然、経済危機、国民に耐乏を要求していいのじやないのですか。こういうような経済危機の状態に日本が立至つているのに、防衛費だけ殖やすというのは、これは日本が自主的に防衛をやるのじやなくて、アメリカに、MSAその他によつて、他の力によつて強制されているから、国力には実は超えているのだけれども、やらざるを得ない。そういう非常な苦境に立つている状態だと私は思うのです。それが真実だと思うのです。それを如何にも自主的に日本がやるかのごとく国民に偽装している。そうしないと、反米感情が起きるから偽装している、これは傀儡政権の特徴です。自主性のない政権の特徴です。これは議論になりますからやめますが、併し大蔵大臣は二十九年度の防衛費千四百五十三億ですね。大体今後もその程度しか負担できない。それ以上は無理だと言われましたが、三十年度もこれですみますか、私は二十九年度のこの防衛予算の中にまだまだ追加されるものが相当出て来ると思う。それから平年度化すると相当大きくなつて来ると思う。そうすると三十年度において、三十年度の防衛費ですが、大体千五百億どまりでとまりますが、三十年度に。
  90. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) それは私が今申上げたのは、大体そういうふうに行こうということを最初に申上げたのでありまして、来年度の予算編成に当つて、どういう数字が出て来るかは、その若干の差は出て来ると思いますが、日本国力として見るときには、それが一つの何といいますか、原則として、枠といつちや語弊があるかも知れませんが、そういう方針に、目安になる、こういうことを考えておるのであつて、現在の国民所得なり経済情勢から見れば、それから大きく出るようなものは国力を超えておるものである、こういうふうな意味で申上げたのであります。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 とかく軍事費はまあ軍機の秘密ということもありますけれども、その性質上経費が著しく激しく累増する性質を持つておると思うのです。従つてこの予算は国会の承認を得なければなりません。又余り急激に殖えると国民の反対が起る、批判も起るわけで、どうしても正面に現われたところでは余り殖えないように、何といいますか修飾して、そうして当面は殖えないのだけれども、それを平年度化すると殖える、更に次の年度になると殖えるという形において要求されておるのです。最初は氷山の一角であるけれども、それを認めて支出をすると、どうしても次年度から更に殖える、そういう修飾隠蔽が行われて、額面通りに素人ではわからないような予算の組み方をしていると思う。従つて私は二十九年度のこの予算を見ても、この七百八十八億だけでは済まないと思うのですが、その防衛費の補正というものですね、これを予想されないのですか。
  92. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 今おつしやつたような補正についてわからんでもないが、併しあなたがおつしやる通りにも私は考えておらないのみならず、やはり予算の編成の責任者としては、飽くまで国力に相応した面での予算しか計上しないのでありまするから、この点については御懸念のようなことはないと私は考えております。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国力に相応した予算しか組まないと言いながら、保安庁長官の説明などによると、それが必ずしもこの防衛予算の限界ではないと思うのですよ。国力の負担を超えておるのですよ。政府の認定によつて国内治安確保上国力を超えても殖やさなければならん、或いは対外侵略の危機があるから殖やさなければならんというような、国力のほうが第二義的にされる、今度の法案の出し方、予算の組み方は……、私はそうなつていると思うのです。国力にちつとも応じておりません。むしろ逆行して負担以上の防衛費を負担している。而もですよ。今後私は又もつと殖えて来ると思う。今度のこの法案の出し方は実に変則であつて予算は過ちやつて法案が後から出てその法案も三派折衝によつて出て来ている法案であつて、この予算とマツチしていない。従つてこれからまだまだこの法案が通つた場合に、新しく予算が出て来なければならん面が非常にあると思うのです。例えばですよ。この予算の中に教育局ですね、これは防衛庁法第十条によつて教育局、局が一つ殖えたと思うのです、三派折衝によつて。その予算及び防衛庁法九条の参事官、これは改進党との折衝によつて新しく殖えて来たのだと思いますが、こういう予算は計上されておりますか。
  94. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 事務的な問題でございますので、私からお答え申上げます。御指摘のように教育局長及び参事官の分は積算の内訳といたしましてございません。併しながらこれは内局の人員の中で優に調整をし得る人数でございまするのと、級別につきまして大蔵省と相談いたしまして、きめれば相済む問題でありますから、実行上十分計らいがつくと思います。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 みんなそういうふうに最初はこういうものを予定していないと言つていて、こういうものが出て来ると、ほかの費目から流用してこれに辻棲を合せる。成るほど二十九年度ではそれは操作できますよ。併しそういうことが三十年度に必ず増加が出て来るのですから、二十九年度の予算はそういうものは予定されないで組んである。そうすると、結局それは三十年度にしわ寄せられて来るんで、そうでなければならんはずですよ。そうでなければ、最初の二十九年度の予算を組んだ時にそういうものを予定しないで組んでおつて、新しくそういうものが、教育局、参事官制度が出て来て、簡単にこの予算で賄えるとしたら、これはおかしいじやないですか。そのほかにもまだまだ私は予算上殖えて来なければならんと思う費目がたくさんあると思う。それは前にも予算審議の時に質問しましたが、アメリカ軍から返してもらえる兵舎は一体その後どうなつているのですか。北海道、仙台、岐阜、もう一カ所あつたと思うのです。或いは若し駐留軍が兵舎を返すと言わなければどうするのですか。兵舎を新しく建てる必要があるんですよ。これは又それだけ予算補正が必要だし、追加が必要だと思うのです。その問題はその後どうなつているのですか。
  96. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 米軍が現在使用しておりまする兵舎の返還につきましては、現在も引続き折衝中でございまするが、未だ確定的な段階に到達いたしておりません。木村委員お尋ねの若手或いは大部分というようなものでも、若し返還をせられなかつたらどうするかという点につきましては、これは予算委員会の席上でお答え申上げておきましたが、今回増加をいたしまする人数があるわけであります。大体一万ちよつとであります。その程度の問題でございまするので、又そのうちのどの程度のものが返還ができないことになりまするか、全体の、今我々の持つておりまする宿舎の割合からいたしますれば、そう大きな割合にはならない、従いまして、これらの教育訓練というような段階におきまして、若干の不便、いろいろ不便があるのでありまするが、そこら辺の点は或る程度忍びまして、現在ありまする兵舎の方々の余裕をできるだけ使うようにいたして参りたい、こう考えております。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十年度の予算としてはどういうふうになります、若しそれが折合がつかないときは……。
  98. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) その点は返還が、只今不可能であるということか、或いは先へ行けば可能かということによりまするので、どういうふうに相成るかということは言いにくいんでございますが、場合によりましては三十年度におきまして子のカヴアーを取らなければならんということがあり得るかと思います。そこら辺は当つて見ましての上のことでありまするのと、返還の時間という問題も考えなければなりませんが、一概には申上げられません。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから陸上自衛隊については、これは予算委員会でも問題にしましたが、初度費がない。その初度費は大体アメリカから武器を貸与するということと、二十八年度の繰越、こういうもので賄うということになつているでしよう。それは三十年度にそのまま又響いて来ると思う。それからアメリカから予定された兵器の貸与が予定通り行つてないでしよう。その場合には又こちらで作らなければならん。そうしたらそこから又殖えて来なければならん。初度費が計上されていない。これは相当金額が大きいものだと思う。それについては三十年度では相当響いて来ると思うのです。この点はどうですか。
  100. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) これは予算委員会の席上でも申上げましたように、二十九年度におきましては二十七年度以降蓄積いたしましたストツク及びプレースという形での資材、八十八億ばかり使うつもりであります。従いまして木村委員が御指摘のように、二十九年度におきましての増員の分につきましては、その系統のストツク、リプレース、これの将来に及ぼす影響は二点ございまして、一つは三十年度におきましての増員をいたしまする場合に、大体洗いざらい全部というわけではございませんけれども、従来のストツク、リプレースの相当大きな部分を使いますので、三十年度以降再びそういうことをやろうと思つても不可能である。従いまして三十年度以降の増員の場合には、こういうようなことで初度の車両等の費用を計上して参らなければならんという点が一つ。もう一つはストツク及びリプレースは、おのおの理由があつてつたことでありますから、これは後年度におきまして逐次財政の状況、全体の経費の差繰と睨会せまして補填をいたして参ります問題でございます。従いましてそれは三十年度を含めまして将来に亘る問題だという、二点ございます。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この際二十九年度の初度費を計上されていない理由の大きな一つは、アメリカから武器の貸与を受ける、艦船の貸与を受ける、飛行機の貸与を受けるということが前提になつているわけですね。その一つが……。そのために初度費が計上されていない。そこでアメリカとの武器貸与の内容です。これについて伺いたいんですが、それでこれは兵器については我々資料を頂きました、兵器、艦船、飛行機について……。で、アメリカから貸与を  受けるときに、これを調べるんですか、最初から……。調べないんですか。それで私が要求した資料には、その製造年月、それから性能というものを要求してある、そういうものをお示し願わないと、ボロ兵器を貸与するんではないかと言われておるんです。早くこれが壊れたり、消耗してしまつた場合、新らしく日本が作らなければならない。そうすると財政相当負担が出て来る。それから戦艦についても七千トン級の、あれは駆逐艦というのですか、あれはアメリカは貸したくないと言つている。話に聞きますと、保安庁からアメリカ行つて調べて、実際に見たところが、七千トン級は非常に近代装備でいいものである。だから是非これを貸してもらいたいと言つたところが、向うではいやだと、その代り、七千トン級のものの代りにもつとトン級の少ないものを二隻やる。その代り飛行機を若干やるからどうだと、こういうように言われた。そうなると、実際日本防衛計画がどこに立つのですか。こつちじや予算じやちやんと七千トン級のが入つている。これがなければ独自の防衛計画にならない。アメリカでは貸さない。違つた艦船を貸してくれる。或いは日本で希望しなかつた飛行機を余計くれると、こういうことでは独自の防衛計画にならないと思うのです。従つて、この兵器の貸与なり、戦艦の貸与なんかでも現物を先に見るのかどうか、その辺をよく承わつておきたいのです。
  102. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 事務的な点についてのお答えを申上げます。最初の本年度の初度費が、米側からの貸与のために特に計上していないという点であります。これは先ほど申上げました二十七年度以降のストツク、リプレースを流用しておるというのが、本年度予算の第一の重大特色でありますが、それ以外につきましては、アメリカ側は今申しました陸上自衛隊、それ以外のものにつきましては、今木村委員御指摘のように陸上、海上或いは航空、すべてアメリカ側の援助を期待いたしておりますが、それは実は二十九年度だけ非常に特色があるというわけではございません。いずれにいたしましても、今御指摘のようなものが予定通り入らなかつたらどうなるかという点でございまして、これは例えば艦船につきまして、或る特定の艦種のものが入らないという場合どうなるか、この点につきましては、目下のところ、まだ御承知のように、一部につきましてははつきりこちらに渡すというような話がございますが、その残りにつきましては、はつきりしない状態でございます。まあ、ただ承知いたしておりますところでは、できるだけ当方の必要とするところの趣旨を尊重して、できるだけやり繰りいたしたいということを強調いたしております。そこで、向う側からもらつております装備の製造年月というようなものにつきまして、もらいますものにつきまして、今日わかつていないものが相当あるのでありますから、従つて差上げました資料の中に、製造年月につきまして、或いは落ちておつたかと思いますが、これらのものにつきましては、引取りをいたしますのに、十分に現場に参りまして、向う側と立会いの上でものの検収をいたしたい、こういうように考えております。従いまして、御指摘のような非常に役に立たないようなものを借りまして、将来それらの修理、或いは取替というような、異常な負担がかからないようには両方で打合せをして努力します。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 兵器は大体どのくらいたつたのが目標になつて予算に組まれておるのですか。
  104. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 兵器の修理のうちで、これは御承知のように、今予算に計上しておりまする修理関係は、陸上自衛隊につきましては、部品の系統は向うからもらつております、現在……。今後も引続いてそういうふうな行き方でやろうというようなことになつておりますので、貸与武器につきましての今予算上計上しております金額は、武器の手入れ費、武器を洗つたり拭いたりする手入れの費用及び車両のようなものにつきましては、当然ガソリンでございますとか、そういうような燃料というようなものがございまするので、この陸上自衛隊の武器の関係につきましては、予算計上の基礎となつておりまする耐用年数は、どのくらいたつたかということは、ちよつと一概に申上げられません。海のほうは、これは修理費が作りまして、その経過いたしました年数が非常に違うのであります。一応今のところは製造後十年ということを一応の見当といたしまして、修理費の計算をいたしております。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣に伺いますが、二十八年度と、二十九年度のこの防衛費の実支出は、どのくらいになるのですか。実支出といいますのは、当該年度に計上された防衛費に前年度からの繰越しを入れて、次年度への繰越しを差つ引いたものですね。この比較はどのくらいになるのですか。この防衛支出については、ただ当該年度に計上された防衛費、に比較しても、これは比較にならないと思うのです。前年度からの繰入れと次年度への繰越しを差つ引いて計算しなければならん。
  106. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 今ちよつと計算した上で申上げます。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじやそれは今計算して、あとでできましたら伺います。で、なお大蔵大臣にお伺いしたいのは、一般にこの防衛費については、真剣にまだ考えられていないのではないかという気がするのです。それは実際に防衛支出が、二十九年度予算に七百七十八億、二十八年度六百十三億、それでそう大して殖えてないように思われていますが、殊に二十九年度を平年度化して、そうして三十年度の防衛分の額を加えると、相当大きくなるのですね。更に三十一年度を加えると、相当又大きなものになる。私は今度のMSA協定によつて、こういう防衛法案が出て、ここで再軍備、新らしい意味での再軍備に再スタートする場合に、日本の経済、財政、国民生活に重大な変化が来るわけなんですよ。真剣に我々はこの防衛の問題は、財政面、経済面からも検討しなければならん。今ここにこれだけ出て来たら、それだけで済むと思つたら大間違いで、今後の将来のこの防衛費の殖え方というものを考慮に入れながら検討しなければならん。それについては、どうしても五カ年計画というものは、一応ここでめどができて、それに基いてやつて行かなければならないのに、国防計画も五カ年計画もまだ作れない。そうしてその当面の年度の予算だけを考えて行くというような防衛費の組み方は、こんな無責任なやり方はないと思うのですよ。そこで今後のやはり防衛費のあり方について、大蔵大臣は基本的に、どういうふうに考えておられるか、平年度に直しますと、相当大きな、前に比べて大体少くとも百五十億殖えている。そうなると七百八十八億に百五十億で、九百三十億ぐらいになるのです。それに前に保安庁長官が言われましたが三十年度に陸上二万、海軍六千、空軍八千六百と、これだけの規模を加えますと、相当大きくなると思うのです。この出された資料によりますと、この二十九年度陸海空自衛隊の業務計画表というのを頂いた。大体八月に三十年度の予算の編成をやることになつています、自衛隊は……。従つて三十年度の大体の防衛費の規模というものは、もうわからなければならないはずですよ。従つてその点について、先ず大蔵大臣としてのお立場から伺つておきます。三十年度の防衛費の規模です。
  108. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) まあ私どもとしては、今お話にあつたように、例えば保安庁費に来年若干殖える。若干殖えるというのは、今お話があつた百五十億か、百二十億か、その点は数字は確めておりませんが、恐らく百五十億を超えるような大きな数字ではないと私は記憶しております。三十年度については、そのほか向うからMSA関係で入つて来るもの等もあつて、どういうものが一体入つて来るかというところで分れまするが、先ほど申した通りに、千四百五十三億という、防衛予算の全体的の考え方をそう大きく変えるという考えは持つておりません。ただ従つてどういうものがどういうふうに殖えて、どういうものが一方で節約されるかという点が、はつきりせん点がございます。こういうことがありますので、数学的に言えませんが、大掴みに申しまして、千四百五十三億というところが大きく差を生ずることはない。但し保安庁費は過日もちよつとお話に出ており、私どももたしか申したと思いますが、百億か、百五十億程度殖えるのじやないか、こういうふうに見ております。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから二十九年度の予算を見ますと、航空自衛隊については、航空機の購入なんかは器材費から出ているわけです。保安庁費のほうから出ています。ところが海上自衛隊のほうを見ますと、それは艦艇建造費は保安庁施設費から出ているのですね、保安庁費から出ていないのでするこれはどういうわけで違うわけですか。
  110. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 御指摘のように、保安庁の全体の予算は項保安庁というのと、項施設費とあります、保安庁施設費のその二つに分れておりまして、境い目のところをどう引くかという点であります。それで大体不動産のほうの性質もございまするが、御指摘の器材と船舶という関係につきましては、相当大きな器材もほかにあるものでありまするから、航空機までは、一応器材費、船舶というものは、これはいろいろな扱いにおきましても不動産という扱い、国有財産法上もそういう扱いになつております。一応今までのところは、船舶建造費というものは施設費のほうで扱うという扱いにして来ております。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはおかしいですね。航空機なんか消耗度が多い。だからそういうわけで物品費ですか、物品費というような形で計上すると思うが、性質から言えば、やはりこの海上自衛隊の場合のように、保安庁施設費の項目に入るのが当り前じやないのですか。戦争のいわゆる手段武器としてはですよ。片一方は艦艇建造費として保安庁施設費から出ている。片方のほうは保安庁施設費のほうに入らないというのは、空軍のほうはどうもこれはおかしいのじやないですか。
  112. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) いろいろ境い目のところでありますると考え方があると思うのでございますが、これは多少例は違いまするが、ヘリコプターを一番最初に買いましたのは、海上保安庁であります。海上保安庁は当時の扱いにおきましても、これは施設費の扱いをしていなかつた。御承知のように飛行機の命数というものは、相当短いのが常であります関係上、従来の分け方としては施設費と、そういう不動産的なるものとを一線をそこで切りまして、器材の扱い方にしております。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この保安庁長官考え方ですが、アメリカ航空機の貸与はこれからもつと多くなるわけですか、貸与機数は……。それからいろいろなこの種類ですね、種類なんかも非常に変つて来るわけですね。
  114. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々といたしましては、アメリカから成るべく航空機の貸与を受けたいと考えております。併しアメリカにもいろいろ事情があることでありまするから、その間の調整をどう取つて行くかということは、今確定的に申上げることはできません。機種につきましては、今主として練習機を主においておるのであります。メンター練習機を使つております。これによつて乗員をまあ養成することが一番肝腎であろう。飛行機を貸与を受けたのでありますが、これを乗りこなす者がなければ役に立たないと思います。先ず練習機アメリカから相当数貸与を受けなきやならない、主として乗員養成のほうに力を注ぎたい、こう考えております。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これから航空機海軍重点保安長官はおいて行きたいと言うのですが、これは相当これから予算をたくさん食う軍事計画だと思うのです。大蔵大臣がどう考えますか、こういう三軍バランス計画になつていますが、現在は、二十九年度は陸上に重点をおかれているのですが、三十年度、三十一年度、将来は空軍海軍重点をおくというのは、相当予算を今度は食うわけです。そういう財政面から、国力から言うところの防衛計画については、どういうお考えを持つていますか。予算の面から見て……。
  116. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 予算面からは、提案されたものについての一応説明をよく聞いた上でないと、これは私が今ここで保安庁長官なつたようなつもりで御返事をすることは避けたいと思います。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんな情けない大蔵大臣では困るのです。アメリカではですよ。ニユー・ルツク政策や、戦略転換という面などから来ますと、経済面から相当問題が起きて来るようです。ダレス長官の演説なんか見てもですね。アメリカはやはり最初は軍当局の意向によつて軍事予算を組んだけれども、経済が行き詰つて、経済面から今度は作戦を練り直さなきやならんという面も出て来て、経済面から、やはり僅かの費用で破壊力の大きいものを持つ、そのために原子兵器を中心とするああいうニユー・ルツク政策に転換した、こう言われておるのです。ですからやはり国力に応じた防衛計画考えるというときに、大蔵大臣もこれから防衛のことを少し御勉強しなくちやならんわけですね。(「同感」と呼ぶ者あり)財政当局が防衛に……。而もこの予算防衛予算だ。今後はMSA協定を中心として、日本財政も、経済も、税制その他も、密接にこの防衛計画と関連があるのです。その財政当局が防衛について殆んど理解がない、わからんというような、今のような御答弁では、非常に心細いわけですね。で、これは若し余り予算を食うのだつたならば、大蔵大臣はやはり予算面からこれは制約しなきやならんわけです。そのときにやはり或る程度防衛計画に対する理解がなければ、こういうふうに予算を削つても、日本防衛はよろしいのだ、そういう見地から予算を敢然として削るような決意を持たなければ、そういう又準備をしていなきやならんわけですよ。それでよろしゆうございますか。
  118. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) よくお話は承つておきます。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 甚だどうも心細い限りです。今度も大体財政でも経済でも、MSA協定を中心として防衛法案ができ、そうして再軍備段階に入れば、財政経済の画期的な変化がくるのです。もう変化が現われて来た。その場合に大蔵大臣が国力との均衡において漸増計画考えなければならないときに、防衛についてちつとも理解がないということではお話にならんと思うのです。そこでもう少し理解のある御答弁があると思つたのですけれども、それでは質問してもしかたがありませんから……。  それからさつきの数字まだできませんか。
  120. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 只今手許に防衛支出による繰越の数字がないものですから、防衛支出金のほうは当該年度の金額、これは御承知のように一億五千五百万ドルに該当いたしまする支出金のほうは、これは繰越勘定にございません。ただ国内のほうの補償費系統には繰越がございますので、その点の調整をいたさなければなりませんので、ちよつとこの金額がわかりませんが、その金額は予算額のままで保安庁系統の金だけは繰越の増減を差引いて確定したものだけは申上げた。安全保障費は別にいたしまして、その二つだけの前提で申上げますと、二十七年度は一千一百十二億になります。それから二十八年度が一千一百九十九億、ちよつとこの辺は今宙で計算しておりますので、数億の違いは一つ御了承願いたいと思います。それから二十九年度は、来年度繰越がわかりませんので、本年度予算に前年度の繰越だけを入れて見ますと、一千六百二十九、この中から又二十八から二十九に越して来たような繰越が出ますので、その金額を引かなければなりませんから、今申上げた千百億、千二百億というふうにいきなりお考えになることは間違いでございます。とりあえずの数字だけ申上げておきます。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはあとで資料にして……大蔵大臣に対する私の質疑はこれで……。
  122. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 木村君から大分質問がありましたので、私の分は極く僅かですが、先ずお伺いしたいのは、今度のMSA援助協定によつて五千万ドルの小麦を買うことになる。その中の一千万ドル分が贈与になる。かの三十六億円の特別会計予算を審議いたします場合にも随分問題になりましたし、その後あの特別会計が設置されますときにもいろいろ問題になつたが、あの使い方がまだ明らかにされていない。あれはその後いろいろとアメリカとの折衝もあつたろうと思うのですが、どういうふうに使われることに大体話がついているのか。例えばどういう産業にあれが使われるのか、それが融資の形で行くのか或いは投資という形で行くのか、その辺についてもう大体めどがついていると思うのでお伺いしたい。
  123. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これはまだ実は関係各省で話合つておりますが、結論には入つておりません。ただ一致していることは、主としてこの金は開発銀行を通じていわゆるコンマーシヤル・ベースの下に貸出をする、こういうことでありまして、どういう業種にどう出すかという問題につきましては、相談しおりますが、なかなか各省議論がありましてまだ結論が出ておりません。従つて先方へもまだ相談いたしておりません。
  124. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今開発銀行を通じてコンマーシヤル・ベースの上に貸出しを行う、こういうことになつたように聞きましたが、先に例えばジエツト・エンジンの製作のために投資をするというようなことが、たしか通産大臣から言われた。そうすると、あれは日本のつまり国内の事情で投資ということはおやめになつたのか、それともアメリカ側のほうから投資はいけないのだ、これは開発銀行を通じて融資すべきものである、そういうふうな向う側の意見に基いておやめになつたのか、そこはどういうふうな形ですか。
  125. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) このジエツト・エンジン機の問題については、一度案が出たことがございますけれども、併し各省話合つてつてこれに対しては一方に反対論もあります。飛行機のごとき総合工業というものを融資するときにとり上げるのはどうかといつて相当強い意見等もありまして、これは何らまとまつておりません。従いまして先方とも話合つたことは全然ございません、この点については……。
  126. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 あれはアメリカ側のほうと協議をすることになつているのですが、大体アメリカ側のほうでは、ああいうふうな金はどういうふうに使うべきであるかというような大枠というものは示して来ているのですか。
  127. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これは兵器産業並びにその関連産業或いは基礎産業もそのうちに含まれる、そういうことはいわゆるMSA協定に基く小麦のグラントの性質からそういうふうに考えておるのでありまして、どういうものとどういうものへ出すということについては話はございません。念のために申上げておきますと、こちらで一応打合せまして枠をきめますと、きめた枠について先方へ相談いたします。それで同意が得られますれば、その枠の中で個々の問題はこちらで、ここへどう出すか、個々の具体的問題については自主的にこれをやるということに相成つております。
  128. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 その三十六億の使途は大体いつ頃目途がつくことになりますか。
  129. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) まだ三十六億入つてくるわけじやございませんので、できるだけ急いでおります。急いではおりますが、実は各省なかなか意見がございまして、岡田さんも聞いておられるでしようが、まだ閣議に持つて行くところまで行つておりません。事務的に難航しているのであります。いずれにしてもできるだけ意見の調整を行なつて結論に入りたいと考えております。
  130. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にお伺いしますのは、今アメリカから例の余剰農産物の消化のために日本へ人が来ている。そうしてあれから見ますと、来年度における余剰農産物のつまり何というか、利用というのですか、処分というのですか、それは本年より多くなる。そうなつて参りますと、来年度日本のほうで、余計くることになるのですが、そのうちどのくらいを来年度には期待をしておるか、又どのくらいを期待して折衝に入られるか、まあよくいろいろ言われておりますが、そこを一つ
  131. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 大体これは岡田さん御存じのごとくに、昭和二十七年では小麦が百九十七万トン入つておる。二十八年では百九十三万トン入つているのです。それで来年は小麦と大麦が六十万トン、これは数字は正確にきまりません。金額できまつておりますから……。価格によつて多少の差がありますが、それが今後来年度で若干殖えるということが考えられているのであります。これは日本としては百九十数万トンをどうせ毎年買入れるものでありますから、ドルのごとき外貨でなく、円払いで買えるというところに非常に特色があるのでありまして、その点について利益なんですが、やはりまあ価格の問題があつたら、それに伴ういわゆるグランドがどうなるかという問題等もありまして、まだ私は最後の決定的のものを聞いておりません。
  132. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まあ今度首相が向うへ行かれるについて、その点についての何か話合があるように新聞紙等に伝えられておりますが、やはりこれは世界銀行からの借款と関連して、本年よりもグラントの分についても相当額余計になるという期待をしておられるのですか。
  133. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) まだこの問題については実は十分関係各省と話合つておりません。例えば農林省のごときものと話合つておりませんので、ちよつと私からまだ御答弁申上げる時期に達しておりません。
  134. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それからこのグラントを受けて兵器産業を起すと、そういう場合にその金の用途を、まあ向うが一々承認すると同時に、その金の使途について向う側で何らかの監督をすると、そしてその結果まあ一種の干渉というような形をとるということも予想されるのですが、この間向うから贈与をされた分の金の使途について、そういうふうな、向う側からの干渉というようなことがあり得ることかどうか、その点一つ
  135. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) このグラントの三十六億を受けるものにつきましては、これについてはその枠のことは一応向うへ相談して、向うの同意が要ることは協約の上でちやんと約束しているのでございまするが、併し監督とか何とかそういうことについては一切こちらが自主的にやるのでありまして、何らの監督も干渉も受けるというものではございません。
  136. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にまあこういうふうな贈与を受けて、そうして日本兵器産業並びに関連産業を育成すると、こういうことは結局先ほど木村君も指摘されましたような、いわゆる国防計画と密接な関連を持つて来る。国防計画のまあ一部になる。それで現在それが大きな国防計画が立たないうちに、まあこま切れ的に、先に何かから着手されているわけですが、大体大蔵大臣のお考えでは、如何なる産業を第一において、つまり兵器産業の中で如何なる種類のものを第一において育成して行こうというふうにお考えですか。
  137. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これについてはまだ相談中でありますが、私どもとしては、それが将来やはり日本で例えば保安庁等が使うというようなものについてとか、或いは二重投資にならないものとか、そういう点に大体重きをおいておりまして、従つてこれを受けるために将来の日本の産業構造に影響を及ぼすようなことやら、或いは又それが将来過剰投資となる虞れのあるもの、そういうものはこれを避けたい、かように考えておるのであります。なお、これは岡田さんに申上げるまでもないことだと思いますが、あの百四十四億の分が、四千万ドルに相当する分が、あれが或いは日本の国内で使うものもあり、更に又向うでいわゆる域外買付として出される面もあるというわけですが、例えば一時的に出るからと言つて、その産業をやつておくと、後日非常に困ることも起りますので、そういう点には十分の配慮をいたしまして、その三十六億を有効適切な方面に使いたい、かように考えておる次第であります。
  138. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それではちよつともう一つですが、これは例の保安庁の国有財産でございますが、これは土地、建物については、大蔵省との間に正規の、何というのですか、所管外の手続がとれないで、使用承認という方向で処理されているものが非常にたくさんあるというふうに聞いておるのです。このためにこれらの国有財産の処理内容にはかなり怪しいと言いますか、不当な要素も含まれているのではないかと思われるのですが、この点について保安庁か大蔵省のほうから、私は資料を提出して頂きたいと思うのです。それだけで大蔵大臣に対する質問は終りたいと思います。
  139. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 資料の点は承知をいたしました。
  140. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 緒方副総理にお尋ねいたします。お急ぎのようですから簡単にお伺いいたしますが、実はジヤーナリズムとしての先輩の緒方副総理にこういう御質問をするのは非常に非礼に当るというようにも考え、私もいろいろ考えたのですけれども、併しこれはやはりあいまいにできない問題でありまして、どうしても今度の日本財政経済等に非常に重大な関係がある。この二法案に対する質疑は参議院としてこれでもういよいよおしまいになつて、今後これに関して質疑をする機会がなくなつてしまう。従つて最後に参議院で再軍備に関する質問をするに当つて、どうしても衆議院はそのままで通つたかも知れませんが、参議院においては緒方副総理が曾つてこの憲法は明らかに自衛力を否定しているということを言明されておりながら、それと矛盾するお考えを持つに至つたことは非常に私は遺憾であり、この間の御答弁では過ちを改むるに憚かるなかれと言われましたが、これは過ちではなく、私は節を変えたと思うのです。変節である、変節改論ということである。従つてこれについてはどうしても私は副総理の心境を質さなければならないと思います。それは当然私は副総理は選挙に臨んだ時は、そういうお考えで臨んだと思います。その後当選されて国会に出て来られて、而も重要な副総理という地位につかれてから、選挙当時と考えが変つたと、これは私緒方副総理ばかりじやないと思うのです。ほかにもそういうかたは相当あると思うのです。従つてこの再軍備をする場合には、どうしても政府は一応再軍備の問題、このMSAを中心とする具体的な再軍備の問題については、解散をして改めて国民に問うてから、これは憲法に違反しているかしていないかという国民に審判さして、そうして態度をきめるべきものではないかと思うのです。緒方副総理のお立場だけではないと思うのです。具体的にもう目の前に再軍備の問題が起つて来た時には、従来考えておつたことをもつとはつきりこれを突きつめて考え直さなければならん。その時には考えがやはり変るということもあり得るわけです。従つてどうしても私はこの再軍備の問題については、政府が解散をして国民に信を問うてから、これを取上げるべきだと思うのですが、この点の副総理のお考えを伺いたいと思います。
  141. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 今御引用になりました私が新聞社で座談会の時に発言したその発言でありますが、それはこの間おつしやつたように、二十七年の一月かと思いますが、時期がいつであるということは余り問題じやないのですが、今の憲法が制定されまする際に、当時の貴族院でいろいろな議論が出た。それを速記録で私見た記憶がありますが、その中にはかなりはつきり自衛力を持つことを否定したような言葉もあつたようであります。私がそのことを引用したかも知れませんが、私の今の記憶では、憲法は軍備を否定しておると言つたことは、一回でなしに二、三回そういうことを言うたことが記憶にありますので、その点は私は今も変つておりません。自衛力を否定するということは、若し言つておるとすれば、それはそもそも学問的にいう国家というものを否定すると同じような意味になるので、私は独立しておる国である以上、自衛権というものはこれはもう固有のものであり、従つて自衛力というものは当然のものである。併しそれは私どもの考えておりまする軍備というものまでの高い自衛力を持つことができるかどうかということは、これは憲法によつて制約を受けておるので、今の憲法に対する私どもの解釈としては軍備を持ち得ない、さように考えております。それだけに将来日本が軍備を持つ場合には、これはやはり一応も二応も国民の輿論に問うて、国民の、むしろ国論によつて憲法も改正し、同時に軍備も持つということにならなければいかんのではないか。私らとしましてはやはり国の自衛力というものは当然に持たなければならんけれども、その自衛力をどういうふうに持つかということは、これはやはり国民生活と睨み合せて考えるべきものであつて、国民生活の安定充実というようなことを無視して持つべきものではない。今の段階におきましては、いわゆる軍備というほどのものは国際環境の如何にかかわらず持とうとしても持ち得ないということが、不幸にして事実であるとさように考えております。
  142. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 軍備というまあ言葉のあやになりますけれども、これまで保安庁長官或いは法制局長官等によりますと、結局まあ戦力というものは憲法に否定される。併し戦力に至らない軍備は持つてもいいのだ、こういうふうな解釈なんです。ところで副総理は軍備によらざる自衛力というものも否定しているかのごとく言われておるのです。ですからこれまで言われたことと、それから現在の再軍備を認めるということは、どうしても正反対である。選挙公約は結局新聞では論説、社説のようなものであつて、社説が全く正反対のことを書くということは、これは重大な問題だと思うのです。これはジヤーナリズムの道義に関するものであつて、私はどうしてもジヤーナリズムの権威というものを守る上においても、この点はどうしても私は明かにしておかなければならん。選挙に立つときには自衛力を否定しているのだという立場で選挙に立つて、あとになつてそれと全く正反対の説をなすに至つては、例えばこの国会でMSAに賛成し、予算、或いは二法案に賛成しておいて、今度解散があつたときには、あれは自分は間違つてつたのだ。自分はあれに反対であつたといつて立つというようなことがあつたら、これは道義上許さるべきではないと思う。私は緒方副総理はジヤーナリズムの先輩として、人格識見についてかねて尊敬して来たかたであります。それだけに私は非常に遺憾である。殊にジヤーナリズムとしてそれの権威をやはりあらしめるためには、そういう変説改論をしたときには、はつきりとこれは変説改論をしたことについての態度を明かにすべきである。そういう場合には少くとも私は重要な政局担当の地位につかれるべきではないのではないか。非常に非礼、私もこういうことを緒方副総理に申上げるのは実に好まないのです。夕べいろいろ考えたのです。そつとこれは放つておいたほうがいいかと思つたんですけれども、衆議院はそれで済んだかも知れないけれども、参議院はやはり頬被りでこういう問題を通してはいけない。やはり事態をはつきりとしなければならん。これは先輩であろうとなかろうと、こういう点は緒方副総理よく了解して頂けると思うのです。非常に非礼かも知れませんが、あえて御質問したのであります。少くともこれについては憲法上いろいろ疑義があると思うのです。はつきりとなかなか割切れない。世論もいろいろ憲法違反ではないか、いろいろな諸学者にも諸説紛々としているわけです。少くとも疑義がある場合には、やはり憲法改正をして臨むのが本当ではないかと思うのですが、その点は如何でしよう。
  143. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 厳しい御批判でありますが、私は選挙のときに自衛力を持つていかんという演説は実は一ぺんもしておりません。その新聞に書いてありますのは、私今十分に、どう出ているか記憶がありませんし、又私の言うた通り出ているかどうか知りませんが、私は自分の意見として自衛力を否定するというようなことは、どう書かれておりますかどうか知らんけれども、その場合も私は恐らく言うていないと思います。ただ私自身憲法草案審議のときの貴族院の議論の中に、自衛力すら否定するような意見があつたので驚いた記憶がありますけれども、それを自分の意見として受け売りをした記憶はない。それから選挙のときに私は自衛力を否定した演説は一遍もしておりません。それから今憲法についていろいろ意見がある。これはもう御指摘の通りで、国会の中においても党によつて意見が非常に違つておるようです。それから学者の間にも意見が違つおるのは事実でありまするが、併しこれは政府としましては一つの初めから変らない意見を持つておるので、将来再軍備、いわゆる文字通りの再軍備をする場合に憲法を改正しなければならん事態になると思いまするが、それが今の時期であるかどうかということにつきましては、輿論の趨向からも、又政府の従来とつて参りました立場からも余ほど慎重に検討しなければ結論出せないと思います。
  144. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私ここに朝日新聞の二十七年一月一日の縮刷版を持つてつております。これにはもう非常にはつきりと言明されているんです。余りにはつきりしているので実は私も驚いたわけなんです。従つて御質問したわけですが、又少くとも疑義があればこれはごま化してはいけない。それがために憲法をごま化してはいかん。はつきり憲法を改正して、憲法改正は困難であろうがごま化しちやいかん。やつぱり改正して臨むべきだ、こういうことも言われておる。これは私はこのお立場として非常にはつきりした御議論であつたと思つておりましたところ、反対のお言葉を私は聞きまして、非常に遺憾にだと思うのであります。私はただいたずらに非難、コンデムネーシヨンを好んでやるわけではございませんので、あとは国民なり或いは他の委員なりのいろいろそれぞれの立場からの批判に待つといたしまして、これ以上私は緒方副総理に対してこの問題については御質問申上げません。ただこれに関連して憲法の問題、これは副総理についての質問ではございません。只今総理が……。
  145. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 選挙民に対して二枚舌を使つたことはありません。その点を申上げておきます。
  146. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併しこれは今後私はそういうモデル・ケースになるといけないと思うのです。
  147. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 新聞に出たことを私は全責任を負うわけには行きません。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併しそれは副総理は、こんなにはつきりしておるのですから……、憲法について、やはり将来戦力を持つに至りましたときには、これは解散して選挙民に問うべきだというお言葉ですから、一体今の状況から言つて憲法を改正してやるような戦力に達することが実際問題として将来あり得ましようか、この点について木村長官にお伺いしたいと思います。
  149. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) あり得るか否かということは、その当時において判断しなければならんのでありまして、今直ちにいつ戦力を持ち、いつ憲法を改正するかという時日についてはこれは申上げることができません。
  150. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の質問はこういうことなんです。実際問題として憲法を改正して再軍備をやらなければならん、戦力を持たなければならんという時期は、日本にはここ当分あり得ないのではないか、政府側の憲法第九条の解釈では実際問題としてあり得ない。ですから結論においては吉田総理憲法を改正しないと言つておりますけれども、憲法を改正しないで、憲法違反にならない範囲で再軍備をすると言いますけれども、これは実際問題として芦田理論と同じであります。今の憲法は再軍備を認めておるという議論と結果においては同じである。それで結局日本は独自で日本を守る力というのは、アメリカ軍が撤退したのちにおいて日本が戦力を持つ、併しそれでも日米行政協定によつて安全保障条約によつてアメリカの保護を受けておる間は、やはり独自の戦力ではない。そうするとアメリカの保護を受けないで完全に日本を守れるという、そういう戦力を持つことは当分ここ十年や、二十年で来つこない。ですから総理憲法改正はしませんと言つておるのは、それは実際からいうと嘘であつて、本来なら芦田理論と同じで、今の憲法下でも日本は幾らでも再軍備してもいいのだ。もう総力を上げて再軍備したつて政府の言つておる戦力に達し得ない。国力からいつた場合にそういう結果になりはしませんか。
  151. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 芦田理論とは大きな差があるのであります。いわゆる芦田理論は自衛のためなら戦力を持ち得るのだ、こう考えております。いわゆる主観説であります。我々はさような理論をとつておるのではありません。自衛のためでも戦力を持つということになれば、憲法を改正する、こういう理論をとつておるのであります、
  152. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 この前総理に対する総括質問をいたしましたときに、時間の関係で意を尽さなかつた点がありますので、幸に副総理が御出席になつておりますから、五分間ほど時間を頂いて質問いたしたいと思います。第一点は副総理衆議院内閣委員会において、自衛隊の性格に関して軍隊でもない警察でもない、いわば特殊のものであるように私は考える、大変巧妙な表現でおつしやつたことを私は会議録で拝見いたしたのでありますが、その特殊な性格の自衛隊憲法第九条第二項の「陸海空軍その他の戦力」その「その他の戦力」に文字通り該当しておるように思うのでありますが、如何でございましようか。
  153. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 戦力という言葉自体の考え方が八木さんと政府と違つておるのじやないかと思いますが、私どもが考えております戦力というものには、今の保安隊自衛隊、それは当らない、さような解釈をとつております。
  154. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 普通の解釈では警察以上の装備編成等を持つているものは軍隊、こういうふうに考えられておるわけでありますが、そう副総理軍隊と警察の間とおつしやるのは、警察以上の装備を持つている、但しいわゆる近代戦遂行総合能力としての軍隊には至つておらない、こういう意味であると私は拝察するのですけれども、それは言葉を換えて言えば、やはり憲法の「陸海空軍その他の戦力」それの丁度階級と申しますか、序列と申しますか、ぴつたり当てはまるのではないか。従つて憲法九条に反している、こう私は思うのでございますが、その間に位している特殊のものということをもう少し具体的に御説明頂けたら仕合せだと思います。
  155. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 軍隊というのは私は俗語だと思うのですが、その軍隊というものの考え方、私がそのとき軍隊でもない、警察でもない特殊なものと申しましたのは、軍隊とそのとき質問者が言われるものは、いわゆる戦力を持つた兵力武力、それには属しないが、警察力上以のものだというようなことを答えたのであります。
  156. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 この問題にこれ以上入るのはやめまして、第二点はよく政府憲法改正は国民の意思に従つてこれを行う、こういうふうにあらゆる機会に仰せられておるのでありますが、国民が憲法改正を希望するという時期そのものは、政府としてはどういうところで御判定をなさるのか、これについて伺いたい。
  157. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) それはいろいろな輿論の動きを総合して判断するよりしようがないと思うのでありますが、政府でも日本国力或いは国際環境から無論一つの判断を持つと思います。併しながら国の基本法でありまする憲法の改正に、いよいよ手をそめるかどうかということは、やはり国民の輿論の総合したものを見まして、その上で慎重の上にも慎重を期してやるべきであるという考えを持つておるのでありまして、何によつてきめるかという御質問になれば、やはり国民の輿論の動きを総合して判断するという以外にはないと思います。
  158. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 現在の政府の企図せられる自衛隊軍隊であるというふうに社会一般から言われておるのでありますが、この自衛隊を創設することについての可否は別問題といたしまして、自衛隊のようなものを作るならば、男らしく憲法を改正してやるがいいじやないかという声は、国民の中に相当あると私は考えるのでありますけれども、政府はまださような段階には達していない、かようにお考えになりますか、如何でありましようか。
  159. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) そういうふうに考えます。
  160. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それを裏をかえせば、今木村委員からも仰せられましたが、自衛隊をやるなら憲法を改正してやるかやらんかということを総選挙によつてでも、国民の判断を、判定を受けるべきすでに時期に到達している、こういうふうな輿論が相当にあるわけでありますが、これに対してどういうふうにお考えになりますか。
  161. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 私は自分の経験を申すのはどうかと思いますが、昨年の三月の選挙それから一昨年の十月の選挙その二回の選挙の体験から申しまして、多少違つてつたような感じはいたします。いたしますが、まだ私どもが政府におりますだけに、そういう点に相当の関心を持つていろいろな方面の意見を徴しますのに、まだ国民の多数が軍部を持つための憲法の改正を希望している段階に行つていない。そういう判断をいたします。
  162. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最後にもう一点でありますが、これは先日も申上げたんですけれども、五月三日の朝日新聞に憲法あり方と題して田中最高裁判所長官の話が、載つておるわけでありますが、その中に「政治に関する法はある意味において非常に守られにくいもので、ある既定事実が出て来ると仮りにある処置が無効であつても、もとの政治状態にもどすことは不可能なことがある。だからそういう点はむしろ純然たる政治的責任になつて法律がそこまで及ばないことになる」、こういうお話があるわけでありますが、これは法律の用語の立場にありまする最高権威者としての最高裁判所長官のお話としては、私は甚だ不穏当なものであると存じます。仮に最高裁判所に自衛隊憲法違反であるという提訴がなされまして、判決が憲法違反である、こういう判決が下りました場合に、政府は政治的の責任をとるであろうというのが先般の法制局長官のこれに対する御答弁でありましたが、の政治的責任はすでに過去このとになつておりますが、どういう形で一体政府がとるべきものであるとお考えになりますか。伺つて見たいと思います。
  163. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 法制局長官から……。
  164. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 副総理のお話を伺いたいと思つたのですが……。
  165. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私も前回のお答えでは、これは法律的責任というよりも政治的責任の性質のものであろうという趣旨で、根本のことをお答え申上げたのでありますけれども、実はお答えしたあとで、その判決が下るまでに内閣が変つてしまつてつたような場合や、いろいろありまするので、そういうときはどうなるだろうと思つて、実は自問自答しながら結論を得ておりません。従つて開き直つてお答え申上げれば、今の政府としては少くともさようなことは考えておりませんからと申上げる以外にはお答えできないと思います。
  166. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私がこのことを申上げるのは、相当憲法違反の濃厚な疑いがあるから、従つてすでに政治責任をとれないような時代になれば大変であるから、その意味でなお今慎重に政府としてはお考えになるがよかろう、こういう意味におとりを願つておきましてこの問題はこれで打切りたいと思います。
  167. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 憲法改正を選挙に問うという必要があると言われましたけれども、再軍備の問題について、ここ当分五年や十年日本政府側の見解に基いて憲法を改正しなければならん時期というのはあり得ましようか。戦力に達しなければ憲法違反でないと言つているのですから、到底日本の実力では戦力に達するなんという時期は五年や十年はありつこないのですね。その間に再軍備について憲法改正の可否をきめるということを国民に問う、こういうことはこれは実際論としてはあり得ないのじやないですか。
  168. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 私は、憲法改正を国民に問うと言いましたか。
  169. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ええ。
  170. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) そんなことは言いませんよ。
  171. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど……。それでは法制局長官でも結構ですが、日本の再軍備の問題で、憲法改正しなければならんという時期が、ここ当分、五年や十年あり得ますか。
  172. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私からお答えするのは非常にやさしいことでございまして、今それをやろうとやるまいと形式的に形を変えておくということは理論上可能でございますから、そういうことはむしろ実際の政治の問題としての判断に尽きるのであつて、法律的に申せば今九条を直して枠を拡げておこうと、それは自由だと申上げざるを得ません。
  173. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうじやありません。実際問題として、衆議院でのこれは予算委員会で、本間議員と木村保安庁長官との質疑応答を見ますと、結論においては芦田理論になろうと、実際問題として同じだと言われている。保安庁長官は言われているんですよ。それで又、実際日本は戦力を持つ時期というのは、五年や十年ありつこない、例えば米軍が撤退して、あのあと全部日本で埋めても、安全保障条約がある間は、独自で日本が、守るということにならんから、まだ戦力に達しない。こういう結論になつている。従つて日本が再軍備する場合に、憲法改正するかしないか、そういうときには国民に問うなどと言つても、実際問題としては、それはナンセンスに近い、政府側の立場から言つてですよ。ですから吉田総理憲法改正しないしないというのは、これは当り前で、憲法改正するような戦力を持とうと言つたつて日本は持てつこない、政府側の立場によれば、見解によれば……。そうじやありませんか。
  174. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本が戦力を持つようになることになれば、欲すれば、これは憲法を改正する要を待たないのであります。戦力に至らざる程度において自衛力を持つということは、憲法に反しないのでありますから……。併し憲法改正は、戦力問題ばかりじやなしに、もつと高所からこれを見て、改正すべきや否やということを判断すべきだろうと、こう考えております。
  175. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは暫時休憩をいたします。    午後一時二十六分休憩    ——————————    午後五時六分開会
  176. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 只今より内閣委員会を再開いたします。  午前に引続き質疑を続行いたします。
  177. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 防衛法案憲法との問題について保安庁長官に質問いたしたいと思いますが、先ず自衛隊法第八十八条に定めております「防衛出動時の武力行使」というこの武力行使の内容と、憲法第九条に言うところの「武力による威赫又は武力の行使」、これとの違いがあれば違い、或いは同じなら同じ、この両方の意味について伺いたい。
  178. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。憲法第九条第一項のいわゆる武力の行使とこの自衛隊法第八十八条に規定いたしました「必要な武力を行使する」というこの武力とは別に相違はないと考えております。
  179. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 同じですか、そうしますと、近代戦争遂行能力を持たなくても武力による威嚇又は武力の行使はあり得ると思いますが。
  180. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 無論武力の行使いろいろ種類はありましよう。戦力に至らざる実力によつての武力行使もあります。武力行使の概念は広いものであろうと思います。
  181. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、今の自衛隊、今度出発する自衛隊による威嚇又は自衛隊による武力の行使ということはあり得るわけですね。
  182. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 自衛隊による必要なる武力の行使はあり得る。
  183. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あり得るのですね。そうすると、自衛隊はやはり憲法九条に違反して来るのじやないか。
  184. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 違反いたしません。憲法第九条第一項に言う武力の行使は、国際紛争解決の手段として武力の行使ができぬと言うのであります。自衛力による武力の行使は規定しておりません。
  185. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併しですよ、政府側の解釈は、結局戦力にならなければ、これが自衛のためであろうが、何であろうが、戦力になりさえしなければ、これは憲法に違反しない、こういう解釈なんですよ。
  186. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 戦力に至らざる程度の実力を持ち得ると、こう解釈しております。従つてその実力による実力の行使はあり得るわけであります。
  187. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、戦力に至らない実力であつてそうして憲法九条に言うところの武力の威嚇又は武力の行使ということはあり得るわけでしよう。
  188. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 国際紛争解決の手段としては武力を行使しない、こう憲法に規定してあるのです。
  189. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併しそれは国際紛争を解決する手段と言いますけれども、そこが、どういう場合に、それは国際紛争を解決する手段であるか、いろいろに解釈が分かれて来ると思います。
  190. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々の考えておるのは、自衛力を行使し得る場合は厳格に規定されているのであります。つまり外国から不当な武力攻撃があつた場合に、これを防止するために使われるのであります。国際紛争解決の手段として武力を行使しようとするのでは決してないのであります。
  191. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 例えばウラジオにソ連の飛行機が結集しておる、或いは又中国に飛行機が結集しておるというような場合に、自衛という場合に、自衛の範囲においては、その危険があるときに、その虞れある場合ということになつておるのですから、そこへ出動してそれを叩くなり、何なり、そういう場合も国際紛争を解決する手段になるのでしよう。
  192. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは違うのです。国際紛争というのは、いわゆる当事者国が互いに主張が折合わない、そうして一国が自分の主張をどこまでも貫徹しようというところに、国際紛争を解決する手段という意味がある。まあお話のような場合は、国際紛争とは考えておりません。
  193. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府側の解釈が戦力に至らなければ憲法に違反しないというのですが、実際問題として、日本の場合憲法改正が起ることが予想されるのはどういう場合ですか。防衛力に関連して、実際問題として……。
  194. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 実際問題として、戦力を持とうという場合には、憲法を改正しなければならんと思います。
  195. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 戦力を持とうとして、日本で持ち得ましようかね。
  196. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 持ち得るか、持ち得ないかは、その時の情勢如何によります。
  197. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その時の情勢と言いまするが、木村保安庁長官は、衆議院予算委員会において、本間委員に答えられておるところでは、アメリカ駐留軍日本から撤退してその穴埋めに日本が自衛力を増強する。それでもまだみずから日本を守る力にならない。なぜならば、日米安全保障条約によつてアメリカから援護されておる。そういう状態ではみずから日本を守る力ではないし、従つて日米安全保障条約を廃棄して、なくなつたときにおいて、初めて日本が自力を以てみずから国を守るという力を蓄えるということになるのだ。そういうことになると、実際問題として日本でそういう戦力というものをここ当分五年や、十年で持ち得るとお考えかどうか。
  198. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そういう戦力を持ち得るかどうかということは、国力の如何に関係して来ることであります。日本が急速に国力が回復して、或いは持ち得るとも限らない、それは将来のことであります。すぐ戦力を持ち得るような状態になるかということは、今直ちに持ち得るということは言えないと思います。
  199. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは常識問題であつて駐留軍が撤退した後において、その穴埋めに日本が自衛力を増強してもまだこれは戦力ではない、それから更にそれよりも、今度は日米安全保障条約がなくなつたときに、アメリカの援助を受けない、それまでの戦力を増強したときに初めて戦力となる、こういう御解釈なのでしよう、政府の。
  200. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そうではありません。現在駐留軍が持つておるような実力はこれは戦力かどうかということでありますからそれは戦力であろう、こういうふうに答えておるのであります。アメリカ駐留軍の持つておる戦力に至らざる実力であつても或いは戦力と解せられるべきことがあろうと私は考えております。
  201. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それははつきりと……、もう時間がありませんから詳しくは引用いたしませんが、二月一日に非常に詳細に木村保安庁長官と本間委員との間に戦力問答をやつているのです。そのときに木村長官は、最初は、今お述べになつたようなことを言つておられますが、本間委員からだんだん誘導質問のように我々は思われたのですが、だんだん問い詰められて行つて、結局駐留軍が撤退した後の穴埋めとして戦力を増強しても、まだこれが戦力ではない、憲法に違反しないという解釈をとられているのです。
  202. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) いや、私はそういう意味で言つたのじやありません。駐留軍の穴埋めと申しましても、駐留軍全部撤退して、それをカバーして行くのと、駐留軍が徐々に引揚げて、その穴埋めして行くのとは、そこに程度の差異があるわけであります。
  203. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この質疑応答の結果は非常にはつきりしているのですが、そういうことで憲法改正をするかしないということはナンセンスに近いとは思いませんでしようか。
  204. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 失して思いません。
  205. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうしてですか。
  206. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 憲法を改正をするというようなことは重大なことであります。国家の基本法を改正するということはナンセンスじやありません。
  207. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは憲法を改正しないということをたびたび政府は言つておりますが、それは芦田氏の理論と実質においては何ら異ならないということを結論付けられているのです。実質においてはそれはほんのごまかしに過ぎない。今の日本国力の状態から言つて、如何にしやつちよこ立ちしたつて政府の解釈による戦力というものは蓄えられないのです。如何にしやつちよこ立ちしたつて五年や十年ではできないというのは常識です。そうなれば憲法改正しないということは全くナンセンスで、駐留軍が撤退した後の穴埋めをやり、更に日米安全保障条約によつてアメリカの援護を受けない程度の戦力を蓄えなければ、憲法に違反しないということを言つてたら、これはもう幾らでも日本の今の国力をもとにして増強したつて憲法に違反しないという建前で賄えて行くということになると思うのです。そうじやないですか。
  208. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そうじやありません。
  209. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはどうしてですか。
  210. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私がたびたび申した通りです。
  211. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは私はわからない。
  212. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) おわかりにならなくても仕方がない、私は繰返し繰返し言つておるのですから。
  213. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府の戦力という解釈は、結局最初近代戦を遂行する能力と言いますが、実質的には日本が独自で守り得る状態、武力を以て守り得る状態が、これが戦力である、そういうようにやはり説明されたのでしよう。
  214. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そうじやありません。日本が独力を以て日本を守り得る力が戦力だ、そうは申しておるのじやありません。私らの申しておるのはアメリカ駐留軍の持つておる実力というものは戦力であるであろう、従つてこの駐留軍に全部代り得るような実力部隊を持つということになれば、日本が戦力を持つということになるのであるから、そういう場合には勿論憲法の改正は必要であろうとこう申したのであります。
  215. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それではあとで木村長官はもう一度二月一日の本間委員との質疑応答を御覧になれば明らかです。最初木村保安庁長官はそういう御答弁であつたのです。ところが本間委員からだんだん突つ込まれて、結局それでもまだ日本は独力で守る実力じやない、安全保障条約によつてアメリカから保護を受けている間は独自で守る実力でないから、それでもやはり憲法に違反しないんだと……。今木村保安庁長官の御見解ですと、今の駐留軍は戦力である、従つて駐留軍に代るだけの実力を持つたときにはもう憲法違反になるから、そのときには憲法改正の時期である、こういう解釈になるでしよう。ところが本間委員とのあれでは、本間委員は、それでは足りないのであつて駐留軍に代る実力を持つてもまだ憲法違反ではないんだと、そうしたらまさにその通りであると言つているのです。そうして結局またアメリカから安全保障条約によつて保護されているから、まだ独自で守る実力ではないんだ、だから駐留軍に代る実力を持つても、まだ憲法違反ではないではないかと本間委員から言われると、まさにその通りだということを木村保安庁長官は言つておるのです。
  216. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 若しもそういうことを言つておれば、私の言い廻しが誤まつたのであります。私の解する趣旨は今申上げた通りであります。
  217. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじや今、若しそうであつたら間違いであると言われましたから、この点はもう議論になりますからやめますが、結局木村保安庁長官のお考えは、アメリカ駐留軍は結局今近代戦争を遂行する能力を持つてつて戦力である、それに代る実力を日本が持つた場合には戦力であるから、そのときには憲法に違反する、そのときにはやはり憲法改正の時期である、それまでは憲法を改正しないでも自衛力を増強して行ける、こういうお考えですか。
  218. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そうではありません。アメリカ駐留軍に代るべきような武力を持つようになれば、これは戦力に至るであろう。併しその前においても或いは戦力となるような場合がないとも限りません。アメリカ駐留軍の実力の程度如何によることでありまして、その前においても実力が戦力に至る場合もあり得ると私は考えております。
  219. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 非常にあいまいで、アメリカ駐留軍といつても、アメリカ本国の軍備とかけ離れてあるわけじやないのです、アメリカ本国の軍備というものをもとにしてアメリカ駐留軍というものがここにあるわけです。従つてその場合のアメリカ駐留軍という意味は、本国の軍備と切り離した場合の駐留軍という御解釈ですか。本国の軍備を背景とした駐留軍の実力、こういう意味ですか。
  220. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は、現在日本の周辺にアメリカ駐留軍が持つて、そうして日本防衛の任務に当つておるような実力部隊はまさに戦力であるであろうと、こう言つておるのであります。
  221. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、それを持つまでは憲法違反ではない。そうすると、その前に憲法改正の問題がこの防衛力増強と関連して起つて来るのは、強制徴兵の場合ではないかと思うのですが、木村保安庁長官のこの間の御説明によると、大体二十二、三万というのが志願兵の限界である、それを超える場合には強制徴兵が必要になるものではないかという御意見でしたが、防衛力漸増と関連して憲法改正が問題になる場合は、戦力の場合を除けば、強制徴兵の場合ではないかと思うのですが、そうではないのですか。
  222. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本が徴兵制度を布こうと思えば、憲法を改正するの要があるものと私は考えます。
  223. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ところで今度の保安庁法の改正ですね、これを見ますと、自衛隊法案なんかを見ますと罰則がありますが、今自衛隊は志願兵制度ですから、これは自由契約によるものではないかと思うのですが、この契約の性質というものは、どういう契約なんでございましようか。
  224. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは任意契約であります。
  225. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この任意契約の場合、ここへ掲げているような罰則を設けることは、これは憲法に違反しませんですか。
  226. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは、すでに国家公務員法等においても、秘密を漏らした場合でありますとか、政治活動等について罰則がありますのと同じ法律的の根拠であろうと思います。要するにその行為が反社会性を持つて、処罰を以て制裁を加えるということの合理性がある、そういう見地から入れておるわけで、現在の保安庁法にも罰則はやはり載つております。
  227. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 現在の保安庁法以上にですよ、或いは出動招集を受けたときに遅れたり行かなかつたりするときに、七年以下の懲役とか何とかそういうものが今度新らしく加わつているのです。そういう場合、ですから普通の国家公務員以上に、この招集の場合については前の軍隊の場合のような罰則が設けられていると思うのです。これは私は不当に、この契約の性質から言つて国家公務員以上に拘束されるのではないかと、そう思うのですが……。
  228. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは要するに、今度の自衛隊というものは、国民を守つてくれるためのもの、即ち外敵の侵入の場合にも国民を守つてくれるものということで、国民自身から大きな期待と申しますか、いわゆる信頼を受けておる人でありまして、その信頼に背くような場面が出て来ますというと、これは相当の反社会性がそこにあると見なければならないと思います。その意味で罰則が設けられておるわけでございます。
  229. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは私は随分いろいろ憲法上の国民の権利義務を守る点から言つて、ひどい拘束があると思う。例えば予備自衛官の場合などは、若し雇われているような場合、招集があつたときに、雇用主はこれは行つては困るといつたときに、併し予備自衛官のために行かざるを得ない。行かないと罰則がある。そういうときに、それじやあもう君はここで使わないと、そういうように拘束を受けるならば、それじやあもう君は使わない、そうすると、就職というのは非常に困難になる。そういう場合の何か補償というようなものは考えられていないと思うのですよ。ですから、これによつて予備自衛官になれば著るしく不利になる。それから、自衛官になつた場合も軍隊的な拘束を受けるので、これは基本的人権を守るという上から言えば、自由契約であると言つても、失業してそれでどうしても自衛隊に行かざるを得ないように生活上追い込んでおいて、そうして、そういう自衛隊になる契約を結ばざるを得ないように持つて来る。即ち貧困というものを利用して、そうして非常な憲法上人権を拘束されるような自衛隊の契約をせざるを得ないようにし向けて行くという場合ですね。これはやつぱり憲法の精神に反して来るのではないか、こう思うのですが、この点はどうなんですか。
  230. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 予備自衛官のことでございますが、私どもは予備自衛官もやはり一種の国家公務員であるというふうに考えておるのでございます。国家公務員に対しまして、国家公務員という特殊の性格からいたしまして、或る場合において罰則がつけられておりますことは、国家公務員法と同様でございまして、大体において国家公務員法における罰則の観念に歩調を合して、自衛隊というものの特色に鑑みて罰則の規定を設けたという考えでいるわけでございます。  それから、予備・自衛官が予備自衛官の召集に応じようとした場合に、雇用主がこれをとめた場合にはどうなるかということでございますが、これは雇用主がとめることを何らかの措置を以ちまして防止しようといたしますと、国家のほうでその雇用関係についての或る程度の補償は与えるということも考えなければならないようになつて来ると思います。今回はそこまでのところは措置を講じていないのでありまして、そういうふうな予備自衛官の条件を了承した上で雇用関係を継続して行つてもらいたい。こういう国家の希望として、法律では抽象的に不利益な処分をしないようにということを規定しておるのでございます。
  231. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併し、実際問題として召集なんかがあるということが予定されておるのですから、雇い主は同じ雇うのなら予備自衛官でない人をどうしても雇おうとするでしよう。そうなると、どうしても就職はほかの人と比べて困難になる。こういう点はどうしても出て来ると思う。それに対して何か生活を保障するような措置を講じなければ私は非常に不均衡である。非常にそれは差別的になる。実際問題としてですよ。そういう点について何ら考慮されていないで、雇い主にそういうことを考慮しろつたつて、それは無理じやないかと思うのですよ。経済的な裏付がなくて……。
  232. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その点については考慮を払つておるのであります。要するに予備自衛官の召集期間は一年を通じて二十日間なんです。で、どこの会社でも一年に二十日くらいの休暇は与えております、実際に。で、その間の期間を私は利用できると思う。それと同時に予備自衛官に対して召集される場合においては手当というものを出すわけであります。
  233. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう時間がないようですから、簡単に最後に質問いたします。私はそういうようなことを聞いているのじやないのです。これは事務当局よくおわかりだと思うのです。この点はですね。これは今後予備自衛官は大きな問題ですよ。これは十分考慮しなければ、これは実際問題としてそういう人は雇いませんよ。そうでない人を雇つたほうが経営者としていいんですから、この点は今後私は非常な問題になると思うのです。  最後に、もう時間ありませんが、法務大臣にわざわざ御出席願いましたので、一点だけ質問しておきたいのです。それは、今度まあ自衛隊がここで発足します。そうすると、予算も非常に多くなつて参ります。御承知のようにこの防衛費というものの中で、施設費、船を作つたり飛行機を作つたり、それから武器を作つたりする場合は、民間企業に非常に注文がたくさん行われるわけであります。そういう場合に、疑獄とか汚職とかが起る危険が非常にあるわけであります。殊に船艦船なんかの注文は、普通の民間の注文を受入れるより有利なんです。だから競つてその発注を受けようとすると思うのです。そういう場合に、防衛費が非常に大きくなると、そういう軍需発注に絡まつて汚職が非常に大きくなることがたくさん出て来る。過去の例を見てもございますが、シーメンス事件なんかもそうであります。従つてこの場合は法務当局としてはこの防衛費がだんだん多くなつて、その中からさような国家資金として発注する枠が多くなるから、そういう疑獄とか汚職が起らないように、又そういつたものがある場合には、これは勇敢に摘発して、そうして起らないようにこれを措置して行くということが極めて重要じやないかと思うのです。今後ますます防衛費は殖えて来るのであります。そういう点に法務当局はどういうお考えを持つているかということが一つと、それから今度佐藤自由党幹事長の逮捕許諾の請求に対して十四条を発動して、これを抑えてしまつたということは、今後ですね、今後私は非常に悪影響が出て来るのじやないかということを憂えるわけであります。防衛費がだんだん嵩んで来て、軍需発注が民間にたくさん行くが、汚職を起してもそれを結局政府が食止めてくれるということになると、そういう温床を作る原因になつて来ると思うのです。そうしてこういうことが言われているのです。検察庁方面の意見として、これは新聞に出ておりましたが、佐藤幹事長を逮捕しない場合には、逮捕しない場合はやはり捜査上証拠湮滅になつて非常に困難を極める。その一つの例として、一つの例としてですね、これは新聞にも出たのでありますが、保安庁の大型警備船の発注に際して、或る人が日立造船から五百万円金をもらつた。それを捜査する場合に、その本人を逮捕しないために、みんな関係者の口裏が合つてしまつてそうして証拠湮滅されて、これが非常に捜査困難になつた。これが一つのいい例であるということが新聞に出ておつたのであります。従つて、あの日立造船の問題は今どういうふうになつているのか。検察庁のほうではどういう取扱になつているのか。これはうやむやにされてしまうのか。これは非常に疑惑を深めていると思います。その捜査は今どういうふうに具体的になつているのか。これを一つ明らかにして頂きたい。この二点であります。
  234. 加藤鐐五郎

    国務大臣加藤鐐五郎君) 只今木村君が御質問になりましたごとく、今後防衛費が相当多額でございまするがゆえに、従つて民間企業が競うて注文を受けるように相成りまして、そこで又汚職、いろいろなことがありはしないかという御危惧でありますが、私もそういう危惧を抱いているわけでありますが、併しながら昨今の汚職問題によりまして相当緊張もいたしまして自粛もいたしておりまするがゆえに、従来のようなことはなかろうと思いますけれども、併しながら競争が激しくなり、いろいろの事件が起きるような場合がありますならば、私どもはできるだけ未発にこれをし、又できました場合は、これに厳格な態度を以て行きたいと、こう考えております。  それから第二に、又そういう場合に佐藤幹事長のごとく検察庁法の十四条の指揮権を発動してしまうようなことはないかという御質問でありましたが、原則としてさようなことはいたさないつもりでございまするが、絶無なりとは言い得ないのでございまして、必ずしも国家的立場、高所大所より見て又そういうことが絶無なりということは申されないのでありますが、原則といたしましては発動はいたさないということを申して差支えないと思うのでございます。  それから日立造船の問題について、捜査はどうなつておるかということでございまするが、これは只今捜査途上でありまして、この場合どうなつているかということをここで申上げることは、一つ遠慮さして頂きたいと思つております。
  235. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 時間ですから簡単に一つ
  236. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この日立造船の場合はうやむやにすることはないでしようね。これは非常に疑惑を深めているのです。新聞にちよつと載つただけで、あとどうなつているかさつぱりわからない。こういう点はやはりあいまいにしてはいけないと思うのです。殊に私は日立造船の問題を強調するのは、今後の軍需発注と非常に関係があるのです。汚職事件というのは、軍需発注の場合にこれが本格的になるのであつて、一番多いわけです。過去の例からしてそれをうやむやにしないように、これは国民の疑惑を招かないように、いつか又或る段階に来たら、この御報告をお願いしたいと思います。
  237. 加藤鐐五郎

    国務大臣加藤鐐五郎君) 只今お申出のありましたように、この問題はあいまい模糊の間に処理するようなことはございません。又発表して差支えないときが来ましたならば、発表をいたすつもりでございます。
  238. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の持時間が終りましたのでこれで終ります。
  239. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 矢嶋君質疑を願います。
  240. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は質問に入る前に、丁度運輸省のほうからも見えておりますから、簡単に別府湾のガス弾のことを伺いたいと思います。保安庁からこの公共事業に努力した案件についての資料も出ておりますが、保安庁もこの海中にあるところの爆発物の撤去、そういうようなものは一つの使命になつていると思うのです。ところが旧日本軍のガス弾が約三千発別府湾にあつて、漁業面からも公共面からも非常な影響を受けているから、早くこれを撤去をしてほしいという要望が非常に強いのにかかわらず、なかなかこの撤去ができない。こういう理由は如何なるわけか。簡単でよろしうございますから、保安庁と運輸当局から承わつて、それから私は私の防衛関係の質問に入りたいと思います。
  241. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 今海のほうでやつておりまするのは、海上保安庁のほうの警備救難のほうの系統と、私どものほうの掃海のほうの系統のものと協力をいたしてやつておるのであります。陸のほうの問題につきましては、これは私どものほうの建設施設の部隊、そういうものが持つておりまする技術を使う必要があります場合に、これは私どものほうの当該部隊の範囲内において、この仕事をやつておるわけであります。
  242. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは具体的に私は別府湾の問題を聞いているのですよ。なぜ早く片付けないかということを簡単に答えて下さい、いつ片付けるかどうか。
  243. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 今までのことをお話申上げます。  本年の三月二十三日に、別府湾におきまして海上保安庁長官の正式の許可による爆弾の引上作業に従事しておりました舞鶴鉱業所の工員の二名がイペリツト弾に接触いたしまして負傷いたしました。それによりまして今回そういうふうなイペリツト弾が別府湾にありますことが公になりましたので、警備隊といたしましてはとりあえず呉の地方基地隊から掃海船を現地に派遣せしめたのであります。掃海船の「ひよどり」が三月二十七日に大分の現地に到着いたしまして、関係の機関と種々打合せを行いました結果、旧日本軍の所属として終戦の当時に海中に投棄せられました各種有毒弾が約二十トン、四千発余が散在しておるということが判明したのであります。又その当時の関係者の調査によりまして、大体の有毒弾の散布状況がほぼ明瞭になりました。この場所は水深六十メートル内外の相当広大なる面積の海底に散在しておるのでございまして、この作業につきましては、五月一日海上保安庁、厚生省、水産庁及び警備隊の関係官庁が集りまして、これを進めて行くことについての対策を研究したのでございます。先ず処理の方策につきまして、警備隊といたしましては水中電探具その他によりまして、大体の海底にありまする概況を把握いたすと同時に、先ずそのイペリツト弾そのものの有毒の範囲その他につきまして影響するところを調査するために、数個のものを引揚げるということを決意いたしております。本月二十六日からこの作業に着手しておるのでございます。五月十五日に第二回の関係官庁の連絡会議によりまして、各自官庁が資料を持ち寄りまして審議を行い、採水、音響、測深等を行いまして、毒性の検出、イペリツト弾の埋没状況等について意見を交換いたしました。成るべく速やかにこれが万全なる解決を図りたいと、かように考えておる次第であります。
  244. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 運輸省、簡単でいいですから、先ずどういうふうにして処理するのか。
  245. 砂本周一

    説明員(砂本周一君) 保安庁のほうから先ほど御説明ありました通りでございますが、海上保安庁といたしましては、この問題のしよつぱなに関係ございましたので、その事情を御報告申上げたいと思います。発見日時でございますが、これは昭和二十九年三月十六日でございました。場所は先のお話にもございましたように、別府湾内でございまして、大分港の西突堤燈台三百二度から約三千メートル附近でございます。水深七十メートル内外でございます。この発見の経緯でございますが、海上保安庁の所管といたしまして、爆発物件が海中の各所に投棄されたのでございますが、これを引揚げる作業の許可につきましては海上保安庁の所管でございます。正規の許可を受けました別府湾内の舞鶴鉱業所がその引揚物件である一般の爆発物件の処理をいたしておりまするときに、たまたまこの問題が起きたことでございまして今申しましたように、起きました時期三月十六日でございましたが、そのガスに触れた結果、いろいろの症状が現れたのちに、この報告があつたのであります。それが二十三日になつておりますので、先ほどのお話の二十三日はそういう意味でございます。それで私のほうといたしましては、普通の爆弾処理は当然海上保安庁の所管でありますし、その引上げ作業についての許可と監督権は持つておりますが、こうした特殊のものの処理につきましては、保安庁法にも規定してあるのでございますが、その処理は挙げて保安庁の所管でございますので、これを直ちに関係機関に伝達いたしました。それによりまして、先ほど御説明の通り保安庁の出動によつて、これが調査なり処理に当つておられるわけでございます。私どもも最初から関係ございますので、その後における関係官庁の会合には列席いたしおります。いろいろな経過その他の御報告や又御相談にあずかつておりますが、その処理につきましては、警備隊の所管でございますので、現状における詳細は先ほど御説明にあつた通りだと思います。
  246. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 こういう問題こそ関係官庁で連絡をとつて迅速に処理して頂くように特に強く要望しておきます。  では、これから質問を始めます。木村長官に伺いますが、警察予備隊が保安隊になり、このたび保安隊自衛隊となるわけでありますが、警察予備隊が保安隊に変つた場合の質的変化の度合と、このたび保安隊自衛隊に変つた場合の質的変化の度合は如何ように考えておるか。若しも差があるとするならば、どういう点が変つたかということを改めて明確に要点を挙げて説明を求めます。
  247. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 警察予備隊が保安隊に変つたときの性格、任務は大した変化はありません。これは内地の治安確保を主たる任務としておるのであります。併し保安隊がこの自衛隊に変るのは、内地の治安を確保すると同時に、外部からの不当侵略に対してこれを防衛する任務を帯びておるわけであります。その間において相当の変化を来たしておると私は考えております。
  248. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今度できるところの自衛隊軍隊である。併しその軍隊についていつもあなたは註釈をされるわけでありますけれども、その註釈をしないような場合の軍隊の定義というものを一つ承わります。
  249. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はしばしば繰返して申述べた通り軍隊というはつきりした定義というものは未だないようであります。昨日も申述べた通りであります。但し不当な外部からの侵略に対して対処し得るような実力部隊を普通軍隊と言うなれば、これは自衛隊も又軍隊と言つてよかろうと、こう申しておるのであります。
  250. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私の承わつておるのはそういう註釈付き以外の軍隊という定義の例を挙げて下さいと言うのです。私は国会図書館であらゆる文献を調べて頂きましたが、今あなたが言われた軍隊以外の軍隊の国際通念上の解釈はないようです。昔の日本軍隊という概念も今あなたが申されたような意味つたと思うのです。従つて自衛隊軍隊だ、その註釈は私は無用だと思う。その註釈をつけない以外の軍隊のあなたの定義があれば、一つそれを示してもらいたい。こういうわけです。
  251. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は註釈付で言つておるのじやないのであります。普通そういうものを軍隊と言うなれば、軍隊と言つてよろしい。併し普通にはそういうものを外部からの侵略に対して対抗して行く、そういう実力を持つておる、又目的を持つているものを軍隊と言うようであれば、そういうものを軍隊と言うのであれば、自衛隊も又軍隊と言つて何ら差支えない、こう申しておるのであります。
  252. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 自衛隊の隊員を兵隊さんと言つてよろしいか。
  253. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは言う人の勝手で、私は強いて兵隊さんと言わせなくてもよかろうと思います。
  254. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは昔の子供は日本軍隊を兵隊と言つた。今度の自衛隊はあなたの言う軍隊、兵隊と、これは相違があるでしようか、どうでしようか。
  255. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は強いて自衛隊員を兵隊さんと呼ばせる必要はないと考えております。それを普通の人が兵隊さんと言うことを私はやめてくれとは言いません。
  256. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それはそれまでにしておきましよう。このたびの編成、装備、例えばバズーカ砲、このたびは駆逐艦を借りるわけですが、こういうものは戦力を構成するための必要条件ですね。
  257. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 戦車とか大砲だとかいうようなものは戦力の構成分子たることは間違いありません。
  258. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それでは二千トン級の駆逐艦を例に一つとりますと、その駆逐艦に関する限りは、これは戦力の一つの要素として十分な条件である。又ここに一つの部隊というものがあつて編成されておりますと、この編成はその編成に関する限り戦力を構成して行くところの十分な条件ですね。
  259. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 無論戦力というような大きな実力部隊には、軍艦も入つておりましようし、又今あなたのおつしやるような部隊も入つておるでしようから。軍艦若しくは部隊というものは戦力を構成する一分子たることは間違いないと考えております。
  260. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そこでそれでは飛行機あり、艦艇があり、陸上の種々の火器あり、それらはいずれも戦力の構成分として必要なものであり、而もそれぞれ個々はいずれも戦力を構成するための十分なものである。それらが蓄積されたもの、それが戦力であり、従つて現在の陸、海、空の持つておるところの武力というものは、この限界で行けばここまでは戦力であるか、これ以下は戦力でないという限界がない以上、それで私は憲法に規定しておるところの戦力を持つことになる、こう私は考えるのでありますが、如何でございましようか。
  261. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はそう考えません。あなたのお説のようでありますれば、軍艦二、三隻持ち飛行機四、五十機持つても、これは戦力ということになるわけであります。戦力というものはさようなものではありません。いわゆるその質、量から見て、近代戦争を遂行し得るような大きな実力、装備、部隊、これを言うのであります。
  262. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あなたそう言われますが、又他面では戦力は他国に脅威を与えるものが戦力だと、こう言われましたが、頂いた資料によりますと、例えばインドネシア、イラン、エチオピア、スイス、タイ、大韓民国、ビルマ、これらはいずれも現在の我が国の保安隊と対か、それ以下であつて自衛隊と比較したときには明らかに低位なものです。こういう諸国に対しては、我が国の自衛隊というものは脅威を与えるから、その他国に脅威を与えるものが戦力、だという定義に基く限り、立派な戦力ではありませんか。
  263. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は戦力と見ておりません。日本から、現在の自衛隊の持つておるような実力では、到底侵略をするような実力は持つていないわけであります。
  264. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この戦力問答は随分行われているわけですが、憲法の九条で禁止していることは、あなたがたが答弁されておるようなものでなくて、提案されているような自衛隊、こういうものの組織、運営、こういう形では自衛はやれない、こういうところに私は憲法九条の精神があると思うのです。ところがその基本的な精神に反して、軍隊的な組織を作り、そしてこれを運営し、これに武器を持たしているということは、これは私は明らかに憲法の精神に違反するものである、こういうふうに私は考えるのでありますが、法制局長官、法の精神というものは如何なものでありますか。
  265. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 法の精神は法文の示すところから窺い知るほかはないと思うのであります。従いまして、私どもは憲法のここの九条、或いはその他の関係条文を総合して、結果として憲法の示すところの精神は、先ほど来、木村国務大臣の答えておる通りであるというふうに考えておるわけでございます。
  266. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 さつきの木村委員からも質問されておつたのでありますが、私は政府の答弁で行けば、我が国が戦力を持つということは絶対にあり得ないと思うのですね。独力で我が国を守る、そういう近代戦を総合的にやる力が戦力だ、こういう説明をする限りは、私は我が国があなたがたの解釈に基く戦力を持つということはあり得ない。従つてそういう立場からの憲法第九条違反というものは、今後あり得ないと、これはあなたがたが詭弁を弄しているからこういうことが出て来るのであつて、この点に関しての木村委員に対する答弁は、明確を欠いているので、私ども納得できるように、もう一回一つ説明して頂きましよう。
  267. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 戦力を用いる時期、それらの点につきましては、私は今ここであらかじめ申上げることはできません。日本財政状態、或いは国際情勢如何によつて、戦力を持つかどうか又用いるかどうかということがきまるのであります。今直ちに日本が、いつ戦力を用いるようになるかということは、申上げることは不可能であります。
  268. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 法制局長官に伺いますが、法治国として国家の基本法の憲法に関係する問題であれば、こういう自衛隊法案を国会で審議して成立させる前に、憲法を改正するなり、或いは国会の解散とかいうような方法によつて、国民の私は総意に問うてやるべきが、私は普通あるべき姿ではないかと思うのでありますが、法律家として法制局長官どうお考えになりますか。
  269. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 法律家としてはそういうことも法制上考えられますと申上げるわけでございますが、併し先ほど来申述べましておりますように、とにかくこの自衛隊そのもの憲法に抵触するかどうかという問題については、これは抵触しないということを我々としては確信をしておるわけでございますからして、実際問題として考えましても、さようなところまでの必要はあるまい、かように存ずるわけであります。
  270. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ところが今まで吉田内閣の手で、国民に説明して参る場合には違つた説明をして参つておるのです。そしてこの段階に国民の総意に問うことなく、この二法案を国会に提案して、多数の力でこれを成立さして行くということは、主権在民の、国民を私はごまかすものだと思うのです。従つて木村長官に私は具体的に伺いますが、あなたは二十七年三月十日、保安庁法の審議のときに、こういうふうに答弁されておりますね。  警察予備隊が保安隊になつても、これはあなたが先ほど答弁した通りに、治安確保のための警察であるから、従つてこれは憲法には違反しない、併しこれが一たび外敵と戦い得る装備と編成を持つようになれば、これは憲法違反である、警察だから憲法違反でない、外敵に対するものになれば憲法違反になるから、憲法を改正しなければならん、こういうふうに二十七年三月十日予算委員会で答弁されております。食言ではございませんか。
  271. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はそんな記憶はありません。憲法違反とは申していないのであります。
  272. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そういうふうに申しております。憲法を改正しなければできんと。速記録、二十七年三月十日調べて下さい。
  273. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 調べます。若しもあればそれは私の誤りであります。
  274. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 調べて後刻答弁して頂きます。それでは同じ吉田内閣の大橋担当大臣の言明を読んでみましよう。これは二十七年六月六日です。参議院の内閣委員会、外敵対抗の意図を有する部隊、対外的な意図を以て設けられた部隊は、近代戦遂行能力に達しなくても違憲である、はつきりこう述べております。これは如何です。
  275. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それは私がよく記憶しておりますが、十三回国会でありましたか、改進党の三好始委員との応答の中に、確かそういうお答えに近いものが出ておつたと思います。そのあとで当時の木村法務総裁が、又それと違つた、今我々の申上げておるような政府の見解を述べまして、そこで三好委員から食い違いがあるのではないかとの御指摘があつて、そして大橋国務大臣は、それは法務総裁は、政府の法律解釈の責任者であるから、法務総裁の意見が勿論法律解釈としては正しいと思いますと言明されておる速記録を持つておりますが、恐らくその場合であつたろうかと思います。
  276. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それだけに問題があるわけですね。保安庁のときさえそれだけの問題があるでしよう。更にもう一つ例を挙げましよう。同じ保安庁を審議するときの国会で、外敵が攻めて来た場合は、これは駐留軍の力によつて排除することになつている、従つてその外敵に保安隊が対処するということはあり得ないし、若しそれに対処したならば、これは憲法九条違反である、こういうふうに大臣は答弁しております。これとこのたびの自衛隊の提案とは大きな食い違いがあるのじやありませんか。
  277. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 勿論保安隊の時代において、外部からの侵略に対して当るべきはアメリカ駐留軍であります。これは日米安全保障条約によつて当然アメリカが負担している義務であります。そうして保安隊は国内の平和と秩序を守るために創設されているものでありますから、保安隊は外部の侵略に対しては直接対処すべきものではない。併し一旦外国から侵略を受けた場合に、保安隊としても黙つておりません。木村個人でも戦います。私は確かにそう言つております。これは実際の行動であつて、現在の保安隊は国内の平和と秩序を守る、アメリカ駐留軍は外部からの侵略に対して対抗するということになつておるのだ、こう申しておるのであります。
  278. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは本能的な自衛であつて初めから外敵に対抗する目的を以て編成され、訓練されたところの部隊というものは、憲法九条がある以上はできないという意味の答弁をしておられるじやありませんか。
  279. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はそう言つた覚えはありません。あれは間違いです。取消します。
  280. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ここにある速記は大橋国務大臣とあなたがそういう内容のことを答弁しておる。大橋国務大臣は特に明確に答弁しております。
  281. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 大橋君はどうか知らないが、私はそういう覚えはないのです。
  282. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 併し大橋国務大臣保安隊担当の吉田内閣の国務大臣であつたわけですよ。同じ内閣にあるあなたとして、又吉田内閣の立場において、国民に対して責任はございませんか。
  283. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは大橋君はどういうことを言つたか知りませんが、今法制局長官の申されたように、その見解は取消しておるわけであります。
  284. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それを詭弁と言うのですね。(笑声)
  285. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は詭弁とは考えません。
  286. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 国民は今まで私が今一、二読上げたように、皆さんがたから説明を受け、保安隊は増員しないと言いながら、すでにこのたび十七万人に増員されて来た。従つて国民の側に立てば、いわゆる欺欄再軍備、頬かむり再軍備と、こういうように割切れないものを持つているわけです。あなたがた憲法九条があるので、その言い逃れに近代戦を総合的に有効適切に遂行する能力は戦力である、こういうことを答弁しているわけですが、そういうことを推し進めて行けば、日本は戦力を持つということは絶対にあり得ない。今の自衛力漸増方式で幾らでも持てる、而も外敵に対抗できるということになれば、憲法九条というものは死文になるじやありませんか。あの憲法九条というものはそういうような気持で制定したのですか、又ときの大臣は国民にそういうふうに説明したのですか、国民は憲法九条のあの平和憲法というものを、そういうふうにとつてつたとお考えになられますか。私はこの前或る学校の仮装行列を見たのです。そうしましたところが、白たびをはいて下駄はいて袴をはいた、眼鏡を鼻にひつかけた生意気なのが、ステツキを持つて、そうして左手に水の入つたコツプを持つて、主賓席の前に出て、そうして何をやるのかと思つたところが、マイクの前に立つて、可軍備はいたしません、(笑声)憲法改正はいたしませんと言つて、コツプの水を主賓席のところにひつかけて黙つて行つてしまつたのです。これは現代の青年学生諸君のあなたがたのこの再軍備方式に対して抱いている感じを率直に現わしたものだ、こういうふうに私は考えるわけではありますが、如何でございますか。
  287. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そういう学生の仮装行列に対して私はとやかく申すことは差控えましよう。まあそういうものもあるでしよう。併し必ずしもそういうものばかりでないと私は考えております。
  288. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 丁度文部大臣が参りまして、今の話の続きですから、ここで伺いますが、今の話を文部大臣に聞いておつて頂けばよかつたのですけれども、この前私があの二法案がかかつたとき代表質問した場合に、文部大臣は「新らしい憲法のはなし」というのは、これは片山内閣のときに作つた教科書であつて、その責任は負えないとこういう捨ぜりふを投げてあなたは本会議場から退場されたわけですが、勿論これは片山内閣のときにできたけれども、その後吉田内閣でもこれは検定教科書として確認されているわけですから、あのあなたの答弁というものは私は間違つてつたと思うのですが、訂正される気持はございませんか、伺います。
  289. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) あのときの私の申上げた意味は、この「新らしい憲法のはなし」という本に対する責任というふうなお尋ねでもなかつたし、又そういうふうな意味で申上げたとは記憶しておりません。新らしい憲法にこういうことが書いてある、それにもかかわらず、お前はMSAつたか、防衛法案ですか、それに賛成をした。その新しい憲法にそういうことを書いてあるにもかかわらず、そういう法律案に閣議において賛成をした、その責任はどうだ……。
  290. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いや、そこじやない、私が質問したのはこういつたのです。あなたは片山内閣が作つた教科書だから責任は負えないと言つた、その点だけお答えを願いたい。
  291. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 片山内閣のときにできた本にそういうことが書いてあつたからといつて、私に責任を負えとおつしやることは御無理だと、こういうことを言つたように私は記憶しております。片山内閣のときにできた「新しい憲法のはなし」というものについて私が責任を負うとか負わんとか、これは私のしたことじやないのです。だから私はそれについて責任を負うべき理由はない、これは当然だと思う。責任というものは自分のしたことについて責任を負うのです。
  292. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 こんなことに時間を費すのはもつたいないから、要点だけ確認しますが、これは吉田内閣でも教科書として認めたものだということは認めますね。
  293. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 片山内閣のときに出て、そうして何年か知りませんが、引続い吉田内閣のときにもこれを使つてつた、その事実は認めます。
  294. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 従つて私は文部大臣にもう一点伺うのですが、この教科書には日本憲法は平和憲法であつて、飛行機も軍艦も、そういう戦いをするものは一切持たないことにいたしました、而もこれは世界に率先してやつた、こういうことを書かれているわけですね。然るに最近の吉田内閣の戦力等の定義は、あなたが御承知通りこういう形における再軍備体制の推進というものは、文部大臣として教育上如何なる影響を及ぼすとお考えになつておられるか。もう少し私は具体的に伺いますが、全国五十万の教職員は、国民大衆諸君と共に、とにかくこれは欺瞞だ、頬かむり再軍備だ、怪しからん、こういう気持でおります。私もそう思つておりますが、学生諸君もそう思つているのです。それがいろいろな場合に現われて来るのです。そこで私は先般の教育二法案と関連して一言だけ伺つておくのですが、政府はこういう戦力解釈をし、三軍方式のこういう再軍備を推進している。これは憲法九条に抵触するもので、こういう欺瞞的な態度が許さるべきもない、誠に怪しからんということだ、生徒諸君から質問でもあつたら、そういう欺瞞的な点をよく説明して聞かせよう、こういうふうに言つたならば、中立性の確保の法律案にひつかかりますかどうですか。質問は二点あるのです。今の再軍備方式の学生生徒諸君に対する影響、この教科書との関連ですよ。それからあと質問した一点と二点についてお答え願いたい。
  295. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) この防衛法案考えられておることが、憲法第九条に言う戦力の行使であり、従つて憲法に違反する、こういう前提に立つ場合には政府みずから憲法に違反しておることをやつているということは、これは教育上余り面白くないだろうと思います。併しこれは勿論議論のあるところであり、又政府においてはそれを憲法違反とは考えておらん。それを学校の先生が子供にそれを憲法違反である、こういうことを教えることは余りおだやかでない。
  296. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は内閣委員会のこの質疑を先生がたに話して誠に欺瞞的にやつている、生徒から質問があつたときには、こういうふうに説明しろ。こういうふうに言つたならば、教唆扇動にひつかかるか、ひつかからんか。正しいことを正しく伝えるだけなんですよ。
  297. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) これは特定政党を支持又は反対させる、こういうことでありますから、それだけ言つたからと言つていわゆる教唆扇動、これは法律上の犯罪の構成要件が揃わなければ、あの規定には概当いたしません。
  298. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは結構。  次に伺います。現在の保安隊、それから自衛隊ができて、本年度末にはその火力は旧陸軍と比べた場合にどのくらいになりますか。
  299. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 詳しい比較に現在のところとれておりません。従いましてどれくらいの自衛隊が火力を将来持ち得ることになるか、それと旧陸軍が持つていた火力がどれだけあるかということの正確な比較はまだできておりません。
  300. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は富士裾野の演習を見たのでありますが、その通信施設の向上、それから部隊の機動性に非常に富んで来たこと、こういう点を考える場合に、更に旧陸軍と今度の自衛隊の一個師団の人員、そういう点から考えるときに、曾つての旧陸用よりは相当数倍の威力を持つて来ているものと、こういうふうに素人として考えるのですが、専門家もおられるわけでしようが、どの程度考えになつていらつしやいますか。
  301. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今申上げました通り正確な比較はできんのでありますが、併し少くとも今おつしやつた通信機或いは通信部隊に要するいろいろの設備、殊に車輛その他の点については旧軍隊よりも相当高度のものであると、こう考えております。
  302. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その訓練方式を見てみますと、アメリカから武器を借りておる関係もあるかも知れませんが、すべて米式の訓練を受け、その作戦方式をとつておるようでありますが、これは将来ともずつと続けて行くつもりでありますか。
  303. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) いわゆる作戦方式というようなものは、これは固定しておるわけではありません。北朝鮮あたりにおきましてのあの模様を見ておりますと、著しく変つておるようであります。従いまして我々といたしましては、内地の防衛をするためについての作戦の方式というものは、にちにちこれを研究しなければいかん、固定的ではいかんのであります。それらの点については十分に我々は備えを全うする上において研究しつつあるということであります。
  304. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は日本の青年の体格に不適当な銃を持ち、更にフリゲート艦等を見ますというと、全く日本の青年諸君の体格に合わない。例えば腰掛一つが合わなくて机が顎まで来るといつたようなところで、而もアメリカ式の訓練を受けておるということは、共同作戦というものを予想してやつておるものであり、そこに私は半ば強制的に軍事顧問団の、従来保安顧問団といつてつたわけですが、この関与があるのではないか、こう考えるのでありますが、その点は如何でございますか。
  305. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 決してさようなことはありません。ただアメリカから貸与を受けておりまする装備品のうちで、実際上日本の青年に適しないものもあることは事実であります。これは止むを得ないと考えております。それらの点については十分将来考慮して日本の青年に向くようにいたしたいと考えております。
  306. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 MSAの附属書を見れば、標準方式というものをとつておりますね。これは結局将来の防衛機構、それに参加するところの各国の軍隊の装備においても訓練においても、一つの標準化しておくというところに狙いがある。先ほども申上げたように、率直に言つて、共同作戦のために日本人に向かないところの武器も持たされ又訓練も強いられておる、こういうふうなことを考えますが、如何でございますか。
  307. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 訓練はアメリカの指示は一切受けておりません。これははつきり申上げます。日本独自の訓練方式只今つております。ただ今も申上げました通り、使用する装備品のうちについては、アメリカのものであつて日本に適しないものがあることは事実であります。これは日本財政上から見て現段階においては止むを得んことであり、我々一日も早く日本独自の日本青年に適するものを持たせたいと、こう考えております。
  308. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 訓練から、私は共同作戦というものを前提考えると、こういうふうに私は実際見てそう感じておるのでありますが、あなたがたも言明されておるように、日本独自では守れない、従つて百米両国共同して守る態勢をとつたのである、こういうふうに基本方針を申述べられておるわけでありますが、そうなれば、アメリカの戦力に達した部隊と、日本のあなたがたの解釈で、戦力に達せざる、戦力を持たざるところの軍隊、これとが共同作戦をやるということなれば、その場合には十分日本自衛隊は戦力としての力を発揮すると思うのですが、その点は如何でございますか。
  309. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本の現在の保安隊、将来自衛隊になりましようが、これを十分に訓練いたしますると、日本防衛アメリカと共同作戦をとるに至るようなことがある場合においても、実力を十分に発揮し得られるものと私は考えます。
  310. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私の伺つておるのは、その共同作戦を以て一つの目的を遂行するように行動した場合には、我が自衛隊は戦力としての力を発揮することに私はなると思うのです。その点如何ですか。
  311. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その時と場合によります。
  312. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そういう場合があり得ますか、あり得ませんか。
  313. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは切離して考えたときにはあり得ないのであります。総合してやつた場合にはあり得る場合もあります。
  314. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは戦力を禁止し、従つて交戦権を禁止した日本憲法に違反するのではございませんか。
  315. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 違反はいたしません。戦力かどうかということは日本の現有するその実力を、それを対象として論ずるのであつてアメリカ駐留軍と合せた実力をどうであるか、こうであるかということは問題外であります。
  316. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは私聞えないのですが、憲法の精神というのは、戦力を持ち、戦力としての力を発動する、具体的に交戦権を行使する、そういうことはあり得べからざることであるというのが、私は憲法九条の精神である、これは明々白々であることと思います。アメリカ軍と共同して日本自衛隊が戦力としての力を持ち、そうしてその力を発揮、交戦権を行使する、こういうことになれば、憲法九条に明らかに違反するではございませんか。
  317. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 憲法で規定しているのは日本の保持する戦力であります。アメリカと合体して保持する戦力ではないのであります。アメリカの保持する戦力は問題外であります。あなたの仰せのようなことでありますと、日本アメリカ駐留軍がおつて日本が全然実力を持つていない場合でも、日本が戦力を持ち得るような解釈になる、そういう不合理になりはしないかと私は思います。
  318. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは話が違いますよ。こつちも部隊を持つて、そうして正式に国家と国家が話合つて、そうして一つの部隊として行動を起すわけですから、それが問題になるわけです。我が国に一切の部隊がなくてアメリカ軍だけが安保条約日本に駐留して、そうしてアメリカ軍だけが動くのであれば、それは全然問題にならない。それは私の伺つておるものとは本質的に違います。私の伺つておるのは、日本自衛隊という部隊があり、日本の代表とアメリカの代表と話合つて、そうして戦力を構成して、戦力としての交戦権を行使する場合があり得るというのだから、それは憲法九条の精神に明らかに違反しておる、これを私はお伺いしておるわけです。重ねて伺います。
  319. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 憲法第九条に規定しておる戦力は日本の保持する戦力であります。アメリカ軍と合せたものをいうのではないということを重ねて申上げます。
  320. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それでは交戦権のほうですが、アメリカと共同して一つの戦闘行為をやる場合には、これは明らかに日本自衛隊は交戦権を行使することになるでしよう。
  321. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本軍隊自身としては交戦権は行使いたしません。
  322. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それではあなたは日米共同作戦の場合において、アメリカ軍の指揮下に入つて殺戮をしようが、船舶の拿捕をしようが、或いはずつと下つて補給その他後方勤務に従事することは、一切これは違憲でない、こういう解釈をとられるわけですか。
  323. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本憲法の許す範囲内において武力行使を日本自衛隊はするのであります。
  324. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 憲法で許される範囲内の武力行使というのはどういうことですか。
  325. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 自衛権の行使であります。
  326. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 では、私の伺つているのは、日本周辺に一つの事件が起こる。そのときにアメリカ軍と共同して一つの隊を作るのですよ。必ずそうなる、共同作戦ですから……。そうしてその結果は明らかに戦闘というものが行われるわけです。それに参加した日本軍も交戦権を行使することにおいて、それは殺戮もしましよう、船舶の拿捕もやりましよう。従つてこれは憲法違反ではないですか。これがそうでないと、あなたは申されれば、あなたは自衛のためには交戦権というものは発動できるのだ、ただ交戦権を禁止してあるのは、侵略の場合というような場合に禁止するので、自衛のためには交戦権も行使されるのだ、こういう解釈になるではございませんか。さようでございますか。
  327. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 自衛隊が行動する限りは、自衛力の許す範囲であります。憲法九条二項においての交戦権は、これは行使いたしません。なお、アメリカ軍と共同作戦をとる場合におきましても、これはその辺のことについて、十分考慮した上で処置をするのであります。
  328. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 了承できません。時間がかかりますから、次に伺います。  この内局の課長以上に制服を着たかたが就任することを撤廃した件に関して、私はやはりこの文民優先というものが壊されるのではないかという立場から、更にこの点伺いたいと思いますが、そこで率直に伺います。この内部部局を抑える者が今後の自衛隊を抑えることになりませんか。
  329. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は内部部局が自衛隊を抑える、自衛隊が内部部局を抑える、そういうことは考えていないのであります。これは双方ともよく協調を保つて行くべきが当然であります。而もその働く分野は異にしております。自衛隊は実施部隊、行動部隊であります。内局はこの行動部隊に対していろいろの背後にあつて事務を所掌して行くのでありまして、その分野というものはおのずからそこにわかれておるのでありまして、これは対立関係があつてはいけない。よく調和を保つて行かせたいというのが私の精神であります。
  330. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そのあなたの気持はわかるわけでありますが、私具体的に伺います。防衛庁法の二十条を見ますと、官房長及び局長というものは長官を補佐するのですが、そのときに陸、海、空の幕僚長に対する指示、これに関して長官を補佐するのですよ。それから又統合幕僚会議の所掌事項について、長官が統合幕僚会議に行う指示又は承認についても、官房長及び局長は長官を補佐するのですよ。従つて官房及び五局長、このあり方というものは、私は陸上、海上、航空、これらの自衛隊を抑えることになつて来ると思うのです。もう少し率直に言うならば、自衛隊を自分の思うように育てて行こう、一つ自衛隊に関して抱負経倫を持つて、その具現に燃ゆるがごとき野望のある人は、先ず官房五局長に入るべく私は希望し努力するであろう、それほどにこの官房五局長の存在というものは、この条文から私は大きい、こういうふうに考えるわけですが、如何でございますか。
  331. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 官房初め五局長は、これは長官のいわゆるブレーンであります。長官を補佐するのであります。長官を補佐して、あらゆる観点から、自衛隊のあるべき姿、その他万般のことをここできめるわけであります。それが具体的に現われて、実施部隊のほうにどう流れて行くかということについては、これは各幕僚長を通じて更に部隊のほうへ流れて行くということになるのであります。
  332. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 どうも私の伺つておるところがピンと木村長官行つていないようなんですが、同じ長官を補佐するにしても、統合幕僚会議というのは純軍事的な立場から補佐するんですね。それから官房部局というのは総会目的な政策的な立場から補佐する、こういう建前になつているわけですね。而もですよ、官房五局長というものは、陸海航空の幕僚長及び統合幕僚会議に或る指示をする、それから承認をする、その長官の態度について、官房五局は補佐することになつているわけですから、官房五局の存在というものは極めてこれは高い地位であり、重大なものだ、こういうふうに私は考えるのでありますが、如何ですか。
  333. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 官房五局長は重大なポストでありますことはお説の通りであります。これは長官の最高のいわゆる補佐役であります。
  334. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 従つて私は伺いますが、この陸海航空の幕僚監部等において、制服を着たところの方が官房五局に入りますと、その要望が強く現われて来て、総合政策的に長官を補佐しなければならない官房五局の態度というものがこれだけの飛行機も欲しい、これだけの軍艦、かくかく欲しいという陸海空の制服に引ずられて、政策的に総合的に長官を補佐しなければならん内局の使命というものが、ここに軍事が政治を支配するところの芽生えというものが出て来る虞れがある。従つて私は兵権優先に長い間なれている我が国の現段階において、仮に自衛隊を作るとしても、この官房五局には飽くまでも純粋な文民を充てて、そして総合政策的に長官を補佐するようにして行かなければ、私は極めて危険だと、こういうふうに考えるのでありますが、御所見は如何でございましよう。
  335. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その御心配は私は御無用であろうと思います。と申しまするのは、自衛官が直ちに官房五局長になり得るということはできないのであります。自衛官たるものは官房五局長にはそのままできないのであります。やめて来なきやできない。そこで今お話のようにいわゆるシビリアン優先の制度をとる以上は、自衛官自体そういう内局にいろいろな干渉をするというような建前をとつてはいけないので、そこがこの法律の建前にも堅持しておるわけであります。ただ一たび自衛官で経験があつた者が、如何に才能があり有能の士であつても内局に向いても、法制上はいれないということをきめるということは、これは私はよくない、さようなことはいわゆるミビリアンと制服との間に将来大きな摩擦を生ずる一つのきつかけになりやしないか、有能な士であれば、如何なる者であつても、内局へ入り得るんだという制度が私はむしろいわゆる制服部隊と制服以外の内局との間に調和をとつて行くよさが実現できるのではないかと、私はこう考えております。
  336. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ということは、制服就任の制限を撤廃したが、長官としては官房及び五局長には、従来通りにできるだけ制服を着たことのない、而も旧軍人でないような人で、而も軍事知識の豊かな文民を任命したがよろしいと、こういうお考えでおられるように私は答弁がとれるのでございますが、さようでございますか。
  337. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) できることなれば、そうありたいものと考えております。そうあるのが建前と考えております。
  338. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その答弁は私は筋が通つておると思うのですが、ところが現実には、私は保安庁の中に入つてみないから確信あることは言えませんが、いろいろ新聞雑誌等に伝えられるところによりますというと、やはり防衛庁の今度できる防衛局ですね、それから人事局、そういうところに制服の方が入るべく非常に狙つているということが伝えられております。若し海陸の戦前の対立がかすかでも今尾を引いているとすれば、陸上、海上、航空、それぞれ内部部局の中の特に防衛局、人事局、経理局、こういうところに自分の畑から送り込もう、こういう動きがあると私は聞いているのでございますが、これに対して長官如何様に対処されますか、その御所信を承りたいと思います。
  339. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は外部の動きに対しては決して動かされないつもりであります。
  340. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そういう動きというものは敢然と排除して、先ほど御答弁のような筋を通して参る決意であると、こういうふうに了承してよろしゆうございますね。
  341. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) まさにその通りであります。筋は通すつもりであります。
  342. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これに関連してでありますが、先般来論議しました国防会議の事務局の件でありますが、出されました案によりますと、庶務を防衛庁で取扱うということになれば、私は恐らく五局、官房のこの内局で庶務が取扱われることになると思うのでありますが、そういうお考えでございますか。
  343. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 勿論、庶務は内局で取扱うことが適当であろうと考えております。
  344. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 従つて国防会議に関するあなたがたの案の通りに、事務局を防衛庁に置くということになりますというと、いよいよ内局の重さというものは多くなつて来るわけです。そして先ほど私が申上げましたように、内局は長官を補佐する、その補佐する立場というものは、統合幕僚会議、陸上、海上、航空、各幕僚監部、これに一切息がかかつているわけですから、この内局に制服の方々が入られ、そこで国防会議の庶務を取り行うということになりますというと、国防会議に出て来る案というものは、準軍事的な要望というものが非常に強く出て来て国家的な立場から総合的に政策的に調整した案というものが出て来る可能性が薄くなつて来る。こういう立場からも、国防会議の事務局というものは、やはりこの前もちよつと触れましたが、他の重要な諮問機関にもあるような、事務局というものがあつて、若干の専門知識を持つた専門員、その専門員というのは知識は軍事的にも必要であるし、又総合政策的な立場からの知識も必要な若干の専門員のような方々で事務局を構成して、これを総理府に置くことがいいということは、私は一点の疑いもないほど明かなことではないかと思うのでございますが、先般保安庁案なるものを拝見しておりますので、これに対する長官の御見解を私は詳細に一つ承わりたいと思います。
  345. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今の考え方は、大きな事務局を置こうというようなことを構想しておりません。申すまでもなく、事務局ということになりますと、そこで今お話になつた専門員というような或いは官吏というようなものが出て来る余地があるのであります。とやかくすると、そこで作られた案が国防会議に出て来るというようなことの虞れなきにしもあらずであります。あの構想はそういう大きな事務局じやなしに、そこで普通の事務をとらせるという構想であるのであります。従いましてその庶務の事務は防衛庁の内局が至当じやないかと考えております。併しながら今の御説の通りこれを総理府へ持つて行くということも一つの大きな考え方かと私も思います。その点については十分考慮してみたいと思います。
  346. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 国防会議の事務局の件については、他の委員からも質問があり、又要望もあつたようでありますから、それに副つて十分慎重に検討して、本法案審議の最終段階までに政府の確定案を是非とも出して頂きたい。これを強く要望いたしておきます。  なお、私は自衛隊を制する者は官房五局を制しよう、こういうふうに私は断言してもいいほど、この法案は組立てられていると思います。従つて若しこの二法案が成立した場合には、この官房、五局、この参事官の任命というものは極めて重大であるということを特にここに発言して、長官の今後の善処を強く要望しておきたい、こう思います。
  347. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) ちよつと速記をやめて。    〔速記中止〕
  348. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 速記を起して下さい。  それでは暫時休憩いたします。    午後六時五十七分休憩    ——————————    午後七時四十一分開会
  349. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは休憩前に引続きまして委員会開会いたします。  この際皆さんにお諮りいたしますが、調達庁設置法の一部を改正する法律案を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  350. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 御異議ないと認めます。それでは政府よりの提案の説明を受けることといたします。
  351. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 只今議題となりました調達庁設置法の一部を改正する法律案の提案理由及びその概要を御説明申上げます。  本法律案は、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定等の締結に伴いまして調達庁の任務として日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定による同軍隊の作為又は不作為から生ずる事故に基く補償事務、日本国における合衆国軍隊及び国際連合の軍隊の共同の作為又は不作為から生する請求権に関する議定書によるアメリカ合衆国軍隊及び国際連合の軍隊の共同の不法行為に基く事故に対する補償事務並に日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定による軍事援助顧問団の使用に供する宿舎等の施設及び役務の調達並びに提供した施設の返還に関する事務並びに駐留軍等による又はそのための調達に関する契約から生ずる紛争の処理を新たに調達庁の任務として附加し、これに伴いまして、調達庁の権限、総務部、不動産部、労務部の各部の所掌事務に関する規定に所要の改正を行い、併せて調達庁の業務の円滑なる処理を図るために特別な職として総務部に調停官を、不動産部に連絡調査官を設置すると共に、国際連合の軍隊及び軍事援助顧問団のために労務に服する者で国が雇用するものの身分、勤務条件について所要の規定を設ける等の必要がありますので、今回調達庁設置法等の一部を改正する法律案をここに提案いたすこととしたのであります。  本法律案内容につきましては、第一条におきまして、調達庁設置法の一部改正を、第二条におきまして、日本国との平和条約の効力発生及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施等に伴う国家公務員法等の一部を改正する等の法律の一部改正を、第三条におきまして、国家公務員共済組合法の一部改正をいたすこととしているのであります。  第一条の調達庁設置法の改正につきましては、同法第三条第三号の改正は、従来から調達庁の任務となつております日米安全保障条約に基く行政協定第十八条のアメリカ合衆国軍隊の作為若しくは不作為から生ずる事故についての請求の処理に加えて、国連軍協定第十八条に規定する国連軍の同種の行為による請求の処理と日本国における合衆国軍隊及び国際連合の軍隊の共同の不法行為に基く請求の処理を併せて行うこととするためのものであります。  同条第四号におきましては、日米相互防衛援助協定による軍事援助顧問団の使用する宿舎等の施設の提供及び返還並びにこれらの顧問団のために労務に服する者の雇入、提供等の業務等役務の調達を新たに調達庁の任務にいたしております。同条第五号におきましては、行政協定第十八条第七項、国連軍協定第十四条第二項等に規定しております駐留軍及び軍事援助顧問団による直接調達又はそのためにする間接調達に関する契約から生ずる紛争の処理を調達庁の任務といたしております。  第四条の改正は、調達庁に新たに附加された任務の遂行上必要な権限として第十三号におきまして国連軍の派遣国政府との間にも物及び役務の調達に関する契約を締結できうることとし、第十四号におきまして、アメリカ合衆国政府との間に軍事援助顧問団の使用に供する宿舎等の施設の提供及び役務の調達に関する契約を締結する権限を附加することといたしております。又第十六号及び第十七号といたしまして駐留軍に対して施設及び区域を提供いたします場合に、工作物等を設置し若しくは補修する工事を実施し、若しくはこれらの工事に関する役務を提供し、又はこれらの工事等を関係地方公共団体に委託し若しくはこれらの工事又は役務の補助金を当該地方公共団体に交付すること並びに日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に関する法律第一条に規定する特別損失が生じないようにする防止対策工事等を実施し、又はこれらの工事等を関係地方公共団体に委託し、若しくはこれらの工事等の補助金を当該地方公共団体に交付しうることといたしております。  第六条第三項におきまして駐留軍又は軍事援助顧問団による又はそのための調達に基く契約から生ずる紛争の処理を円滑に行うために総務部に調停官一人を、第五項におきまして駐留軍の使用に供する施設及び区域の決定、提供した施設及び区域の使用条件の変更又は返還並びに軍事援助顧問団の使用に供する宿舎等の施設の提供等について駐留軍、軍事援助顧問団、利害関係人又は関係行政機関との連絡、交渉及びそれらの間の意見の調整に関する事務を円滑に処理するために不動産部に連絡調査官五人以内を置くことといたしております。  第七条におきまして、前述いたしました駐留軍の不法行為に基く請求の処理及び駐留軍等による又はそのための工事並びに役務及び需品の調達に関する契約から生ずる紛争の処理の事務等は総務部の所管といたすよう改正いたしております。  第八条におきまして、不動産部の所掌として新たに軍事援助顧問団の使用に供する宿舎等の施設の提供又は返還に関する事務を附加するとともに配列字句の調整を行なつております。  第九条におきましては、アメリカ合衆国軍隊のため労務に服する者と同じく、国連軍及び軍事援助顧問団のために労務に服する者についてもその雇入、提供、解雇、労務管理及び給与の支給、福利厚生に関する事務は労務部の所管といたすよう改正いたしております。  第十条におきましては、行政協定第十八条に規定しておりますアメリカ合衆国軍隊の作為又は不作為から生ずる事故についての請求の処理の業務で都道府県知事へ委任しておりました業務を事務の簡素化、迅速化を行うためにこれを廃止することといたしております。  次に本法律案第二条の日本国との平和条約の効力の発生及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施等に伴い国家公務員法等の一部を改正する法律の改正につきましては、国連軍及び軍事援助顧問団のために労務に服する者で国が雇用するものは、アメリカ合衆国軍隊のために労務に服する者と同じく、その身分は国家公務員ではないこととし、給与その他の勤務条件は調達庁長官が定めることといたしております。  最後に本法律案第三条の国家公務員共済組合法の改正につきましては、国連軍及び軍事援助顧問団のために労務に服する者で国が雇用するものは、国家公務員共済組合法の適用を受けないこととすることとしております。  以上が本法律案の提案の理由及び概要でございます。何とぞ慎重御審議の上速かに可決されるようお願いいたします。  なお附加えて一言お詫かたがた御挨拶を申上げておきますが、御多忙のところを本法律案を特に御審議を願いますようにお願い申上げましたにつきましては、事情がございまして、それは国連軍協定ができましたので、国連軍関係の労務者一万二千数百人おるのでございますが、これをいわゆる国連軍の直接雇用から米軍労務者と同じような日本政府が介在いたします間接雇用に切替えるということが労務者方面からも熱心なる要求もございましたし、又日本側といたしましても、労働三法その他適用の面から見ましても、極めて必要なんでございますが、切替えるためには現在の国連軍の直接雇用の関係を一応打切らなければならないのでございまして、国連軍の雇用を一応打切りまして、解雇いたしまして、改め日本政府が雇用するという手続をとりますのですが、そのためには労働基準法第二十条でありますが、労働基準法によりまして三十日以前の解雇予告が要ることになるのであります。従いましてこれから解雇予告をするということになるのでありますが、解雇は現在国連軍の直用ということになつておりますので、国連軍のほうで解雇をしなければならない。国連軍のほうといたしましては、解雇をする際には切替えて日本政府が雇用するという保障がなければならない、これは単純なる解雇ではないのであるから、保障が絶対に必要である。日本政府との間に労務契約を締結しておく必要があるということを主張いたしております。これも又当然なことなのでありますが、その労務契約につきましても、あらかじめ交渉いたしまして、内容その他定まつておるわけでありますが、調達庁長官にこの契約を締結いたします権限がまだございませんので、従いまして基本労務契約を締結することができない。その保障がなければ国連軍は解雇することができない、こういうことに今なつておるわけでございます。ところで早速に解雇いたしませんと、解雇予告が出ましてから三十日かからなければ切替ができない。そういたしますと、今日解雇予告をいたしましてから、三十日以後我々のほうで雇い入れるということになりますると、七月以後のことにどうしてもなるという傾向がございます。七月以後から我々が雇いますと、本年の年末に際しまして年末手当を払うことができない。年末手当は六カ月以上勤務した者に一律に払われるということになりますので、この一万二千人の国連軍労務者がこの際調達庁設置法の改正ができておりませんと、労務者自体には何らの責任もありませんで、ただ雇用が切替わるというために、当然得べかりし本年度末の年末手当を受けることができないということになりまするので、年末手当六カ月以前に是非とも切替を行つておきませんと、一万数千人の労務者諸君に非常なる損害を与えるのであります。これは国連軍側からその資金は償還を受けるのでありまして、日本側の資金で払う金ではありませんけれども、労務者諸君に非常な損害を与えるということになりますので、当委員会御多忙の際を煩わしまして、甚だ恐縮でございますが、特に本日お願いいたしました次第でございますので、御了解をお願いいたしたいと思います。
  352. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  353. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 速記を始め  て。
  354. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この法律案審議に当つては他には資料は全く用意されなかつたのでございますか。
  355. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) ほかに資料は別に用意してございません。
  356. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 只今の提案理由はよくわかりましたが、法律案審議に当つては非常に私は不用意だと思うのですね。特に私は資料に基いて長く時間をかけようというような、そういう気持は全くありませんが、普通の法律案を審議する場合には、関連の資料というものは、やはり委員会には準備すべきが当然だと思います。今後のこともありますから御注意申上げておきます。そして審議の過程に必要な資料がありましたら、これは是非お願いいたしたいと思います。  次に若干伺いますが、MSAの受入れによる軍事援助顧問団ができたので、それに関する規定がここに盛られておりますが、軍事援助顧問団の行政費はたしか三億五千万円何がしというものを、これはそのまま協定に基いて向うさんに渡し切りになることになつていたと思います。あなたの今度のこの所管事項の中に、「宿舎等の施設及び役務の調達」云々とありますが、この経費は三億五千万とは別個だと私は了承しておりますが、その点はどうなつておりますか。なお、宿舎等の施設、これに要する費用並びに役務の調達、これをどの程度にお考えになつていらつしやるか、その点承わりたいと思います。
  357. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 役務の調達は三億五千万円の範囲内に入つているわけでございまして、それを限度として役務の調達をする予定になつております。提供すべき宿舎の費用その他は三億五千万円のうちに含まれてないわけであります。
  358. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は日米相互防衛援助協定の外務委員会との連合審査のときに、三億五千万円何がしはアメリカ側に渡しきりだ、こういうふうに答弁あつたのを私は記憶しているわけでありますが、役務の調達は確かに三億五千万から出るわけですね。
  359. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 調達庁の調達しております役務はすべてアメリカ側から償還を受けることになつておりますので、顧問団の関係の役務につきましても、その三億五千万円から償還を受けることになると了解しております。
  360. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それでは宿舎等の施設、これは別途だとすることになると、この費用はどのくらいに見ておりますか。
  361. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 宿舎等の施設の提供は、この提供の方法がまだ交渉中で定まつておりませんので、これらに関してはまだ計画が立つていないわけでございまして、その金額その他の予定も立つておりません。
  362. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 MSA協定はすでに発効しているわけでありますが、軍事顧問団はヒギンス団長以下もう就任しているわけですが、それとの関係はどうなりますか。又提供の方法がきまつていないというが、どういう形で、どこで誰が協議してきめるのか、いつきめるのか、そういう点についてお答え願いたい。
  363. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 現在の顧問団として仕事をしている諸君もいるはずでございますが、これらは従来からおりました合衆国軍隊から派遣されておりました顧問がそのまま当つておりますので、従来の施設を使用しておると思いますが、その宿舎の提供その他の関係は大使館と日本政府外務省との間で提供の方法を協議することになつております。
  364. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それはいつ協議していつ頃までに成案を得るのでございますか。
  365. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 目下協議中でございまして、最近に成案を得るようになると了解いたしております。実は調達庁で実施しております施設特別委員会の関係で、アメリカ合衆国軍隊に施設を提供する委員会、その手続によりまして顧問団関係の施設の提供の相談もいたしましたのでありますが、これは断りまして、大使館と外務省との間で新たに方法を定めてからやることにいたしておりますので、現在それが交渉中であると考えております。
  366. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 どの程度予算を要するか、その見通しも立つていないのでありますか。
  367. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 現在のところ確たる見通しは立つておりません。併しながら人数が制限されておりますので、大体のところは予想せられるかと思いますが、私どもに関します限り、確たる予定をまだ立てておるわけではございません。
  368. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この宿舎の提供は恐らく新築するようになるでしようね。それとも若干接収でもやるのでございますか。
  369. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 新築乃至は接収の関係は万々起るまいと考えております。と申しますのは、合衆国軍隊関係の提供いたしました施設その他の関係で、目下返還を受けつつあるものが相当にたくさんございますので、顧問団のために特に新築若しくは接収を要するという事態は万々起るまいと考えております。
  370. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 MSA軍事顧問団に関して本委員会に出された他の資料によりますと、全国に散在しておる軍事顧問団は、九州の一部の学校を除いては、大体東京に近く、将来は集める、こういう方針であるという資料が出ておるわけですが、そういうことも考慮に入れて、接収とか新築というようなものはなくて、返還されたもので間に合う、こういう御答弁でございますか。
  371. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 東京に集るというようなことが予想されましても、東京におきまして、顧問団のためには旧陸軍関係の固有財産を提供しようという予備的な交渉も行なつておりますので、接収若しくは新築というようなことは考慮されずに済むのじやないかと考えております。
  372. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 では仮に今既設の建物がある場合に、ここはどうも住宅として適当でない、こことここを直して欲しい、或いは例えば風呂が適当でないから、これをガス風呂にしてもらいたいとか、そういうような向うのお好みによるところの修理ですね。こういうものは皆日本政府の負担でするもののように、これはとれるのでございますが、その点はどうでございましようか。
  373. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) そのような工事を必要といたします場合、調達庁の行います任務は、斡旋でありまして、経費負担はいたしません。
  374. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 宿舎等の施設とありますよ。それを提供すると、……その宿舎が住宅として適当でないという場合に、それに手を入れるのが当然宿舎等の施設の提供の部類に入つて日本政府が負担することになるのではありませんか。
  375. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 先ほど申上げましたように、方法等がなかなかきまつておらないと申上げましたのは、おおむねその点にありまするので、我々としては斡旋ということを予定しておりまして、日本政府の負担にはならないという考えで交渉をいたしております。その点が目下交渉中できまつておらないということでございます。
  376. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それならば、なぜ日本国の法律にそういうような表現をしないのですか。あなたがたはそういう気持を持つておるならば、そういうものを明確にここに活字にして表現なさつたらよろしいではございませんか。
  377. 山内隆一

    政府委員(山内隆一君) 先ほど長官から申上げた通り、方法が実はいろいろ折衝中に属しておりまして、きまつておりません。併し法案を急ぐ必要がありますので、こういう字句を使うことに話がきまつたわけでございますが、その気持は私どもとしては斡旋というふうな意味が多分に入つておる、その意味が強い、そんなふうに考えております。必ずしも斡旋のみに限つたというわけではないのであります。そんな意味でこういう字句を使つたわけであります。
  378. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 先ほどから長官が答弁されたような内容で、両国の協議をまとめるのに責任を以て努力されますね。
  379. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 日本政府の負担に極力ならないように責任を以て努力いたしたいと思います。
  380. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 三億五千七百万円ですか、その費用も相当莫大な費用です。これに更に地方から東京に六百五十人ですか、それだけの顧問団が集つて来た場合、宿舎等の施設の提供に多額の国費を要するということは、これは軍事顧問団の行政費の交渉過程からいつて遺憾のことだと思います。その点は責任を以てやつて頂きたいと思います。
  381. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体どのくらいの予算になりますか。それはわかりませんか。それがなければ非常に困るのですよ。
  382. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 基本的には三億五千万円日本政府側で負担しております以外は、持ちたくないという方針で交渉しておるわけでございます。
  383. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 顧問団の使用する宿舎等の施設を提供する場合、例えば今まで多少返還を受け、本当は民間に返すべきものを返さないのですから、その場合には補償しなければならんでしよう。そういう政府負担なるものはどうしても出て来る。その点と、もう一つは顧問団の数は今度は七百六十名を以て出発するわけでしよう。だんだん漸減して昭和三十年三月までに三百名にするという予定だ。ところがこれまでの経過では大体顧問団の数は最高八百三十八名であつたわけですね。従つて新たに、七百六十名から出発する場合、新たにそういう者の宿舎の施設を提供するということはあり得るのですが、大体今顧問団はこちらに来ておるのでしよう。それを切り換えるわけなんで、人数は減つて来るのでしよう。それならば宿舎等の施設の提供というのは、これはどういうことなのか、今までの貸しているものの切換えを意味するのか、如何ようにするのか、新たに、今まで貸しているものより更に殖やすことをやるのか。
  384. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 宿舎等の施設につきましては、人員が殆んど、現在すでにアメリカ合衆国の軍隊としているわけでございますので、大体切換えられて行くということになります。費用としては役務に関する費用が殆んど全部を占めることになるわけであります。
  385. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  386. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 速記始めて下さい。
  387. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 資料一つだけお願いいたしておきます。それは、駐留軍の不法行為に基く請求の処理状況ですね、これに関する資料、明日提出して頂きたい。
  388. 福島慎太郎

    政府委員福島慎太郎君) 承知いたしました。
  389. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは本法律案に対する質疑は明日続行いたします。   —————————————
  390. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは引続いて防衛庁設置法及び自衛隊法案に対する一般質問を続行いたします。
  391. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 通産大臣にお伺いいたします。防衛庁法のうちに、四十二条に、国防会議のことが規定されております。そしてここで「国防基本方針」「防衛計画の大綱」「前号の計画に関連する産業等調整計画の大綱」というのがあります。この「産業等調整計画」というのも、これはまあ直接の、何といいますか、軍関係のことでなくて、いわゆる広義の国防に属することですが、当然今自衛隊ができることになれば、同時にこれが行われなければならんと思うのですが、まあ通産大臣兼経済審議庁長官として、この国防計画は同時に産業等計画を伴うものであるか、そしてすでにこの法律が通ることを予想してそれが前々から作業されていると思うのですが、この法律が通れば、その作業が一層進んで、近く産業等調整計画ができる見込みですか。
  392. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。只今御指摘の第四十二条にかような文言が出ております関係で、将来の経済計画或いはこれに関連する防衛計画というものが、この法律案が成立した後にどういうふうになるであろうかと、こういう御趣旨の御質問でありますが、私の考え方はそもそも防衛計画というもの自体が日本の経済力に応じたものでなければならないということは言うまでもございませんから、防衛計画というものは、例えば国民所得の充実でありますとか、国際収支の動向でありますとかいうような、我が国経済力の充実のテンポとも合せて行かなければならないものである、こういうふうに考えます。でありますから、政府としては、現在努力いたしておりまする諸般の経済対策を通じまして、経済の均衡を回復する、経済力の基盤を確立したい。そうして、その経済の均衡なり充実の成立といいますか、それとテンポを合せて防衛力の漸増を図つて参りたい、こういうふうに考えておりますので、只今のところ相当長きに亘つて防衛産業計画というようなものは現在のところ持つておりません。それから、この法律案通りましてから後におきましても、この法律ができたからというて、その面からだけ急激にこれが促進されることはなかろうと、こういうふうに考えております。
  393. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 この国防計画は、日本自衛隊だけの問題じやないと思います。というのは、この法案の審議をやつております際に、日本自衛隊は戦力でない、従つてどうも日本を守りきれんで、アメリカ軍が相当長い期間駐留するであろう。そこでアメリカ軍との間の共同行動という問題から、国防計画も同時にアメリカ側との協力という面が起つてくると思うのです。そうして、すでにアメリカのほうでは、一定の戦略に基いて日本防衛計画というものを促進するように、いろいろMSA援助その他図つておる。そういたしますと、アメリカのほうの考え方もありますので、これはこの防衛計画というもの、それに伴う産業等調整計画というものも、やはりアメリカ側とのいろいろと折衝なり或いは打合わせなり協力なりという形にならなければならんと思いますが、そういうふうに理解してよろしゆうございますか。
  394. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) その点は、ちよつと段階を分けてお考え頂きたいと思うのでありますが、例えば只今の御質問にお答えする場合に、参考のために、岡田さんよく御承知通りでございますが、例えば航空機に例をとつて見ましても、昭和二十七年の春から航空機に対する産業が起つたわけでございますが、その後現実航空機関係で仕事を日本の経済界がいたしましたのは、主として御承知のオーバーホール、修理の関係であります。これで大体千三百万ドルくらいのドル貨を稼いでおるのでありますが、その限りにおきましては、注文するものが在日の米空軍でございますから、そういう関係において、米空軍との間の折衝といいますか、商談と申しますか、そういうことが殆んど全部の仕事であつたということは言えると思います。併し、航空機の場合でありましても、例えば最近では保安庁日本予算で以て経費を支出をいたしまして練習機等の製作に当ることになつておりますから、将来だんだんにこの関係は現在の現実の事態と相当変つて参ると思うのでありまして、必ずしもアメリカとの間の連絡とか或いは総合計画とかいうことだけでは私はなくなつて来るものというふうに考えるわけであります。
  395. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 併し、MSAの援助によりまして、一千万ドルの小麦の贈与を受けて、その特別会計が今度できて、これが兵器産業等に行くことになる。又来年度も或いはもつと多額の贈与を受けて、それが使われるというようなことになる。こういうことになつて来ますと、この紐付の金はやはり向側と協力してやる、こういうことになるわけです。アメリカ側といたしましても、そういう見地から、日本のいわゆる防衛産業、兵器産業というものに一つの枠を与えて、そうしてそれの育成を図るということになつて来ると思いますが、それはまあ明らかに両国の国防経済計画といいますか、それが一つになつて進められる、そうして日本アメリカ側のいわゆる自由主義国家群の防衛計画の、産業計画の一部に組入れられる、こういうような形になると思うのですが、そうなりませんか。
  396. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) その点は、先ほど申しましたように、過去と現在とそれから将来と段階を分けて考えて我々おるわけでありまして、例えば今お示しの三十六億円の問題につきましては、これはしばしば予算委員会等でも御説明申上げました通り、私どもの今の考え方は、一つはJPAからの発注がどういうふうに確実に向けられるであろうということが一つ、それから保安庁が国内の経済力を利用してどういうものを具体的に発注するであろうか、これは非常に確定的にわかるわけであります。その両者を充足いたしますために、足らずまえの設備資金ということを中心に三十六億円の配分は考えております。従つて、JPAが今後一年間にどういうものに対して具体的な発注をするであろうか、又どういう会社の製品を希望するであろうかというような点については、米国側と十分これは話合をし、相談もして行かなければならないと思うのでありまして、こういう点では、只今お話の通り米軍との関係は非常に密接である、これは現実の姿だと思う。併し、これが将来長きに亘つてそうなるかというと、私はそうでないと思います。  それから仮に余剰農産物の代金の問題にいたしましても、できればこれは将来の問題としては、必ずしも防衛ということだけでなしに、もう少しほかの用途ということも考えてもらいたいというふうにも考えておりますが、念のために申添えておきます。
  397. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 この問題、将来について、アメリカヘの従属ということではなくて、日本の独自の計画アメリカから離れた日本の独自の計画を立てるんだというようなお話ですけれども、どうも私は実際問題から見て、なかなかそう簡単には行かない。そうして結局、MSAの援助を受けておる以上、紐付の国防計画、こういうことになると、こういうふうに考えるのです。これはまあ見解の相違として、あなたの御意見をお伺いしておきますが……。  次に、今保安庁におきましての武器は、殆んど主なものはアメリカから受けております。併し、今度自衛隊になりまして、今度の予算で、去年からもそうでありますが、警備船ですか、小型の軍艦なんかも発注を始めておる、こういうようなことになるわけですが、一体現在のところで保安庁関係の兵器のうち、どういうようなものが日本側の工業によつて供給をされておるか、それを伺いたい。
  398. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点は、具体的には保安庁のほうからも御説明をお聞き頂きたいと思いますが、私が申上げたいと思いまするのは、二十八年度の実績で申上げますると、これはまだそう大したものではございません。具体的に申しますると、一番多いのが空砲でございます。これが金額にいたしまして一億三千九百万円、そのほかは、火焔発射器が六千二百万円、それから発煙筒類、警備船の武器、その修理というような関係が九千九百万円、こういう関係が大口でございまして、大体納入済及び発註済のものを併せて、通産省でちよつとはじいてみましたところでは、二十八年度の実績が円の金額で三億五百万円、こういうような状況でございます。二十九年度の予算の実際の執行につきましては、保安庁のほうからお聞取り頂きたいと思いますが、例えば航空機練習機というようなものが或る程度新しく国内でこなせることになると思います。
  399. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 二十八年度は極めて僅かであつて、二十九年度も航空機としても大した問題ではないし、又艦船としてもこれは小さなものですが、昨日、木村保安庁長官は井野委員に対して、国防計画を立てる、大体五カ年計画にしたい、こういうようなお話でしたが、まあ長い計画は別といたしまして、ここ数年間の計画として、恐らくいつまでもアメリカから武器を受けておるということもできないでしようし、又望んでもおらんでしよう。そこでこの数年間にどういう兵器産業を育成しようということを、経済審議庁長官として、経済全体の上から、産業全体の上からお考えですか。
  400. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 只今お尋ねの点は、先ほど私お断りいたしておきましたように、実は机上の研究としてはいろいろの考え方をいたしておりますが、政府としてどういう程度のものになりそうかというようなことは、いろいろの関係もございますので、まだ十分研究が積まれておりません。併しながら大体の傾向といたしましては、一つは船の関係、一つ航空機の関係、それから一つは武器弾薬の関係、最後に火薬類と、大分けに分けて四つか五つくらいに分けられるだろうと思います。そのうちで只今お尋ねのところと関連いたしまするが、例えば艦艇とか弾薬、火薬というようなものについては、従来も相当域外調達の発註に応じておりまするし、日本といたしましても相当の設備がある。そこで問題といたしまして新たにに考えられる、又相当金も必要であるというような点で、計画上困難な問題であり、又他の産業とも関連の深いものとしては、私は私見としては航空機関係であろう、こういうふうに考えております。
  401. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 原子力兵器についてはどう考えますか。
  402. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 原子力兵器の問題までは率直に申しましてまだ全然研究はできておりません。先般来他の機会に御説明申上げておりまするように、先般の予算にも関連いたしまして、これから政府としても原子力全般の平和的利用について研究或いは取上げ方の検討を始めたわけでございまして、原子力兵器について只今のところ通産省或いは経済審議庁として取しておるものは全然ございません。
  403. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほど保安庁長官も原子力兵器の問題は考えていない、こういうことでしたが、それはそう確認してよろしうございますね。  次に、保安庁長官は電波兵器の問題に言及されておりましたが、この電波兵器の問題についてはどういうふうにお考えですか。
  404. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 電波兵器の問題につきましても、これはまだ私お答えするだけの資格がないのでございまして、率直に申しまして、これは基礎的な研究が先ず必要なのでございまして、それぞれこの技術方面の調査に当つておる政府部内の人々の間でも、いろいろの角度から基礎的な研究はそろそろ始めなければならんかと思いますけれども、全然まだ私としてもお答えができるような程度には至つておりません。
  405. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 航空機の問題について触れられましたが、現在ではもうプロペラによる航空機なんというものは時代遅れになつて来ておりますが、ジエツ・エンジンの問題はどういうふうにお考えですか。
  406. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 只今のお話のように、私も私見としては、航空機についてはもうプロペラの航空機は時代遅れだというふうに大体考えて間違いなかろうと思うのでありますが、つきましては先ほどもちよつと触れましたように、今後このジエツト・エンジンを中心にする航空機工業を日本でどういうふうに取上げてゆくべきであるかということが、当面の私どもの研究の対象に相成つております。これは御案内の通り最近航空機会社四社でもつてジエツト・エンジンの会社を作りましたが、これは共同して試作研究をするという目的で作られたものでありまして、二十九年度予算のときたもこれに対する補助金の問題も出て参りましたし、それから三十六億円の問題につきましても、そのうちから若干を割いてこの研究施設に当てるようにして行つたら如何であろうかという考え方も出て来ておりますが、予算のときにはまだそこまでの問題として取上げるに至りませんでしたし、三十六億円の問題にいたしましても、先ほど申しましたように、当面具体的にいわゆる域外発注を受入れる、それからその他の面で保安庁が発注確実なもの、これを受けとめる設備資金的なものだけでも相当の額が三十六億の中に占る関係もございますので、まだジエツト・エンジンに対する融資或いは投資というようなことが、三十六億円の問題についても結論を得るに至つておりません。
  407. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 何ですか、ジエツト・エンジンの四社による新会社の設立というようなことは、これは行く行くはいわゆる国策会社の形でやる、こういうお考えですか。
  408. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点は相当慎重に研究を要する点であると思うのでありまして、こういうものについては国有国営でやるがいいか、或いは民間事業でやるがいいかというような点についても、いろいろ検討はいたしておりますが、まだ最終的な結論を得るには至つておりません。現在のところは御案内の通り民間会社になつております。
  409. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 最後に一つお伺いいたしますが、今大部分の武器をアメリカから供給を受けております。ところで各国の例を見ますというと、供給を受けておるほかに、軍備を充実して行く場合に、武器の輸入ということが考えられていますが、この武器の輸入ということも今の日本の工業の段階ではやらなければならんとお考えですか。
  410. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほど冒頭に申し上げましたように、私どもの見解を以てすれば、国際収支の均衡確保をしたい、而も日本の経済基盤を充実したいということを日取先頭の問題に考えたいと思いますので、武器の輸入ということは差当りのところは私は考えたくない、私見でございますが、さように考えます。
  411. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 この点木村保安庁長官どうお考えですか、やはり武器はアメリカからもらうものはもらう、そうして輸入はしない、そういうふうなお考えですか。
  412. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その通りです。
  413. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 最後にこの国防計画は過日井野さんに長官からお答えになりましたが、国防計画の中にはまあ封鎖された場合のような問題もあるようですが、食糧の問題についてやはり国防計画の中に含めて行くというお考えですか。
  414. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 勿論食糧事情というものは国防計画を作る上において大きなデーターになるのであります。勿論それらについて大いに研究いたしたいと考えております。
  415. 戸叶武

    戸叶武君 経済審議庁長官に関連質問いたします。MSA受諾後において、日本の農業構造が兵器産業を中心として急激に変化をやはり作つて来ると思うのですが、今愛知さんは国際収支のバランスということを考え日本のこの経済体制を、崩さずに行くといつておりますが、イギリスの大蔵大臣のバトラーたちの心配した点は、とにかく再軍備的な体制というものを強めて行くと、どうしても平和産業を圧迫し、特に貿易に頼らなければならない国においては、その面が非常に圧迫されて行くから、その点はよく考慮しなければ、軍事力の急激な増大というものを受入れることはできないという立場で、イギリスの敗戦方針というものを進めておるようでありますが、そういう点に対しては、どういうようにお考えですか。
  416. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点は私率直に申しまして、今イギリスでバトラーが心配するような段階とは日本の現状はほど遠いと思うのであります。現実の状態はたとえて申しますと、先ほど挙げましたように、航空機のオーバーホールも勿論でありますが、そのほかにいわゆる域外調達に応じて数千万トン、七千三百万ドルぐらい、過去一、二年の間にドルの収入がございます。それに対して国内資本として投下された金額というものは大体今二十億円足らずであります。そういう点から申しましても、さつき岡田さんの御質疑にお答えいたしましたように、現在は非常に窮乏はいたしましたけれども、現在持つておる例えば弾薬とか、火薬とか、艦船を作るというようなものの設備は一応あるのでありまして、これを或る程度補強をいたしますれば、いわゆるライト・アーマメント等については私はかなりのこれは供給はできるのじやないか、その程度に今後の差当りの防衛生産というものは考えるべきであつて、その限りにおいては、その他の国民経済、これに非常な圧迫を加えるというようなことは私は考えられないと思いますし、又そういう考え方でこれからの計画を立てて行かなければならない、私はこういうふうに考えておりまする要するに、抽象論としては非常に大きな問題でございますが、実際具体的な問題となつて参りますると、私は今申しましたような線で今後物事が考えられるではなかろうか、こういうように私は考えております。
  417. 戸叶武

    戸叶武君 日本の工業力が戦前のように復活し、それから又軍需産業がああいう形にまで伸び上るとは思いませんけれども、併し日本の工業力の復活、又工業力の潜在勢力的な力というものに関心を持つているのは、やはりアメリカ並びに中共、ソ連だと思います。そういつた意味において、日本の産業構造というものが除々ではあるけれども、軍需産業の方向にだんだん力が強まつて移行して行つて、そうしてそれを中心として今の行詰つているところの日本の貿易体制というものも平和産業的な行き方ではなくて、軍需産業を中心とした域外買付や何かを狙つて、そうして東南アジアとの結び付を策するという方向に除々に転換して行つた場合に、東南アジア諸国はそれに呼応して、直ちに結び付く体制ができるという見通しの上に立つならば別でありますけれども、非常にそこには障害が起きて来、平和的な面におけるところの貿易も反撃を食らい、或いはアメリカ考えているように簡単にSEATOの体制というものが東南アジア諸国で翕然として作り上げるとも考えられないときに、そういうふうな形を、今はまだ初期的段階で問題にならない段階だといいますけれども、結局戦前、戦争のときに活発に動いた産業が、戦争に破れて眠つてしまつた。それを新らしく呼び起して、そうしてそれを盛り上げて来るというときには、私はやはり急激な形で軍需産業というものが盛り上つて来ると思うのですが、そういう点に対応して日本の今でも振わない貿易は、もつと振わない貿易になる危険性はないか、その点についての今度通産大臣としての立場から、愛知さんに一つ見解を披瀝して頂きたい。
  418. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) その点の御懸念に対しましては、私も御尤もなる御質疑だと思うのであります。併し私の考え方は先ほど来申しておりますように、防衛生産というものについては、あたかも日本の自衛力を着実に漸増して行かなければならない。その枠をこすようなことがあつては、他のほうに非常な影響があるというのと全く同じことでありまして、防衛生産について、今東南アジア諸国等が仮に現在のところで発注してくれるものがありとしても、今後の長きに亘つての経済単位としての日本防衛生産を考えます場合には、その先に起るべき問題を考えなければならない。で、そういう意味で、これは私先ほどから申しておりますように、将来に亘つて防衛生産について、まだ政府全体としてこういう年次計画でいたしますというだけのものでは、ございませんから、私の私見でございますが、これは確かに着実に又将来長きを見通して経済単位をこすようなことがあつてはならない、私はこういう信念の下に、今後の仕事をやつて参りたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  419. 戸叶武

    戸叶武君 愛知さんに対するまあ最後的質問ですが、朝鮮事変による特需によつてやつと日本の国際収支のバランスというものが保たれて来ておつたのに、日本政府財政金融政策の失敗からして、その間にイギリスなり、ドイツなりは自立的な経済態勢というものを或るところまで立てたが、口日本は立てずにしまつた、そうして大きな朝鮮事変が終つたということによつて穴が明いてしまつた、その穴を埋めるために、政府で言つておるような貿易振興というものでは間に合わない、いやでも応でもこれはMSA的な体制というものを受入れなければ、日本財政経済政策が破綻に瀕するという絶対絶命のところへ追いやられて、そうして今而もそれに伴つて日本の産業構造が急激な変化をして行かなければならないというのが、国内的に防衛法案にからまるところの日本の再軍備体制ということよりも、日本の産業構造が畸型的な発達をしなければならないところへ来ているので、これが日本自体の次の性格を私は決定付けられることになつて、これがアジア全体との共同繁栄の協力的な態勢に入つて行くのならばいいけれども、米ソ対立の中における兵器廠的な役割を日本がとつて、アジアの全体から孤立的なところへ追いやられて行くということは、今の私は自衛隊の盛上り以上に将来の日本に対して恐るべき影響が与えられ、そうして健全なる意味における日本の自主経済態勢というものは確立せられないで、アメリカに依存した、而も兵器廠的な性格を持つた畸型的な日本の産業構造の発達というものによつて日本が第三次戦争の危機に一番最初に追い込められる危険性が出て来るのじやないかと思いますが、それは思い過ぎでしようか。
  420. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 今戸叶さん思い過ぎという言葉がございましたが、私率直に言つてそういう感じがするのでありまして、これは先ほど来、縷々申上げておりますように、具体的な数字の上から御覧頂きますと、少くとも現在においては御懸念のような状態にはなつておらんと思います。それから当面しばらくの間もそういうような虞れはないと思うのでありまして、朝鮮事変のお話が出ましたが、先ほども申上げましたように、鉄砲弾であるとか火薬であるとか或いは船であるとかは、たまたま荒廃したけれども、残つた設備が外国からの発注に応じ得る態勢にあつたので、今後においても我が国を守るための自衛隊相当量のいわゆる武器その他の装備を必要とする限りにおいて、これはできるだけ日本の国内で自弁をすべきものだと私は思うのでありまするが、そういう考え方で行きます場合に、今の程度のものがその範囲内で、即ち将来の目標としての他国の武器を兵器廠として作る、そういうために防衛産業をうんと起すというのじやなくして、外国から武器を輸入しないでも済むように、少くとも平常な自衛隊が所要するものは小じんまりと日本の国内において支弁すべきものである、こういうふうに考えるのですが、それすらも今できていない。たまたま、朝鮮事変において役立つたものが、その中の一部として今後日本の自衛のために役立つものである、こういうふうな計画を私はいたしたいと考えております。
  421. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) ちよつと速記やめて。    〔速記中止〕
  422. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 速記をつけて下さい。  では本日はこれで散会いたします。    午後八時五十四分散会