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1954-03-09 第19回国会 参議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月九日(火曜日)    午前十時三十六分開会   —————————————   委員の異動 三月八日委員上原正吉君辞任につき、 その補欠として愛知揆一君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小酒井義男君    理事            竹下 豐次君    委員            井上 知治君            白波瀬米吉君            矢嶋 三義君            松本治一郎君            山下 義信君            野本 品吉君   衆議院議員            松前 重義君   政府委員    総理府統計局長 森田 優三君    行政管理庁統計    基準部長    美濃部亮吉君    行政管理庁管理    部長      岡部 史郎君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○統計法の一部を改正する法律案(内  閣提出) ○科学技術庁設置法案衆議院送付)   —————————————
  2. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは只今より内閣委員会を開会いたします。  先ず統計法の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引続いて質疑を続行いたします。  前回質疑をされたかたがあると思いますが、実は私前回委員会に欠席をしましたので少し重複する点があると思いますが、五年ごとに従来続けて来たのは、やはり必要があつてやられて来たのだと思うのです。十年ということになるといろいろな点で少しこの調査の期間と言いますか、それが長過ぎるような気がするのですが、予算面では確かに十年にすれば二回やるところを一回で済むと思いますけれども、それでいろいろな国政の運営上に何か支障を来たすのではないかというような気がするのですが、そういう点について一つ美濃部統計基準部長から御説明が願いたいと思います。
  3. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) 只今の御質問お答えいたします。大体経済社会が安定しております国では十年ごとに、国勢調査と申しますよりも人口調査をいたしますのが統計上の殆んど常識になつておりまして、英米独すべて十年ごとで、その間に簡易調査もいたさないのが原則でございます。それで日本もこの経済社会情勢が本当に安定いたしますれば、私は英米並に十年ごとでいいと思いますが、まだ日本状態はそこまでは行つていないというふうに思うのでございます。ただ終戦直後のように非常に激動している状態から比べますれば、もうよほど安定しているということがいえますので、経済社会の非常に安定をしております諸外国終戦直後の激動期との中間をとりまして、大規模調査は十年ごとにしてその間の五年ごと簡易調査をするというふうにきめるのが一番適当ではないかというふうに思うのでございます。それでは五年ごと簡易なものをするだけでは、今の委員長お話ように、行政の運営上差支えあるのではないかという御疑問でございますが、行政上一番必要なのは例えば選挙であるとか或いは平衡交付金交付のための基礎資料であるとか、そういつた府県別或いは市町村別男女別年令別人口というものが一番行政上に必要になつて来るのでございますが、これは当然五年ごとの中にとらえますので、今まで通り五年ごとに出て参りますわけでございます。次に必要性の高いのは産業別及び職業別人口でございますが、これは勿論今それを必ず含めると申上げることは、そのときの情勢によつて変り得ると思いますが、その中でも必要な産業別人口というのは当然含まれて差支えないと思うのでございます。併し勿論産業別職業別はそのときの行政上必要がありますれば当然五年ごとの中に含まれても少しもおかしくない項目だと思います。そのほかは例えば失業関係であるとか或いは婦人妊よう力の問題であるとか、或いは住居の関係であるとか、或る場合では事業所関係であるとか、こういうものはむしろほかの調査で毎年或いは毎月の数字が出ておりますのでありまして、妊よう力なんかは別でありますけれども、これは行政上の直接の資料と申しますよりも日本経済社会の分析の資料となるものであり、それほど急激に変るものではございませんので、大体において十年ごとというふうにとつて差支えはないと思います。併しながら或いは非常にそれが行政上特に必要になる、例えば人口の過剰が非常な問題になつて来て、そうして例として或いは不適当かも知れませんけれども産児調節を国として根本的にやらなければならない。そのために婦人妊よう力をどうしても調べなければならないというふうな情勢に当面いたしますれば、それを簡易調査の五年ごとにつけるということも少しも差支えないわけでございまして、大体において落すと今考えられます項目も、そのときの行政上の必要から又財政が許しますればつけるということは一向差支えない問題でございますので、今度のように変えましても差支えはないものと私は考える次第でございます。
  4. 山下義信

    山下義信君 私も一つ伺いたいのでございます。御提案の理由説明の中にいろいろの行政簡素化に伴うて考えた。それから又いわゆる国費の節約と言いますかそういう面からも考えたのだというような御説明があつた。この法律改正してこういう措置をとることの利益というようなことについては承わらなかつたように思う。できれば現在のままのほうが国のためには利益になるのではないかと素人考えるのですが、こういうことに改めることが、この改正によつて、大規模国勢調査を先に延ばしてその中間に小規模調査をするほうが国のために利益になるのか、現在のままのほうが費用さえいとわなければいいのかということが、私にはまだはつきり前回並びに先ほど委員長との質疑応答の中に納得ができない点がある。それでその点を伺いたいのですが、私は素人としての考えでは、従来しばく大小調査なつた。併し時期的に見ると言うまでもなく我が国の諸情勢激変激動時代、そういう非常な激変なときの統計を取るという仕事それ自体が重大であると同時に、それらの統計は或る時期を経過すれば非常に変化をして来るということもいなむべからざることなんです。若し真に何と申しますかこういう国勢調査の目的を達しようとするならば、終戦後およそ十年近い今日の段階から見ますとやや諸情勢が安定したと思われる現在の調査の結果こそ非常に私は価値があつて、注目すべきものが期待できると思う。而も私どもとしましても、実は至急に大規模国勢調査をして頂いて、先ほど美濃部さんが御指摘になられておられたような、いろいろ政治の上に反映してみたいというような、諸政策をとる基礎的な資料もできるだけ早く入手しましてそうして日本政治の根本的な検討というか、構想というか、而も科学的な基礎の上に立脚した諸方策を一遍考え直してみるということのためには、非常に早く詳細な大規模国勢調査を必要としている時期に当面していると私は素人で思う。併し統計学者統計専門家が、いや当分まだその必要はないのだ、そんなことはもつとずつと先でいいんだ、この際そんなことの経費を入れてもそれは損だという、良心的に考えてそれでいいんだということでありまするならば、本員など素人専門家の御意見を尊重いたしまして賛意を表するにやぶさかでないのですが、私自身の思うのにそうじやないのじやないかと思う。実際の統計学者といいますか、統計専門家の権威あるあなたがたの立場から見れば、もう胸がわくわくして手がうずうずするでしよう。この日本国勢調査、一日も早く経費が許すならばこのよう調査をやつてみたいという意欲を、私は非常に感じておられるんじやないかという気持がするのです。然るに極めて理由の薄弱なことを理由にされて行政簡素化ということは私はその意を解することができません。経費節約ということも私には納得ができない。一兆円の厖大な経費の中からこれらに要する二、三十億の経費国勢の伸張のためには極めて微々たるものだ、而も最も効果の多い経費でありまして、惜む必要が私は寸毫もないと思う。百五十億も二百億も不得要領な汚職関係に投じますることから考えてみますると、二十億でも三十億でも私はそういうような些細な金で立派な調査ができるならば、我々のほうから進んでやつて頂きたいという気がするのであります。恐らく私はそうでないだろうと思う。私が伺いたいのは、ややともいたしますとこういう統計的な仕事軽視いたしている。近来一部においては政治科学化ということを叫ばれておりまして、これらの諸統計というものが尊重される傾きのごとくに見えている、或いは占領政策の当時は向うさんの強い示唆等もありまして相当強く出て来たかと思うとすぐこういうふうに後退逆転をする、日本人の実に悪癖なんであります。私ども素人でありまするがひそかに統計関係者立場については深く、何と申しますかお気の毒に考えている。然るごとくに統計行政の拡大をひそかに私どもも望んでいるのであります。委員会制度等がありました当時は多少喜んでおりました。殊に大内博士ようなかた又美濃部さんのようなかたがたが専心これに当つておられることを感謝しておつたのであります。いつの間にかこれがだんだんだんだんと軽視されて、自由党のかたぞれには気の毒でありまするけれども、現政府に幾多の悪政がある中に、こういうふうなことを軽視することは悪い中の顕著な一例であると思うのであります。殊に政治の上に総合的計画性のないことは自他ともに周知しております。経済等についての計画性というものを尊重しない現内閣というものは、とかく統計的な、基礎的な仕事をややもすると閑却軽視をいたす。質問でありますから意見を省略いたしますが、率直に言つてこれはあなたがた専門家がこれのほうがいいんだというのでなくして、政府の一部から迫られてこういうようにして少しでも経費を減少しようという、その都度の便宜主義から出て仕方なしに私はそこで御答弁なすつていらつしやるんだろうと思うのであります、でありまするから弁解を承わつておりましても、これが天下に聞えた有名な統計専門家の御答弁とは受取られん、ただこの改正案を出すお座なりの御答弁ように私どもは聞えてならんのであります。でありまするからそういう意味で実際このほうが国のためになる、当分調査の必要がないのかどうか。私の観点とあなたのお考えと、私のほうに誤りがあれば御指摘を願いたいと存じます。改めて本当のそれについての御意見を承わりたいと思います。それでそうでなければただ単にこの一応の改正案である、その底にひそんでいる統計というものに対して軽視するそういう政治の悪弊に対しては私どもは断固として抗議を言わざるを得ません。重大なこれは法律案であるという考え方をもちまして、相当どもは検討しなければならんという気持がするのであります。ただ一片の簡単な改正案だから今日でも採決してすうつと通せばいいじやないかというようなものであるが、そうじやないという気持がするのであります。御所見を承わりたいと思います。
  5. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) 只今の御質問お答えいたします。第一は国勢調査という名前国勢に関する調査というふうになつておりまして、国勢全体の調査よう考えられますが、これは国勢全体の調査ではなくして完全た人口調査、いわゆるポピユレーシヨン・センサスでございます。これは名前内容がそぐわないのでありますが、最初に人口調査をしたときに殆んどそれが日本唯一統計調査であり、それが国勢全般を知る殆んど唯一資料になりましたのでこういう名前がつけられて、その後その名前を尊重して今日に至つているわけで、そこで国勢調査とは申しながらこれは完全な人口調査であるということを、多少誤解を招きやすいので一応申上げておきたいと思います。  そこで次に日本統計全般の問題でございますが、国勢全体をつかむための日本統計と言いますものは、現在の段階においては人口調査はそのうちの一つの何と申しますか、部分になつておるわけでございます。勿論人口も非常に重大ではございますけれども、そのほかに今日においてはこの人口調査国勢調査と呼ばれていた時代にはありませんよう工業調査も毎年行なつておりますし、農業調査も五年ごとに行なつておりますし、事業所調査も今年行いますし、商業調査もいたしますというふうに、経済が発達するに従つてこの経済関係のほうのセンサスが非常に発達して参りまして、そうしてそれに人口調査が一枚加わつてそれから毎月々々行なつて参ります多くの調査が合体して、そうして国勢を判断する統計資料が作成されるという段階になつているのでございます。それで勿論統計というものはどういう統計でもたびたびやるにこしたことはございませんし、それから又悉皆調査と申しますか対象を全部つかむ方法と、最近は抽出方法とございまして、それは悉皆調査はあらゆる調査においてするほうがいいには間違いございませんけれども、併し何分にも統計調査というのは非常に金のかかるものでありますから、それを利用する点において許し得る範囲内にとどめて、そうして経費節約しながらできるだけ多くの面について統計資料をとつて行くという一番科学的な合理的な方法考える必要ができて来ているのでございます。車に又最近は国民所得の推計とか又はインプツト・アウトプットと申しまして、全体の経済の各産業部門の問題の資材の交流がどういうふうになつておるかということを一表にまとめます技術とか、そういうふうに国勢を判断いたしますために非常にたくさんなことをしなければならなくなつて参りましたので、そのためには非常にたくさんの経費が理想的にすればかかるということになつて参つたのでございます。勿論日本統計水準外国に比較いたしまして非常に優れているというふうには申せないと思います。併しながら私は率直に言つて日本統計水準として非常に優れているうちの一つの国であるというふうに確信を以て言うことができると思います。併しながら又一方において非常にいろいろまだ不合理がある。しなければならない而において抜けている。何と申しますか、統計体系におけるギヤツプがまだたくさんあると同時に、又相当重複もございますし、それから又いらない面に金をかけ過ぎているという点も非常にたくさんあると思います。それですから今の頂いております統計調査経費でもつと合理的にそしてもつとなさなければならない仕事はたくさんあると思います。それでそういう仕事を大体基準部ではやつておるのでございまするが、ただいかにも残念なことには今の官僚全体の組織から申しまして、こつちで節約したからその金はこつちへつけてくれと、ここは要らないのだから節約するからこつちが必要だからこつちにつけてくれということが言えないで、節約すれば節約しつ放しになつてしまうという点が非常に残念でございますが、併しその点もだんだん大蔵省も考えて来て頂いて、一方において節約すれば一方において必要な調査も新らしくやり得るというふうなこともだんだんと可能になつて来ているのでございます。  それから更に、それでありますから、人口調査といたしましては、私は、確信を以て大きい調査は十年ごとに、それから簡易なる調査、これは場合によつて簡易意味というのは大きくもなる、先ほども申しましたように大きくもなり小さくもなりますけれども、併しながら比較的簡易なる調査は五年ごとにするというので、人口調査としては今日の日本から見て十分であるというふうに確信を以て言えると思います。そうしてこれは私たちだけできめた問題ではございませんで、大内先生委員長とし、中山伊知郎氏、有沢広巳氏、東畑精一氏その他各省の代表から成つております統計審議会にかけましてやはりデイスカツスいたしまして、そしてやはり日本の現状としては人口調査はこういうふうに改正するのがむしろ合理的であるという結論を出して、私のほうもその御意見に従つたわけでございます。それでありますから、これをこういうふうに変えたからといつて統計行政或いは統計軽視なつたとは私は申せないと思いますし、又これがこういうふうに変りましたからといつて日本国勢経済社会情勢をつかみます科学的な統計資料がこれによつて不足するという虞れも万々ないものと思います。
  6. 山下義信

    山下義信君 私は国勢調査というものがこの文字にとらわれてその内容国勢全般に亘る調査であるとは誤解いたしておりません。素人でありましてよくわかりませんけれども、およそどういう調査であるということは大体は承知している。それで併しながらただ人口調査といつても簡単な、厚生省あたりでやつておりますようなああいつたよう人口調査でなくして、国勢調査の上における人口調査というものは相当、ただ人口の数だけでなくいたしまして、それ自体もつと大きな内容を持つておることを了承しておりまするからお尋ねする。それで私の質問の中にこの種の国勢調査をするのには最近のこの時期が非常に我が国の上において必要な時期ではないかと、こうお尋ねしたのでありますが、それに対してのお答えがない。専門的に御覧になりましてその必要はないというお答えでありましようか。つまり従来の調査資料と何らの変化はない、古い統計使つてつて、ここ三年五年は一向差支えないかような御見解でありましようか。その点の一つ答弁を頂きたいと思います。
  7. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) 只今の御質問に御返答いたします。簡易な形ではございますけれども国勢調査は来年やることになつております。それでこれにまだどういう項目が含まれますかは勿論決定しておりませんが、調査上直接に必要な地域別年令別男女別等人口調査は勿論のこと産業別人口も恐らくは当然これに含まれることと思われます。更に今度は失業関係がこれに関連してこの前は調べられましたけれども失業関係調査労働力調査によつて毎月出ておりますから特にこんど調べませんでも、その数字は十分出ております。それからこの前は住宅関係を調べましたが、住宅関係センサスは昨年度別にいたしましてもう統計局のほうで結果が出ておると思いますが、これも来年度直接にもう一度やる必要は毫もないものと思います。それから引揚者の問題も引揚は一応終りましたのであとは引揚げて来ます人数をそれに足して参りますれば、大体引揚者の根本的な資料というのも整つておりますので、これは恐らくは必要ないと思います。それで簡易とは申しましてもそういうふうに一々の事項をそのときの情勢と照し合せまして、これはこういう資料があるから要らないとか、これは現下の情勢から特に必要であるから調べようというふうに慎重にその項目を考慮しながら落すものと入れるものとをきめて参りますし、それには只今申しました統計審議会にもかけまして十分にデイスカツシヨンをしてきめて行くわけでございます。私が申上げられます限度は、来年度やります国勢調査においては、昭和二十五年度にやりましたあの世界セシサスの一部としてやつたほど、あれほどの大規模なものは要らない。これよりは相当部分項目を落した簡易なる形でよろしい。そしてそれは今申上げましたように、相当部分のものは独立なセンサスとして、或いは独立な調査として行われている。そうして十分信頼すべき資料は入手できるということが主な理由になつております。
  8. 山下義信

    山下義信君 専門家がそうおつしやいますれば、我々は専門家のそういうお考えを御信用申上げるほかはないと思います。要するところ所定の国勢調査をする必要があるかないかという結局論争になるわけなんですけれども、併し簡易国勢調査もその内容においてはやり方によつて相当効果的なものが期待できるということであれば、又問題はその調査内容方法如何によるわけでありますが、只今予期されております今のお話よう調査内容昭和三十年度にやる簡易国勢調査の諸費用は、前回お話が出ましたか知りませんがどのくいの予算が必要であると考えておられるのでしよう
  9. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) 今はつきりとどのくらいと申上げることはできないと思いますが、若し現在昭和二十五年度と同じ大規模調査をいたしますれば、恐らくは二十五億から三十億の間かかるだろうと思います。これを簡易な形でいたしますと何よりも省けますのは一一調査員当り受持対象数を多くすることができますことでございまして、勿論このほか集計からも経費節約が出て参りますが、私は大体その約半分十億から十五億、或いは十億前後というところではないかというふうに大体推定しております。これは勿論はつきり申上げることはできませんのですけれども
  10. 山下義信

    山下義信君 大体わかりました。私はこの統計関係仕事が、何と言いますか統計行政と申しますかの仕事が非常に後退させられる傾向があるのだということについては、今の御答弁によると、いやそんなことはないのだということである。それならば安心をいたします。  なおこの美濃部さんのお話の中で、最近いろいろな統計があるので、抽出統計ようなことを盛んに各種のことをやつておるので、まあ大体の大綱はわかるから不便はないということでありますが、私ども素人でわからんので、数字になつていろいろな報告が来るとそれを信用して使うのですが、実は率直に申上げてこれはいつか一遍おひまな時分にお講義を聞かなければなりませんが、抽出統計というものの性格というものが学問的にどんなものか知りませんが、ときぞれ使つてみて非常に誤差がある。例えば雑ぱくなものですけれども、この抽出統計やり方もいろいろありましようけれども戦死者概数がつかめないのですね。百八十万といい二百万といいいろいろ言う、百五十万とも言う。ここに野本君がおられますが資料が焼けて正確なものがない。そこで仕方なしに抽出統計をやつてみて百九十万という推定数というものが何千何百人まで出る。その抽出統計をやりました。今度は各府県全体或いはいろいろ厳密に調査をいたしてみますると非常な誤差が出て来る。それで私は抽出統計便宜でそれで推計して、非常なとんでもない違いのものは出て来ないだろうと思いますが、最近は皆多くそれで間に合してやつてござるのであります。私ども実際に使わせて頂いたものでは意外に誤謬を見ることがあるわけです。そういうことがあるということだけを一例を申上げて御参考に資するわけであります。
  11. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) ちよつと御答弁いたしますけれども、今の戦死の問題は恐らく私の推定抽出統計から来る誤差でなく、戦死者をとらえるとらえ方の調査から来る誤差のほうが多いじやないのでございませんか。これは理論的には非常に確かでございます。例えば国勢調査でも人口数概数調査したものの百分の一だけを集計するとか、十分の一だけを集計するとか、国勢調査の結果も抽出調査じやございません。集計抽出をいたしましたけれども、これは抽出したものと全数集計したものと殆んどぴつたり合つているのでございます。それですからしてその戦死者の場合は恐らくは抽出誤差よりも戦死者がどのくらいであるかということをつかむ調査が非常にむずかしい。その調査誤謬のほうが多いのじやなかろうかというふうに推定いたしますが。
  12. 山下義信

    山下義信君 それはそうでしよう調査方法がむずかしくて、そこにいろいろ手違があつてそこから来た誤謬でありましよう。ありましようけれども、そういう調査資料抽出統計方法なるが故にということも言えるのでありまして、委員長、私は先ほども申上げましたように、この改正法律案は至極簡単でありますが、我が国統計行政というもののあり方に関係いたしまして、私どもではこれは相当考えなくちやならん、決して軽々にこれは取扱はできないという感じを持つのであります。従いまして委員長を通じまして政府から資料を出して頂きたいと思うのであります。  実は平生の勉強が足りませんのでよくわからないのでありますが、今の政府統計行政の機構仕事がどういうふうな状態になつておるか、どういう統計が現在とられつつあるか、各省にまたがつてそれを美濃部さんのほうでどういうふうに整理しておいでになるかということのわかるような、現在の何と申しますか、お仕事状態のわかるよう資料一つ出して頂きたい。そうしてどれだけの経費政府がそれに投じているか、そういうものを一つ資料として御提出を願いたいと思うのであります。それで各省にそれぞれ統計関係仕事を持つてつて一遍それを一カ所に集めようというような御議論もあつたりしていろいろ御検討があつたようでありますが、今どういうふうになつておるか。政府統計事務に関しまする勉強がわかるよう資料を御提出願つて、然る上でこういう改正をなさつても国の政治の上において不利はないということの納得が行きましたならば、議事の御進行を願つてよいと考えますので、資料の提出を委員長から御請求を願いたいと思います。
  13. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) 承知いたしました。
  14. 野本品吉

    野本品吉君 先ほどお話の中で来年人口調査をする、それから今年は何をするというようお話がありましたが、今までの実際からいつて農業、工業、商業各部門というのはそういうように今年は何をやる、今年は何をやる、こうやつて来ると……。
  15. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) 法律にきまつておるのはこの人口調査だけでございます。そのほかのものは各省の規則できまつております。併しながらこれは大蔵省の予算関係で必ずしも規則できまり私たちが期待しておるように行きませんで、例えば今年のごときは農業センサスをする五年ごとの年に当つておるのですがこれは落ちまして私は非常に残念であると思います。殊に日本ような農業国であり食糧が非常に緊急問題になつておるときに、五年ごとの農業センサスが行われなくなつたということは非常に残念に思われます。私のほうでそういう基本的なセンサス法律で何年ごとにするということをきめようという試みをたびたびしたのでございますが、今までのところそれは実現しておりません。
  16. 野本品吉

    野本品吉君 そうしますと農工商、今お話になりましたような各部門の統計調査というのには国全体としての総合性と申しますか企画性、計画性がなしに事情の許すときに思いつきでこうやつているということですか。
  17. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) それはそうではございません。私ども行政管理庁の統計基準部が今では法律のほうの法制局のようなことになつておりまして、殆んどすべての官庁の行います統計は私のほうの承認が要することになつおりますから、各省ばらばらにいたしませんで全部一応私のほうに承認を求めて来るわけでございます。それで私のほうでこれはこう直したほうがいいとか、或いはこれはやめたほうがいいとか、これは必要がないとかいうことを言つて承認をしたりしなかつたりするわけでございます。それから更にこれは大蔵省のほうと一種の紳士協約を結んでおりまして、統計予算は一応私のほうでまとめて審査をいたしまして、そうして意見をそえて大蔵省のほうに出して大蔵省のほうは大体においてそれに従つてくれますけれども、併し何もそれに縛られるものはございませんから、今のように私たちのほうで希望しているものを大蔵省で落されるということもあり得るわけでございます。それでありますから全然野放しではない。ところがほかの政策面よりはよほど強力に統制されているわけではございますが、併しそれでもときぞれそういうことができるというわけでございます。
  18. 野本品吉

    野本品吉君 まあ一昨年は農業をやつた、去年は工業をやる、今年は商業をやる、来年は人口調査をする、そういうことで各部門の調査統計の時期が食い違つておると、或る時における日本国勢全体というものを総合的に把握することができないという結果になるのじやないでしようか。
  19. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) 非常に痛い質問でございましてその通りなんでございます。それでアメリカなどは工業はちよつと別ですけれども農業、人口、住宅その他のセンサスを同じ時期に行なつているんでございます。それが一番いいんですけれどもこれは行政上非常にむずかしい問題でございまして、センサス相当規模なものでございますから事務量が非常にフラクチユエートするわけなんです。それを割合にこう平均しませんといけませんので、アメリカのようセンサスをするときには人を雇つて済むとすぐもう解雇するというふうなことができませんので、割合にならさなければいけないということもあるわけでございます。それから農業は今年本当はするはずでございまして、人口センサスが来年でそれから工業は比較的お金もかかりませんので毎年やつております。それでありますからまあ一年ぐらいのずれでございますからぴつたり合わないでもほぼ対照することはできる。それから来るそれほどの差支えはないんじやないかというので、まだアメリカのようにぴつたり期日を合わせるところまでは日本では行つておりませんです。
  20. 野本品吉

    野本品吉君 そうしますと同一の時期に調査のできないという結果として、或る時における国勢の実態というものを最も確実に把握することは、今の統計のやりかたではできないということでございますね。
  21. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) センサス資料基礎にしてはできないということでございますね。併しセンサス資料を次の年に延ばすようないろいろな毎月調査は行なつておりますから、主なデータにつきましては必ずしも全部かできないというわけではございません。併し御意見通り理想といたしましてはこういうセンサス一つの時期にやりましてそうして同じ時期において全面的に俯瞰できるセンサスをやるというのが私も理想的であると思いますし、できるだけそういうふうにしたいと思つておりますが、まだ残念ながらそこまでは行つていないというわけです。
  22. 野本品吉

    野本品吉君 それは私自身もそうですが、日本の国民は一般に数字というものに対する非常に関心が薄い。従つて統計その他によつて自分の生活設計、或いは自治体、国の設計というものを考える方が非常に少いということが実は言われていると思うのですが、そういう点について統計というものが、個人でも団体でも国でも特に一般の家庭等においても設計を立てる上の大事なものだといつた統計思想の普及といつたようなことについて何かおやりになつたことがありますか。
  23. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) いろいろ試みております。それでまあそのうちで一番効果が上つておりますのは私達の考えと申しますか、大体そういつては何でございますけれども大人に今更言つてももう駄目だろうと、勿論必要でございますけれどもそれよりも子供にしつかりと統計的にものを考えるあれを植えつけるのが一番必要ではないかというので、中小学の統計教育に一番方を注いでいるわけでございます。その点で一番成功しておりますのはグラフを書く教育が非常に進みまして私のほうで毎年一回全国的にグラフのコンクールみたいなものをいたしておりまして、それは非常に優秀なものが出ております。勿論見て明かに先生が書いたと思われるものもたくさんございますけれども、併し子供が自分で本当に考えて書いたような実にほほえましいようなグラフもたくさん出て来るようになつて参りました。そういうふうにして数字に親しんで行くということが非常にいいと思うのでございます。それから各県では統計協力学校というのを作つておりまして、これは私たちのほうで奨励して主に県でやつているわけでございますけれども、協力学校で統計教育に特に力を注ぐ場合にはそういう専門的な先生を一人増してやるというふうなことをやつておりまして、この統計教育学校における統計教育というものも意外に進歩して参りまして、どのくらいになつておりますか今数字は覚えておりませんけれども全県で相当実行しております。それでございますからだんだんとは行くだろうとは思つておりますけれども、すぐにどういう効果が上るという問題ではございませんので、今後ともできるだけそういう面では努力を払いたいと思つております。
  24. 野本品吉

    野本品吉君 もう一つ伺います。いろいろな統計調査をしますときに、末端の人たちのこの調査に対する協力、努力というのはなみなみならんものがありますことは私どもよく知つております。ところがそれによつてでき上つた結果というものは官庁のいろいろな仕事、企画その他に利用される程度のものになつてしまつて、本当に骨を折つた末端の人たちの生活に、皆が骨を折つた統計の結果からみて農民はこういう点に、商工業者はこういう点にという、そういう統計調査の結果を末端の一般国民大衆の日常生活の上に役立たせるといつたようなことの配慮が今まで足らなかつたと思うのですか、どうでしようか。
  25. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) 先ほど日本統計水準が各国に比較して劣つていないと多いにえばりましたけれども、それは統計を作るほうでは私はほかの国々にそう劣つていないと思うのです。併し今の利用するという面になりますと、私は日本は非常に劣つていると思います。それでこれはもう何とかしなければいけないというように、大内先生も私もいつでも考えているのでございますけれども、第一にはその出版関係が悪くて国民の全体に行渡るだけの印刷は安くできませんでごく限られた部分にしか行渡らない、アメリカのようにプリンティング・オフィスに行けば統計資料は全部一覧できて非常に安く手に入れるというふうに何とかしたいと思つております。この点はまだ日本統計において非常に遅れている点でございまして、この結果の発表は今までのところ全然統制がないのでございます。各省が自分たちで自由に発表しておりましてその間には重複がございまして、同じ数字が恐らく調べてみましたならば非常にたくさんの度数発表されておると思います。そうしてそれの割合には今申しましたように全国民に行渡りますような形で出版されておりません。併しまだそれだけでなく一般にもう統計はつまらないという声がありますので、相当そんなに高くない定価を付けて売出す場合があるのでございますが、日本の国民は統計的な素養がございませんのでもう非常に限られた部数したか売れないで、定価をつけますともう全然採算が成り立たない。そうかと言つて只で出しますにはそれはもう経費が足りない。それですから別な面から言うならばやはり国民が統計をどうしてもほしいという熱望が一般化しますと情勢はよほど変つて来ると思います。非常に熱心なかたがあるのでございますけれどもそれはほんの僅かな人数で、そういうかたは多少金を払つてもいいから一般の本屋で売つてくれと申されるので、そうしますと、本屋はもう大損害をこうむつてすぐ駄目になつてしまうという情勢で、どつちにいたしましてもその点は非常に遺憾な点がまだ多いのでございます。
  26. 野本品吉

    野本品吉君 私は農村に生活しておりますが、農業センサスというような場合に、地方のその係りといいますか委嘱された者は忙がしい田植も捨ておかいこも捨てて、人に任せてまで協力しておるのですが、ところがその協力の結果としてできた農業統計というようなものが、そういう方面に協力をしてもそれだけで戻らないのでずね。あなたが今おつしやるような国民一般にその統計に対する何と言いますか関心が浅いというのは、やはりそういうことをしないから浅くないるのじやなか。もう自分たちが骨を折つた結果はどうなつたかということについては非常に期待をかけている。そういう形はやはりどういう形ででも、簡単なものでもいいから返してやる、そうしてその人たちが丁度調査のときに骨を折つたよう統計思想の普及に協力してくれる、こうなるのじやないかと、私は地方の人たちのあの忙しい中で、私自分の生活を犠牲にしてまでも協力している統計の結果というものがどういう形でかあの人たちに戻されることが、地方統計というものが地方の大衆の生活の上に活かされて行く大事な点じやないか。まあそう思うので、そんなようなことをお考えになつてやろうとするようなお気持はございませんか。
  27. 美濃部亮吉

    政府委員美濃部亮吉君) その点はたびたびそういう声を聞きますので、もうでぎるだけやるように各省に勧めて相当やらせていると思いますけれども、何しろ例えば国政調査ですと三十何万人も調査員がおりますので、それに全部行渡るということまでは恐らくまだ行かないのじやないか。農業センサスになりますと、今私、調査員がどのくらいの数か覚えておりませんけれども何万でございましよう。なかなか行渡らないのじやないかできるだけ行渡らせるようにしたいので、自分が折角やつてその結果がどうなつているかわからないのでは、もう全然骨折損という声を聞きますので、できるだけそういうふうにするように努力しておりますが、なかなか思うよう参りません。
  28. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  29. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 速記を始めて下さい。  それでは本法律案に対する質疑は次回に続行いたすことにいたします。
  30. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 次に科学技術庁設置法案衆議院議員松前重義君ほか七名提出を議題といたします。  私から松前さんにちよつと二点ばかりお伺いをしたいと思いますが、実はこの法律案について私どもの聞いている反対意見の中に、これは以前の技術院の復元でないかということを非常に懸念して反対しておられる意見があるようであります。  もう一つはこの科学技術庁を作ることによつて、それが主として再軍備のために利用せられると言いますか、利用する意図を持つているのではないかという意見なんです。そういう点が一番私ども耳にするところなんですが、発案者としてそうでないんだということであつたら一つ説明を願いたいと思います。
  31. 松前重義

    衆議院議員(松前重義君) 只今の御質問は最近私どもの耳にも伝わつておりますることであります。即ち技術院の復元である、技術院というのは戦争中に当時の戦争技術の向上に対して努力をした役所であります。而も余り効果を現わさないで終戦後解散になつた役所であります。これらの復元ではないかという一つの懸念に対しては尤もな懸念であると思われます。従つて只今の二つの疑問の第二の問題、再軍備のためにこれが利用される虞れはないか。この二つの問題は大体同じよう意味を持つているものであると思われるのであります。何となれば技術院が戦争遂行に必要なる技術向上の役所であうたのでありますから、当然そのような疑問を持たれると思うのであります。そもそもここに科学技術庁を提案いたしましたゆえんのものは、この提案の法律案の第三条の一に書いてありますように「科学技術に関する総合的且つ基本的な施策を企画立案する」ということであります。抽象的な文句でちりますけれども二の科学技術に関する総合的且つ基本的な施策の企画立案は、曾つてのこの技術院にはございませんでした。曾つての技術院の向つておりました方向は航空技術の発達を中心といたしておりましたので、航空だけについてこの技術院が所掌して行くという形になつておりまして、一般の科学技術に関してはこの技術院はタッチすることを許されなかつた役所であります。従つて当時たち遅れておつた航空技術を重点的に進めるという意味において航空に関する技術に集約されて技術院ができたのでございました。勿論航空と申しましても一つの総合技術でありまするので、或いはエンジンの技術も必要だし、或いは材料の問題もありますし、或いは流体力学もその他のもろくの問題が多少その中に含まれて参つてつたのでありまするが、とにかく航空という目標に向つて集約されておつたのが技術院の性格でありました。  今回提案いたしました科学技術に関する総合的な基本的な施策の企画立案は科学技術の全般に亘る問題でございます。ここに政府からこの前矢鳴委員の御要求によつて国立研究機関の一覧表が参つておりますが、御覧のようにこのようなたくさんの研究所が現在存在いたしております。而もその予算その他を見ましてもそれぞれ僅かの予算でほそぞれとやつておるよう状態であり、そうして又これらの全体の研究所が殆んど連絡なく研究をやつておるよう状態でありまして、このようなことでは能率は当然上らないのであります。例えば補助金を出すにいたしましても、微生物の研究などは厚生省の厚生医学研究所、通産省の発酵研究所、農林省の食糧研究所、大蔵省の醸造試験所、こういうふうなそれぞれの研究所において同じものをそれぞれ研究いたしておる。而もどれもこれも五十歩百歩で帯に短したすきに長しでやつておりますので、世界的なレベルにはなかなかこれが到達しにくい、こういうよう状態は単なる一例に過ぎません。例えばガスタービンの研究などでも運輸省通産省からそれぞれ補助金を出しておる。同じガスタービンでありながらそんなに二つもダブつてやる必要はないので、やはりこれも五十歩百歩のところで帯に短したすきた長しのところで技術のレベルは終つている。こういうものが非常に多いのでありまして相互の連絡調整がないためにこのような欠陥を生じておるのであります。  御承知のように現在我が国の輸出工業は殆んど頭打の形でありまして、外国に出そうといたしましても殆んど出て行けない。なぜであるかといえば物が悪くて値段が高いという最も悪い条件の下に日本の工業や生産体制がなつているからであります。このようなものを打開いたしますのには、どうしても品物がよくて安い物を生産能率よく造るということが必要であります。これがために科学技術の少くとも総合的な研究をやりまして世界水準に近ずけ、或いはこれを突破する努力が重点的に行われなければならないと思うのであります。現在我が国の特にアメリカから技術を使わしてもらつて日本で生産をするための特許料は大体五十億以上に達しているのであります。而もその特許を使いまして我が国で大会社がそれを製造いたします。例えばビニールの特許を持つて来て製造いたしますればその製品であるビニールを東南アジアや或いは中共その他の地域に売出そうといたしましても、それは特許を我が国に輸入いたしますときの契約の中においてその海外への輸出を禁ぜられておるのであります。即ち我が国だけの販売を許しましてそうして海外べの輸出を禁じている。この重要なる産業がこのよう状態にある現状というものを私どもは見まして、どうしても日本自体の技術を持たなければ、そうして日本自体の技術が世界水準に近ずき、或いはそれを凌駕いたしまして初めて日本経済的な発展、海外市場の開拓、このようなことが可能になるのでございます。今のままに放置いたしますれば永遠にアメリカの隷属的な日本経済体制に甘んじなければならないと思うのであります。御承知のよう我が国の一流のいわゆる大手筋と申しまするかメーカーは殆んどアメリカとの隷属の関係にあります。造つた製品は東南アジアや中共やその他世界の市場に輸出することができないという条件の下に特許を輸入しておるのであります。このよう状態に放置しては幾ら海外発展とか或いは貿易の振興とかいうような美字麗句を使いましても、その本質がこのよう基礎の上に立つている日本の工業をこのまま放置いたしましてはこれを打破することはできない。こういうことになるのでございまして、科学技術庁を各省に設置いたさんとするゆえんのものは、各省にまたがつておりますこのもろもろの無数の研究所の総合調整をいたしまして、重点的な科学技術の向上を図り、而も今まで隷属的な立場にある日本の工業のみらずいろいろの産業というものを少くとも世界水準に持つて行くところのその基本的な施策を企画立案し、これを遂行するための行政をつかさどるところの役所としなければならない。そういうふうな意味におきましてお話の技術院とはまるで違つた性格でありますし、勿論再軍備の目的でなくして日本を本当の産業の独立の姿に持つて来るためのその基礎的な行政であると思うのでございます。  只今原子力の問題について、この間の予算の衆議院における決定が非常な問題を起しておりますものは、即ち原子炉を作れと幾ら政治家が申しましても、原子力に関する学者たちの立場から見ればまだ一階もできてないのに二階を作れという、そのような砂上楼閣はできないという議論がなされておることは当然のことであります。私どもはあのようなことがなされるならば、少くともこの科学技術庁のようなものがありまして、そして政策の裏付けをここでやりまして、そしてここで総合調整されたるいわゆる民間の意見もここに一応盛込まれてそうしてあのようないわゆる予算の修正等が行われまするならば、これこそ地についた一階のある所に二階を作るようやり方になると思うのでありまして、このよう意味におきましても一日も早く科学技術庁の設置を必要とすると痛感いたしておる次第でございます。技術院の復元では勿論ございませんし、勿論再軍備のためでなくして日本経済の独立のための準備であるということを御了承願いたいと思います。
  32. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) ほかに御質疑ございませんか。
  33. 野本品吉

    野本品吉君 一つお伺いいたしますが、今までありました科学技術行政協議会とこの技術庁の構想との著しい違いというのがありますか。
  34. 松前重義

    衆議院議員(松前重義君) 今まで日本学術会議というものがございまして、その日本学術会議から選抜されたるかたぞれが科学技術行政協議会のメンバーになつておられますが、而もその行政協議会の中には各行政官庁の次官が委員として出ております。従つて学術会議の意見は少くともこの次官その他によつて構成された科学技術行政協議会の協議によつて或る程度行政がされるというような仕組が今まであるのでございます。それをお世話をしておるところの科学技術行政協議会事務局というものがあります。その事務局は行政機関ではありませんで、ただ会議の何と申しますか衆議院でいうならば衆議院の事務局のようなものでありましてそれ自身が行政機関ではありません。こういうわけでありまして、科学技術行政協議会というものによつて当然この科学技術に関する総合調整は行われるべきものであるとこのように一応は仕組はでき上つております。けれども日本学術会議や科学技術行政協議会というもので決定され、或いは又立案と言いますか或る程度意見が述べられましたものは、今のところ科学技術行政協議会を通じて行政化されるという仕組にはなつておりまするが、現実の問題として各省から出て来る次官あたりの代理に係長あたりの人しか出て来ない。もう殆んど行政化はできないというよう状態こなつております。これでは到底本当に科学技術の向上は勿論できない。従つてこの科学技術庁の中に科学技術行政協議会の事務局を置きまして、そうしてその科学技術行政協議会において述べられたる意見或いは又その他の案につきましては、この科学技術庁が責任を持つてその政策の遂行にあたりその処理にあたる。こういうことにしなければ現在事務的に毎日々々そのことのみを遂行するために存在している役所というものはありませんので、ただ会議のときちよつと出て言うただけの話であとは別れた、何のことやらわからんというよう状態を繰返しておつたのでは絶対に科学技術の向上はできない。こういうことで科学技術行政協議会を通じて出て来ました問題を具体的に総合調整する役所としても、この科学技術庁の設置は絶対に今日必要ではないか。こういうふうに考えております。
  35. 野本品吉

    野本品吉君 前の科学技術行政協議会と日本学術会議との関係というものは非常に緊密だと思いますが、重視しておつたように規定の上では感ぜられると思います。今度の場合に日本学術会議といつたようなものとこれとの関連はどういうふうになつておりますか。
  36. 松前重義

    衆議院議員(松前重義君) 只今説明いたしましたように、科学技術行政協議会の事務局は科学技術庁内に置かれることになつております。従つて科学技術行政協議会というものは少くとも科学技術庁の下部組織ではありませんけれども、一応事務局を通じて、その行政協議会を通じて出て参りました事柄を処理する役所として科学技術庁が存在しておる、こういうことになります。そこで科学技術行政協議会の各行政官庁以外のメンベーの日本学術会議より選定されたかたがたは、日本学術会議において決定されたものを科学技術行政協議会で問題にしてこれを協議するわけでありますが、とにかく日本学術会議の意見或いは提案された事柄については、先ほど来申しましたようにこの科学技術行政協議会を経て科学技術庁が責任を以てこれを処理する。それから又科学技術庁が独自の見解におきまして、今度は例えば日本の輸出を盛んにするには光学方面即ち光の学問、写真機などドイツのツアイスのようなものを重点的に伸ばして行く、スイスの時計工業のようなものをうんと伸ばして、そうして国際収支を改善するという政策がほしいと決定いたしましたならば、これは当然その政策実現のために科学技術行政協議会を通じまして日本学術会議にこれを諮るというような体制ができるのであります。そういたしますれば、今まで日本学術会議のかたぞれにはいわゆる行政面その他の面にタッチされたかたがたが少いのでありますから、従つてなかなかここでこのような案が具体的に出て来ない、論議されるものはむしろ与えられた課題においては非常に優秀な議論がここで出るのでありますけれども、自分たちのほうからこれをやろう、あれをやろうということで出て参りましてもなかなかこれがまとまつたものにならない傾向が従来ある。こういうふうに日本学術会議の科学技術政策の実現の一翼として、そのための諮問機関として一応意見を徴する。そうしてその意見を尊重するというような形をとりますれば、日本学術会議も今までよりもずつと生きた形で活発に動くことができるし、せつかくあれだけの学者の集まりがありますのでこれをもう少し国は生かして使う必要がある。使うということは甚だ失礼でありますが、その意見政治の生きた面に活用する必要がある、こういうことを私は感じたのであります。そういう意味におきまして日本学術会議と科学技術行政協議会、科学技術庁の関係を運用して行くという建前になつております。
  37. 野本品吉

    野本品吉君 これはまだ細かい点については十分見てはいないのですが、一通り見てちよつと感じた点ですが、この案にあります資源調査所の仕事でありますね、地質及び地下資源ということで、ほかの水産資源とか或いは海底資源といつたような問題はお考えなつたことがありますか。
  38. 松前重義

    衆議院議員(松前重義君) ここに、実は科学技術庁が直接の下部組織としての研究所や或いはその他の機関は持たないというのが原則でなければならないと思うのであります。勿論各省にそれぞれの研究所がありますので、その歴史もあるし又その各省との密接な繋がりがありまするから、それをもぎ取つて直接科学技術庁の下にくつ付けるというようなことは成るべくしてはいけないという原則の上に立つてこそ、科学技術庁の総合調整の行政が生きて来ると思うのであります。ところがここに只今質問がありました資源即ち地質調査所の問題、こういうふうなものは御承知のように地下資源の問題もありまするし、只今お話がありました御指摘の水産資源もありますし、或いは又山林の資源もありますし、もう資源という、と非常に広範でございまするので、そのようなものにつきましては各省にまたがつておるものであります。従つてこれはどこに付けて置くというわけにも行きませんので、例えば地質だけの問題にいたしましても国土の開発ダムの建設などになれば当然地質との密接な関連性の上に立つている。こういうことであると同時に地下資源となれば石炭やその他の鉱物などで通産省に関係する。片方のダムのほうは建設省に関係する。それから当然ダムを作ろうとすれば今度は山林との関係が出て来ます。又山林資源の問題、まあいろいろ大自然の一つの資源的な調査ということになりますので、各省に関連をいたしまするので、こういうものはできるだけ一部の各省に置くことなく、中央機関としてのこの科学技術庁に置いたらどうか。それから防災の問題も同じであります。これもやはり山林の問題や川の問題、これは建設省或いは気象の問題は中央気象台などそれぞれありまするので、これも一つ防災研究所というものを作りまして、各省との関連性において即ち各省のこれに関連ある研究所のかたがたを兼務の形でここに集つて頂いて、それを総合いたしまして歩調を合せて一つの災害防止の方向に研究を進めて行く、こういうふうにしたらどうか。中央航空研究所というものがありますが、これ又御承知のように通産省がこの中央航空研究所の建設予算を出しております。それから運輸省が出しております。それから又再軍備と言われるかも知れませんが例の保安庁が出しております。こういうふうに方々でやつておりますので放つておけば保安庁にできるだろうと思います。保安庁にできればこれこそ完全に再軍備の方向に行くのでありますが、どうしてもこれは平和な方向に使われるべきものがふだんは中心でなければならん。そういうわけでありますから、当然これは科学技術庁の下に置くことが妥当ではないか。それから科学技術資料所というのがありますが、これは世界の科学技術のレベル、発達の状況を瞬間々々に調べて報告をとらなければいけません。今外務省あたりでは今年は少しはやかましく言いましたので、何か科学技術のほうから向うの大使館員を採られるそうでありますが、誠に結構なお話でありまして、科学技術に関するアタッシェを世界各国の先進国或いは後進国に置きまして、その国の状態をつぶさに報告し、その資料を収集いたしまして、日本経済、輸出産業等との関連性におきまして、これを参考として活用して行くその資料を集めるところがどうしても必要である。これくらいのものは大体科学技術庁の下に付けてもいいのじやないか、こういうことからここにこの案の中に四つの下部機関を作つた次第であります。併し只今指摘がありましたように資源の調査所ということになつておりますが、この資源は広範なる資源の意味考えている次第でありまして、地質調査だけではございません。
  39. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは質疑がまだおありと思いますが、本案に対する質疑は次回に続行いたすことといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後零時六分散会