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説明員(
関壮夫君) それじや
ちよつと御
説明申上げます。
ゲルマニユームや
電気通信関係に使います
関係のことにつきましては、現在大体二
通りの便い方が進んでおるわけでございます。
一つは、
ゲルマニユームの
整流器というような
恰好で交流を直流に直す、こういう面への用途が
一つございます。それからもう
一つは、
電気通信の回路に便れいまして、
電気信号を強める、
増巾するような
作用又は
電気信号をいろいろ変形するような事柄、そういうものに使う
使い方と、この二
通りがございます。
この第二の
使い方のものにおきましては、更に形といたしましてはいろいろなものがございまして、一番簡単なものは電極が二つある、二極の
ゲルマニユーム、それがだんだん極が数が殖えて、
三極のもの或いはそれ以上のものもあるわけでございます。このうち二極のものは
電気の
信号を主として変形するのに使われておるものでございます。
三極以上のものは変形にも使われますが、更に
信号の強さを強める
増巾の
作用にも使われております。この
三極以上のものむ現在
トランジスターという名前で呼ばれておるわけでございます。この
ゲルマニューム関係が
電気通信の将来の改良に対して非常に重要なるものとなろうというようなことを言われ出しましたのは、実はこの
三極以上の
恰好のものが現われ出してからでございます。二極の
ゲルマニユームはこれは大体が第二次
世界大戦中に
電波探知機の
一つの部品として発達したものでございます。その後戦争を終りました直後頃にアメリカで以てこれを
三極として使うと
電気信号を大きくすることができると、こういうことが発見されまして、この技術が非常に研究されまして、現在は非常に優秀な
性能を持
つておるということがだんだんわか
つて来たわけでございます。この
トランジスターが非常に重要視されました
理由は、
電気信号を
増巾する
作用を持ちますものとしては、従来は
真室管が代表的なものでございました。
増巾する
作用としてはこのほかにいろいろな特殊なものがございますが、例えば
電気のほうでやはり使
つておりますところの機械的な
リレー、
電気機械的な
リレーというようなものも
一種のやはり
増巾作用を持
つておるものでございますが、これらに比べまして新たに出ました
トランジスターは、その
増巾の能力、
性能においても、遥かに優れておるばかりでなく、更に独得の特徴を持
つてお
つたわけでございます。と申しますのは、これに必要とする
電力が非常に小さくてよろしい、普通の
真空管ですと、これを働かせますのに普通のラジオの場合でしたら
電灯線から
電力を相当取りましてこれを働かしておるわけでございます。その
電力が
トランジスターの場合ですと非常に小さくてよろしい。百分の一或いは千分のというような非常に小さな
電力で済む。電圧も又非常に小さくて済む。こういうことも
一つの特長であり、且つ第二には非常に丈夫である。これを例えば床の上に落すようなことがありましても、
真空管のように壊れてしまうようなことがない。第三には非常に小さい。現在
真室管も非常に小さなサブミニアチや管というようなものも出て来ておりますけれども、
トランジスターのほうは大きなもので大豆くらいな大きさ、小さなものですと小豆程度のような非常に小さなものにな
つて来てしま
つておる。こういうような点で非常な特長があるものですから、これを従来の
真室管以上に広範囲に任意に使うことができる。こういう点に大きな特長が生まれて来たわけでございます。このために従来室真管を使
つておりました各種の
電気通信の機械にこれを使いますと、非常に経済的になるということが出て参
つたわけでございます。
ちよつと特長として、もう
一つ追加させて重要な特長を申上げるのを忘れましたが、非常に寿命が長いという点がございます。一例で申しますと、アメリカのベル
電話研究所でこの方面の寿命のことを発表しておりますが、少くとも七万時間以上の寿命がある、こう申されております。この寿命の点はその技術によることでありますので、その作
つたところによ
つて違うことは勿論でございますけれども、これは本質的に長寿命になり得るものであるということが言われておるわけでございます。こういうような点で非常に経済的な
電気通信機械ができて来ると、こういうところに大きな特長がございます。その上に従来は
真室管を使
つておらなか
つたような所、例えば
電話の自動交換機、この自動交換機は
真室管で働いておるのではございませんで、中は機械的に動くスイッチとか
リレー、そういうもので構成されておるわけでございますが、
トランジスターはそういうようなものの代りもすることができる。而もそういう所に用いますれば、現在の予想では非常に又経済的なる可能性が考えられておるわけでございます。その
理由としますところは、機械的な
リレーに比べて
トランジスター自身は、中では機械的に動くものがない。働きは全部中で電子が運動することによ
つて回路を切
つたりつけたり、そういうようなことをいたします。非常に敏速に働く、こういう意味でその働きが早いものでございますので、例えば自動交換機というのは、交換をやる交換手さんの代りをするわけでございますが、非常に敏速に交換の仕事をしてしまいますれば、僅かの交換手で以てたくさんのお客さんを相手にすることができるということと同じように、僅かの機械で以てたくさんの
加入者の
電話をさばくことができるという可能性がある。こういうようなことで又非常に経済的な交換機ができはしないか、こういうようなことが考えられておるわけでございます。
こういうような点で非常に重要視されまして、研究が進んでおるわけでございますが、
日本におきましてもこの
トランジスターがアメリカで出て来て非常に有望視されておるということが
終戦直後にわか
つて参りましたので、早速我々
電気通信研究所におきましても、この方面の研究を開始いたしたわけでございます。初めはこれに必要な
ゲルマニユームがなかなか手に入らなくて非常に困難をいたしましたけたども、その後向うから輸入されたもの、最初はゲルマニューム自身でなくて、
ゲルマニユームを使いましてこしらえました
ゲルマニユームの二極管を製品として輸出しておりましたので、そのようなものを手に入れて、それを利用して
トランジスターを作るというような研究を進めておりましたが、その後
ゲルマニユーム自身も入手してもらえるというようなことになりまして、それを利用して研究を進めて参
つたわけでございます。この方面の研究はその後大分進んで参りまして、一昨年の春頃に、
日本におきましても、我々の研究所で
トランジスターが出来上るようにな
つたわけでございます。昨年の又春頃には、この
トランジスターにいろいろ種類がございますが、最初のものよりも更にいろいろ優れた性質のあるジャンクシヨン型というのもできるようにな
つたわけでございます。この
トランジスターにつきましては、我々の所ばかりではなく、民間の諸会社でも各所で研究を始めておられまして、現在では数カ所の会社で試作がおできにな
つておるように聞いております。
それからもう
一つ、この
トランジスターの原料になる
ゲルマニユーム、この資源がないことには問題にならないわけでございますが、これにつきましては、我々がこの
ゲルマニユームを利用した
トランジスターの研究を始めました直後頃から、文部省の研究費を中心としましてダルマニューム研究
委員会というのができまして、
日本の資源を探す、且つその資源を使
つてゲルマニユームを得る
方法について、いろいろと研究を総合的に連絡しておやりにな
つてお
つたわけでございますが、その結果各所から
ゲルマニユームの原料が、可能性があるというような話が出ておりましたが、我々の所で一番最初に
日本でできた原料による
ゲルマニユームを手にすることができましたのは、東京瓦斯会社が石炭の廃液を利用しまして、これから酸化
ゲルマニユームを作られまして、それを我々の研究所に持
つて来られた。我々のほうでこれを還元いたしまして純粋の
ゲルマニユームにいたしましたが、これが我々が最初に手にいたしました
日本のゲルマニュームでございます、現在まだ我々のほうといたしましては、研究用に使
つております
ゲルマニユームは主としてドイツ、イギリス方面から手に入れました品物を利用しておるわけでございますが、最近の
日本の
ゲルマニユームを我々のほうで試験しました結果では、
日本の
ゲルマニユームでも大体相当
性能のいいものができるということがわか
つて参
つた次第でございます。我々の研究所といたしましては、現在は次の段階としてこの
トランジスターを利用いたしまして、
電気通信技術を如何に改善するか、その応用の問題に、取りかか
つておるわけでございます。併しこの応用方面につきましては、我々のほうばかりでなく、アメリカにおきましても、平和目的に対する応用についてはまだほんの序の品であるという状態でありまして、部分的にはすでに
電気通信方面の応用をや
つてはおりますけれども、ほんの序の口という状態でございます。我々のほうの研究もやはり序の品でございまして、将来どんなふうになるかというようなことについては、今のところはほんの想像という状態でしかないわけでございます。確実な見込が出て来ますまでは、なお暫らく時期を要するんじやなかろうか、こういう
状況でございます。