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新谷寅三郎君 本案に対しましては各種の角度から
検討いたしました結果、不満足な点は多々あるのでありまするが、結論といたしましては私は賛意を表したいと思うのであります。
但し次に述べます諸点につきましては、
政府当局及び
日本放送協会に対しまして
只今から厳重に警告をなし、今後速かにこれに対して必要なる措置を講ずべきことを要望する次第であります。
第一には、本案による
受信料の引上げは、
政府のとらんとする緊縮
財政方針、殊にこれに基く低物価政策とは逆行するものでありまして、全くその時機を得ないものと認めざるを得ないのであります。
受信料の引上げは、
金額において比較的少額であり、又他の物価に直ちに影響するところは少いとは言いながら、千百万を超える多数の聴取者に与える心理的な影響は相当大きいものがあると考えられます。併しながら一面、
日本放送協会の経理
状況を
検討いたしますると、従業員の賃金ベース、電信電話
料金の引上げの
状況、業務費の増加、
減価償却費の問題等、成る程度の
受信料の引上げを行うにあらざれば、現状維持さえも困難となるような実情にあることもほぼ察知し得るところであるのみならず、
政府におきましては、本案を
国会に提出するに当りまして慎重なる
検討を加え、
協会の当初の案を減額訂正して成案を得たという事実もあり、緊縮
財政方針を厳守しようとする
政府が或る程度の引上げも止むなしとして、その責任において本案を提出いたしました経緯に鑑みましても、公共
放送事業の維持のために万止むを得ないものと考えられるのであります。併しながらかくのごとき
事態に立ち至りました原因を探求いたしまするのに、
日本放送協会は、
放送法により
政府から何らの監督乃至掣肘を受けない自主的な特殊法人でありますために、
政府も積極的に
協会に指示を与えることもなく、
協会も
政府の政策の動向を重視せず、飽くまでも自主的な立場において
運営しようとしているところにあると考えられるのであります。併しながら如何に自主性の強い特殊法人でありましても、国家全般の基本的な方針に対して、これに逆行したり、これを無視するがごときことは許されないところであります。現行法の下におきましても、
政府は
協会に対し必要な指導を与えると共に、
協会もその点に関し深く反貧すべきであります。更に近い将来においては、これらの問題を抜本的に解決するために、
郵政大臣の言明の
通り、
放送法の根本的
改正を行い、
日本放送協会のあり方、従
つて政府と
協会との監督関係及びその
協会が各界に直結しておる異例の関係、
協会と国民との関係、即ち
受信料徴集
制度に関しましても適当な再
検討を加え、その
改善策を樹立すべきであると考えます。
次に、
日本放送協会の
事業に関する問題であります。
協会の
事業は
放送法第七条に定められてるところにより明らかでありまするが、
協会はこの点をややもすれば軽視する傾向があるように認められます。今回提案せられました
協会の
事業計画におきましても、全国四十万世帯に近い国民がいずれの
放送も聴取し得ず放置せられている実情にあるにかかわらず、
協会はこの
難聴地域の
解消に対し積極的な努力を払わず、むしろ地域別
放送の充実を主眼とする方針を強調しておりますことは了解しがたいところであります。幸いにして本
委員会の審議の過程におきまして、
郵政大臣心
日本放送協会長もその認識を改め、将来は勿論、来
年度におきましても実行
計画策定に当
つて難聴地域
解消のために能う限りの努力をなすべき旨の言明をせられましたので、私はこの言明に信頼してその善処を期待いたしますと共に、
協会に対しましては徒らに民間
放送事業の進出等の現実に右顧左眄することなく、飽くまでもその本来の使命に向
つて邁進ずべきことを強く要望するものであります。
最後に、
協会の経理に関して一言附言いたします。本
委員会の審議が時間的に制約された関係もあり、詳細に
協会の経理内容を
検討し得なかつたことは事実でありますが、以上申上げましたような
状況の下において
受信料の引上げをなさんとする以上、
協会はいやしくも各種の冗費の節減に努めることは勿論、その組織及び
事業運営方法の
改善によりまして、
経費の節約を図るべきは当然であり、従業員は能率の向上に努め、最小
限度の職員によ
つて事業運営に当ることが必要であると考えます。殊にこの点に関しまして、現在大電力の中央
放送局の管轄において完全に第一、第二
放送を聴取し得る地域内にある地方
放送局のごときものは、その中継及び
放送施設を速かに他に転用することとし、器材及び人員の節約に努めることが適当であると考えるのであります。
以上のような要望を附しまして、私は本案に賛成するものであります。