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説明員(井上亮君) 前にお手許に資料をお配りしたかと思いますが、
航空機製造法の一部を改正する
法律案の参考資料という資料がお配りしてございますが、これにつきまして先ず
最初に航空機の生産、修理につきまして最近の現状を御説明申上げまして、この
航空機製造法の改正の要点を引続いて御説明申上げたいと思います。
御承知のように、
日本におきまして終戦後航空機の生産とか修理が許されましたのは昭和二十七年四月九日以降のことでございまして、航空機の生産なり修理が昭和二十七年四月から許されるように相成
つたわけでございますが、その間極東空軍から修理のオーバーホール、それから部品の生産発注がございまして、今日までに金額にいたしまして約一千三百万ドルほどの発注がございます。なお極東空軍のオーバーホールにつきましては、当初におきましては主としてプロペラ・エンジンの航空機に主体がおかれてお
つたわけでございますが、極く最近におきましてはジエツトの機体のオーバーホール、それから更には恐らくこれは六、七月の頃になるかと思いますが、ジエツト・エンジンのオーバーホールも発注するというようなことで、今各社がこの入札に参加している現状でございます。
航空機の生産につきましては、昨年の昭和二十八年度に保安庁の予算におきまして初等練習機及びヘリコプターの生産発注がございまして、現在初等練習機につきましては富士重工、ヘリコプターにつきましては川崎航空がこの生産に当
つておるわけでございます。そのほか生産
関係といたしましては、同じくこの川崎航空におきまして連絡機の生産もや
つておるわけでございます。まだこの生産
関係につきましては、
只今申しました
程度の極く初歩的な航空機の生産が漸く始ま
つたという段階でございまして、まだ需要の
関係もそう今直ちに多きは期待できませんので、そうはなばなしく生産を行
なつておる現状ではございません。ただMSA
関係の域外調達の話な
ども極東空軍あたりから私
どもにそういう話もございますので、そういうような情勢を反映いたしまして、業界としては戦前に経験のあるメーカーは勿論でございますが、戦前に経験のないメーカーすらもが競
つてこの航空機の生産乃至修理を行いたいという希望を現在我々にも申込んでおりますし、又業界みずからにおかましても米国のいろいろメーカーと提携するとかいうようなことで、いろいろ奔走しておられるような現状でございます。併しながら航空機の生産、需要を見ますと、修理につきましても或る
程度同様なことが言えるわけでございますが、戦後の航空機の需要は戦前と違いまして非常に微々たるものでございます。まあそういう現状に、戦前あの国力を傾けた当時のメーカーのすべて、更にはそれ以上の、経験のない業者までが競
つてこの生産を行うような準備を始めるいうことは、
日本の国民経済にも相当なやはり影響がある、悪影響があるというふうに
考えまして、従来の航空機製造につきましての
航空機製造法におきましては、これらの航空機工業の合理的な
事業調整というようなことはできませんので、何らかやはり法的にきちんと体系を作る必要があるのじやないかということで、これは昨年のたしか六月頃だ
つたと思いますが、
通産省に設置してありますところの航空機生産
審議会におきましても、航空機の生産修理につきましては、
政府が生産分野をきちんときめて、濫立の弊害を招かないようにというような答申もあ
つたわけでございまして、その後におきましてもそういう意見が各方面から出て参
つておるような現状でございます。ところが現行の
航空機製造法は検査に主眼を置いた
立法でございまして、そのために
事業につきましては単に届出制度、主として検査に主眼を置いた
法律でございますので、
只今のような情勢に対処できないわけでございます。そこで今回
航空機製造法の一部を改正いたしまして、
事業の届出制をやめまして、航空機とか、或いはその特にこの
法律できめました特定機器につきましては、許可制にするという制度をと
つているわけでございます。ただ細かい品目につきましてはあえて許可制を必要としないというようなものもございますので、そういう品目につきましては届出制だけでよろしいというような途も開いてあるわけでございます。
先ず許可制につきまして、この改正案で問題になります点を申上げて見たいと思いますが、第二条の二で
事業の許可、航空機とか、或いは特に定めましたところの機器の製造、修理の
事業を行おうとする者は、
通産省令で定める航空機又は特定機器の製造又は修理の
事業の区分に
従つて、工場ごとに、
通産大臣の許可を受けなければならないという
規定の、許可制の条文を置きまして、この許可に際しましては、第二条の五におきまして許可の基準を定めているわけでございます。許可の基準といたしましては、一号、二号、三号と、三号ございまして、先ず第一号におきましては「当該
事業の用に供する特定設備が
通商産業省令で定める生産技術上の基準に適合すること。」つまり先ず第一点としましては航空機は特に高い性能が要請されるものでございますので、高い性能を出すための設備につきましてそういう生産技術が十分発揮できるような設備であるかどうかというような点が第一の基準に
なつているわけでございます。
それから第二の基準といたしましては、この許可をいたすことによりまして、その航空機又は特定機器の製造又は修理の能力が著しく過大なものに
なつてはならない。つまり需要に対しまして著しく能力が過大になりますときには、過剰投資の弊を生みますだけでなくて、まあお互いに
事業経営上の非常に困る結果にも相成るわけでございますし、延いては国民経済にも悪影響を及ぼすわけでございますので、能力が著しく過大に
なつてはならないということを許可の基準といたしているわけでございます。
それから第三号といたしましては「その
事業を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力」が必要であるというこの三つの基準によりまして許可をいたすことになるわけでございます。
その次に問題になります点は、
事業の届出という、第三条に、
只今申しましたように一部の滑空機のようなものを除きました航空機とか、特定航空用機器は許可制でございますが、そのほかのものにつきましては届出制の制度を第三条以下で謳
つているわけでございます。
それから第六条に製造の方法という
規定がございますが、これは現行法におきましては、設備と、製造の方法と、この二つについて
通産大臣の検査に合格しなければならないという
規定があるわけでございますが、この点は実質的には従前の、現在のこの製造方法の検査ということと、実質的には殆んど同じでございますが、ただ設備の点につきましては、
先ほど申しましたような許可の基準の第一号に持
つて行きまして、許可の基準として
検討するということにいたしまして、製造方法だけが残
つたわけでございまして、製造方法については、むしろ検査という表現よりも、むしろ認可という
性格であるという
意味で、検査ということが認可という表現に改ま
つたわけでございますが、実体的には殆んど同様の内容をいたすわけでございます。つまり
製造業者が実際に航空機を製造いたしますときに
通産省令で定めますところの生産技術上の基準に適合するかどうかということを
検討いたしましてその基準に適合すると
認めますときは
通産大臣は認可をしなければならないという取極めに相成
つておるわけでございます。
それから十六条の三に、国に対する適用の
規定がございます。これは武器等製造法におきましても同じような
規定があ
つたわけでございますが、つまり保安庁のような国が
事業をいたしますときにもこれは航空機の生産行政を全般的に保安庁需要と言い、民需と言い、或いは輸出機と言い、およそ生産については総合的にこの
事業を一元的に見ておりますところの
通産大臣の承認を経なければいけないというような
規定でございます。これは
事業行政の統一を図りまして民間企業の能力なり、施設なりというものを総体的に有効に活用するための趣旨でございます。
以上が今回の航空機製造の改正案の主な内容でございますが、附則には経過
規定が書いてございます。これは現在航空機又は特定機器の製造又は修理の
事業を行
なつている者であ
つて改正前の従来の届出書を
通産大臣に提出しております場合にはこの
只今申しましたような第二条の二の許可を受けないでもこの
法律の施行の日から起算して六十日を限
つて許可
事業者とみなすというような
規定を置きましてこの
法律を改正いたしまして後の混乱を回避するようにいたしておるわけでございます。以上簡単でございますが、
航空機製造法の改正案につきましての主な趣旨の御説明を終ります。