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参考人(
渡辺貞之助君) 御質問の第一、
協力会の結成についてでございますが、これは丁度経営者が労働組合の結成を毛嫌いするような傾向が過去にあつたように、親工場としましては、下請業者が団体を作りますと、例えば支払を促進してくれとか、いろいろな要求が出はせんかという気持から、昨年社内にそういう議があつた場合に、担当部長などは、それはどうも今時期でないということで、それを阻むような意向もありまして、実は沙汰やみに
なつたということも聞いております。私もそのときにはその動きに
関係しておりませんので、この問題が起きかかる少し前、協同組合の結成のことを提唱しました場合に、協同組合ならいいけれ
ども、全下請業者を打
つて一丸とする団体の結成は困るという
意見がございました。そのために遅れたわけでございませんが、この
協力会は親会社がすでに経営破綻に瀕する状態になりましてから、私
ども及ばずながら
協力して盛り返したいというので結成したような
経過でございます。
材料の手持はこれは、伊讃美の
関係では輸送用の材料、箱を作ります。これは勿論材料は手持でありますし、それから、鋳物を納めるところも、銑鉄その他の材料は手持でありまして
製品を納めますが、あとは、材料業者が納めた材料を支給されまして、賃
加工して納めるというふうにな
つております。
なお下請の単価でございますが、これは確かに率がいいので、それに釣られて深入りしたという傾向もあつたかと存じます。別にこれは日平産自身伊讃美工場に単価をよくして我々を釣るというような悪意なり故意があつたとは思
つておりませんけれ
ども、非常に能率が上りまして、低コストで生産されるために、市場に出ましてもこれを取扱う特約店、代理店は、他の発動機を扱うよりも利幅が多いという事情にありますので、伊讃美の工場自体は昨年一カ年で四千万円くらいの
利益を挙げて、これが本社の横浜工場に吸上げられて、これが還元されないために、第一の不渡が伊讃美に
関係して起きたというような事情もございます。下請業者も他の
関係の下請をするよりは確かに率がいいので、同じ日平
産業の仕事をしましても、横浜の仕事を好まず、伊讃美の仕事に一〇〇%行くという傾向がございました。確かに単価がよかつたことはよか
つたのであります。なお発動機の販売価格の約六〇%乃至七〇%、平均して約六五%になると思いますが、これは伊讃美の工場は組立だけやりまして、部品は一切外注に頼
つております。そのために日平全体の資産内容をよく存じませんが、少くとも従業員数、その他工場の規模から申しますと、伊讃美は恐らく十分の一乃至五分の一
程度の比重しか持
つておりませんが、下請業者の債権は、横浜に余り違わないくらい、伊讃美の金額は最近でも一億九千万に及んでおります。そういうような事情がございます。これは
製品の性質にもよりまして、横浜とは非常に違つた事情があるわけでございます。横浜は平均にしまして、よく存じませんが、伊讃美は全部見込生産でございまして、生産額も一昨年僅か月産三百台足らずでありました。昨年は非常に急増いたしまして、千台から千五百台、十一月には千八百台まで参りました。採算のベースは千二百台で採算に乗りますので、非常な
利益を挙げておつたわけでございます。
なお伊讃美に関連しまして、この
機会に特に御認識を深めて頂き、その認識の下に再建への格別なる御援助を賜わりたいと存じます事情がございますので、多少時間もかかりますが、是非お聞きとりを願いたいと思いますが、伊讃美の工場単独には明らかに採算に乗
つておりました。現在でも運営さえ続けば採算に十分百乗
つているわけです。私
ども微力なものでありますから、日平全体を如何に再建するかということについては、何ら具体策は持
つておりませんけれ
ども、すでに
打撃を受けました六十日の間にいろいろな方法を
研究いたしまして、ただ徒らに外部の力によ
つて更生の途を迫るのでは余りに意気地ないとも存じますし、折角採算の立
つておる工場の仕事をしておるわけでございますから、これが若し本社の再建が遅れるならば、経営を分離して出発をすれば、これは速かに再建の策は立つわけでございます。又それをどうしてもここで急いで何らかの積極第をとらればならない事情にありますのは、四千台の
製品は、在庫は四月、五月、六月、これは農村の最需要期でございます。この
機会を外しますと、これは型も昨年の型でございまして、いわゆるB型であります。今年は全然新らしいF型に入りまするので、この
機会を外しますと、一億二千万くらいの
製品が、或いはスクラツプに近いものにな
つてしまう。売掛金が
全国の代理店、特約店に約二千万ほどございますが、これも生産を続けて、
製品がだんだん代理店に送込まれれば、いわゆるところてん式に売掛金は集ま
つて参りますが、現在はすでに営業収入の予定の半分にも達しないくらいにな
つております。日平さんは潰れた、破産をした、社長も逮捕された、再建は見込が立たない、これに払込むのは馬鹿らしいというお気持も若干あつたでございましようし、又いわゆる金詰りの点もございましようけれ
ども、非常に営業収益が悪くな
つております。折角生産が上
つて確立できた
全国の販売網が、ここ一、二カ月殆んど麻痺状態にな
つております。このままで一カ月、二カ月たちますと、販売網は崩壊してしまう。そうしますと、たとえ伊讃美の本社が再建されまして、伊讃美の工場が生産が始まりましても、到底採算に乗るまでに至らない。その間に勿論我々下請業者は、他に転換の途がない。地域的に非常に不便な状況にあるわけでございますから、先ほど岡田長官も申されたように、他に転換更生の途を辿れというような御指導でもありますが、これはその途がないのでございます。どうしてもこの伊讃美の工場は、それこそ遅くともここ一週間、二週間にも速かにその生産を軌道に乗せなければ、あの工場は手足になる
協力工場は全部死んでしまう。親工場は回復しても、もう工場自体の運営が乗りにくい。又手持の四千台の発動機は、今の時期を外しては、これは型が古いためにスクラツプに近いような状態にな
つてしまう。そうしますと全部の債権者に非常な
損害を及ぼしますと同時に、国の大切な資材も無駄になるというような事態に追込まれておりますが、この窮地から脱するためには、勿論本社の再建がまだ、一カ月、二カ月、三カ月かかるというような事態ならば、何とかしてこれを切離してでも生きる途を辿りたい、このように念願しておりますし、且つ又非常に時間的にこれはもう急いでいるというような事情にございます。最近二億
程度でございますか、資産も丁度二億
程度しかないのでございまして、これはもうあの工場は日平の工場であるが、同時に半分は下請業者の工場に近いものでございます。その点から申しましても、何とかこれはこの分だけは切離せばすぐにも生きる状態にあるわけでございます。その途の開けることを、非常に切実に、且つ緊迫した状態において念願しているわけでございます。これはもう明日、明後日からでも、今の役員、又は新役員ができるならば、そのかたとその面の打開策を
一つ相談して、その途の開けるということを、よく理解を以て進むことのできるように
お願いしたいと、こう思
つております。これは資金の面にも約五千万ほど私
ども受けるべき手形、二月に一千五百万円、三月に一千五百万円受ける手形を受けておりませんのと、不渡にな
つておりますのがすでに二千万以上にな
つておりますので、これを埋めるために、約五千万ほどの資金は必要でございます。その
程度の資金繰りがつけば、忽ち月千台、千五百台の生産が起るわけでございますから、十分採算が立
つて行く、これは実績に徴して確信を持てるわけでございますから、そういう面で
一つ各
方面のかたがたの御指導と御援助を受けて、是非この途が早急に開かれることを熱願しているわけでございます。
なお先ほど会社の更正法を適用し、或いは商法の整理の条項の適用をして、更正の途を図つたらというような御意向やら、御答弁もあつたわけでございますが、これは実は私
ども下請業者にと
つては、実に死を意味することなんでございます。
日本建鉄が昨年六月やはり不渡を出しまして、十二日に不渡を出しまして、二十四日には商法による整理の条文による申請の決定をいたしました。その後どういう
経過を辿
つておるかと申しますと、八月に再建集会が一回行われました。十月に又もう一回行われました。ただ抽象的にいい整理案を立てるべく
努力しております、暫らくお待ち願いたい……。で十二月になりました頃は、これは整理案を裁判所の命令によ
つて六カ月間には立てねばならんはずのものが、年末御多端の折柄、お集まり願うのも恐縮かと存じますから、状況を
報告するというパンフレツトをもら
つて……、私はもら
つております。三月も挨拶で、同じパンフレツトが私のところに参りまして、遺憾ながらまだ整理が立ちません。暫らく御猶予願いたいというだけで、いつ払うのか、払わないのか、その方針さえ立たないで、裁判所から財産の保全命令を受けておるから、それでどうやら工場をかつかつ運営しつつ、続いておるわけでございます。私
ども不渡を受けたけれ
ども、未だに全然これはもう支払うことができるや、できないやらわからんままで、いわゆる踏んだり蹴つたりのままにおるわけであります。実は日平
産業のこの問題を見て、私
ども一番恐れているのは、実は会社更正法を適用して、債権を三年、五年棚上げをする案を持出しはせんか、これが出れば、もう到底伊讃美の工場に関する限りは、我々に死を意味するわけであります。親工場は立直つたが、下請の工場、子会社は全部潰れた、それには更正法が有効である、こういうことが認められるならば、更正法は有効でございますが、これは余りに債務……、会社の保護に厚くして、債権者も大口の銀行などはこれで三年待とうと、五年待とうと、その間利子は計上されますし、殊に具体的な例では、千葉銀行は三十億乃至四十億か、五十億と称される横浜工場に、二億円の債権に対して担保を取
つておりまして、どんなに待つた
つて、この債権は疵つく、損われる心配はございません。何年待とうと、そのため千葉銀行が倒れるということはないと思います。私
ども伊讃美に関する限り……、勿論横浜工場の下請業者も同じでございますが、特に伊讚美の工場に関する限りは、今後二カ月債権が棚上げされて、あの工場の再開ができなければ、もうすでにこれには更正の途なしという事態に追詰められておるわけでございます。何としてもこれでは会社に適策がなければ、我々自身、自主的に具体策を立てて、経営分離の方法をとるなり、生きる途を打開すべく、その動きに入ろうと思うくらいな状態でございます。どうかその辺も
一つよく事情、というより、むしろ窮状を御諒察下さいまして私
ども切なる念願が何とかして途の開けますように、これに格別の御指導と御援助を切に
お願いするわけであります。