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政府委員(北島武雄君) 先ず
関税法案から内容の概略を御説明申上げます。現在の
関税法は明治三十二年第一次の条約改正の際に制定に
なつたものでございまして、その後太平洋戦争の終結までの間におきまして五回の改正があり、更に戦後におきましては十五回に亘りまして改正いたしてその都度、そのときどきの
状況の
変化に対処いたして参つたのでありますが、何分にも
只今申しましたように非常に古い
法律でございますので、終戦後におきまするところの各種の法令の、
関税法の
規定の仕方、或いは言葉が、その他近代的法令という見地から見ますと、相当変えてある点があるように認められますが、
大蔵省におきましては約二年間の日数を費しまして改正のために準備いたして参つたのであります。今回成案を得まして
国会に御提案申上げた次第であります。そこで改正の極く目標といたしましては、
只今申しましたように
関税法を近代化するということ、それに伴いましてできるだけ税関手続につきましては簡易化を図りますと共に、保税制度につきまして活用をできるだけ図るようにいたしまして貿易の伸展にお役に立つようにというつもりで
規定の内容を改めております。
そこで改正の要点を大体申上げますと、先ず第一には法の近代化の
一つの内容といたしまして、
関税法規の体系を整備いたしたことであります。御
承知のように
関税法規といたしましては従来
関税定率法のほかに
関税法、保税倉庫法、保税工場法、この四つが
関税制度の根幹をなしておつたわけでありますが、今回の全面改正の際におきまして、保税倉庫法と保税工場法はこれを廃止いたしまして
関税法に統合吸収することにいたしまして、
関税法規の根幹といたしましては
関税定率法と
関税法のこの二つの体系に組立てておるのであります。
それから又従来保税倉庫法に
規定いたしておりました官設保税倉庫のような
規定は現在の情勢において不必要と
考えられますので、そういうものは廃止いたしますと共に、又従来施行規則で
規定されておりましたもので当然最近の
考え方から言えば
法律に載すべきものが少くなかつたのでありますので、従来施行規則の中で
規定されておりましたものの中で、
法律に明らかに
規定するを適当と認められる事項につきましては
関税法の法文の上に表わしております。
それから第二に近代化の内容といたしまして
規定自体につきまして相当日新らしい改正を加えております。御
承知のように最近の法令におきましては、法の
目的とか、或いは重要な用語の定義等を先ず書くのが通例でございます。で、
関税法もこれにならいまして第一条において
関税法の
趣旨、第二条において輸出
輸入その他重要用語の定義を明確にいたしまして
法律の解釈の基礎を明らかにしておるのでありますが、なお従来非常に包括的に
規定されておりましたところの税関長、或いは税関職員の権限を具体的に明記いたしましてその範囲及び基準を明らかにいたしております。それから又税関長或いは税関の許可承認等の基準も最近の法令にならいまして明確にいたしておりますなど、従来ございました包括的、或いは強権的と申しますか、そういうような傾向のありました
規定は厳密にその範囲を制限いたすことにいたしております。
それから第三に近代化の内容といたしまして行政慣例を成文化いたしたことであります。
関税法は今から五十数年前の非常に古い制度でございますので、
規定と
規定との間にギヤツプがございまして、その穴は如何にして埋めたらいいかと言いますと、五十年来行われておりました行政慣例というものはその間に自然にできてしまつたのでございますが、この行政慣例につきましては当然今から
考えますれば
法律で以て
規定すべき事項が少くございませんので、従来の行政慣例の中で
法律に明文化することを適当と認められるものにつきましてはこれを明文化いたしております。
以上が近代化の内容でございますが、更に税関手続の簡易化、並びに保税制度の利用促進を図るためにどのような改正を加えたかについて若干御説明申上げます。
先ず第一に従来
関税法におきましては
関税の担保をとる場合がいろいろ
規定してございます。その場合におきまして金銭が担保として提供された場合におきましては、従来の
規定においてはその担保の解除を得ようとする場合には先ず
関税を納付いたしまして、その納付いたしました暁におきまして金銭担保の解除を行われることにな
つておりますので、その際において二重の
資金を要することになりますので、それを改めまして、納税者の希望によりまして担保として提供された金銭をそのまま
関税に充当できるようにいたしたのが目新らしい改正でございますが、なお
外国貿易船又は
外国貿易航空機が我が国の港或いは空港に入りました際におきまする船舶国籍証書、最近の出港地の出港免状等については、従来の
関税法においてはこれを税関に預入れなければならんということにな
つておりましたのを、これを単に呈示を以て足るというようにいたしまして簡素化いたしておりますほか、
輸入申告の際におきまして現行法においては船荷証券を貼付しなければならんことにな
つておりますので、非常に不便でございますので、この提出を不用にするのと、船舶、航空機及び貨物の出入に関します税関手続をできるだけ簡単にいたしております。
次に保税地域におきましては相当手続の簡素化を図
つております。従来保税地域におきましては、極く大体の
考え方を申しますと、保税地域におけるところの貨物はすべて税関の監視の下に置かれるわけでありますが、そのための
規定が諸処にございますが、今後は新法におきましては、いわゆる内国貨物、これは非常に定義はむずかしいのでございますが、およそ
国産の、
国内にある貨物と御了解願えばよろしいかと思います。まだ範囲はそればかりではございませんが、一応そういうふうにお
考え頂きたいと思います。これを原則として相当出し入れを自由にいたしまして、税関といたしましてはいわゆる
外国貨物又は輸出
輸入に直接
関係ある貨物については税関の監視の下に置くようにいたしまして、保税地域における貨物の出し入れについては相当大幅に簡易化いたしております。
それから又従来保税倉庫法を初めといたしまして、保税地域について貨物の保管規則或いは保管料については税関長が認可することにな
つておりました。これは実は普通運輸省との間に二重行政の嫌いがございまして、運輸省においては又別途倉庫或いは上屋等について、保管料については届出主義と申しますか、或る
程度の統制的
措置が行われております。まあ税関においてもそういうような保管規則、保管料の認可権を持つというふうに二重行政にな
つておりましたので、税関側といたしましてはそういうことにはこの際手を出すまいということで、保管規則、保管料に対する税関長の認可権というものはこれは廃止することにいたしました。それから、或いは又保税倉庫の許可を受けましたものについては、担保提供義務があつたのでありますが、そういう
規定などはこの際削除することにいたしております。
それから又保税工場につきまして、保税工場で或る作業をいたしている、ところが更にそれを他の下請工場へ持
つて行
つて、そこで最後の
製品として輸出するというような場合が相当ございますが、従来の
関税法におきましては、保税工場法におきましては、保税工場から保税工場でないところへ持
つて行
つて加工することは許されなかつたのでありますが、今回
外国貨物の保税工場外における作業というものを認めまして、ただ保税工場主の
責任においてそういう作業を認めることにいたしまして、できるだけ加工貿易にお役に立つようにというような
規定を設けております。又これは非常に技術的ではございますが、保税工場におきまして
外国貨物と内国貨物を混ぜ合せて使用した、混淆使用した場合には、その
外国貨物である原料の数量に対応する
製品だけを
外国貨物とみなすことといたしまして、保税工場の利用を便利にいたしております。
それから又保税上屋、保税倉庫或いは保税工場の許可手数料の基準を従来の
法律に比べまして合理化いたしますと共に、これらの保税地域に関する許可手数料の減免の適用範囲を拡張いたしております。更に今回の改正に当りまして、私権の保護尊重の見地から現行法の不十分な点を是正した点が一、二ございます。従来の
関税法によりますれば審査請求の
規定がございます。ただ審査請求は
関税の賦課に関する税関長の処分について
異議あるものに対してのみ審査請求という制度が認められておつたのでありますが、
関税の賦課の処分だけでなく、徴収及び滞納処分についてまでも審査請求の制度の特典を範囲を拡張いたしますと共に、審査の対象とならない各種の税関の処分に対しまして
異議ある場合においては
異議申立という制度を新らしく設けております。
それから又保税倉庫
業者等の私権の保護を図るために、税関が貨物を収容いたしました場合に、その貨物について質権又は留置権を持
つておりましたものは、その貨物が公売又は売却された場合におきまして、その
関税等に充当いたしました代金の残金について保管料等に関する優先弁済権を持つようにいたしております。
その他罰則につきましては、最近における各刑罰法規と照し合せまして、その彼此権衡を図
つて規定の調整をいたしておりますと共に、戦後設けられましたところのいわゆる、第三者通報制度、密告した者に報償金をやるぞという例の第三者通報制度につきましては、内国税と歩調を合せましてこれを廃止いたしております。
それから又、更に最近における貿易の実績に鑑みまして新らしく開港として指定することにいたして提案いたしたものが七つございます。北から申上げますと、岩手県の宮古港、千葉県の千葉港、兵庫県の尼崎港、愛媛県の松山港、大分県の佐伯港、宮崎県の油津港、それに鹿児島県の奄美大島の名瀬港を新たに開港といたしておるのであります。以上が
関税法案の大体の内容でございます。
次に
関税定率法の一部を改正する
法律案につきましてその要点を御説明申上げます。
現在の
関税定率法は昭和二十六年に
輸入税表につきまして全面的な改正を行いました際に、本法の各条文についても相当大幅に改正いたしたのでございますが、その後の実施
状況に鑑みまして、各条文についても改正を要する点が認められますので、
関税法の全面改正を契機といたしまして、現在の
関税定率法の各条文につきまして再検討を加えまして、
規定の整備を図りますと共に、免税、減税及び戻し税制度の一部を拡張いたしまして貿易の振興にお役に立つようにいたそうというのが今度の改正の大体の内容でございます。但し別表
輸入税表につきましては、今回は全然手を触れておりません。別表
輸入税表以外の本則及び附則につきまして全面的な改正を加えておるのであります。なお従来
関税定率法の附則によりまして、暫定的に今年の三月末日まで
関税の軽減又は免除をされておりました品目につきましては、原則として更に一年間期間を延長することにいたして提案いたしておりますが、そのほかに新らしく来年の三月三十一日まで附則におきまして免税すべきものとして追加いたしておりますものについては、非常に技術的でありますが、極くわかりやすく申上げますと、大衆の建築用材つが属のもので厚さ二百ミリメートルを超えない製材については、従来五%の
輸入税がかけられておるのでありますが、暫定的に来年の三月末日まで免税して行くという
措置をいたしております。
本則の
規定の内容につきましては極く大体の御説明を申上げますと、大体
関税を免税すべき場合といたしまして
規定されておつた事項が定率法の第七条、八条、九条あたりにございますが、そのうちで、従来無条件免税と言
つておりましたものを免税の性格に従いまして、或いは無条件免税、或いは特定
用途免税、或いは再輸出免税、それから外交官用貨物等の免税に区別いたしまして、それぞれ免税すべき
目的の性格の差に伴いまして若干
規定を変えております。即ち無条件免税以外の免税物品、特殊
用途に供すべきものとして免税したものにつきましては、若しその
用途に供しなかつた場合に二年以内に他の
用途に供したような場合には
関税を追徴するというような制度を設けております。なお
輸出振興のお役に立ちますようにという意図の下に
関税定率法の本則におきましてコーンスターチの
製造に使用するためのとうもろこしにつきましては、
関税の軽減又は免除ができるようにいたしております。それと共に、最近北海道におきまして新らしく計画されておる
事業でありますが、ミンク、貂のたぐいでありますミンクを米国から
輸入をいたしまして、そうして三年計画で飼育をいたしましてその毛皮を更に輸出するというような計画がございます。こういう動物についてはその他の動物、各号に掲げざる動物といたしまして、現在二割の税金がかか
つておるのでありますが、
輸出振興の見地から、そういうような動物につきましては免税できるようにいたしております。なお従来は
輸入いたしました貨物につきまして、それが契約の内需と違反いたしますために、
外国へ再び積戻すような場合におきましても
関税が払戻しをされておらなかつたのでありますが、今回違約品を返送いたします場合におきましてはそれが三カ月以内に、
輸入の許可がありました日から三カ月以内に保税地域に、そして更に輸出されるということが確実な場合におきまして、先にやられました
関税を払戻すような
措置も講じております。以上が大体
関税定率法の一部改正の内容でございます。