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政府委員(
奧野誠亮君) 冒頭に御注意を頂きました点は
大臣にもよく伝えたいと思いますし、今日の
委員会のお話はよく連絡を申上げるつもりでおります。
第一点は
法人事業税の
負担を、各
答申から
考えて見ればもつと
引下げるべきではないか、こういう御意見でございます。勿論財政状況が許しますならばいろいろな税種つきまして
引下げを図りたいのでありますけれ
ども、
地方財政全体がかなり窮乏いたしておりますので、思い切つた減税
措置もとれないのでありますが、
法人につきましても、先ほど申上げましたような意味合いで一・六%を一・五%に
引下げる
程度の
軽減措置を行
なつたわけであります。勿論
只今申上げますように、財政状況の安定につれまして可及的に将来
引下げの
措置を図
つて行くべきものであろうというふうに
考えております。
第二点は恐らく
税制調査会の
答申をお指しにな
つていると思うのでありますが、
電気等に対する
事業税について
収入金額を
課税標準とする方式をやめるように言われているにかかわらず、これを更に存置していることは不当ではないかということのようでございます。
政府として地方制度
調査会或いは
税制調査会に
税制関係の諮問をいたしたのでありますが、地方制度
調査会におきましては外形
課税をそのまま踏襲するという
趣旨の
答申をいたしております。
税制調査会のほうでは外形
課税をやめるという
答申をいたしております。食い違つた
答申が行われているのでありますが、なぜ
政府は外形
課税を残そうといたしたかということを簡単に申上げておきたいと思います。
所得を
課税標準にいたします
事業税というものは、いろいろな意味で不適当だと思われるのでありまして、そういうことが又延いては
附加価値税を実施するというような案が
考え出されたことにもな
つているのであります。殊に
電気の場合には好ましいのでありますけれ
ども、
地方財政全体の立場から
考えて参りますと、外形
課税をやめますと確かに減収を生ずるのであります。
電気事業の立場から望ましい減収が、
地方財政の立場からは好ましくないのでありまして、このようなことが一つの理由にな
つております。もう一つは事業が行われておりますと、勿論従業者は労力を提供して事業の発展に寄与するわけでありますけれ
ども、地方
団体も道路を設けましたり保険施設を設けましたりいたしまして事業の発展に寄与しておるわけでありますので、損をしているとか儲けているとかいうことじやなしに、何がしかの府県の
経費の分担をしてもらいたい、そういう意味においては
所得を
課税標準にすることは好ましくないのでありますけれ
ども、先ほど申上げましたような意味で止むを得ず
所得課税を相当に府県においては踏襲するわけであります。併しながら
所得課税をと
つていない部面につきましても、むしろこれをより強く従来の方式を踏襲いたしたいのであります。殊に
料金統制の行われております場合には、その
料金の中に府県
経費の分担分を織込んでもらいたい、織込まれたものにつきましては、大体独占
企業なんだから、それだけの
料金が守れるじやないか、守れるなら織込まれたものだけは
事業税として府県に支払
つてもらいたい、こういう
考え方が基本にな
つているわけであります。
第三に
電気ガス税について、
非課税の
範囲を整理するようにという
答申が行われているけれ
ども、逆に今回の
地方税法の
改正案は
非課税の
範囲を拡げているじやないかという御意見でございます。これは通産省とも話合いをいたしまして不十分であるかも知れませんが、やはり
非課税の
範囲を若干拡げまして、将来
電気ガス税を消費税として純化して行きたいという
考え方を持
つているのでございます。
第四には
償却資産に対する
固定資産税が
企業の
近代化の促進を阻害する等の欠陥があるし、又
企業によ
つては
償却資産の分量が多かつたり少なかつたりするではないかというふうな御意見でございます。これにつきましては今回の
改正案におきまして、
企業合理化促進法において特別
償却の認められているもの、或いは
法人税や
所得税を免除される重要物品製造業におきますこれらに類する
償却資産に対しましては、
最初の三年間は
負担を半減するというふうな
措置をとりまして、そうして御指摘のような弊害の生じないような
努力を払
つているわけでございます。なお又
電気においては総資本の八〇%までこれらの
固定資産にな
つて行くのだという御指摘がございました。これらにつきましては
耐用年数の問題もございますので、
最初の十年間につきましては特に
負担の
軽減の
措置を図つたわけでございます。事業が行われて行きまする場合には、府県も市町村も相当の施設をこれらの事業のために行な
つているわけでございますので、
固定資産税の形において市町村の
経費を分担してもらい、
事業税の形において府県の
経費を分担してもらう、こういう
考え方をと
つているわけでございます。勿論
償却資産の多寡によりましてそれだけでは
負担が重かつたり少なかつたりするわけでありますので、ただそれだけで問題の解決にはならないのじやないだろうかという
考え方をいたしております。従業者数が非常に多い場合にはこれに支払います給料も多額に上るわけであり、これに対して
所得税が課されるのであります。
所得税は人税だから
経費として見る必要はないのじやないか、そういうことも言えるわけでありますけれ
ども、実質的にはやはり一つの
経費として
考えられるのじやないかというふうにも思えるわけでございます。勿論
償却資産に対する
固定資産税を支払いました場合に、これは
経費のうちから支払うべき税であるという観念に立
つておりますので、
法人税や
所得税の場合も、
所得を計算いたしまする場合に全部
損金として落して参りますので、実際支払つた
固定資産税が仮になくな
つても、その半分は
法人税なり
所得税なり或いは
事業税なりの形において徴収されるというふうな向きにな
つて参りますることも、一応御了承を願
つておきたいと思うのであります。
第五は現在の
固定資産税の標準
税率が一・六を一・五なり一・四に下げるか、三%という制限
税率は高過ぎるじやないかという御意見でございます。
現行法では二十八年度まで三%という制限
税率があるのでありますけれ
ども、二十九年度からはこの制限
税率もなくなるのであります。要するに市町村の
税金だから標準はきめるけれ
ども、あとどうするかということは市町村住民に委ねるべきであるという地方自治の立場に強く立つた制度にな
つております。これを併し青天井にいたしますることも穏当じやございませんので、現行の制限
税率を据置く、こういうふうな
考え方をと
つているわけであります。御指摘のように北海道等におきましてはこの標準
税率超過徴収
課税が非常に多いわけであります。又三%というふうな高率な災害等の場合におきまする全く異例の
措置としてとらるべき
税率が
一般化しておる向きもございますので、先ほど申上げましたような若干のこれらの緩和
措置を今回は
考えておるわけでございます。併し根本においてはやはり市町村の財政が充実していない、市町村財政が窮乏のままに六・三制の実施に当るとか、いろいろな問題が起きておりますために、このような不合理な、或いは不自然な姿が出ておるわけなんでございまして、一面にはやはり
地方財政全体を充実したい、又財源の
増加を図れない場合には、
経費のかからないような制度にいたしたいという
考え方を持
つておるわけでございます。又他面には住民の市町村財政に対する批判力というものをもつと旺盛にして行きたい、もつと活溌に意見が述べられるようにや
つて行かなければいつまでた
つても自治が伸びて来ない、民主主義の基盤というものは育成されて来ないんじやないか、
余り市町村のやり方がまずいからということを心配しまして、何もかも国でかま
つてしまうということでは、徒らにその中央の指図のままに動くだけであ
つて、みずから判断するという気がまえが起きて来ないんじやないかということも他面において心配しておるわけであります。併しなお今後
只今申上げましたような
措置も十分でありません場合にも、将来に亘
つて一層この点を注意をいたして参りたい、又必要がありまする場合には適当な
措置をとりたいというふうに
考えております。御意見につきましては我々も全く同感に存じておる次第でございます。
第六には新規取得分について
軽減措置を講ずるならば、
既設の分についても
軽減措置が講ぜられるではないかと、こういう御意見でございます。これは併しながら私たちは市町村が新たに
課税することができる、新たに
収入が得られるように
なつたときからその
収入分を少し我慢してもらいたい、こういう
措置は講じやすいのでありますけれ
ども、今まで
収入が得られておつた、それを一挙にこれを相当分奪い去
つてしまう。今まで相当に
収入を得られておりましたので、それを財源にして将来に亘る多年の
計画というものを市町村自身が立てておるのであります。その折角立てておりまする
計画を、一方的に財源を奪い去
つてしまいまして
計画を混乱させるということはとるべき
措置ではない。殊に市町村というような小さい規模の
団体につきましては、これらの点は特に慎んだほうがいいんではないかというふうな
考え方をと
つておるわけであります。併しながら
電気事業界の要請もございますので、今回はあえて十年前のものにまで遡
つて軽減措置を適用するようにいたしたわけであります。通産省からの熱心なる御要望がございましたので、当初は二十八年度分の
固定資産税が課せられることに
なつたものから適用したいと
考えてお
つたのでありますが、五年前、十年前のものにも遡
つて適用することにいたしてございます。その結果市町村側から我々としては強い反対を受けておるわけでございます。
第七は大規模の
償却資産に対する
固定資産税を、三十年度からは一部を府県に移すべきではないか、言い換えればそれだけあり余
つておるように
なつたじやないかという、こういう御指摘のようでございます。
現行法におきましても、市町村の規模から見まして、
固定資産税の
収入が多過ぎると思われる場合におきましては、一定
部分以上のものを
関係の市町村に配分するという制度をと
つております。第一
固定資産税の
収入を所在の市町村に独占させることがいいか悪いかということについて問題があるのであります。と言いますのは、
産業の発展が漸次広域に亘
つて行われるようにな
つて参つております。半面行政単位は何十年来同じでございます。行政単位は
産業の発展に伴な
つて拡大されて参ります場合にはそれほど問題は起きないのでありますが、ここに行政単位と
産業の発展のあり方との間にギヤツプが生じておるわけであります。従いまして又
償却資産に対する
固定資産税を当初から府県税にすべきか、市町村税にすべきか、いろいろな議論があつたわけでございますが、
只今申上げましたような巨大なものにつきましては
関係市町村へ配分するといつた制度を講ずることによ
つて市町村税として納められるわけでございます。
従つてあり余
つておるというような議論は我々としては穏当ではないのではないかというふうに
考えておるわけであります。又大きな
部分につきましては府県に三十年度から移すことにいたしておりまするが、移しまする額は、三十年度におきましては十九億七百万円、三十一年度におきましては二十三億七千六百万円というふうに推定をいたしております。
第八には
固定資産税の
税率を将来に亘
つてもつと
引下げるべきではないかというふうな御意見でございます。私たちといたしましても
固定資産税の
負担がかなり重いと
考えておりまするので、今回或る
程度の
税率引下げの
措置を行
なつたわけであります。この
考え方は将来に亘
つても持ち続けて参りたいと
考えております。問題は他に
収入の
増加が得られるか、或いは
地方財政の全体の状況がどうかというような問題とからんで参るわけでございますが、将来に亘りましても御意見のような点は特に
考えて参らなければならないというふうに思
つておるわけであります。
第九に、むしろ簿価を時価に変えたほうがいいではないかと、こういう
趣旨の御意見でございます。私も実は
償却資産に対する
固定資産税に対する
課税標準は簿価を
とつたほうがよろしいと思
つておるのであります。適正な時価とは何か、田につきましては
収入還元価格を用いておりますし、家屋につきましては大体再収得価格といいますか、そういうようなものを基準にして適正な時価を
考えております。
償却資産につきましては、現在のところ取得価格から
減価償却額を差引いた差額を
課税標準とするという方式で運用いたして参
つて来ておるわけであります。ところが
所得価格は過去のものでありますると非常に低い簿価にな
つておるわけであります。
減価償却の計算を用いまして簿価に則
つて参りますと、どこの
企業も再評価をしないということにな
つてしまうのであります。
我が国の
経済界の実体から
考えまする場合に、相当再評価をしてもらう、又資本の蓄積を図
つてもらわなければならんと
考えますにかかわらず、仮に再評価を基準にすれば、ほかの
企業は再評価をしなくな
つてしまいます。これでは
我が国の経済実体から最も望まれるべきことが
固定資産税の
関係で抑制してしまう働きを持つのであります。そのようなことから止むを得ず収得時期からその後の物価倍教を乗じまして、この物価倍教を乗じました額から
減価償却額を差引いた額を
固定資産税の
課税標準とするというような方式を採用しております。幸い今回再評価強制の
措置がとられようとしておりますが、再評価強制の
措置が完了いたしました場合には、
償却資産に対する
固定資産税の
課税標準は簿価を用いるようにして行くべきではなかろうかというふうに
考えます。