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参考人(神山
清喜君) 神山でございます。非常に時間も短こうございますので、私の説明が或いは行届かないと思いますので、別に資料としてお手許に差上げておるものもございますので、それも参酌して頂きまして意のあるところを十分御賢察を
お願いしたい。かように考えます。
先ず第一に指摘します点は、
現状のままの
電気事業である限りは
電源開発を更に続ける限りにおいて引続き
料金改訂の
申請が今後も起
つて来るということであります。先ずここで必要なことは、
電気に対しての認識をどのように考えるかということが重要ではなかろうかと思うのであります。わかりやすくいいますと、
電気事業は果して
公益事業であるのか、或いは私益事業であるのか、このいずれかにはつきりしたものが出て参りますとおのずからこれに対する対策も立つわけであります。で私の考え方からいたしましても、大部分のもの、即ち
水力電気というものはいわゆる水によ
つて起された天恵の資源であるということが第一であります。一番目としては敗戦の
日本の中で僅かに残された国内の資源として最大のものであろうと考えます。第三留目としてはすでに今日
電気というものは他の
参考人も言われましたように、もう奢侈贅沢品ということよりもむしろ
国民の生活に切離すことのできないいわば食物か、或いは物理的には空気、或いは水と比べても遜色のないような重大なものであるという点であります。そうしてこの天恵はやはり
国民の共有したものでなければならない。こういうものが私の
電気に対する基本的な考え方であります。従いまして
電気が私益事業の名に隠れて一部の人
たちの利益に奉仕しては絶対にならない。ところが現実的には現在の
電気事業というものはこれとは大よそ逆な、少くとも具体的な事実からも判断いたしまして一部の人
たちの利益に奉仕するような形態に置かれているということに問題があろうかと思います。即ち少数の
経営者或いは
経営に責任を持たない官僚統制というのが率直に
言つて現在の
電気事業であろうと思います。
で、勿論自由主義経済というようないろいろな考え方の下に三年前に
電気事業が再編成されたわけであります。そうしてこれがあたかも私益事業のような偽装を以て決定されましたために、他の国に余り例を見ないような議員立法によるところの復元法の動きさえも一昨年
あたりから見えてお
つたことも私
たちは知
つているわけであります。御
承知のように再編成のときの主張点の第一は、少くとも
電気事業を九つに分断する、そうして独立採算制ということがこれを私益事業というふうに規定いたします。そうして当時の
政府なり
経営者が約束したことは豊富にして低廉な
電気をこのようにすれば供給できるんだということであ
つたわけであります。ところがその後僅かに三年にしていろいろな派生的な問題も出て参りましたし、今度の
料金問題も言うならば再編成の矛盾が具体的に出たことだと私は確信するものであります。即ち停電や
電圧降下が一体解消しているのかと言えば決して解消はしておりません。更に地帯間の
電力の融通が従前よりも円滑に行われているかというとむしろ不円滑な一般的な傾向をしております。即ち東京都の例を申上げましても、昨年の秋から断続的でありますが、
一般家庭の停電が行われております。又場所によ
つては需給のバランスが破れて著しい
電圧の降下を来たしております。又地方別に言いますと、或る地方では非常に出水率がよくて中には水を無駄に流している
会社もあるかと思うと、片方では
電気が足らないで依然として停電を続けている。こういうふうな矛盾すらも現われているわけであります。
で、
電気料金の
値上げにいたしましても二十六年の八月、続いて二十七年の五月、二回
料金を
値上げしております。そうして今回は三回目でございますが、更にこれによ
つて起る地域差は縮小されるどころか拡大されまして
日本の各政党、自由党から社会党まで含めての各議員のかたがたもこのような傾向に対しては何かの具体策を作らねばならないというような動きが院内に起
つていることも
承知しております。例えば今回の改訂の内容を極く大ざつぱに見ましても、地域差の場合は最低の北陸が二円三十六銭になりますけれ
ども、最高の四国では六円五十六銭、元来共有すべき
電気がこのように二〇〇%以上の開きをしているというのはもうこれは蔽えない事実であります。
更に独立採算制の欠陥を二、三指摘いたしますると、先ず
電源開発におきましては甚だしくびつこの状態に現在置かれております。即ち二十八年度末、既に完成するものまでも含めまして比較いたしますと、例えば東北においては二四・七%の
電源開発が完成し、北陸においては三八・八%、然るに東京、関西、東京の場合は七・六%、関西の場合は六・四%というふうに非常にバランスが破れて来ております。そうして
電源開発の遅れているところほど、やはり停電というものは頻繁に行われているわけであります。
更に電灯或いは小口動力の
犠牲の状態であります。まあ、供給面から申上げますと、電灯は全部で一八%足らずでございまして、他の残りの七七%以上が
電力で食われている。そうしてこの
電力の中でも
中小企業の
電気というものは僅か八%にしか過ぎないのであります。ところが逆に
料金の
負担率から申上げますと、電灯の場合は四七%を
負担して、動力は五〇%、即ちこのような
負担率は、やはり
国民一般
大衆により多く課せられていることは
数字的にも出て参
つているわけであります。そうして今度の
値上げを見ましても電灯や小口
料金においては五〇%乃至一〇〇%の
値上げが実は具体的に出て来るわけであります。で皮肉な言い方をいたしますと、再編成によ
つて約束いたしました豊富、低廉な
電気はいわば特殊大口
産業の場合には或いは当てはまろうかとも思います。又戦前の配電統合のときに当時の頼母木逓信大臣が
議会で答弁いたしております豊富低廉な
電気を供給するということでありましたが、結局はこれは単に
戦争遂行のために利用されたに過ぎないのであります。なお戦後の再編成も私の考え方を以ていたしますと、いわば独占資本への奉仕以外にはなか
つたということを
会社の資料を以ても具体的に言い得ると思います。そうして一貫して変らないのは、これを除いたところの力の弱い
国民の
大衆であ
つたということも事実であろうかと思います。従いまして仏の顔も二度三度と昔からいいますように、恐らく今度は
国民の大部分の人
たちが今度の
値上げには真向から
反対しているという、単に新聞に現われた記事だけでなく、私の身近にもそういうような動きを如実に知
つております。で結論的にいいますと、私は
現状のままの
電気事業である限り、今回のような電灯、小口
料金の
値上げに同意することはできません。勿論大口を含めまして再検討して、この再編成の中から生まれて来たこの矛盾を、やはり責任の所在を明らかにして直接
国民の
負担にならないような方法で解決することがこれを決定した
政府の責任でもあります。又国家的な経済対策の上からも当然解決せられなければなりませんし、更にその場合に
経営者も又一部の責任を免がれることはできないと考えております。で
電気事業のこのような混迷は
公益事業か私益事業か、この点については
政府の政策の中にも極めてあいまいでありまして、そのような形が続けられて行く限りこのような状態は今後も続くということに判断するわけであります。私
たちは勿論再編成当時以前より、又再編成当時においては特に今日このような事態の起ることを一般のかたがたにも訴えて参りました。従いまして若しもこれを私益事業として取扱うとするならば、そうして更に独立採算制を押付けるならば、先ず割当
制度を初め今の官僚の持
つている統制を即時撤廃しなければならないと思います。又厳格に資産の再評価を求めて
経営に枠を付けるということはできないはずであります。又前段で申上げましたような
電気の公共性を認めるならば、やはり
電気を
国民の手に返すようにせなければならないと思います。私
たちは
電気に対する考え方はすでに八年前に十分検討して爾来一貫した具体策を持
つておりますので、再編成当時も一般の
公聴会その他を通じて説明しては参りましたけれ
ども、この
機会にこのことを再び繰返すことも決して無駄ではないと思いますので若干時間を拝借したいと思います。又私の判断を以てするならばこのことをやはりはつきりとしない限りは今の
電気事業の混乱というものは今後引続くことも覚悟せなければならないということを繰返し申上げたいと思うのであります。
私
たちの考える
電気事業の形態、これは何と申しましても前段で申上げましたように、大部分が水によ
つて起るところの天恵の資源である。従いまして
国民はこれを平等にその利益を分ち合う権利もあります。又
電気そのものの性格からいたしましても、やはり
一つの
経営体として運営されるのが一番正しい行き方だと思います。
電気は御
承知のように貯蔵することができません。発生した
電気は直ちに消費と繋が
つて行くという性格を持
つております。更に
日本の地理的条件からいたしましても、おおむね
水力地帯は
日本の中央部であります。九州や中国や或いは四国は非常に不利な状態にあります。
従つてこのようなありのままの形でおきますと、ますます
料金差というものが拡大して来るわけであります。そうしてこの
一つにまとめての
経営ということになりますと、
電源開発も重点的に行われます。又豊渇水の調整も十分できまして、無駄に水を流したり、或いは停電が連日続くというような状態も漸次緩和して来るわけであります。わかりやすくいいますと、
電気は水道と同じようにどこをひね
つても出て参ります。このような形に変えることが一番いいと考えたわけであります。なお
送電系統
あたりにいたしましても十分なこれによ
つて整備が整えられる。勿論事業が非常に
厖大でありますので、又大きな固定資産も必要にな
つて参ります。更に
設備を作りますとなかなか撤去にも困難であります。又資本の回転率というものも他の
産業に比べて非常に低いのであります。これを若しも同一地帯における自由競争に委ねますと二重、三重の
設備も勿論必要でありまして、そうしてこのような無駄が却
つて全体的には全部の
電気の原価を高めることになるわけであります。私
たちはこのような形に作り直す。そうして勿論その場合には
政府のこの運営に対する責任の所在ははつきりするわけでありますが、少くとも
経営を指導し、或いは監督する機関としては、即ち直接
電気を生産する側の
経営者、或いは
消費者、更には学識経験者といういろいろな有能のかたがたを以て、そうしてこの
電気事業を指導し、或いは監督するような仕組にしなければならないということであります。私の申上げますことは、二十世紀の初期において一応力を失いました、言い換えますと黴の生えました自由主義経済の亡霊にとりつかれている人ならば知りませんけれ
ども、少くとも
国民経済という立場から
電気事業の公益性を認めている人でありますれば、一応の御理解も行くのじやないかというふうに考えております。現に西ドイツにおきましては、直接労使の紛争を解決して、そうして民主的な
経営を遂行するために、すでに一九五一年五月共同議決法というものが立法化されまして、すでに鉄鋼や炭鉱には実施しております。私はドイツに行
つた経験はございませんが、いろいろな人のお話を聞いて見ましても、ドイツは戦後非常に生産が上
つているということを聞きますけれ
ども、
政府みずからがこのように斬新的な法律も作り、そうして働く人々の協力を求めていればこそ生産は活気的に上
つているというふうに私は判断いたします。少くとも
日本の国家資源の中で残された
電気事業も、このような形態に作り直して行かなければ、単なるその日ぐらし弥縫策では矛盾は解決したように見えますけれ
ども、更に新らしい矛盾が出てしまいまして、そうして
国民大衆はその場合に小さな自己の利害打算の上に立
つて料金値上げに
反対するというような運動のみを続ける結果が生れようかと考えるのであります。従いまして私の申しますことは、少くとも
日本国民といたしましては、
電気事業というものの公益性を自覚いたしまして、そうして真に各層を代表する人々に監督、指導されるような運営に切替えられるとすれば、決してこのような事態というものは起きて来ない。私はこのことを抜きにして、先刻申上げましたような、農民は農民の立場から、或いは
中小企業は
中小企業の立場からだけ
料金値上げは
反対だということだけでは、今まで
通りのことを繰返して、結局は最後にごまかされてしまうわけであろうと思います。なお
参考までに申上げますと、どなたかおつしやいましたように、私
たちは一昨年十二月に
賃金の問題を解決いたしまして、爾来一年数カ月、その当時の
賃金で暮しているわけです。勿論
賃金の
値上げの要求は
申請のずつと以前に出しておりましたが、やはり従来の
関係からか、これが
料金値上げと同時期のような状態に置かれております。一見いたしますと、
収入が殖えた場合に当然人件費も殖える。その場合なぜ電産が
料金値上げに
反対するのか。或る人はこれは電産と
経営者がなれ合いをや
つているというようなことまでも言われましたけれ
ども、私
たちは
賃金値上げの
理由も具体的に説明資料も作り、そうして調停
委員会にお任せをしているわけです。ここで私
たちのつかんでいることは、
電気料金の値上
申請をした以前に、私
たちが
賃金問題を取扱いましたとき、
会社側の
経営の二十八年下期の締めくりが相当過大な赤字を見込んでおります。併しその後出水その他のいろいろな状況の変化もありまして、その当時よりもやや好転しているということはどの
経営者も認めているところでありまして、この点については、通産
委員のかたがたにおいても十分御
調査を
お願いしたい。こういうふうに思います。
非常に私の申上げましたことは、直接的には、御諮問にあずか
つた事項について、一々のお答えにはな
つていないかと思いますけれ
ども、やはり
電気事業というものの矛盾をこの
機会に解決するために
皆様方に私
たちの考えの一端を申上げたわけであります。
で、具体的に
料金改訂に対する取扱については、これは前段で申上げましたように、今直ちにこのような形で
料金改訂をすることには同意できない。
政府は再編成をした当時の公約に基いて、よろしくその責任において、この
電源開発の問題を解決して頂きたいということを私は特に主張して私の説明を終りたいと思います。