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参考人(岡崎正男君)
日本中小企業団体連盟常務の岡崎であります。私は大体三つくらいに分けて申上げたいと思います。
この共済組合という制度はなぜこのように盛んに
なつて来るかという問題。それから次に損保、損害保険
会社と共済との比較した問題。最後に法制化についての要望、という点の三つに分けて
お話を申上げたいと思います。
先ずこの共済制度として利用されておりますもののうち三つに分けることができると思います。
第一には、先ずこの正常なと申しますか、正常な姿で発展したものと、それから正常でないと申しますか、街の共済組合的なもの、こう
二つに分けることができると思う。先ず第一に、この正常な姿で発達しておるものにつきましては、何と申しましてもこの発達した大きな理由は、中小
企業者はあらゆる面で大
企業初めあらゆる面から、他の職域
会社から比べまして非常な不公平な取扱を受けているという点につきましては皆さん御
承知の
通りでありますが、先ずそういう点で常に自衛策として、相互扶助によ
つて不慮の災害をお互いに助け合おうというような気持から、この共済制度というものが盛んに
なつて来たということが考え得ると思います。もう
一つは、この協同組合の本来の共同事業を行いますに当りまして、やはりこの組合員の福利厚生ということを考えて、共済制度のような事業を併せ行うことが共済組合本来の共同事業を行うに当りまして、円滑に行うことができるということが考え得ると思います。第三には、この共済制度は小
規模の組織と少額の
負担金によりまして十分に共済の
目的を達することができる。而も危険率も比較的少く、又採算上も大体とり得るという点が考え得ると思うのであります。例えば今も浅川
参考人から出ましたように、事業別の米の場合とか、或いは酒屋の場合、これが全国的に分散されました場合に、おのずから危険分散ができるという点で成立つのではないかというふうに考えるのでございます。それから第四番目には、この
昭和二十四年に現在の
中小企業等協同組合法が制定されようとしました際に、その当初の法案の中には保険組合制度が織込まれてお
つたのであります。それは御
承知の
通り閣議決定まで行
つたのでありますが、衆議院の大蔵
委員会におきまして一夜にして葬り去られるという苦い経験があるのであります。こういう点がかなり反撥的なものに
なつているのではないかというような見方もできるのではないかと思うのであります。それから第五番目には、この都道府県の中小
企業対策の一環として都道府県がこの制度を重視いたしまして、積極的に支援指導しておるという点が考えられるのであります。その現われといたしまして、都道府県が損失補償、或いは支払保証という形でかなり行
なつているのであります。例えば岐阜県の例を申上げますならば、岐阜県では岐阜市の共済組合に対しまして支払保証をいたします。又岐阜県では岐阜の陶磁器協同組合連
合会に対しまして三千万円支払を保証するというような形で、北海道、福島、山形、岩手というふうに、かなり都道府県が支払保証、或いは損失補償という形で積極的な指導援助をいたしておるのであります。
こういう点が、大まかに申しますと、以上のような点がかなり共済事業の発達に並行して盛んになる理由の大きなものに
なつているのではないかと思うのであります。
最後に、何と申しましても損害保険
会社の保険料が頗る高率である、高額である、かなり値下げといいますか安く
なつたようでありますが、併しまだ
相当高額でありまして、零細な中小
企業者にと
つてはその
負担に堪えかねるという点がかなりこの共済を利用せしめるということに追込んでいるのではないかというふうに考えるのであります。
以上申しましたのが大体正常なと申しますか、そういう正常な姿で発展しておる共済組合の盛んになる理由でございまして、このほかに正常でないと申しますか、いわゆる中小
企業者の
金融の金詰りと申しますか、そういう点の隙を狙いまして、いわゆる街の火災共済
金融組合と申しますか、そういうものが京都とか大阪とか大都市に必ずあるようでございまして、これらかなり共済組合の発展に害毒を流しておるのではないかと窺えるのであります。
次に損害保険と共済との
関係を比較いたして見ますと、これも共済側にはまだ日が浅うございまして、業種的にや
つておるのは別といたしまして、火災共済だけを主としてや
つておりますものは非常に日が浅くて資料がございませんので、この点は杜撰な
数字であるかわかりませんが、前以てお断わり申上げておきます。
第一に保険料と寄託金(乃至は掛金)という問題でございます。損害保険では高額ないわゆる基本料金のほかに更に職業別の多額の割増料金が加算されたのであります。一例を申しますとペンキ屋、看板屋さんでございますが、千円につき八円の割増が取られる。又印刷屋さんが千円につき七円の割増が加算される。玩具屋さんが千円につき五円から二十五円の割増が基本料金のほかに加算されたのであります。これに対しまして、火災共済の場合では損害保険
会社の基本料金の大体半額
程度の
負担で賄えるという
状態でございます。割増金を取らない場合が多いのであります。ここに大きな開きがあると思うのであります。そして地域的に
説明申しますと、北海道の例をとりますと、北海道では損害保険では、普通物品については平均千円につき十三円三十九銭でございます。最低が五円五十銭、最高二十四円まで、平均いたしまして十三円三十九銭に
なつております。それから普通物件につきましては平均十一円三十三銭、最低四円三十銭から最高十八円、これに対しまして共済では、北海道共済の場合は普通物件、住宅物件区別しないで六円十六銭という実質的な
負担に
なつております。千円について六円十六銭、内訳をいたしますと、このうち一円三十三銭は共済組合の経費に充てております。六円十六銭のうち一円三十三銭を共済組合の経費に充てております。それから福島県の福島市の場合を申しますと、損害保険は普通物件で平均九円二十五銭であります。最低八円五十銭から最高十円でございます。それから住宅物件では平均七円五十七銭、最低が七円から最高八円でございます。それに対しまして福島県共済商工協同組合の場合は四円六十六銭と一般の
負担を行
なつております。この四円六十六銭の半分は組合の経費に充てております。それから岐阜県岐阜市の例を申しますと、損害保険では平均六円二十六銭、最低四円五十銭、最高十円でございます。普通物件では平均五円二十六銭、最低三円五十七銭から最高八円でございます。これに対して岐阜市共済組合は普通物件が千円につき四円、住宅物件が千円につき三円でございます。以上のようなかなり開きがあるので、勢い零細な中小
企業者にとりましては共済を利用するものも日に増し殖えて来る現状であります。
それからもう
一つは共済と損害保険との損害率の問題でございます。再保険制度のない火災共済にとりましては、又特に中小
企業者の場合には、建物工場から申しましても損害保険で申しますと四級物件という木造建物が多いのであります。それに加えまして再保険制度がないというのですから損害率が非常に多いように考えるのでありますが、併し事実はそれほどでないということが言えるのであります。先ず損害保険の場合を申しますと、共栄火災の
昭和二十六年度の新規契約高に対する損害率は火災だけで〇・一二%であります。それから第一火災の場合は二十六年の新規契約に対する損害率は〇・〇八%であります。これに対して共済事業の場合は北海道共済では二十九年三月末の契約高に対するいわゆる見舞金、損害の率は〇・三七%であります。それから福島県の共済では二十九年三月末現在の契約高に対する見舞金は〇・二五%でございます。このようにそれほどの開きはないように考えるのでございます。
それからもう
一つは支払準備のほうの問題でございます。御
承知のように損害保険では保険金の支払については、再保険によりますほかに法定の支払準備金、更に任意の支払備金、こういうものが充てられるのであります。これによ
つて充てられた例でありますが、第一火災によるところの契約者に対する準備金の割合は〇・三二%、これは二十六年であります。太陽火災は〇・二七%、これは二十八年度、共栄火災が〇・五九%であります。これに対しまして共済の場合は現行の税法上余裕金を支払準備金のような形で利益留保をすることが許されておりませんので、従
つて現実にこの余裕金乃至都道府県の支払保証というものが、これが充てられるわけであります。仮にこれらを合算いたしまして、支払準備金として契約高に対する割合を見ますと、北海道共済では二・一%であります。同じく福島県共済が二・六%です。北海道の岩内大火では四千四百万を支払
つたのでありますが、全員が見舞金を醵出するという形の現われとなりまして、一応これを支払いまして、なお且つ道の五千万円の損失補償が残されておるのであります。どうにかやり切
つておるということになるのであります。
それからもう
一つはその採算制の問題でありますが、先ず損害保険の側の例を見ますと、第一火災では
資本、二千万円で
昭和二十四年八月に設立されております。この初年度の収入保険料が三千八百九十二万九千円でございまして、これに対する事業費が七二%、再保険が三八%で、期末決算が千九百八十八万三千円という赤字に
なつております。次年度では一億二千六十一万七千円の収入保険がありまして、これに対して事業費が四六%、再保険が二六%で、結局期末欠損、赤字が三千五百九十二万二千円と
なつております。三年目におきましては、保険料が二億二千三百四十二万五十円でありまして、事業費が、三七・九%であります。保険が二十一%でありまして、期末欠損が二千九百七十二万七千円と
なつております。この三年間の欠損だけで約八千五百五一万余の赤字に
なつております。四年目には三億一千四百六十九万四千円の保険料がありまして、漸く五百三十万円六千円の黒字と
なつておるのでありまして、損害保険の側におきましてもなかなかこの経営は容易でないのでありまして、少くとも三年乃至四年目の
段階におきまして漸く採算制がとられるような
状態に
なつておるのであります。この第一火災の場合にも四年や
つて漸く五百三十万の利益を出した
程度でありますから、まだ採算上十分であるとは言えないのであります。これに対して火災共済の場合は、北海道共済の例を考えて見ますと、出資金が三百六万七千五百円、設立が
昭和二十七年九月でございまして、これは一年半の計算に
なつておりますが、収入、いわゆる寄託金の収入と経費の収入合せまして六千四百四十万九千円であります。これに対する事業費が九%、それから見舞金が三二%で差引五万九千円の剰余金であります。余裕金は四千万円の余裕金を保留しているのでございます。
このように火災共済を主としている事業では設立後まだ日は浅いのでございまして、大体業種別で火災共済を行
なつておりますものを除きまして、火災共済だけを専業に行
なつておりますものはまだ三年に満たないのであります。一年乃至は二年半
程度のものが多いのでありまして、それでも今申しましたような北海道共済の例のようにどうやらやり切
つているのでありまして、採算上成立たないということにはならないと思うのでございます。
最後にこの法制化に対しての要望でございますが、火災共済組合制度の健全な発達と育成助長のためには一日も早くこの法制化をして頂きたい。又この健全な発達のために火災共済組合が一日も早く認可制をとられるということが望ましいと思います。法制化についてはこの
只今参議院に出ております法案の内容は大体賛成できるのじやないかと考えております。ただ最低金額でありますとか、或いは最高の保険金額、こういうものにつきましてはかなり厳格に過ぎるのじやないかという感もあるのでありますが、大体これ以上厳格にしないということで全面的に賛成いたしたいと考えているのであります。ただ若し火災保険協同組合の安全性ということから、これ以上厳格にするというようなことがあるといたしまするならば、むしろこの責を中小
企業者に負わすというようなことではなく、再保険制度乃至は国家或いは都道府県損失補償というような形のことをとるような措置をと
つて頂きたい、かように考えるのであります。
なおこの
法律の七十五条の二でありますか、保険組合の保険の対象でありますが、この中に組合員及び組合員の親族と
なつておりますが、組合員の従業員までこの恩典が浴するように保険対象にして頂きたいということを希望いたしておるのであります。
大変雑駁な考えでありますが以上申述べて終ります。