○
参考人(
阿部竹松君) 私
日本炭鉱労働組合の
阿部でございます。
委員長の御指名によ
つて只今から我々の考えておることを申上げるわけでありまするが、我々
石炭産業に職を置きまして生活しておる者にとりまして、本日
委員長以下各
皆さんがたが、真剣に我々の意見を開いて頂いて、今後どうあるべきかということが今後なされると思うわけでありまするけれども、この点について深く敬意を表しておきたいと思います。
私ども
只今新海さんからも炭界の情勢について縷々陳述され、なお
対策等についても言及されたようでありまするけれども、私ども組合の立場といたしましても、全く同感でありまするし、又若干違つた意見もあるわけであります。今まで再三再四に亘りまして、
通商産業大臣、或いはそれぞれ担当の諸先生方にも、我々の苦しい立場を何回となく申述べて参りました。
従つて今更その蒸し返しをいたしましてもどうにもなりませんし、なお
委員長以下
皆さんがたにおいては、炭界の情勢等については、十分御了承のことと思いますので、若干そういう内容等については省きまするが、たまたま今より五年前に、私ILOの炭部会に
日本労働者代表として、
政府の
委員或いは経営者
委員の各位等もスイスのジユネーヴの会議に
出席したことがございます。この当時たまたまヨーロッパ或いはアメリカ或いはインド、こういうところの
政府代表或いは経営者代表、労働者代表が集まりまして、戦争後の
石炭産業は如何にあるべきかということを真剣に論議しておりました。当時
日本は
御存じの
通り、終戦後非常に
石炭不足の結果、先ず戦争中と同様、
石炭産業は超重点的に考えられまして、我々も率直に申上げて、将来の
見通しについて勉強不足であつたろうと思います。併しそういう点については、
我我はヨーロッパ或いはアメリカの諸国の労働者各位よりは、組織的に見ましても、将来に対する
考え方についても見劣りしたということについては否めない事実てありまするけれども、その席上で今申上げました
通り、どうあるべきかということを真剣にや
つておりました。私どもも経営者或いは
政府各代表の
皆さん方と話合つたのでありまするけれども、たまたまその翌年朝鮮事変というものが起きました。今考えて見ますると、朝鮮事変が起きなければこういう問題が、
昭和二十七年、或いは二十六年の終り頃来たと思います。私どもは率直に申上げまして、
政府の諸君も、経営者の諸君も、朝鮮ブームという
一つの波に乗
つて、将来の
見通し、
石炭産業はどうあるべきかということに真剣に取組み、真剣に考えなかつた嫌いがあるのではないかと、今考えておるわけでございます。あの朝鮮事変当時、真剣に
石炭産業はどうなるのか、
日本の経済界がどうなるのかということを、もう少し真剣に考えておれは、今日より早くこの問題が解決され、今日我々塗炭の苦しみをなめるのがもう少し軽く済んだのではないかと考えております。
従つて私は現在
政府の担当者を責めようとは思
つておりませんし、経営者の
皆さん方を責めようとも思
つておりません。これはお互いが平等の責任でもありましようし、平等にやはり罪というものはあろうかと思
つております。
従つてそれを責めるよりも、今後どういうふうにこれを切抜けて行くかということについて、やはり真剣に取組んで行かなければ、これはただ単に、
石炭産業だということを簡単に考えておりましても、
日本の基幹
産業でありまする
関係上、将来大きく
日本の経済界に及ぼすというように私考えておるわけであります。現在
日本の
炭鉱労働者は約三十万人ございまして、この三十万人のうちに私ども
日本炭鉱労働組合は三十二万ほどございます。この
日本炭鉱労働組合の中だけでも九州において二十二、或いは北海道が十九、常盤において六、合計四十七の
炭鉱が休山になり廃山に
なつたわけであります。
従つてこの四十九の廃山、閉山、こういうものが人間にいたしまして十三万三千百二十名が二カ月も三カ月も賃金をもらうことができない。将来も全く
見通しがないという
状態に置かれておるわけであります。従いまして劈頭申上げました
通りこれをどうしてくれるんだというようなことで
通商産業大臣にも強引にお会いいたしましてお話を申上げましたし、それぞれ
関係当局にも陳情或いは要請いたしました。併し勿論
通商産業大臣も努力して頂いたと思いまするし、
関係当局も努力して頂いたでしよう。併しながら
一つも
状態というものはよくなりもせず、だんだん
悪化の一途々々を辿
つておるわけであります。ここにおられる
委員長さんは福島県だというようにお聞きしておりますが、
委員長さんみずから福島県におられまして常磐
炭鉱の
状態がどういうものであるかということについては身を以て体験しておられるのではなかろうかというふうに私考えておるわけであります。従いまして今まで
竪坑を
開発するんだと何億円出しましようと、過般七月
炭鉱の鉱員を減らして
コストを下げるんだというようなそういう手はその都度打つたかのように存じております。併しながらやはり私ども
炭鉱に長く従業員として働いておるものといたしましては、当然こういう
一つの
見通しがあるわけであります。戦争が始まると
炭鉱の従業員は第一線の勇士と同じである、戦争が終り、
石炭は必要がないからどんどん首切られてしまう。又戦争が始まると第一線の勇士であるというふうにしてそういうふうな立場から今日にな
つておりますから、当然第一に戦争か終れば
石炭産業はどういうふうになるかということは最前申上げました
通り自明の理でありまして、単に困つたからその都度
政府が若干の金を貸そう、或いは若干の融資をしよう、或いは若干の銀行利子を負けてやろうというような小手先細工では到底この
苦境は切抜け得られないと思うのであります。そこで私どもといたしましては、当然将来のやはり
対策というものを立てなければ、先日中小炭砿の問題で通産省の
関係者とお会いしたときに、一千万円の銀行融資を二千万円にしてやろうと、成るほど金が倍になるわけであります。併しこの一千万円の金額が二千万円に
なつたらどれだけの
炭鉱がそれに該当するかというように調べて見ましたが、一千万円の融資が二千万円に
なつたけれども該当する山は
一つもないと、こういう
状態であります。鉱害
対策として来
年度予算を本
年度予算で使おうと、それによ
つて失業
対策をするんだということを決定を頂きました。結構であります。併しながら鉱害
対策費というものがどこの山にもどこの地方にもあるというものでもございません。長崎にもありません。福岡の
炭鉱にも常磐の山にもないわけであります。
従つて対策を
一つ一つ立てて頂きましても、実際それを当てはめてそれが我々に
影響するということは殆んどないわけであります。従いまして折角努力して頂きましても、骨が作られても肉にならない、皮にならない、全く看板に等しいということを率直に、努力して戴いた各位には済まないわけでありますけれども、そう申上げざるを得ないわけであります。そこで、私どもといたしましては、当然
石炭の
需給量というものはどうあるか、
日本の
石炭というものは大体幾ら必要であるか、どういうところに
需給層を求めるべきであるかということも真剣に考えて欲しいわけであります。
通産大臣が当
委員会において、劈頭、四千八百万トン必要だ。その次の
委員会においては四千五百万トン、その次には四千三百万トンと、実際の
数字は三千九百五十万トンしか要らないということは、私どもは聞くわけであります。少くとも、一国の
通商産業大臣が権威ありまするところの当
委員会でおつしやることは、一本化した、やはり、お話でなければ、一体どこに拠点を置いて経営者が
石炭産業に従事し、そこの従業員も、やはり、どこに拠点を置いて
石炭産業に職を得て飯を食べて行けるかということ等についても、やはり、考えて頂きたいわけであります。
従つて、
政府の最高責任者がそういうことをおつしやるということは、即ち政策に対する全くの自信がない、出たとこ勝負であるという結果がそういうようなことになるのでありまして、私どもといたしましては、少なければ少くてよろしい、或いは又多ければ多くてよろしい、すつきりした、先ず
政府当局が
日本の
石炭産業はこうあ
つて欲しいという筋の通つた話を、二度目に、或いは三度目に絶対変らんところの
数字を先ず示して、そのためにはこうするのだという確固たる信念に基いてや
つて頂きたいということが先ず第一点であります。
従つて、当然
石炭の当初の見込でありまするから、それは百万トン違う場合もありましよう、或いは二百万トン違う場合もあり得ると思います。併し、そういうような責任を以て出した
数字については、当然我々もその
目標に
従つて努力しますので、その百万トン、或いは二百万トン余つた
石炭をどうするかということも、ともどもやはり、十分話合
つて、その
需要量と供給量のバランスについてやはり努力して頂かなければ、単に三億の金を出しましよう、或いは七億の金を出しましようということだけでは、到底ものにならないのではないかというように私どもは考えておるわけであります。
重油の問題にいたしましても、これは
新海委員が述べておりましたので、私省きますが、単に、税金は一切かけないでノーズロースで
日本に石油が入
つて来ると、私、北海道の出身でありますので、東京に来て見ますと、外国の自動車が非常に入
つている。あれに金を使うのであれば、なぜ
日本の
産業をもう少し振興させないかということを、私ども素人でありますけれども、しみじみ感じるわけであります。自動車のために却
つて自動車のスピードが遅れるというような
現状であるにかかわらず、毎月々々どんどん外車が入
つて来る。
日本車がさびれる。
日本の
産業をもう少し振興させるという意味において、ああいう方面に金を投ずるのであれば、当然
石炭も必要にな
つて参りましようし、
日本の
産業余力と称せられる
失業者が減るでありましよう。或いは又鉄鋼業の人も、例えば、十分の一にしても、十分の二にしても助かるわけであります。にもかかわらず、外車が入
つて来る。あれは一切
日本のドルを持
つて行
つて買うわけでありますから、もう軍隊でいう往復びんたをとられたというようなことと全く同じなわけであります。
又室蘭等におきましても、今まで北海道で
石炭を使つたのでありますけれども、現在においては外国の
石炭を殆んど使
つておる、
従つて、室蘭についても殆んど北海道に販路を求めることができないというような
状態であります。
従つて、私どもといたしましては、そういう外国の石油、或いは又
石炭、こういうものについて、
政府はノーズロースでなく、もつと明確に
日本の
産業々振興するような方策をと
つてもらわなければならんというように考えておるわけであります。又燃料炭につきましても、北海道、或いは東北地方、或いは常磐4含めて相当な燃料炭が必要なわけであります。従いまして、この燃料炭が余
つて売れないのでなくて、金がなくて買えないというような場合には、
政府はそれぞれ大勢の職員を抱えております、この職員等守につきましては、なぜ
石炭の物給等、こういうものを図
つて、そうして、つまり給料の代りに
石炭を支給するということでありますけれども、そういう方面まで手を廻して、石油コンロを使わない、或いはガスコンロを使わないというようなことも十分考えて頂かなければなりませんし、現在東京都の一例をと
つて見ましても、ガスのあるところは、東京都において三分の二であります。
従つて、三分の一の家庭は恐らく炭で生活しているか、或いは石油コンロで生活しているか、この二点に尽きるわけであります。従いまして、こういう点については、ガスの設備を十分に施策として行うというようなことも考えて頂きたいわけであります。従いまして、ガスの設備をする、或いはそういうような将来の燃料
対策を十分に立てるということになりますると、
政府が一億や五億の金を直ちにばら撒くというよりも、私どもといたしましては、将来に向
つて非常に
石炭産業というのを優遇するということになるのではなかろうかというように考えております。私どもといたしましては、戦争中、或いは終戦後できた中小
炭鉱の泡沫
会社もあります。一トン三千八百カロリー或いは四千カロリー、こういう
炭鉱というものが、人間十人ぐらいにトラック一台あ
つて炭鉱会社というものもあります。
従つて、こういうものを含めて全部を助けて欲しいというようなことを申上げておるのではありません。本当に、
日本の
石炭産業の将来というものが、
日本の全
産業、
日本の全経済にかか
つているからこそ私どもは心配しているわけであります。従いまして、
政府当局といたしましては、将来何年か後どうあるべきかということも十分考えまして、今単に本年だけどうする、今
貯炭七百万トン余
つているから、そのうち三百万トン買う、こういうことも結構でしよう。併しながら、それはそれとして
恒久対策も併せて十分立てて頂きたいと思うわけであります。私どもは従来
通産大臣、或いは
関係各位に、申上げておりますので、非常にくどいわけでありますけれども、十分
政府当局といたしましては、そういうところを御勘案の上政策を立てて頂きたいというように考えるわけであります。たまたま本
委員会にお招きにあずかりまして、本院各位の御努力によりまして、
石炭産業というものが将来明確に安定するということになれば、非常に私ども有難いわけであります。ただ単に、我々二十万人がどうする、三十万人がどうするという意味でなくて、
日本の将来の
産業ということも十分御勘案の上、
一つ本
委員会において、十分御
検討の上
我我のために
一つ御努力頂きたいと思うわけであります。
甚だ簡単でありまするが、一言申上げまして、本
委員会の参考意見に代える次第であります。