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参考人(
加藤八郎君)
商工組合中央金庫の今後の貸出の予定とか或いは
資金繰りというようなものにつきまして概況を
考えておるところを申上見げてたいと存じます。
昨年末の貸出の残高は四百九十六億円でございまして、丁度一年間に百五十一億円の貸出が伸びたことに相成
つておるのでございます。その前年の
昭和二十七年の一年間の増加が百三十一億円でございましたので、それに比べますると二十億円ほどの増加を持
つて昨年の年末を越したのでございます。いつも思うことでございますが、この商工中金の貸出が伸びるということは、
政府のほうから
財政資金をたくさん頂くことができた年に伸びておるのでございまして、昨年も
国会並びに
政府の理解ある御同情によりましていろいろ
財政資金を頂きましたのでここまで伸び得たような状況であ
つたのでございます。年末の
財政資金は、
政府の出資を初めといたしまして、債券、
資金運用部の引受け或いは指定預金というようなものを合計いたして見ますと、直接間接に
政府から
資金を頂いております金額は百九十二億円ほどに相成るのでございまして、貸出残高の四百九十六億円に比較いたしますと、大体四割が
政府の
資金によりまして賄
つておるというような状況にな
つておるのでございます。
然らば今後の
見通しはどうだろうかということを
考えて見ますると、誠に心許ない状況に相成
つておる
関係がございまして、
昭和二十九
年度の長いことはともかくといたしまして、差当
つての一月から三月までの、いわゆる
昭和二十八
年度の第四
四半期の
資金繰りを先ず
考えて見ますと、この三カ月に商工中金として
資金を自力で調達できると
考えられております
資金は、この債券の発行によります受取金の二十三億五千万円と、
あとコール・ローンの回収一億二千二百万円でございまして、二十四億七千二百万円という予想でございます。然るに一方
資金の引揚げられるものが非常に多うございます。指定預金の六十六億三千万円を初めといたしまして、県、市等から頂いております公金預金も、地方公共団体の年末
財政の逼迫に伴いまして引揚げられるものが六億五千万円ほど予想されております。又日本銀行から暮にお借りしました二次高率の分、これも一応お返しするという計算をいたしますと八億九千三百万円ほどございまして、その他コール・マネーの返済一億というような計算でございますので、これらを合計いたしますと、
資金の引揚げられるものが八十二億七千三百万円ほどございます。まるく申しますと八十二億でございますが、この八十二億の引揚げがございますので、一方自分のほうで調達できます二十四億を
考えましても、その差額五十八億ほどの
資金不足を来たすのでございます。こういうような状況でございますが、これには二つの問題がございまして、その
一つは指定預金の引揚げの問題であり、
一つは貸出
関係をどう見るかの問題であります。
只今申しましたのは、貸出
関係が全然考慮に入れてありませんが、今のままで十二月末までの残高で、三月末残高が移動なしという計算で申しまして五十八億の
資金不足になるわけでございます。こういうことではなかなか収まらないと思います。
資金の貸出の
見通しというものは非常に立てにくいのでございますが、仮りに昨年の一月、二月、三月の三カ月間の貸出状況を見ておりますと、一月はずつと回収になりまして残高が減
つて参りますけれ
ども、二月は若干殖え、三月は相当殖えて来るというようなことで、この期間を通じますると昨年は十五億円の残高増加と
なつたのでございます。本年は一般に
経済界が
不況でありますし、又
企業家もそれぞれ警戒して手控えをしておるようでございますので、大体三カ月を通じて増減なしに行こうかとも
考えられるのでございますけれ
ども、一面におきまして一般の
金融機関の選別融資の強化というようなことで
中小企業にそのしわが寄せられるのでありまして、締出しを食うものが相当あるのでございまして、このほうの
資金をどうしても見なければならん。商工中金も一般の
金融引締めの大
方針については順応してや
つておるわけであります。そういう締出しを食
つた中小企業の
金融を全然中金が見ないで行くということは到底できない事情にもございますので、そういう締出しを食
つたもののしわ寄せというものを
考えて行かなければならないと思うのでございます。昨年十二月の貸出状況を見ましても、この十二月には非常にたくさんの新規の取引先が殖えて参りましたのと、それから非常に取引の口数が殖えたということが、これが如実に一般の
金融の引締めによりますしわが商工中金に寄
つて来たということを物語るものと思うのでございます。そういうものを
考えますと、やはり一月—三月の間の貸出の増加というものを、昨年の十五億に対する二割と見まして十八億というような増加というようなものを考慮しなければならないじやないかと、かように
考えられるのでございます。
次に指定預金の引揚げでございまするが、これは丁度十二月末に残高といたしまして六十六億三千万円あ
つたのでございまするが、その引揚げの期日は、一月には十八億、二月には三十八億、三月には十億三千万円と、こういう数字にな
つてお
つたのでございます。それですでに一月を経過したわけでございますが、一月には結局十八億引揚げられましたけれ
ども、六億五千万円を一月の末に新規に預託頂きましたので、結論といたしましては一月の引揚げは十一億五千万円に相成
つたのでございます。併しその延期に
なつた分が、期限が三月末でございますので、やはり
年度内にはお返ししなければならないということに相成りまするので、この一——三月中に六十六億三千万円をお返しするということについては変りございません、この多額の引揚げということに相成りますると、中金は今後新規貸出を停止して相当回収をしなければならんというような由々しい事態に立至るのでございまして、この点につきましては我々
政府のほうに対しまして、この引揚げの延期を、是非貸出に支障のないようなふうに緩慢に、
一つ長期に亘りましてや
つて頂きたい。まあ指定預金の性質から申しまして、長く貸せないという
お話でございまするならば、せめてこの引揚げも十分に時期を見て長期に
考えて頂きたいということをお願いしておるのでございます。こういう指定預金の性質は、まあ国庫に
資金がたくさんあるからただ貸してやろうというような無意味なことでお貸しに
なつたのではなくて、これは
中小企業の
金融難緩和として必要であるからこそ
政府もお貸し頂いたのだろうと思います。今後そういう中小
企業金融の緩和の必要性がなければ、当然お引揚げになるのも筋でございますけれ
ども、今後ますます中小
企業金融の緩和としてそういう
資金が要望されておりまするときに、これをお引揚げになるということは、非常に
中小企業界にと
つて残念なことであろうと思うのでございます。又我々といたしましても、非常にそれではやりにくい、むしろや
つて行けないというような実情にございまするので、この点くれぐれも
一つ御考慮をお願い申上げたいと存ずる次第でございます。できるならばこういう
資金は、もう我々といたしましても約一年半というものは大体
政府から五十億円或いは六十億円の金をずつとコンスタントに指定預金を頂いてお
つたのでございまして、そのために非常に助か
つたのでございますが、これを三カ月間に全額引揚げるというようなことにされますると、借りておいていろいろ申上げるのは悪いのでございますけれ
ども、余りにもひどい引揚げじやないかと
考えておる次第でございます。
それから二十九
年度の一年間の
見通しの問題になりますと、先ほど申上げましたようはなかなか未知数の問題が多うございまして、殆んど
計画らしい
計画も立てにくいような状況でございまするが、大ざつぱに申しまして債券発行によりまして商工中金が調達できまする金は、大体九十一億円と
考えております。そのほか預金というようなものも若干殖えて参りましようと思いますので、それを合計いたしますと、まあ二十九
年度を通じまして、百億円
程度の
資金は調達できるかと思います。併し一方貸出のほうはどの
程度に見るべきかということになりますると、これはやはりどんなことがあ
つても最低百五十億、本年の年間におきまする貸出の伸びというようなものと同
程度のものを見て頂かなければいけないと思うのでございます。
なおこの債券によりまする九十一億円の増加ということを見込みました前提といたしまして最も大きく期待しておりまするのは、
資金運用部
資金によりまする債券の引受けでございます。これを昨年同額の四十億円を
資金運用部におきまして面倒を見て頂けるという前提でこれを作
つております。ところが本年の
資金運用部の
金融債の引受の額というものは昨年三百億円でございましたけれ
ども、本年は二百億円に減らされたというような実情でございまするので、商工中金の
金融債もおのずから或いは削減を食うのじやないかというようなことを
考えて心配をしておるわけでありますが、どうぞ
一つこれも
中小企業の現在の状況から見まして、引受の四十億円というものを減らさずにお願いしたい、かように
考えておる次第でございます。四十億円の
資金運用部におきまして引受を頂けるという前提の下に、この
金融債の発行
計画を現在のように
考えておる次第でございます。
甚だ杜撰でございまするが、以上簡単に
見通しを申上げた次第でございます。