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1954-05-17 第19回国会 参議院 地方行政委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十七日(月曜日)    午後二時五十八分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     内村 清次君    理事            石村 幸作君            館  哲二君    委員            伊能 芳雄君            伊能繁次郎君            田中 啓一君            酒井 利雄君            小林 武治君            秋山 長造君            若木 勝藏君            松澤 兼人君            笹森 順造君            加瀬  完君   衆議院議員            西村 直己君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君    国 務 大 臣 塚田十一郎君   政府委員    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    国家地方警察本    部総務部長   柴田 達夫君    自治政務次官  青木  正君    自治庁財政部長 後藤  博君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君    常任委員会専門    員       伊藤  清君   説明員    自治庁財政部財    政課長     柴田  護君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件連合委員会開会の件 ○警察法案内閣提出衆議院送付) ○警察法施行に伴う関係法令整理  に関する法律案内閣提出衆議院  送付) ○地方財政法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今より地方行政委員会開会いたします、  日程及び公述人の選定、それから合同審査の件を協議いたしますために懇談会に入りたいと思いますが、御異議ございませんか    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは懇談会に入ります。    午後二時五十九分懇談会に移る    ―――――・―――――    午後三時九分懇談会を終る
  4. 内村清次

    委員長内村清次君) 懇談会を終ります。  それでは連合委員会に関する件についてお諮りをいたします。通産委員会に付託されております自転車競技法等臨時特例に関する法律案は、本委員会においても重大な関係がありますので、この際本法律案につきまして連合委員会を申込むことにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 内村清次

    委員長内村清次君) では自転車競技法等臨時特例に関する法律案について、通商産業委員会連合委員会を申込むことに決定いたします。   ―――――――――――――
  6. 内村清次

    委員長内村清次君) 次に、警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案を議題に供します。先ず政府から提案理由説明を承わります。
  7. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今回提出いたしました警察法案につきまして、提案理由並びにその内容の概略を御説明いたします。  現行警察法は、戦後多々にして占領政策の一環として施行せられたものでありまして、戦前の我が警察制度を根本的に改革して民主警察の理想を高揚した点においては、確かに画期的な意義を有してはおりますが、何分にも多忙の間に当時の国際事情を反映しつつ制定せられましたため、わが国情に適しないところが多く、その運用の結果に徴しても非能率にして不経済の欠陥を免れず、而してかかる欠陥を是正するために早晩抜本的な改正の肝要であることは、つとに世人の広く認めているところでありました。即ち、現在の警察制度国家地方警察市町村自治体警察との二本建となつておりますが、町村管轄する国家地方警察国家的性格に過ぎて自治的要素を欠除し、都市管轄する自治体警察完全自治に過ぎて国家的性格に欠くるところがあり、これを要するに都市町村において性格の異る警察が存在するという結果になつているのであります。而してこのことは元来国家的性格地方的性格とを兼ね有すべき近代警察事務運営にとつて適合せざるものを内蔵している結果となつているのであります。更に、市町村自治体警察は、治安対象地域が近時とみに広くなりつつあるにかかわらず、おのおのの市町村単位において独立しているのでありまして、この細分化された警察組織の下においては警察運営責任も又多数に分割され、従つてその有機的活動は著しく阻害されているのであります。勿論従来といえどもこれらの警察相互間においては、或いは人事の交流によつて意思の疏通を図り、或いは援助の協定を行なつて連絡調整を密にする等それぞれ努めて参つたのでありますが、何と申しても制度自体が内蔵する欠陥の前には、運用の妙にも限界がありまして、ために警察単位の分割より生ずる盲点の存在が、警察効率的運営をみずから傷けて参つた次第であります。且つ、この欠陥は国の治安に対する責任の不明確という点にも大きく影響しておりますことは、近年頻発する種々の事件に関連して国民の記憶の新たなところであると存じます。更に一方、行財政改革の見地に立ちますならば、国家地方警察市町村自治体警察との施設及び人員が互いに重複していることは、国民にとつては徒らに複雑、且つ、不経済な負担となつているのでありまして、この面よりするも制度根本的刷新の要は今や社会の輿論であると申しても過言ではありません。  併しながら現行制度における叙上の弊を改めるに当り、警察の民主的な運営、言い換えれば国民警察運営に対する関与はこれを依然として保障すべきは勿論のことでありまして、この民主的な保障の基盤の上に、治安任務遂行能率化責任明確化との二つの懸案の解決を図つたものが今般のこの法律案の骨子となつている次第であります。  先ずこの法律案内容について主要な点を申上げますならば、第一に公安委員会制度を存置したことであります。即ち、警察管理運営民主的保障を確保するため、中央地方を通じて公安委員会制度を置き、警察管理せしめることといたしたのであります。即ち、中央においては、内閣総理大臣所轄の下に国家公安委員会を、又地方においては都道府県知事所轄の下に都道府県公安委員会を置き、それぞれ国民を代表する委員からなる会議体機関によつて警察庁、又は都道府県警察管理せしめることといたし、以て警察の民主的な管理運営を確保し、且つ、警察政治的中立性維持することといたしたのであります。なおこの際公安委員に広く有為の人材を得るため、その資格制限を大幅に緩和し、その制限警察検察職業的前歴者のみに限ることといたしました。  第二には、警察府県警察に一本化したことであります。即ち、警察能率的運営を保持するため、現在の国家地方警察及び市町村自治体警察は共にこれを廃止して、新たに都道府県警察を置くこととしたのであります。この理由については冒頭に詳しく述べましたので省略することといたしますが、ここに一言申し加えたいのは、大都市警察についての処置であります。大都市警察につきましては、従来から種種議論の存するところでありますが、結論において、これを府県と併立させることは、大都市とその周辺地区とを遮断せしめ、このために警察対象としての両地区一体性を阻害し、警察運営有機的活動に著しき障害を来すのみならず、財政的にも極めて不経済な結果となりますので、これを府県警察に一元化する必要を認めた次第であります。  第三に、府県警察内容であります。即ち、都道府県警察については、国家的要請に基く最小限の制約を除いて、能う限りこれに自治体警察としての性格を具備せしめることとしたのであります。即ち、都道府県警察性格は申すまでもなく地方公共団体たる都道府県機関としての警察であり、言い換えればこれは府県自治体警察でありまして、知事所轄の下にある都道府県公安委員会が全面的にこれを管理いたし、その管理の下に警察本部長職務を行うのであります。従つてその職員原則として地方公務員身分を有するものでありまして、且つ、警察に要する経費については、一定の国家的警察活動に必要な経費を国が支弁する外は、原則として府県負担といたすのであります。又都道府県警察の諸般の組織職員人事管理その他の行政管理事項は、いずれも都道府県条例で定めることといたし、これらの警察行政都道府県議会における審議を通じて常に住民の公然たる批判の前に置かれ、而して住民批判に制約せられる次第でありまして、この作用によつて自治体警察特長と美点とを具備せしめたのであります。面してこの精神に立脚しまして、都道府県警察は国家的な警察事務限つて中央警察庁指揮監督を受けるものといたし、その事項法律に明記して警察中央集権化のことなきよう十分の配慮をいたしたのであります。而してこれがため警察本部長と極く少数警視正以上の首脳職員国家公務員といたし、これらは警察庁長官国家公安委員会意見を聞いて任免することとし、他面、この任免に対して管理者たる都道府県会安委員会懲戒罷免に関する勧告権を行使し得ることといたし、以て両者の権能につき均衡あらしめたものであります。なお、都の警視総監任免は特にその地位の重要性に鑑み、内閣総理大臣国家公安委員会意見を聞いて任命することとし、これに対する懲戒罷免勧告権の所在は他の道府県の場合と同様にいたしたのであります。  第四には、中央警察機構のことであります。即ち、中央警察官理機関たる国家公安委員会委員長国務大臣を以て充てることとし、国家公安委員会はその管理の下に警察庁を置いて国の公安に係る警察運営を掌り、警察教養通信鑑識統計及び装備に関する事項を統轄し、並びに警察行政に関する調整を行わしめることにいたしたのであります。更に、国家公安委員会は、委員長及び千五人の委員を以て組織することとし、委員長国務大臣を以てこれに充てることといたしましたが、この委員長会議に際して表決には加わらず、従つて国家公安委員会政治的中立性を保つところの会議機関である現在の性格は今般の改正によつてもこれを一貫して堅持せしめているのであります。同時に委員長として新たに国務大臣が加わることにより、政府治安に対する国家的な考え方が国家公安委員会の中正な判断によつて濾過せられた上、警察運営の上に具現されるようにいたしました。かくのごとくにして政府治安責任警察政治的中立性との調和を図つたものであります。又警察庁国家公安委員会管理の下に、極めて特定の国家的な警察事務を所掌し、これに関しては都道府県警察指揮監督することといたしましたが、その事務範囲は上述のごとく最小限列挙事項のみに限定したのであります。従つて個々一般犯罪捜査のごときはこれを中央権限より除去いたしたのであります。なお、警察庁長官政府治安責任を明確にするため、内閣総理大臣国家公安委員会意見を聞いて任免することといたしましたが、他面これに対しては国家公安委員会長官懲戒罷免に関する勧告権を行使し得ることは、道府県公安委員会権限の場合と同様であります。  なおこの改正が実施せられます場合は、機構簡素化により警察職員の数において三万人、経費において約九十億円を減少し得る予定であります。又この改正の実施に伴い国家地方警察職員市町村自治体警察職員も共にその身分に変更を生ずる結果となりますが、この場合も努めて新機構への受入れの円滑を期するため、職員身分保障すると共に俸給の減額となるものについては、その差額について調整措置を講じ、且つ、恩給、退職手当についても従来の在職年数はすべて通算することといたし、これら誠実な職員の生活に不安を与えざるよう万全の配慮を払つております。而して従来の国家地方警察自治体警察とがその用に供しておりました財産の移転につきましても、制度の切替えに伴い支障を来たすことのないよう、すべて国と都道府県市町村との当事者相互間の協議により譲渡を行うものとし、特別の事情のあるものについては債務を承継し又はこれを有償とする等の措置を講じ得ることといたしました。なお、本法案が幸いにして成立いたしました上は、これを来る七月一日に施行する所存であります。  以上本法案提出理由及びその内容の概要を申上げた次第であります。何とぞ慎重御審議上速かに御可決あらんことをお願いいたします。  なお、本法案衆議院におきまして、警察庁長官警視総監都道府県警察本部長等任免に関する点、五大市を有する府県組織に関する特例及び五大市に関する一年間の経過措置に関する点、都の公安委員特例に関する点、並びに公安委員会資格要件緩和に関する点につきまして修正があり、これにつきましては、提案者から説明があることと存じまするか、ここに申し添える次第であります。  次に、警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案提案理由を申上げます。  本法律案提案理由は今般提案いたしました警察法案と関連いたしまして関係法令整理し、これに伴い所要経過措置を定める必要があるのであります。この整理の方針といたしましては、関係法令中の関係事項について警察法案規定上当然に整理改正を要するものを改めることといたしました。経過措置につきましては、警察法案規定及び本法律案による整理に対応して必要な規定を設けることといたした次第であります。何とぞ御審議のほどをお願い申上げる次第であります。
  8. 内村清次

    委員長内村清次君) 同法案に対しましては、斎藤国警長官から補足説明を聞くことにいたします。
  9. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今提案理由説明のありました本法律案内容につきまして、その条文の順序に従つて説明をいたします。  この法律案は、七章七十八ヶ条の本文及び附則二十八号からなつております。  第一章は総則といたしまして、この法律の目的、警察責務及び警察職員服務の宣誓の内容について規定しております。即ち、この法律の目的とは民主的理念を基調とする警察管理運営保障しつつ能率的にその任務遂行するに足る警察組織を定めることであります。次に警察責務につきましては、現行趣旨通り個人生命身体及び財産の保護と犯罪の予防、鎮圧及び捜査等公共の安全と秩序の維持を以てその範囲とし、併せてその権限の濫用を戒める旨を規定すると共に、新たに不偏不党、且つ公平中正を旨として責務遂行すべきことを加え、警察のあるべき姿を更に明らかにしたのであります。なお、この法律により警察職務を行う者については、特に服務の宣誓の内容を定めて警察職務遂行の公正を期したのであります。  第二章は、国家公安委員会に関する事項規定いたしております。国家公安委員会は、国の中央警察官理機関として内閣総理大臣所轄の下にこれを置き、現行通り両議院の同意を得て任命される五人の委員の外に、新たに国務大臣を以て充てる委員長を加えて組織することといたしました。五人の委員任命方法や任期、政党に関する制限身分保障については全く現行通りでありますが、広く適任者を求め得るようその資格制限を緩和し、その制限警察検察の職業的な前歴に限ることといたしました。国家公安委員会は国の公安に係る警察運営をつかさどり、警察教養警察通信犯罪鑑識犯罪統計及び警察装備に関する事項を統轄し、警察行政に関する調整を図ることを任務とするものであり、その権限についてはこの任務遂行するに必要な範囲に限定することとしてこれを法律で明定し、その事務について警察庁管理することとしております。委員服務等につきましては、おおむね従前の通りとするほか、新たに会議についての規定を設けましたが、国務大臣たる委員長表決権を有することなく、可否同数の場合にのみ採決権を有することといたしました。なお、国家公安委員会には法令の委任に基く規則制定権を認めることといたしました。  第三章は、警察庁に関する事項規定いたしております。警察庁国家公安委員会管理の下に法定の権限を所掌する機関として置き、その長官任免内閣総理大臣国家公安委員会意見を聞いて行うことになつております。長官は、国家公安委員会管理に服して職務を行うものとするほか、国家公安委員会内閣総理大臣に対しその懲戒罷免に関し必要な勧告をなし得ることとして不当な職務執行の余地をなからしめているのであります。長官は、警察庁庁務を統括するほか、その所掌事務について都道府県警察指揮監督することといたしまして、国の治安に関する中央責任を明確にしているのであります。警察庁に次長一人を置くほか、その内部部局としては、従来の総務部を改め長官官房とし、ほかに従来と同じ警務部刑事部警備部通信部の四部を置くことといたしております。又附属機関としては警察大学校、科学捜査研究所及び事宜警察本部を置くこととしておりますが、これらはいずれも現在あるものをそのまま明文化したものであります。地方機関としては、現在の警察管区本部に代る管区警察局を置くこととしたのでありますが、北海道北海道警察となりますので管区警察局を設けず、ただ通信事務を所掌する道地方警察通信部を置くのみとし、その他は高等検察庁等他治安関係機関との連絡を密にするため従来の五管区管轄区域を七管区に変更し、新たに名古屋、高松にこれを置くことといたしましたほか、警視庁はその管轄から除外いたしました。而して半面その機構簡素化することとし、現在の五部制から三部制に縮小いたしました。管区警察局の分掌する事務警察庁所掌事務のうちに必要な範囲事務に限定しておりますが、その分掌する事務についてのみ府県警察指揮監督することができるのであります、なお管区警察局管区警察学校が附置されることは現在通りであります。次は、警察庁職員規定で、警察庁所要職員のうち長官警察官とするほか、次長、官房長通信部長を除く部長、その他政令で定める職は警察官を以て、皇宮警察本部長皇宮護衛官を以て充てることを規定したのであります。  第四章は、都道府県警察に関する事項規定しております。第一節は、総則といたしまして都道府県警察の設置及び責務並びに経費について規定しております。即ち、現行制度都道府県国家地方警察及び市町村自治体警察は共にこれを廃止して新たに都道府県都道府県警察を置き、この都道府県警察都道府県区域について警察全般の責に任ずることとしたのであります。都道府県警察に要する経費につきましては、原則として都道府県負担するのでありますが、そのうち警察教養通信鑑識警備装備に要する経費警備警察や特殊の犯罪捜査に要する経費国家公務員たる警視正以上の階級にある警察官給与費等都道府県負担させることが不適当と考えられる経費については政令の定める範囲で国が支弁することとすると共に、そのほかの都道府県負担する経費についても国が政令で定めるところによつてその一部を補助することといたしました。  第二節は、都道府県公安委員会について規定しております。都道府県会公安委員会は、現行通り知事所轄の下におのおのその都道府県議会の同意を得て任命せられる三人の委員から成り、都道府県民を代表して都道府県警察管理するのでありますが、その権限は従来のごとく運営管理に局限せず行政管理をも含め都道府県警察を全面的に管理するものといたしました。都道府県公安委員会委員任命方法や任期その他身分保障服務については現行通りでありますが、資格制限国家公安委員と同様に緩和することといたしました。又法令又は条例の委任に基き公安委員会規則制定権を認めることにいたしました。なお、北海道についてはその地域的特殊性に鑑み五以内の方面ごと方面本部管理する方面公安委員会を置くことといたしました。  第三節は、都道府県警察組織について規定しております、都には警視庁を、道府県には道府県警察本部を置き、その内部組織政令で定める基準従つて条例で定めることとしております。都警察には警視総監を、道府県警察警察本部長を置き、警視総監内閣総理大臣国家公安委員会意見を聞いて任免することとし、警察本部長は、長官国家公安委員会意見を聞いて任免することといたしました。警視総監及び警察本部長都道府県公安委員会管理に服して職務を行うものとするほか、都道府県公安委員会は、それぞれ内閣総理大臣又は長官に対し警視総監又は警察本部長懲戒罷免に関し必要な勧告をなし得ることとしたのであります。又北海道には道警察本部の下にその区域を分つて五以内の方面本部を置き、方面本部長身分等は、警察本部長に準ずることといたしました。なお警視庁及び道府県警察本部並びに方面本部にはそれぞれ警察学校を附置せしめるほか、警察署名称、位置及び管轄区域政令基準従つて条例で定めることになつております。都道府県警察職員については国家的性格を有する警察事務の円滑な遂行を図るため少数警視正以上の警察官国家公務員とし、その任命は長官国家公安委員会意見を聞いて行い、それ以外の大部分の警察職員はすべて地方公務員とし、その任免警視総監又は警察本部長都道府県公安委員会意見を聞いて行うことといたしましたが、いずれについても都道府県公安委員会懲戒罷免勧告権を有するのであります。なお地方公務員たる大部分の警察職員地方公務員法の適用を受けることは勿論でありますが、警察職務の特質上任用、勤務条件服務等に関しては国家公務員の例を基準として条例その他で定めるものとしたのであります。これら都道府県警察職員の定員については、国家公務員については政令で、その他の警察官については政令で定める基準に従い条例で定めることといたしました。  第四節は、都道府県警察相互間の関係について規定しております。先ず、都道府県警察は、相互に協力する義務があるものと規定し、具体的には警察相互間の援助及び管轄区域外権限行使について規定して警察相互間の協力態勢を強化し、警察事務能率的運営を確保することとしたのであります。  以上これを要するに都道府県警察は、地方公共団体たる都道府県機関として置かれた自治体警察ではありますが、これに国家的性格を有する警察事務を担当するにもふさわしい特長をも具備せしめ、これによつて国家的な要請と地方自治との調和のとれた組織とすることとしたのであります。  第五章は、警察職員に関する事項について規定しております。警察官の階級は長官を除き、警視総監以下九階級といたしました。次に警察官職務を一般的に規定し、警察官職権行使区域についての規定をいたしました。警察官は元来その所属の都道府県警察管轄区域内で職権を行使すべきことを原則としますが、先に述べました援助派遣の場合及び管轄区域外権限行使の場合のほか、例外として現行犯人の逮捕に関する場合及び移動警察の場合についてそれぞれ管轄区域外においても職権を行使し得るよう定めているのであります。又警察職務遂行上必要な小型武器の所持、被服の支給、装備品の貸与、その他警察職員の礼式、服制、表彰についてもこの際それぞれ法律規定をいたし、又皇宮護衛官について所要規定を準用いたしました。  第六章は、緊急事態特別措置に関して規定いたしております、緊急事態規定は、現行法国家非常事態規定と同様とし、警察組織の非常の指揮体制特例として定めたものでありますが、現行法国家非常事態名称はその内容から見て適切を欠くものがあり、かたがた保安庁非常事態規定との均衡上からも誤解を生じやすい点もありますので、名称緊急事態と改め、大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態に際し治安維持のため特に必要がある場合において内閣総理大臣現行通りの方法によつて布告を発し得ることといたしました。次にその布告の効果についてはおおむね現行通りでありますが、機構の改革に伴い一層内閣総理大臣の統制の内容明確化し、その限界と指揮系統を明らかにすると共に、布告に対する国会の承認の手続きについても保安庁の非常事態の場合における措置との均衡を図つたのであります。  第七章は雑則として、警察官検察官との関係が刑事訴訟法の定めによるべきことのほか、恩給と国有財産等の無償使用等について規定いたしております。このうち特に恩給につきましては、今後都道府県地方警察職員について恩給法の規定の準用を認めることとし、又今後相互の異動に際しても恩給については勤務期間を通算し、人事交流を円滑ならしめる途を開きました。  附則は、この法律施行について必要な事項を定めているのでありますか、先ずこの法律施行期日は七月一日といたしております。もとより法律の公布後はできるだけ早期に施行することが望ましいのでありますが、都道府県における予算措置その他政令条例の制定等の準備期間も考慮に入れて七月一日としたものであります。次にこの法律施行のため必要な公安委員の選任手続その他の準備行為は法律施行前にできることといたしました。なおこの法律施行に伴い現在の国家公安委員会都道府県公安委員会は廃止されることになりますが、第四項から第八項までは国家公安委員会都道府県公安委員への最初の委員の任命について主としてその任期を規定しております、第九項及び第十項は警察職員身分の引継ぎについての経過規定であり、この場合現行警察職員身分は、新らしい機構に当然引継かれることとして、現在の警察職員身分保障いたしました。第十一項から第十四項までは、警察財産処理の経過規定で、現在の国家地方警察及び自治体警察の廃止に伴い、これらの警察の用に供されていた財産を新たにできる警察庁又は都道府県警察の用に供するために財産の処理の方途を講ずる必要がありますので、これらの処理が円滑に行われるより、警察財産の譲渡又は使用は、国と都道府県市町村の間における相互の協議によつて行うことといたしました。而してこれら譲渡又は使用は無償を原則とはしますが、当該財産に伴う負債がある場合、その他特別の事情がある場合は債務の承継又は有償とする等の措置を講じ得ることとしたのであります。第十五項は給与に関する経過規定で、現在の警察職員都道府県警察地方職員なつた場合において、若し俸給額が減額となつた場合においても、その差額の調整のため、政令基準に従い条例によつて手当を支給することといたしたのであります。第十六項から第十九項までは、休職、特別待命、懲戒処分、不利益処分、公務災害補償についての経過規定であり、第二十項から第二十七項までは退職手当、恩給及び共済組合に関する経過規定であります。退職手当、恩給については、いずれも制度の切替を円滑にするためこの法律施行に伴う職員身分の変動にもかかわらず従前の在職期間を通算する等の措置を講ずるようにいたし、これらの規定を通じ、制度の切替に当つて職員ができ得る限り不利益を受けることがないように配意をいたした次第であります  以上本法律案の主要な点につきまして、その概略を御説明申上げた次第であります。  次に、警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案内容についてその概要を申上げます。  先ず、第一条においては、警察法施行に伴い、当然不要となります都道府県の所有に属する警察財産等の処理に関する法律、市の警察維持の特例に関する法律及び町村警察維持に関する責任転移の時期の特例に関する法律の廃止を規定しました。第二条以下においては、警察法施行に伴つて当然改正を要する関係法令をその制定順に掲げ、必要な整理改正を加えております。  第二条及び第三条では、民事訴訟法及び関税法中の「警察吏員」の語を整理いたしました。  第四条では、遺失物法第十五条中の、交付を受ける者のない物件を、都道府県警察の設置に伴い、当該都道府県に帰属させるのが当然と存じ「国又は」を削りました  第五条から第八条までは、国税犯則取締法、狩猟法、公益質屋法及び死産の届出に関する規程の改正で、「警察吏員」の語を整理いたしました。  第九条では、裁判所法中の警察官の派出要求について、第十条では、道路交通取締法中の公安委員会その他について警察法施行に伴つて必要と認められる整理をするため、条文に所要改正を加えました。  第十一条から第十三条までは、最初裁判所裁判官国民審査法、消防組織法及び海上保安庁法についての改正で、当然必要な整理をいたしました。  第十四条では、国家公務員共済組合法中従前の国家地方警察職員等で一単位を組織しております組合の構成員が変りますこと等の整理上の改正であります。  第十五条では、風俗営業取締法中当然必要な読替え上の改正と手数料の規定を補つたものであります。  第十六条では、刑事訴訟法の規定中当然必要な読替え上の改正を行いました。  第十七条では、警察官職務執行法を警察官職務執行法に改め、その他警察法施行に伴い当然必要な改正を加えました。  第十八条から第三十五条までの、へい獣処理場等に関する法律検察審査会法、少年法、少年院法、消防法、郵政省設置法、古物営業法、たばこ専売法、総理府設置法、犯罪者予防更生法、大蔵省設置法、水防法、警察用電話等の処理に関する法律、漁業法、公職選挙法、精神衛生法、火薬類取締法、質屋営業法の改正は、いずれも公安委員会警察吏員等に関する必要な整理のための改正であります。  第三十六条の地方公務員法改正は、任命権者が変更されますための規定整理であります。  第三十七条から第四十三条までの銃砲刀剣類等所持取締令、農業委員会法、高圧ガス取締法、出入国管理令、平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律、外国人登録法、破壊活動防止法の改正は、いずれも警察庁都道府県警察の設置のため、又は警察吏員に関する規定整理のための改正であります。  第四十四条の警察等に協力援助した者の災害給付に関する法律改正は、題名を変更し、併せて必要な整理を行なつたものであります。  第四十五条から第五十二条までの法廷等の秩序維持に関する法律、麻薬取締法、海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関する法律、逃亡犯罪人引渡法、有線電気通信法、公衆電気通信法、武器等製造法、町村合併促進法の改正は、警察庁都道府県警察の設置に伴い必要な改正その他用語上当然必要な整理であります。  第五十三条の交通事件即決裁判手続法の改正は、今国会に提案の同法案の附則において道路交通取締法の一部改正を行うことにしておりますので、この改正条文中用語の整理を行なつたのであります。  次に附則でありますが、第一項では、この法律は、警察法施行の日から、但し、第五十三条の規定は、交通事件即決裁判手続法の施行の日から施行することとし、第二項では、この法律施行の際、都道府県公安委員会市町村公安委員会又は特別区公安委員会が行いました許可、免許等の処分で現に効力を有しますものを、引続いて改正後の相当規定による有効な処分とするために必要な経過規定を設け、第三項では、同じくこれらの公安委員会に対してなされた許可、免許等の処分の申請を改正後の相当規定によりなされたものとするために必要な経過規定を設けました。第四項では、道路交通取締法第二十六条第一項に基く道路における禁止行為に関する都道府県知事の定の効力について必要な経過規定を設けました。第五項及び第六項では、改正前の警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律に基き、この法律施行前から引続いて行われている給付については、なお従前の例によるものとすること、及びこの法律施行前に給付原因が発生し、この法律施行の日以後において実施することとなるものについては、従前の負担区分により国、都又は市町村が行うものとすることについて必要な経過規定を設けました。  以上、この法律案につきまして概要を御説明申上げました次第であります。
  10. 内村清次

    委員長内村清次君) 両法案に対ししましては、衆議院におきましては修正議決をされております。よつて修正部分に対する提案理由説明がございます。衆議院議員の西村直己君。
  11. 西村直己

    衆議院議員(西村直己君) 御説明申上げます。衆議院におきます保守三党共同提案によりまして、両法案を修正申上げておりますので、その理由内容の概略を御説明申上げますが、先ず警察法案に対しまする修正部分であります。  修正の第一点でございますが、任免権の点であります、即ち第一に警察庁長官任免は、これを国家公安委員会が、内閣総理大臣の承認を得て行うように改めました。  第二点であります。警視総監任免は、国家公安委員会が都公安委員会同意を得、内閣総理大臣の承認を更に得まして行う、こういうふうに改めたのであります。  第三であります。警察本部長及びその他の都道府県警視正以上の警察官任免国家公安委員会都道府県会安委員会同意を得て行うことに改めることとしたのであります。  即ちこれらの点はいづれも内閣総理大臣又は警察庁長官任免権を持ち、国家公安委員会意見を聞くこととしてあります政府案を、国家公安委員会任免権を持たせまして、その場合に内閣総理大臣の承認を得ること、或いは都道府県公安委員会同意を得て行わしめることにしようとするものであります。その理由といたしまして、民主的な保障の基盤の上に、治安任務遂行能率化責任明確化を図る趣旨からみまして、任命権をいずれに属せしめますかは政府においても相当慎重に考慮されたことと思われるのでありますが、今回の制度の上ではあえて任命権を内閣総理大臣又は警察庁長官に属せしめずともその趣旨は達成できるのでありますし、又、人事権の掌握によつていたずらに無用の誤解を招くようなことは避けたい、こういう趣旨から三派共同の修正の第一点を行なつた次第であります。  次に修正の第二点につきましては、大都市警察問題であります。この点につきましては、大都市即ち五大市を有する府県につきましては特例を加えまして、五大府県公安委員の数を五人とし、そのうち二人は五大市の市長が市議会の同意を得て推薦する者について知事任命することにいたしました。第二に五大市区域内における府県警察本部事務を分掌させるため、市警察部を置き、市警察部長は市警察部の事務を統括し、府県警察本部長の命を受けまして、所属職員指揮監督するものとしたのであります。  大都市警察の問題につきましては、政府案におきましては、府県警察に一元化しているのでありまして、これについては、従来の経験に鑑み、警察運営有機的活動の障害を除去し、警察活動の一体性を保とうという趣旨にある点は了解できるのでありますか、五大市区域内の警察事務には特殊性もあることであり、従つてこれらの市住民の意思を府県警察に反映させるためには、五大府県公安委員の数を二人増加しまして、市より推薦したものを加え、又これらの市部内の事務処理のため市警察部を置くことによりまして、市の実情にも適応した警察運営を図るのが適当であろうと考えまして、このように修正しようとするものであります。  併しながら、五大市警察を今直ちに本法施行と同時に府県に一元化するには準備その他の都合もありしますので、この時機を一ヶ年間延期しまして、その間は府県警察と同様の性格の市の警察として措置することといたしたのであります。従つて、この一年間は五大府県公安委員を五名とする例外規定も停止するものであります。  第三点は、都の公安委員会は五人の委員を以て組織するものと改めたものであります。これは東京都が我が国の首都で、人口は全国の約一割を占め、警察事務も極めて多く、国家的利害関係も複雑でありますので、公安委員を五人とすることが警察事務の処理の上にも、又、民主的保障の上にも適当と考えたのであります。  策四点としては、公安委員資格要件を緩和いたしまして、これを任命前五年間に警察又は検察前歴を有しないものと改めたことであります。政府案におきましても、従前の制限を大幅に緩和いたしておりますが、なお、警察又は検察前歴のある者を欠格要件としておりますことは、その趣旨とするところは一応了解はできますが、少しでも専門の経験を有するものを一切且つ無期限に制限いたしますことは、余りにも厳格に過ぎると思われますので、これを五年前の前歴者までに緩和いたしたものであります。  以上が修正案の要点でありまして、その他これらに伴いまして所要の条文の整理を行いますと共に、警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案につきましても、当然必要な条文の引用上の整理を行なつた次第であります。何とぞ御審議下さいますようにお願いいたします。
  12. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは暫時休憩いたします。    午後三時五十八分休憩    ―――――・―――――    午後五時十一分開会
  13. 内村清次

    委員長内村清次君) 休憩前に引続いてで地方行政委員会を再開いたします。  地方財政法の一部を改正する法律案を議題に供します。  先ず本法案につきまして、政府から補足説明と、逐条説明をお願いいたしますが、これは参議院に設置されておりました補助金等の臨時特例に関する法律に関する特別委員会で修正議決されておりますが、この修正部分と本法案との関連性につきましても、併せて御説明を願いたいと思います。
  14. 後藤博

    政府委員(後藤博君) それでは逐条説明をいたしながら、おつしやいますような改正案について関連して申上げたいと思います。  第四条の二を新らしく加えたのでありますが、これは地方公共団体における年度間の財源の調整を図る措置を財政法の規定として設けたのであります。これは交付税の総額が自動的に定まりますので、年度間の調整を特別会計においてやりまするか、それとも地方同体自体においてやるかという問題があるのでありますが、地方団体自体において年度間の調整をいたしまして、特別会計の中での借入、積立方式をやめるということにいたしましのであります。従いまして年度間の調整についての一つの指針を財政法の中に入れたいと考えまして、この新らしい規定を設けたのであります。で、地方同体が当該年度間において地方交付税の定めるところによりまして交付を受けた交付税の額と、その算定に用いられました財源不足額とが合わない場合、財源不足額以上の交付税の額を交付を受けました場合には、災害その他止むを得ない事由がある場合を除くほかはその一部を将来積立てまして、地方債の償還財源に充てますとか、その他事年度以降に要します経費を節約いたしまするような措置を講ずる、こういうことにいたしておるのであります 積立の場合だけ、つまり超過しております場合だけを申しておるのでありまして、下足の場合には基準財政額を調整いたしまして交付するということに交付税法のほうでなつておりますので、積立の場合だけをここに書いたわけであります。  それから第五条は起債の制限規定でありますが、これは新らしくたばこ消費税が設けられまするので、それから府県民税が設けられまするので、それに伴います改正でありまして、たばこ消費税は一定税率の税でございますので、普通税のうちで、電気ガス税でありますとか、入場税、鉱区税のようなものと同じように、制限規定の普通税の中から除くことにいたしておるのであります。入場税が国税になりましたので、それに替えましてたばこ消費税をそこに入れるわけでございます、それから標準税率以上を取つておらなければ一般の起債は認めないということになつておりますので、個人に対する府県民税の所得割についてはその標準率を使うというふうに修正規定を入れたわけであります。  それから第三項は、道府県民税が設けられたのに伴いまして、市町村民税の標準税率が変つたので、従来の「百分の十八」というのを「百分の十三」に改正をしたいと考えておるのであります。それからあとのほうの「百分の七・五」というのは、これはオプシヨン・ツーのほう、第二方式のほうの制限税率が「百分の十」から「百分の七・五」に変りますので、それに伴う改正であります。  それから第五条は、起債につきまして商法の規定を従来準用いたしておるのでありますが、従来の準用規定ではなお不備でありますので、更にこの際記名社債の対抗用件の規定でありますとか、社債の償還請求権の時効の規定を準用いたしたいと考えております。商法の三百七条というのは記名社債の対抗要件の規定であります。それから三百十六条というのは社債の償還請求権の時効は十年でありますが、利息は五年でありますが、この時効の規定を新らしくかえたいと考えておるのであります、更にあとのほうの挿入いたしました改正規定は、「記名社債」とありますのを「記名地方債」というふうに読替え、「社債原簿」を「地方債証券原簿」と、「会社」とありますのを「地方公共団体」と、こういうふうに読替えをいたしまして、商法の規定を準用いたしたいと考える次第でございます。  それから第十条の規定改正は、この規定は、国がその全部又は一部を負担する法令に基いて実施しなければならない事務に要する経費負担区分の規定でありますが、その二十二号の末引揚邦人の調査に要する経費を落しまして、これは国のみの事務でありますので、第十条の四のほうに移しまして、地方団体は経費負担しないことにいたしまして、新らしく漁業関係調整に要する経費を加えております。漁業関係調整に要する経費は従来専ら国のためにする事務でありまするので、今回委員手当のみ国が全額負担することとなりまして、他は二分の一乃至る三分の二の負担に変わりましたので、ここに新らしく挿入いたしたわけであります  それから第十条の三でありますが、これは国がその一部を負担する災害に係る事務に要する経費規定であります。これは交付金を交付税に読替える規定であります。  それから第十条の四でありますか、これは地方公共同体が負担する義務を負わない経費規定でありますが、六号に新らしく「あへんの取締に要する経費」を加えまして、従来の六号以下をずらしたのであります。そうして先ほど申上げました「米引揚邦人の調査に要する経費」の号を新らしく起したわけであります。  それから次に第十一条の二でありますが、これは「交付金」を「交付税」と読替える規定であります。  十二条は、国家地方警察は今度警察法改正に伴つて警察庁に要する経費、これは地方公共団体が処理する権限を有しない事務に要する経費規定でありますので、警察庁に要する経費だけをここに掲げることにいたしたわけでございます。  第二十六条は「地方財政平衡交付金」を「地方点交付税」に改める規定であります。  それから次の三十六条の規定でありますが、これは国がその全部又は一部を負担する法令に基いて実施しなければならない事務に要する経費に関する特例規定でありますが、第十条の第七号の二と申しますのは、母子相談員に要する経費規定であります。それから同八号と申しますのは、母子手帳に損する部分規定でありますが、当初この両方とも補助金等の臨時特例等に関する法律によりまして、補助停止することになつておりますので、当分の間適用しない特例に改めたのであります。併しその後参議院のほうでこの規定の修正がございまして、これを臨時特例等の法律施行前に負担すべきことになりましたものにつきましてはやはり補助金が出る、こういうことに相成りましたので、施行後の部分だけがこの特例規定の適用を受けまして、施行適正のものは従事通り補助金があることに相成つたのであります。この点が参議院の修正によりまして財政法の修正を要する点であります、  それから附則でありますか、「この法律は、昭和二十九年四月一日から施行する。」これも衆議院のほうで直して頂きました。  それから第二項の「警察庁」とありまするのは、警察法は七月一日から施行されますから、六月三十日までは「国家地方警察」と読替えるという規定であります。  以上簡単に逐条説明を申上げました。
  15. 内村清次

    委員長内村清次君) この附則の昭和二十九年四月一日というのは何日ということになりましたか。
  16. 後藤博

    政府委員(後藤博君) これは衆議院のほうから修正したものが、こちらに参つていると思います。
  17. 秋山長造

    ○秋山長造君 この衆議院修正の説明をちよつとついでにしておいてもらつたほうがよいと思います。
  18. 柴田護

    説明員柴田護君) 衆議院で行われました修正につきまして、ここに私から御説明申上げます。  衆議院におきます修正の第一点は、三十六条の改正規定でございますが、政府原案は「当分の間」となつておりましたが、それを補助金等の臨時特例等に関しまする法律で、地方財政法でいじつております負担関係施行が、負担関係の条文が時限法になりまして、「当分の間」が昭和二十九年度限りになりましたので、それに合せまして三十六条につきましても「当分の間」ありますのを「昭和二十九年度に限り」というふうに直したのが、点であります。  それからいま一点は附則の施行関係でございまして、「この法律は昭和二十九年四月一日から施行する。」となつておりますが、これが地方税法の成立、並びに補助金等の臨時特例等に関しまする法律成立が遅れておりましたので、衆議院におきましては附則の一項を全文修正いたしまして、「この法律は、公布の日から施行し、第五条の改正規定は昭和二十九年度分の地方税から、第十条、第十条の四及び第三十六条の改正規定は同年度分の負担金から適用する。」というように改められておりますで「第五条の改正規定」と申しますのは、起債の、地方債の制限に関しまする税の是正整備に関しまする規定でありまするか、これは附則の規定改正しておきませんと、四月一日から施行になりますと平仄が合わなくなるわけでありますので、公布の日から施行するが、適用は昭和二十九年度分の地方税から適用する。それから第十条、第十条の四及び第三十六条の規定は国と地方団体の経費負担に関しまする規定でありますが、この負担に関しまする規定は、昭和二十九年度分の負担金から適用するというふうに改められたのであります、ただ先ほど財政部長から御説明申上げましたように、この部分が更に参議院におきまして補助金等の臨時特例等に関しまする法律が更に修正されまして、この地方財政法関係いたします条文では、策十条と、それから第三十六条のこの母子相談員と母子手帳に関しまする部分につきましては、補助金等の臨時特例等に関しまする法律では、その法律の公布の日以前におきまして国が負担すべきこととなつ負担金につきましては、国が負担するのであつて、補助金等の臨時特例等に関しまする法律施行後におきまして生じた経費につきましては、地方団体が全部持つのだというふうに変わりましたので、それに合せまして、三十六条の部分と、附則の第一項の部分につきまして、所要の修正が必要ではないかと考えております。
  19. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 質疑に人つてもいいですか。
  20. 内村清次

    委員長内村清次君) ええ、結構です。
  21. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私二、三伺いたいと思うのでありまするが、今度のこの補助金等の臨時特例等に関する法律案によつて、大分この文部省関係、或いは厚生省関係、農林省関係、その他の各省関係において補助金が打切りになつたり、或いは減額されるようなことになつておりますが、勿論この中には私今はつきりわかつておりませんけれども、修正になつたものが文部関係にもあつたようでございまして、そういうことが当然これは地方財政に影響を及ぼして来るだろうと思うのでありますが、その初めの財政計画と比べまして、どういうふうな一体事情の変化があつたか、この点について……。
  22. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 修正された部分につきましては、大体補助がつかなかつたものがつくようになりましたのは、今申上げました母子相談員に関する経費と母子手帳に関する経費、これだけが施行までの間つくというのでありまして、修正されましたものは、補助率が多くなつたものであります。従つて財政的には、従来地方負担となるべきものが歳入のほうに補助金の増額として現われて来るだけでありまして、財政規模今上体には影響しません。収入のほうが殖えて来る恰好になります、で大体私どもも現在の財政計画を変えなくてもやつて行けるように考えております。
  23. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そうすると、それのために地方負担が増すといようなことはあり得ない、こういうふうに了解してでもいいのだな。
  24. 後藤博

    政府委員(後藤博君) さように考えております。
  25. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それでは次の点をお伺いしたいのでありまするが、今の修正案の説明で以て、この三十六条のこの「当分の間」というふうなものが二十九年度限りと、こういうふうに修正されたというふうなお話でありますが、この初めに当りまして政府としては、この「当分の間」というふうなことをどういうふうにお考えになつておられるのでありますか。こんな点を一つ……。
  26. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) これは今、年のこの補助金の整理は、一つは本質的な物の考え方から来る部分があるのと、もう一つはここ一両年の間のこの財政緊縮とどう歩調を合せて行くかということがあるわけなんであります。「当分の間」という考え方は、整理されたものをその観点から考えまして、財政の緊縮状態というものを続けて行く必要のある間はこれをやつて行きたい、こういう考え方であつたわけであります。それが国会側におきまして、まあそういう認識は恐らく二十九年度で済むであろうという認識に立つて、国会側が御修正になつたと、こういうように私はお伺いをいたしております。
  27. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そうしますというと、国会側のこの考え方と政府の考え方というものには、本質的に違いが、相違ができて来た、こういうことになりますが、今後の地方財政の本義から考えて、やはり国会側の修正のほうが正しいとお考えになつておるのでございますね。
  28. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) これはまあどちらが正しいというのではないのではないかと思うのでありまして、恐らくこの同じような状態が続く限りは、やはり来年も同じような措置をして行かなければならないと思うのでありまして、ただ我々政府側が「当分の間」と当初考えましたのは、そういう状態は一年では恐らく片付かないのじやないだろうかということであつたと思うのでありますが、まあ国会側は一年で大体あとは……、そこまでせんでもやつて行ける状態が出て来るのではないだろうかという御認識であつたと思うのであります。従つて二十九年度とお考えになつておる国会側のお考えは、三十年度になつて又別の状態であるならば、又考えようということであると思います。
  29. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 一体この母子関係経費というものは、どのくらいにお読みになつておりますか。
  30. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 母子相談員の設置費の補助でありますが、これが二十八年度の経費は九千五百九十九万円であります。二十八年度がそうでありますが、それから二十九年度が八千八号五万二千円であります。そのうち二十八年度は国費が四千七百九十九万五千円であります。それから地方費が四千七百……、これは同額であります。二分の一補助でありますから同額であります。それから二十九年度は全部地方負担ということになつております。財政計画上はこういうものは地方では落せない費用と思いまするので、財政規模のうちからは落としておりません。財政需要のほうから落さないで、これは交付金で出すという考え方に立つております。従つて負担関係地方負担だけになりましても、やはりそういう財政需要はあるという考え方を私もして、おつたのであります。
  31. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そうしますと、今度は二十九年度は全部国の負担はやめちやつたわけですな。それで地方負担だけにすると、二十八年度はもう国の負担というのは僅かに四千七百九十九万程度ですな。これを一体こういうふうな社会的なものをこれを、削つてしまうとか、或いは三十九年度限りにするとかいうことは、国自体が予算の上から何と言いますか、一兆億の予算の枠というようなことからこういう社会施設を、まあ社会保障的なものを犠牲にしているのじやないかと見ているのです。こういうけちなやり方は私は国としてとるべきでないというふうに考えられるのでありますが、そこでこの二十九年度から全部地方負担にするとすれば、これは交付税によつて賄われることになりますか。
  32. 後藤博

    政府委員(後藤博君) そうであります。
  33. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 こういうふうなものを地方負担にして、而もこの交付税によつて賄うなんていうようなことは、私は相当考えるべきことだと思う。むしろ国が進んでこういうふうなものについては国の負担にすべきだと思うのであるがどうですか、長官の考え方は……。
  34. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) これはさつき私一般に整理される部分を前提にして申上げたのですが、中にこれのように国からの補助の形、つまり紐をつけて出すという形のものを交付金にまとめるというふうの補助金の整理も相当数あるわけであります。これはまあどういう考え方から出て来ておるかと申しますと、財政計画全体といたしましては、紐をつけて出すことによる富裕団体のロスを削るということと、それから更に交付税で行くものと紐をつけて行くものの扱いの上の違いは、非常に小さなものがたくさんに小分けされて行くということのために事務も殖えますし、そういうものは成るべくまとめて交付税で出してしまうという考え方から出て来るのでありましてで、まあ私はこういう性質の実は細かい補助金というものは、これは当面の事態とは別個に成るべく平衡交付金に統合するのがむしろ平衡交付金の制度としては正しかつたのではないかと、こういうふうに考えておるわけです。まあ併し少くともこの法律、それからして国会側における御修正はそういう考え方ではありませんようでありますが、大体若木委員のお尋ねのお考えに対して私は今申上げるように、むしろこれは今までのように紐付で火元へ戻して行くということよりも、交付税でまとめて出すというほうがいいのじやないか、まあこういう感じを私は持つているわけであります。
  35. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私はまあ重ねて申上げますけれども、社会保障制度というふうなことが重要視されるのであれば、真先にこういうふうな問題は国の負担において賄われるべきものでありまして、いわゆる一定の割合で以て交付されるところの交付税をなどでやるべきものでない、こういうものこそ全く純粋な国費負担によるべきものである、こういうふうな見解を持つておりますので、まあ見解の相違だと思います。  そこで、もう一つ細かいことになりますが、伺いたいのは、今衆議院の修正で、この母子手帳関係のものは、この法律施行後のものに対してはどうなんですか。施行されたのちにおいてはこれは地方負担になるわけですか。施行前のものは国が負担するのである。こういうことになるわけですね。
  36. 後藤博

    政府委員(後藤博君) そうです。
  37. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 ところが二十九年度の分は、初めから地方負担になつているのじやないですか。これはどういうふうになつていますか。
  38. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 財政計画は、先ほど申しましたように、全額地方負担と、こういつたようにまあ組んであるわけであります。併しこの法律施行前の経費、補助金等の法律施行前の経費につきましては、二分の一負担、こういうことに相成りまするので、この分だけ地方団体の歳入のほうが多くなつて、財政計画上は余裕が出て来る、こういうことに相成ります。
  39. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そうすると、実際のこの事情は、もう施行前に相当手帳などについては手配をして実施をしているのではありませんか。その事情はどうなんですか。
  40. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 私どもはこの補助金等が廃正されましてもやはり事業はある、又地方団体としてやらなければならない事業という考え方をいたしておりまして、財政需要のほうから落しておりません。従つて地方団体としては、やはりおつしやいます通りに、その準備をやはりしているのであります。従つてその経費は交付金ということであつたのでありますが、一部が今度は補助金の恰好で出て参ることになるわけであります。
  41. 秋山長造

    ○秋山長造君 四条の二の問題ですが、年度間の調整の点について、「基準財政需要額を著しくこえる場合」というのは、何か段階があるのですか。
  42. 後藤博

    政府委員(後藤博君) この規定は先ほどちよつと申しましたように、一つの財政運営の指針を与えるという意味の規定であります。いわば精神的な規定でございます。従つて少額の場合までこういう措置をとらなくてもいいのじやないか。それで著しく超えている場合に限つて地方債の償還財源に充てますとか、翌年度以降の財政が節約されるようなことに使つてもらいたいという意味でありまして、著しくというのは、私どもは別に何%以上が著しくというふうに細かくは考えておりません。
  43. 秋山長造

    ○秋山長造君 併し特にこういう規定を新らしく設けて地方財政の計画的な運営を確保しようという大きな目的を持つている以上は、何らかの面でやはり地方財政のやり繰りというものに対して、例えば自治庁のほうで絶えず見ておつて、助言なり或いは指導をされるというようなおつもりがあるんじやないのですか。
  44. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 財源不足額と、それから交付税の額とが違つて、交付税の額が多くなつて参りました場合には全体的に多くなつて行くわけであります。従つて地方団体に対しましては、そういうときには全体的にこういう措置をとつたほうがよろしいという私ども指示をいたして行きたいと考えております。個々の団体、特殊な団体だけにこういうものができるのではなくて、全体的にそういう現象が起きて来るだろうと思いますので、その場合にはやはりそのときの地方財政の状況を睨んでやはり措置して行きたい、かように考えております。
  45. 秋山長造

    ○秋山長造君 その点、全般的に基準財政区需要額を著しく超えるというような現象が起きて来るとおつしやるんですが、現在の地方団体の財政状態というものは千差万別、びんからきりまであつて随分でこぼこがあると思うのです。その場合に全般的にここに書いてあるように、著しくこういうような現象が起つて来るというようなことが、果してこの地方交付税制度の下において予想されるかどうかということは、私は非常に疑問を持つのです。と申しますのは、先だつても交付税なり財政計画の問題で繰返し繰返しこの委員会でも議論が出たように、大体今年の財政計画は非常に切り詰めた窮屈なものであるということはもう周知の通りなんです。従つて又あの交付税の千二百十六億という数字にしても、一応いろいろ合理的な根拠の説明はありましたけれども、やはりその底には、相当無理をしてぎりぎりのところまで切り詰めて出された数字であり、又それを基礎にしてはじき出したあの二〇%という比率も、これ又かなり今日の地方財政の実情なり、或いは現実の必要ということから考えると、これは内輪に見積られた無理なパーセンテージであるというように考えられる。で、そういう地方交付税制度の下において、例えば本年あたりこの四条の二の規定が当てはまるような現象が起るかどうかということは、私は恐らくそういうことは起らんので、むしろ逆な場合が軒並みに起つて来るんじやないかというようなことも考える。そういう点の見通しは如何でしようか。
  46. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) これはまあ今年の問題ということでありますと、恐らく逆な状態が起つて来るとは思いませんが、ここにいうように、余つて積立てをするほどに出て来るとは私も思いませんし、又今年のはそういうことが起らないような大体計算基礎であの額をきめております。ただ今度の交付税制度は、御承知のように法人税、所得税、酒税のその率で以てきめておりますし、そのほか入場譲与税にいたしましても、いろいろそういう工合に率できめて額で押えていないものがあるものでありますからして、増収があつた場合には、今年の分は三十一年度に行つて出て来るわけであります。年度間に非常に波が打つものでありますからして、さつきも財政部長が逐条説明のときに申上げましたように、本来から行けば地方同体全体としてこれはどこまでもプールしておいて、余つたときには押える、足りないときにはそこから足してやるというようにすべきが一つの構想であつたと思います。その構想がいろいろな事情でやはり過当でないということで、とにかく来たたけは全部その基準従つて配分してしまう、こういうことになつております。従つて年度によつては私はやはり非常に余るということが出て来ると思います。勿論余ると申しますのは、金が使い途がないほど、若しくは非常に地方財政が窮乏しておるが、非常にそれが楽になつたというような意味において余るということではありませんで、ここにも誓いてありますように、交付税の額と基準財政収入額との合計額が基準財政需要額を超える。どちらもこれは計算の上の数字でありますから、これを超えるという事態は年度によつて確かに私は出て来ると思います。それで一番案じますのは、こういう規定が全然なくて、各自治団体の自由に任されております場合に、まとまつてうんと入つて来た年に財政規模を膨らましてしまう、その膨らました財政規模というものはなかなかこれは締めにくいものでありますから、後年度に行つてつて豊かに余計来た年には財政規模を膨らましたために、又あとで財政窮乏を生ずるというようなことがあつてはこれは非常に困るということで、そこのところを抑えるという意味のこれは一つの保障規定という意味であるわけであります。
  47. 秋山長造

    ○秋山長造君 これを各地方団体それぞれ自主的に調整額の一部を積立てさせるということで、まあそれはその通り調整額がどんどんできて、そうしてそれを又正直に積立つて来れば一番いいわけであります。併し果して調整額が出たかどうかというようなこと、或いは出るかどうかというようなこと、或いは更にその程度が、著しくという言葉に当てはまる程度かどうかということについては、なかなかこれ又異論が出て、そう注文通りには今の地方財政の実情からいうと行きにくいんじやないかと思う。そこでこういうことを飽くまで地方財政の健全化のためにやろうということならば、むしろこれも一つの方法ではあろうけれども、あの地方制度調査会の答申案も、地方団体中央金庫、ああいうものを早く作つて、そうしてまあ政府のほうからも出資をするんでしようが、地方団体からもこういう積立に充て得るというようなものがあれば、ああいうものへ出資させるというようなことは考えられませんか。
  48. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) これはまあ余つたものをどういう工合にするかという場合に、積立てておるものをああいうところに出資するということも勿論これは考えられないではありませんが、併しああいうものに出資するしないは別にして、今申上げたようなこれは余つたときには使わないでおく、若しくは積立てないにしても将来の財政負担を減じ得るような面に使うというようなことの必要は同じように私はあると思います。これもさつき部長から申上げましたように、結局交付税をもらう団体たけについての話でありまして、現在も交付税をもらわない団体には超過財源と称するものがある所は皆基準財政需要額よりも余計収入がある所なので、そういう所は今は別にこういう措置をしろというようにはなつていない。従つて交付税をもらう団体について言いますならば、総額が相当伸びて参りますときには一律に、これは大体同じ比率においてということで、絶対額は勿論交付税の必要額によつて違うでありましようが、率においては大体一律に殖えて行くはずでありますからして、そういう程度によりまして中央から指示をすることによつて積立を必要とするような事態のときには、大体各団体一律に行われるようになるであろうというように私どもは考えておるわけであります。
  49. 秋山長造

    ○秋山長造君 この規定は交付税の交付団体を対象にしてあるようですが、併し不交付団体にしても同じような場合があるわけだと思うのですが、そういう不交付団体に対してもやはりこの趣旨でおやりになるわけですね。
  50. 後藤博

    政府委員(後藤博君) この規定は必ずしもこの交付団体だけを狙つているわけじやありません。不交付団体を含めてやはりこういう財政運営をしてもらいたいという趣旨であります。
  51. 秋山長造

    ○秋山長造君 その、不交付団体に対する趣旨はやはりこれに含まれているのですか。どこにあるのですか。例えばこの間新聞に出ておりました自治庁のほうで東京都の財政勧告をやつておられる。東京都のような不交付団体にしても、やはり都のほうの言い分は、非常に歳入不足で赤字だとやかましく言つて起債の申請なんかもしている。ところが自治庁のほうの財政勧告によりますと、やはり相当余るはずだというような勧告が出ている。そういうようなことになりますと、ただこれを交付団体だけの問題でなしに不交付団体に対しても、むしろ不交付団体のほうかより強くこういう規定が必要なんじやないかと思うのですが……。
  52. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) これはさつきも申上げましたように、年度間に波を打つものを調整をして行くという考え方なんでありますから、平常の状態においていつもこの超過財源が出るという団体には、この考え方はこれは必ずしも当つておらんのでありまして、ただその基準財政需要額よりも成る年に非常にたくさんの収入があつた、その超過の仕方が非常に成る年は多いが、他の年になつて減るという状態が想像される場合には恐らくこの趣旨で以てやつて打かなければならん。そうでない場合には今の交付税制度、又今までの交付金制度というものは超過財源がある場合にはそれはそれぞれの自治団体の需要に充てられて然るべしという考え方になつておるわけであります。そこまでこれを制約して行うという考えは持つておりませんし、そこまでつたのではちよつと無理じやないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  53. 秋山長造

    ○秋山長造君 その考え方は一応わかりますが、それからですね、翌年度以降における財政の健全な運営に充てる、こういうことなんですが、現在地方団体においては赤字を抱えている団体が非常に多い。そういう過去の赤字の問題はここでは考えていないわけですか。
  54. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 先ほどちよつと申上げましたように、ここに現年度以降の経費の節約になるこような措置を講じてもらいたいという意味でありまして、具体的に申上げますと、例えば継続的な、投資的な事業の繰上施行をするとか、例えばそのほか災害復旧事業を繰上げて施行しますとか、そういうことを私どもは考えているのであります。
  55. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、まあ今日までの赤字対策というようなものはこれでは全然考えてない、又別な方法で考えられるということなんですか。
  56. 後藤博

    政府委員(後藤博君) この条文自体ば従来の赤字そのものを対象にはされておりません。
  57. 秋山長造

    ○秋山長造君 その点は今衆議院のほうで審議しておられる再建整備法等によつて解決して行こうという方針なんですか。
  58. 後藤博

    政府委員(後藤博君) できればそういう方向において解決したいと考えております。
  59. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 ちよつとお伺いいたしますが、この補助金等の臨時特例等に関する法律案、あの新たに入学する児童に対する教科用図書の給与に関する法律、これは修正によつて復活したのじやなかつたのですか。この点どうですか。
  60. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 二十九年度復活しております。
  61. 館哲二

    ○館哲二君 今までできた分にはやるというのでしよう。
  62. 小林武治

    ○小林武治君 全体としては復活しない……。
  63. 後藤博

    政府委員(後藤博君) こういうふうな第六条の規定、これは昭和二十八年度以前に新たに入学した児童に対する教科用図書の給与及びその法律施行前に新たに入学する児童に対する教科用図書の給与に関する法律に基くものとして、昭和二十九年度新たに入学した児童に対して行なつた教科用図書の給与に関しては適用しない、ですから間違つておりました。
  64. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 復活しておりませんか。私復活したように思つておつたんですが、復活したのならばこれは地方負担という面は当然出て来るだろうと思います。私ちよつとわからなかつたものですから……。
  65. 石村幸作

    ○石村幸作君 如何です、ここらで質疑を打切つて散会したら……、
  66. 加瀬完

    ○加瀬完君 前の方から出たかも知れませんが、遅れて誠に相済みませんが、今も秋田委員のほうから出ておつた問題でありますが、第四条の二の問題でありますが、「基準財政収入額、との合算額が東学交付税の算定に用いられた基準財政需要額を著しくこえる場合」というものが具体的に考えられるのでありますか、
  67. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 先ほども長官からお話がありましたが、本年度はちよつと考えられません。併し本年の例えば国税の税収が非常に伸びて参りますえと、再来年の交付税額は非常に多く会つて参る、まあそういう国税の伸びる見込がどの程度かによつてきまるのであります。従つて二〇%が非常に国税が伸びることによつて伸びた場合及びその決算が非常に伸びた場合には、やはりこういう事態が私どもも生じ得ると考えております。
  68. 加瀬完

    ○加瀬完君 理論的にはこういうことが考えられますけれども、例えば交付税の増収が相当見込まれるということになりますると、その計算基礎である財政需要額をも事実上は成る程度まで伸ばすということになりまするので、実際的な場合にはこういつたような法文が使われるということは非常に少いということにならないでしようか。
  69. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) まあそういうことが恐らく考えられると思います。大体自然増収というものが起きるときには、必要も、需要も伸びると考えなければなりません。ただそれが、年度によつてずれて行くのでありまして、今申上げましたように、今年の余りが三十一年年度に行つて出るものでありますからして、その三十一年度までに物価が上つて或いは需要を伸さなければならなくなるかも知れません。併し普通で行けば、このまま同じような物価状態で続いて行くということになると、やはり出て来なければならないはずなんです。これはまあ運用実際になつてみなければわかりませんが、併しこういうものが出て来ると考えられる理由は、年度のズレによるものであります。
  70. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは本委員会におきましても、平年度における交付税の率の二五%という修正案が二二%に変更されたわけでありまするが、自治庁といたしましては、恐らく二五%というものを主張される、と言うと言葉が適当ではありませんが、やや二五%のほうにむしろ肩を持たれておられたんじやないかと思うのですが、こういうふうなことが考えられるといたしますと、これはどうしても二五%といつたような率からすれば、当然こういう余りを生ずるというふうに解釈されないわけでもないと思う。足りないということであるならば、二二%では非常に交付税が少いじやないかということであるならば、こういつたような理論的にもこういうふうな考え方をするということにも非常に無理があるのじやないかというふうにも考えられますが、その間の関係は如何でございましようか。
  71. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) これは二五%になりますと、私ども当初考えたよりも二百億、今度の修正でその中間の線をとつて頂いたわけでありますが、併し仮に二十五%になつたときに、それではその線まで基準財政需要を伸ばすという考え方をとれるかどうかということが結局この両方の数字の差額が出て来るかどうかという判断の基準になると思うのですが、併し私どもが当初財政計画を組みました時分いろいろ大蔵省と折衝いたしましての経過から申しますならば、やはり二五%になつた数字、つまり私どもが当初の財政計画にプラス二百億した数字というところまでは、基準財政需要のどの画かを直すという考え方がいけないのじやないか、今度中間の線をとつて頂きましたのは、むしろあの当初の計画のときに予期しないでその後はつきりして来た問題と、それからその後に国会において修正をされたことによる減収の状態というものがあの線で以てカバーして頂いたということにもなるのでありますからして、考え方といたしましては、収入か伸びて来る、再来年あたり収入が伸びて来る、それに合わして財政需要を伸ばすという考え方には行かないだろうと私ども思つておるわけであります。
  72. 加瀬完

    ○加瀬完君 私ども考えますのには、基準財政需需要というものから考えまして、交付税が二五%程度なければ足りないのじやないかというふうに考えたいと思う。そういう考え方を若しお認め頂けるとするならば、二十五%なければ基準財政需要が賄いかねるというのであるのに、二五%程度にも行かないということであるならば、この基準財政需要額と基準財政収入額との関係がこの四条の二のような形によつては現れない。その現れるということを想定するということは、現在の基準財政需要額よりも交付税が遙かに上廻つておるということを是認する立場になるのじやないか。それでは地方財政の強化或いは地方財源の拡充ということからすれば、非常にむしろ交付税というものは満ち足りておるのだというふうに解せられてますいのではないかというふうにも考えられるんですか、その点如何でしようか。
  73. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) これはいろいろと御意見がございますと思うのでありますが、私どもといたしましては、二十九年度については今の財政計画、それから三十年度につきましては国会側において御修正願つたあの交付税、及びたばこ消費税のほうはこれは大蔵省がまあ約束した程度でありますが、そういうもので大体財政計画にマツチしておると、こういうように考えておるわけでありますからして、私どもの考え方といたしましても、自然増収などがあつた場合には四条の二が想定しておるような事態が必ず出て来ると思う。大蔵省側が交付税をいじることに非常に消極的でありましたのは、大蔵省は、私ども地方自治長官として国の財政の状態や懐ろ状態を少し推察いたしますと、相当今年の国家財政の面に見積つてあります国の所得税及び法人税収入などには伸びがあるという見通しがどうもあるらしいのでありまして、それがあるものだから、それがそのまま次年度以降に出て来るのに、率を現在の数字を基礎に考えられるというところに御不満があつたろうと我々は想像しておる。相当私どもも国の国家予算に見積られておる法人税、所得税、又全体の税収を引つくるめて一千億くらいあるのではないかという想像がなされておるのでありますが、仮に法人税、所得税の部分だけでも少くとも合の半分を越えるものかあるであろうというのが一般的に想像されておる財政状態であります。
  74. 秋山長造

    ○秋山長造君 今の一千億も自然増収があるというようなことは、これは予想の問題ですけれども、今年のデフレ政策で中小企業が軒並みに開店休業というような状態では、よほど徴税攻勢をかけて無理をすれば……それでもむずかしいことではないかと思うのですが、それは今後の問題ですが、併し仮にそういうようなことがありまして、非常に或る地方が得をするというようなことが仮にあつたとしても、そういうことかあつた場合には、交付税法の何条かの規定によつて又二〇%という率を憂えようということになるのじやないですか。
  75. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 一年くらい非常にそういう自然増収がありましても変えないという建前になつておりますか、引続いてそうえいう著しい差が出て来ない限りは、やはり変えないという建前に立つております。従つて、一年以上続くという場合に初めてこういう額が問題になつて来る、そういう考え方にいたしております。
  76. 秋山長造

    ○秋山長造君 あの交付税法の中に「引き続いて……著しく」という言葉がありましたね。あの著しく」という程度と、ここに書いてある「著しく」と人体同じ程度なんですか、どの程度なんですか。
  77. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 必ずしも私ども同じとは考えておりません。先ほども申上げましたように、個々の団体の財政というのは、赤字のある所もありますし、ない所もありますし、その赤字が本当に止むを得ない赤字という所も私どもはあると思うのであります、従つてこの「著しく」というのは相当厳格に解釈しなくて、やはりその団体の財政状況によつてやはり或る程度ニユアンスをつけていいんではないかと、かように考えております。
  78. 加瀬完

    ○加瀬完君 この御説明にありますように、問題は地方団体の一般財源が基準財政需要額を著しく超えるような場合が一体想定されるだろうかどうかということが一つの問題になるのじやないかと思うのです。もう一つは財政規模の激変を避けて、交付税が財政需要額に不足する場合に対処する等のために超過額の一部を積立てるということでございますが、財政規模の激変を避けるということは当然でありますが、財政規模そのものが現状の地方団体においては相当圧縮された財政規模にあるのじやないかと思うのです。だから少しこれに緩みを与えなければまあ平常の財政需要と言われない場合がたくさんあるのじやないか。でこの現状の財政規模というものをこれが普通の平常な財政規模だと自治庁はお認めになられておるかどうか。この二つの点を考えますと、どうしても当該超過額の一部を積立てるということに方向が強くなりますと、いつまでたつても交付税というものは或る程度で抑えられるということになりまして、交付税の性格というものがむしろ非常に地方財政を抑えるという方向になるのじやないかということが心配されるのでありますが、この点は如何でしようか。
  79. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) これは現在の財政規模がこれでいいか悪いかという問題はまあ立場によつていろいろに御意見があると思うのであります。併し若しも現在の財政規模そのものが全体として私は非常に無理があるという、そして又今日の国家財政の事情でこれが何とかできるべき性質のものだということであれば、それを直さなければなりませんのでありまして、私どもはそれを直さない今の立場をとつております以上、まあ一応これでやつてつてもらいたいと、こういうまあ考え方であるわけであります。何よりも私どもが心配いたしますのは、この今度の新らしい交付税制度は、必然的に想定されますのは、年度によつて収入の工合が波を打つ危険が非常にあるわけであります。そういうような波を打つ危険があるときに、或る年度に取入か余計あることによつて、それに合わせて財政規模をきめてしまわれると、今度一旦ふくらませた財政はこれはなかなか締められないものでありますからして、そのことのために後年度において赤字というものが出て来るということを一番避けなければならない。だからしてそういつた事情、成る年度に特殊な事情で以て収入が殖えたというものはこれは使わないで蓄えておいて欲しいと、こういう考え方でありまして、若し本当にそういうふうな非常にたくさん収入があつたときの財政規模でやつて行かなければならないという認定に立たざるを得なくなれば、これはその面で別に考えて行かなければならないと、こういう考え方をしているのであります。
  80. 加瀬完

    ○加瀬完君 私の申上げるのはそういう意味じやないのであります。収入のあるときの財政需要額を基とするということには非常にこれは問題があるわけでございまして、その点は同感であります。そうではなくして、現在の財政規模というものは余りにも圧縮され過ぎているのじやないか。だから現状における財政規模というものをこれを平常普通な形における財政標準の規模と認めるということには相当無理があるのじやないか。もつと同情をして見てもらわなければならない面があるのじやないか。そういう点から考えまする場合に、この一般財源が基準財政需要額を著しく越えるというようなことはよしあつたにしても、それは財政規模そのものを幾らか緩めてやるという方向に使わるべきものであつて、財政規模をそのまま抑えておいて、こういうふうに超過額の一部を積立てるという方式をとつて行くと、どうしても国の方針で地方の財政は変化をさせることができないということになつて、交付税に抑えられる財政規模ということになるのじやないか。これでは平衡交付金制度のときとは、交付税になりましてから遙かに地方にとりましては交付税の弊害、悪い面だけが押しかぶさつて来るということになる慮れがある。この御心配はないのかと、こういう点であります。
  81. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 加瀬完生の場合は、どうも現在の基準財政需要が動かないという前提に立つてお話されておるように承わつたのであります。
  82. 加瀬完

    ○加瀬完君 長官はそうおつしやつております。
  83. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 私どもは基準財政需要額もその後やはり改善をされて行くべき点があると思つております。従つて改善をいたしまするが、基準財政需要額でありまするから、従つて一定の限度しかやはり改善の余地がないのであります。改善いたしましても一定の限度しかないといたしますと、やはりそれを上廻るということが生じて来るのであります。これは観念的な議論になるかも知れませんが、そういうこともやはり考えられまするので、固定したものという考え方ではなくて、私どもは恒久的な考え方をしておるものですから、言葉は同じでも私は改善して行ければして行きたいという考えを一方に持ちながら、限界があるからやはり著しいという問題が出て来るのだ、こういうふうに考えておるのであります。
  84. 加瀬完

    ○加瀬完君 そこが問題だと思うのです。と言いますのは、長官が先に御説明をなさいましたように、一応基準財政需要額には変化を認めましても、その財政規模というものを、地方財政規模というものは或る程度に抑えて行こうという、これは現状における国の方針ということではこれは認めなければならないと思うのです。そういうものを抑えておいて、この収入が非常に増加した場合交付税がふくらんで来るということになりまして、その一部を積立てるということになりますと、恐らく先だつて委員会なんかにおける大蔵省の見解の立場を以てすれば、これは交付税そのものの配賦率を下げて来るということも考えられるのじやないか。でそういうふうな危険というものが全然ないか、こういうような方法をとつて行つた場合。……そこでそうではなくして、もう少しこういう方法をとる前に財政規模そのものをもう少し平常な姿にふくらますという方法を考えてくれれば、この著しく超えるという場合は少くなつて来るのじやないか。そうしたほうが地方財政のためにはプラスのように考えられるのですが、その点如何かと、こういう点であります。
  85. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) そのお考えはよくわかるのですが、私もさつきそのようにお答えしたつもりであつたのです。言葉が足りなかつたと思いますが、今の財政規模そのものが十分であるかどうかということになれば、これは立場が違うにつれて、又国家財政をどういう工合に、国全体の中央地方を通じて国民負担をどういう工合に考えるかによつておのずから判断が違つて来ると思います。私どもは今の財政規模で、現在の今年の財政計画は今の財政規模として不足という意見もありましようが、これでやつて頂きたいという考え方なのでございます。そこで若しもこれを大きくしなければならないとするならば、これはどこまでもその事柄自体の内容を検討して、その上から出て来た判断でして頂きたい。つまり財政需要を殖やさなければならないということであれば、それは給料が上つたから上げなければならないとか、又物価が上つたからと、そういう判断があつたときに財政需要額を上げるということに持つて行きたい。ゆとりがあるからということで、而もそのゆとりがある年度においては考えられるが、次年度においては考えられないというような、ここに問題になつておるようなゆとりを頭に置いてそれを考えるということには参りません。こういうふうに申上げておるのでありまして、御指摘の考えと別に食い違つておるわけではないのであります。従つて私どもは今後物価が上り、給与を上げなければならないという事情で止むを得ず上げるといこような場合には、当然新しい財政需要額というものを考えるでありましようし、そうしてその財政需要額を前提に置いて交付税が不足であるということならば、それも考えるでありましようし、そういうようなことは勿論現段階にあることを想定しておきながら、今度のこの交付税制度に基く年度間のアンバランスを是正しようというのがこの考え方であります。
  86. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは理論的にはよくわかります。併し実情を考えますときに、例えば基準財政需要額を著しくという程度でなくても、或る程度超えて収入額が計算されますときに、それをこういう積立てのような方法を以て措置したほうがいいか、或いは現在相当財政規模を圧縮しておるわけでありますが、これにゆるみを与える意味で又別な方法で交付をしてやつたほうがいいかということになりますと、現状において地方が欲すること、或いはより必要の多い場面というものは、私のあとで申しました積立てるほうではなくて、一定の方法で交付してもらうという方法を望むし、又そういう必要とする場面が多いのではないかと思うのです。そうでないとすればどうしても一の積立るというほうが基点になりがちになりまして、交付税の本当の意味の平衡交付金が行なつたような一つの平衡制度と言いますか、そういうふうな役割というのが非常に稀薄になつて来るのではないかというふうに思われるのです。
  87. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) これはまあ繰返してお答えすることになると思うのでありますけれども、現在のこの財政規模と自治庁が考えております地方財政規模というものが、自治団体全体として非常に窮屈に感じられておるということも私ども想像つくのであります。これをどういう工合に打開して行くかということはさつきからも申上げておりますように、これは国民負担の現段階をどう認識するかということと、資本が足りない、窮屈だとおつしやるか、これをそのまま伸ばして行くという考え方にはやはり私どもは一気には行かれない。やはり足りないたろうとお考えになるだろうが、これを一つ幸施してやつて頂きたいとお願いせざるを得ないのが今日の地方財政の現状でもあるとこう認識をしておるのであります。従つてそういう認識に立ちます限り、現在足らないでお困りになつている、併し今年はゆとりがないからこれで辛抱して頂きたい、併し或る年度にゆとりができたらそれをそのほうに持つて行くという考え方にすると、私は考え方が一貫しないと思うのでありまして、やはり今これで辛抱して頂きたいという考え方をして行く限りは、需要の事情が変つて来ない以上はやはり積立てておくという考え方で行くのが健在である。需要における事情が班つて来ておるというのならば、それはゆとりか出る出ないにかかわらず、やはり別に考えなければ地方財政の正しいあり方には行かない、こういうふうに私どもは考えております。
  88. 加瀬完

    ○加瀬完君 どうも甚だ同じことを繰返して申訳ないのでありますが、結論を申しますと、現状において交付税かそれほど積立て得る余地を残すかどうか、問題であります。若し積立て得るという想定がつくならば、交付税がそれだけ交付になるということであるならば、余りにも圧縮され過ぎておる財政規模というものをもつとふくらましてやるという考え方をとつてよろしいのではないか。勿論長官が今おつしやるように、ふくらます収入がなければこれを収縮するということでは非常に不安定でありますから、そういう意味ではなくて、余りにも例えば経費の節減も過度に見ております。或いは単独事業というものも相当圧縮しております。こういうふうに地方財政の規模そのものに無理をさせておりますので、若しも相当積立て得られる収入というものを交付税から考えられるならば、現状の財政規模というものをもう少し緩和させてやるという方法がとられてもよろしいのですが、それだけ非常に無理をさせておいて、余りにも積立てるということを先に考える考え方に私どもはどうも何かうなずけない点が残ると、こういう意味なんであります。
  89. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 加瀬委員のお考えになつておる、御想像になつておる積立る状態というものは、私は毎年々々そういう状態ということで物をお考えになつておるんじやないかと思うので、私どもも今年は恐らく積立るなんというものは出ない、来年も或いは出ないだろう、再来年ぐらいになつて今年の財政の状態、殊に今年の国の予算、法人税の見積り、所得税の見積り、そいうものを基礎に置いて物を考えているから、その率で持つて行つたときには或いは出て来るかも知れない、その先になるとどうなるかわからないというようなことがいろいろ考えられるものでありますからして、こういう必要に応じる規定というものを置いておるわけでおります。ですからこれは積立てるゆとりが生ずると言つても、いつの年度にもこれは生じるようなゆとりというものは全然この規定の中には想像、予定されておらんのでありますからして、加瀬委員のお考えのように、若しそういう積立て得るゆとりがあるならば、それは財政規模をふくらますように持つて行つたらどうかというそのゆとりは、やはり年度を通じて考えられるゆとりでなければならないと思うのです。それは繰返して申上げますが、私はこの財政というものはそういうものなんでありまして、財源がゆとりがあるから規模をふくらますというように考えると、なかなかこれは締めることが困難であつて、やはり財政というものは本当にそれをふくらまさなければならない事情があるかどうかという面から見て厳密に抑えて行くという考え方でないと、これは国の財政においてもそうでありますが、地方の財政においては殊に自治庁が地方の予算を組むわけでございませんので、なかなか地方財政の厖大になるというのを抑えられないであろうということを私どもはいつも考えているわけでございます。
  90. 加瀬完

    ○加瀬完君 少し議論があと戻りになりまして恐縮でありますが、私どもは交付税というものと平衡交付金というものを考えましたときに、平衡交付金のような操作を交付税がするであろうかということを一番心配をしたわけであります、で、平衡交付金は下から積上げて行くものですから、一応積上げられたものか標準になるが、交付税はきまつたものが一つの基準になりますので、交付税によりまして交付金の制度が巧く行くだろうかということを心配をいたしておるものであります。で、特に今日の地方財政の実情上いうものを見ますというと、相当私どもの見方からすれば無理をしておりまするので、交付税が相当増しましても、無理というものを、補うのに果して足りるかどうかという状態にあるのではないか。でありますから、何回か交付税が繰返されまして、相当いろいろの余剰を生ずると、これは超過額の一部を積立てるという方法を考えて行かなければならないというとならばこれも頷けるわけであるが、理論的にもわかるのでありますが、実情は積立てるような実情というものは生じて来ないのじやないか、そこで今日法律を作る場合においては交付税が果して交付税の役割を果すかどうかということを先に考えることのほうが妥当であつて、こういうふうな理論的に考えられるからといつて積立てられるという想定の下にこういう条文を作るということは、どうも結果におきまして交付税を抑えるという形になりまして、交付税が或る程度ふくらまなければならない場合でも交付税を抑えるということになつて、結局地方財政の規模を抑えるという逆作用をするような心配を感じるものでありますので伺つておるわけでございます。長官だけでなくてもよろしゆうございます。どなたでも結構ですから、一人ではお疲れでございましようから。
  91. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 加瀬委員のお考えになつている考え方はどうしても私どもとしては納得できないのでありまして、私はもうどこまでも繰返して申上げますように、若しも地方財政が足りないということであるならば、それは別の面から見て行かなければならないと思うのであります。私は交付金制度が交付税になりましたことによつて性格が若干変つて参りましたので、補償の面においては少しくとも理論的には十分でなくなつたということは私も同感であります。ただ現在の今までの交付金制度が法文の上、若くは理論の上では補償が十分に行くべくしてちつとも一緒にうまく行つていなかつたというような実態があるものですから、それならばむしろ或るところでぶち切つて、今度は足りない部分は自体の中で年度間の調整をするということによつてやるほうがいいということで、この制度にしたわけでございます併しその制度にしまして、第一年度若しくは三十年度においてどれだけの税率で、所得税及び法人税、たばこ消費税の率をどれだけに持つて行けばいいかという考え方は、御承知のようにやはり交付金の額をきめたと同じような考え方で大体算定をしておりますので、今私どもとしてはこれで何とかやつてつて頂きたい、こういう考え方でおるわけございます。その前提の上に立つて物を考えておりまするから、こういう考え方が出て来るのでありまして、私は加瀬委員が御指摘になる考え方は、この率をきめる前段階の物の考え方であるのではないか、こういうように考えておるわけでございます。
  92. 加瀬完

    ○加瀬完君 これで何とかやつて行きたいというお言葉がありましたが、言棄尻を捉えるようで失礼でありますが、これて何とかやつて行きたいということは交付税といものを或る程度抑えろ、平衡交付金のようにとどまるところを知らず膨脹して行くような方向をとられないという一つの政府の考え方というものがあるのじやないか。そういう考え方は地方と国を通じて全般の経済事情に対処する、或いは又この財政規模を充実させるということには役立つかも知れませんけれども、地方団体の財政というものから考えますときには、必ずしもそれは地方財政に非常に有利であるということにばかりはなりかねる。そういう点から考えましても、積立てられ得るようなことを一体現実において、又蒸返しになりますが、一体交付税で想定され得るのか。理論的には想定されると思う、現実にこういう事実というものは生ずることがないのに無理に交付税というものの中でこういう枠を作るということは、ますます地方財政規模というものを苦しめることにはならないだろうかということなのであります。
  93. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 私どもは繰返して申上げますように、生ずるという見通しを立てておるわけであります。生じないということであるならば、自然増収ができて或る年度において非常に交付税の総額が殖えたときに、やはりそれに応じた需要増というものが、今の基準財政需要というものの立場から見ても納得できるような需要増というものが伴つて出て来ているということでなければ、ゆとりがないということはできないのでありまして、やはり基準財政需要は伸ばすべき理由が何にも存在しない。併し或る年度においては今の制度において非常に当初想定した以上の収入があるという事態は必ず私はあり得ると思う そういうときの用意にやはりこういう規定があるし、こういう規定が必要だと考えておるのであります。
  94. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちよつと関連して。そういたしますと、まあ将来年度によつて生ずることもあるかも知れんから、そういう場合には無駄使いをせずに倹約しろという規定なんですか。
  95. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) その通りだと考えております。
  96. 秋山長造

    ○秋山長造君 やはり私、加瀬君と長官の問答を聞いておつて、まあ長官御自身に、先ほどお話に出ておりましたが、大蔵省が考えておる一千億円ぐらいな自然増収があるだろうというようなことがやつぱり肚にあつて、そしてそういう気持でこの法案を作られたのじやないかというように思うのですがね。そうだと、やはり我々としては納得がなかなか行きにくい。今年のような場合にそういう大きな自然増収が果してあり得るかどうかというようなことについても非常に疑問を持たざるを得ない。でそれともう一つは、最初に私お尋ねした、地方団体の収入額が需要額を超過するような場合には無駄使いせずに、又困るときのために貯金をしておけ、貯蓄をしておけというような意味のまあ訓辞的な意味の規定であるならば、ただ単にこの交付税の交付団体だけでなしに、この条項の中に当然それ以外の不交付団体に対しても同じような戒めの言葉が含められて然るべきではないかとこう思う。それで現に長官提案説明の中にも地方交付税の交付団体であると不交付団体であるとを問わず、財政規模の激変を避け、云々のためにこの規定を作つたという説明があつたくらいでですから、この条文だけ見ると、不交付団体のことが何にも書いてないので、その点どうも不徹底ではないか。
  97. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) あとの問題から先にお答えしてで行くほうがいいと思うのですが、これは条文の上では下交付団体はうまくはまらんではないかというお話でありますが、事務当局の説明によりますと、このような規定の仕方で不交付団体も入るというので、まあ理窟を言えば不交付団体もこの規定全然入らないということではないようであります。併しこの不交付団体に若しもそういう状態が出て来るとした場合には、さつき申上げたように、やはり或る年度非常に国の税収入も地方の税収入も伸びる。殊に地方の場合にはものによつては前年度の国の納税義務者の所得を基準にしている場合がありますから、その意味において、その年度だけだというように考えられる場合には、やはり同じような考え方でこれを規制する必要が確かにあると思います。従つて私どもはこの規定をやはり不交付団体にも当然規制さるべき事情のある年度においては、やはり同じような措置をしてもらいたいという考え方でおることは、これはそのほうが正しいのであります。最初に私がお答え申上げたのは少し正確でなかつた。  それから今度の交付税制度と税収の伸びというもの、今年のはどうも少し大蔵省が見積りをしつかり抑え過ぎて、おるような感じがまああるのじやないかと世間一般が疑つているように、私も実ば疑つている、併し交付税制度会体を貫く考え方というものは、大体税収というものは恒常の状態では年々幾らかずつ伸びて行く、その伸び方というものは大体需要の増と歩調を合せて行く。そういう工合になるというのが交付税制度の基本の考え方である。従つて普通の状態では需要の伸びと税収の伸びと大体バランスがとれて行つて、これで抑えて行つて、今までのように当然そういうことから来る需要の伸びに対してさえも平衡交付金で毎年大蔵省と議論をしなければならないような状態だけは一つなくしよう。かたがた地方の独立という考え方を植え付けようというのがこの考え方でありますから、今年の財政計画の上に想定される、再来年になつて相当税収が出て来るのではないかという考え方はこの財政計画の上では私どもは頭の中に置いてはおりません。
  98. 秋山長造

    ○秋山長造君 初めの点ですが、例えば東京都あたりはさつきも言いましたように、当然これは不交付団体で相当金の集まらなければならない団体と見られるところですら赤字を出しているというようなことですから、むしろこの四条の二に書いているように交付税を交付される団体はですね、まだ交付税というものを政府は握つているわけですから、その面からのコントロールというのですかね、一応の抑制ができるわけですね。ところが交付団体になるとこれは手放しで、よほどこういう貯蓄奨励の思召しを政府が強く垂れないと、非常にでたらめになつて来る虞れがあると思うのです。この条文を読むと、悪意に解釈すれば、交付団体のことだけは政府は大いに心配をしてやるけれども、不交付団体は無駄使いしようと貯金しようと勝手にしろというようなことにもなるので、それはやはりこういう規定をわざわざ設けられ、而も交付団体というのは大体において非常に財政の苦しい赤字なんかを余計出しておるような団体が多いと思う。従つてなかなか無駄使いもできくい。又その半面まあ万が一そういう著るしく財政需要額を超過して金が残るというようなことも考えられますけれども、今加瀬委員のおつしやるように、なかなかそういうことは万が一以外には想定しにくいことじやないか。それに比べれば下交付団体ならばそういう場合が幾らも想定し得る。それだけにこういう規定の必要が一層あるのではないかと思う。にもかかわらずそういう団体に対しては何らこの規定の中に謳われておらないということは非常に不徹底だと私は考えるのですが、如何ですか。
  99. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) これはこの不交付団体に対してこういう考え方をどういう場合に要求するかということでありますが、これはさつきも申しましたように、やはり或る年度において特に多い、他の年度にはそれだけ収入が上らないという場合だけだと思う。若しも例年そういう状態であると、そしてそれが非常に浪費を起しておるということであるならば、それは私は一つは地方税の調整をどうするかという問題だと思う。もう一つは、財源調整の問題であると思うのです。勿論それは税の配分によるわけでありますが、そこで只今想定で或る財政計画というものを頭に置いて、地方に独立税をおく、交付税はこれだけ、譲与税はこれだけというように、そのほかにまあ組付のいろいろな負担金、補助金があるわけです。そういうことを制度全般を見ますときに、そこの制度の上から出て来る特殊の自治団体の超過財源というものは、これは私はそれぞれの自治団体において然るべき目的に使われて差支えないものだ。こういう前提で、又その範囲においてしかそういうものを残さないように措置するということでないといけないと思うのでありまして、従つて私どもは超過財源を持つておる団体は、現在の制度の上で生ずる超過財源というものは成るべくその範囲で適切な用途から逐次仕事をして行つて頂く、こういう考え方でおるわけですから、それまで積立てて頂くという考え方は持つておらんわけです。
  100. 秋山長造

    ○秋山長造君 その点はわかるのですが、塚田長官のおつしやるように、年度によつて財政規模に波があるという場合が考えられる。ところが具体的に考えた場合に、年度によつて地方団体の財政規模に波があるという場合には、その原因はやはり交付税の額に波があるという場合だろうと思う。交付税の総額に波が出て来るというのは、取りも直さず自然増収その他で税収にそういう波が出て来るということだろうと思うのです。その税収に波ができる、例えば自然増収が非常に大きいというような場合は一般的に景気その他が上向きになつて来た場合、そういう場合は国税において自然増収ができると同様に、例えば富裕団体等においてもやはりその税収に非常に波ができて来て、自然増収その他が殖える年だろうと思う。そうなりますと、ずつと恒常的に毎年金が余つているという状態ではなしに、やはりその税収その他の収入にも波が、年度によつてできて来るわけだろうと思う。だからこれは不交付団体と交付団体とにかかわらずこれは同じことだと思う。にもかかわらず不交付団体に対する文言が何も謳われてないということは、私はやはり不徹底であり、不完全ではないかというように思う。
  101. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 先ほども申上げましたように、不交付団体もこれは私ども考えておるつもりなんであります。先ほどちよつと東京都の問題が出ましたが、私どもの東京都の調査もやはりこういう考え方に立つておるのでありまして、勧告の筋を申上げますと、これは一月の調査でありますが、一月の調査では相当な赤字が出る、而も一方において着都建設事業というものは非常に遅れている、そういう状況では困るので、消費的経費をもつと圧縮することによつて首都建設の事業、つまりここに書いてあります将来の財政の健全な運営に資するための措置を講ずるのには、やはり税収をもつと上げるとか、消費的経費を節約するとかいう方法によらなければならない。勿論自治団体でありますから、その経費をいろいろに使われることは私どもは別に異論はないのでありますけれども、併し本当に首都建設をやるつもりであるならば、やはりもつと考えてもらいたい、こういう勧告をいたしておるのであります。そういう考え方もやはりこういう私ども同じような思想でおるのでありまして、別に異なつた考え方を東京都にしておるわけではございません。  それから先ほどからちよつと伺つておりますと、あるべき財政需要と財政収入、つまり平衡交付金の算定に用います基準財政収入と基準財政需要との関係、その差額は交付税ということになるのであります。それと現実の予算関係の、自然増収を含めての現実の予算関係との問題とか一緒になつて議論されておるのではないかというふうに私ども思つたのであります。ここに書いてありますものは、交付税の額と基準財政収入額との額と、それから基準財政需要額との額の間に著しい開きがあるということを書いてあるのであります。現実の予算の問題とは別の問題であります。実際問題としては現実の予算を決算で見ますと、基準財政需要額との開きは勿論ございます。その間に地方団体が止むを得ず出資した義務的経費も勿論ございます。それからそうでなく、放漫だと思われるような財政支出もあるのであります。従つて現実の予算とそれから基準財政需要額との間の問題を、或る程度将来の問題として基準財政需要額の改善という方法によつて解決する方法も私どもあると思つております。併しそれには先ほど申しましたように、一定の限度がございますので、なお且つ著しく差が出て来るということは、交付税制度の下においては行われ得るということを私どもも考えざるを得ないのであります。恒久的な制度として考えてみまする場合には、不足する場合だけを考えないで、やはり余る場合も制度として考えておく必要がある。併しその考える場合に、不足する場合は交付金のほうの規定の中に入れておりますが、不交付団体その他の問題もございますし、一般的な財政指針としてやはり余る場合の規定を財政法の中に入れておく必要を感じましたので、この規定を設けた次第であります。
  102. 秋山長造

    ○秋山長造君 財政部長のお気持はわかる。お気持は決して交付団体だけに限つておらんということはわかるのですけれども、併しそれはお気持であつて、いやしくも地方財政法ということで、地方財政法というものは何も交付税の交付団体だけを制約する法律ではないので、そういうことにかかわりなしに地方財政全般を制約している法律だと思う。にもかかわらず、その中に特にこの際こういう訓示規定を入れられることについて、交付団体だけにそれを限られるということは、地方財政法という法律の建前から言つても、又さつき来縷々お話のあつたようた実際面から言つても不徹底であり、片手落ではないかということを言つておる。だから気持でなしに、具体的にその気持をこの条文の中に謳うべきじやないかと言うのです。
  103. 柴田護

    説明員柴田護君) 条文の問題はおつしやるように誤解される虞れがございますけれども、これは私ども法制局で審議をいたしましたときに、毎年度交付を受けました交付税の額と基準財政収入額との合算額というのは一般財源という意味であります。従いまして一般財源という言葉を書きたかつたのでありますけれども、一般財源という言葉を書くことは従来の法令用語からしてない。そこで一般財源という意味を基準財政収入額と地方交付税との合算類という言葉を以て現わしたのであります。従いまして、交付税がゼロである場合においては基準財政収入額だけが残るのだ、従つて一般財源と一般財源で賄われるべきものとしての基準財政需要額、これとの比較において一般財源が非常に超過する場合においては、少くとも地方交付税法で予想しておりますところの、地方団体が等しく行うべき事務の分量に見合うところの財源としては多いのではないか、従つてその部分については適宜年度間の調整を講ずるようにしなければならんという趣旨で置いたということであります。これにつきましては、先ほど来御説明ございましたけれども、地方交付税法ができまして、いわば地方交付税の総額というものが自動的にきまつて参りますので、それで基準財政需要額と基準財政収入額との不足、言い換えますならば財源不足額の合計額というものが合わない場合がある。そういう場合におきまして、不足する場合の措置というものは交付税法の中に詳しく書いてございますが、余つた場合の措置というものにつきましては触れるところがない。それをまあ地方制度調査会の答申の形で参りますと、それは年度間の調整方法として積立或いは借入れということになつておるわけでございますが、現在の地方財政の状況下において積立てる、借入れて行きますということは、地方財政の自律性という考え方から言つて適当じやないのじやないか、そこで地方財政の自律性という観点を考慮に入れて参りますと、その調整地方団体自身で行わしめるのがいいんじやないか、そこでその趣旨として四条の二ができて参つた、こういうことでございます。
  104. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、これは不交付団体の場合は、ここに二行目に書いてある「交付を受けた交付税の額」とそれから「基準財政収入額との合算願」というところのこの交付税の額、という交付税の額というものかイコール零だという解釈なんですね。零プラス基準財政収入額ということになる。そうなりますと、この不交付団体の場合は結局基準財政収入額が基準財政需要額を超過する場合、こういうことになるわけです。この場合に、ここに書いてあるように、交付税の交付団体においてこういうことが起り得るまあ可能性といいますかね、それとそれから不交付団体でこういうことが想定され得る可能性というものは、どちらが大きいかと言いますと、むしろ不交付団体のほうが私は大きいのじやないかと思います。その点如何ですか。
  105. 柴田護

    説明員柴田護君) 必ずしも私はそのように言えると実は思わないのであります。所得税、法人税、酒税が交付税のもとになる税でございますが、この税が伸びました場合において、当然に地方税につきましても伸びがあるということは一応言えんこともございません。従いまして、交付税の総額が伸びて行きます場合においては、一般的にいいまして、地方団体の税収入も伸びる場合が多い。従つてその場合におきましては、不交付団体の基準財政収入も伸びているだろうということが一応言えると思いますが、地方税につきましては、当年度の経済の状況を受けます税と、前年度の経済の状況を反映いたします税、つまり当年度の課税標準をとつておりますものと、前年度の課脱標準をとつておりますものとあるわけであります。従つて当年度の課税標準をとるものにつきましては、同じような傾向が出て参りますが、前年度の課税標準をとるものにつきましては、交付税の基礎になります税収入の伸びというものと、地方税の伸びというものは違つて来るわけであります。その関係では一般的に言いまして、伸びの状況から言いますと、今までの例では当年の課税標準をとつておりますもののほうが占める割合が大きうございますので、大体一致して参りましようけれども、ときによつては違つて参るということは言えるのじやないかと思います。
  106. 秋山長造

    ○秋山長造君 私はこの不交付団体の場合をもう少しこの際研究してみたいと思うのですが、その資料としてですね、この間東京都へ出されたあの財政関係ですね、あれを一つ配付して頂きたいと思います。で、それについてもうちよつとお尋ねしてみたいと思います。
  107. 内村清次

    委員長内村清次君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  108. 内村清次

    委員長内村清次君) 速記を始めて。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十六分散会