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衆議院議員(
床次徳二君)
只今提案になりましたところの
地方税法の一部を
改正する
法律案に対するところの
衆議院の
修正部分につきまして、御
説明を申上げたいと思います。
お手計にその
説明の要綱と並びに
修正案による
財源移動調、それから
法律比較表等がございますので、これを御参照頂きたいと思いますが、簡単にその
修正部分について
内容及び趣旨の概要を御
説明申上げたいと思います。
内容の
説明に入ります前に、我々の
修正態度につきまして一言いたします。それは、今回の
地方税法改正法案については、その前提として次の諸点に対して疑問乃至不満を抱かざるを得ないということであります。
その第一点は、
明年度の国の
予算は九千九百九十六億円とせられ、これに伴い
地方財政計画は九千六百五十三億円、
地方税総額は三千四百七十四億円とな
つているのでありますが、その
計画策定の
内容を検討するならば、国の一兆円
予算のしわが
地方財政に寄せられていることを感ぜざるを得ないことであ
つて、
地方制度調査会の
答申では、三百億円程度の
財政規模増大の必要を認めているのに対して、僅かに百五十億円を認めるに過ぎないことでもこのことは明らかであります。
その第二点は、
地方財政の
自主性の確保が
税制改正の目標でなければならないのでありますが、本
改正案はむしろ
自主性を弱化する方向にあることであります。国においては
所得税、
法人税の
軽減を行な
つているのでありますが、当然この
部分の税源を
地方の
独立財源の充実に充当すべきであるにかかわらず、
改正案においては、
道府県民税創設のため税源を
町村民税に求め、
不動産取得税を
固定資産税の
減税分の分割によ
つて創設する等
地方税の内部の操作が主であります上、
たばこ消費税の税率も、
答申の示す百分の三十より百十五分の十五に減じているのでありまして、国と
地方との
財源調整の面が甚しく不十分であります。
その第三点は、
地方財源の
偏在是正も勿論必要であるが、これは、本来
義務教育の
国庫負担金等によ
つて行うべきものであ
つて、
地方の
独立財源たる
入場税を国に移管してこれを
偏在是正の
財源とするごときは適当でないのではないかということであります。それも
答申通りに
遊興飲食税と共に移譲するか、或いは徴税の困難で問題の多い
遊興飲食税の方を移譲するというならば一応肯けるのでありますが、
入場税のみに止めているところに疑問が残るのであります。
その第四点は、今次の
財政計画の策定並びに
税制改正に当
つては、その前提として
地方財政の窮乏に対処するため
財政の
再建整備計画の樹立が必要であるにかかわらず、この点何らの施策も考慮されていないことであります。
以上のような観点に立ちますならば、更に相当根本的な
修正を行うべきであると考えるのでありますが、すでに
予算も決定しておりますので、その
範囲内における可能な最大限の
修正という
意味において、本
修正案を策定いたしたものであることをあらかじめ御承知願いたいのであります。
修正案の要項につき順を追
つて簡単に御
説明申上げます。
その第一点は
事業税に関してであります。その一は、
個人事業税の
基礎控除を、
政府原案では七万円、
昭和二十九年度に限り六万円とあるのを、
昭和二十九年度より七万円とし、将来十万円に
引上げるよう改めることであります。
事業税における
個人中小企業の
事業税の
負担が法人のそれに比して甚しく過重であることは、一般に認められているところでありまして、近年、
個人事業にして
法人形態をとるものが続出し、そのため府県の税収を著しく減少せしめている事例が随所に見られるのであ
つて、如何にその
負担が堪えがたいものにな
つているかを如実に示しているのであります。今回の
改正により、税率を三分の二程度に引下げ、
基礎控除を本年度六万円に
引上げることとしても、同時に
課税標準たる
所得を原則的に
所得税のそれに合せることとなる結果、実際上殆んど
軽減の効果を期待できない場合が出て来るのであります。殊に
所得税の
非課税限度額以下の者については、
負担の不
均衡が生じやすいのでありまして、
税務行政上からもこれらの
低額所得者を
非課税とする方向が望ましいとされ、
税制調査会の
答申もかような見地から
基礎控除二十九年度八万円、平年度十万円の線を出しているのであります。我々も出来得れば一層根本的な
軽減措置を検討したいのでありますが、
負担軽減の
方法については、
専従者控除の
方法とか、
免税点設置の
方法とか、なお種々考究すべき余地が残されているので、他の
所得者との
負担均衡の激変と、急激な
税収減とを避けつつ、将来一層の
軽減を期待する含みを以て、只今申しましたような
修正を加えることにいたしたのであります。
次にその二といたしまして
水産協同組合共済会並びに政令で定める
教科書供給業、
新聞広告取扱業及び
教育映画の
製作業を
非課税範囲に加えることにいたしたのであります。このうち前の三者は、
現行法ではいずれも
非課税とされているものであり、今回の
改正案におきましては、
非課税整理という
根本方針に基いて、その
範囲から除外されたものであります。我々も
負担均衡の立場から
非課税整理の方針には賛成いたすものでありますか、これらの
事業とほぼ同様な性格なり、立場なりにある他の若干の
事業が依然
非課税として存置されていることに鑑みまして、又
教科書供給及び
新聞広告の両
事業は昨年の
国会修正に際して、その
公益性から、又他との
均衡上、特に新たに
非課税範囲に加えられたものでありまして、今直ちにこれを廃止することは法の威信からも如何かと考えましたので、
修正いたさんとするものであります。
その三は、
輸出所得の
損金算入の
措置をとりやめることであります。今回の
改正案におきましては、
事業税の
課税標準たる
所得については、原則として
法人税或いは、
所得税において決定したものによることに
改正されるのでありますが、その結果、
租税特別措置法の規程によ
つて輸出関係業者に対し
所得計算上損金に算入することを認められている収入又は
所得の一定割合が自動的に
課税標準から除外されることとなるのであります。勿論輸出奨励の趣旨を国税において取入れることは当然でありますが、
地方税たる
事業税にまでこれを及ぼすことにつきましては、今日の
地方財政の立場から見まして如何かと存じまして、これを
修正せんとするものであります。
次に
修正の第二点は、
不動産取得税に関してであります。その一は、土地改良区及び土地改良区連合が本来の
事業の用に供する不動産を取得する場合、これを
非課税とすることであります。これは、この法人の公法人的性格に鑑みまして、他の
非課税団体との
均衡を図つたに過ぎないのであります。
その二は
公営住宅等の入居者が、その居住する住宅の払下げを受けた場合は、住宅新築の場合に準じて
負担緩和の
措置をとることであります。住宅払底の折から住宅建築を阻害しない趣旨において、原案では住宅新築の場合の
基礎控除を認めているのでありますか、庶民の住宅
事業緩和の趣旨から言うならば、あえて新築に限る必要はないのであります。ただこれを広く中古住宅の取得にまで及ぼすことは、なお種々検討を要する問題がありますので、取りあえずこの
範囲に限
つて特例
措置を認めようとするものであります。
修正の第三点は
遊興飲食税についてであります。その一は、政令で指定する大衆飲食店における一人一回百二十円以下の飲食を
非課税とすること。その二は、同じく政令で定める甘味喫茶店等における一人一回百円以下の喫茶等を
非課税とすること。その三は、同じく政令で指定する地域における旅館での宿泊は、室代の
部分につき四百円から七百円までの間で、政令の定めるところに従いこれを
非課税とすることであります。
現行法では、その一及びその三の場合につきましては、一括して「一人一回の料金が百円以下で、且つ一品の価格が五十円以下」とな
つているのでありますが、今日の
物価水準から見まして、又大衆飲食の現状に照しまして余りに窮屈に過ぎると思われますのと、他面、主として主食を供する場合と甘味喫茶等を供する場合とを区別することが、合理的であると考えられますので、この
修正を行わんとするものであります。その三の旅館の宿泊につきましては、いわば家庭の延長とも考えられますので、遊興に亘ることなく、又余りに高級なものを除く
意味におきまして普通の宿泊を無税とする趣旨であります。
修正の第四点は、自動車税についてでありますが、これは、車の種類や用途による
負担能力を考慮しまして、トラツクについて営業用、自家用の区別を設けたほか、税率を多少とも原案の線より
軽減いたしまするが、税収におきましては、予定額を確保するようにな
つております。
修正の第五点は、狩猟君税についてでありますが、
政府原案は昨年の
国会修正によ
つて設けられた、業とするものと否とによる税率の区分を廃止しているのでありますが、実施後一年に満たずして格別の理由もなく早くもこれを
改正することは不適当でありますので、これをとりやめ、ただ業者と否との区分には問題もありますので、
所得税の納税義務者たると否とによる区分並びに農業を主たる生業とするものという区分に改めることにしたのであります。
修正の第六点は市
町村民税及び道府県民税につき、寡帰、老人等についての
非課税の
範囲を、
所得十万円以下とあるのを十二万円以下に改め
負担の
軽減を図らんとするものであります。
修正の第七点は、
固定資産税に関するものでありまするが、その一は、土地改良区及びその連合会並びに健康保険組合及びその連合会が所有し且つ使用する
事務所及び政令で定める保健施設並びに水産業協同組合共演会が所有し、且つ使用する
事務所を
非課税範囲に加えることでありまして、これは他の同性質の団体との
均衡を図るものであります。
その三は、原案による
地方鉄軌道、企業合理化用資産、重要物産製造用資産及び航空運送事施用航空機に対する
負担緩和の特例
措置につき、その遡及適用をとりやめんとするものであります。もとより我が国の経済再建上重要な要因をなすこれらの資産に対しまして、一定期間租税面からの保護を厚くすることは趣旨においては理解できるのでありますが、今日の
地方財政から見ますると、その地元市町村が思わざる減収に当面する場合、
財政の安定が著しくそこなわれることも考慮しなければなりませんし、他の税源との関係におきまして、これを現行
通りといたしまして、今後新たに課税の対象となるべき
部分についてのみ
政府原案の
措置を認めんとするものでありまして、止むを得ないことと考えておる次第であります。
その三は、
政府原案の、大規模償却資産所在の市町村に対する無税権制限に関連した
財源保障
措置の
規定中「
基準財政需要額の百分の百二十」とありますのを
昭和三十年度に限り「百分の百三十」まで増額せんとするものであります。従来これら資産に対する
固定資産税は、すべて地元市町村と隣接する関係市町村とで配分して参つたのでありますが、今回の
改正案では、
昭和三十年からこれをとりやめて、団体の人口区分に応じ、それぞれ課税し得る価額の最高限を定め、それ以上の
部分の課税権を道府県に移す
措置を構ずると共に、これによ
つて従来の税収に著しい減少を生じて
財政運営に支障を来すことのないよう保障するため、前年度の
地方財政平衡
交付金の算定の
基礎と
なつた
基準財政収入額にこの減収を織り込んだ額が、
基準財政需要額の百分の百二十に満たない団体については、その限度まで税収を上げ得るよう保障することとしているのでありますが、取りあえず
昭和三十年度においてこの限度を百分の百三十に
引上げて、税収の激減による打撃を多少とも緩和せんとするものであります。
その四は、制限税率を百分の三から百分の二・五に引下げんとするものであります。従来
固定資産税の標準税率は百分の一・六であり、制限税率は
昭和二十六年度より二十八年度まで百分の三と
規定されていたのでありますが、
政府原案は標準税率を
昭和二十九年度百分の一・五、平年度百分の一・四に引下げながら、制限税率の百分の三をそのまま存置しているのであります。従来も標準税率の二倍に近い制限税率を設けていることに対しては批判の存したところでありますが、今回、前者を引下げる以上当然後者の引下げを行うべきであり、この際他の税種の場合とも睨み合せまして百分の二程度とすべきかとも思うのでありますが、現在少数ながら制限率又はそれに近い率を用いている団体もありますので、一応百分の二・五に引下げることとし、一層の引下げを将来に期することにいたしたのであります。
なおこの外に、児童福祉法、身体障害者福祉法の
改正に伴い
事業税の
課税標準算定の特例を補足するなど、若干条文の
整備を行な
つているのであります。
以上で
衆議院において可決せられた
修正部分の御
説明は終るのでありますが、この際、我々
地方行政委員会において多数を以て可決せられ、本
会議において否決せられました、
入場税を
地方税に存置することに関連する
修正部分につきましても、今次の
修正の全般的な態度を理解して頂く
意味を以ちまして、一応
説明を加えることを御許し願いたいのであります。
御承知の如く、
入場税は
昭和十三年国税より
地方税に移され、爾来
地方税として存続して来たものであり、その性質上からも
地方の行政と密接不離の関係にあるものであります。然るにその収入が余りにも地域的に偏在しているというところから、先きに両調査会の
答申においては、
遊興飲食税と共にこれを国税に移管して、税率の引下げ、課税
範囲の合理化を図ると共に、その収入額の大
部分を人口に按分して
地方に還元せしめる
措置を勧告しているのであります。
政府原案は、この
答申を尊重して立案されたはずのものでありますが、何故か、独り
入場税のみを国税に移管し、
遊興飲食税はこれを
地方税に残しているのであります。両者を一括して国税に移すか、或いは偏在度が一層甚しく、徴税技術上からも極めて困難な税目であ
つて、むしろ国税に移すことに或る程度の理由が認められる
遊興飲食税のほうを国税に移管するというならば、一応筋道が通ると思うのでありますが、徴収も極めて容易で弾力性もある
入場税のみを切り離して国税に移すという理由は全く理解に苦しむのであります。
財源偏在の是正という観点からするならば、寧ろ
義務教育費国庫
負担金の操作等によ
つて調整すべきであるにかかわらず、その
措置に出でずして逆に
地方の最もよき
独立財源たる
入場税を取り上げることによ
つて調整の目的を達しようとすることは、
地方の
自主性を犠牲とする以外の何者でもないのであります。我々は、かような見地に立
つて飽くまで
入場税の国税移管に反対し、原案を
修正し、之を
地方税として存続せしめようとしたのであります。ただ税率については、相当程度引下げることの必要性をかねて痛感して参りましたので、この際一応
政府原案程度に引下げることとし、又現行の
入場税中にある、第三種の施設の利用に関する
部分が
政府原案では
規定を欠いておりますので、これを補足すると共に、これらのうち、外形標準課税を行う場合の税率
基準を明定し、且つ運営
方法に
改正を加えようとしたのであります。
最後に、この国税移管を廃止しますならば、当然
入場譲与税法案も廃棄されることとなりますので、自然この方途によ
つて達成しようとしていた
財源偏在是正の
措置を別途考慮する必要が生じて参るのでありますが、これは今回創設されることにな
つている道府県の
たばこ消費税の一部富裕府県に対する課税権を制限して、この
部分を他の府県に対し人口に按分して納付せしめることによりほぼ同様の
財政調整の効果が達成せられるのであります。即ち
入場税を
地方税に存置する場合、国税の場合に比して、東京及び大阪において増加する税収入は、約五十一億三百万円でありますが、
たばこ消費税に於て只今述べました
措置をとる結果減少する額は五十一億四千万円程度となり、実質的には増減を生ぜず、他の府県についても実質的の
財源変動を生ぜしめないこととなるのであります。なお、この
修正に伴う
地方財源の異動は、
入場税関係の
修正部分を除いて別紙のごとく、
昭和二十九年度におきまして、十六億六千七百万円の歳入欠陥となるのでありますが、
入場税を
地方税に存置する場合にはこの欠陥は十分補填し得るものと期待いたしたのであります。
大体以上のような理由を以ちまして
修正案を提案したのでありまして、どうぞよろしくお願いいたします。