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公述人(青木一己君) 私は農業
団体の立場から、今度の
地方税の
改正に関しましての
意見を申述べさして頂きたいのであります。
資料はお手許へ行
つておるはずだと思うわけでありますが、そのうち二、三重要だと思われる点について申上げたいのでございます。
一つは、
事業税の問題であるわけであります。これは
事業税全体につきましては申上げませんが、ただ農業
団体の中の農業協同組合につきまして、今度の
改正法案によりますると、
現行法によりましては農業協同組合の準備金の額が出資
総額の四分の一に達していない組合なり連
合会は非課税とな
つておるということでありまするが、今度の
改正法案ではそのようなまだ
財政的な
基礎の固ま
つておらん組合でありましても税金がかかる、課税対象にな
つておるということであります。課税の対象になりまする基準は、出資配当をした場合には大体その出資配当の額を基準にして算定する、こういうようなことにな
つておるのであります。この
考え方につきまして、一体その
考え方がいいかどうかという点について
一つ申上げておきたいのであります。
協同組合は御承知の
通りでありまするけれども、これは非常に農業者なり或いは中小企業者なり、労働者なり、いずれにいたしましても非常な何と申しまするか金に縁の遠い連中の組織で、そうしてそれが共同購入をする、或いは共同販売をする、或いは資金の共同の
借入れをする、或いは資金の共同運用をするというようなことをして行く、共同の力によ
つて今の現在の社会情勢に対応しようという動きをと
つておるのでございまするが、而もそれを常時やろうという形で出て来ておるのであります。で、常時や
つて行くことになりまするというと、これは資金が要るということでありまして、その資金をやはりお互いに持ち寄
つてやろうという
考え方から出て来ておるのであります。従いまして、そうした
考え方から行きまするというと、農業協同組合、これは青果消費組合でも同じでありまするが、その出資金というものは、一般の企業のような資本金というものとは
意味が非常に違
つておるということであります。協同組合の一番大事な点は零細な経済行為をお互いに共同して持ち寄る、事業を集中するということが眼目で、その事業をやるための資金というものは、これはその事業をやり得るだけの資金があればいいということで、どんどんと資金を殖やして行
つて、その資金的
基礎において事業を拡大して行こうという性格の資金とは非常に違
つておるのであります。従
つて今の出資配当を基準にいたしまして事を算定する、額を算定するというような
考え方は、これはそういう
考え方を持ちますと当然起
つて来ないということであります。従
つてどういう形が出て来ておるかと申しまするというと、やはり資金をお互いに出し合うのでありまするから、従
つてせいぜい定期預金の利子くらいの額はまあ
一つ出し合
つて配当をして、そうして我慢をお互いにしようという
考え方にな
つて来ておるのであります。従
つて法律でも五分という制限が加えられておるのでありまして、従
つてこれを出資配当をするということをできるだけ制限して、内部留保をさせようというような
考え方で以てそういうような今の書き方がされるというと、そこら辺のところは少し
考え方としておかしいんじやないのかという気がするのであります。従
つてそう考えて参りまするというと、やはり
事業税につきましても、
現行法通りを尊重しておいて頂いたほうが筋が明確に通るという気がいたしまするので、その点を
一つ申上げておきたいのであります。
それから第二点は
固定資産税に関連してでありまするが、その中で特に申上げておきたいのは、これは農山漁村電気導入促進法に基きまする発電施設の問題であります。結論を申上げますると、それは非課税にして欲しいということであります。
改正法案によりまするというと、発電所、変電所又は送電施設の用に供する家屋及び償却資産で、電気の供給、物品の製造、旅客若しくは貨物の輸送又は鉱物の掘採を業とする者並びに農山漁村電気導入促進法に基く農林漁業
団体がそれぞれその用に供するものは最初の五年度分は価格の三分の一の額、その後五年度分は価格の三分の二の額を基準としてそうして課税するというようにな
つておるのであります。これは一般の企業とそれから農山漁村電気導入促進法に基きまするそうした発電施設等と同様に取扱
つておるのでありますが、この点につきまして果してそれでいいかどうかという問題であります。と申しまするのは、今の農山漁村電気導入促進法に基きまするその電気施設等でありまするが、これはどういう性格のものかと申しまするというと、これは一般の電力会社が採算上引合わんからそうした所へは電気も引かない、従
つてその
地方から申しまするというと、電気の恩典にはあずからないというような非常な僻陬の地の問題であるのであります。そこでやはり調べて見まするというと、現在電燈の付いておらん部落が六千百十二部落あります。戸数にいたしますると二十万戸もあるということであります。こうした
地方の人たちはやはり電力というものの恩典も受けたいということでやはり金も借り、或いは金も出し合
つて、そうしてみずから発電してや
つて行こう、そういう
考え方を持
つて来ておるのであります。採算がとれないところをみずからその
住民が立上
つてや
つて行こうという性格のものであるのであります。これは丁度医療組合もそういう形をと
つて参
つておりまするが、
昭和の七、八年頃からでありますが、医療組合が出て来ましたが、その出て来た過程を見てみますると、やはり医者のないところがお医者さんの今の恩典を受けるにはどうしても自分みずから病院を持つ必要があるんだということで金を出し合い、借金もして病院を作
つて、そうして無医村をみずから解消して来ておる、こういうような形が出ておりまするが、丁度それと同じであるのであります。従いましてそういうような所は経費も余計かかることでありますし、非常に骨の折れる点でありまするので、これはむしろ今の
固定資産税というようなものはそういう所におきましては、むしろ非課税にしておいて頂くほうが妥当ではないのかというように思うのであります。現在手を付けておりまする所が何が百七カ所くらいある、そうして二十二億くらいの経費が注込まれつつあるという報告を受けておりまするけれども、そういう事情にあ
つて、電力会社が採算上手を伸ばしておらんという所であるのでありまするので、そうした点も御勘案願いまして、これは同列に取扱うことなく非課税にしておいて頂いたほうが妥当ではないか、そういうように存ずるのであります。
それからいま
一つ、これは農業者の問題になるのでありまするが、問題は農業者の
固定資産税というものが、これは
税率の上では一応軽減されたような形にな
つて出て来ておるのであります。
現行法の
税率でありまするというと一・六でありまするが、それは一・四にされようとしておりまするのが、当面二十九年度は一・五で
一つや
つて行こうということで
税率が下
つておるようでありまするが、併し現実問題となりまするというと、この土地なり或いは家屋なりの評価というものがかなり高ま
つて来ておるということであります。お手許へ行
つております資料の終りから三枚目を御覧下さいまするとわかりますように、二十八年と二十九年の今の評価の上昇率でありまするが、田が一二四で二四%上
つたり、畠が二一%上
つたり、宅地が三二%、林地が五〇%、牧野が五〇%、原野が五〇%、家屋が二一%というように上
つて来ておるのであります。従
つて今の
税率をかけて算定してみまするというと、二十八年度と二十九年度で四十億も税金が実際高くな
つて来て来ておるというような形も出て来ておるのであります。これは農業者の財産と申しまするか、生活状態から考えてみまするというと、こういう点は
一つお考え願う必要があるじやないかという気がするのであります。
それからいま一点、
固定資産税につきまして気がついておりますることは、これはもうすでにお考えおき願
つておるかもわかりませんが、土地改良区の所有いたしまするところの土地なり施設であります。これは土地改良区というものは御承知の
通り公法人的な性格を持
つてお
つて、こういうような同種類の法人には非課税にな
つておりまするので、土地改良区の所有いたしまする上地なり施設というものは、これは非課税にするのが当然であ
つて、或いはこれは見落されてお
つた点ではなかろうか、そういうように思うわけであります。
それからその次に不動産収得税の問題でありまするけれども、これも
一つは農山漁村電気導入促進法でありますか、それにもこれは非課税にしておいて頂いたらどうか。これは
固定資産税の面と同じでありまするが同じ
理由で申上げるのであります。
現行法によりまするというと、農林漁業金融公庫から借りた金額につきましては、その借りた金額を差引いて残額について課税するという形が出ておりまするが、その点も非課税にして頂いたほうが前申上げました
理由で妥当ではないのかというようにも思うわけであります。それからなお農業協同組合乃至連
合会の今持
つておりまするところの
事務所なり倉庫であります。農業倉庫なり
事務所は現在
固定資産税におきましては非課税にな
つております。やはり非課税にな
つておりますると同じ
理由に基きまして、これも非課税にしておいて頂いたほうが妥当ではないのか、筋が通るではないのかというように思うわけであります。
最後に一言申上げておきたいのは、農業協同組合に対しまする課税の
考え方は一体どう考えて行
つたらいいのか、そういう問題であります。そのために資料といたしましてお手許に行
つておりまするが、一番最後の二枚目に「協同組合に」、にとしてありまするが、「に対する課税の経過」ということで、資料を
一つ出しておるのでございます。それを御覧願いまするとよくおわかりになると思いまするが、
昭和十五年までは協同組合はこれは
国税も
地方税も全然実はかか
つておらなか
つた、非課税であ
つたということであります。勿論十一年にやはり国の事情から協同組合に対しましても資本利子税なり、売上税なり、或いは家屋税というものを賦課したらどうかという案がありましたが、それは流産にな
つた。十五年から税金をかけられるようにな
つて来ております。それはお手許に行
つておりまする資料の二枚目の裏の頁の最後でありまするが、
昭和十五年に特別法人税という
税法を特に設けられて、国家の諸情勢からやはり協同組合もこれは税金をかける、併しこれは一般の法人とは別に、特別な法人税という
税法を特に設けて頂いてかけるということにな
つたのであります。而もその附則には、この法律は「
昭和十五年四月一日以後終了する年度分よりこれを適用す、本法による特別法人税の賦課は支那事変終了の年の翌年十二月三十一日までに終了する事業年度分限りとす、」ということで、一応支那事変が終りますと、戦争が終ればこれは当然削除するというふうな限定付きでかけられて来てお
つたのであります。ところが十八年に今の大東亜戦争によりましてその附則が取られて来ておるという形であります。そして二十二年の農業協同組合法になりまするというと、これはそこに出ておりまするように、非出資組合は勿論でありまするが、出資組合もこれは
所得税も法人税も課さない、
地方公共
団体は組合に対して
事業税を課することができないということで、はつきりとこれは免税規定というものが載せられたのでありますが、翌年の二十三年の七月七日に
所得税法の一部
改正に関する法律ということで、これは特別法人
税法が廃止されて、一般の税体系の中に協同組合の課税が入
つて来た、そして法人税もそれから
事業税もかけられるようにな
つて来た。ただ差等が設けられて来たという形が実は出て来ておるのであります。そこで現在の協同組合に対しまする法人と申しますか、協同組合という法人に対する課税の
考え方は大体どういう形にな
つて来ておるかと申しますると、今の準備金が出資
総額の四分の一に達しないような
財政的な
基礎の弱いものについては非課税という形が出て来ておりまして、そして
財政が固ま
つて参りますればこれは出すというような形が出て来ておるのであります。そうして一般の企業と同様な取扱がされて来ておるのでありまするが、併し
考え方はやはりそういう
考え方で行
つたほうがいいのか、或いは今の協同組合の
一つの何と申しまするか、性格、本質というものを認識して頂いて、そうしてやはり或る
程度一般の企業とは線を引いてお考え願
つて行くほうがいいのか、これは今後の私たちの研究問題でありまするが、そこら辺の点は十分御勘案願いまして、御措置をできれば非常に幸いだと、そういうふうに思うわけであります。時間が足りませんので、思うことを十分に申上げ得なか
つたのでありますが、以上を申上げまして、
公述にいたすわけであります。
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