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1954-10-28 第19回国会 参議院 地方行政委員会 閉会後第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月二十八日(木曜日)    午前十時四十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     内村 清次君    理事            伊能 芳雄君            川村 松助君            館  哲二君    委員            伊能繁次郎君            左藤 義詮君            長谷山行毅君            小林 武治君            秋山 長造君            若木 勝藏君            松澤 兼人君            寺木 廣作君            加瀬  完君   委員外議員            木下 源吾君   事務局側    常任委員会専門    員       福永與一郎君    常任委員会専門    員       伊藤  清君   説明員    警察庁長官   斎藤  昇君    労働省労政局労    働組合課長   山崎 五郎君   参考人    北海道警察本部    長       熊野徳次郎君    札幌方面公安委    員会委員長   寺本 惠眞君    日本製鋼所室蘭    製作所労働組合    書記長     鈴木 強藏君    日本製鋼所室蘭    製作所労働組   合法規対策部長  青野 二郎君    日本製鋼所室蘭    製作所長    柳   武君    富士製鉄株式会    社室蘭製鉄所労   働組合執行委員  佐藤牟次郎君    全日本労働組合    会議北海道地方    会議事務局長  石岡貞次郎君    室蘭市助役   池浦 俊彦君   —————————————   本日の会議に付した事件地方行政改革に関する調査の件  (日本製鋼所室蘭製作所争議におけ  る警察関与に関する件)   —————————————
  2. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今より地方行政委員会を開会いたします、  地方行政改革に関する調査のうち、日本製鋼所室蘭製作所争議における警察関与に関する件を議題といたします。  それから委員長から御報告がございますが、公報所載参考人の件につきましてでございます。日本製鋼所室蘭製作所労働組合書記長池見恒夫君の代りに同組合法規対策部長青野二郎君を、参考人といたしまして本日見えておりますから、参考人とすることにいたしました。右御報告いたします。  それでは参考人方々に一言御挨拶申上げます。参考人方々にはお忙しいところにもかかわらず御出席下さいまして、委員会代表いたしまして、委員長より厚くお礼を申上げます。参考人方々からは、事件事情につきましては、その全貌を把握することができまするよう、又時間の関係もございますので、公述の時洲は十五分間程度にまとめてお願いしたいと存じます。順序といたしましては、先ず皆さま方から事情を聴取したのちに委員方々から質疑がございまするから、これに対しましては率直にお答えをお願いいたしたいと存じます。  それから各参考人方々から事情をお伺いいたしまする前に、労働省労働組合課長山崎五郎君から事件概要説明を頂きたいと思います。それでは山崎五郎君。
  3. 山崎五郎

    説明員山崎五郎君)お手許日本製鋼室蘭製作所人員整理をめぐる争議ガリ版制を配付してあります。簡単に書いてありますので、若干この印刷物に補足して説明いたします。日本製鋼所工場室蘭、広島、横浜に工場を持つております、そのほか赤羽、武蔵に特需工場を現在もつておりますが、これはいずれも独立採算制をとつております。そのほか大阪支所福岡営業所の二つの支店を持つております。従業員数は六千二百七十名であつて、現在従業員賃金ベースはおおよそ月収二万円であります。この争議発生の原因は先ず会社の莫大な赤字が累積いたしまして、本年三月決算五億七千五百万円の赤字を出した。配当なし。この損失金の内訳は大部分は鋼板部門の損失であつた。こういうふうな説明をなされております。そしてこれによつて企業合理化を実施することになりました。その後六月十七日組合に対して組合員五千二百六十名、この三工場その他を入れまして、日本製鋼所連合会を組織しておりますが、この連合会に対して企業合化理の一環として人件費月額二千二百八十四万円の削減を目途とする再建案を提示いたしました。その内容は人員整理一千二百六十四名、この当時室蘭製作所に今まれているもの九百十五名であつたのであります。その整理条件としては解雇予告手当平均賃金の三十日分、そのほか退職金規定による金額というような案が提示されたのであります。併しこの案は七月に交渉を開始、その後八月に入つて修正になりました。人員整理室蘭予定整理人員その後九百十五名から九百一名に変つたのでありますが、更に百十六名の解雇を取消しいたしまして、整理条件としては解雇予告手当平均賃金三十日分、社員の退職金規定による金額餞別金として基準内賃金の一・三ヶ月分、それに帰郷旅費荷造り費の負担をする。又残留者に対する措置としては一人平均八千円を生活資金として貸付けるという案を八月二十四日に会社から提示されております。目下会社側の本件に対する最終的態度はこの案であります。これに対して組合側反対をしております。併し九月二十三日第二組合発生いたしまして、この案に若干付加されたものを以て妥結といたしまして解決を見ております。で、現在第一組合は本整理案反対する、これが本争議の争点となつております。  次に争議経過概要に入りますが、六月十八日この整理案が示されてから連日に亘つて種々交渉が持たれました。会社側及び日鋼労連との間でございますが、労使の意見が全く対立しまして、七月五日には決裂するに至りました。この間会社側は六月二十九日以降退職希望者の募集により、七月五日には室蘭を除く各専業所においては希昭退職者を以て整理予定人員に達したと発表しております、でありますので、室蘭を除いた他の事業所におきましては事実上の解決を見ております。次に会社側は七月五日の決裂以後、七月七日に室蘭製作所従業員九百一名に対して同日七日付を以て解雇するとの個人解雇通知を出しました。組合に対してもこの旨を通告しました。  組合、以下今度は室蘭組合と申上げますが、室蘭組合は、解雇通知拒否、仮解雇者強行就労というようなことに出たのであります。  次に七月十八日現地において室蘭組合公社側との間に交渉を持たれましたが、二十日に至つて又決裂するに至りました、これより以前、日鋼労連から、室蘭の労組は、妥結権争議権及び一切の権限単組に戻しております。組合大会決定によりましてその権限単一組合単組にこれを戻しております。  なお会社側は七月二十一日午前六時から作業所閉鎖を実施いたしました。これに対して組合全員就労方針を確認しまして、会社側が設けたバリケードを実力を以て撤去し、会社構内に入つております。  七月二十四日、会社側は、札幌地域室蘭支部に対して組合員工場立入禁止仮処分申請を行い、組合側は八月十六日札幌地裁室蘭支部に対して組合員立入保全に関する仮処分申請行なつております。  七月二十四日以降組合側申入れによりまして交渉が再開され、八月二十四日には会社側から、整理人員の変更、退職条件を改善した最終案というのを組合側に提示されました。これが先ほど説明した会社側の案であります。これに対して組合側執行部の受諾を示したのでありますが、二十五日の中央委員会においてこれを受諾することの組合執行部態度を否決して所期の闘争方針を確認いたしました。  次いで九月六日に開かれた臨時大会において会社最終案を再審議の動機を否決して、長期闘争方針を二千百八十一対千二百八十四を以て決定したしました。  九月四日に、札幌地裁室蘭支部は、会社申請に基く仮処分申請に対して組合工場立入を禁止することの決定を行い、九日午前六時これを執行いたしました。その後、会社側は、約二億円に相当する製品工場外搬出を行おうとして、九月十五日貨物船神知丸埠頭に横付けしまして、組合側は直ちに海上に小舟を浮べて海上ピケを実施いたしました。  九月十六日午前、会社側から起重機を運転し積荷を実施しようとしたところ、組合側は直ちに海上ピケ隊及び工場附近に待機していた組合員を動員して埠頭に出てこれを阻止いたしました。この埠頭仮処分決定により組合の立入禁止された地域でありました。このような状態が二十日まで続き、神加丸は二十日正午積荷をせず出航するに至りました。この際若干の負傷者がでております。  このような状態になりまして、その後、九月二十二日、第二般洞南丸か到着いたしまして、会社側は当日積荷をいたしました。この際、警察官出動を見るような状態になつたのであります。  次に、かねてから戦術転換を主張しておりました組合員によりまして、九月二十三日、遂に第二組合を結成するに至りました。現在第二組合員は、私のほうでは千二百五十名と数を報告を受けております。第一組合或いは第二組合というのは、正式の呼称がありますけれども、便宜上、第一組合、第二組合として説明させて頂きます。第二組合は、結成直後、会社側交渉いたしまして、次のような協定に達したのであります。第一に、会社最終案即ち先ほど説明いたしました八月二十四日付案を以て解決する第二には、第二組合は二十五日から就労せしめる。立上り資金は五千円を就労後心ちに支給する。貸付金八千円は就労後直ちに貸付けるように考慮する等の条件によりまして、第二組合会社側との間に協定が成立いたしました、これによりまして九月二十三日以後、第一組合と第二組合との間にしばしば紛争が起つております、警察官出動を見るような事態ができたのであります、九月二十五日、第二組合員八百名が工場入場を企図したが、午後一時半に至つて、スクラムを組んでおつた第一組合員及び応援団体によつて阻止されておつたのでありますが、ピケを突破して工場に入場いたしました。この際第一組合及び第二組合員相当数負傷者を出しております。九月二十五日、十五号台風によりまして被害が出たので、応急対策上、第一組合、第二組合との間に臨時的な休戦が成立いたしまして、九月二十七日より二十九日正午まで、大会デモ等行為は行わないとの協定ができ、公社側と第一組合においても、第二組合員を九月二十七日より十月四日まで工場に入場させないとの協定が成立いたしました。その後十月五日になりまして、第二組合員八百名が工場入場を企図しましたが、工場正門より御幸橋に至る間約二千五百名を動員して張られたピケ隊に阻止されて入り得なかつた、午前八時から午後五時まて対立しておつたのでありますが、目的を達せずに解散いたしました、当日も警察官出動を見るような事態になつたのであります。  十月六日、早朝より、第一組合員、千四百名が工場正門及び御幸栴工場正門中間等の三地点にピケを張つておりました。で、この日も第二組合との対立が激しかつたのでありますが、第二組合はその日の午後他の通用門から入場したのであります。当日も警察官出動するような事態になつたのであります。その後十月六日以降、工場内に入つた第二組合は、工場構内に宿泊いたしまして作業に従事しておりました、十月十三百工場正門より退出するまで構内に宿泊しておりました、その後、第一組合、第二組合の小ぜり合い等が相当起つております。現在におきましては、二十六日第二組合の八百名が工場正門より入場しようとしたのでありますか、第一組合側の千五百名のピケ隊に遮りれまして、数回に亘つて実力を以て工場に入ろりとしたが入り得なかつた。又乱闘になる可能性があつたので、警察官によつてそういう危険を阻止されたというような報告が来ております。  以上が大体争議経過概要でありますが、これに対し、一方、北海道道労委を中心としました争議斡旋調停等経過であります。田中北海道知事は、七月二十一日に、組合側及び使用者側に対して、話合いの余地は十分あると考えるので、直ちに続行するように要請しております。なお二十八日上京しまして、東京においても田中知事はそのような勧告行なつております、八月四日に、田中知事は、場合によつて第三者斡旋知事として考えておるので考慮してもらたいといいうような勧告をいたしましたが、組合側第三者斡旋を考えておるとの回答をしたのでありますが、経営者側のほうでは自主的交渉による解決を希望いたしました。道労委といたしましては、八月十七日に、労使双方に対し出て、労使双方が応ずる意思があるならば、地労委斡旋を行う意思があると申入れを行いました。これに対して経営者側は、組合斡旋に応ずれば、いつでも斡旋を受けるとの回答をいたしました、組合側のほうは即答を避けて、八月十九日の中央委員会に諮つた結果、執行委員会一任決定して、その後こ件のについては正書な意思表示をしておりませんです。ところが、このような争、事が発生して長期になり、且つ労使及び労働組合間の対立が激しくなつたので、北海道知事は九月二十二日職権斡旋をいたしました。道労委はこれにより開始いたしまして、十月二日に次のような斡旋案を提示したのであります。  会社は七月八日付解雇者を、同日付で休職扱いとする。会社休転者を除く全員を以て直ちに操業を開始する。会社は七月八日から七月二十に至る間について、休職者を含みた全員に対して一人平均五千円を支給する。配分については労使協議する。就労当の立上り資金労使双方で協議する。企業合理化に伴う新店員休職者の取扱いについては、十月二十日を目途として労使協議の上決定する。休職者の給与は無給とする。但し協定成立から第五項の協定決定の日までは基礎賃金の五〇を下らざる金額を支給する。本案中の労使協定事項についてその協議調わぬときは第三者斡旋に委ねる。斡旋継続中は労使双方とも争議行為は行わないとの斡旋案を提示いたしたのでありますが、十月四日労使双方ともこれを拒否いたしております。併し道労委といたしましては、まだ斡旋を打切つたものでないとの態度を表明しております。  以上が日本製鋼所における人員整理をめぐる争議概要てあります。争議見通しにつきましては、現在労使双方その他関係者の間において、解決への努力、或いは解決するための空気の醸成と申しますか、いろいろ微妙な動きがありますが、現在のところ速急の解決という見通しは現在立つておりません。
  4. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは参考人の口述を聞くことにいたします。北海道警察本部長熊野徳次郎君。
  5. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) お手許に、「日鋼室蘭製作所争議について、北海道警察本部」というのを差上げてあるはずでございますが、大体これに従いまして一応御説明いたしたいと思います。  第一ページは重複いたしますので省きます。第二ページから説明いたします。会社は、九月九日手持ち半製品約千七百トンを受注先に納入するための搬出を計画し、下請業者荷造作業を行わせたのでありますが、組合はこれを争議協定違反として反対態度をとり、十一日以降下請人夫入門阻止貨車搬出実力阻止等不法事案を敢行し、十六日・十七日・十九日の三日に亘り半製品を船積しようとした埠頭組合員数行名立入禁止区域を侵して乱入、これを占拠して出荷を妨害した事案発生するに至り、これに対しては、警察側よりそれぞれ厳重警告を発し事態を収拾してきたが、十九日のごときはその規模も大きく乱闘状態を呈しなからも、組合側は今後もこの種事案の敢行を高言し、更にこれに対し執行吏よりも不当侵入排除申請が行われたので、警察としては治安維持上看過できないものがあり、爾後警察力を以て違法行為発生を防止することを決意、二十一日応援警察官五百を室蘭市に派遣、警備に当らせることにした。  警備部隊配置によつて、二十二日以降はこの種妨害はなくなつたがこの前後から組合内部再建派との対立が明らかとなり、二十三日約八百名によつていわゆる第二組合が結成され、大会代表八名が工場に入り会社と団交を持ち、即時就労生産再開決定した。  この際代表八名は警察措置により入門したのであるが、これに関しては当時第一組合側が正当な入門許可証を得て入門しようとする八名を阻止すべく正門前に約三百名のピケに加え、附近に約千二百名が集結しており、かかる多数の威力を以つて入門を阻止することは明らかに正当なる争議行為を逸脱し、違法であるばかりでなく、両組合分裂直後で双方組合員感情的対立がその極に達し、且つ八名より身辺保護要請もあつたので、広報車で数回の警告を行つたが、依然ピケは解かれず、止むなく違法状態を制止排除し連絡路を確保したので、これを通り右八名が入門したものである。  ここにおいて争議は、第一組合対第二組合組織争奪の形となり、当日以降各所に両組合側暴行障害事案小競合い等が頻発し、両組合員が混り合つて住んでいる住宅街では、主婦、子供、老人に至るまで、それぞれ鋭く対立、険悪な空気を醸じ、数的に劣勢な第二組合員家族に対する物心両面からの圧迫は執拗に繰り返され、家族同志不法事案発生さえ見るような状態にまで深刻になつて来た。  加うるに二十五日、第二組合就労のため工場入門する際、実力で第一組合ピケを強行突破したため、双方に重軽傷百数十名を出す不祥事態発生を見た。このことは以後第一、第二両組合対立をますます険悪にする要因となつたが、入構した第二組合員は二十七日朝までそのまま籠城し、時あたかも台風十五号の来襲がありその被害復旧のため、本争議会社、第一、第二組合三者間の話合いで二十八日まで休戦状態に入ることになり、警察部隊も一応引揚げることとなつた。  その後第一組合側は二十五日の事件を全面的に第二組合の責任であるとして、二十九日以降その釈明方を要求してデモその他の圧力を加え、この間応援に赴いた北三連の行動隊約六十名は、全員坑内帽(ヘルメット)を着用して先頭に立ち、第三組合員或いは会社側に対する暴行傷害等事案を敢行したが、十月一日には第二組合事務所において取材中の新聞記者に対する暴行事件発生した。  このような情勢に加えて長期の激務に室蘭所員の疲労は甚しく、依然社宅街治安も険悪化していること等に鑑み、治安確保と第二組合入門時の重態発生に備えるため、再び警備部隊応援派遣することに決し、二日以降四日までに計四百五十八名を出動せしめた。  これより先、道知事要請により九月二十六日以降職権斡旋に乗り出していた地労委では、十月二日斡旋案を提示したが、四日労使双方から拒否回答が出された。  このため、五日朝第二組合側入門就労のため行動を起し、第一組合側工場に通ずる道路上にピケ張り入門阻止を図り、その間両者の話合いが行われたが、結局物別れとなり、第二組合は前進し、正門附近双方集団が押し合いを演じ、不法事態発生も懸念される状態なつた。  警察はあらかじめ、警備配置についていたが、以上の状況により第一組合阻止行為は正当なピケの限界を逸脱した違法状態なりと判断し、実力でこれを排除すべく警告を発したが、夕刻ともなり会社側より本日の就業を取りやめる旨の申出があり、第二組合就労断念引湯げたので、警察力行使を見ずして終つたのである。  翌六日は、前日の推移に鑑み、再び違法状態発生したときは、実力排除すべく出勤し、第一組合側御幸橋上において友誼団体と共にピケ張り交通妨害を行つているので、警察職務執行上通過するので解くようにと数回警告したにもかかわらず、逐次増強し、且つ坐り込んだため、これを排除後退せしめ、所要の警備配置行なつたが、第二組合側正門前の第一組合ピケを避けて旧正門より入構したため、辛い事態発生を見なかつた。  この警察措置に対し、第一組合側は、警察が第二組合入構を擁護し労働争議に不当干渉したと抗議して来た。  一方社宅街等においては、第に組合家族等に対する暴行等が再び増加したので、警備部隊による警ら、活動を強化すると共に、従来発生した悪質の暴行傷害事犯捜査検挙を進めるに至つた。  入構した第二組合員は、再びそのまま篭城して就労し、十三日一旦出門したが、事案発生はなく、この間、第一組合側による非組合員入門阻止会社の貸車搬出阻止等事案発生を見たが、それぞれ警告等措置により事態を収拾して来た。  第二組合は十五日再び入門を企て、その際これに伴う事態発生が懸念されたが、海上より船で入構したため事なきを得た。  右の情勢により事態が緩和したので、十五日二百十三名名を残して応援部隊を一応引揚げさせた。  海路入構した第二組合は、十六日以降一日置き、二十日以後は毎日正門より出門しては海路入構する方法によつて就労しており、第一組合側は依然友誼団体応援を含め連日千二百名から二千名を動員して第二組合正門からの入構を阻止し、二十日見送りデモと称して埠頭で若干の小競合いを演じたほか、十七日、十八日の両日第一組合青行隊会社側の貸車移動及び半製品搬出を阻止する行動に出たが、それぞれ厳重な警告等によつて事なきを得た。  この間警察は、社宅街のパトロール、出入構時の紛争に備えての警備配置を実施して、現在に至つているわけであるが、一時の不穏状態から脱したとは言え、争議解決の見透しも見られず、依然争議に伴う不法事態防止のための見地から警備措置の万全を期して室蘭市内治安確保に努めている次第である。  大体経過はこういう状況でありますが、この争議期間内に不法事案発生が今までに百十四件あります。このうち逮補いたしております者が、逮捕令状で逮捕した者のが十八名、現行犯逮捕が四名、任意取調べが四名、計二十六名、この身柄の送致を十六名いたしております。この十六名のうち検事釈放が九名、検事勾留中が七名、記録だけを致したもの四名、警察で釈放したものが六名と、こういうことになつております。  以上が経過概要でございますが、私どもが一番苦心いたしましたのは、一番初めに十六、十八と不法立入禁止域に入つてそして製品搬出を強行したと、十八日にちよつと小康を得たので見送つておりましたところ、十九日に、余り目に余るので、もうこれはじつとしていられないということで、十九日に警察官を派遣する決意をいたしました。二十一日に約五百名を派遣し、製品搬出妨害を阻止することができれば警察はすぐ引揚げようということで一ぺん出したのであります。その後十月二日、当時地労委斡旋等もありまして、警察応援部隊を出さんで済むように念願いたし、我々といたしまして直接出ることは面白くないので、知事にお願いして、あらゆる手段を講じて大群衆の衝突を避けてもらいたいということをお願いいたしたのでありますが、十月十五日にやはり強行突破するという状況を聞きまして、ここ、一つ決意をいたしまして、今度はどうしても入ることになれば、今の第一組合ピケは適法の限度を越えておる。そうして第二組合は当然入門する権利があるんだ。従つて警察実力行使をしてやろう。こういう決意をいたしました。但し半日以上は警告しよう。それと同時に、以後は不法行為に対して検挙主義で行こう。今までの暴行等事案については検挙を開始する。こういう決意をいたしまして、五月一日揉み合つたのでありますが、それをじつと待つておりまして、六日には今度は警察で以て強硬突破するという態度をとつたのであります。この際は、先ほども言いましたように、旧正門から第二組合が入りましたので、その事態が起らなかつたわけであります。それともう一つは、社宅街を何とか治安を守らなければいかんということで、二百名余り警察官を、配置して、臨時テント張りの交番を八カ所増設して昼夜警戒する。こういうことで社宅街治安小康を得た。こういう状況であります。  以上極く簡単でありますけれども……
  6. 内村清次

  7. 寺本惠眞

    参考人(寺本惠眞君) 札幌方面公安委員会委員長寺本でございます。お手許に差上げてあります要旨を多少敷衍して申上げたいと存じます。  実は、この日鋼室蘭工場は、すでに御承知の通りに道内屈指の大きな工場であり、殊に又その製作する製品関係から言つて、国の産業の根幹にも繋がるような大きな、且つ又重要な工場でありますので、当面としては北海道の残業にも非常に影響し、又道民の人心にも及ぼすところ決して少しとしないというように考えましたので、初めから、勿論私どもその当時はこういうようなことになろうとは、私もこういうことに素人でありますので、考えておりませんでしたが、とにかく道民の一人として、これは何とか早く解決がつかなければと、こう心配しておつたのでございます。そこで本面本部長とも相談いたしまして、勿論個々の臨機の警察処置などはこれは本部長の正しい判断で行うことでありますけれども、それにしても、基本的な警察の運営の方針だけは、又考え方と言いますか、これは公安委員の責任でありますので、きめておかなければならん、こういうことを実は私は考えたわけでございまして、私は実はこういうことをよくわかりませんし、法律のことも非常にうといのでありますけれども、幸い私どもの委員同僚の中に、ついこの公安委員になりますまで労働組合の副組合長をしておつた人がありますので、その人に、まあ、ともかくあなたよくわかつているはずだから、これはもう本当にこれが筋道だということをあなたの意見に頼るわけだからというようなことなども委員会で話をしまして、そしていろいろ考えました結果、こういうことを本部長とも相談いたしまして、一般的には犯罪となる事柄だが、労働法規の中で違法性の阻却ということがところどころにあるのだが、それを勿論わかつておる者はもう当然わかつておるわけですが、末端の警察官一人々々、若い警察官にまでそれがはつきりと心に消化されていなければならん、ただ一般的な犯罪の検挙みたいなようなことではいけないというような、そういうようなことで、そんなようなことの打合せも十分いたしました。それで勿論こういうことは申上げるまでもないことでありますけれども、警察はまあ北海道で申せば道民の警察なんで、道民に対するサービスの心持がなくてはもう本当の警察ではない。私は始終警察官の教養ということを、言つておるのでありますが、本当にお巡りさんが道民のための警察だということが心にわかれば、交番などというものは、これはもう何です、そこら近所の子供が遊びに来て、お巡りさん、お巡りさんと言つて遊びに来てもいいじやないか、田舎から札幌に出て来たおじいさんやおばあさんのお弁当食べる場所になつてもいいじやないか、こういうようなことを平素言つておるわけですが、そういうようなことをこの際考えて、而も決してこういう争議だからと言つて、とちらに肩を持つというようなことは絶対にあつてはならんし、公正な態度でなければならんが、さりながら併しここに違法というようなことがあれば、これは予防もしなければなるまいし、又それに対する警察措置もとらなければなるまいが、できるならば予防ということで行けというようなことの相談もしたのでありまして、ところが初めの間はそんなようなことでおりましたが、だんだんと情勢が複雑になり、又気持がだんだん緊迫して来ましたので、再三に亘つて定例の委員会外に臨時委員会も開いて、方面本部長ともよく相談をし、又その後においては道の公安委員会とも合同の委員会も開き、道の本部長とも、もうしばしば委員会ばかりでなく、そのほかの機会にも会いまして、ともかく公安委員会で考えておることと、それから本部長との考えなどに決していささかの食違いでもあるようなことであつたならば、これは警察は動かない、動いてはならないというくらいなところまで一応の枠を定めて、そうして私ども一致した方針で、札幌方面本部長と今日まで警察の運営をして参つたようなことでありまして、併しながらそういうようなことも警察内部の本部長その他幹部と話をしておることでありますが、これだけでは公安委員会の立場として私どもは道民の代表のような気持でおりますので、一方的なことでは困ると思いまして、何かの機会にお聞きをしたいと思つてつたところ、たまたまこちらに見えておるたしか鈴木さん外七名、共闘の関係の方も来られ、非常に喜んでお会いをしていろいろとお聞きもし、又私どもの、警察運営のことについても申上げ、そのときに私は申したのです、宮永室蘭署長は私も個人的に知つているが、決して偏るような男でない。非常に誠心誠意まじめな男なんたから、時によれぱそのまじめさの余り、又疲れて寝不足もしておりますからそのようなことで、時によればああすればよかつたのではないかというようなこともあるかも知らんけれども、まあそのようなことでもあれば聞かしてもらいたい、現地の署長は誠心誠意やつておるはずだということもお話して、まあそれはそうだということもお聞きしております。その後たしか七日でありましたかに共闘の宮士鉄さんの平野さん、久米さんというような方がお見えになつたときも私に同じようなこともお聞きもし、又申しておつたことであります。  すでにお聞き及びの通り警察が或いは不当な介入をしたというようなことの御意見もあるのであります。又一方警察は手ぬるいじやないかというようなことも言われたりもして、私ども公安委員全としては、この警察の運営が一方では手ぬるいと言われ、一方では出過ぎると言われ、まあほとほと実は苦心惨胆しておるような状態であります。  それではその前に、前後いたしますが、やはりその現地の模様を報告だけで聞いておつたのでは私どものまあ一方的なようなことに、警察側から聞いておるだけでは私どもの判断に若し狂いがあつてはならんというようなことも考えましたので、このときには個人的なというようなことでありましたけれども、先ほど申しましたこの労働組合の副組合長をしておつた委員に、あなた一つつてくれんかと、そしてあなたの目で、私が行つてもわからんからあなた行つてよくその現地の模様を見て来てほしいということで室蘭に行つてもらいました。それで帰つてつぶさにそのときの模様を私ども報告を開きました。ところが御承知の六日のことがありまして、八日の日に今度は道の公安委員長も現地へまあ行つたことないから行くということでありますし、私どももそれであれば一つ玉田委員つてくれんかということで、これは公式に委員会として室蘭に行き、このときにはいろいろな方お会いをして、又与論として報道関係者にも多数集まつて頂き、そのほかいろいろな方面のことなど耳にし、又現地で見て来てそして私どもに又詳細な報告があり、私どももそれによつて運営の方針について心にこういろいろ考慮をめぐらしておつたわけであります。  まあ実はいろいろ警察不法とか不当とかいうようなことを言われておりますけれども、今日までのところでは不法不当というような点はないと公安委員会では判断をいたしております。むしろ現地の報道関係その他第三者的なといいますか、そういう人々からいうと、警察は随分苦労しているのだというような、むしろ同情的に見られておる面もあるようであります。それで今も道本部長の説明の中にありました、何ですか、十九日でしたか、十八日頃に応援を出そうと決意をしたということがありましたが、そのときにも寒はその決意をされる前に私ども、私どもはまあ札幌方面の公安委員ですが、勿論あの道本部長とも始終緊密に話合いをしておりますので、こういうような情勢なつたが、これはもうどうしても応援を出さにやなるまいかと思うが、どうだろうかというような話がありましたときに、まあ事情がそういうことであれば止むを得んかも知れないと、併しそれもその事情の、今ここにある事情の防止或いは排除のためであつて、その現在あるところのその事案が片付いたら一刻も早く引揚げるようにしなければならんというようなことも、話をしておりましたので、勿論公安委員会としては決して不当な介入などをしようと思つて警察官を動かしたということはもう絶対にないということを申上げるために、そういうようなことも今ふと思い出したわけでございます。  今までもいろいろ何しろ馴れんことでありますので、まあ細かな点は実はよくわかりせんけれども、併しその後は殆んどまあ、これが仕事みたいなことになりまして、詳細な細かなことまで一々私どもに或いは事前に或いは事後に報告を求め、事前であればつぶさに意見を述べて、警察運営の上に過ちないようにということを努力しておるわけであります。  私は学校の教員でありますので、どなたにお会いしても子供がかわいそうだから、何とか早く話合いがつくようにしなければならんだろうと、北海道はもうそろそろ雪も降るじないかというようなことを言つて、そうして早く会社側組合側とが円満な話合いをされて、そうしてもとのように、これも申した、たくさんある煙突から煙が上つてないということは余り情けないじやないか。何とかとて早く話合いを進めて、そうして煙突から元気のいい煙が、どの煙突からも上るようにしてくれ、そうすれば私ども若い警察官をあちこつちから少しずつ集めて、給与もないようなところに本当に苦労さしておくことしたいわけでもございませんし、もう喜んで警察官はすぐにでも引揚げたい、こういうような感じを実は持つておるのであります。  それでまあこういうようなところに参考人としてお呼びを頂きましたことも、私の考えておりますことを申上げてお聞き願う機会を与えられたことを、非常に喜んで出て参りたことであります。最後にもう一言重ねて申しますれば、公安委員会としていろいろ指示もし、協議もして今日まで参りましたので、いろいろとこれはまあ言われますけれども、不法不当介入というようなことは警察措置にはなかつたと、このように考えておるわけでございます。
  8. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは日鋼室蘭労組書記長鈴木強藏君。
  9. 鈴木強藏

    参考人(鈴木強藏君) 日本製鋼の室蘭工場には現在二つの組合がありますが、私は分裂をされたほうの組合書記長をやつております鈴木と申します。本日お手許に差上げましたプリントと以前に差上げましたプリントに従つて申上げたいと思います。  争議発生の原因或いは理由、争議経過、こういつたことにつきましては重複を避けまして、特に申し上げたい点だけを重点的に申上げ、主として警察関与に重点を置いて申上げたいと思います。御承知のように六月十七日に会社のほうから我々の組合に対して九百十五名の解雇が発表されました。これは組合員総数に比べて四人に一人という大量の首切りでございます。で、会社の首切りの理由と申しますか、首切りをしなければならなくなつた原因というものは、昭和二十八年度の下期決算において五億七千五百万円と記憶いたしておりますけれども、このような損失を計上した。更に鉄鋼界の受注の先行き不振、こういつたことを理由に大量の首切りがなされて参つたのでございますが、五億七千五百万円の損失の内容等につきましても、組合側といたしましては会社と団体交渉の席上にはつきりと認識いたしたことは、単に仕事の上で実際にこうむつた損失ではないということ。つまりこの五億七千五百万円の大都分の赤字計上というものは、従来まで停年退転をやつて来た者の退職金、或いは国家から借用しておるとこるの機械、こういつたもの支払代金と申しますか、こういつたことを一挙に二十八年の下期に至つて初めて計上した、こういつた要素を含んだために大きな赤字となつて二十八年の下期に出て参つた。こういうようなことでございます、労働組合といたしましては四人に一人という首切りは到底容認できるものではない。特に日本製鋼室蘭の場合、明治四十一年の操業以来今日まで従業員の大半は親子三代或いは二代にわたつて永年勤続をいたしておる者が大部分でございます。従つて企業に対する受着心、こういつたものはほかの同種の企業或いは他の企業の従業員とは比べものにならないほど強うございます。更に北海道労働市場といものは極めて払底いたしておりまして、現在室蘭市におきましては日雇労務者すら月三十日稼働できない。最高稼働するのが二十一日である。あとの九日分はどうするか。これは日雇労務者の数が多いために収容する、それらを稼働させる場所がないことは勿論でありますけれども、失業対策資金その他の、これらの点から見ましても、三十日稼働を全部の日雇労働者にさせるということはできないような現状にあるのであります。更に日本製鋼室蘭は戦前軍需工場として兵器生産を主として参りました、戦後御承知のように平和産業に切換えたのてありますが、すべての企業と同じように非常に不振に陥つております。このときに従業員は多数北海道内の各石炭鉱山に派遣されて、組合は地下何千尺の炭坑の中に入つて石炭を掘り、この石炭を企業に送つて、企業の機械を動かし或いは平炉を動かして参つた。こういうように終戦後今日まで日鋼の組合員がとつて来たものは、企業を守らなければならない、企業を育てなければならない、こういうような信念に燃えて今日まで企業を盛り立てることに努力して参つたのでございますが、この報酬と申しますか、この組合員の努力に報いられたものは九百十五名という首切りであつた。こういうような状態の中で日本製鋼から首を切られることは、即も死を意味するものである。先ほど申上げましたように親子三代、二代の永年にわたる勤続、或いは北海道の労働市場が極めて悪いという状態、更に企業に対する愛着心が強いということ、こういつたことから首を切られることイコール死である。こういうような観念に燃えて、そうして首切り反対のために経営者に対して闘わなければならないと決意をいたした次第でございます。六月十七日に首切りが発表されて以来、東京本社において団体交渉を持つてつたのでございますが、七月五日に至つて決裂し、七月八日に先に発表された九百十五名のうち九百一名に対して解雇の通知が発表されております。  労働組合は八日に解雇通知を受けて、九日に大会を開いております。これは代議員大会を申しまして、組合員十名について一名の割合で選出された代議員によつて開催されております。この大会で首切り反対のために労働組合は闘わなければならない、こういうような決定をいたしております。更に翌十日、つまり七月十日でありますが、全員投票によつて、この大会決定が本当に全組合員の支持を得るものであるかどうかということを投票によつて更に確認をいたしております。このときの投票の結果は、首切りを反対し闘うという数字が三千四百四十九票、反対であるという数字が四百一票、こういう圧倒的な多数の下に日鋼の労働組合としては首切り反対闘争に起ち上つたわけでございます。  更に組合といたしましては、当初会社が出しておりましたところの企業再建案なるものを、組合としては現在の経済情勢、こういつたことから、これは会社案をそのまま了承するのにやぶさかではない。但し会社の企業再建案のうち、人件費の削減については労働組合としては承諾しかねる。つまり人件費の削減を組合が承諾することはイコール解雇を認めるという結果になるからであります。従つて労働組合といたしましては。この人件費の削減については削減の方法を先ず考え直してもらいたい。つまり現在日本製鋼室蘭従業員平均の基準内、超過労働をやらない基準内の収入は一人平均一万三千五百円でございます。これが実際の収入は月二万円になつております。差額の六千五百円くらいは組合員が超過労働をやつて、その分の賃金が加えられるために月二万円になる。従つて労働組合としては、この超過労働分の六千五百円は要らん。つまり超過労働をやらないで、超過労働の分は基準内の時間の中で努力をする。そして超過労働に支払われておつた賃金を会社が首切りをやろうとしておる九百何名かの人間に振り当てる。このことによつて実際には人件費の節減の方法というものは、会社組合との間に違いを見せて来たわけであります。簡単に申上げますと、労働組合は実際の収入を減らしても首切りをやめて、親子三代、二代、永年に亘つて勤めて参つた組合員が仲よく今後も企業の盛り上げに努力をして行きたい、ここにあつたわけでおざいます。  こういつた経過で闘争に入つてつたのでありますが、労働組合といたしましては、飽くまでも合法闘争ということを打出しております。更に暴力を排除することは勿論でございます。組合とのつまり関係を持つ外部団体と申しますか、こういうような組合とおつき合いをする。俗な言葉で申上げればおつき合いをする団体につきましては、私どもの組合の上部団体である鉄鋼労連或いは総評、全道労連、室蘭地区労、こういつた団体組合とはおつき合いをするけれども、その他の団体とはおつき合いをしない。こういう態度も明確に打出しております。更に只今申上げました通り、合法闘争という建前から、九月四日札幌地裁室蘭支部決定を見ました立入禁止も仮処分、同月九日にこれが執行されておりますけれども、労働組合といたしましてはこの決定の執行通り行動をいたしております。この件につきましては後ほど更に申上げたいことがございますけれども、更に闘争の途中におきまして、九月二十三日不幸にして組合が分裂をし、新らしいと言われておりますが、分裂をした人たちは新らしい組合というような表現をいたしております。ここで便宜上分けますと、第二組合発生をさえております。私どものほうでこのときの構成は千百三十四名、この千百三十四名のこのうち工場で稼動する者、この人数は五百八十一名、実際現在の工場稼動の労働者は約二千百五十名でございますので、五百八十一名だけが工場で稼動する、こういうような第二組合の構成人員でございます。従つて第二組合の生産の主体勢力と申しますか、とにかく現在の第二組合の数では、日本製鋼の室蘭を動かすという力がないことだけははつきりといたしております。で特に第二組合の構成人員は事務員或いは工場の職制と申しますか、班長、係、こういつた人たちが大部分を占めておるわけでございます。  それから次に労働組合の闘争始まつて以来、今日までの期間の運営、こういつたことでございますが、七月十日全員投票は先ほど申上げた通りでございます。更に七月二十七日の会議条件闘争に移行するという道議が提出をされておりますが、これも圧倒的な多数で否決をされております。次に八月二十五日にも会議で、同じくこれは執行部でございますが、執行部からの提案、これも圧倒的な多数で否決をされ、更に九月六日の全員大会で闘争を更に続行することが再認識を見ております。  で九月六日の全員大会のことについて若干触れてみたいと思うのでございますが、九月六日の全員大会におきましては、午前十時開会いたし、閉会は午後十時半、約十二時間半の長さに亘つて組合員三千五百名が出席して開かれたのでございますが、この席上で八月二十五日に執行部が出した会社の修正案と申しますか、百十六名の解雇を撤回するという案をもう一度再審議してはどうかという緊急動議が出されております。この緊急動議をめぐつて約三時間ほど討議をし、その後組合員の直接無記名投票によつてこの問題を、条件闘争に入るというほうを否決いたしております。そのときの投票数は約二千二百対千二百で投票を、そういう条件動議は審議する必要がない、こういうようなことになつております。更に続いて労働組合は今後更に闘いを続行する。特に生活資金の問題、融資の問題、こういつたことを長時間に亘つて論議を交わしたのでありますが、このときの論議が約四時間ほどでございますが、これも結果的には組合員の直接無記名投票によつて長期闘争を止むなし、飽くまでも解雇反対のために闘うという数字が約二千二百、反対という数字が千二百、こういうようなことで闘争の続行が確認をされております。以降九月二十三日第二組合発生し、第一組合といたしましては、執行部の中から第二組合に参加をした役員がおりますので、その補充と同時に、現在役員数は七名でございますので、非常に少いという建前から、更に役員の補充を決定いたして今日に至つております。  次に警察の干与に関してでございますが、武装警官が室蘭市に派遣されたのは、只今までのいろいろな方のおつしやられたことで……、九月の二十一日、二十日乃至二十一日となつておりますが、この警察が派遣されるまでの警察との関係につきましては、労働組合の立場で言うのはちよつとおかしいのでございますが、室蘭市との間には非常に円滑と申しますか、常に連繋をとりまして、事件と称するものは何もございませんでした。でその後、武装警官が室蘭市に派遣されて以来、只今までいろいろな方がおつしやられたような事件と称するものが起つておるのでございますが、とにかく第二組合発生以前の警察の干与というものは、私ども労働組合の立場でなかつたという工合にはつきり申上げることができると思います。  次に警察の干与でございますが、九月十五日以来会社は半製品の貸出を強行しようといたしておりまして、労働組合といたしましては、この会社のとろうとしておつた行動、とつた行動につきましては、労使の間で協定をいたしております争議協定に違反をする、こういうことで交渉を持つたのでありますが、この交渉は結論を得ないままに会社は半製品の積出しを強行いたしました。従つて警察といたしましては、こういうような会社態度については実力を以てこの半製品の積出しを阻止しなければならない、こういうような態度を明確にいたしました。これは隣に第二組合の法規対策部長をやつておられる青野君は、当時組合書記長でございましたので、この間のいきさつは非常に詳しく知つておられると思います。で特に当時の書記長は強行な意見を吐いた、こういうように私ども承知をいたしております。こういうような状態の中で先ほどおつしやられたような、どなたかおつしやられたような武装警官の派遣ということが起きて参つたのでございますが、九月二十二日埠頭に横付けになりました洞南丸に対する半製品の積出の際には武装警官約六百名が出動をいたしております。労働組合といたしましては、官憲との摩擦を避けるために、このときはそのまま拱手傍観というような形でおつたのでございます。更に翌九月二十三日、労働組合が発会式を終つた後、午後五時頃隊列を組んで日本製鋼室蘭正門前に到着をいたしました。当時正門前には第一組合側ピケを張つておりました。で第二組合側から代表八名は会社と団体交渉をやりたいので中へ入れてもらいたい。こういつたような申入れがあつたのでありますが、第一組合としてはピケでこれを阻止をいたしておりました。このときに会社構内に武装警官が約三百名おつたのでありますが、この武装警官の中から、会社の中におつたのでは警察としての仕事ができないから第一組合ピケの外に出してくれ、こういうような申出が警察のほうからあつたわけであります。従つて第一組合としてはよろしいということで武装警官が外に出ることを了承いたしました。直ちに武装警官側は四列の縦隊になつてピケ・ラインを割つてつて来たわけでございます。勿論このときは組合側が了承いたしておりますので、警官が通るだけの通路は開いたわけでございますが、警官隊がピケ・ラインを完全に割つたと見るや、四列の縦隊が二列に分れてその場に停止をいたしております。そうしてその中を第二組合の幹部が通つて中に入つておる。而もこの際第一組合側からはこの中に入るのには現在立入禁止を食つておるのは、入場される人は執行吏の立入許可証を持つておるかどうかと、こういつたようなことについても申出をしたのでございますが、このときの警官隊のほうではそれらしいものをちよつとかざしただけで、具体的な結論というものは得ておりません。更に九月の翌々二十五日午後十二時三十分頃、第二組合は中に入つて仕事をやる、こういうように称して会社正門前に到着いたしたのでありますが、第一組合ピケに阻止をされまして、一旦下つて附近のバレー・コートで休憩をとつておりました。第一組合といたしましては第二組合が後退をしたと、こういうことで良心的に考えてピケの人数を減らしました。約二百名までピケの人数を減らしたのでありますが、この虚を狙つたかどうかはわかりませんけれども、第二組合のほうでは柔道或いは相撲に練達の者を先頭に立てて突進して来て、第一組合ピケを踏み倒して中に入つてつたというような事件が起きております。このときには生命危篤の重傷者が出ております。更にこのときには現場に私服警官が約二十名くらいおつた。但しただ見守つてつただけでございます。その後この二十五日、第二組合の暴力と申しますか、こういうような事件のために生命危篤の重傷者が出ておるのですけれども、この加害者の捜査というものはなされていないやに聞いております。更にこのときの入場した第二組合員約七百名、これらの者についても明らかに執行吏の立入許可証、こういつたものは持つていなかつたという工合に私どもは断定をいたしております。と申しますのは、第二組合員六百七十九名に対して室蘭市の熊谷執行吏が立入許可証を発行したのは二十五日の午後八時三十分、従つて二十三日の入場並びに二十五日の第二組合の入場については明らかに執行吏の立入許可証を所持していなかつたと、こういう工合に判断いたしております。次に十月五日午前九時頃、第二組合は隊列を組んで就労のために会社正門前から入場をする、第一組合といたしましてはこの入場を説得によつて阻止をする、こういうような点から会社正門前に約二千名のピケ隊、更に正門前方約百五十メートルくらいの所にあります御幸橋と呼称される陸橋、下を鉄道線路が通つておりますために陸橋になつておりますが、この陸橋で第一組合側の説得員である応援団体組合員、これを約二百名派遣をいたしておりまして、この第一組合側の説得員と第一組合の幹部と第二組合の幹部がここで話合いを続けたのでありますが、なかなか話合いがつかない、こういう事態になつて話合いの場を更に附近の旅館に移して続けたのでございますが、最終的にはまとまらないままに第二組合実力ピケを突破する、こういうような行動に移つたのでありますが、丁度夕暮のために中止をした。このとき第二組合行動をする、その側面を武装警官が第二組合と同じような速度で側面から護衛するといいますが、こういつたような行動に終始いたしております。更に十月六日の事件関係があるのでございますが、十月五日の午前十時頃と記憶いたしておりますけれども、附近に待機いたしておりました約五百名の武装警官側のほうから申入がありまして、第一組合といたしましては、この約五百名の武装警官の中から約百五十名の武装警官をこの説得員の場所を通して中に入れて、第一組合正門前にピケを張つてつた附近に入つております。これは警察側では治安のためとこういう工合に言つておりますし、私どものほうといたしましても警官の通行を妨げるというような意思は毛頭ない、こういうような点から、五日はそういうような処置も警察と第一組合の話合によつてなされておる次第でございます。翌十月六日に至りましては、第一組合側は前日の十月五日と同様な体形を以て第二組合を説得しよう、こういうように出ておつたのでございますが、先ほど道の本部長のほうからもいろいろ報告がありましたけれども、私どもが第一組合側正門前に約二千名、陸橋附近に約百六十名の、隣の富士製鉄室蘭労働組合組合員約百六十名くらいの説得員、こういうような体形でおつたのでありますが、この富士製鉄の説得員に対して警官側は交通妨害だからそこをどけろ、こういうような警官を一回し、二回目同様の趣旨のことを繰返して広報車から拡声器を通じして放送している最中に、武装警官のほうは棍棒を振い、足で蹴つてこの説得員を踏み散らして中へ入つております。先頭の武装警官がそういう形で中へ入ると同時に約議百名の武装警官が全部中へ隊列を組んで入つて、第一組合側ピケを張つている正門前のピケ隊に対して更に警官隊がピケを張る行動に出たわけでございます。こういうような体形ができ上ると同時に第二組合側のほうは行進を起し、そういうような形の中で第二組合が中に入場をした、こういうようないきさつになつております。で、このとき明らかに警官側のほうから暴力を行使いたしておるのでおりますが、加害者の捜査はなされていないようでございます。更に警察が暴力を行使した際、交通妨害である、こういうようんに言つておりますが、説得員の通路に坐つている、或いは立つてつた説得員の両側はそれぞれ一メートル以上の間隔が開けられておる、更に第一組合といたしましては武装警官の通行を阻止するというような意図は、十月五日の行動においても明らかな通り、ないにもかかわらず、そういうような行動に出て来ておる、こういつたようなことについては甚だ遺憾に存じておりますので、本委員会を通じて警察側のかかる不当な関与について十分御審議を頂きたいと思う次第でございます。
  10. 内村清次

    委員長内村清次君) 次に、日鋼室蘭新労組法規対策部長青野二郎君。
  11. 青野二郎

    参考人青野二郎君) 本日書記長がいろいろの都合で本委員会に出席できず、私代りに参考人といたしまして出席いたしたわけでございますが、なお本委員会から御指名がございました資料の提出につきましては、残念ながらいろいろな関係で御提出できなく相成りまして、こ点については深くお詫びを申上げます。  只今から本委員会に関する事項のみ簡単に日程を拾いまして具体的に御報告申上げたいと思います。なお、本委員会関係なき事項ではございますが、簡単に一言、なぜ新労組作らなければならなかつたかという理由につきまして御報告申上げます。一つは、室蘭日鋼労組の執行部が完全に自主性を失つてしまつた、同時に又長い争議の間における硬論の自由というものが非常に圧迫されるに及んだ。更に又個人の生活においても非常に団結という名前の下にきつい統制の枠にはめられ、個人生活そのものも非常に圧力が加わつて来た。更に又総評を初めとするあらゆる外部勢力が非常に無責任な戦術指導或いは無責任な宣伝活動をするに及んでは、生きるための闘いがその指導、そのやり方によつては死を導く闘いにもなりかねない、こういうことを考えまして私どもしていたしましては、生活の基盤を失つた労働運動というものはあり得ないという見地に立ちまして、九月二十三日に新労働組合を結成するに至つた次第であります。なお新組合結成後、警察官とのいろいろな問題の説明に当りまして、二十三日以後日程的に具体的にお話申上げたいと思います。先ず九月二十三日に私どもが結成大会の会場に参集すべく室蘭の仏坂という坂の上で第一組合員約三百名が、私初め数人の新組合組合員が非常に暴行を先ず加えられました。このときに私服警官もおりましたけれども、ただ傍観するのみで何ら警官の介入という事実はございませんでしたけれども、暴行を加えられたという事実が先ず一番初めに出ております。次に、私どもは大会が終りまして後に、夕刻五時、新組合の結成並びに会社との交渉権の問題を行うべく団体交渉のため正門前で渡された構内への立入許可証を持ちまして我々は新組合の結成並びに交渉権の確立、その他新組合決定事項を会社に通告するために団体交渉を開催するので、門を通して頂きたいという申入をしたわけでございますが、第一組合の人々は、君たちは組合じやない、御用集団であるという名前の下に足を蹴られ、身体の各所を殴られるという殴打事件もございました。そこで約四、五十分の間揉み合つたわけでございますが、これではどうにもならんということから、警察官のほうには、我々はどうしても今日交渉するため入るという旨の連絡をいたしたわけでございます。その後の問題につきましては、先ほど来本部長或いは第一組合書記長から御報告がありましたので省略いたします。続きまして二十四日の日に、私ども東町の方面へ新組合員の獲得のためにデモ行進を行なつたわけでございますが、このデモ行進の列に参加している新組合組合員に対する暴行の数々も列挙に遑はありません。なお又新組合に加入すべくデモに参加しようとする組合員に対する暴行、こういう問題についても二、三その実例があるわけでございます。引続きまして、問題は二十五日の入門の問題でございますが、二十五日午前中私ども新組合の役員七名新組合員の入場許可証をもらうべく会社に入りたいという申入をしたにもかかわらず昨日同様、我々七人を数百名の第一組合ピケ隊蹴る殴るの暴行の連続でありました。但し私どもといたしましては、すぐ新組合員デモ隊をこれにぶつけた場合には必ず事故が起きるということから、午前中長い時間ではございましたけれども、新執行部七名と第一組合員ピケ隊が約半日に亘りまして正門前で押し合いをやつた次第であります。なお時間となりましたので昼食をいたしまして、午後からは全員入ろうということを相談いたしておりましたところ、十二時半に会社のほうから小野勤労課長並びに会社の弁護士が参りまして、私どもに正式の立入許可証を渡してくれましたので、私どもは直ちに警察のほうへ連絡をいたしまして、というのは、私たちの行動を保護して頂くということではなく、二十三日の結成大会以来、新旧の組合の中には非常に険悪な状況が漂つている関係上、事故をやはり未然に防がなければならんということから、私どもが行動を起すときはいつも警察にほうへ連絡だけはいたしております。こういう関係で十二時半に、私どもは一時半に行動を起すという連絡をいたしまして、実際行動に移りましたのが一時二十五分でございます。こういう情勢の中から私ども新組合員デモを組みまして正門に到着し、第一組合の責任者がいないので、我々が全員就労する。就労するための新組合であり、就労権があるのであるから、君たちはピケを排除して我々を構内に入れて頂きたい。責任者がおれば直ちに交渉したいけれども、責任者はいないのかということを申上げたわけでございますが、小林第一組合組合長初め、当時そのピケの先頭には第一組合の役員は一人もいないという状況でありましたので、万止むを得ず、暴力を振うことなくこれを押して道をあけるという行動に出た次第であります。このようにいたしまして、二十五日には不幸にして百五十数名の重軽傷者を出したことについては、一般社会に対し深くお詫び申上げなければならないというふうに考えております。翌二十六日は別に問題はございませんでした。九月二十七日に至りまして、私どもは、たまたま十五号台風被害のために社宅地区が相当傷んでおるということから就業を取止めまして、何と言つても先ず我々の住宅の完備をしようということで、然らばこの新旧両組合が非常に険悪な状況の中にある場合に、私どもは青い鉢巻、それから第一組合は赤い鉢巻をしておられます。例えば電気屋さんが社宅へ修理に行つても、そこで問題を起してはいけないということで、会社並びに第一組合の幹部の方々にお会いいたしまして、ここで休戦しようじやないか、社宅の復興が終るまで休戦しようじやないかという交渉をすべく、私ども施行部六名が第一組合員ピケ対の前へ行きましたところが、二十七日のこの被害の補修ができるまで休戦しようという申入に行つた我々を迎えた第一組合態度は、三鉱連のデモ隊が先ず話をしない前にデモを組んで私どもを突き飛ばすというような状況が展開されたわけです。なおこの場合においても、私服のかたが四、五名おられましたが、私服のかた自身が危うく下水の中に落ちそうになるというような状況で、ここでも我々は暴力を受けた次第であります。二十七日の朝の暴力を受けて構内に入り、小林組合長ともこの休戦協定について話会をいたし、入る場合に我我は非常に暴行を受けた、我々個人に対する組合員の感情というものは十分私も知つておる。併しながら、余りにのひどいのではないかという話をいたしましたところ、小林組合長が、では帰る場合には、私が責任を持つてあなた方をお帰ししますということで、清野という執行委員を私どもにつけてよこしたわけでございますが二十七日に小林組合長の命によつて、私どもの保護のためについて来た清野執行委員も、我々と同様その帰りに又暴行を受けるという始末であります。続きまして九日の二十九日、私どもが新組合の本部の面において、報告大会を開催いたしておつたわけでございますが、三鉱連の人々を中心にする第一組合デモ隊、約五百名が組合本部前になだれ込みまして、私どもの報告大会の運営を阻害するどころか、組合の役員、特に三役を前に出せということで、二十五日の重傷者、中田さんが怪我をされたのは、すべて第二組合の責任たちは考えておるのかということで、ここで組合三役に対する申し上げが始まりました。なおこの申し上げが始まる前に、新組合員の尾崎十蔵君が卒倒されまして、目の上を三針縫わなければならないという事件発生いたしております。この九月二十九日の三鉱連を中心にする殴打事件は、夕方まで続きまして、一応結論の出んままに第一組合の人々は引揚げました。翌九月の三十日に、茶津コートに三役が出られたいということから、新組合といたしましては、なお第一組合に中田さんの問題で話合いたいという気持があるならば、話合いに応ずることはよろしいし、我々が又デモを組んで行くことによつて事故が発生するのではなかろうかということで、私どもは第一組合員の人人が非常にたくさん集まる茶津コートに、組合の三役三人だけを野放しで放してやりました。このとき入る場合には、第一組合からの暴行は殆んどございませんでしたけれども、その帰途やはり蹴る殴るの暴行が行われました。年老いた新組合の峰越新組合長はこのとき蹴られたこれが原因で、翌十月の一日から室蘭の田中病院に入院しなければならないという状況に相成つておる次第であります。  引続きまして、十月の一日には、三鉱連の人々が約二百五十名、これを主体といたしまして五百乃至六百の第一組合員の人々が、私どもの本部の前にやはり殺到いたしまして、池見書記長並びに向田副組合長を相手にしまして、例の中田事件を問題として、頭にはヘルメット、足には脛当て、手には六尺棒と、こういういでたちで言語に絶する暴行を加えて立ち帰つておる次第であります。なお又このときの暴行事件に当つては、野中執行委員は殴られて鼻血を出し、卒倒するというようなことまでございまして、特にこの十月一日の三鉱連を中心にする暴行事件は、どなたが御覧になりましても、先ず労働争議とは別な問題である。私どもは言葉が過ぎるかも知れませんけれども、暴力団である。こういうふうに言つております。十月の一日から十月の五日まで別に問題はございませんでした。十月の五日に、私どもは社宅の復興も一応完了いたしましたので、就業すべく母恋の供楽座の跡というところに、朝の七時過ぎに集合いたしまして、隊を組みまして会社の正に向いまして、たまたまこの正門に向う途中御幸橋を渡る前で第一組合のほうから共闘の人々がお見えのなりまして、君たちが、入門する問題について話合をしようじやないかという申入がございましたので、母恋の北静旅館というところで、午前中話合いをいたしましたけれども、基本的にお互いのものの考え方が相異なるために、全然話合がつかず、午後の十二時半頃と思いますが、午後に至りまして、私どもは一応話合を打切りまして、入門すべく行動を起しました。この日の第一組合員ピケの人人は、二十五日と違いまして、話合をしながら、こちらが少し進めば、向うも後退するということで、事故なく正門近くまで行つたわけでございますが、正門近くには、約三千と考えられる人々が坐り込むという強力なピケが張られておりました関係上、私どもとしても一体どうしたらいいものかということで判断に苦しんでおつた次第であります。どうしても我々としては入らなければならないということで、いろいろ考えておりましたが、たまたまそのときに警官隊のほうから、新組合員入門について、第一組合はそのピケを解くべきであるという放送がございましたので、その指示により第一組合行動されんことを心待ちに待つて待機していたわけでございますが、その警察の指示による行動というものが全然なされないどころか、第一組合の顧問弁護士さんの方々或いは共闘の人人が来まして、室蘭警察署長に、警察は不当な介入をしているのじやないかという抗議の言葉が警察所長に向けられていたような状況でありました。私どもといたしましては、一応第一組合代表方々と警官隊の方々の話合が済むまで行動を起すことをやめようというふうに考えておりましたが、たまたま時間も非常に遅くなりまして、すべに日没に近くなつて来た、このまま行動を続けるならば、再び二十五日と同じような惨事を繰返すのではなかろうかということで、夕暮も迫りましたので、その日は入門をやめまして、直ちに本部前に我々は帰つた次第であります。翌十月六日私どもは昨日と同じように共楽座という場所の跡へ集まりまして、御幸橋を通過して、五日の日に私どもの隊がとまりましたところまで到着いたしました。と同時に、六日朝もその場所に到着いたしましたところが、会社がもと使つておりました軌道門、これは旧正門と言つているのですが小さい入口がございます。そこを見ましたところがたまたまピケ隊が全然いない、じや我々は、問題は中へ入つて就業するということが我々の目的であるというならば、ピケ隊と接触を避けて入ろうじやないかということで、その裏門から我々のデモ隊か全部工場の中へ入つたということで、何ら事故が起らなかつた、これが十月六日です。なお十月六日に入門した私どもは、八日間会社で籠城をいたしましたけれども、この籠城の問題にいたしましても、成るべく事故は避けようということから、朝入つて夜は家に帰るというのが私どもの建前ではございますが、事故を防止するということで、万止むを得ず会計に仮に宿泊をした、こういう状況になつております。なお、この間社宅地における暴行事件或いは嫌がらせ事件、こういうものの実例を上げてみますと、今日日が暮れてもなお終らんというほど数多くの暴行事件が行われております。  以上が新組合が結成いたしました二十三日から、主な問題がありました十月六日までの問題でございますが、結論として申上げたいことは、先ず第一組合員の人々が行なつている暴行事件の内容或いはその数においては、私どもとしては先ず常識では考えられないことが非常に多く行われている、先ほど公安委員長も言われました通り労働争議から派生するいろいろな事件について、警官隊のかた或いはその他の方々も普通の一般事件と違いまして、その介入の場合にいろいろ考慮される面も多々あろうと思いますが、現地室蘭において行われているあらゆる暴行事件は、明らかに労働争議ではなく、刑事一件を構成するものではないかというふうに、私どもは素人的な判断をいたしている次第であります。なおこういう事件についても、特に三鉱連が二十九日に私どもに殴り込みをかけて来たという場合でも、私どもは電話で以つて本署へ再三再四連絡をいたしております。現実に暴行事件が現在行われているのだ、なぜ警察がここへ来て阻止しないのだという電話連絡を再三再四に亘つてしたにもかかわらず、何らここに警官隊の出勤か見受けられなかつたということ等もございます。警官隊は特に慎重な行動をされたが故に、今申上げました通り、現実に暴行事件が起きておつても出勤しない、こういうことから如何に警察官が慎重に行動されたといたしましても、私どもとしては、警察が傍観視しているというに過ぎないという判断をいたさなければならない状況にあつたわけです。  以上非常に廻りくどい報告でございましたけれども、最後に一言申上げたいことは、我々としては不当介入ということよりも、警察当局は室蘭暴行事件その他の問題については、不当不介入であるということを申上げたいというふうに思います。  以上で終わります。
  12. 内村清次

    委員長内村清次君) 次に、日鋼室蘭製作所長柳君。
  13. 柳武

    参考人(柳武君) 私は日本製鋼所室蘭署長をやつております。本委員会でお取上げになりました我々どもの今回行われております争議における警察の介入に関する件の問題につきまして、我々会社側から見ました警察状況を申上げたいというふうに考えておりますが、その前にちよつとお時間を頂きまして、さつき第一組合書記長の鈴木君から、この争議に入りました原因及び見解についていろいろお話がありましたので、この本委員会の御趣旨とはちよつとかけ離れておりますので、極く簡単に会社側といたしましての見解を述べさして頂きまして、それから本委員会の問題に入らして頂きたいというふうに考えております。  この我々が行いました人員整理を含む合理化案ということをいたしましたことにつきまして、三月末の締切りで二十八年度の下期の決算に五億何がしの損失金を出しております。それにつきましてのいろいろの見方がございますけれども、これは株主総会においていろいろ検討せられました結果でございまして、結論が承認されておるのでございますが、我々今度の合理化の、人員整理を含みます合理化案をやらなければならないという立場のなりましたことは、御承知のような鉄道界の事情でございまして、本年に入りまして、だんだんと状況が悪くなつて参りまして、このままの状況で推移するならば、会社側は到底企業の維持というものは困難になつて来る。ここに何らかの一つ対策を立てて企業の継続ということを真剣に考えなければなりませんので、会社側といたしまして十分検討に検討を尽しまして、今度の人員整理を含む合理化案というものを打出しましたわけでございます。なお、そのうち室蘭製作所の問題だけが取残されたようになつておりますけれども、これにつきまして鈴木君から、この人件費の削減のあり方についての食い違いがあるというような意見が出ましたのでございますが、この人件費の削減そのものについては、大体交渉の席上でも組合側が了承しておることでございまして、またさつき鈴木君が言われるように、この削減方法においての差異でございまして、我々はこれを人員整理化を含み措置に出て行かなければならないというふうに考え、組合側のほうは、これは基準賃金内で乏しきを分つという観念からやりたいというようなことでございますが、経営者といたしまして、我々の考え方は、組合側の申される趣旨はよくわかるのでございますけれども、実際問題としてそういうことが行い得るかどうかということが一つの問題でございまして、室蘭製作所というものの生い立ちは非常に古く、明治四十一年に発足しておりまして、当時まだ室蘭というものは僻版の地でありましたために、そこで工場を建てる以上はすべての措置をして置かなければならない。例えば社宅を作つて従業員を入れて置かなければならない。そうすれば、その社宅がいたんだとき、それを直す人間も全部用意しておかなければならない。畳屋も要るし、表具屋も要るというようなすべての措置をして置かなければ間に合わん。メーターが壊れてもそれを修理に出すところがない、或いは煉瓦も自分で作るというような措置を持つていなければならない、いろいろなものを自給するような措置をして置かなければならないというような建前であつたのでございますけれども、こういうような今日事態に、非常に分化的に各仕事が分かれ、それぞれ専門家が非常に能率よく安価に製造するという……。なお、しよつ中ないものが起つたときに措置してくれるというようなこともやつてくるというような、現代におきましては、合理化においては先ずそういうものを合理化して行かなければならんというようなことを考え合せ、その他いろいろの点も考え合せまして、この人員整理というものに打つて出なければならないというような措置をとりましたことで、この点だけはさつき鈴木君からちよつとお話が出ましたので、会社側の見解を簡単に一つ述べさして頂いた次第でございます。  それでは本論に入りまして、会社側といたしましては、結論的に申しますと、この争議が今日まで非常に長く続いております。争議期間警察官のとられました態度につきましては非常に手ぬるいものがあるというように考えております。こんなに手ぬるくていいのだろうかというように非常に情けなくさえも思つたような次第でございます、と申しますのは、組合側の運動といたしますと、大衆的な運動になつて参りますけれども、我々は会社側といたしましては、国家で守られております一つの法律を楯といたしまして、この法律によつて保護されるより仕方がないというように考えておりますのでございますが、この法律が破られたとき、警察官のかたがそれを守つて頂くというような措置が適切にとつて頂けないならば、我々というものは非常にどうも裸のままでむき出しにされるような気がしてなりません。そういう感じからいたしまして、ことごとに私ども手ぬるいような感じを痛切に受けている次第でございます。会社側が最も大きく警察官関与という問題が起り始めました半製品搬出に関する紛争についてちよつと申上げますと、労働争議中の製品搬出につきましては、会社側はその都度組合交渉いたしまして、必要人員を提示し、その了解を得まして搬出業務を実施して来たのでございますけれども、本年九月四日立入禁止仮処分決定をなされましてから、九月九日その執行を終えました。その決定の内容はお手許に差上げてあるものによつて御覧願いたいと思つております。なお私がこれから申上げます点につきまして、なおこの争議経過につきましては、お手許に差上げましたプリントによつて一つ御覧願いたいというふうに考えておりますが、それから摘出いたしまして、私はこの警察関与に関する件について一つ申上げて見たいというふうに考えておりますので、あとで一つこの経過及びその差上げました書類を御覧願いたいと思います。  そういう状態で立入禁止仮処分申請が許可せられまして、九月九日にこれを実施したのでございますが、ところが、組合は漸次この製品搬出に関しまして非協力的な態度をとつて参りまして、遂には会社の申入に対しまして全面的に拒否をいたしまして、或いは妨害行為に出るに至りました。併しながら、会社紛争を未然に避けます目的で、組合と団体交渉を行い、半製品搬出を認めるように要望いたしましたけれども、組合会社の申入に耳をかしてくれません。で、遂に全面的に拒否して参りました。一方争議長期化に伴いまして、納期が著しく遅れて参りまして、ために注文先から現状のままでいいからこれを引渡してもらいたい、そうしてそれが若しできないならば契約を解除するというふうな旨の矢の催促を受けましたので、会社は止むなく半製品のままで搬出決意するということに至つたのでございます。なお半製品として渡した場合の製品の価格は約千八百トンで、約二億円でございますが、これが解約された場合には、これらの半製品は全部御注文先の御注文寸法によつていろいろ作つているものでございまして、そのところに使えなければもう製品の価値というものはなくなつてしまつて、スクラツプの価格として売却するほかないのでございまして、これによりましてこうなります会社の損害というものは莫大な量に上るのでございます。九月十六日に、会社は栗林商船の神加丸会社埠頭から半製品約三百トンの積込みをしようといたしましたが、組合側はこれに対抗する意味か、争議除外要員の引揚げを行いました。この争議除外要員というものは、あらかじめ争議協定によつて、この除外要員を争議中も認められておつたのでございますが、この除外要員の引揚げを行いまして、鉄道による輸送につきましても、組合事務所前で、この組合事務所会社構内にございますのですが、約一千名の組合員が機関車の前に立つてこれを阻止しておりました。九月十七日も、この神加丸の積込みを企画いたしましたが、約八百名の組合員海上及び埠頭裏門から国家機関である執行吏が現に占有しております立入禁止仮処分地域へ乱入して参りまして、搬出妨害し、作業中の職制、これは会社工場組合に属しない管理部門に当つている人間でございますが、この職制に対しまして暴行を加える等のことがあつたので、会社はこの九月十七日、室蘭警察署に対しまして立入禁止区域の侵犯の不法行為として警察権の発動を要請したのであります。九月十八日もはば前日同様の状態が繰返されましたが、特に翌十九日には約二十名、組合員でないものも含んでおりますが、大挙会社埠頭に来襲いたしまして、朝から荷役作業中の職制の約二十名を取りかこみ暴行を加えるという、作業を中止せしめる事件発生いたしました。会社は直ちに執行吏に対しまして点検の申出をなしました。このさき執行吏会社に来ておりましたので、午前九時執行吏は現場へ到達いたしました。この状況を見て十時には組合幹部に対しまして、この行為は明らかに不法行為であるから、十分間以内に立退くように警告を発しましたが、即座にこれは拒否されまして、それで十時三十五分には執行吏組合側弁護士の森川浩というかたに対しまして、更に十分間の猶予を与えるから立入禁止地域からでるように勧告しましたが、十時十五分に至るけれども返事もありませんので、警察執行吏が出向きまして、室蘭警察署長に対しまして左のような要請文を出し、警察権の発令を要請したのでございます。要請文もプリントにして差上げてありますから御覧願いたいと思います。併し午後三時に至りまして、暫く室蘭警察署の藤本次廣が現場に臨みまして、組合幹部に対しまして、この侵犯地域より去ることに警告して、その結果組合側は約五百名を残しまして退去いたしまして、遂に最後までこの排除のために警告出動はなく、約二十名前後と思われる私服警官がよそながら警戒しておつたに過ぎませんでした。前記神加丸はそういうことで何も積むことができませんで、翌二十日積込み未了のままで出講を余儀なくせられました。併し九月二十二日以降に増援の警官隊が約五百名派遣せられましたので、それからというものはこの種の事故は発生せずに、ともかく船積みとか、貨車積みともに、この貨車積みのほうにはときどきトラブルはありましたけれども、やや順調に行われるようになつたのでございます。  なお新組合と第一組合との紛争につきましては、先ほど第一組合書記長鈴木君乃至第二組合青野執行委員からいろいろなお話されたのでございますが、ここに重ねて申上げることもございませんが。さつき鈴木第一組合書記長から、この入場に対する立入許可証の問題がございましたのですが、これはさつき第二組合青野執行委員から話された通り会社側といたしましては、二十五日の日には渡しておることは事実でございます。この第二組合が二十三日にできまして、それからというものは第一組合、第二組合との間のいろいろのトラブルが盛んに出まして、さつきお話が出ました通り、社宅外その他につきましては相当もう暴力化した、暴力の町とでも極言してもいいのじやないかと思われるほどのいろいろの事故が起つております。総じてみますと、このピケというものに対する考え方でございまするけれども、この第二組合ができ、それの入門を阻止するためにピケが非常に強行せられてトラブルが起り始めたのですが、その前から言いましても、会社側で見ておりますと相当不法行為ではないかというふうに考えられるピケの張り方をしております。と申しますのは、我々の解釈によりますと、ピケというのは、組合員同士のスト破りというふうなものを防止することがまあ建前でなくてはならんというふうに解釈せられるのでありますのでございまするけれども、会社に用事があるお得意先のかのお客がお出でになる、それも一々とめられる、乃至は名前を聞かれるとか、そういうふうな業務管理に属することが行われているというふうなことで、会社側の業務運営に対しましては、乃至は職制が入るときにそれを入れないような状態まで持つて行かれるというふうなことになつて参りますというと、これはもう相当我々といたしましては不法なものではないかというふうな解釈をしておりますのでございますが、こういうこちにつきましていろいろ警察当局のほうに申上げましても、行為それ自身が争議行為から発生しておりますせいか、なかなか適宜に処置をとつて頂くことができないのであります。非常に慎重の自重せられておりますので、我々といたしましては非常に歯がゆい感じておつた次第でございます。  なおその前にも、この第二組合発生してから後の状況はさつきから縷々お話がございましたので、私重ねてここで申上げることは避けますけれども、その前から会社側からみておりますと、或いはデモし、乃至はひどいと思いましたのは、松明行列なんというというふうなものによる火の取締り、そういうふうなものを考えますというと慄然たるものがございますのでございますが、そういうことにつきまして警察当局がよくお許しになつたというふうに考えられるのです。警察当局というのは、この争議に関して非常に慎重に態度をとつておいでになるように、我々の個から見ますと非常に歯がゆく考えておつた次第でございます。  なお、ここの経過にもあります通り我々といたしましては、七月八日に解雇通知を出しまして、当日解雇したということになつておりますので、九日からは会社残留者、即ち解雇されない人だけで操業する予定でおりましたところ、全然スクラムを組んで構内に入つて来られんというような状態で、さつき申しましたような業務管理のような状態になつて参りましたので、組合には不法なスト行為はやめてくれといそうふうな警告を何遍も出してやつたのでございますが、その間工場内におきましては職制に対する吊し上げ、その他いろいろの事件も起しておりますが、一向やめられる様子もございませんので、会社側は七月二十一日対抗手段といたしましてロツクアウトをかけたのでございますが、このロツクアウトをかけましても組合は集団の力を以てこれを破る、なお職制、僅かな職制でございますが、正門と裏門とに対してこれを二分してスクラムを組んで、その入門を防いであるのでございますが、これにはいろいろ暴力を以て破つて来られるとか、いろいろの状態があり、ロツクアウトという会社側がとりました処置も完全に踏みにじられてしまつておるというふうなことでございます。こういうことにできなくつて、さつぱり警察官のほうで手を打つて頂くというふうなこともできなくつて、まあ会社警察のほうのとられている態度に対しましては非常に歯がゆくは思いましたので、とつてはおりませんけれども、歯がゆく感じておつた次第でございます。なお、そういう状態で、我我といたしましては、この警察官の今回の労働争議に対した態度は極めて慎重で、且つ消極的であるとしか考えられなかつたのでございます。この立入禁止仮処分申請して、それの許可がありました後に、不当にああいうふうに乱入して来る姿、それも数日看過されておる。なお執行吏から正式に警察官の出勤を要求せられましても、なお出ておいで願えなかつたというふうなことにつきましては、これは衷心からどうも不満を感じておるような次第でございます。そういうことを考えてみますと、むしろ警察側はこの争議に対しましては、不当介入という口実を与えないように極めて慎重に行動されておつたように見受けられましたがそのために却つて労働争議中はどんなことをしても、不法行為をしても処罰されないというふうな感じを与え、それが又、種の宣伝になつて、無智な大衆、特に主婦を騙つてますます無警察状態に追込んで行つたのではないだろうかというふうにさえ考えております。  時間がございませんのではしよりましたけれども、会社側のこの警察官介入に関しての感じは、そういうふうな感じを受けております。
  14. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは残余の参考人の公述は再開後にいたしまして、午後の二時まで休憩いたします。    午後零時五十九分休憩    —————・—————    午後二時二十二分閉会
  15. 内村清次

    委員長内村清次君) 休憩前に引続いて地方行政委員会を開会いたします。  参考人の公述を聞きます。富士製鉄株式会社室蘭製鉄所労働組合執行委員佐藤半次郎君。
  16. 佐藤牟次郎

    参考人佐藤牟次郎君) 御指名にあずかりましたので、日本製鋼室蘭労組に対する警官の暴力行為に関する件を申述べさせて頂きたいと思います。  私は富士製鉄室蘭労組の執行委員であり、且つ、本年七月五日日本製鋼室蘭労働組合の首切り反対闘争委員会が設置されましてから、七月の二十六日に至つて、常駐委員といたしまして共闘委員長をやつて今日に至つております。共闘委員会は日鋼労組の首切り反対闘争を支援する友誼団体を以て組織されまして、共闘委員としては、鉄鋼労連から三名、総評、富士室蘭労組、地区労協、全道労協その他鉄鋼労連道地協、炭労道本部、北三連等の各友誼組合からおのおの一名お代表者が出ております。共闘委員会は労働者の友愛と信義の連帯性の上に立つて、日鋼労組の闘いを支援する立場を続けて参りましたが、時に共闘委員会の活動の中から、商工業者、農民、更に一般市民にもいろいろ呼びかけを行いまして、その協力を得る仕事を、日鋼労働組合闘争方針に従つて活動を続けて参りました。そのための活動の一つとしては、共闘情報の発行とか、更に又資金カンパの運動、資金カンパも四百万円ほどのカンパを集めましたが、融資につきましても、一億円の融資を各組合から得ております。更に又地元商人とはクーポン券の発行によるところの協定を行いまして、これ又四百万円の協定を行つておる。更に農民からは約五十俵に近い食糧と低廉な味噌、醤油その他の供給を受けるというような立場も共闘委員会を通じての活動の中から生まれております。このほか日常は組合員とその家族に接しまして、苦しみがあれば共に分ち合う、悲しみがあれば共に慰め合うという立場の中からお互いに励まし合つて、今日まで百三十三日の長きに亘つての活動を続けて来ておりましたが、ここに提出されております警官の暴力行為の問題につきまして、先ず十月六日の件からお話を申上げたいと思います。  十月六日のことでしたが、日鋼の正門前から十月五日同様に第二組合の諸君が正門を突破して集団で入門するという情報が入りましたので、第一組合員の諸君が正門の前に約二千名集結しておりました。そして第二組合員の諸君の入門を阻止するためにピケを張つておりましたが、第一組合員の諸君と第二組合員の諸君との間の感情的な対立、これはあとで申上げますが、感情的な対立の中から不詳事件が起るということが予測されましたので、各友誼団体は第二組合の諸君の入門を遠慮して頂こう、こういう考え方を持つておりましたが、而も第二組合員の諸君が構内に入ろうと思えば、周囲が約一理もある工場でございますので、こうした地理的な条件から考えましても、どこからでも入り得る、こういう見解に立ちまして、何とか正門から入るということだけはやめて頂こうじやないか、こういう話合いが共闘委員会の更に第一組合の幹部諸君との間に交されまして、説得隊を出すことにいたしました。で、この説得隊につきましては、第二組合員の諸君が特に炭鉱の労働者諸君に対して余り好感を持つていないというようなことが感ぜられましたので、同じ鉄鋼労働者の立場から話合えば何とかわかつて頂けるのじやないかという考えから、私どもは富士鉄鋼室蘭労組の組合員約百六十名を以てこの説得隊を組織したのであります。  そしてこの説得隊はお手許にプリントを差上げてありますので、別紙一から三、更に地図を添付してございますから、それを御参照の上お聞き取り願いたいのですが、大体私がその説得隊の指揮をとりまして、百六十名のかたがたを引率して御幸橋、陸橋ですが、この御幸橋の所まで参りまして、約二間ほど手前の所で百六十名の人をとどめましたが、その時刻は大体七時五十五分前後だつたと思います。そのときの御幸橋付近の状況というのは、国道及び御幸橋付近には武装警官隊が約五百名ぐらい待機しておられた。更に又一般市民のかたがたが約千名その状況を見物しており、橋の上には第一組合員の青行隊の諸員が十二、三名一列横隊でピケを張つておりました。この十二、三名の青行隊員の任務は、共闘以外の外部団体、即ち在日朝鮮人連盟とか、更に日傭労働組合員とかいう人たちが応援と称して第一組合員の中、更に共闘団体の中に紛れ込んだ場合に規律ある統制がとり得ないという判断から、この人たちに中に入らないで頂きたい、こういう考え方から青行隊の、十二、三の人が橋の上でピケを張つてつたわけであります。先ほども申上げましたように、富士鉄の労働者百六十名は御幸橋の約二間ほど手前で、而も道の両側を一間ほどずつあけておりましたが、そこは丁度坂になつておりましたので、前の人がうしろのほうから指揮官の顔が見えなければ困るというような話がございましたから、私は約三分の一の組合員に座つてもらいました。この座つてもらいましたときに、先ほども第一組合の鈴木書記長のほうからもお話がありましたように、警察の放送車を通じまして、道路交通の妨害になるからどけ、若しどかない場合は、よけいな場合は実力行使を行つてそれを排除するということが放送されました。その放送が二回目にかかつた……、私の記憶では大体二回目だつたというように思つておりますが、二回目の放送が始まりかけたとき、私は只今も警官隊のほうから注意があつてという話を始めたときに、突然突き飛ばされました。はつと思つてみましたところが、約六十一名、これは当時の指揮官であつた札幌方面隊の三宅隊長のお話でしたが、六十一名の警官隊が、座つておりました富士鉄労働組合員を棍棒でなぐり、且つ足げにする、委員長のお手許まで写真を出しておきましたが、真中の写真が御幸橋橋上における日鋼青行隊員に対する警官の暴力行為の写真でございます。更に上の二枚の写真は富士鉄労働組合、これは橋の上ではございません、富士鉄労働組合員に対する警官の暴力行為の実態の写真でございますが、こういう形で実力を以て我々は排除されました。私どもは十月五日、その前日も、警察との関係におきましても、十分署長は組合運動は説得が大事だからどんなに話をしても差支えがない、こういう態度をとつて頂けましたし、この日もそれが許されるという判断をしておりました。更に又従来何か行動を起こされる場合は、必ず警察官のほうから私どものほうに話がある。通り一片の放送だけで事を済まされたというような事実が過去にございませんでしたので、当然私どものほうにもお話がある、このような考え方でうつかりしておつたところを突き飛ばされたわけですが、突き飛ばされた私は、待つて下さい、指揮官とお話をしたい、このように申上げましたところが、行き過ぎました一警官がわざわざ引返して参りまして、なに文句があるかというような言葉をさえ吐いて行きましたが、こうした形の中から富士鉄労働組合員は十数名の傷害を受けたものを出しました。更に又腕時計が壊されたり、眼鏡が破損したり、セーターがほころびたり、ズボンが引裂かれたり、そういう状態組合員の中に出ましたが、警官隊には一名の負傷者も出ませんでした。更に又日鋼青行隊員、富士鉄労働組合員各一名が検束されましたが、この検束された理由は、富士鉄組合員の場合は、座つてつたものが警官隊が来た、そういう中で立上がろうとした際に、たくさんうしろのほうにも人がおりましたのでちよつとよろけたわけでございます。そのよろけた際に警官隊にさわつたことが公務執行妨害だということで連れ去られたのでございますが、その後抗議をいたしまして五時間後に釈放されておりますが、更に又日鋼青行隊員の場合は、室蘭署長の言葉によれば、棍棒にさわつた、警棒を握つたということが逮捕の理由だ、こういうお話でございましたが、私どもの見解は、少なくとも人間は本能的に自分に危害が加わるという場合、それを防禦するという本能的なものを持つているのじやないか。若しその警棒をつかんだということが公務執行妨害ということになるのであれば、私ども何ら武器も何も持つていないものはどんなことをされてもだまつていなければならないのか、自衛手段一つとられないのか、こういうことを非常に富士鉄の組合員は苦しみ、且つ忿懣を感じております。十月五日の場合には、私どもは宮永警察署長が公務の執行上、もつと警官隊を中に入れなければならない、こういうお話がございました際にも、私どもは快く中に入ることを認めましたし、更に又その警察官の指揮者の命令というものに対して、些かの妨害を加えるというような行為もございませんでした。こういう中で、翌日のこの警察官の暴力行為が行われたわけでございますが、私どもはここで注意しなければならないのは、先ほどから各参考人のかたがたが述べておられます日鋼室蘭労働組合争議が今や暴力化した、このような事実についてでございます。第一組合、更に共闘委員会は暴力を否定しております。では、その暴力が一体あるのかないのか、このことについて少しお話を申上げたいと思います。  先ほどから申されておりますように、警察官の直接室蘭に大量入つて来られたのは、半製品の積出しの問題からでございます。この半製品の積出しの問題のときに、組合のほうでは、職人が完成した品物を出すのであればこれは快く出すであろうが、今まで自分が手がけて来たものがまだ九分通りより完成していない、更に八分通りより完成していない、こういう品物を日鋼の広島に持つてつて仕上げてもらう、更にその他の工場に持つてつて仕上げてもらうということは職人にとつては全く堪えがたいことだ。併しどうしても国家的な見地から急ぐ品物であれば認めようじやないか、このような考え方を小林闘争委員長が持つておりまして、こういう態度で実は日鋼の現地の経営者といろいろ折衝を重ねましたが、緊急か緊急でないかという判断、この問題についての対立が続きまして、その間人会社側は強制搬出を企て、そのために組合側のほうでは争議協定違反という中から、先ほども申されておりました立入禁止の中へ入るという事態が実は出たのでありますが、直接警察官を大量に導入する原因になりましたたしか十九日の日の問題だつたと思いますが、このときに、実力組合は最後まで半製品の積出しを阻止すべきかどうかということが執行委員会の中で相当長時間に亘つて討議されました。このときに、甚だ申上げにくい、而も将来手を結んで行かなければならない第一、第二組合員、更に又隣りの富士鉄労働組合員という立場の中から誠につらいことなんでございますが、当時の書記長でございました青野君が実力でこれを阻止すべきであるという意見を出され、且つみづから総指揮官を買つて出るほどの熱意でございまして、私どもといたしましては、大衆運動は何と言つても大衆全体をしつかりと握つた形の中からでなければ解決できない、そういうように考えておりましたので、当時の書記長であつた青野君のその言葉、その行動というのは、そういう立場に立つて私どもはみずから総指揮官を買つて出られたのだという判断を実はしておりました。ところが二十二日の日に至りまして、更に警察官が動員され、この問題が出ましたときには、みずから挑発的な行為を避けるという意味で、組合は半製品の積出しについて黙つて見送りました。このときにこの翌日が実は第二組合の旗揚げという形になつたわけでございます。こうた経過の中から、私どもは一体第二組合の旗揚げというものが、先ほど申されましたような理由のためであるかないか。更に又先ほど柳所長が申されておりました、組合が松明行列などというようなことを行なつて、ああいう問題に対しても警察は何ら取締を行なつていない、こういうことを申されておりましたが、室蘭市におきましては、一昨々年からメーデーのときに松明行列が行われまして、日鋼闘争におきましてもこの松明行列というものが、第一、第二組合分裂以前二、三度行われております。この際いささかの問題も出ていない。何の危険な状況も出ていない。このことは、如何に規律ある、統制ある争議を続けておつたかの一つの証明になるものと私は思います。それが、第一、第二組合という分裂を契機に、いろいろな些細な問題が出て来ておりますが、特に北三連炭労の同志諸君を刺戟したり、第一組合員の同志諸君を刺戟したりしたのは、九月の二十三日の入門許可証を持たざる八名の第二組合の幹部諸君の入門、更にそれを援助したと思われる警察官行動、更に又二十五日における炭労の中川君に対する暴力事件、こうしたものが痛く第一組合員の感情を刺戟したことは、これは言えると思いますが、それも極く一部の人の中でいろいろな問題が起されたのですが、全体としては極めて規律ある、統制ある行動行なつておる。こういう中で、昨日も第一組合の副闘争委員長である石橋君が肋骨二本を折られるという事件が昨日も出ておりますが、これは第二組合員の諸君は正門、更に裏門から入門して就労をするという行動の中から出ておりますが、この肋骨二本を折るという問題が、私一昨日現地を立つて参りましたが、一昨日の状況の中でも、第一組合の執行委員長は、飽くまでも第二組合員の諸君が突つ込んで来ても第一組合のほうは受けるという立場を持つておれ、こういう態度でございましたので、昨月も恐らくそういう姿であつたろうと思いますが、二十五日の例から見ても、相撲部員が先頭に立つたり、更に唐手をやるような人、そうしたいわゆる腕力の強い人たちが前面にある、そういう中から起された意識的な事件である。そうしてこうした事件を通じて組合員の感情を刺戟して、そういう形の中から組合員が、何かの小さなトラブルが起きたとする。その起きたことが室蘭は暴力の街になつたと宣伝する。共産党の影響下、共産党の指導の下に闘争が行われておるという宣伝をする。そうして警察官が入つて来る。第一組合が自壊作用を起すだろう、そういう期待がこのような事件を頻発させておるのではないか。而もそれを警察官が間接ではあろうけれども、擁護をしておるという立場をとつておる。このように私どもは判断せざるを得ない状態が随行各所に感ぜられるのであります。更に又私どものほうといたしましても、十分暴力行為は否定しておるものの、例えは社宅の中で一部の第二組合に行つた人に対して第一組合の親交のあつた人が説得に出かけた。その説得に出かけた人を脅迫罪なりとして土足で警察官が踏み込んで、そうして検挙した。こういうような事件がございますが、いずれにいたしましても、労働争議解決しない限りは、いろいろな事実の問題が派生して来る。トラブルの問題が解決しない、而も私ども奇怪至極なのは、例えば中川氏の瀕死の重傷を負つたという事件に対しても何ら捜査の手が差伸べられていない。半面第一組合員の些細な問題に対しては、非常に警察のほうでは御熱心に調査をされ、更に逮捕、送検するというような形がとられている。こういう問題に対して余りに一方的な措置であるというように私どもは判断しております。私どもは少くても労働争議が労働法で許されておる範囲の中でよりよき慣行が樹立されない限り解決されないというように思いますし、第二組合の諸君が、就労権を持つておるからピケ不法だ、更に又警察官のほおでもそのように申しておりますが、少くても団結権が認められておる以上、争議団のピケが私どもは違法であるというように判断はしておりません。対外的に使用者に対するところの関係にのみ団体の力が認められるだけではないというように私どもは考えております。少くてその団結の前提となるところの組合員に対する関係では団体の力が認められて然るべきである。このよ考えております。こうした点から考えうに私どもはてみますときに、第二組合の諸君の行動というものが、いわゆる純粋に就労をするためのものであるかどうか、私どもは正門から入門したり、而も集団で入門したりしたこの行動というのは一つの第一組合に対するデモンストレーシヨンであつて争議破りだというように判断しておりますし、就労問題を以てピケが違法であるという見解に対してはどうしても納得ができないのであります。  願わくば本委員会におきまして、労働法に遵つて整然と行動する第一組合、更に共同闘争委員会行動に対して、国会の権威あるお力を以て不当な官憲の弾圧を糾明して頂きたい、このようにお願いすると同時に、私どもは労使関係の中からのみ問題の解決があるのだ、決して官憲の介入によつて警察官が大量に室蘭に導入されることによつて問題の解決にならないというように考えておりますし、又事案そうなくてはならないというように思つておりますので、本委員会におきましてよろしく御判断のほどをお願いしたい、このように思つております。
  17. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今の佐藤参考人の公述は、日本製鋼室蘭労組首切り反対共同闘争委員長としての資格で公述されておりますから、その点御報告いたしておきます。
  18. 内村清次

  19. 石岡貞次郎

    参考人石岡貞次郎君) 石岡であります。全労は言うまでもなく争議に対する警察の介入といつたようなことに対してはいささかも賛成するものではなく、絶対に反対する立場に立つております。併しながら日鋼の争議をめぐり、その警察の介入かいささかでもあつたかという点になりますと、私は法律の門外ではありまするけれども、どうもそういうふうに感じられる点が少しもないのじやないかといつたような観点に立つものなのであります。我々は九月の二十三日新労働組合が誕生して以来、つぶさに日鋼の争議の進行というものを室蘭で見聞しておりますが、それを何ら私心をまじえずに見たままをここで報告いたしまして、皆さんの判断の参考にして頂きたいと、そう思うわけです。その前にちよつと申さなくちやなりませんですけれども、この争議の芯を貫いている思想といいましようか、或いは雰囲気といいましようか、そういうものに少し触れなければ、そのあとに生じて来る警官の出動というような問題に対して正しい理解ができにくいと思いますので、その点に少し触れまして、その後何日何日の警官の出動はこういう状態つた、ああいう状態つたといつたような話に進めて行きたいと、そう思います。  室蘭には従来日鋼だの日鉄だのというでかい組合はありまするが、でかい争議は従来なかつた。そういうような意味で二十時間や三十時間の争議は勿論ありましたが、併しこれは最近の争議から見ますと争議の部類ではありませんので、室蘭の労働者全体が争議にとつて極めて深い経験がない。非常にそういう点で純真だといつたような状態にあつたということができると思うのです。ところが、こういう状態のものは特定の考えを以て、特定の思想で以て争議を引張つて行こうといつたような考えの人や団体から言いますと非常にいい活動の場なのでありまして、そういつたようなものの考え方の人や団体が今度の日鋼の争議で十二分に活動しているのじやないかと、そういうふうに私たちは観察しておるのであります。ところが、そのことがその後に起きて来る警察官出動というような問題と密接不可分に因果関係があるのじやないかというふうに私は判断しているのです。例えば九月の初旬以来、総評から石黒組織部長というような人が乗込んで参りまして、専ら教宣活動の先頭に立つてつておりまするが、その人が随所で言う教宣の方針というものは、六法全書を抱いたり、六法全書を頭に上げたりして、争議なんかできるものじやない。法律というものは実力でこしらえて行くものだ。それを知らなければ争議なんというものは絶対に勝つことはできない。例えば立入禁止で以て鉄条網なら鉄条網が張られる。その鉄条網をぶち破つて行くという勇猛な精神が執行部にないから、こんなに争議がうろちよろしているのだといつたようなことを再三再四随所でそういう演説をしている。ところがそういう演説に感化されまして、あちらこちらの社宅の何も知らない主婦や一般組合員までも、そういう考えを雰囲気としてみんな持つて来た。例えば争議はどんなことをしても罰せられない。争議中どんなことをして、も大したことはないのだというような考えをみんなに植え付けられたと思うのです。例えば私が宣伝カーに乗りまして東町のほうへ何回も参りましたが、そのときは、何も知らなさうな婦人ですら、或いは年若い青年組合員ですら、このやろう、ぶち殺してやる、きさまらぶち殺しても罪にはならないのだというようなことを再三耳にいたしましたが、実に宣伝といいますか、権威を以て宣伝される浸透力は実に恐しいという感じを受けたのであります。これは丁度五一・五事件や二・二六事件の青年将校が、人を殺したつて国のためならばそれでいいのだといつたようなものの考え方と同じで、争議に勝つため、或いは団結を維持するために、組織を維持るためには、どんなことをしてもいいといつたような考えで、そのようなフアツショ的な暴力的なものの考えと完全に一致する考えが強く流れているということを看取いたしまして、私は慄然としたのであります。そういうようなものの考え方が、例えば三鉱連のかたが坑内帽をかぶり、六尺棒を持つて第二組合の人たちが会議をやつているときなぐり込んで来る。而も爆竹を投げる、二十八日でしたか九日でしたか、丁度私第二組合の事務所におりました、そのとき主婦と三鉱連の入がそういういでたちで参りまして爆竹を投げましたが、丁度ここでパンと破裂しましたのであります。当分の間私の耳はぼーつとなつて何を言つておるかわからなくなつたといつたような強力なものを投げつけられるといつたような状態で、何をやつてもいいのだ、争議中はどしてもいいのだ、勝ちさえすればいいのだといようなものの考え方が全般的の雰囲気として溢つていたということを、この点は私が非常に重大だと思うのです。それからその問題に対して、私たちは警察に対してどうしてああいうものを取締らないのかといことを、第一組合の人か警察当局に申込んだところが、警察の人が、あれはおもちやだから取締る方法がないと、こう言つたのです。白昼、大人もおもちやを、何百人の大人がそれを持つて争議に勝つためにばんばん投げつけて歩くということは、これは正気ではない、狂々だ。そういう狂気の状態をどうして警察は取締らないのだ、これが私たちが警察に対して大きな不満だつたのです。それから私たちは警察に対して再三再四抗議を申込みました。それは大きなことを言うのじやない、例えば東室蘭なら東室蘭で白昼自由に歩かしてくれということを申込んだ。東室蘭では自由に白昼歩けない。例えばお前どこへ行くんだ、どこそこへ行くんだ、何しに行くんだ、そんなところに行く必要はない。何か言つていると二十人か三十人か寄つて来る、いつでも殴ぐられる、これは組合員だけではない、第三者ですら自由な歩行ができなかつたというのが、二十三日以後の当分の間の東室蘭状態つたのです。これは私は警察に対して、これは完全な無警察状態だ、どうしてこの無警察状態を取締らないのだ、争議に介入しろとは少しも頼まない、併し個人が自由に歩けなくなつて、どういう会議ができるのだ、どういう話合いができるのだ、こんなこと一日も早く解除してもらいたい。札幌方面隊長に申しましたところが、札幌方面隊長曰く、実は警察力がとても薄くて、あの目に余る争議の暴力行為はよく知つておるわけだが、どうにもできないのだ、当分の間待つてくれ、こういうような状態でありました。警察は何のために存在するのか。私は知りませんが、併しそういうふうに白昼個人が歩行ができないような無警察状態をこしらえておいて、警察力がないのだから勘弁してくれなんということは、警察力の介入なんという言葉で当てはまるものかどうか、私どもは法律の門外なのでわかりませんが、そういうような事態まで警察の介入というなら、これは確かに介入と言わなければならんが、併し私はそういうものを、そういう状態を以て警察争議に介入したということは考えたくない、そう思うわけであります。大体そういうような雰囲気の中から警察出動したといつたような状態になつておりますが、私が差上げました、プリントは、出かける前にあわてて書いてもらつたもので、脱字や間違つたところがたくさんありまするが、大体これに従つて、九月二十三日以来の状況を話してみたいと思います。  ここに書いてあります通り、九月二十三日は何回も言われておりまするが、私はそのとき隊列の後部にありましたのでその状況は詳く知りまん。ここに書いております通り、わつさもつさと揉み合つていましたが別に警察が来てどうしたとかこうしたといつたようなことは後部にいましたのでわかりません。ただ九月二十五日に第一組合員のほうが重傷者一名を含めて三十三名、それから第二組合のほうは重傷四名を含めて百四十二名の負傷者を出している。このような事態のときに一体警察は何していたか、私はよくも見ませんでしたが、その周辺には制服の警官は見当らなかつた、或いはいたかも知れません。ところが見当らないほど極めて少数であつたと私はそう思うのです。それから私服の人が、あの人が警官ではないかと思われる私服の人がいました。併しその私服の人は私服であるためか何か知りませんが、そのような大怪我、大負傷者がたくさん出ていたにもかかわらず一言も一行動もしないでそれを傍観していたというようなことです。このピケの正当性だとか、就労の正当性だとかといつた問題の判断に対しては、これは後日、裁判所かどこかで決定しなくちやならない問題でありましようから、私は今ここでそれがどうだこうだということは言いません。併しとにかく警察が認めている通り就労するのが正しいのだということを認めている。就労する権利は正しいのだということを認めていながら、その第二組合の人が就労しようとしていたのに、それはもう一千人も二千人もの集団が集つてつたのじや、これは必ず問題は起きるに相違ない。そのとき何らそれに対する警備や人命保護や秩序の維持というものを考えないで、みすみす百七十名も負傷者を出したということは、争議の介入だとか何だとかいつたようなそんな問題でなくもつと重大な、人命を守るとか治安を確保するとかいつたような問題を全然警察は等閑視していた、こういうことが非常に重大な間違いだつたと思うわけです。そんな関係があつたものですから、警察の者が行かなければ非常にそういう百七十人も負傷者ができるということなので、恐らく十月の五日には又再度そういう問題が起きてはいけないたろうという考えの下から警官を、五、六百人の人間を動員したのじやないかと私はそう思います。十月五日の工場入門就労させろという第二組合の要求を第一組合が阻止いたしましたが、ここでは実に延々九時間に及び、ああでもない、こうでもない、ああでもないこうでもないという話合いを続けられているのでございます。併し結局警察は日暮れがたになりまして放声車を通して、この第一組合ピケは威力業務妨害である、従つてこれを持続するということになれは排除しなければならない。排除を妨害すれば、公務執行妨として措置しなければならないといつたような放声を二、三回に亘つてつたわけです。ここに書いてありますが、そのときここには三千人も見物人がいたように書いてありますが、或いは一千人だつたかも知れませんが、その見物人の中から非常に拍手が出た。それがあまりと言えばあまりに第一組合ピケというものが、ものがわからな過ぎるのじやないかということを、恐らく一千人も二千人もいた見物人が実情をそこにいて見て、全く警察の言う通りだ、その通りだ、当然入れて働かすべきだということが、その何千人の見物人によつて拍手となつて現われたと思うわけです。で、第二組合といたしましてはもう就労時間が終つてしまつたわけです。四時が過ぎたし、日が暮れるし、これから入つてもしようがないから、今日は帰ろうじやないか、併し明日は文句なく入れて下さいよということを、第一組合の人にも頼みましたし、警察官にも頼んだ。そのとき署長さんだと思いますが、そのときいや、明日は入れてやるとか何かいうことを言わずに明日になつても放声した威力業労妨害、それを害するのは公務執日行妨害だという解釈は変らないというような返事をしました。それならばいいだろう。明日はスムースに入ろうじやないか。今日は喧嘩して怪我人を出したら大変だからと言つて、第二組合は引返したわけです。  ところでそこでこれはぜひとも覚えておいてもらわなければならないのは、そのとき第一組合ピケの後ろにあつて盛んに教宣していた総評の石黒さんがどういうことを言つたか。我々はあらゆる国家権力の弾圧にかかわらず、最後までこれと断乎と闘うということを繰返し繰返し言つている。これはそういうような警察の放声があらゆる国家権力の弾圧だと解釈しているかも知れない。が、併しそのことに対してあらゆる国家権力の弾圧に対して断乎として、最後まで闘うということを繰返し教宣していたのを私は聞いた。従つてこれは明日はスムースに入るなんだつてとんでもないことだ。明日も恐らく入れないだろう。あの方針は総評等の指導が入つてから、一貫して日鋼争議を貫いた思想の蕊だから、あの争議の思想が撤回されない限り、恐らく明日の入場も非常に困難だというふうに解釈いたしました。ところが案の定、翌日は佐藤半次郎さんの言い分によると、説得隊としてやつてつたそうでありますが、説得隊にしては昨日よりもピケが強化され、国家権力の弾圧に断乎として反対するといつたような気がまえを見せて、十月六日はあそこにピケを張つたのではないかと思れました。私はそのピケを黙つて見ていたわけではありません、第二組合の集合が共楽座のあとでありましたので、室蘭から参りましてそこな見ながら歩いたのでありますが、そのとき警官のほうとしては放声車から、ここは一般道路だから道路妨害をしないでくれ、あけてくれといつたようなことを二回か三回言つておりました。そうしておるうちに、離れておりますから詳細はわかりませんが、わあつと警官隊の人が四、五十人ピケの中に入つて来ました。橋上のピケは簡単にどこかに行つて、佐藤さんの言われた坐つているピケのところへ行つたと思うのですが、それももみ合い押し合い格闘して、乱闘したというようなもみ合いは見られず、わつと行つたなと思うときに、わつと通つてしまつたというふうに、極めて簡単にピケラインを通つたように思うのです。これは決して警察を弁護するのじやない、むしろこういうような無警察状態を放置した警察を責めたいのでありますが、併し私の見たところでは、その場合乱闘や格闘があつたようには見られませんでした。ありましたかも知れませんが、併し私の目にはそういうふうに映らなかつたのであります。  大体印刷したのはこれで終りましたが、先ほど佐藤さんがちよつと触れましたので、私一言したいと思うのですが、ここにおられる佐藤さんを委員長とする共闘の幹部或いは日鋼の執行部といつたような人たらは恐らくこの争議をこのように持つて行こうなどというふうには考えていないと思うのです。佐藤さんの考えや、それから日鋼の執行部の考えを見て、私はそう思うのです。が併しその考えがどうして実行に現われずに、例えば条件闘争などということは共闘の人が決定したとか、或いは日鋼の執行部の人が決定したということです。ところがそれがどうしてそのまま現れずに、ぼかんぼかんとこのような方向へ争議が進んで来ておるかというところに実は問題がある。従つて私をして言わしむれば、共闘や日鋼の執行部というものにもうすでに指導権がなくて、別な方角から日に日にこうせいこうせいといつたような指導的方向に働いて、その方向に引張られているというのが実情だと思うのであります。私は単に労働争議の問題ではなくて、日本の中に室蘭地域人民闘争的な、暴力革命的な状態を起すということが非常に悲しむべき状態だと思いますので、その思いをこめて言葉が激越に亘つたかも知れませんが、参考人としての言葉を終りたいと思います。
  20. 内村清次

    委員長内村清次君) 次に、室蘭市助役池浦俊彦君。
  21. 池浦俊彦

    参考人(池浦俊彦君) 議件になつております室蘭製作所争議に関する警察の介入の問題でありますが、私事実その現場にもおりませんでしたし、実際問題はわからんわけであります。なお又、この問題に関しましては、各参考人方々から縷々詳細に申上げましたので、本件に関する私の申上げることは殆んどないと、そういうような意味で私はむしろ不適格であると存ずるのでありますが、ただ、室蘭争議というものと室蘭市の、乃至は室蘭市議会のこれに対しております態度、或いは行動というもの、それから更に最近におきまするこの争議に対する室蘭市民の期待、乃至は表情といつたような問題を簡単に申上げまして、御参考に供したいと、かように存ずる次第であります。日鋼製作所は昔から室蘭市と消長をともにいたして参つたと言つても過言でないほどの、政治的な面におきましても、財政的な町におきましても、非常に不可分な、密接な関係を以て今日まで至つたわけであります。それで這般来のこの争議の突入によりまして、市といたしましても、又議会といたしましても、極めてこれは重大な事柄であるというふうに考えまして、そこで議会におきましても、ちよつと今、日は忘れましたが、六月の下旬日鋼企業整備に対する対策の特別委員会が持たれたわけであります。爾来本日まで二十数回以上に亘りまして市理事者を加えまして、ともにこの問題の対策に腐心をいたして参つた次第であります。勿論この種の争議は飽くまで合法争議であり、経営君は経営権の擁護であり、或いは組合側は生活権の擁護というような法合面での当然許されました争議でありますので、市といたしましても、議会といたしましても、どちらに組するというわけには当然参らんのであります。ただ併し、当時この争議発生いたしました当初におきまする考え方といたしましては、そういうふうな見地から不介入主義を堅持するということでございます。これは今でもその線は変つておらんのであります。取り上げられた問題といたしましては、要するにこれがいろんな経済的な、一つの大きな変動から日鋼が企業整備しなければならないということであるならば、要は受注量が増加することがこの問題の直接的ではないが、間接的な大きな役割を果す一つの問題になるのではないか、こういうふうな考え方から、迂遠ではあるかも存じませんが、そういうような方向に進みまして、道議会等にも働きかけまして、何とかして北海道の産業防衛という児地から、或いは総合開発の実効ある一つの方途として、さような面を取扱つてもらいたい。なお、県議会を通じて国会等にも十分この意を伝えて、善処方をお願いしたいというような申入れを再三いたしたわけであります。なお、更に又組合、或いは会社等に対しましても、成るべく早期に円満にこの争議解決するようにとの善処方を再度に亘つて申入れをいたして参つたので、あります。先ほど来お話がありました通り、第組合が結成されましてから、相貌が、この争議の相貌が非常に深刻な様相を呈して参つたのであります。この争議に対しまする市民の感情も非常に緊張した感にな以て迎えて参つたのであります。  話がちよつと横道にそれるようでありますが、日鋼のこの経済活動の停止……、ではないかも知れませんが、こうしたような争議によりまする経済的な影響というものは、室蘭市にとりましては非常に大きいのであります。最近、室蘭市は日鋼或いは、富士鉄の二大工場を持ちまして、この根幹産業によるいろいろな関連産業が発達して、主としてその経済が維持されておるような現状であります。従いまして日鋼争議によりまして、おおよそ日鋼におきまする下請業者として目されておりまするのは、十五団体以上あるのでありますが、ここで使用されておりまする人員はおおよそ二千四、五百人であろうと推定いたしてるのでありまするが、現在、本日までこの争議のために営業不振になりまして、およそ一千名程度失業者として街頭に投げ出されておるといとのが現況であります。更に又日鋼が室蘭市に、これは七月末頃の推定でございましたが支払いを要する金額というものはおよそ七、八億くらいであろうと推定されておるのでありますが、この支払い等も殆んど停止状態になつておる。室蘭市の経済界に及ぼす影響というものは非常に大きなものを持つておるわけであります。なお又、日鋼従事員の職員が室蘭市にもたらしまする購買力といいますれば、これは推定いたしまして一カ月一億程度に上るであろうと思うのでありまするが、この点もこの争議によつて殆んどその購買力がずつと減つておるというような関係で、室蘭市の産業経済に及ぼす影響というものは非常な深刻なものがあるのであります。従いまして室蘭市の市民全般といたしましては何とかしてこの争議の早期解決を切に望んでおるのでありまするし、第二組合が結成されましてから深刻な様相を呈する及び、或いはいろいろな問題等も出ておるようでありまするが、それらに対しては何とかして一日も早くそういうような悲惨な形が室蘭市内から早くなくなつて、解消してもらいたいというような気持が非常に切実なものがあるのであります。従いまして市におきましても、面一議会におきましてもともにこの問題の早期解決に更に又一段のその後、微力ではありまするが、各関係方面に対して良識を以て円満にこの問題の早期解決のために善処してほしいということを常に申入れをいたして参つておるのであります。今般も市議会の関係名とともどもに関係方面等に陳情、懇請等にも出向いておつた次第でございます。  それで御承知の通りこの警察権の介入ということは、先ほども申しました通り私どもがかれこれすべき事柄でないので、十分各皆諸先生方におかれましては先ほど来のお話で御判断も、状況もおわかりだろうと思いますが、たた、私どもが更に理事者といたしまして市政の一部を担当しているものといたしまして非常に杞憂かも知れませんが北海道にやがて冬が参ります。現在におきましても日鋼生活協同組合が市内の卸業者に支払われておりまする七、八、九というものの計算を参考ましでに見たことがあるのでありますが、大体この生活協同組合が市内の業者に支払いまする仕入代金は月額二千二、三百万円に上るわけであります。その内部を見ますると七、八はその大差がないのでありますが、九月になりまして殆んど半数に減つておるのであります。而もその仕入れの種別を眺めてみますというと、驚くほど激減いたしておりまするのは児童の学用品購入代或いは婦人の方の化粧品、箸類それから履物、こうしたものが驚くほど激減しておるのであります。これを以つて見ましても、この日鋼の争議関係しておられまする従業員方々の生活の一半を窺い知るに足るようなものがあるように私どもは考えている。従いましこの六月以降からの争議でありまするが、殆んどこれは私が想像申上げるので、或いは甚だ軽卒かも知れませんが、冬の仕度も十分なされておらんのではないかというふうに心配いたしておるわけであります。御承知の通り北海道は相当数の石炭を確保し、或いは疏莱を漬物として貯蔵する準備をしなければならんわけであります。勿論激寒に向いまするために、衣類その他の生活の態勢というようなものもその冬期に備えるための準備が必要であるのでありまするが、恐らくはそういうような生協の市内への支払状態から見ましても十分なされているとは考えられないのでございます。かような状態の中に、この争議がこのままの形で冬季間に持込まれる場合には、私は誠に深刻な重大な社会問題が惹起するのではないかというふうに非常に心配いたしておるのであります。何とかしてそういうような観点から行きましてこの問題が、この争議関係当事者の方々の良識によつて、一日も早く解決せられるようにしたい。これは我方の切なる希望であると共に、室蘭市民全体の悲願であるというふうに我々は確信しておるのであります。どうぞ諸先生方におかれましては、この問題の極めて重大な、而も冬期間という北海道のこの気候的な特異性においての争議というものを一応一つお考えを願つて、円満な終結をみるように何らかの措置をして頂くならば、非常に幸いであるというふうに考えておる次第であります。甚だ的外れだとは自分承知はいたしておりまするが、そういう意味で一応室蘭市民の一つの気分と言いますか、感じと言いますか、というものを判断の参考にという意味で以上申上げました。
  22. 内村清次

    委員長内村清次君) 以上を以ちまして参考人の公述は終りまして、参考人の公述に対して各委員の質疑を始めますが、その前に実は木下源吾君が委員の質疑中に委員外発言をしたいという申出がありますが、これを取上げてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 内村清次

    委員長内村清次君) それではそのようにいたします。何か質疑のある人は……。
  24. 秋山長造

    ○秋山長造君 鈴木さんなり、佐藤さんなりに一つお尋ねしたいのですが、先ほどからの皆さんの説明を聞いておりますと、或る人は日鋼の第一組合は殆んど暴力的な団体であるというような極めて激烈な批判があり、又何か地域人民闘争の線で踊らされておるのではないかというような、組合にとつては誠にこれは重大な発言もあつたわけであります。これらの点について私どもがやはり事態を正しく判断する必要がありますので、あなた方のほうから、それらの御意見に対するあなた方の偽わらざる御説明をお願いしたい。どちらからでもよろしゆうございます。
  25. 佐藤牟次郎

    参考人佐藤牟次郎君) いわゆる日鋼の闘争が地域人民闘争であるという宣伝が現地においてもなされておりますし、本日私どもも直接その言葉を全労の代表の諸君、更にその他の方からもお聞きいたしましたが、一体日鋼の闘争執行部がいわゆる組合員全体を掌握しておるのかどうか、この問題について、例えば一昨日の問題に対ししましても、闘争執行委員長が斥け、更に抵抗をするなという指令を下せば、それが組合員に忠実に守られております。  更に又日鋼の労働組合はこれは今第二組合に入られました青野君もよく御承知のように、極端な反共的な組合で、共産党のビラがまかれればそれを集めて燃やすとか、更に又昨日石橋君があばら二本を折つたというような事件の中でも、共産党の諸君が大分離れたところで放送演説やつておりましたが、それに対して組合員は聞きたくない、やめろという抗議をしておる。こういう状態から御判断頂きましても、決してそうした種の影響をこうむつておるというようには考えておりません。ただ先ほどから言われております若干のトラブルというものは確かにございます。これは第一組合のみにめるのではなくて、第二組合員のほうからも引起されておる。  更に又大事な点は、これは会社の政策であつたのだろうというように考えますが、工場閉鎖を行い、且つ立入り禁止の執行中という中で、当然闘いの場というものが社宅の中にある、闘いの組織というものが社宅の中にある、闘いそうした中で第二組合が作られた。第二組合が作られたという経過の中には私ども非常に理解のできない不可解な感じを受けざるを得ない状態が随分ございました。例えばこれ又ここにお見えの青野君と私との対談の中で交された一言でございますが、二十一日、これは第二組合ができる前々日のことでございましたが、二十一日の日に私は総評の石黒君と共同闘争委員会との意思統一を完全に行う必要がある、こういう立場から或るそば屋さんで会う約束をいたしました。この会場の問題についてたまたま副知事が参りましたときで、当時の書記長であつた青野君も一緒におつたのですが、その青野君から私は意外なことを聞かされた。それは今晩の会場費は会社側から出るのだぞ、こういうことを私は聞かされました。このことは恐らく事実ではなくて、青野君がただいやがらせ的に私に言つた言葉だと思うのですが、会社から会場費が出る、こういう言葉の裏付けがその後第二組合発生するに至りまして、いろいろな面から窺い知ることができる。例えば鉢巻き、旗その他自動車の借り賃、これらは第二組合の諸君が銀行から借入を行なつて作つたのだということが、言われておりますが、相当以前から用意されておつたというように判断されますし、更に又争議協定に違反して会社が半製品が積み出す、こういう問題の中から警官が入つて来る、警官が入つて来る中から、いわゆる組合は法を守らない組合なつたという理由で警官が入つた。そうした中で一部の組合員が尖鋭的になることを恐らくは期待しておつたのではないか、そういう形の中からこれだから第二組合ができたのだ、こういう姿を作り出すための方法ではなかつたか、そのように私どもは判断しておりますし、地域人民闘争的なものが一部の人たちによつて或いはあるかもわかりませんが、全体の傾向としてそういう地域人民闘争的な傾向を闘争が指導され、且つ今日に至つておるというように考えておりませんし、事実そういうようなことはないというように判断しております。
  26. 秋山長造

    ○秋山長造君 熊野さんにお尋ねしますが、警察のほうは六月に争議が起つてから大体九月の半ばまで殆んどこれに表だつて介入するというようなことではなかつたようですが、九月の半ばになつてて急に警察が大量動員をされたということについては、これはよほどの理由があつたのだろうと思いますが、その理由をもう少し具体的にお知らせ願いたいことと、それからさつきの地域人民闘争であるとか何とかというような見方、警察もやはりしておられたのであるかどうか、その二点を一つ伺いたい。
  27. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) 九月二十一日に五百名の警察官を現地に派遣いたしたのであります。私どもは九月の十六日までは、その前に半製品積出しについてのいざこざの声はちよつと出ておりましたが、十六日までは取り立てて大きな違反行為はありませんでした。非常に喜んでおつたのであります。十六日に半製品を積み出すために立入禁止区域に大勢のものが入つて実力を以て業務妨害をした。そして十七日にも同じように妨害をした。実はこのとき非常に考えておつたのでありますが、むしろなぜ出さなかつたかというほうの弁解をしなきやならんと思うのであります。それまで長期に亘つて両者がある行動をとつてくれておる。ただ二度そういうことが起つたからと言つて、すぐ大勢の警察官を出すということはどうだろうかということでまだ決しかねておつたのであります。十九日に至りまして、もうそれより大規模の業務妨害があつた。これは私ども十六ミリのフイルムを持つておりますが、ここには持つておりませんが、十九日に至つては門のところを打ち倒して、そして乱入しておる。そして海からは艀で上つて業務妨害をしておる。そして最後に警察官が行つて警告をしても逐に数百名だけはどうしても解散しなかつた。こういう状況が出て来たので、もう放つておけないという決意をいたした次第であります。そして実際に現地に派遣したのは二十一日になつたわけであります。  それから第二の点は、警察がそういう結論を別に持つておるわけではありません。いろいろ内輪としてはどうだろうということを考えてはおりますけれども、そのこと自身が私どもの警察権を行使する資料とは全く無関係なわけでありまするので、結論的にはそ、ういうものを持つておるわけではございません。
  28. 秋山長造

    ○秋山長造君 鈴木さんにちよつとお伺いしますが、この組合実力を以て半製品の積出しを阻止したというその間の事情について先ほど御説明があつたのですが、その中に会社側が明らかに争議協定に違反しておる。だから積出しを阻止したのだという説明がありました。その争議協定の内容をちよつと御説明願いたいと思います。
  29. 鈴木強藏

    参考人(鈴木強藏君) 争議協定の内容についてのみ申上げます。争議協定苦は日本製鋼所の新谷社長と組合長との間に協定をされておりまして、今御質問のありました点は争議協定の附属協定書と申しますか、争議協定に関する覚書の中にこの問題があります。覚書の一に「争議協定書第三条第十二号には少くとも左の各号に該当する者を含めるものとし、その具体的氏名は各所毎に会社と単位組合とで実情勘案の上決める」。そして「一、原材料の割当物資「製品、その他の到着、発送貨物であつて、その引取発送を延期することによつて第三者に迷惑を及ぼす懼れある場合、その引取発送に必要な最小限度の者」、それから協定の第三条のほうは争議行為の除外要員でございます。で、労働組合といたしましては会社との間に話合を以て、そこで解決した製品については積出しをやつても構わない。このことは単に問題になりました九月中旬の件のみにかかわらず、従来でも個々にそういう形で製品の積出しを行なつております。従つてそういつた意味の交渉会社との間に持つたのでございますが、結論が出ないままにもの別れと、こういうような恰好になつておるわけであります。
  30. 左藤義詮

    左藤義詮君 関連して……。今の問題について柳さんのほうの御解釈なりどういうような内容であつたかを承わりたい。
  31. 柳武

    参考人(柳武君) 会社側としてのこの問題につきましての観点を申上げます。会社といたしましては、先ほど来鈴木君が申されましたように、従来はこの製品搬出ということにつきましては、話合いによつて比較的円満に話合いがついております。詳しく申しますと、円満と申しましても、話合いの途中においてはいろいろトラブルもあつたことは事実でございます。例えば出すなら出して見ろ、線路の上へ座り込んでやるからというふうなお話も聞いたことはありますですけれども、いろいろ注文先の方が来られ、乃至会社側の営業担当の者も組合へ行つて懇々と話をつけ、そうしてその上において発送するというふうなことはできておつたのでございますが、会社側から言いますと、そういう状態でも何でも出さえすれば注文先に御迷惑をかけることはない、いわゆる第三者に御迷惑をかけることはなくて、出すことができるのでございますが、会社側といたしまして、今問題になつております半製品搬出という点でございまするけれども、この半製品会社側がいよいよ出さなくちやならんという考えに立至りましたことは、さつきも私が申上げたうちに……。
  32. 左藤義詮

    左藤義詮君 協約との関係ですよ。
  33. 柳武

    参考人(柳武君) 第三者に対しまして迷惑な及ぼし、而も第三者の方から現場において引取るというふうな契約変更になつて参りましたとき、これを会社側は出さないということについては、これはなりませんし、協約においても少しも協約に違反しておるとは考えておりません。
  34. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 関連して……。鈴木さんにちよつと伺いたいんですがね、今あなたの読み上げられたのは、除外要員の問題についてははつきりしたけれども、争議中に半製品なりそういうものを搬出しないというふうな協定は、私にははつきりならないので、他にまだ条項があるんですか。その点あつたらはつきり一つ
  35. 鈴木強藏

    参考人(鈴木強藏君) 恐入りますけれども、最初のほうもう一度お願いしたいと思います。
  36. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 最初のあなたの御答弁なされた搬出の場合の除外要員の問題についてははつきりしたけれども、争議搬出しないという協定については、はつきりしないから、他にはつきりする条項があるんじやないか、若しそれがあつたらば御答弁願いたい。こういうのであります。
  37. 鈴木強藏

    参考人(鈴木強藏君) 争議協定書の第二条の第三項に「会社争議行為争議除外要員以外の組合員組合の了解なく就業させないと共に新たに労働者々、雇い入れて作業させない」。こういうような項目がございますので、当時製品搬出の場合下請業者を多分に使つて仕事をやつておる、こういうような関係等いろいろあるわけでございます。
  38. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 今のことで争議中にですな、そういうふうなものの搬出をしないというふうたことがはつきり謳われることになるのじやないですか、その点どうですか。
  39. 寺木廣作

    寺木廣作君 今の協定が半製品搬出を禁止する協定になるかどうかということは、下請業者が従来からそういう搬出をやつてつたかどうかという問題になると思うのです。従来労働者がやつてつた分を争議になつて下請業君が搬出をすれば今の協定違反になる。併し従来下請業者がやつてつたことを争議中でも下請業者がやるということになれば、今のこの協約の違反にはならんだろうと思う。併せて一つお答え願いたい。非常に微妙な点ですから。
  40. 鈴木強藏

    参考人(鈴木強藏君) 争議協定の中に、半製品を積出してはいけない、そういう明文された字句はございません。併し労働組合といたしましては、只今読み上げましたように、組合員以外のものを組合の了解なく就業させない、こういつたようなことに対する考え方、更に協定の覚書のほうにある原材料の割当物資、製品その他の到着、発送、これらの引取り発送に必要な最小限度の者、こういう争議除外要員の問題、こういつたことから、いわゆる会社との間に折衝を持つてつた、こういうことになつております。繰返して申上げますけれども、半製品を積出してはいけないというような明文は協定書の中にはございません。
  41. 寺木廣作

    寺木廣作君 いや、私がお伺いした部分についてのお答えがないように思いますがね。争議中に組合員以外の君を雇つて組合員の仕事をやらせるということじやないですか。組合員以外のものがふだんからやつてつた仕事を争議中にでも組合員以外のものがやる仕事を禁止する協定じやないのじやないですか。
  42. 柳武

    参考人(柳武君) そういうようには私どもこの争議協定の条文からは解釈できないと思います。私会社側といたしましては、この発送その他は今までずつとやつておりました下請業者を使つてつておりますので、職制によつてクレーンを運転いたしますので、決して争議協定違反にはなつていないと思つております。
  43. 小林武治

    ○小林武治君 柳さんにお伺いしたいのですが、最前柳さんのお答えでは、注文先から半製品のままでいいからもう送つてくれ、こういうようなお話があつたんでそうしたんだという御答弁があつたように私ども聞いたんですが、そうすると、それは注文先からの話ではこのままにおいては契約期限が過ぎていたり、或いは非常に製品の作成が遅れる。遅れることによつて損害を生ずるというようなことが考えられたのか。そのへんの具体的な内容も伺いたいことと、今鈴木さんが協定書の覚書を読まれたうちに、第三者に損害を与える虞れがある場合には搬出してもいいのだというように私は鈴木さんの読まれた中からは解釈したんですが、そうするとどうも協定違反でないような感じを私受けますが、その点についての柳さんの明確なお答えを頂きたい。
  44. 柳武

    参考人(柳武君) 今おつしやつた通りでございます。注文先といたしましてはもうすでに納期が……、注文先自体がそれを取得し、なおそれを製品にまとめて行く時間的にも余裕がなくなるから、このままでいいからしつ而もここの現地において、室蘭の現地において、その状態において注文先では契約変更して受取るというふうになつておりますので、そういう状態から言うと、私はもういわゆる会社側からの初めの契約から言えば半製品でございますけれども、もうすでに現地においてその状態に引取るということになりますと、いわゆる半製品と申しますか、製品と申しますかの範疇に入つて立派に解釈ができると思いますし、又そういうふうなものを搬出するのに従来やつております下請業者を使つてつておりますので、争議協定違反では絶対ないというふうに確信を打つております。
  45. 寺木廣作

    寺木廣作君 鈴木さんにお尋ねしたいのですが、これ一点です。関連ですから。最前読まれた覚書の文章を、私が読まれたたけをお聞きすると、第三者に損害を与える場合とか、或いは虞れある場合という際には差支えないような協定のようですが、もう一遍協定書を読んで頂きましようか。
  46. 鈴木強藏

    参考人(鈴木強藏君) 読み上げます。項目だけを申上げますが、「原材料の割り当て、製品、その他の到着、発送貨物であつて、その引取発送を延期することによつて第三者に迷惑を及ぼす懼れある場合、その引取発送に」云々こういうことになつておりまして、組合といたしましては、この第二者というのは今会社の所長が言われたような第三者を意味するものではなくして、公共的なものを意味する、こういう工合に従来から解釈を統一いたしております。
  47. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 所長さんに伺いたいのですけれどもね、今の点これで争議中の下請けが何とかということについてどんどん搬出するということになつたら、争議協定を折角作つた意味がなくなる、争議協定の趣旨から言つたらその組合との関係においてそれがなされなければならない、こういうふうに考えるのですが、如何ですか。
  48. 柳武

    参考人(柳武君) いわゆる争議協定のうちでは、例えば組合員が今まで機械加工をしておつた、機械加工途中のもの行別の人間を雇つて来て機械加工を続けて完成品にして、而もそれを発送するということになりますと、これは組合の了解なくしてやれは争議協定違反になるというふうに考えますけれども、そういうふうなことなしに、今まで従来発送しておつた下請業者が発送するということになれば、私は差支えないというふうに解釈しております。
  49. 加瀬完

    ○加瀬完君 鈴木さんにお伺いしたいのですが、今お読みになつたその次をもう一度読んでくれませんか。
  50. 鈴木強藏

    参考人(鈴木強藏君) どのへんからでございましようか。
  51. 加瀬完

    ○加瀬完君 今読んだ次から、結局組合との話合いがなければ、という項目があるでしよう。もう一度質問をし直します。さつき伊能委員の御質問に対しまして、お答えをいたしましたほかに、私が聞いておりますと、結局下請などに出荷作業をさせる場合は、組合との話合いがなければできないんだというふうに了解される条項があつたように記憶をいたしておるわけであります。その点をもう一度お読み頂きたいと思う。
  52. 鈴木強藏

    参考人(鈴木強藏君) 失礼いたしました。第三条「争議行為より除外されるべきもの範囲は、左の通りとし、その具体的氏名は各所毎に交付と単位組合とで実情勘案の上決めるものとする」。こういう条文がございます。で、以下それぞれの項目が列記されておるわけです
  53. 加瀬完

    ○加瀬完君 さつきお読みになつた中では、労働協約の中に組合との了解がなければ、下請などによる出荷作業はできないというふうに了解されるような項目があつたように聞いたのです。そうではないんですか。どなたでも。
  54. 佐藤牟次郎

    参考人佐藤牟次郎君) 只今の問題になつております争議協定に関する覚書の第一条の一項にあります原材料の別当物資云々の項とそれから本協定の中にあります第二条第三項の、「会社争議行為争議除外要員以外の組合員組合の了解なく就業させないと共に、新たに労働者を雇い入れて作業させない」。こういう条項との関連がございますが、当時の状況をちよつと補足説明させて頂きたいのですが、よろしいでしようか。
  55. 内村清次

    委員長内村清次君) 簡単に。
  56. 佐藤牟次郎

    参考人佐藤牟次郎君) 簡単に報告いたします。従来製品搬出の問題につきましては、会社側組合側で協議をいたして、それを出しております。製品搬出については、協議をいたし出しております。従つて全社のほうと協議をして出しておるというのは、少くとも争議協定の覚書第一条の一項目によつてそういうことをやつてつたというように私ども判断しております。  更に又当時の書記長青野君でございましたので、青野君がこの積出しを反対しなければならないという立場から、総指揮をとつておられましたので、なお青野君にこの当時の説明をお聞き下されば、より明確になるというように私ども判断します。
  57. 加瀬完

    ○加瀬完君 では青野さん、その点御説明頂きます。
  58. 青野二郎

    参考人青野二郎君) 青野です。お答えいたします。現在私の立場は、非常に微妙な立場にございますが、当時の組合の役員といたしまして公平なお答えをいたしたいと思います。  で、只今各先生から争議協定の内容をめぐつての御質問でございますが、争議協定の中に、間違いなく製品の積出しを組合との話合いがつかなければ出してはいけないんだという規模はございません。但し従来からの慣行等から考え合した場合に、無断でどんどん製品を積出すことができるのだという解釈も又相ならんと思います。ただ問題は、今申上げました通り協定に許可なく、一方的に出せるという……組合の許可を必要とするんだという協定ではないけれども、併しそこに従来の慣行というものを如何に争議期間中であつたとしても、従来の慣行というものを十二分に活して、製品搬出ということが当然のことだろうというふうに当時私は書記長としても解釈をいたしておりました。なお又会社のほうにおきましても、只今佐藤委員が言われました通り組合長並びに組合三役を呼びまして、この点については数回に亘りまして交渉を持つた次第であります。非常に簡単な答弁でございますが、協定の中には、許可を必要とするというはつきりした明文はございません、但し第三者に迷惑を及ぼす云々という、第三者に迷或を及ぼすものは出してもいいのだという、然らば何を指して第三者に迷或を与えるものかという解釈に至つては、その都度々々の状況により解釈の内応も又違つて来るのではないかということから、今次の問題につきましても、お互い当時者間においては、この協定第三者云々というこの問題についての解釈は、当事者間においては出ないのじやないか。お互い当事者にとつては先ほど鈴木君が言つた通り、旧組合としては第三者に影響を及ぼすのだという意味で全部出したら、先ほどどなたか言われました通り、千歳期間中でも何でも出せるということになるだろうし、又所長の言を借りるとすれば、お得意先からどうしても買いたいということであるならば、すべて第三者が御迷惑になるだろうし、この辺の解釈は当事者間で如何に言い争つたとしても解決のできない問題じやないか、故に又ここに実力行使にお互い出でざるを得ないという状況なつたと思います。
  59. 加瀬完

    ○加瀬完君 本部長さんに伺いたいんですが、今の、結局商行為とか、慣習というものが重要視されておるわけであります。今言つたような第一組合の方もこういう慣行があつたということはお認めになつている。業務行為に対する妨害だとお考えになるときに、出荷作業が正しい業務行為と見られるか、或いは又そうでないという立場で見られるかということが非常に基本的な問題だと思う、そこで警察権が介入したその理由としては、本部長はこの搬出行為を正しい業務行為だと認めになつたと思われるんですが、一体今までの組合会社の間に取交された協議、或いは又今までの慣習、こういつたようなものも十分御検討の上でそういう御結論を出されたのか。
  60. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) 念のために協定書を取寄せて見たのであります。これの第三に、「会社争議行為争議除外要員以外の組合員組合の了解なく就業させないと共に、新たに労働者を雇入れて作業させない。こういう条項であるのであります。製品云々については全く何もありません。それでそれの具体的た取り決めとしての覚書に、先に言われたような原材料の割当とか、こういう条項があるわけでありまして、こういう場合には先の読上げました第三条によりまして、組合争議除外要員以外の組合員をも使用できる、新たに労働者をも雇入れることができるという場合の覚書であると私ども解釈しております。従いまして製品搬出する際に、従来使つてつた、この条項に全く触れないんです。従来使つてつた栗林組というものの労務者を使うということは全然この協定書とは関係ないといつてもいいくらいと私どもは解釈しております。
  61. 加瀬完

    ○加瀬完君 私の伺つておりますのは、そういう点ではありませんで、第一組合でも第二組合でも結局製品搬出はお互いに協議をしてやつたという慣行があつたということを認めておられる、こういう慣行があつたという事実をお調べの上でそういう決定をされたかされないかということなんです。
  62. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) 私どもはそれは承知いたしておりません。正面から法律の解釈だけで参りました。
  63. 加瀬完

    ○加瀬完君 商行為における法律の解釈というものはですね、そういう慣習というのが非常に重要なことは御専門のあなたがおわかりにならないはずはない。今までのいろいろの争議形態でも警察権の介入というので、一番問題は業務行為に対する勅書か妨害でないかということが一番の問題だつたわけです。そうなつて参りますると、業務行為か業務行為でないかということが基本の問題になりまするから、それが慣習上どう行われておつたかということが調査の上でなければ、軽々しくこれは妨害だ、妨害でないという決定はできないと思う。その慣習、慣行を全然考えなかつたということはどうもあなたの判断の前提としては、ちよつと専門家としては失礼な言葉でありますが、当を得ていないように思うけれども、どうなんですか。
  64. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) これは業務妨害行為ということも今論点になつておりますけれども、立入禁止地区で大勢で乱入する、これ自身でもうすでに明らかな法律違反でありますので、私どもは出ることについて、それを中へ入れないような措置をすることに少しも躊躇いたしませんでした。
  65. 加瀬完

    ○加瀬完君 その問題は又別に質問をいたします。今お答えになつた問題じやないのです。そういうどういう商慣行があつたかということも十分検討しなければ判断が正鵠を欠くのじやないか。そこでそういう慣行があつたことをお調べになつたかどうかということを聞いておる。お調べにならなければならないというお答えで結構なんです。
  66. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) 私どもは組合会社側とがそういうことがあつたということは知つておりませんでした。
  67. 左藤義詮

    左藤義詮君 青野君にお等ねをいたしますが、今慣行というお話がありましたが、今おつしやつた慣行というのは争議の場合ですか、平常の場合ですか。平常でも組合に一々断わらなければ出荷できないのか。それが争議の場合ならば、争議が今まで何回あつて争議の慣行も今まで何遍ぐらいそういう慣行を繰返しておられるか。
  68. 青野二郎

    参考人青野二郎君) ふだんは当駅これは会社の業務でございますので、組合は何ら関知いたしません。で、争議期間中の場合でも、この問題については今次企業合理化反対闘争においても会社と協議をしている。一つの例ル申上げますならば、佐久間発電所という所に工事をしておることは諸先生御存じの通りですが、ここで使うものについても、私どもの争議のために電源開発の国の仕事が遅れるということで半製品のままを出荷した。但し出荷をする場合には労使双方交渉をいたしまして、では我々は半製品々出す、その代りに会社でも、では組合のとつた行動というものに対して裏付をしてはどうだということから、該当者に対して健康保険料に匹摘するものを支払おう、或いはまあその他条件を付けて半製品の出荷をしたというのが今次争議の中にもあります。今申上げました通りで、話合いがつけばお互いに事を起すものではないわけですが、たまたま当時の半製品の積出しというものは量から申上げましても非常に厖大な量であるということで、お互いの争議の争点の中心になつてしまつた、こういうことになると思います。
  69. 左藤義詮

    左藤義詮君 只今慣行という話ですが、今伺いますと、今度の争議が始まつてから一々出荷については相談をしていた。今までは話がついたが、この場合には非常に大きくで話がつかなかつた。今までの慣行というものは出すことについては全部許したが、いろいろ色をつけるというお話がありましたが、その色のつけ方がうまく行かなかつたので、或いは量が多かつたのでつかなかつた、かように解釈していいのですか。
  70. 青野二郎

    参考人青野二郎君) これはその都度その都度色をつけるということでなくて、例えば炭鉱の鉄柱の問題については、我々が鉄柱を出さんということになりますと、山の仕事ができないということから、そういう問題については無条件で出す。但しこの佐久間の電業者の品物については非常に大きいものでございまして、これを出すか出さないかという問題については会社としてもまあ非常に大きな問題だ、だからそういう大きな問題を簡単に認めるわけにはいかん。当時我々の要求としてはそういうものは若干出そう、出すための条件としては先ず工場を再開することだ、工場を再開する条件としては会社が言う解雇該当者というものを含めて直ちにじやあ工場を再開しようじやないかということが初めの要求であつたわけでございますが、そういうものがだんだんだんだん狭められて行つて、今申上げましたような色がついたということですが、出すために色をつけるというようなものでも毛頭ございません。
  71. 左藤義詮

    左藤義詮君 慣行というお話がございましたが、伺つて入ますと、今度の争議が始まつてから数回話合いをせられて全部話合いがついた。今度初めて話合いがつかなかつたのだ、こういうことであつて……。
  72. 青野二郎

    参考人青野二郎君) さようでございます。その通りです、
  73. 左藤義詮

    左藤義詮君 今慣行という言葉が非常に何か強い、当然交渉をしてやるかのようなお話たつたのですが、今までは話合いをして来た、今度初めて話合いがつかなかつた、かように解釈してよろしいですね。
  74. 青野二郎

    参考人青野二郎君) さようでございます。
  75. 寺木廣作

    寺木廣作君 先ほどから半製品の積出しについて争議協定外のことは慣行でやつている、協議してやつていると、こういうことですが、お話を伺つていると、それは争議協定の第三項の運用問題じやないですか。第三項に先ほどから、よくはつきりわかりませんけれども、除外要員以外の組合員組合の了解がなければ使わんという争議協定がある。その協議に基いて組合の了解を求めたのじやないですか。だから慣行でないものは協定第三項の運用の問題じやないですか。
  76. 青野二郎

    参考人青野二郎君) お答えいたします。只今言われましたことに尽きると思いますが、問題は協定そのものが全部、交渉しないでも全部これはすつきりするのだという協定はどこの組合にも先ずないのじやないかと思います。と同時に如何に明文化しておつたにしても、その条項をお互いの立場を有利にするためにお互いやはり立てる解釈があると思うのです。今申しました通り細部にあるのじやないかというお設が成立つと思いますが、どういう細部があつたにしても各条項をめぐる解釈論というものは常にあるのじやないか。そういうところから常に交渉が持たれていたというのが当時の状況でございます。
  77. 寺木廣作

    寺木廣作君 今の問題の続きなんですが、問題が大分はつきりして来たように思うのです。というのは今の佐久間ダムの必要品を半製品のまま積出すということについては、第三項の運用として協定が恐らくついたのだろう、組合の了解が得られたのだろうと思う、こう思うのです。ところが先ほどから問題になつておるのは下請業者が平常から積出しているやつをこの争議の際も積出そうとした。それを阻止するかせんかの問題なんですね。これは協定の第三項がカバーしていない問題じやないか。争議協定とは会社組合の間で組合員の従事している業務についてきめるのが争議協定だと思う。この第三項を見ても、第三項の前段に除外要員以外の組合員組合の了解がなければ使わん。これは組合会社のことを規定しているのだ。後段で新たに労働者を雇入れて作業させないというのは、組合員が従来従事している業務には新たな労働者は入れない。この二条が当然条理上も条文上も争議協定がカバーしている事項だと思う。そこで組合会社側の問題ではなく、組合が平素から従事している仕事でもないものを下部業者かやつている。それを処理するかしないかの問題、これは争議協定かカバーしていないと思うが、この点どうですか。
  78. 青野二郎

    参考人青野二郎君) お答えいたします。この問題については確かにてそういうお説も成立つとは思うのですが、思うのですが、ただその範囲の問題ですね、範囲の問題と実際の状況によつてやはり大分内容が違つて来るのじやないか。まあこれは詳しくお話ししますと時間もかかりますので省略いたしますが、まあ問題はその範囲の問題でございます。例えば従来三人でやつていた仕事を今度は十人でやるのだ、然らばそのあとの七人の人間はどこから連れて来たか、確かに今まで使つていた栗林組の者だけれども、毎日埠頭で仕事をしたのは三人しかいなかつた、併し今度は十人になつた、それじやその七人はどうなんだ、これは今申上げ題が違つて来るのじやないかということで、割切つた解釈の仕方というものはお互いの当事者の立場に立つて言い合う場合はすつきりしたものが出ないのじやないか。この点の判断は諸先生にお任せしたい。
  79. 秋山長造

    ○秋山長造君 今の青野さんの御説明がどうもあんまり上手過ぎてよくわからんのですが、寺本さんのおつしやつたことに尽きるのですか。それともどんななんですか。もう少し単刀直入に当時行われておつたままを説明してもらいたい。現にあなた自身が当時書記長という責任者で、而もその会社側との交渉に当られたと思う。そして当つた結果、これはどうしても組合実力を以てでも阻止せねばいかんという実に強い決意をされたわけでしよう。その決意をされるまでには、これはよほどの強い信念と根性がなければそういう決意はされなかつただろうと思うのですよ。当時組合の中に相当自重論もあつたやに聞いているのですが、にもかかわらずあなたが書記長としてそれを押し切つて、飽くまでこう持つて行かなけれでいかんのだという強い決意を持つてやられたんですから、だからそういう廻りくどいことでなしにもつとあなたは、はつきり問題についてはしてもらわなければならんだろうと思います。
  80. 青野二郎

    参考人青野二郎君) お答えいたします。当時の私の心境を述べまして御答弁に代えたいと思います。争議協定に対する解釈論は今言つた通りいろいろあると思いますが、私の解釈としては、搬出をするということは絶対に我我が阻止するという権限は先ず協定から言つてない。但し問題は会社搬出の量というものが非常に厖大である。同時にこの搬出の問題については第一回目は九月十六日になされたわけでございますが、この場合は組合の執行部の指示が何らないにもかかわらず、すでに組合員埠頭に入つたという事由、それから十八日におきましても総評の石黒さんが実際埠頒におられまして、我々が行く前にうでに組合員にこういう指導をやらしておられたという事実から、十九日のこの積荷阻止の問題については執行部がいけないと言つても先ず組合員はたくさん来るだろう。同時に又この頃から当時の日鋼組合の執行部というものはすでに大衆から浮き上つた執行部になつている。この事情を申上げますと、先ず基本線以外の話を執行部がしたとしても、大衆は先ず聞いてくれないということから、ここは一番肚をきめようということで、先ず組合員がどういうことを言つても聞いてくれないのであるならば、先ず実行することによつてその範を示してやろうということが私の当時の心境でございます。で、当時十九日の朝私も船から埠頭に一番先に上つたわけでありますが、室蘭自警の、名前は特に省きますが、私服の方に申上げましたことは、先ず私個人をすぐ検束してくれ、で、そういうことになつた場合に労働運動の犠牲者を出すのは自分一人でたくさんだということで、全部組合員をしりぞける。全部立入禁止の柵外に出すから、私一人だけをとにかくすぐに連れて行つてくれという話も私服の方には申上げた次第です。こういうことで私個人としては、非常に浅はかな当時の考えでございましたけれども、私一人が連れて行かれることによつて、すべての人々が柵外に出てしもうということでその精神も出し、或いは又その他の事故者もなくするということが一番いいのじやないかということから、執行委員会の席上においてもあえて私を責任者にしてもらいたいということを行なつた、これは私の心境でございますが、こういう話をするのは、今日ここでするのが初めてでございます。  なお私が今言つた個人的にこうしてくれという警察に対する話合いについては、特に必要であるならば、個人の発表も述べて差支えないというふうに考えております。
  81. 秋山長造

    ○秋山長造君 そうすると、あなた自身は、これは公社かあえて製品の積出しをやろうとすれば、これは協定違反でも何でもない、やれるのだ、こういうことですか。
  82. 青野二郎

    参考人青野二郎君) お答えいたします。協定違反かどうかというまあ煎じつめて申上げますならば、協定違反でないということははつきりしていると思います。ただ先ほども申上げている通り、如何に争議期間中であつたとしても、お互いに条理を尽して話合うという慣行は慣行としてやはりお互いに認めるべきじやないかという考え方も当時頭の中にあつたわけです。こういうことから会社行なつ交渉は、数次に亘つて交渉はいたしました。併し基本的に組合の弱さとしては、先ず出すということについて今申上げました争裁協定を以て阻止するということはできないということについては変りはない。
  83. 秋山長造

    ○秋山長造君 阻止するということはできないということを知りながら、あなたに確信を以てやつたということでなしに、実際は引きずられてやつたということが本音なんですか。
  84. 青野二郎

    参考人青野二郎君) 申上げます。大衆に引きずられたということも成り立つと思いますが、私の当時の気持としては、先ほど申上げました通り、そういう実力行動によつて大衆の行動を抑えるということしかないのじやないかという考えです。
  85. 秋山長造

    ○秋山長造君 どうも佐倉宗五郎みたいでもあるようですし、又或いは大衆を一ぱい食わしたような感じも受けるし、その場合のあなたの行動なり考え方なりというものがよくわかりませんがね。わかりませんけれども、まあとにかく表面に現われたところでは、あなたが責任者として最も強行に組合の実方による阻止ということを主張して、又それを実際にやられたわけですね。そうですね。
  86. 青野二郎

    参考人青野二郎君) そうです。
  87. 秋山長造

    ○秋山長造君 その結果二十二日に武裝警官が六百人も出て来たということとなつて来るわけですね。だから大体警察をそういう入るべからざる争議の火中に引入れたというこは、あなたに若干の責任があると思うのですが、如何ですか。
  88. 青野二郎

    参考人青野二郎君) お答いたします。当時、十九日の問題については、十八日の夕方から夜中の二時まで実に執行委員会を開催したわけです。私は他の執行委員、或いは共闘の人々の発言については何も申上げません。と申上げますのは、私個人が強硬意見というお説でございますが、私個人に関する限り、私自身も強硬意見を吐いていました。他に誰もいないのかと言うと、そうではないのでございますが、他の方の問題については申上げません。この十八日の夜中まで行われました執行委員会におきまして、私どものところに入つた情報としては、明日は相当の警官が来られる。お見えになるという情報が入りました。当時の執行委員会においては、明日の埠頭に入つたことによつて必ず検束者を出すのだ、然らば一体誰を犠牲にするかという内容についても執行委員会話合いをしたわけです。じや誰を犠牲にするか、犠牲者が出た場合、あとの執行委員会をどういう形で運営するかという細部の問題まで討議したわけでございまして、私一存ですべてを何したという問題ではございません。
  89. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 その点ですね。相当の警察官が来るであろうということは、立入禁止区域の中に入るからということであるのか、或いは又は積出し阻止ということで、警察が積出しをさせるということであるのかということは、そのときにはわからなかつたのですか。両方であつたのか。
  90. 青野二郎

    参考人青野二郎君) お答えいたします、当時の私どもの判断としては、積荷阻止を援護するということでは飽くまでもなく、立入禁止の地域に入るということを防止するのだということで来るというふうに解釈をいたしておりました。なおこの間我々がこういう肚をきめるまでに至つた弁護士各氏の御意見というものも、私に言わしめれば相当デリケートな御発言があつたというふうに考えております。
  91. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうしますと、そのときの決定立入禁止区域の中に組合員が入つて、そして積出しの阻止をやる、それは当然警察からまあ制約を受ける。併しそれにもかかわらず積出しは阻止しなければならない。そういう確信でまあ警察と抗争したということになるわけですか。
  92. 青野二郎

    参考人青野二郎君) お答えいたします。で、当時私が埠頭におりました範囲内において私の知り得る範囲では、十九日は警察官との抗争ということはございませんでした。同時にまあその前のほうの質問でございますが、飽くまでも立入禁止区域内に入るということで検束者を出すんじやないかという考えではありましたけれども、行動を起しております。
  93. 伊能芳雄

    伊能芳雄君 池浦助役さんに先ず伺いたいと思うのですが、実は私どもは池浦助役さんに来て頂きたいと思つたのは、先ほどあなたが発言されたように、市民が経済的に非常に困るので早く解決を希望している、これはもうわかり切つたことなんで、そういうことではないので、市の立場におられて、争議というのは、普通の場合は労使というものが当事者ですが、これが労組のほうが二つに分れた。而もその指導が総評と全労のほうの系統から来ているというように複雑になり、而もその間に警察が介入したというようなことで、いろいろ当事者がたくさんに複雑になつて来た。そこで市のほうから見て、又あなた自身の考えを言いにくければ、市民がこんなふうに見ているということを伺いたいのです。それはこういう争議が長く続いているので、経済的な面は別として、市民が非常に不安を持つて来たかどうか。そうして又あちらでもこちらでも乱闘事件が起つて来た、それへ又九月の末には警察官が多数入つて来た、そういうふうな状況下において、市民がこの争議を通じて、治安的な意味から、或いは気持の上の不安というよな面から、どういうふうに市民が感じているかどうかということを実は私はあなたに聞きたかつた。ほかの参考人のかたはそれぞれの当事者であります。あなたはこの関係から言えば、一番第三者的立場にいるわけです。第三者の市民の声をあなたを通じて聞きたいというのがあなたに今日おいでを願つた理由なんです。その点一つあなたの見るところ、又市民の見るところをあなたが市民を代弁する意味で御説明を願いたいと思います。
  94. 池浦俊彦

    参考人(池浦俊彦君) 実は先ほどちよつと明確には申しませんでしたが、自分では気持がわかつてもらえたんじやないかというふうに考えておつたわけです。勿論第二組合警察介入という問題にいたしましても、例えば第二組合入門する場合の警察措置とかといつた問題は、我々は全然頭には考えておらんので、その適否、或いは賛否というものについては考えておらんのでありますが、ただ市政担当者といたしまして、第二組合発生以来、非常にそうしたような問題が或る地域には頻発するようになつたことは事実であります。この点に先ほど各参考人から上げている通りでおります。勿論市民といたしましては、かような状態は、この平和な市街地に、而も先ほどもお話があつたようでおりましたが、父子三代に亘るといつたような特殊な近親感を持つた地域に住んでおつて、而も今まで同志として働いておつたような人たちが、かような事態から相反目することによつて生み出された血生ぐさい一つのトラブルというものが続出するということにつきましてには、誠これに何と申しますか、困つたことであるというふうな強い感じを持つてつたことは、市民間におきましても否めないと思うのであります。特にそのあと炭鉱の方面からこの争議応援に参られたかたが、例えばヘルメツト帽或いは棒を持つて来たというような人たちが市中のデモに入つているというような姿を見ましても、何かしら市民の一層不安感が高まつたということも、これは否めない市民感情だつたと思うのであります。で、まあこの第一組合の執行部に行つて、何かかような人たちが激越な態度で吊し上げを行なつたというようなことからいたしましても、私どもの耳に入つたところでは、誠にどうも目を蔽うものがあつた。一体市なり議会は何をぼやぼやしておつたろうかという声も一部にはないわけでありませんでした、併しながら私どもといたしましては、飽くまでもこの治安の問題は警察のやることでもおりますし、それから当然そうしたようなことが両者間の良識によつて消滅するであろうというような期待を持つてつたわけでおります。今後、先ほどもまも気持を申上げたのでありますが、この争議が経済的の面で解決を速かに望むということと、再び冬季間を迎えてかよなう惨事が市内で演出される、現われて来る、起されるというふうなことは、もう市民としては、実際の気持としてはたまらないという気持を持つているということは事実であろうと思います。でありますので、そういうふうな両面から申しましても、私どもといたしましては、この争議の極めて短時日間に解決するような行動関係者においてとられたいというふうに希望しているわけであります。
  95. 伊能芳雄

    伊能芳雄君 池浦助役さん非常に上手に答えられるので、なかなか真相が把握できないのでありますが、更に突つ込んで具体的に少し伺いたいのは、九月二十一日に応援警察官がたくさん入り込んだ。その前の状況としては、室蘭警察署のほうは非常に手薄で、あれじや警察は長い間ああやつていたんじや室蘭警察署も大変だろう、あれじや気の毒だというような空気つたのか。それとも警察はお気の毒だけれども、大体警察にあれだけの人がいるんだから、そう不安なくやつていられるというふうに市民は見ておつたか、私はそれを一つ先ず伺つてみたい。大体二十一日に応援警察官が五百人一ぺんに入つて、それで市民がほつとして、あれだけ入つたから、もう今度は心配がなくなるだろうというような安心感を持つたのか、警察が余計なことをするというふうに市民が思つたか、この点一つ市民の気持を、或いは市民の片言隻語から捉えたところをお聞きしたい。
  96. 池浦俊彦

    参考人(池浦俊彦君) まあ二十一日以後警察官が増員になつて安心したかどうか、そういう事実はないかどうかというようなお尋ねのようであります。勿論端的に申しまして、そのことはちよつと私はお答えすることはできかねるわけであります。と申しますのは、警察の在来の人員で警備ができるかどうかといつたような、乃至はお尋ねによる増員によつて安心感を持つたかどうかという問題につきましては、市民の声として、私どもは直接余り聞いてはおらんわけであります。ただいろいろ頻発いたします事態につきましては、何とかこういうふうな事態はなくなるようにできないか、あるいはもつと事前に警察が何とか手を打てないものかというような声があつたことに事実であります。
  97. 伊能芳雄

    伊能芳雄君 鈴木書記長にお伺いしたいんですが、さつき御発言の中に、九月二十一日に応援警察官が入つた、それまでは大した警察事故というものは起らなかつたが、それ以後においていろいろな警察事故が起つて来たということを言われましたが、これにたまたま時間的にそういうときが多くなつたということだけのことなんであるか、或いは警察官が入つたが故に、警察が来たが故に、一層そういう問題が起るようになつたという意味なのか、その点を一つはつきりお答え願いたい。
  98. 鈴木強藏

    参考人(鈴木強藏君) お答えします。警察官がたくさん室蘭に派遣されるまでは、以前は、冒頭に申上げましたように、事故は全然起きておりません。たまたま今の御質問のように、非常にこれは微妙なお答えになりますが、武装警官がたくさん入つて来る、同時に若干の日時をおいて、僅か二日でございますが、第二組合発生する、こういうような中から、何かしら騒然としたような空気が、外部から見るたそのように考えられるんではないかと思いますけれども、そういうような雰囲気が醸成されて来たのではないか、こういう工合に判断をいたします。従つて武装警官が室蘭市に派遣される以前については、事件は起きておりません。
  99. 伊能芳雄

    伊能芳雄君 あなたは、鈴木書記長は今そう言われますけれども、警察の書き出したものによりますと、九月十九日以前にもう相当の事件を起しているのであります。これはお認めになりませんか。例えば七月の八日午後八時五十分頃に、会社側が、これは会社側解雇通告の日なんですが、「鍛圧課長、事務部長宅及構内職業斡旋所等に何者かが投石、夫々窓ガラスを破壊した。」、越えて八月二十三日に「鍛冶工佐藤由太郎」云々、こういうようなものが起つて来ておるのですね。ですからもうすでに争議は起つておる以上は、これはさつきから十四日以後のことは、先ほどの半製品搬出の問題として起つて来たわけでしよう。ここで警察決意されたという段階に至つているのですが、それまでにそういうふうに起つているのですね、ただ時期的に今あなたが言われたように、九月二十三日に第二組合ができた、それまでは大体会社対労組の関係、ところが第二組合が二十三日にできたということが、今度は労組の間における第一労組、第二労組の問題として非常に深刻になつて来たのだ。私どもは今白紙でいろいろの経過を聞いてみると、警察側が五百人人入つたから問題が、事故を起す原因になつたというようなことは、あなた自身の牽強付会じやないかというような感じを受けるのですが、どうでしよう、その点は……。
  100. 鈴木強藏

    参考人(鈴木強藏君) お答えいたします。そういう意味の御質問であるとすれば、お答えが若干外れているかも知れませんが、当時警察とそれから組合との折衝につきましては、副組合長それから書記長が主として担当いたしておりまして、私ども執行部の中におりまして、先ほどお尋ねになられた意味のような事故につきましては、聞いておりません。勿論今先生がおつしやられたような、例えば窓ガラスを破られたとか、そういつたことについては、そういう事実があつたことだけはこれは認めす。それから武装警察が来たから何といいますか、急に事件が殖えて来た、こういう見方をするのは臆測でないか、こういうふうにおつしやられるのでございますが、実際事実の問題として、事件が常に、何といいますか、室蘭市の場合、大きな事件が常に警官と第一組合、第二組合、こういうような形の中で発生しておるのが主でございます。こういつたような点から考えましても、武装警官が来たことによつて、或いは第二組合ができたことによつて、騒然として来たという、この事実だけは間違いない、こういう工合に判断いたしております。
  101. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) この委員会で発言を許されたことは誠に有難いと思いますが、私に特にこの委員会を選んでお願いしたのに、実は今の世界情勢は、御覧の通りジユネーブ会議によつてインドシナの戦争がやみ、先には朝鮮が休戦になつておる。そして平和共存の波が高くなつている。話合いにおいて物事が解決しなければならないという方向に今進みつつあるということ、従つてここの委員会において、有力な諸君に今おいでを願つているのであるが、何とかしてこの大きな世界的風潮に同調できるような結果を生み出すことを希望しまして、これから御質問をしたいと思うのですが、それは決して皆さんを追及するという意味ではありません。私から御質問することの中で、何かしら又いろいろお考えが出て、今申上げるような話合いで速かに解決できる、こういう方向を期待するがためであります。  第一には熊野本部長にですが、先ほど業務妨害であるからということと、もう一つは、あとから立入禁止の区域に侵犯したということとの二つの理由で、武装警官を派遣することを決意した、こういうことでありますが、これはその通り間違いないのでありますが、それを先ずお伺いしたいと思うわけでございます。
  102. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) 間違いありません。
  103. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) そうしますと、業務妨害でおるということについては、先ほど来の質疑応答にありますように、非常にこれは一方的なあなたの御判断で、ここで非常に論議になつているくらい面倒なものであります。殊に労働争議に一般の刑事上の問題などと違いまして、争議に労働者の側から言えば、会社経営者に対して損害を与える、これが先ず主眼であります。そういう見解に立つてものを考えれば、なお更あなたの一方的なつまり断定に疑義があると思います。次に、立入禁止の区域を侵犯したということでありますが、これは執行吏から室蘭警察署に申請したのだろうと思うのですが、果たしてそうだとするならば、室蘭警察署と道警察に対するこれらの連絡、そういうものがどういう実情であつたか、これを一つ伺いたいと思います。
  104. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) ちよつと今のどういうといいますか、私どもは業務妨害立入禁止区域へ入ることと、この二つをまあ一応法律上そういうふうに申上げましたが、九月十九日には、熊谷執行吏から市長宛てに、こういうことを起らんように措置して欲しいという正式の文書も来ております。私どもがこれをこの際逮捕して事件にする際には、いろいろ法的な根拠といいますか、適用条文、これもある、これもあるというふうなことを慎重に協議するほうがいい、研究するほうがいいわけでございますが、この際きめました方針は、未然に防止する、立入禁止区域に入れないということを基本方針にして部隊を出したわけでありまして、この際も詳細な注意を与えまして、殆んど検挙者を出すことが目的でない、だから公務執行妨害があつても、成るべく事を荒だてるなという予防措置を重点にいたして警察官を出させることにいたしたわけでございます。署と私どもとの連絡につきましては、警察署は第一次的には方面本部の指揮を受けます、方面本部は方面公安委員会の管理下にあり、そうして方面本部長は道本部長である私の指揮命令を受ける、私は道公安委員会の管理に服するという格好になつておりますので、その順序で連絡をいたしたようなわけでございます。
  105. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 次に青野君ですが、青野君は先ほどお話の中に、組合は自主性を失つたということと、言論の自由がない、統制が十分に行われて非常に窮屈だ、特に総評その他は無責任だというようなことをお話になつたのですが、この総評が無責任だということの何か実例がございますか。事例が……。
  106. 青野二郎

    参考人青野二郎君) お答えいたします。先ず私が先ほど申上げました日鋼の執行部は自主性を失なつたということから申上げます。と申上げますのは、八月の二十四日に会社から最終回答が出されたわけでございますが、二十四日の夕方から二十五日の夜明けのたしか三時までだと思いますが、夜通し私どもは会社の最終回答をめぐりまして、ここにおられる佐藤さんも出席され、鉄道関係の共闘委の方方も出席されまして、この会社の最後回答を如何に組合として処理するかということで、鉄鋼工業界の状況或いは労使関係の力関係、総合的な判断に立ちまして、当時私ども執行部にたしか六名だと思いますが、六人の中五対一という比率を以て会社の提案を基本的に了解いたしまして、争議をこの辺で収拾すべきであるという結論を出すに至つたわけです。ところがその翌日になりまして、この執行部の考え方を組合の正式機関である闘争委員会に構築いたしまして、執行部の考え方を十分検討してもらうべく、十五日に闘争委員会を開催いたしました。ところがたまたまこの闘争委員会は外でやるべきであるという動議が出まして屋外で鬪争委員会を開催いたしました、ところがこの闘争委員会と申上げますのは、定員六十二名の闘争委員でやるわけでございますが、屋外で行われ、組合員は勿論のこと、主婦の人々もこの闘争委員会を傍聴すべく約二千五百の人々の中で、屋外で而も闘争委員会が開催された。当時私はその役責上執行部の提案の説明に入つたわけでございますが、説明が終らないうちに青野お前はぶち殺すぞ、片足をもぐぞ、帰りは足がないぞという罵詈罵倒の中で、この闘争委員会が執行部の提案を真剣に討論するという雰囲気が完全に壊れてしまつた。こういう中で闘争委員会が非常に長い間開かれたわけでございますが、すべてが執行部の提案に対する反対討論にしても、真剣な討論ではない。非常にうわついたアジ的な反対討論が主に行われまして、私のほうからこういう雰囲気の闘争委員会はやめて頂きたいということも発言しました。ところが私がこの闘争委員会をやめてもらいたいという発言をするようになりましてからどの委員か知りませんが、委員の中からそろそろ結論を出すべきじやないかということで、闘争委員会としての結論を出すような雰囲気になつて参りました。私どもが従来所属していた組合組合規約から行きますれば、無記名投票でものを決定するのが組合の建前です。規約にも明らかに書いてあります。而もこういう大きな問題でありますので、当然無記名投票によつて採決さるべき問題であるにもかかわらず、これが起立採決という形で採決がなされた。執行部の提案に賛成する闘争委員は僅か五名、その五名の方々が起立採決に賛成すべく立上る前の態度にしても、あたりを見廻しながらおどおどと立上る。而もこの闘争委員会が終つてから執行部提案に賛成した闘争委員になぜお前は執行部提案に賛成したのだという吊し上げを食つておるような事実でございます。このようにいたしまして執行部といたしましては相当の肚をきめ、決意をきめて提案したものが、今申上げました雰囲気の中の闘争委員会で否決になつたその翌日私に小林組合長に一体今後どういうふうにするのだ、我々三役としてこの日鋼の争議をどういう形で収拾し、どういう形で指導しなければならないのだということで寄り寄り協議をいたしたけれども、然らばどういう形でこれを収拾するのかということから、当時あらゆる観点から特に争議はこの辺で収拾したほうが先ずいいじやないか、収拾しないまでにしても、大きく戦術の転換を図つたほうがいいじやないかという私ども執行部と同じような考えを持つていて下さいました鉄鋼労連の人々或いは富士鉄出身の共闘委の人々に十分話合いをつけるということに、これははつきり申しまして、議会あたりにも裏の駈け引というものがありましようけれども、私ども組合の内部においてもいろいろな駆け引はございます。正式な執行委員会の結論ではございませんが、この共闘委の人々にお願いいたしまして、この事態の収拾を何らかの形で図るべきだということで特に富士鉄出身の共闘委の人々が中心になりまして、九月の二十日を一応のめどとして戦術転換を図るというようなことになつて参りました。このような状況から当時小林組合長をはじめ私個人も同様でございますが、この戦争をどういう形で収拾するか、或いはどういう方法でこの戦術或は闘争を指導するかということについては、すべて何も持得ないということで、執行部の自主性というものは完全に失墜するに至つてしまつた、且つ又言論の自由その他についてでございますが、この執行部の二十五日闘争委員会に提案しました問題について、工場内は十九の支部に分かれておりますので、この支部間においては執行部の提案を二十五日の闘争委員会でああいう形で結論を出すのではなくて、なぜ各職場へ持つてつて、執行部にこういうふうに考えているのだという支部の組合員の世論を聞いて闘争委員会としての結論をださないのだというような支部もあり極端な支部においては、闘争委員会の闘争委員を不信任する。支部の意向を無視してああいう決定をした闘争委員は不信任だというような支部もあり、各支部間において支部大会の開催の問題も随所で叫ばれました。ところがその当時の現況として、基本線以外の発言をするということが非常に困難な問題であり、基本線以外の発言をすると、無言の圧力がかかるということで、公平な発言というものがなかなかなし得ないような現状にあつたということは事実だと思います。なお、この点については、鉄鋼労連から当時お見えになつておりました佐藤という組織部長の方にしても、私はじめ職場に入つてとにかくお互いが考えていることを言い合わなければならない、抑えることによつて必ず組織が分裂する、言い合いなさいということで職場を廻つて歩きました。このようなことで無言の圧力がかかつていた。私個人で言えば、昼食を食いに行つてピケがついている。家へ帰つても、私のそぱに後からピケがついて来るという工合に完全に組合執行部に自主性を失うと同時に、この固い統制の下に個人の自由或いは個人の発言の自由というものも失われるに至つた。  最後に総評が非常に無責任な指導をやつているということでございますが、一つの実例を挙げて申しますならば、先ほど申上げました共闘委員会が一応九月二十五日頃に戦術転換大会を開くのじやないかという問題についても、総評の石黒さんあたりは社宅地を廻つて歩きまして、二十五日頃に大会が開催される模様だ。その大会を開いちやいかんというようなことを逆に又宣伝して歩くというようなことでこれに私が申上げるよりも率直に佐藤半次郎さんから事実をお伺いしたほうがいいと思いますが、共闘内部の問題という問題についても、非常に内部の意見の統一ができないという現実は又見逃すことのできない事実じやないか。このように日鋼争議は、誰が一体どういう考んでこの争議を収拾するのかというめどが全くつき得ない状況になつている。特に総評の石黒さんの指導については、先ほど全労の石岡委員から発言がございました通り、彼は執行委員会、共闘委員会というものとは別に彼個人が青年行動隊を指導している、彼独特の指導方針をとつているということから見て、私は総評よすぐ帰れ、或いは共闘の人々よすぐ手を引け、飽くまでも新旧両組合の日鋼労働者にその自主性を与えてもらいたいということで、現在も言い続けておるような次第であります。なお、総評の石黒さんの個人的な動向については、例えば三鉱連の人々が先ほど申上げました通り、鉄帽をかぶり、脚絆をし、六尺棒を持つて攻めて来るという場合、警官がいる間は、とにかく警察官がいるわけです、警官が来ない前はやれやれというふうに後で盛んに煽動している。ところが警官隊が来ると掌をひつくり返したようにして、おれが言わんことじやないか、警官隊が来た、道をあけろというような非常に巧妙な身の振り方をして、実際現地において指導をなされておる。こういうこと、或いは総評の機関紙、或いは鉄鋼労連の機関紙、或いは共闘関係が出しておる現在のビラについても、あることないことデマ、でつち上げの批判が示されておる。こうゆうようなことで無責任なアジ演説その他の動向がいろいろこの闘争の当初からあつた。又自主性を失つた一つの例としましては、先ほど佐藤委員が言われました通り、闘争の初めは日共の人々が正門の前でビラをまくというところがあると、当時組織部長ありました鈴木さんの指導の下に青年行動隊が全部それを又組合員から回収して道端に集めてマツチを付けて燃やしてしまつた組合です。併しながら現在東町地区に行つてみますと、共産党のアジビラが貼られておる、或いはレツド・パージで当所をやめました石井政雄さんが宣伝カーに乗つて来ると、万雷の拍手を送るということは、意識するとしないは別として、非常に闘いの方法、或いはものの考え方というももは大きく変つて来たということも又見逃がせない事実じやないかと、私はこのように考えております。
  107. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) いろいろあなたの立場から考えておることを承わつたのですが、然らばあなたは新組合の結成に携さわつたということであるが、そういう結果ですね、新組合にそれならば今の日鋼の組合の諸君が全部入れば、全部入ればです。それ全部が一体就業できるとお考えになつておるか。あなたは先ほど生活が圭たる条件、だからして他面には今いろいろ言われたようなこともあつたが、新組合を作つた、こう言われた、従つて、新組合に皆入れば生活が絶対保障されるか、全部が……。そうして首切りがなくなるとでも考えておられるか、全部が就労できるとお考えになつておられるのか、その点を一つ……。
  108. 青野二郎

    参考人青野二郎君) お答えいたします。なかなか手ひどい質問でございますので、答弁も苦しむわけでございますが、人間的には解雇該当者の方を路傍に捨てるということについては、私個人としても忍びないものがございます。で、私どもの新労働組合としましては、会社が提案いたしまして最終回答、即ち九百一名から百十六名の人人を該当者として、百十六名の方の該当を白紙にするという会社提案で争議を収拾したいということから、残る七百数十名の方については構内に入つて仕事をするということは到低できません。と同時に、この問題については、労働組合である以上、闘いの初めからどこにもなかろうと思います。で、問題は私どもの基本線というものと現実の問題を如何に調整するかというところに問題があろうと思います。現在私どもは残余の人々の問題については、現在就職がはつきり確定しておるのは百三十七名、その他の人々の就職の問題についてもでき得る限りの努力をしたい、或いはこれは非常に微々たる問題ではありましようけれども、現在会社との交渉において退職金のほかに餞別金の問題についても、これが増額の交渉をしておるということで、非常に忍びないものはございますけれども、やはり我々と今まで同じ職場で働いていた人々が、我々と袖を分つという現象については、忍びないという言葉以外に何ものも申上げるわけには参りません。同時に又現在第一組合組合長にいたしましても、ゼロの闘いというものはあり得ないんだということをはつきり声明をいたしております。併しこれ又共闘が、そういう小林発言は間違いであるというようなことから、共闘が又すぐ翌日に声明するということに至つては、一体誰がこの闘争を指導しておるのかということを、ますます私どもとしては疑義を抱かざるを得ないというのが現状だと思います。
  109. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 甚だ青野君には何だけれども、もう一点だけお伺いしておきたいのは、新番組が成立してから、たびたび警察と連絡をとり、いろいろおやりになつておるようであるが、その警察が果して諸君の希望するようなやり方をしてくれると思つておつのかどうか。
  110. 青野二郎

    参考人青野二郎君) お答えいたします。私どもが警察のほうへ連絡するのは、私どもの意のままに警察の方に御努力願うということで連絡をしておるのではございません。連絡の際、警官隊の行動については私どもは要請もしておりませんし、それからそれを期待するというようなことも勿論いたしておりません。ただ我々が行動を起す事前、でき得れば、時間前ぐらいには、我々はこういう行動をとるという連絡をとるのみでありまして、なぜ連絡するかという問題については、新番組結成以来、新旧組合がとにかく触れ合う毎に事故が起るろいうことが今までの事例でございますので、ただそういう関係からできる事故については、未然に防がなければならんということだけで、警察官がどのように出られるかどうか、これは別です。ただ、我々の行動について事前に連絡だけはする。こういうことで今なお室蘭においては行動する事前において連絡だけはとつておると思います。なお又、正門の問題についても、先ほど時間がなかつたので簡単に概要だけ申上げたわけでございますが、私どもは例えば二十三日、我々が入る場合、或いは二十五日の午前中私どもが構内に入る場合においても、新番組の組合員は大分後方に退けまして、決して第一組合のピグ隊とうちの新労働組合組合員と、すぐ接触させるというようなことをいつも避けております。で、我々の三役が茶津コートで吊し上げをくつた場合も、単に三役だけ茶津コートに入つた。それから我々が構内に入る場合には、行動隊だけ橋の上に置いて、我々七人の役員がピグの中に入つてつたということで、極力ピグ隊との接触を避けるという努力も又しておる次第です。
  111. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 私のもう少しで済みますけれども……。所長さんは先ほど労働組合の方は大衆的であるし、我々のほうは法律を守るんだ、こういうお話でありました。そこで今日まあ武装警官がたくさん出ていろいろなことで問題を起しておるか、結果においてはあなたのほうのお考えに副うように物事を進んでおるかのごとく考えられる、今後もです。あなたのほうではおれのほうは大衆的に背景がないのだ、警察を頼りにしてそしてやるよりほか仕事がないのだ、こういうようにでもお考えになつておるのか、こういう点を一つ……。
  112. 柳武

    参考人(柳武君) お答えいたします。私はさつき申しましたのは、我々法治国に住んでおりますので、例えば立法禁止仮処分という判定で、我々の申請を正しいと見て頂いて、許可してもらつて申請を認めてもらつて、我々処置をとつて行くというふうなときに、これが実行によつて破られたり、又いろいろの業務の妨害が起つて来るというふうのことに対して、これを我々守るということにつきましては、やはり警察官の御出動その他があつてつて頂くよりは手がないと思いますが、私は何も警察官の方が常に会社側のほうについて、各社側を守つて頂くというふうなことは考えておるわけでなしに、ただ違法行為があつた場合に、それを警察官の方が適宜適切に取締つて頂きたいものだというふうに念願しておるわけでございまして、違法行為が行われないことが我々はもう望むのでございまして、いやしくも違法行為があつた場合においては、国家警察というものが、国家の警察機関をあるものがその違法行為を取締つて頂きたいというふうに考えておるのでございます。
  113. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) どうも深刻な争議発生したのは、あなたの会社の四人に一人の割合での首切り、これが問題の発端であることは間違いないわけであります。いずれからも、この問題がほかから起きたんではない。第二番目の問題は、半製品搬出した。その前にはすでに立入禁止の出請をしてその決定を得ておる。もう来るべき問題は予想されておる。そうしていろいろな、つまり暴力的な問題の起きることも予想されておる。このことは警察側が、本部長が検挙、そういういろいろ一切のことを決議した日にちと、あなたのほうでも決意したという先ほどの陳述の時間とも符節を合せたように一つになつている。これは或る意味で考えられれば、計画的ということも考えられる。併し私はそうは考えたくない。ただここで私はお尋ねしたいのは、社会に対してこれほどの重大な波紋を越している。今日の陳述の中でも地域人民闘であると言う。そうしてそのような闘争は明治四十一年以来、あの長い苦しみの戦争中においてもあなたの工場においてはなかつたはずである。今回、この長い歳月なかつた問題があなたの手によつてここに醸成された。それは地域人民闘争であるか、或いは革命闘争であるかは私は関するところではない。けれども、般にはそういうような非常な深刻な問題だという、こういう問題を引越した根本があなたのところにあるということだけは否めない。従つてこの問題の解決に対して全責任を負わなければならない。警察の取締が手ぬるいとか、もつともつとやつてもらわなければならんとか、こういうようなことを言うのは、私は国家の最高機関のここでは慎しむべきじやないかと私は考える。併しながらあなたはそういうことを言うなということも私は言いません。ただ問題になるのは、戦争中は軍需、そうしてあの大砲の砲身、一万トンのブレスを持つておる、最新と言わんでも日本で有数なあなたの工場である。終戦後においてはあなたの工場においては農機具まで作つて、今日あなたが首切ろうとする従業員諸君がおの工場の再建に協力した。今然るに誰が考えても非道であり、このような無道な行為をやらなければならんということに対して、あなたは何が原因であるかを考えたことがあるかどうか、私はこの一点を聞きたいんです。この一点を私は聞きたいんであるが、問題は石炭、鉄その他の戦争重工業というものに対する要請はどこから来ておつたか、そして日本の今の金融支配者の諸君がその仕事を引受けて、そうして今日のデフレ政策で窮境に陥つたかといつて、労働者を路傍に切れた草履を捨てるような、そういうことを企むということは、人間としての良心に恥じないかどうか。若し恥入るならば、速かに平和産業のためにあの果敢な先進の労働者が営々として築いて来たあの生産手段を作るという熱意がないのかどうか。中共貿易において、電気機械でもこれが開通になれば、あなたの工場は日本一にフルに活動できるのである。こういうような機会が今恵まれておるが、この政府というか、情勢が一切のこれらのことを抑制しておるがために、そうして結局今日のような情勢が醸されておると私は考える。国会までも煩わし、そうしてあらゆる労働者の、罪ない労働者同志を闘わせ、そうして警察までもいろんな問題が起きておるというので、この国会になんして来て、先ほど来のお話を聞いておれば、何ら反省するところはないようである。何ら反省はない。警察の取締が手ぬるい。私はこの点は甚だ遺憾に思う。速かに良心に立帰つて父子三代、二代の労働者が築き上げた尊いあの蓄積を活かすという方途についての意見を一つ聞きたいと思うのであります。
  114. 伊能繁次郎

    伊能繁次郎君 楽に答えになつたらいいでしよう。
  115. 柳武

    参考人(柳武君) ではお答えいたします。我々企業家といたしまして、そこで働いておる人にやめてもらわなければならんということは誠に重大なことでございまして、これがたやすくできることではなし、軽々に行われていいものであるとは我々全然考えておりません。殊に我々の工場はお話のように北海道の上地にあり、なお明治四十一年から続けてやつておりましたものでございますから、そういう長い歴史のある工場で、従業員もいろいろ親類縁者、その他親子何代にも亘つて働いておる人も多いことはよく承知しております。そういう工場においてやすやすと人員整理のような問題が打ち出して考えられるものとは考えておりませんし、我々も軽々にそんなことをやろうという意思は毛頭ございませんが、御承知の通り、我々も一企業をやつておりますので、企業をやつております以上は、その企業が成立つて行く姿にまでしておきませんと、今度は企業全体として潰れてしまうというふうなことになつて参りますので、若し企業全体が潰れるというふうな姿に追い込みますと、これは私どものほうの会社室蘭か主力工場ではございますが、他にまだ広島や横浜にも持つておりますし、その他二つばかり作業揚を持つておりますが、そういうふうな工場全体を挙げての問題となつて来、えらい大きな問題に発展いたしますので、企業を守り抜かなくちやならんという努力は、又別に我々として考えなくちやならんと思つております。それで我々この人員整理を発表し、こういうふうにして、会社を生かして行かなくちやならんという情勢に立ち至りましたことは、御承知の通りこの鉄鋼業、特に我我の工場は普通鋼をやつでおります鉄鋼業に違いまして鋳鍛鋼を主体とした鉄鋼業でございますので、いろいろ発注先の御注文がなければ生産計画というものも立てることができませんので、船の問題にいたしましても、又その他いろいろの問題が全部この受注にひつかかつて参りますので、現実御承知の通り金詰りその他いろいろの問題で、我々のほうの見通し得る受注量というものが非常に少くなつて参りましたので、そういうようなところに対処して、ただ黙つて手をつかねておりまして、会社が墓穴を掘つて倒れてしまうというようなことになつては相済みませんので、この人員整理のところに追い込むまでに人員整理関係のない部門から節約し、切り抜けられる対策はとりましたが、なかなかそれだけでは事足りませんので、この人員整理まで追い込みましたのでございますが、非常に相済まんことだとは思つておりますが、これなくして、今の会社の考えといたしましては、切り抜けるのにむずかしいというふうな感じからやつております。又お説の通り、将来いろいろの方面に政治的に途が開けて来るかも知れませんが、そういう現実となつて来たときには、我々又今やめて頂いたかたには帰つてもらつて働いてもらうということには、一向やぶさかではございませんので、六月十七日東京で団体交渉を初めてこの整理案を発表いたしましてから今日まで、その席上からでも、そういう場合には一つ又帰つて働いてもらいたいということを申しております。この事実は我々今お話がありました通り、我々の工場は兵器を主体としてやつておりました関係上、終戦の時に相当思い切つた人員を減らす、減らすんじやなくて、あの時全部一度解雇にいたしました。私なんかも全部その時に一従業員として解雇されましたのですが、引続いてほんの少しの人間を再採用の恰好で雇つておりましたが、その後兵器というものは日本では作れなくなりまして、後に全面的に平和産業の種数に切り替えまして、いろいろ苦心惨憺、茨の道を開きながら今日に至つて参りました。併し又道が開けて参りまして人が要るようになりましたから、その終戦の時にやめて頂いた方には、随分たくさん帰つて働いてもらつておるのでございます。そういう実情でございますので、我々もこの問題は軽々に考えておりませんので、会社が潰れないよりな処置をとり、なお将来に決してこの状態で満足するものじやございません。繁栄して来ましたならば、又去つて頂いた方に一つつて頂いて、共々に楽しい日を送りたいというふうに考えておるものでございます。  警察その他の問題につきまして私が前から発言して来たことにつきまして、いろいろの御問題を提起せられましたけれども、私は先ほど御説明中にもちよつと申上げたのでございますが、例えは会社側がロツク・アウトかけて、それを違法で破られて来ましても、又職制のうちに吊し上げその他いろいろのことがありましたり、或いはデモがあるためいろいろの社宅その他に被害をこうむりましたり、いろいろなことがありましても、私どものほうはこれはやはり労働争議でありますので、警察の出勤を要求したりなんかすることは今まではやつておりません。ただ余りひどい程度になり、又国家機関である執行史が管理せられておる立入禁止仮処分というものが成り立ちましても。これが踏み躪られて行くというような、限度を越したと思われるようなことにつきましては、我々はやはり警察官の発動がなくちやどうにもならんというふうな観点で行動しておるつもりでございます。その点は御了承願いたいと思います。
  116. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 熊野本部長さんに伺いたいと思います。先ほど来私伺つておりますというと、参考人方々の御意見の中には、警察に対する二つの異なつた方面の不満があつたようであります。その一つは、今の話にも関連するわけでありますが、結局警察は手ぬるい、こういうふうな方面であります。もつと不法行為に対してはどしどしやつたらいいじやないか、更にそれを進めて行きますというと、もつと解決のために警察が手を下したらどうか、こういうふりな方面に一つ考えられるのでありますが、ところがもう一つは、それと丁度反対方向から来るように、今度の争議に対して警察が非常に介入しておる、これに対して不満である。これは先ほどはつきり二人の方から申されたようであります。そこで前のほうの問題は、問題があるでしよう。併しこの問題はどちらかと言うと、個々の問題で、組合争議全体ということに対しては余り関係がないと言えばおかしいですけれども、まああとの問題に比べては小さな問題である、そういうふうにも考えられる。ところがあとのほうの問題は、これは考えようによつて最終的に争議行為の否定になる、こういうふうな危惧が、そういう場合があり得るというふうな問題に私は考えられるのであります。そこで先ずあなたにいろいろ伺いたいのでありまするが、この争議に対して、まあ十九日から相当な出動力を以て出動しておられるのでありまするが、今度の争議に対して出動したところの根拠をどこに持つておられるか、それが一点であります。それから次に、先般来政府のほうからも何か労相からピケに対するところの談話が発表されておるようであります。今度の東証のスト問題についても、まあそれとは関係があるかないか、関係がないというような当局の言明でもあるようでありますが、結局介入して行つておる。実力行使をしておる。こういうことから考えますというと、本部長としてはピケの問題に対してどういうふうに考えておられるか、これが第二の点であります。そこで次の問題は、先ほど来鈴本書記長並びに佐藤闘争委員長のほうからも、余りにこの争議問題に対する言葉の介入が強過ぎる、ひど過ぎる、委員会においてもその点を十分検討しもらいたいというお話もあつた。そこであなたのほうの提出されておるところの資料から見ましても九月十七日までは僅かに六件の事案、あと三十五に亘るところの事案はあなたのほうで強力な出動したのちにおけるところ事案である。そうしますと、この争議を大きなものにしておるところの問題の一つとしては、或いは警察のほうの措置が災いする点があるのじやないか。こういうふうなことも考えられるのです。そこで警察の介入の問題につきましては、先ず半製品搬出から始つてそれから第二組合の入場、こういうことに及んで、相当の介入の点がある。こういうふうに先ほど来述べられておるのでありますが、それに関しまして、先ず半製品搬出については、これは先ほども論議になりましたが、私その後争議協定協定書の一部を見ておりますので、先ほどの論議の中から更に私ははつきりしたものがこれは出せると思う。即ち覚書におきましてこれはこう書いてある。争議協定書第三条第十一号には、少くとも左の各号に該当するものを含めるものとし、その具体的氏名は各所毎に会社と単位組合とで実情勘案の上きめる。こうなつておる。先ほどは私読上げてもらつたですけれども、はつきりこの把握ができませんでしたが、これによつて明瞭である。下請負のようなものをやるという場合があるとすれば、単位組合との協議によつて行わなければならない。その協議なしにやるということは、明らかにこれはその協定の違反であるように思うのです。更に従来の慣行から下請負業というふうなものでやつてつたとしても、この争議中において下請負以外の課長であるとか係長であるとか、組合以外のものを同時にやらせたとすれば、更にここに問題があると思うのです。そういう点から見てこれは争議協定から見てすこぶる問題がある。そういうふうなことに対して警察本部長とされてはどれだけの一体検討してやられたものであるか。この点が一つであります。それから次に具体的な問題に入つて参るのでありまするが、先ほど来第一組合のほうから述られておりますから、詳細述べることを省略しますが、二十三日におけるところの場内にあつては、警察側として困るから場外に出してくれ、よろしい、組合側はそれを承知して出した。ところが、四列縦隊に出ていつたものが二列ずつにわかれて明らかに通路を、これはピケを破つておる。そしてそこに幹部が八名入つてつておる。佐藤闘争委員長の陳述の中には警察が陳謝しておる、こういうふうなことであれば、これは相当いわゆる団結権を破壊してしまう。こういうことは押し及んで行くのではないか。警察のやり方によつてこういうことも考えられる。これに対してどういうふうにお思いであるか。  それからその次には九月の二十五日でしたか、このときにおいて第二組合の何百人かが正門にぶつかつて来た。そうしてこれ突破し、怪我人を生じた。生命危篤のものが出ている。これに対して警察側としては傍観的な態度をとり、加害者の捜査もしておらない。こういうふうなことが述べられてある。この点についてはどういうふうなんであるか。これを一つ伺いたい。  それから十月の五日においてこれなどは相当私は組合員としては組合の団結権を侵すものである。或いは別な言葉で言つたならばスト破りを支援しているものである。こう第一組合側では考えておる重点であろうかとも思うのであります。結局警官隊が幾人かのピケのあれを踏み越えて、そしてそのあとに続いて裏門のほうから第二組合が場内に入つておる。こういうふうな事実なんです。これらに対してはどういうふうにお考えになるか。こういうことがこの組合争議に介入することになるとお考えになるか。或いはそんなことは何ら介入でないとお考えになるか。こういう点について私は伺いたいと思うのです。先ず以上を一つ十分御答弁をお伺いしたい。
  117. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) お答いたします。警察官出動の根拠、こういうことでございますが、先ほどから申上げましたように、二十一日以後出勤させましたのは、十六、十七、十九と不法侵入がありまして、これは私どもは業務妨害だと思つておるのでありますが、これは出動したことについての当否とは直接関係がなくともいいと思いますので、これについては御意見があるようですから、一応保留いたしておきます。少くとも禁止区域に数千名の者が乱入し、実力行使するということは警察といたしましては放つておけない状態である。且つ執行吏からも出動要請を受けておりますので、出勤させて事件を未然に防止する措置をとつたわけであります。これにつきましては、まだ十六、十七、十九の不法行為についての検挙対策というものを保留いたしております。これは組合幹部を一斉に逮捕すれば、組合争議の運行に相当の影響を与えるだろうということで今保留いたしておる次第でございます。従いまして、出動した根拠としまして、さつき言いました不法侵入というだけの根拠で十分であると信じております。  ピケに対する考え方をお聞きになりました。私は大体一昨日ですか、労働大臣の発表の線のように今まで解釈して参つておるのであります。なお警察官出動したら事件が殖えた、警察官が出たために、警察措置がそういう事件を多くさしたと、こういうふうな発言がさつきからもいろいろあるわけであります。私どもは非常にこれは心外に存ずるのであります。一番多くなりましたのは何と申しましても第二組合ができたことであると思うのであります、私どもは事件が起きて取拾しなければならないから出たのでありまして、不当に出たとは毛頭考えておりません。二十三日にピケを破つたと、こう言われるのでありますが、会社正門に相当のピケを張つて当然入る権利のあるものを入れないということは、これはもう争議の正当性を逸脱しておるものと私どもは認めておるのであります。その不当であると認めて、それが警察としてはどういう措置をするか、それを検挙するか、或いはそれを実力で排除するか、こういう措置につきましては、二十三日におきましては、無用の摩擦を避けて代表者を入れてやろう、代表者は執行吏の許可を受けて来ておるのでありますから、これを無断に通してやるのが、最小限度の犠牲を払うということによつて目的を達せられると、こういうことで、代表者を無事に入れるということに重点を置いたのであります。その方法として外に警察署長の指揮する一個大隊、内部に起動隊長の指揮する一個大隊がおつたのであります。マイクを通じて中の一個大隊外へ出て来いと、こういう命令を下しで出て来、そうしてその際に四列が二列づつに分れて中に入れた。これは組合側から言えば、或いは実力を用いたと言うかも知れませんが、摩擦を起さないで、代表者を入れるという一つの手段としてこれを選んだに過ぎないわけであります。  それからこれについて警察署長が陳謝したと言われておりますが、陳謝した事実はありません。九月二十五日に大勢の負傷者ができたのに傍観したと、こういうお話であります。これは警察官が当時出ておりまして、第一組合等は、第一組合のほうからは非常に抗議が出ておりました。警察がおるからあんなになるのだ、警察がいなければそんなことは絶対にないというふうな話もありましたので、できるだけ事前には置かないということで、当時は警察官を付近の四カ所の交番に分散配置いたしておりまして、そこへは私服の情報とか、写真をとるとか、十六ミリのフイルムをとるとか、そういうふうな私服を二十名程度置いておつたのであります。これから第二組合が入るという報告を署長が受けて、初めが部隊が到着いたしたのが一時三十一分頃だつたそうであります。丁度もう最後尾が実力で入つておるという状態のときに到着いたしたのでおりまして、この点については大勢の人が重軽傷を負いましたことについて末前に防止し得なかつたことは、私どもも大変遺憾に存じておるのであります。併しその際、その後その事件について全く捜査してない、第一組合行なつ不法行為については捜査検挙に着手していながら、これについては全く着手していないという話であります。私どもはこの捜査も進めております。すぐ臨床尋問に行つたのでありますが、重態だからというので断わられました、その後組合側の立会いの下に臨床尋問を行い、いろいろ捜査を進めておりますが、殊にこれは十六ミリに非常はよくとれておりますので、できるだけ早く完了いたしたいと思うのであります。こういう大勢の揉み合いでありますので、どの行為が誰がしたかというふうなことにつきましても、捜査は非常に困難を極めております。併し捜査はやつております。それから十月六日の御幸橋の上のピケラインの突破の問題でありますが、これは先ほど申上げました通り、両方が衝突するということを極力避けてもらうために私どもも知事にも再三お願いいたしまして、丁度地労委斡旋案も二日に出た。そういう状況でありましたので、何とかして大部隊の衝突を避けて欲しいということを非常に衷心から懇願願つてつたものですから、そういうふうにお願いして、何とか行政措置でもとつてくれということをお願いしておいたのであります。併し情報によりますと、十月五日にはどうしても入ると、こういう情報でありますので、又五百名の武装警官を派遣し、その際は第二組合員工場に入る許可証を全部持つております。そうして第一組合員がそれを実力で阻止することは従つて違法であります。ですから法律に従つて行動するものとしましては、適法のものを保護せざるを得ないのであります。私はもうこの段階であれば、実力ピケを突破してよろしい、但し何日くらいは警察が説得してやつてくれと、こういう命令を出して四日に警察官を派遣いたしたのであります。そして私は四日に上方に上京いたしたのであります。聞きますと、五日に一日かかつて、これは尤も午前中は組合同士の協議で午後になりまして、この御幸橋のところからじりじりと下つて、大勢が百メートルあまりのところを数時間かかつた。そして正門近くに行くときにはすでに四時を過ぎておつた。その頃もうこれでは放つておくわけにいかん。署長はもう実力で突破する。これを妨害すれば公務執行妨害罪になる。ここで一応決意いたしたのであります。会社側から今日は就業をやめるという話もあつて、第二組合は引返えさせたので、この日は無事に済んだ。従つて次の日はもう実力であげるという決心をいたしまして、その前の晩幹部会議を開いていろいろ研究いたしたのであります。その際に以前の私服員等の視察によりまして、第一組合員正門ピケを張ると同時に、前の茶津コートという広場に相当の人数がいつもおるわけであります。そこにいて第二組合員が道路上に来た場合に、茶津コートのほうから会社のほうに向けて押して行く、そうして会社と道路との間にある溝に叩き込むと、こういう策戦でその演習をしておるという私服員の報告に基きまして、これを予防するために一個大隊が早く道路と茶津コートとの間に一個大隊を配置すると、そういう配置計画を立てて六日に臨んだわけであります。そこに配置に行く際にその手前の御幸橋の上にピケがいる。で、警察官が第二組合が来る前にそこに配置するという必要上、道路交通取締法違反になるから開けてくれという警告をしたけれども、警告を聞かないので出力を以てそれを割つて中に入つた、そうして配置についたときに、その後第二組合は旧正門からどんどん入つて来た、それで事なきを得たわけであります。そういうわけで私どもはそれを蹴散らしたとか何とかいういろいろな言葉を使われ、いろいろの怪我人が出たとかいうふうな抗議も申込まれておるのであります。私どもといたしましては、私ども力の及ぶ限りいろいろ調査してみました。行過ぎがあればそれを措置することにやぶさかでないつもりでおります。なお組合側にも写真があるようだから、あつた一つ頂きたいという申入れもいたしておりますが、私どもの持つている資料等で見ますと、そういう泥棒で殴るとか蹴散らしたとかいう、そういうふうな状況は全く見られないのであります。以上を以ちまして……。
  118. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そこで先ほど私は、どういう一体根拠を以て指導されたかということは、その答えはあつたのでありますが、私の聞いているのは、いわゆる警察の権力を発動する場合と、或いは労働争義というふうな場合とにおいて、とれだけの一体心組を以て根拠としておるか、この点を聞いておるわけなんです。
  119. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) 私どもは治安を守るということが最重点でありまして、およそ不法行為があればそれを阻止しなければならない任務があると思つております。併しながら、ただ何かあつたらすぐ逮捕するとか、そういうことでみすみすそのことが組合運動そのものに大きな影響を与えるということはできるだけ避げようという気持で対処しました関係上、実は法律の執行という面から見れば私自身いささか手ぬるいと思つております。そういう大局を何とか崩したくないということで、逮捕状をもらつておる者も執行しないでおるわけであります。併し逆に言いますと、組合の幹部は争議の続行中はどんなことをしても逮捕されないということになつても困りますので、その点は非常に苦慮いたしております。
  120. 秋山長造

    ○秋山長造君 熊野さん、我々はこういう感じを受けるのです。二十二日までは大体小さい事件は間々あつたようですけれども、大体あれだけの大きな争議かああいう二三のガラスを破つたとかどうとかいうくらいな問題が発生した程度でずつと推移して来ているということは、取りも直さず組合争議をやる態度そのものも非常に他に比べて平穏というか、おとなしい態度、紳士的にやつて来ていると思う。ところが二十二日にこの半製品、強行出荷を援護されるために警官を五百名出された。そうして俄然、これは警官が出て来たからどうということを全面的に言うことはできないにしても、やはりあれだけの完全武装をした者が五百人も隊伍を組んで入つて来ることは、殺気立つのは当然です。その翌日に更に第二組合、第三組合ができるということは、これは労働争議にとつても又この組合にとつても実に生き死にの問題だ。だからこれによつて大いに殺気立ち、更に問題か大きくなつたということも、これはお言葉通り当然だと思います。そういう非常に殺気立つた、而も第二組合ができて第一組合との対立というようなものが非常に深刻に尖鋭化しておるような情勢の中で、如何に理由かあろうとも、警察が一方的に結果から見て第二組合側に立つような行動をやられるということは、これは争議そのものの解決に持つて行く大局を見誤つたものではないかという感じをどうしても持つ。だからそういう点から言うと、警察が故意か偶然か、恐らく善意であつたにしても、この争議に対して不当な介入をなさつたということを思わざるを得ない。もう少しこの第一組合と第二組合との非常な対立というような空気をほぐして行くために、かすに若干の時日を以てされる、もう少し警察のほうが慎重にされたほうが私はこういう衝突事件なり、或いは問題を更に三巴にしてこんがらかすようなことにならずに済んだのではないかというように思うのですが……。
  121. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) これは見方がいろいろあると思うのでありますが、私どもが警察官を出しましたのは、半製品搬出阻止を、それを不法行為を防止しよう、あのときには命令を、これは私と方面本部長と一緒にこういうことで行こうということで出したのであります。事前措置をすること、中へ入れたのを追い払うとかいうふうになると犠牲が多くなるから、皆入れない態勢をとれ、そうしてその際に組合員が万が一公務執行妨害行なつても、これをできるだけ事件にするな、犠牲者を最小限度に食いとめろ、そうして済んだらすぐ引揚げろ、こういう命令で、出したのであります。たまたま二十三日に第二組合が結成されて様相が一変いたしたのであります。併し二十六日の台風休戦をするということで、私ども一日も早く引揚げたいものですから、引揚げたわけです、その引揚げてから二度目に、四日に警察官が出すまでの間に非常に多くの不法行為が行われているのであります、私どもはむしろあれは引揚げないで事前措置を、そういう個々の不法行為を事前に防いだほうがよかつたのではないかというふうに反省いたしているような次第であります、見方はこれは主観的なものですから、どう御解釈されようと仕方がありませんけれども、私はむしろ少し大事をとり過ぎておるというぐらいに思つております。
  122. 秋山長造

    ○秋山長造君 それからもう一つ、若木委員への御答弁でピケの御答弁があつたのですか、ピケの解釈については労働大臣の一昨日の声明を大体支持される、こういうことですが。その点は齋藤国警察官にお尋ねしたいのですが、齋藤長官もそういうお考えでやつておられるわけですか。
  123. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) ピケの合法性、それからどの程度になればこれが違法になるかという見解は労働大臣の談話で発表されたのと我々の見解は全く一致をいたしております。で、これは労働大臣が言う発表をされて、そういう意見が一致したのでなくして、従前からピケは平和的な説得の範囲にとどまるべきである、それを超えれば違法になる、こういう解釈をいたしております。
  124. 秋山長造

    ○秋山長造君 平和的に説得する相手は組合員であるなしにかかわらんわけですか。
  125. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) 抽象的に申せばさようでございます。併しながら具体的の場合、争議関係のない第三者、商人とか或いは当該事業所の中に入つて行く一般者というものに対する説得、これは私はその何といいますか、極めて緩な説得でなければならないと考えます、併しながら、例えば第一組合、第二組合と分かれる、そういつた場合、第二組合が入ろうとする場合に、説得するというような場合につきましては、これは私は或る程度の説得はよろしい、併しながら、これもおのずから限度がある、かように考えております。
  126. 秋山長造

    ○秋山長造君 そうすると、齋藤長官の方針は、ピケは必ずしも組合員だけを相手にしたものでなくして、組合員以外のものに対しても有効なものである、それから更に、又純然たる組合員以外の人たちのうちでも更に純然たる第三者、まあ第三者の中でも、一番第三者、そういう人たちに対しては、やつぱりその手段としては緩慢なる説得であろうとどうであろうと、ともかくもピケは有効である、こういうことでございますか。
  127. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) 有効と申しますか、緩慢な説得、今こういう争議状態ですから、一つ御同情頂いてお入りにならんようにということは、これは私はそう違法であるとは思いません。併し、その場合、いや、そういう事情だけれども、おれはこういう理由で入るのだというのならば、ずつと通すべきだと思います。その場合、スクラムを組んで、いや待つてくれ、それはもう少し我々の言い分も聞いてくれとか、執拗にやればこれは威嚇業務妨害になるものと考えます、併しながらただ一応の説明をし、了解が得られないかという程度のことを話かけることは、これは私は特に何と言いますか、警察でタツチしなければならないほどの違法性があるとは思いません、先ず公認行為だと、こう思います。
  128. 秋山長造

    ○秋山長造君 だから結局この組合員以外の第三者とは一口に言つても、その中に段階がある。例えばこの争議なんかの場合は、一体第三者という以上は、争議の当事者と無関係な人を第三者と、こう考えなければならん。ところがこの争議の場合は、つい昨日第二組合が、でき、而もその第二組合のでき方についてもいろいろこれは問題があると思うのです。併しともかくも昨日できた第二組合だから、これは果して純然た第第三者であるかどうか、私は第三者じやないと思う。むしろ先ほど熊野さんがおつしやたように、第二組合ができたために、この問題を一層大きくし、そうして殺気立たせたという話があつた。全くその通りだろうと思う。だからこれは第三者と言えるかどうかわからないくらいの第三者だろうと思う。だからそれに対して、組合が単に平和的な説得というようななまぬるいことを、今ここでお互い冷静に話するときは、そういうことも想定できるけれども、実際当時の殺気立つた空気の中で昨日できて来て、そうして我我のスト破りのような行動をはつきりとつている第二組合に対して、平穏な、緩慢な説得ということは、これは言うほうが無理だと思う。これに対して組合がこのスクラムを組み、或いは座り込みをやつて、それに対する自衛手段をとるということは、これは許されていいのじやないかと思う。その点如何ですか。
  129. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) 私は第三者と申しました中には、只今の第二組合の人たちは入らないと思います。むしろ緩慢な説得でなしに、相当或る程度の説得は当然であるというほうに入ると、こう考えます。併しながら先ほどからの説明にもありましたように、或いは平日かかつて互いに談じ合つた、それで交渉がつかない。一方はどうしても入ると、こう言う。警察は更に半日かけてこういうわけだから、もうここまでなれば説得の段階を過ぎているのじやないか、そうしてのちに初めて聞かれないというので、もうこうなれば違法と認めざるを得ないというような措置をとつているのは、とにかく私は極めて適切だと考えています。一日も半日もかかる、或いは代表同士が話合つて、そうして話がつかない。そうして一方はもうどうしても入るということであれば、これをそのまま放つて置けば、結局障害事件が起るにきまつている。さような説得はさような段階になれば、もはや私はさような段階になつてなおスクラムを組み当事者を入れないという状況にあるときは、これはもはや平和的な説得の段階を過ぎているので、これは警察がそういう事態を排除をするというのが当然の措置だと考えます。
  130. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、この長官の答弁を裏返して考えると、結局まあ緩慢な説得或いはもう少し強い説得を、いずれにしてもこれは五十歩百歩なんで、大した効目はないことはもう初めからわかり切つている。そういうことでですね。結局第二組合ができれば、自由に出入りをさせなければいかんということになれば、もはや労働者に与えられたこのスト権なんか、争議権なんかというものは意味がないのじやないか。それだつたら何もピケなんか張つてる意味はないので、うらに帰つて寝転んでいるのと同じわけになるのじやないのですか。
  131. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) これは私はいわゆる労働省関係のそういつた法的解釈なり、或いはそれで一体労働争議というものはやれるものであるかどうかという問題に私はなるのだろうと考えますが、今日の法制の下では、ただストというのは労務を提供しないこと、それについて他の人が労働を提供しようとするのを、或る程度平和的に説得しようということを事実上認めるというだけのことであつて、労働を提供しようとする人たちが断固たる決意を以て提供するというのを、実力を以てとめるということになれば、これは違法性はどうしても存在して参ります。それが争議手段としては弱過ぎるというのであれば、私はこれは法律の問題であつて、取締りの問題ではないと、かように考えます。
  132. 秋山長造

    ○秋山長造君 ただ今の長官のような考え方は、これが会社が例えば全然新らしい労働者をどこからか雇つて来るというような場合には、或いはそういう解釈ができるかも知れません。ただ併しこの場合は、これはもうはつきりした第二組合であつて、要するにこれはスト破りであることははつきりしてるんですよ。で、そういうスト破りに対してまで組合が全然有効なピケを張れないのかどうかということは甚だ疑問なんです。で、例えばそういうことを防ぐために、アメリカあたりでもスキヤツプを雇うことは、法律的には禁止しているというような例さえもあるわけです。外国の労働組合は大体企業外組合でやつておるから、ピケに対する考え方も、おのずから扱いも違つて来るかとも思うけれども、併し日本の場合はそういうことでなしに、すべての労働組合が企業内組合であることは、御承知の通りなんです。だからこういう日本の実情から考えた場合は、ただ平和的な説得即ピケの効果であるということでは、私は済まないのじやないか。平和的説得以上に、やはりスト破りを防ぐという有効な途が認められなければ、労働組合法なんか作つてつて行く意味はちつともない。その点はどうですか。
  133. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) ピケの限界は平和的説得の範囲にとどまるべきであるということがすでに判例にもあるわけであります。従いまして平和的な限度を超えてまで、そういうものを実力で阻止できるということが法律になければ私は許されないと思います。実力で他人の自由を拘束するということは、これは憲法に保障されたものでありまして、労働争議のためには、そういう個人の自由も或る目的のために制限をされなきやならんというと、そういう私は立法が必要である。今日はそういう立法がございません。ただ事実上平和的な説得で同情を求めて、それによつて意思の飜意をしてもらつて、そうして仕事をしないということの限度は、これは実際の問題として本人が同意するわけでありますから差支えない、こういう限度で許さるべきものだと、かように解釈をいたしております。
  134. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 今のストの限界の問題につきまして長官に伺いたいと思うのでありますが、抽象的には組合員が対象になる。併し具体的にはということで、だんだんだんだんそれが緩和されて来ておるようでありますが、この可は労働大臣の声明とは一致しておるのですか。
  135. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) 私は違つておるとは考えておりません。
  136. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そうすると労働大臣の場合も私は確かに、労働大臣に聞いたわけでないからわからんのですが、新聞で見た範囲では、組合員が対象である、こういうふうに出ておつたように思うのです。今あなたの説明では、組合員以外の者、第三者でも差支えない、こうなつておりますが、これらの点について。
  137. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) それは通常、何と言いますか、その御理解を頂いて、おとまりを願いますという程度を、その阻止或いは説得というものに見ておられない見方で言われたのだろうと思います。だからあとのほうの点だけを言われたのだと、その場合にも平和的にとどまるべきだと、こう言われたのだろうと思いますが、労働大臣のあのなにを厳格に解釈をして労働者以外の、いわゆる第三者に、いやしくも今日はこういうわけで我々はストをしておるから、同情をして入らんようにしてもらえないかというように言えば、即違法になるというふうには思つておりません。労働大臣はそこまで考えて言つておるとは思いません。
  138. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そこで平和的な説得というふうなことの限界になるわけでありますが、今、長官がそういう判例もあるというふうなお話なんですが、私もここに判例を持つておる。それでこの判例によるというと、こう出ておる。「組合内の多数決主義を無視し、組合の正当な争議行為を侵害する脱退派組合員の創業を阻止するために争議派のものが坐り込んで、これを妨害することは正当な争議行為に属する。これは三友炭鉱と言いますか、こういう判例が出ておる。それから更にそういうふうな非組合員に対するこういう判例も出ておる。「説得の言動が多少粗暴に亘つても、正当な限界を逸脱したとは考えられない」こういう判例がやはり別な事件にあるのです。そういうふうなこの判例から見まして、最近におけるところの労働大臣の談にせよ、又今の長官の答弁にせよ、非常にこれらと変つて厳格になつて来ておるのじやないか。これは一体どういう理由があるのか。これを更に進めて行けば、これは終局においてはそういう警察の介入によつて争議行為というふうなものも全く否定されてしまう場合があり得るじやないか、そういうふうに心配するのであります。その点如何ですか。
  139. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) 只今の三友炭鉱事件の裁判は今上告中だと聞いております。すでに私が申しましたように、平和的説得の限度にとどまるべきであるという判例が他に二、三できておるのであります。我々といたしましては最終的に実力を以て阻止するということは違法である、こう考えております。
  140. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それで結局は私は三友の場合を一つ挙げたのでありまするけれども、従来のピケに対する考え方から比べまして、最近においては非常に厳重になつて来た。これは一体如何なる理由があるのか、これはあまり厳重にして行けば、労働組合なんていうものは出る場合がなくなつてしまう。これをどう懸念されておるか、或いはこれはもう時代の進運と共に当り前の話だとこういうふうにお考えになつておられるのか、その点長官に伺います。
  141. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) 私は最近は得に厳重になつて来たとは考えておりませんが、先はどからもお話がありましたように、最近の争議はどこまでも法律の限度を守る守らないは別として、我我の争議に不利になる事柄は、どこまでも実力を以てやり通すのだという気風が相当ひどくなつて来ておるように思います。そうでありますからピケのやり方も以前よりはひどくなつて来ておる。さようなわけでありまするので、警察といたしましてもこれに対処をしなければならない事件が多くなつて来る。かような結果であろうと思います。
  142. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それはなかなか都合のいい御答弁だと思うのでありますが、結局あなたがそういうふうに労働組合の側をお考えになるということになれば、その根本が一体どこにあるかということも私は考えなきやいかん。そういう点を十分考慮して、私は警察或いは労働省のやり方もそういう点を十分慎重にやつて行かなければならない点がある。一概に片方がひどくなつて来たから俺のほうの取締もひどくしなければならんという行き方はちよつと私は考えものだと思う。  そこで私は本部長に対する質問を継続しますが、簡単に二、三点ばかり。さつきの御答弁を対象にして、今のことが今度のあなたのほうのあの警察出動に重要な関係を持つて来ておると思うのです。それでさつき二十三日の日のこの円滑な第二組合の幹部を入れるためしああいう方途をとつたのだと、これはまあ一つのあなたのほうの手段としてはそういうふうなことも考えられるかも知れない。併しそれが労働組合のあり方というものに対してどういうふうに影響を及ぼすか。将来どういう禍いを来すかということを十分検討しないでやるというと、大きな過ちをここに来す。こういう点から見てああいうところの一つの手段は私の危惧する方面に行くのじやなかろうかとこう考える。同様に十月六日もはやこれは実力行使しなければならない、この決意を持つたこの問題も、今のピケの問題と同様に行き過ぎれば、非常な日本の労働界の将来について過ちを来たすことになる、こういう点が本部長さんとしてまあ私から言えば検討の仕方が不十分であつたのではないか。同時に将来こういう点についてはまだ争議も続いておるのでありますから、十分一つ慎重にやらなければならない点があるのではないか、こう考えるのです。以上です。御意見ありましたら伺いたいと思います。
  143. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) 今の争議の違法性の問題だけでなく、室蘭の日鋼の問題におきましては、片方ははつきりと入門許可証を、執行吏による入門許可証を持つておるのでありまして、私はビグがあの段階で行けは違法であると、だからすぐそれを実力を以て突被してしまうというふうな断定を下しておるわけではないのでありまして、入門許可証を持つた当然入る権利がある者をできるだけ円滑に入場させなければならないのじやないかというふうに思つておる次第であります。この争議行為にできるだけ影響を与えまいという問題で、私ども今考えておりますのは、今保留いたしておりますのは、逮捕、検挙の問題について、これは事件によりましてはすぐ、事件が起ればすぐ検挙しなければならん問題ではないからというわけで、これはまだ慎重に検討いたしておりまするが、こういうふうな入つて仕事をすると、そしてそれは公の機関である執行吏から許可証をもらつておる、これは入れてやるのが当然じやないかというふうに考えておる次第であります。
  144. 加瀬完

    ○加瀬完君 もう各委員から出尽されたのでございますが、警察当局に二、三点伺いたいと思います。今本部長さんもいろいろ御説明があられたのでございますが、確かにこの暴行事犯、或いは刑事的な事犯、違法事犯こういうものに対しておとりになつた方法が形式的に間違いがあるというふうにはならないと思う。併しおとりになつたような御態度、御方法でこの問題そのものが解決したかということになりますと、問題のものの解決には又ならないということも言い得るのじやないか。そこでたびたびこの委員会でも問題になりましたのは、もつと警察権の介入が労働争議に及ぼしますときには、労働争議の内容というものを勘案しないで、ただ形式的な通り一遍の、失礼な申し分でありますが、法律解釈だけで解決がつくかということに勘案をして頂かなければならないじやないかというふうに私は考えておるわけであります。そういう立場で伺いたいと思います。で一点は、この会社通告の解雇者は新組合員の中には何人おられたか。二点は、賃金を切下げてもよいから整理案の撤回をしてもらいたいと、そしてそういう意味の団交をしてもらいたいという組合からの中出があつたそうでありますが、会社はこれに応じなかつた。又その整理案そのものは四人に対して一人というたびたび各委員から出ておるように相当過酷な整理でございます。こういう点を警告当局はどういうふうにこの争議の焦点というものを把握されたのか。第三点は、会社側の御説明にもありましたように、会社は大損害を受けるので、注文先からの矢の催促もあるので半製品の積出しをした。これは正常な業務行為とは思われないのでありますが、この点如何でありますか。第四点は、所轄の警察署にだけ任せられないで、本部みずからが出動をいたしましたのは、組合組合意思として暴力行為をするという御前提に立つてなされたのか。この四つの点を先ず伺いたいと思います。
  145. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) 争議の内容について深く研究すべきだというお話につきましては、それは全部把握していれば非常にいいかとも思うのでありますが、争議の把握、そのほうに余り力を入れますと、却つて私は誤解を受けるんじやないかとも思いまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)積極的にはその方面には私は研究をいたしておりません。ただ、第二組合員の中に解雇者がどのくらいというのは、八、九十人ではないかというふうに見ております。それから会社が半製品を出すということは正当の業務行為であるかというお問いに対しましては、私ども今のところ正当の業務行為であるという結論を持つております。最後のちよつと……。
  146. 加瀬完

    ○加瀬完君 所轄の警察署に任せられないで、多数本部から出動せられましたのは、組合組合意思として暴力行為に出るという決定がされたという前提に立たれてか。
  147. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) これは御承知のように前三日間そういうことをもう現実にやつておるのでありまして、私はそれをすぐ逮捕、検挙しようということでなしに、再びこういうことが足らないように事前措置をとる、こういう方針で行つたわけでございます。
  148. 加瀬完

    ○加瀬完君 先ほどの御説明を承つておりますと、個々の暴行事犯というものは組合意思ではなくて個人の感情、その他の関係発生したものだというふうに了解をしておるわけであります。そうしてみますると、今本部長さんのおつしやられるこの何回もあるし、そういうことが計画されておつたというのは、このピケの問題ということになると思うのですか、さように解釈をしてよろしいですか。
  149. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) これは九月十六、七、九の半製品搬出阻害事業のことについてでありますか。
  150. 加瀬完

    ○加瀬完君 先ほど争議の内容を知るということは不必要なことだ、むしろいけないという御意見が述べられたのでございますが私がその問題を申上げましたのは、例えばこの第二組合の性格といつたようなものがわからなくては、このピケの問題に対する措置というものも本当は核心を突くものが出て来ないと思う。そういう意味合で争議解決するということでなければ、本当の問題の解決ができないということならば、ただ事犯を処理するということよりも、事犯を処理するということは警察の行政の中で当然でありますがその背景をなすものをよく知らなければ本当の事犯の処理もできないではないかと、こういうふうに考えておりまして、特にこのピケの問題が出ておつたわけでありますが、第二組合の性格というものをどれたけよく知つてつて、当然なこれが行為であるという御認定に立たれたのかということを聞きたかつたのであります。その点……。
  151. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) 当然というこの内容がいろいろにとれると思うのであります。これは法律的にできたものは法律上、法律上といいますが既成事実として当り前、当り前といいますか、感情でいえば第一組合員からは非常に刺戟したことはあると思うのであります。できたものはできたものとして、その事実を出発点として考慮せざるを得ないと私は思います。
  152. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは若木委員からも出ている問題で、重複するのは悪いのでありますけれども、そういうお考えでありますと、逆に労働法で保護しております組合の団結というものは、会社側が幾らでも会社の御用組合を作れば、もう全然初めの組合は労働権の保護というのはなくなるということにも解釈できないわけじやない。そういうお立場をおとりになつてよろしいのか。これは警察庁長官お答え下すつて結構です。
  153. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) 労働権の行使といいますか、或いは労働争議を有効に、例えば労働者側がかつとるためにどうであるかという点は、我々取締りといたしましては、これは余り判断に加えちやいけないと思つております。法律の許しておる争議手段はどこまでであるか、これを逸脱をするということは、法治国としては相成りませんので、逸脱をしないように予防し、或いは逸脱をすれば制圧或いは検挙をするということはどうしてもやつて行かなければならん、警察といたしましては、さようなことであります。
  154. 加瀬完

    ○加瀬完君 それはよくわかる。そこでスト破りのための組合というようなものが仮にできたとして、それをピケで守つているときに、このピケは全然無効である、できてしまつた組合がどういう組合であろうが、これは当然組合としての存在があるのだから、それに対してピケを張る意義はないのだという御解釈をおとりになられているように先ほどからの御説明で考えられるのでありますが、そう考えてよろしいのですか。
  155. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) 私は、御質問の前提にピケというものは実力行為で、どこまでも阻止し得るのだという御解釈に立つておられますから、そういうことになんのではないかと思うのであります。ピケは合法的な説得の範囲というわけでありますから、これに暴力が伴つたり、或いは実力でどこまでも抵抗を阻止するという事態になれば、これは第二組合に対してであろうとなかろうと、違法になるのは私は当駅だろうと思います。
  156. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は御指摘のように暴力、ピケのために暴力を行使しても、そのピケが有効だということを主張しようというのではないのであります。スト破りの組合員というものを阻止するためにピグを張つておる。併しこのピグは有効でないからといつて警察がこのピグ破りに加担をするという形をとることが一体正当かどうかということを聞いているのです。
  157. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) そのピグ破り、スト破りを防止するためのピグが合法的な範囲においては私は差支えがないと思う、併しそれが合法の域を越えれば、警察としては処置せざるを得ぬことになります。
  158. 加瀬完

    ○加瀬完君 今度の問題は、第一組合によつて張られておつたピグが初めから非合法であつて、あなた方が出動されたのか。
  159. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) たびたび申しておりますように、最初ピグを張つて第二組合が入ろうとするのをちよつと待つてくれ、話し合つてくれ、この段階は私はまだいいと思う。これは併し半日もやり或いは一日も説得してどうしてもそれは聞けない、おれたちは断固としてもう入るのだ、こう決意をしてしまつた以上、これを実力でとめるのはこれは合法の範囲を越えると思います。
  160. 加瀬完

    ○加瀬完君 本部長の御見解はそうではないように私は聞いたのです。それは当然工場の中に入る資格を持つて入ろうとしておるのであるから、これを阻止するのはいけない、これは業務妨害だ、こういう御判定なんです。
  161. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) これはそう大して違わないと思います。熊野本部長も、説得をするのに或る程度の時間をかけさせろ、こう言つておるのですから、とにかく組合は許可証を持つておるから、初めからら入つてしまえという命令を出すべきであるのに、半日、少くとも半日くらいは説得の時間をかして、それでも聞かなければというように言つているから、その点は相違はありません。
  162. 加瀬完

    ○加瀬完君 ピグが正当だと認めるならば、半日で交渉ができないならば、警察斡旋して、もう半日でも一日でも両組合交渉によつてこの問題を解決するという方法をとつたつてとられないことではない。そうではなくて、初めから……ピグは正当だと今に言うけれども、このピグは非合法だということを前提にするからこそピグを破つて入れるということになるのでありませんか。
  163. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) これはやはり事実問題で……。
  164. 加瀬完

    ○加瀬完君 事実問題として……。
  165. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) なんぼ説得されても我々はもう断固として入るのだということになつておれば、警察はそれ以上斡旋するということは無駄であり、当然入るべきものを又警察がむしろ加担をして入らせないようにするということにもなるわけです。それは或る程度の常識に持たざるを得たいと思います。
  166. 加瀬完

    ○加瀬完君 御説明によりますと、こういうことが新聞紙では伝えられておる、ピグは正当だ。第二組合員就労権も正当だ、私はこの両方が正当だということはどうも成り立たないように思う。警察はどういう御見解なんですか。
  167. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) たびたび言つておりますように、ピグは平和的説得の限度においては正当だ、その域を超えれば違法だ、こういうわけです。
  168. 加瀬完

    ○加瀬完君 その平和的説得ということは、結局第二組合のようなものに対して阻止するということを、何と申しましようか、してはならないというふうなことであるなら、ピグの性格というものは全然なくなつてしまう。それをしもあなたは第二組合の阻止ということは、正当な域を脱するものだというふうにお考えになるのですか。
  169. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) 私は現在の法律では、第二組合といえども、第二組合といえどもということはおかしいかも知れませんが、第二組合の人たちはやはり争議中でも労働をするという私は権利があるものだと思つております。それを説得の方法で、ピグを張つて平和的説得の方法で入らないようにするというこの限度においては正しいわけである。飜意をしてくれないか、併しそれが平和的説得の限度を越えてどこまでも実力でということになれば違法になるというのは、私は今日の法律の解釈であると考えます。
  170. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは具体的に伺いますが、第二組合がスト破りをしようとしたときに、これを阻止することはできないという判例があるのですか。
  171. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) 判例には、平和的説得には実力的に最終的に阻止をしてしまうという、こういう権能を含んでいないという判例がございます。
  172. 加瀬完

    ○加瀬完君 第二組合のスト破りはこれは阻止していいという判例と、今長官のおつしやるような判例とどつちが数が多いのですか。
  173. 斎藤昇

    説明員(斎藤昇君) 私はまだどちらが数が多いか調べておりませんので、調べてからお答えいたします。
  174. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この問題は非常にデリケートな問題で、まあ第二組合は必ずスト破りだ、或いは第二組合は必ず御用組合であるという、そういう断定に立つて議論する場合と、第二組合でも或いは民主的労働組合のあり方という点で、現在の指導部に対する不信という店から出て来るならば、私はそこに或る程度考えなければならない問題があると思うのですが、そういう一般論は別として、先ほどどなたかの言葉に、第二組合会社から金をもらつている、金銭的な利便を与えてもらつているというお話がありましたけれども、これはそういう事実があるでしようか、所長さん如何でしようか。
  175. 柳武

    参考人(柳武君) 全然ありません。
  176. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 第二組合のほうではそういう事実をお認めになるのですか。
  177. 青野二郎

    参考人青野二郎君) そういう事実はございません。
  178. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうすればもう一度お伺いしますけれども、会社と何か、金銭的な利便は与えられていないにしても、会社から特に頼まれたとか、或いは会社と通謀して第二組合を作つたというようなことはないのですか。
  179. 青野二郎

    参考人青野二郎君) そういう事実もございません。
  180. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうすると結局これは信念の相違で、第一組合争議に対する考え方と、或いは闘い方、こういうものに対して不満である、こういう点から第二組合が結成されたと、こういうふうにそこで了解してよろしいのですか。
  181. 青野二郎

    参考人青野二郎君) さようでございます。
  182. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そこで私たちは第二組合という問題が、見方によつてそれがスキヤツプである、こういうふうに見る場合もあります。併し、例えば他の争議の場合に、まあ例をとつて言えば日産自動車のストライキというような場合におきましても、第二組合がいわゆる第一組合の指導に不満足であつて、それが第二組合を作つて、それがきつかけとなつて現在では大部分が第二組合、つまり現在の組合に合流しているという事実もあるようでありますから、ここでは私は何とかしてこの争議を早期に解決するために、第一組合も第二組合も一緒になつて会社側に当つて争議の早期解決してもらいたい、これは希望ですが、そこで警察本部長にお伺いしたいのでありますが、只今いわゆるピグの問題を中心としていろいろ論議が闘わされましたけれども、私の見地からいたしますならば、勿論こういうふうに第一組合及び第二組合というふうに分立しているという場合には、その組合員同士の間の治安というものは、これは勿論心配する問題がたくさん派生するだろうと思う。併しまあ警察本来の使命からいうならば、直接争議に介入することなく、むしろ遠巻きに治安全体というものを確保するために行動すべきじやないか、現実には第一組合及び第二組合の直接のまあ実力闘争という形になつておりますから、それを傍観するというわけに行かないことはよくわかります。併し私たちは、先ほどもいろいろ心配がありましたように、室蘭或いは得に日鋼周辺の治安の問題、この問題をむしろ警察としては本来の使命として、あとは成るべく、これは警察権限ではございませんけれども、第一組合及び第二組合は相互に話合いの上で行動するというふうに遠巻きにして、むしろ治安の維持ということを、全体に対して警察としては働きかけるべきではなかつたか。直ちに武装警官を動員して、それが直接第一組合、第二組合というものの対立の真つただ中に入つて行くという、その行為がやはりそれぞれの組合員を刺戟して余計な衝突或いは摩擦というものを起したのじやないかというふうに考えるのですが、他の応援の、まあ問題以外の全体の治安の維持に対して、警察はどういう方策をとつておられるのか、とつて来られたのか、この点について御答弁を願いたいと思います。
  183. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) 御趣旨の通りに、初め第一組合、第二組合の問題には直接出まいと、こういう措置をとりましたところ、二十五日にああいう不祥事が起きたのであります。現実にそういう不祥事が起きて、その後五日、六日と、やはりそれより大規模な摩擦が起きるということが当然予想される際に、治安をあずかる私どもとして、そういう不祥事を事前に防止しようということは私どもの義務だと思つて、そのとき初めてそういう措置をとろうといたしたのであります。その後若干のいざこざはありますけれども、正門は飽くまで通さない。併し艇で通つたり、ほかの門から入つたりして、一応大きな正面衝突を避けておりますので、現在ではその方面に部隊を出しておりません。現在は二百十名余り警察官応援した警察官は、全部居住の住宅街に派遣いたしておりまして、臨時交番を設けて昼夜警戒に当らしておるようなわけでありまして、根本趣旨は仰せの通りでありまして、二十五日の不祥事から鑑みまして五、六の措置をとろうと決意いたした次第であります、併し結果から見て幸わいなことには、直接警察正門のピグを突破せざるを得ないという事件は起しておりません、そういう状況であります。
  184. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私はやはりあとで大不祥事が起つた後の警察態度というものが本来の態度であろうと、こう思います。警察が直接第一組合及び第二組合の中に入つて、お前たちはこつちの道を通れとか、或いはお前たちはそつちのほうでピグをやつているということを言うことは果して適当であるかどうかわからない。けれども事前にやはりそういうふうに第一組合、第二組合が正面衝突をしないように警戒体制を整えるということは、警察としては当然ではないか、こう思うのですが、そこで居住地におけるいろいろの不祥事というものは現在でもまだ起つているわけですか、或いはその後ずつと数が少くなつているかという点……。
  185. 熊野徳次郎

    参考人熊野徳次郎君) 警戒を強化いたしまして殆んど事件が曲つておりません。
  186. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私はもうこれ以上は質問いたしませんが、警察はできるだけ第一組合、第二組合が正面から衝突するのでなければ、もういわゆる争議に直接警戒するとか、或いはそれに介入するという言葉が適当であるかどうかわかりませんが、介入することから手を引いて全体の治安の維持ということに携るベきであつて、それから後は第一組合、第二組合が、何としても相当長期末に亘つている、この争議については、収拾の途を講ずるということに努めて頂きたい、こう重います。
  187. 伊能繁次郎

    伊能繁次郎君 大体最後の松澤委員のお尋ねで、私の伺いたいと思つた点は尽されていて、最前どなたか地域人民闘争だとか、そういう事態にまで発展しそうだとか、行われているという、そういつた問題も、熊野本部長のお話ではそういう事態はないということで、一般的な治安の確保についても、大変御心労願つている点は、我々も非常に結構だと思つております、又社宅街についての特別警備の問題にまで十分御配慮を願つているということで、恐らく室蘭市民も最近では安心しておるだろうと思うのですか、一つ池浦さんに重ねてお伺いしたいのは、最前同僚の伊能委員からもいろいろお尋ねがあつたのですが、明快な御答弁がない。これは私ども非常に残念で、今日御列席になつ方々はそれぞれ直接若しくは間接の当事者と申上げてもいいのですが、池流さんだけは完全な第三者ですから、そこで或いは介入の事実があつたのか、或いはなかつたのかというような問題については、松澤委員から最終的な御意見が出ており、私ども全く同感ですが、こういう事態室蘭に起つた、それについて池浦さんは、経済的な影響がかくのごとくだということを極めて詳細に述べられた。そうすると、同時に、一般市民がこの問題についてどういう不安を抱いておつたかというような点についても、恐らく耳に十分入つておられるのじやないか。この点を私は第三者として率直に、今度の事件についてあれだけの事態を起し、社宅街はいろいろと暴行その他のことが起つておるということがすでに新聞だけでなく、週刊朝日その他にもたくさん出ておる。こういう点について市当局として、曾つて市警があつた時分ならば、当事者であられるはずであるし現在は府県警察、道警察になつているから、当事者外におられるのですが、市全体を平和に維持して行こうという際において、この問題について市民がどういうような感じを持つておられるかという点について、若しもう少し明確な事情をお述べ頂ければ、是非この機会に述べて頂きたい、かように思う次第であります。
  188. 池浦俊彦

    参考人(池浦俊彦君) 私、先ほどその点申上げたと思うのですが、説明が極めて不適当で不十分であつたのではないかと思うのでありますが、勿論私は当初、経済或いは産業に及ぼす影響というものを申上げまして、そのあとで、それに足しまして、いろいろ治安事情の問題についてもお尋ねにお答えした通りであるのであります。東町におきまするいろいろな事件、その他第一組合、第二組合等との分れたといつたような問題は、これはもう十分今のお話で、刊行物等で御覧になり、且つ又私どものここにおられます参考人からそれぞれ十分当事者から詳細にお話があつたわけでございます、それはそういう事案は頻発はいたしたのであります、先ほども申し上げましたが、特に第二組合が結成されまして以後では、そういう事件がはつきりといろいろな形で現われて参つたのでありまして、特に炭鉱方面から参りました、共闘傘下に入りました友誼団体と申しますか、そういうかたがたの来蘭に対しまして、室蘭に入つたことにつきましても、市民が非常に不安感に襲われたことは事実なのであります、従いまして何と申しますか、一日も早く終えてもらいたい、もう少し具体的に申しますと、まあ今までは経済的な問題からのみこの事件争議というものの早期解決がむしろ叫ばれて来た、つまり争議解決の重点が、室蘭市の産業経済というものが破壊されるのだという点に重点があつたわけでありますか、そうしたような社会不安が現象的にいろいろな点で現われて参りましてからはむしろそうしたようなことが非常に室蘭市が何か血ぬられるようなことがあつては困る。何とかこれはやはりしてもらわなければならん、これははつきりした市民感情であつたと思うのであります。従いまして、市民の一部に対しましては、或いは警察が何をしておるのだろうというような声があつたことも事実でございます。併しそれが強い声として反映したかどうか、そこまで私は寡聞にして存じませんが、市民感情といたしましては、何とかそういうようなことのない明るい町にしてもらいたい。それから争議というものはおのおのの権利を主張するものであるから、これは止むを得ないにしてもそうしたことから、感情的にいろいろな悲惨な事態発生することは、とても堪えられないというような気持であつたろうと思うのであります。殊に組合員、あれは第一のほうに属しておりました組合員が、この問題にいろいろ苦労の余り、自殺を遂げたというような悲惨な話もありまして、そうしたような市民が暗い気持にまあされておりますときに、その問題を謝罪するというような意味からも、先ほども御発言があつたようでありますが、かなり強硬な第一組合に対する話があつた、それらのことも目撃した一人の市民から私聞きまするというと、実に耳を蔽いたくなるようなものもあつた。これはこんなことをしておれはしないのではないかというような話が出まして、市も、或いは議会も、治安維持のためにもつと強く当局者に申入れをすべきではないかというようなお話もあつたことは、事実であります。個々の具体的な問題につきましては、私ここに資料もございませんし、むしろそのほかのことはここで申上げた通りであろうと思いますので、お許しを願いますが、現在におきましては市民はひとしくあのようなことの頻発せざるようにということは、一応、全市民の一致した感情であろうということは、これは否めない事実であるのであります。
  189. 内村清次

    委員長内村清次君) ほかにございませんか。  それでは委員長から申上けますが、実は当委員会におきまして、今回の日鋼室蘭製作所争議に対しましての警察関与に関する問題を取上げましたことは、今回の争議の様相というものが複雑であり、而も非常に長期に亘つておるというようなことで、その影響も、決してこれは喜ぶべきでなくして不幸な事態であるからして、その解決はどこまでも自主的な会社及び又労組との間でこれは努力されて、早い解決を希望するけれどもが、警察が若しも不当な関与をやつて、この争議というものが長くなつておりはしないかというような点も一応、当委員会として審議をする必要があるというような見地に立ちまして、今日御遠路のところ、而もまだ争議の最中に、参考人としておいで頂きまして、各委員のお方々の質疑に対しまして十分とお答え頂きましたことにつきましては、委員長といたしまして誠に感謝に堪えないところでございます。  ただ本委員会といたしましても、この警察関与の問題につきましては、前に二回ばかりの問題に対しまして審議した経緯もあるのでございます。その際にいろいろの、その事件の問題点は或いは異なつてはおります、いろいろ併し酷似な点もございますが、そのときに委員会といたしまして、実は警察側に対しましても、或いは又は労働組合に対しましても、或いは又は会社側というような点に対しましても、これは委員会の一致の要望をいたしておつたわけでございます。その点は、警察側に対しましては、いやしくも労働者の権利に対し何らかの偏見を抱き、又は正当なる労働運動に対して徒らに介入し、不当な弾圧を加えるがごときことのないように、特に負傷その他の事件が起るというようなことについて、個人の尊重ということを心がけてもらいたい。それから又労働組合に対しましては、労働運動に当つては常に法規を尊重して、飽くまでも合法的に行動してもらいたい、或いは又は会社側その他に対しましては、徒らに警察力に頼つて自主的態度に欠け、結果的には却つて事態悪化の原因にもなつたとさえ見られるような点も十分あるから、そういう点のないようにというようなことを、要望いたしておつたわけでございます。  そこで先ほどからの各委員の御質疑によりまして、直ちに本事件の結論を出す、或いは委員会の決議をするというような段階には、争議もまだ未解決状態でもございますし、又委員長といたしましても、今日の空気を見ましても、これに断定を下すというようなことは、少し早いように考えします。ただ従来のこの委員会で取扱いました結論に対しましては、是非とも一つ関係者におきましても守つて頂きまして、そうして要はこの争議が自主的に早く一つ解決のつきますように、まあこの点は委員長の希望といたしまして申上げておきたいと存じます。  どうか、長時間に亘るところの皆様方の御公述に対しましては、先ほども申しましたように、委員長から重ねて感謝を申上げまして、公述人に対する質疑を終りたいと思います。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  190. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは、地方行政委員会をこれで以て散会いたします。