○
参考人(鈴木強藏君) 日本製鋼の
室蘭工場には現在二つの
組合がありますが、私は分裂をされたほうの
組合の
書記長をや
つております鈴木と申します。本日お
手許に差上げましたプリントと以前に差上げましたプリントに従
つて申上げたいと思います。
争議発生の原因或いは理由、
争議経過、こうい
つたことにつきましては重複を避けまして、特に申し上げたい点だけを重点的に申上げ、主として
警察の
関与に重点を置いて申上げたいと思います。御承知のように六月十七日に
会社のほうから我々の
組合に対して九百十五名の
解雇が発表されました。これは
組合員総数に比べて四人に一人という大量の首切りでございます。で、
会社の首切りの理由と申しますか、首切りをしなければならなく
なつた原因というものは、昭和二十八年度の下期決算において五億七千五百万円と記憶いたしておりますけれども、このような
損失を計上した。更に鉄鋼界の受注の先行き不振、こうい
つたことを理由に大量の首切りがなされて参
つたのでございますが、五億七千五百万円の
損失の内容等につきましても、
組合側といたしましては
会社と団体
交渉の席上にはつきりと認識いたしたことは、単に仕事の上で実際にこうむ
つた損失ではないということ。つまりこの五億七千五百万円の大都分の
赤字計上というものは、従来まで停年退転をや
つて来た者の退職金、或いは国家から借用しておるとこるの機械、こうい
つたもの支払代金と申しますか、こうい
つたことを一挙に二十八年の下期に
至つて初めて計上した、こうい
つた要素を含んだために大きな
赤字とな
つて二十八年の下期に出て参
つた。こういうようなことでございます、
労働組合といたしましては四人に一人という首切りは到底容認できるものではない。特に日本製鋼
室蘭の場合、明治四十一年の操業以来今日まで
従業員の大半は親子三代或いは二代にわた
つて永年勤続をいたしておる者が大部分でございます。従
つて企業に対する受着心、こうい
つたものはほかの同種の企業或いは他の企業の
従業員とは比べものにならないほど強うございます。更に北海道労働市場といものは極めて払底いたしておりまして、現在
室蘭市におきましては日雇労務者すら月三十日稼働できない。最高稼働するのが二十一日である。あとの九日分はどうするか。これは日雇労務者の数が多いために収容する、それらを稼働させる場所がないことは勿論でありますけれども、失業対策資金その他の、これらの点から見ましても、三十日稼働を全部の日雇労働者にさせるということはできないような現状にあるのであります。更に日本製鋼
室蘭は戦前軍需
工場として兵器生産を主として参りました、戦後御承知のように平和産業に切換えたのてありますが、すべての企業と同じように非常に不振に陥
つております。このときに
従業員は多数北海道内の各石炭鉱山に派遣されて、
組合は地下何千尺の炭坑の中に入
つて石炭を掘り、この石炭を企業に送
つて、企業の機械を動かし或いは平炉を動かして参
つた。こういうように終戦後今日まで日鋼の
組合員がと
つて来たものは、企業を守らなければならない、企業を育てなければならない、こういうような信念に燃えて今日まで企業を盛り立てることに努力して参
つたのでございますが、この報酬と申しますか、この
組合員の努力に報いられたものは九百十五名という首切りであ
つた。こういうような
状態の中で日本製鋼から首を切られることは、即も死を意味するものである。先ほど申上げましたように親子三代、二代の永年にわたる勤続、或いは北海道の労働市場が極めて悪いという
状態、更に企業に対する愛着心が強いということ、こうい
つたことから首を切られることイコール死である。こういうような観念に燃えて、そうして首切り
反対のために経営者に対して闘わなければならないと
決意をいたした次第でございます。六月十七日に首切りが発表されて以来、東京本社において団体
交渉を持
つて参
つたのでございますが、七月五日に
至つて決裂し、七月八日に先に発表された九百十五名のうち九百一名に対して
解雇の通知が発表されております。
労働組合は八日に
解雇通知を受けて、九日に
大会を開いております。これは代議員
大会を申しまして、
組合員十名について一名の割合で選出された代議員によ
つて開催されております。この
大会で首切り
反対のために
労働組合は闘わなければならない、こういうような
決定をいたしております。更に翌十日、つまり七月十日でありますが、
全員投票によ
つて、この
大会の
決定が本当に全
組合員の支持を得るものであるかどうかということを投票によ
つて更に確認をいたしております。このときの投票の結果は、首切りを
反対し闘うという数字が三千四百四十九票、
反対であるという数字が四百一票、こういう圧倒的な多数の下に日鋼の
労働組合としては首切り
反対闘争に起ち上
つたわけでございます。
更に
組合といたしましては、当初
会社が出しておりましたところの企業
再建案なるものを、
組合としては現在の経済
情勢、こうい
つたことから、これは
会社案をそのまま了承するのにやぶさかではない。但し
会社の企業
再建案のうち、人件費の削減については
労働組合としては承諾しかねる。つまり人件費の削減を
組合が承諾することはイコール
解雇を認めるという結果になるからであります。従
つて労働組合といたしましては。この人件費の削減については削減の方法を先ず考え直してもらいたい。つまり現在日本製鋼
室蘭の
従業員の
平均の基準内、超過労働をやらない基準内の収入は一人
平均一万三千五百円でございます。これが実際の収入は月二万円にな
つております。差額の六千五百円くらいは
組合員が超過労働をや
つて、その分の賃金が加えられるために月二万円になる。従
つて労働組合としては、この超過労働分の六千五百円は要らん。つまり超過労働をやらないで、超過労働の分は基準内の時間の中で努力をする。そして超過労働に支払われてお
つた賃金を
会社が首切りをやろうとしておる九百何名かの人間に振り当てる。このことによ
つて実際には人件費の節減の方法というものは、
会社と
組合との間に違いを見せて来たわけであります。簡単に申上げますと、
労働組合は実際の収入を減らしても首切りをやめて、親子三代、二代、永年に亘
つて勤めて参
つた組合員が仲よく今後も企業の盛り上げに努力をして行きたい、ここにあ
つたわけでおざいます。
こうい
つた経過で闘争に入
つて行
つたのでありますが、
労働組合といたしましては、飽くまでも合法闘争ということを打出しております。更に暴力を排除することは勿論でございます。
組合とのつまり
関係を持つ外部団体と申しますか、こういうような
組合とおつき合いをする。俗な言葉で申上げればおつき合いをする団体につきましては、私どもの
組合の上部団体である鉄鋼労連或いは総評、全道労連、
室蘭地区労、こうい
つた団体
組合とはおつき合いをするけれども、その他の団体とはおつき合いをしない。こういう
態度も明確に打出しております。更に只今申上げました
通り、合法闘争という建前から、九月四日
札幌地裁室蘭支部で
決定を見ました立入禁止も
仮処分、同月九日にこれが執行されておりますけれども、
労働組合といたしましてはこの
決定の執行
通り行動をいたしております。この件につきましては後ほど更に申上げたいことがございますけれども、更に闘争の途中におきまして、九月二十三日不幸にして
組合が分裂をし、新らしいと言われておりますが、分裂をした人たちは新らしい
組合というような表現をいたしております。ここで便宜上分けますと、第二
組合が
発生をさえております。私どものほうでこのときの構成は千百三十四名、この千百三十四名のこのうち
工場で稼動する者、この人数は五百八十一名、実際現在の
工場稼動の労働者は約二千百五十名でございますので、五百八十一名だけが
工場で稼動する、こういうような第二
組合の構成人員でございます。従
つて第二
組合の生産の主体勢力と申しますか、とにかく現在の第二
組合の数では、日本製鋼の
室蘭を動かすという力がないことだけははつきりといたしております。で特に第二
組合の構成人員は事務員或いは
工場の職制と申しますか、班長、係、こうい
つた人たちが大部分を占めておるわけでございます。
それから次に
労働組合の闘争始ま
つて以来、今日までの期間の運営、こうい
つたことでございますが、七月十日
全員投票は先ほど申上げた
通りでございます。更に七月二十七日の
会議に
条件闘争に移行するという道議が提出をされておりますが、これも圧倒的な多数で否決をされております。次に八月二十五日にも
会議で、同じくこれは執行部でございますが、執行部からの提案、これも圧倒的な多数で否決をされ、更に九月六日の
全員大会で闘争を更に続行することが再認識を見ております。
で九月六日の
全員大会のことについて若干触れてみたいと思うのでございますが、九月六日の
全員大会におきましては、午前十時開会いたし、閉会は午後十時半、約十二時間半の長さに亘
つて、
組合員三千五百名が出席して開かれたのでございますが、この席上で八月二十五日に執行部が出した
会社の修正案と申しますか、百十六名の
解雇を撤回するという案をもう一度再審議してはどうかという緊急動議が出されております。この緊急動議をめぐ
つて約三時間ほど討議をし、その後
組合員の直接無記名投票によ
つてこの問題を、
条件闘争に入るというほうを否決いたしております。そのときの投票数は約二千二百対千二百で投票を、そういう
条件動議は審議する必要がない、こういうようなことにな
つております。更に続いて
労働組合は今後更に闘いを続行する。特に
生活資金の問題、融資の問題、こうい
つたことを長時間に亘
つて論議を交わしたのでありますが、このときの論議が約四時間ほどでございますが、これも結果的には
組合員の直接無記名投票によ
つて、
長期闘争を止むなし、飽くまでも
解雇反対のために闘うという数字が約二千二百、
反対という数字が千二百、こういうようなことで闘争の続行が確認をされております。以降九月二十三日第二
組合が
発生し、第一
組合といたしましては、執行部の中から第二
組合に参加をした役員がおりますので、その補充と同時に、現在役員数は七名でございますので、非常に少いという建前から、更に役員の補充を
決定いたして今日に
至つております。
次に
警察の干与に関してでございますが、武装警官が
室蘭市に派遣されたのは、只今までのいろいろな方のおつしやられたことで……、九月の二十一日、二十日乃至二十一日とな
つておりますが、この
警察が派遣されるまでの
警察との
関係につきましては、
労働組合の立場で言うのはちよつとおかしいのでございますが、
室蘭市との間には非常に円滑と申しますか、常に連繋をとりまして、
事件と称するものは何もございませんでした。でその後、武装警官が
室蘭市に派遣されて以来、只今までいろいろな方がおつしやられたような
事件と称するものが起
つておるのでございますが、とにかく第二
組合発生以前の
警察の干与というものは、私ども
労働組合の立場でなか
つたという工合にはつきり申上げることができると思います。
次に
警察の干与でございますが、九月十五日以来
会社は半
製品の貸出を強行しようといたしておりまして、
労働組合といたしましては、この
会社のとろうとしてお
つた行動、と
つた行動につきましては、
労使の間で
協定をいたしております
争議協定に違反をする、こういうことで
交渉を持
つたのでありますが、この
交渉は結論を得ないままに
会社は半
製品の積出しを強行いたしました。
従つて警察といたしましては、こういうような
会社の
態度については
実力を以てこの半
製品の積出しを阻止しなければならない、こういうような
態度を明確にいたしました。これは隣に第二
組合の法規対策部長をや
つておられる
青野君は、当時
組合の
書記長でございましたので、この間のいきさつは非常に詳しく知
つておられると思います。で特に当時の
書記長は強行な意見を吐いた、こういうように私ども承知をいたしております。こういうような
状態の中で先ほどおつしやられたような、どなたかおつしやられたような武装警官の派遣ということが起きて参
つたのでございますが、九月二十二日
埠頭に横付けになりました洞南丸に対する半
製品の積出の際には武装警官約六百名が
出動をいたしております。
労働組合といたしましては、官憲との摩擦を避けるために、このときはそのまま拱手傍観というような形でお
つたのでございます。更に翌九月二十三日、
労働組合が発会式を終
つた後、午後五時頃隊列を組んで日本製鋼
室蘭の
正門前に到着をいたしました。当時
正門前には第一
組合側は
ピケを張
つておりました。で第二
組合側から
代表八名は
会社と団体
交渉をやりたいので中へ入れてもらいたい。こうい
つたような
申入れがあ
つたのでありますが、第一
組合としては
ピケでこれを阻止をいたしておりました。このときに
会社構内に武装警官が約三百名お
つたのでありますが、この武装警官の中から、
会社の中にお
つたのでは
警察としての仕事ができないから第一
組合の
ピケの外に出してくれ、こういうような申出が
警察のほうからあ
つたわけであります。従
つて第一
組合としてはよろしいということで武装警官が外に出ることを了承いたしました。直ちに武装警官側は四列の縦隊にな
つてピケ・ラインを割
つて入
つて来たわけでございます。勿論このときは
組合側が了承いたしておりますので、警官が通るだけの通路は開いたわけでございますが、警官隊が
ピケ・ラインを完全に割
つたと見るや、四列の縦隊が二列に分れてその場に停止をいたしております。そうしてその中を第二
組合の幹部が通
つて中に入
つておる。而もこの際第一
組合側からはこの中に入るのには現在立入禁止を食
つておるのは、入場される人は
執行吏の立入許可証を持
つておるかどうかと、こうい
つたようなことについても申出をしたのでございますが、このときの警官隊のほうではそれらしいものをちよつとかざしただけで、具体的な結論というものは得ておりません。更に九月の翌々二十五日午後十二時三十分頃、第二
組合は中に入
つて仕事をやる、こういうように称して
会社正門前に到着いたしたのでありますが、第一
組合の
ピケに阻止をされまして、一旦下
つて附近のバレー・コートで休憩をと
つておりました。第一
組合といたしましては第二
組合が後退をしたと、こういうことで良心的に考えて
ピケの人数を減らしました。約二百名まで
ピケの人数を減らしたのでありますが、この虚を狙
つたかどうかはわかりませんけれども、第二
組合のほうでは柔道或いは相撲に練達の者を先頭に立てて突進して来て、第一
組合の
ピケを踏み倒して中に入
つて行
つたというような
事件が起きております。このときには生命危篤の重傷者が出ております。更にこのときには現場に私服警官が約二十名くらいお
つた。但しただ見守
つてお
つただけでございます。その後この二十五日、第二
組合の暴力と申しますか、こういうような
事件のために生命危篤の重傷者が出ておるのですけれども、この加害者の捜査というものはなされていないやに聞いております。更にこのときの入場した第二
組合員約七百名、これらの者についても明らかに
執行吏の立入許可証、こうい
つたものは持
つていなか
つたという工合に私どもは断定をいたしております。と申しますのは、第二
組合員六百七十九名に対して
室蘭市の熊谷
執行吏が立入許可証を発行したのは二十五日の午後八時三十分、従
つて二十三日の入場並びに二十五日の第二
組合の入場については明らかに
執行吏の立入許可証を所持していなか
つたと、こういう工合に判断いたしております。次に十月五日午前九時頃、第二
組合は隊列を組んで
就労のために
会社正門前から入場をする、第一
組合といたしましてはこの入場を説得によ
つて阻止をする、こういうような点から
会社正門前に約二千名の
ピケ隊、更に
正門前方約百五十メートルくらいの所にあります
御幸橋と呼称される陸橋、下を鉄道線路が通
つておりますために陸橋にな
つておりますが、この陸橋で第一
組合側の説得員である
応援団体の
組合員、これを約二百名派遣をいたしておりまして、この第一
組合側の説得員と第一
組合の幹部と第二
組合の幹部がここで
話合いを続けたのでありますが、なかなか
話合いがつかない、こういう
事態にな
つて、
話合いの場を更に
附近の旅館に移して続けたのでございますが、最終的にはまとまらないままに第二
組合は
実力で
ピケを突破する、こういうような
行動に移
つたのでありますが、丁度夕暮のために中止をした。このとき第二
組合が
行動をする、その側面を武装警官が第二
組合と同じような速度で側面から護衛するといいますが、こうい
つたような
行動に終始いたしております。更に十月六日の
事件と
関係があるのでございますが、十月五日の午前十時頃と記憶いたしておりますけれども、
附近に待機いたしておりました約五百名の武装警官側のほうから申入がありまして、第一
組合といたしましては、この約五百名の武装警官の中から約百五十名の武装警官をこの説得員の場所を通して中に入れて、第一
組合が
正門前に
ピケを張
つてお
つた附近に入
つております。これは
警察側では
治安のためとこういう工合に言
つておりますし、私どものほうといたしましても警官の通行を妨げるというような
意思は毛頭ない、こういうような点から、五日はそういうような処置も
警察と第一
組合の話合によ
つてなされておる次第でございます。翌十月六日に至りましては、第一
組合側は前日の十月五日と同様な体形を以て第二
組合を説得しよう、こういうように出てお
つたのでございますが、先ほど道の本部長のほうからもいろいろ
報告がありましたけれども、私どもが第一
組合側が
正門前に約二千名、陸橋
附近に約百六十名の、隣の富士製鉄
室蘭労働組合の
組合員約百六十名くらいの説得員、こういうような体形でお
つたのでありますが、この富士製鉄の説得員に対して警官側は交通
妨害だからそこをどけろ、こういうような警官を一回し、二回目同様の趣旨のことを繰返して
広報車から拡声器を通じして放送している最中に、武装警官のほうは棍棒を振い、足で蹴
つてこの説得員を踏み散らして中へ入
つております。先頭の武装警官がそういう形で中へ入ると同時に約議百名の武装警官が全部中へ隊列を組んで入
つて、第一
組合側が
ピケを張
つている
正門前の
ピケ隊に対して更に警官隊が
ピケを張る
行動に出たわけでございます。こういうような体形ができ上ると同時に第二
組合側のほうは行進を起し、そういうような形の中で第二
組合が中に入場をした、こういうようないきさつにな
つております。で、このとき明らかに警官側のほうから暴力を
行使いたしておるのでおりますが、加害者の捜査はなされていないようでございます。更に
警察が暴力を
行使した際、交通
妨害である、こういうようんに言
つておりますが、説得員の通路に坐
つている、或いは立
つてお
つた説得員の両側はそれぞれ一メートル以上の間隔が開けられておる、更に第一
組合といたしましては武装警官の通行を阻止するというような意図は、十月五日の
行動においても明らかな
通り、ないにもかかわらず、そういうような
行動に出て来ておる、こうい
つたようなことについては甚だ遺憾に存じておりますので、本
委員会を通じて
警察側のかかる不当な
関与について十分御審議を頂きたいと思う次第でございます。